JP2010007092A - 軸受鋼鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】転動疲労による破損に対して良好な耐久性を有し、優れた転動疲労寿命を確保できるとともに、冷間加工性にも優れる軸受鋼鋼材の提供。
【解決手段】C:0.85〜1.2%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.05〜0.6%、P≦0.03%、S≦0.010%、Cr:1.2〜1.7%、Al≦0.005%、Ca≦0.0005%、O≦0.0020%を含有し、残部はFeと不純物からなる化学成分を有し、非金属介在物について、酸化物の平均組成が質量%で、Cao:10〜60%、Al2O3≦35%、MnO≦35%及びMgO≦15%で残部SiO2と不純物からなるとともに、鋼材の長手方向縦断面10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下で、更に、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さがビッカース硬さで290以下である軸受鋼鋼材。但し、「R」は軸受鋼鋼材の半径を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、軸受鋼鋼材およびその製造方法に関し、詳しくは、転動疲労寿命および冷間加工性に優れた軸受鋼鋼材とその製造方法に関する。
各種の産業機械や自動車などに使用される「玉軸受」や「コロ軸受」といった転がり軸受には、従来、主として、JIS G 4805(1999)に記載の「高炭素クロム軸受鋼鋼材」が使用されてきた。
上記の転がり軸受は、熱間圧延などの熱間加工で製造された棒鋼、線材といった軸受鋼鋼材を素材として、一般的には先ず、「球状化焼鈍」と呼ばれる長時間にわたる軟質化熱処理を施した後に切断し、熱間鍛造や冷間鍛造によって所定の形状に成形され、焼入れ焼戻し処理を行って製造される。熱間鍛造により成形した場合には、焼入れ焼戻しの前に、再度球状化焼鈍が行われた後に、旋削加工が行われる。
なお、転がり軸受には、高い面圧が繰返し作用するため、長い転動疲労寿命が必要である。転動疲労特性(転動疲労寿命)は鋼中の非金属介在物(以下、単に「介在物」ともいう。)、特に、酸化物により低下することが知られている。そのため、従来は、製鋼プロセスによって鋼中の酸素含有量を少なくする試みがなされてきた。その結果、近年では酸素の含有量が質量割合で、10ppmを下回る鋼材を安定して製造することが可能となり、それに伴って転動疲労寿命も向上してきた。
一方、近年では、例えば、エンジンの高出力化や周辺部品の小型化によって、転がり軸受の使用環境がますます高面圧化、高温化して過酷なものとなり、このため、転がり軸受に対してより一層長い転動疲労寿命が求められるようになってきた。
しかしながら、単に酸素の含有量を低減させるだけでは所望の良好な転動疲労寿命を確保することができず、このため、鋼中の酸化物のサイズを小さくして転動疲労寿命を改善することが特許文献1および特許文献2に提案されている。
すなわち、特許文献1に、「重量%にて、C:0.15〜1.10%、Si:0.15〜0.70%、Cr:0.50〜1.60%、Mo:0.10〜1.00%、Mn:0.10%以下、O:8ppm以下を含み、さらに、必要に応じて、Ni:0.4〜5.0%を含有し、残部Feおよび不可避不純物元素からなり、酸化物系介在物の粒子径が15μm以下であることを特徴とする電子ビーム溶解法による超清浄度軸受用鋼」に関する技術が開示されている。
また、特許文献2に、「鋼の化学成分が、JIS G 4805を満足すると共に、O:0.0009質量%以下、Al:0.005質量%以下およびS:0.005質量%以下を満足する鋼からなり、圧延方向に平行な検鏡断面積160mm2中に存在する大きさ3μm以上の酸化物個数が100個以下、そのうち大きさ10μm以上のものが2個以下であり、さらにそれらの組成別構成比率として、
アルミナ系:(MgO)も(SiO2)も3%未満で且つ(CaO)も(CaO)/((CaO)+(Al23))の比で0.08以下であるもの。
スピネル系:3%〜20%の範囲の(MgO)に残部が(Al23)である2元系に、15%以内の(CaO)および/または15%以内の(SiO2)が混入する場合があるスピネル型結晶構造のもの。
の定義によるアルミナ系とスピネル系との合計個数が全酸化物個数の60%未満であることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼」に関する技術が開示されている。
そして、特許文献2には、前記の高炭素クロム軸受鋼が、転炉または電気炉による酸化精錬後の脱酸およびその後の成分調整に際し実質Alを含まない脱酸剤を使用する工程、次の取鍋精練におけるスラグの塩基度((CaO)%/(SiO2)%)が0.8以上3.0未満となるように制御する工程、それに引き続く35分以上の真空脱ガス処理工程を含む製造工程をとることによって得られることが示されている。
なお、高炭素クロム軸受鋼は、前記JIS G 4805(1999)にも示されているように質量%で、1.0%程度のCを含有する過共析鋼であるので、熱間加工された鋼材は、通常、板状の初析セメンタイトとパーライトからなる組織を呈する。そのため、硬さはビッカース硬さ(以下、「Hv硬さ」ともいう。)で350〜400程度の硬質なものとなり、熱間加工した鋼材を切断あるいは冷間鍛造する際には、前処理として球状化焼鈍などの軟質化熱処理を施す必要がある。
このため、近年では熱間加工ままのセメンタイトの形状を制御することによって、球状化焼鈍などの軟質化熱処理の簡略化ができる程度の冷間加工性を有する鋼材が提案されている。
具体的には、特許文献3に、「質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物元素からなる鋼組成、あるいはさらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下およびMo:0.1%以下から選んだ1種または2種以上を含有する鋼組成を有し、かつセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合が70%以上であることを特徴とする熱間圧延ままで球状化炭化物組織を有する軸受け用線材・棒鋼」に関する技術が開示されている。
そして、特許文献3には、上記の「軸受け用線材・棒鋼」が、熱間圧延の仕上圧延を該鋼素材の(Ar1−50℃)〜(Ar1+50℃)の温度域で減面率20%以上となるように行い、直ちに冷却速度0.5℃/s以下で、500℃以下まで冷却することにより得られることが示されている。
特開平7−109541号公報 特開2006−200027号公報 特開2004−190127号公報
前記の特許文献1で提案された技術は、通常の量産鋼の製造方法によって製造された鋼を母材とし、電子ビーム溶解によって再溶解させることで、Al23のような酸化物を低減させる方法である。このため、製造コストが極めて高くなって、工業的な規模での量産には適用し難いものである。しかも、近年における転がり軸受の厳しい使用環境下では、その転動疲労寿命は必ずしも十分といえるものではなかった。さらに、この技術は、熱間加工した鋼材を切断や冷間鍛造する場合の冷間加工性については何ら配慮されたものではなかった。
特許文献2で提案された技術は、酸化物系介在物のみに着目したものであり、上記の特許文献1で開示された技術の場合と同様に、近年における転がり軸受の厳しい使用環境下においては、その転動疲労寿命は必ずしも十分といえるものではなかった。さらに、その高炭素クロム軸受鋼は、切削性は良好ではあるものの、切断や冷間鍛造など他の冷間加工性については十分といえるものではなかった。
特許文献3で提案された軸受け用線材・棒鋼は、熱間圧延のままで球状化炭化物組織を有するものの、上記特許文献1および特許文献2で開示された技術の場合と同様に、近年における転がり軸受の厳しい使用環境においては、その転動疲労寿命が必ずしも十分といえるものではなかった。
そこで、本発明は、近年の転がり軸受の過酷な使用環境下においても、転動疲労による破損に対して良好な耐久性を有し、優れた転動疲労寿命を確保できるとともに、冷間加工性に優れるため、熱間加工後に施す球状化焼鈍など長時間にわたる軟質化熱処理を簡略化することが可能な軸受鋼鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、先に、酸化物に関して検討した結果、
(a)鋼のいわゆる「二次精錬」の過程におけるスラグの主要構成成分を主にCaOおよびSiO2とし、さらに、Al23が極力少量となるように厳密な制御を行うことで、軟質な酸化物が得られること、さらには、この軟質酸化物は圧下を加えることによって微細化できること、
(b)上記(a)のようにして精錬する方法で製造された鋼の場合、硫化物中にMnOと思われる酸化物が含有されやすくなる傾向があり、この硫化物は従来のAl添加により脱酸処理した軸受鋼中の硫化物とは異なり、圧下によって延伸、分断されることが難しいが、Sの含有量を質量%で、0.010%以下とし、かつ、圧下比や加工温度などの圧下条件を適正に制御すれば、酸化物だけではなく硫化物をも延伸、分断させて微細化することができ、結果として、過酷な使用環境下においても、優れた転動疲労寿命を有する軸受鋼鋼材を得ることができること、
を見出し、特願2007−204872の特許出願で「軸受鋼鋼材およびその製造方法」を提案した。
