JP2010077007A - カーボンナノチューブ形成用基材及び該基材に配向成長したカーボンナノチューブ並びにこれらの製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ形成用基材及び該基材に配向成長したカーボンナノチューブ並びにこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 安価な非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板にカーボンナノチューブを配向成長させることが可能なカーボンナノチューブ形成用基材を提供する。
【解決手段】表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板に形成された規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体に、カーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持してなるカーボンナノチューブ形成用基材。該基材の前記筋状の溝に沿ってカーボンナノチューブが成長するため、容易に高配向で高密度なカーボンナノチューブを製造することができる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、カーボンナノチューブ形成用基材及び該基材に配向成長したカーボンナノチューブ並びにこれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板上での高配向性カーボンナノチューブの製造を可能とするカーボンナノチューブ形成用基材及び該基材に形成された筋状の溝に沿って配向成長したカーボンナノチューブに関するものである。
カーボンナノチューブは、グラフェンシート(炭素六員環からなる層)を円筒状に丸めた、直径が0.4nmから数十nm程度のチューブ状の物質であり、熱的・化学的安定性、力学的強度、電子伝導性、熱伝導性、近赤外域まで伸びた分光特性を有する優れたナノマテリアルとして注目されている。
カーボンナノチューブには、前記グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブ(SWNT)、グラフェンシートが2層である2層カーボンナノチューブ(DWNT)、グラフェンシートが2層以上の多層カーボンナノチューブ(MWNT)があるが、この中でも特にSWNTやDWNTが注目されている。
カーボンナノチューブの電子デバイス応用のためには、基板上にカーボンナノチューブを配向成長させることが望まれている。これまで、カーボンナノチューブを水平配向成長させることが可能な基板として、単結晶サファイアと水晶が報告されている(例えば、非特許文献1、2)。
エイチ アゴウ(H. Ago)、他5名、「ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Letters)」、2005年、Vol.408、P433 シー コカバス(C. Kocabas)、他5名、「スモール(Small)」、2005年、Vol.1、P1110
一方、カーボンナノチューブの電子デバイスへの応用を考えた場合、シリコン基板、特に表面に非晶質の酸化シリコン(amorphous silica,SiO2)からなる絶縁層が形成されたシリコン(Si)基板(以下、「SiO2/Si基板」と呼ぶ場合もある。)は、現在の電子デバイスに多く用いられているため有用である。また、この他にも絶縁層(SiO2)が形成されたシリコン基板は、例えば、電界効果型トランジスタ(FET)に使用する場合に下部電極によってゲート電圧を印加することができるという利点を有する。
しかしながら、前記非特許文献1、2に開示されたカーボンナノチューブの製造方法は、サファイアや水晶などの単結晶のみが有しうる特定の原子配列とカーボンナノチューブとの間の相互作用を利用して、カーボンナノチューブに配向性を持たせるものである。このため、原子配列が無秩序である非晶質の酸化シリコンの表面には、上記のようなカーボンナノチューブを配向させる相互作用が存在しないため、非特許文献1、2の製造方法をSiO2/Si基板上に適用したとしてもカーボンナノチューブを配向させることはできない。
このような状況下、本発明の目的は、SiO2/Si基板の酸化シリコン層にカーボンナノチューブを配向成長させることが可能なカーボンナノチューブ形成用基材及びその製造方法を提供することであり、さらにはこの基材上に配向成長したカーボンナノチューブ及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、SiO2/Si基板の表面の酸化シリコン層に規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体を形成すると、このトレンチ集合体によってカーボンナノチューブの成長が制御されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の<1>〜<12>の発明に係るものである。
<1> 表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板に形成された規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体に、カーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持してなるカーボンナノチューブ形成用基材。
<2> 前記トレンチ集合体が、ハロゲン化炭化水素を含む反応ガスから生成したプラズマによる表面処理を行うことによって形成されてなる前記<1>記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
<3> 前記トレンチ集合体が、リソグラフィーによって作製したパターンをエッチングすることによって形成されてなる前記<1>記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
<4> 前記エッチングが、反応性イオンエッチングである前記<3>記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
