以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る電解液は、例えば、溶媒と、溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、O=S=O結合を有するスルホン誘導体、あるいはO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物を含んでおり、また、電解質塩は、LiBF4 を含んでいる。これにより、高温環境下においても、化学的安定性を向上させることができるようになっている。これらのスルホン誘導体およびスルホン酸化合物は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよく、スルホン誘導体とスルホン酸化合物とを混合して用いてもよい。
このようなスルホン誘導体あるいはスルホン酸化合物としては、硫黄(S)原子に、不飽和結合を有する炭素が少なくとも1つ結合した構造を有するものが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
スルホン酸化合物としては、化1に示した化合物,化2に示した化合物,化3に示した化合物あるいは化4に示した化合物が好ましく挙げられる。
(式中、R1は、−CH
2 −あるいは炭素数6以下のアルキレン基、またはこれらの少なくとも一部の水素(H)をアリル基,ビニレン基,アリール基,アルコキシ基およびハロゲン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換した基を表す。R1は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。R2,R3,R4およびR5は、アルキル基,アリル基,アリール基,複素環基,アラルキル基,アルコキシアルキル基あるいはこれらの少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基、または水素基、またはハロゲン基を表す。R2,R3,R4およびR5は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
(式中、R6,R7,R8およびR9は、アルキル基,アリル基,アリール基,複素環基,アラルキル基,アルコキシアルキル基あるいはこれらの少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基、または水素基、またはハロゲン基を表す。R6,R7,R8およびR9は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
(式中、R10は、−CH
2 −あるいは炭素数6以下のアルキレン基、またはこれらの少なくとも一部の水素をアリル基,ビニレン基,アリール基,アルコキシ基およびハロゲン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換した基を表す。R10は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。R11,R12,R13,R14,R15およびR16は、アルキル基,アリル基,アリール基,複素環基,アラルキル基,アルコキシアルキル基あるいはこれらの少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基、または水素基、またはハロゲン基を表す。R11,R12,R13,R14,R15およびR16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
(式中、R17,R18,R19,R20,R21およびR22は、アルキル基,アリル基,アリール基,複素環基,アラルキル基,アルコキシアルキル基あるいはこれらの少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基、または水素基、またはハロゲン基を表す。R17,R18,R19,R20,R21およびR22は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
化1に示した化合物あるいは化2に示した化合物としては、4員環あるいは5員環の化合物が好ましく挙げられ、具体的に例を挙げれば、化5(1)から化5(26)に示した化合物などがある。また、化3に示した化合物あるいは化4に示した化合物としては、4員環あるいは5員環の化合物が好ましく挙げられ、具体的に例を挙げれば、化6(1)から化6(29)に示した化合物などがある。
また、スルホン誘導体としては、化7に示した化合物が好ましく挙げられる。
(式中、R23およびR24は、炭素数6以下のアルキル基,炭素数2から4のアルケニル基,炭素数6から14のアリール基,−CH=CH−Rで表される基(Rは水素または炭素数4以下のアルキル基を表す。あるいはこれらの少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、R23およびR24の少なくとも一方は−CH=CH−Rで表される基である。R23およびR24は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
化7に示した化合物について具体的に例を挙げれば、化8(1)から化8(12)に示した化合物などがある。
このようなスルホン誘導体およびスルホン酸化合物の含有量は、電解液において、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この範囲内でより高い効果を得ることができるからである。
溶媒としては、これらのスルホン誘導体あるいはスルホン酸化合物に加えて、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むことが好ましく、中でも、化9に示した環式炭酸エステル誘導体が望ましい。常温のみならず、高温環境下においても、電解液の化学的安定性を向上させることができるからである。環式炭酸エステル誘導体は、1種を単独で用いてよく、複数種を混合して用いてもよい。
(R25,R26,R27およびR28は、メチル基,エチル基あるいはそれら少なくとも一部の水素をフッ素(F),塩素(Cl)若しくは臭素(Br)で置換した基、または水素、またはフッ素基、または塩素基、または臭素基を表す。R25,R26,R27およびR28のうちの少なくとも一つはハロゲンを有する基である。R25,R26,R27およびR28は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
化9に示した環式炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化10(1)から化10(26)に示した化合物などがある。中でも、化10(1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
溶媒としては、また化11(1)に示した1,3−ジオキソール−2−オンあるいは化11(2)に示した4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの不飽和結合を有する環状の炭酸エステルも好ましい。電解液の化学的安定性を向上させることができ、高温においても高い効果を得ることができるからである。電解液に不飽和結合を有する環状の炭酸エステルを含む場合には、その含有量は0.01質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの範囲内でより高い効果を得ることができるからである。不飽和結合を有する環状の炭酸エステルは、1種を単独で用いてよく、複数種を混合して用いてもよい。
溶媒は、これらの他にも、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、燐酸トリメチルが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で混合してもよく、複数種を混合して用いてもよい。
