本願において、ウエハ(以下、「基板」という。)は、板状の半導体を含むが、これに限定されない。「基板」は、半導体以外にも、ガラス、セラミックス、金属、プラスチック等の材料、または、これらの材料のうち複数の材料を利用した複合材料により形成されてもよい。基板の材料には、剛性が高い材料も低い材料も含まれる。「基板」は、円形、長方形等の種々の形状に形成される。
上記基板は、例えば、接合面に金属領域が形成された基板でもよく、あるいは、接合面に金属領域等が設けられないベアガラスやベアSi基板でもよい。接合面に金属領域が設けられた一対の基板が、貼り合わせにより接合される場合、例えば、一方の基板の金属領域と他方の基板の金属領域とは、互いに対応する位置関係を有するように形成されている。双方の基板の金属領域同士が接合されることにより、基板間で電気的接続が確立され、所定の機械的強度が得られる。また、接合面には、接合に寄与しない金属領域があってもよく、他の基板の非金属領域と接合される金属領域があってもよい。
また、「基板」は、複数のチップが2次元的に配置された集合体、例えばウエハからダイシングされ粘着シート上に配置されたものも含む。さらには、「基板」は、1つのチップまたは複数の層のチップが接合されることで形成されたチップと基板とを含む構造体も含む。ここで「チップ」とは、半導体部品を含む成型加工半導体の板状部品、パッケージされた半導体集積回路(IC)等の電子部品等を示す広い概念の用語として与えられる。「チップ」には、一般に「ダイ」と呼ばれる部品や、基板よりも寸法が小さくて、複数個を当該基板に接合できるほどの大きさを有する部品または小型の基板も含まれる。また、電子部品以外に、光部品、光電子部品、機械部品も「チップ」に含まれる。
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板接合装置100の構成を示す正面図である。図1では、基板接合装置100の内部の概略構造を示す。なお、以下の各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示す。なお、Z方向を便宜上、上下方向とも呼ぶが、Z方向は必ずしも上下方向に一致する必要はない。
基板接合装置100は、真空チャンバ200と、基板支持部400と、位置測定部500と、表面処理部600と、コントローラ700とを備える。基板支持部400は、被接合物である基板301,302を互いに対向させて支持し、両基板301,302の相対的な位置決めを行う。位置測定部500は、基板301,302の相対的位置関係を測定する。表面処理部600は、Z方向において互いに対向して支持された基板301,302の表面に対して表面処理を行う。以下、基板301,302をそれぞれ、「第1基板301」および「第2基板302」とも呼ぶ。図1では、第1基板301が第2基板302の下方((−Z)側)に配置されるが、第1基板301は第2基板302の上方((+Z)側)に配置されてもよい。コントローラ700は、上述の各構成と接続され、これらの構成からの情報を受信し、演算し、各構成に指令を出すように、プログラムを搭載するコンピュータである。
真空チャンバ200は、基板支持部400の後述のステージ401,402と表面処理部600とを収容する。また、真空チャンバ200は、内部を真空引きするための真空引き部として、真空ポンプ201を備える。当該真空ポンプ201は、排気管202と排気弁203とを介して真空チャンバ200内の気体を外部に排出するように構成されている。
真空ポンプ201の吸引動作に応じて真空チャンバ200内の圧力が低減(減圧)されることにより、真空チャンバ200内の雰囲気は真空または低圧状態にされる。また、排気弁203は、その開閉動作と排気流量の調整動作とによって、真空チャンバ200内の真空度を制御および調整することができる。
真空ポンプ201は、真空チャンバ200内の気圧を1Pa(パスカル)以下にする能力を有する。真空ポンプ201は、以下で説明する表面処理部600が作動する前のバックグラウンド圧力を、1×10−2Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。真空ポンプ201は、表面処理部600の後述するライン式粒子ビーム源601が1eVから2keVの運動エネルギーを有する粒子(エネルギー粒子)を放射する場合には、1×10−5Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。
これにより、ライン式粒子ビーム源601による基板301,302の表面活性化処理の際に、雰囲気中に存在する不純物の量を低減させ、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着等を防止することができる。さらに、ライン式粒子ビーム源601は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、比較的高い真空度では、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去および新生表面のアモルファス化を行い、基板301,302の表面を活性化することができると考えられる。
真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率良く雰囲気(真空チャンバ200)外へと排気される。すなわち、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率良く排気される。
基板支持部400は、基板301,302を支持するステージ401,402と、それぞれのステージを移動させるステージ移動機構403,404と、Z軸方向に基板同士を加圧する際の圧力を測定する圧力センサ408,411と、基板を加熱し、または、冷却する基板温度調節部420とを備える。ステージ移動機構403,404は、基板301,302を移動する基板移動機構である。第2ステージ移動機構404は、XY方向並進移動機構405、Z方向昇降移動機構406およびZ軸周り回転移動機構407を備える。
基板301,302は、ステージ401,402の支持面に取り付けられる。ステージ401,402は、機械式チャック、静電チャック等の保持機構を有し、これにより基板を支持面に固定して保持し、または、保持機構を開放することで基板を取り外すことができるように構成されている。以下、ステージ401,402をそれぞれ、「第1ステージ401」および「第2ステージ402」とも呼ぶ。
図1において下側の第1ステージ401は、スライド式の第1ステージ移動機構403に接続される。これにより、第1ステージ401は、真空チャンバ200に対して、または、上側の第2ステージ402に対してX方向に並進移動することができる。
図1において上側の第2ステージ402は、アライメントテーブルとも呼ばれるXY方向並進移動機構405に接続される。アライメントテーブル405により、第2ステージ402は真空チャンバ200に対して、または、下側の第1ステージ401に対して、XY方向に並進移動することができる。
Z方向昇降移動機構406は、アライメントテーブル405に連結される。Z方向昇降移動機構406により、第2ステージ402は、上下方向(Z方向)に移動し、両ステージ401,402間のZ方向の間隔を変え、または、調節することができるように構成されている。また、両ステージ401,402は、保持する基板301,302の対向する接合面同士を接触させ、または、接触後に加圧することができる。
Z方向昇降移動機構406には、そのZ軸に係る力を測定するZ軸圧力センサ408が配置され、これにより加圧下で接触している接合面に垂直方向に係る力を測定し、接合面に係る圧力を計算することができる。Z軸圧力センサ408には、例えばロードセルを用いてもよい。
アライメントテーブル405と第2ステージ402との間には、3つのステージ圧力センサ411と、各ステージ圧力センサ411においてZ軸方向にピエゾアクチュエータ412とが設けられている。各ステージ圧力センサ411とピエゾアクチュエータ412の組は、第2ステージ402の基板支持面上の非同一線上の異なる3つの位置に配置されている。より詳細には、3つのステージ圧力センサ411と、3つのピエゾアクチュエータ412とにより構成される各組は、略円柱状の第2ステージ402の略円形上面内の外周部付近において略等角度間隔で配置されている。
また、3つのステージ圧力センサ411は、対応する各ピエゾアクチュエータ412の上端面とアライメントテーブル405の下面とを接続している。これにより、ステージ圧力センサ411により基板の接合面に掛かる力、または、圧力の分布を測定することができる。そして、ピエゾアクチュエータ412を互いに独立にZ方向に伸縮させることで上記力、または、圧力の分布を微細または正確に調節し、あるいは、基板の接合面に掛かる力または圧力を、接合面に亘って均一、または、所定の分布にするように制御することができる。
Z軸周り回転移動機構407は、第2ステージ402をZ軸周りに回転させることができる。Z軸周り回転移動機構407により、第2ステージ402の第1ステージ401に対するZ軸周りの相対的な回転位置θを制御して、両基板301,302の回転方向の相対的位置を制御することができる。
基板接合装置100は、基板301,302の相対的位置関係を測定するための位置測定部500として、窓503と、光源(図示せず)と、複数のカメラ501,502とを備える。窓503は、真空チャンバ200に設けられる。複数のカメラ501,502は、光源から発せられ両基板301,302のマークが設けられた部分(図示せず)および上記窓503を通過して真空チャンバ200の外部に伝播する光と、上記マークの影とを撮像する。
位置測定部500は、Z方向に伝播する光をXY面方向に屈折させるミラー504,505を有し、カメラ501,502はY方向に屈折した光を撮像するように配置されている。この構成により、Z軸方向の装置の大きさを小さくすることができる。
