JP2010085430A - 感光性樹脂組成物、物品、及びパターン形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】側鎖にヘミアセタール構造を有する下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び、光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物を含有する、感光性樹脂組成物である。
【選択図】なし
Description
その一つがポリイミド前駆体の状態で露光と現像によるパターニングを行い、その後、熱処理等によりイミド化を行ってポリイミドのパターンを得る方法である。もう一つは、それ自体は感光性を持たないポリイミド自身の上に有機物や金属等でレジストパターンを形成し、その開口部をヒドラジン、無機アルカリ、有機アルカリ等の溶液や有機極性溶媒、またはそれらの混合物で処理して分解又は溶出させることにより、パターンを得る方法である。
前者は、溶媒溶解性に優れる前駆体を用いることで加工特性に優れ、後者は、高温の熱処理等が必要とされるイミド化のプロセスをパターン形成後に行う必要が無いという利点があり、それぞれの用途に応じて使い分けられている。
前駆体を利用するタイプのポリイミドをパターニングする手段としても、種々の手法が提案されている。その代表的な手法は、以下の2つに大別される。
(1) ポリイミド前駆体自身にはパターニング能力がなく、感光性樹脂層をその表面に形成し、その感光性樹脂のパターンによってポリイミド前駆体がパターニングされる手法。
(2) ポリイミド前駆体自身に感光性部位を導入し、その作用によりパターン形成する手法、または、ポリイミド前駆体に感光性成分を混合し樹脂組成物とし、その感光性成分の作用でパターン形成する手法。さらには、感光性部位の導入と感光性成分の混合の両方を組み合わせた手法。
(a) ポリイミド前駆体のポリアミック酸に、電磁波の露光前は溶解抑止剤として作用し、露光後は、カルボン酸を生成し溶解促進剤となる、ナフトキノンジアジド誘導体を混合し、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでパターン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパターンを得る手法;(特許文献1)
(b) ポリイミド前駆体のポリアミック酸に、電磁波の露光により塩基性物質となるジヒドロピリジン誘導体等の化合物を混合し、露光後に、適度な温度で加熱することにより、露光部に発生した塩基性物質の作用で露光部の現像液に対する溶解性が向上し、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでポジ型のパターン形成を行い、その後、完全にイミド化を行い、ポリイミドパターンを得る手法(特許文献2);
(d) ポリイミド前駆体のポリアミック酸と塩基性部位を有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物を混合することで、両者をイオン結合させ、そこに増感剤を混合することで露光部にラジカル対を形成して現像液に対する溶解性を低下させ、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくすることでパターン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパターンを得る手法(特許文献4);
及び、
(e) ポリイミド前駆体のポリアミック酸に、光酸(または光塩基)発生剤と架橋剤を混合し、露光後、加熱することで露光によって発生した酸(または塩基)の作用によって架橋を進行させ、現像液に対する溶解性を低下させることで、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度のコントラストを大きくしてパターン形成を行い、その後、イミド化を行い、ポリイミドパターンを得る手法;
などが提案されている。
一方、(2)のグループに属する手法では、ポリイミド前駆体(または、ポリイミド前駆体樹脂組成物)自身がパターン形成能を有するため、(1)のグループで用いたようなレジスト層が必要なく、プロセスが大幅に簡便になるという特徴がある。一方で、(c)、(d)の感光性ポリイミドは溶剤現像であり、作業環境が悪化する、また、廃液の処理比等のコストがかかるという課題がある。さらに(c)の感光性ポリイミドは、ポリアミック酸のカルボキシル基と架橋成分である(メタ)アクリロイル基がエステル結合で連結されているため、ポリアミック酸が加水分解されにくく、保存安定性が良好である一方、合成経路が煩雑であり、コストが高いと言う課題もある。
このように(a)の手法は、非常に取り扱いに優れた材料であるが、一般的なポリアミック酸は、カルボキシル基を骨格中に多く含むためアルカリ水溶液に対する溶解性が大きく、露光部と未露光部のアルカリ水溶液に対する溶解速度の差を大きく出来ず、パターン形成が難しいという課題があった。
非特許文献2では、疎水性の骨格をポリマー主鎖に導入しアルカリ水溶液に対する溶解性を低下させたポリアミック酸とo−キノンジアジド骨格を有する化合物を組み合わせることにより、良好なパターンを得られるポジ型感光性ポリイミドとしている。
