JP2009007487A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、これを用いた成形品および成形品の製造方法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、これを用いた成形品および成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた流動性と熱安定性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供する
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体1〜12重量部、(C)リン系難燃剤2〜20重量部、(D)滴下防止剤0.01〜1.5重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関し、特に、薄肉成形品の製造に優れた、難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
さらに詳しくは、優れた流動性を有すると共に、高温成形に耐えうる熱安定性、すなわち、高温成形しても耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性などに優れ、その優れた特性から、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野等の材料として、工業的に広く利用されている。
一方、電気・電子機器筐体、家電製品等の用途を中心に、樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。また、最近では携帯電話の電池パックや記憶媒体カバーなどの電気・電子機器筐体は、小型化、軽量化、高機能化等を目的として年々薄肉化されている。このため、電気・電子機器筐体用には、薄肉成形が可能な優れた流動性とともに高温成形に耐えうる熱安定性、すなわち、高温成形しても耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性に優れた樹脂材料が求められている。
このような要求に対し、例えば、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)リン酸エステル系の難燃剤、(C)ポリテトラフルオロエチレン、(D)鱗片状の無機充填剤、(E)ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴムに一種または二種以上のビニル系単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体、または該複合ゴム系グラフト共重合体とビニル系重合体との混合物を配合してなる樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。しかし特許文献1には、(E)成分の複合ゴム系グラフト共重合体中のポリオルガノシロキサンゴム成分の含有量に関する記載がなく、燃焼性の評価に使用されている試験片の肉厚も1.6mmと厚く、薄肉試験片の燃焼性に関する記載もない。
(A)ポリカーボネート樹脂、(B)複合ゴム系グラフト共重合体、(C)ハロゲン非含有リン酸エステル化合物、および(D)ポリテトラフルオロエチレンを含有する樹脂組成物であって、(B)複合ゴム系グラフト共重合体が、ポリオルガノシロキサンゴム成分1〜99重量%とポリアルキルアクリレートゴム成分99〜1重量%とが分離できないように相互に絡み合った構造を有し、且つ平均粒子径が0.01μm〜0.6μmである複合ゴムに1種または2種以上のビニル系単量体がグラフト重合されてなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。しかし、(B)成分中のポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキルアクリレートゴム成分の含有比は上記のように幅広く記載されており、ポリオルガノシロキサンゴム成分の含有量に関する記載はない。
また、滞留熱安定性の評価としては、成分品のシルバー発生の有無について記載されているが、発色性に関する記載がない。
ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂100重量部に対し、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300〜2000nmであり、ポリオルガノシロキサン含有量が20〜70質量%、複合ゴム含有量が70〜90質量%であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体を1〜100重量部含有した樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。しかし、特許文献3には、高温成形された試験片の耐衝撃性に関する記載がない。また、難燃性評価に使用された試験片の厚みは1.6mmと厚く、薄肉試験片の難燃性に関する記載もない。
ポリカーボネート系樹脂(A)99.5〜50重量%と液晶性樹脂(B)0.5〜50重量%の樹脂組成物100重量部に対し、リン酸エステルを0.1〜30重量部配合してなる、その最大投影面の厚さが0.6mm以下である部分が100mm2以上ある携帯機器の電池パック筐体部材用樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。しかし、特許文献4には、難燃性、耐衝撃性および外観に関する具体的な記載はない。
特開平7−228764号公報 特開平11−21441号公報 特開2004−359889号公報 特開2002−348460号公報
本発明の目的は、全体または部分的に肉厚0.8mm以下の平板部を有するような薄肉成形品の成形が可能な優れた流動性を有すると共に、高温成形に耐えうる熱安定性、すなわち、高温で成形しても耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供することにある。
上記引用文献1〜4について、本発明者らが検討した結果、以下のような問題があることがわかった。
引用文献1の実施例に記載の樹脂組成物は、300℃以上のシリンダー温度で射出成形した場合、発色性(着色剤による着色性)や衝撃強度の低下が大きく、実用性に劣る。
また、引用文献2の実施例に記載の樹脂組成物は、成形温度280℃で射出成形した場合、アイゾット衝撃強度試験において延性破壊することが記載されているものの、300℃以上のシリンダー温度で射出成形した場合、衝撃強度の低下が大きい。また、該樹脂組成物は、流動性が悪く薄肉成形品用途に適していないため、所望の流動性を得るために、ポリカーボネート樹脂の分子量を下げると、目的の燃焼性が得られなかった。
引用文献3の実施例に記載の樹脂組成物を用い、全体または部分的に0.8mm以下の平板部を有するような薄肉容器を成形した場合には、難燃性や流動性が不十分であり、本発明の目的である耐衝撃性も満足することができない。
さらに、引用文献4の実施例に記載の樹脂組成物を用いた場合でも、300℃以上のシリンダー温度で、全体または部分的に0.8mm以下の平板部を有するような薄肉容器を射出成形した場合、衝撃強度が低下し、特に成形品のゲート近傍において、層状剥離が発生し易く、実用価値の低いものであった。
かかる状況のもと、上記の諸問題を解決するため、本発明者が検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、複合ゴム系グラフト共重合体中のSi含有量が特定の範囲であり、特定の数平均粒子径を有するシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、リン系難燃剤および滴下防止剤を特定量配合することにより、薄肉成形が可能な優れた流動性、および、高温成形に耐えうるだけの熱安定性を有し、かつ、耐衝撃性等の機械的特性、難燃性、および発色性の全てに優れた電気・電子機器筐体用樹脂材料として好適な、難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
具体的には、本発明は下記の手段により達成された。
