JP2015010548A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの制御装置に関し、過給圧の応答性及び収束性をともに向上させる。
【解決手段】ウェイストゲートバルブ17の開度調節により過給圧を制御するエンジンの制御装置1において、エンジン10への出力要求に応じた仮想過給圧PAを設定する設定手段2を設ける。また、仮想過給圧PAに対して過給圧の過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施されたフィルタ値PB,PCを算出するフィルタ値算出手段3を設ける。
また、仮想過給圧PAを生じさせるウェイストゲートバルブ17のウェイストゲート開度を定常時開度Rとして算出する定常時開度算出手段4aを設ける。さらに、仮想過給圧PAとフィルタ値PB,PCとの差に基づき、定常時開度Rに対するウェイストゲート開度の補正量Cを算出する開度補正量算出手段4bを設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、ウェイストゲートバルブの開度調節により過給圧を制御するエンジンの制御装置に関する。
従来、エンジンの排気圧を利用した過給システムを備えたエンジンにおいて、排気通路上に介装される過給用タービンを迂回するための迂回路にウェイストゲートバルブを設け、過給状態に応じてその開閉状態を制御する技術が知られている。すなわち、エンジンに要求される過給圧に応じてウェイストゲートバルブの開度(ウェイストゲート開度)を調節することで、シリンダーに流入する吸入空気の圧力を制御するものである。一般的なウェイストゲートバルブの制御では、ウェイストゲート開度を増加させる(開放方向に制御する)ことで過給用タービンの回転速度が低下し、過給圧が低下する。反対に、ウェイストゲート開度を減少させる(閉鎖方向に制御する)と、過給用タービンの回転速度が上昇して過給圧が上昇する。
このような過給システムでは、ウェイストゲートバルブを制御してから実際に過給圧が変化するまでの間に応答遅れが生じる。この応答遅れには、例えばウェイストゲート開度の変化が過給用タービンに流入する排気量の変化に反映されるまでのタイムラグや、コンプレッサーによって過給された吸入空気がインテークマニホールドに到達するまでタイムラグが含まれる。そのため、エンジンに要求される目標過給圧が急増したときに、ウェイストゲートバルブが目標過給圧に対応するウェイストゲート開度となるように遅滞なく制御されたとしても、実過給圧を急増させることは難しい。
上記の課題に対し、目標過給圧と実過給圧との差に基づいてウェイストゲート開度を制御することが提案されている。すなわち、目標値に対する実制御量のずれを次回の制御周期にフィードバックして補正するものである。このような制御手法を採用することで、過給圧のずれが大きいほど補正量が増大し、過給応答性が向上する(例えば、特許文献1参照)。
特開2006-274831号公報
しかしながら、目標過給圧と実過給圧との差に基づく制御手法では、目標過給圧と実過給圧との間に定常偏差(オフセット)が生じることがあり、過給圧の収束性を向上させにくいという課題がある。例えば、目標過給圧に対して実過給圧が僅かに大きい状態で安定するような定常偏差がある場合には、実過給圧が高応答となり過ぎて、かえって制御性が損なわれる。
また、上記の定常偏差を解消するための補正項を追加することで、過給圧を目標過給圧に収束させる手法を採用することも考えられる。例えば、目標値に対する実制御量のずれの積算値を補正量に反映させることが考えられる。しかしこの場合、収束性が向上する代わりに応答性が低下しかねない。一般に、過給圧のフィードバック制御では、応答性を改善しつつ収束性を高めるような補正量を与えることが困難であり、ドライバビリティを向上させにくい。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、ウェイストゲートバルブの開度調節により過給圧を制御するエンジンの制御装置において、過給圧の応答性及び収束性をともに向上させることである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示するエンジンの制御装置は、ウェイストゲートバルブの開度調節により過給圧を制御するエンジンの制御装置である。本制御装置は、前記エンジンへの出力要求に応じた仮想過給圧を設定する設定手段と、前記設定手段で設定された前記仮想過給圧に対して過給圧の過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施されたフィルタ値を算出するフィルタ値算出手段とを備える。
また、前記設定手段で設定された前記仮想過給圧を生じさせる前記ウェイストゲートバルブのウェイストゲート開度を定常時開度として算出する定常時開度算出手段を備える。さらに、前記設定手段で設定された前記仮想過給圧と前記フィルタ値算出手段で算出された前記フィルタ値との差に基づき、前記定常時開度に対する前記ウェイストゲート開度の補正量を算出する開度補正量算出手段を備える。
(2)前記フィルタ値算出手段が、前記フィルタ値として、前記ウェイストゲートバルブの全閉状態における過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施された第一フィルタ値を算出する第一フィルタ値算出手段を有することが好ましい。この場合、前記開度補正量算出手段が、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差に基づき、前記補正量を算出することが好ましい。
ここでいう「全閉状態における過渡応答遅れ」とは、その時点のエンジンの運転状態で最も応答速度が速い過渡応答遅れである。これにより、前記第一フィルタ値の増加勾配は、その時点のエンジンの運転状態で最大となる。
(3)前記開度補正量算出手段は、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差が所定値以上であるときに、前記ウェイストゲート開度を閉鎖方向に補正することが好ましい。つまり、過給圧が変動する過程(過渡状態)における前半期(過渡前期)には、前記ウェイストゲート開度を前記定常時開度よりも閉鎖方向に補正することが好ましい。なお、ここでいう過渡前期は「前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差が所定偏差以上である状態」と定義してもよい。
(4)前記フィルタ値算出手段が、前記フィルタ値として、前記ウェイストゲートバルブの全開状態における過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施された第二フィルタ値を算出する第二フィルタ値算出手段を有することが好ましい。この場合、前記開度補正量算出手段が、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差、及び、前記仮想過給圧と前記第二フィルタ値との差に基づき、前記補正量を算出することが好ましい。
ここでいう「全開状態における過渡応答遅れ」とは、その時点のエンジンの運転状態で最も応答速度が遅い過渡応答遅れである。これにより、前記第二フィルタ値の増加勾配は、その時点のエンジンの運転状態で最小となる。
(5)前記開度補正量算出手段は、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差が所定値未満であり、かつ、前記仮想過給圧と前記第二フィルタ値との差が第二所定値以上であるときに、前記ウェイストゲート開度を開放方向に補正することが好ましい。つまり、過給圧が変動する過程(過渡状態)における後半期(過渡後期)には、前記ウェイストゲート開度を前記定常時開度よりも開放方向に補正することが好ましい。なお、ここでいう過渡後期は「前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差が所定偏差未満である状態」と定義してもよく、あるいは「前記仮想過給圧と前記第二フィルタ値との差が第二所定偏差未満である状態」と定義してもよい。