また、特許文献5では、樹脂組成物を基板に塗布後に乾燥する際の加熱によってポリアミック酸の部分イミド化を行い、カルボキシル基を減らすことによりアルカリ水溶液への溶解速度を制御する方法が開示されている。また、特許文献6には、完全エステル化ポリアミド酸プレポリマーとキノンジアジド化合物を含有するポジティブ作用フォトレジストが開示されている。ここでは、ポリアミック酸のカルボキシル基をエステル化によって減らし、アルカリ水溶液に対する溶解性を制御する手法が提案されている。また、特許文献7では、ポリアミック酸をジメチルホルムアミドジメチルアセタールで処理することにより、ポリアミック酸のカルボキシル基を部分的にエステル化し、アルカリ水溶液に対する溶解性を低下させたポリイミド前駆体を用いたポジ型感光性樹脂組成物が提案されている。
このようにして、本発明の感光性樹脂組成物は、加熱という簡便な手法によりポリイミド前駆体の塩基性溶液に対する溶解性を制御することにより、最終的に得られるポリイミドの化学構造を問わず大きな溶解性コントラストを得られ、結果的に十分なプロセスマージンを保ちつつ、形状が良好なパターンを得ることができる。
上記のような構造を有する場合、最終的に得られるポリイミドの耐熱性が向上する。その為、前記式(1)中のR2のうち100モル%に近ければ近いほど、本発明の目標を達成しやすくなるが、前記式(1)中のR2のうち少なくとも33%以上含有すれば目的を達成できる。
また、ポリイミド前駆体はヘミアセタールエステル結合を有していれば、広範な構造のポリイミド前駆体を選択できる為、構造選択の幅が広い。さらには、目的に応じて、多くの種類の光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物を選択することが可能であり、感光性樹脂組成物としての構造の選択肢が多い。
また、現像液も環境汚染性が低く、安価な塩基性水溶液を利用できるので、産業上利用価値が高い。
本発明において、電磁波とは、化合物の分子内解裂反応を引き起こすことが可能なものであればよく、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び、光の作用によってカルボン酸を発生させる化合物を含有する。
その結果、ポリアミック酸のカルボキシル基をヘミアセタールエステル化したポリイミド前駆体は加熱によって、ヘミアセタールエステル結合が分解しポリアミック酸となることが確認された。この分解には、ヘミアセタールエステル結合がポリアミック酸とビニルエーテル化合物に解裂する場合と、ヘミアセタールエステル結合が水と共存していた場合加水分解され、ポリアミック酸とアセトアルデヒドとアルコールとなる場合の2通りの状態が観測された。
さらにヘミアセタールエステル結合の分解を起こす温度は、そのヘミアセタールエステル結合に結合する部位の化学構造に依存し、たとえば、エーテル酸素に結合する炭素原子が第1級炭素原子(以下、単に「1級」という場合がある)の場合比較的熱安定性が高く、第2級炭素原子(以下、単に「2級」という場合がある)、第3級炭素原子(以下、単に「3級」という場合がある)となるにつれて、分解温度が低くなる傾向がみられた。なお、本発明において、ヘミアセタールエステル結合におけるエーテル結合に結合する炭素原子(式(2)のAにおいて酸素原子と結合している炭素原子)、又はヘミアセタールエステル結合を誘導するビニルエーテル化合物のエーテル結合に結合する炭素原子について、第1級炭素原子とは、結合している他の炭素原子が0個又は1個の場合をいい、第2級炭素原子とは、結合している他の炭素原子が2個の場合をいい、第3級炭素原子とは、結合している他の炭素原子が3個の場合をいう。
このような点を考慮し、保護部位は、分子量が小さく、分解後の構造の揮発性が高いほうが、分解物のポリイミド膜への残存を抑制する点から好ましい。
さらに保護部位には、実質的に架橋性(反応性)部位を含まない方がポリイミド前駆体を合成中のゲル化を抑制でき、さらには、膜中への残存物を抑制できるので好ましい。
上記感光性樹脂組成物の溶液を、基板上に塗布した後、加熱し乾燥させ塗膜を得る。その際に、加熱条件を適宜設定することにより、ポリイミド前駆体のヘミアセタールエステル結合の分解率を調整することが可能である。このときパターン形成に最適な分解率は、ポリイミド前駆体の主鎖骨格の化学構造によって変化するが、上記ポリイミド前駆体単体の塗膜の現像液に対する溶解速度が、0.1nm/s〜100nm/sの範囲、好ましくは0.5nm/s〜50nm/sの範囲、更に好ましくは1nm/s〜20nm/sの範囲になるような分解率に設定すると良好なパターンが得られる。
このように基板上に形成されたヘミアセタールエステル結合の一部(または全て)が分解されカルボキシル基となったポリイミド前駆体の膜に対して、所望の形状のパターンが描かれたマスクを介して露光を行うことにより、露光部のみにカルボン酸を発生させることができる。ここで、光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物は、カルボン酸を発生させ、光の照射部の塩基性溶液への可溶性を増大させる機能を有し、光照射部のポリイミド前駆体の塩基性溶液への溶解を促進する働きを示す。
このようにして、露光部、未露光部において塩基性溶液に対する溶解性が変化するため、露光部が溶解し未露光部が溶解しないポジ型のパターンを得ることが出来る。
このようにして、ヘミアセタールエステル結合と光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物を組み合わせた本発明の感光性樹脂組成物は、感度が高く、低コストであるというメリットも有することができる。
さらには、適用できるポリイミド前駆体の選択範囲が広くその感光性樹脂組成物とそのイミド化物の特性を生かすことの出来る分野に広く応用される。
