JP4900127B2 - 高周波焼入れ用鋼材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
但し、全圧下比とは、鋳片又は鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指し、また、1000℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指す。
但し、全圧下比とは、鋳片又は鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指し、また、1000℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指す。
但し、全圧下比とは、鋳片又は鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指し、また、1000℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指す。
C:0.35〜0.7%
Cは、高周波焼入れ後に転動部に必要な硬さを確保させる元素であり、0.35%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、Cの含有量が0.7%を超えると、母材が硬くなって、鍛造性が著しく悪化するとともに切削時の工具寿命の低下をきたし、更には高周波焼入れした際の焼割れの原因となる。したがって、Cの含有量を0.35〜0.7%とした。望ましいC含有量の範囲は、0.40〜0.6%である。
Siは、高周波焼入れ後に転動部に必要な硬化層深さを確保するのに必要な元素であり、0.1%以上含有させなければならない。しかしながら、0.8%を超えてSiを含有させても焼入れ性向上効果は飽和し、更に母材が硬くなって、鍛造性が著しく悪化し、また、切削時の工具寿命の低下をきたしてしまう。したがって、Siの含有量を0.1〜0.8%とした。好ましいSi含有量の範囲は、0.15〜0.7%である。
Mnは、高周波焼入れ後に転動部に必要な硬化層深さを確保するのに必要な元素であり、0.1%以上含有させなければならない。しかしながら、1.5%を超えてMnを含有させても焼入れ性向上効果は飽和し、更に母材が硬くなって、鍛造性が著しく悪化し、また、切削時の工具寿命の低下をきたしてしまう。したがって、Mnの含有量を0.1〜1.5%とした。好ましいMn含有量の範囲は、0.2〜1.15%である。
Pは、結晶粒界に偏析して転動疲労寿命を短くしてしまう。特に、その含有量が0.03%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.03%以下とした。好ましいP含有量の範囲は0.02%以下である。
Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.010%を超えると、粗大な硫化物が残存するため転動疲労寿命を短くしてしまう。したがって、Sの含有量を0.010%以下とした。なお、転動疲労寿命の向上という観点からの好ましいSの含有量は0.008%以下である。
Crは、高周波焼入れ後に転動部に必要な硬化層深さを確保するのに必要な元素であり、0.01%以上含有させなければならない。しかしながら、0.50%以上Crを含有させると、切削時の工具寿命の低下をきたしてしまう。したがって、Crの含有量を0.01%以上0.50%未満とした。好ましいCr含有量の範囲は、0.05〜0.40%である。
Alは、好ましくない元素であり、本発明においては、Alは極力少なくする必要がある。したがって、後述するように酸化精錬後のAl添加による脱酸処理は行わないし、フラックスを投入して新たに生成されたスラグと溶鋼を強攪拌する際に用いるフラックスもAl2O3の含有量の少ない、実質的にAlを含有しないものを用いる。しかしながら、Alの含有量が多くなり、特に、0.005%を超えてしまうと、Al2O3を主体とする硬質な酸化物の生成量が多くなり、しかも、圧下した後も粗大な酸化物として残存するので、転動疲労寿命が短くなってしまう。したがって、Alの含有量を0.005%以下とした。なお、Alは、0.003%以下の含有量とすることが好ましく、低ければ低いほどよい。
本発明においては、後述するように酸化精錬で生成したスラグの除滓後に、主成分がCaOであるフラックスを投入して、新たに生成されたスラグと溶鋼を強攪拌する。この際に、Caはフラックスより軟質な酸化物として、鋼中に極微量混入する。ただし、Caの含有量が多くなり、0.0005%を超えると、酸化物組成におけるCaOの割合が高くなりすぎて、粗大な酸化物となってしまう。したがって、Caの含有量を0.0005%以下とした。好ましいCa含有量は、0.0003%以下であり、更に望ましくは0.0002%以下である。なお、含有されるCaの量の下限値は、特に規定するものではなく、鋼材中の酸化物の平均組成におけるCaOが10%以上であればよい。
Oは、好ましくない不純物元素である。Oの含有量が多くなって、特に、0.0020%を超えると、圧下した後に粗大な酸化物として残存し、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0020%以下とした。なお、好ましいO含有量の範囲は0.0015%以下である。
Nは、窒化物を形成する作用効果を有する。しかしながら、過剰に含有すると粗大な窒化物を生成し、疲労強度の低下を招くおそれがある。したがって、Nの含有量を0.02%以下とした。