(6)前記フィルタ値算出手段が、前記エンジンの吸入空気量及びエンジン回転速度に基づいて設定される時定数(あるいはフィルタ係数)を用いて、前記フィルタ処理を実施することが好ましい。例えば、前記第一フィルタ値算出手段が、前記エンジンの運転状態に応じた前記第一フィルタ値を算出することが好ましい。あるいは、前記第二フィルタ値算出手段が、前記エンジンの運転状態に応じた前記第二フィルタ値を算出することが好ましい。
(7)前記開度補正量算出手段が、前記仮想過給圧及び前記フィルタ値の差に応じて、前記ウェイストゲート開度を前記定常時開度よりも開放方向に補正する正の補正量と、前記ウェイストゲート開度を前記定常時開度よりも閉鎖方向に補正する負の補正量とを与えるマップを有することが好ましい。
開示のエンジンの制御装置によれば、仮想過給圧とフィルタ値との差に基づいてウェイストゲート開度の開度補正量を算出することで、開度補正量の算出に実過給圧が使用されないため、仮想過給圧と実過給圧との間に生じうる定常偏差の影響を排除することができる。したがって、過給圧の応答性及び収束性を高めることができ、ドライバビリティを向上させることができる。
一実施形態に係るエンジンの構造を例示する図である。 エンジン制御装置のハードウェア構成を例示する図である。 エンジン制御装置のブロック構成を例示する図である。 過給圧の過渡応答遅れを示すグラフであり、(a)は第一フィルタ値、(b)は第二フィルタ値に対応するものである。 ウェイストゲート開度の変化を示すグラフであり、(a)は全閉状態から定常時開度への変化を示し、(b)は全開状態から定常時開度への変化を示す。 補正量の設定に係る三次元マップの一部を例示するグラフであり、(a)は第一圧力差との関係を示し、(b)は第二圧力差との関係を示す。 エンジン制御装置での制御手順を例示するフローチャートである。 エンジン制御装置による制御作用を説明するためのタイムチャートであり、(a)はアクセル操作量、(b)は第一フィルタ値、(c)は第二フィルタ値、(d)はウェイストゲート開度、(e)は実過給圧を示す。
図面を参照して、実施形態としてのエンジンの制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジンの制御装置は、図1に示す車載ガソリンエンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。図1では、多気筒のエンジン10に設けられた複数の気筒(シリンダー)のうちの一つを示す。シリンダー内にはピストンが摺動自在に内装され、ピストンの往復運動がコンロッド(コネクティングロッド)を介してクランクシャフトの回転運動に変換される。
各シリンダーの頂面には吸気ポート,排気ポートが設けられ、それぞれのポート開口には吸気弁,排気弁が設けられる。また、吸気ポートと排気ポートとの間には、点火プラグ15がその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。点火プラグ15での点火のタイミング(点火時期)は、エンジン制御装置1で制御される。
エンジン10には、各シリンダーへの燃料供給用のインジェクターとして、筒内噴射弁11及びポート噴射弁12が設けられる。筒内噴射弁11は、シリンダー内に直接的に燃料を噴射する直噴インジェクターであり、ポート噴射弁12は、吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクターである。これらの噴射弁11,12から噴射される燃料噴射量及びその噴射タイミングは、エンジン制御装置1で制御される。例えば、エンジン制御装置1から各噴射弁11,12に制御パルス信号が伝達され、その制御パルス信号の大きさに対応する期間だけ、各噴射弁11,12の噴孔が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に応じた量となり、噴射タイミングは制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
[1−2.吸排気系]
吸気弁,排気弁の上部は、バルブリフト量,バルブタイミングを変化させるための可変動弁機構に接続される。可変動弁機構には、例えばロッカアームの揺動量と揺動のタイミングとを変更する機構として、可変バルブリフト機構及び可変バルブタイミング機構が内蔵される。吸気弁,排気弁の動作は、これらの可変動弁機構を介して、後述するエンジン制御装置1で制御される。
エンジン10の吸気系20及び排気系30には、排気圧で過給を行うターボチャージャー16(過給機)が設けられる。ターボチャージャー16は、吸気ポートの上流側に接続される吸気通路21と、排気ポートの下流側に接続される排気通路31との両方に跨がって介装される。ターボチャージャー16のタービン16A(過給用タービン)は、排気通路31内の排気圧で回転し、その回転力を吸気通路21側のコンプレッサー16Bに伝達する。これを受けてコンプレッサー16Bは、吸気通路21内の空気を下流側へと圧縮しながら送給し、各シリンダーへの過給を行う。ターボチャージャー16の過給動作は、エンジン制御装置1で制御される。
吸気通路21上におけるコンプレッサー16Bよりも下流側にはインタークーラー25が設けられ、圧縮された吸入空気が冷却される。また、コンプレッサー16Bよりも上流側にはエアフィルター22が設けられ、ここで外部から取り込まれる空気が濾過される。さらに、コンプレッサー16Bの上流側,下流側の吸気通路21を接続するように、バイパス通路23が設けられるとともに、バイパス通路23上にバイパスバルブ24が介装される。バイパス通路23を流れる空気量は、バイパスバルブ24の開度に応じて調節される。バイパスバルブ24は、例えば車両の急減速時に開放方向に制御され、コンプレッサー16Bから送給される過給圧を再び上流側へと逃がすように機能する。なお、バイパスバルブ24の開度はエンジン制御装置1で制御される。
インタークーラー25の下流側にはスロットルボディが接続され、さらにその下流側にはインマニ(インテークマニホールド)が接続される。スロットルボディの内部には、電子制御式のスロットルバルブ26が設けられる。インマニ側へと流れる空気量は、スロットルバルブ26の開度(スロットル開度TH)に応じて調節される。スロットル開度THは、エンジン制御装置1によって制御される。
インマニ(インテークマニホールド)には、各シリンダーへと流れる空気を一時的に蓄えるためのサージタンク27が設けられる。サージタンク27よりも下流側のインマニは、各シリンダーの吸気ポートに向かって分岐するように形成され、サージタンク27はその分岐点に位置する。サージタンク27は、各々のシリンダーで発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
排気通路31上におけるタービン16Aよりも下流側には、触媒装置33が介装される。この触媒装置33は、例えば排気中に含まれるPM(Particulate Matter,粒子状物質)や窒素酸化物(NOx),一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)等の成分を浄化,分解,除去する機能を持つ。また、タービン16Aよりも上流側には、各シリンダーの排気ポートに向かって分岐形成されたエキマニ(エキゾーストマニホールド)が接続される。
タービン16Aの上流側,下流側の排気通路31を接続するように、迂回路32が設けられるとともに、迂回路32上に電子制御式のウェイストゲートバルブ17が介装される。ウェイストゲートバルブ17は、タービン16A側に流入する排気流量を制御して過給圧を変化させるための過給圧調節弁である。このウェイストゲートバルブ17にはウェイストゲートアクチュエーター18が併設され、弁体の位置(すなわち開度)が電気的に制御される。ウェイストゲートバルブ17の開度(ウェイストゲート開度D)は、エンジン制御装置1で制御される。
[1−3.センサー系]
吸気通路21内には、吸気流量QINを検出するエアフローセンサー52が設けられる。吸気流量QINは、エアフィルター22を通過した空気の流量に対応するパラメーターである。また、サージタンク27内には、インマニ圧センサー53及び吸気温センサー54が設けられる。インマニ圧センサー53はサージタンク27内の圧力をインマニ圧PIMとして検出し、吸気温センサー54はサージタンク27内の吸気温度TIMを検出する。
クランクシャフト近傍には、エンジン回転速度Ne(単位時間あたりの回転数)を検出するエンジン回転速度センサー55が設けられる。また、エンジン10の冷却水循環路上における任意の位置には、エンジン冷却水の温度(冷却水温WT)を検出する冷却水温センサー56が設けられる。
ウェイストゲートアクチュエーター18には、ウェイストゲート開度Dに対応する弁体駆動部材のストロークを検出するホールセンサー57が設けられる。ホールセンサー57で検出されるストロークは、弁体駆動部材の基準位置からの移動量に相当する。また、エンジン制御装置1の内部又は車両の任意の位置には、大気圧PBPを検出する大気圧センサー58が設けられる。大気圧PBPの情報は、例えばスロットルバルブ26の上流圧PTHUを推定する際に用いられる。
車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APS)を検出するアクセル開度センサー59が設けられる。アクセル開度APSは、運転者の加速要求や発進意思に対応するパラメーターであり、言い換えるとエンジン10の負荷(エンジン10に対する出力要求)に相関するパラメーターである。上記の各種センサー52〜59で検出された各種情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
[1−4.制御系]
上記のエンジン10を搭載する車両には、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit,制御装置)が設けられる。このエンジン制御装置1は、例えばCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)等のマイクロプロセッサやROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を集積した電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が、互いに通信可能に接続される。エンジン制御装置1以外の電子制御装置は、外部制御システムと呼ばれ、外部制御システムによって制御される装置は外部負荷装置と呼ばれる。
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン10の各シリンダーに対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダーの点火時期,過給圧等を制御するものである。エンジン制御装置1の入力ポートには、前述の各種センサー52〜59が接続される。具体的な入力情報としては、アクセル開度APS,吸気流量QIN,インマニ圧PIM,吸気温度TIM,エンジン回転速度Ne,冷却水温WT,ウェイストゲートアクチュエーター18のストローク(ウェイストゲート開度D),大気圧PBP等の情報が挙げられる。
エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から噴射される燃料噴射量とその噴射時期,点火プラグ15による点火時期,吸気弁及び排気弁のバルブリフト量及びバルブタイミング,ターボチャージャー16の作動状態,スロットル開度TH,バイパスバルブ24の開度,ウェイストゲート開度D 等が挙げられる。本実施形態では、アクセルペダルの踏み込み時におけるウェイストゲート開度Dの制御について詳述する。
[2.制御の概要]
ウェイストゲート開度Dは、基本的には、エンジン10に要求される出力に応じた開度となるように制御される。例えば、運転者の加速要求や外部負荷装置からの要求がエンジン制御装置1に入力され、これらの要求に応じてエンジン10の目標トルクが設定される。そして、目標トルクに応じた目標吸入空気量が算出されるとともに、過給圧の目標値としての仮想過給圧が算出され、ウェイストゲート開度Dが仮想過給圧に対応する目標開度となるように制御される。
一方、実際の過給圧(実過給圧)は、ウェイストゲート開度Dの変化に対して遅れて変動するため、エンジン10の運転状態によっては良好な応答性が得られない場合がある。また、目標値に対する実制御量のずれを次回の制御周期にフィードバックして補正したとしても、仮想過給圧と実過給圧との間に定常偏差(オフセット)が生じて、過給圧の収束性を向上させにくい場合がある。そこで、本件では目標値に対する実制御量のずれを補正量にフィードバックせず、応答遅れの予測値に基づいて開度補正量Cを与えることで、過給圧の応答性と収束性とを改善する。
この開度補正量Cは、過渡応答遅れを模擬したフィルタ値と仮想過給圧との差に基づいて設定されるものとする。過渡応答遅れは、例えば一次応答遅れ要素や二次応答遅れ要素,無駄時間等のモデルを用いて模擬される。したがって、従来のフィードバック制御のように、仮想過給圧(目標開度)と実過給圧(実際のウェイストゲート開度D)との差の大きさは、開度補正量Cに反映されない。
開度補正量Cの設定手法としては、二通りの手法が考えられる。第一の手法は、その時点のエンジン10の運転状態において、実過給圧の過渡応答遅れを予測し、これを模擬して得られるフィルタ値と仮想過給圧との差に基づいて開度補正量Cを設定するものである。また、第二の手法は、その時点のエンジン10の運転状態において想定されうる最も速い過渡応答遅れと最も遅い過渡応答遅れとを予測し、これらを模擬して得られる二つのフィルタ値と仮想過給圧とのそれぞれの差に基づいて開度補正量Cを設定するものである。
第一の手法は、従来のフィードバック制御における実過給圧の代わりに、過渡応答遅れを模擬した予測値(フィルタ値)を用いる手法に相当する。ただし、従来のフィードバック制御とは異なり、予測値が実過給圧の変動を忠実に模倣した挙動を示すものでなくてもよい。例えば、予測値を実過給圧よりもやや遅く変化させてもよいし、実過給圧よりもやや速く変化させてもよい。つまり、予測値に反映される「過渡応答遅れの度合い」は、エンジン10の運転状態に応じたものであれば、任意に設定可能である。
第二の手法は、従来のフィードバック制御における実過給圧の代わりに、「過渡応答遅れの度合い」が異なる二種類の予測値を用いる手法に相当する。二つの予測値を用いることで、各々の予測値の変化速度に応じた適切な開度補正量Cを設定することが可能となり、制御性が向上する。例えば、実過給圧が仮想過給圧に収束するまでの過渡状態を過渡前期(前半期)と過渡後期(後半期)とに分類し、各々の時期に設定される開度補正量Cと二つの予測値とを対応させることが考えられる。この場合、最も速い過渡応答遅れを模擬して得られるフィルタ値は、おもに過渡前期での開度補正量Cの設定に使用する。また、最も遅い過渡応答遅れを模擬して得られるフィルタ値は、おもに過渡後期での開度補正量Cの設定に使用する。
フィルタ値の演算に係る「最も速い過渡応答遅れ」は、ウェイストゲート開度Dを全閉状態にした場合の過渡応答遅れとする。反対に「最も遅い過渡応答遅れ」は、ウェイストゲート開度Dを全開状態にした場合の過渡応答遅れとする。これは、ウェイストゲート開度Dが小さいほど、排気量の変化が過給圧の変化として現れるまでの時間が短く、ウェイストゲート開度Dが大きくなるほどその時間が長くなるからである。
[3.制御装置の構成]
エンジン制御装置1のハードウェア構成を図2に例示する。エンジン制御装置1には、中央処理装置71,主記憶装置72,補助記憶装置73,インタフェイス装置74が内蔵され、これらが内部バス75を介して通信可能に接続される。また、これらの各装置71〜74は、図示しない電力源(例えば車載バッテリーやボタン電池等)からの電力供給を受けて作動する。