電解質塩としては、LiBF4 に加えて、化12に示した軽金属塩を含むことが好ましい。この軽金属塩は、例えば、負極22の表面に安定な被膜を形成し、溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができるからである。化12に示した軽金属塩は、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
(R31は、化13,化14または化15に示した基を表し、R32は、ハロゲン,アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は、酸素または硫黄をそれぞれ表し、M11は、遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、M11は、短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウムを表し、aは1から4の整数であり、bは0から8の整数であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1から3の整数である。)
(R41は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)
(R43,R44は、アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。R43,R44は、同一であっても異なっていてもよい。)
化12に示した軽金属塩としては、例えば、化16に示した化合物が好ましい。
(R31は、化17,化18または化19に示した基を表し、R33は、ハロゲンを表し、M12は、リン(P)またはホウ素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、a1は1から3の整数であり、b1は0,2または4であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1から3の整数である。)
(R41は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)
(R43,R44は、アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。R43,R44は、同一であっても異なっていてもよい。)
このような化合物について具体的に例を挙げれば、化20(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、化20(2)に示したテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化20(3)に示したジフルオロビス[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化20(4)に示したジフルオロ[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化20(5)に示したビス[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、あるいは化20(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムなどがある。
電解質塩としては、また、LiPF6 、LiClO4 、LiAsF6 、またはLiN(CF3 SO2 )2 ,LiN(C2 F5 SO2 )2 あるいはLiN(C4 F9 SO2 )(CF3 SO2 )などの化21に示したリチウム塩、またはLiC(CF3 SO2 )3 などの化22に示したリチウム塩、または化23に示した環状のイミド塩、または化24に示した環状のイミド塩も好ましい。
(M1は短周期型周期表における1A族元素,2A族元素またはアルミニウムを表す。R29は、炭素数2から5のアルキレン基、またはそれらの少なくとも一部の水素をフッ素で置換した基を表す。R29は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。tは、1, 2または3である。)
(M2は、短周期型周期表における1A族元素,2A族元素またはアルミニウムを表す。R30は、炭素数2から5のアルキレン基、またはそれらの少なくとも一部の水素をフッ素で置換した基を表す。R30は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。uは、1, 2または3である。)
化23に示した環状のイミド塩および化24に示した環状のイミド塩としては、例えば、化25(1)に示した1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、化25(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、化25(3)に示した1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、化25(4)に示した1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、あるいは化25(5)に示したパーフルオロヘプタンニ酸イミドリチウムが挙げられる。これらの環状のイミド塩は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
特に、LiBF4 に加えて、LiPF6 と、化12に示した軽金属塩、LiClO4 、LiAsF6 、化21に示したリチウム塩、化22に示したリチウム塩、化23に示した環状のイミド塩、および化24に示した環状のイミド塩からなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を向上させることができると共に、常温のみならず、高温環境下においても、電解液の化学的安定性を向上させることができるからである。
電解質塩としては、これらの他にも、LiB(C6 H5 )4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiClあるいはLiBrなどが挙げられ、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
電解質塩の含有量(濃度)は、溶媒に対して、0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなる虞があるからである。そのうち、化12に示した軽金属塩の含有量は、溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内においてより高い効果を得ることができるからである。
この電解液は、例えば、次のようにして二次電池に用いられる。
(第1の二次電池)
図1は、第1の二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、電極反応物質としてリチウムを用い、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aと、正極集電体21Aの両面あるいは片面に設けられた正極活物質層21Bとを有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、あるいはこれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 ))(x,yおよびzの値は0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1である。)、あるいはマンガンスピネル(LiMn2 O4 )などのリチウム複合酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン,酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、二硫化鉄,二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。正極材料は1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