図1では、カメラ501,502は、それぞれ、同軸照明系を有している。光源は、第1ステージ401の上側に設けられてもよく、また、カメラ501,502側からその光軸を進む光を発するように設けられてもよい。なお、カメラ501,502の各同軸照明系の光としては、基板301,302のマークが附された部分および両ステージ等の光が通過すべき箇所を透過する波長領域(例えば基板がシリコンで出来ている場合には、赤外光)の光を用いる。
本基板接合装置100は、上記位置測定部500と、ステージの位置決めをするステージ移動機構403,404と、これらに接続されたコントローラ700とを用いて、水平方向(XおよびY方向)並びにZ軸周りの回転方向(θ方向)について、基板301,302の各々の真空チャンバ200内の位置(絶対的位置)、または、基板301,302間の相対的位置とを測定および制御することができるように構成されている。
基板301,302には、測定用の光が通過する箇所が規定されており、ここにマークが附されていて、通過光の一部を遮断または屈折させる。カメラ501,502が通過光を受光すると、明視野像である撮影画像内でマークは暗く現れる。マークは、好ましくは、基板に複数個、例えば基板の対向する2つの角に設けられている。これにより、複数個のマークの位置から、基板301または基板302の絶対的位置を特定することができる。
好ましくは、基板301,302の対応する箇所、例えば接合時にZ方向に重なり合う位置に、対応するマークが附されている。基板301,302の両方のマークを同じ視野内で観測して、その相対的ずれ(Δx,Δy)を測定する。複数個所での相対的ずれ(Δx,Δy)を測定することにより、基板301,302間の相対的位置(ΔX,ΔY,Δθ)を計算することができる。
基板301,302間の相対的位置(ΔX,ΔY,Δθ)に基づいて、コントローラ700から指示を出して、各ステージ401,402の移動機構に基板を(−ΔX,―ΔY,―Δθ)だけ移動させる。
基板301,302の相対的位置を正確に測定するために、一旦接近または接触させてもよい。この場合、各ステージ401,402を移動させる際には、また、基板301,302を離間させるようにしてもよい。基板301,302の相対的位置の測定および位置決め動作は、複数回繰り返して行ってもよい。
図1のステージ401,402は、それぞれ基板温度調節部420として、加熱冷却部421,422を内蔵している。加熱冷却部421,422は、例えば、ヒータとペルチェ素子とを備えるモジュールである。加熱冷却部421,422は、ステージ401,402に支持されている基板301,302を、ステージ401,402を介して加熱し、または、冷却する。すなわち、基板温度調節部420は、基板加熱部としても機能し、基板冷却部としても機能する。加熱冷却部421,422を制御することにより、基板301,302の温度や基板301,302の接合面の温度を調節し制御することができる。
表面処理部600は、表面活性化処理部610と、親水化処理部620とを備える。表面活性化処理部610として、例えば、イオンや中性原子等の粒子ビーム源、あるいは、プラズマ源を採用することができる。これにより、基板301,302の接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせ、表面層を除去することができる。
表面活性化処理には、表面層を除去して接合すべき物質の新生表面を露出させるのみならず、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより、露出された新生表面近傍の結晶構造を乱し、アモルファス化する作用もあると考えられている。アモルファス化した新生表面は、原子レベルの表面積が増え、より高い表面エネルギーを有するため、その後の親水化処理において結合される、単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加すると考えられる。なお、従来のウェット処理による表面の不純物の除去工程後に化学的に親水化処理する場合には、所定の運動エネルギーを有する粒子の衝突に起因する新生表面の物理的変化がないので、上述の表面活性化処理に続く親水化処理は、この点で従来の親水化処理とは根本的に異なると考えられる。
ここで、「アモルファス化した表面」または「結晶構造が乱れた表面」とは、具体的に表面分析手法を用いた測定により存在が確認されたアモルファス層または結晶構造が乱れた層を含むとともに、粒子の照射時間を比較的長く設定した場合、または、粒子の運動エネルギーを比較的高く設定した場合に想定される結晶表面の状態を表現する概念的な用語であって、具体的に表面分析手法を用いた測定によりアモルファス層または結晶構造が乱れた表面の存在が確認されていない表面をも含むものである。また、「アモルファス化する」または「結晶構造を乱す」とは、上記アモルファス化した表面、または、結晶構造が乱された表面を形成するための動作を概念的に表現したものである。
表面活性化処理に用いる粒子として、例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスまたは不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、比較的大きい質量を有しているので、効率的に、スパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になると考えられる。
表面活性化処理に用いる粒子として、酸素のイオン、原子、分子等を採用することもできる。酸素イオン等を用いて表面活性化処理を行うことで、表面層を除去した後に新生表面上を酸化物の薄膜で覆うことが可能になる。新生表面上の酸化物の薄膜は、その後の親水化処理における、水酸(OH)基の結合または水の付着の効率を高めると考えられる。
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eV〜2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、表面層におけるスパッタリング現象が効率良く生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さ、材質等の性質、新生表面の材質等に応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。表面活性化される接合面に衝突させる粒子を接合面に向けて加速することにより、当該粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。
図2は、表面活性化処理部610の斜視図である。図1および図2に示す例では、表面活性化処理部610は、ライン式粒子ビーム源601と、遮蔽部材602と、ビーム源移動機構603とを備える。ビーム源移動機構603は、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とを、基板301,302の接合面(すなわち、表面活性化処理の対象となる対象面)に略平行に移動する。ビーム源移動機構603は、ライン式粒子ビーム源601および遮蔽部材602を、基板301,302の間の空間へと挿入し、また、当該空間から退避させる。また、ビーム源移動機構603は、ライン式粒子ビーム源601および遮蔽部材602を、ライン式粒子ビーム源601等のライン方向(X方向)周りに揺動する。
図2に示すように、ライン式粒子ビーム源601は、ライン方向または長手方向がX方向に平行になるように配置されている。ライン式粒子ビーム源601は、中性原子である粒子に所定の運動エネルギーを与え、当該粒子を基板301,302の接合面に向けて放射する。遮蔽部材602は、長方形の板状に形成され、ライン式粒子ビーム源601のライン方向と平行に、X方向と平行になるように配置されている。遮蔽部材602の長手方向の長さは、ライン式粒子ビーム源601の長手方向の長さとほぼ同じである。
ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とは、ビーム源移動機構603により、そのY方向の間隔を一定に保ちつつ、両者の長手方向にほぼ垂直方向であるY方向に並進移動する。ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602との間のY方向の間隔を一定に保つために、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とを機械部材で連結してもよい。また、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とを同じ速度で移動させることにより、Y方向の間隔を一定に保ってもよい。
Y方向に張られた複数のリニアガイド604,605,606は、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602との長手方向の両端を支持しつつ、Y方向に所望の距離を並進移動させ、または、所望の位置に位置決めさせることができる。
リニアガイド604は、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とのそれぞれの一端をY方向に移動可能に支持している。このリニアガイド604は、Y方向に延びるネジ604aと、ネジ604aの長手方向の回転により動くナット604bと、ネジ604aを回転させるサーボモータ604cとを備える。ナット604bは、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とをX方向の各回転軸周りに回転可能に、かつ、XYZ方向に固定して支持している。ナット604bは、図2においては、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602との間のY方向の間隔または距離を一定に保つ機能も有している。
