JP2010242787A - 複合ギヤおよびトルク伝達機構 - Google Patents

複合ギヤおよびトルク伝達機構 Download PDF

Info

Publication number
JP2010242787A
JP2010242787A JP2009089213A JP2009089213A JP2010242787A JP 2010242787 A JP2010242787 A JP 2010242787A JP 2009089213 A JP2009089213 A JP 2009089213A JP 2009089213 A JP2009089213 A JP 2009089213A JP 2010242787 A JP2010242787 A JP 2010242787A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gear
inner peripheral
tooth
core
surface layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009089213A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5206556B2 (ja
Inventor
Ryutaro Shinohara
竜太郎 篠原
Ichiro Moriwaki
一郎 森脇
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Suzuki Motor Corp
Original Assignee
Suzuki Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Suzuki Motor Corp filed Critical Suzuki Motor Corp
Priority to JP2009089213A priority Critical patent/JP5206556B2/ja
Publication of JP2010242787A publication Critical patent/JP2010242787A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5206556B2 publication Critical patent/JP5206556B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Gears, Cams (AREA)

Abstract

【課題】静粛性や摺動特性などを損なわずに、従来の樹脂ギヤでは得られない高疲労強度、高耐熱性、高耐衝撃性などの特長を有する複合ギヤおよびトルク伝達機構を提供する。
【解決手段】複合ギヤ(1)は、軸または軸への取付け部(20)を含む内周部材(2)と、ギヤ歯(11)に対応する複数の芯歯(31)を有する環状の芯部材(3)と、前記芯歯を包覆する表歯部(41)を含み前記芯部材および前記内周部材の外周部(22)を被覆する樹脂製の表層部材(4)とを備えている。前記芯部材は、金属、合金、または焼結金属で構成され、前記内周部材の前記外周部に周方向に相対変位可能に嵌合されて組立体(2,3)をなし、該組立体をインサート材として、その周囲に前記表層部材(4)が射出成形されることで、前記表層部材の側面部(42)と前記内周部材との接合部(26,46)に、周方向への相対変位を阻止する係合部(27,47)が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属等のインサートと樹脂製の表層部材で構成される複合ギヤおよびトルク伝達機構に関する。
ギヤ歯の部分を樹脂で形成した樹脂ギヤは、樹脂の大減衰・低剛性という樹脂の物性により、低振動、低騒音のトルク伝達機構を構成できることに加え、軽量であり、射出成形のみで安価に歯部を形成でき、OA機器などで広範に使用されているが、上記物性が制約となり、低負荷、低回転且つ常温付近で使用されることが殆どであった。
特許文献1には、金属製芯部材をインサートして射出成形し、ギヤ歯部を樹脂材で被覆した樹脂ギヤが開示されているが、この樹脂ギヤは、ギヤ歯部の樹脂材のみで衝撃を受けるため樹脂部への負担が大きく、高負荷時に樹脂部が損傷または剥離する問題が指摘されている。そこで、特許文献2は、金属製芯部材の中間部に樹脂製の緩衝帯を設けることを開示している。しかし、この樹脂ギヤは、相手ギヤとの噛合部分から入力される荷重により、緩衝帯が周方向に不均衡に弾性変形してギヤ部に偏心を生じるおそれがあり、高負荷での使用は不可能である。
