JP2007301592A - プランジャおよびプランジャの潤滑方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成で、射出スリーブとプランジャチップの摺動面に、溶湯の圧力変化に伴って変化する摺動負荷に応じて適切な量の潤滑剤を適切な位置に供給し、欠陥を生じることなく適切に高品位なダイカスト製品を製造することができるプランジャおよびプランジャの潤滑方法を提供する。
【解決手段】本発明のプランジャは、溶湯Mが給湯口から注湯される射出スリーブ1と、射出スリーブ1内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップ2との摺動面10、20に潤滑剤Lを供給する潤滑剤供給手段3を備えており、潤滑剤供給手段3は、摺動面10、20と連通されており所定量の潤滑剤Lを貯留するリザーブ室30と、射出スリーブ1内での溶湯Mの圧力に応じてリザーブ室30内の容積を変化させるよう移動してリザーブ室30から摺動面10、20へ潤滑剤Lを吐出させるピストン31と、を有している。
【選択図】図3

Description

本発明は、プランジャおよびプランジャ潤滑方法に関し、さらに詳しくは、溶湯が給湯口から注湯される射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップと、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段と、を備えてなるプランジャ、および、溶湯が給湯口から注湯される射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップとの摺動面を潤滑するプランジャの潤滑方法に関するものである。
ダイカストマシンのプランジャにおいては、射出スリーブ内にプランジャチップを摺動可能に嵌挿した構成とされており、プランジャチップを後退させた状態で射出スリーブの給湯口から溶湯を注湯し、プランジャチップを前進駆動して射出スリーブ内の溶湯を成形型のキャビティ内に射出充填している。そして、プランジャチップの前進は、通常、後方の前進開始位置から所定の切替位置まで(低速域)は比較的低速で、前方の切替位置から前方(高速域)は比較的高速・高圧に切り替えて駆動している。後方に位置する低速領域では溶湯の圧力が低いために射出スリーブとプランジャチップとの摺動負荷が小さい(低い)が、前方に位置する高速領域では溶湯の圧力が高くなるために摺動負荷が大きく(高く)なる。
ここで、射出スリーブ内の溶湯を適切に射出するためには、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面が摩耗したりカジリが発生しないように、両者の摺動面を適切に潤滑する必要がある。射出スリーブとプランジャチップとの摺動面を潤滑するために、潤滑剤をプランジャチップの上部に滴下することにより摺動面に供給したり、射出スリーブ内に噴霧することが従来から一般に行われている。そして、潤滑剤を滴下する場合には、一般に、プランジャチップが溶湯の射出を開始する後退限の位置で停止しているときに行われている。
ところで、射出スリーブとプランジャチップとを潤滑するための潤滑剤が射出スリーブ内に供給された溶湯と接触すると、溶湯の熱によりガスとなったり或は残留物などとなる(以下、ガスや残留物などをガス等と総称する)。これらのガス等が溶湯に巻き込まれると、ダイカスト製品に混入して欠陥が生じるという問題が生じることとなる。
このような問題を回避し、特に高品位なダイカスト製品を成形するためには、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面に供給する潤滑剤の量を減らすことが考えられるが、潤滑剤の供給量を減らすと、摺動面を充分に潤滑することができなくなり、したがって、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面が摩耗したりカジリが発生して溶湯を適切に射出することができなくなる。そのため、潤滑剤が溶湯に接触することなく、適切な量の潤滑剤を摺動面に供給する必要がある。
このような問題を解決することを課題とした従来の技術として、特許文献1が知られている。特許文献1には、金型の製品形状部空間に臨む射出スリーブとその射出スリーブに摺動可能に内挿された射出プランジャとを備え、射出スリーブに注湯された溶湯を射出プランジャの前進動作により製品形状部空間に充填するようにしたダイカスト機の潤滑装置であって、射出プランジャの外周摺動面に潤滑剤の吐出口を開口させ、射出プランジャの前進動作時にはその吐出口から潤滑剤を吐出する一方で、射出プランジャの後退動作時には上記吐出口を吸引口として射出スリーブ内の潤滑剤を吸引するようにしたことなどを特徴とするダイカスト機の潤滑装置が開示されている。
すなわち、特許文献1では、射出プランジャ(プランジャチップ)の前進動作時にはその外周摺動面に潤滑剤を吐出させることにより潤滑し、射出プランジャの後退動作時にはその外周摺動面と射出スリーブとの間の余剰潤滑剤を吸引させて除去することにより、溶湯に接触して反応することとなる残存潤滑剤を少なくするように構成している。
特開2005−230887号公報
上述したように、プランジャチップの前進には一般に、摺動負荷が小さい低速領域と摺動負荷が大きい高速領域とが設定されていることにより、切替位置から後方と前方とでは、摺動面に必要な潤滑剤の量が異なる。すなわち、前進開始位置から切替位置までの低速領域では、鋳造圧力などが低く摺動負荷が小さいために潤滑剤を供給する必要が僅かしかないか、または、潤滑剤を供給する必要がない状況もあり得る。一方、切替位置から前方の高速領域では、鋳造圧力などが高くなることにより摺動負荷が大きくなるために潤滑剤を多く供給する必要がある。
しかしながら、上述した一般的な従来の技術のうち、潤滑剤を滴下する場合にあっては、プランジャチップが後退限の位置で停止しているときに行われるため、摺動負荷が大きい前方に位置する高速域に潤滑剤が届かず不足するという問題が生じる。また、潤滑剤を射出スリーブ内に噴霧する場合には、上述したように、射出スリーブ内に注湯された溶湯が潤滑剤と接触して発生したガス等が溶湯に巻き込まれ、ダイカスト製品に混入して欠陥が生じるという問題や、使用する潤滑剤の量が多くなるなどの問題が生じる。
また、上記従来の技術のうち、上記特許文献1にあっては、摺動負荷の大きさと密接に関係するプランジャチップの前進速度或は前進位置に応じて潤滑剤の供給を調整することはできないことから、摺動面の潤滑を適切に行うことができないという問題があった。また、特許文献1ではプランジャチップの後退時に余剰潤滑剤を吸引させて除去するため、この後退時に摺動面を充分に潤滑することができないという問題もあった。そして、特許文献1では、プランジャチップの前進動作時における潤滑剤の吐出と、プランジャチップの後退動作時における余剰潤滑剤の吸引・除去とを切り替えて行うため、構造が複雑となり、また、制御が煩雑となるなどの問題があった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、射出スリーブとプランジャチップの摺動面に、溶湯の圧力変化に伴って変化する摺動負荷に応じて適切な量の潤滑剤を適切な位置に供給することができ、その結果として、欠陥を生じることなく適切に高品位なダイカスト製品を製造することができるプランジャおよびプランジャの潤滑方法を提供することを目的とする。
請求項1のプランジャに係る発明は、上記目的を達成するため、溶湯が給湯口から注湯される射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップと、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段と、を備えてなるプランジャであって、潤滑剤供給手段が、摺動面と連通されており所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、射出スリーブ内での溶湯の圧力に応じてリザーブ室内の容積を変化させるよう移動してリザーブ室から摺動面へ潤滑剤を吐出させるピストンと、を有することを特徴とするものである。
請求項2のプランジャの潤滑方法に係る発明は、上記目的を達成するため、溶湯が給湯口から注湯される射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップとの摺動面を潤滑するプランジャの潤滑方法であって、少なくとも、所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、リザーブ室内の容積を変化させるよう移動するピストンと、を備えてなる潤滑剤供給手段を設けて、射出スリーブ内での溶湯の圧力に応じてリザーブ室の容積を変化させるようピストンを移動させて潤滑剤をリザーブ室から摺動面に吐出させることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、最初に潤滑剤供給手段のリザーブ室内の容積が最大となるようにピストンが位置する状態とされており、リザーブ室には所定量の潤滑剤が予め充填されている。溶湯を射出するに際しては、射出スリーブ内でプランジャチップが後退した状態で、射出スリーブ内に溶湯が注湯され、プランジャチップが前進駆動される。このプランジャチップの前進速度は一般に、前進開始から所定の切替位置までの後方に位置する低速域が比較的低速で、切替位置から前方に位置する高速域が比較的高速・高圧力で移動される。低速域では、溶湯の圧力は高くなっていないために、潤滑剤供給手段のピストンは、移動しないか、または、リザーブ室の容積を僅かに縮小させる程度に移動する。したがって、摺動負荷が低い後方の低速域においては潤滑剤が摺動面に供給されないか、または、供給されても僅かな量となる。そして、プランジャチップが切替位置を過ぎて前方へ比較的高速・高圧でさらに前進駆動されると、溶湯の圧力の上昇によって潤滑剤供給手段のピストンがリザーブ室の容積を縮小させるように移動し、潤滑剤を摺動面に吐出させる。このように、プランジャチップの前進移動に伴う溶湯の圧力の変化に応じて潤滑剤供給手段のピストンが移動してリザーブ室の容積を変化させることにより、適切な位置で適切な量の潤滑剤を摺動面に対して機械的に自動で供給して、射出スリーブに対するプランジャチップの位置に応じて変化する摺動負荷を軽減する。そのため、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面を適切に潤滑することができ、しかも、潤滑剤の溶湯に接触する量を低減させることができるため、適切に高品位なダイカスト製品を製造することが可能なプランジャが提供される。
請求項2の発明では、所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、リザーブ室内の容積を変化させるよう移動するピストンと、を備えてなる潤滑剤供給手段を設ける。そして、リザーブ室には所定量の潤滑剤を予め充填し、且つ、潤滑剤供給手段のリザーブ室内の容積が最大となるようにピストンが位置する状態としておく。溶湯を射出するに際しては、射出スリーブ内でプランジャチップを後退させた状態で、プランジャチップを前進駆動する。このプランジャチップの前進速度は一般に、前進開始から所定の切替位置までの後方に位置する低速域が比較的低速で、切替位置から前方に位置する高速域が比較的高速・高圧力で移動させる。摺動負荷が低く後方に位置する低速域では、溶湯の圧力は高くなっていないために、潤滑剤供給手段のピストンは、移動しないか、または、リザーブ室の容積を僅かに縮小させる程度に移動する。したがって、低速域においては潤滑剤を摺動面に供給しないか、または、供給しても僅かな量となる。そして、切替位置を超えてプランジャチップを前方へ比較的高速・高圧でさらに前進駆動すると、溶湯の圧力の上昇によって潤滑剤供給手段のピストンをリザーブ室の容積が縮小するように移動させ、潤滑剤を摺動面に吐出させる。このように、プランジャチップの前進移動に伴う溶湯の圧力の変化に応じて潤滑剤供給手段のピストンを移動させてリザーブ室の容積を変化させることにより、適切な位置で適切な量の潤滑剤が機械的に自動で摺動面に供給され、射出スリーブに対するプランジャチップの位置に応じて変化する摺動負荷が軽減される。そのため、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面を適切に潤滑することができ、しかも、潤滑剤の溶湯に接触する量を低減させることができるため、適切に高品位なダイカスト製品を製造することが可能なプランジャの潤滑方法が提供される。
請求項1の発明によれば、摺動面と連通されており所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、射出スリーブ内での溶湯の圧力に応じてリザーブ室内の容積を変化させるよう移動してリザーブ室から摺動面へ潤滑剤を吐出させるピストンと、を有する潤滑剤供給手段を備えたという簡単な構成により、射出スリーブとプランジャチップの摺動面に、その摺動負荷に応じて適切な量の潤滑剤を適切な位置で機械的に自動で供給することができ、したがって、適切に高品位なダイカスト製品を製造することが可能なプランジャを提供することができる。
