図1には、電力システム10が概略的に示されており、該電力システム10は、1次電源20、電流センサ21、電力コンバータ22、電力バス24、平滑コンデンサ26、電力インバータ28、電気エネルギ貯蔵(EES)システム用コントローラ30、1次電流制御モジュール32、電気エネルギ貯蔵システム充電状態(state−of−charge)(SOC)センサ34、電気エネルギ貯蔵(EES)システム36および駆動コントローラ38を備えている。電気エネルギ貯蔵システム用コントローラ30および1次電流制御モジュール32は、選択的に、電力システム10の電力管理モジュールと呼ばれることがある。電力コンバータ22、電力バス24、平滑コンデンサ26および電力インバータ28は、回生ドライブ29内に含まれている。1次電源20は、電力会社、例えば、商用電源とすることができる。電気エネルギ貯蔵システム36は、電気エネルギを貯蔵することができる1つまたは複数の装置を備えている。エレベータ14は、ロープ44を介して巻上モータ12に接続されたエレベータかご40およびカウンタウエイト42を備えている。
本明細書において説明されるように、電流センサ21によって検出された電流に基づいて巻上モータ12の電力要求に取り組み、充電状態センサ34によって検出された電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態(SOC)を充電状態範囲内に維持するために、エレベータの巻上モータ12、1次電源20および/または電気エネルギ貯蔵システム36の間で交換される電力を制御するように、電力システム10は構成されている。電力システム10は、1次電源20から引き出される電流および1次電源20へ送られる電流の量を制限するように、電気エネルギ貯蔵システム36へ供給される電力および電気エネルギ貯蔵システム36から供給される電力を制御する。さらに、電力システム10は、エレベータの巻上モータ12の電力要求がほぼゼロ、もしくは負のときに回生ドライブ29と電気エネルギ貯蔵システム36との間の電力の供給を制御し、1次電源20の停電が生じたときに、電気エネルギ貯蔵システム36とエレベータの巻上モータ12との間の電力の供給を制御する。
電力コンバータ22および電力インバータ28は、電力バス24によって接続されている。平滑コンデンサ26は、電力バス24の間に接続されている。1次電源20は、電力コンバータ22へ電力を供給するか、もしくは電力コンバータ22から電力を受ける。電流センサ21は、1次電源20と電力コンバータ22との間の電流を測定する。電力コンバータ22は、1次電源20からの三相交流電力を直流電力へ変換するように作動可能な三相電力コンバータである。1つの実施例では、電力コンバータ22は、並列に接続されたトランジスタ50およびダイオード52を有した複数の電力トランジスタ回路を備えている。トランジスタ50の各々は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とすることができる。トランジスタ50の各々の制御電極(つまり、ゲートまたはベース)は、ドライブコントローラ38に接続されている。ドライブコントローラ38は、1次電源20からの三相交流電力を直流出力電力へ変換するように、電力トランジスタ回路を制御する。直流出力電力は、電力コンバータ22によって電力バス24に供給される。平滑コンデンサ26は、電力コンバータ22によって直流電力バス24に供給された整流電力を平滑化する。1次電源20は三相交流電源として示されているが、電力システム10は、単相交流電源および直流電源を含むがこれらに限定されない任意の形式の電源から電力を受けるように適合することができる。
また、電力コンバータ22の電力トランジスタ回路は、電力バス24上の電力を変換し、1次電源20へ供給することもできる。1つの実施例では、ドライブコントローラ38は、電力コンバータ22のトランジスタ50を周期的に切り替えて、1次電源20へ三相交流電力信号を供給するためのゲートパルスを生成するのに、パルス幅変調(PWM)を用いる。この回生構成により、1次電源20の要求が減少する。
電力インバータ28は、電力バス24からの直流電力を三相交流電力へ変換するように作動可能な三相電力インバータである。電力インバータ28は、並列に接続されたトランジスタ54およびダイオード56を有した複数の電力トランジスタ回路を備えている。トランジスタ54の各々は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とすることができる。トランジスタ54の各々の制御電極(つまり、ゲートまたはベース)は、ドライブコントローラ38に接続されており、ドライブコントローラ38は、電力バス24上の直流電力を三相交流出力電力へ変換するように電力トランジスタ回路を制御する。三相交流電力は、電力インバータ28の出力部から巻上モータ12へ供給される。1つの実施例では、ドライブコントローラ38は、電力インバータ28のトランジスタ54を周期的に切り替えて、三相交流電力信号を巻上モータ12へ供給するためのゲートパルスを生成するのに、パルス幅変調を用いる。ドライブコントローラ38は、トランジスタ54へのゲートパルスの周波数および大きさを調整することにより、エレベータ14の移動速度および移動方向を変えることができる。
