JP2008053488A - 導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特に内部電極層の各厚みが薄層化し、導電性粒子の粒度分布にバラツキがあったとしても、導電性粒子の焼結開始温度を上昇させる効果に差が生じず、導電性粒子の粒成長を抑制でき、球状化、電極途切れなどを有効に防止することで、静電容量の低下を抑制しつつ、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗を良好とすること。
【解決手段】Niと貴金属との合金を主成分とし、平均粒子径が200〜400nmである第1導電性粒子と、Niと貴金属との合金を主成分とし、平均粒子径が40〜80nmである第2導電性粒子とを含有する導電性ペーストであって、ペースト中の全導電性成分に対する貴金属の含有量が、0.3モル%超、13モル%以下であり、第1導電性粒子における貴金属の含有割合が、0.3〜1.5モル%であり、第2導電性粒子における貴金属の含有割合が、3.3〜10モル%である。
【選択図】 図6

Description

本発明は、導電性ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびその製造方法に係り、さらに詳しくは、内部電極層の厚みが薄層化した場合においても、焼成段階での導電性粒子の粒成長を抑制し、粒子の球状化や内部電極の途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる積層セラミックコンデンサなどの電子部品の製造工程に用いられる導電性ペーストに関する。
電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に複数配置された積層構造の素子本体を有する。素子本体の両端部には、一対の外部端子電極が形成してある。この積層セラミックコンデンサは、まずセラミックグリーンシートと焼成前内部電極層とを必要枚数だけ交互に複数積層させて焼成前素子本体を製造し、次にこれを焼成した後、焼成後素子本体の両端部に一対の外部端子電極を形成して製造される。焼成前内部電極層は、所定パターンの内部電極ペースト膜や金属薄膜などが用いられる。
このように、積層セラミックコンデンサの製造に際しては、セラミックグリーンシートと焼成前内部電極層とを同時に焼成することになる。このため、焼成前内部電極層に含まれる導電材には、セラミックグリーンシートに含まれる誘電体原料粉末の焼結温度に近い焼結温度を持つこと、誘電体粉末と反応しないこと、焼成後の誘電体層に拡散しないこと、などが要求される。
従来は、これらの要求を満足させるために、焼成前内部電極層に含まれる導電材には、PtやPdなどの貴金属を使用してきた。しかしながら、貴金属はそれ自体が高価であり、結果として最終的に得られる積層セラミックコンデンサがコスト高になるという欠点があった。そこで、従来は、誘電体粉末の焼結温度を900〜1100°Cに低下させ、焼成前内部電極層に含まれる導電材にAg−Pd合金を用いたり、Niなどの安価な卑金属を用いたものが広く知られている。
ところで、近年、各種電子機器の小型化により、電子機器の内部に装着される積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化が進んでいる。この積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化を進めるために、誘電体層はもとより、薄くて欠陥の少ない内部電極層を積層することが求められる。
しかしながら、焼成前内部電極層に含まれる導電材にNiを用いた場合を例示すると、このNiは、セラミックグリーンシートに含まれる誘電体粉末と比較して融点が低い。このため、これらを同時焼成した場合、両者の焼結温度の間で大きな差が生じていた。焼結温度に大きな差がある場合に高い温度で焼結させると、内部電極層の割れや剥離が生じ、一方、低い温度で焼結させると、誘電体粉末の焼成不良を生じることがある。
また、焼成前内部電極層の厚みを薄くしていくと、還元雰囲気での焼成中に、導電材に含まれるNi粒子は粒成長により球状化し、焼成前には連結していた隣接するNi粒子同士の間隔が開いて任意の箇所に空孔を生じ、その結果、焼成後内部電極層を連続的に形成することが困難になる。焼成後の内部電極層が連続していない(途切れている)場合、積層セラミックコンデンサの静電容量が低下するという問題がある。
そこで、本出願人は、これらの課題を解決するために、下記の特許文献1に示すように、Ni粒子の周囲を白金層で被覆してある導電性粒子と、スパッタリングによりNiと貴金属との合金薄膜を作製し、この薄膜を粉砕して合金粉を得て、内部電極層形成用とした導電性粒子と、を開示している。このように構成してある導電性粒子を用いることにより、特に内部電極層の各厚みが薄層化した場合でも、焼成段階でのNi粒子の粒成長を抑制し、球状化、電極途切れを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制することができることを見出した。
しかしながら、Ni粒子を白金で被覆した粒子の場合には、以下のような問題が生じた。すなわち、Ni粒子を白金で被覆した粒子は、被覆層の厚みが一定であると考えた場合、Ni粒子の径によりNiと白金の組成比率が異なってしまう問題がある。つまり、Ni粒子の粒子径が大きい場合には、白金に対して相対的にNiの含有量が多くなり、逆に、Ni粒子の粒子径が小さい場合には、白金に対して相対的にNiの含有量が少なくなる。
コア粒子の粒度分布にバラツキがなければ、1粒子ごとの組成は均一のはずであるが、実際には、Ni粒子の粒度分布にはバラツキがある。このため、内部電極層内で、粒子径の大きいNi粒子が多く集まっているところでは、相対的に白金の含有量が少なくなり、Ni粒子の粒成長の抑制、球状化の防止、内部電極の途切れなどの効果が小さい。逆に、粒子径の小さいNi粒子が多く集まっているところでは、相対的に白金の含有量が多くなり、Ni粒子の粒成長の抑制などの効果が大きい。その結果、静電容量値は満足するが、球状化が抑制されている部分と抑制されていない部分とが生じ、内部電極の厚みのバラツキが大きくなる。したがって、誘電体層の厚みのバラツキも大きくなるため、破壊電圧(VB)値が上がらない。
また、Niと貴金属との合金粉の場合には、焼成前の内部電極層において、各粒子の充填性が低いという問題があった。その結果、静電容量値は満足するが、焼成後の内部電極層において、電極の途切れが生じ、電極被覆率が低下し、さらには、破壊電圧値や直流等価抵抗が悪化する問題が生じた。
さらに、上記の2種類の導電性粒子を製造するには、合金粒子の場合、スパッタリング等の工程が増え、製造プロセスが長くなるという課題があった。また、被覆粒子の場合には、Ni粒子の周囲に白金を析出させる際に、数μm以上の白金の偏析粒子が生成し、Ni粒子が白金で被膜されない場合があり、被覆粒子の製造効率が悪いという課題があった。そのため、上記の2種類の導電性粒子は、安価に作製できないというデメリットがある。
国際公開第2004/070748号パンフレット
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、特に内部電極層の各厚みが薄層化した場合であっても、内部電極層の全体にわたり、導電性粒子の粒成長を抑制する効果に差が生じず、導電性粒子の球状化、電極途切れなどを有効に防止でき、静電容量の低下を効果的に抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる導電性ペーストを提供することである。本発明の別の目的は、前記導電性ペーストを用いて形成された内部電極層と、誘電体層とを有する積層セラミックコンデンサなどの電子部品およびその製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る導電性ペーストは、
