JP2010246599A - 車両用シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シートバック30及びシートクッション20の配置位置状態は異なる着座標準位置10Aと傾倒位置10Bとする車両用シートであり、この配置位置変更はリンク機構90により行われ、リンク機構90によるシートバック30とシートクッション20の連動関係は、着座標準位置10Aにおける着座者Mの着座姿勢状態におけるシートバック30の背中接触点Pの位置関係と、シートクッション20の坐骨結節点Qの位置関係が、傾倒位置10Bにおける着座者Mの着座姿勢状態においても同一位置関係が維持される連動関係とされる。
【選択図】図3
Description
図8に示すように、車両用シート510は、2列目、3列目等の後部座席として構成されたものであり、概略、着座者Mの背凭れとなるシートバック530と、座面となるシートクッション520とから構成されている。この車両用シート510は、シートバック530が荷室等の車体構造物として形成された車体壁面580に沿って配設されており、シートクッション520が車両前後方向にスライド可能に支持されている。また、シートバック530とシートクッション520が互いに回動可能に連結されて構成されている。
なお、仮想線で示したシートバック530及びシートクッション520が着座標準位置510A(ノーマルポジション)であり、実線で示したシートバック530及びシートクッション520が傾倒位置510B(リクライニングポジション)である。
図9に図示されるように、着座標準位置510A(ノーマルポジション)における背中接触点Pは、傾倒位置510B(リクライニングポジション)においてはP1、P2となる。これは、P1は、シートバック530の回動点を中心に移動するのに対し、P2は、ヒップポイントHPを中心に移動することによる。
これと同様に、着座標準位置510A(ノーマルポジション)における坐骨結節点Qは、傾倒位置510B(リクライニングポジション)においてはQ1となる。
更に、この車両用シート510が傾倒位置510Bに位置する場合においては、着座者Mとシートバック530の重なり合うラップ代が着座標準位置510Aに位置する場合はZ1であるのに対し、傾倒位置510Bに位置する場合にはZ2となって増える構造になっている。しかし、着座者Mがシートバック530に対して、この理論上のZ2のラップ代まで沈み込まない。そのため、シートバック530のクッションパッドの反発力が着座者Mを前に押し出す圧力となって作用して、より一層着座者Mが車両前方側に押し出されることとなり、足先のスペースがより一層減少するという問題が顕著となる。
この特許文献1のシートは、シートクッションを前方にスライドさせると共に、リンク機構によってシートクッションを上下動させることによって、着座標準位置と傾倒位置のシートバックにおける背中接触点のズレを抑制しようとするものである。
ここで、図9に図示されるように、破線で図示された位置に位置するシートバック530及びシートクッション520の位置が「背ズレX」「尻ズレY」は生じない位置である。この車両用シート510がリクライニングするときのシートバック530及びシートクッション520の動きについて、換言した表現で説明すると、シートバック530は着座者の背中に張り付いた状態で傾倒位置510Bに位置し、シートクッション520は着座者の尻部に張り付いた状態で傾倒位置510Bに位置するような動作をすることができれば、「背ズレX」「尻ズレY」は生じない。そこで、本発明者は鋭意検討の結果、「背ズレX」「尻ズレY」が生じること無くシートバック530及びシートクッション520が変更作動するメカニズムについて着座者の体の一部のうち以下の二つの部位を基準とした二つの視点から着目した。
シートクッションは変更作動をしないで、固定保持された状態と仮定する。この状態では、着座者の坐骨結節点が一切動かないため「尻ズレY」が生じることはない。
この状態で、シートバックが、シートクッションの側面視で見て坐骨結節点との空間位置関係が変わることなく、坐骨結節点を中心に変更作動することができれば「背ズレX」が生じることが無い。すなわち、シートクッションとシートバックの着座標準位置から傾倒位置への配置位置変更は、シートクッションの側面視で見た坐骨結節点を中心として回転するように変更作動することができれば、「背ズレX」「尻ズレY」は生じない。
先ず、第1の発明は、着座者の背凭れとなるシートバックと、座面となるシートクッションとからなり、該シートバック及びシートクッションは該シートバック及びシートクッションが車体等の装着部位に対して配置される配置位置状態が該シートクッションとシートバックのなす角度も異なる角度とされる、異なる配置位置状態の第1の配置位置状態と第2の配置位置状態とをとることが可能とされた車両用シートであって、前記シートバック及びシートクッションの第1の配置位置状態と第2の配置位置状態との配置位置変更はシートバックとシートクッションに対する変更作動が連動して行われる連動変更手段により行われ、該連動変更手段によるシートバックとシートクッションの連動関係は、前記シートバック及びシートクッションの第1の配置位置状態における着座者の着座姿勢状態におけるシートバックへの着座者の背中の接触する背中接触点の位置関係と、シートクッションへの着座者の坐骨結節が接触する坐骨結節点の位置関係が、前記シートバック及びシートクッションの第2の配置位置状態における着座者の着座姿勢状態においても同一位置関係が維持される連動関係とされることを特徴とする。