本発明者らは、その後さらに、上記特許出願で提案した軸受鋼鋼材の冷間加工性改善について検討した。その結果、全圧下比が15以上となる2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程において、被圧下材の加熱条件およびその圧下工程中の被圧下材の表面温度をより厳しく制御すれば、軟質な鋼材を得ることができることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)に示す軸受鋼鋼材ならびに(2)および(3)に示す軸受鋼鋼材の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.85〜1.2%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.05〜0.6%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Cr:1.2〜1.7%、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%以下およびO:0.0020%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる化学成分を有し、非金属介在物について、酸化物の平均組成が質量%で、CaO:10〜60%、Al23:35%以下、MnO:35%以下およびMgO:15%以下で残部SiO2および不純物からなるとともに、鋼材の長手方向縦断面10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下であり、さらに、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さがビッカース硬さで290以下であることを特徴とする軸受鋼鋼材。
但し、「R」は軸受鋼鋼材の半径を表す。
(2)上記(1)に記載の化学成分および酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上となる圧下を加えて軸受鋼鋼材を製造する方法であって、該2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程において、下記の〔1〕〜〔3〕の全てを満たすようにして圧下し、さらに、最終圧下工程における圧下を終了した後400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却することを特徴とする軸受鋼鋼材の製造方法。
〔1〕被圧下材をAe1点〜Aem点の温度域に加熱して圧下を開始すること、
〔2〕圧下工程中の被圧下材の表面温度が、680℃〜(Aem点−30℃)の温度範囲内であること、
〔3〕圧下比が4以上であること。
但し、全圧下比とは、鋳片または鋼塊の断面積を、最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指し、また、最終圧下工程での圧下比とは、最終圧下工程で圧下が加えられる前の被圧下材の断面積を最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指す。
(3)鋳片または鋼塊が、一次精錬としての酸化精錬を行った後に、Al脱酸処理を行わずに、実質的にAlを含有しないフラックスを用いて二次精錬を行って、二次精錬終了後の最終的なスラグの塩基度CaO/SiO2の値が0.8〜2.0で、かつスラグ組成が質量%で、MgO:15%以下、F:10%以下、Al23:20%以下になるように制御し、続いて鋳造されたものであることを特徴とする上記(2)に記載の軸受鋼鋼材の製造方法。
なお、酸化物の平均組成における「不純物」とは、Cr23、Na2O、ZrO2などを指す。
「長手方向縦断面」(以下、「L断面」という。)とは、鋼材の長手方向に平行に切断した面をいう。
圧下を終了した後400℃までの温度域における冷却速度は、当該温度域での被圧延材の表面における平均冷却速度を指す。
スラグ組成における「残部」は、MnO、FeO、TiO2、Cr23などである。
また、「実質的にAlを含有しないフラックス」とは、フラックス中のAl23が3%未満であることを指す。
さらに、本発明における「Ae1点」および「Aem点」はそれぞれ、平衡状態における共析温度および平衡状態においてセメンタイトがオーステナイトに完全に固溶する温度を指す。
以下、上記 (1)の軸受鋼鋼材に係る発明ならびに(2)および(3)の軸受鋼鋼材の製造方法に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(3)」という。また、総称して「本発明」という。
本発明の軸受鋼鋼材は、近年の転がり軸受の過酷な使用環境下においても、転動疲労による破損に対して良好な耐久性を有し、転動疲労寿命が長いことから、各種の産業機械や自動車などに使用される「玉軸受」や「コロ軸受」といった転がり軸受の素材として利用することができる。また、本発明の軸受鋼鋼材は、冷間加工性に優れるため、球状化焼鈍などの軟質化熱処理を簡略化することが可能で、製造コストを低減することができる。この軸受鋼鋼材は本発明の方法によって製造することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素と酸化物の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学成分:
C:0.85〜1.2%
Cは、焼入れ時の硬さを確保して転動疲労寿命を向上させる元素であり、0.85%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、Cの含有量が多くなって、特に1.2%を超えると、耐摩耗性は向上するものの、母材の硬さが高くなりすぎて冷間鍛造性の悪化、切削時の工具寿命の低下、焼割れの原因となる。したがって、Cの含有量を0.85〜1.2%とした。なお、C含有量の好ましい下限は0.9%である。また、好ましい上限は1.1%である。
Si:0.1〜0.5%
Siは、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させるのに有効な元素であり、0.1%以上含有させなければならない。しかしながら、0.5%を超えてSiを含有させると、母材の硬さが高くなって切削時の工具寿命の低下や冷間鍛造性の悪化をきたす。したがって、Siの含有量を0.1〜0.5%とした。なお、Si含有量の好ましい下限は0.15%である。また、好ましい上限は0.35%である。
Mn:0.05〜0.6%
Mnは、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させるのに有効な元素であり、0.05%以上含有させなければならない。しかしながら、0.6%を超えてMnを含有させると、母材の硬さが高くなって切削時の工具寿命の低下や冷間鍛造性の悪化をきたし、さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、Mnの含有量を0.05〜0.6%とした。なお、Mn含有量の好ましい下限は0.1%である。また、好ましい上限は0.5%である。
P:0.03%以下
Pは、結晶粒界に偏析して転動疲労寿命を短くしてしまう。特に、その含有量が0.03%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.03%以下とした。好ましいP含有量の範囲は0.02%以下である。
S:0.010%以下
Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.010%を超えると、粗大な硫化物が残存するため転動疲労寿命を短くしてしまう。したがって、Sの含有量を0.010%以下とした。なお、転動疲労寿命の向上という観点からは、Sの含有量は低ければ低いほど好ましいが、Sには被削性を高める作用があり、その含有量が0.005%以上で被削性向上効果が確実に得られる。このため被削性を重視する場合には、Sの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Cr:1.2〜1.7%
Crは、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させるのに有効な元素であり、1.2%以上含有させなければならない。しかしながら、1.7%を超えてCrを含有させると、母材の硬さが高くなって切削時の工具寿命の低下や冷間鍛造性の悪化をきたし、さらには、焼割れが発生する場合がある。したがって、Crの含有量を1.2〜1.7%とした。なお、Cr含有量の好ましい下限は1.3%である。また、好ましい上限は1.6%である。
Al:0.005%以下
Alは、好ましくない元素であり、本発明においては、Alは極力少なくする必要がある。したがって、後述するように一次精錬としての酸化精錬後のAl添加による脱酸処理は行わないし、フラックスを投入して新たに生成されたスラグと溶鋼を強攪拌する際に用いるフラックスもAl23の含有量の少ない、実質的にAlを含有しないものを用いる。しかしながら、Alの含有量が多くなって、特に、0.005%を超えると、Al23を主体とする硬質な酸化物の生成量が多くなり、しかも、圧下した後も粗大な酸化物として残存するので、転動疲労寿命が短くなってしまう。したがって、Alの含有量を0.005%以下とした。なお、Alは、0.003%以下の含有量とすることが好ましく、低ければ低いほどよい。
Ca:0.0005%以下