そこで、本発明者は、特許文献3に開示されるように、ギヤ歯を含むギヤ外周部を、高弾性率かつ高強度の樹脂材からなる内芯部と、該内芯部を覆う低弾性率の樹脂材からなる表層部とで構成し、内芯部を金属製インサートの周囲に回動可能に設ける一方、表層部と金属製インサートとの接合部分に、軸回りの回動を阻止する係合部を設けることで、ギヤ部に偏心を生じずに衝撃や振動を吸収可能な樹脂ギヤを開発した。この樹脂ギヤは、静粛性や摺動特性といった樹脂ギヤの一般的な長所を保持しつつ、従来の樹脂ギヤに比べて疲労強度や耐衝撃性に対する顕著な改善が見られた。しかし、内芯部も樹脂材で射出成形されるため、高負荷で使用される金属製ギヤの代替品として見た場合、強度、特に高温強度の点でさらなる改善が望まれることとなった。
特開平11−192955号公報 特開2004−150518号公報 特開2008−151277号公報
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、静粛性や摺動特性などを損なわずに、従来の樹脂ギヤでは得られない高疲労強度、高耐熱性、高耐衝撃性などの特長を有する複合ギヤおよびトルク伝達機構を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、軸または軸への取付け部を含む内周部材(2)と、ギヤ歯に対応する複数の芯歯を有する環状の芯部材(3)と、前記芯歯を包覆する表歯部を含み前記芯部材および前記内周部材の外周部を被覆する樹脂製の表層部材(4)と、を備え、前記芯部材が、金属、合金、または焼結金属で構成され、前記内周部材の前記外周部に周方向に相対変位可能に嵌合されて組立体(2,3)をなし、該組立体をインサート材として、その周囲に前記表層部材(4)が射出成形されることで、前記表層部材の側面部と前記内周部材との接合部に、周方向への相対変位を阻止する係合部(27,47)が形成されている、複合ギヤにある。
本発明に係る複合ギヤは、上記構成により、芯歯の表面が樹脂製の表層部材(表歯部)で包覆されることで、良好な摺動特性や静粛性を得つつも、芯歯を有する芯部材に、製造法や材料選択に関する制約がなく、金属、合金、焼結金属など、疲労強度や耐熱性を優先した材料選択が可能であり、このような芯部材が、内周部材に対して周方向に相対変位可能に嵌合されることで、表層部材側面部の粘弾性的挙動による衝撃吸収が誘導され、良好な耐衝撃性が得られる。しかも、芯部材と内周部材との組立体は、それらの嵌合公差を含めて高精度に加工でき、かつ、このような組立体をインサート材として1回の射出成形で複合ギヤを製造可能であるため、成形工程が簡素化される利点もある。
本発明において、前記内周部材と前記芯部材との相対変位可能な嵌合面が、軸方向に平行なラジアル摺接面(23,33)を含む態様では、高負荷でも芯部材に偏心を生じず安定的な動作が行え、樹脂製の表層部材による耐衝撃性を最大限に得ることができる。
本発明において、前記内周部材と前記芯部材との相対変位可能な嵌合面が、軸方向に対して直交または傾斜したスラスト摺接面(24,34)をさらに含む態様では、スラスト摺接面によって芯部材の軸方向位置が規定され、表層部材側面部のスラスト荷重に対する負担が軽減され、ヘリカルギヤやベベルギヤ等、スラスト荷重を恒常的に受けるギヤへの実施に好適である。また、芯部材を内周部材に嵌合した組立体を金型内にインサートして射出成形する際に、スラスト摺接面の支持方向に対向してゲートを設置することで、樹脂材料の流入圧をスラスト摺接面で受圧可能となり、支持が不要となるとともに、樹脂材料の流入圧で芯部材が内周部材のスラスト摺接面に圧接され、嵌合面への樹脂の侵入が抑制され、表層部材の内側に隠れた芯部材の安定動作を確保するうえで有利である。
本発明において、前記表層部材が、熱可塑性樹脂のナチュラル材で射出成形され、かつ、電子線照射によって高分子鎖間に架橋構造を生じている態様では、強化繊維を含有しないことで、相手ギヤに対する攻撃性が低減されるとともに、強化繊維の端部が起点となって表層部材が損傷するのが防止される一方、架橋構造により強度および耐熱性が向上し、高疲労強度および高耐熱性を有する複合ギヤを構成するうえで有利である。
