JP2009007487A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、これを用いた成形品および成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体1〜12重量部、(C)リン系難燃剤2〜20重量部、(D)滴下防止剤0.01〜1.5重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
さらに詳しくは、優れた流動性を有すると共に、高温成形に耐えうる熱安定性、すなわち、高温成形しても耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
一方、電気・電子機器筐体、家電製品等の用途を中心に、樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。また、最近では携帯電話の電池パックや記憶媒体カバーなどの電気・電子機器筐体は、小型化、軽量化、高機能化等を目的として年々薄肉化されている。このため、電気・電子機器筐体用には、薄肉成形が可能な優れた流動性とともに高温成形に耐えうる熱安定性、すなわち、高温成形しても耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性に優れた樹脂材料が求められている。
また、滞留熱安定性の評価としては、成分品のシルバー発生の有無について記載されているが、発色性に関する記載がない。
引用文献1の実施例に記載の樹脂組成物は、300℃以上のシリンダー温度で射出成形した場合、発色性(着色剤による着色性)や衝撃強度の低下が大きく、実用性に劣る。
また、引用文献2の実施例に記載の樹脂組成物は、成形温度280℃で射出成形した場合、アイゾット衝撃強度試験において延性破壊することが記載されているものの、300℃以上のシリンダー温度で射出成形した場合、衝撃強度の低下が大きい。また、該樹脂組成物は、流動性が悪く薄肉成形品用途に適していないため、所望の流動性を得るために、ポリカーボネート樹脂の分子量を下げると、目的の燃焼性が得られなかった。
引用文献3の実施例に記載の樹脂組成物を用い、全体または部分的に0.8mm以下の平板部を有するような薄肉容器を成形した場合には、難燃性や流動性が不十分であり、本発明の目的である耐衝撃性も満足することができない。
さらに、引用文献4の実施例に記載の樹脂組成物を用いた場合でも、300℃以上のシリンダー温度で、全体または部分的に0.8mm以下の平板部を有するような薄肉容器を射出成形した場合、衝撃強度が低下し、特に成形品のゲート近傍において、層状剥離が発生し易く、実用価値の低いものであった。
(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体1〜12重量部、(C)リン系難燃剤2〜20重量部、(D)滴下防止剤0.01〜1.5重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(2)(1)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であることを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(3)(D)滴下防止剤がポリフルオロエチレンである、(1)または(2)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(4)前記(B)グラフト共重合体の数平均粒子径が2000nm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(5)さらに、(E)ケイ酸塩充填材を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.01〜12重量部を配合してなる、(1)〜(4)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(6)前記(E)ケイ酸塩充填材がタルクである、(5)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(7)前記ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンである、(3)〜(6)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(8)前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、(7)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(9)前記(C)リン系難燃剤がホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、(1)〜(8)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1)
一般式(2)
(10)前記(C)リン系難燃剤が下記の一般式(2)で表されるリン系化合物である(1)〜(9)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(2)
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
(12)肉厚0.8mm以下の平板部を有する、(11)に記載の成形品。
(13)前記成形品が電気・電子機器筐体である、(11)または(12)に記載の成形品。
(14)前記成形品が電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、(11)または(12)に記載の成形品。
(15)(1)〜(10)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる工程を含み、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であり、肉厚0.8mm以下の平板部を有する成形品の製造方法。
本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法、すなわち、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等が採用される。本発明では、溶融法で製造され、かつ、末端のOH基量が調整された芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは14,000〜28,000であり、より好ましくは16,000〜26,000であり、さらに好ましくは18,000〜24,000である。粘度平均分子量を14,000以上とすることにより、機械的強度が向上する傾向にあり、28,000以下とすることにより、流動性を良好に保ち、薄肉成形品の成形が容易になる傾向にある。