請求項2の発明によれば、所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、リザーブ室内の容積を変化させるよう移動するピストンと、を備えてなる潤滑剤供給手段を設けて、射出スリーブ内での溶湯の圧力に応じてリザーブ室の容積を変化させるようピストンを移動させて潤滑剤をリザーブ室から摺動面に吐出させるという簡単な構成により、射出スリーブとプランジャチップの摺動面に、その摺動負荷に応じて適切な量の潤滑剤を適切な位置で機械的に自動で供給することができ、したがって、適切に高品位なダイカスト製品を製造することが可能なプランジャの潤滑方法を提供することができる。
最初に、本発明のプランジャの実施の一形態を、ダイカスト成形型に溶融された金属を射出するためのプランジャの場合により、図1〜図3に基づいて詳細に説明する。図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。
本発明のプランジャは、概略、溶湯Mが給湯口から注湯される射出スリーブ1と、射出スリーブ1内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯Mを射出するプランジャチップ2と、射出スリーブ1とプランジャチップ2との摺動面10、20に潤滑剤Lを供給する潤滑剤供給手段3と、を備えている。そして、潤滑剤供給手段3は、摺動面10、20と連通されており所定量の潤滑剤Lを貯留するリザーブ室30と、射出スリーブ1内での溶湯Mの圧力に応じてリザーブ室30内の容積を変化させるよう移動してリザーブ室30から摺動面10、20へ潤滑剤Lを吐出させるピストン31と、を有している。なお、この説明においては、後方とは図1〜図3における右方を指し、前方とは図1〜図3における左方を指すものとする。
図1に示すように、射出スリーブ1は、その先端(図1の左方)がダイカスト成形型のキャビティと湯道を介して連通されている。射出スリーブ1の後方の上面には、保持炉から汲まれた溶湯Mをラドルによって注湯する注湯口が設けられている。射出スリーブ1内にはプランジャチップ2が、所定のクリアランスを有して、摺動可能に嵌挿されている。射出スリーブ1の内周面10とこの内周面10と接するプランジャチップ2の外周面20とが摺動面となっている。プランジャチップ2は、射出スリーブ1の後方(図1の右方)に配設された油圧などによって作動される射出シリンダの作動ロッド5に接続されている。
プランジャチップ2の内部には、所定の容積を有するリザーブ室30が形成されている。リザーブ室30は、作動ロッド5とプランジャチップ2とにわたって形成された潤滑剤供給ライン32と連通されている。潤滑剤供給ライン32は、この実施の形態の場合、潤滑剤タンクの管路6と接続されており、管路6の中間部には開閉バルブ60が介装されている。また、リザーブ室30には、プランジャチップ2の外周面20に開口する潤滑剤吐出経路33が複数形成されている。なお、図1〜図3に示された実施の形態おいては、2つの潤滑剤吐出経路33がプランジャチップ2の上方と下方に開口するよう示されているが、本発明はこの実施の形態に限定されることなく、プランジャチップ2の側方など、任意の場所に潤滑剤吐出経路33を開口させるよう設けることができる。また、各潤滑剤吐出経路33は、プランジャチップ2の外周20に開口する位置によって、その断面径を変化させることもできる。
プランジャチップ2には、リザーブ室30の後方にガイド孔34が形成されており、リザーブ室30の前方にピストン31を挿通するための挿通孔35がプランジャチップ2の前面に開口するよう形成されている。プランジャチップ2の前面における挿通孔35の周囲には、後方から前方に向かって漸次拡径するテーパ部分36が形成されている。
ピストン31は、所定の受圧面積を有するもので、その後端面にはリザーブ室30のガイド孔34に挿通されるガイドロッド37が設けられている。ピストン31は、プランジャチップ2の挿通孔35に対して前後方向に移動可能に挿通されており、リザーブ室30に入り込むように移動することによりリザーブ室30内の容積を減少させ、また、リザーブ室30から出るように移動することによりリザーブ室30内の容積を増大させる。リザーブ室30の後端面とピストン31の後端面との間には、ピストン31をリザーブ室30から前方に突出させるように、すなわち、リザーブ室30内の容積を増大させるように付勢するばね38が介装されている。なお、ピストン31は、挿通孔35から抜け出ないように抜け止めが設けられている。