ニッケルと貴金属との合金を主成分とし、平均粒子径が200nm以上、400nm以下である第1導電性粒子と、
ニッケルと貴金属との合金を主成分とし、平均粒子径が40nm以上、80nm以下である第2導電性粒子と、を含有する導電性ペーストであって、
前記導電性ペースト中の全導電性成分に対する前記貴金属の含有量が、0.3モル%超、13モル%以下であり、
前記第1導電性粒子における前記貴金属の含有割合が、0.3モル%以上、1.5モル%以下であり、
前記第2導電性粒子における前記貴金属の含有割合が、3.3モル%以上、10モル%以下であることを特徴とする。
本発明に係る導電性ペーストには、Niと貴金属との合金を主成分とする導電性粒子を含有させる。貴金属は、Niよりも融点が高く、誘電体層との濡れ性および密着性に優れている。したがって、Niと貴金属との合金を主成分とする導電性粒子は、Ni粒子よりも焼結温度が高いため、焼結開始温度を高くすることができ、導電性粒子の球状化が抑制できる。
また、Niと貴金属との合金を主成分とする導電性粒子として、平均粒子径が200〜400nm、好ましくは、200〜350nmである第1導電性粒子と、平均粒子径が40〜80nm、好ましくは、45〜75nmである第2導電性粒子とを使用する。導電性ペースト中に、比較的に粒子径の大きい第1導電性粒子と、比較的に粒子径の小さい第2導電性粒子とが含まれることで、この導電性ペーストを用いて形成された電極ペースト膜において、粒子径の大きい第1導電性粒子の粒子間に、粒子径の小さい第2導電性粒子が充填される。その結果、電極ペースト膜における各粒子の充填性が良くなるため、電極ペースト膜の密度が上がり、焼成後においても内部電極層の途切れが少なくなる傾向にある。
また、導電性ペースト中の全導電性成分に対する前記貴金属の含有量が、0.3モル%超、13モル%以下、好ましくは、0.3モル超、5.0モル%以下である。貴金属の含有量が少なすぎると、本発明の効果が得られない傾向にあり、一方、貴金属の含有量が多すぎると、tanδおよび直流等価抵抗が悪化する傾向にある。
さらに、第1導電性粒子における貴金属の含有割合(貴金属濃度)を、0.3〜1.5モル%、好ましくは、0.5〜1.3モル%とし、第2導電性粒子における貴金属の含有割合(貴金属濃度)を、3.3〜10モル%、好ましくは、4〜8モル%とする。この場合には、粒子径の大きい第1導電性粒子の粒子間に、粒径の小さい第2導電性粒子は充填されており、かつ、第2導電性粒子は、第1導電性粒子よりも貴金属濃度が高いため、焼結温度が高い。したがって、焼成時において、第2導電性粒子は、第1導電性粒子同士の焼結を遅らせる働きがある。すなわち、第1導電性粒子における貴金属濃度を高くしなくても、第1導電性粒子の焼結開始温度を上昇させることができ、第1導電性粒子の球状化を効果的に抑制できる。
したがって、本発明の導電性ペーストでは、内部電極層が薄層化されたとしても、さらには、第1導電性粒子の粒度分布にバラツキがあったとしても、焼成段階での導電性粒子の焼結開始温度を上昇させる効果に差が生じない。その結果、導電性粒子の粒成長を抑制し、球状化、電極途切れなどを有効に防止できるため、静電容量の低下を効果的に抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる。
これに対して、前述した特許文献1(国際公開第2004/070748号パンフレット)に記載の貴金属被覆Ni粒子の場合には、コアとなるNi粒子の粒度バラツキが大きくなると、各粒子における組成比率が異なり、電極層の箇所によって、球状化および途切れ防止に効果が大きい部分と小さい部分が生じてしまう。その結果、静電容量を満足するデータは得られるが、充分な電極被覆率が得られず、破壊電圧や直流等価抵抗などの電気特性を改善できない。
また、特許文献1に記載されたNiと貴金属との合金粒子のみを含む従来の導電性ペーストに比較して、本発明の導電性ペーストは、次に示す作用効果を有する。すなわち、本発明の導電性ペーストの導電性粒子は、比較的に粒子径が大きく貴金属濃度が低い第1導電性粒子と、比較的に粒子径が小さく貴金属濃度が高い第2導電性粒子とに分かれている。第2導電性粒子は、第1導電性粒子よりも貴金属濃度が高いため、焼結開始温度が高い。また、粒子径の差を利用して、第1導電性粒子の粒子間に第2導電性粒子が充填させることが可能であり、焼成前の電極ペースト膜の密度を上げることができる。したがって、焼成時には、第2導電性粒子が、第1導電性粒子同士の焼結を遅らせ、第1導電性粒子の焼結開始温度を上昇させることができる。その結果、静電容量の低下を抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる。
なお、本発明において、第1導電性粒子の平均粒子径が小さすぎると、他の添加材との分散性が低下すると共に、電極ペースト膜の密度が低下し、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗が悪化する傾向にある。また、第1導電性粒子の平均粒子径が大きすぎると、第1導電性粒子の充填性が悪くなるため、ペースト膜の表面が粗くなり、さらには、内部電極層の薄層化も困難になる。その結果、焼結後の電極途切れが多くなる傾向にある。また、第2導電性粒子の平均粒子径が大きすぎると、第1導電性粒子の粒子間に、第2導電性粒子が充填されにくく、電極ペースト膜の密度が上がらない傾向にある。また、第2導電性粒子の平均粒子径が小さすぎると、粒子の製造が困難になると共に、導電性ペーストの粘度が高くなり、電極の印刷が困難になる傾向にある。
好ましくは、前記貴金属が、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする。より好ましくは、Reである。
好ましくは、前記導電性ペースト中の全導電性成分に対する前記第1導電性粒子と前記第2導電性粒子との含有割合が、重量比で、第1導電性粒子:第2導電性粒子=70:30〜99:1、好ましくは、75:25〜95:5の範囲である。第1導電性粒子の含有割合が少なすぎる(第2導電性粒子の含有割合が多すぎる)と、焼成後の電極層の貴金属濃度ムラが大きくなり、その結果、電極被覆率、静電容量、破壊電圧、直流等価抵抗が低下する。第1導電性粒子の含有割合が多すぎる(第2導電性粒子の含有割合が少なすぎる)と、第1導電性粒子の粒子間に、第2導電性粒子が充填されない部分が存在し、本発明の作用効果が小さくなる傾向にある。
好ましくは、前記導電性ペーストは、前記第1導電性粒子および前記第2導電性粒子以外に、共材粒子、バインダー、溶剤および分散剤を含有する。共材粒子は、電子部品の誘電体層を構成する誘電体粒子と同様の組成を有する誘電体粒子であり、導電性粒子の周囲に介在され、導電性粒子の粒成長を抑制する。共材粒子を、比較的に粒子径が小さく貴金属濃度が高い第2導電性粒子と共に、導電性ペースト中に含ませることで、共材粒子と第2導電性粒子とが、第1導電性粒子の周囲に分散し、より効果的に、第1導電性粒子の球状化を抑制することができる。
本発明に係る電子部品の製造方法は、内部電極層と誘電体層とを有する電子部品を製造する方法であって、
上記のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
前記電極ペースト膜を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと積層させる工程と、
前記グリーンシートと前記電極ペースト膜との積層体を焼成する工程と、
前記積層体を焼成した後に、焼成後の前記積層体をアニールする工程と、を有する。