正極活物質層21Bは、また、例えば導電材を含んでおり、必要に応じて更に結着材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着材としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。例えば、図1に示したように正極21および負極22が巻回されている場合には、結着材として柔軟性に富むスチレンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いることが好ましい。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aと、負極集電体22Aの両面あるいは片面に設けられた負極活物質層22Bとを有している。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでいる。
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量が、正極21の充電容量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、スズ(Sn)またはケイ素(Si)を構成元素として含む材料が挙げられる。スズおよびケイ素はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
このような負極材料としては、具体的には、スズの単体,合金,あるいは化合物、またはケイ素の単体,合金,あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅(Cu),鉄,コバルト(Co),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),インジウム(In),銀(Ag),チタン(Ti),ゲルマニウム(Ge),ビスマス(Bi),アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
中でも、この負極材料としては、スズと、コバルトと、炭素とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素,鉄,ニッケル,クロム,インジウム,ニオブ(Nb),ゲルマニウム,チタン,モリブデン(Mo),アルミニウム,リン,ガリウム(Ga)またはビスマスが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
なお、このCoSnC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このCoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また例えば、リチウムと合金を形成可能な他の金属元素または他の半金属元素を構成元素として含む材料を用いることもできる。このような金属元素あるいは半金属元素としては、マグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム,ガリウム,インジウム,ゲルマニウム,鉛(Pb),ビスマス,カドミウム(Cd),銀,亜鉛,ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また更に、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料も挙げられる。このような炭素材料としては、人造黒鉛,天然黒鉛,黒鉛化炭素繊維,黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ,フラーレンあるいは非晶質炭素などがある。また、このような炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少なく、上述した負極材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができ、更に導電材としても機能するので好ましい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更にまた、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンが挙げられ、高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレンあるいはポリピロールが挙げられる。
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
セパレータ23には、本実施の形態に係る電解液が含浸されている。これにより、高温においても、電解液の分解反応を抑制することができるようになっている。よって、高温状況下に放置しても、高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができる。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極集電体21Aに正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質の粉末と導電材と結着材とを混合して正極合剤を調製したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとし、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。また、例えば、正極21と同様にして、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成し負極22を作製する。
次いで、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。続いて、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1,2に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。その際、電解液にはO=S=O結合を有するスルホン誘導体およびO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物からなる群のうちの少なくとも1種と、LiBF4 とが含まれているので、高温においても、電解液の分解反応が抑制される。
このように本実施の形態の電解液によれば、スルホン誘導体あるいはスルホン化合物と、LiBF4 とを含むようにしたので、高温環境下であっても、化学的安定性を向上させることができる。よって、この電解液を用いた本実施の形態に係る二次電池によれば、高温環境下においても、電解液の分解反応などを抑制することができ、高温状況下に放置しても、高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができる。
(第2の二次電池)
第2の二次電池は、負極の構成が異なることを除き、他は第1の二次電池と同様の構成および作用を有しており、同様にして製造することができる。よって、図1および図2を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
負極22は、第1の二次電池と同様に、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質としてスズまたはケイ素を構成元素として含む材料を含有している。具体的には、例えば、スズの単体,合金,あるいは化合物、またはケイ素の単体,合金,あるいは化合物を含有しており、それらの2種以上を含有していてもよい。
また、負極活物質層22Bは、例えば、気相法,液相法,溶射法あるいは焼成法、またはそれらの2以上の方法を用いて形成されたものであり、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに、または負極活物質の構成元素が負極集電体22Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition )法,プラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法というのは、例えば、粒子状の負極活物質を結着材などと混合して溶剤に分散させ、塗布したのち、結着材などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法,反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
