JP2009160387A - マイクロカプセル化消火剤及びその製造方法、並びに消火性複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】モントリオール議定書及び京都議定書により生産及び使用の制限を受けない含フッ素ケトンを主成分とする消火能力に優れたマイクロカプセル化消火剤を提供する。
【解決手段】破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火器であって、前記消火液が含フッ素ケトンを含有することを特徴とするマイクロカプセル化消火剤、及びその製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火器であって、前記消火液が含フッ素ケトンを含有することを特徴とするマイクロカプセル化消火剤、及びその製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、種々の火災の消火に有効なマイクロカプセル化消火剤、及びその製造方法、並びにかかるマイクロカプセル化消火剤を含有する消火性複合材料に関する。
従来から使用されている消火剤の中でガス状又は液状のフッ素化炭化水素は極めて有効である。このようなフッ素化炭化水素を使用した消火剤として、GB 2265309A(特許文献1)は、部分的又は完全にフッ素化された不燃性炭化水素(0℃を超える沸点を有する)と、それを保護すべき部位に噴霧するための加圧ガスとを含有する鎮火剤を開示している。この消火剤が高い性能を発揮するのは、(a) 高密度の消火ガスが非燃性雰囲気を作り出して、高温表面に空気が入り込むのを遮断し、(b) 高温の炎により分解して発生したフッ素ラジカルが、燃焼の動力学的連鎖を切断するためであると考えられる。また電気機器を消火する場合でも短絡や故障を起こすことがないため、水、泡状消火剤又は無機炭酸塩粉末で消火ができない所でも使用できるという利点がある。このため、フッ素化炭化水素の消火剤は、海底施設、海上フロート施設、航空機、記録保管所、原子力発電所等における消火に適する。
しかし液体、気体又はエアロゾル状の消火剤による消火作業は容易でない。そのため、熱により自動的に消火性ガスを発生するマイクロカプセル化した消火剤が開発された。例えば、特開昭57-195128号(特許文献2)は、液体ハロゲン化炭化水素を含有する微粒樹脂カプセルを、前記微粒樹脂カプセルの破裂温度未満の温度で発泡する樹脂に分散させた消火性ガス放出プラスチック発泡体を開示している。また特開昭58-132056号(特許文献3)は、ハロゲン化炭化水素を含有した微粒樹脂カプセルを混入した油性又は水性の消火性塗料を開示している。これらの文献は、ハロゲン化炭化水素として、ジブロモテトラフルオロエタン、ブロモクロロメタン及びブロモクロロジフルオロメタンを記載している。ロシア特許第1696446号も同様のハロゲン化炭化水素からなる消火剤を記載している。しかしながら、これらのハロゲン化炭化水素にはオゾン層を破壊するという問題があり、1987年のモントリオール議定書でこれらのハロゲン化炭化水素の生産は禁止され、使用は制限されている。
モントリオール議定書で禁止されていない物質を用いた消火剤として、RU 2161520(特許文献4)は、CnF2n+2(ただしn=5〜7)又はCmF2m+1(ただしmは1又は2)の式により表されるハロゲン置換炭化水素からなる消火液と、130〜190℃の温度で破裂する球状ポリマーからなる殻とからなる大きさ100〜400μmのマイクロカプセルを開示している。しかしながら、この種のハロゲン化炭化水素は“温室効果”をもたらし、1997年の京都議定書で禁止された。
そこで、大気中に蓄積しない液状の消火剤として、臭素化炭化水素が提案された[WO98/15322(特許文献5)]。しかしながら、この臭素化炭化水素は、火元が小さい場合にはガス化した大部分が消火に利用されず、また樹脂や塗料に添加した場合には大気中に急速に揮発してしまう。
従って、本発明の目的は、モントリオール議定書及び京都議定書により生産及び使用の制限を受けない含フッ素ケトンを主成分とする消火能力に優れたマイクロカプセル化消火剤を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、かかるマイクロカプセル化消火剤の製造方法を提供することである。
本発明のさらにもう一つの目的は、かかるマイクロカプセル化消火剤を含有する消火性複合材料、特に消火塗膜及び消火織布を提供することである。
本発明のマイクロカプセル化消火剤は、破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤であって、前記消火液が含フッ素ケトンを含有することを特徴とする。