中央処理装置71は、制御ユニット(制御回路)や演算ユニット(演算回路),キャッシュメモリ(レジスタ群)等を内蔵する処理装置(プロセッサ)である。また、主記憶装置72は、プログラムや作業中のデータが格納されるメモリ装置であり、例えば前述のRAM,ROMがこれに含まれる。一方、補助記憶装置73は、主記憶装置72よりも長期的に保持されるデータやプログラムが格納されるメモリ装置であり、例えばマイクロプロセッサ内のROMのほか、フラッシュメモリやハードディスクドライブ(HDD),ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶装置がこれに含まれる。また、インタフェイス装置74は、エンジン制御装置1と外部との間の入出力(Input/Output;I/O)を司るものである。例えば、車両に搭載された各種センサー52〜59や外部制御システムとエンジン制御装置1との情報の授受は、インタフェイス装置74を介してなされる。
図3は、エンジン制御装置1で実行される処理内容を説明するためのブロック図である。これらの処理内容は、例えばアプリケーションプログラムとして補助記憶装置73やリムーバブルメディアに記録される。また、プログラムの実行時には、プログラムの内容が主記憶装置72内のメモリ空間内に展開され、中央処理装置71によって実行される。処理内容を機能的に分類すると、このプログラムには、設定部2,フィルタ値算出部3,ウェイストゲート制御部4,スロットル制御部5が設けられる。なお、これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[3−1.設定部]
設定部2(設定手段)は、目標とするエンジン10の出力に応じた仮想過給圧PAを設定するものである。仮想過給圧PAとは、目標とするエンジン出力を実現するために必要な過給圧である。この設定部2には、要求トルク設定部2aと仮想過給圧設定部2bとが設けられる。
要求トルク設定部2aは、エンジン10に要求されるトルクを要求トルクPi(出力要求)として設定するものである。ここでは、運転者の加速要求に基づいて要求トルクPiが設定される。要求トルクPiは、エンジン回転速度Neとアクセル開度APSとを引数としたマップや数式,関数に基づいて設定される。例えば、エンジン回転速度Neが高く、あるいはアクセル開度APSが大きいほど、要求トルクPiが大きく設定される。なお、運転者の加速要求だけでなく、外部負荷装置からの要求を考慮して要求トルクPiを設定してもよい。
仮想過給圧設定部2bは、要求トルク設定部2aで設定された要求トルクPiに対応する仮想過給圧PAを設定するものである。仮想過給圧PAは、運転者の加速要求を実現するための定常時過給圧(その時点における過給圧の目標値,瞬時値)に相当するものであり、エンジン回転速度Neと要求トルクPiとを引数としたマップや数式,関数に基づいて設定される。例えば、エンジン回転速度Neが高く、あるいは要求トルクPiが大きいほど、仮想過給圧PAが大きく設定される。ここで設定された仮想過給圧PAの値は、フィルタ値算出部3に伝達される。
なお、実際に運転者の加速要求を実現するためには、エンジン10のシリンダーに導入される空気量を制御することが好ましく、過給圧だけでなくスロットル開度THも併せて制御することが好ましい。また、要求トルクPiを満足するための過給圧は、スロットル開度THに応じて変化する。このことは、仮想過給圧PAをエンジン出力に必ずしも一対一で対応させなくてもよいことを意味する。したがって、エンジン10の運転状態に応じて、エンジン出力とは別の要因(燃費,ポンピングロス,排気性能,可変動弁機構の状態等)を考慮して仮想過給圧PAを設定してもよい。例えば、要求トルクPiに依らずに仮想過給圧PAを設定することも可能である。
[3−2.フィルタ値算出部]
フィルタ値算出部3(フィルタ値算出手段)は、仮想過給圧PAに対する実過給圧の過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理を実施するものである。ここでは、前述の開度補正量Cに係る二種類の設定手法のうち、第二の手法で使用されるフィルタ値を算出するものについて説明する。このフィルタ値算出部3には、第一フィルタ値算出部3a(第一フィルタ値算出手段)と第二フィルタ値算出部3b(第二フィルタ値算出手段)とが設けられる。
第一フィルタ値算出部3aは、ウェイストゲートバルブ17の全閉状態における過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理を実施して、第一フィルタ値PBを算出するものである。このフィルタ処理は、その時点のエンジン10の運転状態で最も速い過渡応答遅れ(すなわち、その時点のエンジン10の運転状態で、ウェイストゲート開度Dを全閉状態にした場合の過渡応答遅れ)を模擬したものとされる。
ここでいう「最も速い過渡応答遅れ」とは、図4(a)に示すように、例えば時刻t0にアクセルペダルが踏み込まれて仮想過給圧PAが増加した際に、ウェイストゲートバルブ17を全閉状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で過給圧が増加するような過渡応答遅れを意味する。つまり、第一フィルタ値PBには、ウェイストゲートバルブ17を全閉状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で増加するような特性が与えられる。なお、図4(a)中では、時刻t0以降の仮想過給圧PAの値が一定である場合を示したが、実際の仮想過給圧PAは時間経過とともに変動しうる。
本実施形態では、図5(a)に示すように、時刻t0からウェイストゲートバルブ17の全閉状態を所定時間維持した後、過給圧が仮想過給圧PAを大きく超えないように、ウェイストゲート開度Dを仮想過給圧PAに対応する開度(すなわち、後述する定常時開度R)まで増加させた場合における過給圧の挙動が、第一フィルタ値PBの挙動として設定される。
なお、図5(a)中に一点鎖線で示すように、ウェイストゲートバルブ17を全閉状態に維持したままにすると、過給圧が仮想過給圧PAを超え、図4(a)中に一点鎖線で示す全閉時過給圧PHEI(PA<PHEI)に収束する。一方、過給圧が全閉時過給圧PHEIに向かって上昇するときの増加勾配は、その時点のエンジン10の運転状態(エンジン回転速度Neや吸入空気量等)に応じた勾配となる。したがって、図4(a)中に実線で示す第一フィルタ値PBの増加勾配は、その時点のエンジン10の運転状態から推定することができる。
第一フィルタ値算出部3aでは、仮想過給圧PAに対してこのようなフィルタ処理を施したものが、第一フィルタ値PBとして算出される。第一フィルタ値PBは、過給圧が仮想過給圧PAに収束するまでの過渡状態における、最も迅速な過渡変化を把握するためのパラメーターとなる。
第一フィルタ値算出部3aは、以下の式1,2に示すように、第一フィルタ値PBが仮想過給圧PAに対する二次遅れの伝達関数で表現されるものとして、第一フィルタ値PBを算出する。これらの数式中の添え字nは演算周期を表す。例えば、PB(n)は今回の演算周期で求められる第一フィルタ値PBであり、PB(n-1)は前回の演算周期で求められた第一フィルタ値PB(すなわち前回値)である。また、係数K1は、図4(a)中の実線の増加勾配の逆数に相当する第一フィルタ係数(時定数に相当するもの)であり、エンジン10の運転状態に応じて設定される。例えば、エンジン回転速度Neと充填効率Ec(すなわち吸入空気量)とを引数としたマップや数式,関数を用いて第一フィルタ係数K1が設定される。充填効率Ecは、エアフローセンサー52で検出された吸気流量QINに基づいて算出される。
Figure 2015010548
上記の充填効率Ecは、単位燃焼サイクル(単位時間)あたりにシリンダー内に充填される空気の体積を標準状態での気体体積に正規化したのちシリンダー容積で除算したものである。つまり、充填効率Ecは、標準大気条件でシリンダー内を占める空気の質量に対する、シリンダー内に充填される空気の質量の比率を表し、単位燃焼サイクル(単位時間)あたりにシリンダー内に導入された空気量に対応するパラメーターである。したがって、充填効率Ecの代わりに体積効率Evや,吸気流量QIN,目標トルク,目標エンジン出力等といった吸入空気量に相関するパラメーターを用いてもよい。
第二フィルタ値算出部3bは、ウェイストゲートバルブ17の全開状態における過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理を施して、第二フィルタ値PCを算出するものである。このフィルタ処理は、その時点のエンジン10の運転状態で最も遅い過渡応答遅れ(すなわち、その時点のエンジン10の運転状態で、ウェイストゲート開度Dを全開状態にした場合の過渡応答遅れ)を模擬したものとされる。
ここでいう「最も遅い過渡応答遅れ」とは、図4(b)に示すように、例えば時刻t0に仮想過給圧PAが増加した際に、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で過給圧が増加するような過渡応答遅れを意味する。つまり、第二フィルタ値PCには、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で増加するような特性が与えられる。この増加勾配は、ウェイストゲートバルブ17を全閉状態に制御した場合の増加勾配よりも、小さく穏やかな勾配である。
本実施形態では、図5(b)に示すように、時刻t0からウェイストゲートバルブ17の全開状態を所定時間維持した後、過給圧が仮想過給圧PA未満のまま収束しないように、ウェイストゲート開度Dを仮想過給圧PAに対応する開度(すなわち、後述する定常時開度R)まで減少させた場合における過給圧の挙動が、第二フィルタ値PCの挙動として設定される。
なお、図5(b)中に一点鎖線で示すように、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に維持したままにすると、図4(b)中に一点鎖線で示す全開時過給圧PKAI(PKAI<PA)に収束する。一方、過給圧が全開時過給圧PKAIに向かって上昇するときの増加勾配は、その時点のエンジン10の運転状態(エンジン回転速度Neや吸入空気量等)に応じた勾配となる。したがって、図4(b)中に実線で示す第二フィルタ値PCの増加勾配は、その時点のエンジン10の運転状態から推定することができる。
第二フィルタ値算出部3bでは、仮想過給圧PAに対してこのようなフィルタ処理を施したものが、第二フィルタ値PCとして算出される。第二フィルタ値PCは、過給圧が仮想過給圧PAに収束するまでの過渡状態における、最も安定した過渡変化を把握するためのパラメーターとなる。
第二フィルタ値算出部3bは、以下の式3,4に示すように、第二フィルタ値PCが仮想過給圧PAに対する二次遅れの伝達関数で表現されるものとして、第二フィルタ値PCを算出する。係数K2は、図4(b)中の実線の増加勾配の逆数に相当する第二フィルタ係数(時定数に相当するもの)であり、エンジン10の運転状態に応じて設定される。例えば、エンジン回転速度Neと充填効率Ecとを引数としたマップや数式,関数を用いて第二フィルタ係数K2が設定される。なお、エンジン10の運転状態が同一であるとき、第二フィルタ係数K2の値は第一フィルタ係数K1の値よりも大きい(すなわち、K1<K2である)。
Figure 2015010548
フィルタ値算出部3で算出された第一フィルタ値PB及び第二フィルタ値PCの値は、ウェイストゲート制御部4に伝達される。
[3−3.ウェイストゲート制御部]
ウェイストゲート制御部4は、仮想過給圧PA,第一フィルタ値PB,第二フィルタ値PCに基づいてウェイストゲート開度Dを制御するものである。このウェイストゲート制御部4には、定常時開度算出部4a,開度補正量算出部4b,制御信号出力部4cが設けられる。
定常時開度算出部4a(定常時開度算出手段)は、仮想過給圧PAを生じさせるウェイストゲート開度Dを定常時開度Rとして算出するものである。定常時開度Rとは、その開度を維持し続けた場合に過給圧が仮想過給圧PAに収束するウェイストゲート開度Dを意味する。定常時開度算出部4aは、エンジン回転速度Neと要求トルクPiとを引数としたマップや数式,関数を用いて、定常時開度Rを算出する。なお、開度補正量算出部4bで算出される開度補正量Cは、ここで算出される定常時開度Rを基準とした(定常時開度Rに対する)ウェイストゲート開度Dの増減量として定義される。
開度補正量算出部4b(開度補正量算出手段)は、仮想過給圧PAと二つのフィルタ値とのそれぞれの差に基づき、定常時開度Rに対する開度補正量Cを算出するものである。ここでは、仮想過給圧PAと第一フィルタ値PBとの差が第一圧力差DP1として算出されるとともに、仮想過給圧PAと第二フィルタ値PCとの差が第二圧力差DP2として算出される。また、これらの第一圧力差DP1,第二圧力差DP2に基づき、開度補正量Cが算出される。ここで算出された開度補正量Cは、制御信号出力部4cに伝達される。
具体的な開度補正量Cの算出手法は種々考えられる。例えば、第一圧力差DP1及び第二圧力差DP2を引数としたマップや数式,関数を用いて開度補正量Cを求めることが考えられる。この場合、開度補正量C,第一圧力差DP1及び第二圧力差DP2の関係を三次元マップとして用意しておけばよい。三次元マップの一部分を図6(a),(b)に例示する。
図6(a)は、第二圧力差DP2を一定としたときの開度補正量Cと第一圧力差DP1との関係を示すものである。第一圧力差DP1は、図4(a)に示すように仮想過給圧PAが増加した時刻t0に最大となり、第二圧力差DP2と比較して、やや速めに減少する値である。つまり、第一圧力差DP1が減少する過程は、過給圧が仮想過給圧PAに向かって収束する過程(過渡状態)における前半期(過渡前期)に対応する。したがって、第一圧力差DP1に応じて開度補正量Cを設定することで、過給圧の立ち上がりが改善される。
図6(a)中に実線で示す特性は、第一圧力差DP1が所定値A1未満であるときに開度補正量Cを0とし、第一圧力差DP1が所定値A1以上であるときに、開度補正量Cを負の値とするものである。負の開度補正量Cは、ウェイストゲート開度Dを定常時開度Rよりも閉鎖方向に補正するための補正量である。図6(a)中の所定値A1は、第二圧力差DP2に応じて変動する。また、図中に破線で示すように、第一圧力差DP1が所定値A1以下の範囲内において、部分的に開度補正量Cを正の値としてもよい。
図6(b)は、第一圧力差DP1を一定としたときの開度補正量Cと第二圧力差DP2との関係を示すものである。第二圧力差DP2は、第一圧力差DP1と比較して、やや遅れて減少する値である。つまり、第二圧力差DP2が減少する過程は、過給圧が仮想過給圧PAに向かって収束する過程(過渡状態)における後半期(過渡後期)に対応する。したがって、第二圧力差DP2に応じて開度補正量Cを設定することで、過給圧のオーバーシュートや収束性が改善される。
図6(b)に示す特性は、第二圧力差DP2が第二所定値A2未満であるときに開度補正量Cを0とし、第二圧力差DP2が第二所定値A2以上、第三所定値A3未満(ただし、A2<A3)であるときに開度補正量Cを正の値とするものである。正の開度補正量Cは、ウェイストゲート開度Dを定常時開度Rよりも開放方向に補正するための補正量である。図6(b)中の第二所定値A2及び第三所定値A3は、第一圧力差DP1に応じて変動する。なお、図6(b)中に破線で示すように、第一圧力差DP1の値によっては、負の開度補正量Cが設定されるマップ領域も存在しうる。
図6(a),(b)は、開度補正量C,第一圧力差DP1及び第二圧力差DP2の関係が規定された三次元マップを説明するグラフであるが、同様のグラフを用いて二種類の開度補正量を算出し、これらに基づいて最終的な開度補正量Cを求めることも考えられる。すなわち、図6(a)に示すような関係から、第一圧力差DP1に応じた第一開度補正量C1を算出するとともに、図6(b)に示すような関係から、第二圧力差DP2に応じた第二開度補正量C2を算出してもよい。また、最終的な開度補正量Cは、第一開度補正量C1及び第二開度補正量C2の和として求めてもよいし、あるいはこれらの積として求めてもよい。
制御信号出力部4cは、定常時開度R及び開度補正量Cの加算値をウェイストゲートバルブ17の目標開度として設定するとともに、これに対応する制御信号をウェイストゲートアクチュエーター18に出力するものである。ウェイストゲートアクチュエーター18は、制御信号に応じたストロークで弁体駆動部材を駆動する。これにより、実際のウェイストゲート開度Dが定常時開度R及び開度補正量Cの加算値に対応する目標開度となる。
開度補正量算出部4bで算出された開度補正量Cが負であるとき、実際のウェイストゲート開度Dは定常時開度Rよりも閉鎖方向に制御され、開度補正量Cが正であるとき、実際のウェイストゲート開度Dは定常時開度Rよりも開放方向に制御される。例えば、過渡前期には第一圧力差DP1がまだ減少しておらず、図6(a)に示すようなマップ特性から開度補正量Cが負の値に設定されるため、ウェイストゲート開度Dは定常時開度Rよりも閉鎖方向に制御される。これにより、過渡前期における過給圧の上昇勾配が増加する。
また、第一圧力差DP1が減少して過渡後期にはすでに0に近くなる一方、第二圧力差DP2は第一圧力差DP1よりも緩慢に減少する。このとき、図6(b)に示すようなマップ特性から、開度補正量Cが一時的に正の値に設定されるため、ウェイストゲート開度Dは定常時開度Rよりも開放方向に制御される。これにより、過渡後期における過給圧のオーバーシュートが抑制されるとともに、収束性が改善される。
[3−4.スロットル制御部]
スロットル制御部5(スロットル制御手段)は、エンジン10の運転状態に基づいてスロットル開度THを制御するものである。図3に示すように、スロットル制御部5には、目標流量算出部5a,圧力比算出部5b,流速算出部5c,質量流速算出部5d,スロットル面積算出部5eが設けられる。
目標流量算出部5aは、エンジン10の目標トルクに基づき、スロットルバルブ26を単位時間当たりに通過する吸気量の目標値として、目標流量Qを算出するものである。目標トルクは、エンジン回転速度Ne及びアクセル開度APSから設定される前述の要求トルクPiや、外部制御システムからエンジン10に要求される外部要求トルク等に基づいて算出される。また、目標流量Qは、目標トルク及びエンジン回転速度Neに基づいて算出される。このとき、吸気温度TIMや冷却水温WT,インマニ圧PIM,大気圧PBP,吸気密度等に基づいて目標流量Qの値を補正してもよい。
圧力比算出部5bは、スロットルバルブ26の上流側及び下流側の圧力比を算出するものである。圧力比とは、インマニ圧センサー53で実際に検出されたインマニ圧PIMとスロットルバルブ26の上流圧PTHUとの比率(PIM/PTHU)である。スロットルバルブ26の上流圧PTHUは、実過給圧と大気圧PBPとに基づいて算出される。また、実過給圧は、仮想過給圧PA,第一フィルタ値PB,第二フィルタ値PC等に基づいて算出される。あるいは、ウェイストゲート開度Dから過給による圧力増加量PXを算出して、実過給圧を推定してもよい。
流速算出部5cは、圧力比算出部5bで算出された圧力比に基づき、吸入空気のスロットル通過流速を算出するものである。流速算出部5cは、圧力比とスロットル通過流速の変化量との関係が規定されたマップや数式,関数を用いて、圧力比に対応する流速Uを算出する。流速Uは、圧力比(PIM/PTHU)の値が小さいほど、大きな値となる。
質量流速算出部5dは、スロットルバルブ26を通過する吸気についての、単位面積当たりの質量流速MMACHを算出するものである。質量流速MMACHは、吸気温度TIMや冷却水温WT,外気温,インマニ圧PIM,大気圧PBP,吸気密度等に基づいて算出される。
スロットル面積算出部5eは、目標流量Q,流速U,質量流速MMACHに基づいて、スロットル開度THに対応する目標スロットル開口面積Sを算出するものである。目標スロットル開口面積Sは、流速Uに質量流速MMACHを乗じた値で目標流量QTH_TGTを除算して求められる。また、スロットル制御部5は、スロットルバルブ26の開口面積を上記の目標スロットル開口面積Sに一致させる制御信号を出力し、スロットル開度THを制御する。
[4.フローチャート]
図7は、ウェイストゲート開度Dの制御手順を例示するフローチャートである。このフローは、エンジン制御装置1において所定の演算周期で繰り返し実施される。
ステップA10では、各種センサー52〜59で検出された各種情報がエンジン制御装置1に入力される。ここでは、アクセル開度APS,吸気流量QIN,インマニ圧PIM,吸気温度TIM,エンジン回転速度Ne,冷却水温WT,ウェイストゲートアクチュエーター18のストローク(ウェイストゲート開度D),大気圧PBP等に関する情報が入力される。また、ステップA20では、設定部2の要求トルク設定部2aにおいて、エンジン回転速度Ne及びアクセル開度APSに基づき、エンジン10の要求トルクPiが設定される。そして、続くステップA30では、仮想過給圧設定部2bにおいて、エンジン回転速度Ne及び要求トルクPiに基づき、仮想過給圧PAが設定される。ここで設定される仮想過給圧PAは、目標過給圧の瞬時値に相当する。
ステップA40では、第一フィルタ値算出部3aにおいて、エンジン回転速度Ne及び充填効率Ecに基づき、第一フィルタ係数K1が算出される。同様に、第二フィルタ値算出部3bでは、エンジン回転速度Ne及び充填効率Ecに基づき、第二フィルタ係数K2が算出される。
ステップA50では、第一フィルタ値算出部3aにおいて、仮想過給圧PA及び第一フィルタ係数K1に基づき、第一フィルタ値PBが算出される。第一フィルタ値PBは、その時点のエンジン10の運転状態で最も速い過渡応答遅れを模擬して得られる過給圧の演算値である。一方、ステップA60では、第二フィルタ値算出部3bにおいて、仮想過給圧PA及び第二フィルタ係数K2に基づき、第二フィルタ値PCが算出される。第二フィルタ値PCは、その時点のエンジン10の運転状態で最も遅い過渡応答遅れを模擬して得られる過給圧の演算値である。これらの第一フィルタ値PB,第二フィルタ値PCは、それぞれに反映される過渡応答遅れの度合いが相違する。
ステップA70では、定常時開度算出部4aにおいて、エンジン回転速度Ne及び要求トルクPiに基づき、定常時開度Rが算出される。また、ステップA80では、開度補正量算出部4bにおいて、仮想過給圧PAから第一フィルタ値PBが減算されて第一圧力差DP1が算出されるとともに、仮想過給圧PAから第二フィルタ値PCが減算されて第二圧力差DP2が算出される。そしてステップA90では、第一圧力差DP1,第二圧力差DP2に基づき、開度補正量Cが算出される。開度補正量Cは、第一圧力差DP1,第二圧力差DP2のそれぞれに対応する第一開度補正量C1,第二開度補正量C2の和や積で与えられてもよく、あるいは、図6(a),(b)に示すようなマップに基づき、第一圧力差DP1,第二圧力差DP2を引数として与えられてもよい。
ステップA100では、制御信号出力部4cにおいて、定常時開度R及び開度補正量Cの加算値がウェイストゲート開度Dの目標値として算出され、ウェイストゲートアクチュエーター18に制御信号が出力される。ウェイストゲートアクチュエーター18は、制御信号に応じたストロークで弁体駆動部材を駆動し、ウェイストゲート開度Dが定常時開度R及び開度補正量Cの加算値に対応する開度となる。
[5.作用]
図8(a)に示すように、時刻t0にアクセルペダルが踏み込まれると、その時点でのエンジン回転速度Ne及びアクセル開度APSに基づいて要求トルクPiが設定される。また、図8(d),(e)に示すように、エンジン回転速度Ne及び要求トルクPiに基づいて仮想過給圧PAが設定されるとともに、仮想過給圧PAに対応する定常時開度Rが算出される。
フィルタ値算出部3では、仮想過給圧PAに対する最も速い過渡応答遅れを模擬した第一フィルタ値PBと、最も遅い過渡応答遅れを模擬した第二フィルタ値PCとが算出される。第一フィルタ値PBは、図8(b)に示すように、ウェイストゲートバルブ17を全閉状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で、その時点での過給圧から仮想過給圧PAに向かって迅速に変動する。ここで、第一フィルタ値PBが仮想過給圧PAにほぼ一致する時刻をt1とおくと、仮想過給圧PAと第一フィルタ値PBとの差が0でない期間は、時刻t0から時刻t1までとなる。つまり、第一圧力差DP1によって開度補正量Cが設定されるのは、時刻t0から時刻t1までの期間となる。
これに対して、第二フィルタ値PCは、図8(c)に示すように、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で、その時点での過給圧から仮想過給圧PAに向かって緩慢に変動する。ここで、第二フィルタ値PCが仮想過給圧PAにほぼ一致する時刻をt2とおけば、第二圧力差DP2によって開度補正量Cが設定されるのは、時刻t0から時刻t2までの期間となる。
したがって、過渡前期に相当する時刻t0〜t1間では、第一フィルタ値PB,第二フィルタ値PCのそれぞれの過渡応答遅れの度合いが開度補正量Cに反映される。このとき、第二フィルタ値PCはゆっくりと減少するため、第一フィルタ値PBの過渡応答遅れの度合いのみを開度補正量Cに反映させることが可能である。一方、過渡後期に相当する時刻t1〜t2間では、第一フィルタ値PBが仮想過給圧PAに近い値となっており、第一圧力差DP1がほぼ0となっているため、第二フィルタ値PCの過渡応答遅れの度合いのみを開度補正量Cに反映させることが可能である。
ここで、図6(a),(b)に示すような開度補正量Cのマップが与えられている場合、過渡前期における開度補正量Cは、第一圧力差DP1に応じて負の値に設定される。これにより、図8(d)に示すように、過渡前期におけるウェイストゲート開度Dは定常時開度Rよりも閉鎖方向に補正される。したがって、図8(e)に示すように、その時点のエンジン10の運転状態で最も速い過渡応答遅れに相当する増加勾配で実過給圧が上昇し、加速応答性が改善される。
また、過渡後期における開度補正量Cは、第二圧力差DP2に応じて正の値に設定される。これにより、過渡後期におけるウェイストゲート開度Dは、図8(d)に示すように、定常時開度Rよりも開放方向に補正される。したがって、実過給圧が仮想過給圧PAを超えるようなオーバーシュートが抑制され、過給圧の収束性が改善される。
[6.効果]
(1)上記のエンジン制御装置1では、開度補正量Cの算出に実過給圧が使用されないため、仮想過給圧PAと実過給圧との間に生じうる定常偏差の影響を排除することができる。したがって、過給圧の応答性,収束性及び安定性を高めることができ、ドライバビリティを向上させることができる。
また、仮想過給圧PAとフィルタ値PB,PCとの差に基づいてウェイストゲート開度Dの開度補正量Cを算出することで、適切な開度補正量Cを与えることができ、実過給圧を仮想過給圧PAへと迅速に接近させつつ、実過給圧の収束時間を短縮することができる。特に、フィルタ値PB,PCは、実過給圧の過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理を通して得られる値であることから、過給圧の過渡応答遅れが考慮された開度補正量Cを算出することができ、エンジン10の運転状態に適した開度補正量Cを与えることができる。
(2)上記のエンジン制御装置1では、ウェイストゲートバルブ17を全閉状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で過給圧が増加するような過渡応答遅れを模擬して、第一フィルタ値PBが算出される。この第一フィルタ値PBと仮想過給圧PAとの差である第一圧力差DP1に基づいて開度補正量Cを算出することで、過給圧の増加勾配を最速の状態に近づけることができ、実過給圧の立ち上がりの遅れを補正することができる。つまり、過渡状態(過給圧が変動する過程)における過渡前期の応答性を向上させることができる。
(3)第一圧力差DP1に関して、例えば図6(a)に示すように、第一圧力差DP1が所定値A1以上であるときに開度補正量Cが負の値となるように、第一圧力差DP1と開度補正量Cとの関係が定められる。つまり、過渡前期の中でも初期の段階で、ウェイストゲート開度Dが閉鎖方向に補正される。このような制御により、実過給圧の立ち上がりの遅れを小さくすることができ、応答性をさらに向上させることができる。
また、第一圧力差DP1が所定値A1未満であるときには、開度補正量Cが0又は正の値とされる。これにより、過渡前期の中でも末期の段階では、ウェイストゲート開度Dが定常時開度Rに制御され、あるいはこれよりもやや開放方向に補正される。したがって、実過給圧の増加速度をやや抑えて収束性を改善することができる。
(4)上記のエンジン制御装置1では、ウェイストゲートバルブ17を全開状態に制御した場合とほぼ同一の増加勾配で過給圧が増加するような過渡応答遅れを模擬して、第二フィルタ値PCが算出される。この第二フィルタ値PCと仮想過給圧PAとの差である第二圧力差DP2に基づいて(より厳密にいえば、第一圧力差DP1及び第二圧力差DP2に基づいて)開度補正量Cを算出することで、実過給圧が仮想過給圧PAに近づいてからの圧力変化を抑制することができる。つまり、過渡状態における過渡後期の収束性を向上させることができる。
(5)第二圧力差DP2に関して、例えば図6(b)に示すように、第二所定値A2以上かつ第三所定値A3未満であるときに開度補正量Cが正の値となるように、第二圧力差DP2と開度補正量Cとの関係が定められる。このとき、第一フィルタ値PBと仮想過給圧PAとの差は十分に小さく、第一圧力差DP1は所定値A1未満となっており、つまり過渡後期の初期から中盤にかけての段階で、ウェイストゲート開度Dが開放方向に補正される。このような制御により、過給圧の上昇を弱めてオーバーシュートを抑制することができ、実過給圧の収束性,安定性を向上させることができる。
なお、過渡後期の初期からウェイストゲート開度Dを開放方向に補正する場合には、図6(b)に示す第三所定値A3をグラフ上で右側に移動させ、第二圧力差DP2が第二所定値A2以上であるときに開度補正量Cが正の値となるように、第二圧力差DP2と開度補正量Cとの関係を設定してもよい。このような設定であっても、過渡後期のオーバーシュートを抑制することができ、実過給圧の収束性,安定性を向上させることができる。
(6)上記のエンジン制御装置1では、エンジン10の吸入空気量に相当する充填効率Ecとエンジン回転速度Neとに基づいて、第一フィルタ係数K1及び第二フィルタ係数K2が設定される。これらのフィルタ係数K1,K2は、仮想過給圧PAから第一フィルタ値PBや第二フィルタ値PCを求めるためのフィルタ処理における時定数に相当するパラメーターである。このように、過渡応答遅れの時定数に相当するパラメーターをエンジン10の運転状態に応じて設定することで、フィルタ処理で模擬される過給圧変動の収束時間を適正化することができる。
例えば、過給圧の過渡応答遅れの時間は、単位時間当たりの排気流量(吸入空気量)によって変化するため、エンジン回転速度Neが一定であっても、過渡応答遅れ時間が一定であるとは限らない。つまり、図8(b),(c)中に一点鎖線で示すような過給圧の上昇勾配は、ウェイストゲート開度Dや仮想過給圧PAまでの圧力変化量(例えば第一圧力差DP1や第二圧力差DP2)だけでなく、エンジン10の運転状態によっても変化する。
このような過渡応答遅れ時間の変化に対して、エンジン10の運転状態に基づいて設定される時定数を用いた模擬演算を施すことで、より精度の高い第一フィルタ値PB及び第二フィルタ値PCを算出することができる。したがって、実過給圧の挙動を制御するための開度補正量Cの演算精度をも向上させることができ、過渡状態における実過給圧の応答性及び収束性をともに改善することができる。
(7)上記のエンジン制御装置1では、図8(d)に示すように、実過給圧の過渡状態において、ウェイストゲート開度Dが定常時開度Rよりも閉鎖方向に補正される時期と、定常時開度Rよりも開放方向に補正される時期とが設けられる。このように、過給圧の上昇を促進する時期と、過給圧の上昇を抑制する時期とが設けられるような制御マップを用いることで、過給圧を速やかに上昇させつつオーバーシュートを抑制することができる。したがって、過渡状態における実過給圧の応答性及び収束性をともに改善することができる。
また、ウェイストゲート開度Dを閉鎖方向に補正するための開度補正量Cは、図6(a)に示すように、おもに第一圧力差DP1によって与えられる。一方、ウェイストゲート開度Dを開放方向に補正するための開度補正量Cは、図6(b)に示すように、おもに第二圧力差DP2によって与えられる。
このように、ウェイストゲート開度Dを閉じるための補正量を与えるパラメーターと、ウェイストゲート開度Dを開くための補正量を与えるパラメーターとを相違させることで、ウェイストゲート開度Dの動作を精密に制御することができる。具体的には、ウェイストゲート開度Dを閉じるタイミング及びその補正量と、開くタイミング及びその補正量とを独立して制御することができる。したがって、過渡状態における実過給圧の応答性及び収束性をともに改善することができる。
[7.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記の実施形態では、開度補正量Cに係る二種類の設定手法のうち、第二の手法について詳述したが、第一の手法を用いて開度補正量Cを設定してもよい。すなわち、単一のフィルタ値と目標過給圧との差に基づいて開度補正量Cを設定するものである。この場合、使用されるフィルタ値は、その時点でのエンジン10の運転状態に応じたものであれば任意に設定可能である。例えば、図8(b)に示すように、上述の実施形態における第一フィルタ値PBのみを用いて開度補正量Cを設定してもよい。開度補正量Cと第一圧力差DP1との関係は、図6(a)に示すようなマップや数式,関数で与えることができる。この場合、図中に破線で示すように、第一圧力差DP1が所定値A1以下の範囲内において、部分的に開度補正量Cを正の値とすれば、過給圧の応答性を向上させつつ、オーバーシュートを抑制することができる。
また、図8(c)に示すように、上述の実施形態における第二フィルタ値PCのみを用いて開度補正量Cを設定してもよい。開度補正量Cと第二圧力差DP2との関係は、図6(b)に示すようなマップや数式,関数で与えることができる。この場合も、図中に破線で示すように、第二圧力差DP2が第三所定値A3を超える範囲において、開度補正量Cを負の値とすれば、過給圧の応答性を向上させつつ、オーバーシュートを抑制することができる。
また、上述の実施形態では、過渡応答遅れを模擬したフィルタ値と仮想過給圧との差に基づいて開度補正量Cを算出するものを例示したが、これらの「差」の代わりに「比」を用いて開度補正量Cを算出する演算構成としてもよい。フィルタ値,仮想過給圧の何れかが既知であれば、これらの比を差へと一意的に変換できる。したがって、「差」の代わりに「比」を用いた場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
なお、上述の実施形態におけるエンジン10の種類は任意であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン,その他の燃焼形式のエンジンを用いることができる。
1 エンジン制御装置
2 設定部(設定手段)
2a 要求トルク設定部
2b 仮想過給圧設定部
3 フィルタ値算出部(フィルタ値算出手段)
3a 第一フィルタ値算出部(第一フィルタ値算出手段)
3b 第二フィルタ値算出部(第二フィルタ値算出手段)
4 ウェイストゲート制御部
4a 定常時開度算出部(定常時開度算出手段)
4b 開度補正量算出部(開度補正量算出手段)
4c 制御信号出力部
5 スロットル制御部
PA 仮想過給圧
PB 第一フィルタ値
PC 第二フィルタ値
R 定常時開度
C 開度補正量
D ウェイストゲート開度
DP1 第一圧力差
DP2 第二圧力差

Claims (7)

  1. ウェイストゲートバルブの開度調節により過給圧を制御するエンジンの制御装置において、
    前記エンジンへの出力要求に応じた仮想過給圧を設定する設定手段と、
    前記設定手段で設定された前記仮想過給圧に対して過給圧の過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施されたフィルタ値を算出するフィルタ値算出手段と、
    前記設定手段で設定された前記仮想過給圧を生じさせる前記ウェイストゲートバルブのウェイストゲート開度を定常時開度として算出する定常時開度算出手段と、
    前記設定手段で設定された前記仮想過給圧と前記フィルタ値算出手段で算出された前記フィルタ値との差に基づき、前記定常時開度に対する前記ウェイストゲート開度の補正量を算出する開度補正量算出手段と、
    を備えたことを特徴とする、エンジンの制御装置。
  2. 前記フィルタ値算出手段が、前記フィルタ値として、前記ウェイストゲートバルブの全閉状態における過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施された第一フィルタ値を算出する第一フィルタ値算出手段を有し、
    前記開度補正量算出手段が、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差に基づき、前記補正量を算出する
    ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記開度補正量算出手段は、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差が所定値以上であるときに、前記ウェイストゲート開度を閉鎖方向に補正する
    ことを特徴とする、請求項2記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記フィルタ値算出手段が、前記フィルタ値として、前記ウェイストゲートバルブの全開状態における過渡応答遅れを模擬したフィルタ処理が施された第二フィルタ値を算出する第二フィルタ値算出手段を有し、
    前記開度補正量算出手段が、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差、及び、前記仮想過給圧と前記第二フィルタ値との差に基づき、前記補正量を算出する
    ことを特徴とする、請求項2又は3記載のエンジン制御装置。
  5. 前記開度補正量算出手段は、前記仮想過給圧と前記第一フィルタ値との差が所定値未満であり、かつ、前記仮想過給圧と前記第二フィルタ値との差が第二所定値以上であるときに、前記ウェイストゲート開度を開放方向に補正する
    ことを特徴とする、請求項4記載のエンジンの制御装置。
  6. 前記フィルタ値算出手段が、前記エンジンの吸入空気量及びエンジン回転速度に基づいて設定される時定数を用いて、前記フィルタ処理を実施する
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
  7. 前記開度補正量算出手段が、前記仮想過給圧及び前記フィルタ値の差に応じて、前記ウェイストゲート開度を前記定常時開度よりも開放方向に補正する正の補正量と、前記ウェイストゲート開度を前記定常時開度よりも閉鎖方向に補正する負の補正量とを与えるマップを有する
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
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CN114135404A (zh) * 2020-09-04 2022-03-04 长城汽车股份有限公司 涡轮增压的发动机的增压控制方法和装置

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