(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体1〜12重量部、(C)リン系難燃剤2〜20重量部、(D)滴下防止剤0.01〜1.5重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(2)(1)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であることを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(3)(D)滴下防止剤がポリフルオロエチレンである、(1)または(2)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(4)前記(B)グラフト共重合体の数平均粒子径が2000nm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(5)さらに、(E)ケイ酸塩充填材を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.01〜12重量部を配合してなる、(1)〜(4)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(6)前記(E)ケイ酸塩充填材がタルクである、(5)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(7)前記ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンである、(3)〜(6)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(8)前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、(7)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(9)前記(C)リン系難燃剤がホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、(1)〜(8)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1)
Figure 2009007487
(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
一般式(2)
Figure 2009007487
(一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
(10)前記(C)リン系難燃剤が下記の一般式(2)で表されるリン系化合物である(1)〜(9)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(2)
Figure 2009007487
(一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
(12)肉厚0.8mm以下の平板部を有する、(11)に記載の成形品。
(13)前記成形品が電気・電子機器筐体である、(11)または(12)に記載の成形品。
(14)前記成形品が電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、(11)または(12)に記載の成形品。
(15)(1)〜(10)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる工程を含み、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であり、肉厚0.8mm以下の平板部を有する成形品の製造方法。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、全体または部分的に肉厚0.8mm以下の平板部を有する薄肉成形品の成形が可能な優れた流動性を有すると共に、高温成形に耐えうる熱安定性を有し、高温成形しても耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性に優れている。従って、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器等の、薄肉の電気・電子機器筐体用樹脂材料として好適である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
なお、本発明における薄肉成形品とは、電気・電子機器筐体、例えば、電池パック(携帯電話の電池パック等)または小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器に使用される成形品であり、全体がまたは部分的に0.8mm以下の平板部を有する成形品をいう。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法、すなわち、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等が採用される。本発明では、溶融法で製造され、かつ、末端のOH基量が調整された芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、難燃性をさらに高める目的で上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物および/またはシロキサン構造を有し、その両末端に、フェノール性のOH基を含有するポリマーまたはオリゴマーを使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、または3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチンなどの化合物を前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよい。この場合、前記化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−およびp−メチルフェノール、m−およびp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは14,000〜28,000であり、より好ましくは16,000〜26,000であり、さらに好ましくは18,000〜24,000である。粘度平均分子量を14,000以上とすることにより、機械的強度が向上する傾向にあり、28,000以下とすることにより、流動性を良好に保ち、薄肉成形品の成形が容易になる傾向にある。
(B)シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体
本発明に使用される(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES分析法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の1次粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体(以下、「複合ゴム系グラフト共重合体」と略記することがある。)は、公知文献、例えば、特開2004−359889号公報に開示された方法で製造することができる。
本発明における(B)複合ゴム系グラフト共重合体の複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが互いに分離できないように絡み合った構造を有するものである。
複合ゴムを構成するポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ジメチルシロキサン単位を構成単位として含有する重合体が好ましい。ポリオルガノシロキサンを構成するジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらの中でも、粒子径分布の制御しやすさから、主成分がオクタメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
ポリオルガノシロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有するシロキサンを構成成分として含有するものが好ましい。ここで、ビニル重合性官能基を含有するシロキサンとは、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものである。ビニル重合性官能基を含有するシロキサンの中でも、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。これらビニル重合性官能基を含有するシロキサンは単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン系架橋剤によって架橋されていてもよい。シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンの製造方法としては特に制限はなく、例えば、以下の製造方法を採用できる。まず、ジメチルシロキサンと、必要に応じてビニル重合性官能基含有シロキサンとを含む混合物または、さらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させてラテックスを調製し、そのラテックスを微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和してポリオルガノシロキサンラテックスを得る。ラテックスの調製には、ホモジナイザーを使用する方法が、粒子径分布が狭くなる傾向にあり好ましい。
上記製造方法で使用される乳化剤としてはジメチルシロキサンを乳化できれば特に制限されないが、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムが好ましい。
ポリオルガノシロキサンの重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ミセル形成能のない硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸を使用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径分布を狭くすることができ、さらに、ポリオルガノシロキサンラテックス中の乳化剤成分に起因する成形品の外観不良を低減させることができるという点で好ましい。
ポリオルガノシロキサンの数平均粒子径は、複合ゴム系グラフト共重合体の数平均粒子径を300nm以上とするために、150nm以上であることが好ましく、150〜2000nmであることがより好ましく、250〜1000nmであることがさらに好ましい。ポリオルガノシロキサンの数平均粒子径を150nm以上とすることにより、上記粒子径の複合ゴム系グラフト共重合体を得るのに要するポリアルキル(メタ)アクリレート量を少なくすることができるため、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
複合ゴムを構成するポリアルキル(メタ)アクリレートとは、アルキル(メタ)アクリレート単位と多官能性アルキル(メタ)アクリレート単位とを構成成分として含有する重合体である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上併用できる。これらの中でも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性および成形品の光沢を考慮すると、特にn−ブチルアクリレートが好ましい。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上併用できる。
多官能性アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量には特に制限はないが、ポリアルキル(メタ)アクリレート100重量%中の0.1〜2.0重量%であることが好ましく、0.3〜1.0重量%であることがより好ましい。多官能性アルキル(メタ)アクリレートの含有量を0.1重量%以上とすることにより、複合ゴムのモルフォロジーの変化による衝撃強度の低下を抑制できる傾向にあり、また、多官能性アルキル(メタ)アクリレートの含有量を2.0重量%以下とすることにより、衝撃強度がより向上する傾向にある。
上述したポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートからなる複合ゴムを製造するには、まず、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中に、上記アルキル(メタ)アクリレート成分および多官能性アルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、ポリオルガノシロキサン中に含浸させた後、公知の過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤が用いられ、中でもレドックス系重合開始剤が好ましい。
上記複合ゴムの存在下で1種以上のビニル系単量体をラジカル重合して、複合ゴムにビニル系重合体からなるグラフト部を形成することで複合ゴム系グラフト共重合体が得られる。
具体的な製造方法としては、乳化グラフト重合による製造方法が挙げられる。この乳化グラフト重合による製造方法では、複合ゴムのラテックスにビニル系単量体を加え、ラジカル重合法により一段であるいは多段でグラフト重合して、複合ゴム系グラフト共重合体ラテックスを得る。次いで、この複合ゴム系グラフト共重合体ラテックスを、凝固剤を溶解した熱水中に投入し、塩析、固化することによりグラフト共重合体を分離し、粉末状で回収する。
上記ビニル系単量体としては、特に制限はないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等が挙げられる。
また、上記複合ゴムとビニル系単量体のラジカル重合には、上記のポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートからなる複合ゴムの製造に用いられるものと同様のラジカル重合開始剤を使用することができる。
本発明で用いる(B)複合ゴム系グラフト共重合体の数平均粒子径は、300nm以上であり、好ましくは400nm以上であり、さらに好ましくは500nm以上である。(B)複合ゴム系グラフト共重合体の数平均粒子径の上限は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に定めるものではないが通常、2000nm以下であり、好ましくは1500nm以下であり、さらに好ましくは1000nm以下である。複合ゴム系グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm未満の場合、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の発色と低温時の耐衝撃性とのバランスが低下してしまう。また、数平均粒子径を2000nm以下とすることにより、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の耐衝撃性および表面外観がより向上する傾向にある。なお、本発明における複合ゴム系グラフト共重合体の数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によりマトリックスの芳香族ポリカーボネート樹脂中に分散した、複合ゴム系グラフト共重合体の1次粒子径を測定して求めた値である。具体的には、例えば、次の要領で求めることができる。
本発明の樹脂組成物ペレットから切り出した厚さ100nmの超薄切片を、四酸化オスミウムの蒸気に60分、さらに四酸化ルテニウムの蒸気に60分さらに染色した後、TEM観察した。TEM観察により得られた画像を用い、マトリックス中に分散した複合ゴム系グラフト共重合体30個の1次粒子径(平均直径)を測定し、その数平均を本発明における数平均粒子径とした。
(B)複合ゴム系グラフト共重合体中の複合ゴム含有量は、複合ゴム系グラフト共重合体100重量%中、70〜90重量%であることが好ましい。複合ゴムの含有量を70重量%以上とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にあり、90重量%以下とすることにより、耐衝撃性を良好に保ちつつ、発色性および分散性がより向上する傾向にある。
また、(B)複合ゴム系グラフト共重合体中のSi含有量は、ICP/AES法で検出される値として9重量%以下であり、好ましくは、7重量%以下、より好ましくは、5重量%以下である。含有量を9重量%以下とすることにより、発色性を良好に保つことができる。Si含有量の下限は、特に定めるものではないが、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、1重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましい。