前記マイクロカプセルのポリマーからなる殻が、主殻層及び主殻層を補強した層からなるのが好ましい。前記主殻層は有機高分子からなり、前記補強層は有機又は無機のポリマーからなるのが好ましい。
前記主殻層はゼラチン又はその誘導体からなるのが好ましく、前記補強層は尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機層、又はアルコキシシランのゲル化物もしくはその加水分解縮合物からなる無機質層であるのが好ましい。
前記マイクロカプセルの平均外径は50〜1,000μmであり、前記殻の平均厚さは3〜20μmであるのが好ましい。
前記消火液の含有量は前記マイクロカプセル全体の75〜95質量%であるのが好ましい。
前記含フッ素ケトンはドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン{ CF3CF2C(O)CF(CF3)2}であるのが好ましい。ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンのオゾン破壊係数(ODP)はゼロ、地球温暖化係数(GWP)は1、大気寿命5日の優れた環境特性及び安全性を有する。オゾン破壊係数(ODP)は、WMO(World Meteorological Organization)1998により、地球温暖化係数(GWP)は、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)2001の100年積分値による。
本発明のマイクロカプセル化消火剤を製造する方法は、破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、含フッ素ケトンを含有する消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤を製造する方法であって、(1)前記含フッ素ケトンをゼラチン又はその誘導体の水溶液に入れて乳化することにより、前記含フッ素ケトンの小滴を形成し、(2)得られた乳化液にゼラチンの相分離促進剤を加え、pHを3〜5.5に低下させるとともに5〜15℃まで冷却することにより、含フッ素ケトンの小滴の外周にゼラチン又はその誘導体からなる殻を形成し、(3)前記殻を固化することを特徴とする。
前記工程(3)において、ゼラチンの架橋剤としてアルデヒド類又は酵素類を添加することにより前記殻を固化させるのが好ましい。前記ゼラチンの架橋剤はグルタルアルデヒド又はホルマリンであるのが好ましい。
前記殻を固化させた後の乳化液に、尿素樹脂前駆体、レゾルシノール樹脂前駆体、メラミン樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体及びポリビニルアセタール樹脂前駆体からなる群から選ばれた少なくとも一種を添加して、pHを1〜5まで低下させた後、昇温することにより前記殻を補強する層を形成するのが好ましい。
前記殻を固化させた後の乳化液に、アルコキシシランもしくはその加水分解物、又はシランカップリング剤を加え、さらに酸を添加して昇温することにより前記殻を補強する層を形成するのが好ましい。
本発明の消火性複合材料は、上記マイクロカプセル化消火剤が充填された硬化樹脂からなることを特徴とする。
本発明の消火性塗料は、上記マイクロカプセル化消火剤を含有することを特徴とする。
本発明の消火性織布は、上記マイクロカプセル化消火剤を含有することを特徴とする。
破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、含フッ素ケトンからなる消火液コアとを有する本発明のマイクロカプセル化消火剤は、火災の熱や炎により確実に破裂して消火を行うことができるとともに、モントリオール議定書及び京都議定書により生産及び使用の制限を受けない。従って、本発明のマイクロカプセル化消火剤は、樹脂や塗料等に配合して消火性複合材を得るのに好適である。
特に本発明の好ましいマイクロカプセル化消火剤のポリマーからなる殻は、ゼラチン又はその誘導体からなり、さらに尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びアルコキシシランの加水分解縮合物からなる群から選ばれた少なくとも一種で補強処理したものなので、保存状態では含フッ素ケトンからなる消火液が漏洩することがないが、火災時には確実に破裂し、消火液をガス状態で放出することができる。
[1] マイクロカプセル化消火剤
主として火元を消すのに使用する本発明のマイクロカプセル化消火剤は、熱や炎により殻が破裂し、内部の消火液をガス化させて放出する。このような消火作用を有効に発揮するため、本発明のマイクロカプセル化消火剤は以下の構成及び特性を有するのが好ましい。
