[0023] 図1は本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、
[0024] 放射ビームB(例えば、UV放射またはEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
[0025] パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構成され、いくつかのパラメータに応じてパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造体(例えば、マスクテーブル)MTと、
[0026] 基板(例えば、レジスト被覆されたウェーハ)Wを保持するように構成され、いくつかのパラメータに応じて基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
[0027] パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを、基板Wの目標部分C(例えば、1つまたは複数のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを含む。
[0028] 照明システムは、放射を誘導、整形、または制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気、もしくは他のタイプの光学構成要素、またはそれらの任意の組合せなどの様々なタイプの光学構成要素を含むことができる。
[0029] 支持構造体はパターニングデバイスを支持し、すなわちその重量を担う。それは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されるかどうかなどの他の条件に依存してパターニングデバイスを保持する。支持構造体は、パターニングデバイスを保持するために機械的、真空、静電気、または他のクランピングの技法を使用することができる。支持構造体は、例えば、フレームまたはテーブルとすることができ、それは必要に応じて固定または可動とすることができる。支持構造体は、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して確実に所望の位置にあるようにすることができる。本明細書での「レチクル」または「マスク」という用語の使用は、「パターニングデバイス」というより一般的な用語と同義であると考えることができる。
[0030] 本明細書で使用される「パターニングデバイス」という用語は、放射ビームの断面にパターンを付与して基板の目標部分にパターンを生成するために使用することができる任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。例えば、パターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、放射ビームに付与されたパターンは基板の目標部分の所望のパターンに正確に対応しないかもしれないことに留意されるべきである。一般に、放射ビームに付与されたパターンは、集積回路などの目標部分に生成されるデバイス中の特定の機能層に対応することになる。
[0031] パターニングデバイスは透過タイプまたは反射タイプとすることができる。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいてよく知られており、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフト、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスクタイプならびに様々なハイブリッドマスクタイプを含む。プログラマブルミラーアレイの一例は小さいミラーのマトリクス配列を使用し、その各々を個々に傾けて入射する放射ビームを様々な方向に反射することができる。傾けられたミラーは、ミラーマトリクスによって反射される放射ビームにパターンを付与する。
[0032] 本明細書で使用される「投影システム」という用語は、使用される露光放射に応じて、または浸漬液の使用もしくは真空の使用などの他の要因に応じて、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁気、および静電気タイプの光学システムまたはそれらの任意の組合せを含むいかなるタイプの投影システムも包含するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書における「投影レンズ」という用語の使用は、「投影システム」というより一般的な用語と同義なものと考えることができる。
[0033] ここで示されるように、この装置は反射タイプ(例えば、反射マスクを使用する)である。代わりに、この装置は透過タイプ(例えば、透過マスクを使用する)とすることができる。
[0034] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板ステージ(および/または2つ以上のマスクステージ)を有するタイプとすることができる。そのような「マルチステージ」機構では、付加的なテーブルを並列に使用することができ、すなわち準備のステップを1つまたは複数のテーブルで行いながら1つまたは複数の他のテーブルが露光に使用されてもよい。