<5> 前記トレンチ集合体における、前記筋状の溝の幅が0.5〜500nmの範囲にあって、かつ、前記筋状の溝の深さが、0.3〜100nmの範囲である前記<1>から<4>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
<6> 表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板の酸化シリコン層に、規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体を形成する工程と、前記トレンチ集合体にカーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持する工程とを含むカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
<7> 前記トレンチ集合体を、ハロゲン化炭化水素を含む反応ガスから生成したプラズマによる表面処理を行うことで形成する前記<6>記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
<8> 前記ハロゲン化炭化水素が、CF4および/またはCHF3である前記<7>記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
<9> 前記トレンチ集合体を、リソグラフィーによって作製したパターンをエッチングすることによって形成する前記<6>記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
<10> 前記エッチングが、反応性イオンエッチングである前記<9>記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
<11> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成用基材における前記筋状の溝に沿って配向成長したカーボンナノチューブ。
<12> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成用基材に、CVD法によって、前記金属系触媒粒子を核として、前記筋状の溝に沿ってカーボンナノチューブを配向成長させるカーボンナノチューブの製造方法。
本発明のカーボンナノチューブ形成用基材は、安価なSiO2/Si基板表面に形成された規則的な筋状の溝に沿ってカーボンナノチューブを高密度に配向成長させることができる。また、該基材に配向成長したカーボンナノチューブは長尺で高密度に配向成長しており、電界効果型トランジスタ(FET)や高周波トランジスタなどの電子デバイスへ好適に適用可能であるため、工業的に極めて有用である。
以下、本発明につき詳細に説明する。
まず、本発明のカーボンナノチューブ形成用基材およびその製造方法について説明する。本発明のカーボンナノチューブ形成用基材(以下、単に「基材」と呼ぶこともある。)は、表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板(SiO2/Si基板)に形成された規則的な複数の筋状の溝(以下、「トレンチ(trench)」と呼ぶこともある。)からなるトレンチ集合体に、カーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持してなるカーボンナノチューブ形成用基材である。
なお、本願発明において、「カーボンナノチューブ」とは、単層のSWNTだけでなく、2層のDWNT、複層のMWNT及びこれらの混合物を含む概念であるが、本発明に係るカーボンナノチューブ形成用基材は、特にSWNTとDWNTの製造に適するものである。また、本発明において、「トレンチ集合体」とは、筋状の溝が複数(好適には10本以上)規則的に並んでいるものを指し、「規則的な複数の筋状の溝」とは、筋状の溝(トレンチ)が略平行や略放射状に並び、かつ、筋状の溝の長手方向長さが少なくとも3μm以上であるものを意味する。
なお、上記トレンチ集合体における各トレンチの形状は、その作製法などによっても異なる。図1にトレンチ集合体におけるトレンチの長手方向に直交する断面形状の模式図を示すが、トレンチ集合体における各トレンチの長手方向に直交する断面形状が、対称になる場合もあれば(図1(a)及び(b))、非対称になる場合もあり(図1(c))、また、階段状のステップ-テラス構造(図1(d))となる場合もある。
そのため、本発明においては、図1に示すように、「トレンチ幅」とは、「トレンチ(筋状の溝)における隣り合う2つの最上点(凸の部分)の間の距離」と定義する。また、「トレンチ深さ」とは、「トレンチ(筋状の溝)における最下点(凹の部分)と最上点(凸の部分)との距離」と定義する。
本発明のカーボンナノチューブ形成用基材は、SiO2/Si基板表面の非晶質の酸化シリコン層の表面に、カーボンナノチューブ数本から数百本分の幅と、カーボンナノチューブの直径と同程度から百倍程度の深さとを有するトレンチにカーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持したものであり、該基材に対して、適当な方法及び条件で炭素源を供給することによって、前記金属系触媒粒子を核として、前記トレンチに沿ってカーボンナノチューブを配向成長させることができる。
本発明におけるSiO2/Si基板は、シリコン基板表面に非晶質の酸化シリコン層が形成されているものであれば特に制限はなく、非晶質の酸化シリコン層はスパッタリング法、CVD法、熱酸化法、プラズマ酸化法等の任意の方法で形成されたものを使用できる。また、シリコン基板におけるシリコンは、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのいずれでもよく、その大きさも特に制限されないが、電子デバイス用という観点からは、通常、厚さ数mm程度が好適である。
前記非晶質の酸化シリコン層の厚みは、トレンチ集合体が形成するのに十分な厚さがあればよく、通常、20nm以上1000nm以下である。また、上記非晶質シリカ層は、純粋なSiO2であることが望ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で不純物を含んでいてもよい。
上述のように、本発明のカーボンナノチューブ形成用基材には、SiO2/Si基板表面の酸化シリコン層に筋状の溝、すなわちトレンチが複数規則配列しているトレンチ集合体が形成されおり、このトレンチがカーボンナノチューブの成長を規制し、カーボンナノチューブの配向成長に寄与するものと推測される。
