JP2014074585A - 時計用部品、及び時計用部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】母材136と、母材136の表面を被膜するめっき被膜133と、を有し、めっき被膜133は、表層及び内部の全体に亘って多数の微小孔134が存在するポーラス構造をなしている。これら微小孔134は、球状の空隙であり、それぞれが同等の大きさに形成されている。そして、めっき被膜133の微小孔134内には、潤滑油Oが表面張力或いは毛細管現象等により保持されている。よって、母材136のうちがんぎ歯車部132の摺動面を含む側面の全体は、潤滑油Oを保持可能な保油面として機能する。
【選択図】図7
Description
例えば、特許文献1には、がんぎ車のうち、爪石が摺動する摺動面上に陽極酸化膜を形成し、この陽極酸化膜に潤滑剤を含浸させる構成が開示されている。
また、特許文献2,3には、固体潤滑剤であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の微小粒子を含むめっき被膜を摺動面上に形成する構成が開示されている。
さらに、特許文献4には、ガラスビーズが分散されたフォトレジストを電鋳型として電鋳を行うことで、摺動面に保油孔を有するがんぎ車を形成する構成が記載されている。
また、特許文献2,3の構成にあっては、固体潤滑剤として用いるPTFEは、耐摩耗性が低く、寿命が短いという問題がある。また、摩耗により発生した摩耗粉が時計内で飛散することで、飛散した箇所の摩耗の促進や、外観を損なうという問題もある。
特許文献4の構成にあっては、保油孔が摺動面の表層部分にしか形成されないので、摺動面の摩耗により保油孔が除去された場合には、潤滑油の保持機能を発揮できなくなる。また、時計用部品自体を電鋳により形成するため、材料や形状の選択に制限があり、この場合にも製造の自由度が低くなる。
また、めっき被膜中に微小孔が形成されているため、めっき被膜が摩耗した場合であっても、表層部分には順次微小孔が露出し、露出した微小孔内で潤滑油が保持されることになる。これにより、潤滑油の枯渇を抑制し、潤滑性能を長期に亘って確実に維持することができる。そのため、メンテナンス期間の長期化を図ることができる。
この構成によれば、めっき被膜中の微小粒子を除去することで、めっき被膜中に微小孔を形成することができる。そして、これら微小孔内に潤滑油を充填することで、上述した作用効果を奏することになる。
特に、めっき処理により母材を被膜するため、従来のように陽極酸化処理により母材を被膜する方法や、時計用部品自体を電鋳により製造する場合等と異なり、材料や形状の選択の自由度を向上させることができる。これにより、製造の自由度を向上させることができる。
この構成によれば、母材及びめっき被膜を溶融させずに、微小粒子のみを蒸発させることができるので、微小孔を有するめっき被膜を簡単に形成することができる。
この構成によれば、各粒子間での粒子径が比較的均一であるので、後に形成される微小孔の大きさが均一になり易いという効果がある。
(機械式時計)
はじめに、機械式時計について説明する。なお、図1は、ムーブメント表側の平面図である。図2は、ムーブメント裏側の一部を図示した平面図である。図3は、香箱車からがんぎ車の部分を図示する概略部分断面図である。図4は、がんぎ車からてんぷの部分を図示する概略部分断面図である。
一般に、地板102の両側のうち、文字板104が配される側をムーブメント100の裏側と称し、文字板104が配される側の反対側をムーブメント100の表側と称する。また、ムーブメント100の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント100の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
また、筒かな150には、二番車124に対するスリップ機構が設けられている。筒かな150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して筒車154が回転する。そして、筒車154に取り付けられた時針156が「時」を表示する。
緩急針168は、てんぷ受166に回転可能に取り付けられている。また、てんぷ140は、地板102及びてんぷ受166に対して回転可能に支持されている。
図4に示すように、アンクル142は、アンクル体142dと、アンクル真142fとを備えている。アンクル真142fは、上軸部142aと、下軸部142bとを備えている。
また、二番車124、三番車126、四番車128及びがんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対してそれぞれ回転可能に支持されている。すなわち、二番車124の上軸部124a、三番車126の上軸部126a、四番車128の上軸部128a、及びがんぎ車130の上軸部130aは、それぞれ輪列受162に対して回転可能に支持されている。また、二番車124の下軸部124b、三番車126の下軸部126b、四番車128の下軸部128b、及びがんぎ車130の下軸部130bは、それぞれ地板102に対して回転可能に支持されている。
上述した潤滑油は、精密機械用油であるのが好ましく、いわゆる時計油であるのが特に好ましい。