本発明においては、後述するように、一次精錬としての酸化精錬で生成したスラグの除滓後に、主成分がCaOであるフラックスを投入して、新たに生成されたスラグと溶鋼を強攪拌する。この際に、Caは軟質な酸化物として、フラックスから鋼中に極微量混入する。ただし、Caの含有量が多くなり、0.0005%を超えると、酸化物組成におけるCaOの割合が高くなりすぎて、粗大な酸化物となってしまう。したがって、Caの含有量を0.0005%以下とした。好ましいCa含有量は、0.0003%以下であり、さらに好ましくは0.0002%以下である。なお、含有されるCaの量の下限値は、特に規定するものではなく、鋼材中の酸化物の平均組成におけるCaOが10%以上であればよい。
O:0.0020%以下
Oは、好ましくない不純物元素である。Oの含有量が多くなって、特に、0.0020%を超えると、圧下した後に粗大な酸化物として残存し、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0020%以下とした。なお、好ましいO含有量の範囲は0.0015%以下である。
上記の理由から、本発明(1)に係る軸受鋼鋼材は、C、Si、Mn、P、S、Cr、Al、Ca、Oを上述した範囲で含有し、残部はFeおよび不純物の化学成分からなることと規定した。
また、本発明(2)においても、C、Si、Mn、P、S、Cr、Al、Ca、Oを上述した範囲で含有し、残部はFeおよび不純物の化学成分を有する鋳片または鋼塊を用いることとした。
なお、粗大なTiNが生成すると転動疲労寿命を低下させてしまうため、不純物におけるTiは0.003%以下、不純物におけるNは0.010%以下とすることが好ましい。
(B)非金属介在物:
(B−1)酸化物の平均組成:
本発明においては、非金属介在物について、先ず、酸化物の平均組成が、質量%で、CaO:10〜60%、Al23:35%以下、MnO:35%以下およびMgO:15%以下で残部SiO2および不純物からなるものでなければならない。以下、質量%での酸化物の平均組成における含有量を「濃度」ともいう。
本発明でいう「酸化物」は、主としてCaO、SiO2、Al23、MnOおよびMgOの5元系を基本として構成されるものであり、酸化物の平均組成が上記の範囲にある場合には酸化物は全体的に軟質であり、圧延などの圧下工程において容易に延伸、分断されて微細になるため、転動疲労寿命を低下させることがなく、したがって、過酷な使用環境下においても優れた転動疲労寿命を確保できるからである。
以下に、各酸化物組成の限定理由を示す。
CaO:10〜60%
酸性酸化物であるSiO2を基本組成とする酸化物は、塩基性であるCaOを含むことにより酸化物の液相線温度が下がり、圧延などの圧下温度域で延性を示すようになる。上記の効果は、酸化物の平均組成におけるCaO濃度が10%以上で得られるが、60%を超えると相対的にSiO2濃度が低下して却って延性を示さなくなる。したがって、酸化物の平均組成におけるCaO濃度を10〜60%とした。なお、圧延などの圧下温度域で安定した延性が得られるようにするための上記CaO濃度の好ましい上限は50%である。
Al23:35%以下
両性酸化物であるAl23の酸化物の平均組成における濃度が35%を超えると、Al23(コランダム)相が晶出したり、後述するMgOとともにMgO・Al23(スピネル)相が晶出する。これらの固相は硬質で圧延などの圧下でも延伸することなく、晶出した際の厚みを保つ。したがって、酸化物の平均組成におけるAl23濃度は35%以下とする必要がある。なお、前記硬質相の生成を安定かつ確実に抑制するための上記Al23濃度の好ましい上限は25%である。
MnO:35%以下
MnOは、酸化物としては塩基性を有し、SiO2系の軟質化を助長するので、比較的高い濃度まで許容できる。しかしながら、MnOは鋼が弱脱酸状態の時に安定な、いわゆる低級酸化物であり、MnO濃度が高いと鋼中のO(酸素)の含有量も高くなる。すなわち、酸化物の平均組成におけるMnO濃度が35%を超えるとO含有量を0.0020%以下とすることができない場合がある。したがって、酸化物の平均組成におけるMnO濃度を35%以下とした。なお、前述したOの含有量を0.0015%以下にするために、酸化物の平均組成におけるMnO濃度は25%以下とすることが好ましい。
MgO:15%以下
MgOは塩基性酸化物であり、少量ではSiO2系酸化物の軟質化ができるが、一方でその溶解度が低く、硬質のMgO(ペリクレース)相およびAl23とともにMgO・Al23(スピネル)相が晶出する。酸化物の平均組成におけるMgOが15%を超えると、上述した硬質相を晶出する蓋然性が高くなる。したがって、酸化物の平均組成におけるMgO濃度を15%以下とした。なお、前記した硬質相の晶出をより確実に抑制するために、酸化物の平均組成におけるMgO濃度は10%以下とすることが好ましい。
本発明でいう「酸化物」は、主としてCaO、SiO2、Al23、MnOおよびMgOの5元系を基本として構成されるものであるが、Cr23、Na2O、ZrO2などの酸化物における不純物の総和は5%以下であることが好ましい。
なお、酸化物の平均組成は、CaO:10〜50%、Al23:25%以下、MnO:25%以下およびMgO:10%以下で残部がSiO2および5%以下の不純物であることが好ましい。
また、酸化物の平均組成において、Al23、MnOおよびMgOの下限は、特に規定する必要はない。
上述の理由から、本発明(1)に係る軸受鋼鋼材の酸化物の平均組成を、質量%で、CaO:10〜60%、Al23:35%以下、MnO:35%以下およびMgO:15%以下で残部SiO2および不純物からなることと規定した。
また、本発明(2)においても、上記酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊を用いることとした。
なお、酸化物の平均組成は、例えば、鋼材を長手方向に平行に切出したL断面を鏡面研磨した後、エネルギー分散型X線分光法によって、厚さ3μm以上の任意の酸化物を複数個、例えば20個について、測定した組成を算術平均して求めればよい。
なお、上記した酸化物の平均組成は、例えば、次の〈1〉および〈2〉に述べる製鋼方法を採用し、その後、常法の連続鋳造法や鋳型法によって鋳片や鋼塊を作製することによって得ることができる。
〈1〉軸受鋼の製鋼過程で、いわゆる「一次精錬炉」である転炉や電気炉などでの酸化精錬後に不純物として含まれる酸素を除くために通常実施されるAl添加での脱酸処理を行わない。
〈2〉二次精錬終了後の最終的なスラグについて、塩基度(CaO/SiO2)が0.8〜2.0で、かつ組成が質量%で、MgO:15%以下、F:10%以下、Al23:20%以下になるように制御する。なお、上記のF(フッ素)は造滓剤としてのほたる石の主成分であるCaF2に由来する。
なお、二次精錬終了後の最終的なスラグについて、上記〈2〉の組成とするためには、一次精錬炉から取り鍋へ出鋼した後、「二次精錬」におけるスラグ組成制御を容易にするために、先ず、一次精錬炉から流出した酸化精錬で生成したスラグの除滓を実施し、除滓後に、主成分がCaOであり、実質的にAlを含まない、Al23やMgOの含有量の少ないフラックスを投入して、新たに生成したスラグと溶鋼を強攪拌すればよい。既に述べたように、上記のスラグ組成における「残部」は、MnO、FeO、TiO2、Cr23などである。
なお、強攪拌を得るための手段としては、例えば、減圧下での攪拌、インジェクションによる攪拌や取り鍋底部からの底吹き攪拌などを適用すればよい。インジェクションによる攪拌を行う場合には、上述のフラックスを同時に吹き込むのが好ましい。また、減圧処理を実施する場合には、あくまでも攪拌のための減圧処理に留める必要がある。これは、長時間の減圧処理を実施すれば、却って耐火物からの硬質介在物の混入やスラグの巻き込みを招くことになって、清浄性を低下させることに繋がるからである。
また、鋼のCa含有量が0.0005%を超えない範囲であれば、二次精錬の過程でさらに溶鋼中にCaを添加しても構わない。
(B−2)酸化物の最大厚さと硫化物の最大厚さ:
酸化物、硫化物の双方ともに、その厚さが大きい場合には、転動疲労寿命の低下を招く。転動疲労寿命に最も影響を及ぼすものは、軌道面下に存在する最も粗大な介在物である。特に、鋼材のL断面の100mm2の面積中において8.5μmを超えるような最大厚さの酸化物や硫化物が、鋼材中の数多くの部位で存在すると、軌道面に存在する確率が高くなり、転動疲労寿命の著しい低下をきたす。
上述の理由から、本発明(1)に係る軸受鋼鋼材は、鋼材のL断面の10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下であることと規定した。
上記の酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値はいずれも、7μm以下であることが好ましい。
なお、「L断面」とは、鋼材の長手方向に平行に切断した面を指すことは既に述べたとおりである。
(C)鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さ:
一般に、熱間加工ままの高炭素クロム軸受鋼鋼材のHv硬さは350〜400程度であるため、切断や冷間鍛造などの冷間加工を施す場合には、熱間加工後に球状化焼鈍など長時間にわたる軟質化熱処理を施す必要があった。しかしながら、鋼材の冷間加工性は、鋼材の表面からR/2部位置までの変形能に大きく支配され、高炭素クロム軸受鋼鋼材であっても、熱間加工ままでの上記部位における平均断面硬さがHv硬さで290以下であれば、熱間加工ままあるいは軟質化熱処理時間を短くしても良好な冷間加工性を確保することができる。
したがって、本発明(1)に係る軸受鋼鋼材について、その表面からR/2部位置までの平均断面硬さをHv硬さで290以下であることとした。
上記部位におけるHv硬さでの好ましい平均断面硬さは270以下であり、さらに好ましくは250以下である。上記部位での平均断面硬さは、低ければ低いほど優れた冷間加工性が得られるので、平均断面硬さの下限は特に規定するものではない。
なお、前記(A)項に記載の化学成分および(B)項に記載の酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に対して、例えば、次の(D)項で述べるような、全圧下比が15以上となる2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程において、被圧下材の加熱温度およびその圧下工程中の被圧下材の表面温度を適正化すれば、変形能に大きな影響を及ぼす上記の表面からR/2部位置までのセメンタイトの球状化が促進されので、上記部位における平均断面硬さをHv硬さで290以下にすることができる。
なお、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さは、例えば、鋼材を長手方向と垂直に切出した「横断面」(以下、「C断面」という。)を鏡面研磨した後、表面下0.5mm程度の位置からR/2部位置までを、ビッカース硬さ試験機を用いて、JIS Z 2244(2003)に記載された条件を満足するようにほぼ等間隔で、10点測定した後、算術平均して求めればよい。
なお、前述したとおり、「R」は軸受鋼鋼材の半径を表す。
(D)軸受鋼鋼材の製造方法:
本発明(1)の軸受鋼鋼材は、例えば、本発明(2)の方法、具体的には、前記(A)項で述べた化学成分からなり、非金属介在物について前記(B−1)項で述べた酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に、2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上となる圧下を加えるに際し、該2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程が、下記の〔1〕〜〔3〕の全てを満たすようにして圧下し、さらに、最終圧下工程における圧下を終了した後400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却することによって製造することができる。
〔1〕被圧下材をAe1点〜Aem点の温度域に加熱して圧下を開始すること、
〔2〕圧下工程中の被圧下材の表面温度が、680℃〜(Aem点−30℃)の温度範囲内であること、
〔3〕圧下比が4以上であること。
なお、既に述べたように、全圧下比とは、鋳片または鋼塊の断面積を、最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指し、また、最終圧下工程での圧下比とは、最終圧下工程で圧下が加えられる前の被圧下材の断面積を最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指す。
また、本発明(2)に係る化学成分と酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊、つまり前記(A)項で述べた化学成分を有し、非金属介在物について前記(B−1)項で述べた酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊は、例えば、前記(B−1)項の〈1〉および〈2〉で述べた方法を採用した後、続いて常法の連続鋳造法や鋳型法で鋳造することによって得ることができる。
以下、本発明(1)の軸受鋼鋼材の一例として具体的に棒鋼、線材を取り上げ、これらの鋼材を製造する方法について詳しく説明する。
前述の化学成分および酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊を、2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上となる圧下を加えて、具体的には、例えば、常法どおり1000℃を超える温度域で分塊圧延して得た鋼片を用いて、これにさらに、熱間での鍛造工程、熱間での圧延と鍛造からなる工程、あるいは、熱間での棒鋼連続圧延や線材連続圧延などの工程で圧下を加え、全圧下比が15以上となるようにして最終の棒鋼や線材に加工する。
上記工程において、鋳片又は鋼塊を最終の棒鋼や線材に加工する場合の全圧下比が15を下回る場合には、たとえ前述の(A)項で述べた化学成分からなり、(B−1)項で述べた酸化物の平均組成を有する鋳片又は鋼塊を用いても、軸受鋼鋼材に前記(B−2)項で述べた酸化物の最大厚さと硫化物の最大厚さの条件を満足させることができず、このため、過酷な使用環境下において、所望の優れた転動疲労寿命を確保させることができない。
なお、上記の全圧下比が大きいほど、前記(B−2)項で述べた酸化物の最大厚さと硫化物の最大厚さが小さくなって、転動疲労特性(転動疲労寿命)は向上する。このため、上記全圧下比の上限は特に規定する必要はなく、鋳片や鋼塊の寸法とそれらを加工して得られる最終の棒鋼や線材の寸法や設備面から決定される最大の値であってもよい。
なお、全圧下比は30以上であることが好ましい。
しかしながら、軸受鋼鋼材としての棒鋼や線材に前記(B−2)項で述べた酸化物の最大厚さと硫化物の最大厚さの条件を満足させるとともに、前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さがHv硬さで290以下という条件を満足させるためには、2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上を満たすようにするだけでは不十分である。
すなわち、酸化物の平均組成が前記(B−1)項で述べたものである時、同時に存在する硫化物にはMnOと思われる酸化物が含有されており、Al添加で脱酸処理した場合に比べて硫化物は硬質化しているので、加工によって延伸、分断され難く、したがって、軸受鋼鋼材としての棒鋼や線材に、先ず前記(B−2)項で述べた硫化物の最大厚さの条件を満足させるためには、全圧下比が15以上を満たすようにし、しかも、特願2007−204872の特許出願で提案したとおり、その圧下のうちで1000℃以下の温度域での圧下比を4以上として圧下する必要がある。
これは、マトリックス(素地)の変形抵抗は硫化物に比較して小さいため、高い温度で加えられる圧下、特に、1000℃を超える温度域で加えられる圧下は、マトリックスを優先的に変形させてしまうため、上記温度域における圧下では、硫化物は延伸、分断され難く、前記(B−2)項で述べた硫化物の最大厚さの条件を満足することができないからである。そして、この場合には、過酷な使用環境下において、所望の優れた転動疲労寿命を確保させることができない。
これに対して、圧下を加える温度域を1000℃以下に低下させれば、マトリックスと硫化物の変形抵抗の差は小さくなるので、硫化物は延伸、分断されやすくなって前記(B−2)項で述べた硫化物の最大厚さの条件を満足するようになるからである。
しかしながら、軸受鋼鋼材としての棒鋼や線材に前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を同時に満足させるためには、特願2007−204872の特許出願で提案した全圧下比が15以上を満たし、その圧下のうちで1000℃以下の温度域での圧下比を4以上として圧下するだけでは不十分であり、2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上となる圧下を加えるに際し、該2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程が、前述した〔1〕〜〔3〕の全てを満たすようにして圧下し、さらに、最終圧下工程における圧下を終了した後400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却することが必要になる。
すなわち、被圧下材をAe1点〜Aem点の温度域に加熱して圧下を開始するという条件〔1〕によって、最終圧下工程前の被圧下材に存在していたパーライト中の微細な粒状や球状のセメンタイトを、最終圧下工程での圧下開始時に旧オーステナイト粒内に残存させることができる。そして、最終圧下工程中の被圧下材の表面温度が、680℃〜(Aem点−30℃)の温度範囲内であるという条件〔2〕およびその際の圧下比が4以上であるという条件〔3〕を満たし、さらに、圧下を終了した後400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却すれば、上記の旧オーステナイト粒内に残存させた微細な粒状や球状のセメンタイト(以下、「残存セメンタイト」という。)付近に歪みが集積するので、上記残存セメンタイトの近傍に微細な初析セメンタイトをさらに均一に加工誘起析出させることができ、アスペクト比、つまり、「長径/短径」の極めて小さい球状に近い形態のセメンタイトを得ることができる。それにより、(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を同時に満足させることが可能になるのである。
最終圧下工程での被圧下材の加熱温度がAe1点より低い場合には、最終圧下工程における圧下開始段階で被圧下材のパーライトそのものが残存し、圧下後の組織は板状セメンタイトが多数残存するものとなり、球状に近い形態のセメンタイト組織は得られない。このため、前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を満足できない。
