(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電源制御装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電源制御装置1は、発電機101と、蓄電部102と、制御部103と、定常負荷201〜20nと、大電力負荷301〜30nとを備える。尚、本実施形態では、電源制御装置1が車両などの移動体(以下、自車両と称する)に搭載される場合を一例として説明する。
発電機101は、自車両のエンジンの駆動力を当該エンジンの回転数に応じた電力に変換して発電電力として発電する所謂オルタネータである。発電機101には、発電をするための構成の他に周知のレギュレータも備えられている。発電機101に備えられるレギュレータは、電力の供給先に過大な発電電力が供給されることによって、後段に接続されている構成要素(本実施形態では、蓄電部102、制御部103、定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30n)のいずれかに故障が生じないように、供給先で必要とされる電力に対して発電電力が過大であるときには、発電機101の発電電力を抑制する。より具体的には、発電機101に備えられるレギュレータには、目標電圧が予め定められている。そして、レギュレータは、図1に示す接点Pの電圧、すなわち、後述する蓄電部102の端子電圧を監視して、監視している端子電圧が常に目標電圧になるように、発電機101の発電電力を抑制する。発電機101は、蓄電部102、定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30nのそれぞれに前述のレギュレータを介して発電電力を供給する。
蓄電部102は、発電機101と並列に接続されており、定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30nに供給される発電機101の発電電力の余剰電力を、蓄電電力として蓄電する所謂蓄電池(バッテリー)である。
制御部103は、蓄電部102の端子電圧に基づき、定常負荷201〜20nを制御する。制御部103のより詳細な説明については後述する。
定常負荷201〜20nのそれぞれは、図1から明らかなように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷である。本実施形態に係る定常負荷201〜20nとして適用できる負荷は、動作している期間を通じて消費電力を急峻に変化させることを必ずしも要しない負荷である。本実施形態に係る定常負荷201〜20nとして適用できる負荷の一例には、自車両に搭載されるオーディオシステム、カーナビゲーションシステム、ヒータ、ミラーヒータ、シートヒータ、及びデフォッガなどの車載装置における負荷が挙げられる。
大電力負荷301〜30nのそれぞれは、図1から明らかなように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷である。本実施形態に係る大電力負荷301〜30nとして適用できる負荷は、動作している期間において消費電力を急峻に変化させる必要が生じる負荷である。本実施形態に係る大電力負荷301〜30nとして適用できる負荷の一例には、自車両の運転者の操舵力を補助するEPS(Electric Power Steering)システムにおいて補助力を発生させる電動機、VSC(Vehicle Stability Control)システムにおいて必要とされる制動力の源となる油圧を得るための油圧ポンプを駆動する電動機、自車両のサスペンションにおいて減衰力の源となる油圧の調整をするための油圧ポンプを駆動する電動機などの車載装置における負荷が挙げられる。
尚、定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30nのそれぞれは、上述したように接点Pの端子電圧に応じた電力が供給される。このため、本発明において接点Pは電源と見なすことができ端子電圧は電源電圧と見なすことができる。
例えば、EPSシステムにおける電動機は、運転者の操舵力を補助するため、運転者が自車両のハンドルを操作したことを検知したときに即座に駆動を開始して相対的に大きな電力を消費する。また、EPSシステムでは、運転者が操舵方向を切り替えたときにも、操舵方向の切り替えに応じて電動機の回転方向を即座に逆転させて相対的に大きな電力を消費する。さらに、例えば、VSCシステムにおける電動機は、制動力の源となる油圧が、必要とされる圧力以下になったときに駆動を開始して相対的に大きな電力を消費する。このように、本実施形態に係る大電力負荷301〜30nとして適用できる負荷は、動作している期間において消費電力を急峻に変化させる必要が生じる負荷であると共に電力の消費を開始するタイミングなどを予測することが困難な負荷である。