主として火元を消すのに使用する本発明のマイクロカプセル化消火剤は、熱や炎により殻が破裂し、内部の消火液をガス化させて放出する。このような消火作用を有効に発揮するため、本発明のマイクロカプセル化消火剤は以下の構成及び特性を有するのが好ましい。
(A) 消火液
マイクロカプセルのコアを形成する消火液は、含フッ素ケトン100%でも良いが、必要に応じて炭素数7〜9のパーフルオロアルカンを含有しても良い。含フッ素ケトンとしてはドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン{ CF3CF2C(O)CF(CF3)2 }が好ましい。パーフルオロアルカンの具体例としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。含フッ素ケトン/(含フッ素ケトン+パーフルオロアルカン)の質量比は70%以上が好ましい。火災の熱又は炎により揮発させるために、消火液の気化温度は45℃以上であるのが好ましい。また消火液が凝固すると体積が大きく減少し、マイクロカプセル殻を破壊するおそれがあるので、消火液の凝固点(=融点)は-40℃以下が好ましい。因みに、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンからなる含フッ素ケトンの気化温度は49.2℃、凝固点は-108.0℃である。
マイクロカプセルのコアを形成する消火液は、含フッ素ケトン100%でも良いが、必要に応じて炭素数7〜9のパーフルオロアルカンを含有しても良い。含フッ素ケトンとしてはドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン{ CF3CF2C(O)CF(CF3)2 }が好ましい。パーフルオロアルカンの具体例としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。含フッ素ケトン/(含フッ素ケトン+パーフルオロアルカン)の質量比は70%以上が好ましい。火災の熱又は炎により揮発させるために、消火液の気化温度は45℃以上であるのが好ましい。また消火液が凝固すると体積が大きく減少し、マイクロカプセル殻を破壊するおそれがあるので、消火液の凝固点(=融点)は-40℃以下が好ましい。因みに、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンからなる含フッ素ケトンの気化温度は49.2℃、凝固点は-108.0℃である。
(B) マイクロカプセル
マイクロカプセルのポリマーからなる殻は、有機高分子からなるのが好ましい。有機高分子としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチン又はその誘導体、ポリビニルアルコールが挙げられる。中でも、前記有機高分子はゼラチン又はその誘導体であるのが好ましい。
マイクロカプセルのポリマーからなる殻は、有機高分子からなるのが好ましい。有機高分子としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチン又はその誘導体、ポリビニルアルコールが挙げられる。中でも、前記有機高分子はゼラチン又はその誘導体であるのが好ましい。
前記殻は、前記ゼラチン又はその誘導体からなる層を主殻層として、さらに主殻層を補強した層を有するのが好ましい。
前記主殻層を形成するゼラチン又はその誘導体は、固化されているのが好ましい。前記ゼラチン又はその誘導体は、アルデヒド類、酵素類等のゼラチンの架橋剤を用いて固化するのが好ましい。前記アルデヒド類としては、グルタルアルデヒド、ホルマリン等が挙げられ、前記酵素類としては、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ等が挙げられる。特に、架橋剤としてはグルタルアルデヒドが好ましい。
前記補強層は尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機層、又はアルコキシシランのゲル化物もしくはその加水分解縮合物からなる無機質層であるのが好ましい。
マイクロカプセルの破裂温度は50〜300℃が好ましく、130〜280℃がより好ましい。
マイクロカプセルの平均外径は50〜1,000μmが好ましく、100〜400μmがより好ましい。ポリマーからなる殻の平均厚さは3〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましく、5〜7μmが最も好ましい。