(第3の二次電池)
第3の二次電池は、負極の容量がリチウムの析出および溶解による容量成分により表される、いわゆるリチウム金属二次電池である。
この二次電池は、負極活物質層22Bの構成が異なることを除き、他は第1あるいは第2の二次電池と同様の構成および効果を有している。したがって、図1および図2を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
負極活物質層22Bは、負極活物質であるリチウム金属により形成されており、高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。この負極活物質層22Bは、組み立て時から既に有するように構成してもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成するようにしてもよい。また、この負極活物質層22Bを集電体としても利用し、負極集電体22Aを削除するようにしてもよい。
この二次電池は、負極22を負極集電体22Aのみ、またはリチウム金属のみ、または負極集電体22Aにリチウム金属箔を貼り付けて負極活物質層22Bを形成したものとしたことを除き、他は第1の二次電池と同様にして製造することができる。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して、負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出し、図2に示したように、負極活物質層22Bを形成する。放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極21に吸蔵される。その際、電解液にO=S=O結合を有するスルホン誘導体およびO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物からなる群のうちの少なくとも1種と、LiBF4 とが含まれているので、高温においても、電解液の分解反応が抑制される。
このように第3の二次電池においても、電解液にO=S=O結合を有するスルホン誘導体およびO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物からなる群のうちの少なくとも1種と、LiBF4 とが含まれているので、高温状況下に放置しても、優れた特性を得ることができる。
(第4の二次電池)
図3は、第4の二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型といわれるものであり、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものである。
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、上述した第1ないし第3の二次電池における正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質36は、上述した電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物あるいはアクリレート系高分子化合物、またはポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ化ビニリデンの重合体が挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ化ビニリデンの重合体などのフッ素系高分子化合物を用いることが望ましい。
なお、電解質36には、電解液を高分子化合物に保持させるのではなく、液状の電解質としてそのまま用いてもよい。この場合、電解液はセパレータ35に含浸されている。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極33および負極34のそれぞれに、電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質36を形成する。次いで、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。そののち、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3,4に示した二次電池が完成する。
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤あるいは重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着して密封する。そののち、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質36を形成し、図3,4に示した二次電池を組み立てる。
この二次電池は、第1ないし第3の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−6)
図3,4に示したラミネートフィルム型の二次電池を作製した。その際、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電材としてグラファイト6質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製したのち、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体33Aに均一に塗布して乾燥させたのち圧縮成型して正極活物質層33Bを形成した。そののち、正極集電体33Aの一端にアルミニウム製の正極リード31を取り付けた。
また、負極活物質として炭素材料である平均粒径20μmのメソカーボンマイクロビーズを用意し、このメソカーボンマイクロビーズ90質量部と、導電材として黒鉛3質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン7質量部とを混合して負極合剤を調製したのち、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。続いて、この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aに均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層34Bを形成した。そののち、負極集電体34Aの一端にニッケル製の負極リード32を取り付けた。
正極33および負極34を作製したのち、厚み25μmの微孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ35を用意し、負極34,セパレータ35,正極33,セパレータ35の順に積層し、巻回して巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成した。
得られた巻回体を、ラミネートフィルムよりなる外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状として外装部材40の内部に収納し、電解液を外装部材40の内部に注入した。
電解液は、実施例1−1では、溶媒として炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジエチル(DEC)と、O=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物としての化5(1)に示した化合物とを混合し、電解質塩としてLiPF6 とLiBF4 とを溶解して作製した。その際、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとは、炭酸エチレン:炭酸ジエチル=5:5の質量比で混合した。また、電解液における化5(1)に示した化合物の含有量は2質量%とした。更に、電解液におけるLiPF6 の濃度は、1.0mol/kgとし、LiBF4 の濃度は、0.2mol/kgとした。