尚、この他にも、本実施形態に係る大電力負荷301〜30nとして適用できる負荷には、VGRS(Variable Gear Ratio Steering)における駆動用の電動機、自車両の後輪の舵角を制御するための駆動力を得るための油圧の源となる油圧ポンプの駆動用の電動機など、様々な負荷がある。
以上が、本実施形態に係る電源制御装置1の概略構成の説明である。次に、本実施形態に係る制御部103についてより詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る制御部103のより詳細な機能構成を示す機能ブロック図である。本実施形態に係る制御部103は、電圧検知部1031と、記憶部1032と、設定部1033と、負荷抑制部1034とを含む。
電圧検知部1031は、図1に示す蓄電部102の端子Pの端子電圧を逐次検知するセンサであって、端子電圧を検知するたびに、検知した端子電圧の大きさを数値(以下、電圧値と称する)で示すデジタル信号などの信号に変換して、後述する負荷抑制部1034に取得させる。
記憶部1032は、予め定められた予備電圧を記憶している。
設定部1033は、記憶部1032に記憶されている予備電圧を閾値として記憶部1032に記憶させて設定する。ここで、本実施形態に係る予備電圧について説明する。
図3は、本実施形態における予備電圧を説明するための図である。本実施形態では、上述したように、定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30nそれぞれに蓄電部102の端子電圧に応じた電力が供給される。大電力負荷301〜30nはそれぞれ上述したように電力の消費を開始するタイミングなどを予測することが困難な負荷である。このような大電力負荷が動作を開始して電源制御装置1における全ての消費電力(以下、全消費電力と称する)が増加すると端子電圧が降下する。そして、端子電圧が降下すると、降下した端子電圧を目標電圧に維持するために、前述のレギュレータが発電機101の発電電力に対する抑制を弱める。さらに、レギュレータが発電電力に対する抑制を弱めて、抑制をなくしたとしても、発電電力が全消費電力に対して少ない場合には、発電電力を補うために、蓄電部102に蓄電されている蓄電電力が消費される。そして、蓄電部102に蓄積されている蓄電電力が消費されると、端子電圧が降下していく。
そして、本実施形態に係る定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30nのそれぞれのように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷の中には、端子電圧が降下を続けて図3に示す最低電圧未満となると、例えば、オーディオシステムが停止してしまうなど、不意に動作を停止する、或いは予期せぬ誤動作を開始してしまうなどの異常を来す負荷が存在する。ここで、図3に示す最低電圧は、定常負荷201〜20n、及び大電力負荷301〜30nのそれぞれの設計仕様に基づいて、予め定めておくことのできる電圧である。
そこで、本実施形態に係る電源制御装置1では、大電力負荷301〜30nの中でいずれかの大電力負荷が不意に動作を開始したとしても、端子電圧が最低電圧未満に降下しないように、いずれの大電力負荷も動作していないときにおける端子電圧を最低電圧よりも予め定められた高さの予備電圧以上に維持する。つまり、図3に示す大電力負荷非作動時の電圧の範囲は、定常負荷201〜20nが動作しているか否かに拘わらず、大電力負荷301〜30nが動作していないときに、本実施形態に係る電源制御装置1によって維持される端子電圧の範囲を示している。また、図3に示す大電力負荷作動時の電圧の範囲は、定常負荷201〜20nが動作しているか否かに拘わらず、大電力負荷301〜30nのそれぞれが動作しているときに、本実施形態に係る電源制御装置1によって維持される端子電圧の範囲を示している。
蓄電部102の蓄電電力が消費されて端子電圧が降下するときの降下電圧は、蓄電部102の内部抵抗、及び端子Pを流れる電流で定まる。したがって、本実施形態における予備電圧は、大電力負荷301〜30nのそれぞれの消費電流と蓄電部102の内部抵抗に基づいて予め定めておくものとする。以上が、本実施形態に係る予備電圧の説明である。
負荷抑制部1034は、定常負荷201〜20nにそれぞれ接続されており、電圧検知部1031から取得した電圧値が閾値未満であると判断したときに、定常負荷201〜20nに対してそれぞれ指示を与える。
より詳細には、負荷抑制部1034は、電圧検知部1031から電圧値を取得するたびに、記憶部1032から閾値を読み出し、取得した電圧値と読み出した閾値とを逐次比較する。負荷抑制部1034は、取得した電圧値が閾値未満であると判断したとき、上述したように、大電力負荷が動作を開始することによって端子電圧が最低電圧未満に降下するのを防ぐため、定常負荷201〜20nの中で動作している負荷に対して消費電力を抑制する指示を与えて、端子Pを流れる電流を低下させる。