前記電極ペースト膜と前記グリーンシートとの間には、接着層を介在させても良い。グリーンシートおよび電極ペースト膜が薄層化されると、通常の印刷法などによりグリーンシートの表面に電極ペースト膜を形成することが困難になる傾向にあり、電極ペースト膜は、転写法によりグリーンシートの表面に積層されることが好ましい。その場合において、電極ペースト膜とグリーンシートとの接着が困難になる傾向にあり、これらは接着層により接着させることが好ましい。なお、接着層は、積層体の脱バインダ処理および/または焼成処理により除去される。
好ましくは、乾燥後の前記電極ペースト膜の密度が、乾燥後の前記電極ペースト膜の理論密度の90%以上である。上記のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて、電極ペースト膜を形成した場合には、前記電極ペースト膜を乾燥させる。乾燥は、電極ペースト膜中に含まれている溶剤などの揮発成分を除去するために行われる。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜120°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜30分である。
この乾燥後の電極ペースト膜には、構成成分として、不揮発成分である導電性粒子、共材、バインダ、分散剤等が含まれる。乾燥後の電極ペースト膜の実際の密度と、構成成分の密度および配合比から算出される理論的な電極ペースト膜の密度(電極ペースト膜の理論密度)とから、以下に示す相対ペースト膜密度が算出される。
相対ペースト膜密度[%]=(乾燥後の電極ペースト膜の実際の密度/電極ペースト膜の理論密度)×100
相対ペースト膜密度は、電極ペースト膜における構成成分の充填性を表しており、好ましくは、90%以上である。相対ペースト膜密度が低すぎると、ペースト膜中の各構成成分の分散性が悪く、焼成後の電極被覆率が悪化する傾向にある。
好ましくは、前記積層体を、10−10 〜10−2Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1000〜1300°Cの温度で焼成する。
好ましくは、前記積層体を焼成した後に、10−2〜100Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1200°C以下の温度でアニールする。上記焼成後に、特定の条件でアニールすることで、誘電体層の再酸化が図られ、誘電体層の半導体化を阻止し、高い絶縁抵抗を取得することができる。
好ましくは、上記のいずれかに記載の方法により製造された電子部品が有する前記内部電極層の厚みが、0.1〜0.7μm、さらに好ましくは、0.1〜0.5μmである。本発明の導電性ペーストを用いることで、内部電極層の薄層化を実現することができる。
好ましくは、焼成およびアニール後の前記内部電極層が前記誘電体層を覆う理想の設計面積に対して、焼成およびアニール後の前記内部電極層が前記誘電体層を実際に覆う面積の割合を示す電極被覆率が、80%以上である。電極被覆率が小さくなると、焼成後の内部電極層における途切れが多くなるので、結果として、静電容量が低下する傾向にある。
本発明において、前記誘電体層が、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成してあることが好ましい。内部電極層は、Niと貴金属との合金で構成されるので、同時焼成時に酸化しないように、誘電体層は、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成することが好ましい。
なお、本発明で用いることができるグリーンシートの材質および製造方法などは、特に限定されず、ドクターブレード法により成形されるセラミックグリーンシート、押出成形されたフィルムを二軸延伸して得られる多孔質のセラミックグリーンシートなどであっても良い。
また、本発明において、電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ここにおいて、
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は、本発明の一実施形態に係る導電性ペーストの概略図、
図3(A)〜図3(C)および図4(A)〜図4(C)は、電極ペースト膜の転写方法を示す要部断面図、
図5は、CVD法による本発明の導電性粒子の製造装置の模式図、
図6(A)は図2に示す導電性ペーストを用いて形成した電極ペースト膜の概略図、図6(B)は従来例に係る貴金属被覆Ni粒子を含む導電性ペーストを用いて形成した電極ペースト膜の概略図、図6(C)は、従来例に係るNiと貴金属との合金粒子を含む導電性ペーストを用いて形成した電極ペースト膜の概略図である。
まず、本発明に係る電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。この誘電体層10は、好ましくは、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成してある。
各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
本実施形態では、図1に示す各内部電極層12は、ニッケルと貴金属との合金層で構成してある。内部電極層12の詳細な製造方法に関しては、後述するが、図2に示す導電性ペースト12aを用いて形成され、図3〜4に示すように、電極ペースト膜12bをグリーンシート10aに転写して形成される。内部電極層12の厚みは、焼成による水平方向の収縮分だけ電極ペースト膜12bよりも厚くなる。なお、図2においては、導電性粒子と共材以外の成分の図示は省略した。
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.1〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
次に、積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の粉末として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉末を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが例示される。
また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も特に限定されず、テルピネオール、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ステアリン酸ブチル、ブチルカルビトール、イソボニルアセテートなどの通常の有機溶剤が例示される。また、誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。
次に、上記誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、図4(A)に示すように、第2支持シートとしてのキャリアシート30上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、グリーンシート10aを形成する。グリーンシート10aは、キャリアシート30に形成された後に乾燥される。グリーンシート10aの乾燥温度は、好ましくは50〜100°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜5分である。
次に、上記のキャリアシート30とは別に、図3(A)に示すように、第1支持シートとしてのキャリアシート20を準備し、その上に、剥離層22を形成する。次に、剥離層22の表面に、焼成後に内部電極層12を構成することになる電極ペースト膜12bを所定パターンで形成する。
電極ペースト膜12bは、図2に示す導電性ペースト12aで形成される。形成される電極ペースト膜12bの厚さt1(図3参照)は、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μm程度である。なお、剥離層22の厚さt2は、グリーンシート10aの厚さに対して、50%以下の厚さである。