本発明で用いられるポリイミド前駆体は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する。
本発明のポリイミド前駆体に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
なかでも、ヘミアセタールエステル結合の安定性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(5)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、最終的に得られるポリイミドを光導波路、光回路部品として用いる場合には、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると1μm以上の波長の電磁波に対しての透過率を向上させることができる。
上記式(2)で表されるヘミアセタールエステル結合は、例えば以下のようなカルボキシル基とビニルエーテル化合物との反応により得ることができる。
この場合の活性水素を有する置換基とは、ヘミアセタールエステル結合と交換反応可能な置換基を示し、具体的には水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる(化学辞典 東京化学同人)。
更に、上記式(2)のAは、反応性を有するエチレン性不飽和結合などの反応性基が含まれる場合には、保存安定性が悪くなる傾向がある。そのため、反応性を有する不飽和結合を含有する場合であっても少量であることが好ましく、上記式(2)のA中に反応性基を含有する繰り返し単位は、式(1)で表される全繰り返し単位中に35モル%以下であることが好ましい。一方、ヘミアセタールエステル結合が切断された後のAの分解物をポリイミド膜中に残存し難くする点からは、上記式(2)のAには反応性基は含有しないことが好ましい。なお、上記反応性基には、エチレン性不飽和結合のほか、グリシジル基やオキセタニル基、イソシアヌル基が含まれる。
一方、ヘミアセタールエステル結合を得るためのビニルエーテル化合物とカルボン酸の反応は、一般に上記式(2)中のAにおいて、酸素原子と結合する炭素が1級炭素<2級炭素<3級炭素の置換基の順で高い反応率を示す。
上記式(2)のAにおいて、酸素原子と結合する炭素が3級炭素の場合、ポリイミド前駆体が若干不安定になるものの、より低温の加熱によりヘミアセタールエステル結合が分解する。その為、イミド化の為の加熱の過程でよりスムーズにヘミアセタールエステル結合の分解、及び、分解物の揮発が起こり、より短時間の加熱においても最終的に得られるポリイミド膜中の保護基由来の分解物の残存成分の量をより少なく、多くの場合は実質的にゼロにすることが出来る。また、短い反応時間でヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体を得たい場合には、Aは3級の置換基であることが好ましい。
上記式(2)のAにおいて、酸素原子と結合する炭素が2級炭素の場合、上記の1級炭素の場合と3級炭素の場合の間の特性を示し、ポリイミド前駆体の保存安定性、保護基の脱離性、及びヘミアセタールエステル結合への反応性のバランスの取れた感光性樹脂組成物とすることが可能である。
上記の加熱条件は、ポリイミド前駆体の1wt%重DMSO溶液をNMRチューブ中で加熱した場合や、厚み800μmの無アルカリガラス上に塗布し、ホットプレートによって加熱した場合などが例示され、分解率の測定方法は、NMRによるヘミアセタールエステル結合由来の水素のピークと芳香環やアミド基の水素のピークの積分比や、IRスペクトルによる、ビニルエーテル由来のピークの積分比などから求められる。
Aにおいて酸素原子と結合している炭素原子が第1級炭素原子である有機基群A1は、例えば下記式(6−1)及び式(6−1’)で表される有機基を含み、第2級炭素原子である有機基群A2は、例えば下記式(6−2)で表される有機基を含み、第3級炭素原子である有機基群A3は、例えば下記式(6−3)で表される有機基を含む。
原料入手の容易性からは、上記式(6−1)〜(6−3)のXはそれぞれ水素又はアルコキシ基であることが好ましい。
その為、上記のポリアミック酸とビニルエーテル化合物との反応は窒素原子を含有しない溶媒で行うと反応効率が良好となるが、その場合は、当初、上述のように線膨張係数が低いポリイミドを達成するポリアミック酸は完全には溶けていない場合が多い。しかし、本発明においては、ポリアミック酸の反応の進行とともにポリイミド前駆体が反応溶媒に溶解し、最終的には完全に溶解した為、定量的に目的物を得られた。
なお、本発明に用いられるポリイミド前駆体は、低沸点の非アミド系溶媒に対して高い溶解性を示すので、塗布などのプロセスにおいて操作性が向上する。
なお、上記1級、2級、及び3級のビニルエーテル化合物のうち、ポリオキシアルキレン残基を含む場合のオキシアルキレン残基の繰り返し数は、15以下となることが分解後の揮発性の点から好ましい。
活性水素を含まないポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、その他高分子化合物の例としては、ポリアミド酸エステルの繰り返し単位、ポリアミドフェノールエステルの繰り返し単位、ポリアミドフェノールエーテルの繰り返し単位、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレン、ポリエステルなどが挙げられる。
酸無水物基、または活性水素を含まない構造で末端封止する方法としては、例えば、アミン末端のポリイミド前駆体の場合は、無水酢酸でアミド化する方法や、フタル酸無水物や2,3−ナフタル酸無水物などの酸無水物で末端をアミック酸とする方法などが挙げられる。