リニアガイド605,606は、Z方向にずれて平行に配置されていて、それぞれ、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602との他端をY方向に移動可能に支持している。さらに、リニアガイド605,606は、回転式リニアガイドであり、それぞれの長手軸方向の軸周りに回転可能であり、当該回転を、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とのライン方向(X方向)の回転軸609a,609b周りの回転運動に変換して伝達する機構を有している。具体的には、各回転式リニアガイド605,606は、Y方向に平行移動可能な回転ギア607L,608Lを有し、それぞれ、ライン式粒子ビーム源601に連結された回転ギア607Gと遮蔽部材602に連結された回転ギア608Gと歯車で連結されている。回転ギア607L,608L,607G,608Gは、傘歯車であり、噛み合う回転ギア間で回転運動を垂直回転軸周りの回転運動に変換して伝達することができる。これらのギアには、傘歯車を用いているが、これに限られない。例えばウォームギアを採用してもよい。
表面活性化処理部610では、回転式のリニアガイド605,606をY方向軸周りに回転または揺動させ、この回転角によって、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とのX方向軸周りの揺動を制御または設定することができる。また、回転式のリニアガイド605,606は、それぞれ個別にライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とに連結され、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とのX方向軸周りの回転角を独立に制御または設定することができるように構成されている。
ライン式粒子ビーム源601は、回転軸609a周りで基板301の接合面に対して所定の角度を保ったまま、粒子ビームBを放射しつつ、基板301上をY方向に並進移動することができる。ある時刻において、ライン式粒子ビーム源601は、基板301上のX方向に伸びた帯状のビーム照射領域Rを粒子ビームBで照射しており、Y方向の並進移動にともない、照射領域Rは基板301の接合面をスキャンする。
遮蔽部材602は、ライン式粒子ビーム源601とのY方向の上記所定の間隔を有して配置される。遮蔽部材602は、ライン式粒子ビーム源601のビーム照射により基板301から飛散するスパッタ粒子を遮蔽するように、回転軸609b周りで基板301の接合面に対して所定の角度を保ちつつ、ライン式粒子ビーム源601と共にY方向に並進移動する。
粒子ビームBの放射条件を一定に保ったまま一定速度でスキャンをすることにより、基板301の接合面全面に亘って、極めて均一な条件で粒子ビーム照射を行うことができる。粒子ビームBの基板上の単位面積当たりの照射量は、粒子ビーム源601の基板301に対するスキャン速度によっても調整することができる。
上述のように、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とは、それぞれ回転軸609a,609b周りに回転可能に構成されている。したがって、図3Aおよび図3Bに示すように、第1基板301に対して粒子ビームBの照射スキャンを行った後に(図3A)、第2基板302に対しても、基板301と同様の工程を実行することができる(図3B)。
第1基板301に対して粒子ビームBの照射スキャンを行う場合(図3A)と、第2基板302に対して粒子ビームBの照射スキャンを行う場合(図3B)との各々に応じて、遮蔽部材602とライン式粒子ビーム源601とは、向きが、それぞれ所定の向きに設定できるように構成されている。
図3Aに示すように、第1基板301に対して粒子ビームBの照射スキャンを行う場合には、遮蔽部材602の遮蔽面611をほぼ第1基板301に向け、ライン式粒子ビーム源601からの粒子ビーム照射によるスパッタで第1基板301から飛散するスパッタ粒子Pを当該遮蔽面611で遮断する。これにより、対向して配置された他方の基板である第2基板302には、第1基板301からのスパッタ粒子Pが付着しないようにし、または、その付着量を最小限に抑制することができる。
そして、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とは、上記の向きに保たれたまま、第1基板301上を走査(スキャン)される。これにより、ビーム照射領域R1が第1基板301上をスキャンして、第1基板301の接合面である第1接合面全体に亘って均一にビーム照射を行うことができる。
基板接合装置100では、図3Aに示すように、第2基板302にスパッタ粒子Pが付着することを回避または最小限に抑えつつ、第1基板301に対する粒子ビーム照射をスキャンすることができる。したがって、その後、第2基板302に対する粒子ビーム照射をほぼ理想的に行うことができる。すなわち、第1基板301に対する粒子ビーム照射中に第2基板302上にスパッタ粒子Pが付着してしまうと、これを除去するために第2基板302のみの処理に比べて粒子ビームBの照射時間を長く設定することが必要となる。あるいは、望ましくない不純物が第2基板302上に付着している場合には、粒子ビーム照射による原子の衝突により当該不純物が第2基板302内に潜り込み、または、混合(ミキシング)が生じるため、第2基板302の表面近傍を改質する必要が生じ得る。基板接合装置100では、このような不具合を回避または最小限に抑制することができる。
また、基板接合装置100では、図3Bに示すように、第2基板302のビーム照射領域R2に粒子ビーム照射を行う際に、第2基板302から飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽部材602の遮蔽面611でブロックすることができる。したがって、粒子ビーム照射を完了した第1基板301の領域R1へのスパッタ粒子Pの付着を回避または抑制することができる。換言すれば、第2基板302に対して、第2基板302の接合面である第2接合面に対する粒子ビーム照射をスキャンして実行しつつ、これに併せて第2基板302から飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽して第1基板301に付着するのを防止することができる。これにより、粒子ビーム照射で得られた第1基板301の領域R1の所定の性質を維持することができる。具体的には、一旦粒子ビーム照射により表面活性化された第1基板301の接合面は、第2基板302の接合面の表面活性化処理の間も、その活性度を維持することができる。したがって、交互に基板表面を活性化しても接合強度が高く、不純物の混入が少ない固相接合界面を形成することができる。
ライン式粒子ビーム源601は、例えば1x10−5Pa(パスカル)以下等の、比較的高い真空中で作動するため、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着等を防止することができる。さらに、ライン式粒子ビーム源601は、比較的高い加速電圧を印加することができるため、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、表面層の除去、および、新生表面のアモルファス化を効率良く行うことができると考えられる。
図3Aおよび図3Bのように、ライン式粒子ビーム源601と板状の遮蔽部材602とは、X方向に平行な回転軸周りに回転可能であるので、互いに近接して配置されてもよい。例えば、板状の遮蔽部材602が基板面に平行な状態で、第1基板301に対するビーム照射が終わった後に、ライン式粒子ビーム源601のみを第2基板302に向けて回転させると、ライン式粒子ビーム源601が遮蔽部材602に衝突または接触する程度に近接して配置されていてもよい。このような場合には、遮蔽部材602のライン式粒子ビーム源601側の辺が第1基板301側に近づくように遮蔽部材602を回転させ、次に、ライン式粒子ビーム源601を第2基板302に向けて回転させる。これにより、遮蔽部材602に接触することなく、第2基板302に向くようにライン式粒子ビーム源601の姿勢を変更することができる。その後、第2基板302へのビーム照射のために、遮蔽部材602を回転して基板301,302の接合面に平行な位置に位置決めすることができる。
なお、図3Bでは、ライン式粒子ビーム源601は第2基板302に対して図中の左から右(+Y方向)へ移動しているが、右から左(−Y方向)に移動しつつ粒子ビーム照射を行ってもよい。ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とを第1基板301に対して左から右へ移動させて粒子ビーム照射を行い、第2基板302に対して右から左へ移動させて粒子ビーム照射を行ってもよい。これにより、いずれの基板にも同じ方向(例えば、図中の左から右)に移動させて粒子ビーム照射を行う場合よりも、ライン式粒子ビーム源601の移動距離を短くすることができるため、プロセス効率が向上する。
ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602との間隔は常に同じである必要はない。例えば、スパッタ粒子の飛散方向が、スキャン方向の相違などにより、第1基板301と第2基板302とで異なる場合には、上記間隔を変えてもよい。すなわち、遮蔽部材602は、粒子ビーム照射の各条件で、飛散するスパッタ粒子を効率よく遮蔽して、他の基板へ到達することを回避または最小限に抑制する寸法、形状または姿勢となるように構成されていればよい。
例えば、所定のプロセスまたはスキャン毎に、ライン式粒子ビーム源601の基板表面に成す角度、粒子ビーム(エネルギー粒子)の種類や運動エネルギー、基板表面の材料、表面形状や結晶方向等々のビーム照射の条件に応じて、スパッタ粒子の飛散方向や飛散角度が変わり得る。したがって、所定のビーム照射の条件に応じて、飛散するスパッタ粒子を効率良く遮蔽するように、遮蔽部材602の角度や大きさ、ライン式粒子ビーム源601や基板301,302に対する位置または姿勢等を変更することができるように装置が構成されてもよい。
なお、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とは、基板301,302間を接合面に平行に移動するように構成されているが、これに限られない。基板301,302が2次元的に平坦ではない場合等、種々の場合に応じて、ライン式粒子ビーム源601および遮蔽部材602が基板301,302間で適切な移動をするように装置が構成されてもよい。
また、図2に示す例では、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とは、長手方向をライン方向(X方向)にほぼ平行に配置され、ライン方向(X方向)にほぼ垂直方向(Y方向)に並進移動するように構成されているが、これに限られない。ライン式粒子ビーム源601等の長手方向は、並進移動方向に対して垂直(90度)でなくてもよく、例えば、所定の角度(60度、45度)を成すように装置が構成されてもよい。当該所定の角度は、スキャン毎に可変であるように装置が構成されてもよい。
図3Aおよび図3Bに示す例では、表面活性化処理部610は、単一のライン式粒子ビーム源601により両基板301,302に対してビーム照射ができるように構成されているが、これに限られない。例えば、表面活性化処理部610は、複数のライン式粒子ビーム源601を備えていてもよい。
例えば、図4Aおよび図4Bに示すライン式粒子ビーム源601は、第1ライン式粒子ビーム源6011と第2ライン式粒子ビーム源6012とを有し、2つの対向する基板301,302間に配置される。第1ライン式粒子ビーム源6011は第1基板301に対してビーム照射を行い、第2ライン式粒子ビーム源6012は第2基板302に対してビーム照射を行う。
この場合、遮蔽部材602は、基板301,302間に配置され、両基板301,302から飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽する。すなわち、遮蔽部材602の第1基板301に向いた面6021は、第1基板用ライン式粒子ビーム源(第1ライン式粒子ビーム源)6011のビーム照射により第1基板301から第2基板302に向けて飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽して、当該スパッタ粒子Pが第2基板302に付着することを回避または最小限に抑えるように構成されている。一方、遮蔽部材602の第2基板302に向いた面6022は、第2基板用ライン式粒子ビーム源(第2ライン式粒子ビーム源)6012のビーム照射により第2基板302から第1基板301に向けて飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽して、当該スパッタ粒子Pが第1基板301に付着することを回避または最小限に抑えるように構成されている。
当該遮蔽部材602は、略板状に形成されている。両基板301,302の対向する表面が平行である場合には、板状の遮蔽部材602は、その主面が両基板301,302の表面に平行となるように配置される。この構成により、効率良い基板表面処理を行うことができるとともに、基板表面処理装置を小さく構成することができる。
ライン式粒子ビーム源6011,6012を作動させて基板301,302に対して粒子ビーム照射を行いつつ、両ライン式粒子ビーム源6011,6012および遮蔽部材602をY方向または基板面に平行な方向に並進移動させることにより、両基板301,302に対する粒子ビーム照射処理を同一スキャンで行うことができる。したがって、効率良く、清浄な表面活性化処理が可能になる。
2つの対向する基板301,302が平行に配置されている場合には、図4Aおよび図4Bに示すように、両基板301,302の対称中心面に対して鏡面対称となるように、両ライン式粒子ビーム源6011,6012および遮蔽部材602を配置することが好ましい。この構成で、両ライン式粒子ビーム源6011,6012および遮蔽部材602を基板301,302に対して、同一速度でスキャンし、あるいは、それらの間の相対的位置関係を維持しつつスキャンすることができる。これにより、両基板301,302に対して同時にビーム照射を行い、かつ、ビーム照射により各基板301,302から飛散するスパッタ粒子Pを同時に遮蔽することができる。したがって、両基板301,302に対して清浄な表面活性化処理を同時に、極めて効率良く行うことが可能になる。
図4Aに示す構成では、第1基板用ライン式粒子ビーム源6011と第2基板用ライン式粒子ビーム源6012とは、遮蔽部材602に対して進行方向側に配置され、Y方向から向きが逆でほぼ同じ角度だけ傾いた状態で配置される。両基板用ライン式粒子ビーム源6011,6012は、それぞれ基板301,302のほぼ同じY方向位置のビーム照射領域R1とR2とにビーム照射を行うことができる。板状の遮蔽部材602は、適切な形状を有し、両基板用ライン式粒子ビーム源6011,6012に対して適切なY方向位置に配置されることで、両基板301,302から飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽することができる。
なお、図示しないが、第1基板用ライン式粒子ビーム源6011と第2基板用ライン式粒子ビーム源6012とは、その両方が、遮蔽部材602に対して進行方向と逆側に配置されていてもよい。
図4Bに示す構成では、第1基板用ライン式粒子ビーム源6011と第2基板用ライン式粒子ビーム源6012とは、それぞれ、遮蔽部材602に対して進行方向側と進行方向の逆側とに配置されている。この場合、両基板用ライン式粒子ビーム源6011,6012は、遮蔽部材602の長手方向軸を中心にほぼ回転対称に配置されている。遮蔽部材602は、両基板用ライン式粒子ビーム源6011,6012のほぼ中心に位置しており、適切な形状を有することで、両基板301,302から飛散するスパッタ粒子Pを遮蔽することができる。
ライン式粒子ビーム源601としては、例えば、高速原子ビーム源(FAB:Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的には、希ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界をかけて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)が利用される場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1W(ワット)から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。例えば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物等(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
ライン式粒子ビーム源601として、例えば、イオンである粒子を基板301,302の接合面に向けて放射するイオンビーム源(イオンガン)が利用されてもよい。当該イオンビーム源は、例えば110V、3Aで稼動し、アルゴン(Ar)を加速して基板301,302の接合面に600秒ほど照射するように使用されてもよい。また、他の条件として、加速電圧1.5kV〜2.5kV,電流350mA〜400mAを採用してもよく、さらに他の条件として、加速電圧1.0kV〜2.0kV,電流300mA〜500mAを採用してもよい。イオンビーム源として、冷陰極型、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいは、クラスターイオン源などが採用されうる。
ライン式粒子ビーム源601から基板の接合面に粒子ビームを照射することにより、表面活性化処理を行うことができる。表面活性化処理により、基板の接合面同士を常温または非加熱で固相接合させることができる。
ライン式粒子ビーム源601によるその他のビーム照射条件として、真空チャンバ200内のバックグラウンド圧力を10 −6Pa(パスカル)の状態から、ガスとしてArを100sccmの流量で流し、真空チャンバ200内の圧力を10−3Pa(パスカル)以下として、ライン式粒子ビーム源601を2kV、20mAで作動し、ライン式粒子ビーム源601の基板301,302に対するスキャン速度を10mm/sとすることもできる。上述の各ビーム照射条件は、例示を目的とするものであり、これに限定されない。ビーム照射条件は、各装置構成、ビーム照射条件、基板等の処理対象の物性等に応じて適宜変更することができる。
表面活性化処理部610では、プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。この場合、基板301,302の接合面に対して交番電圧を印加することにより、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させる。そして、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速することにより、当該粒子に所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数Pa(パスカル)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができる。このため、真空システムを簡素化することができるとともに、真空引き等の工程を短縮化することができる。
上述のプラズマ発生装置は、例えば、100Wで稼動してアルゴン(Ar)のプラズマを発生させ、当該プラズマを基板301,302の接合面に600秒ほど照射させるように使用されてもよい。
表面活性化処理部610では、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子やイオン以外に、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。粒子ビームには、アルゴン(Ar)等の不活性ガス以外に、例えば、窒素、酸素または水が粒子ビームとして用いられてもよい。
図1に示す基板接合装置100では、表面活性化処理部610による基板301,302の表面活性化処理が終了すると、親水化処理部620による親水化処理が行われる。これにより、清浄化または活性化された基板301,302の接合面に水酸基(OH基)が結合されると考えられる。さらには、水酸基(OH基)が結合された接合面上に水分子が付着する。
基板301,302の親水化処理は、表面活性化された接合面に水を供給することにより行われる。当該水の供給は、上記表面活性化された接合面の周りの雰囲気に、水(H2O)を導入することで行うことができる。水は、気体状で(ガス状で、または、水蒸気として)導入されても、液体状(霧状)で導入されてもよい。さらに、接合面に対する親水化処理の他の態様として、ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。接合面に対する親水化処理の方法はこれらに限定されない。
親水化処理部620では、例えば、液体状の水の中に窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、酸素(O2)等のキャリアガスを通過させること(バブリング)で、気体状の水がキャリアガスに混合されて、表面活性化された接合面を有する基板301,302が配置された真空チャンバ200内に導入されることが好ましい。
図1に示す例では、親水化処理部620は、ガス供給源621と、流量制御バルブ622と、ガス導入部623とを備える。ガス供給源621は、上述のバブリングにより生成されたキャリアガスと水(H2O)との混合ガス(すなわち、水分子を含むガス)を、ガス導入部623を介して真空チャンバ200内へと供給する。流量制御バルブ622は、ガス供給源621から真空チャンバ200へと供給される混合ガスの流量を制御する。
基板接合装置100では、表面活性化された接合面の周りの雰囲気の湿度を制御することにより、親水化処理の工程を制御することができる。当該湿度は、相対湿度として計算しても、絶対湿度として計算してもよく、または、他の定義を採用してもよい。
真空チャンバ200内の湿度の制御は、ガス供給源621で生成される混合ガスの湿度、流量制御バルブ622により制御される混合ガスの真空チャンバ200への導入量、真空ポンプ201による真空チャンバ200内のガスの排出量、および、真空チャンバ200内の温度等を調節することにより行うことができる。真空チャンバ200内の湿度は、両基板301,302の接合面の少なくとも一方または両方の周りの雰囲気における相対湿度を10%以上かつ90%以下となるように制御することが好ましい。
親水化処理部620は、基板301,302を冷却する上述の基板温度調節部420をさらに備えてもよい。基板温度調節部420により基板301,302の接合面を冷却することにより、基板301,302の接合面の周りの雰囲気における相対湿度を容易に増大させることができる。これにより、接合面に対する水の供給量を容易に増大させることができる。
親水化処理部620では、例えば、窒素(N2)または酸素(O2)をキャリアガスとして気体状の水を導入する場合、真空チャンバ200内の全圧を9.0x104Pa(パスカル)、すなわち0.89atm(アトム)とし、真空チャンバ200内での気体状の水の量を、容積絶対湿度で8.6g/m3(グラム/立方メートル)または18.5g/m3(グラム/立方メートル)、23℃(摂氏23度)の相対湿度でそれぞれ43%または91%となるように制御することができる。また、チャンバ内の酸素(O2)の雰囲気中濃度を10%としてもよい。
親水化処理部620では、親水化処理を行うために、所定の湿度を有する真空チャンバ200外の大気を、真空チャンバ200内に導入してもよい。大気を真空チャンバ200内に導入する際には、望ましくない不純物の接合面への付着を防ぐために、当該大気が所定のフィルタを通過するように構成することが好ましい。所定の湿度を有する真空チャンバ200外の大気を導入して親水化処理を行うことにより、接合面の親水化処理を行う装置構成を簡略化することができる。
また、親水化処理部620では、水(H2O)の分子やクラスター等を加速して、基板301,302の接合面に向けて放射してもよい。水(H2O)の加速に、上記表面活性化処理に用いるライン式粒子ビーム源601等を使用してもよい。この場合、上述のガス供給源621で生成したキャリアガスと水(H2O)との混合ガスを、ライン式粒子ビーム源601等に導入することにより、水の粒子ビームを発生させ、親水化処理すべき接合面に向けて照射することができる。また、親水化処理は、接合面の近傍の雰囲気中で、水分子をプラズマ化して、これを接合面に接触させることにより行われてもよい。
基板301,302の接合面の親水化処理として、基板301,302の表面活性化処理の後に、基板301,302からのパーティクル(汚染粒子)等の除去を兼ねた水洗浄が行われてもよい。当該水洗浄により、上述の親水化処理と同様の効果を得ることができる。当該水洗浄は、例えば、超音波を付与された水流を基板301,302の接合面に向けて噴射することにより行われてもよい。水洗浄は、通常、真空チャンバ200では行われず、後述するように、真空チャンバ200の外で行われる。
基板301,302の接合面の親水化処理として、同種または異種の親水化処理が複数回行われてもよい。また、親水化処理と並行して、あるいは、親水化処理の後に、接合面に強制的に水分子を付着させてもよい。これにより、接合面上の水分子の量を増やし、または、制御することができる。当該水分子の付着は、例えば、基板温度調節部420による基板301,302の接合面の冷却により行われてもよい。あるいは、当該水分子の付着は、上述の基板301,302の接合面に対する水洗浄により行われてもよい。
親水化処理の完了時間は、予め行われる実験により定められてもよく、あるいは、所定の表面評価部を用いてその場(in―situ)観察により十分な親水化処理が行われたことを確認することで決定されてもよい。
図1に示す例では、基板301,302に対する表面活性化処理と親水化処理とは、1つの真空チャンバ200内にて連続して行われる。したがって、表面活性化処理された基板301,302の接合面を大気に曝すことなく、当該接合面の親水化処理を行うことができる。これにより、基板301,302の接合面の望ましくない酸化や、接合面への不純物等の付着を防止することができる。また、親水化処理をより容易に制御することができ、表面活性化処理の後に親水化処理を続けて効率良く実行することができる。
図5は、第1基板301と第2基板302との接合の流れを示す図である。まず、第1基板301の第1接合面に対して表面活性化処理が行われ、第2基板302の第2接合面に対して表面活性化処理が行われる(ステップS11)。表面活性化処理が終了すると、第1基板301の接合面および第2基板302の接合面に対して親水化処理が行われる(ステップS12)。これにより、基板301,302の接合面に水酸(OH)基が結合する。
親水化処理が終了すると、基板301,302の接合面に水分子が付与され、当該水分子が接合面に付着する(ステップS13)。ステップS12において基板301,302の接合面に水分子が付着している場合、ステップS13では、当該接合面に水分子が追加付着する。ステップS13の水分子を付着させる工程は、ステップS12の親水化処理と並行して行われてもよい。ステップS13は、ステップS12の親水化処理の一部とみなされ得る。
続いて、第1基板301の接合面と第2基板302の接合面とを接触させ、基板301,302同士を後述する臨界圧力以下の圧力にて加圧する(すなわち、臨界圧力以下の圧力にて第1基板301および第2基板302を互いに対して押圧する)ことにより、第1基板301と第2基板302とが仮接合される(ステップS14)。ステップS14では、基板301,302同士が、例えば約0.05MPaの圧力にて加圧される。
ステップS14における加圧は、第1基板301と第2基板302との接触と同時に開始されてもよく、あるいは、接触してから所定時間の経過後に開始されてもよい。また、ステップS14における加圧は、基板301,302が接触状態にある時間の一部に亘って行われてもよく、全体に亘って行われてもよい。さらにまた、ステップS14における加圧は、断続的に行われてもよい。ステップS14における加圧中は、一定の圧力が保たれても、圧力が時間的に変化してもよい。なお、ステップS14における第1基板301および第2基板302の互いに対する押圧は、数g(グラム)の加重、自重レベルでの接触を含む。
図6A〜図6Cは、ステップS12〜S14における基板301の接合面の状態を概念的に示す図である。基板302の接合面の状態も図6A〜図6Cに示すものと同様である。基板301,302の接合面には、上述のように、水酸(OH)基が結合しており、水酸(OH)基上に水分子が付着している。ステップS12において、水酸(OH)基は、ステップS11によりアモルファス状とされた基板301,302の界面が、水分子を吸収して酸化を促すことにより接合面に結合される。このとき、水分子が十分に反応しきれないため、図6Aに示すように、接合面に結合された水酸(OH)基の密度が十分に高くなっていないものと考えられる。換言すれば、水酸(OH)基の間に隙間(図6A中にて二点鎖線にて囲む。)が生じていると考えられる。
ステップS14では、水酸(OH)基上の水分子の一部が、仮接合時の基板301,302の密着や基板301,302に加えられる上記圧力等により、図6Bに示すように、接合面上の水酸(OH)基の間の隙間に浸透する。浸透した水分子は、アモルファス状の基板301,302の界面に吸収されて酸化に利用され、水酸(OH)基として基板301,302の接合面に結合される。これにより、図6Cに示すように、基板301,302の接合面上の水酸(OH)基が増加する。ステップS14では、基板301,302の接合面に結合する水酸(OH)基同士の水素結合により、基板301,302が仮接合される。仮接合後の基板301,302同士の接合強度は、例えば、約0.2J/m2〜0.5J/m2である。
次に、第1基板301の接合面と第2基板302の接合面とを、両接合面に対して実質的に垂直方向(Z方向)に離間させる(ステップS15)。その後、第1基板301の接合面と第2基板302の接合面とを再度接触させ、基板301,302同士を臨界圧力よりも大きい圧力にて加圧することにより、第1基板301と第2基板302とが接合(本接合)される(ステップS16)。換言すれば、臨界圧力よりも大きい圧力にて第1基板301および第2基板302を互いに対して押圧することにより、基板301,302の最終的な接合が行われる。ステップS16では、基板301,302同士が、例えば約5MPaの圧力にて加圧されることにより、容易に離間することができない程度に接合される。
ステップS16では、接合面同士を接触させた基板301,302を臨界圧力よりも大きい圧力にて加圧した後に、または、臨界圧力よりも大きい圧力にて加圧するのと並行して、基板301,302が加熱されてもよい。基板301,302の加熱は、例えば、図1に示すステージ401,402から熱を伝導させることにより行われる。基板301,302の加熱は、例えば、基板301,302の接合面に光を照射すること等により行ってもよい。
図7A〜図7Cは、ステップS16の基板301,302の接合時における接合面の状態を概念的に示す図である。図7Aに示す多数の水酸(OH)基が結合された基板301,302の接合面が接触すると、図7Bに示すように、水酸(OH)基同士の水素結合が生じる。その後、基板301,302に加えられる上記圧力や熱等により、図7Cに示すように、水(H2O)が基板301,302間から離脱し(すなわち、脱水し)、水素結合が共有結合へと変化することにより、基板301,302同士の接合強度が向上する。ステップS16終了後(すなわち、本接合後)の基板301,302同士の接合強度は、例えば、約1.0J/m2〜2.5J/m2である。
上述のステップS11,S12は、比較的高い真空中にて行われる。ステップS13〜S15は、例えば、真空中にて行われてもよく、大気中にて行われてもよい。ステップS16は、比較的高い真空中にて行われる。なお、ここでいう真空中とは、大気に限らず、任意のガスの減圧環境下を含む。また、ステップS16が行われるよりも前に、ステップS14,S15が複数回繰り返されてもよい。
ステップS16では、必ずしも、基板301,302同士を臨界圧力よりも大きい圧力にて加圧する必要はない。例えば、接合面同士を接触させた基板301,302を臨界圧力以下の圧力にて加圧した後に、または、臨界圧力以下の圧力にて加圧するのと並行して加熱することにより、基板301,302同士が、容易に離間することができない程度に接合されてもよい。あるいは、基板301,302を加圧することなく、所定の温度にて加熱することにより、基板301,302同士が、容易に離間することができない程度に接合されてもよい。
上記臨界圧力とは、それよりも大きい圧力で接合面を押圧すると、接合面の所望の特性が変化し、または、失われる圧力として定義され得る。
例えば、ステップS16において基板301,302間に最終的な接合界面を形成する前に、ステップS14の仮接合工程(接触工程)において基板301,302の接合面に圧力を掛けすぎると、両基板301,302が接合して離間させることができなくなる場合や、離間させることはできたとしても、再度接触させて加圧した際に所望の接合ができなくなる場合がある。そこで、ステップS14の仮接合工程で接合面に印加する圧力を低くすると、所望の接合を行うための表面特性を損なわずに、接触した基板301,302を離間させることができる。このように、仮接合の後に基板301,302を離間し得る最大の圧力を臨界圧力と定義してもよい。
あるいは、基板301,302の仮接合と離間とを複数回繰り返すと、離間させることはできるが、仮接合または仮接合の繰り返しにより、その後、ステップS16の接合工程を行っても、所望の接合強度等の特性を得ることができなくなる場合がある。例えば、ステップS14の仮接合工程において、接触界面の一部で新生表面同士が接触して、局部的にまたは微視的に強固な接合界面が形成されても、比較的小さい力で基板301,302を離間させることが可能な場合がある。しかし、基板301,302自体は離間させることができたとしても、離間により上述の強固に形成された接合界面が破壊する等して基板301,302の表面特性が悪化し、その結果、所望の接合特性が最終的に得られなくなる場合がある。この場合には、仮接合工程において接合面に掛かる圧力を小さくすることで、新生表面の露出や接触を十分に回避することも可能である。このように、仮接合工程において接合面に掛かる圧力が実質的に高いことが原因である場合には、当該圧力を低くすることにより、仮接合と離間とを複数回繰り返しても、最終的に所望の接合強度を得ることが可能になる。このように離間可能で、かつ、最終的に所望の接合強度が得られる仮接合工程における最大の圧力を臨界圧力と定義してもよい。
臨界圧力は、それよりも大きい圧力を基板301,302に掛けると所望の接合を行うことができなくなる圧力と定義されてもよい。
臨界圧力は、基板301,302の接合面を形成する材料、接合面上の表面層の存在の有無、表面層の特性、表面エネルギー等、種々の要因に応じて決定することができる。したがって、本願の接合方法は、図5のステップS11よりも前に、基板301,302の接合面の臨界圧力を決定する工程(図示せず)を有していてもよい。
ステップS14の仮接合工程において基板301,302に印加される圧力は、両基板301,302の接合面に定義される臨界圧力のうち小さい方の臨界圧力以下であることが好ましい。これにより、いずれの接合面に対しても、適切な圧力の印加を確実に行うことができる。一方の基板の接合面に臨界圧力が定義されていない場合には、臨界圧力が定義されている他方の基板の接合面の臨界圧力以下の圧力を、基板301,302に印加してもよい。
臨界圧力は、ステップS14の仮接合工程およびステップS15の離間工程が複数回行われる場合、仮接合工程毎に変化し得る。基板301,302の接合面の接触により、また、接触時の加圧条件や接合面の状況により、接合面における所定の表面層の存在または消滅、微細表面形状等の表面特性は変化し得る。したがって、一の仮接合工程は、次の仮接合工程の臨界圧力に影響を及ぼし得る。ステップS14,S15が複数回行われる場合、ステップS14,S15が1回行われる毎に、基板301,302の接合面の表面状態が検査され、検査結果に基づいて次のステップS14またはステップS16の臨界圧力が定義または計算されてもよい。
例えば、基板301,302の接合面が所定の表面層で覆われている場合、仮接合工程により、当該表面層が部分的に破壊されることで、表面特性が変化することがあり得る。表面特性の変化の一例として、親水化処理が行われた基板301,302の接合面において、仮接合時の接触により水酸基(OH基)の層が一部破壊され、金属の新生表面同士が接触して局部的に強固な接合界面を形成することが考えられる。
また他の例として、仮接合工程前の接合面上に酸化膜層が形成されている場合、仮接合工程により、当該酸化膜層が一部破壊され、同様に、新生表面同士が接触して局部的に強固な接合界面を形成することが考えられる。あるいは、仮接合工程前の接合面上に水酸基(OH基)が形成され、その上に水分子が存在する場合、仮接合工程により、水分子を追いやり水酸基同士で接触する、あるいは水酸基層を突き抜けて新生表面同士が接触して局部的に強固な接合界面を形成することも考えられる。
上記例では、接合強度を臨界圧力に影響を及ぼす特性としたが、これに限られない。例えば、接合強度以外の機械的特性でもよく、あるいは電気的又は化学的特性でもよい。
上述のように、ステップS11〜S16にて基板301,302の接合を行うことにより、基板301,302同士の接合強度を向上することができる。当該接合強度の向上は、上述のように、ステップS12の親水化処理において基板301,302の接合面上に付着した水分子が、ステップS14の仮接合工程において、基板301,302に加えられる圧力(すなわち、臨界圧力以下の圧力)等により水酸基(OH基)として当該接合面に新たに結合し、接合面の単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加することによるものと考えられる。増加した水酸基(OH基)は、ステップS16の接合工程において、基板301,302に加えられる圧力(例えば、臨界圧力よりも大きい圧力)または熱、あるいは、その双方により、基板301,302の強固な接合に寄与する状態に変化すると考えられる。
また、ステップS11〜S16にて基板301,302の接合を行うことにより、基板301,302間のボイドを減少させることができる。具体的には、ステップS14の仮接合工程等において生じたボイドが、ステップS15の離間工程、および、ステップS16における真空中の再接合工程により減少する。これにより、高い接合強度を有し、かつ、ボイドが少ない接合基板を提供することができる。
上述のように、ステップS13の水分子の付着がステップS12とステップS14との間において、または、ステップS12と並行して行われることにより、基板301,302の接合面上の水分子の量を増やすことができる。これにより、ステップS14の仮接合工程において、接合面に結合すると考えられる水酸基(OH基)を増加させることができ、その結果、基板301,302同士の接合強度をさらに向上することができる。なお、基板301,302同士の接合強度を十分に確保することができる場合等、ステップS13は省略されてもよい。
上述のステップS14の仮接合工程は、大気中にて行われることが好ましい。これにより、真空中にてステップS14の仮接合工程が行われる場合に比べて、ステップS16の終了後における基板301,302同士の接合強度を、より向上することができる。
また、ステップS15の離間工程は、比較的高い真空中にて行われることが好ましい。これにより、ステップS16の終了後における基板301,302同士の接合強度を、さらに向上することができる。ステップS15を大気中で行う場合に比べてさらに接合強度が向上する理由は、ステップS15の基板301,302の離間から、ステップS16の真空中における基板301,302の接合までの経過時間が短縮されることによるものと考えられる。
図1に示す基板接合装置100にて上述の基板301,302の接合(ステップS11〜S16)が行われる場合、まず、真空チャンバ200内において、表面活性化処理部610により、第1基板301の第1接合面、および、第2基板302の第2接合面が活性化される(ステップS11)。具体的には、第1基板301の接合面にライン式粒子ビーム源601から粒子ビームが照射されることにより、第1基板301の接合面が活性化される。また、第2基板302の接合面にライン式粒子ビーム源601から粒子ビームが照射されることにより、第2基板302の接合面が活性化される。
続いて、親水化処理部620により、第1基板301の接合面および第2基板302の接合面に対して親水化処理が行われる(ステップS12)。具体的には、ガス供給源621からキャリアガスと水(H2O)との混合ガスが真空チャンバ200に供給され、真空チャンバ200内において、第1基板301の接合面および第2基板302の接合面に水酸基(OH基)が結合され、基板301,302の接合面が親水化される。
基板接合装置100では、ステップS12と並行して、基板温度調節部420による基板301,302の接合面の冷却が行われることにより、当該接合面の周りの雰囲気における相対湿度が増大する。その結果、接合面に対する水の供給量が増大し、水分子が基板301,302の接合面上(例えば、接合面の水酸基層上)に付着する(ステップS13)。ステップS13における水分子の接合面への付着は、ステップS12とステップS14との間に行われてもよい。基板温度調節部420により基板301,302の接合面を冷却することにより、ステップS13における接合面上への水分子の付着を容易に行うことができる。
次に、第1基板301の接合面と第2基板302の接合面とを接触させ、臨界圧力以下の圧力にて基板301,302同士が加圧されることにより、第1基板301と第2基板302とが仮接合される(ステップS14)。基板301,302の仮接合の際には、位置測定部500により基板301,302の相対位置が測定され、第1ステージ移動機構403や第2ステージ移動機構404のアライメントテーブル405等により、基板301,302の相対位置が調節される。これにより、基板301,302の相対位置のずれを2μm程度に抑えることができる。そして、Z方向昇降移動機構406により第2基板302が下降し、第1基板301に接触する。基板301,302間に掛かる圧力はステージ圧力センサ411により測定され、測定結果に基づいてピエゾアクチュエータ412が制御されることにより、基板301,302同士が臨界圧力以下の圧力にて加圧される。
基板301,302の仮接合が終了すると、Z方向昇降移動機構406により第2基板302が上昇し、第1基板301から離間する(ステップS15)。上述のステップS14の仮接合では、基板301,302同士が臨界圧力以下の圧力にて加圧されているため、ステップS15における基板301,302の離間は、基板301,302にダメージを与えることなく容易に行うことができる。
その後、第1基板301の接合面と第2基板302の接合面とを再度接触させ、臨界圧力よりも大きい圧力にて基板301,302同士が加圧されることにより、第1基板301と第2基板302とが接合される(ステップS16)。ステップS16における基板301,302の接合の際にも、位置測定部500により基板301,302の相対位置が測定され、アライメントテーブル405等により基板301,302の相対位置が再度調節される。このように相対位置の調節を繰り返すことにより、基板301,302の相対位置のずれを0.2μm程度に抑えることができる。そして、Z方向昇降移動機構406により第2基板302が下降して第1基板301に接触し、基板301,302同士が臨界圧力よりも大きい圧力にて加圧されることにより、基板301,302同士の最終的な接合が終了する。
上述のように、ステップS16では、Z方向昇降移動機構406により基板301,302同士が臨界圧力以下の圧力にて加圧された後、または、臨界圧力以下の圧力にて加圧するのと並行して、基板温度調節部420により加熱されることにより、基板301,302同士の最終的な接合が行われてもよい。あるいは、基板301,302同士を加圧することなく、基板温度調節部420により所定の温度にて加熱することにより、基板301,302同士の最終的な接合が行われてもよい。
基板接合装置100では、上述のように、基板301,302同士の接合強度を向上することができるとともに、基板301,302間のボイドを減少させることができる。また、基板301,302同士の相対位置精度を向上しつつ基板301,302の接合を行うことができる。基板接合装置100では、ステージ移動機構403,404は、基板301,302の仮接合、離間および接合を行う基板接合機構でもある。
基板301,302に対する表面活性化処理と親水化処理とは、異なる真空チャンバ内にて行われてもよい。図8は、基板接合装置の他の好ましい例を示す正面図である。図8では、基板接合装置の内部の概略構造を示す(図9においても同様)。図8に示す基板接合装置100aでは、真空チャンバ200とは別に、真空ポンプにより排気可能な第2真空チャンバ250(例えば、ロードロックチャンバ)が設けられ、第2真空チャンバ250に親水化処理部620が設けられる。
基板接合装置100aでは、真空チャンバ200(以下、「第1真空チャンバ200」ともいう。)と第2真空チャンバ250とが、開閉可能な真空弁230を介して連結されている。基板接合装置100aでは、基板搬送機構270により、基板301,302が、第1真空チャンバ200と第2真空チャンバ250との間を、大気に晒されることなく搬送される。第1真空チャンバ200では、上記と同様に、基板301,302の接合面に対する表面活性化処理(ステップS11)が行われる。第2真空チャンバ250では、基板301,302の接合面に対する親水化処理および水分子の付着(ステップS12,S13)が行われる。
基板接合装置100aでは、第1真空チャンバ200と第2真空チャンバ250とにより、基板301,302に対する表面活性化処理および親水化処理が行われる真空チャンバシステムが構成される。これにより、基板301,302の親水化処理を行う空間と、基板301,302の表面活性化処理を行う空間とを分けることができる。また、基板301,302の親水化処理を行う空間と、基板301,302の接合を行う空間とを分けることもできる。
当該真空チャンバシステムでは、表面活性化処理が行われた基板301,302の接合面を大気に曝すことなく、当該接合面に対して親水化処理を行うことができる。また、第2真空チャンバ250内の水蒸気等が第1真空チャンバ200へと流入することを抑制し、第1真空チャンバ200内の高い真空度を長時間に亘り維持することが容易となる。さらに、一の基板の接合面に対する表面活性化処理と、他の基板の接合面に対する親水化処理とを、並行して行うことができる。このため、基板接合装置100における基板の処理効率を向上することができる。
基板接合装置100では、ステップS14の仮接合工程は、例えば、真空チャンバ200内が真空の状態にて行われてもよく、第1真空チャンバ200内に大気が導入された状態(すなわち、大気中)にて行われてもよい。第1真空チャンバ200内に大気が導入された状態にてステップS14の仮接合工程が行われることにより、上述のように、真空中にて基板301,302の仮接合が行われる場合に比べて、ステップS16の終了後における基板301,302同士の接合強度を、より向上することができる。
ステップS13における水分子の接合面への付着は、基板301,302の冷却以外の方法により行われてもよい。例えば、基板接合装置100においてステップS12の親水化処理が行われた基板301,302が、基板接合装置100から搬出され、基板接合装置100の外部に設けられた水洗浄部により、基板301,302の接合面に対する水洗浄が行われることにより、ステップS13における水分子の接合面への付着が行われてもよい。また、ステップS12の親水化処理も、基板接合装置100から搬出されて大気に暴露されることにより、あるいは、第2真空チャンバ250内に大気が導入されて大気に暴露されることにより行われてもよい。
図9は、基板接合装置の他の好ましい例を示す正面図である。図9に示す基板接合装置100bでは、図8に示す基板接合装置100aの第1真空チャンバ200からライン式粒子ビーム源および遮蔽部材が省略され、第2真空チャンバ250にRIE(Reactive Ion Etching)機構613が表面活性化処理部610として設けられる。RIE機構613は、第2真空チャンバ250内にて基板を保持するステージ251に設けられた陰極614と、第2真空チャンバ250に反応ガスを供給する反応ガス供給部615とを備える。反応ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、酸素(O2)等が利用される。
RIE機構613は、反応ガス供給部615から第2真空チャンバ250内に供給された反応ガスに電磁波等を付与することにより当該反応ガスをプラズマ化する。また、RIE機構613は、基板を支持するステージ251に設けられた陰極614に高周波電圧を印加する。これにより、基板とプラズマとの間に自己バイアス電位を生じさせ、プラズマ中のイオンやラジカル種を基板に向けて加速して衝突させる。これにより、上述のステップS11における基板の接合面に対する表面活性化処理が行われる。基板接合装置100bでは、基板301,302が1枚ずつ第2真空チャンバ250に搬入され、基板301,302に対する表面活性化処理が順に行われる。