実施例1−2では、溶媒として炭酸エチレンと、炭酸ジエチルと、化5(1)に示した化合物と、不飽和結合を有する環状の炭酸エステルである1,3−ジオキソール−2−オン(VC)とを混合し、電解質塩としてLiPF6 とLiBF4 とを溶解して電解液を作製した。その際、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとは、炭酸エチレン:炭酸ジエチル=5:5の質量比で混合した。また、電解液における化5(1)に示した化合物の含有量は2質量%とし、1,3−ジオキソール−2−オンの含有量は2質量%とした。更に、電解液におけるLiPF6 の濃度は、1.0mol/kgとし、LiBF4 の濃度は、0.2mol/kgとした。
実施例1−3では、溶媒として炭酸エチレンと、炭酸ジエチルと、化5(1)に示した化合物と、不飽和結合を有する環状の炭酸エステルである4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(VEC)とを混合し、電解質塩としてLiPF6 とLiBF4 とを溶解して電解液を作製した。その際、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとは、炭酸エチレン:炭酸ジエチル=5:5の質量比で混合した。また、電解液における化5(1)に示した化合物の含有量は2質量%とし、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量は2質量%とした。更に、電解液におけるLiPF6 の濃度は、1.0mol/kgとし、LiBF4 の濃度は、0.2mol/kgとした。
実施例1−4では、溶媒としてハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体である4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸ジエチルと、化5(1)に示した化合物とを混合し、電解質塩としてLiPF6 とLiBF4 とを溶解して電解液を作製した。その際、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸ジエチルとは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸ジエチル=5:5の質量比で混合した。また、電解液における化5(1)に示した化合物の含有量は2質量%とした。更に、電解液におけるLiPF6 の濃度は、1.0mol/kgとし、LiBF4 の濃度は、0.2mol/kgとした。
実施例1−5では、溶媒として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸ジエチルと、化5(1)に示した化合物と、1,3−ジオキソール−2−オンとを混合し、電解質塩としてLiPF6 とLiBF4 とを溶解して電解液を作製した。その際、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸ジエチルとは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸ジエチル=5:5の質量比で混合した。また、電解液における化5(1)に示した化合物の含有量は2質量%とし、1,3−ジオキソール−2−オンの含有量は2質量%とした。更に、電解液におけるLiPF6 の濃度は、1.0mol/kgとし、LiBF4 の濃度は、0.2mol/kgとした。
実施例1−6では、溶媒として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸ジエチルと、化5(1)に示した化合物と、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンとを混合し、電解質塩としてLiPF6 とLiBF4 とを溶解して電解液を作製した。その際、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸ジエチルとは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸ジエチル=5:5の質量比で混合した。また、電解液における化5(1)に示した化合物の含有量は2質量%とし、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量は2質量%とした。更に、電解液におけるLiPF6 の濃度は、1.0mol/kgとし、LiBF4 の濃度は、0.2mol/kgとした。
電解液を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封することにより、図3および図4に示したラミネートフィルム型の二次電池を作製した。
実施例1−1に対する比較例1−1として、LiBF4 および化5(1)に示した化合物を用いなかったことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。また、比較例1−2として、LiBF4 を用いなかったことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。更に、比較例1−3として、化5(1)に示した化合物を用いなかったことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。更にまた、比較例1−4として、LiBF4 に代えて、化20(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムを用いたことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。加えて、比較例1−5として、LiBF4 に代えて、化20(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムを用いたことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
また、実施例1−4に対する比較例1−6として、LiBF4 および化5(1)に示した化合物を用いなかったことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。また、比較例1−7として、LiBF4 を用いなかったことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。更に、比較例1−8として、化5(1)に示した化合物を用いなかったことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−8の二次電池について、高温保存特性および高温サイクル特性を次にようにして調べた。
まず、23℃において、充放電を2サイクル行い、2サイクル目の放電容量(保存前の放電容量)を求めた。続いて、再度充電を行い、60℃の恒温槽において1週間保存したのち、23℃において、放電を行い、保存後の放電容量を求めた。その際、充電は、1Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vまで行い、放電は、1Cの定電流放電を終止電圧2.7Vまで行った。高温保存特性は、保存前の放電容量に対する保存後の放電容量の割合、すなわち、(保存後の放電容量/保存前の放電容量)×100(%)から求めた。結果を表1に示す。なお、1Cは、理論容量を1時間で放電しきる電流値である。
また、23℃において、充放電を2サイクル行い、2サイクル目の放電容量(23℃における2サイクル目の放電容量)を求めた。続いて、45℃の恒温槽において、充放電を100サイクル行い、100サイクル目の放電容量(45℃における100サイクル目の放電容量)を求めた。その際、充電は、1Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vまで行い、放電は、1Cの定電流放電を終止電圧2.7Vまで行った。高温サイクル特性は、23℃における2サイクル目の放電容量に対する45℃における100サイクル目の放電容量の割合、すなわち、(45℃における100サイクル目の放電容量/23℃における2サイクル目の放電容量)×100(%)から求めた。結果を表1に示す。