電極ペースト膜12bは、たとえば印刷法により形成される。印刷法としては、たとえば、スクリーン印刷などが挙げられる。印刷法の1種であるスクリーン印刷法により、剥離層22の表面に電極ペースト膜12bを形成する。
電極ペースト膜12bは、図2に示す導電性ペースト12aを印刷法により印刷することで形成することができる。この導電性ペースト12aは、第1導電性粒子42と、第2導電性粒子44とを有している。
本実施形態では、第1導電性粒子および第2導電性粒子は、CVD(化学気相成長)法により製造される。CVD法は、気相での化学反応を利用した製造方法であり、CVD法による導電性粒子の製造においては、平均粒子径の精密な制御が可能であること、粒度分布がシャープであること、などが利点として挙げられる。以下に製造方法を説明する。
図5にCVD法による導電性粒子の製造装置60を示す。この製造装置は、石英管を反応容器62とし、反応容器62は、原料気化部、反応部、冷却部から構成されている。原料気化部および反応部は、電気炉64による独立した温度制御が可能である。
CVD法による金属または合金の製造方法としては、原料として金属のハロゲン化物や金属のアルコキシドなどを用い、これらを気化させ、たとえばHガスなどで還元する方法が一般的である。本実施形態では、第1導電性粒子および第2導電性粒子の原料として、塩化Niと貴金属の塩化物とを使用する。
反応容器の原料気化部に、塩化Niを投入したルツボ70と、貴金属の塩化物を投入したルツボ70とを設置し、電気炉により加熱して、塩化Niおよび貴金属の塩化物を気化させる。気化した塩化Niおよび貴金属の塩化物は、微粒子状であり、これらの微粒子はキャリアガス導入ノズル66から導入されたキャリアガス(たとえば、ArガスやNガス)とともに反応容器の反応部に輸送される。反応部においては、還元ガス導入ノズル68から導入された還元ガス(たとえば、Hガス)により、塩化Niおよび貴金属の塩化物が還元され、同時にNiと貴金属との合金粒子が生成する。生成したNiと貴金属との合金粒子は、キャリアガスとともに冷却部に輸送され、冷却される。冷却されたNiと貴金属との合金粒子は、反応容器から排出され、捕集器により回収される。
上記の方法により製造される導電性粒子の平均粒子径や導電性粒子における貴金属濃度は、キャリアガスの流量、反応温度、反応させる原料の量比などにより制御できる。したがって、平均粒子径および貴金属濃度が異なる粒子であっても、上記の条件を変化させることにより、比較的容易に製造できる。
本実施形態では、第1導電性粒子42の平均粒子径は、200〜400nm、好ましくは、200〜350nmである。また、第2導電性粒子44の平均粒子径は、40〜80nm、好ましくは、45〜75nmである。好ましくは、第1導電性粒子42の平均粒子径は、第2導電性粒子44の平均粒子径に対して、2.5〜10倍、さらに好ましくは2.7〜7.7倍のサイズである。
第1導電性粒子42の平均粒子径が小さすぎると、他の添加材との分散性が低下すると共に、電極ペースト膜の密度が低下し、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗が悪化する傾向にある。また、第1導電性粒子42の平均粒子径が大きすぎると、第1導電性粒子の充填性が悪くなるため、ペースト膜の表面が粗くなり、さらには、内部電極層の薄層化も困難になる。その結果、焼結後の電極途切れが多くなる傾向にある。また、第2導電性粒子44の平均粒子径が大きすぎると、第1導電性粒子42の粒子間に、第2導電性粒子44が充填されにくく、電極ペースト膜の密度が上がらない傾向にある。また、第2導電性粒子44の平均粒子径が小さすぎると、粒子の製造が困難になると共に、導電性ペーストが増粘し、電極の印刷が困難になる傾向にある。
本実施形態では、導電性ペースト中の全導電性成分に対する前記貴金属の含有量が、0.3モル%超、13モル%以下、好ましくは、0.3モル超、5.0モル%以下である。貴金属の含有量が少なすぎると、本発明の効果が得られない傾向にあり、一方、貴金属の含有量が多すぎると、tanδおよび直流等価抵抗が悪化する傾向にある。
本実施形態では、第1導電性粒子における貴金属の含有割合が、0.3〜1.5モル%、好ましくは、0.5〜1.3モル%である。第1導電性粒子における貴金属の含有割合が少なすぎると、第1導電性粒子の球状化を抑制する効果が少なくなる傾向にある。
第2導電性粒子における貴金属の含有割合が、3.3〜10モル%、好ましくは、4〜8モル%である。第2導電性粒子における貴金属の含有割合が少なすぎると、第1導電性粒子の球状化を抑制する効果が少なくなる傾向にある。
第1導電性粒子42および第2導電性粒子44における貴金属は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする金属であることが好ましい。より好ましくは、Reである。
導電性ペースト中の全導電性粒子に対する第1導電性粒子42と第2導電性粒子44との含有割合が、重量比で、第1導電性粒子:第2導電性粒子=70:30〜99:1、好ましくは、75:25〜95:5の範囲である。第1導電性粒子42の含有割合が少なすぎる(第2導電性粒子44の含有割合が多すぎる)と、焼成後の電極層の貴金属濃度ムラが大きくなり、その結果、電極被覆率、静電容量、破壊電圧、直流等価抵抗が低下する。一方、第1導電性粒子42の含有割合が多すぎる(第2導電性粒子44の含有割合が少なすぎる)と、第1導電性粒子42の粒子間に、第2導電性粒子44が充填されない部分が存在し、本発明の作用効果が小さくなる。
第1導電性粒子42および第2導電性粒子44に主成分として含まれるNiと貴金属との合金の割合は、第1導電性粒子42または第2導電性粒子44の全体を100重量%として、好ましくは99〜100重量%、さらに好ましくは99.5〜100重量%である。主成分の割合が少なすぎると、焼成時における導電性粒子の球状化を抑制する効果が少なくなる傾向にある。第1導電性粒子42および/または第2導電性粒子44中に、主成分以外に含まれても良い金属成分(不純物)としては、Cu,Co,Fe,Ta,Nb,W,Zr,Au,Pdなどが例示される。また、S、C、P等の各種微量成分が0.1モル%程度以下で含まれていてもよい。
導電性ペースト12aは、第1導電性粒子42および第2導電性粒子44が、有機ビヒクルとともに混練されて、ペースト化される。有機ビヒクルは、上記の誘電体ペーストにおける場合と同様なものを用いることができる。本実施形態では、導電性ペースト12aには、図2に示す共材46も含まれる。共材46の粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、具体的には、10〜50nmが好ましい。
共材46は、誘電体ペーストに含まれる誘電体粒子と同様の組成を有する誘電体粒子であり、導電性粒子の周囲に存在し、第2導電性粒子44と共に、第1導電性粒子42の粒成長および球状化をより効果的に抑制することができる。
この導電性ペースト12aを用いて図3(A)に示す電極ペースト膜12bを形成した後は、次に、上記のキャリアシート20および30とは別に、キャリアシート26の表面に接着層28が形成してある接着層転写用シートを準備する。キャリアシート26は、キャリアシート20および30と同様なシートで構成される。
図3(A)に示す電極ペースト膜12bの表面に、接着層を形成するために、本実施形態では、転写法を採用している。すなわち、図3(B)に示すように、キャリアシート26の接着層28を、電極ペースト膜12bの表面に押し付け、加熱加圧して、その後キャリアシート26を剥がすことにより、図3(C)に示すように、接着層28を、電極ペースト膜12bの表面に転写する。
その時の加熱温度は、40〜100°Cが好ましく、また、加圧力は、0.2〜15MPaが好ましい。加圧は、プレスによる加圧でも、カレンダロールによる加圧でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。
その後に、電極ペースト膜12bを、図4(A)に示すキャリアシート30の表面に形成してあるグリーンシート10aの表面に接着する。そのために、図4(B)に示すように、キャリアシート20の電極ペースト膜12bを、接着層28を介して、グリーンシート10aの表面にキャリアシート20と共に押し付け、加熱加圧して、図4(C)に示すように、電極ペースト膜12bを、グリーンシート10aの表面に転写する。ただし、グリーンシート側のキャリアシート30が引き剥がされることから、グリーンシート10a側から見れば、グリーンシート10aが電極ペースト膜12bに接着層28を介して転写される。
この転写時の加熱および加圧は、プレスによる加圧・加熱でも、カレンダロールによる加圧・加熱でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。その加熱温度および加圧力は、接着層28を転写するときと同様である。
このような図3(A)〜図4(C)に示す工程により、単一のグリーンシート10a上に、所定パターンの電極ペースト膜12bが形成される。これを用いて、電極ペースト膜12bおよびグリーンシート10aが交互に多数積層された積層体を得る。その後、この積層体を最終加圧した後、キャリアシート20を引き剥がす。最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaである。また、加熱温度は、40〜100°Cが好ましい。得られた積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成する。そして、グリーンチップを脱バインダ処理および焼成する。
本発明のように内部電極層を形成するための導電性粒子に、卑金属としてのNiが含有される場合、脱バインダ処理における雰囲気は、AirまたはN雰囲気にすることが好ましい。また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300°C/時間、より好ましくは10〜50°C/時間、保持温度を好ましくは200〜400°C、より好ましくは250〜350°C、温度保持時間を好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは1〜10時間とする。
本発明では、グリーンチップを、10−10 〜10−2Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で焼成する。酸素分圧は、好ましくは10−10〜10−5Paである。焼成時の酸素分圧が低すぎると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがあり、逆に酸素分圧が高すぎると、内部電極層が酸化する傾向がある。
本発明では、グリーンチップの焼成を、1000〜1300°Cの温度、好ましくは1150〜1250°Cの温度で行う。焼成温度が低すぎると、焼結後の誘電体層の緻密化が不十分となり、静電容量が不足する傾向にあり、また、高すぎると、誘電体層が過焼成となり、直流電界印加時の容量経時変化が大きくなる傾向にある。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500°C/時間、より好ましくは200〜300°C/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500°C/時間、より好ましくは200〜300°C/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスをウェット(加湿)状態で用いることが好ましい。
本発明では、焼成後のコンデンサチップ体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗(IR)の加速寿命を著しく長くすることができ、信頼性が向上する。
本発明では、焼成後コンデンサチップ体のアニールを、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧下で行うことが好ましく、具体的には、酸素分圧が好ましくは10−2〜100Pa、より好ましくは10−2〜10Paの雰囲気で行う。アニール時の酸素分圧が低すぎると、誘電体層10の再酸化が困難であり、逆に高すぎると、内部電極層のニッケルが酸化して絶縁化する傾向にある。
本発明では、アニール時の保持温度または最高温度を、好ましくは1200°C以下の温度、より好ましくは900〜1150°C、さらに好ましくは、1000〜1100°Cとする。また、本発明では、これらの温度の保持時間を、好ましくは0.5〜4時間とする。アニール時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では誘電体材料の酸化が不十分なために絶縁抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、冷却速度を好ましくは50〜500°C/時間、より好ましくは100〜300°C/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。Nガスを加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75°C程度が好ましい。なお、脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行っても、独立に行ってもよい。
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、例えばバレル研磨、サンドブラスト等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。端子電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800°Cにて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した電極ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
本実施形態では、静電容量の低下が効果的に抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる積層セラミックコンデンサ2を提供することができる。その理由は、たとえば次のようにして説明することができる。
図6(A)に示すように、本実施形態では、粒子径が大きく貴金属濃度が低い第1導電性粒子42と、粒径が小さく貴金属濃度が高い第2導電性粒子44とが、導電性ペーストに含まれている。第1導電性粒子42と第2導電性粒子44との粒子径の差を利用して、第1導電性粒子の粒子間に、第2導電性粒子を充填することができる。また、第2導電性粒子44は、第1導電性粒子42よりも貴金属濃度が高いため、焼結開始温度が高い。その結果、焼成時において、第2導電性粒子44は、第1導電性粒子同士の焼結を遅らせる働きがあり、焼結開始温度を上昇させることができ、第1導電性粒子42の球状化を抑制できる。
したがって、本発明の導電性ペーストでは、内部電極層が薄層化されたとしても、さらには、第1導電性粒子42の粒度分布にバラツキがあったとしても、焼成段階での導電性粒子の焼結開始温度を上昇させる効果に差が生じない。その結果、導電性粒子の粒成長を抑制し、球状化、電極途切れなどを有効に防止し、静電容量の低下を効果的に抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる。
