本発明は、溶媒と電解質塩とを含む電解質を用いた非水電解質二次電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(video tape recorder )、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、ポータブル電子機器の電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
中でも、充放電反応にリチウムの吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)や、リチウムの析出および溶解を利用する二次電池(いわゆるリチウム金属二次電池)などは、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られ、高容量が実現されるため、大いに期待されている。
リチウムイオン二次電池としては、負極材料として炭素材料を用い、正極材料としてリチウム(Li)と遷移金属との複合材料を用い、電解質として炭酸エステルを含む液状の電解質(いわゆる電解液)を用いたものが知られている。炭酸エステルは水や他の有機溶媒と比較して耐酸化性および耐還元性に優れているため、高電圧が得られる。
このようなリチウムイオン二次電池としては、軽量でエネルギー密度が高いことから、外装部材としてラミネートフィルムを用いたもの(いわゆるラミネートフィルム型の二次電池)が実用化されている。特に、電解液を高分子化合物に保持させていわゆるゲル状としたものは、外装部材の変形を抑制することができるので、広く普及している。このラミネートフィルム型の二次電池は、電池中に占める活物質の割合が大きいため、さらなる高容量化に対応可能である。
これらの二次電池に用いられる電解液の組成に関しては、各種性能の改善を目的として、既にいくつかの技術が提案されている。具体的には、高温下での保存特性およびサイクル特性を向上させるために、電解液に鎖状または環状のスルホン化合物を含有させる技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、高温状態での電池内におけるガスの発生およびそれに伴う膨れを抑制するために、電解液に2−スルホ安息香酸無水物を含有させる技術が知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
特開2002−008718号公報
特開2002−151144号公報
特開2002−313418号公報
特開2005−502179号公報
最近の電子機器では、高性能化および多機能化が益々進行する傾向にあるため、二次電池の充放電が頻繁に繰り返されることにより放電容量が低下しやすい傾向にある。しかも、CPU(central processing unit )に代表される電子部品の高性能化などの要因に伴って発熱量が益々増加する傾向にあるため、二次電池が高温雰囲気に晒されることにより膨れやすい傾向にある。このため、二次電池のサイクル特性および膨れ特性に関してより一層の向上が望まれている。
しかしながら、従来の二次電池では、未だ十分なサイクル特性および膨れ特性が得られないという問題があった。
具体的には、特許文献2の技術では、溶媒として、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジエチルとを1:1:1の体積比で混合させた混合溶媒を用いているため、十分なサイクル特性が得られない。なぜなら、溶媒中における炭酸ジエチルの比率(体積比で33%、重量比で28%)が小さいからである。また、炭酸ジエチルは炭酸ジメチルや炭酸エチルメチルと比較して高粘度であるため、負極活物質層を厚くした場合に電解液が含浸しにくいからである。
特許文献3の技術では、溶媒として鎖状炭酸エステルなどの低粘度溶媒を用いていないため、常温で固体の炭酸エチレンと共に常温で液体の炭酸プロピレンやγ−ブチロラクトンを用いる場合に、溶媒中における炭酸プロピレンやγ−ブチロラクトンの比率が大きくなるように電解液の組成を設定する必要がある。ところが、炭酸プロピレンやγ−ブチロラクトンは黒鉛と反応しやすいため、負極材料として黒鉛を用いた場合には、上記した組成の電解液を用いることができない。
特許文献4の技術では、溶媒として、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルと、炭酸エチルメチルとを1:1:1の重量比で混合させた混合溶媒を用いているため、電解液に2−スルホ安息香酸無水物を含有させたとしても、膨れを十分に抑えることが困難である。なぜなら、炭酸ジメチルや炭酸エチルメチルは高温下において膨れを助長させる性質を有するからである。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性を確保しつつ、膨れ特性を改善することが可能な非水電解質二次電池を提供することにある。
本発明の非水電解質二次電池は、正極、負極および電解質と共に、正極、負極および電解質を内部に収納するフィルム状の外装部材を備えたものであり、電解質が、溶媒と、電解質塩とを含み、溶媒が、炭酸エチレンと、炭酸ジエチルと、2−スルホ安息香酸無水物とを含有し、溶媒中における炭酸ジエチルの含有量が30重量%以上80重量%以下の範囲内であると共に、溶媒中における2−スルホ安息香酸無水物の含有量が0.1重量%以上1重量%以下の範囲内であるものである。