ここで、トレンチ集合体における、各トレンチの形状(トレンチ幅、トレンチ深さ、トレンチの長手方向長さ)、密度(単位長さ(μm)を交差するカーボンナノチューブの本数)は、後述するトレンチ形成方法に依存する。
カーボンナノチューブの成長方向の制御の観点から、好適なトレンチ幅は0.5〜500nm(特に好適には2〜50nm)、好適なトレンチ深さは、0.3〜100nm(特に好適には1〜30nm)である。この範囲であれば、数十〜数百μmの長さの欠陥の少ないカーボンナノチューブを再現性よく製造することができる。
また、トレンチの長手方向長さは、特に制限はないが、長尺なカーボンナノチューブを製造するという観点からは、5μm以上(好適には20μm以上)であることが望ましい。
また、上記トレンチ集合体は、SiO2/Si基板の酸化シリコン層の一部のみに形成されていてもよく、また、一つのSiO2/Si基板に複数のトレンチ集合体が形成されていてもよい。なお、デバイスの高密度化という観点からは、一つのトレンチ集合体には少なくともトレンチが10本以上(好適には100本以上)であることが望ましい。
上述のトレンチ集合体を形成する方法は、特に限定されないが、トレンチ幅が狭いトレンチ集合体を容易に製造可能である点から、ハロゲン化炭化水素を含む反応ガスから生成したプラズマによって処理(以下、「反応性プラズマ処理」と称す場合がある。)が好適である。
また、特に規則的の高いトレンチ集合体を形成するという観点からは、リソグラフィーによって作製したパターンをエッチングする方法が好適である。パターン形成のためのリソグラフィーとしては、電子ビーム照射によってパターン描画を行う、電子ビームリソグラフィーや、モールドと呼ばれる凹凸を有するシリコンや石英などからなる基板を高分子膜に押し当てて微細パターンを作製しそれをマスクとしてリソグラフィーを行う、ナノインプリントリソグラフィーが好適であり、微細化、信頼性という点では、電子ビームリソグラフィーが特に好適であり、大面積化、高スループット化という点ではナノインプリントリソグラフィーが特に好適である。
また、エッチング方法は、特に限定されず、フッ酸などを使用したウェットエッチングでもよいが、ドライエッチングの一種である反応性イオンエッチング法(以下、「RIE」と称する場合がある。)が特に好適である。
次に本発明のカーボンナノチューブ形成用基材に担持されるカーボンナノチューブ生成用金属系触媒について説明する。
本発明における、「カーボンナノチューブ生成用金属系触媒」とは、カーボンナノチューブを構成するグラフェンシートの形成に対しての触媒作用を有する金属系触媒を意味する。前記金属系触媒としては、Co、Fe、Ni、Mo、W、Mn、Ti、V、Cr、Nb、Ru、Pd、Rh、Ag、Au、Cu、Irなどの第4〜11族の遷移金属元素からなる金属やその金属化合物(例えば金属酸化物、金属ホウ化物、塩化物、硝酸塩)を用いることができる。また、これらはいずれか1種、またはこれらの2種以上の合金あるいは混合物として用いることもできる。これらの中でも、Fe、Co、Ni、Moあるいはこれらを含む合金は、特にカーボンナノチューブの生成に対する触媒活性が高く、また、カーボンナノチューブ以外の炭素副生成物が生成しにくいため、好適に用いられる。なお、後述するように金属系触媒は粒子状の金属系触媒粒子として使用される。
金属系触媒粒子の粒径は、上述のトレンチの形状と共に、前記金属系触媒粒子を核として成長、形成されるカーボンナノチューブの直径及び長さを決定する要素となる。金属系触媒粒子の粒径は、0.4nm以上20nm以下が好ましく、特に好ましくは0.8nm以上5nm以下である。触媒粒子の粒径が0.4nm未満の場合には、カーボンナノチューブの長さが短くなる場合があり、逆に、触媒粒子の粒径が20nmを超える場合にはカーボンナノチューブが上記トレンチに沿って成長しなくなり、カーボンナノチューブの配向性が低下することがある。
次に、本発明のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法について説明する。
本発明のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法は、表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板の酸化シリコン層に、規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体を形成する工程と、前記トレンチ集合体にカーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持する工程とを含むものである。
ここで、トレンチ集合体を形成する方法は、特に限定されないが、上述のように、トレンチ幅が狭いトレンチ集合体を容易に製造可能である点から、反応性プラズマ処理が好適であり、また、規則的の高いトレンチ集合体を形成するという観点からは、電子ビームリソグラフィーによって作製したパターンをエッチングする方法が好適あり、この中でも寸法精度の高いトレンチ集合体が形成できる異方性エッチングであるRIEによってエッチングする方法が特に好適である。
以下、SiO2/Si基板の酸化シリコン(SiO2)層にトレンチ集合体を形成する工程として、その好適なトレンチ集合体の形成方法である、反応性プラズマ処理による方法と、電子ビームリソグラフィーによって作製したパターンをRIEによってエッチングする方法(以下、「RIE法」と称する場合がある。)について説明する。
まず、反応性プラズマ処理によってトレンチ集合体を形成する方法について説明する。
反応性プラズマ処理は、通常使用されるプラズマエッチング装置を使用して行うことができる。反応性プラズマの反応ガスとしてのハロゲン化炭化水素として、フッ化炭化水素及び塩化炭化水素が好適に使用され、単独でも2種類以上を混合して使用することができる。具体的には、CF4、CHF3、CH22、C26、C38、C410、C512、CCl4、CHCl3、CH2Cl2、C2Cl6、C3Cl8、C4Cl10、C5Cl12などが挙げられる。反応性プラズマ処理により形成されるトレンチ集合体の再現性が高いという点で特に炭素数1のフッ化炭化水素であるCF4、CHF3及びCH22が好適であり、中でもCF4および/またはCHF3がさらに好適である。また、ハロゲン化炭化水素のエッチング作用を損なわない範囲で、ハロゲン化炭化水素以外の不活性ガス(Ar、N2)を含んでもよい。