図2に示すように、ピストン31がリザーブ室30から出るように前進限に位置している状態では、容積が最大となっているリザーブ室30内に所定量の潤滑剤Lが貯留されており、また、図3に示すように、ピストン31がリザーブ室30内へ入り込むように後方へ移動することにより、リザーブ室30内の容積が小さくなるよう変化し、これに伴って、リザーブ室30内に貯留された潤滑剤Lが潤滑剤吐出経路33を介してプランジャチップ2の外周面20に吐出されることとなる。
次に、本発明のプランジャの潤滑方法を、上述したように構成されたプランジャを用いる場合によってその作動と共に図2および図3に基づいて説明する。
本発明のプランジャの潤滑方法は、概略、少なくとも、摺動面10、20に連通されており所定量の潤滑剤Lを貯留するリザーブ室30と、リザーブ室30内の容積を変化させるよう移動するピストン31と、を備えてなる潤滑剤供給手段3を設けて、射出スリーブ1内での溶湯Mの圧力に応じてリザーブ室30の容積を変化させるようピストン31を移動させて潤滑剤Lをリザーブ室30から摺動面10、20に吐出させるものである。
プランジャにより溶湯Mをダイキャスト成形型のキャビティに射出してダイカスト製品を製造するに際しては、最初に、プランジャチップ2を後退させた状態で、加熱溶融された金属である溶湯Mを注湯口から射出シリンダ1内に注湯する。このとき、潤滑剤供給手段3のピストン31は、図2に示すように前進限に位置しており、リザーブ室30の容積は最大となっている。そして、開閉バルブ60が開状態に制御されており、潤滑剤Lが潤滑剤タンクの管路6から潤滑剤供給ライン32を介して、容積が最大となっているリザーブ室30と潤滑剤吐出経路33に充填されている。この状態で、射出シリンダの作動ロッド5を伸長させることなどにより、プランジャチップ2を前進移動させる。プランジャチップ2を前進移動させる射出シリンダの駆動は、前進開始から所定の切替位置までの後方においては比較的低速の低速域に設定されており、切替位置から前方においては比較的高速・高圧力の高速域に設定されている。後方の摺動負荷が低い低速域では、溶湯Mの圧力は高くなっていないため、図2に示すように、潤滑剤供給手段3のピストン31は、移動しないか、または、リザーブ室30内に僅かに入り込む程度に留まりその容積を僅かに縮小させるだけにすぎない。したがって、後方に位置する低速域においては潤滑剤Lが摺動面10、20に供給されないか、または、僅かな量の潤滑剤Lが摺動面10、20に供給されるだけとなる。
そして、さらにプランジャチップ2が前進移動されて摺動負荷が大きい高速域となったとき、或は、溶湯Lが成形型のゲートを通過するときには、溶湯Mの圧力が上昇することとなる。その結果、図3に示すように、潤滑剤供給手段3のピストン31が溶湯Mの圧力Pの上昇を受けてばね38の付勢に抗してリザーブ室30の容積を縮小させるように後退移動される。そして、プランジャチップ2の前面に形成されたテーパ部分36によって、ピストン31は後退移動限に近付くと、その前端面に溶湯Mの圧力Pを集中的に受けて後退移動が加速される。このピストン31が後退移動するとき、開閉バルブ60は閉状態に制御されている。そのため、リザーブ室30に貯留された潤滑剤Lは、潤滑剤供給ライン32を逆流することなく、射出スリーブ1の前方の摺動面10とプランジャチップ2の摺動面20との間に吐出されて潤滑する。そして、ダイカスト製品の一成形サイクルが完了して次の成形サイクルを行うためにプランジャチップ2が後退するときには、その後退開始位置、すなわち射出スリーブ1の前方位置が潤滑剤Lを充分に塗布されているために、スムーズにプランジャチップ2の後退を開始することができる。なお、ピストン31がリザーブ室30内に入り込むときに潤滑剤Lが逆流するのを防止するために、開閉バルブ60に替えてまたは開閉バルブ60に加えて逆止弁を設けてもよく、また、逆流する場合の潤滑剤Lの圧力以上の圧力をかけて潤滑剤供給ライン32に潤滑剤Lを供給するよう構成してもよい。
このように、射出スリーブ1に対するプランジャチップ2の前進移動に伴う溶湯Mの圧力の変化に応じて(摺動負荷の変化に応じて、と換言することもできる)潤滑剤供給手段3のピストン31が移動することによりリザーブ室30の容積を変化させて、摺動負荷が大きくなる高速域などの前方位置で必要となる潤滑剤Lを適切な量で機械的に自動で摺動面10、20に供給する。そのため、カジリが発生することなく射出スリーブ1とプランジャチップ2との摺動面10、20を適切に潤滑することができ、しかも、潤滑剤Lが溶湯Mに接触することがなく、また使用する潤滑剤Lの総量を低減させることができる。そして、前方位置で潤滑剤Lが摺動面10、20に供給されるため、溶湯Mの射出後にプランジャチップ2を後退移動(引戻し)させるときにも、かかる位置に残留した潤滑剤Lにより引戻し抵抗を小さくすることができる。