また、上記特徴を備えた複合ギヤと、それに噛合する駆動側相手ギヤとを含むトルク伝達機構において、前記相手ギヤの歯先が、チップリリーフとR形状により修整されていることが好適である。この構成により、複合ギヤ歯面への相手ギヤの歯当たりが緩和され、歯面における圧力分布が分散的になり、表層部材の損傷や劣化が抑制され、良好な摺動特性および静粛性を有するトルク伝達機構としての耐久性を向上するうえで有利である。
前記歯先修整の大きさは、前記複合ギヤに定格トルクに相当する静荷重を負荷した場合におけるギヤ歯の作用線方向の弾性変位の30%以上であることが好ましく、特に、50%以上の場合に顕著な耐久性の向上効果が得られる。また、相手ギヤの歯先修整量を上記のような静荷重負荷時の弾性変位(たわみ量)から設定することで、数多くの耐久試験を行う時間と労力を節減するうえでも有利である。
本発明実施形態の複合ギヤを示す一部切除した側面図である。 図1のA−A断面図である。 内周部材を示す一部切除した斜視図である。 芯部材を示す一部切除した斜視図である。 表層部材を示す一部切除した斜視図である。 (a)は相手ギヤのギヤ歯部を示す要部概略側面図、(b)はその歯先部分を示す拡大図である。 本発明実施例1および比較例1,2の耐久試験結果を示すグラフである。 本発明実施例1〜3の耐久試験結果を示すグラフである。 本発明実施例2,4,5の複合ギヤおよび比較例1のギヤの伝達トルク−たわみ曲線である。 本発明実施例4,5の各複合ギヤに噛合する相手ギヤへの歯先修整の有無各場合における耐久試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図面と共に詳細に説明する。
図1〜図3において、本発明に係る複合ギヤ1は、ギヤ内周部材2とその外周側の芯部材3、芯部材3および前記内周部材2の外周部22を被覆する樹脂製の表層部材4から構成されている。
内周部材2は、図2および図3に示すように、中央に軸孔20が貫通したハブ21と、その周囲にフランジ状に延在する外周部22とを有し、全体としては円盤状に形成されている。外周部22は、ハブ21の幅方向中央部から延出しており、その基部の幅方向両側にハブ21の外周面を画成する肩部26,26が形成され、各肩部26,26には、周方向に所定の間隔で複数の係止溝27(切欠部)が形成されている。図示例では、係止溝27は円溝として形成されているが、台形溝など、他の形状であっても良い。
外周部22は、最外周部に軸方向に対して平行なラジアル摺接面23を有し、該ラジアル摺接面23と一方の肩部26との中間には段部25が設けられ、該段部25とラジアル摺接面23との間の側面部にスラスト摺接面24が画成されている。外周部22は、全周に亘り一様な断面形状を成し、図2に示されるように、ラジアル摺接面23は、外周部22の基部とほぼ同じ幅を有しているが、幅方向に対して段部25の分だけオフセットされ、それに伴い、外周部22の段部25と反対側の側面には逆段部または逆傾斜部が形成されている。
芯部材3は、図2および図4に示されるように、複合ギヤ1の各ギヤ歯11に対応した複数の芯歯31、および各芯歯を周方向に結合する環状部32から構成されている。環状部32の内周側には、軸方向に略平行な最内周面35と、該最内周面35の一側に隣接して軸方向に直交する方向に配向されたスラスト摺接面34と、該スラスト摺接面34の大径側に隣接する軸方向に平行なラジアル摺接面33とが画成されており、該ラジアル摺接面33が、前記内周部材2のラジアル摺接面23に嵌合されることで、芯部材3の内周部材2に対する周方向の相対変位すなわち回動が許容され、かつ、スラスト摺接面34が、前記内周部材2のスラスト摺接面24に当接することで、前記内周部材外周部22に対する芯部材3の軸方向位置が規制されるように構成されている。また、図2に示すように、環状部32の一方の側面には、周方向に1乃至数箇所の位置決め穴38が設けられている。
表層部材4は、図2および図5に示されるように、複合ギヤ1の各ギヤ歯11に対応し、芯部材3の各芯歯31を被覆する複数の表歯部41、および芯部材3の環状部32から内周部材2の外周部22にかけての側面部分を被覆する側面部42,42から構成され、前記芯部材3を内周部材2の外周部22に嵌合した組立体(2,3)をインサート材として金型内に挿入して樹脂材により射出成形することで、側面部42,42の内周縁46,46に、内周部材2(ハブ21)の肩部26の係止溝27に係合する突起47が一体に形成され、これら突起47と係止溝27との係合によって、表層部材4の内周縁46,46と、内周部材2(ハブ21)の肩部26とは、周方向への相対変位が不可能になっている。