反応性プラズマ処理において、上記反応ガスと共にプラズマ圧力(上記反応ガスのチャンバー内圧力)及びプラズマ出力は、トレンチの形状及びトレンチの密度に影響する。そのため、SiO2/Si基板にトレンチが形成される条件内で適宜決定すればよい。
反応ガスにCF4を使用したときの好適な条件としては、プラズマ圧力が、0.1〜200Paであって、プラズマ出力が50〜600Wである。プラズマ圧力が0.1Pa未満であったり、プラズマ出力が50W未満であったりするとエッチング作用が弱すぎて、カーボンナノチューブの配向成長に有効な形状のトレンチが形成されない場合があり、また、プラズマ出力が200Pa超であったり、プラズマ出力が600W超であったりすると、エッチング作用が強すぎて形成されるトレンチの形状が不均一になったり、酸化シリコン層が完全に除去されてしまう場合がある。
なお、プラズマ圧力が70〜120Pa、プラズマ出力が300〜400Wとすると、SiO2/Si基板上に、トレンチの幅が0.5〜500nm、トレンチの深さが、0.3〜100nmであるトレンチ集合体が再現性よく形成される。また、プラズマ処理の温度条件は、任意に設定可能であるが、通常、10〜40℃である。
次に、RIE法によって、トレンチ集合体を形成する方法について説明する。
RIE法では、まず、SiO2/Si基板表面にポジ型電子線レジストを塗布し、電子ビーム描画装置によって。電子ビームを照射して現像することで、適当なスリットパターンを形成する(電子ビームリソグラフィー)。塗布されたポジ型電子線レジストの厚みは、通常、100〜700nmであり、電子ビーム照射の条件は、この塗布されたポジ型電子線レジストを除去でき、基板の酸化シリコン層に描画できればよく、通常、加速電圧:10〜20kV、電流値:100〜1000pA、ドーズ量:20〜100μC/cm2である。
描画されたスリットパターンにおけるスリット幅は、5〜500nm(好ましくは、20〜200nm)であり、スリット間隔は、10〜1000nm(好ましくは、20〜500nm)である。スリット幅が、5nm未満であると、スリットの構造が不明瞭になるという問題があり、500nm超であると成長するカーボンナノチューブの配向度が低下するという問題がある。スリット間隔が、10nm未満であると、レジスト全体が剥離する場合があり、1000nm超であると配向成長するカーボンナノチューブの密度が低下するという問題がある。
次いで、上述の電子ビームリソグラフィーで描画して作製されたスリットパターンが形成された基板に対して、エッチング装置を使用して、反応性イオンエッチング(RIE)を行う。RIEは、異方性の高いエッチングであるので、電子ビームリソグラフィーによってスリットパターンに沿って、寸法制度の高いトレンチ集合体を形成することができる。
RIEは、通常使用されるRIE装置を使用して行うことができる。反応性イオンエッチングの反応ガスとしては、上述の反応性プラズマ処理と同様のフッ化炭化水素及び塩化炭化水素が好適に使用され、単独でも2種類以上を混合して使用することができる。具体的には、CF4、CHF3、CH22、C26、C38、C410、C512、CCl4、CHCl3、CH2Cl2、C2Cl6、C3Cl8、C4Cl10、C5Cl12などが挙げられる。
また、ハロゲン化炭化水素のエッチング作用を損なわない範囲で、ハロゲン化炭化水素以外の不活性ガス(Ar、N2)を含んでもよい。
RIEにおいて、上記反応ガス、プラズマ圧力、プラズマ出力、及びエッチング時間は、トレンチの形状(特にトレンチ深さ)に影響する。
反応ガスにCF4を使用したときの好適な条件としては、プラズマ圧力が、0.1〜200Paであって、プラズマ出力(アンテナパワー)が50〜600W、バイアス電圧が、50〜300Vであり、これらの条件におけるSiO2層のエッチング速度は、通常、50〜1000nm/minである。トレンチ深さは、エッチング時間によってコントロール可能である。エッチング時間は、RIE条件を勘案して適宜決定されるが、通常、数秒から数分程度である。
なお、これらの条件でスリット幅が、100〜500nmのスリットパターンに、RIEを行うと、SiO2/Si基板上に、電子ビームリソグラフィーによって作製したスリットパターンに沿って、トレンチ深さが、0.3〜100nmであるトレンチ集合体が再現性よく形成される。
次に、トレンチ集合体が形成されたSiO2/Si基板にカーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子(以下、単に「金属系触媒粒子」と呼ぶ。)を担持する工程について説明する。
前記金属系触媒粒子を担持する方法としては、スパッタリング、蒸着などの方法で金属を直接前記基板上に形成する方法や、金属系触媒の前駆体を含む溶液に前記基板を接触させる方法などがあるが、簡便に作製できるという観点からは金属系触媒の前駆体から製造する方法が好適である。
金属系触媒の前駆体としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、金属カルボニルなどが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
金属系触媒の前駆体を使用する方法としては、上記前駆体から合成した金属系触媒粒子を溶媒に分散して基板に担持する方法、上記前駆体を含む溶液を直接基板に接触させて前駆体を基板に担持させた後に、この前駆体を分解して金属系触媒粒子を形成する方法などが挙げられる。なお、金属系触媒粒子およびその前駆体を分散あるいは溶解させる溶媒は特に限定されず、具体的に、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸n−ブチル等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素類などが挙げられる。
以下、具体例として金属系触媒粒子の前駆体を含む溶液を直接基板に接触させる方法について説明する。金属系触媒粒子の前駆体を含む溶液を、上記トレンチが形成された基板と接触させることで、トレンチが形成された基板上に金属系触媒粒子の前駆体を付着させる。接触させる方法としては、前記基材上に分散溶液を滴下する方法、分散溶液中に前記基材を浸漬する方法などが挙げられ、通常は後者である。なお、浸漬時の温度は、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜40℃であり、通常、室温である。浸漬時間は、前記基材に金属系触媒粒子の前駆体が十分に吸着できる時間であればよく、通常、数分から24時間程度である。なお、前記基材と金属系触媒粒子の前駆体とを接触させた後に、金属系触媒粒子の前駆体を含まない溶媒で洗浄してもよい。