消費電力を抑制する指示を与えるとき、負荷抑制部1034は、定常負荷201〜20nの中で、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されにくい定常負荷から優先して消費電力を抑制する指示を与える。消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に感知されにくい定常負荷とは、例えば、上述したヒータ、ミラーヒータ、シートヒータ、及びデフォッガなどである。これらの定常負荷は、例えば、負荷抑制部1034が、ヒータに対して消費電力を抑制する指示を与えて発熱量を低下させたとしても、瞬時に車室内が冷え込んだりすることはなく、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されることはない。同様に、例えば、負荷抑制部1034が、ミラーヒータに対して消費電力を抑制させる指示を与えて発熱量を低下させたとしても、瞬時にミラーが曇ることはなく、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されることはない。
これに対して、例えば、負荷抑制部1034が、オーディオシステムに対して消費電力を抑制させる指示をすると、指示を受けたオーディオシステムが音声の出力を瞬時に停止したり、出力される音声の音量が瞬時に低下したりするなど、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されてしまう。同様に、負荷抑制部1034が、カーナビゲーションシステムに対して消費電力を抑制させる指示をすると、指示を受けたカーナビゲーションシステムが表示画面の輝度を下げる、或いは処理を継続しながら表示装置のみの電源をオフにする(所謂表示装置のスリープ)など、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されてしまう。
したがって、負荷抑制部1034は、定常負荷201〜20nの中で、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されにくい定常負荷から優先的に消費電力を抑制する指示を与える。尚、定常負荷201〜20nのいずれかに対して消費電力を抑制する指示を与えたとしても、端子電圧が閾値未満である場合には、負荷抑制部1034は、同一の定常負荷に対してさらに消費電力を抑制する指示、或いは、次に優先順位の高い他の定常負荷に電力を抑制する指示などを与える。また、定常負荷201〜20nの中で、負荷抑制部1034から消費電力を抑制する指示を与えられた定常負荷が消費電力を抑制する手法は任意の周知の手法であってよい。
以上が、本実施形態に係る電源制御装置1の説明である。本実施形態に係る電源制御装置1によれば、自車両の搭乗者に対する快適な環境を損なうことなく、定常負荷の消費電力を抑制して予備電圧を維持することができる。そして、本実施形態に係る電源制御装置1によれば、予備電圧を維持することによって、大電力負荷が不意に動作したとしても、端子電圧が最低電圧未満になることを防げる。
尚、予備電圧を定める手法の具体的な一例としては、大電力負荷301〜30nのそれぞれの最大消費電流を加算した電流と蓄電部102の内部抵抗とを乗算して算出した電圧を最低電圧に加算した電圧を予備電圧とする手法が挙げられる。この手法を用いることにより、例えば、大電力負荷301〜30nが略同時に最大消費電流で動作を開始したとしても端子電圧が最低電圧未満となることを防げる。
また、第1の実施形態では、記憶部1032に記憶されている予備電圧を閾値として設定し、設定された閾値を負荷抑制部1034が電圧値と比較するものとしたが、負荷抑制部1034が電圧値と記憶部1032に記憶されている予備電圧とを直接比較してもよい。
また、第1の実施形態では、接点Pの端子電圧が予め定められた閾値未満となったときに、定常負荷201〜20nに対して消費電力を抑制する指示を与えることにより、端子電圧を予備電圧以上に維持していた。しかしながら、他の一実施形態では、負荷抑制部1034が、図示しない検知部で自車両のエンジンがアイドリングしていることを検知し、且つ電圧値が閾値未満になったと判断したときには、電圧値が閾値以上となるように、図示しないエンジンECU(Electric Control Unit)に対してアイドリング時におけるエンジンの回転数を上昇させる指示を与えて、発電機101の発電量を増加させてもよい。発電機101は、上述したように、自車両のエンジンの駆動力を当該エンジンの回転数に応じた電力に変換するため、アイドリング時におけるエンジンの回転数を上昇させて発電機101の発電量を増加させる指示を与えることによって、予備電圧未満になった端子電圧を予備電圧以上にして維持することができる。