[0035] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を満たすように比較的高い屈折率を有する液体、例えば水によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプとすることもできる。液浸液は、リソグラフィ装置の他の空間に、例えばマスクと投影システムの間に適用することもできる。液浸技法は、投影システムの開口数を増加させるのに本技術分野でよく知られている。本明細書で使用される「液浸」という用語は、基板などの構造体が液体に浸漬されなければならないことを意味せず、むしろ単に露光中に投影システムと基板との間に液体が配置されることを意味する。
[0036] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOからの放射ビームを受け取る。例えば、放射源がエキシマレーザである場合、放射源およびリソグラフィ装置は別個のものとすることができる。そのような場合、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを利用して、放射ビームを放射源SOからイルミネータILに送ることができる。他の場合には、例えば、放射源が水銀ランプである場合、放射源はリソグラフィ装置の一体化部分とすることができる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要であればビームデリバリシステムとともに放射システムと呼ぶことができる。
[0037] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するためにアジャスタを含むことができる。一般に、少なくともイルミネータの瞳孔面の強度分布の外側および/または内側半径方向範囲(一般にそれぞれσアウターおよびσインナーと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータおよびコンデンサなどの様々な他の構成要素を含むことができる。イルミネータは、放射ビームを調整し、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布を有するために使用することができる。
[0038] 放射ビームBは支持構造体(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されるパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。放射ビームBはマスクMAを横断した後、投影システムPSを通り抜け、投影システムPSは基板Wの目標部分Cにそのビームを収束する。第2のポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、または容量性センサ)を利用して、例えば、放射ビームBの経路中に様々な目標部分Cを位置決めするように基板テーブルWTを正確に移動することができる。同様に、第1のポジショナPMおよび別の位置センサIF1を使用して、例えば、マスクライブラリからの機械的な取出しの後でまたは走査中に放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1のポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を利用して実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTはショートストロークアクチュエータのみに接続するかまたは固定することができる。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークは専用の目標部分を占めるが、それらは目標部分間の空間に配置することができる(これらはスクラブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、2つ以上のダイがマスクMAに設けられる状況では、マスクアライメントマークはダイの間に配置することができる。
[0039] 図示の装置は以下のモードの少なくとも1つで使用することができる。
[0040] 1.ステップモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTは本質的に静止状態を保ちながら、放射ビームに付与されたパターン全体が目標部分Cに一度に投影される(すなわち1回の静止露光)。次に、異なる目標部分Cを露光できるように、基板テーブルWTはXおよび/またはY方向に移動される。ステップモードでは、露光範囲の最大サイズが1回の静止露光で画像化される目標部分Cのサイズを制限する。
[0041] 2.走査モードでは、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTが同期して走査される(すなわち1回の動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)および画像反転特性によって決定することができる。走査モードでは、露光範囲の最大サイズが1回の動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、一方、走査運動の長さが目標部分の(走査方向の)高さを決定する。
[0042] 3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持しながら本質的に静止状態に保たれ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTは移動するかまたは走査される。このモードでは、一般に、パルス放射源が使用され、基板テーブルWTの各移動の後で、または走査中の連続する放射パルスの間に、必要に応じてプログラマブルパターニングデバイスが更新される。この操作モードは、上述したタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
[0043] 前述の使用モードの組合せおよび/または変形、あるいは完全に異なる使用モードを使用することもできる。
[0044] 図1において、放射源SOは一般にプラズマ源であり、スズ源またはXe源とすることができる。プラズマ源SOはEUV放射に加えてデブリを生成する。そのデブリからリソグラフィシステムを保護するために、EUVリソグラフィ装置、特に放射源SO、照明システムIL、および/または投影システムPSのミラー要素は、EUV放射を反射するため、EUVビームを調整しパターン形成するため、および/またはそのようなEUVビームを基板Wの方に投影するために本発明の実施形態に従って設計されたミラー要素を含むことができる。
[0045] 図2は、ガイド2に沿って水素ラジカル1を誘導し、および/または表面上の、一般に放射源システムSO、照明システムIL、および/または投影システムPSに含まれるミラー表面4上の汚染物質3をクリーニングする目的で水素ラジカルを適用するための本発明の実施形態を示す。現在、これらの表面はほとんどRuの上部構造体を含む。この目的のために、水素ラジカル供給用の放射源5、および前記水素ラジカル1が目標とする適用表面構造体4に水素ラジカル1を誘導するために前記放射源5とともに使用するガイド構造体2を備える。一般に、水素ラジカル1供給源は、振動界電極7または高温フィラメントなどに沿って水素6を導くことによって供給される。これにより水素ガス6が水素ラジカル1に解離される。ガイド構造体2要素および/またはミラー要素4は、低い水素ラジカル再結合定数、一般に2程度の再結合定数を有するRuよりも非常に低い水素ラジカル再結合定数を有する被覆8を備える。
[0046] 再結合係数についての情報は、文献で、特に、W.V.Smith、「The surface recombination of H atoms and OH radicals」、J.Chem.Phys.11、110〜125頁(1943年)およびB.J.Wood、H.Wise、「Kinetics of Hydrogen Atom Recombination on Surfaces」、J.Phys.Chem.65、1976〜1983頁(1961年)で見出すことができる。
[0047] 以下の表1はいくつかの材料および水素ラジカルに対するそれぞれの表面再結合係数を示す。
[0049] 実験は、スズ(0.4)よりも低い再結合係数を有する被覆が水素ラジカルの輸送ライフタイムおよび表面クリーニング速度の点で有利な結果を有することを示している。そのような被覆は通常、誘電体で見出されるが、必ずしも誘電体だけではない。
[0050] 以下の2つの反応がフィラメント上での水素ラジカルの生成を記述する。
[0051]
[0052]
[0053] 反応(1)は活性なフィラメント表面部位(S*)上でのH2の解離吸着を記述する。逆方向では、反応(1)は水素終端フィラメント表面上でのH原子再結合を記述する。反応(2)はフィラメント表面上の原子状水素の脱離および吸着を記述する。気相水素原子を生成するために、まずそれらが反応(1)で生成される必要があり、次にそれらが反応(2)で脱離される必要がある。フィラメントの温度の変化は、H原子形成反応機構への強力な影響とともに、フィラメント表面上の化学吸着種の平均ライムライムに影響することにより、H原子フィラメント生成速度に影響を及ぼすことになる。フィラメントの温度は、利用可能なS*の割合および局所気相H原子数密度にも影響し、さらには反応(2)の逆反応で活性部位の割合に影響を及ぼす。局所H原子数密度が水素ラジカルの拡散速度によって制御され、したがって、多くの場合、Hラジカルの生成が拡散律則であることに留意されたい。
[0054] 水素ラジカルのライフタイムは2つの反応によって制限される。
[0055] 水素原子の第1の損失機構は壁上での再結合である。再結合の反応は反応(1)および(2)と同じに見えるが、唯一の違いは、この場合、原子がフィラメントの代わりに真空系(Sw)の壁で反応することである。
[0056] H+Sw*→SwH (3)
[0057] H+SwH→H2+Sw* (4)
[0058] 反応(3)は壁面上への水素原子の吸着を記述し、反応(4)は水素終端壁面上のH原子再結合を示す。壁での再結合速度は表面にぶつかる各原子の再結合γによって記述することができる。