また、本実施形態では、共材46を導電性ペーストに含ませることにより、共材46が導電性粒子の周囲に存在し、第2導電性粒子44と共に、第1導電性粒子42の粒成長および球状化をより効果的に抑制することができる。
これに対し、図6(B)に示すように、前述した特許文献1(国際公開第2004/070748号パンフレット)に記載の貴金属被覆Ni粒子48は、コアとなるNi粒子の粒度バラツキが大きいと組成比率が異なり、ペースト膜12cの箇所によって、貴金属がリッチな箇所と、貴金属がプアな箇所が生じる。このため、ペースト膜12c中に、球状化途切れ防止に効果がでる部分と効果の少ない部分が発生してしまう。また、貴金属被覆Ni粒子48を製造するには、製造プロセスが長く、安価に作製できないというデメリットがある。
また、図6(C)に示すように、特許文献1に記載されたNiと貴金属との合金粒子50のみを含む従来の導電性ペーストの場合には、電極ペースト膜12dにおける各粒子の充填性が悪い。したがって、焼成後の内部電極層において、電極の途切れが見られ、電極被覆率が悪化し、破壊電圧、直流等価抵抗などの特性も悪化する。また、Niと貴金属との合金粒子50は、スパッタリングで形成された薄膜合金を粉砕して、導電性粒子としているので、製造プロセスが長く、安価に作製できないというデメリットがある。なお、図6(A)〜(C)においては、導電性粒子と共材以外の成分の図示は省略した。
本実施形態では、CVD法により第1導電性粒子42および第2導電性粒子44を製造しているため、導電性粒子の製造が容易である。したがって、貴金属被覆Ni粒子48またはNiと貴金属との合金粒子50を含む従来のペーストに比較し、同等以上の性能を有し、しかも製造プロセスが短く、安価に製造することができる導電性ペーストを提供することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の電子部品に適用することが可能である。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
導電性ペーストの作製
まず、CVD法により、第1導電性粒子および第2導電性粒子を製造した。第1導電性粒子の原料として、塩化Niおよび塩化Reを用いた。塩化Niを200g投入したルツボと、塩化Reを5g投入したルツボとを、原料気化部に設置し、塩化Niおよび塩化Reを気化させた。この気化した塩化Niおよび塩化Re微粒子をキャリアガスであるNにより、反応部まで輸送した。キャリアガスの流量は、3L/minとした。反応部は、1100℃に加熱されており、反応部に5L/minで供給される還元ガスとしてのHガスにより、塩化Niおよび塩化Reの還元反応が生じ、Ni−Re合金粒子が生成した。生成したNi−Re合金粒子は、キャリアガスとともに、冷却部において冷却され、その後反応容器から排出され、捕集装置により回収した。
また、塩化Niおよび塩化Reのルツボへの投入量を、それぞれ170gおよび35gとし、キャリアガスであるNガスの流量を5L/minとした以外は、上記と同様にして、第2導電性粒子を製造した。
得られた第1導電性粒子は、平均粒子径が300nm、粒子におけるReの含有割合(Re濃度)が1モル%である均一なNi−Re合金粒子であった。一方、得られた第2導電性粒子は、平均粒子径が60nm、粒子におけるReの含有割合(Re濃度)が6.5モル%である均一なNi−Re合金粒子であった。また、第1導電性粒子および第2導電性粒子の粒子径について、それぞれの粒度分布の標準偏差を求め、それぞれのCV値(=標準偏差/対数化した平均粒子径)を算出すると、ともに、0.3となった。したがって、第1導電性粒子と第2導電性粒子とは同程度の粒度分布を有していることとなる。上記のようにして製造された第1導電性粒子および第2導電性粒子を、重量比で、85:15の割合で混合し、導電性粒子とした。
この導電性粒子100重量部に対して、共材粒子としての平均粒子径50nmのBaTiO粉末(BT−005/堺化学工業(株))を20重量部加え、さらに有機ビヒクル(バインダー樹脂としてエチルセルロース樹脂4.5重量部をターピネオール228重量部に溶解したもの)を加え、3本ロールにより混練し、スラリー化して、内部電極形成用の導電性ペーストとした。
電極ペースト膜の評価
次いで、上記にて作製した導電体ペーストを、Gap100μmのアプリケーターでPETフィルム上に塗布し、その後、送風乾燥器にて、100°C、30分の条件で乾燥することにより、塗布・乾燥後の電極ペースト膜を得た。本実施例では、乾燥後の膜厚が5〜10μmとなるように電極ペースト膜を形成した。そして、得られた電極ペースト膜の体積(=電極膜の形成面積×電極膜の厚み)と、重量とから、電極ペースト膜の乾燥後の密度を計算し、相対ペースト膜密度を算出した。相対ペースト膜密度は、90%以上が好ましい。結果を表1に示す。
誘電体層用ペーストの作製
BaTiO粉末(BT−02/堺化学工業(株))と、MgCO、MnCO、(Ba0.6Ca0.4)SiOおよび希土類(Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y)から選択された粉末とを、ボールミルにより16時間、湿式混合し、乾燥させることにより誘電体材料とした。これら原料粉末の平均粒子径は0.1〜1μmであった。(Ba0.6Ca0.4)SiOは、BaCO、CaCOおよびSiOをボールミルにより湿式混合し、乾燥後に空気中で焼成したものを、ボールミルにより湿式粉砕して作製した。
得られた誘電体材料をペースト化するために、有機ビヒクルを誘電体材料に加え、ボールミルで混合し、誘電体グリーンシート用ペーストを得た。有機ビヒクルは、誘電体材料100質量部に対して、バインダとしてポリビニルブチラール:6質量部、可塑剤としてフタル酸ビス(2エチルヘキシル)(DOP):3質量部、酢酸エチル:55質量部、トルエン:10質量部、剥離剤としてパラフィン:0.5質量部の配合比である。
次に、前記の誘電体グリーンシート用ペーストをエタノール/トルエン(55/10)によって重量比で2倍に希釈したものを剥離層用ペーストとした。
次に、誘電体粒子および剥離剤を入れない以外は同様な前記の誘電体グリーンシート用ペーストを、トルエンによって重量比で4倍に希釈したものを接着層用ペーストとした。
グリーンシートの形成
まず、上記の誘電体グリーンシート用ペーストを用いて、PETフィルム(第2支持シート)上に、ワイヤーバーコーターを用いて、厚み1.0μmのグリーンシートを形成した。
電極ペースト膜の形成
上記の剥離層用ペーストを、別のPETフィルム(第1支持シート)上に、ワイヤーバーコーターにより塗布乾燥させて、厚み0.3μmの剥離層を形成した。
上記の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷により、図4に示すように、剥離層の表面に、所定パターンの電極ペースト膜12bを形成した。この膜12bの乾燥後の厚さは、0.5μmであった。なお、調製した導電性ペーストを用いてスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。
接着層の形成
上記の接着層用ペーストを、別の、表面にシリコーン系樹脂による剥離処理を施したPETフィルム(第3支持シート)の上に、ワイヤーバーコーターにより塗布乾燥させて、厚み0.2μmの接着層28を形成した。
最終積層体(焼成前素子本体)の形成
まず、電極ペースト膜12bの表面に、図4に示す方法で接着層28を転写した。転写時には、一対のロールを用い、その加圧力は0.1MPa、温度は80°Cとした。
次に、図5に示す方法で、接着層28を介してグリーンシート10aの表面に電極ペースト膜12bを接着(転写)した。転写時には、一対のロールを用い、その加圧力は0.1MPa、温度は80°Cとした。