また、上述した第1の実施形態に係る負荷抑制部1034は定常負荷201〜20nのいずれかに対して、消費電力を抑制する指示の代わりに動作を停止して電力の消費を停止させる指示を与えてもよい。
(第1の実施形態の第1の変形例)
本変形例では、図4に示すように定常負荷201〜20nのそれぞれと端子Pとの間に設けられた電力調整部401〜40nのそれぞれに対して負荷抑制部1034から消費電力を抑制する指示を与えて、定常負荷201〜20nのそれぞれに供給される電力を強制的に抑制する。
電力調整部401〜40nのそれぞれは、典型的には、主にMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタなどで構成される半導体スイッチング制御回路であって、負荷抑制部1034から与えられる消費電力を抑制する指示に応じてPWM(Pulse Width Modulation)制御などの任意の公知の手法による制御をすることにより、それぞれに接続される定常負荷に供給される電力を強制的に抑制する。
以上より、本変形例によっても、第1の実施形態に係る電源制御装置1と同様の効果を得ることができる。
(第1の実施形態の第2の変形例)
第1の実施形態で説明したように、蓄電部102から蓄電電力が供給され端子電圧が降下するときの降下電圧は、蓄電部102の内部抵抗と端子Pを流れる電流とによって定まる。そこで、第1の実施形態に係る電源制御装置1が予備電圧を予め定めていたのに対し、本変形例では、蓄電部102の内部抵抗の大きさに応じて予備電圧を決定する電源制御装置3について説明する。
図5は、本変形例に係る電源制御装置3の概略構成を示すブロック図である。本変形例に係る電源制御装置3は、制御部103が蓄電部102にも接続されている点が相違する。図6は、本変形例に係る制御部103のより詳細な機能構成を示す機能ブロック図である。本変形例に係る制御部103は、第1の実施形態に係る制御部103と比較して、設定部1033が蓄電部102の内部抵抗を推定できるように蓄電部102にも接続されている点が相違する。また、本変形例では、記憶部1032に記憶されている情報も、第1の実施形態と異なる。
本変形例に係る記憶部1032には、大電力負荷301〜30nのそれぞれの最大消費電流と、第1の実施形態で説明した最低電圧とが予め記憶されている。
本変形例に係る設定部1033は、蓄電部102に接続されており、蓄電部102の内部抵抗を任意の公知の技術を用いて逐次推定する。さらに、本変形例に係る設定部1033は、記憶部1032に記憶されている大電力負荷301〜30nのそれぞれの最大消費電流と最低電圧との読み出しもする。設定部1033は、大電力負荷301〜30nのそれぞれの最大消費電流を読み出すと、読み出したそれぞれの最大消費電流を加算した総消費電流を算出する。そして、設定部1033は、推定した内部抵抗と総消費電流とを乗算することによって、大電力負荷301〜30nがそれぞれ最大消費電流で動作を開始したときに必要な最大消費電圧を算出する。最大消費電圧を算出すると、設定部1033は、記憶部1032から読み出した最低電圧に最大消費電圧を加算して予備電圧として算出し、算出した予備電圧を第1の実施形態で説明した閾値として記憶部1032に記憶させて設定する。本変形例に係る設定部1033は、蓄電部102の内部抵抗を推定するたびに、上述したように閾値を逐次設定する。
本変形例に係る負荷抑制部1034は、本変形例に係る設定部1033によって上述したように設定される閾値と電圧値とに基づいて、第1の実施形態で説明したように定常負荷201〜20nのそれぞれに消費電力を抑制する指示を与える。したがって、本変形例に係る電源制御装置3によれば、逐次推定した蓄電部102の内部抵抗に基づいて算出して設定した最適な閾値に基づいて、より正確に定常負荷201〜20nに対して消費電力を抑制する指示を与えることができる。
尚、本変形例に係る電源制御装置3では、設定部1033が蓄電部102の内部抵抗を逐次推定するたびに閾値を設定することとしたが、例えば、電源制御装置3が初めて動作したときに1度だけ推定した蓄電部102の内部抵抗に基づいて閾値を設定する、或いは、自車両のイグニッションスイッチがオンにされたときに1度だけ推定した蓄電部102の内部抵抗に基づいて閾値を設定するなど、任意のタイミングで蓄電部102の内部抵抗を推定して閾値を設定してもよい。
また、本変形例に係る電源制御装置3は、端子電圧が上述したように推定した内部抵抗に基づいて設定した閾値未満であり、且つ第1の実施形態で説明したように自車両のエンジンがアイドリングしているときに、第1の実施形態と同様に定常負荷201〜20nのそれぞれに消費電力を抑制する指示を与えてもよい。
