JP2009091676A - ポリエステル繊維を含む布帛の染色前処理方法 - Google Patents
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Abstract
ポリエステル繊維を含む布帛を乾熱セットする際に起こり得る、ポリエステル繊維の黄変や強度低下などの脆化および風合いの粗硬化を有効に防止し、布帛として良好な品質を保持することが可能な、汎用性ある方法を提供する。
【解決手段】
ポリエステル繊維を含む布帛を染色するに先立ち、布帛に対して行う前処理方法であって、布帛にスルホン酸塩を含む処理液を付与し、布帛に対し0.05〜2.0重量%のスルホン酸塩を付着させた後、乾熱セットすることを特徴とする前処理方法。
【選択図】 なし
Description
上記前処理方法において、処理液は、スルホン酸塩の他にさらに、不揮発性酸を含むことが好ましい。
また、処理液は、スルホン酸塩の他にさらに、キレート剤を含むことが好ましい。
また、処理液は、スルホン酸塩の他にさらに、不揮発性酸とキレート剤を含むことが好ましい。
また、乾熱セットは、180〜200℃の温度で行うことが好ましい。
また、ポリエステル繊維は、高圧カチオン染料可染型ポリエステル繊維、常圧カチオン染料可染型ポリエステル繊維、および、常圧分散染料可染型ポリエステル繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、布帛は、ポリエステル繊維の他にさらに、ポリウレタン繊維を含むことが好ましい。
糸条についても、フィラメント糸(長繊維糸)、紡績糸(短繊維糸)のいずれであってもよく、さらには長繊維と短繊維を組み合わせた長短複合紡績糸であってもよい。フィラメント糸は、必要に応じて撚りをかけてもよいし、仮撚加工や液体撹乱処理などにより伸縮性や嵩高性を付与してもよい。
裸糸のまま用いる場合は、製織編時に2〜4倍程度に伸長させながら、他の繊維と引き揃えて混用することができる。
他の繊維と組み合わせて糸条とする場合は、ポリウレタン繊維を芯糸とし他の繊維をコイル状に巻き付けたカバードヤーン、あるいは、ポリウレタン繊維を芯糸とし他の繊維を鞘状に巻き付けながら紡績したコアヤーンの2つが代表的であるが、合撚糸や交絡糸などの形態であることもできる。なお、布帛化の段階でさらに他の繊維と組み合わせることも可能である。
上記の場合において、ポリウレタン繊維と組み合わせる他の繊維は、ポリエステル繊維以外の繊維であっても構わないが、布帛となった段階で、最終的に、ポリエステル繊維が好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上を占めるように設計することが肝要である。
また、塩の種類としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノール置換、ジエタノール置換などのアルカノール置換アンモニウム塩などを挙げることができる。
また、スルホン酸塩の分子量は1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超えると、処理液の粘度が高く、加工斑が生じる虞がある。さらには、染色の際に染着性を阻害したり、染色後にも残留して布帛の風合いが粗硬となったりする虞がある。
これらスルホン酸塩は1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
布帛に対するスルホン酸塩の付着量が上記範囲内となるように、処理液におけるスルホン酸塩の濃度、および、布帛に対する処理液の付与量を調節する。処理液におけるスルホン酸塩の濃度、および、布帛に対する処理液の付与量の具体的数値は、これらの相関関係(一方が大となれば一方は小となる)、さらに、布帛に対する処理液の付与方法(後述する)によって大きく異なり一概に特定することはできない。例えば、パディング法による場合、処理液におけるスルホン酸塩の濃度は通常0.1〜10.0重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%であり、布帛に対する処理液の付与量は通常5〜300重量%、好ましくは10〜200重量%である。
また、布帛がポリエステル繊維以外の繊維との混用品である場合には、ポリエステル繊維以外の繊維を染色可能な染料と組み合わせて染色する。このとき、組み合わせる染料に応じて一浴染め(同浴染め)、二浴染め(別浴染め)のいずれかを適宜選択すればよい。ポリエステル繊維と好ましく組み合わせられるポリウレタン繊維を染色可能な染料としては、分散染料や酸性染料を挙げることができるが、堅牢度が十分でないことから、通常、ポリウレタン繊維を積極的に染色することはない。ポリエステル繊維とポリウレタン繊維との混用品を分散染料で染色する場合は、染色温度を高くするなど、ポリウレタン繊維への染着(汚染)を抑え、ポリエステル繊維への染着を高める工夫が必要となる。
また、本発明の染色前処理方法の評価は、以下の方法に従った。
JIS Z 8715に準じて、布帛の表面色濃度を分光光度計(CE―3000、グレタグマクベス社製)を使用して測定し、白色度指数(W)を求めた。白色度指数の値が大きいほど、白さの度合いが大きいことを意味する。
ハンドリングによる官能評価を行い、以下の基準に従って判定した。
○:柔軟性がある
△:やや柔軟性に欠ける
×:硬く、柔軟性がない
20℃、65%RHの雰囲気下、引張試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所製)を使用して、試料長200mmの糸条を、チャック間距離100mm、速度300mm/分にて引っ張り、破断時の強度と伸度を求めた。
常圧カチオン染料可染型ポリエステル繊維のマルチフィラメント糸(三菱レイヨン株式会社製の“A.H.Y.”(登録商標)、84dtex/48f)とポリウレタン繊維の裸糸(旭化成せんい株式会社製の“ロイカ(登録商標)C804”、40dtex)をそれぞれ85重量%、15重量%の割合で含むトリコット編物を準備した。
この布帛を、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを2.0重量%含む常温水溶液(pH7.0)に5秒間浸漬後、マングルにて絞り(絞り率40重量%)、布帛に対して0.8重量%のベンゼンスルホン酸ソーダを付着させた後、195℃で3分間乾熱セットを行った。この状態の布帛について、白度を測定した。
