JP2013243333A - チップオンウエハ接合方法及び接合装置並びにチップとウエハとを含む構造体 - Google Patents

チップオンウエハ接合方法及び接合装置並びにチップとウエハとを含む構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】チップとウエハとの間又は積層された複数のチップ間の電気的接続を確立し機械的強度を上げる、ウエハ上にチップを効率よく接合する技術を提供する。
【解決手段】チップ側接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップS1と、基板の接合部を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップS2と、表面活性化処理、親水化処理された複数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けるステップS3と、基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップS4を備える。
【選択図】図1

Description

本願発明は、ウエハ上にチップを実装するためのチップオンウエハ(COW,Chip−On−Wafer)接合方法及びその接合装置並びにウエハとウエハ上に接合された複数のチップとを含む構造体に関する。
エレクトロニクスの分野では、デバイス実装の更なる高密度化が求められている。そこで、既にパッケージされた半導体集積回路(チップ)をフリップチップ実装技法によりウエハ(基板)上に接合する技術が注目を集めている。チップは、バンプ(突起)状の又は平坦な金属領域を有しており、この金属領域を介して、チップとウエハとの間、あるいはチップが3次元的に積層される場合には積層された複数のチップ間の電気的接続を確立することができる。また、チップは、機械的強度を上げるためにウエハ又は他のチップと接合するための部位を有してもよく、この部位は金属領域として構成されることもある。そして、チップとウエハとの間又は積層された複数のチップの間で、上記金属領域を介して電気的接続を確立し機械的強度を上げることで、チップとウエハとの間又は積層された複数のチップ間の電気信号授受の高速化と、電子デバイス実装の高密度化を実現することができる。
フリップチップ実装技法におけるチップの接合のために、非導電性樹脂(NCP、Non Conductive Paste)を用いる手法が開発されている。チップが接合される基板表面に塗布されたNCPの層へ、チップを押し込み、チップの金属領域を基板上の金属領域などの所定の部位に接触させて仮接合を行う。その後、所定の熱処理を施す本接合を行い、チップとウエハ(基板)との間の電気的接続を確立し及び機械的強度を上げる。NCPは、チップオンウエハ接合のために鉛フリー化に伴い一般的に採用されている材料であり、チップを基板に対して接着又は仮固定する機能を有するとともに、接合されたチップとウエハとの間の隙間を埋めてチップとウエハとの間の機械的強度を上げ、接合面を環境から保護するアンダーフィル材として使用されている。
また、NCPを使用しないフリップチップ実装技法として、はんだ材料が塗布されたチップの金属領域を基板上の所定の部位に接合することが行われている。この場合、接合完了後にはんだ材料が接合界面に残る。はんだ材料は、比較的脆く、抵抗率も高いため、形成された接合界面の機械的強度及び導電性を向上させることができない。また、一般的に、はんだ材料には樹脂成分を含むフラックスが含まれているので、接合完了後に、残渣のフラックスを除去するいわゆるリフローと呼ばれるプロセスが行われる。しかし、チップ実装の高密度化、接合面の構成の微細化に伴い、フラックスの除去が困難になる傾向にある。
また、従来、半導体素子における電極と封止にはハンダと樹脂が使われ、まずハンダの濡れを確保するフラックスが塗布された基板上へハンダバンプ付チップを実装、仮固定し、無加圧リフロー中で加熱溶融して接合、その後フラックスを洗浄除去し、隙間にアンダーフィル材である樹脂を流し込み加熱硬化させて封止するという手法であった。しかし、電極接合のファインピッッチ化に伴いバンプの微細化が進み、フラックスの洗浄ができなくなり、かつ、アンダーフィルが流し込めなくなった。また、三次元積層に伴ってチップの薄片化がなされ、無加圧状態ではチップが反って接合できない状況になり、一つ一つのチップを加圧加熱冷却する必要から量産性が得られなくなった。そこで対応するためにフラックスを使用しないで、電極接合と封止を同時に行う手法が求められた。また、低温化や加圧中の加熱時間の短縮が求められた。そのためには、金属電極と封止材となる酸化物や窒化物、樹脂というものが同時に低温で接合されなければいけない。または、封止枠を作って内部電極間を真空、不活性に保つ必要がある。
特許文献2に開示されているような従来の接合方法では、封止材の接合は可能としているが金属電極の接合は二の次となっている。
特開2003−152027 特表2006−5173447
従来のNCP又ははんだ材料を用いたチップのウエハ(基板)への接合方法においては、樹脂がチップの金属領域と基板との間の接合界面に残存するという問題がある。チップを基板に所定の力で押し付け、あるいは仮接合後に熱処理を施しても、NCPなどの仮接合に用いられた樹脂が接合界面に残存しうるという課題があった。この残存物は、接合後には接合界面内に取り込まれているので、外部から直接物理的又は化学的に作用することができない。すなわち、接合が完了した後に上記残存物を除去することは困難である。そして、接合界面に取り込まれて残存する樹脂は、チップと基板との間の導電性及び機械的強度を低下させ、接合部の信頼性を低下させる要因となるという課題があった。
そこで、本願発明は、接合界面に樹脂などの望ましくない残存物を残さないようにして、チップとウエハとの間又は積層された複数のチップ間の電気的接続を確立し機械的強度を上げる、ウエハ上にチップを効率よく接合する技術を提供することを目的とする。
また、本願発明は、半導体として一番重要な電気特性を示す電極の接合を重視し、かつ、電極接合と封止を同時に達成するものである。
本願発明において、ウエハ(以下、基板と称する。)は、板状の半導体を含むが、これに限定されず、半導体以外にも、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックなどの材料、又はこれらの複合材料により形成されていてもよく、円形、長方形等の種々の形状に形成される。
本願において、「チップ」とは、半導体部品を含む成型加工半導体の板状部品、パッケージされた半導体集積回路(IC)などの電子部品等を示す広い概念の用語として与えられる。「チップ」には、一般に「ダイ」と呼ばれる部品や、基板よりも寸法が小さくて、複数個を当該基板に接合できるほどの大きさを有する部品又は小型の基板も含まれる。また、電子部品以外に、光部品、光電子部品、機械部品も含まれる。
上記の技術的課題を解決するために、本願発明に係る、一つ又は複数の金属領域を有するチップ側接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板に接合する方法は、チップ側接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、基板の接合部を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、表面活性化処理されかつ親水化処理された複数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けるステップと、基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップと、を備えるようにしたものである。本願発明によれば、チップと基板との間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。また、すべてのチップを基板上に取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。
本願発明に係る接合方法は、複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップが、チップの金属領域が基板の接合部に接触する際に、0.1秒から10秒に亘り、チップの金属領域及び基板の接合部が摂氏100度から摂氏350度の温度となるように加熱するようにしてもよい。これにより、仮接合後及び本接合後のチップと基板とを含む構造体の接合強度を向上させることができる。接合面の平坦度を高めたもの(例えば表面粗さが数nmのもの)は、実質的な接触面積が大きくなることから、本来の水酸基(OH基)による接合が強固な接合となり、低温、低圧での接合でも十分な接合強度を得ることが可能である。一方、接合面の平坦度が低いもの(例えば表面粗さが数十〜数百nmのもの)の場合は、加圧(数十M〜数百MPa)により金属領域を押しつぶすことで実質的な接触面積を大きくすることや、摂氏数百度程度で加熱(例えば150℃)により拡散を促し接合界面で原子の動きを促進させることで、実質的な接合面積を大きくすることができる。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面への水の供給及び基板の接合部への水の供給が、それぞれ、チップ側接合面及び基板の接合部の周りの雰囲気における相対湿度が10%から100%となるように制御されることで行われるようにしてもよい。これにより、表面活性化処理後に形成された新生表面上に水を均一かつ密に付着させることができる。また、接合面の雰囲気、接合面が配置されたチャンバ内の湿度を、大気の湿度よりも高くすることで、接合面に水を強制的に付加する方法が好ましい。通常、大気の湿度は35%程度である場合が多いので、チャンバ内の湿度を例えば40%〜100%にすることが好ましい。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面への水又はOH含有物質の付着及び基板の接合部への水又はOH含有物質の付着は、上記表面活性化処理の後、大気に暴露することなくチャンバー内で行われるようにしてもよい。これにより、有機物や不純物の付着を押さえて水のみを付着させることができるので、効率良く接合面上に水酸基(OH基)を生成することが可能となる。この際、チャンバ内の湿度は大気の湿度よりも高い値であることが好ましい。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面を親水化処理するステップの後、複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップの前に、当該チップのチップ側接合面に更に水又はOH含有物質を付着させる水付着ステップを更に備えるようにしてもよい。これにより、表面活性化処理された接合面上に水又はOH含有物質を付着し、仮接合後のチップと基板とを含む構造体の接合強度を高めることができる。また、従来の表面活性化方法では、アルゴンイオン衝撃により接合面の付着物の除去と活性化とを行うが、大気に暴露した時点で表面活性化処理された接合面に不純物が再付着し、接合ができなくなるため、接合を真空中で行う必要があった。本願発明に係る接合方法では、表面活性化処理された接合面に水又はOH含有物質を付着させることで、接合面上に水酸基(OH基)が形成され、水分子が結合されやすい親水化された状態になる。したがって、親水化処理された接合面を大気に暴露しても水分子の付着により接合面が大気から保護されている。水を介在させて複数のチップを仮接合をした後、本接合での加熱により、複数のチップでの接合界面から一括して水を除去し、不純物が残ることなく接合界面を形成することが可能になる。
本願発明に係る接合方法は、水付着ステップが、チップ側接合面の金属領域に水を吹き付けることで行われるようにしてもよい。これにより、表面活性化処理され親水化処理された接合面上に効率よくかつ均一により多い量の水を付着することができる。
本願発明に係る接合方法は、水付着ステップが、チップ側接合面の金属領域を液体状の水に浸漬させることで行われるようにしてもよい。これにより、表面活性化処理された接合面上により多量の水をより確実に付着することができる。
本願発明に係る接合方法は、粒子が、Ne,Ar,Kr,Xeからなる群から選ばれる元素の中性原子、イオン若しくはラジカル又はこれらを混合してもよい。これらの希ガスは、比較的大きい質量を有しているので、効率的にスパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になる。
本願発明に係る接合方法は、粒子の運動エネルギーが、1eVから2keVとなるようにしてもよい。これにより、さらに効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じさせることができる。
本願発明に係る接合方法は、複数のチップ又は基板に対して交番電圧を印加することで、チップ側接合面又は基板の接合部の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の粒子を電圧によりチップ側接合面又は基板の接合部に向けて加速させることにより、粒子に所定の運動エネルギーを付与するようにしてもよい。これにより、プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面又は基板の接合部から離間された位置から、チップ側接合面又は基板の接合部に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射するようにしてもよい。これにより、高い運動エネルギーを粒子に付与することができるので、効率良く表面層の除去をし、さらには新生表面をアモルファス化することができる。アモルファス化した新生表面は強固な結晶構造をしていないので、当該アモルファス化した新生表面の原子構造に沿って水が付着され水酸基(OH基)が形成されるので、効率よく水酸基(OH基)を接合面上に形成することができる。
上記基板を接合する方法は、表面活性化処理において、粒子が、接合面から離間して配置されたイオンビーム源又は中性原子ビーム源により、当該接合面に向かって加速されて放射されるようにしてもよい。イオンビーム源又は中性原子ビーム源を使用することで、プラズマ装置と異なり、清浄に親水化処理された接合面を形成することができる。
上記基板を接合する方法は、表面活性化処理ステップにおいて、粒子が有する運動エネルギーが50eVから2keVであり、粒子が放射される前の真空度が10−5Pa以下であって、かつ、粒子が放射されている間の真空度が1Pa以下であるようにしてもよい。これにより、イオンビーム源又は中性原子ビーム源を用いて、典型的なプラズマ発生装置では行えない条件で表面活性化処理を行うことで、プラズマ処理に起因した表面の再汚染を回避し、さらに清浄に親水化処理された接合面を形成することができる。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面は金属領域以外の領域に非金属領域を有し、当該非金属領域は樹脂により形成し、チップ側接合面又は基板の接合部から離間した位置から、チップ側接合面又は基板の接合部に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射して表面活性化処理を行うようにしてもよい。これにより、樹脂などが接合界面に残らない清浄な接合界面を形成し、接合界面の接合強度を向上させることができる。
例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)などのプラズマ発生装置を用いて、接合面に対して交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子を、上記電圧により接合面に向けて加速させることで表面活性化処理を行うと、以下のような接合面の汚染の問題が生じる場合がある。すなわち、表面活性化処理のスパッタリング現象により弾き飛ばされ、接合面周りの雰囲気に存在する樹脂の成分や不純物の一部が、上記電圧により接合面に引き寄せられるように加速されて衝突し得る。これにより、表面活性化処理された金属領域の表面に樹脂の成分や不純物が付着して接合面は汚染される。その結果、チップと基板とを含む構造体において、高い接合強度を得ることができない場合がある。
このような場合に、イオンビーム源や、高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)などの中性原子ビーム源を用いて表面活性化処理を行うことで、イオンビーム源や中性原子ビーム源から加速して放射された粒子(例えばアルゴンなどの不活性ガス)のみが接合面に衝突し、弾き飛ばされた樹脂や不純物が金属領域へ向かって加速されることはなくなる。その結果、金属領域への樹脂の再付着などによる接合面の汚染の問題は低減され、さらに高い接合強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。
本願発明に係る接合方法は、構造体を加熱するステップが、当該構造体を樹脂が硬化する温度範囲に保つことを含むようにしてもよい。これにより、貼り合わせ(取り付け)により接触していない接合面では加熱により樹脂を流動化かつ硬化させて、貼り合わせ(取り付け)により接触している接合面ではさらに、接合界面での機械的強度を上げるのみならず、金属領域周りを絶縁体として封止することがきる。
本願発明に係る接合方法は、複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップが、摂氏300度以下、かつ樹脂の硬化温度未満で行われるようにしてもよい。従来の金属の接合のために必要であった摂氏350度での加熱では、高温耐熱性の樹脂であるBCBしか、上記樹脂として使用できなかったが、本願発明に係る方法では、摂氏300度以下でウエハを基板に貼り合わせて(いわゆる仮接合をし)、摂氏300度以上で硬化が進む安価で適用が容易なエポキシ樹脂などの樹脂を使用することができるようになる。したがって、プロセスの低コスト化を図ることができる。
本願発明に係る接合方法は、複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップが、チップと基板とを互いに近接する方向に加圧するステップを含み、当該加圧ステップが、金属領域に対して0.5〜400MPaの圧力で行われるようにしてもよい。これにより、仮接合後のチップと基板との構造体の接合強度を高めることができる。
また、本願発明に係る接合方法は、基板と基板上に取り付けられた複数のチップを含む構造体を加熱するステップが、摂氏100度から金属領域を形成する金属の融点を超えない温度までの温度で、10分から100時間に亘って行われるようにしてもよい。これにより、チップと基板とを含む構造体の最終的な接合強度を高めることができる。
本願発明に係る接合方法は、基板と基板上に取り付けられた複数のチップを含む構造体を加熱するステップが、基板と基板に接合された複数のチップとを、互いに近接する方向に加圧するステップを含むようにしてもよい。これにより、チップの金属領域と基板との間の実質的な接合面積を大きくして、チップと基板からなる構造体の最終的な接合強度をさらに高めることができる。
本願発明に係る接合方法は、金属領域は、銅(Cu)、はんだ材料、金(Au)及びこれらの合金からなる群から選ばれる材料により形成されているようにしてもよい。これにより、チップと基板との間の電気的接続部位の導電性を高めるとともに、本願発明により生産されるチップと基板とを含む構造体を様々な電子技術に応用することができる。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面は金属領域以外の領域に非金属領域を有し、金属領域と非金属領域の表面はほぼ同一面上にあるようにしてもよい。これにより、チップと基板との間の隙間をなくし、接合強度を高め、最終製品の厚みを小さくしデバイスの高密度化を図ることができる。また、接合界面を外部の雰囲気から保護して酸化や汚染粒子の侵入を防ぐので、最終製品の信頼性を高め、かつ寿命を長くすることができる。
本願発明に係る接合方法は、チップ側接合面の非金属領域が、疎水化処理されたチップ側疎水化領域を有し、基板の接合部が、チップの金属領域に対応する接合領域と、疎水化処理された基板側疎水化領域とを有し、複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップが、チップの金属領域と基板の親水化処理された接合領域とが接触するように行われるようにしてもよい。これにより、チップを基板の接合部上の所定の位置に精度良く位置決めして取り付けることができる。
本願発明に係る接合方法は、金属領域が、チップ側接合面の金属領域以外の領域に対して突出するように形成されているようにしてもよい。これにより、チップの金属領域と基板との間の接触を確実にし、チップと基板との間の電気的接続を確実に確立し、機械的強度を高めることができる。
本願発明に係る接合方法は、金属領域が、一つ又は複数の第一の金属領域と当該第一の金属領域を囲むように形成された閉じた環状の第二の金属領域とを有するようにしてもよい。これにより、電気的接続を確立する金属領域に係る接合界面を外部雰囲気に対して封止することにより、当該接合界面の信頼性を高め、かつ寿命を長くすることができる。
本願発明に係る接合方法は、チップに所定の検査を行い、良好と判断されたチップのみを供給するステップを更に含むようにしてもよい。これにより、検査により良好と判断されたチップのみを実装することにより、本願発明の接合方法により生産される最終製品の歩留まりを高めることができる。
本願発明に係る、一つ又は複数の金属領域を有する第一接合面と当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面とを有する所定数のチップからなるチップ層を、複数の層に亘り、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する方法は、チップの第一接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、基板の接合部を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、表面活性化処理されかつ親水化処理された所定数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けるステップと、次に取り付けるべき所定数のチップの第一接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、基板上に積層されているチップの中で最上層の所定数のチップの第二接合面を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、表面活性化処理されかつ親水化処理された次に取り付けるべき所定数のチップを、それぞれ、当該チップの金属領域が最上層の所定数のチップの第二接合面に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された最上層の所定数のチップ上に取り付けるステップと、複数のチップ層に亘りチップを基板上に取り付けた後に、基板と基板上に取り付けられたチップとを含む構造体を加熱するステップと、を備えるようにしたものである。本願発明によれば、チップと基板との間及びチップ間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有する複数層のチップと基板とを含む構造体を製造することができる。複数層に亘ってすべてのチップを取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数層のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。
本願発明に係る、一つ又は複数の金属領域を有するチップ側接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板に接合する装置は、チップ側接合面の少なくとも金属領域を表面活性化処理するために、所定の運動エネルギーを有する粒子を当該チップ側接合面に対して衝突させるチップ用表面活性化処理手段と、基板の接合部を表面活性化処理するために、所定の運動エネルギーを有する粒子を当該基板の接合部に対して衝突させる基板用表面活性化処理手段と、表面活性化処理されたチップの金属領域を親水化処理するために、当該チップの金属領域に水又はOH含有物質を付着させるチップ用親水化処理手段と、表面活性化処理された基板の接合部を親水化処理するために、当該基板の接合部に水又はOH含有物質を付着させる基板用親水化処理手段と、複数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、基板の対応する接合部上に取り付けるチップ取付手段と、を備えて構成されるようにしたものである。本願発明によれば、チップと基板との間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を与えるチップと基板とを含む構造体を製造することができるという効果を奏する。また、すべてのチップを基板上に取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。
本願発明に係る接合装置は、チップ用表面活性化処理手段により表面活性化処理され、チップ用親水化処理手段により親水化処理されたチップ側接合面に水を付着させる水付着手段を更に備えるように構成されてもよい。これにより、表面活性化処理と親水化処理が施された接合面上に水を付着し、仮接合後のチップと基板とを含む構造体の接合強度を高めることができる。
また、本願発明に係る接合装置は、チップ取付手段が、チップを基板に向けて搬送するチップ搬送手段と、当該チップ搬送手段により搬送されたチップを受け取って基板上に載置するチップ載置手段とを有して構成され、水付着手段が、チップ搬送手段に設けられて、チップ載置手段がチップを受け取った後にチップ側接合面に水を吹き付けるように構成されてもよい。これにより、チップの搬送と同期した効率のよいプロセスを実施することができる。
本願発明に係る接合装置は、水付着手段が、チップ搬送手段に形成された孔部を有して構成され、当該孔部を通して水がチップ側接合面に吹き付けられるように構成されてもよい。これにより、簡単な構成により水付着手段を構成し、装置を小型化することができる。
本願発明に係る接合装置は、孔部が、チップを真空吸着するためにも使用されるように構成されてもよい。これにより、チップの真空吸着と水付着とを行う部位を孔部に共通化することで、さらに装置を小型化することができる。
本願発明に係る接合装置は、水付着手段が、チップ取付手段によりチップが移動させられる経路上に固定されて、チップが水付着手段を通過するときにチップ側接合面に向かって水を吹き付けるように構成されてもよい。これにより、少ない数、例えば一つの水付着手段で水付着を行うことができる。
本願発明に係る接合装置は、水付着手段が、チップ取付手段によりチップが移動させられる経路上に固定されて、液体状の水を収容する水収容器を含むように構成されてもよい。これにより、表面活性化処理された接合面上に多量の水をより確実に付着することができる。
本願発明に係る接合装置は、チップ用表面活性化処理手段と基板用表面活性化処理手段とが、それぞれ、複数のチップと基板とに対して交番電圧を印加することで、チップ側接合面と基板の接合部との周りに、粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の粒子を電圧によりチップ側接合面と基板の接合部とに向けて加速させることにより、粒子に所定の運動エネルギーを付与する、プラズマ発生装置を有して構成されるようにしてもよい。これにより、プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
本願発明に係る接合装置は、チップ用表面活性化処理手段と基板用表面活性化処理手段とが、それぞれ、チップ側接合面と基板の接合部とから離間されて配置され、チップ側接合面と基板の接合部とに向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射する、粒子ビーム源を有して構成されるようにしてもよい。これにより、高い運動エネルギーを粒子に付与することができるので、効率良く表面層の除去をし、さらには新生表面をアモルファス化することができる。
本願発明に係る接合装置は、チップ用親水化処理手段と基板用親水化処理手段とが、一つの親水化処理手段により実現されるようにしてもよい。これにより、接合装置をより簡略化し、小型化することができるとともに、チップと基板とを含む構造体の生産効率を上げることができる。
本願発明に係る接合装置は、チップ用表面活性化処理手段とチップ用親水化処理手段とが、共通の粒子ビーム源を有して構成されるようにしてもよい。これにより、接合装置をより小型化することができるとともに、チップと基板とを含む構造体の生産効率を上げることができる。
本願発明に係る接合装置は、チップ取付手段が、チップを基板の対応する接合部上に取り付ける際に、チップと基板とを互いに近接する方向に加圧する手段を更に有し、加圧手段が、チップの金属領域に0.5〜400MPaの圧力を印加するように構成されてもよい。これにより、仮接合後及び本接合後に得られるチップと基板とを含む構造体の接合強度を高めることができる。
本願発明に係る接合装置は、複数のチップと基板とを含む構造体を加熱するための、加熱手段を更に備えて構成されてもよい。これにより、仮接合されたチップと基板との構造体を基板単位で本接合することができる。
本願発明に係る、一つ又は複数の金属領域を有する第一接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する装置は、チップの第一接合面を表面活性化処理するために、チップの第一接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させる第一接合面用表面活性化処理手段と、チップの第一接合面の裏側に位置する第二接合面を表面活性化処理するために、チップの第二接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させるチップ第二接合面用表面活性化処理手段と、基板の接合部を表面活性化処理するために、基板の接合部に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させる基板用表面活性化処理手段と、表面活性化処理されたチップの第一接合面を親水化処理するために、チップの第一接合面に水又はOH含有物質を付着させるチップ第一接合面用親水化処理手段と、表面活性化処理されたチップの当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面を親水化処理するために、チップの第二接合面に水又はOH含有物質を付着させるチップ第二接合面用親水化処理手段と、基板の接合部を親水化処理するために、基板の接合部に水又はOH含有物質を付着させる基板用親水化処理手段と、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、チップを基板の対応する接合部上に取り付け、基板上に取り付けられているチップの第二接合面に次に取り付けられるチップの第一接合面が接触するように、当該チップを基板上に取り付けられているチップ上に取り付けるチップ取付手段と、を備えて構成されたものである。本願発明によれば、チップと基板との間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を与える複数層のチップと基板とを含む構造体を製造することができるという効果を奏する。また、すべてのチップを基板上に取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数層のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。
また、本願発明に係る接合装置は、基板と基板上に複数の層に亘り積層された複数のチップとを含む構造体を加熱するための加熱手段を更に備えように構成されてもよい。これにより、基板と基板上に積層された複数のチップとを含む構造体を駆り接合の後に効率よく加熱することができる。
本願発明に係る基板と基板上に取り付けられた複数のチップを含む構造体は、上述のいずれかの方法により形成されることを特徴とする。これにより、樹脂などの残存物などが含まれず清浄な接合界面を有することで、導電性及び機械的強度が向上されたチップと基板とを含む構造体を提供することができ、当該チップと基板とを含む構造体を、電子部品のより広い範囲の用途に用いることができるという効果を奏する。
本願発明によれば、表面活性化処理後に親水化処理された接合面を接合に用いることで、所望の仮接合の強度が得られ、水等の接合面に付着され仮接合に寄与した物質は、本接合の際に消滅するので、チップと基板との間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。また、すべてのチップを基板上に取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数のチップを基板上に接合することができる。さらに、電子デバイスの3次元実装体を、より高密度により高い生産効率で製造することができるという効果を奏する。
第一実施形態に係るチップの基板への接合方法を示すフローチャートである。 第一実施形態に係る接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。 チップにおける金属領域の形状を示す概略断面図である。 チップ側接合面上に形成された金属領域の配置を示す平面図である。 基板上に設置される接合部を示す斜視図である。 接合界面の形成過程を模式的に示す断面図である。 第一実施形態に係るチップの基板への接合方法の他の例を示すフローチャートである。 水付着処理後の接合面間の状態を微視的に示す概略断面図である。 金属領域の高さにばらつきがある場合の仮接合の状態を示す概略側面図である。 水付着処理された金属領域がチップの基板の接合部に対してセルフアラインメントされる過程を示す図である。 本願発明の第二実施形態に係る、複数の層のチップを基板へ接合する方法の他の例を示すフローチャートである。 複数層のチップを基板上に取り付ける過程を示す図である。 第二実施形態に係る、複数の層のチップを基板へ接合する方法の他の例を示すフローチャートである。 複数の種類のチップが基板の各接合部に取り付けられたチップと基板とを含む構造体を示す斜視図である。 チップ実装システムの概略構成を示す上面図である。 粒子ビーム源からの粒子の放射態様を概略的に示す図である。 粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。 粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。 粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。 ライン型粒子ビーム源からの粒子の放射態様を概略的に示す図である。 チップ供給部とボンディング装置とを示す正面図である。 チップ供給部とボンディング装置とを示す上面図である。 チップ供給部とボンディング装置とを示す上面図である。 プレート部の先端の構造を示す図である。 プレート部の先端の構造を示す図である。 水付着手段を有するプレート部の先端の構造を示す図である。 水付着手段を有するプレート部による接合面への水付着態様を示す図である。 水付着手段を有するチップ供給部とボンディング装置とを示す上面図である。 ボンディング装置のヘッド部がプレート部先端に設けられた構成の一例を示す図である。 バンプ状の金属領域を水槽へ浸漬する構成の一例を示す図である。 第三実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。 実施例における実験結果を示すグラフである。 第二部の第一実施形態に係る基板の接合方法を示すフローチャートである。 第二部の第一実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。 接合界面の形成過程を模式的に示す断面図である。 基板の表面処理システムの概略構成を示す正面図である。 粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。 粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。 粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。 本願発明の第二実施形態に係るチップと基板との接合方法を示すフローチャートである。 基板における金属領域の形状を示す概略断面図である。 チップ実装システムの概略構成を示す上面図である。 チップ実装システムの概略構成を示す正面図である。 チップ実装の処理過程を模式的に示す断面図である。 第二部の第三実施形態に係る基板の接合方法を示すフローチャートである。 第二部の第三実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。 実施例における実験結果を示すグラフである。 チップ等の接合面上に形成された金属領域の配置を示す平面図である。
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施形態を説明する。
<1.接合方法>
<1.1 第一実施形態>
図1は、本願発明の第一実施形態に係るチップの基板への接合方法を示すフローチャートである。
工程S1では、基板への接合が予定されている複数のチップの表面(以下、チップ側接合面と称する)を、表面活性化処理し、そして親水化処理する。このチップ側接合面は、金属で形成される一つ又は複数の領域(以下、金属領域と称する)を含んでいる。
工程S2では、上記チップ側接合面が接合される基板上においてそれぞれのチップに対応する表面領域(以下、接合部と称する)を、すべて表面活性化処理し、そして親水化処理する。
ここで、まず、本願発明における表面活性化処理について説明する。
チップ側接合面又は基板の接合部(以下、接合面と称する。)41上には、様々な物質の酸化物、付着した有機物などの汚染物(不純物)などを含む表面層42が存在し、接合すべき材料の新生表面43を覆っている(図2(a)参照)。上記表面層42は、材料の新生表面43のエネルギーレベルを低くしていると考えられる。表面活性化処理により、この表面層が除去され、接合すべき材料の新生表面が露出させられると考えられる(図2(b)参照)。さらには、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて行う表面活性化処理には、新生表面近傍において原子間の結合を切断し結晶構造を乱すことで、表面エネルギーのレベルを一層高める効果もあると考えられている。
次に、本願発明において、上記表面活性化処理を行った後の親水化処理では、表面活性化処理により露出された新生表面に水又は水酸(OH)基を含む物質(OH含有物質)を供給する。表面活性化処理により露出された新生表面に水又は水酸(OH)基を含む物質が接触すると、この新生表面に水酸基の層44が形成され(図2(c))、あるいは新生表面に新生表面を形成する材料の酸化物の層が形成される。さらに水を供給すると、形成された水酸基の層又は酸化物の層の上に水が付着すると考えられている。
工程S1と工程S2とを同時に並行して行ってもよい。また、工程S1を行った後に、工程S2を行ってもよい。その逆に、工程S2を行った後に、工程S1を行ってもよい。
工程S1又は工程S2における親水化処理は、好ましくは、表面活性化処理の後、連続して、又は非酸化雰囲気中で行われる。これにより、表面活性化された接合面に不純物の付着なく水酸(OH)基を形成することができる。親水化処理は、上記表面活性化処理の後に続けて真空などの非酸化雰囲気中で開始されることが好ましい。しかし、表面活性化処理が完了する前に、親水化処理を開始してもよい。また、表面活性化処理と親水化処理を同時に行ってもよい。表面活性化処理が、親水化処理の完了後に行われなければ、表面活性化処理と親水化処理との時間上の前後関係は、所望の条件により調節することができる。
工程S3で、チップ側接合面が表面活性化処理され親水化処理されたチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板上の対応する接合部に接触するように基板に取り付ける。本願明細書中、この工程S3を「仮接合」と称する。
チップの基板への取り付けは、チップを基板の接合部に一つずつ取り付けることを、基板に取り付けるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行う。あるいは、複数のチップからなるグループごとに、基板の対応する接合部に取り付けることを、基板に取り付けるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行ってもよい。接合面の平坦度を高めたもの(例えば表面粗さが数nmのもの)は、実質的な接触面積が大きくなることから、本来の水酸基(OH基)による接合が強固な接合となり、低温、低圧での接合でも十分な接合強度を得ることが可能である。一方、接合面の平坦度が低いもの(例えば表面粗さが数十〜数百nmのもの)の場合は、加圧(数十M〜数百MPa)により金属領域を押しつぶすことで実質的な接触面積を大きくすることや、摂氏数百度程度で加熱(例えば150℃)により拡散を促し接合界面で原子の動きを促進させることで、実質的な接合面積を大きくすることができる。
工程S4では、接合が予定されていた複数のチップがすべて基板に取り付けられることにより形成された、チップと基板とからなる構造体に対して、加熱処理を施す。加熱により、所望の導電性と機械的強度を有する接合界面が得られる。本願明細書中、この工程S4を、「本接合」と称する。
工程S3により取り付けられたチップの金属領域の表面と基板の接合部の表面とは、微視的には原子レベル又はナノメートルから数十ナノメートルの表面粗さを有している。したがって、工程S3により取り付けられた際に、チップの金属領域の表面と基板の接合部の表面との間の実質的な接合面積は、みかけの接合面積より小さい。加熱処理により、取り付けられたチップの金属領域と基板の接合部との界面近傍の原子が拡散して、実質的な接合面積が増加すると考えられる。本願明細書中、この工程S4を、「本接合」と称する。
加熱処理の際に、雰囲気を形成するガスの種類、流量などを調節してもよい。また、加熱処理の際に、接合界面に垂直方向の圧力が加わるように、チップと基板との接合体に、力又は圧力を加えることもできる。接合界面に垂直方向の圧力が加わることで、実質的又は微視的な接合面積がさらに増加する。
加熱処理における、温度又は上記力若しくは圧力の時間プロファイルは、仮接合の条件、金属領域を形成する材料の熱特性、チップ又は基板を形成する材料の熱特性、加熱処理の際の雰囲気、加熱処理装置の特性などにより、調節することができる。
表面活性化処理され親水化処理されたチップ側接合面及び基板の接合部上に形成されている水酸(OH)基層又は酸化物層、これらの表面に付着した水などは接合界面にとりこまれても、加熱処理で新生表面同士の接合界面が形成する際に、表面層や樹脂などと比べて低い温度又は短時間で消滅する。したがって、本願発明による接合方法は、樹脂などを使用する従来の接合技術に比べて、接合に必要なサーマルバジェット(熱消費量)を低減することができる。
次に、チップの形態について説明する。
<チップ側の接合面>
図3(a)から(f)は、チップ側接合面に垂直な平面でチップを切断した場合の、チップの断面の模式図である。これらの図は、金属領域の形状を例示的に示すことを意図するもので、金属領域の形状を限定するものではない。
図3(a)から(d)で示された金属領域の場合には、チップ側接合面上に、金属領域MRが、いわゆるバンプ(突起)状に突出するように形成されている。金属領域MRの上端面が、基板と接合する。
金属領域MRは、銅(Cu)を主たる成分として形成されることが好ましい。近年の電子デバイスの製造又は実装などの先端技術分野においては、銅(Cu)は、低抵抗かつ高エレクトロマイグレーション耐性を有する優れた配線材料として広範囲に使用されている。本願発明により、銅(Cu)間で良好な金属の接合界面が形成されることで、多くの実装分野で使われているハンダや金を解する接合界面の形成に比べて、より安価により良好な電気特性を有する接合界面を形成することができる。
金属領域MRに用いられる金属は、銅(Cu)に限られない。たとえば、金属領域MRは、ハンダ材料により形成されてもよい。従来のハンダの接合ではフラックスが用いられており、接合過程後のフラックス残渣は、接合界面の機械的強度を劣化させる原因となっていた。しかも、従来のハンダの接合では、ハンダを溶融させるために、接合される基板間での位置決め精度が狂う、微小な圧力下では更なるずれが生じるなどの問題があった。しかし、本願発明により、金属領域がハンダで構成された接合面を、比較的低温で接合できるので、フラックスレス(フラックスのない)ハンダ接合が可能になるとともに、位置決め精度を向上させることができる。また、金属領域は、スズ(Sn)やスズ―銀(Sn−Ag)系の金属でもよい。
また、金属領域MRは、金(Au)により形成されてもよい。金は導電性が極めて高い材料であると同時に酸化速度が遅い材料である。しかし、接合プロセスにおいて表面に付着した不純物が接合プロセス完了後にも接合界面で残留すると、当該接合界面での導電性の低下の原因となり、金自体の高い導電性による利点が小さくなる。
金属領域MRを形成する金属は、上記の例に限られない。たとえば、金属領域MRは、アルミニウム(Al)、タングステン(W)や鉄(Fe)を主たる成分として形成されてもよい。
当該金属領域MR以外の領域NRは、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO)などの非金属で形成されることが好ましいが、金属など、その他の材料で形成されていてもよい。金属領域MR以外の材料は、デバイスの用途、接合方法などに応じて選択することができる。以下、金属領域MRと金属領域以外の領域NRを合わせてチップ側接合面と称する。また、便宜的に、金属領域MR以外の領域NRを、非金属領域NRと称することとする。
非金属領域NRは、非金属材料により形成されている。当該非金属材料には、無機材料として、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、炭化ケイ素(SiC)、SiGeCなどのV族半導体、GaN、GaAs、InPなどのIII−V族化合物半導体、酸化ケイ素(SiO)などの酸化物、窒化ケイ素(Si)などの窒化物が使用されてもよい。また、上記非金属材料は、非金属であればイオン性単結晶などの導電性材料であってもよい。さらにまた、上記非金属材料には、有機材料として、樹脂などの有機化合物又は高分子材料が使用されてもよい。樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、液晶ポリマー、テフロン、アクリル樹脂、ABS樹脂などが使用されてもよい。そして、非金属領域NRは、上記材料の混合物であってもよく、異なる非金属領域NRにおいて異なる材料が使用されてもよい。
金属領域MRの上端部の断面形状は、平坦でなくてもよい。図3(a)のように金属領域の上端部が平坦である場合、上端部の平面は、微視的にはある程度の粗さを有している。この粗さが大きい場合には、比較的低い圧力をかけても、微視的にみて十分な接合面積を形成することができず、金属領域と基板との間の所望の導電性または機械的強度を確立することができないこともありえる。そこで、例えば、金属領域の表面の断面は、曲面で形成されてもよく、図3(b)で示されるように球面で形成されてもよい。図3(b)の各金属領域MRは、その頂点において基板と接触するので、金属領域MRの上端部が平坦である場合より、初期の接触点に係る圧力が大きくなる。その結果、微視的にみて十分な接合面積を形成することができ、チップの金属領域と基板との間の導電性および機械的強度(接合強度)の向上につながる。
図3(c)に示されているように、金属領域MRは、シリコンチップに形成された貫通電極(シリコン貫通電極、TSV,Through Silicon Via)(VA)に接続して設けられてもよい。TSV(貫通電極)を設けることで、数層に亘り積層されたチップ間での高速な電気的接続を確立することができる。
図3(d)に示されているように、金属領域MRの上端部の面積が、TSV(VA)の領域面積より大きくなるように、金属領域MRとSi貫通電極VAが形成されてもよい。接合面積が大きくなり、積層されたチップ間の電気的接続の比較的高い導電性を確保することができる。
図3(e)及び(f)に示されているように、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようにチップ側接合面が構成されてもよい。この場合、金属領域MRと非金属領域NRとが同一面上にある構成としてもよく、また、金属領域MRを基板接合部と確実に接触及び接合させるために、金属領域MRを非金属領域NRよりも1μm(マイクロメータ)程度またはそれ以下の高さだけ突出させるようにしてもよい。金属領域MRの非金属領域NRに対して突出する高さは、金属領域MR及び非金属領域NRの材質、形状、チップ全体の形状、寸法、機械的性質など、種々のパラメータに応じて、最終的に金属領域MRと非金属領域NRの両方において接合界面が形成されるように調節される。
図3(e)及び(f)に示されている、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようなチップ側接合面の構成は、例えば、チップの所定の製造段階でチップ側表面に化学機械研磨(CMP)を行うことで実現される。CMPの条件を調節することにより、金属領域MRと非金属領域NRとをほぼ同一面上に形成することができるとともに、金属領域MRが非金属領域NRよりも所定の高さだけ突出するようにすることもできる。
図3(e)で示されている例は、バンプレスTSVと呼ばれるチップ構造に対応している。このチップは、接合される基板の接合面が平面で形成されている場合には、金属領域MRと非金属領域NRとの両方が基板に接合される。したがって、チップと基板との間の電気的接続を確立する金属領域に係る接合界面を、その周りの非金属領域に係る接合界面により保護することができる。さらに、チップと基板との接合界面が、金属領域MRのみならず非金属領域NRにまで亘って形成されることで接合面積が著しく大きくなり、チップと基板との間の接合強度を増加することができる。さらにまた、複数の層を形成して、チップを基板上に積層して実装する場合には、基板面に垂線方向の寸法(厚み)を、減少させることができる。
図3(f)に示されている例では、チップ側接合面にキャビティが形成され、このキャビティ内に金属領域MRがバンプ(突起)状に突出するように形成されている。図3(f)の構成により、チップの基板への接合が完了すると、非金属領域NRに係る接合界面により、その内部の金属領域MRに係る接合界面を外部雰囲気に対して封止する。よって、接合工程が完了した後に樹脂などを用いて接合箇所を封止することを必要とせずに、大気の侵入に起因する酸化、チップと基板間への不純物の混入などによる接合界面の電気的又は機械的特性の悪化を防ぐことができる。
図3(e)又は(f)で示されている構成のチップを使用する場合には、金属領域MRと同様の表面活性化処理と親水化処理を施して、基板上の対応する接合部と仮接合及び本接合を行うことができるような材料で非金属領域NRを形成することが好ましい。これにより、プロセスを簡略化、効率化することができる。非金属領域NRは、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO)などの非金属で形成されることが好ましいが、これに限られない。
また、図3(e)又は(f)で示されている構成のチップを使用する場合には、非金属領域NRの表面の一部又は全部を疎水化処理してもよい。後述のように、チップ側接合面が疎水化処理された領域を有することで、親水化処理された金属領域MRと対応する基板上の親水化処理された部位とを用いて、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる。
図4(a)から(c)は、接合面に対して垂直な方向から見たときの、チップ側接合面上に形成された金属領域の配置を模式的に示している。
図4(a)から(c)が示すチップ側接合面上には、複数の円形の金属領域MRが、列状に並んで配置されている。
金属領域MRの形状及び配列は、図4(a)から(c)に示された例に限定されない。各金属領域MRの形状は、円形に限らず、例えば正方形、長方形でもよい。また、図4(a)から(c)は、複数の金属領域MRが、矩形を描くように並んで配列されているが、これに限定されない。
図4(b)が示すチップ側接合面には、複数の金属領域MRが、異なる大きさで形成されている。
たとえば、比較的小さい面積の金属領域MRを形成する場合に、所望の導電性を確保する電気的接続は確保されているにも係わらず、基板との最終的な接合面積の合計が、チップと基板との間の十分な機械的強度を達成できるほどの面積に満たないことがある。このような場合には、電気的接続に必要とする金属領域MRに加えて、機械的強度を向上するために、基板と接続される、強度用金属領域MR2を設けてもよい。金属領域MR2は、チップ内の回路又はチップを通過するTSVと、電気的に接合されていなくてもよく、また接合されていてもよい。また、金属領域MR2の面積、形状、配置などは、電子デバイスの使用環境などに応じて、チップと基板との間に要求される機械的強度、金属領域MRと強度用金属領域MR2の形状、大きさ、チップ側接合面上での配置などに基づいて調節されてもよい。
図4(c)が示すチップ側接合面には、図4(a)に示された、電気的接続のために形成された金属領域MRを第一の金属領域として、この第一の金属領域の外側に、第一の金属領域を囲むように、第二の金属領域として、閉じた環状に金属壁である金属領域MR3が形成されている。この場合、第一及び第二の金属領域がチップ側接合面の金属領域以外の領域に対して突出するように形成されることが好ましい。
閉じた環状の金属領域MR3は、チップの基板への接合が完了すると、その内部の金属領域MRに係る接合界面を外部雰囲気に対して封止する。すなわち、外部雰囲気は金属領域MRに係る接合界面に到達することができない。よって、接合工程が完了した後に樹脂などを用いて接合箇所を封止することを必要とせずに、大気の侵入に起因する酸化、チップと基板間への不純物の混入などによる接合界面の電気的又は機械的特性の悪化を防ぐことができる。
また、金属領域MR3を有するチップを接合することで、接合面積が増加し、高い接合強度を達成することができる。さらに、鉛などの材料を含まず、リフロー工程が必要ないので、環境に優しいチップと基板とを含む構造体の封止構造を提供することができる。
上記の各チップは、例えば、複数の電子回路が形成された基板を縦方向及び横方向に切削することにより作成してもよい。
<基板>
基板WAの接合部UTは、例えば、図5に示されているように、基板の面上に縦方向及び横方向に引かれた等間隔の直線で画定される複数の長方形又は正方形として設定されてもよく、また離散的に任意の箇所に設定されてもよい。典型的に、上記基板は、本願発明に係る接合方法の工程が完了した後に、接合部毎に切断(ダイシング)され、ダイ(die)に分割される。最終製品として与えられたダイの大きさは、基板上に設定された接合部の大きさにより定められる。
各接合部は、基板上に物理的に又は光学的に認識可能に設定されていてもよいが、これに限られない。たとえば、接合部の配置は、基板を支持するステージ上の位置を認識可能なコンピュータシステムにより、ステージ上の位置に基づいて認識する構成としてもよい。
基板の接合部は、複数のチップの金属領域にそれぞれ対応するようにして、当該チップとの間で電気的接続を確立すべき複数の接合領域を有するように構成してもよい(図示せず)。この接合領域は、金属で形成されてもよい。この場合、接合されるチップと基板との間の電気的接続が実現される。
また基板の接合部は、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO)などの非金属材料を用いて形成されてもよい。この場合は、チップの金属領域は、基板と接合して、チップと基板との間の接合強度を高めることができる。
<表面活性化処理>
工程S1及び工程S2において、チップ側接合面及び基板の接合部(以下、接合面と称する)に、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることで表面活性化処理を行う。
所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて、接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることで、表面層を除去することができる。表面活性化処理には、表面層を除去して接合すべき物質の新生表面を露出させるのみならず、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることで、露出された新生表面近傍の結晶構造を乱し、アモルファス化する作用もあると考えられている。アモルファス化した新生表面は、原子レベルの表面積が増え、より高い表面エネルギーを有するので、その後の親水化処理において結合される、単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加すると考えられる。これに対し、従来のウェット処理による表面の不純物の除去工程後に化学的に親水化処理する場合には、所定の運動エネルギーを有する粒子の衝突に起因する新生表面の物理的変化がないので、本願発明の接合方法に係る表面活性化処理に続く親水化処理は、この点で従来の親水化処理とは根本的に異なると考えられる。また、結晶構造が乱れ、アモルファス化した新生表面近傍の領域にある原子は、本接合時の加熱処理の際に、比較的低い熱エネルギーで拡散しやすく、比較的低温での本接合プロセスを実現することができると考えられる。
表面活性化処理に用いる粒子として、例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス又は不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、比較的大きい質量を有しているので、効率的に、スパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になると考えられる。
表面活性化処理に用いる粒子として、酸素のイオン、原子、分子などを採用することもできる。酸素イオン等を用いて表面活性化処理を行うことで、表面層を除去した後に新生表面上を酸化物の薄膜で覆うことが可能になる。新生表面上の酸化物の薄膜は、その後の親水化処理における、水酸(OH)基の結合又は水又はOH含有物質の付着の効率を高めると考えられる。また、新生表面上に形成された酸化物の薄膜は、本接合での加熱処理の際に、比較的容易に分解すると考えられる。
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eVから2keVであることが好ましく、更に50eVから2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が効率的に生じる。除去すべき表面層の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
表面活性化される接合面に衝突させる粒子には、粒子を接合面に向けて加速することで所定の運動エネルギーを与えることができる。
プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。複数のチップ又は基板などの接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで、所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
接合面から離間された位置に配置された、中性原子ビーム源、イオンビーム源などの粒子ビーム源を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。所定の運動エネルギーが付与された粒子は、粒子ビーム源から複数のチップ又は基板などの接合面に向けて放射される。
本願発明においては、表面活性化処理が行われる接合面41から離間して配置された粒子ビーム源を用いて、表面活性化される接合面41に衝突させる粒子を接合面41に向けて加速することで、当該粒子に所定の運動エネルギーが与えられる。粒子ビーム源は、例えば作動時の真空度が1Pa(パスカル)以下の比較的清浄な雰囲気中で作動する。粒子ビーム源が作動する前のバックグラウンド圧力は、1×10−2Pa(パスカル)であることが好ましく、1×10−5Pa(パスカル)であることが更に好ましい。これにより、表面活性化処理中の雰囲気に存在する不純物の量を低減させ、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層3の除去及び新生表面のアモルファス化を行うことができると考えられる。
比較的高い真空に引くために真空ポンプの作動により、金属領域MR等の表面層3から除去された物質が効率よく雰囲気外へ排気される。すなわち、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率よく排気される。
プラズマ発生装置の場合は、プラズマの作動時の圧力は比較的高く、接合面41から除去された物質がプラズマ化されるために、その陽イオンが加速され金属領域MRに再び衝突し付着する確率が高い。また、基板にバイアス電圧を印加しないと表面活性化に好適な十分な運動エネルギーを粒子に与えることが困難である。したがって、基板の接合面41が金属領域MR以外に一つ又は複数の非金属領域NRを有する場合に、プラズマ発生装置でなく粒子ビーム源を用いて表面活性化処理を行うことで、露出された新生表面への望ましくない物質の付着を抑制しつつ、効果的に表面活性化処理を行うことができる。
粒子ビーム源を用いることで、典型的なプラズマ発生装置では行えない条件で表面活性化処理を行うことができる。すなわち、粒子ビーム源を用いることで、粒子が放射される前のいわゆるバックグラウンドの真空度が10−2Pa以下であって、粒子ビーム源作動前の、粒子が放射されている間の真空度が1Pa以下である雰囲気で、運動エネルギーが50eVから2keVである粒子のビームを接合面に対して放射することができる。
粒子ビーム源としては、図17又は図18に示すような粒子ビーム源150、150Aを用いることができるが、これに限られない。粒子ビーム源150として、冷陰極型、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいはクラスターイオン源などが採用されうる。
図17又は図18に示す粒子ビーム源150、150Aは、磁界の印加によりガスをプラズマ化して、発生したプラズマに電界を印加することによりプラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出して、接合面の方向に加速させる。これにより、粒子ビーム源150、150Aは、当該電位に対応する運動エネルギーを有するイオンを、粒子ビーム源150、150Aから接合面に対して放射する。真空中又は減圧された雰囲気中で当該イオンは加速され放射されるので、放射されたイオンは、他のガスとの衝突による運動エネルギーの減少や運動方向の変化などがほぼない状態で、上記対象物の表面に衝突する。したがって、粒子ビーム源150を用いることで、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
粒子ビーム源150としては、図19に示すような高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源150Nは、典型的には、一対のアノード間に形成される電位の鞍点付近でイオン化されたガスの陽イオンをイオン源の外側に加速させ、カソードから陽イオンの衝突により放出される電子と結合させることで、当該イオンを中性化する構成を有している。このような、イオンと結合させるための電子雲を発生させる手段は、ニュートライザーと呼ばれることもある。このような中性原子ビーム源を用いることで、加速されたイオンは、電気的に中性化される過程でその運動エネルギーを実質的に失うことがないので、効率よく中性である原子ビームを用いて、上記対象物の表面に対して、帯電させることなく、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
中性原子ビーム源としては、高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的には、ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界をかけて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。この場合、例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。たとえば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物等(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
本願発明において、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子又はイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。
各プラズマ又はビーム源の稼動条件、又は粒子の運動エネルギーに応じて、表面層の除去速度は変化しえる。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。たとえば、オージェ電子分光法(AES,Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS,X−ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間又はそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、粒子の照射時間を、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間より、長く設定してもよい。長くする時間は、10秒から15分、あるいは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間の5%以上に設定してもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための時間は、接合面を形成する材料の種類、性質、及び所定の運動エネルギーを有する粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、照射される粒子の運動エネルギーは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な運動エネルギーより、10%以上高く設定されてもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための粒子の運動エネルギーは、接合面を形成する材料の種類、性質、及び粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
ここで、「アモルファス化した表面」又は「結晶構造が乱れた表面」とは、具体的に表面分析手法を用いた測定により存在が確認されたアモルファス層又は結晶構造が乱れた層を含むとともに、粒子の照射時間を比較的長く設定した場合、又は粒子の運動エネルギーを比較的高く設定した場合に想定される結晶表面の状態を表現する概念的な用語であって、具体的に表面分析手法を用いた測定によりアモルファス層又は結晶構造が乱れた表面の存在が確認されていない表面をも含むものである。また、「アモルファス化する」又は「結晶構造を乱す」とは、上記アモルファス化した表面又は結晶構造が乱された表面を形成するための動作を概念的に表現したものである。
<親水化処理>
工程S1及び工程S2において、親水化処理は、上記表面活性化処理の後に行われる。接合面の親水化処理により、接合面にOHが結合され、水酸基(OH基)の層(水酸化物層)が形成されると考えられている。さらには、水酸基(OH基)の層の上に水分子が付着してもよい。
親水化処理工程では、表面活性化処理が行われた金属領域MRの表面に、水や、水酸化物、水酸化イオン(OH)、又はヒドロシキルラジカル(・OH)など、又はOHで表記される物質のイオンやラジカル(以降、これらを「水等」とも呼ぶ。)などのOH含有物質を付着させて、当該金属領域MRの表面が水酸基(OH基)で終端化(M−OH)されている層が形成される。本願において、親水化処理工程で、表面活性化処理が行われた金属領域MRの金属の表面の付着される物質を、「水又はOH含有物質」、これらを総称して「水等」、又はより簡略に「水」と呼ぶことがあるが、これらの表記は、上記の物質を総称するものであり、「水(HO)」に限られるものではない。
親水化処理により、接合面上に酸化物が形成されることもある。しかし、表面活性化処理後、連続して水等を付着させることで、不純物の付着のない新生表面上に直に水酸(OH)基を形成することができ、さらに水等を付着させることで、その水酸(OH)基上に水分子が付着していくことになる。この酸化物は、比較的コントロールされている(例えば、厚さが数nm又は数原子層以下)ので、特に電気的特性を悪化させるようなものではない。貼り合わせ後の加熱処理により、金属材料内で吸収され、又は水として接合界面から外側へ逃げるなどして、消滅あるいは減少させることも可能である。したがって、この場合、基板との間の接合界面を介した導電性には実用上の問題が生じることはほぼないと考えられる。
本実施形態に係る親水化処理は、表面活性化された接合面に水等を供給することにより行われる。当該水等の供給は、上記表面活性化された接合面の周りの雰囲気に、気体の水(HO)を導入することで行われる。当該気体状の水は、キャリアガスであるアルゴン(Ar)を泡状にして通過させること(バブリング)で、気体状の水がキャリアガスに混合されて、表面活性化された接合面を有する基板が配置された空間又はチャンバ内に導入される。
なお、この際のキャリアガスは、アルゴン(Ar)に限られず、例えば、窒素(N)、ヘリウム(He)、酸素(O)などであってもよい。
また、表面活性化された接合面の周りの雰囲気への水の導入は、気体状で(ガス状で、又は水蒸気として)導入されても、液体状(霧状)で導入されてもよい。さらに、水等の付着の他の態様として、上述のようにラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。しかし、水等の導入方法はこれらに限定されない。
表面活性化された接合面の周りの雰囲気の湿度を制御することで、親水化処理の工程を制御することができる。当該湿度は、相対湿度として計算しても、絶対湿度として計算してもよく、又は他の定義を採用してもよい。
水の導入は、チップ側接合面と基板の接合部との少なくとも一方又は両方の周りの雰囲気における相対湿度を10%から90%となるように制御することが好ましい。
たとえば、窒素(N)又は酸素(O)をキャリアガスとして気体状の水を導入する場合、上記チャンバ内の全圧を9.0x10Pa(パスカル)、すなわち0.89atm(アトム)とし、チャンバ内での気体状の水の量を、容積絶対湿度で8.6g/m(グラム/立方メートル)又は18.5g/m(グラム/立方メートル)、23℃(摂氏23度)の相対湿度でそれぞれ43%又は91%となるように制御することができる。また例えば、銅(Cu)を、容積絶対湿度で、5g/m(グラム/立方メートル)から20g/m(グラム/立方メートル)の気体状の水を含む雰囲気に曝すと、2nm(ナノメートル)から14nm(ナノメートル)程度の酸化銅の層が形成されると想定される。
また、チャンバ内の酸素(O)の雰囲気中濃度を10%としてもよい。
親水化処理は、表面活性化処理された接合面を大気に曝すことなく、当該接合面に水を供給することが好ましい。例えば、表面活性化処理を行うチャンバと親水化処理を行うチャンバとを同一とするように構成されていてもよい。また、表面活性化処理を行うチャンバと親水化処理を行うチャンバとは、複数のチップ又は基板がそれらの間を大気に曝されることなく搬送されるように連結されて構成されていてもよい。これらの構成を採用して、表面活性化処理された接合面を大気に曝さないことで、接合面の望ましくない酸化や、接合面への不純物などの付着などを防ぐとともに、親水化処理をより容易に制御することができ、効率よく表面活性化処理の後に親水化処理を続けて実行することができる。
上記のように、親水化処理により形成された水酸化物層又は当該水酸化物層上に形成された水の層には、大気中の存在する酸素との接触による金属領域MRの酸化を最低限に抑制する働きがあると考えられる。
これにより、親水化処理が完了した金属領域MRの表面は、比較的安定であり、非酸化雰囲気から取り出し、大気中に曝したとしても、酸化されにくい。また、金属領域MRの表面が水酸(OH)基で覆われ、又はさらにその上に形成された水の層で覆われているので、炭素などの不純物と直接金属表面との結合が防止される。よって、親水化処理が完了した金属領域MRの表面を数時間から数十時間に亘り大気中に放置しても、最終製品において良好な接合界面を得ることができる。
また、親水化処理を行うために、所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入してもよい。大気をチャンバ内に導入する際には、望ましくない不純物の接合面への付着を防ぐために、当該大気が所定のフィルタを通過するように構成することが好ましい。所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入して親水化処理を行うことで、接合面の親水化処理を行う装置構成を簡略化することができる。
また、親水化処理は、水(HO)等の分子やクラスターなどを加速して、接合面に向けて放射することで行ってもよい。水(HO)等の加速に、上記表面活性化処理に用いる粒子ビーム源などを使用してもよい。この場合、上記バブリングなどで生成したキャリアガスと水(HO)等との混合ガスを、上記粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させ、親水化処理すべき接合面に向けて照射することができる。
親水化処理は、水等の付着を複数回行うように構成されてもよく、異なる親水化処理を組み合わせて行うように構成されてもよい。
表面活性化処理と親水化処理が施された接合面41a、41bは、その後のチップの基板への取り付け(仮接合)での接触の際に水素結合の作用により互いに引き合い、比較的強い仮接合を形成する(図2(d))。さらに水素と酸素とを含む接合界面が形成されているので、本接合での加熱処理により水素と酸素が接合界面の外部に放出され、清浄な接合界面45を形成することが可能になる(図2(e))。
<仮接合>
工程S3で、チップ側接合面が表面活性化処理され親水化処理されたチップが、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理され親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けられる。
基板の対応する接合部に対するチップの位置決めは、例えば、チップ側に複数の位置調節用マークを設け、基板の対応する接合部側に、対応する複数の位置調節用マークを設け、両方の位置調節用マークを互いに合わせることで行っても良い。両方の位置調節用マーク間のずれは、チップと基板とを透過する光を、チップ又は基板側から接合面に垂直方向に入射し、その反対側に設けたカメラにより撮像された、当該透過光による位置調節用マークの画像を観察することにより測定するように構成してもよい。
上述のように、一例として、チップ及び基板の対応する金属領域MR間の位置決めは、両方の基板側に設けられた位置調節用マークを、基板を透過する光を用いて、互いに合わせることで行われてもよい。これにより、例えば、±1μmの位置決め精度を得ることができる。さらに、位置決めが十分でなかった場合には、仮接合直後に基板を一旦互いから離し、再度位置決めしてから仮接合を行うことを、所定の位置決め精度が得られるまで繰り返すこともできる。これにより、±0.2μmの位置決め精度を得ることができる。
仮接合されたチップと基板とを互いに離す工程は、仮接合されたチップと基板のエッジから接合界面方向に、ブレードを機械的に挿入し、又は水や空気などの流体を吹き込むことで行われてもよい。
親水化処理が施されたチップ側接合面と基板の接合部とは、水酸(OH)基又は水分子により覆われているため、取付け時(仮接合時)の接触により、水酸基又は水分子間に働く水素結合などの引力により仮接合される。
仮接合は、複数のチップの一つずつについて行うことが好ましいが、これに限られない。複数のチップのうち、所定の数のチップの一群として、これの一群のチップごとに基板に貼り合わされてもよい。
上記のチップの基板への取付けにより、チップ側接合面と基板の接合部とは、少なくとも、接合すべきチップのすべてが基板に取り付けられてから加熱処理が行われるまでの過程において、チップと基板とが仮接合することで構成される構造体が搬送される際や位置変換される際に、チップが基板から剥がれ落ちたり、チップが基板上の所定の取付け位置からずれたりすることがない十分な接合力で固定される。
接合すべき複数のチップをすべて基板に仮接合する間、当該複数のチップと基板の周りの雰囲気の湿度を所定の値に保つようにしてもよい。これにより、水酸化物層又はその上の水の層は、基板の接合面上に比較的に均一に、また複数の仮接合に亘って一定な特性を有するように、形成されうる。
チップの金属領域が、ニッケル(Ni),金(Au),スズ(Sn)などの金属で、20μm(マイクロメータ)四方、高さ3μm(マイクロメータ)から10μm(マイクロメータ)のパッド状に形成されている場合は、パッドに対し0.5MPa(メガパスカル)から400MPa(メガパスカル)の圧力を、チップと基板とが互いに近接する方向に加えてもよい。
上記パッドに対して加える圧力は、高すぎると塑性変形により金属領域同士が接触して短絡の原因となり、低すぎると所定の導電性又は接合強度を得ることができない場合がある。したがって、上記パッドに対して加える圧力は、金属領域の材料の機械的特性、形状、その後の本接合での加熱処理の条件などに応じて、調節される。
上述の仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体は、チップと基板とが比較的強い水素結合で結合しているので、チップ実装システム内部で又は外部へ搬送されても、チップが基板からすべり落ち、又は剥がれ落ちる危険性は小さい。また、仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体は、比較的安定であるので、加熱処理まで数時間から数日までの間、大気中で保存することも可能である。したがって、任意のタイミングで、チップと基板とを含む構造体に加熱処理を行うことができる。
上述の仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体を複数個まとめて加熱処理を行うことができる。これにより、本接合されたチップと基板とを含む構造体を、高い生産効率で製造できるという効果がある。さらに、チップと基板とが比較的強い水素結合で結合しているので、チップ実装システム内部で又は外部へ搬送されても、チップが基板からすべり落ち、又は剥がれ落ちる危険性は小さい。また、仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体は、比較的安定であるので、加熱処理まで数時間から数日までの間、大気中で保存することも可能である。したがって、任意のタイミングで、チップと基板とを含む構造体に加熱処理を行うことができる。
仮接合されるチップは、仮接合の前に供給されたチップに対して所定の検査を行い、良好と判断されたチップのみを選別するように構成されてもよい。これにより、検査により良好と判断されたチップのみを実装することにより、生産される最終製品の歩留まりを高めることができる。
<本接合>
工程S4では、工程S3で得られた複数のチップと基板との構造体に加熱処理を行うことにより、チップと基板との間の所定の導電性(抵抗率)又は接合強度(機械的強度)を得ることができる。
金属領域MRや非金属領域NRの表面は、微視的には原子レベル又はナノメートルから数十ナノメートルの表面粗さを有していることがある。したがって、基板の貼り合わせにより接触に至った、すなわち水酸基が接触することで結合されている2つの接合面間の実質的な接合面積は、みかけの接合面積より小さい(図6(a))。実質的に接触していない接合面の間の隙間は水の分子又は水の層により埋められていると考えられる(図6(a))。加熱処理により、水が接合界面から拡散して出て行く過程で、水酸基による実質的な接合面積が増えていき(図6(b))、その後、水素が水となり接合界面から拡散により出て行くか、水素の形で拡散することで、接合界面は酸素原子を介した構造に変化する(図6(c))と考えられる。さらに、貼り合わせられた金属領域MR又は非金属領域NRの実質的な接合界面又はこの実質的な接合界面近傍の原子が拡散又は固相拡散して、実質的な接合面積が増加すると考えられる。また、原子が拡散することで、貼り合わせによる金属領域MR等の弾性変形による残留応力が除去され、接合強度がより高くなる。このように、親水化処理を行うことを含む本接合方法は、固相同士間で直接接合させる方法に比べて、表面のうねりや凹凸を一旦水分子で埋めて接合し、加熱による水の除去時に接合面同士が互いに近づいて、接合に至らしめることを可能にするため、接合界面にボイドを発生させずに接合することが容易になる。
さらに、加熱により、表面活性化処理され親水化処理された接合面上に形成されている水酸化物層又は水の層などは、接合界面に取り込まれても、加熱処理で新生表面同士の接合界面が形成する際に、表面層と比べて低い温度又は短時間で消滅する。また、接合面上に形成されている水酸化物層又は水の層などが、加熱により拡散するにしたがって、微視的な粗さによって接合していなかった接合界面を閉じる作用を有するとも考えられる。したがって、本願発明による接合方法は、樹脂などを使用する従来の接合技術に比べて、接合に必要なサーマルバジェット(熱消費量)を低減することができる。
加熱処理中の最高温度は、100℃(摂氏100度)以上、チップと基板との接合外面を形成する材料の融点未満の温度に設定することが好ましい。
加熱処理中の最高温度を100℃(摂氏100度)以上に設定することで、接合界面に含まれている水酸(OH)基又は水の多くが、接合界面外部に抜け出していくと考えられる。このとき、水が仮接合の界面から抜け出していく過程で、それまでは接触していなかった接合面同士が接触するようになり、実質的な接合界面が広がり、接合面積が大きくなると考えられる。また、本発明による表面活性化処理後に親水化処理された接合面を接合することで、従来の単純な親水化処理を用いた接合に要した400℃を超える温度での加熱は不要となり、150℃から250℃程度の温度の加熱で十分な接合強度を得ることができる。
接合界面に含まれている水酸(OH)基又は水が接合界面まわりの材料中へ拡散しても、接合界面近傍の部位の電気的特性又は機械的特性が顕著に低下することはないと考えられる。
また、本願の発明によれば、加熱処理中の最高温度を、チップと基板との接合面を形成する材料の融点未満に設定しても、十分な電気的特性及び機械的特性を得ることができる。接合界面近傍で材料の固相拡散が生じて、それまでは接触していなかった接合面間の隙間を埋めることで、実質的な接合界面が広がり、接合面積が大きくなると考えられる。
また、加熱処理中の最高温度を、チップと基板との接合面を形成する材料の融点未満に設定して、固相拡散により本接合を行うことで、本接合における位置ずれをほぼなくすことができる。これにより、最終製品において、基板の接合部上の所定の位置に対するチップの位置決め精度を高くすることができ、例えば±1μm以下に抑えることが可能になる。
加熱処理中の最高温度を、チップと基板との接合面を形成する材料の融点以上に設定して本接合を行うと、仮接合で取り付けられた基板上の位置から、チップがずれることがあり得る。この位置ずれは、数μmになる場合がある。チップを本接合する際に位置ずれが生じると、ある金属領域が隣接する金属領域と接触するなどして、ショートの原因となる。また、接合面積が小さくなり、接合界面で生じる段差などにより、接合界面の接合強度が低下する場合がある。
上述のように、一例として、基板の対応する接合部に対するチップの位置決めは、チップ側と基板側とに設けられた位置調節用マークを、チップと基板とを透過する光を用いて、互いに合わせることで行われる。これにより、例えば、±1μmの位置決め精度を得ることができる。さらに、位置決めが十分でなかった場合には、仮接合直後にチップを基板から一度離し、再度位置決めしてから仮接合を行うことを、所定の位置決め精度が得られるまで繰り返すこともできる。これにより、±0.2μmの位置決め精度を得ることができる。
したがって、位置調節用マークを用いるなどしてチップを基板上の所定の位置に対して位置決めした上で仮接合を行い、さらに本接合において加熱温度をチップと基板との接合面を形成する材料の融点未満に設定することで、最終製品において、基板の接合部上の所定の位置に対するチップの位置決め精度を極めて高くすることができる。これにより、ショートなどの欠陥の発生を抑制するとともに、チップを積層基板上に積層して接合する場合でも、基板上における複数層に亘るチップの上下方向の位置決め精度を高く保つことができる。
たとえば、銅(Cu)により形成された金属領域MRにより良好な接合界面5を形成するためには、貼り合わせ(仮接合)後の加熱処理における温度が、摂氏約350度又はこれより高い温度であることが必要であった。しかし、清浄な金属表面を形成し当該表面を水酸化処理して仮接合を行う本願発明を適用することで、良好な銅(Cu)の接合界面を得るための温度を摂氏300度以下にすることが可能になった。当該温度は、200度以下とすることが好ましく、更には摂氏150度程度にすることが好ましい。
たとえば、チップ側接合面と基板の接合部とが銅(Cu)で形成されている場合には、仮接合後のチップと基板との構造体を150℃(摂氏150度)で600秒間、加熱することで、高い導電率と接合強度とを有するチップと基板との構造体が得られる。
チップ側接合面と基板の接合部との金属領域が銅(Cu)で形成されている場合には、0.14MPa(メガパスカル)程度の圧力を接合界面に垂直な方向に加えることで十分な導電性及び機械的強度が得られる。
従来、銅(Cu)と銅(Cu)とを直接接合するために、350℃(摂氏350度)程度での高温で、基板毎に数トンもの力を10分ほど保持することが必要だったが、本願発明において金属領域を形成する材料として銅を採用することで、低温、低圧、かつ高速に、所望の導電性及び機械的強度を有するチップと基板との構造体を製造することができる。
チップの各金属領域が、ニッケル(Ni)、金(Au)、スズ(Sn)、スズ―銀の合金などの金属で、20μm(マイクロメータ)四方、高さ3μm(マイクロメータ)から10μm(マイクロメータ)のパッド状に形成されている場合は、各パッドに対し0.5MPa(メガパスカル)から400MPa(メガパスカル)の圧力を加熱処理中に加えてもよい。
加熱処理中の構造体周りの雰囲気は、大気でもよく、窒素又は希ガス雰囲気でもよい。
加熱処理中の構造体周りの雰囲気の湿度を調節してもよい。この湿度は、得られる接合界面の電気的特性又は機械的特性に応じて調節してもよい。
加熱処理の際に、雰囲気を形成するガスの種類、流量などを調節してもよい。また、加熱処理の際に、接合界面に垂直方向の圧力が加わるように、貼り合わされている基板に、力又は圧力が加えられてもよい。接合界面に垂直方向の圧力が加わることで、実質的又は微視的な接合面積がさらに増加する。
加熱処理における、温度又は上記圧力若しくは圧力の時間プロファイルは、仮接合の条件、金属領域を形成する材料の熱特性、基板を形成する材料の熱特性、加熱処理の際の雰囲気、加熱処理装置の特性などにより、調節されうる。
なお、接合界面における所望の導電性と機械的強度を得るための工程として、貼り合わされた基板から構成された構造体を加熱する工程について説明したが、上記の実施態様に限られない。いわゆる仮接合された後の接合界面に対して、所望の導電性と機械的強度などの特性を得るためのエネルギーを与えることができれば、他の手法を採用してもよい。たとえば、基板や金属領域MR、非金属領域NRの光学的特性に応じて、仮接合された接合界面に対してマイクロ波、赤外光、レーザー光などを照射することで接合界面にエネルギーを与えてもよい。
本願発明に係る仮接合と本接合とを有する接合方法を採用することで、COW実装の生産効率が従来の接合方法と比較して著しく向上する。例えば、チップ毎に対応する基板上の接合部に仮接合及び本接合をすることを繰り返し行い、所定の数のチップを基板上に実装する場合と比較することにより、本願発明の効果をよりよく理解することができる。
1つの基板上に5000個のチップを接合する場合で比較する。
従来のようにチップ毎に仮接合と本接合とを繰り返す場合には、チップあたり60秒ほど掛かるといわれている。したがって、例えば、1つの基板上に5000個のチップを本接合するためには、(60秒/チップ)×(5000チップ)=300000秒=約83時間掛かる。チップ毎の仮接合及び本接合を10秒で行うとしても、1つの基板上に5000個のチップを本接合するためには、(10秒/チップ)×(5000チップ)=50000秒=約14時間掛かる。
本願発明に係る接合方法によれば、チップ毎に1秒から5秒で仮接合をすることができる。したがって、1つの基板上に5000個のチップをチップ毎に1秒で仮接合する場合には、(1秒/チップ)×(5000チップ)=5000秒=約1.4時間で仮接合が完了する。よって、本接合を比較的低温で数時間行ったとしても、従来の方法と比較して著しく生産時間が短縮されることが理解できる。また、1つの基板上に5000個のチップをチップ毎に5秒で仮接合する場合には、(5秒/チップ)×(25000チップ)=5000秒=7時間で仮接合が完了する。したがって、上記の従来の接合方法を用いて仮接合及び本接合を行う場合の所要時間である14時間と比較しても、7時間未満で本接合を行えば、生産時間が短縮されることが理解される。本接合の所要時間は、加熱の温度に依存するものの、7時間未満とすることは可能である。
<水付着処理>
上記の親水化処理(工程S1)が完了したチップを基板の対応する接合部に取り付ける(工程S3)前に、チップ側接合面に水(HO)を付着させてもよい(工程S5)。図7は、この工程(工程S5)を含む、本願発明の第一実施形態の変形例に係る接合方法のフローチャートを示している。
水付着処理は、チップ側接合面の少なくとも金属領域に水を吹き付けることで行ってもよい。吹き付けられる水は、気体状(ガス状又は水蒸気等)でも液体状(霧状又は水滴状等)でもよく、水の形態はこれらに限定されない。水をチップ側接合面に吹き付けることで、チップ側接合上に効率よくかつ均一に水を付着することができる。
水付着処理は、液体の水を収容する水槽を設け、この水にチップ側接合面の少なくとも金属領域を浸漬させることで行ってもよい。これにより、表面活性化処理された接合面上により多量の水をより確実に付着することができる。
最初の親水化処理の完了から仮接合が行われるまでの間に、チップ側接合面を下向き(フェイスダウン)の状態で当該液体の水と接触させて、チップ側接合面に水を付着させることができる。金属領域が、チップ側接合面における他の領域より突出している場合は、当該突出した金属領域のみに、上記液体の水との接触により、水を付着させてもよい。
一度親水化処理した表面に、さらに水(HO)を付着させ、水の層を形成することで、チップ側接合面の凹部を水(HO)で埋めて、接合面の表面粗さを低減させることができる。この水の層を介してチップ側接合面と基板の接合部とが接触することで、仮接合時の実質的な接合面積は大きくなると考えられる。
付着させる水の層の平均厚さは、水付着前の接合面の表面粗さと同程度又はそれ以上であることが好ましい。このようにすることで、仮接合したときに、水付着されなければ接触しないような接合面の間の隙間を水で埋めることが可能となり、実質的な接合面積を確実に大きく確保することができる。(図8を参照)
チップが有する複数の金属領域の高さにばらつきがある場合に、比較的低い金属領域は、チップに力を加えて変形させないと基板と十分に接触しないことがありえる。この場合でも、当該複数の金属領域の間の高さの差とほぼ同程度あるいはそれ以上の厚さの水分子の層を、金属領域上に形成することで、水の層を介して所定の強度の仮接合が得られる。(図9を参照)
接合面、特にチップの金属領域上に形成された水の層は、チップを基板に取り付ける(仮接合の)工程S3の際に、チップと基板との接合面間で、接合面に垂直な方向に作用する互いの吸着力又は吸引力を増加させる機能があると考えられる。その結果、水の層がなかった場合と比較して、チップと基板との接合面間に水の層が形成される部分の面積に応じて、仮接合の力が増加する。
さらに、チップの複数の金属領域上に形成された水の層は、接合面に平行な方向に作用する吸引力をも発生させるので、チップを基板の接合部に向けて引き寄せることにより、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる。
図10に示すように、たとえば、それぞれ水付着処理により水の層が形成された、チップが有する複数の金属領域と、これに対応する基板上の接合領域を、接合面に垂直な方向に沿って互いに近づけるとき、チップは、基板に対し、接合面に平行な方向にずれている場合がある(図10(a))。接合面に垂直な方向にさらに近づけると、水の層同士が接触し、チップの金属領域とこれに対応する基板上の接合領域との間を結合するような水の層が形成される(図10(b))。この水の層には表面エネルギーを最小にさせる表面張力が作用して、チップの金属領域は、これに対応する基板上の接合部上の所定の位置に自動的に位置決め(セルフアラインメント)される(図10(c))。その結果、仮接合のためにチップを基板に対して取り付ける際に、位置決めの精度を比較的低く設定することができ、接合装置の簡略化、位置決め工程の高速化が可能になる。
セルフアラインメントを実現するために、チップ側接合面に親水化された金属領域と疎水化された領域とを設け、これらに対応するようにして、基板の接合部に親水化された接合領域と疎水化された基板側疎水化領域とを設ける構成を採ることもできる。これにより、親水化されたチップの金属領域と基板の接合領域とが接触するようにチップを基板の対応する接合部に取り付ける際に、親水化領域と疎水化領域があることで、水の層で発生する表面張力の作用が大きくなり、位置決めの精度がさらに向上し、所定の位置にチップを高速で仮接合することができる。また、金属領域の表面がチップ側接合面の表面とほぼ同一面上にあるように構成したチップを使用する場合には、親水化領域と疎水化領域をほぼ同一平面上に配置することができるので、デバイスの最終製品の厚みを小さくし高密度化することができる。
親水化処理後の水の付着は、チップ側接合面の金属領域のみに対して行われてもよく、またチップ側接合面の金属領域に加え、チップ側接合面の金属領域が対応して接合される、基板の接合部に形成された接合領域に対して行われてもよい。
本願発明によれば、チップと基板との間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。また、すべてのチップを基板上に取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。さらに、水付着処理を有することで、十分な水が接合面に付着されるので、仮接合によるチップと基板との間の接合力が増強されるという効果を奏する。
<1.2 第二実施形態>
図11は、本願発明の第二実施形態に係る、複数の層のチップを基板へ接合する方法を示すフローチャートである。基板に1層目のチップを取り付ける工程S11から工程13の処理は、第一実施形態の工程S1から工程S3と同様であるので、ここではその説明を省略する。
第一実施形態では1層分のチップが基板上に取り付けられるのに対し、第2の実施形態では複数層のチップが基板上に取り付けられる点で異なる。また、複数層のチップを基板上に取り付けるために、第二実施形態では、複数層に亘って積層されるチップが、第一実施形態のチップ側接合面に対応する第一接合面と、この第一接合面の裏側に位置する第二接合面とを有して構成されている。
工程S11から工程S13(図12(a))が完了すると、基板上には所定数の1層分のチップが取り付けられている。この第1層を構成するチップの第二接合面に第2層を構成する所定数のチップの第一接合面が接触するように、それぞれのチップを基板上に取り付ける。3層目以降も、同様の取付動作を実行することで、所望の数のチップ層を基板上に取り付ける。
第2層のチップの取付けを例として説明すると、新たな(第2層の)チップ側接合面(第一接合面)に対して表面活性化処理と親水化処理を行い(工程S14)、既に基板に取り付けられている第1層のチップの第二接合面に対して表面活性化処理と親水化処理を行う(工程S15)。
工程S16で、工程S14が施された、第1層のチップの数に対応する所定数の第2層のチップが、それぞれ、工程S15が施された第2層のチップに取り付けられる。第2層のチップの第1層のチップへの取付けは、第2層のチップを一つずつ取り付けることを、取り付けるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行われる。この工程S16が完了すると、基板上には2層分のチップが仮接合される(図12(b))。
以降これを繰り返し、第i層(iは3以上)のチップの第一接合面を基板上に既に取り付けられている第i―1層のチップに取り付けることにより、所定数の第i層のチップを基板上に取り付ける。
第i層が所望の数の層(N層)まで、新たな所定数のチップに対して表面活性化処理及び親水化処理(工程S14)を行い、取り付けられた最上層の所定数のチップに対して表面活性化処理及び親水化処理を行い(工程S15)、仮接合する(工程S16)動作を繰り返すことにより(S17、S18)、基板上にN層の仮接合チップ層を形成することができる(図12(c))。図12(c)では、5層のチップ層が形成されているが、チップ層の数Nは、これに限定されることはなく、2以上であればよい。
工程S19では、上記形成されたN層の仮接合チップ層と基板とを含む構造体を加熱する。
加熱処理の際に、雰囲気を形成するガスの種類、流量などを調節することができる。また、加熱処理の際に、接合界面に圧力が加わるように、チップと基板との仮接合により形成された構造体に圧力を加えることもできる。
加熱処理における、温度又は上記力若しくは圧力の時間プロファイルは、仮接合の条件、接合界面を形成する材料の熱特性、チップ又は基板を形成する材料の熱特性、加熱処理の際の雰囲気、加熱処理装置の特性、チップ層の数Nなどにより、調節することができる。
本願発明の第二実施形態に係る接合方法によれば、第一実施形態に係る接合方法と同様の効果を奏するとともに、さらに、接合界面の電気的又は機械的特性を低下させる樹脂等の物質を使わない清浄な工程で、所定のN層のチップ層を基板上に形成できるという効果を奏する。また、従来の接合方法では、各チップ層の仮接合が完了するごとに、樹脂を塗布することが必要であったが、本願発明の第二実施形態によれば、このような樹脂処理工程を省略することができるので、複数のチップの基板上への仮接合をきわめて効率的に行うことができる。
図13は、本願発明の第二実施形態に係る複数の層のチップを基板へ接合する方法の他の例を示すフローチャートである。各層(第1層及び第i層(iは2以上))において、表面活性化処理及び親水化処理(工程S11及び工程S14)が完了したチップの第一接合面に、水付着処理(工程S21及工程S22)を行うことを特徴とする。
接合面、特にチップの金属領域上に形成された水の層は、チップを基板に取り付ける(仮接合の)工程S13の際及び第i層のチップを第i−1層のチップ上に取り付ける工程S16の際に、チップと基板との接合面間及びチップ同士の接合面間で、接合面に垂直な方向に作用する互いの吸着力又は吸引力を増加させる機能があると考えられる。その結果、水の層がなかった場合と比較して、チップと基板との接合面間に水の層が形成される部分の面積に応じて、仮接合の力が増加する。
さらに、チップの複数の金属領域上に形成された水の層は、接合面に平行な方向に作用する吸引力をも発生させるので、チップを基板の接合部に向けて引き寄せることにより、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる(図10を参照)。N層のチップを基板上に積層する際に、上下に隣接する2層のチップ間において、下層のチップの第二接合面に対して上層のチップの第一接合面を位置決めする必要があるが、上下に隣接する2層のチップ間においても同様にセルフアラインメント機能が作用するので、接合装置の位置決め精度を比較的低く設定することができ、接合装置のさらなる簡略化、位置決め工程の高速化が可能になる。
第二実施形態のさらなる変形例(図示せず)として、各層のチップの仮接合(工程4(S4))の後に、加熱処理を行ってもよい。この場合、N層のチップの仮接合後の接合体の加熱処理(工程5(S5))を省略してもよい。
第1及び第二実施形態において、基板に接合される複数のチップは、複数の種類のチップを含んでいてもよい。例えば、複数の種類のチップは、XY方向の寸法、大きさの異なる複数のチップを含んでいてもよい。
たとえば、図14に示すように、縦横方向にp0の寸法で設定された各接合部において、第1の種類のチップCP11と第2の種類のチップCP12との双方が配置されるようにしてもよい。図14では、チップCP11とチップCP12は、いずれもピッチp1で縦横方向に配置されており、ピッチp1はピッチp0に等しい。ここで、第2の種類のチップCP12のサイズは、第1の種類のチップCP11のサイズよりも小さい。また、第2の種類のチップCP12のサイズと第1の種類のチップCP11のサイズとは、いずれも、接合部よりも小さい。
このように、複数の種類の異なるサイズのチップが同一のチップ層(第i層)において混在するようにチップを配置する構成を採ることもできる。このような態様によれば、多様なサイズのチップで構成される完成品チップを効率的に作成することが可能にある。
本願発明によれば、チップと基板との間及びチップ間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有する複数層のチップと基板とを含む構造体を製造することができる。複数層に亘ってすべてのチップを取り付けた後に加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数層のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。
