JP2012126910A - 発酵粕由来スフィンゴ脂質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 麹を用いた醗酵製品製造の際の副産物である醗酵粕からの抽出精製によって、遊離セラミドを複数含有し、遊離セラミドの含有量が5%、さらには30%以上のスフィンゴ脂質、あるいは、それらの条件に加えて、併存するグリコシルセラミド含有量との総和量の50%が遊離セラミドでもある発酵粕由来スフィンゴ脂質を得る。
【選択図】 図3
Description
より詳しくは、自然界、特に植物素材から得られたスフィンゴ脂質を、精製によってグルコシルセラミドと遊離セラミドに分離して、前者を食品用、後者を化粧品用として利用することも可能な、しかも自然界では極めて希少な遊離セラミド、特に、ヒト型の遊離セラミド含有量の多い発酵粕由来スフィンゴ脂質に関するものである。
この醗酵粕は、例えば、焼酎に関して言えば、焼酎粕は年間60万トン以上副生していると言われ、その処理が海洋汚染の防止のため、海洋投棄が禁止されているため、その処分について問題となっている。
その提案の中には、例えば、醗酵粕中の機能性成分に注目して、その成分を活用する特許第4071062号公報(特許文献1)がある。
この悪性黒色腫である腫瘍の予防又は治療用組成物は、焼酎蒸留粕から分離した液状物を乾燥して得た固形分のエタノール抽出残さ、又は焼酎蒸留粕から分離した液状物を乾燥して得た固形分のエタノール抽出物を含有することを特徴とするものである。
例えば、特許第3068910号公報(特許文献4)には、海綿動物から取り出した特定構造のスフィンゴ糖脂質が、抗腫瘍剤や免疫賦活剤として有効であることが示されている。
この角質を構成するセラミドは、表皮細胞のグルコセレブロシターゼやスフィンゴミエリナーゼの作用によって、グルコシルセラミドとスフィンゴミエリンが分解されることによって生成する。
さらに、この焼酎蒸留粕から分離した液状物のエタノール残さ又はエタノール抽出物を含有する、悪性黒色腫である腫瘍の予防又は治療用組成物が開示されている。
しかしながら、前記焼酎蒸留粕に他の成分が、含まれているか否か、含まれている他の成分がどのような効果を有するかについては全く開示がない。
しかしながら、ビール粕から得られた植物性セラミド関連物質が、他にいかなる物質を含んでいるのか否かについては何ら開示されていない。
しかしながら、当該スフィンゴ脂質の具体的成分や他にいかなる物質を含有し、それらがどのように作用するかについてはなんら開示されていない。
さらに、複数回の抽出と精製という簡単な操作によって、スフィンゴ脂質中の遊離セラミドの含有量を高めることができることも見出した。
麹を用いた醗酵製品製造の際の副産物である醗酵粕から抽出精製されたものであって、遊離セラミドを複数含有し、遊離セラミドの含有量が5%以上であること
を特徴とする発酵粕由来スフィンゴ脂質である。
請求項1に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記遊離セラミドの含有量は、
30%以上であること
を特徴とするものである。
請求項1又は請求項2に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記遊離セラミドの含有量は、
併存するグリコシルセラミド含有量との総和量の50%以上であること
を特徴とするものである。
請求項1〜3のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記遊離セラミドは、
セラミドXを包含していること
を特徴とするものである。
請求項1〜4のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記抽出精製は、
アルコール系溶媒による抽出と、遊離セラミドの非溶媒により不純物を除去する精製であること
を特徴とするものである。
請求項5に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記抽出におけるアルコール系溶媒は、
メタノール又はエタノールもしくはそれらを主要成分とするものであって、前記精製における遊離セラミドの非溶媒がアセトン又はヘキサンであること
を特徴とするものである。
請求項1〜4のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記精製は、
抽出物を溶解しているアルコール系溶液に水を添加することによって、アルコール系溶液から抽出物を析出させる工程を含むものであること
を特徴とするものである。
請求項5に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記非溶媒による精製は、
抽出物のアルコール系溶液への水の添加による抽出物の析出後も行われていること
を特徴とするものである。
請求項5又は6に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記非溶媒による精製は、
複数回繰り返えされていること
を特徴とするものである。
請求項5〜9のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質において、
前記精製は、
活性炭及び/又は陰イオン交換樹脂によって、抽出物のアルコール系溶液中の不純物の吸着除去が行われていること
を特徴とするものである。
加えて、共存するグリコシルセラミドと遊離セラミドの総和量の50%以上が遊離セラミドであるというもので、自然界において希少な遊離セラミドが豊富なスフィンゴ脂質である。
したがって、この発明ので得られた発酵粕由来スフィンゴ脂質中の遊離セラミドも、同等の性能を有すると見做されるものである。
