図1は本願発明を適用した冷凍装置の冷媒回路図である。この冷凍装置はインバータによって回転数を制御することができるインバータスクロールコンプレッサ(インバータ圧縮機)10を一台備える。なお本願発明において、コンプレッサはレシプロ型、スクリュー型、ロータリー型等の圧縮方式の種類は問わず、密閉式又は半密閉式のどちらの形式でも適用可能である。
60はECC基盤であり、インバータ圧縮機10の運転制御を行う制御装置である。なお、インバータ圧縮機10に電力を供給するインバータ装置は図中に記載されていないが、ECC基盤60からの指示に従いインバータ圧縮機10に電力を供給する。
本実施例において、使用冷媒としてHFC系冷媒を想定しているが、CFC系冷媒、HCFC系冷媒、自然冷媒等の他の冷媒を用いても同様の効果を得ることが可能である。
インバータ圧縮機10は低温低圧の気体冷媒を吸入し圧縮することで高温高圧の冷媒として吐出する。吐出された高温高圧の冷媒はオイルセパレータ13に流入する。オイルセパレータ13において冷媒中に含まれる潤滑油は分離及び貯溜される。
分離された潤滑油はサービスバルブ26を介してストレーナ27に流入し、ストレーナ27によって潤滑油中の混入物が取り除かれる。混入物が取り除かれた潤滑油は、電磁弁28を介して圧縮機10に戻される。この時、圧縮機に取設されたフロートスイッチ23によって圧縮機中の潤滑油量が計測され、圧縮機中の潤滑油量が一定となるように電磁弁28が開閉される。
また、圧縮機に戻す潤滑油に液冷媒が含まれた場合、圧縮機内の圧縮機構において潤滑が不十分となり不良となる可能性があるため、キャピラリーチューブ29において減圧し冷媒を完全に気化させている。キャピラリーチューブ29により冷媒を気化させることで、潤滑油を冷却する効果もある。
オイルセパレータ13において潤滑油が取り除かれた冷媒は凝縮器14に流入し、高温高圧の冷媒は冷却ファン63によって空気冷却され凝縮・液化する。本実施例では空冷式凝縮器を用いているが、水冷式や蒸発式の凝縮器でも良い。また、本実施例では凝縮器と圧縮機等を同一筐体に配設する一体型の冷凍機を想定しているが、これに限らず圧縮機等の冷凍機とコンデンシングユニットを別々に設ける分離設置型でも良い。
凝縮器14において液化した冷媒は凝縮器14から流出し、レシーバタンク15に貯溜される。レシーバタンク15は冷凍装置に不良が発生し、冷媒回路内部の圧力及び温度が非常に高くなった際の安全装置として可溶栓46を有している。
圧縮機の高圧圧力として、本冷凍装置ではレシーバタンク15内の圧力を計測し圧縮機等の制御を行っている。レシーバタンク15はキャピラリーチューブ57を介して高圧センサ58に配管接続されており、高圧センサ58によって圧縮機の高圧圧力が計測される。また、圧縮機の高圧圧力を目視にて随時観察するために、レシーバタンク15はキャピラリーチューブ57及び61を介して高圧圧力計62に配管接続されている。なお、レシーバタンク15ではなく、圧縮機10の吐出口から直接高圧圧力の計測を行なっても良い。
液冷媒の冷凍能力を高めるために、レシーバタンク15内に貯留された液冷媒は過冷却器16において再度、冷却ファン63によって空気冷却されることで過冷却される。本実施例では、凝縮器14及び過冷却器16を一体型としているものを用いているが、凝縮器と過冷却器を夫々個別に設けても良い。
過冷却された液冷媒はサービスバルブ48を介してフィルタドライヤ17に流入する。フィルタドライヤ17において冷媒中の水分は除去され、モイスチャインジケータ18において水分量を確認した後、液冷媒は店舗内に設置されたショーケース等の蒸発器(図示しない)に流出する。
本実施例では圧縮機を冷却するためにリキッドインジェクション機構を用いている。このため、レシーバタンク15からサービスバルブ34、ストレーナ35、電動弁36、電磁弁37を介して圧縮機10へリキッドインジェクション回路が設けられている。
ストレーナ35によって混入物を除去された液冷媒は電動弁36によって減圧され、圧縮機10の冷却を行う。電磁弁37の開閉及び電動弁36の開閉度は圧縮機10の動作状態及び圧縮機10の温度によって調整される。圧縮機10の高圧圧力が非常に大きくなった時には圧縮機10にキャピラリーチューブ51を介して配設された高圧圧力スイッチ52によって圧縮機は緊急停止される。
