以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る形状測定装置1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る形状測定装置の構成図である。
図1に示す形状測定装置1は、スペクトラム光源2と、2次元チャート3と、コリメータ4と、偏光ビームスプリッタ5と、1/4波長板6と、対物光学系(投影光学系)7と、結像光学系8と、波長帯分岐プリズム(分岐部)9と、第1の撮像装置10と、第2の撮像装置11と、第3の撮像装置12と、制御ユニット13とを備えている。形状測定装置1は、スペクトラム光源2から出力された光Lで照明された2次元チャート3の像を対物光学系7によって被測定体S上に投影し、被測定体S上の2次元チャート3の投影像の散乱光を撮像したデータと対物光学系7が有する軸上色収差とを比較することによって、被測定体Sの3次元形状を測定する装置である。
スペクトラム光源2は、複数(本実施形態では3つ)の波長帯域である第1の波長帯域WB1、第2の波長帯域WB2、及び第3の波長帯域WB3それぞれの中で波長を変えて、複数の部分波長帯(スペクトラム)の光を同時に出力することができる。複数の部分波長帯は何れも、第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3の何れかの一部の波長帯域である。スペクトラム光源2は、各波長帯域WB1、WB2、WB3の中で波長帯(スペクトラム)を変えて光Lを出力する。スペクトラム光源2は、光源装置21と、光源コリメータ22と、拡散素子23と、照明光学系24とを備える。
光源装置21は、所望の波長帯を有する光Lを出力する。光源コリメータ22は、光源装置21から出力された光Lをコリメートし、平行光束とする。拡散素子23は、光束コリメータ22で平行光束とされた光Lを拡散する。拡散素子23として、例えば拡散板、又はフライアイレンズ等を用いることができる。
ここで、図2を参照して、光源装置21の構成について説明する。図2は、光源装置21の構成図である。図2に示すように、幾何光学的にはほぼ点光源とみなせ、しかも連続スペクトラム光源という特徴を持つスーパーコンティニュアム光源からの平行光束B1を出力する光源部101から出力される連続スペクトラム平行光束B1は、偏光分岐素子102に入射する。なお、図2において、光線に付された両方向矢印と黒丸は、それぞれ、互いに直角な偏光の振動方向を示している。これらの2つが同時に記載されている光線は、両方の偏光成分を併せ持つ光線を示す。
偏光分岐素子102は、入射光を、互いに直交する2つの直線偏光成分を有する出力光として分岐出力するもので、例えばカルサイトなどの複屈折結晶からなるウォラストンプリズムにすれば高い消光比(100000:1程度)が得られる。ウォラストンプリズムの代わりに、ノマルスキープリズム等を用いてもよい。なお、偏光分岐素子102は表面反射光束が光源部101の中の光源点に戻らないよう、わずかに傾けて設置する。
図2では平行光束B1を偏向させるために平面ミラー110を設置してあるが、これは配置上の必要性に応じて設置してもしなくてもよい。
平行光束B1は、偏光分岐素子102によって互いに直交する偏光成分別に光束B2とB3に分解され、所定の角度をなして別方向に進行する。次に、正のパワーを有する第一フォーカシング光学系103によって、これらの光束B2、B3はそれぞれほぼ点像に集光される。ここで、偏光分岐素子102内にできている光束B2とB3の分岐点と、第一フォーカシング光学系103の焦平面とをなるべく一致させることが望ましい。そうすることで、第一フォーカシング光学系103通過後の光束B2とB3の2本の主光線は平行となる。
この点像位置に分光器104の入出力スリット141を設置する。スーパーコンティニュアム光源やレーザ光源ならば、ほぼ点状に集光できるので、入出力スリット141は必要というわけではないが、余計な光が分光器104の内部に混入するのを防げるのであった方がよい。分光器104は波長分散型とする。図2に示した例ではグレーティングを波長分散素子143とし、コリメータ142とカメラ光学系144とが設けられている。なお、グレーティングの代わりにプリズム等の波長分散素子を適宜使用することができる。
分光器104は、入出力スリット141開口面上の2つの点像を波長分解して、発光源のスペクトラム像を2つ形成する。2つのスペクトラム像は2本のほぼ平行に並んだ線形状になる。それぞれの線状スペクトラム像位置に対して1つの反射型液晶素子アレイが対応するよう2列アレイ構成とした反射型液晶素子アレイデバイス106が設置される。その内部に備えられている反射型液晶素子内ミラーのミラー面上にスペクトラム像が所定の波長範囲においてあまさず形成され、かつ反射されるように位置が決められている。従って、光束B2とB3は反射されて分光器104内部に戻る。
分光器104の光学系は、各反射型液晶素子に入射する該当波長要素光束の主光線がなるべく平行に配列するよう設計されてあることが望ましい。これは、波長分散素子143状の各波長の主光線の分岐点を、カメラ光学系144の焦平面上、あるいはその近傍に配置することで実現できる。そうすることにより、平面上に配列している反射型液晶素子アレイ161及び162への入射角度条件をそろえることができ、入射角度のばらつきによるリターデーション特性のばらつきを発生させなくすることができる。また、迷光の方向を揃えることができ、迷光の処理を容易にすることができる。