[0059] 第2の損失機構は三体再結合であり、これは反応(5)によって記述される。
[0060] H+H+M(H2)→H2+M(H2) (5)
[0061] この反応では、2つの水素原子が水素分子に再結合する。再結合で開放されるエネルギーは第3の分子に移され、それは、例えば、水素分子M(H2)であることができる。この反応が生じる速度は、H原子の(分)圧[H]および潜在的な第3体の圧力に依存する。
[0062] 図3は本発明の実施形態による放射システムの基本構成を示す。この図において、破線は、EUV放射源10、一般に、それ自体が知られているスズ源またはXe源などの放電ベースまたはレーザ誘導のプラズマ源から来るEUV放射9を表す。ここで、放射源10から来る汚染物質材料を捕捉するための汚染バリアとして機能するフォイルトラップ11が示される。この目的のために、フォイルトラップ11は一般に0.3〜5mm(通常約2mm)の距離で配置された複数の緊密に詰められた金属箔板12を備えるが、金属箔板12は一般に数cmの放射源10から実質的に半径方向の長さ寸法を有する。好ましい実施形態は1.5〜5cmの範囲の長さを有する。中心軸に沿って、放射源10は熱シールド13によって遮蔽される。
[0063] 一般に、金属箔板12は半径方向配置で積み重ねられる。図3に概略的に示されるように、放射の下流方向に、前記EUV放射源10からの前記EUV放射をさらなるEUV光学部に集め収束するために収束能力を有するコレクタ要素14がある。そのようなコレクタ要素14は一般に中心軸方向に沿って円筒対称であり、実質的に1cmと7cmとの間の範囲の距離で積み重ねられる同心的に湾曲したシェル形状のミラー要素15を含む。本発明によれば、コレクタのミラー要素15、特にその反射面16は、図2を参照しながら説明された被覆8で被覆される。使用時に入射EUV放射の入射角が表面垂直方向と比較して約70°よりも大きいので、コレクタキャップミラー要素はかすめ入射ミラー要素として特徴づけることができる。
[0064] 図4は本発明の被覆の反射率の計算された損失を示す図である。一般に、被覆は、理想的に清浄で被覆なしのRuミラー表面と比較するとある伝達損失を与えることになる。しかし、これらの損失は許容できる。実際の反射挙動が説明される図7をさらに参照する。
[0065] 反射率(Y軸)の相対損失は、Ruミラー表面への垂直入射に対する入射角(X軸)に関して示される。一般に、損失が10%未満であることが分かる(曲線17参照)。特に、ベア(露出)Ru(曲線18)、Ru上の5nmのSi層(曲線19)、Ru上の10nmのSi層(曲線20)、Ru上の5nmのSi3N4層(曲線21)、Ru上の5nmのSiO2層(曲線22)、Ru上の5nmのa−C層(曲線23)、およびRu上の5nmのPd層(曲線24)に対する反射曲線が示される。
[0066] 好ましくは、この被覆は水素ラジカルによる処理に耐えることができるべきであり、この被覆は水素ラジカルによるSnの高いクリーニング速度を有するべきである。
[0067] 実験では、Si3N4がRuミラー要素上の被覆材料として調べられた。まず、Si3N4上のSnのクリーニング速度が、基板上に堆積されたSi3N4の厚い層の上の約10nmのSn層を使用して決定された。15秒の処理の結果が表2に示される。このテーブルから本質的にすべてのSnが処理中にサンプルから除去されたことが分かる。
[0069] この表2から、非常に良好なクリーニング比率がこの被覆層を使用して達成できることが理解できる。
[0070] 次に、水素ラジカルに対するSi3N4の耐性が調べられた。水素ラジカルに対するSi3N4の耐性を調べるために、被覆は2回の各々15秒の処理の間さらされ、その間、温度は15℃から50℃の範囲であった。光学的方法を使用して、Si3N4層の厚さが処理前後に測定された。検知可能な量のSi3N4は除去されなかった(0.1nm未満)ことを見出した。これは、Si3N4が水素ラジカルによる処理に対して良好な耐性を有することを示している。
[0071] さらなる実験で、2nmのSi3N4および10nmのSnをもつコレクタミラーが、2回の15秒の処理の間、水素ラジカルにさらされた。図5に、通常のコレクタミラーでのクリーニング速度(曲線26)と比較して被覆されたコレクタミラーのクリーニング速度(曲線25)が示される。比較のために、ベアRuサンプルMRSのクリーニング速度(曲線27)が示される。この図から、クリーニング速度が大幅に増加し、Snをすべてミラーから除去することができることが分かる。対照的に、被覆されないRuミラーでは、15回の処理の後でさえ有効なエッチング効果が得られず約5nmの少量のSn層がミラー表面に付着したままである。
[0072] 次に、10nmのスズをクリーニングした後のミラーのEUV反射率がEUV反射率計を使用して、通常の被覆されていないミラーと比較して調べられた。図6で、たとえクリーニングされたサンプル上に2nmのSi3N4があるとしても、クリーニングされたサンプルのEUV反射率は通常のコレクタミラーのEUV反射率とほぼ同等かまたはそれよりもさらに良好であることが分かる。実験は、約300℃で行われる被覆塗布の熱処理によって反射率が増強されることを示している。このことから、クリーニング処理はコレクタミラーのEUV反射率に対して検知可能な悪影響を有していないと結論づけることができる。