蒸発器において気化し冷却を行い、低温低圧となった冷媒は液冷媒を含んで冷凍装置に戻る(液バック)可能性があるため、アキュムレータ19に一度流入させアキュムレータ19において液冷媒と気体冷媒を分離する。液バックの原因としては、膨張弁の不良や蒸発器のフィルターの目詰まりなどが考えられ、液バックにより圧縮機10のケース内に液冷媒が進入し液圧縮による圧縮機構の破損や、液冷媒を吐出する際に多量の潤滑油が一緒に吐出されることによる潤滑不足などが発生する可能性がある。
アキュムレータ19において液冷媒は貯溜され気体冷媒のみが流出し、ストレーナ20を介して圧縮機10に吸引される。本実施例では、圧縮機10の低圧圧力として蒸発器から戻った冷媒の圧力を利用しているため、アキュムレータ19の入口側を低圧センサ59と配管接続している。なお、アキュムレータ19からではなく、圧縮機10の吸込口から直接低圧圧力を計測しても良い。
次にインバータ圧縮機10が運転を始動する際にインバータ装置(図示しない)がインバータ圧縮機10に供給する電圧Vを決定する方法について説明する。インバータ圧縮機10の低圧側圧力が上昇し、高圧側圧力が低下している通常の状態においては始動用の出力電圧‐運転周波数の波形パターンVSに現在の運転周波数CFを当てはめて出力電圧Vを決定する。
インバータ圧縮機10の始動時は通常、低圧側圧力が上昇し、高圧側圧力が低下している。しかし、保守点検時などインバータ圧縮機10の高圧圧力が始動限界圧力よりも高い状態で始動した場合には、インバータ圧縮機10の始動には通常の始動用出力電圧‐運転周波数の波形パターンVSから得られる電圧よりも高い電圧を必要とする。そのため、高圧圧力HP、低圧圧力LP及び運転周波数CFを用いて以下に示す数式1から出力電圧Vを求める。なお、CS1は冷凍装置及び設置された環境によって異なる定数である。
また、低圧圧力HPの変化は高圧圧力HPに比べて小さいため、数式1に変えて、高圧圧力HP及び運転周波数CFを用いて以下に示す数式2から出力電圧Vを求めても良い。なお、CS2及びCS3は冷凍装置及び設置された環境によって異なる定数である。
次にインバータ圧縮機が定常運転を行う際にインバータ装置(図示しない)がインバータ圧縮機10に供給する電圧Vを決定する方法について説明する。本制御方法は現在の低圧圧力LP、高圧圧力HP及び運転周波数CFから電圧Vを下記の数式3から算出している。なお、CV1、CV2、CV3及びCV4は冷凍装置及び設置された環境によって異なる定数である。
本実施例では運転周波数及び冷凍負荷を変化させる実験を行い、各状況においてインバータ装置への流入電流が最小となるようにCV1からCV4の値を決定した。具体的にはCV1=0.5、CV2=2.56、CV3=12、CV4=9としている。なお、CV1からCV4の設定方法としては同様の実験を行い、インバータ圧縮機10の電動機の成績係数が最も良くなるように設定しても良い。
次に本実施例におけるインバータ圧縮機10の運転周波数制御の流れについて、図1、図4、図5を用いて説明する。本制御方法は現在の低圧圧力LP及び運転周波数CFと目標低圧圧力TLPとから、冷凍装置が必要としている圧縮機の目標運転周波数TCFを求め、得られた目標運転周波数TCFとなるようにインバータ圧縮機の運転周波数を制御するものである。
図4は目標運転周波数TCFを算出する際の流れ図である。まず、目標運転周波数TCFの算出が開始される段階(S100)で、低圧圧力LPが計測される。目標低圧圧力TLPは冷凍装置に固有の値であるため、事前に実験を行い被冷却物が目標温度となるために冷凍システムが必要とする冷凍能力を供給できる低圧圧力に設定される。
目標運転周波数TCFは現在の運転周波数CFに出力変化率Kを積算することで得られる。この運転変化率Kは比例成分KP、微分成分KD、積分成分KIからなる。比例成分KPを下記の数式4から算出する(S101)。比例成分KPにより、現在の低圧圧力LPにおいて、冷凍システムが必要としている冷凍能力を出力できる運転周波数を求めることができる。
低圧センサ59によるインバータ圧縮機10の低圧圧力LPの計測は毎秒数十回行われているが、計測値のサンプリングは所定時間TS毎に行われており、現在の計測の直前に計測された所定時間TS前の低圧圧力PLPと低圧圧力LPを用いて、低圧圧力の変化速度GLPを下記の数式5から算出する(S102)。