複合ギヤ1の射出成形には、例えば竪型射出成形機を用い、図2における左側が上になるように、金型内に組立体(2,3)をセットする。この際、予め、芯部材3を内周部材2に嵌合して組立体(2,3)を構成した状態で金型内にセットしても良いし、金型内に内周部材2をセットした後、該内周部材2に芯部材3を嵌合しても良い。その際、金型内に突設したピン(図2に38,48で示される部分に対応)を、芯部材3の位置決め穴38に係合し、芯歯31が、金型の各表歯部41に対応した凹部に位置決めする。
そして、表層部材4の一方の内周縁46に沿って設定されたディスクゲート(図示せず)を通じて金型キャビティ内に樹脂を射出することで、各表歯部41におけるウエルドラインの発生が防止されるとともに、樹脂材料の流入圧が芯部材3に一側から作用することで、芯部材3がスラスト摺接面34,24を介して内周部材2に圧接され、その先の嵌合面(24,34および23,33)内への樹脂の侵入が抑制される。
上記内周部材2および芯部材3の材質は、特に限定されるものではなく、鉄、アルミニウム、銅などの各種金属および各種合金材を使用できるが、製造コスト面からは焼結金属材が特に好適である。また、表層部材4に使用する樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂を使用可能であり、必要に応じて、熱可塑性樹脂に強化繊維などの補強材を含有することもできるが、後述する実験結果から、補強材を含まない熱可塑性樹脂のナチュラル材、特に、差出成形後の電子線照射によって高分子鎖間に架橋構造を生じるナイロンのナチュラル材が好適である。
[耐久試験1]
次に、本発明に係る複合ギヤ1の耐久性を評価するため、内周部材2および芯部材3が焼結金属で構成され、表層部材4には、補強材として炭素繊維30wt%が複合され、常温における曲げ弾性率が18GPaに強化されているポリアミド係樹脂(PA46−CF30)を用いた複合ギヤ(実施例1)を作製し、さらに、同じ焼結金属で内周部材(2)と芯部材(3)とを一体に構成して同じ樹脂でインサート成形した樹脂被覆ギヤ(比較例1)と、芯部材3を用いずに内周部材2のみを用いて同じ樹脂でインサート成形した樹脂ギヤ(比較例2)を作製して、耐久試験を行った。
なお、実施例1および比較例1、2の各ギヤは、何れも、モジュール2.5mm、圧力角20度、歯数35、基準円直径87.5mm、歯先円直径92.9mm、歯幅11mm、転位係数0.145の平歯車であり、各ギヤに噛合する相手ギヤとして、モジュール2.5mm、圧力角20度、歯数35、基準円直径87.5mm、歯先円直径92.175mm、歯幅12mm、転位係数0の鋼製平歯車(歯先修整なし)を用いてトルク伝達機構を構成し、インバーターモータにより相手ギヤを駆動する一方で、被試験ギヤにサーボモータを接続して負荷を与えた。試験条件は、伝達トルク20Nm、回転数5000rpm、100℃とし、グリース潤滑を施した。
また、芯歯31の先端の直径(以下「芯歯歯先円直径」という)については、相手ギヤと複合ギヤ1の作用線と、相手ギヤ歯先円との交点をA1、複合ギヤ歯先円との交点をA2とした場合に、作用線上においてA1からA2方向に、かみあい率の整数値×基礎円ピッチpbだけ離れた点をSとすると、芯歯歯先円直径が、複合ギヤの中心からSまでの距離rs(半径に対応)の2倍以上であることが、噛合に参加している歯数が最小の場合でも、芯歯31(芯部材3)で伝達荷重を受ける条件(表歯41に曲げ/剪断応力が生じない条件)となる。また、芯歯31が表歯41を貫通しない点で、芯歯歯先円直径は、表歯41を含めた複合ギヤ1の歯先円直径以下である。本実施例では、複合ギヤと相手ギヤとの中心間距離が88.0mm、かみあい率1.5の整数値が1であることから、2rsは89.686mmと計算され、また、複合ギヤ1の歯先円直径が92.9mmであることを考慮して、芯歯歯先円直径は、89.9mmとした。
図7は、本発明に係る実施例1および比較例1、2の各ギヤの耐久試験結果を示している。比較例1の樹脂被覆ギヤ、および比較例2の樹脂ギヤでは、それぞれ、累積回転2.0×10回転、1.5×10回転にて歯面に損傷が発生したのに対し、本発明に係る実施例1の複合ギヤでは、累積回転数4.0×10回転にて歯面に損傷が発生しており、この実験結果は、本発明に係る実施例1の複合ギヤが、比較例1の樹脂被覆ギヤに対して2倍、比較例2の樹脂ギヤに対して2.7倍の耐久性を有することを示している。
[耐久試験2]
次に、上記実施例1の複合ギヤに対して、表層部材4の樹脂材に、補強材を含まず常温における曲げ弾性率が3.3GPaと低弾性率のナイロン66であって、電子線の照射により高分子鎖間に架橋を生じる材料を使用し、射出成形後に電子線照射を施した複合ギヤ(実施例2)を作製し、前記同様に相手ギヤと組合せて耐久試験を行った。
その結果、図8に示すように、実施例2の複合ギヤでは、累積回転数2.9×10回転に至るまで歯面に損傷が発生しなかった。したがって、実施例2の複合ギヤは、表層部材4に低弾性率の樹脂材料を使用したにも拘わらず、高弾性率の樹脂材料を使用した実施例1の複合ギヤに対して耐久性が約7.3倍向上したことを示している。
この要因としては次の点が挙げられる。すなわち、表層部材4に低弾性率の樹脂材料を使用した実施例2では、噛合いが進行する際に歯面に発生する動的な負荷がギヤ全体に分散される効果が高まる点、歯面を含む表層部材4の樹脂材料に強化繊維が複合されている実施例1では、圧縮荷重に対して繊維の端部などが起点となり損傷が発生するのに対し、強化繊維などが複合されていないナチュラル材でありかつ高分子鎖間に架橋構造が生成されている実施例2では、表層部材4を構成する樹脂材の分子間の結合が圧縮負荷に対してより強固であることに加えて、高分子鎖間の架橋構造によって樹脂の溶融温度が上昇し、摩擦熱で高温になる歯面においても表層部材4が溶融し難い点である。
[耐久試験3]
次に、本発明に係る複合ギヤに組合せる相手ギヤの歯先修整の効果を検証するために、上記実施例2の複合ギヤに、図6に示すように、チップリリーフによる作用線方向の逃がし量t1が0.10mm、歯先R0.227による作用線方向の逃がし量t2が0.04mm、それらの合計0.14mmの歯先修整Tを施した相手ギヤ5を組合せて前記同様の耐久試験を行った。
その結果、図8に示すように、相手ギヤに歯先修整を施さなかった実施例2に対して、相手ギヤに歯先修整を施した実施例3では、同じ複合ギヤを組合せたにも拘わらず、累積回転数1.0×10回転においても損傷が発生せず、耐久性がさらに3.4倍以上に向上しており、相手ギヤの歯先修整が、複合ギヤの耐久性を向上するうえで有効であることが確認された。
相手ギヤ5への歯先修整Tにより複合ギヤ1の歯面の損傷発生が遅れ、耐久性が向上するメカニズムについては、次のように推察される。耐久試験における歯面の損傷発生状況を観察すると、歯先修整を施していない相手ギヤを組み合わせた実施例2では、歯面の歯元付近に損傷が発生することが認められた。すなわち、本発明に係る複合ギヤ1の耐衝撃性は、芯部材3が内周部材2に対して周方向に相対変位可能に嵌合され、表層部材4の粘弾性的挙動が誘導される構造的特徴に起因するが、その過程で、相手ギヤの歯当たりが歯先側にシフトする。そのため、歯先修整を施していない相手ギヤの場合には、その歯先角部により、複合ギヤ1の歯面(表層部材4)の歯元付近に凹み痕が発生し、この凹み痕により、歯面に発生する動的負荷の分散効果が減衰する結果、樹脂部の歯面中央付近の応力が高まり、そこを起点として亀裂が発生する。これに対して、歯先修整を行った相手ギヤを組合せた実施例3では、相手ギヤ歯先の当たりが緩和され、複合ギヤの歯面に凹み痕を生じず、歯面の動的負荷のギヤ全体への分散効果が持続するため、歯面の損傷発生が抑制されるものと考えられる。
本発明に係る複合ギヤ1では、従来の樹脂ギヤのようなギヤ歯の撓曲や樹脂層の圧縮よりも、表層部材4(側面部)の弾性変形による芯部材3の周方向への相対変位を伴ったギヤ歯のたわみ(周方向の弾性変位)が主体的である。この特徴により、良好な耐衝撃性がもたらされる一方で、たわみ量に比例して、上述した相手ギヤ歯当たりの歯先側へのシフトが大きくなる。したがって、たわみ量に基づいて歯先修整の大きさを設定すれば、本発明に係る複合ギヤ1の耐久性を高い確度で向上でき、数多くの耐久試験を行う時間と労力を節約できる。
[耐久試験4]
そこで、ギヤ歯の剛性が異なる複合ギヤを作製し、それらに、伝達トルク(定格トルク)に相当する静的負荷を与えてたわみ量を測定したうえで、歯先修整を施した相手ギヤ、歯先修整を施していない相手ギヤを組み合わせた各場合について耐久試験を行い、複合ギヤのたわみ量と相手ギヤへの歯先修整による耐久性向上効果との関係を検証した。
図9は、樹脂部材4にアラミド繊維5wt%複合のPA46−AF5を使用した歯幅11mmの複合ギヤ(実施例4)、および、同材料を使用した歯幅9mmの複合ギヤ(実施例5)に対して、静的な負荷を与えてギヤ歯のたわみ量(作用線方向の弾性変位)を測定して得られた伝達トルク−たわみ曲線を示すグラフである。なお、比較のため、電子線架橋樹脂を使用した実施例2の複合ギヤと、先述した比較例1の樹脂被覆ギヤ(ともに歯幅11mm)についても同様の測定を行った。
このグラフにおいて、伝達トルク20Nmの場合のたわみ量は、実施例3が約0.22mm、実施例4が約0.27mmであり、同じ歯幅の比較例1の樹脂被覆ギヤの約0.10mmに対して2倍以上大きくなっている。比較例1の樹脂被覆ギヤのたわみ量は、樹脂部の圧縮変形分に芯歯のたわみ分が加算されたものであるのに対し、各実施例の複合ギヤでは、芯部材3の周方向変位が許容されているため、芯歯31のたわみ分はより少ないと言え、これらの差以上に、樹脂製の表層部材4の弾性変形、特に側面部42の弾性変形が主体的であると言える。実施例5の歯幅9mmの複合ギヤでは、樹脂部分の断面積の減少に伴い、伝達トルク20Nmの場合のたわみ量が約0.44mmに増大している。
次に、実施例4および5の各複合ギヤに対して、それぞれ、歯先修整を施していない相手ギヤと、先述した耐久試験3と同様に0.14mmの歯先修整Tを施した相手ギヤとを組合せた各場合について、上記伝達トルク20Nmを負荷して耐久試験を行った。その結果、図10に示すように、実施例4の複合ギヤでは、約2.5倍という顕著な耐久性向上効果が見られた。また、実施例5の複合ギヤにおいても、約7%ではあるが、耐久性の向上が確認された。しかし、その後、伝達トルクをさらに大きくして追加試験を行ったが、歯先修整による耐久性の向上は認められなかった。
この試験結果から、複合ギヤの耐久性を向上する相手ギヤの歯先修整量について検討すると、各相手ギヤに対する歯先修整量0.14mmは、実施例4の複合ギヤのたわみ量0.27mmの約50%に相当し、実施例5の複合ギヤのたわみ量0.44mmの約30%に相当する。また、先に行った耐久試験3における実施例3の複合ギヤの、同条件でのたわみ量0.22mmの約65%に相当する。
したがって、本発明に係る複合ギヤに組み合わせる相手ギヤの歯先修整が、耐久性向上に有効となるためには、当該複合ギヤに定格トルクに相当する静的荷重を負荷した場合のたわみ量の少なくとも30%以上の歯先修整量が必要であり、前記たわみ量の50%以上の歯先修整を行えば、一層顕著な耐久性向上が見込めると言える。
なお、過大な歯先修整は、噛み合いに悪影響を及ぼすことになるため、歯形誤差とならないような範囲で行う必要がある。歯先修整を行う場合のチップリリーフによる逃がし量t1と、歯先Rによる逃がし量t2の配分は任意に設定できるが、チップリリーフと歯先Rの両方を併用することが好ましい。また、歯先修整量Tを設定する際の伝達トルク(定格トルク)は、連続運転されることを前提に設定される連続定格トルクであって、絶対最大定格ではなく、本発明に係る複合ギヤには、瞬間的なトルク変動によって相手ギヤから定格以上の衝撃トルクが入力され得ることは勿論である。
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、係合部として、内周部材2に係止溝27を、表層部材4に突起47を設ける場合を示したが、溝(切欠部)と突起の関係が逆であっても良く、また、相互の回動を阻止できる他の形状をなしていても良い。
また、上記実施形態においては、本発明を平歯車として実施する場合について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘリカルギヤ、ベベルギヤなど、他の形態のギヤとして実施することも本発明の範囲内において可能である。また、内周部材2に軸孔20を形成する代わりに、回転軸や他の回転体が一体に形成されていても良い。
1 複合ギヤ
2 内周部材
3 芯部材
4 表層部材
5 相手ギヤ
11 ギヤ歯
21 ハブ
22 外周部
23,33 ラジアル摺接面
24,34 スラスト摺接面
25 段部
26 肩部(接合部)
27 係止溝(切欠部、係合部)
31 芯歯
32 環状部
35 最内周面
38 位置決め穴
41 表歯部
42 側面部
46 内周縁(接合部)
47 突起(係合部)