また、地板102、香箱受160、輪列受162及びアンクル受164は、黄銅等の金属で形成しても良いし、ポリカーボネート等の樹脂で形成しても良い。
図5、図6に示すように、がんぎ車130は、上述したがんぎ歯車部132と、がんぎ歯車部132の中心に打ち込まれた軸部材131と、を備えている。
母材136は、がんぎ歯車部132の外形形状をなすものであり、例えば、炭素鋼や、銅合金、真鍮、洋白、ステンレス等の金属材料により形成されている。なお、母材136は、めっき処理が可能な材料であればよく、上述した金属材料の他に、樹脂材料を採用することも可能である。
図7に示すように、本実施形態のめっき被膜133は、表層及び内部の全体に亘って多数の微小孔134が存在するポーラス構造をなしている。これら微小孔134は、例えば球状の空隙であり、それぞれが同等の大きさに形成されている。そして、めっき被膜133の微小孔134内には、潤滑油Oが表面張力或いは毛細管現象等により保持されている。よって、母材136のうちがんぎ歯車部132の摺動面132bを含む側面の全体は、潤滑油Oを保持可能な保油面として機能する。
次に、上述したがんぎ車の製造方法について説明する。図8はがんぎ車の製造方法を説明するためのフローチャートである。また、図9、図10はがんぎ車の製造方法を説明するための工程図であって、図7に相当する部分の断面図である。
まず、図8に示すように、所定の厚みに調整された平板を用意した後、フォトリソグラフィ技術や、プレス成形、カッティング等を行い、歯車状の母材136を形成する(S10:母材形成工程)。
母材種 :高炭素鋼
めっき材種 :ニッケル−リン
めっき厚 :5μm
めっき処理方法 :無電解めっき
微小粒子材種 :PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
微小粒子の平均粒子径:0.1μm
以上により、本実施形態のがんぎ車130が完成する。
この構成によれば、めっき被膜133がポーラス構造となるので、その微小孔134内に潤滑油Oをムラなく均等に保持させることができる。また、微小孔134内に潤滑油Oが保持されるので、潤滑油Oと外気との接触面積を抑え、潤滑油Oの揮発を抑えることができる。
また、めっき被膜133中に微小孔134が形成されているため、図12に示すように、めっき被膜133が摩耗した場合であっても、表層部分には順次微小孔134が露出し、新たに露出した微小孔134内で潤滑油Oが保持されることになる。
図13及び図14は、新たに露出した微小孔内で潤滑油が保持される様子の一例を示す概念図である。
図13に示すように、母材136の表面(外観部)の複数の微小孔134aには、潤滑油Oaが保持されている。
そして、図14に示すように、めっき被膜133の摩耗によって、微小孔134aが削られると、めっき被膜133の内部の微小孔134bが露出される。
すると、微小孔134aに保持されている潤滑油Oaが、新たに露出された微小孔134bへ流れ込み(図14の矢印)、微小孔134b内で保持されることとなる。
この様にめっき被膜の摩耗によって、新たに露出された微小孔に潤滑油が順次保持されるため、潤滑油の枯渇を抑制し、潤滑性能を長期に亘って確実に維持することができる。そのため、メンテナンス期間の長期化を図ることができる。
この構成によれば、めっき被膜133中の微小粒子135を除去することで、めっき被膜133中に多数の微小孔134を形成することができる。そして、これら微小孔134内に潤滑油Oを充填することで、上述した作用効果を奏することになる。
特に、本実施形態では、めっき処理により母材136を被膜するため、従来のように陽極酸化処理により母材136を被膜する方法や、がんぎ歯車部132自体を電鋳により製造する場合等と異なり、材料や形状の選択の自由度を向上させることができる。これにより、製造の自由度を向上させることができる。
例えば、上述した実施形態では、がんぎ車130の母材136全体にめっき被膜133を形成する構成について説明したが、これに限らず、母材136のうち、少なくとも摺動面132bに位置する領域にめっき被膜133が形成されていれば構わない。
また、上述した実施形態では、機械式時計を例にして説明したが、これに限らず、アナログクオーツ時計に本発明を採用しても構わない。
Claims (4)
- 母材と、
前記母材の表面を被膜するめっき被膜と、を有し、
前記めっき被膜中には微小孔が形成されていることを特徴とする時計用部品。 - 母材にめっき被膜を形成するめっき工程を有し、
前記めっき工程は、微小粒子が分散されためっき液中に前記母材を浸漬させ、前記微小粒子を含む前記めっき被膜を形成し、
前記めっき工程の後、前記めっき被膜中の前記微小粒子を除去する除去工程を有していることを特徴とする時計用部品の製造方法。 - 前記微小粒子は、前記母材及び前記めっき被膜よりも沸点の低い材料からなり、
前記除去工程では、前記めっき被膜の沸点以上、前記母材及び前記めっき被膜の沸点以下の温度で前記めっき被膜を加熱することで、前記めっき被膜中の前記微小粒子を蒸発させることを特徴とする請求項2記載の時計用部品の製造方法。 - 前記微小粒子は、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項2または請求項3記載の時計用部品の製造方法。
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