また、本接合での加熱処理を行う前の、複数層のチップと基板とを含む構造体を、複数個まとめて加熱することで、より効率的に、清浄な接合界面を有する複数層のチップと基板とを含む構造体を製造することができる。
<2.接合装置>
<2.1 システム構成>
図15は、チップ実装システム(電子部品実装システム)1の概略構成を示す上面図である。なお、図15等においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
このチップ実装システム1は、基板(チップ実装対象の基板)上に複数のチップから構成される1又は複数のチップ層を取り付けて実装するシステムである。たとえば、このチップ実装システム1は、対象の基板WA上に第1層の複数のチップCP1を接合することができる。また、チップ実装システム1は、基板WA上に配置された第1層の複数のチップCP1上に第2層の複数のチップCP2等をさらに積層して接合することも可能である。
図15に示すように、チップ実装システム1は、複数のチップを保持して接合すべきチップを個別に供給するチップ供給装置10と、チップ供給装置10から供給されたチップを基板上に取り付けるボンディング装置30と、複数のチップ及び基板の接合面に表面活性化処理と親水化処理を行う表面処理装置50と、チップ実装システムの外部から接合すべきチップ及び基板をその内部に搬入し、チップが取り付けられた基板(チップと基板とを含む構造体)をその外部へ搬出する搬出入部90と、複数のチップ、基板及びチップと基板とを含む構造体を搬出入部90、チップ供給装置10、ボンディング装置30及び表面処理装置50の間において搬送する搬送部70とを備える。
図15等に示す実施形態においては、加熱手段は図示されていないが、加熱手段はチップ実装システム1に組み込まれるように構成されても、またチップ実装システム1とは別に構成されてもよい。加熱手段がチップ実装システム1に組み込まれる構成を採る場合には、加熱装置を搬送部70に連結した構成とすることで、仮接合後にチップと基板とを含む構造体を当該加熱装置に搬送することができる。加熱手段をチップ実装システム1とは別に構成する場合には、加熱手段を、はんだ材のリフローなどを行うための加熱炉としても、一般的な加熱炉としてもよい。この場合、仮接合後のチップと基板とを含む構造体を複数個まとめて加熱処理することができるので、効率的に本接合を行うことができる。
<2.2 搬送部>
搬送部70は、接合すべき複数のチップを、搬出入部90から表面処理装置50へ搬送し、表面活性化処理と親水化処理が行われた後に表面処理装置50からチップ供給装置10へ搬送する。また、搬送部70は、基板を、搬出入部90から表面処理装置50へ搬送し、表面活性化処理と親水化処理が行われた後に表面処理装置50からボンディング装置30へ搬送する。さらに、搬送部70は、所定数のチップが基板上に取り付けられた後に、チップと基板とを含む構造体をボンディング装置30から搬出入部90へ搬送する。
<2.3 表面処理装置>
図15に示す表面処理装置50は、真空チャンバ内に基板WA又は複数のチップを保持するステージ53と、表面活性化処理のために粒子を放射する粒子ビーム源51と、親水化処理のために水を放出する水導入口54とを備え、複数のチップと基板WAとの両方に対して表面活性化処理と親水化処理とを行うことができる構成となっている。以下、便宜的に、図15に示す装置の実施例を用いて本願発明を説明するが、これに限定されない。
図15には、表面処理装置50内に基板WAのみが示されているが、複数のチップと、この複数のチップが既に取り付けられている基板とを含む構造体における、最上層のチップの第二接合面に対して表面活性化処理又は親水化処理をする場合には、図15の基板WAが示されている位置に、基板WAに代わって、上記複数のチップとこの複数のチップが既に取り付けられている基板とを含む構造体を配置するような構成としてもよい。
たとえば、表面活性化処理のために一つのチャンバを設け、親水化処理のために別のチャンバを設けてもよい。また、複数のチップの表面処理(表面活性化処理及び親水化処理)をするために一つのチャンバを設け、基板の表面処理(表面活性化処理及び親水化処理)をするために別のチャンバを設けてもよい。
さらにまた、チップの表面活性化処理と親水化処理、そして基板の表面活性化処理と親水化処理とを別個に実施するために、それぞれの処理に対してチャンバを設け、計4つのチャンバを設けてもよい。また、表面活性化処理及び親水化処理の処理態様に応じて、1又は複数のチャンバを設ける構成とすることができ、各チャンバに収容する処理装置の組み合わせも種々に変更することが可能である。
表面処理装置50は、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、表面処理装置50内部の気圧を低下させ、真空度を上げることができる。真空度を上げることで、粒子ビーム源による粒子ビームの放射が可能になる。真空ポンプは、表面処理装置50内の気圧を10−5Paに下げる能力を有することが好ましい。また、真空引きにより、表面処理装置50内の、浮遊不純物や水分子などを予め除去し、清浄な雰囲気を準備することができる。
<表面活性化処理手段1>
所定の運動エネルギーが付与された粒子(破線で図示)は、図16に示されるように、粒子ビーム源51から複数の接合部が設定された接合面を有する基板WA全体に向けて放射状に放出されてもよい。比較的小型の粒子ビーム源などを使うことができ、装置を比較的単純に構成することで小型化できる。
粒子ビーム源51は、所定の運動エネルギーが付与された粒子が、粒子ビーム源から複数の接合部が設定された接合面を有する基板の一部分に向けて放射状に放射されるように構成されてもよい。このとき、粒子ビーム源の位置、向きなどを変えることで、接合面が設定された領域全体を照射することができる。
図15では、粒子ビーム源51は、表面処理装置50内でステージ53の斜め上部に取り付けられ、ステージ53上に搬送された基板の表面に向けて所定の運動エネルギーが付与された粒子を放射する。ステージ53は、円形であり、ステージ53の中心軸を回転軸として回転することができる。ステージ53を表面活性化処理中に回転させることで、基板WA表面に亘って、基板WA表面の単位面積当たりに照射される粒子の量を均一にし、表面層の除去量(厚さ)を均一にすることができる。
粒子ビーム源のチャンバ内の配置又は粒子ビームが照射される対象物に対する配置は、図15に示された実施態様に限定されない。
図17に示すように、粒子ビーム源150は、加速電圧を規定するカソード151とアノード152と、カソード151とアノード152に間に電圧を加える電源154と、ガスを導入するガス導入手段155を備えている。
カソード151とアノード152とは互いに電気的に絶縁されて設けられ、電源154により、カソード151とアノード152との間には、実質的に粒子の運動エネルギーすなわち加速電圧を規定する所定の電圧が印加される。
カソード151は、粒子ビームの放射口156を挟んで磁界を形成するN極カソード151NとS極カソード151Sから構成される。カソード151N及び151Sから放出された電子は、カソード151Nと151Sとの間に形成された磁界によるローレンツ力を受けて螺旋(らせん)運動をする。この電子が、ガス導入手段155を介して導入されたガスに衝突し、当該ガスをプラズマ化する。このプラズマ中のガスの陽イオンが、カソード151とアノード152との間の電界により加速されて、放射口156から外部に向けて放射される。
また、粒子ビーム源150は、図18に示すような粒子ビーム源150Aの構成を有していてもよい。粒子ビーム源150Aは、磁石157を有し、これによりアノード152に開いた粒子ビームの放射口156に磁界を形成させる。また、粒子ビーム源150Aは、電子を有するカソード(ニュートライザー)158を有していてもよい。カソード158から放出された電子の一部は、上記磁界にトラップされる。これにより、磁界内で粒子ビーム源150Aに導入されたガスはプラズマ化される。そして、ガスの陽イオンは、アノード152に掛けられた電圧による電界中で、放射口156から粒子ビーム源150Aの外部へ加速される。カソード158から放出された電子は、粒子ビームと同じ方向にも飛ぶことにより、粒子ビーム又は粒子ビームが衝突する基板の接合面の電荷を中和する作用をも有する。
あるいはまた、粒子ビーム源150は、図19に示すような中性原子ビーム源150Nの構成を有していてもよい。中性原子ビーム源150Nは、図19に示すような高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源150Nは、典型的には、一対のアノード152間に形成される電位の鞍点付近でイオン化されたガスの陽イオンをカソード156に向けて、すなわちイオン源の外側に加速させ、カソード156から陽イオンの衝突により放出される電子と結合させることで、当該イオンを中性化する構成を有している。このような中性原子ビーム源を用いることで、加速されたイオンは、電気的に中性化され過程でその運動エネルギーを実質的に失うことがないので、効率よく中性である原子ビームを用いて、上記対象物の表面に対して、荷電することなく、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
これにより、上述のとおり、加速されたイオンは、電気的に中性化され原子になる過程で実質的にその運動エネルギーを失うことがないので、この中性である原子ビームを用いて、上記対象物の表面の荷電を回避しつつ、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
図17、図18及び図19は、本願発明に使用されうる粒子ビーム源を例示的に説明するものであり、これに限定されない。たとえば、アノード上記に冷陰極型粒子ビーム源に限られず、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいはクラスターイオン源が採用されてもよい。
<表面活性化処理手段2>
中性原子ビーム源、イオンビーム源、高速原子ビーム源などの粒子ビーム源は、図20に示されるように、ライン型でもよい。ライン型の粒子ビーム源は、ライン型(線状)の又は細長い粒子ビーム放射口を有し、この放射口からライン型(線状)に粒子ビームを放射することができる。放射口の長さは、粒子ビームが照射される基板の直径より大きいことが好ましい。基板が円形でない場合には、放射口の長さは、粒子ビーム源に対して相対的に移動させられる基板に係る放射口が延びる方向の最大寸法より大きいことが好ましい。
ライン型の粒子ビーム源から放射された粒子ビームは、表面活性化処理中のある時刻においては、基板の表面の線状の領域を照射している。そして、ライン型の粒子ビーム源を、接合面を有する基板に向けて粒子ビームを放射しつつ、放射口が延びる方向と垂直方向に走査させる。その結果、線状の粒子ビームの照射領域が基板のすべての接合部上を通過する。ライン型の粒子ビーム源が、基板上を通過し終えると、基板全体が、粒子ビームにより照射され、表面活性化される。
ライン型の粒子ビーム源は、比較的面積の大きい基板の表面を、比較的均一に粒子ビームで照射する際に適している。また、ライン型の粒子ビーム源は、基板の様々な形状に対応して、比較的均一に粒子ビームを照射することができる。ライン型粒子ビーム源は、例えば図17に示す断面を有し、図17の紙面に垂直方向に延びた形状を有していてもよい。
<表面活性化処理手段3>
プラズマ発生装置を用いても、粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。粒子への所定の運動エネルギーの付与は、プラズマ発生装置を用いて、複数のチップ又は基板などの接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで行うことができる。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
プラズマ発生装置は、表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーを1eVから2keVの範囲に制御できるように構成されていることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さや材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
<親水化処理手段>
図15に示される実施形態においては、水ガス供給部55と、弁56と、ガス供給管と、水導入口54とから、接合面を親水化処理する親水化処理手段が構成される。水ガス供給部55から供給される気体状又は液体状の水は、弁56の開放に応じて、ガス供給管を通って水導入口54から表面処理装置50のチャンバ内に導入される。弁56は、マスフローとして機能し、その開放度に応じて水の供給量を調節するようにしてもよい。
また、親水化処理手段は、水ガス供給部55で水ガス(気体状の水又は霧状の水)をキャリアガスと混合させることで、水ガスとキャリアガスの混合体が表面処理装置50のチャンバ内に導入されるように構成されてもよい。さらにまた、親水化処理手段は、水ガスとキャリアガスとの混合比、弁56を通過するガスの流量を調節することで、表面処理装置50内の雰囲気の湿度を調節するように構成されてもよい。
<2.4 チップ供給装置>
チップ供給装置10は、ダイシングされた基板から各チップCPを取り出し、ボンディング装置30に各チップCP(CPi)を供給する装置である。チップ供給装置10は、複数のチップから一つのチップのみを上方に持ち上げて支持する突上部11と、突上部11により持ち上げられたチップをボンディング装置30に搬送するチップ移載装置13等を備える。チップ移載装置13は、ダイピッカ131とチップ供給機135とを有する。(図21参照)
チップ供給装置10は、その内部でダイシング処理が行われて複数のチップCPが生成されるように構成されてもよい。具体的には、複数の電子回路を有する基板WCが縦方向および横方向に切削されチップ化される。
あるいは、ダイシング処理が既に行われた複数のチップCPが、支持基板に支持された状態で、表面活性化処理、親水化処理が施されてチップ供給装置10に搬送されてもよい。ダイシング処理による汚染粒子などの発生を抑制することができる。
チップ供給装置10内において、ダイシングされた複数のチップCPがダイシングテープTE上に載置される。各チップCPは、フェイスアップ状態(金属領域としてのハンダバンプBU(図示せず)が付された側の面が上側を向いた状態)でダイシングテープTE上に載置されている。
そして、切り出された各チップCPは、チップ供給装置10の突上部(突上ニードル)11によって、1個ずつ上方に突き上げられ、ダイピッカ131に位置PG1で受け渡される。フェイスアップ状態のチップCPが、反転機構を有するダイピッカ131によって上下反転されて、フェイスダウン状態でボンディング装置30に供給される。ダイピッカ131は、その先端(下端)の吸着部でチップCPをフェイスアップ状態で吸着し、反転機構によって上下反転されて、フェイスダウン状態でさらに上方に移動した後に、チップ供給機135に受け渡す。チップ供給機135は、フェイスダウン状態のチップCPの上面を吸着して、チップ搬送部39側へ向けて移動する。
<2.5 チップ搬送部>
図22において、チップ搬送部(ターレットとも称する)39は、チップ供給装置10から供給されたチップを一つずつボンディング部33(詳細にはヘッド部33H)に受け渡す装置である。
チップ搬送部39は、複数(N個;ここでは3つ)のプレート部391を備えている。各プレート部391は、薄板形状を有しており、例えば数mm(ミリメートル)程度(好ましくは1mm〜2mm程度以下)の厚さを有している。複数のプレート部391は、上面視において、軸AXの周りに等角度間隔で配置される。
チップ搬送部39は、複数のプレート部391を一斉に回転駆動する駆動部392をも備えている。チップ搬送部39は、駆動部392を用いて、所定の鉛直軸AXを中心に複数のプレート部391を回転させることが可能である。
図22に示すように、チップ供給装置10から供給されたチップCPは、チップ搬送部39の3つのプレート部391(詳細には、391a,391b,391c)のうちのいずれか(例えば391b)によって受け取られる。その後、当該プレート部391が180度回転した後に、プレート部391上のチップは、ボンディング部33(ヘッド部33H)へと受け渡される。
プレート部391はそれぞれ上記の動作を実行するので、ボンディング部33にはチップが連続的に受け渡される。
より具体的には、N個(ここではN=3)のプレート部391を有するチップ搬送部39が角度β(=360度/(N*2))(ここでは60度(360度/(3*2))回転するごとに、チップ供給装置10からプレート部391へのチップCPの受け取り動作と、プレート部391からボンディング部33(ヘッド部33H)へのチップCPの受け渡し動作とが交互に実行される。
たとえば、図22に示すように、或るチップCPが受渡位置PR1でプレート部391bによって受け取られプレート部391bに保持される。このとき、別のチップCPが位置PR9まで進行したプレート部391aによって既に受け取られプレート部391a上に保持されている。
この状態から、チップ搬送部391が軸AX周りに(時計回りに)角度β(60度)回転すると、図23に示すように、プレート部391a上のチップCPは、ヘッド部33Hの直下の位置(受渡位置PR2)にまで移動する。ヘッド部33Hは、チップCPに干渉しない基準位置から若干量下降し、ヘッド部33Hの先端部(下端部)で当該チップCPを吸着して、プレート部391aからチップCPを受け取る。ヘッド部33Hは、プレート部391a上のチップCPを吸着した後に今度は若干上昇して基準位置に戻る。これにより、プレート部391a上のチップCPは、ヘッド部33Hに受け渡される。このようにして、プレート部391aからヘッド部33HへのチップCPの受け渡しが実行される。
このとき、チップ搬送部391(詳細にはそのプレート部391a)は、受渡位置PR2(XY平面においてボンディング位置と同じ位置)において、上側のチップCPと下側の基板WTとの間にある。
次の角度βの回転動作が実行されると、プレート部391cが受取位置PR1に移動する。この状態において、さらに別のチップCPが受取位置PR1でプレート部391cによって受け取られる。このとき、プレート部391bには上述の動作によって既にチップCPが載置されている。
この角度βの回転動作によって、プレート部391aがヘッド部33Hの直下の位置から離間する。この回転動作により、ヘッド部33Hからボンディング位置(X,Y)を直接的に見通すことができるようになる。そして、この動作後において、ヘッド部33Hが下降し、ヘッド部33Hに吸着保持されたチップCPが位置PG7(図示せず)まで下降させられる。これにより、ヘッド部33Hの先端部で吸着されていたチップCPが、ステージ31に設置された基板WA上に載置される。このとき、後述するような位置合わせ動作等が実行され、当該チップCPが基板WA上の所望の位置に載置される。その後、ヘッド部33Hは上昇して再び基準位置に復帰し、プレート部391aとヘッド部33Hとの干渉が回避される。
その後、さらに角度βの回転動作が実行されると、今度はプレート部391bが受渡位置PR2に到達し、プレート部391bからヘッド部33HへのチップCPの受け渡し動作等が実行される。
そして、さらに角度βの回転動作が実行され、今度はプレート部391aが受取位置PR1に移動し、プレート部391aによるチップCPの受け取り動作が実行される。
以後、同様の動作が繰り返し実行される。
ここにおいて、奇数個(特に3つ以上)のプレート部391が軸AX周りに略等角度間隔で(角度γ(=β×2)間隔で)配置されており、チップ搬送部39が角度β回転するごとに、位置PR1でのチップ受け取り動作と位置PR2でのチップ受け渡し動作とが交互に実行され得る。
特に、回転式のチップ搬送部39によって、角度γの回転動作ごとに各チップCPを供給することができる。詳細には、或るチップの載置後においては、角度β(例えば60度)の回転移動で、次のチップを供給することができる。したがって、位置PR1から位置PR2へとチップCPを1個ずつ搬送(往復搬送)する場合に比べて、比較的短い時間間隔で複数のチップCPを順次に供給することが可能である。すなわち、チップ供給におけるサイクルタイムを短縮することが可能である。特に、プレート部391の数が大きいほど、チップを取り付ける時間間隔が短縮される。
図21において、チップ搬送部39の3つのプレート部391上に、チップの突起部(金属領域)が下向きに載置されているが、チップの金属領域はチップ搬送部39に接触しないことが好ましい。
チップ搬送部39の3つのプレート部391は、チップの金属領域に触れないように、チップ側接合面の一部分を支持するように構成されてもよい。これにより、親水化処理が完了してから仮接合が行われるまでに、チップの金属領域は、親水化処理が完了したときの表面状態を保つことができる。
そこで、図4に示されたような複数のバンプ(金属領域)が形成されたチップを搬送するためには、図24に示されるように、当該複数のバンプにより囲まれた領域及びチップの外周部の双方又はいずれか一方を支持するように、プレート部391に内側支持部61、外側支持部62及びバンプに対応する箇所にはバンプが接触しないような凹部63が構成されてもよい。その際、当該複数のバンプにより囲まれた領域を支持する内側支持部61には、プレート部を貫通してなる、チップを真空吸着するための真空吸着孔64を設けるのが好ましい。チップを真空吸着することで、チップ搬送部39が回転するときに、チップはプレート部391に固定され、チップのプレート部391からの離脱や、プレート部391上での位置ずれを防ぐことができる。
図24では、チップを内側支持部61と外側支持部62とで支持する構成が示されているが、内側支持部61と外側支持部62のいずれか一方でチップを支持する構成としてもよい(図25(a)及び(b))。外側支持部62のみでチップを支持する場合は、外側支持部62がチップの外周部と接触されて、プレート部391の凹部63とチップの支持される側の面とで囲まれる領域を真空吸着孔64で真空引きすることにより、チップをプレート部391に固定して支持することができる(図25(b))。
<2.6 ボンディング装置>
チップ搬送部39は、チップ供給機135からチップCPを、図21の位置PG3、図22の位置PR1で受け取ると、中心軸AX周りの回転動作によって当該チップCPをボンディング部33のヘッド部33H(後述)の直下の位置である図21のPG5、図23の位置PR2まで搬送する。チップCPは、このような搬送動作を経て、フェイスダウン状態のまま受渡位置PG5にまで到達する。
その後、ボンディング部33のヘッド部33Hは、チップCPを吸着することにより受け取る。ステージ31をX方向およびY方向に移動し、基板WAの当該チップCPを仮接合すべき箇所(基板の接合部)を、ヘッド部33Hの真下に配置する。その後、ボンディング部33のヘッド部33Hが降下し、チップ側接合面を基板上の対応する接合部に接触させる。接触時に、チップ側接合面と基板の接合部との間に圧力を加えることができるようにボンディング部を構成してもよい。
<2.7 水付着装置>
上記の親水化処理の完了後、チップが基板上に取り付けられる前に、またはチップが基板上に既に取り付けられたチップの第二接合面上に取り付けられる前に、接合されるチップのチップ側接合面又は第一接合面に水を付着させるための孔部を有する装置(水付着手段又は水付着装置)を設けてもよい。水付着装置は、チップ搬送部39に設けられてもよく、あるいはチップ供給装置10内やボンディング装置30内に設けられてもよい。
<回転噴射型1>
図26に示されるように、水付着手段として、上記孔部を水噴射口65としてなし、当該水噴射口65から水を噴射する構成としてもよい。この水噴射口65は、プレート部391に付設された部分に、真空吸着孔64と同じ向きに開口されるように設けてもよい。この水噴射口65は、真空吸着孔64の軸AXを中心とした回転円上に配置される。チップ搬送部39の回転中心の軸AXを基準として、真空吸着孔64と水噴射口65とは角(φ)をなしている。
チップがプレート部391からヘッド部33Hへ受け渡された後に、プレート部391が角(φ)だけ回転し、水噴射口がヘッド部33Hに吸着されているチップのチップ側接合面(第一接合面)に対向する位置に来たときに、水噴射口から気体又は液体状の水をチップのチップ側接合面(第一接合面)に向けて噴射させる。
チップ搬送部39の回転動作中に水の噴射を行うことができるので、工程時間を短縮することができる
水噴射口は、チップ搬送部39のN個のプレート部391のそれぞれに配置されるのが好ましい。この場合、N個のプレート部391のうち、チップをヘッド部33Hに受け渡した直後に、当該チップを受け渡したプレート部391に設けられた水噴射口を開放することで、チップのチップ側接合面又は第一接合面に向けて水を噴射することができる。
<回転噴射型2>
図27に示されているように、水噴射口の変形例として、真空吸着孔64を水噴射口として機能させてもよい。真空吸着孔64は、真空ポンプ(図示せず)に接続されるとともに水供給源にも接続されるように構成される。そして、真空吸着孔64は、チップを吸着する時及び吸着している間は、真空ポンプと接続され、水供給源との接続が遮断されて、チップを真空吸着する。水噴射口として機能するときは、真空ポンプとの接続が遮断され、水供給源と接続されて、真空引きの際に気体が流れる方向と逆方向に気体状又は液体状の水が流れるように構成されるのが好ましい。
このように真空吸着孔64を水噴射口としても構成することで、チップがプレート部391からヘッド部33Hへ受け渡された直後に、チップ搬送部39のプレート部391に設けられた上記真空吸着孔である水噴射口を介して、水を、チップ側接合面に向けて吹き付けることができる。(図27参照)
チップ搬送部39のN個のプレート部391のそれぞれの真空吸着孔から水分子ガスを噴射できるように構成することが好ましい。この場合、N個のプレート部391のうち、チップをヘッド部33Hに受け渡した直後に、当該チップを受け渡したプレート部391に設けられた真空吸着孔から水分子ガスを噴射させる。
チップがプレート部391からヘッド部33Hへ受け渡される動作とほぼ同時に水を吸着させることができるので、工程時間を短縮することができる。また、チップは受け渡した後には、真空吸着孔の上方にあるので、プレート部を回転させずにそのまま水を噴射するだけでよい。したがって、チップのプレート部391への受渡し後に、改めて水噴射口をチップに対して相対的に位置決めする必要はない。
<固定噴射型>
図28に示されるように、水付着手段のさらなる変形例として、水噴射口65は、チップ供給装置10又はボンディング装置30に対して固定され、チップの取出し位置から接合位置までの移動経路中に設けられてもよい。各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hを配置し、搬送されるチップが水噴射口65を通過する際に、チップ側接合面に対して水を噴射できるように構成されてもよい。
例えば、チップ搬送部39のプレート部391は、チップをフェイスダウン(下向き)の状態で、チップ側接合面を下方向に開放させた状態で搬送するように構成され、水噴射口は、チップ供給装置10又はボンディング装置30内の、チップ搬送部39の回転によるチップの移動経路上の所定の位置に、上向きに固定されるように構成されてもよい。
チップ搬送部39がチップCPをフェイスダウン(下向き)の状態を保ち、搬送するために、図29に示すように、各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hを配置してもよい。
チップ側接合面を下方向に開放して搬送する構成は、図29に示された実施態様に限られない。
たとえば、図15等の態様を変形して、プレート部391が、バンプ(金属領域)をフェイスアップの状態で受け取り、水噴射口が、チップの取出し位置から接合位置までの移動経路中に上から下に向けて水を噴射するように構成されてもよい。
また、水噴射口は、チップの取出し位置から接合位置までの移動経路中に下から上に向けて水を噴射するように構成され、プレート部391は、チップをフェイスアップ状態で受け取り、チップが水噴射口上を通過するときに、プレート部391がプレート部391の長手軸周りに回転して、チップ側接合面又は第一接合面を水噴射口に向けさせるように構成されてもよい。
ここにおいて、偶数個(特に4つ以上)のプレート部391が軸AX周りに略等角度間隔で(角度γ間隔で)配置されている。図22等の構成と異なり、各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hが配置されている。したがって、偶数個のプレート部391が配置されることにより、チップ搬送部39が角度γ回転するごとに、位置PR1でのチップ受取動作と、位置PR2でのチップ仮接合動作と、位置PR3での水付着動作とが同じタイミングで行われるので、チップの受渡し、水付着動作、及び仮接合の一連の工程に必要な時間を短縮することができる。
<浸漬型>
親水化処理の完了後、チップが基板上に取り付けられる前に、チップ側接合面又は第一接合面の金属領域に水を付着する装置(水付着装置)として、チップ供給装置10又はボンディング装置30内に液体の水を収容する水槽66を設けてもよい。(図30を参照)
上記水槽66は、チップ供給装置10又はボンディング装置30内の、チップ搬送部39の回転によるチップの通過経路上の所定の位置に配置されるのが好ましい。たとえば、図28の水噴射口65が設けられている位置に、この水槽66を配置してもよい。
図30に示すように、各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hが配置されている構成を採ることもできる。ヘッド部33Hに吸着されているチップは、水槽上に位置決めされ下方向(−Z方向)に移動することでチップ側接合面が、水槽内に収容されている液体状の水と接触する。水槽内の水との接触により、チップ側接合面に多量の水を確実に吸着させることができる。
チップ側接合面の金属領域がバンプ状に(突起部として)形成されている場合には、チップの降下量を制御することで、当該バンプ上の金属領域のみを液体の水に接触させることが可能になる。
水槽内の水位を検出するセンサ(図示せず)により、水槽内でチップがの水面の鉛直方向(Z方向)の位置を一定又は所定の位置に制御してもよい。
水槽に蓋を設け(図示せず)、水槽を開閉できるように構成してもよい。水槽を蓋でしめることで、例えば水槽が使用されていないときに、チップ供給装置10又はボンディング装置30内への不要な水分子の蒸発を防ぐことができる。
以下に、仮接合及び表面活性化処理に係る具体的な実施例を示す。
<実施例1>
第一実施形態及び第二実施形態において、仮接合時に、接合されるチップ側接合面と基板の接合部とを比較的低温で加熱しつつ加圧することが好ましい。これにより、平坦度に対して厳しい条件を必要としないため好ましい。
図3(a)、(c)又は(d)に示すような、平坦に形成されたチップの金属領域MR上端部は、一般的に、研磨されていない場合が多い。研磨されていない金属領域MRの上端部の表面粗さは、例えば、100nmから200nmRaである。この表面粗さを有する金属領域MRを用いた場合には、当該表面粗さは比較的高いので、金属領域MRの表面に対して表面活性化処理と親水化処理とを行った後でも、仮接合により十分な接合強度を得ることができない場合がある。したがって、この場合には、仮接合時に、チップの金属領域MRを100℃から350℃の温度となるように加熱するとともに、チップの金属領域MRに1MPaから150MPaの圧力を0.1秒から10秒ほど印加することが好ましい。接合面の平坦度を高めたもの(例えば表面粗さが数nmのもの)は、実質的な接触面積が大きくなることから、本来の水酸基(OH基)による接合が強固な接合となり、低温、低圧での接合でも十分な接合強度を得ることが可能である。しかし、接合面の平坦度が低いもの(例えば表面粗さが数十〜数百nmのもの)の場合は、加圧(数十M〜数百MPa)により金属領域を押しつぶすことで実質的な接触面積を大きくすることや、摂氏数百度程度で加熱(例えば150℃)により拡散を促し接合界面で原子の動きを促進させることで、実質的な接合面積を大きくすることができる。
直径30μmの円形の金属領域を500個ほど有するチップを、当該金属領域が150℃から200℃となるように加熱し、金属領域に50MPaから150MPaの圧力を加える条件で、シリコン基板に仮接合した。この仮接合されたチップと基板とを含む構造体について、いわゆるシェアテストを行ったところ、シェア強度は1つの金属領域あたり5gfであった。この強度は、仮接合の後、チップと基板との構造体が搬送されるなどの際に、チップが基板上の所定の取り付け位置からずれたりすることがない十分な接合強度である。
上記加熱及び加圧条件で仮接合したチップと基板とを含む構造体を、200℃で1時間加熱することで本接合を行った。本接合したチップと基板とを含む構造体について、シェアテストを行ったところ、シェア強度は1つの金属領域あたり20gfという、比較的高い接合強度を有していることが分かった。
したがって、上記加熱及び加圧条件で仮接合を行うと、接合面が比較的高い表面粗さを有している場合でも、仮接合されたチップと基板との構造体において十分な接合強度を得ることができ、さらには、本接合されたチップと基板との構造体において比較的高い接合強度を得ることができる。
仮接合時の加熱として、例えば、ボンディング部33のヘッド部33Hに埋め込んだヒータを用いて加熱するようにしてもよい。ヒータからの熱は、ヘッド部33Hを通って、ヘッド部33Hに吸着されたチップCPに伝わり、その結果、チップの金属領域が加熱される。
複数のチップに亘り仮接合を繰り返す間、ヘッド部33Hが常に加熱されていることが好ましい。これにより、チップCPがヘッド部33Hへ受け渡された時点から、チップCPが加熱されるので、短時間、例えば1秒から数秒で、金属領域MRを所定の温度に加熱することができる。
基板の接合部を加熱するためには、ステージ31にヒータを埋め込んでもよい。またさらに効率的に行うには、ステージ31にヒータを埋め込まなくても、加熱されたチップの金属領域が、基板の接合部と接触することで、基板の接合部が加熱されるようにすることが好ましい。さらに、ステージ31がガラス材により形成されている場合には、加熱された基板からステージ31への放熱が制限されるので、さらに効率的に、基板の接合部を加熱することができる。また、基板全体を長時間に亘り加熱するのではなく、チップを一つずつ仮接合する際に、加熱された金属領域に対応する基板の接合部のみを加熱するので、加熱による親水化処理後の基板接合部の表面状態の変化を最小限にとどめることができる。
接合部の加熱の方法は、上記の態様に限られない。たとえば、紫外光や赤外光などの光を接合部に照射することで加熱してもよい。
<実施例2>
図3(e)又は図3(f)に示すような、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようにチップ側接合面は、一般的に、研磨により形成される場合が多い。研磨された金属領域MRは比較的に平坦度が高く、表面粗さは、例えば、1nmRa以下である。
この場合には、仮接合時には、加熱を行わなくても、すなわち常温でも、接合面に1MPa以下の圧力を印加することで、仮接合後および本接合後のチップと基板とを含む構造体において、十分な接合強度を得ることができる。金属領域MRの表面粗さに応じて、仮接合時の接合面に印加する圧力を0.3MPaに設定しても、仮接合後および本接合後のチップと基板とを含む構造体において、十分な接合強度を得ることができる。
<3 第三実施形態>
本願発明において、チップ又は基板の非金属領域NRの少なくとも一部が樹脂Rから構成されていてもよい。この場合、第一実施形態又は第二実施形態の工程S1、S2において、金属領域MRと樹脂からなる非金属領域NRを有する基板の接合面に対して表面活性化処理を行い、次に、表面活性化が行われた接合面に対して親水化処理を行い、工程3において、親水化処理された複数のチップをそれぞれ基板の接合面に取り付け又はと貼り合わせ、さらに工程S4において、取り付け又は貼り合わせにより形成されたチップと基板とを含む構造体を、樹脂が硬化する温度範囲に保つことで、樹脂を一旦流動化させ、その後、樹脂を硬化させる。
したがって、樹脂Rは、接合面上で金属領域MRを囲むように形成されていることが好ましい。しかし、これに限られず、樹脂Rは、接合面上で金属領域MRを囲むように形成されていなくても、たとえば、加熱工程で流動化する結果、接合界面において金属領域MRを囲むように形成されていることが好ましい。
本実施形態における基板には、第一実施形態の基板、第二実施形態のチップがすべて含まれる。さらに、本実施形態においては、非金属領域NRの少なくとも一部が樹脂により形成されていること、そして貼り合わせ後に樹脂を流動化及び硬化させる工程S4がある点で異なるが、表面活性化処理及び親水化処理の手法においては実質的に同じである。以下、第一実施形態と同様な内容については重複して説明しないが、説明がないことで、第一実施形態の内容が第二実施形態に適用されないと解するべきではない。
図31は、本願発明に係る第三実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。
図31(a)が示すように、本実施形態における基板の接合面41の非金属領域NRの少なくとも一部は、樹脂Rで形成されている。
樹脂Rは、流動性や硬化開始を示す温度又は熱履歴などに応じて、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などから適切な特性の樹脂が選択又は合成される。例えば、熱硬化性樹脂として、チップなどの電子部品の封止材料として汎用的に用いられているエポキシ樹脂が採用されてもよい。
図31(a)は、第一又は第二実施形態で用いられた表面活性化処理と親水化処理が行われた状態の接合面を模式的に示している。図31(a)では、水酸化物層44が、金属領域MR上にのみ描かれているが、樹脂R上に水酸化物層44又は水の層が形成されていても構わない。その際、水酸化物層44又は水の層は、水を介在した両基板間の位置合わせの手法、表面活性化処理された樹脂Rの表面の親水性、あるいは表面活性化処理や親水化処理のなどにより、非金属領域NR上の所定の箇所に形成されるようにしてもよい。
図31(b)は、金属領域MRと樹脂Rを含む非金属領域NRとを含む接合面41同士が接触するように貼り合わされた一対の基板の構造体を示している。
上述のとおり、水酸化物層44又は水の層は、非金属領域NRの間に形成されてもよい。
なお、図31(b)において、非金属領域NR同士は直接接触していないように描かれているが、貼り合わせ時に非金属領域NRは接触していても構わない。しかし、貼り合わせ工程だけでは、非金属領域NR間の機械的強度は、水素結合又はこれと同等の強度であるにすぎない。そこで、図31(b)では、模式的に非金属領域NRは互いに離して描かれている。
工程S4の加熱を行うと、上記第一又は第二実施形態の説明で述べたとおり、金属領域MRで構成される接合界面からは、水酸化物層44又は水の層が拡散などにより消滅する。加熱温度が、当該樹脂Rのガラス転移温度を超え流動性を有すると、流動して基板間の接合界面にある隙間を埋めていく。適切な熱履歴(サーマルバジェット)を与えて樹脂Rを十分に流動させることで、金属領域MR同士の接合で形成された領域を樹脂で囲んで、これを外気との接触から遮断する構造を形成することができる(図31(c))。
樹脂Rを十分流動させてから硬化させることで、硬化した樹脂Rを介して接合された基板間の接合強度を上げるとともに、基板間の電気的接続を確立する金属領域MR間の接合界面を外気との接触から遮断し、いわゆる封止をすることができる。
上述のとおり、従来、銅(Cu)により形成された金属領域MRにより良好な接合界面5を形成するためには、貼り合わせ(仮接合)後の加熱処理における温度が、約摂氏350度又はこれより高い温度であることが必要であった。そのために、基板又はチップの構成に樹脂を使用する場合には、当該樹脂として、高温耐熱性の合成樹脂を使用せざるを得ず、実際的にはBCB(ベンジシクロブテン)を使用せざるを得なかった。しかし、清浄な金属表面を形成し当該表面を水酸化処理して仮接合を行う本願発明を適用することで、良好な銅(Cu)の接合界面5を得るための温度を摂氏200度以下、例えば摂氏150度程度にすることが可能になった。
非金属領域NRに樹脂Rを用いる場合のチップと基板とは、いずれも実質的に、同種類又は同寸法の基板であってもよい。すなわち、非金属領域に樹脂Rを用いる接合方法は、チップと基板との接合への適用に限られず、基板同士を接合する方法に適用されてもよい。また、樹脂Rは、接合されるチップと基板の両方の非金属領域NR、又は基板同士の接合の場合には両方の基板の非金属領域NRに設けられる場合に限られず、チップと基板と又は両基板の片方の非金属領域NRに設けられるようにしてもよい。
<実施例3>
上述のように非金属領域NRが樹脂を含む場合には、チップ側接合面の表面活性化処理を、接合面から離間した位置に配置された粒子ビーム源を用いて、所定の運動エネルギーが付与された粒子を接合面に向けて放射することで行うことが好ましい。
例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)などのプラズマ発生装置を用いて、接合面に対して交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子を、上記電圧により接合面に向けて加速させることで表面活性化処理を行うと、以下のような接合面の汚染の問題が生じる場合がある。すなわち、表面活性化処理のスパッタリング現象により弾き飛ばされ、接合面周りの雰囲気に存在する樹脂の成分や不純物の一部が、上記電圧により接合面に引き寄せられるように加速されて衝突し得る。これにより、表面活性化処理された金属領域の表面に樹脂の成分や不純物が付着して接合面は汚染される。その結果、チップと基板とを含む構造体において、高い接合強度を得ることができない場合がある。
このような場合に、イオンビーム源や、高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)などの中性原子ビーム源を用いて表面活性化処理を行うことで、イオンビーム源や中性原子ビーム源から加速して放射された粒子(例えばアルゴンなどの不活性ガス)のみが接合面に衝突し、弾き飛ばされた樹脂や不純物が金属領域へ向かって加速されることはなくなる。その結果、金属領域への樹脂の再付着などによる接合面の汚染の問題は低減され、さらに高い接合強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。
本発明の効果を検証するために、表面活性化処理として従来のプラズマ処理と本願発明に係るイオン源によるイオンビームの放射との相違が、チップ同士の接合によって得られる接合界面のシェアー強度への影響を調べた。
使用したチップは、5mmの正方形の形状を有し、その接合面上には、金属領域として、直径が10マイクロメータ(μm)の3600個のバンプ(金属領域)がピッチ(間隔)20マイクロメータ(μm)で配置されていた。非金属領域は、バンプ(金属領域)を囲むように、エポキシ樹脂で形成されていた。接合面は、研磨され、金属領域と非金属領域との表面はほぼ同じ高さであった。
接合されるチップに対して、表面活性化処理として、従来のプラズマ処理と本願発明によるイオン源によるイオンビームの放射とのいずれかをそれぞれ行い、同じ親水化処理を行い、これらを貼り合わせた。その後の、貼り合わせられたチップで構成される構造体を無加圧で加熱した。
より詳細には、プラズマ処理は、アルゴン(Ar)をガスとし、駆動電力250W、プラズマ処理時間300秒の作動条件で行われた。イオン源によるイオンビームの放射は、アルゴン(Ar)をガスとし、陽極陰極間に掛けられた電力は、110ボルト(V)、3アンペア(A)であり、イオンビーム放射時間300秒の作動条件で行われた。したがって、放射されたイオンはおおよそ110eVの運動エネルギーを有していた。また、イオン源の作動の際のバックグラウンド圧力は10−3Pa程度であり、作動中の気圧は、10−2Pa程度であった。
親水化処理は、上記表面活性化処理の直後に、接合面の雰囲気中に、10ml/min(sccm)の流量の窒素(N)と10ml/min(sccm)の流量の水ガスとの混合ガス(湿度75%に相当)を導入するか、又は10ml/min(sccm)の流量の窒素(N)と20ml/min(sccm)の流量の水ガスとの混合ガス(湿度95%に相当)を導入することで行われた。チップの基板への貼り合わせ(仮接合)は、温度摂氏150度で300Nの圧力を掛けて行われた。貼り合わされたチップの構造体の加熱(本接合)は、バッチ炉内で、温度摂氏200度、無加圧下で、1時間に亘り行われた。
上記接合過程の後、複数個のチップ同士の接合体について、市販のチップのシェアー強度測定器を用いて、そのシェアー強度が測定された。これらの測定により得られたシェアー強度の平均値は、図32に示されているように、表面活性化処理としてプラズマ処理をした場合に比べて、イオン源を用いてイオンビーム放射をした場合には、シェアー強度が9倍程度であった。このように、本願発明は、非金属領域が樹脂などの、イオン放射により表面から放出されやすく、又は接合界面の接合強度等の特性に影響を及ぼし易い材料には特に有効である。
以上、本願発明の幾つかの実施形態及び実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本願発明を例示的に説明するものである。特許請求の範囲は、本願発明の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施の形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態及び実施例は、例示のために示されたものであり、本願発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。「仮接合」や「本接合」という用語において、「仮」及び「本」は、当該2つの用語を区別するために用いられるものであって、「仮」及び「本」が単独で有する意味を有するように解釈されるべきではない。
<符号の説明>
1 チップ実装システム
10 チップ供給装置
11 突上部
13 チップ移載装置
30 ボンディング装置
31 ボンディング用ステージ
33 ボンディング部
33H ヘッド部
39 チップ搬送部
41 接合面
42 表面層
43 新生表面
44 水酸基の層
45 接合界面
50 表面処理装置
51、150、150A、150N 粒子ビーム源(表面活性化手段)
53 表面処理用ステージ
54 水導入口(親水化処理手段)
55 水ガス供給部(親水化処理手段)
56 弁(親水化処理手段)
61 内側支持部
62 外側支持部
63 凹部
64 真空吸着孔
65 水噴射口
66 水槽
70 搬送部
71 搬送ロボット
90 搬出入部
131 ダイピッカ
135 チップ供給機
391 プレート部
392 駆動部
AX チップ搬送部の回転軸
CP チップ
WA 基板
MR 金属領域
NR 非金属領域
R 樹脂
UT 接合部
以上、第一部の説明をしたが、以降、第二部の説明をする。
[0001]
第二部は、金属領域を有する基板の接合方法に関する。
[背景技術]
[0002]
エレクトロニクスの分野では、デバイス実装の更なる高密度化と効率化が求められている。そこで、既に電気電子若しくは光学素子や半導体集積回路などの電気回路や電気配線が形成された基板を他の基板と接合する、ウエハオンウエハ(WOW、Wafer−On−Wafer)、ウエハレベルパッケージング(WLP、Wafer−Level Packaging)や、電気回路等を有するチップをウエハに接合するチップオンウエハ(COW、Chip−On−Wafer)と呼ばれる接合技術が注目を集めている。この方法により、より面積の大きいウエハに適用することで、効率的にウエハの面方向に、一方の基板上に形成された電気回路等と他方の基板上の対応する電気回路等とを接続することができるとともに、ウエハの面に垂直方向に、電気回路等を積層して接続することが可能になる。したがって、この技術により、半導体集積回路の3次元実装と製造方法の効率化との両方が同時に可能になる。
[0003]
ウエハやチップ(以下、「ウエハ等」とも呼ぶことにする。)の表面には、それぞれが内部に有する上記電気回路等と電気的に接続された又は接続される金属領域が設けられていて、接合工程でこれらの金属領域間で電気的接続が確立されることで、ウエハ間又はチップウエハ間での電気的接続が確立される。一般的に、接合工程においては、まず、接合されるウエハの、対応する金属領域間で、ウエハ面方向の位置合わせがなされて、次に、金属領域が互いに接触するようにウエハ同士が近づけられ、さらにウエハ面垂直方向に力が加えられ、接触したままで加熱されることで、金属領域間で原子の拡散が生じて電気的接続が確立される。
[0004]
確立された電気的接続を保つためには、電気的接続に係る、金属領域同士の間での金属結合のみならず、ウエハやチップの表面の金属領域以外の非金属領域の接合箇所で十分な機械的な接合強度が得られていることが必要である場合がある。すなわち、接合されるウエハ等の一方の非金属領域が他方の非金属領域又は金属領域と接合される場合にも、当該接合される接合面で所望の機械的強度が達成されることが要求される場合がある。また、金属領域の間で金属がマイグレーションするなどの問題を防止するために、金属領域を絶縁材で封止する必要がある。
[0005]
接合されるウエハ同士又はチップとウエハとは、異なる材料から構成される場合には熱膨張係数の違いに起因して生じる接合後のウエハ等のそりや、高温プロセス時における面方向でのずれに起因するアライメント精度の低下の問題があるために、低温すなわちなるべく常温に近い温度において接合プロセスを行うことが必要である。そこで、金属領域と非金属領域とを有する接合面を有するウエハ同士を比較的低温で接合する方法として、特許文献1には、反応性イオンエッチ(RIE)や誘導結合高周波プラズマ(ICP)などのいわゆるプラズマプロセスを用いて接合面を活性化し、この活性化された表面に雰囲気中の水分を利用して水酸基などを形成し、当該水酸基など同士を水素結合により接触させて、水素結合の重合反応により接合強度を上げることが記載されている。
[0006]
上記接合方法は、SiOなどの酸化物を接合する方法であり、酸化物の接合を用いて付随的に金属間の接合を確立しようとするものである。しかしながら、接触する金属領域では、金属表面は微視的な表面粗さがあるために、見かけの接触面積に比べて実質的な接触面積が小さい上に、新生表面が露出しているわけではなく、上記水酸基などのみならず、表面の活性化工程において表面から除去された不純物等が表面に再付着した物質などによる表面層が形成されている。
[0007]
そこで、接合時に金属領域間で十分な金属結合の形成による電気的接続を確立するためには、接合される少なくとも一方の金属領域を接合面に対して高く形成することで、金属領域の周囲の非金属領域間で化学結合を形成するときに発生するウエハ同士をひきつける力を利用することで、接触状態にある突出した金属領域に対して比較的高い圧力をかけ、金属領域の接合面又は接合面近傍で十分な塑性変形を起こし、表面層を破って、新生表面同士が十分な面積に亘って接触することが必要であった。
[0008]
また、特許文献1に開示された接合面の活性化プロセスにはプラズマ処理が用いられていたが、プラズマ処理では、ウエハ等の表面近くで処理ガスの荷電粒子(イオン)が加速されてウエハ等表面に衝突し、この衝突により表面の不純物等がスパッタ現象により接合面から除去され、活性な清浄表面が形成される。従来は、プラズマによる活性化は、接合面のSiOなどの非金属領域に対してのみ有効に寄与し、接合の際に非金属領域間で比較的強い力で引き合うことで、非金属領域に囲まれた金属領域同士の接触部に塑性変形が起きるような十分な力を加えるために用いられていた。しかしながら、この従来の方法では、金属の表面は十分に清浄化され活性化されるに至っていなかった。すなわち、このようなプラズマ処理では、接合面から除去された不純物の粒子も、プラズマ化されて荷電粒子(イオン)となりウエハ等に向けて加速され、ウエハ等表面に衝突し再付着することが起きる。例えば、非金属領域がSiOで形成されている場合には、除去された酸素イオンが金属表面に付着してこれを酸化し、非金属領域が樹脂で形成されている場合には、除去された炭素イオンが金属表面に付着する。この現象により、接合面上には、ある量の不純物が実質的に除去されずに残存することとなる。そのため、従来の接合方法では、金属の表面同士を接触させた後に、加熱して金属の拡散を起こさせたり、圧力を掛けて金属表面近傍部を塑性変形させたりすることで、金属間の接合をしている。水酸基等と異なり、不純物等は、接合後の加熱により分解や拡散することもなく接合界面近傍に残るので、接合界面の機械的強度の低下や電気抵抗の増大の原因となる。
[0009]
また、従来、半導体素子における電極と封止にはハンダと樹脂が使われ、まずハンダの濡れを確保するフラックスが塗布された基板上へハンダバンプ付チップを実装、仮固定し、無加圧リフロー中で加熱溶融して接合、その後フラックスを洗浄除去し、隙間にアンダーフィル材である樹脂を流し込み加熱硬化させて封止するという手法であった。しかし、電極接合のファインピッッチ化に伴いバンプの微細化が進み、フラックスの洗浄ができなくなり、かつ、アンダーフィルが流し込めなくなった。また、三次元積層に伴ってチップの薄片化がなされ、無加圧状態ではチップが反って接合できない状況になり、一つ一つのチップを加圧加熱冷却する必要から量産性が得られなくなった。そこで対応するためにフラックスを使用しないで、電極接合と封止を同時に行う手法が求められた。また、低温化や加圧中の加熱時間の短縮が求められた。そのためには、金属電極と封止材となる酸化物や窒化物、樹脂というものが同時に低温で接合されなければいけない。または、封止枠を作って内部電極間を真空、不活性に保つ必要がある。
[0010]
特許文献1に開示されているような従来の接合方法では、封止材の接合は可能としているが金属電極の接合は二の次となっている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[0011]
[特許文献1]特表2006−5173447
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
[0012]
上述のとおり、従来のプラズマ処理による活性化プロセスと水酸基等を形成するプロセスとを有する表面処理を用いたウエハ等の接合方法では、不純物等の除去が効率的に行われないという課題があった。
[0013]
そこで、本願発明は、金属領域を接合面に有するウエハ等の接合において、低温プロセスでも、最終的に不純物等の残渣が少ない接合界面を形成する、ウエハ等の接合技術を提供することを目的とする。
[0014]
また、本願発明は、半導体として一番重要な電気特性を示す電極の接合を重視し、かつ、電極接合と封止を同時に達成するものである。
[課題を解決するための手段]
[0015]
上記課題を解決するために、本願発明に係る基板の接合方法は、少なくとも1つの金属領域と少なくとも1つの非金属領域とを有して構成される接合面を有する第一基板と、第二基板とを接合する方法において、接合面から離間された位置から接合面に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射して、接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理を行うステップと、表面活性化処理が行われた接合面に対して、水又はOH含有物質を付着させて、接合面の少なくとも金属領域の表面に当該金属の水酸化物からなる層を形成することで、接合面の親水化処理を行うステップと、表面活性化処理と親水化処理が行われた第一基板の接合面と第二基板の接合面とを貼り合わせるステップと、を備えるようにしたものである。これにより、金属表面の表面活性化の際に除去された表面層の不純物が、清浄な金属表面に付着することを回避又はその量を抑制することができる。また、雰囲気内に存在する不純物が金属層の上に付着するとしても、不純物はプラズマ処理の場合のように強制的に接合面に引き寄せられて付着される訳ではないので、金属層の上に付着した不純物は例えば運動エネルギーを有する粒子を照射することで容易に除去できる。その結果、清浄な金属表面を、小さい熱履歴(サーマルバジェット)で比較的容易に消滅する水酸基層(又は水酸化物層)で覆い、さらに水等の付着により、水酸基層の上に水の層を形成することで、当該水酸基層又は水の層を介して基板同士を合わせることができる。また、親水化処理後に形成される水酸基層は、大気との接触などによる金属の酸化などに対して比較的に安定である。したがって、本接合方法により、親水化処理の後、貼り合わせまでに十分な時間を確保することを可能にし、容易に清浄な金属接合界面を形成する接合プロセス設計を可能にする。
[0016]
上記基板を接合する方法は、第二基板は少なくとも1つの金属領域と少なくとも1つの非金属領域とを有して構成される接合面を有し、第二基板の接合面から離間された位置から第二基板の接合面に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射して、第二基板の接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理を行うステップと、表面活性化処理が行われた第二基板の接合面に対して、水又はOH含有物質を付着させて、接合面の少なくとも金属領域の表面に当該金属の水酸化物からなる層を形成することで、接合面の親水化処理を行うステップと、を更に有し、第一基板の接合面と第二基板の接合面とを貼り合わせるステップは、表面活性化処理と親水化処理が行われた第一基板の接合面と、表面活性化処理と親水化処理が行われた第二基板の接合面とを貼り合わせることを含むようにしてもよい。これにより、接合される両方の基板について表面活性化処理と親水化処理を行い、より清浄な接合界面を形成し、加熱をすれば、さらに機械的強度が十分に高い接合界面であって、十分な導電性を有する金属接合界面を有する接合界面を形成することが可能になる。
[0017]
上記基板を接合する方法は、表面活性化処理において、粒子が、接合面から離間して配置されたイオンビーム源又は中性原子ビーム源により、当該接合面に向かって加速されて放射されるようにしてもよい。イオンビーム源又は中性原子ビーム源を使用することで、プラズマ装置と異なり、清浄に親水化処理された接合面を形成することができる。
[0018]
上記基板を接合する方法は、表面活性化処理ステップにおいて、粒子が有する運動エネルギーが50eVから2keVであり、かつ、粒子が放射されている間の真空度が1Pa以下であるようにしてもよい。これにより、イオンビーム源又は中性原子ビーム源を用いて、典型的なプラズマ発生装置では行えない条件で表面活性化処理を行うことをすることで、プラズマ処理に起因した表面の再汚染を回避し、さらに清浄に親水化処理された接合面を形成することができる。
[0019]
上記基板を接合する方法は、第一基板と第二基板とが貼り合わされることで形成された構造体を加熱するステップを更に有するようにしてもよい。貼り合わせにより形成された構造体を加熱することで、接合界面上の形成された水酸化物の層又は水の層が消滅し、接合面を形成する物質の新生表面間で、機械的強度が十分に高い接合界面であって、十分な導電性を有する金属接合界面を有する接合界面を形成することが可能になる。薄い酸化物層は、通常残るが、加熱拡散を進めて消滅させることも可能である。また、原子拡散により接合界面近傍の残留応力が除去されることで、接合界面の機械的強度がより高くなる。
[0020]
上記基板を接合する方法は、第一基板は複数のチップから構成され、第一基板の接合面と第二基板の接合面とを貼り合わせるステップは、第二基板の接合面に複数のチップがそれぞれ貼り合わされることで行われるようにしてもよい。これにより、効率の良い種々のCOW(チップオンウエハ)実装を実現することができる。
[0021]
上記基板を接合する方法は、複数のチップとウエハが貼り合わされることで形成された構造体を加熱するステップを更に有するようにしてもよい。各チップのウエハへの貼り合わせごとに親水化処理により接合面に形成された水酸基層(水酸化物層)又は水を接合界面から除去していたのではウエハ1枚に対し膨大な時間が係るが、親水化処理された複数のチップを基板上に貼り合わせた後で、複数あるチップの接合面に対して、一括して加熱処理を行うことにより、比較的短時間で、接合界面に残留する水を除去するとともに、接合界面での固相拡散と残留応力を取り除くことができるので、効率よく接合界面の機械的強度を上げることができ、量産性を向上させることができる。
[0022]
上記基板を接合する方法は、各チップを第二基板に貼り合わせるステップは、チップの接合面と第二基板の接合面とを互いに押し付けられる方向に加圧することを含み、構造体を加熱するステップは、非加圧で行われるようにしてもよい。これにより、異なる高さ又は厚みの複数のチップを接合する場合でも、複数のチップに対して同時にかつ適切に加圧しながら加熱する必要なく、加圧しないので簡単に、かつ複数の構造体を同じバッチ炉で同時に加熱することができる。
[0023]
上記基板を接合する方法は、各チップを第二基板に貼り合わせるステップにおいて、チップの接合面と第二基板の接合面とに加える圧力は、10MPa以上であるようにしてもよい。WOW(ウエハオンウエハ)接合では、例えば数百ミリメートルの寸法のウエハに対して、このような高い圧力を掛けるような装置を構成することが非現実的であった。そこで、接合前に接合面をCMPなどで研磨することでナノメータレベルの表面粗さにすることを要していた。しかし、上記の発明により、例えば1cm程度の寸法のチップをウエハに貼り合わせる場合には、メッキなどの金属バンプなどで構成された金属領域にある程度の表面粗さがあっても、又は、金属領域と非金属領域との間にある程度の高さの差があっても、十分な圧力を接合面に掛ける装置を構成することが現実的となり、これにより良好な接合界面を形成することができる。たとえば、WOW接合には数百トンの力が必要な場合であっても、チップの接合には数十キログラムの力を加えることで、良好な接合界面を形成することができる。
[0024]
上記基板を接合する方法は、非金属領域の少なくとも一部が樹脂で構成され、構造体を加熱するステップは、当該構造体を樹脂が硬化する温度範囲に保つことを含むようにしてもよい。これにより、貼り合わせにより接触していない接合面では加熱により樹脂を流動化かつ硬化させて、貼り合わせにより接触している接合面ではさらに、接合界面での機械的強度を上げるのみならず、金属領域周りを絶縁体として封止することがきる。
[0025]
上記基板を接合する方法は、第一基板と第二基板とを貼り合わせるステップは、摂氏300度以下で、かつ樹脂の硬化温度未満であることを特徴とするようにしてもよい。従来の金属の接合のために必要であった摂氏350度での加熱では、高温耐熱性の樹脂であるBCBしか、上記樹脂として使用できなかったが、本願発明に係る方法では、摂氏300度以下で基板を貼り合わせて(いわゆる仮接合をし)、摂氏300度以上で硬化が進む安価で適用が容易なエポキシ樹脂などの樹脂を使用することができるようになる。したがって、プロセスの低コスト化を図ることができる。
[0026]
上記基板を接合する方法は、金属領域の主たる成分が銅(Cu)であることを特徴とするようにしてもよい。上記基板を接合する方法により、従来摂氏350度以上での加熱工程が必要であったのに対し、銅(Cu)同士を比較的小さい熱履歴で直接接合することができる。これにより、多くの実装分野で使われているハンダや金を解する接合界面の形成に比べて、より安価により良好な電気特性を有する接合界面を形成することができる。また、後述の水酸化処理における水酸(OH)基の形成により、銅(Cu)の表面の参加速度を極めて遅くし、酸化が進んだとして適度な薄い酸化膜上に水酸(OH)基が形成されるため、銅(Cu)は、他の金属と比較しても好適な材料である。
[0027]
上記基板を接合する方法は、非金属領域が、酸化ケイ素、窒化ケイ素若しくは樹脂、又はこれらの複合材料から構成されるようにしてもよい。これにより、本願発明は、広範な種類の絶縁体材料から形成される非金属領域と電極とから接合面が構成されるチップ又はウエハ(基板)に応用されうる。
[0028]
本願発明において、「基板」は、本願発明に係る接合方法により接合されうる部材を総称する概念であり、後述の「ウエハ」や「チップ」を含むものである。
[0029]
「ウエハ」とは、板状に成形された半導体材料の基板を含む概念の用語として与えられるが、これに限定されず、半導体以外にも、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックなどの材料、又はこれらの複合材料により形成されていてもよく、円形、長方形等の種々の形状に形成された基板も含む概念である。
[0030]
「チップ」とは、半導体部品を含む成型加工半導体の板状部品、パッケージされた半導体集積回路(IC)などの電子部品、いわゆるMEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)チップ等を示す広い概念の用語として与えられる。「チップ」には、一般に「ダイ」と呼ばれる部品や、「ウエハ」よりも寸法が小さくて、複数個を当該基板に接合できるほどの大きさを有する部品又は小型の基板も含まれる。後述のように「ウエハ」に「複数のチップ」を貼り合わせる場合は、各「チップ」は貼り合わせられる「ウエハ」よりも小型である。また、「チップ」には、電子部品以外に、光部品、光電子部品、機械部品も含まれる。
[0031]
本願において、「基板」は、金属領域が形成されている接合面を有する。一対の基板が貼り合わせにより接合される場合、一方の基板の金属領域と他の基板の金属領域とは、互いに対応する位置関係を有するように形成されている。双方の基板の金属領域同士が接合されることにより、基板間で電気的接続が確立され、所定の機械的強度が得られる。また、接合面には、接合に寄与しない金属領域があってもよく、他の基板の非金属領域と接合される金属領域があってもよい。
[発明の効果]
[0032]
本願発明によれば、金属表面の表面活性化の際に除去された表面層の不純物が、清浄な金属表面の付着することを回避又はその量を抑制することができる。その結果、清浄な金属表面を、小さい熱履歴(サーマルバジェット)で比較的容易に消滅する水酸化物等を介して基板同士を貼り合わせることができる。
[図面の簡単な説明]
[0033]
[図33]本願発明の第一実施形態に係る基板の接合方法を示すフローチャートである。
[図34]本願発明の第一実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。
[図35]接合界面の形成過程を模式的に示す断面図である。
[図36]基板の表面処理システムの概略構成を示す正面図である。
[図37]粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。
[図38]粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。
[図39]粒子ビーム源の概略構成を示す断面図である。
[図40]本願発明の第二実施形態に係るチップと基板との接合方法を示すフローチャートである。
[図41]基板における金属領域の形状を示す概略断面図である。
[図42]チップ実装システムの概略構成を示す上面図である。
[図43]チップ実装システムの概略構成を示す正面図である。
[図44]チップ実装の処理過程を模式的に示す断面図である。
[図45]本願発明の第三実施形態に係る基板の接合方法を示すフローチャートである。
[図46]本願発明の第三実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。
[図47]実施例における実験結果を示すグラフである。
[図48]チップ等の接合面上に形成された金属領域の配置を示す平面図である。
[発明を実施するための形態]
[0034]
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施形態を説明する。
本願発明によれば、図33に示すように、まず工程S1において、接合される一対の基板の少なくとも一方の基板の金属領域と非金属領域を有する接合面に対して表面活性化処理を行い、工程S2において、表面活性化処理が行われた接合面に対して親水化処理を行い、工程S3において、親水化処理が行われた接合面を他の基板の接合面と貼り合わせることで、上記一対の基板を接合する。
[0035]
[1 第一実施形態]
[1−1 基板]
図34(a)は、複数の金属領域MRと複数の非金属領域NRとを有する、基板1の一部の接合面2についての模式的断面図を示している。
[0036]
接合面2の金属領域MRは、銅(Cu)を主たる成分として形成されることが好ましい。近年の電子デバイスの製造又は実装などの先端技術分野においては、銅(Cu)は、低抵抗かつ高エレクトロマイグレーション耐性を有する優れた配線材料として広範囲に使用されている。本願発明により、銅(Cu)間で良好な金属の接合界面が形成されることで、多くの実装分野で使われているハンダや金を解する接合界面の形成に比べて、より安価により良好な電気特性を有する接合界面を形成することができる。
[0037]
金属領域MRに用いられる金属は、銅(Cu)に限られない。たとえば、金属領域MRは、ハンダ材料により形成されてもよい。従来のハンダの接合ではフラックスが用いられており、接合過程後のフラックス残渣は、接合界面の機械的強度を劣化させる原因となっていた。しかも、従来のハンダの接合では、ハンダを溶融させるために、接合される基板間での位置決め精度が狂う、微小な圧力下では更なるずれが生じるなどの問題があった。しかし、本願発明により、金属領域がハンダで構成された接合面を、比較的低温で接合できるので、フラックスレス(フラックスのない)ハンダ接合が可能になるとともに、位置決め精度を向上させることができる。また、金属領域は、スズ(Sn)やスズ―銀(Sn−Ag)系の金属でもよい。
[0038]
また、金属領域MRは、金(Au)により形成されてもよい。金は導電性が極めて高い材料であると同時に酸化速度が遅い材料である。しかし、接合プロセスにおいて表面に付着した不純物が接合プロセス完了後にも接合界面で残留すると、当該接合界面での導電性の低下の原因となり、金自体の高い導電性による利点が小さくなる。
[0039]
金属領域MRを形成する金属は、上記の例に限られない。たとえば、金属領域MRは、アルミニウム(Al)、タングステン(W)や鉄(Fe)を主たる成分として形成されてもよい。
[0040]
接合面2の非金属領域NRは、非金属材料により形成されている。当該非金属材料には、無機材料として、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、炭化ケイ素(SiC)、SiGeCなどのV族半導体、GaN、GaAs、InPなどのIII−V族化合物半導体、酸化ケイ素(SiO)などの酸化物、窒化ケイ素(Si)などの窒化物が使用されてもよい。また、上記非金属材料は、非金属であればイオン性単結晶などの導電性材料であってもよい。さらにまた、上記非金属材料には、有機材料として、樹脂などの有機化合物又は高分子材料が使用されてもよい。樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、液晶ポリマー、テフロン、アクリル樹脂、ABS樹脂などが使用されてもよい。そして、非金属領域NRは、上記材料の混合物であってもよく、異なる非金属領域NRにおいて異なる材料が使用されてもよい。
[0041]
[1−2 表面活性化処理]
工程S1において、金属領域MRと非金属領域NRとを含む基板1の接合面2に、所定の運動エネルギーを有する粒子Bを衝突させることで表面活性化処理を行う。(図34(a))
[0042]
接合面2上には、接合面を形成する物質の自然酸化膜や有機物などの不要な物質からなる表面層3が形成されている。所定の運動エネルギーを有する粒子Bを衝突させることで、接合面2の表面層3を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることにより、酸化物などの金属領域MRの表面層3を除去し、表面エネルギーの高い、すなわち活性な新生表面を露出させることができる。
[0043]
表面活性化処理には、表面層3を除去して接合すべき物質の新生表面を露出させる作用のみならず、所定の運動エネルギーを有する粒子Bを衝突させることで、露出された新生表面近傍の結晶構造を乱し、アモルファス化する作用もあると考えられている。アモルファス化した新生表面は、原子レベルの表面積が増え、より高い表面エネルギーを有するので、その後の親水化処理において結合される、単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加すると考えられる。これに対し、従来のウェット処理による表面の不純物の除去工程後に化学的に親水化処理する場合には、所定の運動エネルギーを有する粒子の衝突に起因する新生表面の物理的変化がないので、本願発明の接合方法に係る表面活性化処理に続く親水化処理は、この点で従来の親水化処理とは根本的に異なると考えられる。また、結晶構造が乱れ、アモルファス化した新生表面近傍の領域にある原子は、加熱処理により比較的低い熱エネルギーで拡散しやすく、比較的低温での接合プロセスを実現することができると考えられる。
[0044]
表面活性化処理に用いる粒子として、中性原子又はイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス又は不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、衝突される接合面2を形成する物質と化学反応を起こしにくいので、化合物を形成するなどして、接合面2の化学的性質を大きく変化させることはない。また、比較的大きい質量を有しているので、効率的に、スパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になると考えられる。
[0045]
表面活性化処理に用いる粒子として、酸素のイオン、原子、分子などを採用することもできる。酸素イオン等を用いて表面活性化処理を行うことで、表面層3を除去した後に新生表面上を酸化物の薄膜で覆うことが可能になる。新生表面上の酸化物の薄膜は、その後の親水化処理における、水酸(OH)基の結合又は水等の付着の効率を高めると考えられる。また、新生表面上に形成された酸化物の薄膜は、加熱処理により比較的容易に分解すると考えられる。
[0046]
表面活性化される接合面に衝突させる粒子Bの運動エネルギーは、1eVから2keVであることが好ましく、更に50eVから2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層3におけるスパッタリング現象が効率的に生じる。除去すべき表面層3の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
[0047]
本願発明においては、表面活性化処理が行われる接合面2から離間して配置された粒子ビーム源を用いて、表面活性化される接合面2に衝突させる粒子を接合面2に向けて加速することで、当該粒子に所定の運動エネルギーが与えられる。粒子ビーム源は、例えば作動時の真空度が1Pa(パスカル)以下の比較的清浄な雰囲気中で作動する。粒子ビーム源が作動する前のバックグラウンド圧力は、1×10−2Pa(パスカル)であることが好ましく、1×10−5Pa(パスカル)であることが更に好ましい。これにより、表面活性化処理中の雰囲気に存在する不純物の量を低減させ、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層3の除去及び新生表面のアモルファス化を行うことができると考えられる。
[0048]
比較的高い真空に引くために真空ポンプの作動により、金属領域MR等の表面層3から除去された物質が効率よく雰囲気外へ排気される。すなわち、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率よく排気される。(図34(a))
[0049]
プラズマ発生装置の場合は、プラズマの作動時の圧力は比較的高く、接合面2から除去された物質がプラズマ化されるために、その陽イオンが加速され金属領域に再び衝突し付着する確率が高い。また、基板にバイアス電圧を印加しないと表面活性化に好適な十分な運動エネルギーを粒子に与えることが困難である。したがって、基板1の接合面2が金属領域MR以外に一つ又は複数の非金属領域NRを有する場合に、プラズマ発生装置でなく粒子ビーム源を用いて表面活性化処理を行うことで、露出された新生表面への望ましくない物質の付着を抑制しつつ、効果的に表面活性化処理を行うことができる。
[0050]
粒子ビーム源を用いることで、典型的なプラズマ発生装置では行えない条件で表面活性化処理を行うことができる。すなわち、粒子ビーム源を用いることで、粒子が放射される前のいわゆるバックグラウンドの真空度が10−2Pa以下であって、粒子ビーム源作動前の、粒子が放射されている間の真空度が1Pa以下である雰囲気で、運動エネルギーが50eVから2keVである粒子のビームを接合面に対して放射することができる。
[0051]
粒子ビーム源としては、図37又は図38に示すような粒子ビーム源150、150Aを用いることができるが、これに限られない。粒子ビーム源150として、冷陰極型、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいはクラスターイオン源などが採用されうる。
[0052]
図37又は図38に示す粒子ビーム源150、150Aは、磁界の印加によりガスをプラズマ化して、発生したプラズマに電界を印加することによりプラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出して、接合面の方向に加速させる。これにより、粒子ビーム源150、150Aは、当該電位に対応する運動エネルギーを有するイオンを、粒子ビーム源150、150Aから接合面に対して放射する。真空中又は減圧された雰囲気中で当該イオンは加速され放射されるので、放射されたイオンは、他のガスとの衝突による運動エネルギーの減少や運動方向の変化などがほぼない状態で、上記対象物の表面に衝突する。したがって、粒子ビーム源150を用いることで、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
[0053]
粒子ビーム源150としては、図39に示すような高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源150Nは、典型的には、一対のアノード間に形成される電位の鞍点付近でイオン化されたガスの陽イオンをイオン源の外側に加速させ、カソードから陽イオンの衝突により放出される電子と結合させることで、当該イオンを中性化する構成を有している。このような、イオンと結合させるための電子雲を発生させる手段は、ニュートライザーと呼ばれることもある。このような中性原子ビーム源を用いることで、加速されたイオンは、電気的に中性化される過程でその運動エネルギーを実質的に失うことがないので、効率よく中性である原子ビームを用いて、上記対象物の表面に対して、帯電させることなく、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
[0054]
この場合、例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。たとえば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物等(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
[0055]
使用される粒子ビーム源150等の稼動条件や粒子の運動エネルギーに応じて、表面層3の除去速度は変化しえる。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。例えば、オージェ電子分光法(AES,Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS,X−ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層3に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間又はそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
[0056]
表面活性化処理において接合面2をアモルファス化するためには、粒子ビームBの照射時間を、表面層3を除去し新生表面を露出させるために必要な時間より、長く設定してもよい。長くする時間は、10秒から15分、あるいは、表面層3を除去し新生表面を露出させるために必要な時間の5%以上に設定してもよい。表面活性化処理において接合面2をアモルファス化するための時間は、接合面2を形成する材料の種類、性質、及び所定の運動エネルギーを有する粒子のビームBの照射条件によって適宜設定してもよい。
[0057]
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、照射される粒子の運動エネルギーは、表面層3を除去し新生表面を露出させるために必要な運動エネルギーより、10%以上高く設定されてもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための粒子の運動エネルギーは、接合面を形成する材料の種類、性質、及び粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
[0058]
ここで、「アモルファス化した表面」又は「結晶構造が乱れた表面」とは、具体的に表面分析手法を用いた測定により存在が確認されたアモルファス層又は結晶構造が乱れた層を含むとともに、粒子の照射時間を比較的長く設定した場合、又は粒子の運動エネルギーを比較的高く設定した場合に想定される結晶表面の状態を表現する概念的な用語であって、具体的に表面分析手法を用いた測定によりアモルファス層又は結晶構造が乱れた表面の存在が確認されていない表面をも含むものである。また、「アモルファス化する」又は「結晶構造を乱す」とは、上記アモルファス化した表面又は結晶構造が乱された表面を形成するための動作を概念的に表現したものである。
[0059]
[1−3 親水化処理]
工程S2において、親水化処理は、好ましくは上記表面活性化処理の後、連続して、又は非酸化雰囲気中で行われる(図34(b))。これにより、表面活性化された接合面に不純物の付着なく水酸(OH)基を形成することができる。親水化処理は、上記表面活性化処理の後に続けて真空などの非酸化雰囲気中で開始されることが好ましい。しかし、表面活性化処理が完了する前に、親水化処理を開始してもよい。また、表面活性化処理と親水化処理を同時に行ってもよい。表面活性化処理が、親水化処理の完了後に行われなければ、表面活性化処理と親水化処理との時間上の前後関係は、所望の条件により調節することができる。
[0060]
親水化処理工程S2では、表面活性化処理が行われた金属領域MRの表面に、水や、水酸化物、水酸化イオン(OH)、又はヒドロシキルラジカル(・OH)など、又はOHで表記される物質のイオンやラジカル(以降、これらを「水等V」とも呼ぶ。)などのOH含有物質を付着させて、当該金属領域MRの表面が水酸基(OH基)で終端化(M−OH)されている層が形成される。本願において、親水化処理工程で、表面活性化処理が行われた金属領域MRの金属の表面の付着される物質を、「水又はOH含有物質」、これらを総称して「水等」、又はより簡略に「水」と呼ぶことがあるが、これらの表記は、上記の物質を総称するものであり、「水(HO)」に限られるものではない。
[0061]
親水化処理により、少なくとも金属領域MRの表面上に水酸化物層4が形成されると考えられている(図34(b))。水等の付着量を増やすことで、水酸化物層4上に水の層が形成されてもよい。
[0062]
親水化処理により、接合面2上に酸化物が形成されることもある。しかし、表面活性化処理後、連続して水等を付着させることで、不純物の付着のない新生表面上に直に水酸(OH)基を形成することができ、さらに水等を付着させることで、その水酸(OH)基上に水分子が付着していくことになる。この酸化物は、比較的コントロールされている(例えば、厚さが数nm又は数原子層以下)ので、特に電気的特性を悪化させるようなものではない。貼り合わせ後の加熱処理により、金属材料内で吸収され、又は水として接合界面から外側へ逃げるなどして、消滅あるいは減少させることも可能である。したがって、この場合、基板との間の接合界面を介した導電性には実用上の問題が生じることはほぼないと考えられる。
[0063]
本実施形態に係る親水化処理は、表面活性化された接合面2に水等Vを供給することにより行われる。当該水等Vの供給は、上記表面活性化された接合面2の周りの雰囲気に、気体の水(HO)を導入することで行われる。当該気体状の水は、キャリアガスであるアルゴン(Ar)を泡状にして通過させること(バブリング)で、気体状の水がキャリアガスに混合されて、表面活性化された接合面2を有する基板1が配置された空間又はチャンバ内に導入される。
[0064]
なお、この際のキャリアガスは、アルゴン(Ar)に限られず、例えば、窒素(N)、ヘリウム(He)、酸素(O)などであってもよい。
[0065]
また、表面活性化された接合面2の周りの雰囲気への水の導入は、気体状で(ガス状で、又は水蒸気として)導入されても、液体状(霧状)で導入されてもよい。さらに、水等Vの付着の他の態様として、上述のようにラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。しかし、水等Vの導入方法はこれらに限定されない。
[0066]
表面活性化された接合面2の周りの雰囲気の湿度を制御することで、親水化処理の工程を制御することができる。当該湿度は、相対湿度として計算しても、絶対湿度として計算してもよく、又は他の定義を採用してもよい。
[0067]
水等Vの導入は、基板1の接合部2の周りの雰囲気における相対湿度を10%から90%となるように制御することが好ましい。
[0068]
たとえば、窒素(N)又は酸素(O)をキャリアガスとして気体状の水を導入する場合、上記チャンバ内の全圧を9.0×10Pa(パスカル)、すなわち0.89atm(アトム)とし、チャンバ内での気体状の水の量を、容積絶対湿度で8.6g/m(グラム/立方メートル)又は18.5g/m(グラム/立方メートル)、23℃(摂氏23度)の相対湿度でそれぞれ43%又は91%となるように制御することができる。
[0069]
また、チャンバ内の酸素(O)の雰囲気中濃度を10%としてもよい。
[0070]
親水化処理は、表面活性化処理された接合面2を大気に曝すことなく、当該接合面2に水等Vを供給することで行うことが好ましい。
[0071]
上記のように、親水化処理により形成された水酸化物層4又は当該水酸化物層上に形成された水の層には、大気中の存在する酸素との接触による金属領域MRの酸化を最低限に抑制する働きがあると考えられる。
[0072]
これにより、親水化処理が完了した金属領域MRの表面は、比較的安定であり、非酸化雰囲気から取り出し、大気中に曝したとしても、酸化されにくい。また、金属領域MRの表面が水酸(OH)基で覆われ、又はさらにその上に形成された水の層で覆われているので、炭素などの不純物と直接金属表面との結合が防止される。よって、親水化処理が完了した金属領域MRの表面を数時間から数十時間に亘り大気中に放置しても、最終製品において良好な接合界面を得ることができる。
[0073]
[他の親水化処理]
親水化処理における、接合面2上への水等Vの付着又はこれによる接合面2上でのOH基の形成又は、上記の手法に限られず、他の手法を用いてもよい。
[0074]
たとえば、親水化処理は、所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入することで行ってもよい。大気をチャンバ内に導入する際には、望ましくない不純物の接合面2への付着を防ぐために、当該大気が所定のフィルタを通過するように構成することが好ましい。所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入して親水化処理を行うことで、接合面2の親水化処理を行う装置構成を簡略化することができる。
[0075]
また、親水化処理は、接合面2の少なくとも金属領域MRに水を吹き付けることで行ってもよい。吹き付けられる水は、気体状(ガス状又は水蒸気等)でも液体状(霧状又は水滴状等)でもよく、水の形態はこれらに限定されない。水が付着されるべき接合面上の箇所に吹き付けることで、親水化処理を効率よく行うことができる。
[0076]
また、親水化処理は、液体の水を収容する水槽を設け、この水に接合面2の少なくとも金属領域MRを浸漬させることで行ってもよい。これにより、表面活性化処理された接合面2上により多量の水をより確実に付着することができる。
[0077]
あるいはまた、親水化処理は、水(HO)等の分子やクラスターなどを加速して、接合面に向けて放射することで行ってもよい。水(HO)等の加速に、上記表面活性化処理に用いる粒子ビーム源などを使用してもよい。この場合、上記バブリングなどで生成したキャリアガスと水(HO)等との混合ガスを、上記粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させ、親水化処理すべき接合面2に向けて照射することができる。
[0078]
親水化処理は、水等Vの付着を複数回行うように構成されてもよく、異なる親水化処理を組み合わせて行うように構成されてもよい。
[0079]
[基板間のアラインメント]
図34(b)では、親水化処理により水酸化物層4が金属領域MRの表面に形成され、金属領域MR以外の接合面2上の領域(非金属領域NR)では形成されていない態様が示されている。この態様においては、工程S2の前に、非金属領域NRの表面の一部又は全部を疎水化処理されている。後述のように、基板1の接合面2において水酸化物層4上にさらに水の層が形成された領域と疎水化されて水酸化物層4又は水の層が形成されなかった領域とを有することで、仮接合において、一方の基板の親水化された金属領域MRと他方の基板の接合面上において対応する親水化された金属領域MRとが引き合って、金属領域MR間のセルフアラインメントを実現することができる。
[0080]
なお、図34(b)では、工程S2の親水化処理後に金属領域MRの表面のみに水酸化物層4又は水の層が形成されているが、これに限られない。例えば、基板1の接合面2上の非金属領域NRを含む所定の箇所又は全体に、親水化処理をする領域又は疎水化処理をする領域をそれぞれ画定して形成することで、種々の態様をとることができる。
[0081]
[1−4 貼り合わせ]
工程S3において、工程S3で接合面が表面活性化処理(工程S1)と親水化処理(工程S2)とが行われた基板1と、基板1と同様の構造を有し、基板1と同様に工程S1及び工程S2が行われた基板11とが貼り合わされる。本願では、この貼り合わせを「仮接合」とも呼ぶ。ここで、一方の基板1の金属領域MRが、他方の基板11の対応する金属領域MR又は所定の位置に向き合うように位置決めされ、金属領域MR上に形成された水酸化物層4を介して接触するように基板1と11とは貼り合わされる。(図34(c))
[0082]
親水化処理が施された基板1及び11の金属領域MRの表面は、水酸(OH)基により終端化されているため、基板の貼り合わせ(仮接合)の際の接触により、水酸基間に水素結合の引力が働き、基板は互いに吸着される。
[0083]
基板の貼り合わせ(仮接合)後に、貼り合わされた基板で構成される構造体が、搬送される際や位置変換される際に、基板がずれ落ちたり、基板の相対的な位置がずれたりすることがない十分な接合力で固定される。
[0084]
この際、上述のとおり、接合面は微視的には粗さを有しているために、接合界面において、実質的に接触する箇所と実質的に接触していない箇所とが生じえる。実質的に接触する箇所は、水酸基間の水素結合による引き合う力により、両基板は互いに吸着している。実質的に接触していない箇所は、接合面に十分な水が存在する場合には、水の分子により埋められていると考えられる(図35(a))。
[0085]
基板1及び11の貼り合わせ(仮接合)の際に、圧力を掛けてもよい。表面活性化処理前に金属領域MRを有する接合面2及び12を研磨することで、貼り合わせ時に掛ける圧力をより小さくすることができる。たとえば、仮接合時の圧力が1MPa以下でも、十分な仮接合時の接合強度が得られた。更に、研磨された金属領域MRの表面粗さがRa10nm以下である場合には、仮接合時の圧力が0.5MPaで十分な仮接合時の接合強度が得られた。また更には、金属領域MRが銅(Cu)で形成され、研磨された金属領域MRの表面粗さがRa5nm程度である場合には、仮接合時の圧力が0.3MPaで十分な仮接合時の接合強度が得られた。
[0086]
図34(b)及び図34(c)に示すように、基板1及び11の接合面2及び12が親水化された領域と疎水化された領域とを有する場合には、親水化処理で接合面2又は12の親水化領域に十分な水を付着させることで、仮接合の際に水の層で発生する表面張力の作用が大きくなり、接合面2及び12の面内の方向に、水の層を介して接触する金属領域MR同士が互いに引っ張り合う力が生じる。これにより、接合される一対の基板1及び11間で、互いに対応する金属領域MR同士の位置決めの精度がさらに向上する。
[0087]
基板1及び11間で対応する金属領域MR同士の位置決めは、例えば、接合面2及び12の接触前に、一方の基板上に複数の位置調節用マーク(図示せず)を設け、他方の基板の対応する位置に、対応する複数の位置調節用マーク(図示せず)を設け、両方の位置調節用マークを互いに合わせることで行っても良い。両方の位置調節用マーク間のずれは、基板1又は11を透過する光を、いずれかの基板側から接合面に垂直方向に入射し、その反対側に設けたカメラにより撮像された、当該透過光による位置調節用マークの画像を観察することにより測定するように構成してもよい。
[0088]
上述のように、一例として、基板1及び11の対応する金属領域MR間の位置決めは、両方の基板側に設けられた位置調節用マークを、基板を透過する光を用いて、互いに合わせることで行われてもよい。これにより、例えば、±1μmの位置決め精度を得ることができる。さらに、位置決めが十分でなかった場合には、仮接合直後に基板を一旦互いから離し、再度位置決めしてから仮接合を行うことを、所定の位置決め精度が得られるまで繰り返すこともできる。これにより、±0.2μmの位置決め精度を得ることができる。
[0089]
仮接合された基板1及び11を互いに離す工程は、仮接合された基板1及び11のエッジから接合界面方向に、ブレードを機械的に挿入し、又は水や空気などの流体を吹き込むことで行われてもよい。
[0090]
基板1及び11の貼り合わせ(仮接合)の際の、基板1及び11の周りの雰囲気の湿度を所定の値に保つようにしてもよい。これにより、水酸化物層4又はその上の水の層は、基板の接合面上に比較的に均一に、また複数の仮接合に亘って一定な特性を有するように、形成されうる。
[0091]
また、貼り合わせ(仮接合)は、大気などの酸化雰囲気中で行われてもよい。上述のとおり、親水化処理が完了した金属領域の表面は大気中でも安定であるので、親水化処理が完了した後、貼り合わせをするまで数分から数時間、放置することも可能である。したがって、表面活性化処理や親水化処理を行う装置とは別に、大気中で動作する基板貼り合わせ装置を設置してもよい。これにより、真空などの特殊な環境を作り、その中で動作する接合装置を製造する必要はなく、基板貼り合わせ装置を比較的簡易な構成とすることができる。
[0092]
上述の貼り合わされた基板1及び11で構成される構造体は、基板同士が比較的強い水素結合等で結合しているので、加熱装置などの他の装置へ搬送されても、一方の基板が他方の基板からすべり落ち、又は剥がれ落ちる危険性は小さい。また、貼り合わされた基板1及び11で構成される構造体は、接合面2及び12を雰囲気との接触から保護されているので、比較的安定であり、加熱処理まで数時間から数日までの間、大気中で保存することも可能である。したがって、任意のタイミングで、そして、仮接合された基板で構成される構造体を複数個まとめて、後述の加熱処理を行うことができる。
[0093]
[1−5 加熱処理]
貼り合わされた基板1及び11から構成された構造体を加熱してもよい。これにより、所望の導電性と機械的強度を有する接合界面5が得られる。本願明細書中、この加熱工程を「本接合」とも称する。(図34(d))
[0094]
金属領域MRや非金属領域NRの表面は、微視的には原子レベル又はナノメートルから数十ナノメートルの表面粗さを有していることがある。したがって、基板の貼り合わせにより接触に至った、すなわち水酸基が接触することで結合されている2つの接合面間の実質的な接合面積は、みかけの接合面積より小さい(図35(a))。実質的に接触していない接合面の間の隙間は水の分子又は水の層により埋められていると考えられる(図35(a))。加熱処理により、水が接合界面から拡散して出て行く過程で、水酸基による実質的な接合面積が増えていき(図35(b))、その後、水素が水となり接合界面から拡散により出て行くか、水素の形で拡散することで、接合界面は酸素原子を介した構造に変化する(図35(c))と考えられる。さらに、貼り合わせられた金属領域MR又は非金属領域NRの実質的な接合界面又はこの実質的な接合界面近傍の原子が拡散又は固相拡散して、実質的な接合面積が増加すると考えられる。また、原子が拡散することで、貼り合わせによる金属領域MR等の弾性変形による残留応力が除去され、接合強度がより高くなる。このように、親水化処理を行うことを含む本接合方法は、固相同士間で直接接合させる方法に比べて、表面のうねりや凹凸を一旦水分子で埋めて接合し、加熱による水の除去時に接合面同士が互いに近づいて、接合に至らしめることを可能にするため、接合界面にボイドを発生させずに接合することが容易になる。
[0095]
さらに、加熱により、表面活性化処理され親水化処理された接合面2上に形成されている水酸化物層4又は水の層などは、接合界面に取り込まれても、加熱処理で新生表面同士の接合界面が形成する際に、表面層2と比べて低い温度又は短時間で消滅する。また、接合面上に形成されている水酸化物層4又は水の層などが、加熱により拡散するにしたがって、微視的な粗さによって接合していなかった接合界面5を閉じる作用を有するとも考えられる。したがって、本願発明による接合方法は、樹脂などを使用する従来の接合技術に比べて、接合に必要なサーマルバジェット(熱消費量)を低減することができる。
[0096]
たとえば、銅(Cu)により形成された金属領域MRにより良好な接合界面5を形成するためには、貼り合わせ(仮接合)後の加熱処理における温度が、摂氏約350度又はこれより高い温度であることが必要であった。しかし、清浄な金属表面を形成し当該表面を水酸化処理して仮接合を行う本願発明を適用することで、良好な銅(Cu)の接合界面を得るための温度を摂氏300度以下にすることが可能になった。当該温度は、200度以下とすることが好ましく、更には摂氏150度程度にすることが好ましい。
[0097]
加熱処理の際に、雰囲気を形成するガスの種類、流量などを調節してもよい。また、加熱処理の際に、接合界面に垂直方向の圧力が加わるように、貼り合わされている基板に、力又は圧力が加えられてもよい。接合界面に垂直方向の圧力が加わることで、実質的又は微視的な接合面積がさらに増加する。
[0098]
加熱処理における、温度又は上記圧力若しくは圧力の時間プロファイルは、仮接合の条件、金属領域を形成する材料の熱特性、基板を形成する材料の熱特性、加熱処理の際の雰囲気、加熱処理装置の特性などにより、調節されうる。
[0099]
なお、接合界面における所望の導電性と機械的強度を得るための工程として、貼り合わされた基板から構成された構造体を加熱する工程について説明したが、上記の実施態様に限られない。いわゆる仮接合された後の接合界面に対して、所望の導電性と機械的強度などの特性を得るためのエネルギーを与えることができれば、他の手法を採用してもよい。たとえば、基板1及び11や金属領域MR、非金属領域NRの光学的特性に応じて、仮接合された接合界面に対してマイクロ波、赤外光、レーザー光などを照射することで接合界面にエネルギーを与えてもよい。
[0100]
なお、本実施形態及び以下の実施形態では、接合される両方の基板1及び11において、どちらの接合面上にも金属領域MRと非金属領域NRとが形成され、対応する金属領域MR同士が接触される場合が記載されるが、これに限らない。互いに接合される一対の基板のうちの、一方の基板1のみが、その接合面2上に金属領域MRと非金属領域NRとが形成され、他方の基板11の接合面は上記基板1とは異なる構成を有してもよい。たとえば、一方の基板1の接合面2が金属領域MRと非金属領域NRとを有して構成され、他方の基板11が非金属NRのみから形成されてもよい。
[0101]
また、図34(b)から図34(d)では、両方の基板1及び11の接合面2及び12に、金属領域MRと非金属領域NRとが形成されている場合に、一方の基板の少なくとも1つの金属領域と他方の基板の少なくとも1つの金属領域が、互いに接触して電気的接続を確立する場合の構成が示されているが、これに限られない。たとえば、接合界面が、金属とイオン性単結晶のような非金属導電材料とで形成されても、金属と非金属非導電性材料とで形成されてもよい。またさらには、一方の基板の金属領域と他方の基板の金属領域とが、接触せず電気的接続を確立しないように構成されてもかまわない。
[0102]
さらにまた、図34においては、基板1及び基板11の接合面上には、複数の金属領域MRと複数の非金属領域NRとが記載されているが、例えば、1つの金属領域MRと1つの非金属領域NRとが形成されていてもよい。
[0103]
[1−6 装置構成]
図36は、本願発明に係る接合方法を実施するための、表面活性化処理、親水化処理及び基板貼り合わせを行う基板接合システム100の概略構成の一実施例を示す正面図である。
[0104]
図36に示す表面処理システム100は、真空容器140と、表面活性化処理手段として真空容器140内に配置された粒子ビーム源150a及び150bと、親水化処理手段160として水蒸気源163、水蒸気制御バルブ162及び水蒸気Vを真空容器140に放出する水蒸気導入口161とを有して構成されている。図36において具体的に示されていないが、基板貼り合わせ手段は、矢印に示されているように基板1と11の接合面2と12とを互いに近づけて接触させるように構成されている。基板貼り合わせ手段は、基板1と11の接合面2と12とが互いに接触した後に、接合界面に所定の圧力を掛けるように加圧機構(図示せず)を備えていてもよい。
[0105]
真空容器140は、接続された真空ポンプ142により真空引きされるように構成されている。粒子ビーム源150a及び150bの作動と表面化成果処理を有効に行うために、真空ポンプ142は、真空容器140内の気圧を1×10−2Pa(パスカル)以下などの比較的高い真空にする能力を有するものが好ましい。
[0106]
図37に示すように、粒子ビーム源150は、加速電圧を規定するカソード151とアノード152と、カソード151とアノード152に間に電圧を加える電源154と、ガスを導入するガス導入手段155を備えている。
[0107]
カソード151とアノード152とは互いに電気的に絶縁されて設けられ、電源154により、カソード151とアノード152との間には、実質的に粒子の運動エネルギーすなわち加速電圧を規定する所定の電圧が印加される。
[0108]
カソード151は、粒子ビームの放射口156を挟んで磁界を形成するN極カソード151NとS極カソード151Sから構成される。カソード151N及び151Sから放出された電子は、カソード151Nと151Sとの間に形成された磁界によるローレンツ力を受けて螺旋(らせん)運動をする。この電子が、ガス導入手段155を介して導入されたガスに衝突し、当該ガスをプラズマ化する。このプラズマ中のガスの陽イオンが、カソード151とアノード152との間の電界により加速されて、放射口156から外部に向けて放射される。
[0109]
また、粒子ビーム源150は、図38に示すような粒子ビーム源150Aの構成を有していてもよい。粒子ビーム源150Aは、磁石157を有し、これによりアノード152に開いた粒子ビームの放射口156に磁界を形成させる。また、粒子ビーム源150Aは、電子を有するカソード(ニュートライザー)158を有していてもよい。カソード158から放出された電子の一部は、上記磁界にトラップされる。これにより、磁界内で粒子ビーム源150Aに導入されたガスはプラズマ化される。そして、ガスの陽イオンは、アノード152に掛けられた電圧による電界中で、放射口156から粒子ビーム源150Aの外部へ加速される。カソード158から放出された電子は、粒子ビームと同じ方向にも飛ぶことにより、粒子ビーム又は粒子ビームが衝突する基板の接合面の電荷を中和する作用をも有する。
[0110]
あるいはまた、粒子ビーム源150は、図39に示すような中性原子ビーム源150Nの構成を有していてもよい。中性原子ビーム源150Nは、図39に示すような高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源150Nは、典型的には、一対のアノード152間に形成される電位の鞍点付近でイオン化されたガスの陽イオンをカソード156に向けて、すなわちイオン源の外側に加速させ、カソード156から陽イオンの衝突により放出される電子と結合させることで、当該イオンを中性化する構成を有している。このような中性原子ビーム源を用いることで、加速されたイオンは、電気的に中性化され過程でその運動エネルギーを実質的に失うことがないので、効率よく中性である原子ビームを用いて、上記対象物の表面に対して、荷電することなく、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
[0111]
これにより、上述のとおり、加速されたイオンは、電気的に中性化され原子になる過程で実質的にその運動エネルギーを失うことがないので、この中性である原子ビームを用いて、上記対象物の表面の荷電を回避しつつ、効率よく表面活性化処理を行うことができる。
[0112]
図37、図38及び図39は、本願発明に使用されうる粒子ビーム源を例示的に説明するものであり、これに限定されない。たとえば、アノード上記に冷陰極型粒子ビーム源に限られず、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいはクラスターイオン源が採用されてもよい。
[0113]
次に図36に示す表面処理システム100を用いた、本願発明に係る接合方法について説明する。
[0114]
真空容器140内の気圧が所定値に到達した後に、粒子ビーム源150a及び150bを作動させて、それぞれ、金属領域MRを有する基板1及び11の表面に向けて粒子ビームBを照射させる。上記のとおり表面活性化処理の完了時間は、予め行われる実験により定められてもよく、又は所定の表面評価手段(図示せず)を用いてその場(in―situ)観察により十分な表面活性化処理が行われたことを確認することで決定されてもよい。
[0115]
十分な表面活性化処理が行われたと判断されると、粒子ビーム源150a及び150bの作動を止め、水蒸気源163から送られる水蒸気Vを、水蒸気導入口161を介して真空容器140内に導入する。
[0116]
親水化処理に必要な真空容器140内の湿度の制御は、水蒸気源163で生成される水蒸気の湿度、水蒸気制御バルブ162により制御される水蒸気の真空容器140への導入量、真空ポンプ142による水蒸気の排気量、真空容器140内の温度などを調節することにより行うことができる。
[0117]
親水化処理の完了時間は、予め行われる実験により定められてもよく、又は所定の表面評価手段を用いてその場(in―situ)観察により十分な親水化処理が行われたことを確認することで決定されてもよい。
[0118]
なお、図36では、表面活性化処理手段として、2つの粒子ビーム源150a及び150bが配置され、それぞれ、接合される一対の基板1及び11の接合面2及び12に対して粒子ビームを照射するように構成されているが、これに限定されない。表面活性化手段として、1つの粒子ビーム源が配置され、両方の基板に対して同時に又は別々に異なる時間に粒子ビームを照射するように構成されてもよい。
[0119]
また、粒子ビーム源150a及び150bとして、ライン型粒子ビーム源を採用してもよい。この場合、基板支持体141a及び141bと粒子ビーム源150a及び150bとは、粒子ビームBが基板1又は11の表面に均一な条件で照射されるように、相対的に可動な構成を有するように配置されることが好ましい。ライン型粒子ビーム源を、基板1又は11に対して相対的に移動させ、粒子ビームの照射領域が基板1又は11上を通過することで、比較的面積の大きい基板の表面を比較的均一に粒子ビームで照射することができる。ライン型粒子ビーム源は、例えば図37に示す断面を有し、図37の紙面に垂直方向に延びた形状を有していてもよい。
[0120]
図36では、本願発明に係る表面処理方法を実施するための装置100は、1つの真空容器140で構成されているが、2つの真空容器を用いて構成されてもよい。この場合、上記装置は、第1の真空容器に表面活性化処理手段が配置され、第2の真空容器に親水化処理手段が配置され、第1の真空容器と第2の真空容器は真空バルブで連結され、基板を第1の真空容器から真空を破らずに搬送できるように構成されることが好ましい。これらの構成を採用することで、表面活性化処理された接合面を大気に曝さずに、親水化処理を行うことができる。また、水蒸気が第2の真空容器内の第1の真空容器へ流れる量を最小限に抑え、第1の真空容器内の高い真空度を長時間に亘り維持することが容易となるとともに、表面活性化処理と親水化処理とを同時に異なる基板に対して行うことができるので処理効率が上がる。
[0121]
上述のとおり、親水化処理された金属表面は大気中でも比較的安定であるので、基板貼り合わせ手段は、図36に示す表面処理システム100とは別個な装置として構成されてもよい。基板の移動や加重などの所定の機構を必要とする基板貼り合わせ(仮接合)を行う装置を表面処理システム100と別個な装置とすることで、表面処理システム100は簡易な構造で構成されうる。
[0122]
[2 第二実施形態]
本願発明の第二実施形態において、図40に示すように、まず工程S21において、金属領域MRと非金属領域NRを有する複数のチップの接合面に対して表面活性化処理を行い、工程S22において、表面活性化が行われた複数のチップの接合面に対して親水化処理を行い、工程S23において、親水化処理された複数のチップの表面をそれぞれ基板の接合面に貼り合わせ、又は取り付ける。
[0123]
第二実施形態は、第一実施形態においては基板(ウエハ)同士の貼り合わせであったのに対して、複数のチップについて表面活性化処理及び親水化処理を行い、これらの複数のチップのそれぞれを基板(ウエハ)に貼り合わせる点で異なるが、表面活性化処理及び親水化処理の手法においては実質的に同じである。以下、第一実施形態と同様な内容については重複して説明しないが、説明がないことで、第一実施形態の内容が第二実施形態に適用されないと解するべきではない。
[0124]
工程S21の表面活性化処理及び工程S22の親水化処理は、複数のチップに対して、同時に行われても、個別に行われてもよい。基板への貼り合わせは、複数のチップの一つずつについて行うことが好ましいが、これに限られない。複数のチップのうち、所定の数のチップの一群として、これの一群のチップごとに基板に貼り合わされてもよい。
[0125]
工程S23において複数のチップとウエハが貼り合わされることで形成された構造体を加熱するステップを更に有するようにしてもよい。各チップのウエハへの貼り合わせごとに親水化処理により接合面に形成された水酸基層(水酸化物層)又は水を接合界面から除去していたのでは比較的長い時間が係る。例えば、1枚のウエハに5000個のチップを貼り合わせる場合、貼り合わせごとに1秒だけ加熱するとしても、ウエハ毎に少なくとも5000秒、すなわち、約1時間半の加熱時間が必要である。これに対し、すべてのチップを貼り合わせた後に、一括しても、1時間の加熱をしても、十分に効率化されることになる。したがって、比較的短時間で、接合界面に残留する水を除去するとともに、接合界面での固相拡散と残留応力を取り除くことができるので、効率よく接合界面の機械的強度を上げることができ、量産性を向上させることができる。
[0126]
[2−1 チップの形態]
まず、チップの形態について説明する。
図41(a)から(f)は、チップ又はより一般的に基板の接合面に垂直な平面でチップを切断した場合の、チップの断面の模式図である。これらの図は、金属領域MRの形状を例示的に示すことを意図するもので、金属領域MRの形状を限定するものではない。
[0127]
図41(a)から(d)で示された金属領域MRの場合には、チップの接合面上に、金属領域MRが、いわゆるバンプ(突起)状に突出するように形成されている。金属領域MRの上端面が、基板と接合する。
[0128]
金属領域MRの上端部の断面形状は、平坦でなくてもよい。図41(a)のように金属領域MRの上端部が平坦である場合、上端部の平面は、微視的にはある程度の粗さを有している。この粗さが大きい場合には、比較的低い圧力をかけても、微視的にみて十分な接合面積を形成することができず、金属領域MRと基板との間の所望の導電性または機械的強度を確立することができないこともありえる。そこで、例えば、金属領域MRの表面の断面は、曲面で形成されてもよく、図41(b)で示されるように球面で形成されてもよい。図41(b)の各金属領域MRは、その頂点において基板と接触するので、金属領域MRの上端部が平坦である場合より、初期の接触点に係る圧力が大きくなる。その結果、微視的にみて十分な接合面積を形成することができ、チップの金属領域MRと基板との間の導電性および機械的強度(接合強度)の向上につながる。
[0129]
図41(c)に示されているように、金属領域MRは、シリコンチップに形成された貫通電極(シリコン貫通電極、TSV,Through Silicon Via)(VA)に接続して設けられてもよい。TSV(貫通電極)を設けることで、数層に亘り積層されたチップ間での高速な電気的接続を確立することができる。
[0130]
図41(d)に示されているように、金属領域MRの上端部の面積が、TSV(VA)の領域面積より大きくなるように、金属領域MRとSi貫通電極VAが形成されてもよい。接合面積が大きくなり、積層されたチップ間の電気的接続の比較的高い導電性を確保することができる。
[0131]
図41(e)及び(f)に示されているように、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようにチップの接合面が構成されてもよい。この場合、金属領域MRと非金属領域NRとが同一面上にある構成としてもよく、また、金属領域MRを基板接合部と確実に接触及び接合させるために、金属領域MRを非金属領域NRよりも1μm(マイクロメータ)程度またはそれ以下の高さだけ突出させるようにしてもよい。金属領域MRの非金属領域NRに対して突出する高さは、金属領域MR及び非金属領域NRの材質、形状、チップ全体の形状、寸法、機械的性質など、種々のパラメータに応じて、最終的に金属領域MRと非金属領域NRの両方において接合界面が形成されるように調節される。
[0132]
図41(e)及び(f)に示されている、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようなチップの接合面の構成は、例えば、チップの所定の製造段階でチップの表面に化学機械研磨(CMP)を行うことで実現される。CMPの条件を調節することにより、金属領域MRと非金属領域NRとをほぼ同一面上に形成することができるとともに、金属領域MRが非金属領域NRよりも所定の高さだけ突出するようにすることもできる。
[0133]
図41(e)で示されている例は、バンプレスTSVと呼ばれるチップ構造に対応している。このチップは、接合される基板の接合面が平面で形成されている場合には、金属領域MRと非金属領域NRとの両方が基板に接合される。したがって、チップと基板との間の電気的接続を確立する金属領域に係る接合界面を、その周りの非金属領域に係る接合界面により保護することができる。さらに、チップと基板との接合界面が、金属領域MRのみならず非金属領域NRにまで亘って形成されることで接合面積が著しく大きくなり、チップと基板との間の接合強度を増加することができる。さらにまた、複数の層を形成して、チップを基板上に積層して実装する場合には、基板面に垂線方向の寸法(厚み)を、減少させることができる。
[0134]
図41(f)に示されている例では、チップの接合面にキャビティが形成され、このキャビティ内に金属領域MRがバンプ(突起)状に突出するように形成されている。図41(f)の構成により、チップの基板への接合が完了すると、非金属領域NRに係る接合界面により、その内部の金属領域MRに係る接合界面を外部雰囲気に対して封止する。よって、接合工程が完了した後に樹脂などを用いて接合箇所を封止することを必要とせずに、大気の侵入に起因する酸化、チップと基板間への不純物の混入などによる接合界面の電気的又は機械的特性の悪化を防ぐことができる。
[0135]
図41(e)又は(f)で示されている構成のチップを使用する場合には、金属領域MRと同様の表面活性化処理と親水化処理を施して、基板上の対応する接合部と仮接合及び本接合を行うことができるような材料で非金属領域NRを形成することが好ましい。これにより、プロセスを簡略化、効率化することができる。非金属領域NRは、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO)などの非金属で形成されることが好ましいが、これに限られない。
[0136]
また、図41(e)又は(f)で示されている構成のチップを使用する場合には、非金属領域NRの表面の一部又は全部を疎水化処理してもよい。後述のように、チップの接合面が疎水化処理された領域を有することで、親水化処理された金属領域MRと対応する基板上の親水化処理された部位とを用いて、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる。
[0137]
図48(a)から(c)は、接合面に対して垂直な方向から見たときの、チップ(基板)側接合面上に形成された金属領域の配置を模式的に示している。
[0138]
図48(a)から(c)が示すチップ(基板)側接合面上には、複数の円形の金属領域MRが、列状に並んで配置されている。
[0139]
金属領域MRの形状及び配列は、図48(a)から(c)に示された例に限定されない。各金属領域MRの形状は、円形に限らず、例えば正方形、長方形でもよい。また、図48(a)から(c)は、複数の金属領域MRが、矩形を描くように並んで配列されているが、これに限定されない。
[0140]
図48(b)が示すチップ(基板)側接合面には、複数の金属領域MRが、異なる大きさで形成されている。
[0141]
たとえば、比較的小さい面積の金属領域MRを形成する場合に、所望の導電性を確保する電気的接続は確保されているにも係わらず、基板との最終的な接合面積の合計が、チップ(基板)と基板との間の十分な機械的強度を達成できるほどの面積に満たないことがある。このような場合には、電気的接続に必要とする金属領域MRに加えて、機械的強度を向上するために、基板と接続される、強度用金属領域MR2を設けてもよい。金属領域MR2は、チップ(基板)内の回路又はチップ(基板)を通過するTSVと、電気的に接合されていなくてもよく、また接合されていてもよい。また、金属領域MR2の面積、形状、配置などは、電子デバイスの使用環境などに応じて、チップ(基板)と基板との間に要求される機械的強度、金属領域MRと強度用金属領域MR2の形状、大きさ、チップ(基板)側接合面上での配置などに基づいて調節されてもよい。
[0142]
図48(c)が示すチップ(基板)側接合面には、図48(a)に示された、電気的接続のために形成された金属領域MRを第一の金属領域として、この第一の金属領域の外側に、第一の金属領域を囲むように、第二の金属領域として、閉じた環状に金属壁である金属領域MR3が形成されている。この場合、第一及び第二の金属領域がチップ(基板)側接合面の金属領域以外の領域に対して突出するように形成されることが好ましい。
[0143]
閉じた環状の金属領域MR3は、チップ(基板)の基板への接合が完了すると、その内部の金属領域MRに係る接合界面を外部雰囲気に対して封止する。すなわち、外部雰囲気は金属領域MRに係る接合界面に到達することができない。よって、接合工程が完了した後に樹脂などを用いて接合箇所を封止することを必要とせずに、大気の侵入に起因する酸化、チップ(基板)と基板間への不純物の混入などによる接合界面の電気的又は機械的特性の悪化を防ぐことができる。
[0144]
また、金属領域MR3を有するチップ(基板)を接合することで、接合面積が増加し、高い接合強度を達成することができる。さらに、鉛などの材料を含まず、リフロー工程が必要ないので、環境に優しいチップ(基板)と基板とを含む構造体の封止構造を提供することができる。
[0145]
上記の各チップは、例えば、複数の電子回路が形成された基板を縦方向及び横方向に切削することにより作成してもよい。
[0146]
またたとえば、基板1の接合面2には、1つ又は複数の金属領域MRが形成され、各金属領域MRを囲むように非金属領域NRが形成されてもよく、これは後述の第三実施形態において好ましい。
[0147]
[貼り合わせ工程における加熱]
チップを基板(ウエハ)に貼り合わせる際に、チップがウエハに接触した状態で、又は押し付けられた状態で、チップ若しくはウエハ又はチップとウエハとの両方を加熱してもよい。ウエハ全体が加熱されてもよく、又はウエハの接合面上でチップを貼り合わせる箇所又はその近傍が加熱されるようにしてもよい。
[0148]
この際、0.1秒から10秒に亘り、チップの金属領域及び基板の接合部が摂氏100度から摂氏350度の温度となるように加熱することが好ましい。これにより、仮接合後及び本接合後のチップと基板とを含む構造体の接合強度を向上させることができる。接合面の平坦度を高めたもの(例えば表面粗さが数nmのもの)は、実質的な接触面積が大きくなることから、本来の水酸基(OH基)による接合が強固な接合となり、低温、低圧での接合でも十分な接合強度を得ることが可能である。しかし、接合面の平坦度が低いもの(例えば表面粗さが数十〜数百nmのもの)の場合は、加圧(数十M〜数百MPa)により金属領域を押しつぶすことで実質的な接触面積を大きくすることや、摂氏数百度程度で加熱(例えば摂氏150度)により拡散を促し接合界面で原子の動きを促進させることで、実質的な接合面積を大きくすることができる。
[0149]
[貼り合わせ工程における加圧]
ウエハ同士の接合の説明の際に述べたように、接触した接合面に対して加圧することで接合強度を上げることができる。個々のチップをウエハに貼り合わせる際に、チップの接合面とウエハの接合面とを互いに押し付け合う方向に加圧してもよい。これにより、表面粗さ又は他の要因に起因する加熱後の導電性や機械的強度の低下を防止又は抑制することができる。すなわち、加熱後の導電性や機械的強度を、当該加圧がない場合より上げることができる。
[0150]
加圧することは、チップをウエハに接合する場合において、ウエハ同士を接合する場合に比べ有効である。典型的なシリコンウエハの寸法として、直径200mm、300mmの円形が挙げられる。一方、典型的なMEMSチップの寸法として、一辺1cmの四角形が上げられる。
[0151]
例えば、チップとウエハとも金属領域MRが接合面とほぼ同じ高さで、チップ又はウエハに力を加えたときに非金属領域にも金属領域にもほぼ同じ圧力が掛かるとする。このとき、例えば、100MPaの圧力を金属領域に掛けようとする場合、ウエハには、数百トンの力を掛けなければならないのに対し、チップには数十キログラムの力を掛けることで十分である。したがって、チップをウエハに接合する場合には、ウエハ同士を接合する場合に比べて、所定の圧力を掛けるときに、より小さく又は簡便な加重機構を使用することができ、同等の加重機構を使用するときには、より効果的に圧力を加えることが可能になる。
[0152]
実際には、WOW(ウエハオンウエハ)実装などで接合面に10MPa以上の圧力で加圧することは困難である。これに対して、COW(チップオンウエハ)実装においては、10MPa以上の加圧が実現できるので、当該加圧により、導電性の高い金属領域の接合界面や機械的強度の高い接合界面を形成することができる。
[0153]
本願発明における貼り合わせ時に加圧することで、その後の加熱処理により十分な導電性を有する金属領域MR間での接合界面の形成、又は十分な機械的強度を有する接合界面の形成が可能になる。これにより、従来行われている各チップの貼り合わせ中又は後での当該各チップに対する加熱が不要になるか、あるいは最小限に抑えることができるので、接合プロセスの効率が上がる。
[0154]
たとえば、数千個のチップを基板に貼り合わせる場合に、従来は1チップ毎に最低10秒から数十秒に亘る加熱をすることが必要であったのに対し、本実施形態により、1チップあたり1秒で基板に貼り合わせた上で、接合されえるべきすべてのチップが基板上へ貼り合わされた後に、バッチ炉で1時間に亘り加熱処理を行うことで、十分な熱履歴(サーマルバジェット)の確保と接合プロセスの高速化とが同時に可能になる。
[0155]
さらには、以下の利点もある。すなわち、従来、複数の種類のチップがウエハ上に貼り合わされる場合、異なる高さ又は厚みのチップをウエハに貼り合わせることになる場合があり、あるいはばらつきがあるので、複数のチップを貼り合わせた後に、加熱工程中に各チップに同時に適切な圧力で加圧することは困難であった。しかし、本願発明により、貼り合わせにより形成されたチップとウエハの構造体の加熱(本接合)時の加圧が不要になることで、上記構造体を、複数個同時に、一回の加熱処理でおこなうことができる。すなわち、バッチ炉を用いて効率的なバッチ処理が可能になる。
[0156]
[2−2 チップ接合システム構成]
図42は、チップ実装システム(電子部品実装システム)200の概略構成を示す上面図である。図43は、チップ実装システム200のチップ供給装置210とボンディング装置230との概略構成を示す正面図である。なお、図42及び図43においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
[0157]
図42に示すように、チップ実装システム200は、複数のチップを保持して接合すべきチップを個別に供給するチップ供給装置210と、チップ供給装置210から供給されたチップを基板上に貼り合わせる又は貼り合わせるボンディング装置230と、複数のチップ及び基板の接合面に表面活性化処理と親水化処理を行う表面処理装置240と、チップ実装システムの外部から接合すべきチップ及び基板をその内部に搬入し、チップが貼り合わせられた基板(チップと基板とを含む構造体)をその外部へ搬出する搬出入部290と、複数のチップ、基板及びチップと基板とを含む構造体を搬出入部290、チップ供給装置210、ボンディング装置230及び表面処理装置240の間において搬送する搬送部270とを備える。
[0158]
このチップ実装システム200は、基板(チップ実装対象の基板)上に複数のチップから構成される200又は複数のチップ層を貼り合わせて実装するシステムである。たとえば、このチップ実装システム200は、対象の基板WA上に第1層の複数のチップCP1を接合することができる。また、チップ実装システム200は、基板WA上に配置された第1層の複数のチップCP1上に第2層の複数のチップCP2等をさらに積層して接合することも可能である。
[0159]
図42における表面処理装置240は、真空容器(真空チャンバ)を有して構成されている。このように、表面活性化処理及び親水化処理を行う際の雰囲気が、真空度、湿度、導入される気体の種類、排気特性などの諸条件を制御できるように構成されていることが好ましい。
[0160]
一方、一旦親水化処理が行われたチップ又は基板を搬送又は貼り合わせるチップ供給装置210やボンディング装置230においては、真空容器(真空チャンバ)内でチップ又は基板を取り扱うように構成する必要はない。例えば、チップ供給装置210及びボンディング装置230は、大気中で動作するように構成されてもよい。真空容器を必要としないことにより、イオン源や水ガス導入手段などの所定の機構を設ける空間が制限を受けず、チップ供給装置210及びボンディング装置230の構成要素の配置における自由度が向上し、これらの装置は比較的安価に製造されうる。
[0161]
図42及び図43に示す実施形態においては、加熱手段は図示されていないが、加熱手段はチップ実装システム200に組み込まれるように構成されても、またチップ実装システム200とは別に構成されてもよい。加熱手段がチップ実装システム200に組み込まれる構成を採る場合には、加熱装置を搬送部270に連結した構成とすることで、仮接合後にチップと基板とを含む構造体を当該加熱装置に搬送することができる。加熱手段をチップ実装システム200とは別に構成する場合には、加熱手段を、はんだ材のリフローなどを行うための加熱炉としても、一般的な加熱炉としてもよい。この場合、仮接合後のチップと基板とを含む構造体を複数個まとめて加熱処理することができるので、効率的に本接合を行うことができる。
[0162]
[搬送部]
搬送部270は、接合すべき複数のチップを、搬出入部290から表面処理装置240へ搬送し、表面活性化処理と親水化処理が行われた後に表面処理装置240からチップ供給装置210へ搬送する。また、搬送部270は、基板を、搬出入部290から表面処理装置240へ搬送し、表面活性化処理と親水化処理が行われた後に表面処理装置240からボンディング装置230へ搬送する。さらに、搬送部270は、所定数のチップが基板上に貼り合わせられた後に、チップと基板とを含む構造体をボンディング装置230から搬出入部290へ搬送する。
[0163]
[表面処理装置]
図42に示す表面処理装置240は、真空チャンバ内に基板WA又は複数のチップを保持するステージ241と、表面活性化処理のために粒子を放射する粒子ビーム源250と、親水化処理のために水を放出する水導入口261とを備え、複数のチップと基板WAとの両方に対して表面活性化処理と親水化処理とを行うことができる構成となっている。以下、便宜的に、図42及び図43に示す装置の実施例を用いて本願発明を説明するが、これに限定されない。
[0164]
図42には、表面処理装置240内に基板WAのみが示されているが、複数のチップと、この複数のチップが既に貼り合わせられている基板とを含む構造体における、最上層のチップの第二接合面に対して表面活性化処理又は親水化処理をする場合には、図42の基板WAが示されている位置に、基板WAに代わって、上記複数のチップとこの複数のチップが既に貼り合わせられている基板とを含む構造体を配置するような構成としてもよい。
[0165]
たとえば、表面活性化処理のために一つのチャンバを設け、親水化処理のために別のチャンバを設けてもよい。また、複数のチップの表面処理(表面活性化処理及び親水化処理)をするために一つのチャンバを設け、基板の表面処理(表面活性化処理及び親水化処理)をするために別のチャンバを設けてもよい。
[0166]
さらにまた、チップの表面活性化処理と親水化処理、そして基板の表面活性化処理と親水化処理とを別個に実施するために、それぞれの処理に対してチャンバを設け、計4つのチャンバを設けてもよい。また、表面活性化処理及び親水化処理の処理態様に応じて、1又は複数のチャンバを設ける構成とすることができ、各チャンバに収容する処理装置の組み合わせも種々に変更することが可能である。
[0167]
表面処理装置240は、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、表面処理装置240内部の気圧を低下させ、真空度を上げることができる。真空度を上げることで、粒子ビーム源250による粒子ビームの放射が可能になる。真空ポンプは、表面処理装置240内の気圧を10−2Paに下げる能力を有することが好ましい。また、真空引きにより、表面処理装置240内の、浮遊不純物や水分子などを予め除去し、清浄な雰囲気を準備することができる。
[0168]
[表面活性化処理手段]
所定の運動エネルギーが付与された粒子は、粒子ビーム源250から接合面を有する基板WA全体に向けて放射状に放射されてもよい。比較的小型の粒子ビーム源などを使うことができ、装置を比較的単純に構成することで小型化できる。このとき、粒子ビーム源250の位置、向きなどを変えることで、接合面が設定された領域全体を照射することができる。
[0169]
図42では、粒子ビーム源250は、表面処理装置240内でステージ241の斜め上部に取り付けられ、ステージ241上に搬送された基板WAの表面に向けて所定の運動エネルギーが付与された粒子を放射する。ステージ241は、円形であり、ステージ241の中心軸を回転軸として回転することができる。ステージ241を表面活性化処理中に回転させることで、基板WA表面に亘って、基板WA表面の単位面積当たりに照射される粒子の量を均一にし、表面層の除去量(厚さ)を均一にすることができる。
[0170]
粒子ビーム源250のチャンバ内の配置又は粒子ビームが照射される対象物に対する配置は、図42に示された実施態様に限定されない。
[0171]
[親水化処理手段]
図42に示される実施形態においては、接合面を親水化処理する親水化処理手段260は、水ガス供給部263と、弁262と、ガス供給管と、水導入口261とを有して構成される。水ガス供給部263から供給される気体状又は液体状の水は、弁262の開放に応じて、ガス供給管を通って水導入口261から表面処理装置240のチャンバ内に導入される。弁262は、マスフローとして機能し、その開放度に応じて水の供給量を調節するようにしてもよい。
[0172]
また、親水化処理手段260は、水ガス供給部263で水ガス(気体状の水又は霧状の水)をキャリアガスと混合させることで、水ガスとキャリアガスの混合体が表面処理装置240のチャンバ内に導入されるように構成されてもよい。さらにまた、親水化処理手段260は、水ガスとキャリアガスとの混合比、弁262を通過するガスの流量を調節することで、表面処理装置240内の雰囲気の湿度を調節するように構成されてもよい。
[0173]
[チップ供給装置]
チップ供給装置210は、ダイシングされた基板WCから各チップCPを取り出し、ボンディング装置230に各チップCP(CPi)を供給する装置である。チップ供給装置210は、複数のチップから一つのチップのみを上方に持ち上げて支持する突上部211と、突上部211により持ち上げられたチップCPをボンディング装置230に搬送するチップ移載装置213等を備える。チップ移載装置213は、ダイピッカ2131とチップ供給機2135とを有する。(図43)
[0174]
チップ供給装置210は、その内部でダイシング処理が行われて複数のチップCPが生成されるように構成されてもよい。具体的には、複数の電子回路を有する基板WCが縦方向および横方向に切削されチップ化される。
[0175]
あるいは、ダイシング処理が既に行われた複数のチップCPが、支持基板に支持された状態で、表面活性化処理、親水化処理が施されてチップ供給装置210に搬送されてもよい。ダイシング処理による汚染粒子などの発生を抑制することができる。
[0176]
チップ供給装置210内において、ダイシングされた複数のチップCPがダイシングテープTE(図示せず)上に載置される。各チップCPは、フェイスアップ状態(金属領域MRとしてのハンダバンプBU(図示せず)が付された側の面が上側を向いた状態)でダイシングテープTE上に載置されている。
[0177]
そして、切り出された各チップCPは、チップ供給装置210の突上部(突上ニードル)211によって、1個ずつ上方に突き上げられ、ダイピッカ2131に位置PG1で受け渡される。フェイスアップ状態のチップCPが、反転機構を有するダイピッカ2131によって上下反転されて、フェイスダウン状態でボンディング装置230に供給される。ダイピッカ2131は、その先端(下端)の吸着部でチップCPをフェイスアップ状態で吸着し、反転機構によって上下反転されて、フェイスダウン状態でさらに上方に移動した後に、チップ供給機2135に受け渡す。チップ供給機2135は、フェイスダウン状態のチップCPの上面を吸着して、チップ搬送部239側へ向けて移動する。
[0178]
[チップ搬送部]
図43において、チップ搬送部(ターレットとも称する)239は、チップ供給装置210から供給されたチップを一つずつボンディング部233(詳細にはヘッド部233H)に受け渡す装置である。
[0179]
図43において、チップ搬送部239の3つのプレート部2391上に、チップの突起部(金属領域)が下向きに載置されているが、チップの金属領域はチップ搬送部239に接触しないことが好ましい。
[0180]
チップ搬送部239の3つのプレート部2391は、チップの金属領域MRに触れないように、チップの接合面の一部分を支持するように構成されてもよい。これにより、親水化処理が完了してから仮接合が行われるまでに、チップの金属領域MRは、親水化処理が完了したときの表面状態を保つことができる。
[0181]
[ボンディング装置]
チップ搬送部239は、チップ供給機2135からチップCPを、図43の位置PG3で受け取ると、中心軸AX周りの回転動作によって当該チップCPをボンディング部233のヘッド部233Hの直下の位置である図43の位置PG5まで搬送する。チップCPは、このような搬送動作を経て、フェイスダウン状態のまま受渡位置PG5にまで到達する。
[0182]
その後、ボンディング部233のヘッド部233Hは、チップCPを吸着することにより受け取る。ステージ231をX方向およびY方向に移動し、基板WAの当該チップCPを仮接合すべき箇所(基板の接合部)を、ヘッド部233Hの真下に配置する。その後、ボンディング部233のヘッド部233Hが降下し、チップの接合面を基板上の対応する接合部に接触させる。接触時に、チップの接合面と基板の接合部との間に圧力を加えることができるようにボンディング部を構成してもよい。
[0183]
[水再付着装置]
上記の親水化処理の完了後、チップが基板上に貼り合わせられる前に、またはチップが基板上に既に貼り合わせられたチップの第二接合面上に貼り合わせられる前に、接合されるチップの接合面又は第一接合面に水を付着させるための孔部を有する装置(水再付着手段又は水再付着装置)を設けてもよい(図示せず)。水再付着装置は、チップ搬送部239に設けられてもよく、あるいはチップ供給装置210内やボンディング装置230内に設けられてもよい。
[0184]
[複数層に亘るチップの実装]
工程S21から工程S23(図40及び図44(a))が完了すると、基板上には所定数の1層分のチップCP1が貼り合わせ又は取り付けられている。この第1層を構成するチップCP1の第二接合面に第2層を構成する所定数のチップCP2の第一接合面が接触するように、それぞれのチップを基板上に貼り合わせる。3層目以降も、同様の取付動作を実行することで、所望の数のチップ層を基板上に貼り合わせる。(図44(a))
[0185]
第2層のチップの取付けを例として説明すると、新たな(第2層の)チップの接合面(第一接合面)に対して表面活性化処理と親水化処理を行い、既に基板に貼り合わせられている第1層のチップCP1の第二接合面に対して表面活性化処理と親水化処理を行う。
[0186]
表面活性化処理と親水化処理が施された第1層のチップの数に対応する所定数の第2層のチップが、それぞれ、表面活性化処理と親水化処理第2層のチップに貼り合わせられる。第2層のチップCP2の第1層のチップCP1への貼り合わせは、第2層のチップCP2を一つずつ貼り合わせることを、貼り合わせるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行われる。第2層のチップCP2の取付け(図44(b))が完了すると、基板上には2層分のチップCP1及びCP2が実装された状態になる。
[0187]
以降これを繰り返し、第i層(iは3以上)のチップCPiの第一接合面を基板上に既に貼り合わせられている第i―1層のチップCPi―1に貼り合わせることにより、所定数の第i層のチップCPiを基板上に貼り合わせる。
[0188]
第i層が所望の数の層(N層)まで、新たな所定数のチップに対して表面活性化処理及び親水化処理を行い、貼り合わせられた最上層の所定数のチップに対して表面活性化処理及び親水化処理を行い、仮接合する動作を繰り返すことにより、基板上にN層の仮接合チップ層を形成することができる(図44(c))。図44(c)では、5層のチップ層が形成されているが、チップ層の数Nは、これに限定されることはなく、2以上であればよい。
[0189]
基板と基板上に貼り合わせられたチップとで構成される構造体は、貼り合わせ後に加熱されてもよい。加熱は、各層である第i層のCPiが基板上に貼り合わせられるごとに行ってもよく、また、所定数の層(N層)がすべて基板上に積層して貼り合わせられた後に行ってもよい。
[0190]
[3 第三実施形態]
本願発明の第三実施形態において、図45に示すように、まず工程S31において、金属領域MRと樹脂からなる非金属領域NRを有する基板の接合面に対して表面活性化処理を行い、工程S32において、表面活性化が行われた接合面に対して親水化処理を行い、工程S33において、親水化処理された複数のチップをそれぞれ基板の接合面と貼り合わせ、さらに工程S34において、貼り合わせにより形成された構造体を、樹脂が硬化する温度範囲に保つことで、樹脂を一旦流動化させ、その後、樹脂を硬化させる。
[0191]
したがって、樹脂Rは、接合面上で金属領域MRを囲むように形成されていることが好ましい。しかし、これに限られず、樹脂Rは、接合面上で金属領域MRを囲むように形成されていなくても、たとえば、加熱工程で流動化する結果、接合界面において金属領域MRを囲むように形成されていることが好ましい。
[0192]
本実施形態における基板には、第一実施形態の基板、第二実施形態のチップがすべて含まれる。さらに、本実施形態においては、非金属領域NRの少なくとも一部が樹脂により形成されていること、そして貼り合わせ後に樹脂を流動化及び硬化させる工程S34がある点で異なるが、表面活性化処理及び親水化処理の手法においては実質的に同じである。以下、第一実施形態と同様な内容については重複して説明しないが、説明がないことで、第一実施形態の内容が第二実施形態に適用されないと解するべきではない。
[0193]
図46は、本願発明に係る第三実施形態に係る基板の接合方法の処理過程を模式的に示す断面図である。
[0194]
図46(a)が示すように、本実施形態における基板1の接合面2の非金属領域NRの少なくとも一部は、樹脂Rで形成されている。
[0195]
樹脂Rは、流動性や硬化開始を示す温度又は熱履歴などに応じて、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などから適切な特性の樹脂が選択又は合成される。例えば、熱硬化性樹脂として、チップなどの電子部品の封止材料として汎用的に用いられているエポキシ樹脂が採用されてもよい。
[0196]
図46(a)は、第一又は第二実施形態で用いられた表面活性化処理と親水化処理が行われた状態の接合面を模式的に示している。図46(a)では、水酸化物層4が、金属領域MR上にのみ描かれているが、樹脂R上に水酸化物層4又は水の層が形成されていても構わない。その際、水酸化物層4又は水の層は、水を介在した両基板間の位置合わせの手法、表面活性化処理された樹脂Rの表面の親水性、あるいは表面活性化処理や親水化処理のなどにより、非金属領域NR上の所定の箇所に形成されるようにしてもよい。
[0197]
図46(b)は、金属領域MRと樹脂Rを含む非金属領域NRとを含む接合面2及び12同士が接触するように貼り合わされた一対の基板1及び11の構造体を示している。
上述のとおり、水の層4は、非金属領域NRの間に形成されてもよい。
[0198]
なお、図46(b)において、非金属領域NR同士は直接接触していないように描かれているが、貼り合わせ時に非金属領域NRは接触していても構わない。しかし、貼り合わせ工程だけでは、非金属領域NR間の機械的強度は、水素結合又はこれと同等の強度であるにすぎない。そこで、図46(b)では、模式的に非金属領域NRは互いに離して描かれている。
[0199]
工程S34の加熱を行うと、上記第一又は第二実施形態の説明で述べたとおり、金属領域MRで構成される接合界面からは、水酸(OH)基又は水の層4が拡散などにより消滅する。加熱温度が、当該樹脂Rのガラス転移温度を超え流動性を有すると、流動して基板1と11との接合界面にある隙間を埋めていく。適切な熱履歴(サーマルバジェット)を与えて樹脂Rを十分に流動させることで、金属領域MR同士の接合で形成された領域を樹脂で囲んで、これを外気との接触から遮断する構造を形成することができる(図46(c))。
[0200]
樹脂Rを十分流動させてから硬化させることで、硬化した樹脂Rを介して接合された基板1及び11間の接合強度を上げるとともに、基板1及び11間の電気的接続を確立する金属領域MR間の接合界面を外気との接触から遮断し、いわゆる封止をすることができる。
[0201]
上述のとおり、従来、銅(Cu)により形成された金属領域MRにより良好な接合界面5を形成するためには、貼り合わせ(仮接合)後の加熱処理における温度が、約摂氏350度又はこれより高い温度であることが必要であった。そのために、基板又はチップの構成に樹脂を使用する場合には、当該樹脂として、高温耐熱性の合成樹脂を使用せざるを得ず、実際的にはBCB(ベンジシクロブテン)を使用せざるを得なかった。しかし、清浄な金属表面を形成し当該表面を水酸化処理して仮接合を行う本願発明を適用することで、良好な銅(Cu)の接合界面5を得るための温度を摂氏200度以下、例えば摂氏150度程度にすることが可能になった。
[実施例]
[0202]
本発明の効果を検証するために、表面活性化処理として従来のプラズマ処理と本願発明に係るイオン源によるイオンビームの放射との相違が、チップ同士の接合によって得られる接合界面のシェアー強度への影響を調べた。
[0203]
使用したチップは、5mmの正方形の形状を有し、その接合面上には、金属領域として、直径が10マイクロメータ(μm)の3600個のバンプ(金属領域)がピッチ(間隔)20マイクロメータ(μm)で配置されていた。非金属領域は、バンプ(金属領域)を囲むように、エポキシ樹脂で形成されていた。接合面は、研磨され、金属領域と非金属領域との表面はほぼ同じ高さであった。
[0204]
接合されるチップに対して、表面活性化処理として、従来のプラズマ処理と本願発明によるイオン源によるイオンビームの放射とのいずれかをそれぞれ行い、同じ親水化処理を行い、これらを貼り合わせた。その後の、貼り合わせられたチップで構成される構造体を無加圧で加熱した。
[0205]
より詳細には、プラズマ処理は、アルゴン(Ar)をガスとし、駆動電力250W、プラズマ処理時間300秒の作動条件で行われた。イオン源によるイオンビームの放射は、アルゴン(Ar)をガスとし、陽極陰極間に掛けられた電力は、110ボルト(V)、3アンペア(A)であり、イオンビーム放射時間300秒の作動条件で行われた。したがって、放射されたイオンはおおよそ110eVの運動エネルギーを有していた。また、イオン源の作動の際のバックグラウンド圧力は10−3Pa程度であり、作動中の気圧は、10−2Pa程度であった。
[0206]
親水化処理は、上記表面活性化処理の直後に、接合面の雰囲気中に、10ml/min(sccm)の流量の窒素(N)と10ml/min(sccm)の流量の水ガスとの混合ガス(湿度75%に相当)を導入するか、又は10ml/min(sccm)の流量の窒素(N)と20ml/min(sccm)の流量の水ガスとの混合ガス(湿度95%に相当)を導入することで行われた。チップの基板への貼り合わせ(仮接合)は、温度摂氏150度で300Nの圧力を掛けて行われた。貼り合わされたチップの構造体の加熱(本接合)は、バッチ炉内で、温度摂氏200度、無加圧下で、1時間に亘り行われた。
[0207]
上記接合過程の後、複数個のチップ同士の接合体について、市販のチップのシェアー強度測定器を用いて、そのシェアー強度が測定された。これらの測定により得られたシェアー強度の平均値は、図47に示されているように、表面活性化処理としてプラズマ処理をした場合に比べて、イオン源を用いてイオンビーム放射をした場合には、シェアー強度が9倍程度であった。このように、本願発明は、非金属領域が樹脂などの、イオン放射により表面から放出されやすく、又は接合界面の接合強度等の特性に影響を及ぼし易い材料には特に有効である。
[0208]
以上、本願発明の幾つかの実施形態及び実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本願発明を例示的に説明するものである。特許請求の範囲は、本願発明の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施の形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態及び実施例は、例示のために示されたものであり、本願発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。「仮接合」や「本接合」という用語において、「仮」及び「本」は、当該2つの用語を区別するために用いられるものであって、「仮」及び「本」が単独で有する意味を有するように解釈されるべきではない。
[符号の説明]
[0209]
1、11 基板
2、12 接合面
3 表面層
4 水酸化物層
5 接合界面
100 表面処理システム
140 真空容器
150、150A、150N、250 粒子ビーム源(表面活性化手段)
151 カソード
152 アノード
154 電源
155 ガス導入手段
160、260 親水化処理手段
200 チップ実装システム
210 チップ供給装置
230 ボンディング装置
240 表面処理装置
270 搬送部
290 搬出入部
CP チップ
MR 金属領域
NR 非金属領域
B 粒子ビーム
V 水等
[0210]
以下に、いくつかの実施形態を付記の形式で示す。
[付記1]
少なくとも1つの金属領域と少なくとも1つの非金属領域とを有して構成される接合面を有する第一基板と、第二基板とを接合する方法であって、
前記接合面から離間された位置から前記接合面に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射して、接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理を行うステップと、
前記表面活性化処理が行われた接合面に対して、水又はOH含有物質を付着させて、接合面の少なくとも金属領域の表面に当該金属の水酸化物からなる層を形成することで、接合面の親水化処理を行うステップと、
前記表面活性化処理と親水化処理が行われた第一基板の接合面と第二基板の接合面とを貼り合わせるステップと、
を備える、方法。
[付記2]
前記第二基板の接合面が少なくとも1つの金属領域と少なくとも1つの非金属領域とを有して構成される接合面を有し、
前記第二基板の接合面から離間された位置から前記第二基板の接合面に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射して、第二基板の接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理を行うステップと、
前記表面活性化処理が行われた第二基板の接合面に対して、水又はOH含有物質を付着させて、接合面の少なくとも金属領域の表面に当該金属の水酸化物からなる層を形成することで、接合面の親水化処理を行うステップと、
を更に有し、
前記第一基板の接合面と第二基板の接合面とを貼り合わせるステップは、前記表面活性化処理と親水化処理が行われた第一基板の接合面と、前記表面活性化処理と親水化処理が行われた第二基板の接合面とを貼り合わせることを含む、
付記1に記載の方法。
[付記3]
前記表面活性化処理において、前記粒子は、前記接合面から離間して配置されたイオンビーム源又は中性原子ビーム源により、当該接合面に向かって加速されて放射されることを特徴とする、付記1又は2に記載の方法。
[付記4]
前記表面活性化処理ステップにおいて、
前記粒子が有する運動エネルギーが50eVから2keVであり、かつ、
粒子が放射されている間の真空度が1Pa以下である、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
[付記5]
第一基板と第二基板とが貼り合わされることで形成された構造体を加熱するステップを更に有する、付記1から4のいずれか一項に記載の方法。
[付記6]
前記第一基板は複数のチップから構成され、
前記第一基板の接合面と第二基板の接合面とを貼り合わせるステップは、第二基板の接合面に複数のチップがそれぞれ貼り合わされることで行われる、
ことを特徴とする、付記1から4のいずれか一項に記載の方法。
[付記7]
前記複数のチップとウエハが貼り合わされることで形成された構造体を加熱するステップを更に有する、付記6に記載の方法。
[付記8]
各チップを第二基板に貼り合わせるステップは、チップの接合面と第二基板の接合面とを互いに押し付けられる方向に加圧することを含み、
前記構造体を加熱するステップは、非加圧で行われる、
付記7に記載の方法。
[付記9]
前記各チップを第二基板に貼り合わせるステップにおいて、チップの接合面と第二基板の接合面とに加える圧力は、10MPa以上である、
付記8に記載の方法。
[付記10]
前記非金属領域の少なくとも一部が樹脂で構成され、
前記構造体を加熱するステップは、当該構造体を樹脂が硬化する温度範囲に保つことを含む、
付記5又は7から9のいずれか一項に記載の方法。
[付記11]
第一基板と第二基板とを貼り合わせるステップは、摂氏300度以下、かつ前記樹脂の硬化温度未満で行われることを特徴とする付記10に記載の方法。
[付記12]
前記金属領域の主たる成分が銅(Cu)であることを特徴とする付記1から11のいずれか一項に記載の方法。
[付記13]
前記非金属領域は、酸化ケイ素、窒化ケイ素若しくは樹脂、又はこれらの複合材料から構成されることを特徴とする、付記1から12のいずれか一項に記載の方法。

Claims (43)

  1. 一つ又は複数の金属領域を有するチップ側接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板に接合する方法であって、
    チップ側接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、
    基板の接合部を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、
    表面活性化処理されかつ親水化処理された複数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けるステップと、
    基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップと、
    を備えた方法。
  2. 前記複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップは、チップの金属領域が基板の接合部に接触する際に、0.1秒から10秒に亘り、チップの金属領域及び基板の接合部を摂氏100度から摂氏350度の温度となるように加熱することで行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記チップ側接合面への水又はOH含有物質の付着及び基板の接合部への水又はOH含有物質の付着は、それぞれ、チップ側接合面及び基板の接合部の周りの雰囲気における相対湿度が10%から100%となるように制御されることで行われる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記チップ側接合面への水又はOH含有物質の付着及び基板の接合部への水又はOH含有物質の付着は、表面活性化処理の後、チップ側接合面及び基板の接合部をそれぞれ大気に暴露することなくチャンバー内で行われる、請求項3に記載の方法。
  5. 前記チップ側接合面を親水化処理するステップの後、前記複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップの前に、チップ側接合面に更に水を付着させる水付着ステップを更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記水付着ステップは、チップ側接合面の金属領域に水を吹き付けることで行われる、請求項5に記載の方法。
  7. 前記水付着ステップは、チップ側接合面の金属領域を液体状の水に浸漬させることで行われる、請求項5に記載の方法。
  8. 前記粒子は、Ne,Ar,Kr,Xeからなる群から選ばれる元素の中性原子、イオン若しくはラジカル又はこれらを混合したものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記粒子の運動エネルギーは、1eVから2keVである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 複数のチップ又は基板に対して交番電圧を印加することで、チップ側接合面又は基板の接合部の周りに前記粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の前記粒子を前記電圧によりチップ側接合面又は基板の接合部に向けて加速させることにより、粒子に所定の運動エネルギーを付与する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記表面活性化処理において、前記チップ側接合面又は基板の接合部から離間された位置から、前記チップ側接合面又は基板の接合部に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射する、請求項9に記載の方法。
  12. 前記表面活性化処理において、前記粒子は、前記接合面から離間して配置されたイオンビーム源又は中性原子ビーム源により、当該接合面に向かって加速されて放射されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  13. 前記表面活性化処理ステップにおいて、
    前記粒子が有する運動エネルギーが50eVから2keVであり、
    粒子が放射される前の真空度が10−5Pa以下であって、かつ、
    粒子が放射されている間の真空度が1Pa以下である、
    ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記チップ側接合面は金属領域以外の領域に非金属領域を有し、当該非金属領域は樹脂により形成される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記構造体を加熱するステップは、当該構造体を樹脂が硬化する温度範囲に保つことを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップは、摂氏300度以下、かつ前記樹脂の硬化温度未満で行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. 前記複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップは、前記チップと前記基板とを互いに近接する方向に加圧するステップを含み、当該加圧ステップは、金属領域に対して0.5〜400MPaの圧力で行われる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップは、摂氏100度以上、前記金属領域を形成する金属の融点未満の温度で、10分から100時間に亘って行われる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップは、前記基板と前記基板に接合された複数のチップとを、互いに近接する方向に加圧するステップを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記金属領域は、銅(Cu)、はんだ材料、金(Au)及びこれらの合金からなる群から選ばれる材料により形成されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. チップ側接合面は金属領域以外の領域に非金属領域を有し、金属領域と非金属領域の表面はほぼ同一面上にある、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. チップ側接合面の非金属領域は、疎水化処理されたチップ側疎水化領域を有し、
    基板の接合部は、チップの金属領域に対応する接合領域と、疎水化処理された基板側疎水化領域とを有し、
    前記複数のチップを基板の対応する接合部上に取り付けるステップは、チップの金属領域と基板の親水化処理された接合領域とが接触するように行われる、請求項21に記載の方法。
  23. 前記金属領域は、チップ側接合面の金属領域以外の領域に対して突出するように形成されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記金属領域は、一つ又は複数の第一の金属領域と当該第一の金属領域を囲むように形成された閉じた環状の第二の金属領域とを有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
  25. チップに所定の検査を行い、良好と判断されたチップのみを供給するステップを更に含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 一つ又は複数の金属領域を有する第一接合面と当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面とを有する所定数のチップからなるチップ層を、複数の層に亘り、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する方法であって、
    当該方法は、
    チップの第一接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、
    基板の接合部を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、
    表面活性化処理されかつ親水化処理された所定数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けるステップと、
    次に取り付けるべき所定数のチップの第一接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、
    基板上に積層されているチップの中で最上層の所定数のチップの第二接合面を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化し、かつ水又はOH含有物質を付着させることにより親水化処理するステップと、
    表面活性化処理されかつ親水化処理された前記次に取り付けるべき所定数のチップを、それぞれ、当該チップの金属領域が前記最上層の所定数のチップの第二接合面に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された前記最上層の所定数のチップ上に取り付けるステップと、
    複数のチップ層に亘りチップを基板上に取り付けた後に、基板と基板上に取り付けられたチップとを含む構造体を加熱するステップと、
    を備えた方法。
  27. 一つ又は複数の金属領域を有するチップ側接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板に接合する装置であって、
    チップ側接合面の少なくとも金属領域を表面活性化処理するために、所定の運動エネルギーを有する粒子を当該チップ側接合面に対して衝突させるチップ用表面活性化処理手段と、
    基板の接合部を表面活性化処理するために、所定の運動エネルギーを有する粒子を当該基板の接合部に対して衝突させる基板用表面活性化処理手段と、
    表面活性化処理されたチップの金属領域を親水化処理するために、当該チップの金属領域に水又はOH含有物質を付着させるチップ用親水化処理手段と、
    表面活性化処理された基板の接合部を親水化処理するために、当該基板の接合部に水又はOH含有物質を付着させる基板用親水化処理手段と、
    複数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、基板の対応する接合部上に取り付けるチップ取付手段と、
    を備えた装置。
  28. 前記チップ用表面活性化処理手段により表面活性化処理され、前記チップ用親水化処理手段により親水化処理されたチップ側接合面に更に水を付着させる水付着手段を更に備えた、請求項27に記載の装置。
  29. 前記チップ取付手段は、チップを基板に向けて搬送するチップ搬送手段と、当該チップ搬送手段により搬送されたチップを受け取って基板上に載置するチップ載置手段とを有して構成され、
    前記水付着手段は、チップ搬送手段に設けられて、チップ載置手段がチップを受け取った後にチップ側接合面に水を吹き付ける、請求項28に記載の装置。
  30. 前記水付着手段は、チップ搬送手段に形成された孔部を有して構成され、当該孔部を通して水がチップ側接合面に吹き付けられる、請求項29に記載の装置。
  31. 前記孔部は、チップを真空吸着するためにも使用される、請求項30に記載の装置。
  32. 前記水付着手段は、チップ取付手段によりチップが移動させられる経路上に固定されて、チップが水付着手段を通過するときにチップ側接合面に向かって水を吹き付ける、請求項28に記載の装置。
  33. 前記水付着手段は、チップ取付手段によりチップが移動させられる経路上に固定されて、液体状の水を収容する水槽を含む、請求項28に記載の装置。
  34. チップ用表面活性化処理手段と基板用表面活性化処理手段とは、それぞれ、複数のチップと基板とに対して交番電圧を印加することで、チップ側接合面と基板の接合部との周りに前記粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の前記粒子を前記電圧によりチップ側接合面と基板の接合部とに向けて加速させることにより、粒子に所定の運動エネルギーを付与する、プラズマ発生装置を有して構成される、請求項27から33のいずれか一項に記載の装置。
  35. チップ用表面活性化処理手段と基板用表面活性化処理手段とは、それぞれ、チップ側接合面と基板の接合部とから離間されて配置され、チップ側接合面と基板の接合部とに向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射する、粒子ビーム源を有して構成される、請求項27から34のいずれか一項に記載の装置。
  36. チップ用親水化処理手段と基板用親水化処理手段とは、一つの親水化処理手段により実現される、請求項27から35のいずれか一項に記載の装置。
  37. チップ用表面活性化処理手段とチップ用親水化処理手段とは、共通の粒子ビーム源を有する、請求項27から36のいずれか一項に記載の装置。
  38. 前記チップ取付手段は、チップを基板の対応する接合部上に取り付ける際に、前記チップと前記基板とを互いに近接する方向に加圧する手段を更に有し、前記加圧手段は、チップの金属領域に0.5〜400MPaの圧力を印加する、請求項27から37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 前記複数のチップと前記基板とを含む構造体を加熱するための、加熱手段を更に備えた、請求項27から38のいずれか一項に記載の装置。
  40. 一つ又は複数の金属領域を有する第一接合面を有する複数のチップからなるチップ層を、複数の層に亘り、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する装置であって、
    チップの第一接合面を表面活性化処理するために、チップの第一接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させる第一接合面用表面活性化処理手段と、
    チップの第一接合面の裏側に位置する第二接合面を表面活性化処理するために、チップの第二接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させるチップ第二接合面用表面活性化処理手段と、
    基板の接合部を表面活性化処理するために、基板の接合部に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させる基板用表面活性化処理手段と、
    表面活性化処理されたチップの第一接合面を親水化処理するために、チップの第一接合面に水又はOH含有物質を付着させるチップ第一接合面用親水化処理手段と、
    表面活性化処理されたチップの当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面を親水化処理するために、チップの第二接合面に水又はOH含有物質を付着させるチップ第二接合面用親水化処理手段と、
    基板の接合部を親水化処理するために、基板の接合部に水又はOH含有物質を付着させる基板用親水化処理手段と、
    チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、チップを基板の対応する接合部上に取り付け、基板上に取り付けられているチップの第二接合面に次に取り付けられるチップの第一接合面が接触するように、当該チップを基板上に取り付けられているチップ上に取り付けるチップ取付手段と、
    を備えた装置。
  41. 前記基板と前記基板上に複数の層に亘り積層された複数のチップとを含む構造体を加熱するための、加熱手段を更に備えた、請求項40に記載の装置。
  42. 基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体であって、請求項1から25のいずれか一項に記載の、一つ又は複数の金属領域を有するチップ側接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板に接合する方法により形成された、基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体。
  43. 基板と基板上に複数層に亘り取り付けられたチップとを含む構造体であって、請求項26に記載の、一つ又は複数の金属領域を有する第一接合面と当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面とを有する所定数のチップからなるチップ層を、複数の層に亘り、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する方法により形成された、基板と基板上に複数層に亘り取り付けられたチップとを含む構造体。
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