Claims (6)

  1. 軸または軸への取付け部を含む内周部材と、ギヤ歯に対応する複数の芯歯を有する環状の芯部材と、前記芯歯を包覆する表歯部を含み前記芯部材および前記内周部材の外周部を被覆する樹脂製の表層部材と、を備え、前記芯部材が、金属、合金、または焼結金属で構成され、前記内周部材の前記外周部に周方向に相対変位可能に嵌合されて組立体をなし、該組立体をインサート材として、その周囲に前記表層部材が射出成形されることで、前記表層部材の側面部と前記内周部材との接合部に、周方向への相対変位を阻止する係合部が形成されている、複合ギヤ。
  2. 前記内周部材と前記芯部材との相対変位可能な嵌合面が、軸方向に平行なラジアル摺接面を含む、請求項1に記載の複合ギヤ。
  3. 前記内周部材と前記芯部材との相対変位可能な嵌合面が、軸方向に対して直交または傾斜したスラスト摺接面をさらに含む、請求項2に記載の複合ギヤ。
  4. 前記表層部材が、熱可塑性樹脂のナチュラル材で射出成形され、かつ、電子線照射によって高分子鎖間に架橋構造を生じている、請求項1〜3の何れか一項に記載の複合ギヤ。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の複合ギヤと、前記複合ギヤに噛合する駆動側相手ギヤとを含むトルク伝達機構において、前記相手ギヤの歯先が、チップリリーフとR形状により修整されていることを特徴とするトルク伝達機構。
  6. 前記歯先修整の大きさが、前記複合ギヤに定格トルクを負荷した場合におけるギヤ歯の作用線方向の弾性変位の30%以上であることを特徴とする請求項5に記載のトルク伝達機構。
JP2009089213A 2009-04-01 2009-04-01 複合ギヤおよびトルク伝達機構 Active JP5206556B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009089213A JP5206556B2 (ja) 2009-04-01 2009-04-01 複合ギヤおよびトルク伝達機構