図4は、本発明による潤滑剤供給手段3を備えたプランジャ(今回)と、上述したように潤滑剤をプランジャチップの上部に滴下する従来のプランジャ(比較)とを用いて、板状のテストピースを10枚ダイカスト成形して、試験用にたとえば520℃程度に加熱処理することによりテストピースの表面に発生したブリスタの発生面積の平均を比較したグラフである。今回と比較の成形条件は、共に、潤滑剤として植物油に極圧添加剤などを添加した油性潤滑剤を使用し、1ショットあたりに比較における滴下量および今回においてピストン31の後退移動による潤滑剤Lの吐出量を2ccとし、射出速度(プランジャチップ2の前進速度)を低速域(区間400mm)で0.2m/secに、高速域(区間100mm)で2.3m/secに設定した。また、射出スリーブ1は、材質がSKD61で、内径が115mmのものを用いた。そして、今回の潤滑剤供給手段3のピストン31を前方に押し戻すためのばね38は、荷重30Kgfのばね定数を有するものを使用した。
潤滑剤Lが溶湯Mと接触することにより発生するガス等が原因で発生するブリスタの発生量は、図4のグラフから明らかであるように、今回の方が比較(従来の技術)よりも大幅に減少している。また、本発明によるプランジャでは、溶湯Mの射出を連続して100ショット行った場合でもカジリが発生することはなかった。このように、本発明では、射出シリンダ1とプランジャチップ2の摺動面10、20に対して、適切な位置で適切な量の潤滑剤を機械的に自動で供給するため、大量の潤滑剤Lを使用することなく、適切に高品位なダイカスト製品を製造することができる。
本発明のプランジャの実施の一形態を示した部分断面図である。 本発明のプランジャの低速域の状態を示す断面図である。 本発明のプランジャの高速域の状態を示す断面図である。 本発明と従来の技術とのブリスタ発生量を比較したグラフである。
符号の説明
M:溶湯、 L:潤滑剤、 1:射出スリーブ、 2:プランジャチップ、 10:射出スリーブの内周面(摺動面)、 20:プランジャチップの外周面(摺動面)、 3:潤滑剤供給手段、 30:リザーブ室、 31:ピストン、 32:潤滑剤供給ライン、 33:潤滑剤吐出経路

Claims (2)

  1. 溶湯が給湯口から注湯される射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップと、射出スリーブとプランジャチップとの摺動面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段と、を備えてなるプランジャであって、
    潤滑剤供給手段が、
    摺動面と連通されており所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、
    射出スリーブ内での溶湯の圧力に応じてリザーブ室内の容積を変化させるよう移動してリザーブ室から摺動面へ潤滑剤を吐出させるピストンと、
    を有することを特徴とするプランジャ。
  2. 溶湯が給湯口から注湯される射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌挿されて成形型のキャビティ内へ溶湯を射出するプランジャチップとの摺動面を潤滑するプランジャの潤滑方法であって、
    少なくとも、所定量の潤滑剤を貯留するリザーブ室と、リザーブ室内の容積を変化させるよう移動するピストンと、を備えてなる潤滑剤供給手段を設けて、
    射出スリーブ内での溶湯の圧力に応じてリザーブ室の容積を変化させるようピストンを移動させて潤滑剤をリザーブ室から摺動面に吐出させることを特徴とするプランジャの潤滑方法。
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CN112589083A (zh) * 2020-11-26 2021-04-02 荣汉华 一种便于取件和浇筑的高精度生活用品模具铸造夹具

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014518161A (ja) * 2011-06-28 2014-07-28 コプロメック・ディ・キャスティング・エス.アール.エル.・ア・ソシオ・ユニコ ダイカストマシンのためのピストン
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