すなわち、上述した第1の発明であって、前記連動変更手段は、前記シートバックとシートクッションが機械的連結機構によって連結されて変更作動が連動される構成となっており、着座者の胴部と大腿部との回転中心であり着座者の股関節に相当するヒップポイントに対する前記シートバックの相対的な配置位置状態は、第1の配置位置状態における前記シートバックの配置位置状態に比べて、第2の配置位置状態における前記シートバックが前記ヒップポイントに対して車両下方側に配置位置変更し且つ車両後方側に傾倒した姿勢角度に配置位置変更した配置位置状態となっており、前記ヒップポイントに対する前記シートクッションの相対的な配置位置状態は、第1の配置位置状態における前記シートクッションの配置位置状態に比べて、第2の配置位置状態における前記シートクッションが前記ヒップポイントに対して車両前方側に配置位置変更した配置位置状態となっていることを特徴とする場合である。
また、ヒップポイントに対するシートバックの相対的な配置位置状態は、第1の配置位置状態に比べて第2の配置位置状態ではヒップポイントに対して車両下方側に配置位置変更し且つ車両後方側に傾倒した姿勢角度に配置位置変更する。加えて、シートクッションは、ヒップポイントに対して車両前方側に配置位置変更した配置位置状態となっている。
このシートバック及びシートクッションの配置位置変更によって、着座者におけるヒップポイントは、従来のように車両前方側にスライドするのみではない。すなわち、着座者のヒップポイントは、車両前後方向と車両上下方向へ移動量を分散することによって、実質的に車両前後方向への移動量を抑制することができる。
これにより、第2の配置位置状態における着座者の足先のスペースの減少を抑制することができる。
この着座者の足先スペース減少の抑制は、実質的に車室空間にゆとりができ、その分車両のホイールベースの短縮をすることができるため、車両重量、コスト等車両性能上における効果が期待できるものである。
そのため、この撓み量を考慮してシートクッションに対する着座者の坐骨結節点の相対位置が補正されることによって、より一層、着座者の「背ズレ」「尻ズレ」の解消を達成することができる。
先ず、上記第1の発明の車両用シートによれば、着座者の「背ズレ」、「尻ズレ」を解消することができる。すなわち、着座者が、例えば第1の配置位置状態としての着座標準位置で着座して決定されたシートとの接触位置関係が第2の配置位置状態としての傾倒位置においても変わらないため着座者は不快感を得ることがない。また、「背ズレ」、「尻ズレ」に伴う座りなおし等の煩わしさも解消する。また、例えば、ランバーサポート、シートヒーター、ベンチレータ、センサー等が装備された車両用シートの場合には、これらの位置が傾倒位置においても異なることがなくなるということも期待できる。
なお、図1から図3は、構成要素を簡素化して示し、且つ一部の構成を省略して示した図である。これに伴い、図1から図3は、実施例1の車両用シート10の構成のうち、ヘッドレスト70、シートクッション20、シートバック30の骨格や細部の詳細構成については、図示を省略して図示している。なお、各図において、矢印で示すFWD、UPRは車両用シート10の前方、上方を示している。本実施例1の説明において、先ずこの車両用シート10の全体概要を説明した上で、構造の詳細の説明を行う。本実施例1の車両用シート10は、着座標準位置10Aと傾倒位置10BにおいてヒップポイントHに対するシートバック30及びシートクッション20の相対的な配置位置状態に特徴を有している。その他の部分については特に変更を要しないのでその説明は省略することがある。
図1及び図2に図示されるように、車両の後部座席の車両用シート10は、主に着座者Mの背凭れとなるシートバック30と、着座者Mの座面となるシートクッション20と、着座者Mの頭もたれとなるヘッドレスト70から構成されている。この車両用シート10は、シートバック30及びシートクッション20が配置される車両の車体の装着部位に対して配置位置状態が、異なる配置位置状態の着座標準位置10A(図1参照)と傾倒位置10B(図2参照)をとることが可能として配置されている。
図2に図示されるように、本発明の「第2の配置位置状態」が傾倒位置10B(リクライニングポジション)である。このときの傾倒位置10Bにおける着座者M及びシートバック30の姿勢角度Eは45度である。また図2において、傾倒位置10B(リクライニングポジション)におけるシートバック30はシートバック傾倒位置30Bであり、シートクッション20はシートクッション傾倒位置20Bである。また、このときの着座者MのヒップポイントをヒップポイントHBとして図示している。