一方、上記加熱温度がAem点を超える場合には、被圧下材はオーステナイト化して残存セメンタイトがマトリックス中に完全に固溶してしまうので、最終圧下工程における圧下開始段階では析出サイトとなるべき残存セメンタイトは存在しない。このため、最終圧下工程中の被圧下材の表面温度を条件〔2〕の680℃〜(Aem点−30℃)という温度範囲に制御しても、微細な初析セメンタイトを旧オーステナイト粒界および粒内に均一に加工誘起析出させることができないので、圧下終了後の冷却過程でオーステナイトはパーライト変態し、旧オーステナイト粒内に板状セメンタイトが析出してしまい、球状に近い形態のセメンタイト組織を得ることができない。よって、この場合にも前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を満足させることができない。
最終圧下工程中の被圧下材の表面温度が680℃を下回る場合には、多くの転位を導入できるものの、その温度で保持されることによって、オーステナイトとセメンタイトとの2相組織におけるオーステナイトがパーライト変態を開始してしまう。そして、変態によって生成したパーライトを圧下した場合には、パーライト中の一部の板状セメンタイトはわずかに分断されるものの、セメンタイトのアスペクト比はあまり小さくはならない。このため、前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を満足させることができない。しかも、パーライトの変形抵抗は極めて大きいので、圧下設備の負荷が極めて増大してしまう。
一方、最終圧下工程中の被圧下材の表面温度が(Aem点−30℃)を超えた場合には、圧下で導入された加工歪みは容易に消失し、微細な初析セメンタイトを均一に加工誘起析出させることができなくなる。そのため、球状に近い形態のセメンタイト組織は得られず、その結果、この場合にも前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を満足させることができない。
なお、本発明においては、加工発熱により最終圧下工程中の被圧下材の表面温度が(Aem点−30℃)を超えてしまいそうな場合には、最終圧下工程中の途中段階での中間冷却、すなわち、熱間での棒鋼連続圧延や線材連続圧延における圧延機間での中間冷却帯での冷却を行っても構わない。この場合、被圧下材の表面温度が一時的に680℃を下回る場合があるものの、続く圧下開始までに680℃以上に復熱し、被圧下材の表面温度が条件〔2〕の680℃〜(Aem点−30℃)という温度範囲で圧下を続ける程度の短時間の軽微な冷却であれば、内質にはほとんど影響を及ぼさず、前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さがビッカース硬さで290以下の条件を満足させることができる。この場合、中間冷却帯での冷却開始から冷却終了後被圧延材の表面温度がAe1点以上に復熱するまでの時間Δtは10s以下であることが好ましい。
なお、最終圧下工程での圧下比が2以上であれば、微細な初析セメンタイトを均一に加工誘起析出させ、球状に近い形態のセメンタイト組織を得て、前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を満足させることができるものの、前記(B−2)項で述べた硫化物の最大厚さを得るためには、最終圧下工程における圧下比は条件〔3〕の4以上とする必要がある。上記最終圧下工程における圧下比は大きいほど硫化物の最大厚さが小さくなるため、6以上が好ましく、8以上であればさらに好ましい。
上記の最終圧下工程における圧下を終了した後は、400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却する必要があるのは、400℃までの温度域の最終冷却速度が5℃/sを超える場合には、当該冷却時における初析セメンタイトや残存セメンタイトの成長が阻害されるとともに、パーライト変態して、板状のセメンタイトが析出してしまうので、初析セメンタイトが旧オーステナイト粒界に沿ってネットワーク状に析出し、球状に近い形態のセメンタイト組織が得られず、このため、前記(C)項で述べた鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さの条件を満足させることができないからである。
なお、上述の5℃/s以下の冷却速度で冷却する温度域は最終圧下工程における圧下を終了した後400℃までとすれば十分であって、400℃を下回る温度域については特に規定する必要がない。このため、製造設備や生産性を勘案して、例えば、空冷(放冷)、強制風冷やミスト冷却などから適宜決定すればよい。
また、上記の400℃までの温度域の最終冷却速度の下限は、冷却速度を遅くすれば、パーライトの抑制効果が大きくなるが、冷却速度を遅くするための温度制御設備が必要となり、結果として製造コストの増加を招くことから、5℃/hとするのが好ましい。
なお、既に述べたように、全圧下比とは、鋳片または鋼塊の断面積を、最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指し、また、最終圧下工程での圧下比とは、最終圧下工程で圧下が加えられる前の被圧下材の断面積を最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指す。
上述の理由から、本発明(2)においては、本発明(1)に記載の化学成分および酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊、換言すれば、前記(A)項で述べた化学成分を有するとともに、非金属介在物について前記(B−1)項で述べた酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に、2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上となる圧下を加えるに際し、該2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程が、前記の〔1〕〜〔3〕の全てを満たすようにして圧下し、さらに、最終圧下工程における圧下を終了した後400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却することと規定した。
また、本発明(3)においては、一次精錬としての酸化精錬後に、Al脱酸処理を行わずに、実質的にAlを含有しないフラックスを用いて二次精錬を行い、二次精錬終了後の最終的なスラグの塩基度CaO/SiO2の値が0.8〜2.0で、かつスラグ組成が質量%で、MgO:15%以下、F:10%以下、Al23:20%以下になるように制御し、続いて鋳造された鋳片や鋼塊を用いることと規定した。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1)
表1に示す種々の化学組成を有する軸受鋼の鋳片1〜21を製造した。
なお、表1中の鋼1〜12および鋼14〜17は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼であり、鋼13および鋼18〜21は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。比較例の鋼のうち鋼20および鋼21は従来のAlキルド鋼に相当する鋼である。
表1には、株式会社材料設計技術研究所で開発・販売されている状態図計算ソフトウェア「Pandat ver.6.0」によって求めた各鋼のAe1点およびAem点も併せて示した。
Figure 2010007092
上記の各鋼のうち、鋼1〜19については、転炉で一次精錬としての酸化精錬を行った後、除滓し、フラックスを投入した。そして、フラックスインジェクション法によるフラックスの吹き込みを行った後、溶鋼中にフラックスを混入させた状態で、アーク式加熱装置付き真空溶鋼攪拌設備(以下、「VAD」という。)により、Ar雰囲気下で、Ar流量40〜60L/分の溶鋼攪拌を40分間行った。その後、連続鋳造して300mm×400mmの鋳片にした。なお、鋼19については、転炉からの出鋼時にAlを僅かに添加し、軽く脱酸処理を行ったが、鋼1〜18については、Al添加の脱酸処理を行わなかった。
鋼20および鋼21については、転炉で一次精錬としての酸化精錬を行った後、転炉からの出鋼時にAl添加による脱酸処理を行ってから、除滓し、フラックスを投入した。そして、VADにより、Ar雰囲気下で、Ar流量40〜60L/分の溶鋼攪拌を40分間行い、さらにRH真空脱ガス装置による処理を40分間行って、Al23を主体とする硬質な酸化物を除去した。その後、連続鋳造して300mm×400mmの鋳片にした。
表2に、鋼1〜21の除滓後に投入したフラックスの組成、および鋼1〜19のフラックスインジェクション法で使用したフラックスの組成を示す。
また、表3に、鋼1〜21のVAD処理後の質量%でのスラグの組成と塩基度(CaO/SiO2)を示す。
なお、表2のフラックスインジェクション法で使用したフラックスの組成における「残部」は、C、S、Pなどであり、また、表3のスラグ組成における「残部」は、MnO、FeO、TiO2、Cr23などである。
Figure 2010007092
Figure 2010007092
このようにして得た鋼1〜21の鋳片のT/4部(但し、「T」は鋳片の厚みを表す。)から、すなわち、鋳片の外面と中心の中間部位から、酸化物組成測定用のブロックを切出し、そのブロックを樹脂に埋め込んでL断面を鏡面研磨した後、エネルギー分散型X線分光法によって、厚さ3μm以上の任意の酸化物を20個選び、それぞれの組成を測定した。
そして、20個の酸化物について測定した組成を算術平均して、各鋳片における酸化物の「平均組成」を求めた。