本発明の非水電解質二次電池によれば、電解質の溶媒として炭酸エチレンおよび炭酸ジエチルと共に2−スルホ安息香酸無水物を含み、溶媒中における炭酸ジエチルの含有量が30重量%以上80重量%以下の範囲内であると共に2−スルホ安息香酸無水物の含有量が0.1重量%以上1重量%以下の範囲内であるので、電解質において十分なイオン伝導性が得られると共に、分解反応が十分に抑制される。これにより、フィルム状の外装部材を備えていても、サイクル特性を確保しつつ、膨れ特性を改善することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る電解質は、電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、溶媒と、電解質塩とを含んでいる。これらの溶媒および電解質塩を含む電解質は、液状の電解質(いわゆる電解液)である。
溶媒は、炭酸エチレンと、炭酸ジエチルと、化5および化6で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種とを含んでいる。溶媒中における炭酸ジエチルの含有量は30重量%以上80重量%以下の範囲内であり、溶媒中におけるスルホン化合物の含有量は0.1重量%以上1重量%以下の範囲内である。なお、化5および化6に示したX(ハロゲン)としては、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)あるいは臭素(Br)などが挙げられる。
(R1はC
m H
2m-nX
n であり、Xはハロゲンを表す。ただし、mは2以上4以下の範囲内の整数であり、nは0あるいは1以上2m以下の範囲内の整数である。)
(R2、R3、R4およびR5はC
j H
2j+1-k X
kであり、互いに同一でもよいし異なってもよい。Xはハロゲンを表す。ただし、jは0あるいは1以上3以下の範囲内の整数であり、kは0あるいは1以上2j+1以下の範囲内の整数である。)
溶媒が炭酸エチレンおよび炭酸ジエチルを含んでいるのは、高粘度(高誘電率)溶媒(炭酸エチレン)と低粘度溶媒(炭酸ジエチル)とを併用することにより、電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、十分なイオン伝導性が得られるからである。また、溶媒中における炭酸ジエチルの含有量が上記した範囲内であるのは、電解質を用いた電気化学デバイスのサイクル特性および膨れ特性に寄与する炭酸ジエチルの含有量が適正化されるため、放電容量が低下しにくくなると共に、電気化学デバイスが膨れにくくなるからである。これにより、優れたサイクル特性および膨れ特性が得られる。
また、溶媒がスルホン化合物を含んでいるのは、電解質の分解反応が抑制され、その電解質が電気化学的に安定化するからである。これにより、放電容量の低下傾向が抑制されつつ、電気化学デバイスがより膨れにくくなる。また、溶媒中におけるスルホン化合物の含有量が上記した範囲内であるのは、上記した炭酸エチレンおよび炭酸ジエチルの場合と同様に、スルホン化合物の含有量が適正化されるため、放電容量が低下しにくくなると共に、電気化学デバイスが膨れにくくなるからである。
化5に示したスルホン化合物としては、例えば、2−スルホプロピオン酸無水物 などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
化6に示したスルホン化合物としては、例えば、化7で表される2−スルホ安息香酸無水物が挙げられる。この他、化6に示したスルホン化合物としては、例えば、4−フルオロ−2−スルホ安息香酸無水物、4,5−ジフルオロ−2−スルホ安息香酸無水物、6−フルオロ−2−スルホ安息香酸無水物、3,4,5,6−テトラフルオロ−2−スルホ安息香酸無水物、3−メチル−2−スルホ安息香酸無水物、3−エチル−2−スルホ安息香酸無水物、3,6−ジメチル−2−スルホ安息香酸無水物、3,4−ジメチル−2−スルホ安息香酸無水物あるいは3,5−ジメチル−2−スルホ安息香酸無水物なども挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、化6に示したスルホン化合物は、2−スルホ安息香酸無水物を含んでいるのが好ましい。十分な効果が得られるからである。
なお、化5あるいは化6に示した構造を有していれば、スルホン化合物が上記した一連の化合物に限定されないことは言うまでもない。
溶媒は、さらに、低粘度溶媒である炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルを含んでいてもよい。溶媒中における炭酸ジメチルの含有量は5重量%以上35重量%以下の範囲内であり、溶媒中における炭酸エチルメチルの含有量は5重量%以上50重量%以下の範囲内であるのが好ましい。この場合には、溶媒が、炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルのいずれか一方のみを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。溶媒が炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルを含むのは、電気化学デバイスの膨れ傾向が抑制されつつ、放電容量がより低下しにくくなるからである。また、溶媒中における炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルの含有量が上記した範囲内であるのは、上記した炭酸エチレンおよび炭酸ジエチルの場合と同様に、炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルの含有量が適正化されるため、放電容量が低下しにくくなると共に、電気化学デバイスが膨れにくくなるからである。これにより、膨れ特性がほぼ維持されたまま、サイクル特性が向上する。
また、溶媒は、さらに、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含んでいるのが好ましい。電気化学デバイスの容量特性が向上するからである。これにより、サイクル特性が向上する。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレンあるいは炭酸ビニルエチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
なお、溶媒は、例えば、上記した一連の溶媒と共に、他の溶媒を含んでいてもよい。この他の溶媒としては、例えば、有機溶剤などの非水溶媒が挙げられる。具体的には、高粘度溶媒として、例えば、炭酸プロピンあるいは炭酸ブチレンなどの環状炭酸エステルや、γ−ブチロラクトンあるいはγ−バレロラクトンなどのラクトンや、N−メチルピロリドンなどのラクタムや、N−メチルオキサゾリジノンなどの環状カルバミン酸エステルや、テトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物が挙げられる。また、低粘度溶媒として、例えば、炭酸メチルプロピルなどの鎖状炭酸エステルや、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルあるいはトリメチル酢酸エチルなどの鎖状カルボン酸エステルや、N,N‘−ジメチルアセトアミドなどの鎖状アミドや、N,N‘−ジエチルカルバミン酸メチルあるいはN,N’−ジエチルカルバミン酸エチルなどの鎖状カルバミン酸エステルや、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランあるいは1,3−ジオキソランなどのエーテルが挙げられる。電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、優れた容量特性およびサイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも溶媒は、炭酸プロピレンを含んでいるのが好ましい。電気化学デバイスが膨れにくくなるため、膨れ特性が改善されるからである。
この他の溶媒としては、特に、ハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルおよびハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。サイクル特性がより向上するからである。
ハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどがあげられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
ハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルとしては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、ハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルとしては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンがより好ましい。容易に入手可能であると共に、より高い効果が得られるからである。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、より高い効果を得るために、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩を含んでいる。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4 )あるいは四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)などの無機酸リチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロメタンスルホン)メチドあるいはリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチドなどのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウム塩が挙げられる。電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、優れた容量特性およびサイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウムを含んでいるのが好ましい。内部抵抗が低下するため、容量特性およびサイクル特性がより向上するからである。
電解質塩の含有量は、例えば、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であるのが好ましい。この範囲外ではイオン伝導性が極端に低下するため、容量特性などが十分に得られないおそれがあるからである。
この電解質は、さらに、上記した溶媒および電解質塩(いわゆる電解液)を保持する高分子化合物を含んでいてもよい。これらの溶媒および電解質塩と共に高分子化合物を含む電解質は、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に電解質を用いた電気化学デバイスにおいて漏液が防止されるので好ましい。この場合における溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