末端が、芳香族カルボン酸であれば活性水素を持っていても、室温でビニルエーテルと反応しヘミアセタールエステル化されるので、この場合は、保存安定性を低下させない。
露光波長に対してポリイミド前駆体の透過率が高いということは、それだけ、照射光のロスが少ないということであり、高感度の感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、さらに好ましくは15%、さらに好ましくは50%以上である。
ここで用いている重量平均分子量とは、公知の手法により得られる分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値が例示され、数平均分子量は1H-NMRスペクトルから求めた末端部の繰り返し単位由来のピークと非末端部の繰り返し単位由来のピークの積分比から求める方法などが例示される。
本発明に係る感光性樹脂組成物において、上記ポリイミド前駆体の固形分は、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、溶剤を含む感光性樹脂組成物全体中に、0.1重量%〜80重量%であることが好ましく、0.5重量%〜50重量%であることがさらに好ましい。固形分濃度が0.1重量%よりも小さい場合は、得られる塗膜の膜厚が薄く、表面に凹凸のある基板に対しての追従性が低下し、塗布むらが発生しやすい。一方、固形分濃度が80重量%より大きい場合は、粘度が大きくなり塗布途中での溶媒の揮発等による膜厚むらが発生しやすくなる。
また、本発明に係る感光性樹脂組成物において、上記ポリイミド前駆体の固形分は、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、感光性樹脂組成物中の溶剤と後述するビニルエーテル化合物を除いた固形分全体に対し、30重量%以上、50重量%以上含有することが好ましい。
本発明に用いられる光の作用によってカルボン酸を発生する化合物としては、具体的には少なくとも365nm以上のいずれかの波長におけるモル吸光係数が1以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、50以上であることがより好ましい。
特に、ポリイミド中への分解残渣の残存を抑制したい場合には、窒素雰囲気下、300℃におけるカルボン酸を発生する化合物単体の熱重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがより好ましい。
ヘミアセタールエステル結合は、水酸基などの活性水素を有する化合物と共存するとそれらとの交換反応が起こる場合がある。通常ヘミアセタール結合はヘミアセタールエステル結合よりも安定であるため、上記ポリイミド前駆体と水酸基含有化合物が共存すると、ヘミアセタールエステル結合が水酸基により消費されポリアミック酸が生成する。つまり、上記ポリイミド前駆体は水酸基など活性な水素を有する化合物と共存させると安定性が低下する。ヘミアセタールエステル結合の分解反応の速度は、その化学構造により異なり、ヘミアセタールエステル結合を生成する反応の速度が速いほど、分解の速度も速い傾向がある。
また、ポリイミド前駆体の合成反応により得られた溶液をそのまま用い、そこに光酸発生剤や、必要に応じて他の成分を混合しても良い。
後述するビニルエーテル化合物は、その構造の選択により、当該溶剤の代わりになる場合もある。その場合には、感光性樹脂組成物を溶解、分散又は希釈するための溶剤は含まれなくても良い。
この中でも、溶解性に優れ高濃度の溶液を調製できる観点から、ラクトン類、スルホキシド類を用いることが好ましい。
上記ポリイミド前駆体を単離すると、保存の過程で時間の経過とともに空気中の水分等の作用により加水分解され、徐々にカルボン酸へ戻る。特に、比較的安定な脂肪族カルボン酸とビニルエーテル化合物からなる脂肪族ヘミアセタールエステル結合と異なり、芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物の反応などから得られる芳香族ヘミアセタールエステル結合は、両者を混合するだけで室温で反応が進行する反面、単体で存在すると空気中の水分などと反応し加水分解される場合が多い。
しかし、ヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体はビニルエーテルと共存させることで、加水分解によって生成したカルボン酸が、再度、ヘミアセタールエステル化される。すなわち、合成直後のヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体と同様、実質的に全てのカルボキシル基がヘミアセタールエステル化されたポリイミド前駆体となる。その為、上記ポリイミド前駆体はビニルエーテルと共存させることにより樹脂組成物としての、保存安定性が良好となる。また、複数のビニルエーテル化合物を共存させても良く、複数の保護部位を有するポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物の場合は、その保護部位の導入率を安定化させる観点から、複数の保護部位を調製するのに用いられた複数のビニルエーテル化合物を共存させた方がよい。
このサイクルが続くことで、空気中などから感光性樹脂組成物中に混入した水分などが消費され、ヘミアセタールエステル結合が再生されることから、良好な溶液安定性を示す。
ビニルエーテル化合物の量が多ければ多いほど保存安定性が良好となる一方、特に芳香族骨格を多く含んだポリイミド前駆体を用いた場合には、溶解性が低下する傾向ある。