得られた低圧圧力の変化速度GLPと目標低圧圧力TLPと微分成分調整係数CDを用いて、出力変化率Kの微分成分KDを下記の数式6から算出する(S102)。なお、微分成分調整係数CDは冷凍装置の設置環境に応じて調整される定数である。微分成分KDにより、現在の低圧圧力の変化速度GLPで低圧圧力LPが微小時間変化した場合の低圧圧力において、冷凍システムが必要としている冷凍能力を出力することができる運転周波数を求めることができる。
現在の低圧圧力LPと目標低圧圧力TLPと積分成分調整係数CIを用いて、出力変化率Kの積分成分KIを下記の数式7から算出する(S103)。なお、積分成分調整係数CIは冷凍装置の設置環境に応じて調整される定数である。積分成分KIは過去の積分成分PKIと、現在の低圧圧力LPと目標低圧圧力TLPの差を累積した値であり、目標低圧圧力TLPと低圧圧力LPとのオフセットを修正できる運転周波数を求めることができる。
数式7によって得られた現在の積分成分KIは次ステップにおいて過去の積分成分PKIに該当するため、下記の数式8によって過去の積分成分PKIは現在の積分成分KIに置き換えられる。
なお、積分成分KI及び過去の積分成分PKIの累積は所定時間CT毎にリセットされる(S106)必要があるため、累積時間ITIMEによりカウントされる(S103)。なお、図4のS103ステップに示されている数式は数式7とは異なるが、これは数式7及び数式8を順に実行することと同じ意味を持つ。また、S107ステップでは過去の積分成分PKIは使用していないため表記していない。
運転周波数CFがインバータ圧縮機の運転周波数の最大値である最大運転周波数MAXCF未満である場合(S104)、運転周波数CFの飽和によるオフセットは発生していないため、積分成分KI及び累積時間ITIMEはリセットされる(S107)。
また、低圧圧力LPが目標低圧圧力TLP以下である場合(S105)、冷凍能力不足の原因となるオフセットは発生していないため、積分成分KI及び累積時間ITIMEはリセットされる(S107)。
以上から得られた比例成分KP、微分成分KD、積分成分KIを用いて、出力変化率Kを下記の数式9から算出する(S108)。
現在の低圧圧力の変化速度GLPを維持した場合において、参考時間CG後の参考低圧圧力を下記の数式10から算出する(S109)。
得られた参考低圧圧力が目標低圧圧力TLP前後の範囲内(上限HLP及び下限LLP)にある場合(S109)、現在の運転周波数CFのまま運転を続ければ十分であるため出力変化率Kを1にセットする(S110)。
現在の運転周波数CFと出力変化率Kを用いて、下記の数式11から目標運転周波数TCFを算出する(S111)。
次に、得られた目標運転周波数TCFが適切な値となるように目標運転周波数TCFの調整を行う。また、この際に本実施例では冷凍装置の消費エネルギーを節約する省エネモードを搭載しており、通常モード又は省エネモード時における目標運転周波数の調整を同時に行う。目標運転周波数TCFを調整する流れを図5に示す。
現在の運転周波数CFが、インバータ圧縮機を安定して動作させることができる最小の運転周波数である最小運転周波数MINCFよりも小さい時(S201)つまり、インバータ圧縮機が停止している時は目標運転周波数TCFを最小運転周波数MINCFに設定する(S204)。
目標運転周波数TCFが最小運転周波数MINCFよりも小さく(S202)、省エネモードである時(S205)は目標運転周波数TCFを0に設定し圧縮機を停止させる(S206)。省エネモードでない場合にはインバータ圧縮機を安定して運転させるために目標運転周波数TCFを最小運転周波数MINCFに設定する(S204)。
目標運転周波数TCFが最大運転周波数MAXCFよりも大きい時(S203)はインバータ圧縮機を正常に動作させるために目標運転周波数TCFを最大運転周波数MAXCFに設定する(S207)。
以上により、冷凍システムが必要とする冷凍能力を出力することができる低圧圧力TLPを実現できる目標運転周波数TCFを得ることができる。本制御方法では、冷凍装置を設置した当初に定数CD、CI、CGの調整が必要となるが、従来のゾーン制御とは異なり閾値は必要ない。ゾーン制御では必要な冷凍能力を担保するために、過剰な運転が必要であったが、本制御方法では必要な冷凍能力を常に算出し、インバータ圧縮機の運転周波数を随時制御するため、必要な冷凍能力をより早く出力し、より運転効率の良い省エネ運転が可能である。
図2は本願発明を適用した冷凍装置の冷媒回路図である。この冷凍装置は3つの圧縮機によって構成され、10はインバータによって回転数を制御することができるインバータスクロールコンプレッサ(インバータ圧縮機)であり、11及び12は商用電力によって動作する一定速スクロールコンプレッサ(一定速圧縮機)である。本願発明において、これらコンプレッサはレシプロ型、スクリュー型、ロータリー型等の圧縮方式の種類は問わず、密閉式又は半密閉式のどちらの形式でも適用可能である。
60はECC基盤であり、インバータ圧縮機10及び一定速圧縮機11及び12の運転制御を行う制御装置である。なお、インバータ圧縮機10に電力を供給するインバータ装置は図中に記載されていないが、ECC基盤60からの指示に従いインバータ圧縮機10に電力を供給する。
本実施例において、使用冷媒としてHFC系冷媒を想定しているが、CFC系冷媒、HCFC系冷媒、自然冷媒等の他の冷媒を用いても同様の効果を得ることが可能である。
前記圧縮機10、11、12は吐出口及び吸入口共に並列に配管接続されており、各圧縮機は低温低圧の気体冷媒を吸入し圧縮することで高温高圧の冷媒として吐出する。吐出された高温高圧の冷媒は合流してオイルセパレータ13に流入する。オイルセパレータ13において冷媒中に含まれる潤滑油は分離及び貯溜される。
分離された潤滑油はサービスバルブ26を介してストレーナ27に流入し、ストレーナ27によって潤滑油中の混入物が取り除かれる。混入物が取り除かれた潤滑油は分岐し、電磁弁28、30、32を介して圧縮機10、11、12に戻される。この時、各圧縮機に取設されたフロートスイッチ23、24、25によって各圧縮機中の潤滑油量が計測され、各圧縮機中の潤滑油量が必要量以上となるように電磁弁28、30、32が開閉される。
また、圧縮機に戻す潤滑油に液冷媒が含まれた場合、圧縮機内の圧縮機構において潤滑が不十分となり不良となる可能性があるため、キャピラリーチューブ29、31、33において減圧し冷媒を完全に気化させている。キャピラリーチューブ29、31、33により冷媒を気化させることで、潤滑油を冷却する効果もある。
オイルセパレータ13において潤滑油が取り除かれた冷媒は凝縮器14に流入し、高温高圧の冷媒は冷却ファン63によって空気冷却され凝縮・液化する。本実施例では空冷式凝縮器を用いているが、水冷式や蒸発式の凝縮器でも良い。また、本実施例では凝縮器と圧縮機等を同一筐体に配設する一体型の冷凍機を想定しているが、これに限らず圧縮機等の冷凍機とコンデンシングユニットを別々に設ける分離設置型でも良い。
凝縮器14において液化した冷媒は凝縮器14から流出し、レシーバタンク15に貯溜される。レシーバタンク15は冷凍装置に不良が発生し、冷媒回路内部の圧力及び温度が非常に高くなった際の爆発を防止するために可溶栓46を有している。
圧縮機の高圧圧力として、本冷凍装置ではレシーバタンク15内の圧力を計測し圧縮機等の制御を行っている。レシーバタンク15はキャピラリーチューブ57を介して高圧センサ58に配管接続されており、高圧センサ58によって圧縮機の高圧圧力が計測される。また、圧縮機の高圧圧力を目視にて随時観察するために、レシーバタンク15はキャピラリーチューブ57及び61を介して高圧圧力計62に配管接続されている。
液冷媒の冷凍能力を高めるために、レシーバタンク15内に貯留された液冷媒は過冷却器16において再度、冷却ファン63によって空気冷却されることで過冷却される。本実施例では、凝縮器14及び過冷却器16を一体型としているものを用いているが、凝縮器と過冷却器を夫々個別に設けても良い。
過冷却された液冷媒はサービスバルブ48を介してフィルタドライヤ17に流入する。フィルタドライヤ17において冷媒中の水分は除去され、モイスチャインジケータ18において水分量を確認した後、液冷媒は店舗内に設置されたショーケース等の蒸発器(図示しない)に流出する。
本実施例では圧縮機を冷却するためにリキッドインジェクション機構を用いている。このため、レシーバタンク15から夫々、サービスバルブ34、38、42及びストレーナ35、39、43及び電動弁36、40、44及び電磁弁37、41、45を介して圧縮機10、11、12へリキッドインジェクション回路が設けられている。なお、リキッドインジェクション回路の減圧操作において、キャピラリーチューブ又は膨張弁によって減圧しても良い。
ストレーナ35、39、43によって混入物を除去された液冷媒は電動弁36、40、44によって減圧され、圧縮機10、11、12の冷却を行う。電磁弁37、41、45の開閉及び電動弁36、40、44の開閉度は圧縮機の動作状態及び圧縮機の温度によって調整される。圧縮機の高圧圧力が非常に大きくなった時には圧縮機10、11、12に配設された高圧圧力スイッチ52、54、56によって各圧縮機は緊急停止される。
蒸発器において気化し冷却を行い、低温低圧となった冷媒は液冷媒を含んで冷凍装置に戻る(液バック)可能性があるため、アキュムレータ19に一度流入させアキュムレータ19において液冷媒と気体冷媒を分離する。液バックの原因としては、膨張弁の不良や蒸発器のフィルターの目詰まりなどが考えられ、液バックにより圧縮機10、11、12のケース内に液冷媒が進入し液圧縮による圧縮機構の破損や、液冷媒を吐出する際に多量の潤滑油が一緒に吐出されることによる潤滑不足などが発生する可能性がある。
アキュムレータ19において液冷媒は貯溜され気体冷媒のみが流出し、夫々ストレーナ20、21、22を介して各圧縮機10、11、12に吸引される。なお本実施例では、圧縮機の低圧圧力として蒸発器から戻った冷媒の圧力を利用しているため、アキュムレータ19の入口側を低圧センサ59と配管接続している。
次にインバータ圧縮機10が運転を始動する際にインバータ装置(図示しない)がインバータ圧縮機10に供給する電圧Vを決定する方法について説明する。インバータ圧縮機10の低圧側圧力が上昇し、高圧側圧力が低下している通常の状態においては始動用の出力電圧‐運転周波数の波形パターンVSに現在の運転周波数CFを当てはめて出力電圧Vを決定する。
インバータ圧縮機10の始動時は通常、低圧側圧力が上昇し、高圧側圧力が低下している。しかし、保守点検時や他の一定速圧縮機が運転している時などインバータ圧縮機10の高圧圧力が始動限界圧力よりも高い状態で始動した場合には、インバータ圧縮機10の始動には通常の始動用出力電圧‐運転周波数の波形パターンVSから得られる電圧よりも高い電圧を必要とする。そのため、高圧圧力HP、低圧圧力LP及び運転周波数CFを用いて前記数式1から出力電圧Vを求める。なお、CS1は冷凍装置及び設置された環境によって異なる定数である。
また、低圧圧力HPの変化は高圧圧力HPに比べて小さいため、数式1に変えて、高圧圧力HP及び運転周波数CFを用いて前記数式2から出力電圧Vを求めても良い。なお、CS2及びCS3は冷凍装置及び設置された環境によって異なる定数である。
次にインバータ圧縮機が定常運転を行う際にインバータ装置(図示しない)がインバータ圧縮機10に供給する電圧Vを決定する方法について説明する。本制御方法は現在の低圧圧力LP、高圧圧力HP及び運転周波数CFから電圧Vを下記の前記数式3から算出している。なお、CV1、CV2、CV3及びCV4は冷凍装置及び設置された環境によって異なる定数である。
本実施例では運転周波数及び冷凍負荷を変化させる実験を行い、各状況においてインバータ装置への流入電流が最小となるようにCV1からCV4の値を決定した。具体的にはCV1=0.5、CV2=2.56、CV3=12、CV4=9としている。なお、CV1からCV4の設定方法としては同様の実験を行い、インバータ圧縮機10の電動機の成績係数が最も良くなるように設定しても良い。
次に本実施例におけるインバータ圧縮機10及び一定速圧縮機11、12の運転制御方法について、図2、図6乃至図9を用いて説明する。本実施例では圧縮機が複数台搭載されているため、冷凍装置全体の合計運転周波数SCFを用いて圧縮機の運転制御を行う。本制御方法は現在の低圧圧力LP、合計運転周波数SCF、目標低圧圧力TLPから、冷凍装置が必要としている目標合計運転周波数TSCFを求める。得られた目標合計運転周波数TSCFから目標運転周波数TCF及び目標運転台数TNCを求め、目標運転周波数TCF及び目標運転台数TNCとなるようにインバータ圧縮機の運転周波数及び一定速圧縮機の運転台数を制御するものである。
図6は目標合計運転周波数TSCFを算出する際の流れ図である。まず、目標合計運転周波数TSCFの算出が開始される段階(S300)で、低圧圧力LPが計測される。目標低圧圧力TLPは冷凍装置に固有の値であるため、事前に実験を行い冷凍システムが必要とする冷凍能力を安定して供給することができる低圧圧力に設定される。
合計運転周波数SCFはインバータ圧縮機10の運転周波数CFと一定速圧縮機11、12の運転台数NCを用いて下記の数式12から算出される(S301)。
ここで、定速変換周波数CCFは、一台の一定速圧縮機が電源周波数で運転された際の吐出量と等しい吐出量になるインバータ圧縮機の運転周波数である。定速変換周波数CCFは冷凍装置に搭載されるインバータ圧縮機及び一定速圧縮機の組合せと、一定速圧縮機の電源周波数によって決定される。
本実施例で用いている圧縮機において、電源周波数50ヘルツで動作する10馬力の一定速圧縮機の吐出量は、運転周波数60ヘルツで動作する10馬力のインバータ圧縮機の吐出量と等しいことを確認している。このことから、動作している一定速圧縮機の運転周波数をインバータ圧縮機の運転周波数60ヘルツに換算して冷凍装置全体の合計運転周波数を算出している。
なお、電源周波数60ヘルツで動作する10馬力の一定速圧縮機の吐出量は、運転周波数72ヘルツで動作する10馬力のインバータ圧縮機の吐出量と等しいことを確認しており、電源周波数が60ヘルツの地域で本冷凍装置を用いる時はCCFは72ヘルツに換算される。
本手法の妥当性を検証するために、膨張弁の弁開度を固定した冷凍システムにおいて算出された冷凍装置全体の合計運転周波数と、その時の合計運転周波数において冷凍装置が定常状態となった際の低圧圧力との関係を図10に示す。合計運転周波数の増加に伴いほぼ一定に低圧圧力が低下しており、冷凍装置の制御性が良いことが分かる。また、電源周波数の違いによらず同一の傾向を示すため、冷凍装置が設置される地域の電源周波数による制御性の差異が発生しない。
目標合計運転周波数TSCFは現在の合計運転周波数SCFに出力変化率Kを積算することで得られる。この出力変化率Kは比例成分KP、微分成分KD、積分成分KIからなる。比例成分KPを前記数式4から算出する(S302)。比例成分KPにより、現在の低圧圧力LPにおいて、冷凍システムが必要としている冷凍能力を出力できる合計運転周波数を求めることができる。
低圧センサ59による圧縮機10、11、12の低圧圧力LP計測は所定時間TS毎に行われており、現在の計測の直前に計測された所定時間TS前の低圧圧力PLPと低圧圧力LPを用いて、低圧圧力の変化速度GLPを前記数式5から算出する(S303)。
得られた低圧圧力の変化速度GLPと目標低圧圧力TLPと微分成分調整係数CDを用いて、出力変化率Kの微分成分KDを前記数式6から算出する(S303)。なお、微分成分調整係数CDは冷凍装置の設置環境に応じて調整される定数である。微分成分KDにより、現在の低圧圧力の変化速度GLPで低圧圧力LPが微小時間変化した場合の低圧圧力において、冷凍システムが必要としている冷凍能力を出力することができる運転周波数を求めることができる。
現在の低圧圧力LPと目標低圧圧力TLPと積分成分調整係数CIを用いて、出力変化率Kの積分成分KIを前記数式7から算出する(S304)。なお、積分成分調整係数CIは冷凍装置の設置環境に応じて調整される定数である。積分成分KIは過去の積分成分PKIと、現在の低圧圧力LPと目標低圧圧力TLPの差を累積した値であり、目標低圧圧力TLPと低圧圧力LPとのオフセットを修正できる運転周波数を求めることができる。
数式7によって得られた現在の積分成分KIは次ステップにおいて過去の積分成分PKIに該当するため、下記の数式8によって過去の積分成分PKIは現在の積分成分KIに置き換えられる。
なお、積分成分KIの累積は所定時間CT毎にリセットされる(S307)必要があるため、累積時間ITIMEによりカウントされる(S304)。なお、図4のS304ステップに示されている数式は数式7とは異なるが、これは数式7及び数式8を順に実行することと同じ意味を持つ。また、S308ステップでは過去の積分成分PKIは使用していないため表記していない。
運転周波数CFがインバータ圧縮機の運転周波数の最大値である最大運転周波数MAXCF未満である場合(S305)、運転周波数CFの飽和によるオフセットは発生していないため、積分成分KI及び累積時間ITIMEはリセットされる(S308)。
また、低圧圧力LPが目標低圧圧力TLP以下である場合(S306)、冷凍能力不足の原因となるオフセットは発生していないため、積分成分KI及び累積時間ITIMEはリセットされる(S308)。
以上から得られた比例成分KP、微分成分KD、積分成分KIを用いて、出力変化率Kを前記数式9から算出する(S309)。
現在の低圧圧力の変化速度GLPを維持した場合において、参考時間CG後の参考低圧圧力を前記数式10から算出する(S310)。
得られた参考低圧圧力が目標低圧圧力TLP前後の範囲内(上限HLP及び下限LLP)にある場合(S310)、現在の合計運転周波数SCFのまま運転を続ければ十分であるため出力変化率Kを1にセットする(S311)。
現在の合計運転周波数SCFと出力変化率Kを用いて、下記の数式13から目標合計運転周波数TSCFを算出する(S312)。
次に、得られた目標合計運転周波数TSCFからインバータ圧縮機の目標運転周波数TCF及び一定速圧縮機の目標運転台数TNCの算出を行う(S400)。また、本実施例では冷凍装置の消費エネルギーを節約する省エネモードを搭載しており、通常モード又は省エネモード時における目標運転周波数TCFの調整を同時に行っている。図7は目標合計運転周波数TSCFから目標運転周波数TCF及び目標運転台数NCを算出する際の流れ図である。
現在の合計運転周波数SCFが、インバータ圧縮機を安定して動作させることができる最小の運転周波数である最小運転周波数MINCFよりも小さい時(S401)つまり、インバータ圧縮機が停止している時は目標運転台数TNCを0に、目標運転周波数TCFを最小運転周波数MINCFに設定する(S406)。
目標合計運転周波数TSCFが最小運転周波数MINCFよりも小さく(S402)、省エネモードである時(S407)は目標運転台数TNCを0に、目標運転周波数TCFを0に設定する(S408)。省エネモードでない時は冷却を優先するために目標運転周波数TCFをMINCFに、目標運転台数TNCを0に設定する(S406)。
合計運転周波数SCF及び目標合計運転周波数TSCFのいずれも最小運転周波数MINCFよりも大きい時、目標運転台数を下記の数式14から算出する(S403)。ここで、MAXCFはインバータ圧縮機が動作することができる運転周波数の最大値(最大運転周波数)であり、INTは括弧内の数値を超えない最大の整数値を表している。
得られた目標運転台数TNCと目標合計運転周波数TSCFから目標運転周波数TCFを下記の数式15から算出する(S404)。
以上から、目標運転周波数TCF及び目標運転台数TNCが得られる。ここで、インバータ圧縮機の運転周波数CFが最大運転周波数MAXCFに達する前に一定速圧縮機が始動することを防止するために一定速圧縮機の始動抑制を行う(S500)。また、本実施例では冷凍装置の出力を高く保つ高鮮度モードを搭載しており、通常モード又は高鮮度モード時における目標運転周波数の調整を同時に行っている。一定速圧縮機始動抑制の流れ図を図8に示す。
運転台数NCが目標運転台数TNCよりも大きい時(S501)は一定速圧縮機は始動しないため、始動抑制制御は行わない。運転台数NCが目標運転台数TNCよりも大きく、かつ高鮮度モードであり(S502)、目標運転周波数TCFが所定運転周波数LCFよりも小さい時(S503)は目標運転台数TNCをTNC−1とし、目標運転周波数を最大運転周波数MAXCFとする(S504)。つまり、インバータ圧縮機を最大運転周波数MAXCFで動作させることで出力を増加させ、一定速圧縮機の始動を抑制している。
運転台数NCが目標運転台数TNCよりも大きく、かつ高鮮度モードでなく(S502)、目標運転周波数TCFが所定運転周波数HCFよりも小さい時(S505)は目標運転台数TNCをTNC−1とし、目標運転周波数を最大運転周波数MAXCFとする(S504)。つまり、インバータ圧縮機を最大運転周波数MAXCFで動作させることで出力を増加させ、一定速圧縮機の始動を抑制している。なお、所定運転周波数LCFは所定運転周波数HCFよりも小さい値が設定されており、高鮮度モード時には冷凍能力を優先するために通常モード時に比べて一定速圧縮機の始動が抑制されにくくなっている。
