JP2014094876A - 光学ガラス、光学素子及びガラス成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光学ガラスは、酸化物基準の質量%で、SiO2+P2O5を21〜40%、Nb2O5及びTiO2を合量で0%を超え60%以下、屈折率が1.80以上であるガラスにおいて、厚さ10mmで70%の透過率を示す波長が420nm以下である。光学素子とガラス成形体の製造方法は、この光学ガラスを用いたものである。
【選択図】なし
Description
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
SiO2成分及びP2O5成分は、いずれも安定なガラス形成を促す成分である。
特に、SiO2成分及びP2O5成分を合計で21%以上含有することで、耐失透性に優れたガラスを得られる。従って、質量和(SiO2+P2O5)は、好ましくは21%、より好ましくは23%、さらに好ましくは24%を下限とする。
一方で、質量和(SiO2+P2O5)の上限を40%にすることで、ガラスの屈折率が低下し難くなるため、所望の高い屈折率を得易くできる。従って、質量和(SiO2+P2O5)は、好ましくは40%、より好ましくは35%、さらに好ましくは30%を上限とする。
一方で、SiO2成分の含有量を40%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ、ガラスの溶融性を高められる。従って、SiO2成分の含有量は、好ましくは40%、より好ましくは35%、さらに好ましくは30%を上限とする。
SiO2成分は、原料としてSiO2、K2SiF6、Na2SiF6等を用いることができる。
一方で、P2O5成分の含有量を30%以下にすることで、P2O5成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、P2O5成分の含有量は、好ましくは30%、より好ましくは20%、さらに好ましくは10%、さらに好ましくは5%を上限とする。
P2O5成分は、原料としてAl(PO3)3、Ca(PO3)2、Ba(PO3)2、BPO4、H3PO4等を用いることができる。
特に、Nb2O5成分及びTiO2成分を合計で0%超含有することで、所望の高屈折率高分散(低アッベ数)のガラスを得られ、且つガラスの化学的耐久性を高められる。従って、質量和(Nb2O5+TiO2)は、好ましくは0%超、より好ましくは10%超、さらに好ましくは20%超、さらに好ましくは22%超、さらに好ましくは32%超、さらに好ましくは38%超、さらに好ましくは41%超とする。
一方で、質量和(Nb2O5+TiO2)の上限を60%にすることで、ガラスの耐失透性を高められる。従って、質量和(Nb2O5+TiO2)は、好ましくは60%、より好ましくは55%、さらに好ましくは50%、さらに好ましくは48%を上限とする。
一方で、Nb2O5成分の含有量を40%以下にすることで、Nb2O5成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、Nb2O5成分の含有量は、好ましくは40%、より好ましくは30%、さらに好ましくは25%、さらに好ましくは20%を上限とする。
Nb2O5成分は、原料としてNb2O5等を用いることができる。
一方で、TiO2成分の含有量を60%以下にすることで、ガラスの着色が低減されるため、ガラスの内部透過率を高められる。また、これによりガラスの失透を低減できる。従って、TiO2成分の含有量は、好ましくは60%、より好ましくは50%、さらに好ましくは40%、さらに好ましくは30%を上限とする。
TiO2成分は、原料としてTiO2等を用いることができる。
一方で、F成分の含有量を6%以下にすることで、ガラスへの脈理の発生を低減でき、且つガラスを失透し難くすることができる。従って、酸化物基準の質量に対する外割りでのF成分の含有量は、好ましくは6%、より好ましくは4%、さらに好ましくは2%、さらに好ましくは1%を上限とする。
本発明の光学ガラスでは、F成分を0%超含有する場合であっても、6%以下の範囲内であれば、脈理の発生を低減でき、且つ、ガラスの安定性を高め、ガラスの着色を低減して内部透過率をより一層高めることが可能である点で好ましい。
F成分は、原料として例えばZrF4、AlF3、NaF、CaF2、K2SiF6、Na2SiF6、LaF3等を用いてガラス内に含有することができる。
一方で、Na2O成分の含有量を20%以下にすることで、屈折率の低下を抑えるとともに、これら成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減しつつ、ガラスの化学的耐久性を高めることができる。従って、Na2O成分の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは15%、さらに好ましくは13%を上限とする。
Na2O成分は、原料としてNa2CO3、NaNO3、NaF、Na2SiF6等を用いることができる。
一方で、Li2O成分及びK2O成分の各々の含有量を20%以下にすることで、屈折率の低下を抑えるとともに、これら成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、Li2O成分及びK2O成分の各々の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは15%、さらに好ましくは13%を上限とする。
Li2O成分及びK2O成分は、原料としてLi2CO3、LiNO3、LiF、K2CO3、KNO3、KF、KHF2、K2SiF6等を用いることができる。
特に、R2O成分を6%以上含有することで、ガラスの溶融性及び耐失透性を高められる。従って、R2O成分の含有量の質量和は、好ましくは6%、より好ましくは8%、さらに好ましくは10%を下限とする。
一方で、R2O成分の含有量を20%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くでき、且つ耐失透性の高い安定なガラスを得られる。従って、R2O成分の含有量の質量和は、好ましくは20%、より好ましくは18%、さらに好ましくは16%、さらに好ましくは14%を上限とする。
一方で、BaO成分の含有量を30%以下にすることで、BaO成分の過剰な含有による耐失透性や化学的耐久性の悪化を抑制できる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは30%、より好ましくは25%、さらに好ましくは20%を上限とする。