Vは、Nと結合して窒化物を形成するため、高周波加熱時の結晶粒粗大化を抑制する作用がある。更に、Cと結合することで母材の強度を上昇させる作用もある。但し、0.3%を超えてVを含有させても高周波加熱時の結晶粒粗大化を防止する効果が飽和し、更に母材の強度が高くなりすぎて切削性が低下してしまう可能性がある。したがって、Vの含有量を0.3%以下とした。なお、高周波加熱時の結晶粒粗大化を抑制する作用と母材の強度を上昇させる作用をより有効に発揮させ、しかも十分な切削性を確保するには、V含有量は、0.01〜0.2%とすることが望ましい。
Nbは、Nと結合して窒化物を形成するため、高周波加熱時の結晶粒粗大化を抑制する作用がある。さらに、Cと結合することで母材の強度を上昇させる作用もある。但し、0.1%を超えてNbを含有させても高周波加熱時の結晶粒粗大化を防止する効果が飽和し、更に母材の強度が高くなりすぎて切削性が低下してしまう可能性がある。したがって、Nbの含有量を0.1%以下とした。なお、高周波加熱時の結晶粒粗大化を抑制する作用と母材の強度を上昇させる作用をより有効に発揮させ、しかも十分な切削性を確保するには、Nb含有量は、0.01〜0.1%とすることが望ましい。
Bは、微量を添加するだけで鋼の焼入れ性を大きく向上させることが可能であるため、高周波焼入れ後に転動部に必要な硬化層深さを一層大きくすることができる元素である。しかしながら、Bの含有量が0.005%を超えてもその効果は飽和してしまう。したがって、Bの含有量を0.005%以下とした。焼入れ性向上作用を確実に発揮させてより良好な高周波焼入れ性を確保するための好ましいB含有量の範囲は、0.0003〜0.005%である。
Bを含有することによって焼入れ性が向上するのは、Bが化合物ではなく、単独で存在する場合である。そのため、BがNと結合して窒化物を形成した場合には、Bによる焼入れ性向上効果は期待できない。上記理由より、Bを含有させる際には、BよりもNとの親和力が大きく窒化物形成能が強いTiを含有させる必要がある。しかしながら、0.05%を超える量のTiを含有させても、Nを固定する効果が飽和するばかりか、粗大なTiNが多量に生成してしまうため、転動疲労特性が低下する可能性がある。したがって、Tiの含有量を0.05%以下とした。Bの焼入れ性向上作用を確実に発揮させるために前述した量のBとともに含有させる場合のTiの好ましい範囲は、0.01〜0.05%である。
(B−1)酸化物の平均組成:
本発明においては、非金属介在物について、先ず、酸化物の平均組成が、質量%で、CaO:10〜60%、Al2O3:20%以下、MnO:50%以下及びMgO:15%以下で残部SiO2及び不純物からなるものでなければならない。以下、質量%での酸化物の平均組成における含有量を「濃度」ともいう。
酸性酸化物であるSiO2を基本組成とする酸化物は、塩基性であるCaOを含むことにより酸化物の液相線温度が下がり、圧延温度域で延性を示すようになる。その効果は、酸化物の平均組成におけるCaO濃度が10%以上で得られるが、60%を超えると相対的にSiO2濃度が低下して却って延性を示さなくなる。したがって、酸化物の平均組成におけるCaO濃度を10〜60%とした。なお、圧延温度域で安定した延性が得られるようにするための上記CaO濃度の望ましい上限は50%である。
両性酸化物であるAl2O3の酸化物の平均組成における濃度が20%を超えると、圧延温度域でAl2O3(コランダム)相が晶出したり、後述するMgOとともにMgO・Al2O3(スピネル)相が晶出する。これらの固相は硬質で圧延でも延伸することなく、晶出した厚みを保つ。したがって、酸化物の平均組成におけるAl2O3濃度は20%以下とする必要がある。なお、前記硬質相の生成を安定かつ確実に抑制するための上記Al2O3濃度の望ましい上限は15%である。
MnOは、酸化物としては塩基性を有し、SiO2系の軟質化を助長するので、比較的高い濃度まで許容できる。しかしながら、MnOは鋼が弱脱酸状態の時に安定な、いわゆる低級酸化物であり、MnO濃度が高いと鋼中のO(酸素)の含有量も高くなる。すなわち、酸化物の平均組成におけるMnO濃度が50%を超えるとO含有量を0.0020%以下とすることができない。したがって、酸化物の平均組成におけるMnO濃度を50%以下とした。なお、前述したOの含有量を0.0015%以下にするために、酸化物の平均組成におけるMnO濃度は40%以下とすることが好ましい。
MgOは塩基性酸化物であり、少量ではSiO2系酸化物の軟質化ができるが、一方でその溶解度が低く、硬質のMgO(ペリクレース)相およびAl2O3とともにMgO・Al2O3(スピネル)相が晶出する。圧延温度域では酸化物の平均組成におけるMgOが15%を超えると、上述した硬質相を晶出する蓋然性が高くなる。したがって、酸化物の平均組成におけるMgO濃度を15%以下とした。なお、前記した硬質相の晶出をより確実に抑制するために、酸化物の平均組成におけるMgO濃度は10%以下とすることが好ましい。
酸化物、硫化物の双方ともに、その厚さが大きい場合には、転動疲労寿命の低下を招く。転動疲労寿命に最も影響を及ぼすものは、転動部下に存在する最も粗大な介在物である。特に、鋼材のL断面の100mm2の面積中において8.5μmを超えるような最大厚さの酸化物や硫化物が、鋼材中の数多くの部位で存在すると、転動部に存在する確率が高くなり、転動疲労寿命の著しい低下をきたす。
本発明(1)〜(3)の高周波焼入れ用鋼材はそれぞれ、例えば、本発明(4)〜(6)の方法、具体的には、前記(A)項で述べた化学成分からなり、非金属介在物について前記(B−1)項で述べた酸化物の平均組成を有する鋳片又は鋼塊に、全圧下比が15以上となる圧下を加え、しかも、その圧下のうちで1000℃以下の温度域での圧下比を4以上として圧下することによって、製造することができる。
表1に示す種々の化学組成を有する高周波焼入れ用鋼の鋳片1〜26を製造した。
実施例1で作製した鋼3、鋼12、鋼15、鋼18、鋼22及び鋼26の300mm×400mmの鋳片を1250℃で均熱した後、1100〜1050℃の温度域で分塊圧延して160×160mmの鋼片にした。