反射型液晶素子アレイデバイス106の光入出力面には必要に応じてリターデーション補償板105を接着しておく。リターデーション補償板105は液晶素子にわずかに残してある初期リターデーション、および偏光分岐素子102と反射型液晶素子アレイデバイス106との間の光学系を原因として発生する可能性のあるリターデーションとを相殺するために用いられる。このとき接着面での反射光は迷光になる恐れがあるので、所定の値以下になるように注意する。必要があれば接着面にも反射防止膜を施す。
通常は2つの反射型液晶素子アレイ161,162に対して1つのリターデーション補償板105を用意すれば足りるが、必要なら2分岐された直線偏光光束経路個々に対して最適化した2枚のリターデーション補償板を用意し、それぞれを該当する反射型液晶素子アレイ上に貼り付けてもよい。
反射型液晶素子アレイデバイス106を分光光束が反射する際、個々の液晶素子に独立的に印加された電圧にしたがってリターデーションが発生する。したがって反射型液晶素子アレイデバイス106反射後の偏光状態は一般的には楕円偏光である。反射型液晶素子アレイデバイス106によって、波長要素ごとに独立的に所定のリターデーションを発生させ楕円偏光化することで偏光分岐素子102を再通過する際に、分光アッテネーション作用を発生させ、出力光に対して所望のスペクトラム特性を持たせる。
なお、光束B2、B3の偏光状態差は、波長分散素子143に入射する際、および反射型液晶素子アレイデバイス106で反射された後波長分散素子143に再入射する際、ともに大きく異なっている。波長分散素子143の分光透過特性(または分光反射特性)には通常偏光依存性があるが、とりわけグレーティングの場合には顕著に現れる。この波長分散素子143の分光特性偏光依存性をなくしたいときには、波長分散素子143の分光特性偏光依存性が相殺されるよう、光束B4とB5とが偏光分岐素子102を再通過する時の偏光分岐素子102による分光アッテネーション量に差異を持たせればよい。これは、光束B4とB5に反射型液晶素子アレイ161、162間で波長の関数としての所定の量だけ異なるリターデーション量を付加させれば実現する。
図2に示すように、反射型液晶素子アレイデバイス106には後述の制御ユニット13が接続されている。制御ユニット13は、各液晶素子への印加電圧を制御する。制御ユニット13への制御信号は、図示はしていないが、外部のパソコン等の制御装置から与えられる。
反射型液晶素子アレイデバイス106を反射した光束は分光器104を逆進する中、波長合波作用を受け、2本の白色光束B4とB5に戻る。そして入出力スリット141上で、入力時と同じ位置に集光する。
入出力スリット141の開口上にできる2つのスポットの中心を結ぶ直線を含む平面のうち、この2つのスポットに集光する光束(集光光束)の2本の主光線を含む平面に対して直交する平面を入出力スリット面と名づける。光束B2、B3の主光線が、入出力スリット141のそれぞれのスポットに入射するとき、それぞれの主光線が入出力スリット面の法線に対して、集光光束の集光NAよりも大きな角度をなして入射するように、光束B2、B3の主光線の入射角度を傾けておく。そうすることで、入出力スリット141から反射型液晶素子アレイデバイス106までの光束B2、B3と、反射型液晶素子アレイデバイス106で反射後入出力スリット141まで戻る出力光束B4、B5とが、入出力スリット141近傍および反射型液晶素子アレイデバイス106の反射点近傍以外では分離するようになる。これは、入出力スリット141と、反射型液晶素子デバイス106の反射面とが共役にされていることから明らかである。
なお、液晶素子内を通過する光線には本来角度分布などない方が望ましく、この場合も入射光束と反射光束とが角度をなさない方がよいが、光束NAを十分小さく設定し、光束入射傾角もなるべく小さく抑えることで、光線角度分布の弊害を低減させることができる。
分光器104の入出力スリット141から出力された光束は、第一フォーカシング光学系103でコリメートされた後、偏光分岐素子102に戻る。
前述の通り第一フォーカシング光学系103の焦平面を偏光分岐素子102の偏光分岐点に合わせることで、分光器104の入出力スリット141に入射する2本の光束B2、B3の主光線は互いに平行となり、入出力スリット141から射出する2本の光束B4、B5の主光線も互いに平行となる。また第一フォーカシング光学系103によってコリメート作用を受けるのと同時に、2本の光束B4、B5は偏光分岐素子102内において交わる。このとき、前述のように、光束B2、B3と光束B4、B5とが分離されているので、偏光分岐素子102に光束B4、B5が入射する位置は、光束B2、B3が入射する位置とは異なる位置となる。
偏光分岐素子102に戻った2本の白色光束B4、B5は、偏光成分によって、光源部101から発した光束B1が最初に偏光分岐素子102に入射する方向と平行な方向に偏向される第一偏向成分と、それ以外の方向に偏向される第二偏向成分および第三偏向成分とに分かれる。
第一偏向成分は、戻って来た2本の白色光束それぞれの成分がほぼ重なり、おおよそ1本の光束となって偏光分岐素子102から出て行く。これを出力光束B8と呼ぶ。第二偏向成分および第三偏向偏光成分光は偏光分岐素子通過後、異なる2方向に進行する。これらを廃棄光束B6、B7と呼ぶ。
