JP2015010547A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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晃史 柴田
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Abstract

【課題】エンジンの制御装置に関し、ブレーキブースターのマスターバック負圧の制御性を向上させる。【解決手段】エンジン10の吸気系に接続され、スロットル下流の負圧による倍力作用を利用するブレーキブースター43の使用頻度を推定する推定手段3a〜3cを備える。また、推定手段3a〜3cで推定された使用頻度に基づき、吸気系のスロットル下流の負圧目標値PVAC_LIMを算出する算出手段3dを備える。さらに、ブレーキブースター43のマスターバック負圧PVACが不足した際に、吸気系のスロットル下流の圧力PIMが算出手段3dで算出された負圧目標値PVAC_LIM以下となるように、吸気系に介装されたスロットルバルブ26の開度を制御する制御手段5を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、車両の吸気系の負圧を利用して作動する制動倍力装置と併用されるエンジンの制御装置に関する。
従来、エンジンの吸気系に生じる負圧を利用して、ブレーキペダルの踏み込み操作をアシストする負圧式(真空式)の制動倍力装置が知られている。この種の制動倍力装置では、ブレーキペダルに連動するパワーピストンによって区画される一側の室内に、インテークマニホールド内の負圧(インマニ圧)が導入される。また、パワーピストンの他側の室内には、ブレーキペダルが踏み込まれると同時に大気圧が導入される。これにより、パワーピストンがブレーキ操作に応じて他側から一側に向かう方向へと付勢され、ブレーキ踏力が軽減される。なお、パワーピストンの一側の室内に蓄えられる負圧は、マスターバック負圧とも呼ばれる。
ところで、マスターバック負圧は、ブレーキペダルの踏み込み操作がなされる度に減少する。一方、インマニ圧がマスターバック負圧よりも低くなれば、マスターバック負圧は自動的に回復し、所定の負圧が確保される。しかし、エンジンの運転状態によっては、インマニ圧がマスターバック負圧よりも低くなりにくく、マスターバック負圧の回復が遅れる場合がある。特に、ターボチャージャーやスーパーチャージャー等の過給機を備えたエンジンでは、過給時におけるインマニ圧を低下させることが難しい。
このような課題に対し、マスターバック負圧の不足時におけるスロットル開度に制限を加えることで、インマニ圧を低下させることが提案されている。例えば、エンジンのシリンダーに吸い込まれる空気量に比して、スロットルバルブを通過する空気量の方が少なくなるように、スロットル開度が小さめに制御される。このような制御により、インマニ圧が低下しやすくなり、マスターバック負圧が確保されやすくなる(例えば、特許文献1参照)。
特開2006-161609号公報
しかしながら、インマニ圧とスロットル開度とは必ずしも一対一で対応するものではない。そのため、上記のような従来の制御では、マスターバック負圧の回復速度や回復時間を適正化できないという課題がある。例えば、スロットル開度をどの程度の開度で制御すればよいのか、あるいは制御時間はどの位の時間であるのかを定量的に判断することができない。特に、過給機を備えたエンジンの場合には、スロットル開度の大小に関わらず、インマニ圧がマスターバック負圧よりも低圧にならない場合があり、マスターバック負圧の制御性を向上させにくい。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、マスターバック負圧の制御性を向上させることである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示するエンジンの制御装置は、エンジンの吸気系に接続され、スロットル下流の負圧による倍力作用を利用するブレーキブースターの使用頻度を推定する推定手段を備える。また、前記推定手段で推定された前記使用頻度に基づき、前記吸気系のスロットル下流の負圧目標値を算出する算出手段を備える。さらに、前記ブレーキブースターのマスターバック負圧(マスターバック圧力)が不足した際に、前記吸気系のスロットル下流の圧力が前記算出手段で算出された前記負圧目標値以下となるように、前記吸気系に介装されたスロットルバルブの開度を制御する制御手段を備える。
上記の「使用頻度」とは、その時点よりも未来での前記ブレーキブースターの使用状態に対応する「推定された頻度」であり、例えば、その時点から所定時間内に前記ブレーキブースターが使用される「可能性の大きさ」や「期待値」を意味する。
上記の「前記ブレーキブースターのマスターバック負圧が不足した際」とは、例えば「マスターバックの内圧が所定圧力以上となり、前記ブレーキブースターによるブレーキ踏力の倍力作用が弱まった状態であるとき」を意味する。また、上記の「負圧目標値」とは、「マスターバックの内圧を前記所定圧力以下まで低下させるための圧力目標値」を意味し、少なくとも前記所定圧力以下の値に設定される。
上記の「使用頻度」には、例えば、前記ブレーキブースターが次回に使用されるまでの時間や、前記ブレーキブースターで次回に使用されるだろうと推定される使用量等(前記ブレーキブースターが次回に使用されるまでに蓄えておきたい負圧の量)の情報が含まれることが好ましい。これらの情報は、例えば、前記ブレーキブースターが実際に使用された回数や頻度(単位時間当たりの回数),実際の使用量(ブレーキブースターで消費された負圧の量)等に基づいて推定することができる。
(2)前記推定手段が、アクセル開度変化率(すなわち、アクセル開度の単位時間あたりの変化量)に基づき前記使用頻度を推定することが好ましい。例えば、前記推定手段は、前記アクセル開度変化率が大きいほど、その後にブレーキ操作がなされる可能性が低く、前記ブレーキブースターの使用頻度が低下するものと推定することが好ましい。この場合、前記算出手段は、前記ブレーキブースターの使用頻度が低いほど、前記負圧目標値を上昇させることが好ましい。つまり、前記アクセル開度変化率が大きいほど、前記負圧目標値を上昇させて、前記マスターバック負圧の回復時間を延長する(時間的に余裕を持って負圧を回復させる)ことが好ましい。
一方、前記推定手段は、前記アクセル開度変化率が小さいほど、前記ブレーキブースターの使用頻度が上昇するものと推定することが好ましい。この場合、前記算出手段は、前記ブレーキブースターの使用頻度が高いほど、前記負圧目標値を低下させることが好ましい。つまり、前記アクセル開度変化率が小さいほど、前記負圧目標値を低下させて、前記マスターバック負圧を迅速に回復させる(負圧の回復時間を短縮する)ことが好ましい。
(3)前記推定手段が、路面勾配に基づき前記使用頻度を推定することが好ましい。例えば、前記推定手段は、前記路面勾配が平坦又は登り勾配である場合に、その後にブレーキ操作がなされる可能性が低く、前記ブレーキブースターの使用頻度が低下するものと推定することが好ましい。一方、前記路面勾配が下り坂である場合には、その後にブレーキ操作がなされる可能性が高く、前記ブレーキブースターの使用頻度が上昇するものと推定することが好ましい。
つまり、前記路面勾配が平坦又は登り勾配である場合には、前記マスターバック負圧を緩やかに回復させ、前記路面勾配が下り勾配である場合には、前記マスターバック負圧を迅速に回復させることが好ましい。
なお、前記路面勾配が上り勾配であるとき、勾配の絶対値が大きいほど前記使用頻度がより低下するものと推定することが好ましい。一方、前記路面勾配が下り勾配であるとき、勾配の絶対値が大きいほど前記使用頻度がより上昇するものと推定することが好ましい。
(4)前記推定手段が、ブレーキペダルの踏み込み回数又は踏み込み量に基づき前記使用頻度を推定することが好ましい。例えば、前記推定手段は、所定時間の間にブレーキペダルが踏み込まれた回数が多いほど、前記ブレーキブースターの使用頻度が上昇するものと推定することが好ましい。あるいは、所定時間内における前記ブレーキブースターの内圧の低下量が大きいほど、前記ブレーキブースターの使用頻度が上昇するものと推定することが好ましい。
(5)また、前記ブレーキブースターのマスターバック負圧(マスターバック圧力)が、前記ブレーキブースターの使用状態に基づいて設定される閾値以上であるときに(大気圧未満だったマスターバック圧力が上昇し、大気圧に近い所定圧力以上になったときに)、前記マスターバック負圧が不足したと判定する判定手段を備えることが好ましい。