[0073] さらに、被覆されないRuミラーは水素クリーニングにより影響されやすいことが見出された。試験から、反射率および経済ライフタイムに重大な影響を与えることがある亀裂がRu表面に形成されたことが見出された。対照的に、被覆されたミラーは、より良好なクリーニング速度を与えることに加えて、Si3N4によって被覆されたRu表面の劣化を示さなかった。この被覆は水素ラジカルからの劣化に対して保護被覆として使用できることが結論づけられる。
[0074] 水素ラジカルの再結合および水素原子の解離に関する前述の説明を参照すると、実際の実施形態では最適の圧力領域を使用するためにいくつかの制限が適用される。
[0075] 特に、水素ラジカルの水素分子への三体再結合のために、システムの圧力は三体再結合による過大な損失を防ぐようにできるだけ低くすべきであり、その理由は、このプロセスの効率が全圧力およびガス混合体中に存在する水素ラジカルの数によって制限されるからである。しかし、低圧力領域では、壁上の再結合である第2の損失機構が支配する。ここで、水素ラジカルは表面の存在下で再結合する。再結合効率は説明したように表面材料のタイプに依存する。特に、再結合定数は説明したように金属表面で非常に高い。この機構を考慮すると、この機構による損失の量は、(プロセスを拡散律則にするために)システムの圧力をできるだけ高くすることによって制限することができる。
[0076] さらに、排気システムの技術的制限により、ある圧力領域においてのみ適切なガス流速を実現することができる。これらの2つの課題のため、現在、使用することができるただ2つの実行可能な圧力があり、一般に1barを越える高圧力領域であるように見える。ここで、この圧力は非常に高く、したがってコンプレッサが使用されるべきである。この方法の問題は、ガス使用量が非常に多いことである。または一般に100mbarよりも高い中間圧力領域(また多いガス使用量)。または低圧力領域であり、ここで、低圧力(一般に1mbar未満)のために三体再結合の量が制限される。しかし、依然としてこれに起因する損失があり、拡散が比較的速く進むので壁上の損失もかなりの量になることがある。この方法の問題は、気相Sn含有分子(またはハロゲンクリーニングのSn酸化物還元の場合のH2O)がゆっくりとしかコレクタから輸送されないことがあり、これがこれらの分子の再堆積の危険を増加させることがある。
[0077] 本発明の被覆層では、壁上の水素ラジカルの損失が制限されるので、中間圧力領域が実現可能になる。図7は、コレクタ内の距離の関数として水素ラジカルのフラックスの計算結果(0.5%の一般的な変換効率で水素ラジカルの一般的な供給源から生成されたとき)を示す。水素ラジカルの損失を低減するために、この計算は一方の側にRu面および他方の側にガラス面を使用して行われた。水素ラジカルのフラックスが約10cmの距離まで十分に高い場合(図7に上部水平線「許容フラックス」で示された)、水素ラジカルの損失は許容できる。この図から、比較的高い圧力(10000Pa=〜100mbarよりも大きい)で、水素ラジカルの損失は許容できることが分かる。しかし、5000Paまたは1000Paのような圧力では、水素ラジカルの損失はかなり大きくて十分な距離を範囲に含むことができないことがある。
[0078] 対照的に、図8は図7と同じ計算結果を示すが、今回はガンマ=0.001の再結合定数である。この図から、すべての圧力が今では適切であり、したがって、1〜10mbarの圧力範囲も選択できるようになることが分かる。この状況は、使用される供給源の変換効率を増加させることによってさらに改善することができる。
[0079] 図9は本発明による別の実施形態を示し、0.2未満の水素ラジカル再結合定数を有する被覆が提供される。特に、図9は多層ミラー要素28を示し、前述のラジカル再結合防止機構に鑑みてクリーニング挙動を示すキャップ層31が設けられる。これらの多層ミラー要素は一般に垂直入射ミラー要素として使用され、使用時に入射EUV放射の入射角が表面垂直方向と比較して約20°未満である。それに応じて、従来の垂直入射ミラーは、図に交互層29で示されたいくつかの積層を含む。多層ミラー要素28は、例えば、50層の積み重ねられたSiおよびMoの層29を含む。さらに、パッシベーション層30が、積層29を例えば酸化から保護するために存在してもよい。一般に、層30は例えばRuなどの金属から製作される。層30の上に、本発明の態様によれば、クリーニングキャップ層である追加の層31が堆積された。したがって、積層29はパッシベーション層30およびクリーニングキャップ層31が結合している。
[0080] 層31に適した材料の例はSi3N4、SiO2、およびSiなどのシリコン化合物であり、特に上記で説明したように、これらの材料は0.2未満の水素再結合定数を有する。層30および31の厚さは、多層ミラー28の最上部での負の干渉を防止するように注意深く選択されるべきである。さらに、交互層29は、この例において、特に13.5nmのEUV放射に対して高い反射率を有するように構成される。いくつかの利点をクリーニングキャップ層31は提供することができる。