本発明に使用される(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES分析法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の1次粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体(以下、「複合ゴム系グラフト共重合体」と略記することがある。)は、公知文献、例えば、特開2004−359889号公報に開示された方法で製造することができる。
複合ゴムを構成するポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ジメチルシロキサン単位を構成単位として含有する重合体が好ましい。ポリオルガノシロキサンを構成するジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらの中でも、粒子径分布の制御しやすさから、主成分がオクタメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上併用できる。これらの中でも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性および成形品の光沢を考慮すると、特にn−ブチルアクリレートが好ましい。
多官能性アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量には特に制限はないが、ポリアルキル(メタ)アクリレート100重量%中の0.1〜2.0重量%であることが好ましく、0.3〜1.0重量%であることがより好ましい。多官能性アルキル(メタ)アクリレートの含有量を0.1重量%以上とすることにより、複合ゴムのモルフォロジーの変化による衝撃強度の低下を抑制できる傾向にあり、また、多官能性アルキル(メタ)アクリレートの含有量を2.0重量%以下とすることにより、衝撃強度がより向上する傾向にある。
具体的な製造方法としては、乳化グラフト重合による製造方法が挙げられる。この乳化グラフト重合による製造方法では、複合ゴムのラテックスにビニル系単量体を加え、ラジカル重合法により一段であるいは多段でグラフト重合して、複合ゴム系グラフト共重合体ラテックスを得る。次いで、この複合ゴム系グラフト共重合体ラテックスを、凝固剤を溶解した熱水中に投入し、塩析、固化することによりグラフト共重合体を分離し、粉末状で回収する。
本発明の樹脂組成物ペレットから切り出した厚さ100nmの超薄切片を、四酸化オスミウムの蒸気に60分、さらに四酸化ルテニウムの蒸気に60分さらに染色した後、TEM観察した。TEM観察により得られた画像を用い、マトリックス中に分散した複合ゴム系グラフト共重合体30個の1次粒子径(平均直径)を測定し、その数平均を本発明における数平均粒子径とした。
本発明における(C)リン系難燃剤としては、好ましくは、ホスファゼン化合物、下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記一般式(1)で表されるリン系化合物は、公知の方法で、オキシ塩化リン等から製造することができる。具体例としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレジルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル) ホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
一般式(2)のXがレゾルシノールから誘導される基の場合、フェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−tert−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が好ましい例として挙げられる。
本発明における(D)滴下防止剤は、燃焼時の樹脂の滴下を防止する性質を有する化合物をいい、具体例としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコンオイル、シリカなどが挙げられる。これらの中では、樹脂組成物の難燃性の観点から、フッ素系樹脂が好ましい。なお、(D)滴下防止剤は、後記(E)ケイ酸塩充填材を兼ねる構成であってもよい。
フィブリル形成能を有するポリフルオロエチレンとしては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jや、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンF201L等が、また、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30J、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1等の商品名で市販されている。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、難燃性、剛性、寸法安定性を改良するために(E)ケイ酸塩充填材を配合することが好ましい。該ケイ酸塩充填材は、燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止効果が大きく、樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。(E)ケイ酸塩充填材の具体例としては、カオリン、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ワラストナイト、天然シリカ、合成シリカ、各種ガラスフィラー、ゼオライトおよびケイソウ土等、またはこれらの混合物を挙げることができるが、好ましくはタルク、マイカ、ワラストナイトであり、さらに難燃性・寸法安定性のバランスから最も好ましいのはタルクである。タルクは、上記のケイ酸塩充填材の中でも、燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止効果が特に大きい。
タルクは、特に限定されないが、光透過式粒度分布測定器を用いる沈降法(浅田法)で測定した数平均粒子径で好ましくは1.0〜9.0μm、より好ましくは1.5〜8.0μm、さらに好ましくは2.0〜7.0μmのタルクである。数平均粒子径を1.0μm以上とすることにより、難燃性が向上する傾向にあり、9.0μm以下とすることにより、成形品の外観がより向上する傾向にある。
タルク中のFe成分およびAl成分の含有量は、それぞれFe2O3、Al2O3として0.001〜0.4重量%であることが好ましく、0.001〜0.2重量%がより好ましい。
また、(E)ケイ酸塩充填材を配合する場合は、上記(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜12重量部が好ましい。