BaO成分は、原料としてBaCO3、Ba(NO3)2等を用いることができる。
一方で、CaO成分及びSrO成分の各々の含有量を10%以下にすることで、屈折率の低下を抑え、且つ、これら成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の悪化を抑制できる。従って、CaO成分及びSrO成分の各々の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
CaO成分及びSrO成分は、原料としてCaCO3、CaF2、Sr(NO3)2、SrF2等を用いることができる。
一方で、ZnO成分の含有量を10%以下にすることで、ガラスの溶融時の安定性を高められる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは10%を上限とし、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF2等を用いることができる。
特に、MO成分を11%以上含有することで、ガラスの耐失透性が高められるため、安定なガラスを得ることができる。従って、MO成分の合計含有量は、好ましくは11%、より好ましくは13%、さらに好ましくは14%を下限とする。
一方で、MO成分の含有量を30%以下にすることで、これら成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、MO成分の合計含有量は、好ましくは30%、より好ましくは25%、さらに好ましくは20%を上限とする。
一方で、ZrO2成分の含有量を15%以下にすることで、ガラスの失透を低減でき、且つ、より均質なガラスを得易くできる。従って、ZrO2成分の含有量は、好ましくは15%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
ZrO2成分は、原料としてZrO2、ZrF4等を用いることができる。
一方で、Al2O3成分の含有量を10%以下にすることで、ガラスの溶融性の悪化や屈折率の低下を抑えられる。従って、Al2O3成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
Al2O3成分は、原料としてAl2O3、Al(OH)3、AlF3等を用いることができる。
一方で、WO3成分の含有量を20%以下にすることで、WO3成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つ、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。従って、WO3成分の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは10%、さらに好ましくは5%を上限とする。
WO3成分は、原料としてWO3等を用いることができる。
一方で、Ta2O5成分の含有量を15%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa2O5成分の使用量が減り、且つガラスがより低温で溶解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減できる。また、これによりTa2O5成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、Ta2O5成分の含有量は、好ましくは15%、より好ましくは10%、さらに好ましくは5%を上限とする。
Ta2O5成分は、原料としてTa2O5等を用いることができる。
一方で、B2O3成分の含有量を10%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられる。従って、B2O3成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
B2O3成分は、原料としてH3BO3、Na2B4O7、Na2B4O7・10H2O、BPO4等を用いることができる。
一方で、Y2O3成分、La2O3成分、Gd2O3成分及びYb2O3成分の各々の含有量を20%以下にすることで、ガラスの失透を低減し、ガラスのアッベ数の上昇を抑え、且つガラスの材料コストを低減できる。従って、Y2O3成分、La2O3成分、Gd2O3成分及びYb2O3成分の各々の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは10%、さらに好ましくは5%を上限とする。
Y2O3成分、La2O3成分、Gd2O3成分及びYb2O3成分は、原料としてY2O3、YF3、La2O3、La(NO3)3・XH2O(Xは任意の整数)、Gd2O3、GdF3、Yb2O3等を用いることができる。
一方で、GeO2成分の含有量を10%以下にすることで、高価なGeO2成分の使用量が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、GeO2成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
GeO2成分は、原料としてGeO2等を用いることができる。
一方で、MgO成分の含有量を10%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えることができ、且つ失透を低減できる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
MgO成分は、原料としてMgO、MgCO3、MgF2等を用いることができる。
一方で、Bi2O3成分の含有量を10%以下にすることで、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。従って、Bi2O3成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは3%を上限とする。
Bi2O3成分は、原料としてBi2O3等を用いることができる。
一方で、TeO2成分の含有量を20%以下にすることで、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。また、高価なTeO2成分の使用を低減することで、より材料コストの安いガラスを得られる。従って、TeO2成分の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは10%、さらに好ましくは5%を上限とする。
TeO2成分は、原料としてTeO2等を用いることができる。
一方で、Sb2O3成分の含有量を3%以下にすることで、ガラス溶融時における過度の発泡を生じ難くすることができ、Sb2O3成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くできる。従って、Sb2O3成分の含有量は、好ましくは3%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。但し、光学ガラスの環境上の影響を重視する場合には、Sb2O3成分を含有しなくてもよい。
Sb2O3成分は、原料としてSb2O3、Sb2O5、Na2H2Sb2O7・5H2O等を用いることができる。
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
SiO2成分 20〜60モル%
P2O5成分 0〜20モル%
Nb2O5成分 0%超〜15モル%
TiO2成分 0%超〜60モル%
Na2O成分 0〜30モル%
Li2O成分 0〜40モル%
K2O成分 0〜20モル%
BaO成分 0〜20モル%
CaO成分 0〜12モル%
SrO成分 0〜10モル%
ZnO成分 0〜10モル%
ZrO2成分 0〜10モル%
Al2O3成分 0〜8モル%
WO3成分 0〜7モル%
Ta2O5成分 0〜3モル%
B2O3成分 0〜12モル%
Y2O3成分 0〜7モル%
La2O3成分 0〜5モル%
Gd2O3成分 0〜5モル%
Yb2O3成分 0〜5モル%
GeO2成分 0〜5モル%
MgO成分 0〜20モル%
Bi2O3成分 0〜2モル%
TeO2成分 0〜7モル%
Sb2O3成分 0〜1モル%
上記各金属元素の1種又は2種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量 0%超〜25モル%
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝又は白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1200〜1300℃の温度範囲で3〜10時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1100〜1200℃の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
本発明の光学ガラスは、高い屈折率及び高い分散(低いアッベ数)を有することが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は、好ましくは1.80を下限とし、より好ましくは1.81超、さらに好ましくは1.82超とする。一方、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)の上限は特に限定されないが、好ましくは2.20、より好ましくは2.10、さらに好ましくは2.00であってもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は、好ましくは26、より好ましくは25.5、さらに好ましくは25を上限とする。一方、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)の下限は特に限定されないが、好ましくは15、より好ましくは18、さらに好ましくは20であってもよい。これらにより、光学設計の自由度が広がり、さらに素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。
なお、光学ガラスに含まれるPtの含有量は、粉砕したガラス試料をHF、HClO4、HNO3、HCl等からなる混酸を用いて分解し、これを加熱蒸発して乾固させることで得られた塩に硝酸を加えたものに対して、ICP質量分析装置を用いて分析することで測定できる。
また、Pt2+の割合は、ガラス試料に対して高エネルギー照射し、EXAFS(広域X線吸収微細構造)を用いた分析により測定できる。
作製された光学ガラスから、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製できる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、例えば研磨加工を行って作製したプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりできる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
また、本発明の実施例の光学ガラスについて、ガラス試料に対して高エネルギー照射し、EXAFS(広域X線吸収微細構造)を用いた分析を行うことで、全白金成分に含まれるPt2+の割合を測定した。その結果、いずれの実施例においても、全白金成分に含まれるPt2+の割合は80%以下であることが確認された。
これらのことから、本発明の光学ガラスのPt含有量が少なく、且つ、全白金成分に含まれるPt2+の割合が低いことが、本発明の光学ガラスで可視光に対する透過率が高い一因であることが推察される。
Claims (6)
- 酸化物基準の質量%で、SiO2+P2O5を21〜40%、Nb2O5及びTiO2を合量で0%を超え60%以下、屈折率が1.80以上であるガラスにおいて、厚さ10mmで70%の透過率を示す波長が420nm以下である光学ガラス。
- 酸化物基準の質量に対する外割りの質量%で、F成分を0%超6%以下含有する請求項1記載の光学ガラス。
- 質量%で、SiO2を21〜35%、R2O成分を6〜20%、MO成分を11〜30%含有する請求項1又は2記載の光学ガラス(RはLi、Na及びKからなる群より選択される1種以上であり、MはCa、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上である)。
- ガラス質量に対するPtの含有量が20ppm以下であり、且つPt2+の割合が80%以下である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
- 請求項1から4のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
- 請求項1から4のいずれか記載の光学ガラスを用い、軟化した前記光学ガラスに対して金型内でプレス成形を行うガラス成形体の製造方法。
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