消火液の割合は、マイクロカプセル全体の75〜95質量%であるのが好ましく80〜95質量%であるのがより好ましい。
[2] マイクロカプセル化消火剤の製造方法
(A)主殻層の形成
主殻層は、消火液が分散したゼラチン水溶液に塩及び酸を加えて、ゼラチンのコアセルベーションを起こすことにより形成する。消火液の分散物は、ゼラチンの水溶液に消火液を添加して撹拌し、乳化することにより得られる。乳化の温度はゼラチンがゲル化しない範囲が好ましく、35〜45℃であるのが好ましく、35〜39℃であるのがさらに好ましい。乳化時間は特に制限はないが、2〜30分間が好ましく、5〜10分間がさらに好ましい。乳化時に必要に応じて乳化剤を添加しても良く、乳化剤としては市販のものが使用できる。
(A)主殻層の形成
主殻層は、消火液が分散したゼラチン水溶液に塩及び酸を加えて、ゼラチンのコアセルベーションを起こすことにより形成する。消火液の分散物は、ゼラチンの水溶液に消火液を添加して撹拌し、乳化することにより得られる。乳化の温度はゼラチンがゲル化しない範囲が好ましく、35〜45℃であるのが好ましく、35〜39℃であるのがさらに好ましい。乳化時間は特に制限はないが、2〜30分間が好ましく、5〜10分間がさらに好ましい。乳化時に必要に応じて乳化剤を添加しても良く、乳化剤としては市販のものが使用できる。
消火液が分散したゼラチン水溶液に、相分離促進剤として塩の水溶液(例えば、5質量%の燐酸ナトリウム水溶液)を添加し、次いで酸(例えば、10質量%のH2SO4水溶液)を添加してpHを3〜5.5に調整すると、ゼラチンのコアセルベーションが起こる。さらに混合液を徐々に冷却する(例えば、1〜1.5時間で25〜35℃に低下させる)と、消火液小滴の周りにゼラチンが吸着し殻(主殻層)が形成される。混合液をさらに5〜15℃まで冷却し、約1時間以上保持する。
相分離促進剤としては、リン酸塩、硫酸塩等の塩の水溶液、アラビヤゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラゲニンペクチン等の水溶液を用いることができる。特に、形成される皮膜の含水量が低いリン酸塩、硫酸塩等の塩の水溶液が好ましく、特にリン酸ナトリウム又はリン酸カリウムが好ましい。
酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等を用いることができる。酸としては、硫酸が好ましい。
さらに架橋剤を添加することにより、ゼラチン膜を固化させるのが好ましい。例えば、グルタルアルデヒド水溶液[例えば25質量%]を加え、5〜15℃に1時間以上保持すると、ゼラチン膜が架橋反応し固化が起こる。ゼラチンの架橋はグルタルアルデヒドを用いた方法に限らず、公知の架橋剤及び公知の架橋方法を用いることができる。
(B) 補強層の形成
ゼラチンの主殻層を補強する層を形成するのが好ましい。補強層を形成する第一の方法として、尿素樹脂等のホルマリンとの反応により形成する樹脂を用いた方法が挙げられる。この補強層は、ゼラチンの主殻層を固化した後の乳化液を20〜30℃に加熱した後、尿素樹脂前駆体、レゾルシノール樹脂前駆体、メラミン樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体及びポリビニルアセタール樹脂前駆体からなる群から選ばれた少なくとも一種を添加して、pHを1〜5まで低下させた後30〜35℃に昇温し、30分以上保持することにより形成することができる。低下させるpHは1〜3.5であるのがさらに好ましく、1〜2であるのが最も好ましい。
ゼラチンの主殻層を補強する層を形成するのが好ましい。補強層を形成する第一の方法として、尿素樹脂等のホルマリンとの反応により形成する樹脂を用いた方法が挙げられる。この補強層は、ゼラチンの主殻層を固化した後の乳化液を20〜30℃に加熱した後、尿素樹脂前駆体、レゾルシノール樹脂前駆体、メラミン樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体及びポリビニルアセタール樹脂前駆体からなる群から選ばれた少なくとも一種を添加して、pHを1〜5まで低下させた後30〜35℃に昇温し、30分以上保持することにより形成することができる。低下させるpHは1〜3.5であるのがさらに好ましく、1〜2であるのが最も好ましい。
尿素樹脂前駆体、レゾルシノール樹脂前駆体、メラミン樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体及びポリビニルアセタール樹脂前駆体は、それぞれ尿素、レゾルシン、メラミン、フェノール及びポリビニルアルコール誘導体にホルムアルデヒドを1〜4当量混合し、室温〜70℃で10分から2時間攪拌することにより調製する。なおpHが低い場合、重合反応が進行するので必要に応じてpHを8程度に調節しても良い。これらの前駆体は、部分的に重合反応が起こっているが樹脂化する前の状態のものであり、これらの前駆体を乳化物と混合後、pHを低下させることにより、樹脂化が起こり、補強層が形成される。