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009089213A JP5206556B2 (ja) 2009-04-01 2009-04-01 複合ギヤおよびトルク伝達機構

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010242787A true JP2010242787A (ja) 2010-10-28
JP5206556B2 JP5206556B2 (ja) 2013-06-12

Family

ID=43096007

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009089213A Active JP5206556B2 (ja) 2009-04-01 2009-04-01 複合ギヤおよびトルク伝達機構

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5206556B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103143667A (zh) * 2011-09-10 2013-06-12 大众汽车有限公司 成型地制造齿轮的方法和可按该方法制造的齿轮
CN112392937A (zh) * 2019-08-19 2021-02-23 苏州科瓴精密机械科技有限公司 一种扭矩传递机构、电起动装置、引擎和园林工具

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5541273A (en) * 1978-09-19 1980-03-24 Daihatsu Motor Co Ltd Gear for following in engine
JPS6469860A (en) * 1987-09-11 1989-03-15 Hitachi Ltd Composite material gear
JPH04226316A (ja) * 1991-03-13 1992-08-17 Casio Comput Co Ltd 時計のスリップ機構の製造方法
JPH04366450A (ja) * 1991-06-14 1992-12-18 Toshiba Corp リール駆動装置
JP2008151277A (ja) * 2006-12-19 2008-07-03 Suzuki Motor Corp 樹脂ギヤ

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5541273A (en) * 1978-09-19 1980-03-24 Daihatsu Motor Co Ltd Gear for following in engine
JPS6469860A (en) * 1987-09-11 1989-03-15 Hitachi Ltd Composite material gear
JPH04226316A (ja) * 1991-03-13 1992-08-17 Casio Comput Co Ltd 時計のスリップ機構の製造方法
JPH04366450A (ja) * 1991-06-14 1992-12-18 Toshiba Corp リール駆動装置
JP2008151277A (ja) * 2006-12-19 2008-07-03 Suzuki Motor Corp 樹脂ギヤ

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103143667A (zh) * 2011-09-10 2013-06-12 大众汽车有限公司 成型地制造齿轮的方法和可按该方法制造的齿轮
CN103143667B (zh) * 2011-09-10 2017-04-12 大众汽车有限公司 成型地制造齿轮的方法和可按该方法制造的齿轮
CN112392937A (zh) * 2019-08-19 2021-02-23 苏州科瓴精密机械科技有限公司 一种扭矩传递机构、电起动装置、引擎和园林工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP5206556B2 (ja) 2013-06-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4919154B2 (ja) 樹脂ギヤ
EP1939492B1 (en) Injection-molded resin bevel gear
EP2623811A1 (en) Pronged sleeve-type flexible shaft coupling
JP5206556B2 (ja) 複合ギヤおよびトルク伝達機構
KR20210080315A (ko) 스퍼 기어 유닛에 사용되는 스퍼 기어, 스퍼 기어 유닛용 기어 휠 쌍, 이러한 기어 쌍을 구비한 스퍼 기어 유닛, 및 스퍼 기어의 제조 방법 및 이의 스퍼 기어 유닛에서의 사용
US20180066744A1 (en) Gear and method for producing same
US6685572B2 (en) Power transmission mechanism
US20020020540A1 (en) Electric power tool
JP5870906B2 (ja) リングギヤの取付構造
JP2007527981A (ja) 歯車駆動を備えた自動車のエンジン補機駆動装置
JP7160096B2 (ja) 樹脂製歯車
JP6680696B2 (ja) 補強リングを有する歯車の製造方法
WO2011151923A1 (ja) リングギヤとデフケースの締結構造及びそれを用いた差動装置
KR101764727B1 (ko) 베어링 장치 및 이것에 사용되는 하프 베어링
JPS5941056B2 (ja) エンジンにおける樹脂製ギヤ
DE102016207101B4 (de) Drehschwingungsdämpfer
JP2959905B2 (ja) 繊維強化樹脂歯車
JP7435226B2 (ja) 歯車
JP3469402B2 (ja) 歯車の騒音低減方法および騒音を低減された樹脂歯車成形品
JP2959907B2 (ja) 繊維強化樹脂歯車
JP2005221067A (ja) 無潤滑複合歯車
JP2021179225A (ja) 歯車
TWM623898U (zh) 複合齒輪
JP2972104B2 (ja) フェノール系樹脂成形材料及びこの材料を使用したvベルト
JP2001323990A (ja) 合成樹脂成形歯車

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20111118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121023

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121025

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130122

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130204

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160301

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5206556

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160301

Year of fee payment: 3