このとき、前述のように、偏光分岐素子102に光束B4、B5が入射する位置は、光束B2、B3が入射する位置とは異なる位置となるので、偏光分岐素子102を通過した出力光束B8が光源部101に直接戻ることが避けられ、光源部101の動作が不安定化することがない。
光路に沿って偏光分岐素子102の次に、正のパワーを有する第二フォーカシング光学系108を設置し、特に出力光束B8を集光させる。廃棄光束B6、B7は第二フォーカシング光学系108に入射させてもさせなくてもどちらでもかまわない。出力光束B8の集光点にピンホール109を設置し、出力光束B8だけを通過させることで、所望のスペクトラムを有した光束を得る。
なお、第二フォーカシング光学系108とピンホール109を設ける代わりに、単に出力光束B8のみを通過させる開口を設けるようにしてもよい。この場合には、第二フォーカシング光学系108とピンホール109を設けた場合に比して、取り出される光束に多少の迷光が混じることが避けられないが、これが問題にならなければ、このような構成でも、所望のスペクトラムを有した光束を得ることができる。
再び、図1を参照して形状測定装置1の説明を続ける。照明光学系24は、正のパワーを有する。また、照明光学系24は、その焦点位置が拡散素子23に一致するよう配置される。
2次元チャート3は、スペクトラム光源2によって照明される。また、2次元チャート3は、拡散素子23が配置された側とは反対側の照明光学系24の焦点位置であって、且つ後述のコリメータ4の焦点位置に配置される。図3を参照して、2次元チャート3が有するパターンについて説明する。図3は、2次元チャート3を形状測定装置1の光軸Axに沿って見たときの平面図を表す。
2次元チャート3には、図3に示されるように、ピンホール3Aが2次元的に配列されている。そして、2次元チャート3では、ピンホール3Aによる2次元パターンが、光軸Axと直交し且つ互いに直交する2つの方向に沿って繰り返される。ピンホール3Aは、光を透過する透過領域として機能する。
再び、図1を参照して形状測定装置1の説明を続ける。コリメータ4は、2次元チャート3の透過領域を通過した照明光Lをコリメートして、平行光束とする。図1に示されるように、コリメータ4は正のパワーを有する。コリメータ4は、軸上色収差及び倍率色収差(焦点距離の色収差)の両方ともを十分除去するように設計されている。
偏光ビームスプリッタ5は、照明光LのP偏光成分(又はS偏光成分)を透過し、S偏光成分(P偏光成分)を反射する。これにより、偏光ビームスプリッタ5で反射された照明光Lは直線偏光化される。偏光ビームスプリッタ5は、反射により照明光Lの光路を略90°偏向する。また、偏光ビームスプリッタ5は、後述の被測定体Sでの散乱された後、後述の1/4波長板6を通過した光Lのうち、所定の直線偏光成分を有する光を透過する。
1/4波長板6は、偏光ビームスプリッタ5で光路が偏向された照明光Lを円偏光に変換する。1/4波長板6は、後述の被測定体Sでの散乱光Lの中の所定の偏光成分光を直線偏光に変換する。このとき、この成分光の偏光面は、偏光ビームスプリッタ5で反射された照明光Lの偏光面に対し光軸Axを中心として90°回転しているので、偏光ビームスプリッタ5を透過する。
対物光学系7は、被測定体S上に投影した2次元チャート3の像が被測定体Sで散乱(反射も含む)された光の一部をコリメートして1/4波長板6に入射させる。すなわち、対物光学系7は、スペクトラム光源2から出力された光Lによって照明された2次元チャート3の像を被測定体Sに投影する。対物光学系7は、照明光Lの波長により、被測定体S上において対物光学系7の光軸Ax方向で異なる位置に2次元チャート3の像を投影する。具体的には、3つの波長λ1、λ0、λ2の光(λ1<λ0<λ2)を考えたとき、波長λ1の光L1は対物光学系7の光軸Ax方向における位置F1で合焦し、波長λ0の光L0は対物光学系7の光軸Ax方向における位置F0で合焦し、波長λ2の光L2は対物光学系7の光軸Ax方向における位置F2で合焦する。ここで、位置F1、F0、F2は、この順でスペクトラム光源2に近い。
対物光学系7は、無限遠共役設計の正のパワーを有する光学系であって、軸上色収差は所定量だけ有しているが、倍率色収差については十分除去されている光学系である。対物光学系7は、第1の対物光学系31と開口絞り32と第2の対物光学系33とを備える。第1の対物光学系31は、所定の量の軸上色収差を発生する軸上色収差発生素子として機能する。第1の対物光学系31は、第2の対物光学系33の焦点面上に設置される。第1の対物光学系31は、基準波長におけるパワー値が0であるとともに、所定の波長帯域内において基準波長から外れるほど徐々にパワー絶対値が増大し且つ波長に対してパワー値変動が単調であるような素子である。基準波長としては、例えば測定に使用する第1〜第3の波長帯域WB1〜WB3それぞれの内の中心付近の波長を選べばよい。
開口絞り32は、第1及び第2の対物光学系31、33の間に配置される。正のパワーを有する第2の対物光学系33は、スペクトラム光源2から出力される所定の波長帯域内の光に対して軸上色収差及び倍率色収差の双方が十分に補正された色収差補正済対物光学系として機能する。第2の対物光学系33としては、例えば普通の無限遠共役設計の顕微鏡対物レンズを用いる。ただし、この場合、無限遠物点側焦点が光学系の外に出ていて、第1の対物光学系31を物理的に設置できることが必要である。