次いで、分散染料としてDianix Blue HF−2G(ダイスタージャパン株式会社製、C.I.ディスパーズブルー 165−1)を布帛に対して2.0重量%、pH調整剤として酢酸を0.5cc/l、均染剤としてニッカサンソルト8000(日華化学株式会社製)を0.5g/l含む染色液(pH4.0)にて、120℃で60分間染色した。次いで、常法により還元洗浄後、150℃で30秒間乾燥した。得られた染布について、風合いを評価した。また、常圧カチオン染料可染型ポリエステル繊維のマルチフィラメント糸を抜き取り、破断強度および破断伸度を測定した。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを2.0重量%、酒石酸を0.05重量%含む常温水溶液(pH3.0)を用いた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを2.0重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH6.5)を用いた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを2.0重量%、酒石酸を0.05重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH3.1)を用いた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを0.2重量%、酒石酸を0.05重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH3.0)を用い、布帛に対して0.08重量%のベンゼンスルホン酸ソーダを付着させた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを4.0重量%、酒石酸を0.05重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH3.4)を用い、布帛に対して1.6重量%のベンゼンスルホン酸ソーダを付着させた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、常温水(pH7.0)を用いた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、酒石酸を0.05重量%含む常温水溶液(pH3.0)を用いた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH6.5)を用いた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを0.1重量%、酒石酸を0.05重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH3.0)を用い、布帛に対して0.04重量%のベンゼンスルホン酸ソーダを付着させた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
染色前処理液として、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを8.0重量%、酒石酸を0.05重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH3.6)を用い、布帛に対して3.2重量%のベンゼンスルホン酸ソーダを付着させた以外は、実施例1と同様にして染色前処理布および染布を得た。
レギュラーポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維のマルチフィラメント糸(帝人株式会社製の“テトロン”、56dtex/36f)とポリウレタン繊維の裸糸(旭化成せんい株式会社製の“ロイカ(登録商標)C804”、40dtex)をそれぞれ85重量%、15重量%の割合で含むトリコット編物を準備した。
この布帛を、分子量200のベンゼンスルホン酸ソーダを2.0重量%、酒石酸を0.05重量%、EDTAを0.05重量%含む常温水溶液(pH3.1)に5秒間浸漬後、マングルにて絞り(絞り率40重量%)、布帛に対して0.8重量%のベンゼンスルホン酸ソーダを付着させた後、195℃で3分間乾熱セットを行った。この状態の布帛について、白度を測定した。
次いで、分散染料としてDianix Blue HF−2G(ダイスタージャパン株式会社製、C.I.ディスパーズブルー 165−1)を布帛に対して2.0重量%、pH調整剤として酢酸を0.5cc/l、均染剤としてニッカサンソルト8000(日華化学株式会社製)を0.5g/l含む染色液(pH4.0)にて、135℃で30分間染色した。次いで、常法により還元洗浄後、150℃で30秒間乾燥した。得られた染布について、風合いを評価した。また、レギュラーポリエステル繊維のマルチフィラメント糸を抜き取り、破断強度および破断伸度を測定した。
染色前処理液として、常温水(pH7.0)を用いた以外は、実施例7と同様にして染色前処理布および染布を得た。
Claims (7)
- ポリエステル繊維を含む布帛を染色するに先立ち、布帛に対して行う前処理方法であって、布帛にスルホン酸塩を含む処理液を付与し、布帛に対し0.05〜2.0重量%のスルホン酸塩を付着させた後、乾熱セットすることを特徴とする前処理方法。
- 処理液が、スルホン酸塩の他にさらに、不揮発性酸を含むことを特徴とする、請求項1に記載の前処理方法。
- 処理液が、スルホン酸塩の他にさらに、キレート剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の前処理方法。
- 処理液が、スルホン酸塩の他にさらに、不揮発性酸とキレート剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の前処理方法。
- 乾熱セットを180〜200℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前処理方法。
- ポリエステル繊維が、高圧カチオン染料可染型ポリエステル繊維、常圧カチオン染料可染型ポリエステル繊維、および、常圧分散染料可染型ポリエステル繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前処理方法。
- 布帛が、ポリエステル繊維の他にさらに、ポリウレタン繊維を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の前処理方法。
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