補強層を形成する第二の方法として、アルコキシシラン又はシランカップリング剤を用いる方法が挙げられる。ゼラチンの主殻層を固化した後の乳化液にアルコキシシランもしくはその加水分解物、又はシランカップリング剤を加え、さらに酸を添加して、約40℃で1日攪拌することによりアルコキシシランのゲル化物もしくはその加水分解縮合物からなる無機質の補強層を形成することができる。
(D) マイクロカプセルの捕集
撹拌を行ってマイクロカプセルを沈殿させ、上澄み液を除去する。デカンテーション法によりマイクロカプセルを2〜3回水洗した後、濾別し、乾燥する。このようにして、マイクロカプセル化消火剤が得られる。
撹拌を行ってマイクロカプセルを沈殿させ、上澄み液を除去する。デカンテーション法によりマイクロカプセルを2〜3回水洗した後、濾別し、乾燥する。このようにして、マイクロカプセル化消火剤が得られる。
本発明のマイクロカプセル化消火剤は粉体状であり、樹脂、塗料、繊維等に配合することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)原料水溶液の調製
10 gのゼラチンを190 gの蒸留水に入れ、室温で20分間保持し、次いで50℃で30分間加熱して、5質量%のゼラチン水溶液を調製した。
(1)原料水溶液の調製
10 gのゼラチンを190 gの蒸留水に入れ、室温で20分間保持し、次いで50℃で30分間加熱して、5質量%のゼラチン水溶液を調製した。
5 gの燐酸ナトリウムを95 gの蒸留水に加え、室温で30分間撹拌し、5質量%の燐酸ナトリウム水溶液を調製した。
レゾルシン15 gを85 gの蒸留水に入れ、37%のホルムアルデヒド25 mLを加え、室温で60分攪拌し、レゾルシノール樹脂前駆体を調製した。この前駆体溶液のpHは3.3であった。
(2) マイクロカプセルの製造
5質量%のゼラチン水溶液176 gに40℃で160 gのドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(気化温度=49.2℃,凝固点=-108.0℃)を添加し、3〜5分間撹拌して乳化した。次いで5質量%の燐酸ナトリウム水溶液20 gを加え、ゼラチンのコアセルベーションを行った。10質量%の硫酸を加えてpHを4.9〜5.1に調製し、32〜33℃に冷却して1.5時間保持した。次いで8〜12℃まで冷却して1時間保持し、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンの小滴の周りにゼラチン膜を形成した。
5質量%のゼラチン水溶液176 gに40℃で160 gのドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(気化温度=49.2℃,凝固点=-108.0℃)を添加し、3〜5分間撹拌して乳化した。次いで5質量%の燐酸ナトリウム水溶液20 gを加え、ゼラチンのコアセルベーションを行った。10質量%の硫酸を加えてpHを4.9〜5.1に調製し、32〜33℃に冷却して1.5時間保持した。次いで8〜12℃まで冷却して1時間保持し、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンの小滴の周りにゼラチン膜を形成した。
25質量%のグルタルアルデヒド水溶液5 mlを添加し、8〜12℃で1時間保持した後、20〜25℃まで徐々に昇温して3時間保持し、ゼラチン膜を架橋し固化させた。さらにレゾルシノール樹脂前駆体120 mlを加えて15分間撹拌した後、10質量%の硫酸水溶液を加えてpHを1.3〜1.7とし、30℃に3時間保持し、ゼラチン膜を補強する層を形成した。その後攪拌を停止すると、マイクロカプセルは沈殿した。上澄みを捨て、マイクロカプセルをデカンテーション法により3回水洗した。濾過及び乾燥により、平均外径200〜300μmで、消火液の含有量が92質量%の粉体状のマイクロカプセル化消火剤を得た。マイクロカプセルの破裂温度は130℃であった。
実施例2
消火液として質量比で80:20のドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンとパーフルオロヘキサンの混合物(気化温度:50℃、融点:-87℃)を使用した以外実施例1と同じ方法により、平均外径200〜300μmのマイクロカプセル化消火剤を作製した。消火液の含有量は89質量%であり、マイクロカプセル殻の破裂温度は145℃であった。