(C)リン系難燃剤
本発明における(C)リン系難燃剤としては、好ましくは、ホスファゼン化合物、下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ホスファゼン化合物としては、例えば、環状フェノキシホスファゼン化合物、鎖状フェノキシホスファゼン化合物および架橋フェノキシホスファゼン化合物が挙げられる。
Figure 2009007487
(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
上記一般式(1)で表されるリン系化合物は、公知の方法で、オキシ塩化リン等から製造することができる。具体例としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレジルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル) ホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
Figure 2009007487
(一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に0または各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
上記一般式(2)で表されるリン系化合物は、tが1〜5の縮合リン酸エステルであるが、tが異なる複数種類の縮合リン酸エステル混合物の場合には、tはそれらの混合物の平均値として算出する。Xは、アリーレン基を示し、好ましくはレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基である。また、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示すが、好ましくは、各々独立に、フェノール、クレゾール、キシレノールから誘導される基である。
上述した(C)リン系難燃剤の中でも、本発明においては、作業性や熱安定性に優れ、成形時の発生ガス量も少ないという点から、一般式(2)で表される化合物がより好ましい。特に好ましくは、一般式(2)でXはレゾルシノールまたはビスフェノールAから誘導される基であり、p、q、rおよびsは、各々1であり、R4、R5、R6およびR7は、それぞれクレゾールまたはキシレノールから誘導される基である。
一般式(2)のXがレゾルシノールから誘導される基の場合、フェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−tert−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が好ましい例として挙げられる。
一般式(2)のXがビスフェノールAから誘導される基の場合は、フェニル・ビスフェノール・ポリホスフェート、クレジル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・ビスフェノール・ポリホスフェート、キシリル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル−p−tert−ブチルフェニル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ビスフェノールポリホスフェート、クレジル・キシリル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・ビスフェノールポリホスフェート等が好ましい例として挙げられる。
本発明の(C)リン系難燃剤としては、例えば、大八化学工業(株)より、「TPP」(トリフェニルホスフェート)、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、「PX200」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))、(株)ADEKAより「アデカスタブFP700」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
(D)滴下防止剤
本発明における(D)滴下防止剤は、燃焼時の樹脂の滴下を防止する性質を有する化合物をいい、具体例としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコンオイル、シリカなどが挙げられる。これらの中では、樹脂組成物の難燃性の観点から、フッ素系樹脂が好ましい。なお、(D)滴下防止剤は、後記(E)ケイ酸塩充填材を兼ねる構成であってもよい。
フッ素系樹脂としては、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、フッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のポリフルオロエチレンが挙げられる。これらの中では、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体がより好ましく、ポリテトラフルオロエチレンがさらに好ましい。
ポリフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するものが好ましい。このようなポリフルオロエチレンは、樹脂中に容易に分散し、かつ重合体同士が結合して繊維状構造を形成する傾向を示すため、滴下防止能が高い。
フィブリル形成能を有するポリフルオロエチレンとしては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jや、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンF201L等が、また、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30J、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1等の商品名で市販されている。
また、成形品の外観を向上させるためには、有機系重合体で被覆された特定の被覆ポリフルオロエチレン(以下、「被覆ポリフルオロエチレン」と略記することがある)を使用することが好ましい。被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有量は40〜95重量%であることが好ましく、43〜80重量%がより好ましく、45〜70重量%がさらに好ましく、47〜60重量%が特に好ましい。被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有量を40重量%以上とすることにより、難燃性がより向上する傾向にあり、95重量%以下とすることにより、成形品表面の白点異物の発生を抑制し、外観をより良好にできる傾向にある。
被覆ポリフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
ポリフルオロエチレンを被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではないが、樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましい。
有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明で用いる有機系重合体は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性の観点から、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を含む有機系重合体が好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む有機系重合体がより好ましい。また、本発明で用いる上記有機系重合体中の、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体の含有量は10重量%以上であることが好ましい。