その為、保存安定性を良好にする観点では、ポリイミド前駆体などの感光性樹脂組成物中の固形分が析出しない範囲でビニルエーテル化合物の量が出来るだけ多い方がよい。
特に、ポリイミド前駆体の吸収が360nm以上の波長にもある場合には、増感剤の添加による効果が大きい。増感剤と呼ばれる化合物の具体例としては、チオキサントン及び、ジエチルチオキサントンなどのその誘導体、クマリン系及び、その誘導体、ケトクマリン及び、その誘導体、ケトビスクマリン、及びその誘導体、シクロペンタノン及び、その誘導体、シクロヘキサノン及び、その誘導体、チオピリリウム塩及び、その誘導体、チオキサンテン系、キサンテン系及び、その誘導体などが挙げられる。しかし、これらには活性水素基を持たないことが感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。
チオキサントン及び、その誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
これらは、光の作用によってカルボン酸を発生させる化合物との組み合わせによって、特に優れた効果を発揮する為、光の作用によってカルボン酸を発生させる化合物の構造によって最適な増感作用を示す増感剤が適宜選択される。
ここで、5%重量減少温度とは、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(換言すればサンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。同様に10%重量減少温度とはサンプル重量が初期重量から10%減少した時点の温度である。
ここで本発明におけるガラス転移温度は、感光性樹脂組成物から得られるポリイミドをフィルム形状にすることが出来る場合には、動的粘弾性測定によって、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))のピーク温度から求められる。動的粘弾性測定としては、例えば、粘弾性測定装置Solid Analyzer RSA II(Rheometric Scientific社製)によって、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。感光性樹脂組成物から得られるポリイミドをフィルム形状にできない場合には、示差熱分析装置(DSC)のベースラインの変曲点の温度で判断する。
ここで、本発明における湿度膨張係数とは、本発明で得られる感光性樹脂組成物から得られるポリイミドのフィルムの湿度可変機械的分析装置(S−TMA)によって求めることができる。湿度可変機械的分析装置(例えばThermo Plus TMA8310改(リガク社製))によって、温度を25℃で一定とし、湿度を20%RHの環境下でサンプルが安定となった状態で、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長の変化を、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値を、サンプル長で割った値が湿度膨張係数である。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2として得られる。
本発明のパターン形成方法は、前記本発明に係る感光性樹脂組成物からなる膜又は成形体の形成時又は形成後に加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に前記膜又は成形体の表面に、所定のパターン状に電磁波を照射する露光工程と、塩基性溶液を現像液として用いて現像する現像工程を有する。
上記ポリイミド前駆体と光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物を含有する感光性樹脂組成物は、膜又は成形体の形成時または形成後露光前に加熱する加熱工程により、上記ポリイミド前駆体について部分的にヘミアセタールエステル結合を分解し、塩基性溶液に対する適度な溶解性を付与した後、露光工程において光の作用によって発生したカルボン酸の作用により、露光部の塩基性溶液に対する溶解性を増大させる。この溶解性の変化を利用し、所望のパターンに露光を行うことによって、露光部を塩基性溶液で溶出させることによりパターンを得ることができる。
塗布方法についても、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法などの手法が挙げられるが、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。本発明のパターン形成方法は、どの塗布方法で得られた膜においても用いることが出来る。
乾燥は、ホットプレートやオーブンなど、適宜、公知の加熱手法を用いることが出来る。
加熱方法は、公知の手法を、特に限定されることなく適宜用いることができる。
まず、例えば、ポリイミド前駆体の1wt%重DMSO溶液をNMRチューブ中で加熱し、NMRスペクトルのピークの積分比により、加熱条件とヘミアセタールエステル結合の分解率の関係を求める方法や、厚み800μmの無アルカリガラスなどの基板上に塗布し、ホットプレートによって加熱し、温度や加熱時間を変化させたサンプルを作製し、そのサンプルをそのままIRで測定しIRスペクトルによる、ビニルエーテル由来のピークの積分比より、加熱条件とヘミアセタールエステル結合の分解率の関係を求めたり、上記サンプルを重DMSOに溶かし出し、NMRを測定し、そのスペクトルの積分比により、加熱条件とヘミアセタールエステル結合の分解率の関係を求める方法などを行う。