さらに、電力インバータ28の電力トランジスタ回路は、エレベータ14が巻上モータ12を駆動する際に発生する電力を整流するように作動可能である。例えば、巻上モータ12が電力を発生させている場合、ドライブコントローラ38は、電力インバータ28のトランジスタ54を制御して、発生した電力を整流し直流電力バス24へ供給することができる。平滑コンデンサ26は、電力インバータ28によって電力バス24に供給された整流電力を平滑化する。直流電力バス24上の回生電力は、上述したように、電気エネルギ貯蔵システム36の電気エネルギ貯蔵構成要素を再充電するか、もしくは1次電源20へ戻すように使用され得る。
巻上モータ12は、エレベータかご40とカウンタウエイト42との間で移動速度および移動方向を制御する。巻上モータ12を駆動するのに必要な電力は、エレベータ14の加速度および方向、ならびにエレベータかご40の荷重で変わる。例えば、エレベータかご40が加速されつつあり、荷重がカウンタウエイト42の重量よりも重い状態(つまり、重荷重)で上昇するか、または荷重がカウンタウエイト42の重量よりも軽い状態(つまり、軽荷重)で下降する場合に、巻上モータ12を駆動するのに電力が必要となる。この場合、巻上モータ12の電力要求は、正である。エレベータかご40が減速されつつあり、重荷重で下降しているか、または軽荷重で上昇している場合、エレベータかご40は巻上モータ12を駆動する。この電力要求が負の場合には、巻上モータ12は、三相交流電力を生成し、この電力は、ドライブコントローラ38の制御のもとに電力インバータ28によって直流電力へと変換される。上述したように、この変換された直流電力は、1次電源20へ戻されるか、電気エネルギ貯蔵システム36を再充電するか、および/または電力バス24の間に接続されたダイナミックブレーキ抵抗で放散され得る。エレベータ14が着床しつつあるか、または荷重のバランスがとれた状態で一定の速度で走行している場合、エレベータの電力量をより少なくすることができる。巻上モータ12が駆動せず、電力を生成していない場合は、巻上モータの電力要求は、ほぼゼロである。
1つの巻上モータ12が電力システム10に接続されて示されているが、電力システム10が複数の巻上モータ12に電力を供給するように変更可能であることに留意されたい。例えば、複数の巻上モータ12に電力を供給するように電力バス24の間に複数の電力インバータ28を並列に接続することができる。また、電気エネルギ貯蔵システム36が直流電力バス24に接続されて示されているが、代替的に、電力コンバータ22の三相入力部の1つの相(phase)に電気エネルギ貯蔵システム36を接続することもできる。
電気エネルギ貯蔵システム36は、電力を貯蔵することができる直列または並列に接続された1つまたは複数の装置を備えることができる。ある実施例では、電気エネルギ貯蔵システム36は、対称または非対称のスーパキャパシタを含む少なくとも1つのスーパキャパシタを備えている。他の実施例では、電気エネルギ貯蔵システム36は、少なくとも1つの2次電池または再充電可能な電池を備えており、該電池は、ニッケルカドミウム(NiCd)電池、鉛蓄電池、ニッケル水素(NiMH)電池、リチウムイオン(Li−ion)電池、リチウムイオンポリマ(Li−Poly)電池、鉄電極(iron electrode)電池、ニッケル亜鉛電池、亜鉛/アルカリ/二酸化マンガン・電池、亜鉛臭素電池、バナジウムフロー電池およびナトリウム硫黄電池を備えることができる。電気エネルギ貯蔵システム36は、1つの形式の電気エネルギ貯蔵装置または電気エネルギ貯蔵装置の組み合わせを備えることができる。
図2には、巻上モータ12、1次電源20および電気エネルギ貯蔵システム36の間で交換される電力を管理するためのプロセスを表すフローチャートが示されている。1次電源20と電力コンバータ22との間の(1次電流流れとも呼ばれることもある)電流流れが、電流センサ21によって検出される(ステップ70)。エレベータの巻上モータ12の電力要求が正である期間の間には、1次電流流れは、1次電源20から電力コンバータ22へ流れ、巻上モータの電力要求がゼロである期間の間には、電力が、電力バス24を介して電気エネルギ貯蔵システム36を再充電するように供給される。エレベータの巻上モータ12の電力要求が負の期間の間、または電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態が望ましい充電状態範囲外にあり、電気エネルギ貯蔵システム36からの電力が電力バス24へ戻されるときには、1次電流流れは、電力コンバータ22から1次電源20へ流れることもできる。電流センサ21によって測定された電流測定値が、1次電流制御モジュール32へ供給される。
また、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態(SOC)が、充電状態センサ34によって測定される(ステップ72)。電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態は、電気エネルギ貯蔵システム36の電圧、電流および温度のいずれかまたは全てに基づいて測定される。電気エネルギ貯蔵システム36の測定された充電状態に関連した信号が、1次電流制御モジュール32へ供給される。
次に、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36と回生ドライブ29の電力バス24との間の電流流れの方向を制御するように、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30へ信号を供給する(ステップ74)。1次電流制御モジュール32によって電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30へ供給される信号は、電流センサ21によって測定される1次電流流れと、充電状態センサ34によって測定される電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態とに基づいて供給される。この信号に基づいて、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30は、1次電源20から引き込まれる電流を(1次電流制御モジュール32内に格納され得る)閾値電流よりも低く維持し、かつ充電状態範囲内に電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態を維持することを確実にするように、電気エネルギ貯蔵システム36からの電流の大きさおよび方向を制御する。この制御によって、電力システム10が消費する1次電源20からの電力が減少し、これにより、電力システム10を作動するためのコストが減少する。また、1次電源20と電力コンバータ22との間で交換される電流の量が制御されるので、電力コンバータ22の構成要素の大きさを小型化することもできる。さらに、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態範囲が制御されるので、電気エネルギ貯蔵システム36の寿命が延長される。
作動時には、電力コンバータ22は、電力バス24の電圧を動作電圧に維持するように、1次電源20と電力バス24との間を流れるエネルギを制御する。したがって、電力バス24の電圧が動作電圧を超過しているときには、ドライブコントローラ38は、電力バス24から1次電源20へエネルギを戻すように電力コンバータ22を作動する。一方、電力バス24の電圧が動作電圧よりも下に低下しているときには、ドライブコントローラ38は、1次電源20からエネルギを引き込んで電力バス24の電圧を上昇させるように電力コンバータ22を作動する。
例えば、(電力要求が正のときに短時間のスパイクを生じさせる)エレベータの巻上モータ12の起動時、または電力要求が負の期間の間にエレベータの巻上モータ12が大量の電力を回生しているときに、1次電流が閾値電流を超過することがある。電流センサ21によって検出された1次電流が閾値電流を超過しているときには、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36によって電力バス24へ供給される2次電流を調整し、1次電源20の負担を軽減させるように、電気エネルギ貯蔵システム用コントローラ30に指令する。
例えば、エレベータの巻上モータ12の電力要求が高度に正であるときには、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36から電力バス24へ電力を供給し、1次電源20からの1次電流流れを閾値電流よりも下に低下させるように電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令する。ある実施例では、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態が最大閾充電状態に到達するまで電気エネルギ貯蔵システム36から電力バス24へ電力を供給するように、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令する。これにより、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態が、制限された充電状態範囲内に維持され、電気エネルギ貯蔵システム36の寿命が延長される。また、1次電流を閾値電流よりも下に低下させた状態を維持するために、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態に関係なく、電力バス24へ電力を供給し続けるように、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令することもできる。
エレベータの巻上モータ12の電力要求が大いに(highly)負であるときには、1次電流制御モジュール32は、電力バス24から電気エネルギ貯蔵システム36へ電力を引き込み、1次電源20への1次電流流れを閾値電流よりも下に低下させるように電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令する。ある実施例では、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態が最大閾充電状態に到達するまで(制限された充電状態範囲内に充電状態を維持するために)電力バス24から電気エネルギ貯蔵システム36へ電力を引き込むように、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令する。また、1次電流を閾値電流よりも下に低下させた状態を維持するために、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態に関係なく、電力バス24から電力を引き込み続けるように電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令することもできる。
エレベータの巻上モータ12の電力要求がほぼゼロであるとき(即ち、巻上モータ12が駆動せず、電力を回生していないとき)には、1次電流制御モジュール32は、充電状態センサ34によって測定される電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態を監視する。1次電流制御モジュール32は、電力バス24と電力を交換し、望ましい充電状態範囲内に電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態を収めるように電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令する。ある実施例では、1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム36の目標充電状態を設定し、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30は、目標充電状態に到達するように電力バス24と電気エネルギ貯蔵システム36との間で交換されるエネルギを制御する。電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態を目標充電状態へ回復させることにより、電気エネルギ貯蔵システム36は、1次電流が閾値電流を超過しているときに1次電源20を補充するのに十分な電力を維持する。
1次電源20の停電が生じた場合には、電気エネルギ貯蔵システム36は、巻上モータ12の要求の全てに取り組む。1次電流制御モジュール32は、電気エネルギ貯蔵システム用制御モジュール30に指令するための電気信号を生成し、この電気信号は、要求が正の期間の間には、巻上モータ12を駆動するのに必要なエネルギの全てを供給し、要求が負の期間の間には、巻上モータ12が生成するエネルギの全てを貯蔵するように指令するものである。ある実施例では、電気エネルギ貯蔵システム36は、電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態に関係なく、巻上モータ12の要求の全てに取り組む。他の実施例では、制限された充電状態範囲内に電気エネルギ貯蔵システム36の充電状態があるときに、巻上モータ12の要求に取り組む。
以上のことを要約すると、本発明は、エレベータの巻上モータに接続された回生ドライブと、回生ドライブに接続された1次電源および電気エネルギ貯蔵(EES)システムとの間の電力供給の管理に関する。電気エネルギ貯蔵システムの充電状態(SOC)と、1次電源と回生ドライブとの間の1次電流流れとが測定される。そして、電気エネルギ貯蔵システムと回生ドライブとの間の2次電流流れの方向および大きさが、1次電流流れと、電気エネルギ貯蔵システムの充電状態との関数として制御される。この制御によって、エレベータシステムが消費する1次電源からの電力が減少し、これにより、エレベータシステムを作動するためのコストが減少する。また、1次電源と回生ドライブとの間で交換される電流の量が制御されるので、回生ドライブの構成要素の大きさを小型化することもできる。
本発明の好ましい実施例を説明したが、当業者であれば、本発明の真意および範囲を逸脱することなく、形態および詳細に関して変更が可能であることを理解するであろう。