表4に、鋼1〜21の各鋳片について上記のようにして測定した酸化物の平均組成を示す。なお、酸化物の平均組成における残部は「不純物」、すなわち、Cr23、Na2O、ZrO2などを指す。
Figure 2010007092
上記鋼1〜19の鋳片については、これらを1250℃で均熱した後、1150〜1100℃の温度域で分塊圧延して160mm×160mmの鋼片とし、さらに、その鋼片を830℃に加熱した後、830〜750℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、直径70mm(以下、「φ70mm」という。)の棒鋼を製造した。なお、400℃を下回る温度域における冷却は、大気中での放冷とした。
一方、鋼20および鋼21の鋳片については、これらを1250℃で均熱した後、1150〜1100℃の温度域で分塊圧延して160mm×160mmの鋼片とし、さらにその鋼片を1200℃に加熱した後、1150〜1050℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、φ70mmの棒鋼を製造した。なお、400℃を下回る温度域における冷却は、大気中での放冷とした。
上記のようにして得た鋼1〜21のφ70mmの棒鋼のR/2部(但し、「R」は棒鋼の半径を表す。)から、酸化物組成測定用のブロックを切出し、そのブロックを樹脂に埋め込んでL断面を鏡面研磨した後、エネルギー分散型X線分光法によって、厚さ3μm以上の任意の酸化物を20個選び、それぞれの組成を測定した。
そして、20個の酸化物について測定した組成を算術平均して、各φ70mmの棒鋼における酸化物の「平均組成」を求めた。
また、鋼1〜21のφ70mmの棒鋼のR/2部から、縦断方向に100mm2のブロックを10個切出してL断面が被検面になるように樹脂に埋め込んで鏡面研磨し、次いで、100mm2の各L断面中に存在する酸化物の最大厚さおよび硫化物の最大厚さを光学顕微鏡を用いて測定し、それぞれ、算術平均した。
具体的には、光学顕微鏡観察の倍率を400倍として、先ず、100mm2のL断面中で最も厚さの大きい酸化物と硫化物をそれぞれ検出し、次いで、倍率を1000倍としてそれぞれの厚さを測定し、この測定を10個のブロックについて行い、それぞれ10個の算術平均値を求めた。
なお、酸化物と硫化物が分離せずに複合している場合は、酸化物と硫化物の厚さをそれぞれ測定し、それらの厚さが測定したL断面中で最も大きかった場合に、それぞれを、対象とする100mm2のL断面中で最も厚さの大きい酸化物や硫化物として、算術平均した。
表5に、鋼1〜21の各φ70mmの棒鋼について上記のようにして測定した酸化物の平均組成ならびに10個の100mm2のL断面中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値を示す。なお、酸化物の平均組成における残部は「不純物」、すなわち、Cr23、Na2O、ZrO2などを指す。また、表5においては、上記の酸化物の最大厚さの算術平均の値および硫化物の最大厚さの算術平均の値をそれぞれ、「酸化物の最大厚さ」および「硫化物の最大厚さ」と表記した。以下の説明においても、酸化物の最大厚さの算術平均の値および硫化物の最大厚さの算術平均の値をそれぞれ、「酸化物の最大厚さ」および「硫化物の最大厚さ」という。
Figure 2010007092
また、上記のようにして得た鋼1〜21のφ70mmの棒鋼から長手方向と垂直に切出したC断面を樹脂に埋め込み、検鏡研磨した後、ビッカース硬さ試験機を用いて棒鋼の表面からR/2部位置までの平均断面硬さを測定した。
具体的には、JIS Z 2244(2003)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に記載された条件を満足するようにほぼ等間隔で、試験力を9.807Nとして、C断面の表面下0.5mmの位置からR/2部位置までのHv硬さを等間隔にて10点測定した後、算術平均して平均断面硬さを求めた。
表5に、上記のようにして求めた表面下からR/2部位置までの平均断面硬さを「平均硬さ」と表記して併せて示した。
さらに、鋼1〜21のφ70mmの棒鋼から、いずれもC断面のR/4部位置、つまり表面とR/2部位置の中間の位置を基準として、直径が14mmで高さが21mmの圧縮試験片を圧延方向と一致するように切出し、冷間加工性を評価した。
すなわち、プレス機械を用いて、上記の試験片を10〜65%の圧縮率で各6個ずつ圧縮し、割れ発生率と圧縮率の関係を求め、3個の試験片に割れが発生した場合の最小の圧縮率を限界圧縮率として冷間加工性を評価した。
なお、上記の「圧縮率」とは、プレス機械を用いて圧縮加工した後の試験片の高さをh(mm)として、{(21−h)/21}×100で表される値をいう。
表5に、上記のようにして求めた限界圧縮率を併せて示した。
次いで、完全に球状化焼鈍された状態での転動疲労特性を評価するため、前記のようにして得た鋼1〜21のφ70mmの棒鋼をいずれも、780℃にて6時間保持した後炉冷を行う、全在炉時間20時間の通常の球状化焼鈍を行い、その後、長手方向が素形材の厚みとなるように、直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材をスライスして採取した。
上記の直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材を、830℃で30分加熱した後、油焼入れし、その後さらに、180℃で1時間加熱してから大気中で放冷する焼戻しを行った。
このようにして焼入れ−焼戻しした素形材の表面をラッピング加工して転動疲労試験片を作製して、転動疲労試験に供した。
転動疲労試験は、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、最大接触面圧5230MPa、繰返し速度1800cpm(cycle per minute)の条件で行った。
表6に、転動疲労試験の詳細条件を示す。
Figure 2010007092
転動疲労試験結果は、ワイブル分布確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「転動疲労寿命」として評価した。
前記の表5に、上記のようにして求めた転動疲労寿命を併せて示した。
表5から、鋼の化学成分、非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成および鋼材のL断面の10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さと硫化物の最大厚さ)および鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さが本発明(1)の規定を満たす試験番号1〜12の場合には、6.29×107以上の長い転動疲労寿命が得られており、また、50%以上の高い限界圧縮率も得られている。
これに対して、鋼の化学成分および鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さが本発明(1)の規定を満たしても、本発明(3)の規定から外れる方法で製造し、非金属介在物が本発明(1)で規定する条件から外れる試験番号14〜17の場合には転動疲労寿命は短い。
すなわち、上記の各試験番号の場合、硫化物の最大厚さは本発明(1)で規定する条件を満たすものの、酸化物の平均組成が本発明(1)で規定する条件から外れるため、酸化物が硬質なものとなり、その結果、酸化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命はそれぞれ、2.57×107、2.88×107、3.29×107および2.21×107と短いものである。
また、鋼の化学成分が本発明の規定から外れる場合も、転動疲労寿命は短い。
すなわち、試験番号13は、酸化物の平均組成、酸化物の最大厚さおよび鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さは本発明(1)で規定する条件を満たすものの、用いた鋼13のS含有量が、0.016%と高く、本発明(1)で規定する値を超えるため、硫化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命は、2.76×107と短いものである。
試験番号18は、酸化物の平均組成、硫化物の最大厚さおよび鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さは本発明(1)で規定する条件を満たすものの、用いた鋼18のO含有量が0.0021%と高く、本発明(1)で規定する値を超えるため、酸化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命は2.56×107と短い。
試験番号19は、硫化物の最大厚さおよび鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さは本発明(1)で規定する条件を満たすものの、用いた鋼19のAl含有量が、0.008%と高く、本発明(1)で規定する値を超えるため、酸化物の平均組成が本発明(1)で規定する条件から外れて、硬質な酸化物となり、その結果、酸化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命は1.97×107と短いものである。
