JP2012242122A - 自動分析装置及び自動分析プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置の精度管理を実現する。
【解決手段】試料と試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する。複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を記憶部に蓄積する。記憶部に蓄積された所定数のパラメータ又は検査値に基づいて、パラメータ又は検査値に対応する参考データの分布図を作成する。次に、参考データの分布図に近似するように、複数の回帰関数を適用して得られる複数の回帰関数候補に対応する曲線を、分布図に個別に重ね合わせて示す画面を、表示画面上に複数並べて提示する。
【選択図】図10
【解決手段】試料と試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する。複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を記憶部に蓄積する。記憶部に蓄積された所定数のパラメータ又は検査値に基づいて、パラメータ又は検査値に対応する参考データの分布図を作成する。次に、参考データの分布図に近似するように、複数の回帰関数を適用して得られる複数の回帰関数候補に対応する曲線を、分布図に個別に重ね合わせて示す画面を、表示画面上に複数並べて提示する。
【選択図】図10
Description
本発明は、試料を定性又は定量分析する自動分析装置及び当該処理機能を実現するプログラムに関する。例えば臨床検査分析時の反応をモニタリングする機能を有する自動分析装置及び当該処理機能を実現するプログラムに関する。
臨床検査用の自動分析装置は、試料と試薬を一定量分注して反応させた後、一定時間に亘り反応液の吸光度を測定し、測定結果に基づいて測定対象物質の検査値(濃度や活性値)を求めている。検査結果は、医師による、患者の病状把握や治療効果の判定など、各種診断を行う上での重要な役割を担っている。そのため、自動分析装置の測定が正しく行われたことを保証するための精度管理が必須となっている。
一般的な精度管理方法として、濃度が既知の精度管理試料を測定し、測定結果を予め定めた許容範囲と比較する方法がある。精度管理試料の測定と比較は、一般(患者)検体の測定の合間に定期的に実行される。精度管理試料の測定結果が許容範囲内にあれば、精度管理試料の直前回の測定から今回の測定までの間に実行された一般検体の測定は、正しく実行されたと判断することができる。
個々の一般検体の測定の精度を保証するものとして、反応過程データ(反応過程曲線)を用いる精度管理方法がある(例えば、特許文献1及び2を参照)。反応過程データとは、試薬と試料の反応後、複数回計測される吸光度の時系列データのことを指す。臨床検査の測定方法には、大きく分けてエンドポイント法とレート法の2種類があり、それに伴い反応過程曲線も異なっている。
エンドポイント法は、主に試料に含まれるたんぱく質、脂質などの成分の濃度を測定する際に用いられる。試料中の成分と試薬が反応して生成される物質は、時間と共に一定量に漸近するため、計測値も時間と共に一定値に漸近する。
レート法は、主に試料に含まれる酵素成分の活性を測定する際に使用され、酵素自体の濃度ではなく、その活性値が測定される。活性値の測定は、試薬と一定量の基質を、試料に添加した状態で行われ、酵素が基質を消費して変化する要素を試薬によって測定する。酵素反応速度は、基質濃度がある程度高いと、理論的上限値に漸近する。生化学項目測定用の試薬には、充分な量の基質が含まれている。このため、試料と試薬の反応が正常に行われていれば、その反応は、一般的に時間変化に対して計測値が一定量ずつ直線的に変化する。
特許文献1及び2には、化学反応モデルを基に導出された近似式を用いて反応過程曲線を近似し、得られた近似式パラメータ等を予め定めた基準となるパラメータの分布(正常パラメータの分布又は正常パラメータと異常パラメータの分布)と比較する方法が示されている。これらの方法では、近似式パラメータ等が正常な範囲に含まれている場合、その測定が正しく行われたと判断する。なお、特許文献1にはエンドポイント法に関する精度管理方法が記載されており、特許文献2にはレート法に関する精度管理方法が記載されている。
ところが、精度管理試料を用いる精度管理方法は、最新の精度管理試料の測定結果で異常値が検出されたとしても、前回の精度管理試料を用いた測定からどの段階で異常が生じたのかを判断することができない。このため、その間に測定された全ての一般検体について測定精度を保証できないという問題がある。この問題を解決するため、精度管理試料の測定頻度を増やす方法もあるが、一般的に精度管理試料や試薬は高価である。このため、測定頻度を増やす方法には、ユーザーの費用負担が大きくなる、という別の問題がある。
なお、特許文献1及び2には、一般検体の反応過程データを個別に判定する方法が記載されている。この方法は、精度管理試料を用いないため、上記の問題を解決することができる。なお、これらの特許文献には、正常と異常の判定に使用する基準パラメータの分布を予め設定しておくことが示されている。
しかし、反応過程曲線は、検査項目が同一であったとしても、測定に使用する試薬が異なると(例えばメーカー、自家製、ロットが異なると)、反応過程曲線の形状が同じになるとは限らない。そのため、基準パラメータの分布は、試薬メーカーやロット等の変更の度、作成し直す必要がある。
また、異常なデータは、患者に由来する異常、装置に由来する異常、試薬に由来する異常等、様々な原因に起因して発生する上に、その出現頻度自体も非常に少ない。従って、基準パラメータの分布の設定には、長期に亘るデータの蓄積が必要とされる。しかし、前述の通り、基準パラメータの分布は、試薬ロット等の変更によっても変化してしまう。つまり、基準パラメータの分布を、その分布形状が変わらない期間内に作成することは、一般に困難である。このため、特許文献1及び2に示す方法による精度管理には、依然として正確性に制約がある。
そこで、1つの発明では、試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置において、(a)試料と試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する測定点データ取得部と、(b)複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を蓄積する第1の記憶部と、(c)第1の記憶部に蓄積された所定数のパラメータ又は検査値に基づいて、パラメータ又は検査値に対応する参考データの分布図を作成するデータ処理部と、(d)複数の回帰関数を格納する第2の記憶部と、(e)参考データの分布図に近似するように、複数の回帰関数を適用して得られる複数の回帰関数候補に対応する曲線を、分布図に個別に重ね合わせて示す画面を、表示画面上に複数並べて提示する出力部とを有するものを提案する。
また、1つの発明では、試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置において、(a)試料と試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する測定点データ取得部と、(b)複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を蓄積する第1の記憶部と、(c)第1の記憶部に蓄積された所定数のパラメータ又は検査値に基づいて、パラメータ又は検査値に対応する参考データの分布図を作成するデータ処理部と、(d)除外判定用の閾値を格納する第2の記憶部と、(e)閾値に基づいて、参考データの分布図に含まれる除外データ候補を表示画面上に提示する出力部と、(f)参考データの分布図から除外するデータか否かを示す判定結果を、参考データの付属情報として格納する第3の記憶部とを有するものを提案する。
本発明によれば、試薬ロット等に変更が生じた場合でも、ユーザーは客観的な情報に基づいて、判定基準として使用する参考データの分布を作成することができる。その結果、個々の試薬に対する精度管理の正確性を向上させることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。なお、後述する装置構成や処理動作の内容は発明を説明するための一例である。本発明には、後述する装置構成や処理動作に既知の技術を組み合わせた発明や後述する装置構成や処理動作の一部を既知の技術と置換した発明も含まれる。
以下に説明する実施例は、大きく分けて以下の3つの処理機能から構成される。
(1)参考データの分布図の作成及び異常データの除外
(2)参考データの分布図に対する乖離判定と乖離判定結果の提示
(3)正常データ/異常データを識別可能な分布図の作成
(1)参考データの分布図の作成及び異常データの除外
(2)参考データの分布図に対する乖離判定と乖離判定結果の提示
(3)正常データ/異常データを識別可能な分布図の作成
処理機能の1つは、乖離判定等に使用される参考データの作成処理に関する。課題で述べたように、参考データの分布図は、試薬メーカーやロット等の変更が起きたタイミングで作成し直す必要がある。他には、一週間、一カ月等のように、ユーザーが指定した期間毎に参考データを作成し直しても良い。また、テストデータが1000データ蓄積されたら等のように、ユーザーが指定したテストデータ数毎に、参考データの分布図を作成し直しても良い。なお、参考データの分布図が変更されると、適用される回帰関数も一般に変化する。
処理機能の1つは、装置(プログラム)が参考データの分布図を用いて実行した乖離判定の結果を、ユーザーに提示する処理に関する。ユーザーが、一日の最後や検査結果を医師等に報告する前のタイミング等に、正常範囲から乖離すると判定されたテストデータを確認可能にすることにより、精度管理の正確性を向上させることができる。
処理機能の1つは、正常データ/異常データの分布図を作成する処理に関する。試薬ロットの変更等に伴い参考データの分布図を作成し直した後も、継続的に正常データと異常データを識別可能な分布図を作成することにより、長期的な精度管理の正確性を向上させることができる。
[実施例1]
[装置構成]
以下、実施例1に係る自動分析装置の装置構成及び処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。図2に、前述した分析機能を実装する生化学自動分析装置の概略構成例を示す。
[装置構成]
以下、実施例1に係る自動分析装置の装置構成及び処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。図2に、前述した分析機能を実装する生化学自動分析装置の概略構成例を示す。
生化学自動分析装置は、サンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、反応槽4、検体サンプリング機構5、ピペッティング機構6、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、コンピュータ(PC)10、記憶装置12、制御部13、圧電素子ドライバ14、攪拌機構コントローラ15、試料容器16、円形ディスク17,19、試薬容器18、保冷庫20、反応容器21、反応容器ホルダ22、駆動機構23、サンプリングプローブ24、支承軸25,28、アーム26,29、試薬分注プローブ27、固定部31、ノズル33、上下駆動機構34を有している。
記憶装置12には、分析パラメータ、各試薬ボトルの分析可能回数、最大分析可能回数、キャリブレーション結果、分析結果等が記憶される。
生化学自動分析装置における試料の分析は、サンプリング、試薬分注、撹拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理の順番に実行される。
サンプルディスク1は、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。サンプルディスク1上には、複数の試料容器16が円周上に並んで設置される。試料容器16は、分析順に従ってサンプリングプローブ24の下まで移動される。試料容器16中の検体は、検体サンプリング機構5に連結された試料用ポンプにより反応容器21の中に所定量ずつ分注される。
試料が分注された反応容器21は、反応槽4の中を第1試薬の添加位置まで移動される。移動された反応容器21には、試薬分注プローブ27に連結された試薬用ポンプ(図示せず)により試薬容器18から吸引された試薬が所定量だけ加えられる。第1試薬が添加された後、反応容器21は撹拌機構7の位置まで移動され、最初の撹拌が行われる。このような試薬の添加と撹拌が、例えば第1〜第4試薬について行われる。
内容物が撹拌された反応容器21は、光源から発せられる光束中に配置される。光束の一部は反応容器21を通過し、一部は内容物で吸収される。吸収の度合いは、例えば多波長光度計で構成される測光機構8により検知される。測光機構8は、時間の経過と共に検出された検体に関する吸収の度合いを測定点データ(吸光度信号)として制御部13に出力する。
制御部13は、後述するデータ処理を通じ、参考データの作成、除外データの判定、乖離データの判定、正常/異常パターンの作成等を実行する。制御部13で作成された参考データ、除外データ、乖離データ等は全て記憶装置12に記憶され、コンピュータ10に付属する表示装置に表示される。測光の終了した反応容器21は、洗浄機構9の位置まで搬送され、洗浄の後、次の分析に使用される。
図4に、当該処理機能を実現する制御部13の内部構成例を示す。図4は、該当する処理機能を実現するプログラムをハードウェアの観点から表している。図4に示す制御部13は、吸光度データ取得部410、検査値算出部415、近似式/評価パラメータ算出部420、参考データ作成部425、乖離判定部435、表示部440、正常/異常分布図作成部445、これらを相互に接続するデータバス450で構成される。
図4に示す各部は、データバス450を通じ、相互にデータを受け渡すことができる。なお、制御部13を構成する機能ブロックは、制御部13以外のハードウェアやCPUで構成しても良い。勿論、制御部13を構成する機能ブロックは、同一のCPU内にソフトウェアモジュールとして実装しても良い。
[処理動作]
本実施例では、制御部13において実行される(1)参考データの作成処理手順と、(2)乖離判定処理手順と乖離判定結果の確認処理手順について説明する。
図1に、参考データの作成処理手順(除外データの判定処理手順を含む)を示す。
本実施例では、制御部13において実行される(1)参考データの作成処理手順と、(2)乖離判定処理手順と乖離判定結果の確認処理手順について説明する。
図1に、参考データの作成処理手順(除外データの判定処理手順を含む)を示す。
[参考データの作成処理(図1)]
[ステップS3]
制御部13は、近似式パラメータ、評価パラメータ、検査値の算出と記録を実行する。この処理には、吸光度データ取得部410、検査値算出部415等が用いられる。
[ステップS3]
制御部13は、近似式パラメータ、評価パラメータ、検査値の算出と記録を実行する。この処理には、吸光度データ取得部410、検査値算出部415等が用いられる。
図3に、当該処理の詳細手順を示す。ある検査項目の測定が開始されると、ステップS300において、近似式/評価パラメータ算出部420が、検査項目と試薬コードの組合せに対応した最適な近似式を選択し読み出す。選択対象としての吸光度の時間変化を表す複数の近似式は、記憶装置12に予め記憶されている。選択可能な近似式として、本実施例は、例えば(数1)〜(数8)で示す関数を想定する。
(数1) x=a * t + b + c * exp(−k * t)
(数2) x=a * t + b + e / (t + d)
(数3) x=a * t + b + w / {exp(u * t) + v}
(数4) x=a * t + b + p * log{1 + q * exp(r * t)}
(数5) x=a0−a1 * exp(−k * t)
(数6) x=a0−a1 * exp(−k1 * t) − a2 * exp(−k2 * t)
(数7) x=a + k / (t + b)
(数8) x=a + b / (exp (k * t) + c)
(数1) x=a * t + b + c * exp(−k * t)
(数2) x=a * t + b + e / (t + d)
(数3) x=a * t + b + w / {exp(u * t) + v}
(数4) x=a * t + b + p * log{1 + q * exp(r * t)}
(数5) x=a0−a1 * exp(−k * t)
(数6) x=a0−a1 * exp(−k1 * t) − a2 * exp(−k2 * t)
(数7) x=a + k / (t + b)
(数8) x=a + b / (exp (k * t) + c)
なお、各関数において、tは時刻、xは吸光度を表している。また、a、b、c、d、e、k、p、q、r、u、v、w、a0、a1、k1、k2は、近似式パラメータである。
(数1)から(数4)に示す関数は主にレート法に適用され、(数5)から(数8)に示す関数は主にエンドポイント法に適用される。勿論、これらに限ることはないし、これ以外の関数を近似式として用意することも可能である。
なお、近似式/評価パラメータ算出部420による近似式の選択は、検査項目と試薬コードの組み合わせに基づいて自動的に実行される。当該機能の実現には、例えば検査項目と試薬コードの組み合わせ毎に最も適した近似式を対応付けたテーブルを使用する。当該テーブルは、例えば記憶装置12に記憶しておけば良い。近似式/評価パラメータ算出部420は、このテーブルを検査項目と試薬コードの組み合わせによって検索し、組み合わせに対応した最適な近似式を選択する。
図5に、このテーブルの例を示す。テーブル500は、列510、520及び530で構成される。列510には検査項目が記述され、列520には試薬の種類を表す試薬コードが記述され、列530には検査項目と試薬コードの種類に対応付けられた最適な近似式が記述されている。
この実施例の場合、近似式/評価パラメータ算出部420は、検査項目と試薬コードの組み合わせに基づいてテーブル500を検索し、検査項目と試薬コードの組合せに対応した最適な近似式を選択する。なお、テーブル500に記憶された対応関係の内容は、ユーザーが変更可能な構成としても良い。
吸光度は、時間の経過に伴って複数回測定される。次のステップS310では、吸光度データ取得部410が、1回の測定又は複数回の測定平均の吸光度データを、測光機構8から入力する。すなわち、吸光度データは制御部13に入力される。試薬と検体の反応に伴う色調変化に吸光度が大きく変化する波長(主波長)の光と、吸光度がほとんど変化しない波長(副波長)の光を用いる測定方式においては、主波長光の吸光度と副波長光の吸光度との差を吸光度データとして入力する。
ステップS315では、吸光度データ取得部410が、主反応試薬が添加されたかどうかを判定する。主反応試薬が添加されていないと判定された場合、処理プロセスは、ステップS310に戻り、次の吸光度データの入力が行われる。主反応試薬の添加が判定されるまで、以上の判定動作が繰り返し実行される。ここで、主反応試薬とは、複数の試薬を用いる反応において、主たる吸光度変化をもたらす試薬(通常は最終の試薬)を指す。主反応試薬が添加された場合には、処理プロセスはステップS320に移行する。
ステップS320では、入力された吸光度データを、吸光度データ取得部410が記憶装置12に記憶する。
ステップS325では、吸光度データ取得部410が、最後の吸光度データが記憶されたか否かを判定する。ここで、最後の吸光度データが記憶装置12に記憶されていないと判定された場合、処理プロセスはステップS310に戻る。このループ動作(吸光度データの入力と記憶)は、必要なデータ数が記憶装置12に記憶されるまで繰り返し実行される。吸光度データ取得部410により必要なデータ数が蓄積されたと判定された場合、処理プロセスはステップS330に進む。
ステップS330では、ステップS300において選択された近似式によって表される吸光度の時間変化と、実際の吸光度の時間変化との差がなるべく小さくなるように、近似式/評価パラメータ算出部420が、数式中のパラメータの値を算出する。具体的には、測定結果として記憶された吸光度データと、近似式により算出される対応時点の吸光度データとの二乗誤差がなるべく小さくなるように、数式中のパラメータ値を算出する。パラメータ値の算出には、既存の最小二乗計算方法が利用可能である。様々な形式の数式に対応可能な方法として、例えば最急降下法により二乗誤差が最小となるパラメータ値を算出する方法を用いることができる。
更に、ステップS330において、近似式/評価パラメータ算出部420は、評価パラメータの算出を行う。評価パラメータには、例えば近似式により算出される吸光度(近似値)と実際に測定された吸光度(実測値)との差(誤差)の平均値、誤差の二乗平均値、誤差の最大値等を用いれば良い。
また、例えば以下に示す(数9)に示すように、(数1)から(数8)に示した近似式パラメータを組合せて様々な計算を行うことで得られる値を用いれば良い。
(数9) A0 =a0 − a1
(数9) A0 =a0 − a1
なお、(数9)は、(数5)に示す近似式パラメータを用いてエンドポイント法の初期吸光度(A0とする)を示す評価パラメータ値を得るための数式例である。また例えば反応過程曲線の形状を示すパラメータを用いても良い。
図6は、レート法の反応過程曲線の形状を示す評価パラメータを説明する図である。図6において、横軸110は反応開始からの経過時間を示し、縦軸120は吸光度を示す。曲線210は、近似式により求められる吸光度変化の近似曲線を示す。直線220は、曲線210が漸近する直線である。また、横軸110上の点230は、曲線210が直線220に十分漸近する時刻Tlを示し、横軸110の0〜Tlの範囲がラグタイム部に相当する。この場合、Tlを評価パラメータとして用いることができる。
ここで、ラグタイム部とは、レート法において、検体の濃度、撹拌の状況、反応温度などの理由から、反応速度が一定(直線)になるまでに出現することのある曲線部を指す。また、十分漸近した時刻とは、例えば微小な値εを予め定めておき、曲線210と直線220との差がε以下になった時刻として定義する。εは一定値としても良いし、初期吸光度や吸光度の変化幅に応じて設定しても良い。例えば初期吸光度に定数を乗じた値、又は、初期吸光度と最終吸光度の差に定数を乗じた値をεとしても良い。
また、十分漸近した時刻は、微小な値δを定めておき、曲線210と直線220の傾きの差がδ以下になった時刻として定義しても良い。この場合、δは一定値としても良いし、直線220の傾きに応じて設定しても良い。例えば直線220の傾きに定数を乗じた値をδとしても良い。
なお、評価パラメータとその計算方法は、記憶装置12に予め記憶しておくものとする。また、近似式/評価パラメータ算出部420による評価パラメータの選択は、検査項目と試薬コードの組み合わせに基づいて自動的に実行される。機能の実現には、例えば検査項目と試薬コードの組み合わせと評価パラメータの対応関係をテーブルとして記憶装置12に記憶しておけば良い。近似式/評価パラメータ算出部420は、このテーブルを検査項目と試薬コードの組み合わせに基づいて検索し、各組み合わせに対応する評価パラメータの組合せを選択する。
図7に、このテーブルの例を示す。テーブル700は、列710、720及び730で構成される。列710には検査項目が記述され、列720には試薬の種類が記述され、列730には検査項目と試薬コードの種類に対応付けられた評価パラメータの組合せが記述される。図中の記号“○”は採用を示し、記号“×”は不採用を示す。評価パラメータは、一つも選択しなくても良いし、一つ又は複数を組合せて選択しても良い。また、評価パラメータの全部を選択しても良い。この実施例の場合、近似式/評価パラメータ算出部420は、検査項目と試薬コードの組み合わせに基づいてテーブル700を検索し、検査項目と試薬コードの組合せに対応付けられている評価パラメータの組み合わせを選択する。なお、テーブル700に記憶された対応関係の内容は、ユーザーが変更可能な構成としても良い。
ステップS335では、近似式/評価パラメータ算出部420が、検査項目と試薬コードの組合せ毎に、近似式パラメータ値と評価パラメータ値を記憶装置12に記憶する。
ステップS340では、検査値算出部415が、得られた吸光度データから検量線に基いて検査値を算出する。検量線データは、予め記憶装置12に記憶されている。
ステップS345では、検査値算出部415が、検査項目と試薬コードの組み合わせ毎に算出された検査値を記憶装置12に記憶する。
[ステップS5]
図1の説明に戻る。ステップS5において、参考データ作成部425が、指定された検査項目と試薬コードの組み合わせによって記憶装置12を検索し、組み合わせに対応した近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を読み出す。
図1の説明に戻る。ステップS5において、参考データ作成部425が、指定された検査項目と試薬コードの組み合わせによって記憶装置12を検索し、組み合わせに対応した近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を読み出す。
[ステップS6]
ステップS6では、参考データ作成部425が、読み出された近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値のデータがフラグ付きデータであるか否かを判定する。フラグ付きデータとは、例えば測定する試料の分析量が調整済みであることを指す。または、装置がアラームを付与したデータを指す。アラームには、例えばリニアリティチェックがある。リニアリティチェックは、レート法の分析項目において、吸光度変化の直線性をチェックする機能である。リニアリティチェックでは、一定の測光範囲の前半と後半の吸光度変化量の差が求められ、その差が予め指定したリニアリティチェック値を超えている場合には直線でないと判断し、データにアラームが付与される。
ステップS6では、参考データ作成部425が、読み出された近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値のデータがフラグ付きデータであるか否かを判定する。フラグ付きデータとは、例えば測定する試料の分析量が調整済みであることを指す。または、装置がアラームを付与したデータを指す。アラームには、例えばリニアリティチェックがある。リニアリティチェックは、レート法の分析項目において、吸光度変化の直線性をチェックする機能である。リニアリティチェックでは、一定の測光範囲の前半と後半の吸光度変化量の差が求められ、その差が予め指定したリニアリティチェック値を超えている場合には直線でないと判断し、データにアラームが付与される。
また、アラームの他の例には、ABSリミットがある。測定する試料の濃度又は酵素活性値が異常に高く、試薬の測定可能範囲を超えた場合には、試薬中の基質又は補酵素が測光時間前に全て消費されて吸光度値が急激に変化し、正しい測定値を得ることができない。そのため、吸光度の上限又は下限の反応限界値(ABSリミット)を設定し、反応限界値を超えたことが検知された場合に、データにアラームを付与する。また、精度管理試料やコントロール検体など、市販されている検体データも、フラグ付きデータとするのが望ましい。なぜならば、市販試料と一般検体では、粘性等の性質が異なっており、反応過程曲線の形状が異なる場合があるからである。
こういったフラグ付きデータの反応過程曲線は、正常な反応過程曲線とは形状が異なる可能性が高い。そのため、これらのデータを含めて参考データを作成してしまうと、正常な分布が得られない可能性が高い。よって、ステップS6で判定を行うことで、フラグ付きデータを参考データに含めないようにするのが良い。なお、フラグ付きデータの定義は、予め設定しておいても良いし、ユーザーが自由に選択する手法を採用しても良い。前者の機能の実現には、例えばフラグ付きデータの定義を記憶装置12に記憶しておけば良い。なお、フラグ付きデータは、前述したアラームに限らず、自動分析装置の機能に応じて定義すれば良い。ステップS6でフラグ付きデータと判定された場合は、ステップS5に戻り、近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値の読み出しを行う。ステップS6でフラグ付きデータではないと判定された場合は、ステップS7に移行する。
[ステップS7]
ステップS7では、読み出された近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を、参考データ作成部425が、記憶装置12内の別のエリアに記憶する。
ステップS7では、読み出された近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を、参考データ作成部425が、記憶装置12内の別のエリアに記憶する。
[ステップS10]
ステップS10では、参考データ作成部425が、参考データの作成に必要な数の近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値が記憶されたか否かを判定する。記憶されていないと判定された場合、参考データ作成部425はステップS5に戻り、必要データ数が揃うまで近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値の読み出しと記憶を繰り返す。必要な数の近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値が蓄積されたと、参考データ作成部425が判定した場合、処理プロセスはS15に進む。
ステップS10では、参考データ作成部425が、参考データの作成に必要な数の近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値が記憶されたか否かを判定する。記憶されていないと判定された場合、参考データ作成部425はステップS5に戻り、必要データ数が揃うまで近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値の読み出しと記憶を繰り返す。必要な数の近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値が蓄積されたと、参考データ作成部425が判定した場合、処理プロセスはS15に進む。
[ステップS15]
ステップS15では、参考データ作成部425が、蓄積された近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を用いて分布図を作成する。
ステップS15では、参考データ作成部425が、蓄積された近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を用いて分布図を作成する。
図8は、参考データの分布図を説明する図である。図8において、横軸810は評価パラメータA1を示し、縦軸820は評価パラメータErrを示す。評価パラメータA1は、エンドポイント法における反応過程データの吸光度変化量を示す。例えば(数5)の近似式を用いる場合、評価パラメータA1は近似式パラメータa1と同一となる。評価パラメータErrは、各時刻について、近似式により算出される吸光度(近似値)と実際に測定された吸光度(実測値)との差の平均二乗誤差を示す。記号830は、各データの評価パラメータの値の組み合わせ座標を示す。
なお、参考データの分布図の縦軸820と横軸810にどの評価パラメータを用いるかは、予め記憶装置12に記憶しておく。例えば検査項目と試薬コードの組み合わせ毎に適した評価パラメータの組合せをテーブルとして記憶装置12に記憶しておけば良い。参考データ作成部425は、このテーブルを検査項目と試薬コードの組み合わせに応じて検索し、組み合わせに対応した評価パラメータの組合せを選択する。
図9に、テーブルの例を示す。テーブル900は、列910、920、930及び940で構成される。列910には検査項目が記述され、列920には試薬の種類を示す試薬コードが記述され、列930と列940には近似式パラメータ、評価パラメータ又は検査値の組み合わせが記述される。列930には、図8の縦軸820に対応する近似式パラメータ、評価パラメータ又は検査値が記述される。列940には、図8の横軸810に対応する近似式パラメータ、評価パラメータ又は検査値が記述される。なお、テーブル900に記憶された対応関係の内容は、ユーザーが変更可能な構成としても良い。
[ステップS20]
ステップS20では、参考データ作成部425が、現処理対象と項目及び試薬コードの組み合わせが同じ参考データを過去に作成したことがあるか否かを判定する。過去に作成したことがない場合、ステップS25に移行する。
ステップS20では、参考データ作成部425が、現処理対象と項目及び試薬コードの組み合わせが同じ参考データを過去に作成したことがあるか否かを判定する。過去に作成したことがない場合、ステップS25に移行する。
[ステップS25]
ステップS25では、参考データ作成部425が、記憶装置12に記憶されている参考データの分布図作成用に格納されている回帰関数の全てを読み出し、各回帰関数を参考データに近似させるパラメータの値を算出する。この実施例では、反応過程曲線を近似するための式を“近似式”、参考データの分布図を近似するための式を“回帰関数”として区別する。
ステップS25では、参考データ作成部425が、記憶装置12に記憶されている参考データの分布図作成用に格納されている回帰関数の全てを読み出し、各回帰関数を参考データに近似させるパラメータの値を算出する。この実施例では、反応過程曲線を近似するための式を“近似式”、参考データの分布図を近似するための式を“回帰関数”として区別する。
回帰関数には、1次式、2次式、3次式等の多項式や指数関数、累乗関数、対数関数など公知の関数を用意すれば良い。また、これらの関数を複数組み合わせた式にしても良い。勿論、これ以外の関数を回帰関数として用意することも可能である。回帰関数のパラメータの計算には、既存の最小二乗計算方法等を用いれば良い。また、参考データ作成部425は、回帰関数のパラメータの算出以外に回帰精度を評価するための指標も算出する。指標には、R二乗値(ある現象がその回帰関数で表される確率。直線回帰の場合は相関係数のこと)や実測値と近似値との残差の平均値、残差の二乗平均値等を用いれば良い。算出後、表示部440が、参考データの分布図と回帰関数、近似評価指標をコンピュータ10に付属する表示装置に表示する。
図10に、図8に示す参考データの分布図に対し、ステップS25で回帰関数と近似評価指標を算出した結果の出力例を示す。表示画面1010には、各回帰関数に対応する処理結果画面が6つ表されている。各処理結果画面は、各回帰関数を参考データに近似させた結果得られる回帰関数式1040、それぞれの近似精度を表す評価指標1050、参考データの分布図1030で構成される。図10の場合、指標は、R二乗値と残差の二乗平均値である。また、回帰関数式1040に対応する曲線は、ユーザーによる判断が容易なように、分布図1030に重ねて表示される。
表示画面1010には、最も近似精度が良かった回帰関数式1040が視覚的に確認できるように表示される。例えば近似精度の良いものから順番に表示し、最も近似精度が良い回帰関数の適用結果を示す処理結果画面を枠線1060で囲んで表示する。図10の場合、表示画面1010の上段側に表示される処理結果画面(回帰関数)の方が下段側に表示される処理結果画面(回帰関数)よりも近似精度が相対的に高く、左側に表示される処理結果画面(回帰関数)の方が右側に表示される処理結果画面(回帰関数)よりも近似精度が相対的に高いものとする。
図10に示すように、各回帰関数に対応する曲線を参考データの分布図に重ねて示す処理結果画面を、同一画面上に複数並べて表示することにより、ユーザーは、回帰関数の違いによる近似精度の違いを画面上で対比的に確認することができる。これにより、参考データの分布図の特徴を反映する回帰関数を客観的に決定することができる。
[ステップS30]
ステップS30では、ユーザーが、近似処理により得られた回帰関数候補に対応する各曲線と参考データの分布図との重なり具合の違いと、各曲線の近似精度を表す評価値1050を参考に、ステップS15で作成された参考データの分布図に最適な回帰関数式1040を選択する。このように、表示画面1010には、ユーザーによる最適な回帰関数式1040の選択を支援する効果が期待される。
ステップS30では、ユーザーが、近似処理により得られた回帰関数候補に対応する各曲線と参考データの分布図との重なり具合の違いと、各曲線の近似精度を表す評価値1050を参考に、ステップS15で作成された参考データの分布図に最適な回帰関数式1040を選択する。このように、表示画面1010には、ユーザーによる最適な回帰関数式1040の選択を支援する効果が期待される。
[ステップS32]
ステップS32では、参考データ作成部425が、ユーザーの選択した回帰関数を取得し、その後、ステップS50に進む。
ステップS32では、参考データ作成部425が、ユーザーの選択した回帰関数を取得し、その後、ステップS50に進む。
[ステップS35]
前述のステップS20において、参考データ作成部425が、現処理対象と項目及び試薬コードの組み合わせが同じ参考データを過去に作成したことがあると判定した場合、ステップS35に移行する。
前述のステップS20において、参考データ作成部425が、現処理対象と項目及び試薬コードの組み合わせが同じ参考データを過去に作成したことがあると判定した場合、ステップS35に移行する。
ステップS35では、参考データ作成部425が、回帰関数の種類を選択する。図11は、ステップS35で実行される回帰関数の種類の選択を説明するフローチャートである。
ステップS1100において、参考データ作成部425は、現処理対象と項目及び試薬コードの組み合わせが同じ参考データを作成した際に使用した回帰関数の種類を、記憶装置12から読み出す。
ステップS1120では、参考データ作成部425が、回帰関数の種類が複数か否かを判定する。回帰関数の種類が1種類の場合、参考データ作成部425はステップS1130に進み、回帰関数の種類を記憶装置12の別のエリアに記憶する。
これに対し、ステップS1120で回帰関数の種類が複数であると判定された場合、参考データ作成部425はステップS1150に進む。
ステップS1150では、参考データ作成部425が、過去に最も多く採用された回帰関数の種類と最近採用された回帰関数の種類が同じか否かを判定する。同じと判定された場合、参考データ作成部425はステップS1160に進み、過去に最も多く採用され、かつ、最近採用された回帰関数の種類を記憶装置12の別のエリアに記憶する。
これに対し、ステップS1150で違うと判定された場合、参考データ作成部425はステップS1170に進み、過去に最も多く採用された回帰関数の種類と最近採用された回帰関数の種類の両方を記憶装置12の別のエリアに記憶する。
[ステップS40]
ステップS40では、参考データ作成部425が、ステップS35で選択した回帰関数を用いて参考データの近似処理を実行する。近似計算には、既存の最小二乗計算方法等を用いれば良い。また、ステップS25の場合と同様、近似精度を評価するための指標を算出しても良い。近似計算後、表示部440が、参考データの分布図と回帰関数を算出した場合には、近似評価指標をコンピュータ10に付属する表示装置に表示する。
ステップS40では、参考データ作成部425が、ステップS35で選択した回帰関数を用いて参考データの近似処理を実行する。近似計算には、既存の最小二乗計算方法等を用いれば良い。また、ステップS25の場合と同様、近似精度を評価するための指標を算出しても良い。近似計算後、表示部440が、参考データの分布図と回帰関数を算出した場合には、近似評価指標をコンピュータ10に付属する表示装置に表示する。
図12は、図8に示した参考データの分布図に対し、回帰関数と近似評価指標を算出し結果の出力例を示す。表示画面1210には、ステップS40で算出された参考データの分布図1220と、過去の参考データの分布図1230を表示する。ここで、過去の参考データには、最近のデータを表示すれば良い。
ステップS35で2種類の回帰関数が選択された場合には、それぞれに対応する分布図と、各回帰関数を適用した過去データのうち最も現在に近いデータの分布図を表示すれば良い。図12に示す表示画面1210を用意することにより、ユーザーは、過去の参考データの分布図を参照しながら、今回の参考データの近似精度を評価することができる。このため、次のステップS45で、ユーザーが最適な回帰関数を判定するのを支援することができる。
[ステップS45]
ステップS45では、ユーザーが近似結果を参照しながら、提示された回帰関数を採用するか否かを判定する。採用する場合には、前述したステップS32が実行される。すなわち、参考データ作成部425は、ユーザーが決定した回帰関数を取得し、その後、ステップS50に進む。その際、ステップS40で回帰関数が2種類ある場合には、どちらか一方の回帰関数を選択する。その場合は、ステップS32で、参考データ作成部425が、ユーザーが選択した回帰関数を取得した後、ステップS50に進む。
ステップS45では、ユーザーが近似結果を参照しながら、提示された回帰関数を採用するか否かを判定する。採用する場合には、前述したステップS32が実行される。すなわち、参考データ作成部425は、ユーザーが決定した回帰関数を取得し、その後、ステップS50に進む。その際、ステップS40で回帰関数が2種類ある場合には、どちらか一方の回帰関数を選択する。その場合は、ステップS32で、参考データ作成部425が、ユーザーが選択した回帰関数を取得した後、ステップS50に進む。
一方、ステップS45で、ユーザーが提示された回帰関数を採用しないと判定した場合、参考データ作成部425はステップS25に進み、適用可能な全ての回帰関数に対する近似処理を実行する。その際、図10の表示に関し、ユーザーが望む場合には、過去の参考データの分布図を表示できるようにしておくことが望ましい。例えばボタン1070を表示画面1010上に設定しておく。表示画面1010上でユーザーがボタン1070を押下すると、図12に示したような過去の参考データの分布図が表示される。
[ステップS50]
ステップS50では、参考データ作成部425は、ユーザーが選択又は決定した参考データの分布図、回帰関数、近似精度指標を記憶装置12に記憶する。
ステップS50では、参考データ作成部425は、ユーザーが選択又は決定した参考データの分布図、回帰関数、近似精度指標を記憶装置12に記憶する。
[ステップS52]
ステップS52では、参考データ作成部425が、参考データに含めない除外データを選択するか否かの決定をユーザーに促す画面を提示する。当該画面は、表示部440により、コンピュータ10に付属する表示装置に表示される。
ステップS52では、参考データ作成部425が、参考データに含めない除外データを選択するか否かの決定をユーザーに促す画面を提示する。当該画面は、表示部440により、コンピュータ10に付属する表示装置に表示される。
[ステップS55]
ステップS55では、ユーザーが除外データを選択するか否かを判定する。ユーザーが除外データを選択しないと判定した場合、参考データ作成部425はステップS75に進む。一方、ユーザーが除外データを選択すると判定した場合、参考データ作成部425はステップS60に進む。
ステップS55では、ユーザーが除外データを選択するか否かを判定する。ユーザーが除外データを選択しないと判定した場合、参考データ作成部425はステップS75に進む。一方、ユーザーが除外データを選択すると判定した場合、参考データ作成部425はステップS60に進む。
[ステップS60]
ステップS60では、参考データ作成部425が、参考データに含めない除外データ候補の選択を行う。除外データ候補の選択は、例えば参考データの分布図に用いているパラメータに対する外れデータを用いれば良い。ここで、外れデータとは、例えば一つのパラメータの分布に閾値を設け、その閾値を平均値±標準偏差(SDとする)の2倍とし、この範囲外のデータとすれば良い。閾値は、予め記憶装置12に記憶しておく。例えば検査項目と試薬コード、参考データに用いるパラメータの組み合わせ毎に適した閾値をテーブルとして記憶装置12に記憶しておけば良い。参考データ作成部425は、このテーブルを検査項目と試薬コード、参考データに用いるパラメータの組み合わせによって検索し、組み合わせに対応した閾値を選択する。
ステップS60では、参考データ作成部425が、参考データに含めない除外データ候補の選択を行う。除外データ候補の選択は、例えば参考データの分布図に用いているパラメータに対する外れデータを用いれば良い。ここで、外れデータとは、例えば一つのパラメータの分布に閾値を設け、その閾値を平均値±標準偏差(SDとする)の2倍とし、この範囲外のデータとすれば良い。閾値は、予め記憶装置12に記憶しておく。例えば検査項目と試薬コード、参考データに用いるパラメータの組み合わせ毎に適した閾値をテーブルとして記憶装置12に記憶しておけば良い。参考データ作成部425は、このテーブルを検査項目と試薬コード、参考データに用いるパラメータの組み合わせによって検索し、組み合わせに対応した閾値を選択する。
図13に、このテーブルの例を示す。テーブル1300は、列1310、1320、1330及び1340で構成される。列1310には検査項目が記述され、列1320には試薬コードが記述され、列1330には参考データ作成に用いる近似式パラメータ、評価パラメータ又は検査値の種類が記述され、列1340には除外データ候補を選択するための閾値が記述されている。なお、テーブル1300に記憶された対応関係の内容は、ユーザーが変更可能な構成としても良い。
また、ステップS60で参考データ作成部425が選択する除外データ候補は、ステップS50で決定した回帰関数から外れているデータとしても良い。ここで、回帰関数から外れているデータとは、例えば回帰値±標準偏差の2倍から外れるデータとすれば良い。閾値は、図13と同様、記憶装置12に予め記憶しておく。上記の方法等で除外データ候補を選択したら、表示部440が除外データ候補をコンピュータ10に付属する表示装置に表示する。
図14Aは、ステップS60で選択された除外データ候補の表示例を示す。表示画面1400には、除外データを選択する前の参考データの分布図と近似精度指標で構成される処理結果画面(上段左端)と、複数の除外方法に対応する参考データの分布図と近似精度指標で構成される処理結果画面(下段左端、下段中央、下段右端)を表示する。
なお、個々の除外方法に対応する処理結果画面を幾つ表示するかについては、予め設定しておいても良いし、ユーザーが登録しても良い。記号1410を含む正方形の記号は元のデータ(参考データに含めるデータ)を示し、記号1420、1421及び1422を含むひし形の記号は除外データ候補を示す。また、範囲1430は、参考データから除外するデータ候補を選択するための閾値を示す。
なお、パターン1で示す処理結果画面(下段左端)は、評価パラメータErrについて平均値±標準偏差の2倍を閾値として除外データ候補を選択する場合を示す。パターン2で示す処理結果画面(下段中央)は、評価パラメータA1について平均値±標準偏差の2倍を閾値として除外データ候補を選択した場合を示す。パターン3で示す処理結果画面(下段右端)は、回帰関数について回帰値±標準偏差の2倍を閾値として除外データ候補を選択した場合を示す。除外データ候補の表示はこれに限らず、パターン1〜パターン3を複数組み合わせた場合を表示しても良いし、他の除外データ候補の選択法の結果を表示しても良い。
また、現処理対象と項目及び試薬コードの組み合わせが同じ参考データを過去に作成したことがある場合には、過去の参考データの分布図1460(上段中央)も表示画面1400に表示する。その際、過去の参考データで除外したデータが分かるように表示する。例えば、過去の参考データの分布図1460に示したように、参考データに含めたデータ1461(正方形の記号)と除外したデータ1462(ひし形の記号)をマークの色や形状等で区別できるようにすると良い。
なお、過去のデータに関しては、ステップS50で記憶された過去の参考データの分布図を表示しても良いし、過去の参考データを用いて乖離を判定した全検体データの分布図を表示しても良い。その際も、乖離と判定されたデータが分かるように表示する。
[ステップS65]
ステップS65では、ユーザーが参考データの分布図(図14Aの上段左端)と、除外データ候補を明示した参考データの分布図(図14Aの下段左端、下段中央、下段右端)と、存在する場合には過去の参考データ又は乖離判定された全データの分布図(図14Aの上段中央)と、各データの反応過程曲線(図14Aの上段右端)とを確認しながら最適な除外データを選択する。
ステップS65では、ユーザーが参考データの分布図(図14Aの上段左端)と、除外データ候補を明示した参考データの分布図(図14Aの下段左端、下段中央、下段右端)と、存在する場合には過去の参考データ又は乖離判定された全データの分布図(図14Aの上段中央)と、各データの反応過程曲線(図14Aの上段右端)とを確認しながら最適な除外データを選択する。
例えば図14Aでは、ユーザーが「除外データ候補A」を表す記号1420を画面上でクリックすると、その除外データの反応過程曲線1440(図14Aの上段右端)が表示部440によって表示される。当該反応過程曲線1440は、表示画面1400上に表示されることが好ましいが、別画面に表示されても構わない。反応過程曲線1440を確認することにより、「除外データ候補A」の反応過程曲線には、不連続な測定値があることが分かる。ユーザーは除外データ候補を順に確認していく。
図14Bに、「除外データ候補B」を表す記号1421と、「除外データ候補C」を表す記号1422の反応過程データを、表示画面1400とは別の画面に表示する例を示す。「除外データ候補B」の反応過程曲線1441は正常であるが、「除外データ候補C」の反応過程曲線1442は吸光度がばらついていることが分かる。
なお、除外データ候補に対応する複数の反応過程曲線を表示画面1400上に同時に表示しても良い。同時に表示する反応過程曲線の数を幾つにするかは、予め定めておいても良いし、ユーザーが設定できるようにしても良い。また、除外データ候補の反応過程曲線を重ねて表示するようにしても良い。その場合、どの反応過程曲線がどの候補に対応するのか分かるように色で区別したり、マークの形で区別したりできるようにすると良い。また、並べて表示でも重ねて表示でも、除外候補以外のデータも同時に表示されるようにしておくと良い。
この説明では、ユーザーが全ての除外データ候補を確認した上で、「除外データ候補A」だけを除外したいと考えたとする。その場合、図14Aに示す3つのパターンのうちパターン3をユーザーが選択すれば良い。
また、ユーザーが全ての除外データ候補を確認した上で、「除外データ候補A」と「除外データ候補C」を除外したいと考えたとする。その場合、ユーザーは図14Aに示す3つのパターンのうちパターン3を選択し、更にパターン3上の「除外データ候補C」に対応するデータをクリックしてデータの種別を除外データに変更する。
変更方法には、例えば図14Cに示すように、ユーザーが対象データを選択するとメニュー画面1450が元の表示に重ねて表示され、ユーザーがメニュー画面1450に表示された個別の設定項目を選択できるようにしておけば良い。
なお、図14Aでは、表示画面1400上で、参考データ作成部425が提示した除外データ候補以外のデータをユーザーがクリックした場合にも、クリックされたデータに対応する反応過程曲線(図中上段の右から2つ目のグラフ)が表示されるようにする。ユーザーは、気になるデータの反応過程曲線を実際に確認し、除外したいと考えたならば図14Cの場合と同様の方法により、データの種類を除外データに変更できるようにする。その反対に、除外データの設定を解除したい場合にも、同様の操作によりデータ種類の変更を可能とすることが望ましい。
更に、除外データに関しては、除外の理由(異常の種類)をユーザーが選択又は入力する。選択又は入力は、例えばメニュー画面1470を用いれば良い。メニュー画面1470には、考えられる異常情報(装置由来、試薬由来、検体由来)が選択項目として予め表示されるようにしておく。ユーザーは、除外データ候補を確認する際に、各項目を選択又は入力できる。
メニュー画面1470の画面構成は、ユーザーが自由に設定できるようにしても良い。また、メニュー画面1470に文字入力欄を設け、ユーザーが自由に入力できるようにしても良い。
図14A〜図14Cに示す表示画面を用意することにより、ユーザーは、統計処理に基いて客観的にデータを参考データから除外することができる。また、ユーザーは、一つ一つの反応過程曲線を確認しながら除外データを選択することができる。このため、最適な除外データだけを選択することができる。最適な除外データを選択できるということは、信頼性の高い参考データを作成できるといった効果につながる。
[ステップS68]
ステップS68では、ユーザーが選択した除外データを、参考データ作成部425が取得する。
ステップS68では、ユーザーが選択した除外データを、参考データ作成部425が取得する。
[ステップS70]
ステップS70では、参考データ作成部425が、ユーザーが選択した除外データと除外理由を記憶装置12に記憶する。
ステップS70では、参考データ作成部425が、ユーザーが選択した除外データと除外理由を記憶装置12に記憶する。
[ステップS75]
ステップS75では、参考データ作成部425が、乖離判定に用いる基準範囲を設定する。基準範囲は、ユーザーが選択した除外データ以外の全ての参考データが正常と判定されるように設定する。例えば以下のように設定する。
ステップS75では、参考データ作成部425が、乖離判定に用いる基準範囲を設定する。基準範囲は、ユーザーが選択した除外データ以外の全ての参考データが正常と判定されるように設定する。例えば以下のように設定する。
参考データに含まれる全データの回帰線からの残差を計算し、最大の残差値(Emax )を求める。該残差値から(数10)を用い、基準範囲である回帰値(Eave )±標準偏差(SD)のn倍となるnを求める。
(数10) n ≧|(Emax − Eave )|/ SD
(数10) n ≧|(Emax − Eave )|/ SD
なお、記号||は絶対値を示し、nは正数、かつ、(数10)を満たす最小値とすると良い。または、予め目安として、ユーザーがnの数値(hとする)を設定しておき、該数値hに一番近く、かつ、(数10)を満たす正数をnとしても良い。
この他、基準範囲は、次のような方法により設定しても良い。ユーザーが選択した除外データのうち回帰線からの残差が最も小さい残差値(Emin )を求める。該残差値から(数11)を用いて基準範囲である回帰値(Eave )±標準偏差(SD)のm倍となるmの範囲を求める。
(数11)|(Emax − Eave)|/ SD ≦ m ≦|(Emin − Eave)|/ SD
(数11)|(Emax − Eave)|/ SD ≦ m ≦|(Emin − Eave)|/ SD
なお、記号||は絶対値を示し、mは正数とする。基準範囲に用いるnは、mを満たす正数からユーザーが自由に設定できるようにすると良い。
また、これらの設定方法に限らず、基準範囲は、回帰関数と参考データに含むデータとの距離から算出した範囲や、分布の軸に用いている近似式パラメータ、評価パラメータ又は検査値と参考データに含むデータとの距離から算出した範囲を用いて設定しても良い。
また、基準範囲は、一つ又は複数の範囲を組合せて設定しても良い。例えば図14Aにおいて、ユーザーが「除外データ候補A」と「除外データ候補C」を除外データと選択した場合の基準範囲は、近似式パラメータA1と回帰関数を用いて設定すれば良く、“A1>(A1の平均値−標準偏差のk倍)、かつ、回帰値±標準偏差のp倍”とすれば良い。なお、kとpは正数を示す。
[ステップS80]
ステップS80では、参考データ作成部425が、乖離判定に用いる基準範囲を記憶装置12に記憶する。
ステップS80では、参考データ作成部425が、乖離判定に用いる基準範囲を記憶装置12に記憶する。
図1に示す処理手順により作成された参考データは、記憶装置12のデータベースに格納される。
図22A〜図22Cに、データベースの構成例を示す。データベースは、3つのテーブルから構成される。
図22Aに示すテーブル2300は、各データの参考データに含めるか否かの判定結果と、「除外データ候補」と判定された場合の理由を格納したテーブルを示す。テーブル2300は、列2301、2302、2303、2304、2305、2306、2307及び2308で構成される。
列2301にはサンプルIDが、列2302には検査項目が、列2303には参考データIDが、列2304には参考データに用いた近似式パラメータ値、評価パラメータ値又は検査値が、列2305にはユーザーが参考データに含めるか否か判定した結果が、列2306にはユーザーが乖離判定した結果が、列2307には参考データからサンプルが除外された理由が、列2308には乖離と判定された場合の乖離理由が格納される。
なお、列2301のサンプルIDは、データが一意に定まるようにID付けされている。また、列2304には、参考データの分布図に用いた近似式パラメータ値、評価パラメータ値又は検査値を(横軸、縦軸)の座標で格納すれば良い。列2306と列2308に関する詳細は後述する。
図22Bに示すテーブル2310は、参考データIDと、その参考データを格納したテーブルを示す。テーブル2310は、列2311、2312で構成される。列2311には参考データIDが、列2312には参考データを構成するサンプルIDが格納される。
図22Cに示すテーブル2320は、参考データの回帰関数と乖離判定に用いる基準範囲を格納したテーブルを示す。列2321、列2322、列2323及び列2324で構成される。列2321には参考データIDが、列2322には回帰関数の種類が、列2323には参考データの分布図から定められた回帰関数パラメータが、列2324には乖離判定に用いる基準範囲が格納される。
[乖離判定処理手順と乖離判定結果の確認処理(図15)]
以上説明したように、図1に示す参考データの作成処理手順を用いれば、ユーザーは、試薬メーカーやロット等が変更になる度に作成し直す必要のある参考データの作成処理(分布図の作成処理、回帰関数曲線の選択処理、除外データの除去処理、基準範囲の設定処理)を客観的に設定することができるようになる。
以上説明したように、図1に示す参考データの作成処理手順を用いれば、ユーザーは、試薬メーカーやロット等が変更になる度に作成し直す必要のある参考データの作成処理(分布図の作成処理、回帰関数曲線の選択処理、除外データの除去処理、基準範囲の設定処理)を客観的に設定することができるようになる。
図15に、乖離判定処理手順と乖離判定結果の確認処理手順を示す作成された参考データを用いてテストデータの乖離を判定する処理手順を示す。
[ステップS3]
当該処理では、図1のステップS3と同じ処理が実行される。すなわち、制御部13は、近似式パラメータ、評価パラメータ、検査値を算出する。
当該処理では、図1のステップS3と同じ処理が実行される。すなわち、制御部13は、近似式パラメータ、評価パラメータ、検査値を算出する。
[ステップS1500]
ステップS1500では、乖離判定部435が、テストデータの近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を記憶装置12から読み出す。
ステップS1500では、乖離判定部435が、テストデータの近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値を記憶装置12から読み出す。
[ステップS1510]
ステップS1510では、乖離判定部435が、テストデータに該当する参考データの分布図、回帰関数、基準範囲を記憶装置12から読み出す。
ステップS1510では、乖離判定部435が、テストデータに該当する参考データの分布図、回帰関数、基準範囲を記憶装置12から読み出す。
[ステップS1520]
ステップS1520では、乖離判定部435が、テストデータの乖離を判定する。テストデータの近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値が基準範囲内の場合、乖離判定部435は、テストデータは乖離していないと判定する。一方、テストデータの近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値のいずれかが基準範囲外の場合、乖離判定部435は、テストデータは乖離データであると判定する。
ステップS1520では、乖離判定部435が、テストデータの乖離を判定する。テストデータの近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値が基準範囲内の場合、乖離判定部435は、テストデータは乖離していないと判定する。一方、テストデータの近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値のいずれかが基準範囲外の場合、乖離判定部435は、テストデータは乖離データであると判定する。
[ステップS1530]
ステップS1530では、乖離判定部435が、乖離していると判定されたデータを記憶装置12に記憶する。
ステップS1530では、乖離判定部435が、乖離していると判定されたデータを記憶装置12に記憶する。
ユーザーは、一日の最後や検査結果を医師に報告する前などのタイミングで、乖離と判定されたデータの確認を行う。ユーザーが乖離データを確認すると、表示部440が乖離データ確認画面をコンピュータ10に付属する表示装置に表示する。
図16A〜図16Cに、乖離データの確認画面例を示す。図16Aに示す表示画面の横軸1600は評価パラメータA1を示し、縦軸1605は評価パラメータErrを示す。記号1610は参考データを示し、関数1620は参考データの回帰関数を示し、範囲1630は基準範囲を示す。
記号1640は、テストデータを示す。記号1650は、乖離と判定されたテストデータを示す。乖離と判定されたデータ1650は、基準範囲内に収まったテストデータ1640とは区別できるように表示する。例えばマークの色や形状で区別させれば良い。図16Aの場合、記号1640は白抜きのひし形により、記号1650は黒のひし形により表される。なお、ユーザーが乖離と判定したデータを、クリック操作により画面上で選択すると、そのデータの反応過程曲線が表示部440によりコンピュータ10に付属する表示装置に表示される。
反応過程曲線は、図16Bに示す表示画面1660や図16Cに示す表示画面1665のように、対応する乖離判定結果の表示画面と同じ画面上に表示することが好ましい。もっとも、反応過程曲線を、乖離判定結果とは別画面に表示しても良い。
なお、反応過程曲線を表示する場合には、表示画面1660(図16B)に示すように、乖離すると判定されたデータの反応過程曲線1670と、参考データ又は基準範囲内に収まったデータの反応過程曲線1675を重ねて表示するのが望ましい。当該表示手法の採用により、乖離すると判定された反応過程曲線の乖離の程度や理由をユーザーが容易に確認することができる。
また、表示画面1665(図16C)に示すように、乖離すると判定されたデータの反応過程曲線1670と、参考データ又は基準範囲内に収まったデータの反応過程曲線1675を同一画面上に複数並べて表示しても良い。ここで、参考データ又は基準範囲内に収まったデータは、ユーザーが自由に選択して表示できるようにすれば良い。
なお、表示画面1665(図16C)では、乖離したデータの反応過程曲線1670と、参考データ又は基準範囲内に収まったデータの反応過程曲線1675とが区別できるように表示することが好ましい。例えばマークの色や形状で区別可能とすれば良い。
更に、乖離すると判定されたデータに関しては、乖離の理由をユーザーが選択又は入力できることが好ましい。選択用又は入力用の画面には、例えばメニュー画面1680を用いれば良い。メニュー画面1680には、考えられる異常情報(装置由来、試薬由来、検体由来)が選択項目として予め表示されるようにしておく。ユーザーは、乖離データ候補を確認する際に、各項目を選択又は入力できる。
メニュー画面1680の画面構成は、図14に示したメニュー画面1470と同じ構成で良い。乖離すると判定されたデータの反応過程曲線1670を確認することにより、ユーザーは、当該データには不連続な測定値があることを画面上で確認することができる。この場合、ユーザーは、メニュー画面1680に用意された項目のうち“不連続な測定値”を選択する。
また、乖離すると判定されたデータについても、ユーザーの判断により、乖離判定を解除(基準範囲内と判定)できることが望ましい。その場合には、図1のステップS75に戻り、基準範囲の設定をやり直せば良い。ユーザーが判定した結果は、記憶装置12に記憶される。
乖離判定の結果と乖離の理由は、除外判定の結果と除外の理由と同様に、記憶装置12のデータベース(図22Aに示すテーブル)に格納される。列2301にはサンプルIDが、列2302には検査項目が、列2303には乖離判定に用いた参考データIDが、列2304には乖離判定に用いた近似式パラメータ値、評価パラメータ値又は検査値が、列2306にはステップS1520で乖離判定した結果が、列2308には乖離と判定した場合の乖離理由が格納される。
[変形例]
本実施例では、処理の全てを制御部13で実行する例を説明した。しかし、自動分析装置の制御部13以外の処理装置を使用して、同様の処理を実行することも可能である。例えばコンピュータ(PC)10内で実行されるソフトウェア処理として実施例1に示した処理を実行することも可能である。また、記憶装置12としてコンピュータ(PC)10内部の記憶装置を使用することも可能である。
本実施例では、処理の全てを制御部13で実行する例を説明した。しかし、自動分析装置の制御部13以外の処理装置を使用して、同様の処理を実行することも可能である。例えばコンピュータ(PC)10内で実行されるソフトウェア処理として実施例1に示した処理を実行することも可能である。また、記憶装置12としてコンピュータ(PC)10内部の記憶装置を使用することも可能である。
[まとめ]
本実施例で説明した参考データの作成方法の採用により、ユーザーは、試薬メーカーやロット等が変更になる度に作成し直す必要のある参考データ(分布図の作成処理、回帰関数曲線の選択処理、除外データの除去処理、基準範囲の設定処理)を客観的な情報に基づいて設定することができるようになる。また、試薬メーカーやロット等が変更になる度に、最適な参考データを作成することができるようになるため、精度管理の正確性が向上する。
本実施例で説明した参考データの作成方法の採用により、ユーザーは、試薬メーカーやロット等が変更になる度に作成し直す必要のある参考データ(分布図の作成処理、回帰関数曲線の選択処理、除外データの除去処理、基準範囲の設定処理)を客観的な情報に基づいて設定することができるようになる。また、試薬メーカーやロット等が変更になる度に、最適な参考データを作成することができるようになるため、精度管理の正確性が向上する。
[実施例2]
[装置構成]
続いて、実施例2に係る自動分析装置の装置構成及び処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例の場合も、自動分析装置は生化学自動分析装置であるものとする。従って、その装置構成は、実施例1と同じであるものとする。すなわち、図2に示す装置構成を有している。また、制御部13以外の動作は、実施例1と同じである。従って、制御部13以外の詳細な説明は省略する。
[装置構成]
続いて、実施例2に係る自動分析装置の装置構成及び処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例の場合も、自動分析装置は生化学自動分析装置であるものとする。従って、その装置構成は、実施例1と同じであるものとする。すなわち、図2に示す装置構成を有している。また、制御部13以外の動作は、実施例1と同じである。従って、制御部13以外の詳細な説明は省略する。
[処理動作]
本実施例に係る制御部13は、(2)乖離判定処理手順と乖離判定結果の確認処理手順に関し、実施例1とは異なる処理動作を実行する。本実施例の場合、全ての近似式パラメータについて参考データを作成する。また、その作成の際、参考データの分布図の横軸は、全て検査値とする。
本実施例に係る制御部13は、(2)乖離判定処理手順と乖離判定結果の確認処理手順に関し、実施例1とは異なる処理動作を実行する。本実施例の場合、全ての近似式パラメータについて参考データを作成する。また、その作成の際、参考データの分布図の横軸は、全て検査値とする。
図17に、乖離判定手順を示す。なお、図17のうち、実施例1の図15と対応する処理ステップには同じ符号を付して示している。図17に示す処理プロセスのうち、ステップS3、ステップS1500〜ステップS1520までの処理は、図15におけるステップS3、ステップS1500〜ステップS1520までの処理と同一である。
ステップS1700では、乖離判定部435が、乖離していると判定したデータに対し、乖離しない(基準値範囲内に収まる)場合の予測反応過程曲線(理想の反応過程曲線とする)の近似式パラメータを参考データの回帰関数から算出する。
図18Aは、例えば(数5)の近似式を用いて近似式パラメータを算出し、近似式パラメータa0と検査値を用いて作成した参考データにおいて乖離と判定された例を示す。なお、本実施例では、その他の近似式パラメータa1、kに関しては基準範囲内と判定されたものとする。
図18Aにおいて、横軸1800は検査値を示し、縦軸1805は近似式パラメータa0を示す。記号1840は参考データを示し、関数1810は参考データの回帰関数を示す。範囲1820は関数1810に対する基準範囲を示す。記号1830は、乖離すると判定されたテストデータを示す。関数1810は、回帰関数式1815により表される。任意の検査値について、理想の反応過程曲線を示す近似式パラメータa0は、近似関数式1815より(数12)により算出することができる。
(数12) 理想の反応過程曲線のa0(理想)=0.0794×検査値1830+4.043
なお、検査値1830は、乖離データ(記号1830)の検査値を示す。
(数12) 理想の反応過程曲線のa0(理想)=0.0794×検査値1830+4.043
なお、検査値1830は、乖離データ(記号1830)の検査値を示す。
以上説明したように、参考データの回帰関数を用いれば、理想の反応過程曲線を示す近似式パラメータが求まる。また、理想の反応過程曲線のエラーバーも同時に算出される。エラーバーは、参考データのばらつきとして、参考データの回帰関数からの距離のばらつき(標準偏差)を求めれば良い。または、乖離判定に用いる基準範囲としても良い。
ステップS1710では、乖離判定部435が、判定した乖離データと理想の反応過程曲線を示す近似式パラメータ、理想の反応過程曲線のエラーバーを記憶装置12に記憶する。
ユーザーは、一日の最後や検査結果を医師に報告する前などのタイミングにおいて、乖離すると判定されたデータの確認を行う。ユーザーが乖離データの確認を実行すると、表示部440が乖離データ確認画面をコンピュータ10に付属する表示装置に表示する。図18B及び18Cに、乖離データの確認画面例を示す。図18Bに示す表示画面1850は、参考データの分布図(左図)上において、ユーザーが乖離データ(記号1830)を選択した場合に、表示部440がコンピュータ10に付属する表示画面上に表示する。表示画面1850の右画面には、乖離データ(記号1830)に対応する反応過程曲線1835が表示される。すなわち、乖離判定結果と同じ画面上に、反応過程曲線1835が表示される。このように、乖離判定結果と反応過程曲線1835を同じ画面上に表示しても良いが、それぞれを別画面に表示しても良い。
表示画面1850において、ユーザーが理想の反応過程曲線の表示を指示すると、表示部440は、乖離すると判定された反応過程曲線1835に対し、ステップS1710で記憶した理想の反応過程曲線1855とエラーバー1860を重ねて表示する。
例えば反応過程曲線1870(図18Cの左図)や反応過程曲線1880(図18Cの右図)のように、乖離した反応過程曲線1835と基準範囲内に収まった他の反応過程曲線を重ねて又は並べて表示したのでは、なぜ乖離と判定されたのか理由が分かり辛い。
しかし、図18Bのように、理想的な反応過程曲線1855と乖離すると判定された反応過程曲線1835を重ねて表示することにより、乖離すると判定された理由が分かり易くなる。同様に、乖離しないと判定される範囲を示すエラーバー1860を乖離すると判定された反応過程曲線1835を重ねて表示することにより、乖離すると判定された理由が分かり易くなる。例えば図18Bの場合、乖離すると判定された反応過程曲線1835は、反応過程の前半部分のベースラインが上昇しているという特徴を持っていることが分かる。
更に、乖離すると判定されたデータに関しては、乖離の理由をユーザーが選択又は入力できることが望ましい。選択用又は入力用の画面には、例えばメニュー画面1680を用いれば良い。メニュー画面1680には、考えられる異常情報(装置由来、試薬由来、検体由来)が選択項目として予め表示されるようにしておく。ユーザーは、乖離データ候補を確認する際に、各項目を選択又は入力できる。
メニュー画面1680の画面構成は、図14に示したメニュー画面1470と同じ構成で良い。ユーザーが判定した結果は、記憶装置12に記憶される。
本実施例で説明した処理手法の採用により、検査項目、試薬コード、試薬ロット毎に理想の反応過程曲線を作成することできるようになる。この理想の反応過程曲線と乖離すると判定されたデータの反応過程曲線を比較可能な態様で表示することにより、ユーザーによる乖離理由の確認が容易になる。
[実施例3]
[装置構成]
続いて、実施例3に係る自動分析装置の装置構成及び処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例の場合も、自動分析装置は生化学自動分析装置であるものとする。従って、その装置構成は、実施例1と同じであるものとする。すなわち、図2に示す装置構成を有している。また、制御部13以外の動作は、実施例1と同じである。従って、制御部13以外の詳細な説明は省略する。
[装置構成]
続いて、実施例3に係る自動分析装置の装置構成及び処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例の場合も、自動分析装置は生化学自動分析装置であるものとする。従って、その装置構成は、実施例1と同じであるものとする。すなわち、図2に示す装置構成を有している。また、制御部13以外の動作は、実施例1と同じである。従って、制御部13以外の詳細な説明は省略する。
[処理動作]
本実施例に係る制御部13は、(3)正常データと異常データの分布図を作成する処理手順を実行する。
本実施例に係る制御部13は、(3)正常データと異常データの分布図を作成する処理手順を実行する。
図19A及び図19Bに、当該分布図の作成手順を示す。図19Aに示す処理プロセスのうち、ステップS3〜ステップS80までの処理は、図1におけるステップS3〜ステップS80までの処理と同一である。
ステップS1900では、正常/異常分布図作成部445が、記憶装置12に格納されているデータベースから参考データの分布図1220、参考データの回帰関数、除外データ、除外データの理由情報を読み出す。
ステップS1910では、正常/異常分布図作成部445が、ステップS1900で読み出した参考データの分布図1220の標準化を行う。標準化には、正規分布の標準化を用いれば良い。
図20Aに、標準化の概念方法を示す。ここで、参考データの分布図2090の回帰関数2001は、y=f(x)で与えられるものとする。また、基準範囲2003は、σ(x)で与えられるものとする。ある値2005(A1=xa)における回帰値2004(f(xa))は、正規分布2070に従っている。正規分布2070は、(f(xa)、σ(xa))で表される。
この標準化は、(数13)によって表すことができる。
(数13) Ya= (ya − f(xa)) / σ(xa)
この標準化は、(数13)によって表すことができる。
(数13) Ya= (ya − f(xa)) / σ(xa)
標準化により、正規分布2070は、標準正規分布N(0、1)に従うようになる。同様に、参考データの分布図2090に示されている全データに対して標準化を行うと、その分布は、標準化分布図2080に変換される。標準化分布図2080に示すように、参考データに含まれるデータは、正常なデータとして記号2020で示す枠内に分布し、記号2000で示す除外データは、異常なデータとして記号2030で示す枠内に分布する。記号2020で示す枠の範囲と記号2030で示す枠の範囲は重複しない。このように、標準化することにより、正常なデータと異常なデータは、それぞれが異なるコロニーを形成する。
ステップS1920では、正常/異常分布図作成部445が、同じ項目、同じ試薬コード、同じ近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値の軸を用いた分布図、同じ回帰関数の種類の正常データと異常データの分布図を記憶装置12から読み出す。対応する分布図が存在しない場合には、ステップS1940に移行する。
ステップS1930では、正常/異常分布図作成部445が、標準化したデータを正常データと異常データの分布図と併合する。
ステップS1940では、正常/異常分布図作成部445が、併合された正常データと異常データの分布図(正常/異常分布図)を記憶装置12に記憶する。
乖離判定したテストデータに対しても同じ処理を行う。図19Bは、テストデータに対して実行される処理プロセスを示す。図16A〜図16Cや図18A〜図18Cに示す表示画面においてユーザーが乖離結果を確認し、乖離データと乖離理由情報を登録すると、登録と同時に、ステップS1950に移行する。
ステップS1950では、正常/異常分布図作成部445が、記憶装置12に格納されているデータベースからテストデータ分布図、乖離データ、乖離データの理由情報を読み出す。ここで、テストデータの分布図とは、乖離してないと判定されたデータの群を指す。ステップS1910〜ステップS1940までの処理は、図19Aに示すステップ1910〜ステップ1940の処理と同一である。
図20Bに、正常データと異常データの分布図の併合例を示す。参考データの分布図2090(図20A)とテストデータの分布図2095(図20B)は、同じ項目、同じ試薬の種類、同じ評価パラメータの軸を用いた分布図であり、回帰関数の種類も同じである。ただし、試薬のロットが異なるため、別のデータ群について参考データが作成されたものとする。
参考データの分布図2090(図20A)は既に標準化され、正常データ/異常データの標準化分布図2080を作成している。一方、テストデータの分布図2095(図20B)が作成されると、図19Bに示す処理が実行され、標準化分布図2080(図20A)と併合される。
併合後の分布図を標準化分布図2085(図20B)に示す。併合後、テストデータの分布図2095の正常データは、記号2020を付した枠内に分布する。一方、テストデータの分布図2095の除外データ2002は、異常なデータとして記号2050を付した第3の枠内に分布する。この併合の際、正常データに関しては、全てを同じマークで併合すれば良いが、除外データや乖離データに関しては、除外又は乖離の理由情報(異常の種類)ごとにマークを区別できるようにすると良い。例えば、マークの色や形状で区別すれば良い。
図21は、試薬ロットの変更等で参考データを作成し直した後も、継続的に正常データと異常データを蓄積することで作成した正常データ/異常データの分布図の活用法を示している。ここでは、ユーザーが、最新のテストデータの分布図2200の乖離判定結果の確認を行う場合を想定する。
ユーザーが正常データ/異常データの分布図の表示を指示すると、表示部440がテストデータの分布図2200(図中左上)に該当する正常データ/異常データの標準化分布図2088(図中右上)を、コンピュータ10に付属する表示装置に表示する。
更に、正常/異常分布図作成部445が、正常データ/異常データの分布図2088の全データに対し、標準化とは逆の演算処理を実行し、最新のテストデータの分布図上に、正常なデータの分布と異常なデータの分布を重ねて表示する。表示結果例を分布図2201(図中左下)に示す。
最新のテストデータの乖離データ(記号2210)は、分布図2201の異常データ分布(記号2030)に位置している。このことから、乖離の理由は、異常データ分布(記号2030)と同じ可能性が高い。テストデータが分布図上のどの位置に存在するのかは、既存のパターン認識技術を利用して判定することができる。判定結果を受けたユーザーが、乖離データ(記号2210)を画面上でクリックして選択すると、メニュー画面1680が表示される。
その際、最も可能性の高い乖離の理由(異常の種類)が分かるように表示されるようにしておく。例えば、可能性の高い項目を、「一番上に表示する」、「点滅表示する」、「フォントを変更する」等で表示すれば良い。
図21に示すように、標準化により生成される正常データ/異常データの分布図を用いれば、新しく作成した参考データ(テストデータ)上に、正常データの分布と異常データの分布を重ねて表示することができる。また、異常データの分布に関しては、異常の理由(種類)毎に分布を表示できるので、乖離データの異常の種類についても特定することができる。
[変形例]
本実施例では、図19A及び図19Bに示す処理を制御部13が実行する例を説明した。しかし、自動分析装置の制御部13以外の処理装置を使用して、同様の処理を実行することも可能である。例えばコンピュータ(PC)10内で実行されるソフトウェア処理として実施例1に示した処理を実行することも可能である。また、記憶装置12としてコンピュータ(PC)10内部の記憶装置を使用することも可能である。
本実施例では、図19A及び図19Bに示す処理を制御部13が実行する例を説明した。しかし、自動分析装置の制御部13以外の処理装置を使用して、同様の処理を実行することも可能である。例えばコンピュータ(PC)10内で実行されるソフトウェア処理として実施例1に示した処理を実行することも可能である。また、記憶装置12としてコンピュータ(PC)10内部の記憶装置を使用することも可能である。
[まとめ]
本実施例で説明した処理手法のように、正規分布に基づいて分布図を標準化することにより、試薬ロット等の理由で変化した参考データの分布図やテストデータの分布図を一つの分布図上に併合することができる。これにより、参考データを作成し直したとしても、継続的にデータを蓄積することが可能となる。結果的に、正確な正常データ/異常データの分布図を作成することが可能となる。
本実施例で説明した処理手法のように、正規分布に基づいて分布図を標準化することにより、試薬ロット等の理由で変化した参考データの分布図やテストデータの分布図を一つの分布図上に併合することができる。これにより、参考データを作成し直したとしても、継続的にデータを蓄積することが可能となる。結果的に、正確な正常データ/異常データの分布図を作成することが可能となる。
更に、参考データの作成時にデータを除外した場合の除外理由情報、乖離判定後の乖離データの乖離理由情報も同時に蓄積していくことにより、異常データの分布図は、異常の理由(種類)毎に分布を作成することが可能となる。この正常データ/異常データの分布図を用いることにより、新たに作成したテストデータの分布図上に正常データと異常データの分布を重ねて表示することができる。
また、異常データの分布に関しては、異常の種類毎に分布データを重ねて表示することが可能となる。これにより、乖離データの異常の種類をも特定することができる。
[変形例]
なお、本発明は上述した形態例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある形態例の一部を他の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある形態例の構成に他の形態例の構成を加えることも可能である。また、各形態例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
なお、本発明は上述した形態例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある形態例の一部を他の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある形態例の構成に他の形態例の構成を加えることも可能である。また、各形態例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
一般の事象では、乖離判定に用いる参考データはデータを収集して一度作成すれば、ずっと同じ参考データを利用できる場合が多い。しかし、自動分析装置の測定から得られる反応過程曲線は、同一の検査項目であっても、用いる試薬(メーカー、自家製、ロット)によって形状が異なる場合がある。このため、参考データは、試薬メーカーやロット等が変更される度に、作成し直さなければならない。
ところが、実施例1で説明した自動分析装置の場合には、試薬メーカーやロット等の変更により参考データを作成し直す必要がある場合でも、ユーザーは、回帰関数候補と参考データを重ねて示す処理結果画面を同一画面上で複数同時に観察することができる。従って、ユーザーは、参考データに適用する回帰関数候補を客観的に選択することができる。また、参考データから特定のデータを除外すべきか又は乖離すると判定すべきかを、ユーザー自身が、判定対象とするデータの反応過程曲線を確認しながら客観的に判断することができる。このため、精度管理の正確性を向上することができる。
また、実施例2で説明した自動分析装置の場合には、検査項目、試薬メーカー、ロット毎に、検査値に対する理想の反応過程曲線を作成することができる。この理想の反応過程曲線と乖離すると判定されたデータとを比較することにより、ユーザーの乖離理由の確認が容易になる。このため、ユーザーによる乖離判定の負担が軽減される。
乖離データの異常の種類を判定するには、全ての異常の種類に対する異常の分布が必要となる。しかし、異常の出現頻度は非常に低く、また、患者に由来する異常、装置に由来する異常、試薬に由来する異常等、その種類も豊富である。このため、判定精度を高めるには、長期に亘りデータを蓄積する必要がある。けれども、自動分析装置の場合、前述の通り、試薬ロット等の変更により前提となる分布自体が変わってしまう。結局、分布形状が変わらない期間内において、異常データの分布図を作成することは困難であるという課題があった。
一方、実施例3で説明した自動分析装置の場合には、試薬ロット等で異常の分布が変化したとしても、継続的に使用可能な異常データの分布図を作成することができる。更に、実施例3で説明した自動分析装置の場合には、蓄積された正常データ/異常データの分布図を用いたパターン認識により異常の種類を特定することができる。このため、ユーザーによる乖離データ等の判定負担を軽減することができる。更には、自動分析装置の性能維持、患者検体の診断支援に貢献することができる。
1:サンプルディスク、2:試薬ディスク、3:反応ディスク、4:反応槽、5:検体サンプリング機構、6:ピペッティング機構、7:攪拌機構、8:測光機構、9:洗浄機構、10:コンピュータ(PC)、12:記憶装置、13:制御部、14:圧電素子ドライバ、15:攪拌機構コントローラ、16:試料容器、17:円形ディスク、18:試薬容器、19:円形ディスク、20:保冷庫、21:反応容器、22:反応容器ホルダ、23:駆動機構、24:サンプリングプローブ、25:支承軸、26:アーム、27:試薬分注プローブ、28:支承軸、29:アーム、31:固定部、33:ノズル、34:上下駆動機構、110:横軸(時間の経過)、120:縦軸(吸光度)、210:曲線(近似式より算出された吸光度を表す曲線)、220:直線(反応過程データを近似した曲線が漸近する直線)、230:点(反応過程データを近似した曲線210が直線220に十分漸近した時間)、410:吸光度データ取得部、415:検査値算出部、420:近似式/評価パラメータ算出部、425:参考データ作成部、435:乖離判定部、440:表示部、445:正常/異常分布図作成部、450:データバス、500:テーブル、510:列(検査項目)、520:列(試薬の種類)、530:列(近似式の種類)、700:テーブル、710:列(検査項目)、720:列(試薬の種類)、730:列(評価パラメータの種類)、810:横軸(パラメータ値)、820:縦軸(パラメータ値)、830:記号(各データのパラメータの値の組み合わせ座標)、900:テーブル、910:列(検査項目)、920:列(試薬の種類)、930:列(乖離判定に用いる近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値の種類)、940:列(乖離判定に用いる近似式パラメータ、評価パラメータ及び検査値の種類)、1010:表示画面(参考データ分布図の近似結果)、1030:参考データの分布図、1040:回帰関数式(参考データ分布図の回帰関数)、1050:評価値(相関係数と誤差)、1060:枠線(最適参考データ分布図)、1070:ボタン(過去の参考データの分布図を表示するためのボタン)、1210:表示画面(作成中参考データの分布図/過去に作成した参考データの分布図)、1220:分布図(作成中参考データの分布図)、1230:分布図(過去に作成した参考データの分布図)、1300:テーブル、1310:列(検査項目)、1320:列(試薬の種類)、1330:列(参考データ作成に用いる近似式/評価パラメータ及び検査値の種類)、1340:列(除外データ選択用閾値)、1400:表示画面(参考データ分布図/除外データ候補/過去の参考データ分布図/除外データ候補の反応過程曲線/除外データ用メニュー)、1410:記号(参考データに含めるデータ)、1420:記号(除外データ候補A)1421:記号(除外データ候補B)、1422:記号(除外データ候補C)、1430:閾値(除外データ選択用閾値)、1440:反応過程曲線(除外候補Aの反応過程曲線)、1441:反応過程曲線(除外候補Bの反応過程曲線)、1442:反応過程曲線(除外候補Cの反応過程曲線)、1450:メニュー画面、1460:分布図(過去の参考データの分布図)、1461:記号(過去に参考データに含めたデータ)、1462:記号(過去に参考データから除外したデータ)、1470:メニュー画面(除外理由選択画面)、1600:横軸(パラメータ値)、1605:縦軸(パラメータ値)、1610:記号(参考データ)、1620:関数(参考データ分布図の回帰関数)、1630:範囲(基準範囲)、1640:記号(テストデータ)、1650:記号(乖離したと判定されたテストデータ)、1660、1665:表示画面(参考データ、テストデータ分布図/反応過程曲線)、1670:反応過程曲線(乖離と判定された反応過程曲線)、1675:反応過程曲線(基準範囲内の反応過程曲線)、1680:メニュー画面(除外理由選択画面)、1800:横軸(検査値)、1805:縦軸(パラメータ値)、1810:関数(参考データ分布図の回帰関数)、1815:回帰関数式(参考データ分布図の回帰関数式)、1820:範囲(基準範囲)、1830:記号(乖離したと判定されたテストデータ)1835:反応過程曲線(乖離と判定された反応過程曲線)、1840:記号(参照データ)、1850:表示画面(参考データ、テストデータ分布図/反応過程曲線)、1855;反応過程曲線(理想の反応過程曲線)、1860:エラーバー、1870:反応過程曲線(重ね書き表示)、1880:反応過程曲線(並べて表示)、2000:記号(乖離したと判定されたデータ)、2002:記号(乖離したと判定されたデータ)、2020:記号(正常と判定されたデータ)、2030、2040、2050:記号(乖離したと判定されたデータの分布)、2080:標準化分布図(正常/異常分布図)、2085:標準化分布図(併合後)、2088:標準化分布図(併合後)、2090:分布図(参考データ、テストデータの分布図)、2095:分布図(テストデータの分布図)、2200:分布図(テストデータの分布図)、2210:記号(乖離したと判定されたデータ)、2201:分布図(変換後の正常データ/異常データの分布図を重ねて表示したテストデータの分布図)、2300:テーブル、2301:列(サンプルID)、2302:列(検査項目)、2303:列(参考データID)、2304:列(近似式/評価パラメータ値、検査値)、2305:列(除外判定結果)、2306:列(乖離判定結果)、2307:列(除外理由)、2308:列(乖離理由)、2310:テーブル、2311:列(参考データID)、2312:列(サンプルID)、2320:テーブル、2321:列(参考データID)、2322:列(回帰関数の種類)、2323:列(回帰関数パラメータ)、2324:列(基準範囲)
Claims (14)
- 試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置において、
前記試料と前記試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する測定点データ取得部と、
前記複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を蓄積する第1の記憶部と、
前記第1の記憶部に蓄積された所定数の前記パラメータ又は前記検査値に基づいて、前記パラメータ又は前記検査値に対応する参考データの分布図を作成するデータ処理部と、
複数の回帰関数を格納する第2の記憶部と、
前記参考データの分布図に近似するように、前記複数の回帰関数を適用して得られる複数の回帰関数候補に対応する曲線を、前記分布図に個別に重ね合わせて示す画面を、表示画面上に複数並べて提示する出力部と
を有することを特徴とする自動分析装置。 - 請求項1に記載の自動分析装置において、
前記出力部は、
第1の参考データの分布図に回帰関数候補を重ね合わせて示す、少なくとも1つの第1の画面と、
前記第1の画面とは異なる第2の参考データの分布図に回帰関数候補を重ね合わせて示す、少なくとも1つの第2の画面と
を表示画面上に並べて表示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置において、
前記試料と前記試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する測定点データ取得部と、
前記複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を蓄積する第1の記憶部と、
前記第1の記憶部に蓄積された所定数の前記パラメータ又は前記検査値に基づいて、前記パラメータ又は前記検査値に対応する参考データの分布図を作成するデータ処理部と、
除外判定用の閾値を格納する第2の記憶部と、
前記閾値に基づいて、前記参考データの分布図に含まれる除外データ候補を表示画面上に提示する出力部と、
前記参考データの分布図から除外するデータか否かを示す判定結果を、前記参考データの付属情報として格納する第3の記憶部と
を有することを特徴とする自動分析装置。 - 請求項3に記載の自動分析装置において、
前記出力部は、前記分布図上で指定入力のあった参考データについて、対応する複数の測定点データで構成される反応過程曲線を表示画面上に表示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項3に記載の自動分析装置において、
前記第3の記憶部は、前記判定結果が除外を意味する場合に、該当する参考データを分布図から除外する理由に関する情報を格納する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項3に記載の自動分析装置において、
前記出力部は、前記閾値と前記除外データ候補の関係を、前記参考データの分布図上に提示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項3に記載の自動分析装置において、
新たに取得されたテストデータが、前記参考データの分布図に対して乖離するか否か判定する乖離判定部と、
前記参考データの分布図から乖離するか否かを示す判定結果を、前記参考データの付属情報として格納する第4の記憶部と
を有し、
前記出力部は、前記乖離判定部の判定結果を、前記参考データの分布図上に提示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項7に記載の自動分析装置において、
前記第4の記憶部は、前記判定結果が乖離を意味する場合に、該当する参考データが分布図から乖離する理由に関する情報を格納する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項7に記載の自動分析装置において、
前記分布図を構成する参考データに対応する前記パラメータと前記検査値の間に存在する関係を表す第2の回帰関数を算出する第2のデータ処理部と、
前記第2の回帰関数に基づいて、任意のテストデータに対する理想的な反応過程曲線を算出する第3のデータ処理部と
を有し、
前記出力部は、前記乖離判定部で乖離すると判定されたテストデータに対応する反応過程曲線と、前記理想的な反応過程曲線を重ねて表示画面上に表示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項7に記載の自動分析装置において、
前記参考データの分布図を構成する一群の参考データを標準化する第4のデータ処理部と、
前記参考データの分布図から除外されたデータを標準化する第5のデータ処理部と、
前記第4のデータ処理部で作成された正常データの分布と、前記第5のデータ処理部で作成された異常データの分布を識別可能に併合した標準化分布図を作成する第6のデータ処理部と
を有し、
前記出力部は、前記標準化分布図を表示画面上に表示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項7に記載の自動分析装置において、
前記参考データの分布図を構成する一群の参考データを標準化する第4のデータ処理部と、
前記新たに取得されたテストデータのうち前記乖離判定部において乖離すると判定された参考データを標準化する第7のデータ処理部と、
前記第4のデータ処理部で作成された正常データの分布と、前記第7のデータ処理部で作成された異常データの分布を識別可能に併合した標準化分布図を作成する第8のデータ処理部と
を有し、
前記出力部は、前記標準化分布図を表示画面上に表示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項11に記載の自動分析装置において、
前記標準化分布図に、前記標準化とは逆のデータ処理を適用して、正常データと異常データを識別可能な分布図を作成する第9のデータ処理部を有し、
前記出力部は、前記新たに取得されたテストデータを、前記第9のデータ処理部が作成した分布図に重ねて表示する
ことを特徴とする自動分析装置。 - 試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置に搭載されるコンピュータに、
前記試料と前記試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する処理と、
前記複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を、記憶部に蓄積する処理と、
前記記憶部に蓄積された所定数の前記パラメータ又は前記検査値に基づいて、前記パラメータ又は前記検査値に対応する参考データの分布図を作成する処理と、
前記参考データの分布図に近似するように、複数の回帰関数を適用して得られる複数の回帰関数候補に対応する曲線を、前記分布図に個別に重ね合わせて示す画面を、表示画面上に複数並べて提示する処理と
を実行させることを特徴とする自動分析プログラム。 - 試料と試薬を混合し、混合液の経時的な変化を測定する自動分析装置に搭載されるコンピュータに、
前記試料と前記試薬の反応過程から複数の測定点データを取得する処理と、
前記複数の測定点データを近似する近似式のパラメータと検査値を、第1の記憶部に蓄積する処理と、
前記第1の記憶部に蓄積された所定数の前記パラメータ又は前記検査値に基づいて、前記パラメータ又は前記検査値に対応する参考データの分布図を作成する処理と、
除外判定用の閾値に基づいて、前記参考データの分布図に含まれる除外データ候補を表示画面上に提示する処理と、
前記参考データの分布図から除外するデータか否かを示す判定結果を、前記参考データの付属情報として第2の記憶部に格納する処理と
を実行させることを特徴とする自動分析プログラム。
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