(B)複合ゴム系グラフト共重合体の配合量が1重量部未満では耐衝撃性や難燃性が不足し、12重量部を越えると剛性が低下する。より好ましい(B)成分の配合量は2〜10重量部であり、さらに好ましくは3〜8重量部である。
(C)リン系難燃剤の配合量が2重量部未満では難燃性や流動性が不足し、20重量部を越えると機械的特性が低下したり、荷重撓み温度が低下し、モールドデボジットが発生することがある。より好ましい(C)成分の配合量は3〜18重量部であり、さらに好ましくは4〜15重量部である。
(D)滴下防止剤の配合量が0.01未満では難燃性が不十分であり、1.5重量部を越えると成形品の外観が低下する。より好ましい(D)成分の配合量は、0.05〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。滴下防止剤として、被覆ポリフルオロエチレンを配合する場合は、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレン量が上記の滴下防止剤の配合量の範囲内となるように配合する。
(E)ケイ酸塩充填材を0.01重量部以上添加することにより、剛性や寸法安定性をより効果的に改良することができ、12重量部以下とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。より好ましい(E)成分の配合量は1〜10重量部であり、さらに好ましくは2〜8重量部である。
他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの他の樹脂成分は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の一部として用いてもよく、用いる場合の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂中の50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。これら他の樹脂は、2種以上併用してもよい。
また、樹脂添加剤としては、抗酸化剤、熱安定剤、離型剤、着色剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、金属繊維などの(E)ケイ酸塩充填材以外の無機充填材などが挙げられる。
これらの樹脂添加剤は、2種類以上併用してもよい。
上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。前記2つのフェノール系抗酸化剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社よりイルガノックス1010およびイルガノックス1076の名称で市販されている。
抗酸化剤は複数種併用することもできる。
熱安定剤は、複数種併用することもできる。
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、ジフェニルメタン染料、アクリジン染料、シアニン染料、ニトロ染料、ニグロシン等が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、べんがら、コバルトブルー等の酸化物顔料、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、硫化亜鉛、カドミウムイエロー等の硫化物顔料、ホワイトカーボン、タルク等の珪酸塩顔料、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、ニトロ顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。これらの中でも、無機顔料は樹脂組成物の難燃性を向上させる場合があり、特に、カーボンブラックが、他の着色剤に比べ難燃性向上効果が高い。また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
(C)/(D)比(重量比)としては、0.1〜1000であることが好ましく、1〜100であることがより好ましく、2〜60であることがさらにより好ましい。((B)+(C))量としては、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、10重量部以上が好ましく、12重量部以上がより好ましく、14重量部以上がさらに好ましい。
また、各成分の分散性をより良好とし、(D)滴下防止剤、特にポリフルオロエチレンを配合する場合は、ポリフルオロエチレンのフィブリルによる燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止能をより向上させ、安定な混練を行うために、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を慎重に選択する必要がある。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、ベント口から脱揮できる設備を有する2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法が好ましい。(C)リン系難燃剤以外の成分、すなわち、(A)、(B)、(D)および任意の添加成分は、タンブラー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー等の混合機を使用して予め混合しておくことが好ましい。溶融混練に際しては、バレル温度を好ましくは350℃以下、より好ましくは240〜320℃に設定する。このような温度条件とすることにより、難燃性、衝撃強度等について、より性能を高めることができる。また、(C)リン系難燃剤が液状である場合、押出機の途中のブロックから、ギアポンプ、プランジャーポンプ等の各種ポンプにて添加することが有効である。溶融混練中は、押出機の最大トルクの好ましくは60〜90%の能力で運転できるように、バレル温度、スクリュー回転数を適宜調整することが好ましい。このような手段を採用することにより、難燃性、衝撃強度等について、より性能を高めることができる。
本発明で規定する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の当該組成の範囲内において、上記のような条件の何れかを採用することにより、または、複数の条件を組合わせることにより、難燃性以外の物性を良好に維持したまま、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性をV−0またはV−1レベルとすることがより容易になる。