なお、試験番号20および試験番号21は、従来のAlキルド鋼に相当する鋼20および鋼21を従来の方法により製造した圧延鋼材であり、Al含有量がそれぞれ、0.019%および0.021%と高く、本発明(1)で規定する値を超え、硫化物の最大厚さは本発明(1)で規定する条件を満たすものの、酸化物の平均組成が本発明(1)で規定する条件から外れて、硬質な酸化物となり、その結果、酸化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命はそれぞれ、3.10×107および2.15×107と短い。さらに、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さに関してもそれぞれ、362および353と本発明(1)で規定する条件から外れるため、その限界圧縮率は双方ともに15%と低い。
(実施例2)
実施例1で作製した鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20の300mm×400mmの鋳片を1250℃で均熱した後、1150〜1100℃の温度域で分塊圧延して160mm×160mmの鋼片にした。
次いで、上記の鋼片を用いて、次の《1》〜《6》に示す条件で棒鋼圧延し、直径70mm(φ70mm)または直径100mm(φ100mm)の棒鋼を製造した。
《1》鋼片を1200℃に加熱した後、1150〜1050℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、φ70mmの棒鋼を製造、
《2》鋼片を830℃に加熱した後、830〜750℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、φ70mmの棒鋼を製造、
《3》鋼片を1000℃に加熱した後、830〜780℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、φ70mmの棒鋼を製造、
《4》鋼片を780℃に加熱した後、720〜600℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、φ70mmの棒鋼を製造、
《5》鋼片を850℃に加熱した後、920〜810℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.4℃/sの冷却速度で冷却して、φ70mmの棒鋼を製造、
《6》鋼片を830℃に加熱した後、830〜750℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.3℃/sの冷却速度で冷却して、φ100mmの棒鋼を製造。
また、上記の実施例1で作製した鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20の300mm×400mmの鋳片を1250℃で均熱した後、1150〜1100℃の温度域で分塊圧延して240mm×240mmの鋼片とし、さらに、その鋼片を用いて、次の《7》に示す条件で棒鋼圧延し、直径120mm(φ120mm)の棒鋼を製造した。
《7》鋼片を860℃に加熱した後、830〜780℃の温度域で棒鋼圧延し、圧延終了後400℃までの温度域を0.2℃/sの冷却速度で冷却して、φ120mmの棒鋼を製造。
なお、上記の《1》〜《7》のいずれの場合も、400℃を下回る温度域における冷却は、大気中での放冷とした。
表7に、上記した各棒鋼の製造条件の詳細を示す。
Figure 2010007092
上記のようにして製造した鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20のφ70mm、φ100mmおよびφ120mmの棒鋼のR/2部から、酸化物組成測定用のブロックを切出し、そのブロックを樹脂に埋め込んでL断面を鏡面研磨した後、エネルギー分散型X線分光法によって、厚さ3μm以上の任意の酸化物を20個選び、それぞれの組成を測定した。
そして、20個の酸化物について測定した組成を算術平均して、φ70mm、φ100mmおよびφ120mmの棒鋼における酸化物の「平均組成」を求めた。
また、前記鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20のφ70mm、φ100mmおよびφ120mmの棒鋼のR/2部から、縦断方向に100mm2のブロックを10個切出してL断面が被検面になるように樹脂に埋め込んで鏡面研磨し、次いで、100mm2の各L断面中に存在する酸化物の最大厚さおよび硫化物の最大厚さを光学顕微鏡を用いて測定し、それぞれ、算術平均した。
具体的には、光学顕微鏡観察の倍率を400倍として、先ず、100mm2のL断面中で最も厚さの大きい酸化物と硫化物をそれぞれ検出し、次いで、倍率を1000倍としてそれぞれの厚さを測定し、この測定を10個のブロックについて行い、それぞれ10個の算術平均値を求めた。
なお、酸化物と硫化物が分離せずに複合している場合は、酸化物と硫化物の厚さをそれぞれ測定し、それらの厚さが測定したL断面中で最も大きかった場合に、それぞれを、対象とする100mm2のL断面中で最も厚さの大きい酸化物や硫化物として、算術平均した。
表8に、前記の各棒鋼について上記のようにして測定した酸化物の平均組成ならびに10個の100mm2のL断面中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値を示す。なお、先にも述べたように、酸化物の平均組成における残部は「不純物」、すなわち、Cr23、Na2O、ZrO2などを指す。また、「酸化物の最大厚さ」および「硫化物の最大厚さ」は、それぞれ、酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値を指す。
Figure 2010007092
また、上記のようにして得た鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20のφ70mm、φ100mmおよびφ120mmの棒鋼から長手方向と垂直に切出したC断面を樹脂に埋め込み、検鏡研磨した後、ビッカース硬さ試験機を用いて棒鋼の表面からR/2部位置までの平均断面硬さを測定した。
具体的には、JIS Z 2244(2003)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に記載された条件を満足するようにほぼ等間隔で、試験力を9.807Nとして、C断面の表面下0.5mmの位置からR/2部位置までのHv硬さをほぼ等間隔にて10点測定した後、算術平均して平均断面硬さを求めた。
表8に、上記のようにして求めた表面からR/2部位置までの平均断面硬さを「平均硬さ」と表記して併せて示した。
さらに、上記の鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20のφ70mm、φ100mmおよびφ120mmの棒鋼から、いずれもC断面のR/4部位置、つまり表面とR/2部位置の中間の位置を基準として、直径が14mmで高さが21mmの圧縮試験片を圧延方向と一致するように切出し、冷間加工性を評価した。
すなわち、プレス機械を用いて、上記の試験片を10〜65%の圧縮率で各6個ずつ圧縮し、割れ発生率と圧縮率の関係を求め、3個の試験片に割れが発生した場合の最小の圧縮率を限界圧縮率として冷間加工性を評価した。
なお、既に述べたように、上記の「圧縮率」とは、プレス機械を用いて圧縮加工した後の試験片の高さをh(mm)として、{(21−h)/21}×100で表される値をいう。
表8に、上記のようにして求めた限界圧縮率を併せて示した。
次いで、完全に球状化焼鈍された状態での転動疲労特性を評価するため、前記のようにして得た鋼3、鋼11、鋼13、鋼17および鋼20のφ70mm、φ100mmおよびφ120mmの棒鋼をいずれも、780℃にて6時間保持した後炉冷を行う、全在炉時間20時間の通常の球状化焼鈍を行い、その後、長手方向が素形材の厚みとなるように、直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材をスライスして採取した。
上記の直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材を、830℃で30分加熱した後、油焼入れし、その後さらに、180℃で1時間加熱して大気中で放冷する焼戻しを行った。
このようにして焼入れ−焼戻しした素形材の表面をラッピング加工して転動疲労試験片を作製して、転動疲労試験に供した。
転動疲労試験は、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、最大接触面圧5230MPa、繰返し速度1800cpmの条件で行った。
なお、転動疲労試験の詳細条件は前記表6に示したとおりである。
転動疲労試験結果は、ワイブル分布確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「転動疲労寿命」として評価した。
前記の表8に、上記のようにして求めた転動疲労寿命を併せて示した。
表8から、鋼の化学成分および非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定を満たす鋳片を、本発明(2)の方法で圧下した試験番号23および試験番号30の場合には、7.13×107以上という長い転動疲労寿命が得られ、50%以上という高い限界圧縮率も得られていることがわかる。