[0081] 1 それは、水素ラジカルによるクリーニング速度を増加させることができる。
[0082] 2 それは、低い水素再結合定数に起因してミラー表面上の再結合により失われる水素原子の数を減少させることができる。
[0083] 3 それは、水素脆化からミラーを保護することができる。
[0084] 4 それは、ディープUV波長に対して反射防止被覆の役割をすることができ、反射防止被覆は適切に選択された材料および厚さではEUV光のスペクトル純度を増加させるのに役立つことができる。
[0085] クリーニング処理中、水素ラジカルは、例えばホットフィラメントなどの水素ラジカル供給源(図示せず)によって生成される。ラジカルはミラー表面の方に誘導され、そこで汚染物質がクリーニングされる。汚染物質の例はSnであるが、炭素付着物もこのようにして除去することができる。
[0086] 図10は、図9を参照して説明したような垂直入射ミラー要素の代替の実施形態を示す。この実施形態では、図9で示された従来のキャップ層30がクリーニングキャップ層31と完全に取り替えられる垂直入射ミラー要素32が示される。したがって、積層29はクリーニングキャップ層31が結合している。これは、使用されるクリーニングキャップ材料が通常のキャップ層としても適している場合に可能である。これは、材料がミラー要素32、特に積層29を酸化から保護できる場合であろう。この目的に適した一般的な材料はSi3N4を含むことができる。
[0087] この明細書でICの製造におけるリソグラフィ装置の使用が詳細に説明されているが、本明細書で説明されたリソグラフィ装置は、統合光システム、磁区メモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどのような他の用途を有することができることが理解されるべきである。当業者は、そのような代替用途の状況では、本明細書の「ウェーハ」または「ダイ」という用語の使用がそれぞれ「基板」または「目標部分」というより一般的な用語と同義なものと考えることができることを理解されよう。本明細書で参照された基板は、露光の前後で、例えば、トラック(一般にレジスト層を基板に塗布し、露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジツール、および/またはインスペクションツールにおいて処理することができる。適用可能な場合、本明細書の開示はそのような基板処理ツールおよび他の基板処理ツールに適用してもよい。さらに、例えば多層ICを生成するために基板は2回以上処理することができるので、本明細書で使用される基板という用語は、多数の処理された層を既に含んでいる基板を指すこともできる。
[0088] 光学リソグラフィに関連して本発明の実施形態の使用が先に詳細に説明されたが、本発明は、他の用途で、例えばインプリントリソグラフィで使用することができ、状況が許せば光学リソグラフィに限定されないことが理解されよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィが基板に生成されるパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは、レジストが電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せを適用することによって硬化されるとき基板に塗布されたレジスト層に押しつけることができる。レジストが硬化させられた後、パターニングデバイスはレジストから移動され、レジスト中にパターンが残る。
[0089] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば、365、355、248、193、157、もしくは126nmの波長またはそれらの周辺の波長を有する)および極紫外(EUV)放射(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)ならびにイオンビームまたは電子ビームなどの粒子ビームを含むすべてのタイプの電磁放射を包含する。
[0090] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電気タイプの光学構成要素を含む様々なタイプの光学構成要素の任意の1つまたは組合せを指すことができる。
[0091] 本発明の特定の実施形態が先に説明されたが、本発明は説明された以外の形でも実施できることが認識されよう。例えば、本発明は、前述の方法を記述する機械読取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態、またはその中に記憶したそのようなコンピュータプログラムを有するデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)の形態を取ることができる。
[0092] 前述の説明は例示的であり制限的でないことを意図する。したがって、記載された特許請求の範囲を逸脱することなく、説明された本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。