〔2〕鋼片を1050℃に加熱した後、930〜800℃の温度域で棒鋼圧延して、φ70mmの棒鋼を製造、
〔3〕鋼片を950℃に加熱した後、850〜780℃の温度域で棒鋼圧延して、φ70mmの棒鋼を製造、
〔4〕鋼片を1200℃に加熱した後、1100〜1020℃の温度域で棒鋼圧延して、φ110mmの棒鋼を製造、
〔5〕鋼片を1050℃に加熱した後、930〜800℃の温度域で棒鋼圧延して、φ110mmの棒鋼を製造。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.35〜0.7%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Cr:0.01%以上0.50%未満、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%以下、O:0.0020%以下、N:0.02%以下を含有し、残部はFe及び不純物の化学成分からなり、非金属介在物について、酸化物の平均組成が質量%で、CaO:10〜60%、Al2O3:20%以下、MnO:50%以下及びMgO:15%以下で残部SiO2及び不純物からなるとともに、鋼材の長手方向縦断面の10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。
- 質量%で、C:0.35〜0.7%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Cr:0.01%以上0.50%未満、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%以下、O:0.0020%以下、N:0.02%以下に加えて、V:0.3%以下及びNb:0.1%以下のうちの1種以上を含有し、残部はFe及び不純物の化学成分からなり、非金属介在物について、酸化物の平均組成が質量%で、CaO:10〜60%、Al2O3:20%以下、MnO:50%以下及びMgO:15%以下で残部SiO2及び不純物からなるとともに、鋼材の長手方向縦断面の10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。
- 質量%で、C:0.35〜0.7%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Cr:0.01%以上0.50%未満、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%以下、O:0.0020%以下、N:0.02%以下に加えて、B:0.005%以下及びTi:0.05%以下を含有し、残部はFe及び不純物の化学成分からなり、非金属介在物について、酸化物の平均組成が質量%で、CaO:10〜60%、Al2O3:20%以下、MnO:50%以下及びMgO:15%以下で残部SiO2及び不純物からなるとともに、鋼材の長手方向縦断面の10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、8.5μm以下であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。
- 請求項1に記載の化学成分及び酸化物の平均組成を有する鋳片又は鋼塊に、全圧下比が15以上となる圧下を加え、しかも、その圧下のうちで1000℃以下の温度域での圧下比を4以上として圧下することを特徴とする高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
但し、全圧下比とは、鋳片又は鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指し、また、1000℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指す。 - 請求項2に記載の化学成分及び酸化物の平均組成を有する鋳片又は鋼塊に、全圧下比が15以上となる圧下を加え、しかも、その圧下のうちで1000℃以下の温度域での圧下比を4以上として圧下することを特徴とする高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
但し、全圧下比とは、鋳片又は鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指し、また、1000℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指す。 - 請求項3に記載の化学成分及び酸化物の平均組成を有する鋳片又は鋼塊に、全圧下比が15以上となる圧下を加え、しかも、その圧下のうちで1000℃以下の温度域での圧下比を4以上として圧下することを特徴とする高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
但し、全圧下比とは、鋳片又は鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指し、また、1000℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた高周波焼入れ用鋼材の断面積で除した値を指す。 - 鋳片又は鋼塊が、酸化精錬後に、Al脱酸処理を行わずに、実質的にAlを含有しないフラックスを用いて二次精錬を行い、二次精錬終了後の最終的なスラグの塩基度CaO/SiO2の値が0.8〜2.0で、かつスラグ組成が質量%で、MgO:15%以下、F:10%以下、Al2O3:15%以下になるように制御し、続いて鋳造されたものであることを特徴とする請求項4から6までのいずれかに記載の高周波焼入れ用鋼材の製造方法。
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