これに対して、鋼の化学成分および非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定を満たす鋳片に全圧下比が15以上となる圧下を加えた場合であっても、最終圧下工程としての棒鋼圧延に際して、鋼片加熱温度と棒鋼圧延中の表面温度が本発明(2)で規定する条件〔1〕と〔2〕の少なくともいずれか一方から外れた試験番号22、試験番号24〜26、試験番号29および試験番号31〜33の場合には、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さが本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、これらの試験番号における限界圧縮率は15〜25%と低く冷間加工性に劣っている。
上記試験番号のうちでも、鋼片加熱温度と棒鋼圧延中の表面温度の双方が1000℃を超える試験番号22および試験番号29の場合には、硫化物の最大厚さも本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、転動疲労寿命はそれぞれ、3.11×107および3.24×107と短い。
また、鋼の化学成分および非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定を満たす鋳片を用いて、本発明(2)の規定を満たす15以上という全圧下比で圧下し、最終圧下工程としての棒鋼圧延に際して、本発明(2)で規定する条件〔1〕と〔2〕の鋼片加熱温度と棒鋼圧延中の表面温度を満たす場合であっても、棒鋼圧延工程における圧下比が本発明(2)で規定する条件〔3〕から外れた試験番号27および試験番号34の場合には、硫化物の最大厚さが本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、転動疲労寿命はそれぞれ、2.51×107および2.76×107と低い。
さらに、鋼の化学成分および非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定を満たす鋳片を用いて、最終圧下工程としての棒鋼圧延に際して、本発明(2)で規定する条件〔1〕〜〔3〕の鋼片加熱温度、棒鋼圧延中の表面温度および圧下比を満たすようにしても、全圧下比が10.6と低く、本発明(2)で規定する条件から外れる試験番号28および試験番号35の場合には、酸化物の最大厚さおよび硫化物の最大厚さが本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、転動疲労寿命はそれぞれ、2.09×107および1.87×107と低い。
さらに、非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定を満たしても鋼の化学成分としてのS含有量が本発明(2)の規定から外れる鋳片を用いた試験番号36〜42の場合には、圧下条件に拘わらず硫化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れ、しかも、圧下条件によっては試験番号42のように酸化物の最大厚さも大きくなり、本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命はそれぞれ、2.43×107、2.76×107、1.89×107、2.55×107、2.12×107、2.81×107および1.64×107と短いものである。
上記試験番号のうちでも、最終圧下工程としての棒鋼圧延に際して、鋼片加熱温度と棒鋼圧延中の表面温度が本発明(2)で規定する条件〔1〕と〔2〕の少なくともいずれか一方から外れた試験番号36および試験番号38〜40の場合には、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さも本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、これらの試験番号における限界圧縮率は15〜25%と低く冷間加工性にも劣っている。
鋼の化学成分が本発明(2)の規定を満たしても非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定から外れる鋳片を用いた試験番号43〜49の場合には、圧下条件に拘わらず酸化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れ、しかも、圧下条件によっては試験番号43および試験番号48、49のように硫化物の最大厚さも大きくなり、本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命はそれぞれ、2.42×107、2.21×107、1.78×107、2.39×107、1.96×107、2.37×107および1.55×107と短いものである。
上記試験番号のうちでも、最終圧下工程としての棒鋼圧延に際して、鋼片加熱温度と棒鋼圧延中の表面温度が本発明(2)で規定する条件〔1〕と〔2〕の少なくともいずれか一方から外れた試験番号43および試験番号45〜47の場合には、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さも本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、これらの試験番号における限界圧縮率は15〜25%と低く冷間加工性にも劣っている。
従来のAlキルド鋼に相当する鋼の化学成分および非金属介在物(つまり、酸化物の平均組成)が本発明(2)の規定から外れる鋳片を用いた試験番号50〜56の場合には、圧下条件に拘わらず酸化物の最大厚さが大きくなって本発明(1)で規定する条件から外れるので、転動疲労寿命はそれぞれ、3.10×107、3.31×107、2.99×107、2.89×107、2.14×107、2.53×107および1.99×107と短いものである。
上記試験番号のうちでも、最終圧下工程としての棒鋼圧延に際して、鋼片加熱温度と棒鋼圧延中の表面温度が本発明(2)で規定する条件〔1〕と〔2〕の少なくともいずれか一方から外れた試験番号50および試験番号52〜54の場合には、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さも本発明(1)で規定する条件から外れている。このため、これらの試験番号における限界圧縮率は15〜25%と低く冷間加工性にも劣っている。
本発明の軸受鋼鋼材は、近年の転がり軸受の過酷な使用環境下においても、転動疲労による破損に対して良好な耐久性を有し、転動疲労寿命が長いことから、各種の産業機械や自動車などに使用される「玉軸受」や「コロ軸受」といった転がり軸受の素材として利用することができる。また、本発明の軸受鋼鋼材は、冷間加工性に優れるため、球状化焼鈍などの軟質化熱処理を簡略化することが可能で、製造コストを低減することができる。この軸受鋼鋼材は本発明の方法によって製造することができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.85〜1.2%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.05〜0.6%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Cr:1.2〜1.7%、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%以下およびO:0.0020%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる化学成分を有し、非金属介在物について、酸化物の平均組成が質量%で、CaO:10〜60%、Al23:35%以下、MnO:35%以下およびMgO:15%以下で残部SiO2および不純物からなるとともに、鋼材の長手方向縦断面10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下であり、さらに、鋼材の表面からR/2部位置までの平均断面硬さがビッカース硬さで290以下であることを特徴とする軸受鋼鋼材。
    但し、「R」は軸受鋼鋼材の半径を表す。
  2. 請求項1に記載の化学成分および酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に2以上の圧下工程によって全圧下比が15以上となる圧下を加えて軸受鋼鋼材を製造する方法であって、該2以上の圧下工程のうちの最終圧下工程において、下記の〔1〕〜〔3〕の全てを満たすようにして圧下し、さらに、最終圧下工程における圧下を終了した後400℃までの温度域を5℃/s以下の冷却速度で冷却することを特徴とする軸受鋼鋼材の製造方法。
    〔1〕被圧下材をAe1点〜Aem点の温度域に加熱して圧下を開始すること
    〔2〕圧下工程中の被圧下材の表面温度が、680℃〜(Aem点−30℃)の温度範囲内であること
    〔3〕圧下比が4以上であること
    但し、全圧下比とは、鋳片または鋼塊の断面積を、最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指し、また、最終圧下工程での圧下比とは、最終圧下工程で圧下が加えられる前の被圧下材の断面積を最終圧下工程における最終の圧下によって得られた軸受鋼鋼材の断面積で除した値を指す。
  3. 鋳片または鋼塊が、一次精錬としての酸化精錬を行った後に、Al脱酸処理を行わずに、実質的にAlを含有しないフラックスを用いて二次精錬を行って、二次精錬終了後の最終的なスラグの塩基度CaO/SiO2の値が0.8〜2.0で、かつスラグ組成が質量%で、MgO:15%以下、F:10%以下、Al23:20%以下になるように制御し、続いて鋳造されたものであることを特徴とする請求項2に記載の軸受鋼鋼材の製造方法。
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