このような被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば、三菱レイヨン(株)製のメタブレンA−3800、A−3700、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等が挙げられる。
(E)ケイ酸塩充填材
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、難燃性、剛性、寸法安定性を改良するために(E)ケイ酸塩充填材を配合することが好ましい。該ケイ酸塩充填材は、燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止効果が大きく、樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。(E)ケイ酸塩充填材の具体例としては、カオリン、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ワラストナイト、天然シリカ、合成シリカ、各種ガラスフィラー、ゼオライトおよびケイソウ土等、またはこれらの混合物を挙げることができるが、好ましくはタルク、マイカ、ワラストナイトであり、さらに難燃性・寸法安定性のバランスから最も好ましいのはタルクである。タルクは、上記のケイ酸塩充填材の中でも、燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止効果が特に大きい。
タルクは、特に限定されないが、光透過式粒度分布測定器を用いる沈降法(浅田法)で測定した数平均粒子径で好ましくは1.0〜9.0μm、より好ましくは1.5〜8.0μm、さらに好ましくは2.0〜7.0μmのタルクである。数平均粒子径を1.0μm以上とすることにより、難燃性が向上する傾向にあり、9.0μm以下とすることにより、成形品の外観がより向上する傾向にある。
タルク中のFe成分およびAl成分の含有量は、それぞれFe23、Al23として0.001〜0.4重量%であることが好ましく、0.001〜0.2重量%がより好ましい。
本発明で使用される(E)ケイ酸塩充填材は、(A)芳香族ポリカーボネートや(B)複合ゴム系グラフト共重合体との親和性あるいは界面結合力を高める目的で、種々のカップリング剤を使用することもできる。カップリング剤としては通常はシラン系、クロム系、チタン系等のカップリング剤が挙げられる。中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、ビニルトリクロロシラン化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン化合物等のシラン系カップリング剤を含むものが好ましい。この際、非イオン・陽イオン・陰イオン型等各種の界面活性剤や脂肪酸、金属石鹸、各種樹脂等の分散剤による処理を合わせて行うことが、機械的強度および混練性の向上の点で好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を構成する成分(A)〜(E)の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)複合ゴム系グラフト共重合体が1〜12重量部、(C)リン系難燃剤が2〜20重量部、(D)滴下防止剤が0.01〜1.5重量部である。
また、(E)ケイ酸塩充填材を配合する場合は、上記(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜12重量部が好ましい。
(B)複合ゴム系グラフト共重合体の配合量が1重量部未満では耐衝撃性や難燃性が不足し、12重量部を越えると剛性が低下する。より好ましい(B)成分の配合量は2〜10重量部であり、さらに好ましくは3〜8重量部である。
(C)リン系難燃剤の配合量が2重量部未満では難燃性や流動性が不足し、20重量部を越えると機械的特性が低下したり、荷重撓み温度が低下し、モールドデボジットが発生することがある。より好ましい(C)成分の配合量は3〜18重量部であり、さらに好ましくは4〜15重量部である。
(D)滴下防止剤の配合量が0.01未満では難燃性が不十分であり、1.5重量部を越えると成形品の外観が低下する。より好ましい(D)成分の配合量は、0.05〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。滴下防止剤として、被覆ポリフルオロエチレンを配合する場合は、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレン量が上記の滴下防止剤の配合量の範囲内となるように配合する。
(E)ケイ酸塩充填材を0.01重量部以上添加することにより、剛性や寸法安定性をより効果的に改良することができ、12重量部以下とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。より好ましい(E)成分の配合量は1〜10重量部であり、さらに好ましくは2〜8重量部である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)〜(E)成分のほかに、他の樹脂および各種の樹脂添加剤を配合することができる。
他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの他の樹脂成分は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の一部として用いてもよく、用いる場合の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂中の50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。これら他の樹脂は、2種以上併用してもよい。
また、樹脂添加剤としては、抗酸化剤、熱安定剤、離型剤、着色剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、金属繊維などの(E)ケイ酸塩充填材以外の無機充填材などが挙げられる。
これらの樹脂添加剤は、2種類以上併用してもよい。
本発明に用いてもよい抗酸化剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系抗酸化剤が挙げられる。具体例としては、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。前記2つのフェノール系抗酸化剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社よりイルガノックス1010およびイルガノックス1076の名称で市販されている。
抗酸化剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。抗酸化剤の配合量を0.01重量部以上とすることにより、抗酸化剤としての効果がより発揮されやすい傾向にあり、2重量部を越えても抗酸化剤として更なる効果は得られないことから、2重量部以下が経済的である。
抗酸化剤は複数種併用することもできる。
本発明に用いてもよい熱安定剤としては、亜リン酸エステル系安定剤が好ましく、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイトおよびトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが特に好ましい。
熱安定剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部であり、より好ましくは0.02〜1重量部である。配合量を0.01重量部以上とすることにより、熱安定剤としての効果がより発揮されやすい傾向にあり、2重量部を超えて添加してもそれ以上の熱安定剤としての効果は得られないことから、2重量部以下が経済的である。
熱安定剤は、複数種併用することもできる。
本発明に用いてもよい離型剤としては、好ましくは、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく用いられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
離型剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。2重量部以下とすることにより、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等をより効果的に抑止できる傾向にある。該離型剤は、複数種併用することもできる。
本発明に使用可能な着色剤としては、熱可塑性樹脂成形品に一般的に用いられる、染料、無機顔料、有機顔料が挙げられる。
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、ジフェニルメタン染料、アクリジン染料、シアニン染料、ニトロ染料、ニグロシン等が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、べんがら、コバルトブルー等の酸化物顔料、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、硫化亜鉛、カドミウムイエロー等の硫化物顔料、ホワイトカーボン、タルク等の珪酸塩顔料、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、ニトロ顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が挙げられる。これらの中でも、無機顔料は樹脂組成物の難燃性を向上させる場合があり、特に、カーボンブラックが、他の着色剤に比べ難燃性向上効果が高い。また、着色剤は、押出時のハンドリング性改良目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し3重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。また、酸化チタン等の無機顔料は、着色目的以外(例えば、遮光性付与)に使用される場合があり、その場合の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、通常20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、(C)リン系難燃剤、(D)滴下防止剤、および必要により配合される(E)ケイ酸塩充填材や樹脂添加剤等を一括して溶融混練する方法や、(2)(C)リン系難燃剤が液状である場合には、予め(C)リン系難燃剤以外の成分を溶融混練した後に、別途50〜120℃で加温しておいた液状の(C)リン系難燃剤を溶融状態の樹脂に添加して、溶融混練する方法が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性をV−0またはV−1とすることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性は、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の組成比や製造条件、原材料の種類や製造方法などの条件に依存するが、例えば、(C)リン系難燃剤と(D)滴下防止剤の配合比率[(C)/(D)比]、(B)シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体および(C)リン系難燃剤の合計配合量[((B)+(C))量]、溶融混練にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造する場合は溶融混練時の条件等を調整することにより、難燃性以外の物性を低下させることなく、薄肉部においても上記のような高い難燃レベルを達成することがより容易になる。
(C)/(D)比(重量比)としては、0.1〜1000であることが好ましく、1〜100であることがより好ましく、2〜60であることがさらにより好ましい。((B)+(C))量としては、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、10重量部以上が好ましく、12重量部以上がより好ましく、14重量部以上がさらに好ましい。
また、各成分の分散性をより良好とし、(D)滴下防止剤、特にポリフルオロエチレンを配合する場合は、ポリフルオロエチレンのフィブリルによる燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止能をより向上させ、安定な混練を行うために、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を慎重に選択する必要がある。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、ベント口から脱揮できる設備を有する2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法が好ましい。(C)リン系難燃剤以外の成分、すなわち、(A)、(B)、(D)および任意の添加成分は、タンブラー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー等の混合機を使用して予め混合しておくことが好ましい。溶融混練に際しては、バレル温度を好ましくは350℃以下、より好ましくは240〜320℃に設定する。このような温度条件とすることにより、難燃性、衝撃強度等について、より性能を高めることができる。また、(C)リン系難燃剤が液状である場合、押出機の途中のブロックから、ギアポンプ、プランジャーポンプ等の各種ポンプにて添加することが有効である。溶融混練中は、押出機の最大トルクの好ましくは60〜90%の能力で運転できるように、バレル温度、スクリュー回転数を適宜調整することが好ましい。このような手段を採用することにより、難燃性、衝撃強度等について、より性能を高めることができる。
本発明で規定する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の当該組成の範囲内において、上記のような条件の何れかを採用することにより、または、複数の条件を組合わせることにより、難燃性以外の物性を良好に維持したまま、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性をV−0またはV−1レベルとすることがより容易になる。
このようにして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、従来公知の任意の各種成形方法を用いて、成形品を得ることができるが、流動性に優れ、薄肉の成形品にした場合でも、良好な外観と難燃性を両立できることから、射出成形法により、薄物の樹脂容器を成形する場合に好適である。より薄肉の成形品、例えば厚み0.8mm以下の薄肉成形品を射出成形法にて成形する場合は、射出成形の際の樹脂温度を、従来のポリカーボネート樹脂組成物の成形に適用される温度より高めの温度、通常290〜360℃、好ましくは305〜360℃、より好ましくは310〜350℃、さらに好ましくは315〜340℃に設定する。従来の樹脂組成物を用いた場合には、薄肉容器を成形するために、成形時の樹脂温度を高めると、薄肉容器の表面に白点異物が生じ、外観が低下しやすくなるという問題もあったが、従来の樹脂組成物に比べ熱安定性に優れる本発明の樹脂組成物を使用することで、上記のような比較的高い温度範囲であっても、良好な耐衝撃性、外観、発色性および難燃性を有する薄肉容器を製造することが可能となる。
本発明において、薄肉成形品とは、全体または部分的に0.8mm以下の平板部を有する成形品であり、好ましくは、面積50mm2以上、厚さ0.8mm以下の平板部を有する成形品である。なお、「部分的」とは、成形品全体の面積の25%以上であることを意味する。また「平板部」とは、リブ、ボス等の凹凸や、窓、穴等を除く部分を指し、平面であっても湾曲していてもよい。
例えば、本発明の薄肉成形品とは、電子・電気機器筐体、具体的には、電池パック(例えば、携帯電話の電池パックに用いる箱や蓋)や小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器(例えば、メモリーカード、SDカード等のカバーなど)等に使用される樹脂容器であり、厚さ0.8mm以下の平板部を全体または部分的に有する樹脂容器をいう。好ましい薄肉成形品の形態としては、例えば、図1に示すような、容器本体(箱体)とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、容器本体(箱体)は、周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.8mm以下の平板部を有する樹脂容器である。また、通常電気・電子機器部品の使用態様等に基づき、上記平板部の面積は1〜100cm2、立上り片の高さは0.5〜10mmであり、立上り片の肉厚は、容器本体の剛性を高め、収容物の収容効率を高める観点から、通常は、0.3〜1.2mmである。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
[原材料]
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製「ユーピロン(登録商標)H−2000」、粘度平均分子量20,000(以下、PCと略す)
(B)グラフト共重合体
(b−1)メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ジメチルシロキサン共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2100」、共重合体中のSi含有量2.6重量%、数平均粒子径80
0nm
(b−2)メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ジメチルシロキサン共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2001」、共重合体中のSi含有量3.0重量%、数平均粒子径20
0nm
(b−3)「メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ジメチルシロキサン共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2030」、共重合体中のSi含有量9.5重量%、数平均粒子径2
00nm
(b−4)ブタジエン・アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体(多層構造重合体、コア層はブタジエン、シェル層はアクリル酸アルキルとメタクリル酸アルキルの共重合体である:ローム・アンド・ハース社製「パラロイドEXL−2603」
(b−5)アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体(多層構造重合体、コア層はアクリル酸アルキル、シェル層はメタクリル酸アルキルである:ローム・アンド・ハース社製「パラロイドEXL−2315」
(C)難燃剤
(c−1)縮合リン酸エステル:大八化学工業(株)製「PX200」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))
Figure 2009007487
(式中 t2は1.01である。)
(c−2)縮合リン酸エステル:(株)ADEKA製「アデカスタブ FP700」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)
Figure 2009007487
(式中 t1は1.1である。)
(c−3)トリフェニルホスフェート:大八化学工業(株)製
(c−4)臭素化ポリカーボネートオリゴマー:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)FR−53」
(D)滴下防止剤
(d−1)アクリル樹脂で被覆されたポリテトラフルオロエチレン:三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」、(被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は、50重量%である。)
(d−2)被覆されていないポリテトラフルオロエチレン:ダイキン工業(株)製「ポリフロンF−201L」
なお、(d−1)および(d−2)の配合量は、被覆PTFE中のPTFE含量の効果を正確に把握するため、PCに対するPTFE自体の配合量が、実施例および比較例を通してほぼ同一となるような量とした。
(E)ケイ酸塩充填材
(e)タルク:林化成社製「ミクロンホワイト5000S」、数平均粒子径2.8μm、表面処理なし
(F)離型剤
(f)ペンタエリスリトールテトラステアレート:コグニス社製「VPG861」
(G)熱安定剤
(g)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:(株)ADEKA製「アデカスタブ2112」
(I)着色剤
(h)カーボンブラック:三菱化学(株)製「三菱カーボンブラック#1000」
[実施例1〜6および比較例1〜4]
表1に示した割合(重量比)となるよう、(C)難燃剤アデカスタブFP700以外の原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーより投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。なお、(C)難燃剤は、予め80℃に加温し、2軸押出機のホッパー側から数えて3番目のブロックからギアポンプにて添加した。
[実施例7および比較例5]
表1に示した割合(重量比)となるよう、各原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーより投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。
得られた樹脂組成物を80℃で5時間乾燥した後、以下の方法により射出成形を行い、得られた試験片を用いて各種評価を行った。結果を表1に示した。
[評価方法]
(1)平均粒子径の測定
上記に記載の方法で得られた各樹脂組成物ペレット中央部のストランド方向に直交する面が端面となるように切片を切り出した。この切片の該端面より、試料冷却装置(クライオユニット)を装着したウルトラミクロトーム(Leica社、Ultracut UCT)で、ダイヤモンドナイフを用いて、該直交面を表面とする超薄切片を作成した。設定した切削条件は、試料室温度−105℃、試料厚さ100nmである。
超薄切片を銅製のグリッド上に積載した後、該切片の表面を四酸化オスミウムの蒸気に60分間さらし、さらに四酸化ルテニウムの蒸気に60分間さらして染色した。染色された超薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、1200EXII型)、加速電圧100kVで観察した。観察時に写真撮影を行い、電子顕微鏡用フィルムFG(富士写真フイルム社製:寸法5.9×8.2cm)に画像を記録した。
写真撮影により、ネガフィルム上に記録された画像を、フィルムスキャナー(コニカミノルタフォトイメージング社製、Dimage Scan Multi F-3000型)でデジタル化した。得られたモノクロ画像は、Adobe社製、Photoshop Ver.7.0を用いコントラストを調整した後、(株)日本ローバー製、Image-Pro Plus Ver.4.5.1を用いて、マトリックス中に分散した複合ゴム系グラフト共重合体の30個の1次粒子径(平均直径)を測定し、その数平均を数平均粒子径とした。
(2)ICP/AES(誘導結合プラズマ/原子発光分析)法によるSiの定量
(d−1)〜(d−3)のシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体について、試料を硫酸分解処理およびアルカリ溶融処理した後、ICP/AES(JOBIN YVON社製、ICP発光分光分析装置 Ultima 2C)によりSiの定量を行った。ここで、ICP/AES法とは、アルゴン等の気体に高電圧をかけることによって気体をプラズマ化させ、さらに、高周波数の変動磁場によってプラズマ内に過電流によるジュール熱を発生させることにより得られる高温のプラズマ(誘導結合プラズマ:ICP)を用いた分析法である。この高温の誘導結合プラズマに試料を導入し、試料を原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際の発光スペクトルから、元素の同定・定量を行うことができる。
(3)ノッチ付シャルピー衝撃強度
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機械工業社製、SGMIIサイキャップ)にてシリンダー温度280℃または330℃、金型温度80℃の条件で射出成形を行い、ISO179規格において試験片の厚みを3.0mmに変更した試験片を得た。ノッチの形状はISO179規格に従いノッチ半径0.25mm、残り幅約8.0mmになるよう切削した。衝撃試験はISO179規格に準じて行った。シャルピー衝撃強度は、値が高い方が好ましい。
(4)難燃性
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製、J50EP)にてシリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚0.8mmおよび1.0mmの試験片をそれぞれ得た。得られた試験片について、UL94規格に準拠して燃焼試験を行った。V−0が最も好ましく、V−1、V−2と順に劣り、NGはUL94規格の基準にあてはまらないものである。
(5)発色性(着色性)
上記(4)難燃性評価と同一条件作製した射出成形品について目視評価をした。表面外観の漆黒性が高いものを○、漆黒感がないものを×とした。
(6)電池パックの落下試験
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機(ソディックプラステック社製、TR100H)にてシリンダー温度340℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、図1に示す電池パックの蓋および箱を成形した。図1中、四角で囲んだ数字は、それぞれの部位の厚さを示している。また、四角で囲んだ以外の数字は、成形品各部分の長さを示している。なお、単位は「mm」である。得られた箱に、素電池を組み込み超音波溶着し、蓋をして電池パックとした。得られた電池パックを、1.65mの高さからコンクリート面に落下を各6面について実施した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返して試験を行い、割れが生じない場合を○、割れが生じた場合を×とした。なお、流動性が悪く、金型内に完全に樹脂を充填できなかった場合は「充填不可」を記した。
表1の結果より、以下のことがわかった。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は難燃性および発色性に優れ、340℃というポリカーボネート樹脂の成形温度としては比較的高い温度で成形しても、得られる薄肉成形品の耐衝撃性が良好であり、耐衝撃性、難燃性、発色性の全てをバランス良く満足した(実施例1〜7)。特に、高い温度で成形を行った場合、樹脂の劣化による成形品強度の低下や、シルバー、ポリフルオロエチレンの凝集による白点等の外観不良が発生する傾向にあるが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、このような問題が生じなかった。
複合ゴム系グラフト共重合体中のSi含有量が本発明の範囲内であっても数平均粒子径が本発明の範囲外である場合(比較例1)や、Si含有量、数平均粒子径ともに、本発明の範囲外である場合(比較例2)は、実施例2と比較例1、2との比較から明らかな通り、高温成形された成形品の耐衝撃性が低下し、発色性も本願の目的を達成できなかった。比較例1においては、難燃性も低下した。
一方、本発明で規定する複合ゴム系グラフト共重合体以外のグラフト共重合体を配合した場合(比較例3、4)も、実施例2と比較例3、4の比較例から明らかな通り、耐衝撃性、難燃性、発色性の全てをバランスよく満足することができなかった。
本発明で用いるリン系難燃剤以外の難燃剤を配合した場合(比較例5)は、流動性が低下し電池パック金型内に樹脂を完全に充填することができず、発色性も不十分であった。
Figure 2009007487
図1は、本願実施例で作製した電池パックの蓋および箱を示す。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全体または部分的に0.8mm以下の平板部を有する薄肉成形品の成形が可能な優れた流動性を有すると共に、高温成形に耐えうる熱安定性を有するため、得られる成形品は耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ、難燃性、発色性の、総合的にバランスの取れた性能を有する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のような性能を有するため、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等のカード型情報記録媒体等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器として好適である。

Claims (15)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムに、1種以上のビニル系単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体であって、該複合ゴムグラフト共重合体中のICP/AES法で検出されるSi含有量が9重量%以下であり、かつ、該グラフト共重合体の数平均粒子径が300nm以上であることを特徴とするシリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体1〜12重量部、(C)リン系難燃剤2〜20重量部、(D)滴下防止剤0.01〜1.5重量部を配合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であることを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. (D)滴下防止剤がポリフルオロエチレンである、請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記(B)グラフト共重合体の数平均粒子径が2000nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. さらに、(E)ケイ酸塩充填材を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.01〜12重量部配合してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 前記(E)ケイ酸塩充填材がタルクである、請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 前記ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンである、請求項3〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、請求項7に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 前記(C)リン系難燃剤がホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    一般式(1)
    Figure 2009007487
    (一般式(1)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
    一般式(2)
    Figure 2009007487
    (一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  10. 前記(C)リン系難燃剤が下記の一般式(2)で表されるリン系化合物である請求項1〜9のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    一般式(2)
    Figure 2009007487
    (一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
  12. 肉厚0.8mm以下の平板部を有する、請求項11に記載の成形品。
  13. 前記成形品が電気・電子機器筐体である、請求項11または12に記載の成形品。
  14. 前記成形品が電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、請求項11または12に記載の成形品。
  15. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる工程を含み、0.8mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0またはV−1であり、肉厚0.8mm以下の平板部を有する成形品の製造方法。
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