さらに、皮膚外科用剤としては、皮膚の弾力や細胞間の結合性の改善効果があると云われ、老化肌、乾燥肌に向いている。
そのため、そのまま化粧品や健康食品用として利用しても、優れた機能を発揮することが期待され、さらにグルコシル型と遊離型とを分離して、前者を食品用、後者を化粧品用として利用することを可能とするものであって、利用方法が多岐に亘る、優れたものである。
前記スフィンゴ脂質中の、遊離セラミド以外の不純物を除去するための溶媒、換言すると、遊離セラミドの含有量が多いスフィンゴ脂質を取得するために、遊離セラミドを溶解しない溶媒、すなわち、遊離セラミドの非溶媒であれば各種のものが用いられる。
好ましい溶媒としては、ヘキサン及び/又はアセトンを挙げることができる。
例えば、精製には、カラムクロマトなどを用いて行うことが可能であるが、大量生産するためには、格別な手段が求められる。
なお、用いた醗酵粕は、大豆を原料とする醤油の醗酵粕と、黄薩摩芋および紫薩摩芋を原料とする焼酎の醗酵粕である。
常法により製造された醤油の副産物である圧搾粕(水分28%)100gに、クロロホルム/メタノール(2:1、容量比)を300ml添加し、室温で1時間撹拌して抽出した。
その後、前記抽出液をろ過して、溶液と固形部とに分別した。
この操作をさらに2回繰り返し、それらの溶液を合わせて全抽出液とし、クロロホルム/メタノール/水(8:4:3、容量比)の比率になるように蒸留水225mLを添加して、分液ロートを用い室温で激しく20回程度撹拌して混合させたのち、静置した。
前記混合液が2層に分離したことを確認し、下層を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固して秤量した。全脂質量は、13.4gであった。
展開溶媒はクロロホルム/メタノール:水(90:10:1)で、検出は50%硫酸噴霧後加熱で行った。
図1に示されるように、この脂質には、大豆原料に由来するトリグリセリドの他に、脂質の分解物である遊離脂肪酸が多量に含まれている。
点線で極性脂質画分を拡大すると、大豆に多く含まれるステロール配糖体とグルコシルセラミドの他に、大豆にはほとんど存在しない脂質である遊離セラミドのスポットが大きく検出された。
すなわち、全脂質100mgを乾固後、少量のクロロホルムに溶解し、Sep−Pakシリカカートリッジ(ウオーターズ社製)に供した。
まず、クロロホルム50mLで中性脂質を溶出し、ついで、メタノール30mLで極性脂質を溶出した。
両画分をロータリーエバポレーターで濃縮乾固して秤量すると、全脂質には中性脂質画分が89.5%、極性脂質画分が10.5%含まれることがわかった。
分離は2液グラジエント溶出で、検出は蒸発光散乱検出器(ELSD,島津製作所製)で行った。
A液:ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1)
B液:イソプロパノール/水/酢酸/トリエチルアミン(85:14:1:0.2)
醤油粕の分析結果を図2Aに、大豆の分析結果を図2Bに示す。
実施例1と同様に、黄薩摩芋及び紫薩摩芋を原料として、焼酎粕の脂質分析を行った。
原料は、焼酎廃液を固液分離装置により分離して得た固形部(以下、黄粕と紫粕と表記)を用いた。
黄粕(水分62%)と紫粕(水分69%)の脂質含量は、それぞれ2.0と1.8g/100g(新鮮質量当たり)であった。
これを実施例1と同様に、スフィンゴ脂質を定量すると、図3に示すように、乾燥質量当たり、黄粕の遊離セラミドは204mg/100g、グルコシルセラミドは169mg/100g、紫粕の遊離セラミドは275mg/100g、グルコシルセラミドは177mg/ 100gであった。
それぞれの遊離セラミドの割合は、54.7%と60.8%であった(図3)。
なお、図3に示したその他の植物の分析値は、Takakuwaら(Bioresource Technology、 96、1089−92、2005)の分析値である。
Takakuwaらは、図3に示すように、様々な植物性食品や残渣のグルコシルセラミド量を測定し、りんご果肉(apple pulp)中には、やや多いことを報告している。
しかしながら、発明者の測定した焼酎粕中のグルコシルセラミド量は、これらを遥かに上回り、醤油粕においても、りんご果肉(apple pulp)とは同等であるが、他のものよりは優位にある。
さらに特筆すべきは、原料大豆や薩摩芋、その他天然物には殆ど含まれない遊離セラミドが、これら発酵粕中に多量に含まれていた。
醤油粕から取得した遊離セラミドとグルコシルセラミドを、上記と同様の条件のケイ酸TLCで分離し、それぞれ1mgを、1Mメタノール性HCL 1ml中、温度70℃で18時間反応させた。
反応後、ヘキサンを2ml添加して、撹拌抽出を3回繰り返し、脂肪酸を抽出した。
下層(メタノール層)は、4MKOHでpH10に調整し、1mLの水を添加してから、2mLのジエチルエーテルで3回抽出した。
集めたジエチルエーテル層は、蒸留水で3回水洗し、その後、有機層を窒素ガスで乾固してスフィンゴイド塩基画分を得た。
得られたスフィンゴイド塩基画分は、トリメチルシリル誘導体としてGC−MS分析(島津製作所製 QP2010)に供した。
カラム:ULBON HR−1(50m、0.25mm i.d.、0.25μm)
先の18時間反応後のヘキサン層は、乾固後、無水5%メタノール性HCLでメチル化し、脂肪酸メチルエステルとして同様にGC−MS分析に供した。
脂肪酸およびスフィンゴイド塩基の分析結果を、表1に示す。
大豆に特徴的な16h:0、22h:0、24h:0が検出された。
さらに、麦に特徴的な20h:0が、麹菌に特徴的な18h:0と18h:1がそれぞれ検出された。