上記のようにして求めた加熱条件とヘミアセタールエステル結合の分解率の関係から、加熱条件の範囲を適宜狭く設定する。当該狭く設定された範囲の加熱条件と同じ条件で作成したサンプルの現像液に対する溶解速度の関係を求め、用いられるポリイミド前駆体単体の塗膜の現像液に対する溶解速度が、0.1nm/s〜100nm/sの範囲、好ましくは0.5nm/s〜50nm/sの範囲、更に好ましくは1nm/s〜20nm/sの範囲になるような分解率となるように、加熱条件(加熱温度と加熱時間など)をみつけることができる。
或いは、ヘミアセタールエステル結合の分解率を求めることなく、用いられるポリイミド前駆体単体の塗膜の加熱温度や加熱時間を変化させた複数のサンプルを作製し、現像液に対する溶解速度が、0.1nm/s〜100nm/sの範囲、好ましくは0.5nm/s〜50nm/sの範囲、更に好ましくは1nm/s〜20nm/sの範囲になるようなサンプルから、加熱条件を見つけても良い。
露光の光源は、特に限定されず公知のものであれば、どれを使ってもよいが、ポリイミド前駆体、特に高耐熱、低線熱膨張係数を示す芳香族ポリイミドの場合、350nm以下の波長に強い吸収を有する為、高感度の感光性樹脂組成物として用いるには、360nm以上の波長の光で露光を行うのがよい。これらの条件と入手の容易性、メンテナンスコストなどの観点から、高圧水銀灯やそれに類する光源を用いるのが好ましい。
露光工程に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良くステッパー、スキャナー、アライナー、密着プリンター、レーザー、電子線描画等、公知のあらゆる手段を用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物の作用により、露光部、未露光部において塩基性溶液に対する溶解性を変化させることが出来る。
つまり、露光の後に、塩基性溶液で現像することにより、ポジ型パターンが得られる。
このように本発明の感光性樹脂組成物は、より安価なアルカリ水溶液を用いることができると言う利点がある。
塩基性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、濃度が、0.01重量%〜30重量%、好ましくは、0.05重量%〜10重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、その他、1級、2級、3級アミンの水溶液、水酸化物イオンとアンモニウムイオンの塩の水溶液等が挙げられる。
溶質は、1種類でも2種類以上でも良く、全体の重量の50%以上、さらに好ましくは70%以上、水が含まれていれば有機溶媒等を含んでいても良い。
現像の後に、必要に応じてリンスを行ってもよい。リンスは、水や水と上記有機溶媒の混合物、塩基性水溶液など適宜選択できる。
一般にポリアミック酸は150℃程度から徐々にイミド化が進行し、200℃以上の温度においてほぼイミド化が完了すると言われている。ただし、より高度な信頼性を求める場合には、より完全にイミド化を進行させることが必要であり、その場合は、最終的に得られるポリイミド膜のTg以上の温度での加熱が理想的である。しかし、一般には300℃〜400℃の温度で加熱すれば十分実用的な信頼性を示すポリイミド膜が得られる。
特に100℃以上の温度を加える際には、ポリイミドや基板の酸化を防止するため窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、ポリイミド中への残存物を減らすためには、減圧下で行うことが好ましい。
本発明によれば、光の作用によってカルボン酸を発生させる化合物の添加によりパターン形成可能であるので、より簡便に、高感度の感光性樹脂組成物を得られるという特徴を有する。
更には、ヘミアセタールエステル結合により導入される保護部位を分解温度の異なる2種以上のものとすることで、選択的にヘミアセタールエステル結合の分解率を制御することが可能となり、より安定的なパターン形成が可能となる。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の形成材料として好適に用いられる。
100mLの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、ジメチルアセトアミド溶媒で重合し、アセトンによって再沈殿生成後、乾燥させたBPDA−ODA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸)の白色固体 1.98g、エチレングリコールブチルビニルエーテル(EGBVE) 5g、乾燥させたガンマ−ブチロラクトン5mlを投入した。乾燥させた窒素気流下室温で、70時間マグネティックスターラーによって撹拌した。当初は、BPDA−ODAが溶解しなかったが、反応の進行とともに溶解し、褐色の溶液となった。その後、反応液の一部を乾燥させたジエチルエーテルで再沈殿し、BPDA−ODAのエチレングリコールブチルビニルエーテル保護体(ポリイミド前駆体1)の白色固体を得た。1H−NMRによって解析を行い6.2ppm付近のヘミアセタールエステル結合の酸素と酸素の間の炭素に結合する水素のピークの積分値とジフェニルエーテルの芳香環の水素のピークの積分比より保護率(カルボキシル基に対するヘミアセタールエステル結合の反応率)が100%であることを確認した。GPCにより求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は18400であった。