表1に示したように、LiBF4 と、O=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物とを用いた実施例1−1によれば、これらの両方を用いなかった比較例1−1、あるいはLiBF4 を用いなかった比較例1−2、あるいはO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物を用いなかった比較例1−3よりも、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。また、LiBF4 に代えて、他のホウ素含有塩を用いた比較例1−4,1−5よりも、同様に高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。更に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例1−4においても、同様に、比較例1−6〜1−8よりも、高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。
また、LiBF4 およびO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物に加えて、不飽和結合を有する環状の炭酸エステルを用いた実施例1−2,1−3あるいは実施例1−5,1−6によれば、不飽和結合を有する環状の炭酸エステルを用いていない実施例1−1あるいは実施例1−4よりも、それぞれ高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。
更に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例1−4〜1−6によれば、これを用いていない実施例1−1〜1−3よりも、それぞれ高温保存特性および高温サイクル特性が向上した。
すなわち、電解液に、LiBF4 と、O=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物とを含むようにすれば、高温状況下に放置しても、高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができ、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体、あるいは不飽和結合を有する環状の炭酸エステルを含むようにすれば、好ましいことが分かった。
(実施例2−1〜2−6,3−1〜3−6,4−1〜4−6)
実施例2−1〜2−6では、負極活物質としてケイ素を用い、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aの上に、電子ビーム蒸着法によりケイ素よりなる負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるようにした。
実施例3−1〜3−6では、負極活物質として平均粒径2μmのケイ素粉末を用い、このケイ素粉末90質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させたのち、厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aに均一に塗布し乾燥させて、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるようにした。
実施例4−1〜4−6では、負極活物質にCoSnC含有材料粉末を用い、このCoSnC含有材料粉末80質量部と、負極活物質であり導電材でもあるグラファイト11質量部と、アセチレンブラック1質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させたのち、厚み10μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aに均一に塗布し乾燥させて、一定圧力で成型して負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるようにした。
また、CoSnC含有材料粉末は、スズ・コバルト合金粉末と、炭素粉末とを混合し、メカノケミカル反応を利用して合成した。得られたCoSnC含有材料について組成の分析を行ったところ、スズの含有量は49.5質量%、コバルトの含有量は29.7質量%、炭素の含有量は19.8質量%、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)は37.5質量%であった。なお、炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズ,コバルトの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、得られたCoSnC含有材料についてX線回折を行ったところ、回折角2θ=20°〜50°の間に、回折角2θが5.0°の半値幅を有する回折ピークが観察された。更に、このCoSnC含有材料についてXPSを行ったところ、図5に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側にCoSnC含有材料中におけるC1sのピークP3とが得られた。このピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、CoSnC含有材料中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
実施例2−1〜2−6,3−1〜3−6,4−1〜4−6に対する比較例2−1〜2−8,3−1〜3−8,4−1〜4−8として、比較例1−1〜1−8と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−6,3−1〜3−6,4−1〜4−6とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。
各実施例および各比較例の二次電池について、実施例1−1〜1−6と同様にして、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。結果を表2〜表4に示す。
表2〜表4に示したように、実施例1−1〜1−6と同様の結果が得られた。すなわち、他の負極活物質を用いても、電解液に、LiBF4 と、O=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物とを含むようにすれば、高温状況下に放置しても、高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができ、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体、あるいは不飽和結合を有する環状の炭酸エステルを含むようにすれば、好ましいことが分かった。
(実施例5−1〜5−6)
負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池を作製した。具体的には、負極活物質にリチウム金属を用い、厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体34Aに、厚み30μmのリチウム金属を圧着して負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例5−1〜5−6に対する比較例5−1〜5−8として、比較例1−1〜1−8と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例5−1〜5−6と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例5−1〜5−6および比較例5−1〜5−8の二次電池について、実施例1−1〜1−6と同様にして、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。結果を表5に示す。