例えば、本発明の薄肉成形品とは、電子・電気機器筐体、具体的には、電池パック(例えば、携帯電話の電池パックに用いる箱や蓋)や小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器(例えば、メモリーカード、SDカード等のカバーなど)等に使用される樹脂容器であり、厚さ0.8mm以下の平板部を全体または部分的に有する樹脂容器をいう。好ましい薄肉成形品の形態としては、例えば、図1に示すような、容器本体(箱体)とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、容器本体(箱体)は、周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.8mm以下の平板部を有する樹脂容器である。また、通常電気・電子機器部品の使用態様等に基づき、上記平板部の面積は1〜100cm2、立上り片の高さは0.5〜10mmであり、立上り片の肉厚は、容器本体の剛性を高め、収容物の収容効率を高める観点から、通常は、0.3〜1.2mmである。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製「ユーピロン(登録商標)H−2000」、粘度平均分子量20,000(以下、PCと略す)
(b−1)メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ジメチルシロキサン共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2100」、共重合体中のSi含有量2.6重量%、数平均粒子径80
0nm
(b−2)メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ジメチルシロキサン共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2001」、共重合体中のSi含有量3.0重量%、数平均粒子径20
0nm
(b−3)「メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ジメチルシロキサン共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2030」、共重合体中のSi含有量9.5重量%、数平均粒子径2
00nm
(b−4)ブタジエン・アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体(多層構造重合体、コア層はブタジエン、シェル層はアクリル酸アルキルとメタクリル酸アルキルの共重合体である:ローム・アンド・ハース社製「パラロイドEXL−2603」
(b−5)アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体(多層構造重合体、コア層はアクリル酸アルキル、シェル層はメタクリル酸アルキルである:ローム・アンド・ハース社製「パラロイドEXL−2315」
(c−1)縮合リン酸エステル:大八化学工業(株)製「PX200」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))
(c−2)縮合リン酸エステル:(株)ADEKA製「アデカスタブ FP700」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)
(c−3)トリフェニルホスフェート:大八化学工業(株)製
(c−4)臭素化ポリカーボネートオリゴマー:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)FR−53」
(d−1)アクリル樹脂で被覆されたポリテトラフルオロエチレン:三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」、(被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は、50重量%である。)
(d−2)被覆されていないポリテトラフルオロエチレン:ダイキン工業(株)製「ポリフロンF−201L」
なお、(d−1)および(d−2)の配合量は、被覆PTFE中のPTFE含量の効果を正確に把握するため、PCに対するPTFE自体の配合量が、実施例および比較例を通してほぼ同一となるような量とした。
(e)タルク:林化成社製「ミクロンホワイト5000S」、数平均粒子径2.8μm、表面処理なし
(F)離型剤
(f)ペンタエリスリトールテトラステアレート:コグニス社製「VPG861」
(G)熱安定剤
(g)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:(株)ADEKA製「アデカスタブ2112」
(I)着色剤
(h)カーボンブラック:三菱化学(株)製「三菱カーボンブラック#1000」
表1に示した割合(重量比)となるよう、(C)難燃剤アデカスタブFP700以外の原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーより投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。なお、(C)難燃剤は、予め80℃に加温し、2軸押出機のホッパー側から数えて3番目のブロックからギアポンプにて添加した。
表1に示した割合(重量比)となるよう、各原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーより投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。
(1)平均粒子径の測定
上記に記載の方法で得られた各樹脂組成物ペレット中央部のストランド方向に直交する面が端面となるように切片を切り出した。この切片の該端面より、試料冷却装置(クライオユニット)を装着したウルトラミクロトーム(Leica社、Ultracut UCT)で、ダイヤモンドナイフを用いて、該直交面を表面とする超薄切片を作成した。設定した切削条件は、試料室温度−105℃、試料厚さ100nmである。
超薄切片を銅製のグリッド上に積載した後、該切片の表面を四酸化オスミウムの蒸気に60分間さらし、さらに四酸化ルテニウムの蒸気に60分間さらして染色した。染色された超薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、1200EXII型)、加速電圧100kVで観察した。観察時に写真撮影を行い、電子顕微鏡用フィルムFG(富士写真フイルム社製:寸法5.9×8.2cm)に画像を記録した。
写真撮影により、ネガフィルム上に記録された画像を、フィルムスキャナー(コニカミノルタフォトイメージング社製、Dimage Scan Multi F-3000型)でデジタル化した。得られたモノクロ画像は、Adobe社製、Photoshop Ver.7.0を用いコントラストを調整した後、(株)日本ローバー製、Image-Pro Plus Ver.4.5.1を用いて、マトリックス中に分散した複合ゴム系グラフト共重合体の30個の1次粒子径(平均直径)を測定し、その数平均を数平均粒子径とした。
(d−1)〜(d−3)のシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体について、試料を硫酸分解処理およびアルカリ溶融処理した後、ICP/AES(JOBIN YVON社製、ICP発光分光分析装置 Ultima 2C)によりSiの定量を行った。ここで、ICP/AES法とは、アルゴン等の気体に高電圧をかけることによって気体をプラズマ化させ、さらに、高周波数の変動磁場によってプラズマ内に過電流によるジュール熱を発生させることにより得られる高温のプラズマ(誘導結合プラズマ:ICP)を用いた分析法である。この高温の誘導結合プラズマに試料を導入し、試料を原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際の発光スペクトルから、元素の同定・定量を行うことができる。
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機械工業社製、SGMIIサイキャップ)にてシリンダー温度280℃または330℃、金型温度80℃の条件で射出成形を行い、ISO179規格において試験片の厚みを3.0mmに変更した試験片を得た。ノッチの形状はISO179規格に従いノッチ半径0.25mm、残り幅約8.0mmになるよう切削した。衝撃試験はISO179規格に準じて行った。シャルピー衝撃強度は、値が高い方が好ましい。
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製、J50EP)にてシリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚0.8mmおよび1.0mmの試験片をそれぞれ得た。得られた試験片について、UL94規格に準拠して燃焼試験を行った。V−0が最も好ましく、V−1、V−2と順に劣り、NGはUL94規格の基準にあてはまらないものである。
上記(4)難燃性評価と同一条件作製した射出成形品について目視評価をした。表面外観の漆黒性が高いものを○、漆黒感がないものを×とした。
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機(ソディックプラステック社製、TR100H)にてシリンダー温度340℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、図1に示す電池パックの蓋および箱を成形した。図1中、四角で囲んだ数字は、それぞれの部位の厚さを示している。また、四角で囲んだ以外の数字は、成形品各部分の長さを示している。なお、単位は「mm」である。得られた箱に、素電池を組み込み超音波溶着し、蓋をして電池パックとした。得られた電池パックを、1.65mの高さからコンクリート面に落下を各6面について実施した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返して試験を行い、割れが生じない場合を○、割れが生じた場合を×とした。なお、流動性が悪く、金型内に完全に樹脂を充填できなかった場合は「充填不可」を記した。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は難燃性および発色性に優れ、340℃というポリカーボネート樹脂の成形温度としては比較的高い温度で成形しても、得られる薄肉成形品の耐衝撃性が良好であり、耐衝撃性、難燃性、発色性の全てをバランス良く満足した(実施例1〜7)。特に、高い温度で成形を行った場合、樹脂の劣化による成形品強度の低下や、シルバー、ポリフルオロエチレンの凝集による白点等の外観不良が発生する傾向にあるが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、このような問題が生じなかった。
一方、本発明で規定する複合ゴム系グラフト共重合体以外のグラフト共重合体を配合した場合(比較例3、4)も、実施例2と比較例3、4の比較例から明らかな通り、耐衝撃性、難燃性、発色性の全てをバランスよく満足することができなかった。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のような性能を有するため、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等のカード型情報記録媒体等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器として好適である。
Claims (15)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体1〜12重量部、(C)リン系難燃剤2〜20重量部、(D)滴下防止剤0.01〜1.5重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であることを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (D)滴下防止剤がポリフルオロエチレンである、請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(B)グラフト共重合体の数平均粒子径が2000nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、(E)ケイ酸塩充填材を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.01〜12重量部配合してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(E)ケイ酸塩充填材がタルクである、請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンである、請求項3〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、請求項7に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(C)リン系難燃剤がホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1)
一般式(2)
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
- 肉厚0.8mm以下の平板部を有する、請求項11に記載の成形品。
- 前記成形品が電気・電子機器筐体である、請求項11または12に記載の成形品。
- 前記成形品が電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、請求項11または12に記載の成形品。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる工程を含み、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であり、肉厚0.8mm以下の平板部を有する成形品の製造方法。
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