次に、次々に電極ペースト膜12bおよびグリーンシート10aを積層し、最終的に、21層の電極ペースト膜12bが積層された最終積層体を得た。積層条件は、加圧力は50MPa、温度は120°Cとした。
焼結体の作製
次いで、最終積層体を所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)を行って、チップ形状の焼結体を作製した。
脱バインダは、
昇温速度:5〜300°C/時間
保持温度:200〜400°C、
保持時間:0.5〜20時間、
雰囲気ガス:加湿したNガス、
で行った。
焼成は、
昇温速度:5〜500°C/時間
保持温度:1200°C、
保持時間:0.5〜8時間
冷却速度:50〜500°C/時間
雰囲気ガス:加湿したNとHの混合ガス、
酸素分圧:10−7Pa、
で行った。
アニール(再酸化)は、
昇温速度:200〜300°C/時間、
保持温度:1050°C、
保持時間:2時間、
冷却速度:300°C/時間、
雰囲気ガス:加湿したNガス、
酸素分圧:10−1Pa、
で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0〜75°Cにて行った。
次いで、チップ形状の焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを端面に転写し、加湿したN+H雰囲気中において、800°Cにて10分間焼成して外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。
このようにして得られた各サンプルのサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は21、その厚さは1μmであり、内部電極層12の厚さは0.5μmであった。各層の厚み(膜厚)は、SEMで観測することにより測定した。
また、各サンプルについて、特性評価として電極被覆率の測定を行った。
電極被覆率は、積層セラミックコンデンサのサンプルを電極表面が露出するように切断し、その電極面をSEM観察し、画像処理することにより測定した。電極被覆率は、80%以上を良好とした。
さらに、各サンプルについて電気特性(静電容量C、誘電損失tanδ、破壊電圧VBおよび直流等価抵抗ESR)の特性評価を行った。電気特性(静電容量C、誘電損失tanδ、破壊電圧VBおよび直流等価抵抗ESR)は、次のようにして評価した。
静電容量C(単位はμF)は、サンプルに対し、基準温度25°CでデジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で測定した。静電容量Cは、好ましくは1.18μF以上、より好ましくは1.20μF以上を良好とした。
誘電損失tanδは、25°Cにおいて、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で測定した。誘電損失tanδは、好ましくは0.1未満を良好とした。
破壊電圧VB(単位はV)は、昇圧スピード100V/sec、検出電流10mA時の電圧値を破壊電圧とした。破壊電圧は、好ましくは145V以上、より好ましくは150V以上を良好とした。
直流等価抵抗ESR(単位はmΩ)は、インピーダンスアナライザー(HP社製4194A)にて、測定電圧1Vrmsの条件下で、周波数−ESR特性を測定し、インピーダンスが最小となる値を読み取ることにより測定した。直流等価抵抗は、好ましくは9.5mΩ以下、より好ましくは9mΩ以下を良好とした。
なお、これらの特性値は、サンプル数n=10個を用いて測定した値の平均値から求めた。これらの結果を表1に示す。なお、表1において、評価基準の欄の「○」は、スクリーン印刷が可能で、積層セラミックコンデンサのサンプルを得ることができたもののうち、上記の全ての特性において良好な結果を示したものを示している。「×」は、スクリーン印刷が不可能で積層セラミックコンデンサが作製できなかったもの、または、上記特性の内の1つでも良好な結果が得られなかったものを示す。
実施例2〜9
キャリアガスNの流量を変化させて、第1導電性粒子および第2導電性粒子の平均粒子径を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を製造した。得られた導電性粒子を用いて、導電性ペーストを作製し、コンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜12
キャリアガスNの流量を変化させて、第1導電性粒子および第2導電性粒子の平均粒子径を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を製造した。得られた導電性粒子を用いて、導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表1に示す。
Figure 2008053488
表1より、実施例1〜9については、すべてスクリーン印刷が可能であり、さらに、すべての特性(相対ペースト膜密度、電極厚み、静電容量、tanδ、電極被覆率、破壊電圧および直流等価抵抗)が良好であった。
これに対し、第1導電性粒子の平均粒子径が、本発明の範囲よりも小さい場合(比較例1)は、導電性ペーストの分散性が低下し、相対ペースト膜密度、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗が悪化した。一方、第1導電性粒子の平均粒子径が、本発明の範囲よりも大きい場合(比較例2)には、ペースト膜の表面粗さが悪化し、内部電極にも途切れが見られ、静電容量および破壊電圧が低下した。
第2導電性粒子の平均粒子径が、本発明の範囲よりも小さい場合(比較例3、5、7)には、導電性ペーストが増粘し、スクリーン印刷が不可能となった。一方、第2導電性粒子の平均粒子径が、本発明の範囲よりも大きい場合(比較例4、6、8)には、相対ペースト膜密度が悪化し、内部電極にも途切れが見られ、静電容量、破壊電圧および直流等価抵抗が低下した。
第1導電性粒子および第2導電性粒子の平均粒子径を同じとした場合(比較例9)には、相対ペースト膜密度が低く、その結果、静電容量および電極被覆率が低下した。
さらに、第2導電性粒子を添加しない場合(比較例10、11)、すなわち、導電性ペースト中に第1導電性粒子のみを含む場合にも、相対ペースト膜密度および電極被覆率が低く、その結果、破壊電圧および直流等価抵抗が悪化した。また、第1導電性粒子を添加しない場合(比較例12)、すなわち、導電性ペースト中に第2導電性粒子のみを含む場合にも、比較例11と同様の結果であることが確認できる。
実施例10〜35、比較例13〜61
CVD装置の原料気化部に設置されたルツボへの塩化Niおよび塩化Reの投入量を変化させることで、導電性粒子におけるReの含有割合(Re濃度)を表2〜4に示す値とした以外は、実施例1と同様にして、第1導電性粒子および第2導電性粒子を製造した。得られた第1導電性粒子および第2導電性粒子を用いて導電性ペーストを作製し、さらにコンデンサのサンプルを作製し、特性評価を行った。なお、導電性ペーストのスクリーン印刷が不可能であった場合は、以降の工程は実施しなかった。結果を表2〜4に示す。
表2〜4のうち、表2は、第1導電性粒子と第2導電性粒子との混合比を、重量比で、70:30とした場合の特性評価結果を示す表である。また、表3は、第1導電性粒子と第2導電性粒子との混合比を、重量比で、85:15とした場合の特性評価結果を示す表である。表4は、第1導電性粒子と第2導電性粒子との混合比を、重量比で、99:1とした場合の特性評価結果を示す表である。
Figure 2008053488
表2より、導電性粒子におけるRe濃度が本発明の範囲内である実施例10〜18は、実施例1〜9と同様に、すべての特性が良好であった。
これに対し、第1導電性粒子におけるRe濃度が、本発明の範囲外である場合(比較例13、17〜24、28)には、静電容量、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗のいずれの特性も悪化する傾向にあることが確認できる。