表5に示したように、実施例1−1〜1−6と同様の結果が得られた。すなわち、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるリチウム金属二次電池の場合にも、電解液に、LiBF4 と、O=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物とを含むようにすれば、高温状況下に放置しても、高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができ、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体、あるいは不飽和結合を有する環状の炭酸エステルを含むようにすれば、好ましいことが分かった。
(実施例6−1〜6−6,7−1〜7−6,8−1〜8−6,9−1〜9−6,10−1〜10−6)
電解液における化5(1)に示した化合物の含有量を0.01質量%,5質量%または10質量%としたことを除き、他は実施例1−1,1−4,2−1,2−4,3−1,3−4,4−1,4−4,5−1,5−4とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。
作製した各二次電池について、実施例1−1〜1−6と同様にして、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。結果を表6〜表10に示す。
表6〜表10に示したように、放電容量維持率は、化5(1)に示した化合物の含有量が増大するに伴い上昇し、極大値を示したのち低下する傾向が観られた。
すなわち、電解液におけるO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物の含有量を0.01質量%以上10質量%以下とするようにすれば、好ましいことが分かった。
(実施例11−1〜11−14,12−1〜12−14,13−1〜13−14,14−1〜14−14,15−1〜15−14)
化5(1)に示した化合物に代えて、化5(3)に示した化合物,化5(19)に示した化合物,化6(1)に示した化合物,化6(10)に示した化合物,化8(1)に示した化合物,化8(4)に示した化合物または化8(5)に示した化合物を用いたことを除き、他は実施例1−1,1−4,2−1,2−4,3−1,3−4,4−1,4−4,5−1,5−4とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。なお、化5(3)に示した化合物,化5(19)に示した化合物,化6(1)に示した化合物および化6(10)に示した化合物は、O=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物であり、化8(1)に示した化合物,化8(4)に示した化合物および化8(5)に示した化合物は、O=S=O結合を有するスルホン誘導体である。
作製した各二次電池について、実施例1−1〜1−6と同様にして、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。結果を表11〜表15に示す。
表11〜表15に示したように、他のO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物、またはO=S=O結合を有するスルホン誘導体を用いた各実施例においても、実施例1−1,1−4,2−1,2−4,3−1,3−4,4−1,4−4,5−1,5−4と同様の結果が得られた。
すなわち、電解液に、O=S=O結合を有するスルホン誘導体あるいはO=S(=O)−O結合を有するスルホン酸化合物と、LiBF4 とを含むようにすれば、高温状況下に放置しても、高温状況下で使用しても、優れた特性を得ることができることが分かった。
(実施例16−1〜16−3,17−1〜17−3,18−1〜18−3,19−1〜19−3,20−1〜20−3)
電解質塩として、LiPF6 およびLiBF4 に加えて、化12に示した軽金属塩である化20(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または化12に示した軽金属塩である化20(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または化20(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムおよび化23に示した環状のイミド塩である化25(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いたことを除き、他は実施例1−1,2−1,3−1,4−1,5−1と同様にして二次電池を作製した。その際、電解液における各電解質塩の濃度は、表16〜表20に示すようにした。
作製した各二次電池について、実施例1−1〜1−6と同様にして、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。結果を表16〜表20に示す。
表16〜20に示したように、リチウム塩としてLiPF6 およびLiBF4 に加えて、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、あるいはジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、あるいはビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムおよび化25(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いた実施例16−1〜16−3,17−1〜17−3,18−1〜18−3,19−1〜19−3,20−1〜20−3によれば、これらを用いていない実施例1−1,2−1,3−1,4−1,5−1よりも、それぞれ高温保存特性および高温サイクル特性が共に向上した。
すなわち、LiBF4 に加えて、化12に示した軽金属塩、LiPF6 、LiClO4 ,LiAsF6 ,、化21に示したリチウム塩、化22に示したリチウム塩、化23に示した環状のイミド塩および化24に示した環状のイミド塩からなる群のうちの少なくとも1種を用いるようにすれば、好ましいことが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質として電解液または電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いる場合についても説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したもの、または他の無機化合物と電解液とを混合したもの、またはこれらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものが挙げられる。
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。その際、正極活物質などは電極反応物質に応じて適宜選択することができる。
更に、上記実施の形態および実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池、あるいは、負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池について説明したが、本発明は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにした二次電池についても同様に適用することができる。
加えて、上記実施の形態または実施例では、円筒型あるいはラミネートフィルム型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は角型、ボタン型、あるいはコイン型などの他の形状を有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム。