JP2014091781A - コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プロピレン系樹脂および造核剤を含有する、コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物であって、該プロピレン系樹脂が、プロピレンの単独重合体およびエチレン単位含有量が0.5重量%以下のプロピレン・エチレン共重合体から選択される、少なくとも1種のプロピレン系重合体と、エチレン単位含有量が68〜80重量%のエチレン・プロピレン共重合体との反応ブレンド樹脂であり;そしてJISK7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した該樹脂組成物のメルトフローレートが6〜14g/10分である、コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
[1]プロピレン系樹脂および造核剤を含有する、コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物であって、
該プロピレン系樹脂が、プロピレンの単独重合体およびエチレン単位含有量が0.5重量%以下のプロピレン・エチレン共重合体から選択される、少なくとも1種のプロピレン系重合体と、エチレン単位含有量が68〜80重量%のエチレン・プロピレン共重合体との反応ブレンド樹脂であり;
該エチレン・プロピレン共重合体の含有量が、該プロピレン系樹脂の重量を基準として13〜20重量%であり;
該プロピレン系樹脂のキシレン可溶分の135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が、1.3〜1.9dl/gであり;
該プロピレン系樹脂のキシレン不溶分のMw/Mnが7〜15であり;
造核剤の含有量が、前記プロピレン系樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であり;そして
JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した該樹脂組成物のメルトフローレートが6〜14g/10分である、コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
[2]該プロピレン系樹脂が、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;
有機アルミニウム化合物;および
ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物
を含む触媒を用いて製造されたものである、上記1に記載の樹脂組成物。
[3]該プロピレン系樹脂が、該プロピレン系樹脂を構成する重合体とは異なる他の重合体を追加で含む、上記1または2に記載の樹脂組成物。
[4]該ポリプロピレン系樹脂組成物を100重量%とした際の、追加で含む重合体の含有量が、15重量%以下である、上記3に記載の樹脂組成物。
[5]該追加で含む重合体が、エチレン単位を含有する重合体である、上記3または4に記載の樹脂組成物。
[6]JIS K 7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した、追加で含む重合体のメルトフローレートが、0.15〜0.45g/10分である、上記3〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[7]上記1〜6のいずれか1項に記載のコンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物をコンプレッション成形することにより得られた成形品
にかかる。
本発明の樹脂組成物において、プロピレン系樹脂のキシレン不溶分のMw/Mnは、7〜15、特に8〜14であることが好ましい。該Mw/Mnが上記範囲の下限値未満であると、成形品にした際の開封性や剛性が低下する傾向がある。一方、該Mw/Mnが上記範囲の上限値を超えると、プロピレン系樹脂自体の製造が複雑になり、樹脂組成物の外観も低下する。
ここで、MFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
本発明に使用するプロピレン系樹脂は、まず重合反応器内でプロピレンの単独重合体およびエチレン単位含有量が0.5重量%以下のプロピレン・エチレン共重合体から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体を重合し、次いで得られたプロピレン系重合体が存在する重合反応器内で、エチレン・プロピレン共重合体を重合させることにより得た、反応ブレンド型ポリプロピレンである。ここで、エチレン・プロピレン共重合体は、いわゆる「ゴム成分」と呼ばれる画分であり、上記の通りエチレン単位含有量が68〜80重量%と高いものである。
多段重合は上記の方法に限らず、プロピレン系重合体を複数の重合反応器にて重合してもよいし、エチレン・プロピレン共重合体を複数の重合反応器にて重合してもよい。
(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。より具体的には、TiCl4、TiBr4、TiI4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(On−C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(OisoC4H9)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(On−C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)2Br2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(On−C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(On−C4H9)4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられ、これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、とくにテトラハロゲン化チタンであり、とくに好ましいものは、四塩化チタンである。
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であり;R3〜R6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基、または水素原子であり、R3とR4とが互いに結合して環を形成してもよく、R5とR6とが互いに結合して環を形成してもよい。)
R1及びR2は、好ましくは、C1〜C8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基である。R1及びR2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR1及びR2基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
上記の重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
(造核剤)
造核剤は、ポリプロピレン結晶核の形成を促進させて、得られる樹脂組成物の結晶化度を向上させるものである。造核剤を含有することによって、樹脂組成物から得られる成形品の剛性が向上する。造核剤の具体例としては、ソルビトール化合物、カルボン酸の金属塩、芳香族リン酸エステル系化合物、シリカ、タルク、マイカなどが挙げられる。臭気が少ない点では、芳香族リン酸エステル系化合物が好ましい。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、該プロピレン系樹脂を構成する重合体とは異なる他の重合体が追加で含まれてもよい。他の重合体としては、公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン又は炭素数4〜10のα−オレフィン単独重合体、エチレンまたは炭素数3〜10のα−オレフィンの共重合体(ジエンを含んでもよい)、これらの混合物、ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、石油樹脂などが挙げられる。エチレン又は炭素数4〜10のα−オレフィン単独重合体としては、具体的に、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−へプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリスチレン及びこれらの組み合わせが挙げられる。エチレン系ランダム共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・(1−)ブテン共重合体、エチレン・(1−)ペンテン共重合体、エチレン・(1−)ヘキセン共重合体、エチレン・(1−)オクテン共重合体、エチレン・(1−)デセン共重合体およびこれらの組合せが挙げられる。ブロック共重合体としては、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、エチレン・エチレン・ブチレン・エチレンブロック共重合体およびこれらの組合せが挙げられる。また、2種以上の重合体の混合物の場合、ランダム共重合体とブロック共重合体等、異なるタイプの重合体を組み合わせても良い。これらの中でも、エチレン単位を含有する重合体を用いることが非常に好ましい。追加で含まれる他の重合体は、JIS K 7210に従う温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートの値が0.15〜0.45g/10分のものである。この際、追加で含まれる重合体が2種以上の重合体の混合物の場合は、混合物のメルトフローレートの値が上記範囲にあるものである。また、追加で含まれる他の重合体の含有量は、プロピレン系樹脂に対して、0〜15重量%、好ましくは1〜15重量%である。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、顔料等が挙げられる。顔料としては、着色顔料(酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料や、アゾレーキ不溶性アゾ、縮合アゾ、アントラキノン、キナクリドン、フタロシアニン等の有機顔料、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等のフレーク顔料)、体質顔料(カオリン、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等)、機能性顔料(防錆顔料、蛍光顔料、示温顔料、光触媒顔料、潤滑性顔料等)等が含まれても良い。
本発明の樹脂組成物は、コンプレッション成形により成形品に加工される。コンプレッション成形の際の条件は特に制限されず、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形に従来用いられている条件と同様であってよく、目的の成形品の形状や大きさ、使用するコンプレッション成形機の種類や規模に応じて適宜選択される。
まず、上記の適切な固体触媒、有機アルミニウム化合物(例えばトリエチルアルミニウム)、および外部ドナー(例えばジシクロペンチルジメトキシシラン等のシラン化合物)を好適な割合で接触させる。この際、トリエチルアルミニウム(以下、「TEAL」と称することがある。)とジシクロペンチルジメトキシシラン(以下、「DCPMS」と称することがある。)との重量比(TEAL/DCPMS)は、好ましくは0.5〜40、さらに好ましくは1.0〜20である。次いで得られた固体触媒系を、液体プロピレン中に懸濁させ、予備重合を行う。得られた予備重合物を直列に配置された重合反応器の第一段目(前段)に導入し、さらにプロピレン(およびエチレン)を導入してプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体またはプロピレン・エチレン共重合体)を重合させる。ここでプロピレン・エチレン共重合体を製造する場合、重合反応器に導入するエチレンの濃度は0.01〜0.12mol%、好ましくは0.02〜0.10mol%である。得られたプロピレン系重合体を第2段目(後段)の重合反応器に供給し、ここにエチレンおよびプロピレンを導入して、エチレン・プロピレン共重合体を重合させる。第2段目の重合反応器に導入するエチレンのモル量の、プロピレンとエチレンとの総モル量に対する割合は、52〜78%、好ましくは54〜76%である。こうして、多段重合法により、反応ブレンド型の本発明のプロピレン系樹脂を得ることができる。直列に配置された多段重合反応器を用いなくても、複数の重合反応器を用意して、順次重合反応を行うこともできる。また、第一段目および第二段目の重合反応を、それぞれ複数回行ってもよい。各重合反応工程において、分子量、Mw/Mn、あるいはプロピレン系樹脂のMFRを調整する目的で、水素を導入しても良い。
[実施例1]
重合に用いる固体触媒を、特許文献4(特表2009−516767号)の実施例1に記載された方法により調製した。具体的な製造方法は以下の通りである:窒素でパージした500mLの四つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OH(USP4,399,054の実施例2に記載された方法によるが、10000rpmの代わりに3000rpmで操作して調製した)、及び9.1ミリモルのジエチル2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に昇温し、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新鮮なTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。このようにして、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジエチル2,3−(ジイソプロピル)サクシネートを担持させた固体触媒を得た。
実施例2は、前段および後段の重合反応器の水素濃度を表1に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にして表に示すプロピレン系樹脂を得た。
実施例3は、前段および後段の重合反応器の水素濃度を表1に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にして表に示すプロピレン系樹脂を得た。
実施例4は、前段の重合反応器の水素濃度を表1に示すように変更するとともに、後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間に比較して相対的に増加させた以外は、実施例1と同様にして表に示すプロピレン系樹脂を得た。
実施例5は、前段および後段の重合反応器の水素濃度と、後段の重合反応器のエチレン濃度を表1に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にして表に示すプロピレン系樹脂を得た。
実施例6は、前段の重合反応器の水素濃度を表1に示すように変更するとともに、後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間に比較して相対的に増加させ得た以外は、実施例1と同様にして表に示すプロピレン系樹脂を得た。そしてその後、さらに追加の重合体として、高分子量高密度ポリエチレン(HDPE)(商品名:ノバテックHB130R(日本ポリエチレン株式会社製))と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、SEBS)(商品名:タフテックH1062(旭化成ケミカルズ株式会社製)とを、各々上記プロピレン系樹脂に対して7重量%および3重量%を配合した。
実施例7は、実施例6のプロピレン系樹脂にさらに追加の重合体として、エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)(商品名:エンゲージHM7487(ダウ・ケミカル日本株式会社製)を、各々上記プロピレン系樹脂に対して10重量%を配合した。
得られたプロピレン系樹脂に、実施例1と同様に造核剤として芳香族リン酸エステル系化合物(ADEKA社製NA−18)とタルク(ネオタルク鉱産社製ネオタルクUNI05)を上記プロピレン系樹脂に配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。造核剤は、樹脂組成物100重量部に対し、NA−18が0.2重量部、タルクが1.0重量部となるように配合した。
フタレート系の固体触媒を使用して、実施例1と概ね同様方法により予備重合を行なった。フタレート系の固体触媒の製造方法は、欧州特許第674991号公報に記載された方法により調製した。具体的には以下の通り製造した:無水塩化マグネシウム48g、無水エチルアルコール77gおよび灯油830mLをタービン攪拌機と引抜管とを備えた2リットルのオートクレーブに不活性ガス下に室温で導入した。オートクレーブの内容物を攪拌下に120℃に加熱して、このようにしてMgCl2 とアルコールとの間の付加物を生成し、この付加物は溶融し且つ灯油に分散したままであった。15気圧の窒素圧力をオートクレーブ内で維持する。オートクレーブ引抜管を加熱ジャケットによって120℃に外部的に加熱したが、加熱ジャケットは内径1mmを有し且つ加熱ジャケットの一端から他端まで3mであった。次いで、分散液を管に約7m/秒の速度で流した。管の出口において、分散液を5リットルのフラスコに攪拌下に捕集した(前記フラスコは灯油2.5リットルを含有し且つ−40℃の初温に維持されたジャケットで外部的に冷却した)。分散液の最終温度は、0℃である。分散液の分散相を構成する球状固体生成物を沈降させ、次いで、濾過し、固体をヘキサンのアリコートで洗浄し、次いで、乾燥することによって分離した。これらの全ての工程は窒素ガス雰囲気中で行った。最大直径50μm未満の固形球状粒子の形のMgCl2 ・3C2 H5 OH付加物130gが得られた。固体付加物を真空下で2時間乾燥し、乾燥完了後に105gであった。固体生成物を窒素流中で約60℃の温度に加熱して、アルコールを付加物から部分的に除去し、それによって MgCl2 ・2.1C2 H5 OH付加物を得た。次いで、この付加物を使用して、次の通り固体触媒成分を調製する。冷却器、機械的攪拌機および温度計を備えた1リットルのガラスフラスコにTiCl4 625mL、次いで、MgCl2 ・2.1C2 H5 OH付加物25gを攪拌下に0℃で無水窒素雰囲気中で導入した。フラスコの内容物を1時間で100℃に昇温した。温度が40℃に達する時に、フタル酸ジイソブチル9ミリモルをフラスコに導入した。温度を100℃に2時間維持した後、内容物を沈降させ、次いで、液体をサイフォンで移した。TiCl4 550mLを加え、120℃に1時間加熱した。次いで、内容物を沈降させ、液体をサイフォンで移した。次いで、固体残渣を60℃の無水ヘキサン200ccで6回洗浄し、室温で3回洗浄して、固体触媒成分を得た。上記固体触媒と、TEAL及びDCPMSを、固体触媒に対するTEALの重量比が18であり、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を、2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を重合させた。該プロピレン系重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表2に示した各重合反応器へのエチレン供給量および水素供給量(分子量、MFR調整の目的で使用)、また、重合温度、重合圧力、前段と後段の滞留時間を調整することによって、表に示すプロピレン系樹脂を得た。比較例1ならびに2は、エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン濃度、キシレン可溶分の極限粘度、キシレン不溶分の分子量分布が本発明の範囲を満たさないものを得た。
得られたプロピレン系樹脂に、造核剤として芳香族リン酸エステル系化合物(ADEKA社製NA−18)とタルク(ネオタルク鉱産社製ネオタルクUNI05)をさらに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。造核剤は、樹脂組成物100重量部に対し、NA−18が0.2重量部、タルクが1.0重量部となるように配合した。
実施例1と同様の固体触媒を用い、実施例1と同様の方法で予備重合を行った。2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器に導入してプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体)を重合させた。得られたプロピレン単独重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表2に示した各重合反応器へのエチレン供給量および水素供給量(分子量、MFR調整の目的で使用)、また、重合温度、重合圧力、前段と後段の滞留時間を調整することによって、表に示すプロピレン系樹脂を得た。
得られたプロピレン系樹脂に、造核剤として芳香族リン酸エステル系化合物(ADEKA社製NA−18)とタルク(ネオタルク鉱産社製ネオタルクUNI05)をさらに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。造核剤は、樹脂組成物100重量部に対し、NA−18が0.2重量部、タルクが1.0重量部となるように配合した。
比較例3は、前段および後段の重合反応器の水素濃度と、後段の重合反応器のエチレン濃度を実施例1から表2に示した様に変更し、さらに後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間に比較して相対的に増加させ、エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン濃度、エチレン・プロピレン共重合体の含有量、組成物のMFRが、本発明の範囲に入らないものを製造した。比較例4は、重合条件(特に後段の重合反応器の水素濃度)を実施例1から表2に示した様に変更し、プロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度が本発明の範囲に入らないものを製造した。
実施例1と同様の固体触媒を用い、実施例1と同様の方法で予備重合を行った。2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器に導入してプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体)を重合させた。得られたプロピレン単独重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表2に示した各重合反応器へのエチレン供給量および水素供給量(分子量、MFR調整の目的で使用)、重合温度、重合圧力、前段と後段の滞留時間を調整することによって、表に示すプロピレン系樹脂を得た。
比較例5は、造核剤を含まない樹脂組成物である。
実施例1と同様の固体触媒を用い、実施例1と同様の方法で予備重合を行った。2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器に導入してプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体)を重合させた。得られたプロピレン単独重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表2に示した各重合反応器へのエチレン供給量および水素供給量(分子量、MFR調整の目的で使用)、後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間の割合、重合温度、重合圧力を調整することによって、表に示すプロピレン系樹脂を得た。
比較例6は、特に前段の重合反応器の水素濃度を実施例1から表2に示した様に減少させ、樹脂組成物のMFRが本発明の範囲に入らないものを製造した。
実施例1と同様の固体触媒を用い、実施例1と同様の方法で予備重合を行った。2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器にプロピレンとともに0.17mol%のエチレンを導入してプロピレン系重合体(プロピレン・エチレン共重合体)を重合させた。得られたプロピレン・エチレン共重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表2に示した後段の重合反応器の水素濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、表に示すプロピレン系樹脂を得た。
得られたプロピレン系樹脂に、造核剤として芳香族リン酸エステル系化合物(ADEKA社製NA−18)とタルク(ネオタルク鉱産社製ネオタルクUNI05)をさらに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。造核剤は、樹脂組成物100重量部に対し、NA−18が0.2重量部、タルクが1.0重量部となるように配合した。
比較例7は、プロピレン系重合体中のエチレン濃度が本発明の範囲に入らないものを製造した。
実施例1と同様の固体触媒を用い、実施例1と同様の方法で予備重合を行った。2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器に導入してプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体)を重合させた。得られたプロピレン単独重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表3に示した各重合反応器へのエチレン供給量および水素供給量(分子量、MFR調整の目的で使用)、重合温度、重合圧力を調整することによって、表に示すプロピレン系樹脂を得た。
得られたプロピレン系樹脂に、造核剤として芳香族リン酸エステル系化合物(ADEKA社製NA−18)とタルク(ネオタルク鉱産社製ネオタルクUNI05)をさらに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。造核剤は、樹脂組成物100重量部に対し、NA−18が0.2重量部、タルクが1.0重量部となるように配合した。
比較例8および9は、特にそれぞれ後段の重合反応器のエチレンの濃度を実施例1から表3に示した様に減少および増加させ、エチレン・プロピレン系共重合体中のエチレン濃度が本発明の範囲に入らないものを製造した。
実施例1と同様の固体触媒を用い、実施例1と同様の方法で予備重合を行った。2段の重合反応器を直列に備える重合装置の前段の重合反応器に導入してプロピレン系重合体(プロピレン単独重合体)を重合させた。得られたプロピレン単独重合体を後段の重合反応器に供給し、後段の重合反応器にて、エチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、表3に示した各重合反応器へのエチレン供給量および水素供給量(分子量、MFR調整の目的で使用)、重合温度、重合圧力を調整することによって、表に示すプロピレン系樹脂を得た。
比較例10は、特に前段の重合反応器の水素の濃度を実施例1から表2に示した様に増加させ、樹脂組成物のMFRが本発明の範囲に入らないものを製造した。