さらに、熱処理を行うことによって、前記基材に付着した金属系触媒粒子の前駆体を熱分解し、前記基材上に金属系触媒粒子を形成する。
熱処理温度は、使用する金属系触媒粒子の前駆体の分解温度を勘案して、適宜決定されるが、通常、200〜1000℃であり、粒径をその好適な範囲である0.4nm以上20nm以下とする観点からは、200〜900℃が好適である。また、熱分解により形成した金属系触媒粒子は、酸化物の状態であることが多く、後述するカーボンナノチューブの形成工程において、還元・活性化される。なお、熱処理を行う雰囲気は、特に限定されないが、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気もしくは酸素を混入させた酸化雰囲気が好ましい。
以下、トレンチに金属系触媒粒子を担持した基材を使用して、カーボンナノチューブを生成する方法について説明する。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、上述のカーボンナノチューブ形成用基材を用い、CVD法によってカーボンナノチューブ(特にSWNT、DWNT)を配向成長させることができる。ここで、CVD法としては、熱CVD法またはプラズマCVD法などのいずれのCVD法でもよいが、装置の簡便性、制御性の点で熱CVD法が好適に用いられる。
CVD法における、カーボンナノチューブの炭素源としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、軽油などの炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類が挙げられる。これらの炭素源は、単独であるいは、アルゴンなどのキャリアを加えた混合物として使用される。この中でも、メタンは、カーボンナノチューブ以外の炭素複生成物の生成が少なく、収率よくSWNTを合成できるため、好適に用いられる。また、アルコール類、特にメタノール、エタノールを炭素源として使用すると、炭化水素を炭素源として利用した場合と比べて、低温でも高品質のカーボンナノチューブを成長させることができる。
以下において、炭素源としてメタンを使用した熱CVD法を参照して具体的に説明する。
熱CVD法の場合の好適な条件は、合成温度が400〜950℃、合成時間が5〜60分、合成圧力が0.01〜1気圧である。また、ガス供給速度は、反応容器の大きさ、ガス濃度などを勘案して適宜され、一例を挙げるとメタン900sccm、水素100sccmである。上記条件の中でも、合成温度は、生成するカーボンナノチューブの直径、配向性などに影響を及し、合成温度が400℃未満であると、カーボンナノチューブの成長速度が小さくなり、収率が低下することがある。なお、欠陥が少ないカーボンナノチューブが得られるという観点からは、合成温度が750℃以上であることが望ましい。一方、合成温度が950℃を超えると、金属系触媒粒子が凝集して、その粒径が不均一になるため、生成するカーボンナノチューブの直径、配向性が不均一化したり、カーボンナノチューブの収率が低下したりすることがある。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、SiO2/Si基板の酸化シリコン層に形成されたトレンチに沿って配向成長した高配向のカーボンナノチューブ(特にSWNT、DWNT)を得ることができる。なお、合成したカーボンナノチューブの配向性、長さ、密度、成長位置は、ラマン分光法、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)などで確認することができる。
基材上に生成するカーボンナノチューブの直径及び密度は基材に形成されたトレンチの形状に依存する。すなわち、カーボンナノチューブの直径及び密度はトレンチ集合体を形成する条件でコントロールすることが可能である。
例えば、上記反応性プラズマ処理の場合では、トレンチ集合体を形成する反応性プラズマ処理の条件でコントロールすることが可能である。具体的には反応性ガスCF4、反応容器圧力0.1〜100Pa、出力50〜350Wでカーボンナノチューブを製造する場合には、直径が0.4nm〜20nmであり、かつ、カーボンナノチューブの密度が、単位長さの線に直交するカーボンナノチューブの本数で表現して、0.5〜10本/μmである高配向性のカーボンナノチューブを得ることができる。
また、RIE法の場合には、上述のように電子線リソグラフィーで形成可能なパターンの幅のスリット構造を形成することができる。具体的には、スリットの溝の幅が50〜500nm、反応性ガスCF4、反応容器圧力0.1〜100Pa、出力50〜350Wでカーボンナノチューブを製造する場合には、直径が0.8〜3nmであり、かつ、カーボンナノチューブの密度が、単位長さの線に直交するカーボンナノチューブの本数で表現して、0.1〜10本/μmである高配向性のカーボンナノチューブを得ることができる。
また、これらの製造方法で製造されるカーボンナノチューブの長さは、CVDの条件(特に温度及び時間)によって、適宜制御可能であり、通常、10〜300μmである。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(A)SiO2/Si基板1の作製
厚さ約300nmの酸化シリコン層を表面に有する単結晶シリコン基板(フルウチ化学株式会社、厚さ0.5mm)を10×10mmにカットしたSiO2/Si基板をプラズマリアクター装置(ヤマト科学株式会社、型番;PR500)を使用して、CF4を流量で25sccm流通し、プラズマ圧力100Pa、プラズマ出力350Wで5分間プラズマ処理を行うことで、SiO2/Si基板1を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材1の作製
SiO2/Si基板1をアセトン、IPA中で、超音波洗浄(45W、5分間)したのちに、10-5Mの硝酸鉄(II)九水和物(和光純薬工業株式会社)と5×10-7Mのビスアセチルアセトナート二酸化モリブデン(Aldrich)とを含むエタノール溶液に10分間浸漬し、1mm/minのスピードで引き上げたのちに、大気雰囲気下、室温で自然乾燥することで、カーボンナノチューブ形成用基材1を得た。なお、この前駆体は次工程の熱CVDにおける昇温過程で分解して、金属系触媒粒子となる。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1を使用して、以下の方法でカーボンナノチューブの合成を行った。なお、CVD法には石英ガラス製の反応容器を備えたガス流通式のCVD装置(図示せず)を使用した。まず、カーボンナノチューブ形成用基材1を反応容器に入れ、アルゴン流通下(350sccm)で900℃まで昇温した後に、水素を80sccm、10分間供給した。次に、900℃でメタン/水素混合ガス(メタン:500sccm、水素:80sccm、メタン濃度:86体積%、全流量:580sccm)を10分間流通させることでカーボンナノチューブを合成した。
実施例2
(A)SiO2/Si基板2の作製
プラズマ出力を250Wとした以外は実施例1と同様にして、SiO2/Si基板2を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材2の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板2を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材2を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材2を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
実施例3
(A)SiO2/Si基板3の作製
まず、厚さ約300nmの酸化シリコン層を表面に有する単結晶シリコン基板(フルウチ化学株式会社、厚さ0.5mm)を10×10mmにカットしたSiO2/Si基板にポジ型電子線レジスト(ZEP520A、日本ゼオン株式会社製)を厚さ約500nm塗布した。
電子ビーム描画装置として、東京エレクトロン株式会社製BEAM DRAWを備えた株式会社日立製作所製S4300を使用し(加速電圧:20kV、電流値:500pA)、レジストを塗布したSiO2/Si基板に対し、スリットパターン(スリット幅:200nm、スリット間隔:500nm、スリット長手方向長さ:600μm)を描画した。次に、描画した基板を現像液(ZED−N50、日本ゼオン株式会社製)で現像し、洗浄液(ZMD−B、日本ゼオン株式会社製)でリンスを行い、SiO2/Si基板表面にスリットの入ったレジスト膜を作製した。
次いで、電子ビーム描画によりスリットパターンが形成された基板に対して、反応性イオンエッチング装置(サムコ株式会社、RIE−10iP)を使用して、反応性イオンエッチングを行った後に、リムーバー(ZDMAC、日本ゼオン株式会社製)によってポジ型電子線レジストを除去することでSiO2/Si基板3を得た。
エッチング条件は、使用ガス:CF4(流量6ccm)、プラズマ圧力:6Pa、プラズマ出力(アンテナパワー):200W、バイアス電圧:100V、エッチング時間:10秒である。なお、この条件におけるSiO2層のエッチング速度は、124nm/minであった。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材3の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板3を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材3を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材3を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
実施例4
(A)SiO2/Si基板4の作製
エッチング時間を15秒とした以外は、実施例3と同様にして、SiO2/Si基板4を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材4の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板4を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材4を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材4を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
実施例5
(A)SiO2/Si基板5の作製
エッチング時間を20秒とした以外は、実施例3と同様にして、SiO2/Si基板5を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材5の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板5を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材5を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材5を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
実施例6
(A)SiO2/Si基板6の作製
エッチング時間を30秒とした以外は、実施例3と同様にして、SiO2/Si基板6を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材6の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板6を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材6を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材6を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
比較例1
(A)SiO2/Si基板7の作製
プラズマ処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、SiO2/Si基板7を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材7の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板7を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材7を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材7を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
比較例2
(A)SiO2/Si基板8の作製
CF4の変わりにArを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、SiO2/Si基板8を得た。
(B)カーボンナノチューブ形成用基材8の作製
SiO2/Si基板1の代わりにSiO2/Si基板8を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ形成用基材8を得た。
(C)熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブ形成用基材1の代わりにカーボンナノチューブ形成用基材8を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブを合成した。
以下、評価結果について説明する。
「評価装置」
・走査型電子顕微鏡(SEM);株式会社日立製作所製、型番:S−4800
・原子間力顕微鏡(AFM);Veeco社製、型番:Nanoscope IIIa
・ラマン分光装置;日本分光株式会社製、型番:NRS−2100
「反応性プラズマ処理後のSiO2/Si基板の表面評価」
図2にSiO2/Si基板1(実施例1)のSEM像を示す。図2から、CF4プラズマ処理後のSiO2表面には、プラズマ処理を行っていない未処理のSiO2/Si基板7(図示せず)では観察されない、凹凸部分が複数の箇所に存在し、CF4プラズマ処理によってSiO2表面がエッチングされていることがわかる。これらの凹凸部分をAFMで観察した結果を図3(a)、(b)に示す。ある部分では、少なくとも10本以上の略平行な筋状の溝(トレンチ)が観察され(図3(a))、凹凸部分が、規則的な複数のトレンチからなる、いわゆるトレンチ集合体であることがわかる。トレンチ幅は、0.5〜300nm程度に広く分布していた。なお、トレンチ幅はCF4プラズマの出力などの諸条件を調整することで500nm程度まで拡大可能であることを確認した。
また、同基板の別の視野では、略放射状に広がったトレンチからなるトレンチ集合体が観察された(図3(b))。図4にサンプル数、N=100でトレンチの深さ分布を評価した結果を示す。90%以上のトレンチ深さが8nm以下であり、平均のトレンチ深さは5.4nmであった。トレンチの長手方向長さは、各トレンチ集合体でばらつきがあり、3μmから300μm程度まで広く分布していた。一方、Arプラズマ処理を行ったSiO2/Si基板8(比較例2)は、プラズマ処理を行っていないSiO2/Si基板7と同様であり、SEM観察において表面にトレンチ集合体が確認できなかった。
「カーボンナノチューブのSEM観察」
それぞれの基材で合成したカーボンナノチューブについて、SEMを用いて評価を行った。熱CVD後のカーボンナノチューブ形成用基材1、2(実施例1,2)のSEM像を図5及び図6に示す。また、カーボンナノチューブ形成用基材7,8(比較例1,2)のSEM像をそれぞれ図7及び図8に示す。それぞれの基材において、白色で線状のカーボンナノチューブが観察されたが、カーボンナノチューブの形状は明らかに異なるものであった。
プラズマ処理のないカーボンナノチューブ形成用基材7(比較例1)では、カーボンナノチューブが高密度に観察されるが、それらに特定の配向性は見いだせなかった。
これに対し、CF4プラズマ処理(350W)を行ったカーボンナノチューブ形成用基材1(実施例1)では、略平行に数十本以上のカーボンナノチューブが配向成長している箇所が複数観察された(図5(a)、(b))。カーボンナノチューブの密度は、約30×30μmの範囲で高い配向性が確認された箇所(図5(b))において、3〜8本/μm程度であった。さらに、カーボンナノチューブの長さは比較例1より長く、数十μmから数百μmの範囲で分布していた。
一方、CF4プラズマ処理(250W)を行ったカーボンナノチューブ形成用基材2(実施例2)では、カーボンナノチューブの配向成長が確認されるものの、実施例1と比較すると、カーボンナノチューブの配向性も密度も低かった。
また、Arプラズマ処理を行ったカーボンナノチューブ形成用基材8(比較例2)では、他の基材と比較してカーボンナノチューブの密度が低く、配向性も確認されなかった。
「カーボンナノチューブのラマン分光法による評価」
カーボンナノチューブ形成用基材1に成長したカーボンナノチューブについて、ラマン分光を用いて評価を行ったところ、カーボンナノチューブの直径は1.3〜1.7nmであった。なお、励起波長としてアルゴンイオンレーザーによる514.5nm、488nm、ならびにヘリウムネオンレーザーによる633nmを用いた。顕微モード、約1μmのスポットサイズで測定した。ナノチューブの直径は、既知の経験的な関係式d=248/ωREM(dはナノチューブの直径、ωREMはラマンのRBMピーク波数)を用いて求めた。その直径から形成したカーボンナノチューブのほとんどがSWNTあるいはDWNTであることが示唆された。
「RIE後のSiO2/Si基板の表面評価」
電子ビームリソグラフィーによって作製したパターンにRIEを行った後のSiO2/Si基板の代表例として、SiO2/Si基板5(実施例5)のSEM像およびAFM像を示す。図9及び図10から、RIE後のSiO2表面には、平行な筋状の溝(トレンチ)が規則的に形成されていることがわかる。トレンチ幅及び間隔は、電子ビーム描画装置で描いた、スリットパターン(幅200nm、間隔500nm)とほぼ同一であった。表1にカーボンナノチューブ形成用基材3〜6における、筋状の溝(トレンチ)の深さを示す。
なお、溝の深さは、AFMによって測定した。
「カーボンナノチューブのSEM観察」
表1にRIEによってトレンチ集合体を形成したSiO2/Si基板を用いたカーボンナノチューブ形成用基材3〜6(実施例3〜6)に熱CVDによって成長したカーボンナノチューブの密度(単位長さ(μm)を交差するカーボンナノチューブの本数)、配向性を示す。また、成長したカーボンナノチューブの代表例として、熱CVD後のカーボンナノチューブ形成用基材5(実施例5)のSEM像を図11及び図12に示す。
なお、表1において、カーボンナノチューブの配向性の評価基準は以下の通りである。
○:大部分のカーボンナノチューブのトレンチ長手方向への配向成長が確認される。
△:一部のカーボンナノチューブのトレンチ長手方向への配向成長が確認される。
×:カーボンナノチューブの配向成長が確認されない。
図11及び図12に示すようにカーボンナノチューブ形成用基材5(実施例5)において、カーボンナノチューブがトレンチの長手方向へ配向成長していることが確認された。他のカーボンナノチューブ形成用基材についても、図7の未処理のSiO2/Si基板からなるカーボンナノチューブ形成用基材7(比較例1)と異なり、カーボンナノチューブのトレンチの長手方向へ配向成長していることが確認された。
Figure 2010077007
本発明のカーボンナノチューブ形成用基材は、安価な非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板上にカーボンナノチューブを高配向成長させることができ、配向性の高いカーボンナノチューブを容易に製造することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ形成用基材に形成されたカーボンナノチューブは、電界効果トランジスタ(FET)などの電子デバイスへの適用が期待できる。
本発明のカーボンナノチューブ形成用基材に係るトレンチ集合体におけるトレンチの長手方向に直交する断面形状の模式図であり、(a)及び(b)は、各トレンチの長手方向に直交する断面形状が対称である例、(c)は非対称である例、(d)は階段状のステップ-テラス構造である例である。 カーボンナノチューブ形成用基材1(実施例1)のSEM像である。 カーボンナノチューブ形成用基材1のAFM像であり、(a)及び(b)はそれぞれ別視野である。 カーボンナノチューブ形成用基材1のトレンチ深さ分布である。 カーボンナノチューブ成長後のカーボンナノチューブ形成用基材1のSEM像であり、(a)及び(b)はそれぞれ別視野である。 カーボンナノチューブ成長後のカーボンナノチューブ形成用基材2(実施例2)のSEM像である。 カーボンナノチューブ成長後のカーボンナノチューブ形成用基材7(比較例1)のSEM像である。 カーボンナノチューブ成長後のカーボンナノチューブ形成用基材8(比較例2)のSEM像である。 カーボンナノチューブ形成用基材5(実施例5)のSEM像である。 カーボンナノチューブ形成用基材5のAFM像である。 カーボンナノチューブ成長後のカーボンナノチューブ形成用基材5(実施例5)のSEM像である。 カーボンナノチューブ成長後のカーボンナノチューブ形成用基材5(実施例5)のSEM像(拡大図)である。

Claims (12)

  1. 表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板に形成された規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体に、カーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持してなることを特徴とするカーボンナノチューブ形成用基材。
  2. 前記トレンチ集合体が、ハロゲン化炭化水素を含む反応ガスから生成したプラズマによる表面処理を行うことによって形成されてなる請求項1記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
  3. 前記トレンチ集合体が、リソグラフィーによって作製したパターンをエッチングすることによって形成されてなる請求項1記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
  4. 前記エッチングが、反応性イオンエッチングである請求項3記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
  5. 前記トレンチ集合体における、前記筋状の溝の幅が0.5〜500nmの範囲にあって、かつ、前記筋状の溝の深さが、0.3〜100nmの範囲である請求項1から4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成用基材。
  6. 表面に非晶質の酸化シリコン層を有するシリコン基板の酸化シリコン層に、規則的な複数の筋状の溝からなるトレンチ集合体を形成する工程と、前記トレンチ集合体にカーボンナノチューブ生成用金属系触媒粒子を担持する工程とを含むことを特徴とするカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
  7. 前記トレンチ集合体を、ハロゲン化炭化水素を含む反応ガスから生成したプラズマによる表面処理を行うことで形成する請求項6記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
  8. 前記ハロゲン化炭化水素が、CF4および/またはCHF3である請求項7記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
  9. 前記トレンチ集合体を、リソグラフィーによって作製したパターンをエッチングすることによって形成する請求項6記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
  10. 前記エッチングが、反応性イオンエッチングである請求項9記載のカーボンナノチューブ形成用基材の製造方法。
  11. 請求項1から5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成用基材における前記筋状の溝に沿って配向成長したカーボンナノチューブ。
  12. 請求項1から5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成用基材に、CVD法によって、前記金属系触媒粒子を核として、前記筋状の溝に沿ってカーボンナノチューブを配向成長させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
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