また、図3は、実施例1に係る車両用シートにおいて着座標準位置と傾倒位置を重ねて示した概略図である。
図3においては、仮想線で示した車両用シートが着座標準位置10A(ノーマルポジション)であり、実線で示した車両用シートが傾倒位置10B(リクライニングポジション)である。
このリンク機構90の作動によって、シートバック30及びシートクッション20は着座した着座者Mの胴部と大腿部との回転中心であり着座者Mの股関節に相当するヒップポイントHに対して相対的な位置を変えて移動する。
図3に図示されたヒップポイントHAからヒップポイントHBへの移動軌跡からわかるように、着座者Mはリンク機構90の作動によるシートバック30及びシートクッション20の配置位置変更によって、車両前方側且つ上方側に持ち上げられるように移動している。
先ずこの車両用シート10が配設される車体構造について説明する。
図1及び図2に図示されるように、この車両シート10の背面側には、荷室を構成するために車両後方側に傾斜した車体壁面80がシートバック30の肩部近傍まで形成されている。また、車両用シート10の下方側のフロア形状は段差状に形成されている。詳細には、最下面は、着座者Mの足を置く車室フロアFの面となっている。この最下面の車室フロアFから、略垂直に壁面が形成されて一段高いシートクッション配設フロア82が形成されている。このシートクッション配設フロア82は、シートクッション20の後端部から前端部(車両前方側)に向かって緩やかに車両上方側に傾斜して形成されている。
このように、この車両用シート10の後方側には、車体構造物として車体壁面80が形成されていることからシートバック30の後方側にはスペースが確保されていない。
同様に、車両用シート10の後方側においてもスペースは確保されていない。そのため、車内レイアウト上、シートバック30のリクライニング動作に制約がある。すなわち、シートクッション20が不動の状態でシートバック30が後方側に傾倒する動作はできない構成となっている。また、シートクッション20は車両下方側に傾倒する動作もできない構成である。
図1及び図2に図示されるように、シートクッション20は、着座者Mの座面として構成されているものである。図1及び図2において図示は省略されているが、シートクッション20は、骨格フレームに発泡樹脂製のシートパッドで覆われており、表皮が掛け付けられている。また、内部には適宜、シートヒーター、ベンチレータ、センサー等が装備されている。
また、この車両用シート10には、適宜、オットマン装置22が構成される。本実施例1においては、このオットマン装置22を有する車両用シート10として説明する。
図1及び図2に図示されるように、この車両用シート10には、オットマン装置22を有している。このオットマン装置22は、着座者Mの下腿部を支えるために構成されるものである。オットマン装置22は、シートクッション20の前端部に設けられており、オットマン本体とアクチュエータ(図示を省略)によって作動する構成となっている。図示を省略するが、オットマン本体は、シートクッション20の前端部に対して垂下した垂下位置と、シートクッション20から車両前方側に略水平に張り出した展開位置との間にて位置を移動する。
図1及び図2に図示されるように、その支持構成は、先ず上記シートクッション配設フロア82にスライドレール84が左右一対且つ平行に配設されている。このスライドレール84は、シートクッション配設フロア82側に結合されるロアレール86とこのロアレール86上をスライド可能に支持されるアッパーレール88から構成されている。
シートクッション20の骨格フレームにはアッパーレール88が、ロアレール86に対応して左右一対且つ平行に結合されている。これにより、シートクッション配設フロア82側に結合されるロアレール86上にスライド可能に支持されている。
また、図示を省略するが、シートクッション20には、このシートクッション20をスライドレール84上に固定保持する保持機構が備えられている。この保持機構を解除して、シートクッション20を手動で車両前方FWD方向にスライド移動させることによってシートクッション20はシートクッション着座標準位置20Aからシートクッション傾倒位置20Bに移動させることができる。
図1及び図2に図示されるように、シートバック30は、着座者Mの背凭れとして構成されているものである。図1及び図2において図示は省略されているが、シートバック30は、骨格フレームに発泡樹脂製のシートパッドで覆われており、表皮が掛け付けられている。また、内部には適宜ランバーサポート、シートヒーター、ベンチレータ、センサー等が装着されている。
図1及び図2に図示されるように、シートバック30は、荷室を構成するために車両後方側に傾斜した車体壁面80に沿って配設されている。
また、シートバック30の側部には係合突起110が形成されている。また、この係合突起110に対面する車体側壁には車両上下方向に形成された係合長穴112が設けられている。シートバック30は係合突起110を中心に回転可能である。また、係合突起110が係合長穴112に係合することで車両上下方向及び車両前後方向への移動が規制された状態で支持されている。なお、係合突起110が車体側に設けられており、係合長穴112がシートバック30の側部に設けられるものであってもよい。
シートバック30がシートバック着座標準位置30Aに位置するときの係合突起110の位置状態が図1の位置状態であり、この位置状態における係合突起を符号110Aとして示した。また、シートバック30がシートバック傾倒位置30Bに位置するときは係合長穴112によって導かれて係合突起110は図2に示す位置状態となる。この位置状態の係合突起を符号110Bとして示した。
図1及び図2に図示されるように、このリンク機構90は、シートバック30とシートクッション20が連結されると共に車体構造側へも連結されている。
このリンク機構90の構成は、概略、直線リンク92、L字リンク100の構成からなる。この二つが連動することによって、シートバック30とシートクッション20が連動して車両用シート10は着座標準位置10Aから傾倒位置10Bに配置位置変更を可能としている。
図1及び図2に図示されるように、この直線リンク92は、シートクッション配設フロア82に配設されたロアレール86とシートクッション20を連結してシートクッション20の前端部を支持するものである。また、後述のL字リンク100と共に連動することでシートクッション20をシートクッション着座標準位置20Aからシートクッション傾倒位置20Bに配置位置変更させるために構成されたものである。
この直線リンク92の一端はロアレール枢着点94として、シートクッション配設フロア82側に結合されたロアレール86に回動可能に枢着されている。なお、ロアレール86に枢着する構成以外に車体構造物に枢着された構成であってもよい。また直線リンク92の他端は、シートクッション前端部枢着点96として、シートクッション20の前端部の下面において回動可能に枢着されている。
直線リンク92は、シートクッション着座標準位置20Aに位置するときは車両後方側に傾倒した符号92Aの位置に位置しており、このときのシートクッション前端部枢着点96は図1に示すシートクッション前端部枢着点96Aの位置に位置している。また、直線リンク92は、シートクッション傾倒位置20Bに位置するときは車両上方に起立した図2に示す符号92Bの位置に位置しており、このときのシートクッション前端部枢着点96は図2に示すシートクッション前端部枢着点96Bの位置に位置している。
図1及び図2に図示されるように、このL字リンク100は、シートバック30とシートクッション20を連結して互いに支持すると共にこれらを連動させて車両用シート10を着座標準位置10A及び傾倒位置10Bに配置位置変更させるためのものである。このL字リンク100は、金属製の帯板状の部材が屈曲した略L字状に形成されており、両端は開孔部が形成されている。このL字リンク100の一端はシートバック枢着点102として、シートバック30の骨格フレームの下端部に回動可能に枢着されている。またL字リンク100の他端はシートクッション後端部枢着点104として、シートクッション20の後端部の下面に回動可能に枢着されている。また、屈曲部分はアッパーレール枢着点106として、スライドレール84のアッパーレール88に回動可能に枢着されている。
また、シートバック枢着点102は、車両用シート10が着座標準位置10Aに位置するときには、図1に示すシートバック枢着点102Aの位置に位置しており、車両用シート10が傾倒位置10Bに位置するときには図2に示すシートバック枢着点102Bの位置に位置している。
また、シートクッション後端部枢着点104は、車両用シート10が着座標準位置10Aに位置するときには、図1に示すシートクッション後端部枢着点104Aの位置に位置しており、車両用シート10が傾倒位置10Bに位置するときには図2に示すシートクッション後端部枢着点104Bの位置に位置している。
また、アッパーレール枢着点106はスライドレール84に沿ってスライド移動する。このアッパーレール枢着点106は、車両用シート10が着座標準位置10Aに位置するときには、図1に示すアッパーレール枢着点106Aの位置に位置しており、車両用シート10が傾倒位置10Bに位置するときには図2に示すアッパーレール枢着点106Bの位置に位置している。
ここでは、車両用シート10を着座標準位置10Aから傾倒位置10Bに配置位置変更する作動について図3を用いて説明する。なお、この逆の配置位置変更は以下に述べる説明の逆の作動であるため説明を省略する。
また直線リンク92はロアレール枢着点94を中心として車両前方側(図3の図示上反時計回り方向)に回転移動を行う。これにより、シートクッション前端部枢着点96は符号96Aで示す位置から車両前方且つ車両上方側の符号96Bで示す位置に移動する。
したがって、シートクッション20は、シートクッション後端部枢着点104及びシートクッション前端部枢着点96の移動によって、車両前方且つ車両上方側に持ち上げられた位置に配置位置変更する。
更にシートバック30は、シートバック枢着点102Bを中心に車両後方側に傾倒する。このときシートバック30は、係合突起110が係合長穴112によって導かれて係合突起110は符号110Aの位置から符号110Bの位置に移動してシートバック着座標準位置30Aからシートバック傾倒位置30Bに配置位置変更する。
すなわち、着座者Mが着座標準位置で着座して決定されたシート形状の位置が傾倒位置においても変わらないため着座者Mは不快感を得ることがない。また、「背ズレ」、「尻ズレ」に伴う座りなおし等の煩わしさも解消する。また、例えば、ランバーサポート、シートヒーター、ベンチレータ、センサー等が装備された車両用シートの場合には、これらの位置が傾倒位置においても異なることがなくなるということも期待できる。
このシートバック30及びシートクッション20の配置位置変更による着座者MのヒップポイントHの移動は、従来のヒップポイントHPのようにスライドレール84に沿って車両前方側にスライド移動するのみではない。すなわち、着座者MのヒップポイントHは、車両前後方向と車両上下方向へ移動量を分散することによって、実質的に車両前後方向への移動量を抑制することができる。
これにより、傾倒位置10Bにおける着座者Mの足先のスペースの減少を抑制することができる。詳しくは、従来の車両用シートの構成においては、傾倒位置を得るためのヒップポイントHPの前方移動量が115mm必要であったが本実施例1では55mmの移動量で済み車室空間が約60mm実質的に拡大することとなる。
この着座者Mの足先スペース減少の抑制は、実質的に車室空間にゆとりができ、その分車両のホイールベースの短縮をすることができるため、車両重量、コスト等車両性能上における効果が期待できるものである。
ところで、シートバックの傾倒においては、着座者Mの頭部から上方の空間は大きくなる。そのため、車両用シートが傾倒する場合においては着座者Mの着座位置をより上方側の位置に着座したとしても車室空間上の問題はない。ここで本実施例1では、着座者Mはリンク機構90の作動によるシートバック30及びシートクッション20の配置位置変更によって、車両前方側且つ上方側に持ち上げられるように移動している。これにより、着座者Mの目の高さ位置が低くなるのを抑制することができる。
図4は、実施例2に係る車両用シート210のリクライニング動作を説明する概略図である。なお、実施例2では、実施例1の車両用シート10と実質的に同様の構成及び作用を奏する箇所については同一の符号を付して説明を省略し、相違する箇所について詳しく説明をする。
図4に図示されるように、実施例2は、実施例1で示した車両用シート10の各構成は同一であるが、リンク機構90のL字リンク100の構成に変えて3点リンク120の構成を有している点について異なるものである。
この3点リンク120は、車体フロア枢着点126を中心にシートバック枢着点122とシートクッション後端部枢着点124が円弧移動することによって、着座標準位置210Aと傾倒位置210Bの配置位置変更をするものである。なお、他の構成については、実施例1で示した車両用シート10の各構成と同様のため説明を省略する。
この構成によれば、3点リンク120は、スライドレール84の構成がなくても着座標準位置210Aと傾倒位置210Bの配置位置変更をすることができる構成であり、複雑な構成を要することなく、着座者Mの「背ズレ」「尻ズレ」解消を達成することができる。また、傾倒位置210Bにおける着座者Mの足先のスペースの減少を抑制することができる。
したがって、シートクッションとシートバックの着座標準位置から傾倒位置への配置位置変更は、シートクッションの側面視で見た坐骨結節点を中心として回転するように変更作動することができれば、「背ズレ」「尻ズレ」は生じないということがわかった。
図10は、特許文献1に係る車両用シート610において着座標準位置と傾倒位置を重ねて示した概略図である。なお、本図は構成要素を簡素化して示し、且つ一部の構成を省略して示した図である。なお、図10においては、仮想線で示した車両用シートが着座標準位置610A(ノーマルポジション)であり、実線で示した車両用シートが傾倒位置610B(リクライニングポジション)である。
また、後述のL字リンク700と共に連動することでシートクッション620をシートクッション着座標準位置620Aからシートクッション傾倒位置620Bに配置位置変更させる。このとき、シートクッション620の前端部は、直線リンク692が回動して上方に持ち上げる構成となっている。
このL字リンク700は、金属製の帯板状の部材が屈曲した略L字状に形成されており、一端はシートバック630の骨格フレームの下端部に剛結合されて固定保持されている。
また、またL字リンク700の他端はシートクッション後端部枢着点704として、シートクッション620の後端部の下面に回動可能に枢着されている。また、屈曲部分はアッパーレール枢着点706として、スライドレール684のアッパーレール688に回動可能に枢着されている。
先ずアッパーレール688は、車両前後方向且つ水平方向にスライド移動するように構成されている。アッパーレール枢着点706は、このアッパーレール688のスライド移動の軌跡と、シートバックの背面に沿って下端方向に延長した位置とが交わる位置に配設されている。また、アッパーレール枢着点706のスライド移動方向における車両前方側へ延長した位置にシートクッション後端部枢着点704が構成されている。
直線リンク692の一端はロアレール枢着点694として、車体フロアF側に結合されたロアレール686に回動可能に枢着されている。なお、ロアレール686に枢着する構成以外に車体構造物に枢着された構成であってもよい。また直線リンク692の他端は、シートクッション前端部枢着点696として、シートクッション620の前端部の下面において回動可能に枢着されている。直線リンク692はロアレール枢着点694を中心として車両前方側(図10の図示上反時計回り方向)に回転移動を行う。これにより、シートクッション前端部枢着点696は符号696Aで示す位置から車両前方且つ車両上方側の符号696Bで示す位置に移動する。したがって、シートクッション620は、シートクッション後端部枢着点704及びシートクッション前端部枢着点696の移動によって、車両前方且つ車両上方側に持ち上げられた位置に配置位置変更する。
なお、着座標準位置610A(ノーマルポジション)におけるノーマルポジション坐骨結節点Qをノーマルポジション坐骨結節点QAで示し、傾倒位置610B(リクライニングポジション)における坐骨結節点Qをリクライニングポジション坐骨結節点QBで示している。図10に図示されるように、坐骨結節点Qは、ヒップポイントHとの関係を保って移動するため傾倒位置610B(リクライニングポジション)においてリクライニングポジション坐骨結節点QBの位置に位置している。
図10に「坐骨結節点を通るトルソーラインTと平行の線」として基準線TBを示す。仮に、L字リンク700のシートクッション後端部枢着点704が、この基準線TB上に配置構成されるとする(符号705の位置)。そうすると、シートバック630は、着座標準位置610A(ノーマルポジション)と、傾倒位置610B(リクライニングポジション)のいずれの位置においても、シートクッション620の側面視で見たノーマルポジション坐骨結節点QA、リクライニングポジション坐骨結節点QBとの空間位置関係が変わることがない。すなわち、ノーマルポジション坐骨結節点QA、リクライニングポジション坐骨結節点QBを中心に変更作動することになり「背ズレ」は生じない。以上のように、特許文献1に係る車両用シート610のL字リンク700は、「背ズレ」の起きない位置になるようにアッパーレール枢着点706からシートクッション後端部枢着点704までのリンク長さを設定することができるものである。
ここで、シートバックの傾倒によって着座者Mの頭部が車両下方側に沈み込んで着座者Mの目の高さ位置(アイポイント)が低くなり、着座者Mの目の高さ位置が低くなるという点が指摘されている。この点については、特許文献1に係る車両用シート610がシートクッションが車両前方側且つ上方側に持ち上げられるように移動されるため、ヒップポイントHの垂直方向に大きく移動することによって、アイポイントの変動を抑制することができる。しかし、特許文献1に係る車両用シート610の構成におけるヒップポイントHの垂直方向の移動量は大きくなるため、傾倒位置610B(リクライニングポジション)においてシートクッション620が上方に持ち上げられすぎてしまい着座者Mの足が車体フロアから届かなくなる等により不快であり新たな問題点を生ずるおそれがある。
先ず1つ目に、シートクッション後端部枢着点404は、シートクッション320を側面視で見て坐骨結節点Qが位置する同一の位置に配置構成することである。これによって、シートクッション320は、坐骨結節点Qを中心に配置位置変更をするため、シートクッション320と坐骨結節点Qの相対位置関係は変わらないため「尻ズレ」は生じない。
次に2つ目として、このシートクッション後端部枢着点404(坐骨結節点Q)の位置とアッパーレール枢着点406のスライド移動軌跡の垂直距離LAが大きくなるほど、アッパーレール枢着点406のスライド移動量が大きくなる。
次に3つ目として、アッパーレール枢着点406は、スライド移動軌跡上においてシートバック330の背面に沿って下端方向に延長した位置とが交わる位置との水平距離LBが大きいほど、着座標準位置310A(ノーマルポジション)と傾倒位置310B(リクライニングポジション)のヒップポイントHの垂直方向の移動量は少なくなる。
また、アッパーレール枢着点406とシートクッション後端部枢着点404とを結ぶ辺の長さと、アッパーレール枢着点406とシートバック330の連結位置との辺の長さを比較すると、略同一の長さ形状で形成されている。また、シートクッション後端部枢着点404は、シートクッション320を側面視で見て坐骨結節点Qが位置する同一の位置に配置構成されている。
なお、実施例1及び実施例2では、シートクッション配設フロア82は、シートクッション20の後端部から前端部(車両前方側)に向かって緩やかに車両上方側に傾斜して形成されている構成について示した。実施例3では、車体フロアFと平行して略水平に形成されたシートクッション配設フロア382が形成された構成について説明するが、いずれのシートクッション配設フロア面においても適用できるものである。
図5に図示されるように、着座者Mはシートクッション320に備えられた保持機構(図示省略)を解除してスライドレール84上に支持されたシートクッション320を車両前方側にスライド移動する。そうすると、スライドレール84上に構成されたアッパーレール88が車両前方方向にスライド移動する。このときアッパーレール88に枢着されたL字リンク400はこのアッパーレール枢着点406を中心に図5の図示上時計回り方向に回転しつつ、スライドレール84上を車両前方方向にスライド移動をする。これによりL字リンクは符号400Aで示す位置状態から符号400Bで示す位置状態にスライド移動する。またアッパーレール枢着点406は、符号406Aで示す位置状態から符号406Bで示す位置状態に移動する。
したがって、シートクッション320は、シートクッション後端部枢着点404及びシートクッション前端部枢着点96の移動によって、車両前方且つ車両上方側に持ち上げられた位置に配置位置変更する。
図6に図示されるように、このシートバック330とシートクッション320の変更作動について、換言すると、シートクッション320とシートバック330の着座標準位置310A(ノーマルポジション)から傾倒位置310B(リクライニングポジション)への配置位置変更は、シートクッション320の側面視で見た坐骨結節点Qを中心として回転するように変更作動されるものである。
すなわち、シートクッション320の配置位置変更とシートバック330の配置位置変更が同時に連動変更するため、着座標準位置310A(ノーマルポジション)から傾倒位置310B(リクライニングポジション)への配置位置変更の途中であっても「背ズレ」「尻ズレ」が生じること無くシートバック330及びシートクッション320が変更作動させることができる。よって、より快適に車両用シート310のリクライニングさせることができる。
図1、図2、図4に図示されるように、実施例1、実施例2においても同一の関係である。
図7は、実施例3に係る車両用シートの変形例のリクライニング動作を説明する概略図である。図7に図示されるように、シートクッション320及びシートバック330が着座標準位置310A(ノーマルポジション)から傾倒位置310B(リクライニングポジション)に配置位置変更されると、シートクッション320及びシートバック330に対する着座者Mの姿勢が変化する。この着座者Mの姿勢が変化によって、シートクッション320及びシートバック330に対する着座者Mの着座荷重の大きさ、着座荷重のかかる方向に変動が生じる。これにより、シートクッション320及びシートバック330が撓む撓み量が変動するためリクライニングポジション坐骨結節点QBは、この撓み量の分だけ「ズレ」が生じる。
図7に図示されるように、着座標準位置310A(ノーマルポジション)において、シートクッション320の側面視で見たシートクッション後端部枢着点404は、符号404Cで示す位置状態である。この位置状態は、ノーマルポジション坐骨結節点QAとずれた位置関係である。次に、傾倒位置310B(リクライニングポジション)に配置位置変更すると、着座者Mはより沈み込んで坐骨結節点QCに位置することとなる。このとき、シートクッション後端部枢着点404は、符号404Dで示す位置状態である。ここで、シートクッション後端部枢着点404の符号404Dの位置は坐骨結節点QCと同位置となる。よって、傾倒後においては、坐骨結節Qとシートクッション320はずれない関係となり、またシートバック330においても、坐骨結節点QCを中心に配置位置変更することとなる。
例えば、本実施例1から本実施例3においては、リンク機構90の作動について手動のものについて示したがこれに限定されるものではない。例えばリンク機構90の作動は電動によってリンク機構を作動させるものであってもよい。
本発明の車両用シートは、1列目の運転席、助手席にも適用できるものである。この場合、シートバックの側部に構成される係合突起及び係合長穴を設けるために留意が必要である。すなわち、本実施例1から本実施例3においては、係合突起及び係合長穴のいずれか一方は車体構造物に形成される例を示した。そのため、1列目の運転席、助手席に適用するにあたってこの係合突起及び係合長穴のいずれか一方を設けるためにフレーム構造を要することに留意が必要である。
10A 着座標準位置(ノーマルポジション)
10B 傾倒位置(リクライニングポジション)
20 シートクッション
20A シートクッション着座標準位置
20B シートクッション傾倒位置
22 オットマン装置
30 シートバック
30A シートバック着座標準位置
30B シートバック傾倒位置
70 ヘッドレスト
72 ヘッドレストサポート
80 車体壁面
82 シートクッション配設フロア
84 スライドレール
86 ロアレール
88 アッパーレール
90 リンク機構
92 直線リンク
92A 直線リンク
92B 直線リンク
94 ロアレール枢着点
96 シートクッション前端部枢着点
96A シートクッション前端部枢着点
96B シートクッション前端部枢着点
100 L字リンク
100A L字リンク
100B L字リンク
102 シートバック枢着点
102A シートバック枢着点
102B シートバック枢着点
104 シートクッション後端部枢着点
104A シートクッション後端部枢着点
104B シートクッション後端部枢着点
106 アッパーレール枢着点
106A アッパーレール枢着点
106B アッパーレール枢着点
110 係合突起
110A 係合突起
110B 係合突起
112 係合長穴
120 3点リンク
122 シートバック枢着点
124 シートクッション後端部枢着点
126 車体フロア枢着点
210 車両用シート
210A 着座標準位置(ノーマルポジション)
210B 傾倒位置(リクライニングポジション)
310 車両用シート
310A 着座標準位置(ノーマルポジション)
310B 傾倒位置(リクライニングポジション)
320 シートクッション
330 シートバック
382 シートクッション配設フロア
390 リンク機構
400 L字リンク
400A L字リンク
400B L字リンク
404 シートクッション後端部枢着点
404A シートクッション後端部枢着点
404B シートクッション後端部枢着点
406 アッパーレール枢着点
406A アッパーレール枢着点
406B アッパーレール枢着点
450 L字リンク
LA 垂直距離
LB 水平距離
LC 垂直距離
T トルソーライン
TA シートバック基準線
D 姿勢角度
E 姿勢角度
H ヒップポイント
HA ヒップポイント
HB ヒップポイント
M 着座者
P 背中接触点
Q 坐骨結節点
QA ノーマルポジション坐骨結節点
QB リクライニングポジション坐骨結節点
QC 坐骨結節点
FWD 車両前方FWD
UPR 車両上方UPR
Claims (4)
- 着座者の背凭れとなるシートバックと、座面となるシートクッションとからなり、該シートバック及びシートクッションは該シートバック及びシートクッションが車体等の装着部位に対して配置される配置位置状態が該シートクッションとシートバックのなす角度も異なる角度とされる、異なる配置位置状態の第1の配置位置状態と第2の配置位置状態とをとることが可能とされた車両用シートであって、
前記シートバック及びシートクッションの第1の配置位置状態と第2の配置位置状態との配置位置変更はシートバックとシートクッションに対する変更作動が連動して行われる連動変更手段により行われ、該連動変更手段によるシートバックとシートクッションの連動関係は、前記シートバック及びシートクッションの第1の配置位置状態における着座者の着座姿勢状態におけるシートバックへの着座者の背中の接触する背中接触点の位置関係と、シートクッションへの着座者の坐骨結節が接触する坐骨結節点の位置関係が、前記シートバック及びシートクッションの第2の配置位置状態における着座者の着座姿勢状態においても同一位置関係が維持される連動関係とされることを特徴とする車両用シート。 - 請求項1に記載の車両用シートであって、
前記連動変更手段は、前記シートバックとシートクッションが機械的連結機構によって連結されて変更作動が連動される構成となっており、
着座者の接触着座姿勢状態での前記シートバックの配置位置変化に対してシートクッションの側面視で見て該シートクッションに対する着座者の坐骨結節点の相対位置関係が変わることなくシートクッションも連動変更されることを特徴とする車両用シート。 - 請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記第1の配置位置状態は、前記シートクッションに対して前記シートバックが起立した位置にシートクッション及びシートバックが連動変更された着座標準位置であり、
前記第2の配置位置状態は、前記シートクッションに対して前記シートバックが傾倒した位置にシートクッション及びシートバックが連動変更された傾倒位置であり、
前記シートクッションに対する着座者の坐骨結節点の相対位置関係は前記着座標準位置の位置状態と前記傾倒位置の位置状態では、
着座者の着座荷重によってシートクッション及びシートバックが撓んだ撓み量を考慮して当該位置が補正されて連動変更されることを特徴とする車両用シート。 - 請求項1から請求項3にいずれか記載の車両用シートであって、
シートクッション及びシートバックの着座標準位置から傾倒位置への配置位置変更は、
前記シートクッションにおける前記車体等の装着部位に対する上方への配置位置変更と、前記シートバックにおける前記車体等の装着部位に対する下方への配置位置変更とが、
同時に連動変更されることを特徴とする車両用シート。
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