消火液として質量比で80:20のドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンとパーフルオロヘキサンの混合物(気化温度:50℃、融点:-87℃)を使用した以外実施例1と同じ方法により、平均外径200〜300μmのマイクロカプセル化消火剤を作製した。消火液の含有量は89質量%であり、マイクロカプセル殻の破裂温度は145℃であった。
実施例3
消火液として、質量比で80:20のドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンとパーフルオロシクロヘキサンの混合物(気化温度:52℃、融点:-76℃)を使用した以外実施例1と同じ方法により、平均外径200〜400μmのマイクロカプセル化消火剤を作製した。消火液の含有量は90質量%であり、マイクロカプセル殻の破裂温度は155℃であった。
消火液として、質量比で80:20のドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンとパーフルオロシクロヘキサンの混合物(気化温度:52℃、融点:-76℃)を使用した以外実施例1と同じ方法により、平均外径200〜400μmのマイクロカプセル化消火剤を作製した。消火液の含有量は90質量%であり、マイクロカプセル殻の破裂温度は155℃であった。
200 mm×200 mm×200 mmの寸法を有し、側壁に穴を有する上蓋付きの実験箱の中に、30 gのディーゼルオイル及び実施例1〜3の各マイクロカプセル化消火剤を入れ、上蓋を閉めた。ディーゼルオイルに点火すると、炎によりマイクロカプセルが破裂し、消火された。マイクロカプセル化消火剤の使用量及び消火に要した時間を表1に示す。
実施例4
35.5 gの液状未硬化エポキシ樹脂に、3.5 gのポリエチレンポリアミン系硬化剤、及び実施例1の60 gのマイクロカプセル化消火剤を配合し、混練した。得られたペーストを、シリコーン系離型剤を塗布したアルミニウム枠(200 mm×200 mm×20 mmの寸法を有する)に入れ、20〜25℃に48時間保持して硬化させた。得られたマイクロカプセル化消火剤を含有するエポキシ樹脂板を実施例1〜3に用いたのと同じ実験箱の内壁に立てかけ、ディーゼルオイルに点火した。炎が出ると、マイクロカプセルは破裂し、1〜3秒後に火は消えた。
35.5 gの液状未硬化エポキシ樹脂に、3.5 gのポリエチレンポリアミン系硬化剤、及び実施例1の60 gのマイクロカプセル化消火剤を配合し、混練した。得られたペーストを、シリコーン系離型剤を塗布したアルミニウム枠(200 mm×200 mm×20 mmの寸法を有する)に入れ、20〜25℃に48時間保持して硬化させた。得られたマイクロカプセル化消火剤を含有するエポキシ樹脂板を実施例1〜3に用いたのと同じ実験箱の内壁に立てかけ、ディーゼルオイルに点火した。炎が出ると、マイクロカプセルは破裂し、1〜3秒後に火は消えた。
実施例5
液状未硬化エポキシ樹脂、硬化剤及びマイクロカプセル化消火剤を混練してなる実施例4と同じペーストを、実施例1〜3に用いたのと同じ実験箱の内壁に塗布し、20〜25℃に48時間保持して硬化させた。得られた塗膜の平均厚さは1〜2 mmであった。ディーゼルオイルを点火すると、炎が出てから1〜2秒で火は消えた。
液状未硬化エポキシ樹脂、硬化剤及びマイクロカプセル化消火剤を混練してなる実施例4と同じペーストを、実施例1〜3に用いたのと同じ実験箱の内壁に塗布し、20〜25℃に48時間保持して硬化させた。得られた塗膜の平均厚さは1〜2 mmであった。ディーゼルオイルを点火すると、炎が出てから1〜2秒で火は消えた。
実施例6
60 gの水性塗料に実施例1の40 gのマイクロカプセル化消火剤を加え、20〜25℃で24時間乾燥させ、マイクロカプセル化消火剤を含有する平均厚さ1〜2 mmの塗膜を形成した。実施例5と同様に着火したところ、炎が出てから1〜2秒で火は消えた。
60 gの水性塗料に実施例1の40 gのマイクロカプセル化消火剤を加え、20〜25℃で24時間乾燥させ、マイクロカプセル化消火剤を含有する平均厚さ1〜2 mmの塗膜を形成した。実施例5と同様に着火したところ、炎が出てから1〜2秒で火は消えた。
実施例7
実施例2のマイクロカプセル化消火剤をポリビニルアルコール水溶液に分散し、得られた懸濁液にパイル織布を含浸させた。マイクロカプセル化消火剤が分散したパイル織布に対して実施例6と同じ実験をしたところ、同様に消火された。
実施例2のマイクロカプセル化消火剤をポリビニルアルコール水溶液に分散し、得られた懸濁液にパイル織布を含浸させた。マイクロカプセル化消火剤が分散したパイル織布に対して実施例6と同じ実験をしたところ、同様に消火された。
Claims (14)
- 破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火器であって、前記消火液が含フッ素ケトンを含有することを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
- 請求項1に記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記マイクロカプセルの殻が、主殻層及び主殻層を補強した層からなることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
- 請求項2に記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記主殻層がゼラチン又はその誘導体からなり、前記補強層が尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機層、又はアルコキシシランのゲル化物もしくはその加水分解縮合物からなる無機質層であることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記マイクロカプセルの平均外径が50〜1,000μmであり、前記殻の平均厚さが3〜20μmであることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記消火液の含有量が前記マイクロカプセル全体の75〜95質量%であることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記含フッ素ケトンはドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン{ CF3CF2C(O)CF(CF3)2 }であることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
- 破裂温度が50〜300℃のポリマーからなる殻と、含フッ素ケトンを含有する消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤を製造する方法であって、(1)前記含フッ素ケトンをゼラチン又はその誘導体の水溶液に入れて乳化することにより、前記含フッ素ケトンの小滴を形成し、(2)得られた乳化液にゼラチンの相分離促進剤を加え、pHを3〜5.5に低下させるとともに5〜15℃まで冷却することにより、含フッ素ケトンの小滴の外周にゼラチン又はその誘導体からなる殻を形成し、(3)前記殻を固化することを特徴とする方法。
- 請求項7に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記工程(3)において、ゼラチンの架橋剤としてアルデヒド類又は酵素類を添加することにより前記殻を固化させることを特徴とする方法。
- 請求項8に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記ゼラチンの架橋剤がグルタルアルデヒド又はホルマリンであることを特徴とする方法。
- 請求項8又は9に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記殻を固化させた後の乳化液に、尿素樹脂前駆体、レゾルシノール樹脂前駆体、メラミン樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体及びポリビニルアセタール樹脂前駆体からなる群から選ばれた少なくとも一種を添加して、pHを1〜5まで低下させた後、昇温することにより前記殻を補強する層を形成することを特徴とする方法。
- 請求項8又は9に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記殻を固化させた後の乳化液に、アルコキシシランもしくはその加水分解物、又はシランカップリング剤を加え、さらに酸を添加して昇温することにより前記殻を補強する層を形成することを特徴とする方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤が充填された硬化樹脂からなる消火性複合材料。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤が充填された消火塗膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤が充填された消火織布。
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