図4に第1の対物光学系31の一例についてその構成を示す。第1の対物光学系31は、平凹レンズ31Aと平凸レンズ31Bとを備える。対物光学系31の表裏は問わない。平凹レンズ31Aの凹面の曲率半径と平凸レンズ31Bの凸面の曲率半径とは同一である。第1の対物光学系31は、平凹レンズ31Aの凹面と平凸レンズ31Bの凸面とを接合した接合レンズである。
平凹レンズ31A及び平凸レンズ31は、基準波長における屈折率が略等しいが、分散値が異なる媒質によって形成されている。したがって、平凹レンズ31A及び平凸レンズ31Bの接合レンズである第1の対物光学系31は、基準波長に対しては単なる平行平面板として機能する一方、基準波長以外の波長に対してはわずかだがパワーを有する光学系として機能する。そのため、第1の対物光学系31を通過した光は、波長によって異なる角度で第1の対物光学系31を出射し、その結果第1の対物光学系31は軸上色収差を発生する。
再び、図1を参照して形状測定装置1の説明を続ける。結像光学系8には、偏光ビームスプリッタ5を通過した散乱光が入射する。結像光学系8によって被測定体Sの像が形成される。結像光学系8は、軸上色収差及び倍率色収差(焦点距離の色収差)の両方ともを十分除去するように設計されている。
波長帯分岐プリズム9は、被測定体Sで散乱され結像光学系8を通過した2次元チャート3の投影像をスペクトラム光源2が出力する複数の波長帯域WB1、WB2、WB3の数だけ波長に基づいて分岐する。本実施形態に係る波長帯分岐プリズム9は、結像光学系8を通過した2次元チャート3の投影像を3つに分岐する3分岐型である。波長帯分岐プリズム9として、例えば3板式カメラに用いられるRGB3色分解プリズムを用いることができる。
波長帯分岐プリズム9は、第1の波長帯域WB1に対応する波長の光を第1の撮像装置10に、第2の波長帯域WB2に対応する波長の光を第2の撮像装置11に、第3の波長帯域WB3に対応する波長の光を第3の撮像装置12にそれぞれ入射させる。
第1〜第3の撮像装置10〜12はいずれも、波長帯分岐プリズム9によって分岐された2次元チャート3の投影像を撮像する。第1〜第3の撮像装置10〜12はいずれも、2次元チャート3の投影像を得たときのスペクトラム光源2からの出力光の波長に対応させて、撮像された2次元チャート3の投影像をチャートデータとして後述の制御ユニット13の保存領域に保存する。第1〜第3の撮像装置10〜12として、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ等を用いることができる。
制御ユニット13は、制御部13A及び解析部13Bを備える。制御部13Aは、光源装置21に印加する電圧を制御し、スペクトラム光源2から出力される光の波長を制御する。
解析部13Bは、第1〜第3の撮像装置10〜12に保存されたチャートデータ及び既知の対物光学系7の軸上色収差量に基づいて被測定体Sの3次元形状を算出する。
次に、形状測定装置1によって被測定体Sの3次元形状を測定する方法を説明する。スペクトラム光源2から第1の波長帯域WB1内の一部である部分波長帯(スペクトラム)を有する光、第2の波長帯域WB2内の一部である部分波長帯(スペクトラム)を有する光、及び第3の波長帯域WB3内の一部である部分波長帯(スペクトラム)を有する光が同時に照明光Lとして出力される。照明光Lは、2次元チャート3のピンホール3Aが繰り返し配置された面を照明する。2次元チャート3を通過した照明光Lは、コリメータ4で平行光束にされる。平行光束となった照明光Lのうち一部の光(P偏光成分又はS偏光成分)は偏光ビームスプリッタ5で反射され、残り(S偏光成分又はP偏光成分)は偏光ビームスプリッタ5を透過する。偏光ビームスプリッタ5で反射された光Lは、1/4波長板6を通過する。光Lは、1/4波長板6を通過する前は直線偏光の光であるが、通過後円偏光に変換されている。1/4波長板6を通過した光Lは、第1の対物光学系31、開口絞り32、及び第2の対物光学系33を通過して、被測定体Sの表面及びその近傍に合焦する。
対物光学系7を通過した光Lは、倍率色収差は十分に除去されている一方、軸上色収差を所定の量だけ発生する。図5を参照して、対物光学系7の軸上色収差及び倍率色収差について説明する。図5は、対物光学系7の軸上色収差及び倍率色収差について模式的に説明するための図である。図5では、光学系の構造を薄肉レンズ系で表現している。図5は、スペクトラム光源2側、すなわち第1の対物光学系31側から平行光束が入射する場合を示す。
図5において、基準波長光線L0は実線で示されている。第1の対物光学系31は基準波長ではパワーが0なので光線はそのまま屈折することなく通過し、第2の対物光学系33を通過後その焦点である位置F0に集光する。一方、基準波長前後の波長光線L1、L2は破線で示してある。基準波長以外の波長の光線L1、L2に対して、第1の対物光学系31はわずかだが正又は負のパワーを有する。そのため、これらの波長光線L1、L2は第1の対物光学系31によって集光又は発散される。そして、第2の対物光学系33に入射後、基準波長光線L0の場合とは光軸Ax上の異なる位置F1、F2に集光する。すなわち、軸上色収差を示す。
ここで、第1の対物光学系31が第2の対物光学系33の焦点面(焦点距離f)に位置しているため、第1の対物光学系31の射出面上の1点から分かれて射出される3つの異なる波長の光線L0、L1、L2は、第2の対物光学系32通過後互いに平行を保って進行する。したがって、光線L0、L1、L2の光軸Ax上での集光点である位置F0、F1、F2は異なるが、光軸Axとなす角度は3つの光線L0、L1、L2とも同じ角度θである。