また、本変形例に係る電源制御装置3は、大電力負荷301〜30nがそれぞれ最大消費電流で動作を開始したときに必要な最大消費電圧を算出するのではなく、大電力負荷301〜30nの中で1以上の任意の大電力負荷が最大消費電流で動作を開始したときに必要な最大消費電圧を算出するようにしてもよい。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る電源制御装置4の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電源制御装置4は、第1の実施形態に係る電源制御装置1と比較して、定常負荷201〜20nのそれぞれに代えて、定常負荷501〜50nのそれぞれを備えている点と、大電力負荷301〜30nのそれぞれに代えて大電力負荷601〜60nのそれぞれを備えている点と、制御部103に代えて制御部104を備えている点とが相違する。したがって、本実施形態に係る電源制御装置4の概略構成の中で第1の実施形態に係る電源制御装置1と同一の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、電源制御装置4が車両などの移動体(以下、自車両と称する)に搭載される場合を一例として説明する。
本実施形態に係る定常負荷501〜50nのそれぞれは、図7から明らかなように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷である。本変形例に係る定常負荷501〜50nとして適用できる負荷は、第1の実施形態で説明した定常負荷201〜20nとして適用できる負荷と同様である。ただし、第1の実施形態に係る定常負荷201〜20nのそれぞれが制御部103と接続されていたのに対して、本実施形態に係る定常負荷501〜50nのそれぞれは制御部104と接続されていない点が相違する。
本実施形態に係る大電力負荷601〜60nのそれぞれは、図7から明らかなように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷である。本実施形態に係る大電力負荷601〜60nとして適用できる負荷は第1の実施形態で説明した大電力負荷301〜30nとして適用できる負荷と同様である。ただし、本実施形態に係る大電力負荷601〜60nのそれぞれは、第1の実施形態に係る大電力負荷301〜30nと比較して、動作する以前に動作することの通知(以下、動作開始通知と称する)を制御部104にする図示しない通知部と、動作してもよいことの許可(以下、動作許可通知と称する)を制御部104から与えられる図示しない受信部とをそれぞれ備えている点が相違する。本実施形態に係る大電力負荷601〜60nのそれぞれは、動作開始通知を制御部104にした後、当該動作開始通知に対する動作許可通知を制御部104から与えられたときに動作を開始する。
例えば、本実施形態に係る大電力負荷として、第1の実施形態で説明したVSCシステムにおける電動機を適用する場合には、VSCシステムが当該電動機を動作させるときに、制御部104に動作開始通知を与え、当該動作開始通知に対する動作許可通知を制御部104から与えられたときに、当該電動機を駆動するように予め当該VSCシステムを設計しておくとよい。同様に、本変形例に係る大電力負荷として、他の大電力負荷を適用する場合にも、当該負荷の制御部や当該負荷を含むシステムが、当該負荷を動作させる以前に制御部104に動作開始通知を与え、当該動作開始通知に対する動作許可通知を制御部104から与えられたときに当該負荷を動作させるように予め当該制御部や当該システムを設計しておくとよい。また、本変形例に係る大電力負荷として適用できる負荷が動作する以前に制御部104に動作開始通知を与え、当該動作開始通知に対する動作許可通知を制御部104から与えられたときに当該負荷を動作させるために適用可能な任意の周知の技術があれば、当該技術を用いてもよい。
本実施形態に係る制御部104は、第1の実施形態に係る制御部103が定常負荷201〜20nのそれぞれに接続されていたのに対し、大電力負荷601〜60nのそれぞれに接続されている点が相違する。図8は、本実施形態に係る制御部104のより詳細な機能構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態に係る制御部104は、第1の実施形態に係る制御部103と比較して、負荷抑制部1034に代えて負荷抑制部1041を含む点と、記憶部1032を含まない点と、設定部1033を含まない点とが相違する。したがって、本実施形態に係る制御部104の機能構成の中で、第1の実施形態に係る制御部103の機能構成と同一の機能構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、負荷抑制部1041が大電力負荷601〜60nのそれぞれに接続されている。負荷抑制部1042は、大電力負荷601〜60nのいずれかから動作開始通知を受けたとき、動作開始通知をした大電力負荷に対して消費電力を抑制する指示を動作許可通知として与える。尚、大電力負荷601〜60nのそれぞれが消費電力を抑制する指示を与えられたときに、消費電力を抑制する手法は任意の周知の手法を用いてよい。