なお、重量平均分子量は、サンプルを0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー社製GPC装置(HLC−8120 使用カラム TSK gels α−M ;東ソー製 ×2)を用い、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求めた。
製造例1と同じ手順で、ビニルエーテル化合物としてEGBVEの代わりに、シクロヘキシルビニルエーテル(CVE:製造例2)、又は2−ビニロキシテトラヒドロピラン(THPVE:製造例3)を用いて、ポリイミド前駆体2、及び、ポリイミド前駆体3を得た。
100mLの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、ジメチルアセトアミド溶媒で重合し、アセトンによって再沈殿生成後、乾燥させたBPDA−ODA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸)の白色固体 1.98g、2−ビニロキシテトラヒドロピラン(THPVE) 5g、乾燥させたγ−ブチロラクトン10mlを投入した。乾燥させた窒素気流下室温で、44時間マグネティックスターラーによって撹拌した。当初は、BPDA−ODAが溶解しなかったが、反応の進行とともに溶解し、褐色の溶液となった。その後、反応液の一部を乾燥させたジエチルエーテルで再沈殿し、BPDA−ODAのビニルエーテル部分保護体の白色固体を得た。1H−NMRによって解析を行い6.2ppm付近のヘミアセタールエステル結合の酸素と酸素の間の炭素に結合する水素のピークの積分値とジフェニルエーテルの芳香環の水素のピークの積分比より保護率(カルボキシル基に対するヘミアセタールエステル結合の反応率)が55%であることを確認した。そこでさらに、反応液に対してシクロヘキシルビニルエーテルを5g添加し、室温で24時間攪拌した。反応液の一部を乾燥させたジエチルエーテルで再沈殿し、ポリイミド前駆体4の白色固体を得た。製造例1と同様の手順で、保護率と分子量を測定したところ、保護率は100%(CVE/THPVE=35%/65%)、GPCにより求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は18600であった。
得られたポリイミド前駆体1〜4についての反応時間、保護率及び重量平均分子量を、表1に示す。
ポリイミド前駆体1〜4の1wt%重ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を用い、NMRチューブ中で、各温度において5分加熱し、NMRを測定し、スペクトル中のピークの積分比より保護率を測定した。ポリイミド前駆体1〜4の濃度1重量%溶液中での加熱温度と保護率の関係について、図1に示す。
ポリイミド前駆体1とポリイミド前駆体4の反応溶液を、クロムめっきされたガラス上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で加熱乾燥した。加熱条件を種々変更したサンプルを、重DMSOに溶かし出し、NMRを測定することにより、各サンプルの保護率を求めた。その結果、加熱温度が高くなるに従い、また時間が長くなるに従い脱保護が進行し、保護率が低下した。ポリイミド前駆体1の塗膜における加熱温度と保護率の関係について図2に示し、ポリイミド前駆体4の塗膜における加熱温度と保護率の関係について図3に示す。
図2及び図3の結果を受けて、ポリイミド前駆体1については110℃、20分の加熱条件、ポリイミド前駆体4においては、100℃10分の加熱条件のときのサンプルの2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に対する溶解速度を求めた。その結果を表2に示す。
(1)感光性樹脂組成物の調製
(i)製造例1のポリイミド前駆体1の反応溶液に、ポリイミド前駆体1の固形分に対して20重量%のo−キノンジアジド系感光剤(4NT−300(2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンと6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホン酸とのエステル):東洋合成工業社製)を加え、攪拌を行うことで感光性樹脂組成物1を調製した。
(i)感光性樹脂組成物1を、クロムめっきされたガラス上にスピンコート法により 下記のような条件で、塗膜を形成し、種々の照射量で露光後、現像しリンスを行った。
初期膜厚: 4.0μm
乾燥: 110℃ 20分
現像(ディップ): 2.38wt%TMAH水溶液 3分(23℃)
リンス: H2O 5秒(23℃)
露光は大日本スクリーン製手動露光装置MA−1100を用いて行い、高圧水銀灯の光をフィルターを用いずに使用した。
次に、フォトマスクを介して露光を行い、パターン形成を検討したところ下記の条件で、良好な形状のパターンを得た。現像後もパターンの膜減りは観測されなかった。さらに、窒素雰囲気下350℃、1時間の加熱を行いイミド化を行ったところ、膜厚は2.6μmとなったもののパターンは崩れることなく、ベーク前の状態を維持していた。
乾燥: 110℃ 20分
露光量 :500mJ/cm2
現像(ディップ): 2.38wt%TMAH水溶液 5分(23℃)
リンス: H2O 5秒(23℃)
現像後膜厚: 4.0μm
得られたパターンを図4に示す。
初期膜厚: 4.3μm
乾燥: 100℃ 10分
現像(ディップ): 2.38wt%TMAH水溶液 5分(23℃)
リンス: H2O 20秒(23℃)
次に、フォトマスクを介して露光を行い、パターン形成を検討したところ下記の条件で、良好な形状のパターンを得た。現像後もパターンの膜減りは観測されなかった。さらに、窒素雰囲気下350℃、1時間の加熱を行いイミド化を行ったところ、膜厚は2.5μmとなったもののパターンは崩れることなく、ベーク前の状態を維持していた。
乾燥: 100℃ 10分
露光量 :800mJ/cm2
現像(ディップ): 2.38wt%TMAH水溶液 5分(23℃)
リンス: H2O 20秒(23℃)
現像後膜厚: 4.2μm
得られたパターンを図5に示す。
Claims (21)
- 下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び、光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物を含有する、感光性樹脂組成物。
- 前記光の作用によりカルボン酸を発生させる化合物が、o−キノンジアジド基を有する化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(2)中のAの少なくとも1種が、活性水素を含有しない炭素数1〜30の1価の有機基である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(2)中のAが、2種以上の有機基を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(2)中のAにおいて酸素原子と結合している炭素原子が、第1級炭素原子である有機基群をA1、第2級炭素原子である有機基群をA2、第3級炭素原子である有機基群をA3としたときに、Aが、A1とA2、A1とA3、A2とA3、又はA1とA2とA3からそれぞれ1種以上ずつ組み合わせた2種以上の有機基を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(2)中のR5、R6、R7が水素である、請求項1乃至5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(2)中のAの少なくとも1種が、エーテル結合を含有する炭素数1〜30の1価の有機基である、請求項1乃至6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 酸性物質、及び、アミンを実質的に含まない、請求項1乃至7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記光の作用によりカルボキシル酸を発生させる化合物が、436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長に吸収を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 活性水素を含有しない増感色素を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(1)中のR1及び/又はR2に、芳香環を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(1)中のR1が、芳香族テトラカルボン酸二無水物由来の骨格である、請求項1乃至11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(1)中のR1のうち33モル%以上が、下記式(3)で表わされるいずれかの構造である、請求項1乃至12のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体において、前記式(1)中のR2のうち33モル%以上が、下記式(4)で表わされるいずれかの構造である、請求項1乃至13のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 窒素原子を含有しない溶媒を含む、請求項1乃至14のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 1種以上のビニルエーテル化合物を含む、請求項1乃至15のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の形成材料として用いられる、請求項1乃至16のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記請求項1乃至17のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又はその硬化物により少なくとも一部分が形成されている、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料いずれかの物品。
- 前記請求項1乃至17のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる膜又は成形体の形成時又は形成後に加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に前記膜又は成形体の表面に、所定のパターン状に電磁波を照射する露光工程と塩基性溶液を現像液として用いて現像する現像工程を有する、パターン形成方法。
- 前記現像工程において塩基性水溶液を用いて現像し、ポジ型である、請求項19に記載のパターン形成方法。
- 前記現像工程後、前記膜又は成形体を加熱する工程を有し、当該加熱温度の最高温度が251℃以上400℃以下である、請求項19又は20に記載のパターン形成方法。
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