第1の対物光学系31に入射するまで3つの光線L0、L1、L2は、光軸Axに平行な同一光線である。したがって、焦点距離の定義から、対物光学系7の焦点距離は3つの波長の光線L0、L1、L2いずれについても同一である。よって、第2の対物光学系32に残存する微小色収差を無視すれば、対物光学系7の倍率色収差は存在しないと考えることができる。
こうして、対物光学系7を通過した光Lは上述のように軸上色収差を示すため、光軸Axに沿って異なる位置(例えば、位置F0、F1、F2等)に合焦する。そして、対物光学系7を通過した光Lは、2次元チャート3の像を被測定体S上に投影する。被測定体S上に投影される2次元チャート3の像も、像を投影する光の波長によってピントの合い方が異なる。すなわち、被測定体S表面の任意の位置に投影された2次元チャート3の像を考えたとき、当該位置における光軸Ax方向での高さ(凹凸量)に応じて2次元チャート3の像が被測定体S表面で合焦する際の波長は異なる。
さらに、図6を参照して、被測定体S上に投影される2次元チャート3の像の合焦位置が波長によって変化することを示す。図6に示されるように、被測定体S上の位置S1には、波長λ1の光が合焦する。被測定体S上の位置S2には、波長λ0の光が合焦する。被測定体S上の位置S3には、波長λ2の光が合焦する。
ここで、被測定体Sに2次元チャート3の像を投影する光Lは、投影像の部位にかかわらず主光線が対物光学系7の光軸Axに平行であること、すなわちテレセントリックな像投影を行うことが望ましい。これは、被測定体Sへテレセントリックに2次元チャート3の像を投影することにより、例えば被測定体Sの高さ(凹凸量)が変化しても、被測定体S上に投影される2次元チャート3の像の横ずれは抑制されることによる。なお、テレセントリックな投影を実現するためには、開口絞り32を対物光学系7の光源側焦点面上又はその近傍に設置する必要がある。一方で、前述のように、倍率色収差の発生を抑制するためには、薄肉レンズ表現において第1の対物光学系31の位置と第2の対物光学系32の光源側焦点面とを一致させることが望ましい。
被測定体S上に投影された2次元チャート3の像は、被測定体Sで散乱される。被測定体Sで散乱された光Lは、再度対物光学系7及び1/4波長板6を通過する。1/4波長板6を通過するときに、偏光ビームスプリッタ5を通過した後の直線偏光と同じ方向の直線偏光成分については、偏光面が光軸Axを中心に90度回転する。したがって、この場合、偏光ビームスプリッタ5によって光Lが反射されることなく透過していく。すなわち、被測定体Sからの散乱光Lが散乱前の偏光状態を保っているほど高い効率で偏光ビームスプリッタ5を透過することになる。偏光ビームスプリッタ5を透過した散乱光Lは結像光学系8に入射し、結像光学系8によって被測定体Sの像が形成される。
結像光学系8によって形成された被測定体Sの像は、第1〜3の撮像装置10〜12の何れかで撮像される。そして、この投影像を得たときのスペクトラム光源2からの出力光の波長に対応させて、撮像された2次元チャート3の投影像を制御ユニット13の保存領域にチャートデータとして保存する。
保存されたチャートデータは、対物光学系7の色収差量に基づいて、制御ユニット13の解析部13Bによって処理される。そして、制御ユニット13の解析部13Bは、被測定体Sの3次元形状を算出する。
本実施形態に係る形状測定装置1の解析部13Bが被測定体Sの3次元形状を算出する原理を以下に説明する。例えば、スペクトラム光源2から出力する第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3の照明光Lの部分波長帯(スペクトラム)の幅を一定幅に制限し、幅を一定に保ったまま第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3内で部分波長帯を移動、すなわち波長を大きく又は小さくする。そして、スペクトラム光源2から出力される照明光Lの波長を変化させつつ、被測定体Sの像を第1〜第3の撮像装置10〜12で撮像する。被測定体S表面の高さ(凹凸量)とその高さで合焦する照明光Lの波長とは一対一に対応しているので、被測定体Sの高さに応じて被測定体S表面に合焦する波長が一意に決定される。こうした原理に基づき、制御ユニット13の解析部13Bは、取得したチャートデータを画像解析する。
図7及び図8を参照して、撮像装置で撮像された2次元チャート3の像(ピンホール像)の強度(ピンホール像強度)とスペクトラム光源2から出力された光の波長との関係を説明する。図7は、ピンホール像強度を波長の関数として表した図である。図8は、被測定体S上に投影された2次元チャート3の像の散乱光を撮像したときのバックグラウンドとピーク値とのコントラスト、すなわちピンホール像強度のバックグラウンドとピーク値とのコントラストを波長の関数として示した図である。
図7は、所定の幅を有する部分波長帯での2次元チャート3の像を、適当な波長間隔で複数サンプリングした場合を示す。図7から理解されるように、サンプリングした5つの部分波長帯dλ1〜dλ5において、ピンホール像の中心部でピンホール像強度のピーク値Ipを有する。さらに、サンプリングした5つの部分波長帯dλ1〜dλ5において、ピンホール像強度のバックグラウンド値Ivを有する。