以上が、第2の実施形態に係る電源制御装置4の説明である。本実施形態に係る電源制御装置4によれば、大電力負荷601〜60nのいずれかが動作する以前に、負荷抑制部1041が、動作する大電力負荷に対して消費電力を抑制する指示を動作許可通知として与えることができる。
尚、本実施形態に係る電源制御装置4において、負荷抑制部1041が、大電力負荷601〜60nのいずれかに消費電力を抑制する指示を動作許可通知として与えるときには、大電力負荷601〜60nの中で動作開始通知を与えた大電力負荷の最大消費電流に基づいて算出した許容電流を指示する動作許可通知を与えてもよい。
この場合、本実施形態に係る制御部104に、第1の実施形態で説明した最低電圧と、蓄電部102の内部抵抗とを予め記憶している記憶部をさらに含ませる。そして、負荷抑制部1041は、大電力負荷601〜60nのいずれかから動作開始通知を受けたとき、電圧検知部1031から電圧値を取得し、記憶部1032に記憶されている最低電圧と、蓄電部102の内部抵抗とをそれぞれ読み出す。そして、負荷抑制部1042は、電圧検知部1031から取得した電圧値と最低電圧との差分を内部抵抗で除算した許容電流を算出する。
負荷抑制部1041は、許容電流を算出すると、大電力負荷601〜60nの中で、動作開始通知をした大電力負荷に対して、動作時の消費電力を、許容電流に応じた消費電力に抑制する指示を動作許可通知として与える。このとき、負荷抑制部1041は、動作開始通知をした大電力負荷が複数である場合には、平均化した許容電流に応じた消費電力に抑制する指示をそれぞれの大電力負荷に動作許可通知として与えてもよい。また、負荷抑制部1042は、動作開始通知をした大電力負荷が複数である場合には、消費電力を抑制しても自車両の搭乗者に対する安全性が損なわれない負荷に対して優先的に許容電流に応じた消費電力に抑制する指示を与えてもよい。尚、許容電流に応じた消費電力に抑制する指示を動作許可通知として与えられた大電力負荷が、動作するときの消費電力を、動作許可通知として与えられた消費電力に抑制する手法は任意の周知の手法を用いてよい。
負荷抑制部1041が算出した許容電流に応じた消費電力に抑制する指示を与えることによって、大電力負荷601〜60nのいずれかが動作するときには、事前に動作開始通知を負荷抑制部1041に与えた後、動作許可通知として与えられる許容電流に応じた消費電力に抑制した消費電力で動作する。このため、端子電圧が最低電圧未満となって、第1の実施形態で説明したように、負荷(本実施形態では、定常負荷501〜50n、及び大電力負荷601〜60n)のいずれかが異常を来すことを防げる。
また、この場合、負荷抑制部1041は、予め記憶した内部抵抗ではなく、第1の実施形態の第2の変形例で説明したように任意の周知の手法で逐次推定した蓄電部102の内部抵抗を用いて許容電流を算出してもよい。
また、本実施形態に係る電源制御装置4において、負荷抑制部1041は、算出した許容電流が、動作開始通知をした大電力負荷の最大消費電流よりも小さく、当該大電力負荷が最大消費電流で動作することが困難であると判断したときに、動作開始通知をした大電力負荷に対する動作許可通知を与えるタイミングを遅延させてもよい。
この場合、本実施形態に係る制御部104に、大電力負荷601〜60nのそれぞれの最大消費電力と、第1の実施形態で説明した最低電圧と、蓄電部102の内部抵抗とを予め記憶している記憶部をさらに含ませる。そして、負荷抑制部1041は、大電力負荷601〜60nのいずれかから動作開始通知を受けたとき、電圧検知部1031から電圧値を取得し、記憶部に記憶されている最低電圧と、蓄電部102の内部抵抗と、動作開始通知をした大電力負荷の最大消費電流とをそれぞれ読み出す。そして、負荷抑制部1042は、電圧検知部1031から取得した電圧値と最低電圧との差分を内部抵抗で除算した許容電流を算出する。
負荷抑制部1041は、許容電流を算出しながら、算出した許容電流と、記憶部から読み出した最大消費電流とを比較して、算出した許容電流が読み出した最大消費電流以上となるまで、大電力負荷601〜60nの中で動作開始通知をした大電力負荷に対する動作許可通知を与えるタイミングを遅延させる。
負荷抑制部1041が、算出した許容電流が読み出した最大消費電流以上となるまで、大電力負荷601〜60nの中で動作開始通知をした大電力負荷に対する動作許可通知を遅延させることによって、動作開始通知をした大電力負荷が最大消費電流で動作を開始して接点Pの端子電圧が最低電圧未満となって、第1の実施形態で説明したように、負荷(本実施形態では、定常負荷501〜50n、及び大電力負荷601〜60n)のいずれかが異常を来すことを防げる。
また、算出した許容電流が最大消費電流以上となるまで、大電力負荷601〜60nの中で動作開始通知をした大電力負荷に対する動作許可通知を遅延させる負荷抑制部1041が、複数の大電力負荷から略同時に動作開始通知を与えられた場合には、最大消費電流の小さい大電力負荷から順番に、許容電流が最大消費電流以上となったときに、動作許可通知を与えてもよい。