さらにまた、醤油粕には、特異的なグルコシルセラミドを含有していることが分かる。
これはスフィンゴイド塩基でも同様で、麹菌や酵母などの真菌にのみ存在する9メチル型のスフィンガジエニン(d19:2)が検出された。
前記「d」は、ジヒドロキシ塩基の略である。
ヒドロキシ脂肪酸としては、24と22といった超長鎖脂肪酸が多く検出された。
さらに、2、3ジヒドロキシ脂肪酸(24h2:0)も検出され、これは麹菌由来であると考えられる。
これらの分析結果から、醤油粕中に含まれるセラミドの主要構造を図6に纏めた。
このセラミドXは水酸基を多く有しているので、保湿効果の高い素材として期待されるものである。
同時に、前記醤油粕にはセラミド6と7が多く、清酒粕にはセラミド3が多いことが判明し、それぞれから得られたヒト型遊離セラミドは、各自特有の性能を有するものであると判断されるものである。
醤油粕に含まれるセラミド類の大量抽出と精製を、以下のように行なった。
醤油粕1kg(水分28%)にエタノール3Lを添加して、温度40℃で3時間撹拌し抽出を行なった。
前記エタノール溶液からなる抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、95gの抽出物が得られた。(抽出工程)
得た抽出物にアセトン1Lを添加して撹拌洗浄後、温度4℃で冷却遠心分離した。
前記遠心分離によって沈殿物として得られた洗浄された抽出物に再度、アセトン500mLを添加し、1分間の撹拌と冷却遠心分離を2回繰り返し洗浄した。(洗浄工程)
沈殿物として得られた抽出物にエタノール500mLを添加して、温度40℃で15分の撹拌・遠心分離を3回繰り返し、再抽出を行なった。(再抽出工程)
再抽出を行なったエタノール溶液は、活性炭、ついで陰イオン交換樹脂を用い脱色し、濃縮乾固した。(不純物除去工程)
前記の濃縮乾固により得られた不純物の除去された再抽出物を、エタノール100mLに溶解して回収し、等容の水を添加して析出させ、温度4℃で冷却遠心分離した。(析出工程)
沈殿として得られた再抽出物に100mLのアセトンを添加して、1分間撹拌洗浄し、15分の冷却遠心分離を行った。
沈殿物として得られた再抽出物に再度アセトン100mL添加して同様に処理し、さらに、沈殿物にヘキサン50mLとアセトン50mLを添加して同様に処理し、洗浄を行った。(洗浄工程)
かくして得られた乾燥物はセラミド粉末(グルコシル型も含有)で、その質量は4.3gであった。
さらに、醗酵粕から多量取得されるものであるので、これまでに、健康食品や化粧料あるいは皮膚外用剤の原料として、今まで以上の効用を有するものとして、それらを扱う業界で、幅広く利用される可能性を有するものである。
さらにまた、醗酵粕から多量取得されるものであるので、これまでに、健康食品や化粧料あるいは皮膚外用剤の原料として使用されていた化学合成品に代わり、天然物から得られた毒性の認められない安全な新素材として、かつ、今まで以上の効用を有するものとして、健康食品や化粧料あるいは皮膚外用剤を扱う業界で、幅広く利用される可能性を有するものである。
Claims (10)
- 麹を用いた醗酵製品製造の際の副産物である醗酵粕から抽出精製されたものであって、遊離セラミドを複数含有し、遊離セラミドの含有量が5%以上であること
を特徴とする発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記遊離セラミドの含有量は、
30%以上であること
を特徴とする請求項1に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記遊離セラミドの含有量は、
併存するグリコシルセラミド含有量との総和量の50%以上であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記遊離セラミドは、
セラミドXを包含していること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記抽出精製は、
アルコール系溶媒による抽出と、遊離セラミドの非溶媒により不純物を除去する精製であること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記抽出におけるアルコール系溶媒は、
メタノール又はエタノールもしくはそれらを主要成分とするものであって、前記精製における遊離セラミドの非溶媒がアセトン又はヘキサンであること
を特徴とする請求項5に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記精製は、
抽出物を溶解しているアルコール系溶液に水を添加することによって、アルコール系溶液から抽出物を析出させる工程を含むものであること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記非溶媒による精製は、
抽出物のアルコール系溶液への水の添加による抽出物の析出後も行われていること
を特徴とする請求項5に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記非溶媒による精製は、
複数回繰り返えされていること
を特徴とする請求項5又は6に記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。 - 前記精製は、
活性炭及び/又は陰イオン交換樹脂によって、抽出物のアルコール系溶液中の不純物の吸着除去が行われていること
を特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の発酵粕由来スフィンゴ脂質。
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