図8では、サンプリングされた5つの部分波長帯dλ1〜dλ5におけるピンホール像強度について、ピーク値Ipとバックグラウンド値Ivとのコントラストを波長の関数として示す。図8のコントラストがピークを示す波長λp、すなわちピーク値Ipとバックグラウンド値Ivとの差が最大の波長λpを合焦波長とみなす。そして、合焦波長λpと対物光学系7の軸上色収差との対応から、被測定体Sの該当部位の光軸Ax方向での高さ(凹凸量)を算出する。
制御ユニット13の解析部13Bは、画像解析の結果、例えば図7及び図8のグラフを保持し、上述の原理により被測定体S表面の3次元形状を算出することができる。解析部13Bは、被測定体S上において2次元的に部位ごとの高さを一通り算出し、その算出されたデータを被測定体Sの表面形状として2次元マップに出力してもよい。
このように、制御ユニット13の解析部13Bは、保存されたチャートデータ及び対物光学系7の色収差量に基づいて被測定体Sの3次元形状を算出する撮像データ処理部として機能することができる。すなわち、制御ユニット13の解析部13Bは、スペクトラム光源2から出力された照明光Lの波長と2次元チャート3の投影像の強度との関係に基づいて、被測定体S上の任意の位置での合焦波長を求め、当該合焦波長についての対物光学系7の色収差量から被測定体S上の任意の位置における対物光学系7の光軸Ax方向での高さ(凹凸量)を算出して被測定体Sの3次元形状を測定するものである。
ここで、図9を参照して、波長帯分岐プリズム9による波長帯分岐と照明光の第1〜第3の波長帯域との関係を説明する。図9(a)〜図9(c)それぞれに示されているグラフの横軸は波長を表し、縦軸は透過率を表す。図9(a)〜図9(c)の第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3内の曲線がそれぞれ、3分岐された後の波長帯域を表し、それらが第1の撮像装置10、第2の撮像装置11、及び第3の撮像装置12で撮像される。スペクトラム光源2からは、図9(a)に示すように、各波長帯域WB1〜WB3の一部として含まれる部分波長帯域の光が出力される。部分波長帯域は、対応する波長帯域WB1〜WB3内を出ない範囲で波長帯域を変化させる。2次元チャート3の像の撮像は、所定の波長変化ごとに行う。
また、図9(b)に示すように、隣接する波長帯域間のクロスオーバー領域(重複波長領域)、すなわち第1及び第2の波長帯域WB1、WB2のクロスオーバー領域CB1並びに第2及び第3の波長帯域WB2、WB3のクロスオーバー領域CB2内の波長の光を出力するときは、実際に出力する波長帯数をスペクトラム光源2が出力できる波長帯数より1つ少ない数(本実施形態では2つ)に減らす。これにより、図9(c)に示すような1つの波長帯域内に2つの出力部分波長帯域が存在してしまう事態を抑制する。
形状測定装置1は、第1〜第3の波長帯域WB1〜WB3内の複数の波長の光を出力できるスペクトラム光源2を備える。また、対物光学系7は所定の軸上色収差を発生させることができる。そのため、形状測定装置1では、軸上色収差を利用して被測定体Sの任意の位置での光軸Ax方向の高さ(凹凸量)を非接触で測定することが可能である。
一般に、干渉法、モアレトポグラフィー、及びパターン投影法等を用いて被測定体の3次元形状を測定する方法が知られている。これらの方法では、被測定体Sの表面に現れた縞模様の変形から位相変化を読み取り、これを表面の凹凸に換算して表面形状を算出している。これらの方法では、被測定体の凹凸が計測パターンの位相の1周期を超える深さのときは、計測された位相が2π単位で折りたたまれるラッピング現象を発生する。そのため、位相の折りたたみであるラッピングを伸ばして、正しい凹凸量に戻すアンラッピング処理を施す必要が生じてしまう。これに対し、形状測定装置1では軸上色収差を用いて被測定体Sの形状を測定しているため、アンラッピング処理は不要となる。
また、形状測定装置1では、2次元にパターンが配置された2次元チャート3の像を撮像装置10〜12により撮像することで、被測定体Sの表面の所定範囲の情報を一度に測定することができる。すなわち、装置において機械的な動きを伴うことなく被測定体Sの3次元形状を測定することが可能である。このように、二次元的に作用するチャート3及び撮像装置10〜12を用いて測定を行うため、2次元データ取得のための画像走査機構が不要となり装置を簡素化することが可能となる。
さらに、形状測定装置1では装置の簡素化に伴い、装置が振動することの抑制、コストの抑制、及び装置の動作の安定等も可能となる。
また、形状測定装置1では、スペクトラム光源2が第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3の3つの波長帯域において出力する部分波長帯域を変化させつつ、同時に3つの部分波長帯域を出力している。また、形状測定装置1は、波長帯分岐プリズム9を用いて測定する波長の範囲を3つに分割し、分割された波長帯域ごとに並行して第1〜第3の撮像装置10〜12によって撮像される。すなわち、第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3において、出力する部分波長帯域の変化と2次元チャート3の像の撮像とを並列的に行う。これにより、第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3の全域を波長帯分岐せずに撮像する場合に比べて、短時間で必要なデータを取得することが可能となる。
さらに、対物光学系7の軸上色収差量及び光源から出力された光の波長範囲の選択によって、被測定体Sの光軸Ax方向の高さ(凹凸量)の範囲を自由に設定することもできる。したがって、幅広い測定対象に対して形状の測定が可能である。
(第2実施形態)
図10を参照して、第2実施形態に係る形状測定装置41の構成について説明する。第2実施形態に係る形状測定装置41は、2次元チャートに対して斜めに照明光を入射する点で第1実施形態に係る形状測定装置1とは異なる。図10は、第2実施形態に係る形状測定装置の構成図である。
図10に示す形状測定装置41は、スペクトラム光源2と、2次元チャート42と、コリメータ4と、平面ミラー43と、対物光学系(投影光学系)44と、結像光学系8と、波長帯分岐プリズム(分岐部)9と、第1の撮像装置10と、第2の撮像装置11と、第3の撮像装置12と、制御ユニット13とを備えている。
2次元チャート42は、スペクトラム光源2によって照明される。図11は、2次元チャート42を形状測定装置41の光軸Axに沿って見たときの平面図を表す。2次元チャート42には、図11に示されるように、ストライプ状のスリット42Aが所定の方向に沿って配置された縞模様パターンが形成されている。スリット42Aは、光を透過する透過領域として機能する。
2次元チャート42は、図10において被測定体S上に形成されるスリット42Aの像の長手方向が図10の紙面に直交する方向となるように、配置される。
形状測定装置41では、図10に示すように、2次元チャート42を斜めに照明し、測定装置41の光軸Axに対して非回転対称な光強度分布を持たせる。平面ミラー12は、2次元チャート42を通過しチャート42の像を投影する光を対物光学系44に到達させる。
対物光学系44は、第1の対物光学系51、投影光用部分開口絞り52、撮像光用部分開口絞り53、及び第2の対物光学系54を備える。第1の対物光学系51は、所定の量の軸上色収差を発生する軸上色収差発生素子として機能する。投影光用の部分開口絞り52は、対物光学系44の光軸Axを含み、かつ図10の紙面に垂直な平面で開口絞り面を二分したとき、その片方の領域において2次元チャート42からの投影光を効率的に通過させる位置に設置される。その結果、被測定体Sは斜め照明される。
第2の対物光学系54は、スペクトラム光源2から出力される所定の波長帯域内の光に対して軸上色収差及び倍率色収差の双方が十分に補正された色収差補正済対物光学系として機能する。撮像光用部分開口絞り53は、投影光用部分開口絞り52と同一平面上であって且つ隣接して設置されている。撮像光用部分開口絞り53は、対物光学系44に戻った被測定体Sからの反射光及び散乱光の一部を通過させる。そして、撮像光用部分開口絞り53を通過した成分の光のみが、結像光学系8に入射する。なお、投影光用部分開口絞り52及び撮像光用部分開口絞り53は、必ずしも、図示位置にある必要はなく、同等効果の得られる場所に設置しても構わない。
形状測定装置41では、対物光学系44は、隣接して配置された投影光用部分開口絞り52及び撮像光用部分開口絞り53を有し、被測定体Sに入射する前の投影光Lは投影光用部分開口絞り52のみを通過する。すなわち、対物光学系44は、その領域を二分割したときにどちらかの領域(投影光用部分開口絞り52に相当する領域)内からのみスペクトラム光源2からの出力光が射出されるような射出瞳形状を有する。
また、制御ユニット13の解析部13Bは、撮像装置10〜12において得られたチャートデータの所定の複数領域における重心位置の変化を検出し、対物光学系44の軸上色収差特性と比較することで複数領域それぞれに対応する被測定体Sの位置の対物光学系44の光軸Ax方向での凹凸量を算出する。
形状測定装置41では、スリットパターンの繰り返しを有する2次元チャート42を用い、さらに2次元チャートに対して斜めに照明光を入射するため、波長ごとの2次元チャート42のスリット42Aの像の歪み量とボケ量とを算出し、これを対物光学系44の軸上色収差と比較することで、被測定物Sの光軸Ax方向での高さ(凹凸量)を求める。
図12に示すように、被測定体S上に形成された2次元チャート42のパターンの像(スリット像)において、任意の位置X0での光強度分布断面が照明光Lの波長に応じて変化する。図12(a)〜図12(e)において、照明光Lの波長の大きさが異なる場合の任意の位置X0における被測定体Sの断面形状に対し、2次元チャート42の像を形成する照明光Lの結像位置を示す。図12(a)〜図12(e)は、この順に波長が大きく又は小さくなっている場合に対応する。図12(c)は、任意の位置X0において2次元チャート42の像を形成する照明光が合焦した状態を示す。図12(a)〜図12(e)のグラフの横軸は被測定体S上での位置を、縦軸は高さ(凹凸量)を示す。
図13は、撮像装置で撮像したスリット像の光強度分布を示す。図13(a)〜図13(e)はそれぞれ、図12(a)〜図12(e)に対応している。すなわち、図13(a)〜図13(e)は、図12(a)〜図12(e)に対応する波長の大きさの照明光Lで2次元チャート42が照明された場合の集光状態を表す。図13(a)〜図13(e)のグラフの横軸は被測定体S上での位置を、縦軸はスリット像光強度分布を示す。
図13から理解されるように、照明光Lの波長変化に応じてスリット像光強度分布のピーク位置がX軸方向に移動する。位置X0に強度分布のピークが一致したとき、すなわち図13(c)が合焦状態である。制御ユニット13の解析部13Bによって、強度分布のピークのX座標値と照明光Lの波長との関係から、被測定体Sの任意の位置X0において合焦する照明光の波長を算出し、対物光学系44の軸上色収差に照らし合せて被測定体Sの着目部位X0の高さ(凹凸量)を求める。そして、制御ユニット13の解析部13Bにより、2次元的に被測定体S上の部位ごとの高さが一通り算出されたならば、そのデータを被測定体Sの表面形状として2次元マップを出力する。
図14を参照して、被測定体S上に投影される2次元チャート42の像の合焦位置が波長によって変化することを示す。図14に示されるように、被測定体S上の位置S1には、波長λ1の光が合焦する。被測定体S上の位置S2には、波長λ0の光が合焦する。被測定体S上の位置S3には、波長λ2の光が合焦する。
形状測定装置41では、投影光用部分開口絞り52が対物光学系44の光軸Axを含まない偏芯した位置に配置されている。そのため、第1実施形態に係る形状測定装置1と同じように対物光学系44の全開口に光が入射していると仮定した場合に、第1実施形態の場合と同様被測定体Sにテレセントリックな投影光が入射するように設定しておくことで、図14に示すように、被測定体Sに対して斜めから2次元チャート42の像を投影したとしても、被測定体Sの高さの変化による投影像の横ずれは発生しにくい。
形状測定装置41は、第1〜第3の波長帯域WB1〜WB3内の複数の波長の光を出力できるスペクトラム光源2を備える。また、対物光学系44は所定の軸上色収差を発生させることができる。そのため、形状測定装置41では、軸上色収差を利用して被測定体Sの任意の位置での光軸Ax方向の高さ(凹凸量)を非接触で測定することが可能である。
また、形状測定装置41では軸上色収差を用いて被測定体Sの形状を測定しているため、アンラッピング処理は不要となる。
また、形状測定装置41では、2次元にパターンが配置された2次元チャート42の像を撮像装置10〜12により撮像することで、被測定体Sの表面の所定範囲の情報を一度に測定している。すなわち、装置において機械的な動きを伴うことなく被測定体Sの3次元形状を測定することが可能である。そのため、形状測定装置41は、2次元データ取得のための画像走査機構が不要となり装置を簡素化することが可能となる。さらに、形状測定装置41では装置の簡素化に伴い、装置が振動することの抑制、コストの抑制、及び装置の動作の安定等も可能となる。
また、形状測定装置41は、第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3において、出力する部分波長帯域の変化と2次元チャート3の像の撮像とを並列的に行う。これにより、第1〜第3の波長帯域WB1、WB2、WB3の全域を波長帯分岐せずに撮像する場合に比べて、短時間で必要なデータを取得することが可能となる。
さらに、形状測定装置41では、対物光学系7の軸上色収差量及び光源から出力された光の波長範囲の選択によって、被測定体Sの光軸Ax方向の高さ(凹凸量)の範囲を自由に設定することもできる。したがって、幅広い測定対象に対して形状の測定が可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、軸上色収差発生素子として機能する第1の対物光学系31、51は、図1、図4、及び図10に記載された構成に限定されない。したがって、例えば、第1の対物光学系31を図15に示すように構成してもよい。図15では、平凹レンズ31Aと平凸レンズ31Bとの接合レンズである第1の対物光学系31を1個ではなく、2個用意して適当な間隔で配置している。2つの第1の対物光学系31は、同一媒質のレンズ同士、すなわち平凸レンズ31B同士が向かい合わせになるように並べて、開口絞り32を2つの第1の対物光学系31の中間に配置している。
また、第1の対物光学系51を図16に示すように構成してもよい。図16では、平凹レンズ51Aと平凸レンズ51Bとの接合レンズである第1の対物光学系51を1個ではなく、2個用意して適当な間隔で配置している。2つの第1の対物光学系51は、同一媒質のレンズ同士、すなわち平凸レンズ51B同士が向かい合わせになるように並べて、投影光用部分開口絞り52及び撮像光用部分開口絞り53を、2つの第1の対物光学系31の中間に配置している。
図15に示すように、2つの第1の対物光学系31とその中央に配置された開口絞り32とを用いる場合、開口絞り32が第2の対物光学系32の光源側焦点面と共役になるように設置することで、実用上十分な近似で倍率色収差の発生を十分に抑制することができる。さらに、この場合、テレセントリック条件をも満たすことが可能である。これは、第1の対物光学系31のパワーの絶対値がごく小さいことによる。
また、2次元チャートとして、第1実施形態で示したチャート3及び第2実施形態で示したチャート42以外のパターンを有するチャートを用いてもよい。
また、チャートデータを保存する保存領域は、制御ユニット13内に限らず、例えば撮像装置内に存在していてもよい。
1、41…形状測定装置、2…スペクトラム光源、3、42…2次元チャート、4…コリメータ、5…偏光ビームスプリッタ、6…1/4波長板、7、44…対物光学系、8…結像光学系、9…波長帯分岐プリズム、10…第1の撮像装置、11…第2の撮像装置、12…第3の撮像装置、13…制御ユニット、43…平面ミラー。