換言すれば、前記マスターバック負圧の過不足を判定するための閾値を、前記ブレーキブースターの使用状態に基づいて設定することが好ましい。
ここでいう「前記ブレーキブースターの使用状態」とは、その時点よりも過去における前記ブレーキブースターの使用状態を意味する。したがって、その時点までの所定時間内に前記ブレーキブースターが実際に使用された実績を表すパラメーターを用いて、前記閾値を設定することが好ましい。例えば、アクセル開度変化率,路面勾配,ブレーキペダルの踏み込み回数,踏み込み量等に基づいて、前記閾値を設定してもよい。
開示のエンジンの制御装置によれば、ブレーキブースターの使用頻度を推定した上で負圧目標値を算出し、これに基づいてスロットル開度を制御することで、マスターバック負圧の回復速度及び回復時間を適正化することができる。
一実施形態に係るエンジンの構造を例示する図である。 エンジン制御装置のハードウェア構成を例示する図である。 エンジン制御装置のブロック構成を例示する図である。 エンジン制御装置における負圧目標値の補正に関する制御マップ例であり、(a)はアクセル開度変化率に基づくもの、(b)はブレーキ操作に基づくもの、(c)は路面勾配に基づくものである。 エンジン制御装置での制御手順を例示するフローチャートである。 エンジン制御装置での制御手順を例示するフローチャートである。 エンジン制御装置による制御作用を説明するためのタイムチャートであり、(a)はアクセル操作量、(b)はブレーキ操作量、(c)はスロットル開度、(d)はウェイストゲート開度、(e)はマスターバック負圧及びインマニ圧を示す。なお、(f)は比較例としてのマスターバック負圧及びインマニ圧を示すものである。 エンジン制御装置による制御作用を説明するためのタイムチャートであり、(a)はスロットル開度、(b)はインマニ圧、(c)マスターバック負圧を示す。
図面を参照して、実施形態としてのエンジンの制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジンの制御装置は、図1に示す車載ガソリンエンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。このエンジン10は、排気圧を利用した過給システム及びEGRシステム(Exhaust Gas Recirculation,排気再循環システム)を備える。図1では、多気筒のエンジン10に設けられた複数の気筒(シリンダー)のうちの一つを示す。シリンダー内にはピストンが摺動自在に内装され、ピストンの往復運動がコンロッド(コネクティングロッド)を介してクランクシャフトの回転運動に変換される。
各シリンダーの頂面には吸気ポート,排気ポートが設けられ、それぞれのポート開口には吸気弁,排気弁が設けられる。また、吸気ポートと排気ポートとの間には、点火プラグ15がその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。点火プラグ15での点火のタイミング(点火時期)は、エンジン制御装置1で制御される。
エンジン10には、各シリンダーへの燃料供給用のインジェクターとして、筒内噴射弁11及びポート噴射弁12が設けられる。筒内噴射弁11は、シリンダー内に直接的に燃料を噴射する直噴インジェクターであり、ポート噴射弁12は、吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクターである。これらの噴射弁11,12から噴射される燃料噴射量及びその噴射タイミングは、エンジン制御装置1で制御される。例えば、エンジン制御装置1から各噴射弁11,12に制御パルス信号が伝達され、その制御パルス信号の大きさに対応する期間だけ、各噴射弁11,12の噴孔が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に応じた量となり、噴射タイミングは制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
[1−2.吸排気系]
吸気弁の上部は、バルブリフト量,バルブタイミングを変化させるための吸気可変動弁機構28に接続され、排気弁の上部は排気可変動弁機構29に接続される。吸気弁,排気弁の動作は、これらの可変動弁機構28,29を介して、後述するエンジン制御装置1で制御される。それぞれの可変動弁機構28,29には、例えばロッカアームの揺動量と揺動のタイミングとを変更する機構として、可変バルブリフト機構及び可変バルブタイミング機構が内蔵される。
可変バルブリフト機構は、吸気弁及び排気弁の各々のバルブリフト量を連続的に変更する機構である。この可変バルブリフト機構は、カムシャフトに固定されたカムからロッカアームやタペットに伝達される揺動の大きさ(バルブリフト量)を変更する機能を持つ。また、可変バルブタイミング機構は、吸気弁及び排気弁の各々の開閉タイミング(バルブタイミング)を変更する機構である。この可変バルブタイミング機構は、ロッカアームに揺動を生じさせるカム又はカムシャフトの回転位相を変更する機能を持つ。
エンジン10の吸気系20及び排気系30には、排気圧で過給を行うターボチャージャー16(過給機)が設けられる。ターボチャージャー16は、吸気ポートの上流側に接続される吸気通路21と、排気ポートの下流側に接続される排気通路31との両方に跨がって介装される。ターボチャージャー16のタービン16A(過給用タービン)は、排気通路31内の排気圧で回転し、その回転力を吸気通路21側のコンプレッサー16Bに伝達する。これを受けてコンプレッサー16Bは、吸気通路21内の空気を下流側へと圧縮しながら送給し、各シリンダーへの過給を行う。ターボチャージャー16の過給動作は、エンジン制御装置1で制御される。
吸気通路21上におけるコンプレッサー16Bよりも下流側にはインタークーラー25が設けられ、圧縮された空気が冷却される。また、コンプレッサー16Bよりも上流側にはエアフィルター22が設けられ、外部から取り込まれる空気が濾過される。さらに、コンプレッサー16Bの上流側,下流側の吸気通路21を接続するように、バイパス通路23が設けられるとともに、バイパス通路23上にバイパスバルブ24が介装される。バイパス通路23を流れる空気量は、バイパスバルブ24の開度に応じて調節される。バイパスバルブ24は、例えば車両の急減速時に開放方向に制御され、コンプレッサー16Bから送給される過給圧を再び上流側へと逃がすように機能する。なお、バイパスバルブ24の開度はエンジン制御装置1で制御される。
吸気系20におけるコンプレッサー16Bよりも下流側と、排気系30におけるタービン16Aよりも上流側との間には、EGR通路34が設けられる。EGR通路34は、シリンダーから排出されて間もない排気ガスを再びシリンダーの直上流側へと導く通路である。EGR通路34には、還流ガスを冷却するためのEGRクーラー35が介装される。還流ガスを冷却することでシリンダー内での燃焼温度が低下し、窒素酸化物の発生率が低下する。また、EGR通路34と吸気系20との合流部には、排気ガスの還流量を調節するためのEGRバルブ36が介装される。EGRバルブ36の弁開度は可変であり、エンジン制御装置1で制御される。
インタークーラー25の下流側にはスロットルボディが接続され、さらにその下流側にはインマニ(インテークマニホールド)が接続される。スロットルボディは、前述のEGR通路34と吸気系20との合流部よりも上流側に配置される。スロットルボディの内部には、電子制御式のスロットルバルブ26が設けられる。インマニ側へと流れる空気量は、スロットルバルブ26の開度(スロットル開度TH)に応じて調節される。スロットル開度THは、エンジン制御装置1によって制御される。
インマニ(インテークマニホールド)には、各シリンダーへと流れる空気を一時的に蓄えるためのサージタンク27が設けられる。前述のEGR通路34と吸気系20との合流部は、サージタンク27よりも上流側に位置する。したがって、サージタンク27内には外気と排気ガスとが混在しうる。サージタンク27よりも下流側のインマニは、各シリンダーの吸気ポートに向かって分岐するように形成され、サージタンク27はその分岐点に位置する。サージタンク27は、各々のシリンダーで発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
排気通路31上におけるタービン16Aよりも下流側には、触媒装置33が介装される。この触媒装置33は、例えば排気中に含まれるPM(Particulate Matter,粒子状物質)や窒素酸化物(NOx),一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)等の成分を浄化,分解,除去する機能を持つ。また、タービン16Aよりも上流側には、各シリンダーの排気ポートに向かって分岐形成されたエキマニ(エキゾーストマニホールド)が接続される。
タービン16Aの上流側,下流側の排気通路31を接続するように、迂回路32が設けられるとともに、迂回路32上に電子制御式のウェイストゲートバルブ17が介装される。ウェイストゲートバルブ17は、タービン16A側に流入する排気流量を制御して過給圧を変化させるための過給圧調節弁である。このウェイストゲートバルブ17にはウェイストゲートアクチュエーター18が併設され、弁体の位置(すなわち開度)が電気的に制御される。ウェイストゲートバルブ17の開度(ウェイストゲート開度D)は、エンジン制御装置1で制御される。
[1−3.ブレーキ系]
ブレーキペダル44には、負圧式(真空式)の制動倍力装置40が設けられる。この制動倍力装置40は、運転者によるブレーキ踏み込み操作をアシストするためのマスターバック43(ブレーキブースター)と、ブレーキ油圧を発生させるマスターシリンダ45とを備える。マスターバック43の内部は、図示しないパワーピストンで二室に区画され、一方の室内にはインテークマニホールド内の圧力(負圧)が導入される。また、他方の室内には、ブレーキ踏み込み操作と同時に大気圧が導入される構造となっている。
マスターバック43の一方の室内と吸気系20との間は、負圧通路41で接続される。負圧通路41と吸気系20との接続位置はスロットルバルブ26よりも下流側であり、例えばサージタンク27の位置とされる。また、負圧通路41には、マスターバック43側から吸気系20側への圧抜きを許容し、逆方向への圧抜きを阻止する逆止弁42が介装される。これにより、マスターバック43側の圧力が吸気系20側の圧力よりも低圧の状態では、吸気系20側からマスターバック43側へと空気が流入することはない。以下、マスターバック43の一方の室内における圧力(マスターバック圧力)のことを「マスターバック負圧PVAC」とも呼ぶ。
マスターシリンダ45には、ブレーキペダル44に連動して移動するピストンが内挿されるとともに、ピストンによって区画される一側の室内にブレーキ液が封入される。ブレーキペダル44に入力された踏力は、マスターバック43で踏み込み方向に付勢されるとともに、マスターシリンダ45内のピストンを介してブレーキ液圧に変換される。ここで生成されたブレーキ液圧は、図示しないブレーキ油圧回路を介して、各種制動装置に伝達される。
[1−4.センサー系]
車両の任意の位置には、アクセルペダル47の踏み込み量(アクセル開度APS)を検出するアクセル開度センサー51が設けられる。アクセル開度APSは、運転者の加速要求や発進意思に対応するパラメーターであり、言い換えるとエンジン10の負荷(エンジン10に対する出力要求)に相関するパラメーターである。
吸気通路21内には、吸気流量QINを検出するエアフローセンサー52が設けられる。吸気流量QINは、エアフィルター22を通過した空気の流量に対応するパラメーターである。また、サージタンク27内には、インマニ圧センサー53及び吸気温センサー54が設けられる。インマニ圧センサー53はサージタンク27内の圧力をインマニ圧PIMとして検出し、吸気温センサー54はサージタンク27内の吸気温度TIMを検出する。
クランクシャフト近傍には、エンジン回転速度Ne(単位時間あたりの回転数)を検出するエンジン回転速度センサー55が設けられる。また、エンジン10の冷却水循環路上における任意の位置には、エンジン冷却水の温度(冷却水温WT)を検出する冷却水温センサー56が設けられる。
ウェイストゲートアクチュエーター18には、ウェイストゲート開度Dに対応する弁体駆動部材のストロークを検出するホールセンサー57が設けられる。ホールセンサー57で検出されるストロークは、弁体駆動部材の基準位置からの移動量に相当する。また、触媒装置33の内部には、リニア空燃比センサー58及び酸素濃度センサー59が配置される。リニア空燃比センサー58は、触媒装置33に流入する排気の空燃比を検出し、酸素濃度センサー59は触媒装置33から流出する排気の酸素濃度を検出する。
マスターバック43には、マスターバック負圧PVACを検出する負圧センサー60が設けられる。一方、マスターシリンダ45には、ブレーキ液圧BRKを検出するブレーキ液圧センサー61が設けられる。マスターバック負圧PVAC及びブレーキ液圧BRKの情報は、マスターバック43が実際に使用された回数やブレーキ回数、ブレーキペダル44の踏み込み操作によって消費されたマスターバック負圧PVACの量等を把握するのに用いられる。
また、エンジン制御装置1の内部又は車両の任意の位置には、大気圧PBPを検出する大気圧センサー62と、路面勾配INCを検出する路面勾配センサー63が設けられる。これらの大気圧PBP,路面勾配INCの情報は、車両の走行環境を把握するのに用いられる。上記の各種センサー51〜63で検出された各種情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
[1−5.制御系]
上記のエンジン10を搭載する車両には、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit,制御装置)が設けられる。このエンジン制御装置1は、例えばCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)等のマイクロプロセッサやROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を集積した電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が、互いに通信可能に接続される。エンジン制御装置1以外の電子制御装置は、外部制御システムと呼ばれ、外部制御システムによって制御される装置は外部負荷装置と呼ばれる。
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン10の各シリンダーに対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダーの点火時期,過給圧等を制御するものである。エンジン制御装置1の入力ポートには、前述の各種センサー51〜63が接続される。具体的な入力情報としては、アクセル開度APS,吸気流量QIN,インマニ圧PIM,吸気温度TIM,エンジン回転速度Ne,冷却水温WT,ウェイストゲートアクチュエーター18のストローク(ウェイストゲート開度D),排気空燃比,酸素濃度,マスターバック負圧PVAC,ブレーキ液圧BRK,大気圧PBP,路面勾配INC等の情報が挙げられる。
エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から噴射される燃料噴射量とその噴射時期,点火プラグ15による点火時期,吸気弁及び排気弁のバルブリフト量及びバルブタイミング,ターボチャージャー16の作動状態,スロットル開度TH,バイパスバルブ24の開度,ウェイストゲート開度D 等が挙げられる。
本実施形態では、マスターバック負圧PVACとウェイストゲートバルブ17及びスロットルバルブ26の開度との関係について詳述する。
[2.制御の概要]
[2−1.マスターバック負圧の判定]
エンジン制御装置1は、車両のブレーキ性能を確保すべく、制動倍力装置40の作動状態に応じてウェイストゲートバルブ17,スロットルバルブ26の動作に制限を加える制御を実施する。ここでは、マスターバック負圧PVACが所定の閾値PVAC_TH未満である状態が確保,維持されるように、又は、上昇したマスターバック負圧PVACが所定の閾値PVAC_TH未満まではやく回復するように、ウェイストゲート開度D及びスロットル開度THのそれぞれが制御される。所定の閾値PVAC_THは、少なくとも標準大気圧未満の値に設定され、ブレーキペダル44が踏み込まれたときに付与される制動アシスト力が所望の大きさ以上となる値(例えば、800〜900[hPa]以下の値)に設定される。
閾値PVAC_THは、予め設定された固定値として与えられてもよいが、本実施形態では、車両の走行条件に応じて変動する可変値として与えられる。具体的には、大気圧PBP,路面勾配INC,アクセル開度変化率ΔAPS,ブレーキ頻度の関数として閾値PVAC_THが与えられる。例えば、実測された大気圧PBPが標準大気圧よりも低い場合には、圧力の低下度合いに応じて閾値PVAC_THの値が小さく設定される。これにより、車両の走行環境や標高の高低にかかわらず、マスターバック43に内蔵されるパワーピストンの一側及び他側に作用する差圧が確保され、制動アシスト力が確保される。
また、路面勾配INC,アクセル開度変化率ΔAPS,ブレーキ頻度はそれぞれ、マスターバック43の使用状態を表す指標値である。これらの指標値に基づき、その後のブレーキ操作に対する準備として蓄えておくべき制動アシスト力の大きさが判断され、制動アシスト力を増大させたい場合に閾値PVAC_THの値が小さく(低圧側の値に)設定される。ただし、閾値PVAC_THの値を小さく設定すれば、制動アシスト力が増大する代わりに、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH未満の状態になりやすくなる。したがって、マスターバック43の使用状態に応じた閾値PVAC_THの設定としては、制動アシスト力の大きさを優先的に確保するための設定と、制動アシスト力が付与される回数を優先的に確保するための設定とが考えられる。
前者の設定に基づけば、路面勾配INCが下り勾配である場合に、平坦路の走行時よりも制動アシスト力が増大するように、閾値PVAC_THの値を小さく設定することが考えられる。一方、後者の設定に基づけば、路面勾配INCが下り勾配である場合に、平坦路の走行時よりも制動アシストの回数を維持するために、閾値PVAC_THの値を大きく設定することが考えられる。アクセル開度変化率ΔAPSと閾値PVAC_THとの関係も、二通りに設定することができる。ブレーキ頻度と閾値PVAC_THとの関係も同様であり、二通りに設定することができる。
[2−2.ウェイストゲート開度,スロットル開度の制御]
ウェイストゲート開度D及びスロットル開度THは、基本的には、エンジン10に要求される出力に応じて制御される。例えば、運転者の加速要求や外部負荷装置からの要求がエンジン制御装置1に入力され、これらの要求に応じてエンジン10の目標トルクが設定される。また、目標トルクに応じた吸入空気量が算出されるとともに過給量が算出され、過給量に応じてウェイストゲート開度Dが制御され、吸入空気量に応じてスロットル開度THが制御される。このような制御は、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH未満である場合(すなわち、制動用の負圧が不足していない場合)に実施される。
一方、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH以上になると、エンジン制御装置1はインマニ圧PIM及びマスターバック負圧PVACを低下させるべく、ウェイストゲートバルブ17及びスロットルバルブ26の動作に制限を加える。すなわち、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に保持するとともに、インマニ圧PIMが所定の負圧目標値PVAC_LIM以下となるように、スロットルバルブ26を制御する。例えば、目標トルクに対応する吸入空気量を得るためのスロットル開度THが全開状態であったとしても、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH以上であればスロットル開度THが絞られる。つまり、マスターバック負圧PVACが不足した状態では、スロットル開度THを開放する操作に制限が加えられる。そして、加速応答性を向上させることよりも、インマニ圧PIMを低下させることの方が優先される。
負圧目標値PVAC_LIMは、前述の閾値PVAC_TH未満の範囲で、マスターバック43の使用頻度に応じて設定される。ここでいう「マスターバック43の使用頻度」とは、「これからマスターバック43が使用されるであろうと予見される回数,頻度,見込みの大きさ」等を意味する。すなわち、ここでいう「マスターバック43の使用頻度」とは、その時点よりも未来でのマスターバック43の使用状態に対応する「推定頻度」であり、例えば、その時点から所定時間内にマスターバック43が使用される可能性の大きさを表す「期待値」に相当するものである。
インマニ圧PIMが負圧目標値PVAC_LIMに制御されたとき、サージタンク27からマスターバック43へと負圧が導入され(すなわち、マスターバック43側からサージタンク27側へと圧力が抜け)、マスターバック負圧PVACが低下する。このとき、マスターバック負圧PVACの低下速度は、マスターバック負圧PVACとインマニ圧PIMとの圧力差に応じた速度となり、インマニ圧PIMが低いほどマスターバック負圧PVACの低下速度が上昇する。したがって、負圧目標値PVAC_LIMを制御することで、マスターバック負圧PVACの低下速度(すなわち、マスターバック負圧PVACの回復速度)を調節することができる。
本実施形態では、制動アシスト力がこの先、再び必要となる可能性(マスターバック43の使用頻度)が高い場合に、マスターバック負圧PVACの回復速度を上昇させる制御が実施される。例えば、アクセル開度変化率ΔAPSが比較的小さい場合には、運転者の加速要求があまり大きくなく、再びブレーキペダル44が踏み込まれる可能性が高いものと判断されて、負圧目標値PVAC_LIMが小さく(低圧側に)設定される。つまり、ブレーキペダル44が踏み込まれる可能性が高い場合には、迅速にマスターバック負圧PVACが回復するようにスロットル開度THが制御される。一方、アクセル開度変化率ΔAPSが比較的大きい場合には、その直後にブレーキ操作がなされる可能性は低いものと判断され、負圧目標値PVAC_LIMが大きく(高圧側に)設定される。この場合、マスターバック負圧PVACは無理なくゆっくりと回復することになる。
また、マスターバック43の使用頻度の大小を判断するためのパラメーターとして、路面勾配INC,ブレーキペダル44の踏み込み回数,踏み込み量等が参照される。例えば、路面勾配INCが下り勾配であれば、平坦路の走行時よりも再びブレーキペダル44が踏み込まれる可能性が高いものと判断されて、負圧目標値PVAC_LIMが小さく設定される。一方、路面勾配INCが上り勾配であれば、ブレーキペダル44が踏み込まれる可能性が低いものと判断されて、負圧目標値PVAC_LIMが大きく設定される。同様に、単位時間あたりのブレーキペダル44の踏み込み回数,踏み込み量が大きいときには、次回のブレーキペダル44の踏み込みに備えて、負圧目標値PVAC_LIMが小さく設定される。一方、ブレーキペダル44の踏み込み回数,踏み込み量が小さいときには、負圧目標値PVAC_LIMが大きく設定される。
[3.制御装置の構成]
エンジン制御装置1のハードウェア構成を図2に例示する。エンジン制御装置1には、中央処理装置71,主記憶装置72,補助記憶装置73,インタフェイス装置74が内蔵され、これらが内部バス75を介して通信可能に接続される。また、これらの各装置71〜74は、図示しない電力源(例えば車載バッテリーやボタン電池等)からの電力供給を受けて動作する。
中央処理装置71は、制御ユニット(制御回路)や演算ユニット(演算回路),キャッシュメモリ(レジスタ群)等を内蔵する処理装置(プロセッサ)である。また、主記憶装置72は、プログラムや作業中のデータが格納されるメモリ装置であり、例えば前述のRAM,ROMがこれに含まれる。一方、補助記憶装置73は、主記憶装置72よりも長期的に保持されるデータやプログラムが格納されるメモリ装置であり、例えばマイクロプロセッサ内のROMのほか、フラッシュメモリやハードディスクドライブ(HDD),ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶装置がこれに含まれる。また、インタフェイス装置74は、エンジン制御装置1と外部との間の入出力(Input/Output;I/O)を司るものである。例えば、車両に搭載された各種センサー51〜63や外部制御システムとエンジン制御装置1との情報の授受は、インタフェイス装置74を介してなされる。
図3は、エンジン制御装置1で実行される処理内容を説明するためのブロック図である。これらの処理内容は、例えばアプリケーションプログラムとして補助記憶装置73やリムーバルメディアに記録される。また、プログラムの実行時には、プログラムの内容が主記憶装置72内のメモリ空間内に展開され、中央処理装置71によって実行される。処理内容を機能的に分類すると、このプログラムには負圧判定部2,負圧目標値算出部3,ウェイストゲート制御部4,スロットル制御部5が設けられる。なお、これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[3−1.負圧判定部]
負圧判定部2(判定手段)は、マスターバック負圧PVACの過不足を判定するものである。負圧判定部2には、閾値設定部2aと負圧不足判定部2bとが設けられる。
閾値設定部2aは、マスターバック43の使用状態に基づいて上記の閾値PVAC_THを設定するものである。ここでは、マスターバック43の使用状態として、大気圧PBP,路面勾配INC,アクセル開度変化率ΔAPS,ブレーキ頻度等が参照される。例えば、大気圧PBPが低いほど、閾値PVAC_THが小さく(低圧側に)設定され、大気圧PBPが高いほど閾値PVAC_THが大きく設定される。ただし、閾値PVAC_THが大気圧PBP以上の値に設定されることはない。また、路面勾配INC,アクセル開度変化率ΔAPS,ブレーキ頻度に応じて、閾値PVAC_THが補正される。ここで設定された閾値PVAC_THの情報は、負圧不足判定部2bに伝達される。
なお、路面勾配INCが下り勾配のときに閾値PVAC_THを小さくし、上り勾配のときに閾値PVAC_THを大きくするような設定では、重力作用による車体の加速に対して制動アシスト力が増大する。一方、路面勾配INCが下り勾配のときに閾値PVAC_THを大きくし、上り勾配のときに閾値PVAC_THを小さくするような設定では、降坂路での制動アシスト回数が増加し、ブレーキ性能が確保される。
アクセル開度変化率ΔAPSが大きいときに閾値PVAC_THを小さくし、アクセル開度変化率ΔAPSが小さいときに閾値PVAC_THを大きくするような設定では、そのアクセル操作後に行われうる急制動時の制動アシスト力が増大する。一方、アクセル開度変化率ΔAPSが大きいときに閾値PVAC_THを大きくし、アクセル開度変化率ΔAPSが小さいときに閾値PVAC_THを小さくするような設定では、車両の運動量が大きい状態であるほど制動アシスト回数が増加し、ブレーキ性能が確保される。
また、ブレーキ頻度が高いとき(単位時間あたりのブレーキ踏み込み回数が多いとき)に閾値PVAC_THを小さくし、ブレーキ頻度が低いときに閾値PVAC_THを大きくするような設定では、制動装置の発熱によって制動力が低下したとしても、制動アシスト力が増大しているため、所望の制動力を得やすくなる。一方、ブレーキ頻度が高いときに閾値PVAC_THを大きくし、ブレーキ頻度が低いときに閾値PVAC_THを小さくするような設定では、例えば頻繁なブレーキ操作が求められるヘアピンカーブ路での制動アシスト回数が増加し、ブレーキ性能が確保される。
負圧不足判定部2bは、負圧センサー60で検出されたマスターバック負圧PVACと閾値設定部2aで設定された閾値PVAC_THとの大小関係から、マスターバック負圧PVACが不足した状態であるか否かを判定するものである。ここでは、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH以上であるとき(マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_THよりも高圧であり、すなわち負圧が閾値PVAC_THに足りないとき)に、マスターバック負圧PVACが不足した状態であると判定される。一方、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH未満であるときには、マスターバック負圧PVACが十分な状態であると判定される。ここでの判定結果は、負圧目標値算出部3,ウェイストゲート制御部4,スロットル制御部5に伝達される。
[3−2.負圧目標値算出部]
負圧目標値算出部3は、目標とするインマニ圧PIMの制限値(負圧目標値PVAC_LIM)を算出するものである。ここには、アクセル補正部3a,ブレーキ補正部3b,路面勾配補正部3c,集計部3dが設けられる。三種類の補正部3a〜3cは、マスターバック43の使用頻度を推定する推定手段として機能する。また、集計部3dは、その使用頻度に基づき、負圧目標値PVAC_LIMを算出する算出手段として機能する。
アクセル補正部3aは、アクセル開度変化率ΔAPSに基づいてマスターバック43の使用頻度を推定し、その結果を負圧目標値PVAC_LIMに反映させるべく、補正量ΔPVAC_APSを算出するものである。アクセル補正部3aには、アクセル開度変化率ΔAPSと補正量ΔPVAC_APSとの関係が規定されたマップ,数式等が記録,保存される。例えば、図4(a)に示すように、アクセル開度変化率ΔAPSが増大するほど、補正量ΔPVAC_APSが増加するような設定のマップが用意される。この設定は「アクセル開度変化率ΔAPSが大きいほど、その直後にブレーキ操作がなされる可能性は低い」との考え方に基づいている。ここで算出された補正量ΔPVAC_APSの情報は集計部3dに伝達される。
ブレーキ補正部3bは、ブレーキ液圧BRKに基づいてマスターバック43の使用頻度を推定し、その結果を負圧目標値PVAC_LIMに反映させるべく、補正量ΔPVAC_BRKを算出するものである。ブレーキ補正部3bでは、ブレーキ液圧BRKの変化からブレーキペダル44の踏み込み頻度,踏み込み操作量が算出されるとともに、これらに基づいて補正量ΔPVAC_BRKが算出される。そのため、ブレーキ補正部3bには、踏み込み頻度,踏み込み操作量と補正量ΔPVAC_BRKとの関係が規定されたマップ,数式等が記録,保存される。
例えば、図4(b)に示すように、ブレーキペダル44の踏み込み頻度が低いほど、あるいは、踏み込み操作量が小さいほど、補正量ΔPVAC_BRKが増加するような設定のマップが用意される。この設定は「ブレーキペダル44の踏み込み頻度が低いほど、あるいは、踏み込み操作量が小さいほど、その直後にブレーキ操作がなされる可能性は低い」との考え方に基づいている。ここで算出された補正量ΔPVAC_BRKの情報は集計部3dに伝達される。
路面勾配補正部3cは、路面勾配INCに基づいてマスターバック43の使用頻度を推定し、その結果を負圧目標値PVAC_LIMに反映させるべく、補正量ΔPVAC_INCを算出するものである。路面勾配補正部3cには、路面勾配INCと補正量ΔPVAC_INCとの関係が規定されたマップ,数式等が記録,保存される。例えば、図4(c)に示すように、路面勾配INCが増大するほど(上り勾配がきついほど)、補正量ΔPVAC_INCが増加するような設定のマップが用意される。この設定は「路面勾配INCが大きいほど、その直後にブレーキ操作がなされる可能性は低い」との考え方に基づいている。ここで算出された補正量ΔPVAC_INCの情報は集計部3dに伝達される。
集計部3dは、上記の補正部3a〜3cで算出された三種の補正量ΔPVAC_APS,ΔPVAC_BRK,ΔPVAC_INCを用いて、負圧目標値PVAC_LIMを算出する。例えば、予め設定された標準制限値PVAC_LIM_BASEに対してそれぞれの補正量を減算した値を算出し、最も小さい値(最も制限が厳しい値)を最終的な負圧目標値PVAC_LIMとして算出する。あるいは、三種の補正量ΔPVAC_APS,ΔPVAC_BRK,ΔPVAC_INCの平均値を算出し、その平均値を標準制限値PVAC_LIM_BASEから減じた値を、最終的な負圧目標値PVAC_LIMとして算出してもよい。標準制限値PVAC_LIM_BASEは、予め設定された固定値であってもよいし、エンジン回転速度Neやエンジン10の目標トルク等に応じて設定される可変値であってもよい。ここで算出された最終的な負圧目標値PVAC_LIMは、スロットル制御部5に伝達される。
[3−3.ウェイストゲート制御部]
ウェイストゲート制御部4は、エンジン10の運転状態に基づいてウェイストゲート開度Dを制御するものである。負圧判定部2において、マスターバック負圧PVACが不足した状態であると判定されている場合、ウェイストゲート制御部4は、アクセル開度APSや目標トルクの大小に関わらず、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に制御する。つまり、ウェイストゲート制御部4は、ウェイストゲート開度Dを100[%]に制御し、タービン16Aの回転効率が最も低い状態(排気が迂回路32を通って抜けやすい状態)とする。
一方、マスターバック負圧PVACが不足した状態でない場合、ウェイストゲート開度Dは、例えばエンジン回転速度Neやエンジン負荷,空気量,充填効率Ec(目標充填効率,実充填効率など),過給圧,アクセル開度APS,冷却水温WT等に基づいて設定される。本実施形態では、エンジン回転速度Neと充填効率Ecとを引数とした三次元マップに基づいてウェイストゲート開度Dが算出される。
充填効率Ecは、単位燃焼サイクル(単位時間)あたりにシリンダー内に充填される空気の体積を標準状態での気体体積に正規化したのちシリンダー容積で除算したものである。つまり、充填効率Ecは、標準大気条件でシリンダー内を占める空気の質量に対する、シリンダー内に充填される空気の質量の比率を表し、単位燃焼サイクル(単位時間)あたりにシリンダー内に導入された空気量に対応するパラメーターである。したがって、充填効率Ecの代わりに体積効率Evや,吸気流量QIN,目標トルク,目標エンジン出力等といった吸入空気量に相関するパラメーターを用いることも可能である。
上記の三次元マップ上には、ウェイストゲートバルブ17にノーマルオープン特性を与える「開モード領域」と、これとは反対のノーマルクローズ特性を与える「閉モード領域」とが設定される。開モード領域は、主に低負荷,低回転の運転状態に対応する領域であり、閉モード領域は、開モード領域を除く(中負荷から高負荷,中回転から高回転の)運転状態に対応する領域である。
ここでいうノーマルオープン特性とは、「オープン(開)の状態を標準状態とする特性」であって、所定の例外条件が成立しない限り、ウェイストゲート開度Dを所定開度以上(例えば全開や全開に近い開度)とする特性である。開モード領域では、ウェイストゲート開度Dが基本的には全開に制御される。ただし、開モード領域内においてエンジン10の負荷又はエンジン回転速度Neが増大するに連れて、ウェイストゲート開度Dが減少するような特性を与えるものとする。
ここでいうノーマルクローズ特性とは、「クローズド(閉)の状態を標準状態とする特性」であって、所定の例外条件(上記の例外条件とは異なる条件)が成立しない限り、ウェイストゲート開度Dを所定開度未満(上記の所定開度よりも小さい開度であって、例えば全閉や全閉に近い開度)とする特性である。閉モード領域では、ウェイストゲート開度Dが基本的にはほぼ全閉に近い状態に制御される。ただし、エンジン10が高負荷,高回転である場合には、過給圧の過度な上昇を抑制すべく、負荷又はエンジン回転速度Neが上昇するに連れて、ウェイストゲート開度Dが増大するような特性が与えるものとする。
ウェイストゲート制御部4は、ウェイストゲート開度Dに対応する制御信号をウェイストゲートアクチュエーター18に出力する。制御信号を受けたウェイストゲートアクチュエーター18は、制御信号に応じたストロークで弁体駆動部材を駆動する。これにより、実際のウェイストゲートバルブ17の開度がウェイストゲート開度Dとなるように制御される。
[3−4.スロットル制御部]
スロットル制御部5(制御手段)は、エンジン10の運転状態に基づいてスロットル開度THを制御するものである。負圧判定部2において、マスターバック負圧PVACが不足した状態ではないと判定されている場合、スロットル制御部5は、実際のスロットル開度THがエンジン10の目標トルクに応じた開度となるように、スロットル開度THを制御する。一方、マスターバック負圧PVACが不足した状態であると判定されている場合、インマニ圧PIMが負圧目標値算出部3で算出された負圧目標値PVAC_LIMとなるように、スロットル開度THを制御する。つまり、マスターバック負圧PVACが不足した状態では、インマニ圧PIMの上限値が負圧目標値PVAC_LIMに制限される。
図3に示すように、スロットル制御部5には、目標流量算出部5a,圧力比算出部5b,流速算出部5c,質量流速算出部5d,スロットル面積算出部5eが設けられる。
目標流量算出部5aは、エンジン10の目標トルクに基づき、スロットルバルブ26を単位時間当たりに通過する吸気量の目標値として、目標流量Qを算出するものである。目標トルクは、エンジン回転速度Ne及びアクセル開度APSから設定されるドライバー要求トルクや、外部制御システムからエンジン10に要求される外部要求トルク等に基づいて算出される。また、目標流量Qは、目標トルク及びエンジン回転速度Neに基づいて算出される。このとき、吸気温度TIMや冷却水温WT,インマニ圧PIM,大気圧PBP,吸気密度等に基づいて目標流量Qの値を補正してもよい。
圧力比算出部5bは、スロットルバルブ26の上流側及び下流側の圧力比を算出するものである。ここでは、実圧力比と制限時圧力比との二種類の圧力比が算出される。実圧力比は、インマニ圧センサー53で実際に検出されたインマニ圧PIMとスロットルバルブ26の上流圧PTHU(又は大気圧PBP)との比率である。圧力比算出部5bは、例えばインマニ圧PIMを大気圧PBPで除した値を実圧力比として算出する。一方、制限時圧力比とは、インマニ圧PIMが負圧目標値PVAC_LIMに制限された状態での圧力比の推定値である。圧力比算出部5bは、例えば負圧目標値PVAC_LIMを大気圧PBPで除した値を制限時圧力比として算出する。
流速算出部5cは、圧力比算出部5bで算出された二つの圧力比に基づき、それぞれの場合に対応する吸気のスロットル通過流速を算出するものである。流速算出部5cは、圧力比とスロットル通過流速の変化量との関係が規定されたマップ,数式等を用いて、実圧力比に対応する実流速Uと、制限時圧力比に対応する制限時流速ULIMとを算出する。また、実流速U及び制限時流速ULIMのうち、値が大きい一方を制御用流速UCTLとして算出する。制御用流速UCTLは、圧力比の値が小さいほど、大きな値となる。
質量流速算出部5dは、スロットルバルブ26を通過する吸気についての単位面積当たりの質量流速MMACHを算出するものである。質量流速MMACHは、吸気温度TIMや冷却水温WT,外気温,インマニ圧PIM,大気圧PBP,吸気密度等に基づいて算出される。
スロットル面積算出部5eは、目標流量Q,制御用流速UCTL,質量流速MMACHに基づいて、スロットル開度THに対応する目標スロットル開口面積Sを算出するものである。目標スロットル開口面積Sは、制御用流速UCTLに質量流速MMACHを乗じた値で目標流量QTH_TGTを除算して求められる。また、スロットル制御部5は、スロットルバルブ26の開口面積を上記の目標スロットル開口面積Sに一致させる制御信号を出力し、スロットル開度THを制御する。
[4.フローチャート]
図5は、マスターバック負圧PVACの不足判定と負圧目標値PVAC_LIMの設定に係るフローチャートであり、図6は、スロットル開度THの制御に係るフローチャートである。これらのフローは、エンジン制御装置1において所定の演算周期で繰り返し実施される。
[4−1.マスターバック負圧の不足判定]
ステップA10では、各種センサー51〜63で検出された各種情報がエンジン制御装置1に入力される。ここでは、アクセル開度APS,吸気流量QIN,インマニ圧PIM,吸気温度TIM,エンジン回転速度Ne,冷却水温WT,ウェイストゲートアクチュエーター18のストローク(ウェイストゲート開度D),排気空燃比,酸素濃度,マスターバック負圧PVAC,ブレーキ液圧BRK,大気圧PBP,路面勾配INC等に関する情報が入力される。また、ステップA20では、エンジン10が始動した時点から数えて、点火回数が所定回数以上であるか否かが判定される。この判定は、始動直後の回転安定性を確保するためのものである。
ステップA30では、閾値設定部2aにおいて、マスターバック負圧PVACの判定に係る閾値PVAC_THが設定される。続くステップA40では、負圧不足判定部2bにおいて、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH以上であるか否かが判定される。ここで、PVAC≧PVAC_THが成立する場合には、マスターバック負圧PVACが不足した状態であると判断されてステップA50に進む。一方、PVAC<PVAC_THである場合には、マスターバック負圧PVACが不足した状態ではないため、ステップA100に進む。このステップA100では、負圧目標値PVAC_LIMの値がインマニ圧PIMと同一値に設定される。これにより、ウェイストゲート開度D及びスロットル開度THが制限されなくなる。
ステップA50では、負圧目標値算出部3の集計部3dにおいて、標準制限値PVAC_LIM_BASEが設定される。標準制限値PVAC_LIM_BASEは、例えばエンジン回転速度Neや目標トルクに応じて設定される。続くステップA60では、アクセル補正部3aにおいて、アクセル開度変化率ΔAPSに基づいて補正量ΔPVAC_APSが算出される。また、ステップA70では、ブレーキ補正部3bにおいて、ブレーキペダル44の踏み込み頻度及び踏み込み操作量に基づいて補正量ΔPVAC_BRKが算出される。同様に、ステップA80では、路面勾配補正部3cにおいて、路面勾配INCに基づいて補正量ΔPVAC_INCが算出される。これらの補正量ΔPVAC_APS,ΔPVAC_BRK,ΔPVAC_INCの算出には、例えば図4(a)〜(c)に示すようなマップが用いられる。
ステップA90では、集計部3dにおいて、標準制限値PVAC_LIM_BASEから補正量ΔPVAC_APS,ΔPVAC_BRK,ΔPVAC_INCをそれぞれ減算した三つの値が算出される。また、これらの三つの値と標準制限値PVAC_LIM_BASEとの間で、最も値が小さいものが、最終的な負圧目標値PVAC_LIMとして選択される。ここで得られる負圧目標値PVAC_LIMの値は、アクセル開度変化率ΔAPSが小さいほど、低圧に設定される。また、ブレーキペダル44の踏み込み頻度が高いほど、踏み込み量が大きいほど、あるいは路面勾配が小さい(下り勾配がきつい)ほど、低圧に設定される。負圧目標値PVAC_LIMの値が低圧であるほど、ウェイストゲート開度D及びスロットル開度THへの制限が強められることになる。
[4−2.スロットル開度の制御]
ステップB10では、エンジン制御装置1において、エンジン10の目標トルクが算出される。目標トルクの具体的な算出手法は任意であり、例えばエンジン回転速度Ne,アクセル開度APS,外部負荷装置の作動状態等に基づいて算出される。
ステップB20では、目標流量算出部5aにおいて、目標トルクに基づいて目標流量Qが算出される。ここでは、例えば目標トルクに基づいて、シリンダーに導入すべき目標筒内空気量が算出され、目標筒内空気量に所定の吸気進み演算処理を施したものが目標流量Qとして算出される。なお、ここでいう吸気進み演算とは、吸入空気がスロットルバルブ26を通過してからシリンダーへと至るまでの時間的な遅れを模擬した吸気遅れ演算の逆演算である。
ステップB30では、圧力比算出部5bにおいて、インマニ圧PIMに基づいて実圧力比が算出されるとともに、負圧目標値PVAC_LIMに基づいて制限時圧力比が算出される。例えば、大気圧センサー62で検出された大気圧PBPを基準とした場合、実圧力比は「PIM/PBP」と表現され、制限時圧力比は「PVAC_LIM/PBP」と表現される。
ステップB40では、流速算出部5cにおいて、実圧力比,制限時圧力比のそれぞれに対応する吸気のスロットル通過流速として、実流速U,制限時流速ULIMが算出される。また、これらの流速U,ULIMのうちの大きい一方が制御用流速UCTLとして選択される。したがって、マスターバック負圧PVACが不足した状態であるとき、制限時流速ULIM(ULIM>U)が制御用流速UCTLとなる。一方、マスターバック負圧PVACが不足した状態でなければ、実流速Uが制御用流速UCTLとなる。また、ステップB50では、質量流速算出部5dにおいて、吸気温度TIM等に基づいて単位面積当たりの質量流速MMACHが算出される。
続くステップB60では、スロットル面積算出部5eにおいて、目標流量Q,制御用流速UCTL,質量流速MMACHに基づいて目標スロットル開口面積Sが算出される。マスターバック負圧PVACが不足した状態であるとき、制限時流速ULIMが実流速Uよりも大きい値となるため、実流速Uを用いた場合と比較して、目標スロットル開度Sの値が小さくなる。したがって、マスターバック負圧PVACが不足した状態では、マスターバック負圧PVACが十分な状態と比較してスロットル開度THがやや絞られた状態となる。
また、スロットル開度THが絞られることによって、サージタンク27内に導入される吸入空気量が減少することから、インマニ圧PIMが負圧目標値PVAC_LIMに近づくように低下する。これにより、サージタンク27からマスターバック43へと負圧が導入され、マスターバック負圧PVACが回復(圧力が低下)する。このとき、インマニ圧PIMが低圧になるほど、マスターバック負圧PVACの回復速度が増加する。
[5.作用]
図7(a)〜(f)を用いて、ウェイストゲート開度D及びスロットル開度THを制限したときの作用について説明する。図7(a)に示すように、車両走行中の時刻t0にアクセルペダル47が踏み戻されると、アクセル開度APSが減少するとともにエンジン10の目標トルクが減少し、図7(d)に示すスロットル開度THも減少する。また、図7(b)に示すように、時刻t1にブレーキペダル44が踏み込まれると、スロットル開度THが全閉状態に制御される。
このとき、ブレーキペダル44の踏み込みにより、マスターバック負圧PVACは徐々に弱まる。例えば、図7(e)中に破線で示すように、マスターバック負圧PVACは時刻t1から徐々に上昇する。その後、時刻t2にマスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH以上になると、マスターバック負圧PVACが不足した状態であると判断される。これを受けてウェイストゲート開度Dは、図7(d)に示すように、時刻t2から全開状態に制御される。このとき、アクセル開度APSが全閉状態であれば、スロットル開度THも全閉状態となり、図7(e)中に実線で示すように、インマニ圧PIMが徐々に低下する。マスターバック負圧PVACが不足した状態であるとき、負圧目標値算出部3では、インマニ圧PIMの目標上限値としての負圧目標値PVAC_LIMが算出される。
時刻t3にインマニ圧PIMがマスターバック負圧PVACよりも低くなると、マスターバック43内の圧力がサージタンク27側に抜け始める。これにより、図7(e)中に破線で示すように、マスターバック負圧PVACが徐々に減少する。
ここで、時刻t4にアクセルペダル47が踏み込まれた場合、従来の制御ではアクセル開度APSに応じて目標トルクが設定され、これに応じてスロットル開度THが制御される。そのため、図7(f)中に実線で示すように、インマニ圧PIMが時刻t4以降に上昇し、マスターバック負圧PVACよりも高圧になるまでの時間(時刻t3〜t5)が短くなってしまう。つまり、マスターバック負圧PVACの回復時間を十分に確保できず、図7(f)中に破線で示すように、マスターバック負圧PVACを閾値PVAC_THよりも低圧にすることができない場合がある。
これに対し、上記の制御では、アクセルペダル47が踏み込まれたとしても、ウェイストゲート開度Dが全開状態に制御されるとともに、インマニ圧PIMが負圧目標値PVAC_LIMを超えないように、スロットル開度THが制御される。これにより、図7(e)中に実線で示すように、インマニ圧PIMとマスターバック負圧PVACとの差圧が確保され、マスターバック負圧PVACが回復する。
時刻t6にマスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH未満になると、マスターバック負圧PVACが不足した状態ではないと判定され、ウェイストゲート開度D及びスロットル開度THの制限が解除される。このとき、例えばエンジン回転速度Neと充填効率Ecとに応じてウェイストゲート開度Dが制御される。図7(d)に示す例では、ウェイストゲート開度Dが全閉状態に制御されている。また、スロットル開度THは、目標トルクに基づいて制御される。
図8(a)〜(c)は、マスターバック43の使用頻度が高いと判断されて、負圧目標値PVAC_LIMがさらに低圧側に設定されたときの制御作用を示すものである。この場合、図8(b)に示すように、負圧目標値PVAC_LIMが小さく(グラフの上方側に)設定される。そのため、図8(a)に示すように、アクセルペダル47の踏み込みに対してスロットル開度THがより小さく制御され、インマニ圧PIMが図7(e)に示す場合よりも低圧となる。ここで、図8(b)中の破線は、図7(e)中のインマニ圧PIMのグラフに対応する。
一方、マスターバック負圧PVACとインマニ圧PIMとの差圧が大きいほど、マスターバック負圧PVACの回復速度が上昇する。したがって、図8(c)に示すように、マスターバック負圧PVACが迅速に回復する。ここで、図8(c)中の破線は、図7(e)中のマスターバック負圧PVACのグラフに対応する。マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_TH未満になる時刻t7は、図7(e)に示す時刻t6よりも手前に位置する。
このように、マスターバック43の使用頻度が高い場合には、マスターバック負圧PVACの回復時間が短縮されるようにスロットル開度THが制御される。このときのスロットル開度THは、図8(a)に示すように、制限を受ける期間が短縮される代わりに、スロットル開度THがより絞り側に制限されることになる。
[6.効果]
(1)上記のエンジン制御装置1では、マスターバック43の使用頻度に対応する補正量ΔPVAC_APS,ΔPVAC_BRK,ΔPVAC_INCに基づいて負圧目標値PVAC_LIMが算出される。また、マスターバック負圧PVACの不足時には、インマニ圧PIMが負圧目標値PVAC_LIM以下になるようにスロットル開度THが制御される。このような制御により、インマニ圧PIMとマスターバック負圧PVACとの差圧を確保することができるとともに、その差圧の大きさをマスターバック43の使用頻度に応じた大きさにすることができる。したがって、マスターバック負圧PVACの回復速度や回復時間を適正化することができ、マスターバック負圧PVACの制御性を向上させることができる。
(2)マスターバック43の使用頻度の推定に関して、上記のエンジン制御装置1では、例えば図4(a)に示すように、アクセル開度変化率ΔAPSに応じた補正量ΔPVAC_APSが算出される。つまり、上記のエンジン制御装置1では、運転者の加速意思が大きければその後にブレーキ操作がなされる可能性は低く、加速意思が小さければその後にブレーキ操作がなされる可能性が高いものと判断される。
このような判断により、ブレーキ操作がなされる可能性についての複雑な推定演算をすることなく、シンプルな演算構成で比較的高精度にマスターバック43の使用頻度を推定することができる。また、このような高精度の推定結果に基づいて負圧目標値PVAC_LIMを算出し、スロットル開度THを制御することで、マスターバック負圧PVACの制御性を向上させることができる。
(3)上記のエンジン制御装置1では、例えば図4(b)に示すように、ブレーキペダル44の踏み込み頻度や踏み込み量に応じたΔPVAC_BRKが算出される。つまり、上記のエンジン制御装置1では、運転者の減速頻度,減速意思が大きければその後にブレーキ操作がなされる可能性は高く、減速頻度,減速意思が小さければその後にブレーキ操作がなされる可能性は低いものと判断される。
このような判断により、ブレーキ操作がなされる可能性についての複雑な推定演算をすることなく、シンプルな演算構成で比較的高精度にマスターバック43の使用頻度を推定することができる。また、このような高精度の推定結果に基づいて負圧目標値PVAC_LIMを算出し、スロットル開度THを制御することで、マスターバック負圧PVACの制御性を向上させることができる。
(4)上記のエンジン制御装置1では、例えば図4(c)に示すように、路面勾配INCに応じた補正量ΔPVAC_INCが算出される。つまり、上記のエンジン制御装置1では、路面勾配INCが大きいほど(上り勾配がきついほど)その後にブレーキ操作がなされる可能性は低く、路面勾配INCが小さいほど(下り勾配がきついほど)その後にブレーキ操作がなされる可能性が高いものと判断される。このように、車両の走行環境を参照することにより、マスターバック43の使用頻度を客観的に推定することができ、推定精度を向上させることができる。また、このような高精度の推定結果に基づいて負圧目標値PVAC_LIMを算出し、スロットル開度THを制御することで、マスターバック負圧PVACの制御性を向上させることができる。
(5)上記のエンジン制御装置1では、マスターバック負圧PVACが不足しているか否かを判断するための閾値PVAC_THが、マスターバック43の使用状態に基づいて設定される。例えば、大気圧PBPが低いほど、閾値PVAC_THが小さく設定され、大気圧PBPが高いほど閾値PVAC_THが大きく設定される。また、閾値PVAC_THの値は、アクセル開度変化率ΔAPSやブレーキ踏み込み頻度,ブレーキ踏み込み量,路面勾配INC等に応じて変更されうる。したがって、マスターバック43による制動アシスト力の大きさと、マスターバック負圧PVACが閾値PVAC_THを上回るまでに実行可能な制動アシスト回数とのバランスを変更,調整することができ、何れかを優先させることもできるようになる。したがって、車両のブレーキ性能を容易に最適化することができる。
[7.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記の実施形態では、エンジン10の目標トルクに基づいてスロットル開度THを制御するものをベースとして、マスターバック負圧PVACが不足した状態での開度制限について詳述した。しかし、この開度制限が適用されうるベースとなる吸入空気量制御は、目標トルクに基づくものに限定されない。
すなわち、アクセル開度APSやエンジン回転速度Ne,車速等に応じてスロットル開度THを制御する吸入空気量制御に対しても、上記の開度制限を適用することが可能である。この場合、例えばスロットル開度TH,エンジン回転速度Ne及びインマニ圧PIMの三者の関係を予めマップ,数式等で用意しておき、エンジン回転速度Neと負圧目標値PVAC_LIMとから目標スロットル開度を算出してもよい。
また、上述の実施形態では、アクセル開度変化率ΔAPS,ブレーキ液圧BRK,路面勾配INC等に基づき、マスターバック43の使用頻度に対応する補正量ΔPVAC_APS,ΔPVAC_BRK,ΔPVAC_INCを算出するものを例示したが、マスターバック43の使用頻度そのものを推定する演算構成としてもよい。例えば、その時点から数秒間の間にマスターバック43が使用される可能性(ブレーキ操作がなされる可能性)の大きさを期待値として算出することが考えられる。
期待値は、アクセル開度変化率ΔAPSが大きいほど高く設定されるものとする。同様に、ブレーキ踏み込み頻度が低いほど、ブレーキ踏み込み量が小さいほど、路面勾配INCが小さい(負である)ほど、高く設定されるものとする。一方、負圧目標値PVAC_LIMは、期待値が高いほど低圧寄りに(負圧目標値PVAC_LIMが小さく)設定されるものとする。このような構成により、上述の実施形態と同様の効果を奏する制御を実現することができる。
1 エンジン制御装置
2 負圧判定部(判定手段)
3 負圧目標値算出部
3a アクセル補正部(推定手段)
3b ブレーキ補正部(推定手段)
3c 路面勾配補正部(推定手段)
3d 集計部(算出手段)
4 ウェイストゲート制御部
5 スロットル制御部(制御手段)
10 エンジン
17 ウェイストゲートバルブ
26 スロットルバルブ
43 マスターバック(ブレーキブースター)
44 ブレーキペダル
PIM インマニ圧
PVAC マスターバック負圧
PVAC_TH 閾値
PVAC_LIM 負圧目標値

Claims (5)

  1. エンジンの吸気系に接続され、スロットル下流の負圧による倍力作用を利用するブレーキブースターの使用頻度を推定する推定手段と、
    前記推定手段で推定された前記使用頻度に基づき、前記吸気系のスロットル下流の負圧目標値を算出する算出手段と、
    前記ブレーキブースターのマスターバック負圧が不足した際に、前記吸気系のスロットル下流の圧力が前記算出手段で算出された前記負圧目標値以下となるように、前記吸気系に介装されたスロットルバルブの開度を制御する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする、エンジンの制御装置。
  2. 前記推定手段が、アクセル開度変化率に基づき前記使用頻度を推定する
    ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記推定手段が、路面勾配に基づき前記使用頻度を推定する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記推定手段が、ブレーキペダルの踏み込み回数又は踏み込み量に基づき前記使用頻度を推定する
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
  5. 前記ブレーキブースターのマスターバック負圧が、前記ブレーキブースターの使用状態に基づいて設定される閾値以上であるときに、前記マスターバック負圧が不足したと判定する判定手段を備える
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
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