比較例11は、まず、実施例1の前段の重合反応器の水素濃度を表3に示すように変更するとともに、後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間に対して増加させてプロピレン系樹脂を得た。そして、さらに追加の重合体として、エチレン・1−ブテン共重合体(EBR、商品名:エンゲージENG7380(ダウ・ケミカル日本株式会社製)を、上記プロピレン系樹脂に対して10重量%を配合した。
比較例12は、まず、実施例1の前段の重合反応器の水素濃度を表3に示すように変更するとともに、後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間に対して増加させてプロピレン系樹脂を得た。そして、さらに追加の重合体として、エチレン・1−オクテン共重合体(EOR、商品名:エンゲージENG8445(ダウ・ケミカル日本株式会社製)を、上記プロピレン系樹脂に対して10重量%を配合した。
比較例13は、まず、実施例1の前段の重合反応器の水素濃度を表3に示すように変更するとともに、後段の重合反応器の滞留時間を前段の重合反応器の滞留時間に対して増加させてプロピレン系樹脂を得た。そして、さらに追加の重合体として、高密度ポリエチレン(HDPE、商品名:ノバテックHF313(日本ポリエチレン株式会社製)を、上記プロピレン系樹脂に対して10重量%を配合した。
得られたプロピレン系樹脂に、造核剤として芳香族リン酸エステル系化合物(ADEKA社製NA−18)とタルク(ネオタルク鉱産社製ネオタルクUNI05)をさらに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。造核剤は、樹脂組成物100重量部に対して、NA−18が0.2重量部、タルクが1.0重量部となるように配合した。
なお、比較例11〜13は、追加の重合体の190℃でのMFRが本発明の範囲に入らないものを製造したものである。
実施例、比較例にて製造したプロピレン系樹脂組成物と、その性能を表1〜3に記載する。
[重合体中のエチレン濃度]
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製 JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定を行った。
[キシレン不溶分]
樹脂組成物2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、樹脂組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。このとき濾紙上に残った残留物(キシレン不溶成分と溶媒の混合物)にアセトンを加えて濾過した後、濾過されなかった成分を、80℃設定の真空乾燥オーブンにて、蒸発乾固させ、キシレン不溶分を得た。
[キシレン可溶分]
上記のキシレン不溶分を得た際の、濾過後の濾液を100mL採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置し、キシレン可溶分を得た。
[XSIV]
上記のキシレン可溶分を試料とし、ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度の測定を行った。
[プロピレン系樹脂のキシレン不溶分の分子量分布(Mw/Mn)]
上記のキシレン不溶分を試料とし、以下の様に分子量分布(Mw/Mn)の測定を行った。
装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工社製UT−G(1本)、UT−807(1本)、UT−806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、キシレン不溶分の試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調整した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580〜745万のポリスチレン標準試料(shodex STANDARD、昭和電工株式会社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark−Houkinsの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10−4、α=0.707、ポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10−4、α=0.75を使用した。
[樹脂組成物のMFR]
樹脂組成物のMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
[追加の重合体のMFR]
JIS K 7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
[耐衝撃性]
各樹脂組成物を、成形機としてFANUC社製α100Cを用い、成形温度230℃、成形圧力50MPaで射出成形して、130×130×2mm板状の成形品を作製した。
この成形品について、0℃の環境下の面衝撃強度(J)を、面衝撃強度測定装置(島津製作所社製ハイドロショット)により測定し、以下の基準で耐衝撃性を評価した。
◎:衝撃吸収エネルギーが20J以上
○:衝撃吸収エネルギーが10J以上
×:衝撃吸収エネルギーが10J未満
[剛性]
JIS K6921−2に準拠し、各樹脂組成物の曲げ弾性率を測定した。
[耐白化性]
各樹脂組成物を、成形機としてFANUC社製α100Cを用い、成形温度230℃、成形圧力50MPaで射出成形して、130×130×2mm板状の成形品を作製した。
この成形品を、島津製作所社製ハイドロショットを用いて、成形品を破壊しない程度の衝撃を加えたときの白色化の有無を目視で観察し、以下の基準で耐白化性を評価した。
◎:白化が見られなかった。
○:僅かに白化が見られた。
×:白化が見られた。
[ブリッジ部破断伸び]
各樹脂組成物を、成形機として株式会社ショージ社製50トンプレス成形機を用い、溶融温度230℃で樹脂を溶融した後、10℃で冷却したプレス盤にて成形圧力100MPaでプレス成形して、中央に直径2mmの半円柱状のブリッジ部を4本持つ110×25×2mm板状の成形品を作製した。成形後24時間以上経過後に、ブリッジ部4箇所のみが残るように、ナイフでスリットを入れた後に、この成形品のブリッジ部の破断伸び(mm)を東洋ボールドウィン株式会社製TENSILON UTM−III−500を用いて、2mm/分の引張速度で測定し、以下の基準でブリッジ切れを評価した。
◎:ブリッジ部の伸びが小さく、切れが良い
○:ブリッジ部の伸びが中程度で、切れが良い
×:ブリッジ部の伸びが大きく、切れが悪い
一方、フタレート系触媒を用いて重合させた比較例1は、耐白化性、ブリッジ切れ特性が劣っており、比較例2は、耐白化性が劣っていた。
エチレン・プロピレン共重合体の含有量が多く、エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン濃度が少ない比較例3は、剛性が低く、耐白化性が劣っていた。また、MFRの値がコンプレッション成形には適さないため、ブリッジ切れ特性の評価は実施しなかった。
プロピレン系樹脂のキシレン可溶分のXSIVが低い比較例4は、ブリッジ切れ特性に劣っていた。
造核剤を含まない比較例5は、ブリッジ切れ特性に劣っていた。
樹脂組成物のMFRが低い比較例6は、MFRの値がコンプレッション成形には適さないため、ブリッジ切れ特性の評価は実施しなかった。
プロピレン系重合体中にエチレン濃度を含有する比較例7は、ブリッジ切れ特性が劣っていた。
エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン濃度が少ない比較例8は、耐白化性およびブリッジ切れ特性が劣っていた。
エチレン・プロピレン共重合体中のエチレン濃度が多い比較例9は、ブリッジ切れ特性が劣っていた。
樹脂組成物のMFRが高い比較例10は、耐衝撃性に劣り、また、MFRがコンプレッション成形に適さないため、ブリッジ切れ特性の評価は実施しなかった。
追加の重合体のMFR(190℃)が高い比較例11および比較例12は、ブリッジ切れ特性が劣っていた。さらに、追加の重合体のMFR(190℃)が低い比較例13は、耐衝撃性、耐白化性が劣っていた。
Claims (7)
- プロピレン系樹脂および造核剤を含有する、コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物であって、
該プロピレン系樹脂が、プロピレンの単独重合体およびエチレン単位含有量が0.5重量%以下のプロピレン・エチレン共重合体から選択される、少なくとも1種のプロピレン系重合体と、エチレン単位含有量が68〜80重量%のエチレン・プロピレン共重合体との反応ブレンド樹脂であり; 該エチレン・プロピレン共重合体の含有量が、該プロピレン系樹脂の重量を基準として13〜20重量%であり;
該プロピレン系樹脂のキシレン可溶分の135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が、1.3〜1.9dl/gであり;
該プロピレン系樹脂のキシレン不溶分のMw/Mnが7〜15であり;
造核剤の含有量が、前記プロピレン系樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であり;そして
JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した該樹脂組成物のメルトフローレートが6〜14g/10分である、コンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。 - 該プロピレン系樹脂が、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;
有機アルミニウム化合物;および
ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物
を含む触媒を用いて製造されたものである、請求項1に記載の樹脂組成物。 - 該プロピレン系樹脂が、該プロピレン系樹脂を構成する重合体とは異なる他の重合体を追加で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 該ポリプロピレン系樹脂組成物を100重量%とした際の、追加で含む重合体の含有量が、15重量%以下である、請求項3に記載の樹脂組成物。
- 該追加で含む重合体が、エチレン単位を含有する重合体である、請求項3または4に記載の樹脂組成物。
- JIS K 7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した、追加で含む重合体のメルトフローレートが、0.15〜0.45g/10分である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンプレッション成形用ポリプロピレン系樹脂組成物をコンプレッション成形することにより得られた成形品。
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