基板接合装置100bでは、RIE機構613による基板301,302の表面活性化処理が行われた後、図8に示す基板接合装置100aと同様に、第2真空チャンバ250においてステップS12の親水化処理が行われる。また、基板接合装置100aと同様に、ステップS13〜S16が行われる。
基板接合装置100bにおける表面活性化処理では、例えば、気圧が約30Pa(パスカル)とされた第2真空チャンバ250に、反応ガス供給部615から20sccmにて反応ガスが供給され、100WのRIEプラズマ処理が約30秒行われることにより、基板301,302の表面活性化処理が行われる。基板接合装置100bでは、基板301,302の表面活性化処理がプラズマにより行われるため、当該表面活性化処理が行われる空間の真空度を比較的低くすることができる。したがって、基板接合装置100bの構造を簡素化することができ、基板接合装置100bの製造コストを低減することができる。一方、基板301,302の接合面が金属と絶縁物の混合材料により形成されており、RIE機構613により接合面における不純物や材料同士の混合が懸念される場合等、上述の粒子ビーム照射による表面活性化処理が好ましい場合もある。
プラズマによる基板301,302の表面活性化処理は、基板301,302に対する親水化処理が行われる空間(例えば、第2真空チャンバ250)とは異なる空間にて行われてもよい。例えば、図10に示すように、プラズマチャンバ617と、電極ステージ618とを備えるプラズマ処理部616が表面活性化処理部610として設けられてもよい。プラズマ処理部616では、例えば、基板301,302に対する表面活性化処理のみが行われる。プラズマチャンバ617および電極ステージ618は、例えば、アルミニウム(Al)により形成される。電極ステージ618は高周波電源に接続され、プラズマチャンバ617は設置される。電極ステージ618とプラズマチャンバ617とは、ガラス等の絶縁体619により電気的に絶縁される。基板301,302(図10では、基板301)は、プラズマチャンバ617内において電極ステージ618上に保持される。電極ステージ618に高周波電圧を印加することにより、上述のRIE機構613と同様に、基板301,302の接合面に対する表面活性化処理が行われる。プラズマ処理部616では、プラズマチャンバ617の上部に、プラズマチャンバ617の内部空間にプラズマを供給するラジカルダウンフロー機構が設けられてもよい。
図11は、基板接合装置の他の好ましい例を示す平面図である。図11に示す基板接合装置100cは、基板処理部101と、水洗浄部102と、仮接合部103と、接合部104とを備える。基板処理部101は、例えば、上述の基板接合装置100a(図8参照)と略同様の構造を有する。基板処理部101では、第1真空チャンバ200において基板301,302の接合面に対する表面活性化処理が行われ、第2真空チャンバ250において基板301,302の接合面に対する親水化処理が行われる。
水洗浄部102は、表面活性化処理および親水化処理が行われた基板301,302の接合面に対する水洗浄を行うことにより、基板301,302の接合面への水分子の付着を行う。水洗浄部102による接合面の水洗浄は、例えば、超音波を付与された水流を、大気中において基板301,302に向けて噴射することにより行われる。基板301,302の接合面への水分子の付着は、基板処理部101において基板温度調節部420により基板301,302の接合面が冷却されることにより行われ、さらに、当該水洗浄部102による水洗浄により行われてもよい。
仮接合部103は、基板301,302の接合面を接触させ、基板301,302同士を臨界圧力以下の圧力にて加圧することにより、基板301,302を仮接合する。仮接合部103は、例えば、図1に示す基板接合装置100の基板支持部400および位置測定部500と略同様の構成を備える。仮接合部103における基板301,302の仮接合が大気中にて行われる場合、仮接合部103には、真空チャンバ等の構成は設けられなくてよい。
接合部104は、例えば、図1に示す基板接合装置100から表面処理部600が省略された構造を有する。接合部104は、仮接合された基板301,302を真空中において離間させる。その後、真空中において基板301,302の接合面を再度接触させ、基板301,302同士を臨界圧力よりも大きい圧力にて加圧することにより、基板301,302を接合する。
基板接合装置100cでは、水洗浄部102において基板301,302の接合面に対して水洗浄を行うことにより、接合面上への水分子の付着を容易に行うことができるとともに、接合面からパーティクル等を除去することもできる。また、仮接合部103において、基板301,302が大気中にて仮接合されることにより、上記と同様に、真空中にて基板301,302の仮接合が行われる場合に比べて、ステップS16の終了後における基板301,302同士の接合強度を、さらに向上することができる。
以下の表1は、様々な条件下で基板同士を接合した場合の基板同士の接合強度および基板間のボイドの多少を示すものである。
表1中の1列目はケース名を示し、2列目はステップS13の水分子の付着処理の有無および付着処理の方法を示す。3列目は、ステップS14の基板の仮接合の有無を示し、4列目は、ステップS15の基板の剥離の有無、および、基板の剥離が行われる場合の雰囲気(大気中または真空中)を示す。5列目は、基板同士の本接合が行われる空間の雰囲気(大気中または真空中)を示す。6列目は、本接合後の基板同士の接合強度を示し、7列目は、本接合後の基板間のボイドの多少を示す。7列目にて「少」と記載されているケースは、基板間のボイドが比較的少ない、または、ボイドが存在しないことを示す。
表1は、SiO2基板同士の接合結果を示すものである。SiO2は、熱酸化膜、CVD、ガラス等を含む。表中には記載していないが、ケース1〜10では、ステップS13よりも前に、高速原子ビーム源(FAB)を用いた粒子ビームの照射による表面活性化処理(ステップS11)、および、上述の親水化処理(ステップS12)が行われる。ケース1〜6は、本願発明との比較のための比較例の実験結果である。ケース7〜10は、本願発明に係る実験結果である。なお、ステップS11における表面活性化処理が高速原子ビーム源(FAB)以外の上述の方法(例えば、イオンビーム源やプラズマ)により行われた場合も、表1と同様の結果が確認された。また、SiO2基板以外の基板(例えば、窒化膜を有する基板、化合物半導体、Lt(タンタル酸リチウム)基板)についても、表1と同様の結果が確認された。
ケース1〜3では、ステップS14,S15は行われず、ステップS12またはステップS13が行われた後の基板を真空チャンバ内にて対向配置させた後、真空引きを行い、真空中にて接合したケースである。ケース1〜3では、接合強度は0.2〜0.3J/m2と比較的低く、不十分な接合といえる。ケース4〜6では、ステップS14,S15は行われず、ステップS12またはステップS13が行われた後の基板が大気中にて接合される。ケース4〜6では、接合強度は2.0〜2.5J/m2と比較的高く十分な接合であるといえるが、基板間のボイドが多い。
ケース7では、ステップS13は行われず、ステップS12の親水化処理が行われた基板同士が大気中にて仮接合され(ステップS14)、大気中にて剥離される(ステップS15)。そして、剥離後の両基板が真空チャンバ内にて対向配置された後、真空引きが行われ、真空中にて本接合される(ステップS16)。ケース8では、ステップS13は行われず、ステップS12の親水化処理が行われた基板同士が大気中にて仮接合される(ステップS14)。そして、仮接合状態の両基板が真空チャンバ内に配置された後に真空引きが行われ、真空中にて基板同士が剥離され、真空中にて本接合される(ステップS15,S16)。ケース9は、ケース8のステップS12とステップS14との間に、冷却による水分子の付着処理(ステップS13)が行われたものである。ケース10は、ケース8のステップS12とステップS14との間に、水洗浄による水分子の付着処理(ステップS13)が行われたものである。
ケース7〜10では、接合強度は1.8〜2.5J/m2であり、ケース1〜3に比べて十分に高く、ケース4〜6と同等である。また、ケース7〜10では、ケース4〜6と異なり、基板間のボイドは少ない(または、実質的に存在しない)。このように、本願発明では、基板同士の接合強度を向上するとともに基板間のボイドを減少させることができる。
上述の基板接合装置100では、様々な変更が可能である。
例えば、表面活性化処理部610の粒子ビーム源601は、ライン式には限定されず、非ライン式の粒子ビーム源が利用されてもよい。
上述のステップS14,S16における基板301,302同士の加圧、および、ステップS15における基板301,302の離間は、Z方向昇降移動機構406以外の構成により行われてもよい。例えば、基板301,302に対して反対電荷を与えることにより、当該電荷による静電気の引力を利用して、電気的に基板301,302同士の加圧が行われてもよい。仮接合された基板301,302の離間は、基板301,302のエッジから面方向に、ブレードを機械的に挿入し、または、水や空気等の流体を吹き込むことにより行われてもよい。
既述のように、基板の材料としては様々なものが採用される。両接合面において接合される材質は、様々なものであってよい。例えば、シリコンに代表される半導体、銅、アルミニウム、金等の金属、酸化珪素、窒化珪素、樹脂等の絶縁物であってもよい。基板接合装置100,100a〜100cでは、様々な材料間で接合を行うことができるため、基板同士の接合の際に、封止剤を用いることなく回路を封止することが実現される。さらには、面接合による基板の積層や大型の基板同士の面接合も実現される。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。