次に、一定速圧縮機の発停が繰り返されることによる一定速圧縮機の劣化を防止するために、一定速圧縮機発停の抑制を行う(S600)。一定速圧縮機の発停抑制の流れ図を図9に示す。目標運転台数TNCが運転台数NCと等しい時(S601)は発停を抑制する必要がないため、目標運転周波数TCF及び目標運転台数TNCに変更はない。
一定速圧縮機の発停を抑制し過ぎると冷凍能力が不足する可能性があるため、発停抑制カウントRCによって発停が抑制された時間を計測する(S602)。発停抑制カウントRCが発停抑制限界CRCよりも小さく(S603)、かつ目標運転台数TNCが運転台数NCよりも大きい時(S604)は、目標運転台数TNCを運転台数NCに置き換え、目標運転周波数TCFを最大運転周波数MAXCFに置き換える(S605)。このように一定速圧縮機の運転台数を増加させずに、インバータ圧縮機の出力を最大とすることで冷凍装置の出力を確保し、かつ一定速圧縮機の発停の頻度を抑制している。
発停抑制カウントRCが発停抑制限界CRCよりも小さく(S603)、かつ目標運転台数TNCが運転台数NCよりも小さい時(S604)は、目標運転台数TNCを運転台数NCに置き換え、目標運転周波数TCFを最小運転周波数MINCFに置き換える(S611)。このように一定速圧縮機の運転台数を増加させずに、インバータ圧縮機の出力を最小とすることで冷凍装置の出力を低下させ、かつ一定速圧縮機の発停の頻度を抑制している。
発停抑制カウントRCが発停抑制限界CRCよりも大きい時(S603)は、運転台数を変化させる前に発停抑制カウントRCを0にリセットする(S606)。これは一定速圧縮機の発停を抑制し過ぎることによって、冷凍装置の出力が過剰又は不足することを防いでいる。
ここで、目標運転台数TNCが運転台数NC+2よりも大きい時(S607)は、目標運転台数TNCを運転台数NC+1に置き換え、目標運転周波数TCFを最大運転周波数MAXCFに置き換える(S608)。このように一定速圧縮機の運転台数が一時に二台以上増加することを抑制し一台の増加に留め、インバータ圧縮機の出力を最大とすることで冷凍装置の出力を確保し一定速圧縮機の発停の頻度を減少させている。また、目標運転台数TNCが運転台数NC−2よりも小さい時(S609)は、目標運転台数TNCを運転台数NC−1に置き換え、目標運転周波数TCFを最小運転周波数MINCFに置き換える(S610)。このように一定速圧縮機の運転台数が一時に二台以上減少することを抑制し一台の減少に留め、インバータ圧縮機の出力を最小とすることで冷凍装置の出力を低下させ、かつ一定速圧縮機の発停の頻度を抑制している。
なお、目標運転台数TNCが運転台数NC+2よりも小さく、かつ目標運転台数TNCが運転台数NC−2よりも大きい時は、目標運転周波数TCF及び目標運転台数TNCに変更はない。
以上から、圧縮機が複数台搭載された冷凍装置において、冷凍システムが必要とする冷凍能力を供給することができる目標運転周波数TCF及び目標運転台数TNCを得ることができる。
また、本実施例では一定速圧縮機11及び12は同出力の圧縮機を用いているが、異なる出力を持つ圧縮機を用いる時は各圧縮機毎に定速変換周波数CCFを求め、動作している一定速圧縮機に対応する定速変換周波数CCFの総和を求めることで合計運転周波数SCFを下記の数式16から求めることができる。Siは一定速圧縮機iの運転状態を表しており、動作時は1、停止時は0となる。CCFiは一定速圧縮機iの定速変換周波数である。
なお、実施例1及び実施例2の双方において、低圧圧力LPはある程度の幅を持って変動しているため、圧縮機運転制御の安定化を図るために所定時間TS内における平均値を用いる方が望ましい。
また、目標運転周波数及び目標合計運転周波数の大きな変動を防止するために、演算によって得られた目標運転周波数及び目標合計運転周波数と現在の運転周波数及び合計運転周波数の平均値を新たな目標運転周波数及び目標合計運転周波数とするように制御しても良い。