(第2の実施形態の第1の変形例)
第2の実施形態に係る電源制御装置4では、大電力負荷601〜60nの中で動作開始通知をした大電力負荷に消費電力を抑制する指示を動作許可通知として与えていた。これに対して、第2の実施形態の第1の変形例に係る電源制御装置5では、図9に示すように、大電力負荷601〜60nのそれぞれと端子Pとの間に設けられた電力調整部701〜70nのそれぞれに対して負荷抑制部1041から消費電力を抑制する指示を与えて、大電力負荷601〜60nのそれぞれに供給される電力を強制的に抑制する。
より詳細には、電力調整部701〜70nのそれぞれは、典型的には、主にMOSトランジスタなどで構成される半導体スイッチング制御回路であって、負荷抑制部1042から与えられる許容電流に応じた許容電力に抑制する指示に応じてPWM制御などの任意の公知の手法による制御をすることにより、それぞれに接続される大電力負荷に供給される電力を強制的に抑制する。
本変形例に係る負荷抑制部1041は、大電力負荷601〜60nのいずれかから動作開始通知を与えられると、電力調整部701〜70nの中で、動作開始通知をした大電力負荷に接続されている電力調整部に対して、消費電力を抑制する指示を与える。
本変形例によれば、負荷抑制部1041から電力調整部701〜70nの中で動作開始通知をした大電力負荷に接続されている電力調整部に消費電力を抑制する指示を与えることにより、第2の実施形態と同様の効果を得られる。
尚、本変形例に係る電源制御装置5において、第2の実施形態で説明したように負荷抑制部1041が動作開始通知を与えられたときに許容電流を算出するようにしてもよい。そして、本変形例に係る負荷抑制部1041は、第2の実施形態で説明したように、算出した許容電流に応じた消費電力に抑制する指示を、電力調整部701〜70nの中で、動作開始通知をした大電力負荷に接続されている電力調整部に対して与えてもよい。さらに、本変形例に係る電源制御装置5において、第2の実施形態で説明したように、算出した許容電流が最大消費電流以上となるまで、電力調整部701〜70nの中で、動作開始通知をした大電力負荷に接続されている電力調整部に対する動作許可通知を遅延させてもよい。
尚、本変形例に係る大電力負荷601〜60nのそれぞれは、第2の実施形態で説明した動作許可通知を受ける図示しない受信部を必ずしも備えてなくてもよい。
(第2の実施形態の第2の変形例)
第2の実施形態に係る電源制御装置4では、大電力負荷601〜60nの中で動作開始通知をした大電力負荷に対して消費電力を抑制する指示を動作許可通知として与えていた。これに対して、第2の実施形態の第2の変形例に係る電源制御装置6では、大電力負荷901〜90nのいずれかが動作開始通知を与えたときに、定常負荷における消費電力を抑制させる。
図10は、本変形例に係る電源制御装置6の概略構成を示すブロック図である。本変形例に係る電源制御装置6は、第2の実施形態に係る電源制御装置4と比較して、定常負荷501〜50nのそれぞれに代えて定常負荷801〜80nをそれぞれ備える点と、大電力負荷601〜60nのそれぞれに代えて大電力負荷901〜90nをそれぞれ備える点と、制御部104に代えて制御部105を備える点とが相違する。したがって、本変形例に係る電源制御装置6の構成の内、第2の実施形態に係る電源制御装置4と同一の構成については同一の参照符号を付し説明を省略する。
本変形例に係る定常負荷801〜80nのそれぞれは、図10から明らかなように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷である。本変形例に係る定常負荷801〜80nとして適用できる負荷は、第1の実施形態で説明した定常負荷201〜20nとして適用できる負荷と同様である。また、本変形例に係る定常負荷801〜80nのそれぞれは、制御部103に接続されていた第1の実施形態に係る定常負荷201〜20nと同様に、制御部105に接続されている。
本変形例に係る大電力負荷901〜90nのそれぞれは、図10から明らかなように接点Pの端子電圧に応じた電力で動作する負荷である。本変形例に係る大電力負荷901〜90nとして適用できる負荷は第1の実施形態で説明した大電力負荷301〜30nとして適用できる負荷と同様である。また、本変形例に係る大電力負荷901〜90nのそれぞれは、第2の実施形態に係る大電力負荷601〜60nと同様に、動作開始通知を動作する以前に制御部105に与える図示しない通知部と、動作許可通知を制御部105から与えられる図示しない受信部とをそれぞれ備えている。本変形例に係る大電力負荷901〜90nのそれぞれは、動作開始通知を制御部105にした後、当該動作開始通知に対する動作許可通知を制御部105から与えられたときに動作を開始する。
本変形例に係る制御部105は、第2の実施形態に係る制御部104が大電力負荷601〜60nのそれぞれにのみ接続されていたのに対し、定常負荷801〜80nのそれぞれと、大電力負荷901〜90nのそれぞれとに接続されている点が相違する。図11は、本変形例に係る制御部105のより詳細な機能構成を示す機能ブロック図である。
本変形例に係る制御部105は、第2の実施形態に係る制御部104と比較して、負荷抑制部1041に代えて負荷抑制部1051を含む点が相違する。したがって、本変形例に係る制御部105の機能構成の中で、第2の実施形態に係る制御部104の機能構成と同一の機能構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
負荷抑制部1051は、定常負荷801〜80nのそれぞれと、大電力負荷901〜90nのそれぞれとに接続されている。負荷抑制部1051は、大電力負荷901〜90nのいずれかから動作開始通知を受けたとき、定常負荷801〜80nに対して、第1の実施形態に係る負荷抑制部1034と同様に、消費電力を抑制する指示を与える。定常負荷
801〜80nに対して消費電力を抑制する指示を与えると、負荷抑制部1051は、大電力負荷901〜90nの中で動作開始通知を受けた大電力負荷に対して動作許可通知を与えて、当該大電力負荷の動作を開始させる。
以上が、本変形例に係る電源制御装置6の説明である。本変形例に係る電源制御装置6は、大電力負荷901〜90nのいずれかが動作をする以前に、定常負荷801〜80nのいずれかの消費電力を予め抑制させてから大電力負荷を動作させる。このため、本変形例に係る電源制御装置6によれば、大電力負荷901〜90nのいずれかが不意に動作を開始して接点Pの電圧が最低電圧未満になり、定常負荷801〜80n、及び大電力負荷901〜90nのいずれかに異常が生じることを防げる。
尚、本変形例に係る電源制御装置6において、負荷抑制部1051が、定常負荷801〜80nのいずれかに消費電力を抑制する指示を与えるときには、大電力負荷901〜90nの中で動作開始通知を与えた大電力負荷の最大消費電流だけ消費電流を抑制する指示をしてもよい。
この場合、本変形例に係る制御部105に、さらに、大電力負荷901〜90nのそれぞれの最大消費電流を対応づけて予め記憶している記憶部を含ませる。そして、負荷抑制部1051は、大電力負荷901〜90nのいずれかから動作開始通知を受けたとき、動作開始通知を受けた大電力負荷に対応する最大消費電流を記憶部から読み出す。
負荷抑制部1051は、動作開始通知を受けた大電力負荷に対応する最大消費電流を記憶部から読み出すと、動作するときの消費電流を、読み出した大電力負荷の最大消費電流だけ抑制する指示を、定常負荷801〜80nのいずれかに与える。負荷抑制部1051は、大電力負荷の最大消費電流だけ、動作するときの消費電流を抑制する指示を、定常負荷801〜80nに対して与えるとき、第1の実施形態で説明したように、消費電力を抑制させたことが自車両の搭乗者に瞬時に感知されにくい定常負荷から優先的に指示を与える。動作開始通知を受けた大電力負荷に対応する最大消費電流だけ、動作するときの消費電流を抑制する指示を定常負荷801〜80nに対して与えると、負荷抑制部1051は、動作開始通知を受けた大電力負荷に対して動作許可通知を与えて、動作を開始させる。
これにより、本変形例に係る電源制御装置6は、大電力負荷901〜90nの中のいずれかの負荷が動作を開始する以前に、動作を開始する大電力負荷が最大消費電力で動作するときの消費電流だけ端子Pを流れる電流を予め下げておくことができ、大電力負荷901〜90nのいずれかが不意に動作を開始して、端子Pの端子電圧が最低電圧未満になることを防げる。
尚、動作開始通知をした大電力負荷の最大消費電流だけ消費電流を抑制する指示を受けた定常負荷が消費電流を抑制する手法は任意の周知の手法を用いてよい。
また、本発明に係る負荷抑制部(1034、1041、1051)、及び本発明に係る設定部1033の機能構成は、記憶装置(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなど)に格納された上述した処理を実施可能な所定のプログラムデータが、LSI、CPU或いはマイクロコンピュータなどの集積回路によって解釈実行されることで実現されてもよい。集積回路とは、自動車などの移動体に搭載されるECU(Electric Control Unit)を構成する集積回路などであってもよい。また、この場合、プログラムデータは、記憶媒体を介して記憶装置内に導入されてもよいし、記憶媒体上から直接実行されてもよい。尚、記憶媒体とは、ROMやRAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスクなどの磁気ディスクメモリ、CD−ROMやDVDやBDなどの光ディスクメモリ、及びメモリカードなどであってもよい。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。