また、第2導電性粒子におけるRe濃度が、本発明の範囲よりも小さい場合(比較例13〜17)には、第1導電性粒子と同様に、静電容量、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗のいずれの特性も悪化する傾向にあり、特に静電容量の低下が顕著に見られた。第2導電性粒子におけるRe濃度が、本発明の範囲よりも大きい場合(比較例24〜28)には、焼成後の内部電極層が均一な合金層になりにくいため、静電容量、電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗のいずれの特性も悪化する傾向にあり、特に直流等価抵抗の悪化が顕著に見られることが確認できる。
Figure 2008053488
表3より、第1導電性粒子と第2導電性粒子との混合比を、重量比で、85:15とした場合であっても、表2と同様の傾向であることが確認できる。なお、比較例45の試料は、第1導電性粒子および第2導電性粒子におけるRe濃度を0、すなわち、第1導電性粒子および第2導電性粒子を、Ni粒子とした場合である。この場合には、Ni粒子の球状化に起因する内部電極層の膨張が顕著に見られ、その結果、電極被覆率が悪化した。また、静電容量、破壊電圧、直流等価抵抗のいずれも悪化していることが確認できる。
Figure 2008053488
表4より、第1導電性粒子と第2導電性粒子との混合比を、重量比で、99:1とした場合であっても、表2と同様の傾向であることが確認できる。
なお、第1導電性粒子の含有割合が少なすぎる(第2導電性粒子の含有割合が多すぎる)と、焼成後の内部電極層におけるRe濃度のムラが大きくなる傾向にあり、第1導電性粒子の含有割合が多すぎる(第2導電性粒子の含有割合が少なすぎる)と、相対ペースト膜密度が低下し、その結果、静電容量、電極被覆率等が悪化する傾向にあることが本発明者等により確認された。
表1〜4より、本発明に係る導電性ペーストは、内部電極層を薄層化した場合であっても、乾燥後の電極ペースト膜の密度を上げることができる。さらに、焼成時においても導電性粒子の粒成長、球状化、電極途切れなどを有効に防止できるため、静電容量の低下を効果的に抑制しつつ、その他の特性(電極被覆率、破壊電圧、直流等価抵抗等)を良好にすることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る導電性ペーストの概略図である。 図3(A)〜図3(C)は、電極ペースト膜の転写方法を示す要部断面図である。 図4(A)〜図4(C)は、図3(A)〜図3(C)の続きの工程を示す要部断面図である。 図5は、CVD法による本発明の導電性粒子の製造装置の模式図である。 図6(A)は図2に示す導電性ペーストを用いて形成した電極ペースト膜の概略図、図6(B)は従来例に係る貴金属被覆Ni粒子を含む導電性ペーストを用いて形成した電極ペースト膜の概略図、図6(C)は、従来例に係るNiと貴金属との合金粒子を含む導電性ペーストを用いて形成した電極ペースト膜の概略図である。
符号の説明
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
4a… 第1端部
4b… 第2端部
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 導電性ペースト
12b… 電極ペースト膜
12c… 電極ペースト膜
12d… 電極ペースト膜
20… キャリアシート
22… 剥離層
26… キャリアシート
28… 接着層
30… キャリアシート
42… 第1導電性粒子
44… 第2導電性粒子
46… 共材
48… 貴金属被覆Ni粒子
50… Niと貴金属との合金粒子
60… 導電性粒子製造装置
62… 反応容器
64… 電気炉
66… キャリアガス導入ノズル
68… 還元ガス導入ノズル
70… ルツボ

Claims (11)

  1. ニッケルと貴金属との合金を主成分とし、平均粒子径が200nm以上、400nm以下である第1導電性粒子と、
    ニッケルと貴金属との合金を主成分とし、平均粒子径が40nm以上、80nm以下である第2導電性粒子と、を含有する導電性ペーストであって、
    前記導電性ペースト中の全導電性成分に対する前記貴金属の含有量が、0.3モル%超、13モル%以下であり、
    前記第1導電性粒子における前記貴金属の含有割合が、0.3モル%以上、1.5モル%以下であり、
    前記第2導電性粒子における前記貴金属の含有割合が、3.3モル%以上、10モル%以下であることを特徴とする導電性ペースト。
  2. 前記貴金属が、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記導電性ペースト中の全導電性成分に対する前記第1導電性粒子と前記第2導電性粒子との含有割合が、重量比で、第1導電性粒子:第2導電性粒子=70:30〜99:1の範囲である請求項1または2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記第1導電性粒子および前記第2導電性粒子以外に、共材粒子、バインダー、溶剤および分散剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
  5. 内部電極層と誘電体層とを有する電子部品を製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
    前記電極ペースト膜を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと積層させる工程と、
    前記グリーンシートと前記電極ペースト膜との積層体を焼成する工程と、
    前記積層体を焼成した後に、焼成後の前記積層体をアニールする工程と、を有する電子部品の製造方法。
  6. 乾燥後の前記電極ペースト膜の密度が、乾燥後の前記電極ペースト膜の理論密度の90%以上である請求項5に記載の電子部品の製造方法。
  7. 前記積層体を、10−10 〜10−2Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1000〜1300°Cの温度で焼成する請求項5または6に記載の電子部品の製造方法。
  8. 前記積層体を焼成した後に、10−2〜100Paの酸素分圧を持つ雰囲気中で、1200°C以下の温度でアニールする請求項5〜7のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載の方法により製造された電子部品であって、
    前記内部電極層の厚みが、0.1μm以上、1.0μm以下である電子部品。
  10. 焼成およびアニール後の前記内部電極層が前記誘電体層を覆う理想の設計面積に対して、焼成およびアニール後の前記内部電極層が前記誘電体層を実際に覆う面積の割合を示す電極被覆率が、80%以上である請求項9に記載の電子部品。
  11. 内部電極層と誘電体層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサを製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
    前記電極ペースト膜を、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと交互に積層させる工程と、
    前記グリーンシートと前記電極ペースト膜との積層体を焼成する工程と、
    前記積層体を焼成した後に、前記積層体をアニールする工程と、を有する
    積層セラミックコンデンサの製造方法。
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