高分子化合物としては、例えば、化8で表される構成単位を有するポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ化ビニリデンの重合体などが挙げられる。酸化還元安定性が高いからである。
また、高分子化合物としては、重合性化合物が重合されることにより形成されたものも挙げられる。重合性化合物としては、例えば、ビニル基あるいはその一部の水素をメチル基などの置換基で置換した基を含有するものが挙げられる。具体的には、アクリル酸エステルなどの単官能アクリレート、メタクリル酸エステルなどの単官能メタクリレート、ジアクリル酸エステルあるいはトリアクリル酸エステルなどの多官能アクリレートや、ジメタクリル酸エステルあるいはトリメタクリル酸エステルなどの多官能メタクリレートや、アクリロニトリルや、メタクリロニトリルなどがあり、中でも、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有するエステルが好ましい。重合が進行しやすく、重合性化合物の反応率が高いからである。また、重合性化合物としては、エーテル基を含まないものが好ましい。エーテル基が存在すると、エーテル基にリチウムイオンが配位することによりイオン伝導率が低下してしまうからである。このような高分子化合物としては、例えば、化9に示した構成単位を有するポリアクリル酸エステルが挙げられる。
(R6はC
g H
2h-1O
h である。ただし、gは1以上8以下の範囲内の整数であり、hは0あるいは1以上4以下の範囲内の整数である。)
重合性化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、単官能体と多官能体とを混合するか、または、多官能体を単独あるいは2種類以上を混合して用いることが望ましい。このように構成することにより、重合して形成された高分子化合物の機械的強度と、電解液保持性とを両立させやすくなるからである。
さらに、高分子化合物としては、化10に示した構成単位を有するポリビニルホルマールを有するものも好ましい。ポリビニルホルマールは、アセタール基を構成単位として有する高分子化合物である。
ポリビニルホルマールにおけるアセタール基の割合は60mol%以上80mol%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内において溶媒との溶解性を向上させることができると共に、電解質の安定性をより高めることができるからである。また、ポリビニルホルマールの重量平均分子量は、10000以上500000以下の範囲内であることが好ましい。分子量が低すぎると重合反応が進行しにくく、高すぎると電解液の粘度が上昇してしまうからである。
上記した高分子化合物は、単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられる共重合体でもよい。また、架橋剤により重合したものでもよい。
この電解質によれば、溶媒が、炭酸エチレンおよび炭酸ジエチルと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物のうちの少なくとも1種を含有し、溶媒中における炭酸ジエチルの含有量が30重量%以上80重量%以下の範囲内であると共に溶媒中におけるスルホン化合物の含有量が0.1重量%以上1重量%以下の範囲内であるので、十分なイオン伝導性が得られると共に、分解反応が十分に抑制される。したがって、電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、サイクル特性を確保しつつ、膨れ特性を改善することができる。
この場合には、溶媒がさらに炭酸ジメチルを含み、溶媒中における炭酸ジメチルの含有量が5重量%以上35重量%以下の範囲内であり、あるいは溶媒がさらに炭酸エチルメチルを含み、溶媒中における炭酸エチルメチルの含有量が5重量%以上50重量%以下の範囲内であれば、膨れ特性をほぼ維持したまま、サイクル特性を向上させることができる。また、溶媒がさらに不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含んでいれば、サイクル特性をより向上させることができる。
次に、上記した電解質の使用例について説明する。ここで、電気化学デバイスの一例として電池を挙げると、電解質は以下のようにして電池に用いられる。
(第1の電池)
図1は第1の電池の分解斜視構成、図2は図1に示した電池の主要部のII−II線に沿った拡大断面構成をそれぞれ表している。第1の電池は、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池であり、いわゆるラミネートフィルム型の二次電池である。この二次電池は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた巻回電極体20をフィルム状の外装部材30の内部に収納したものである。
正極リード11および負極リード12は、例えば、外装部材30の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード11は、例えば、アルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード12は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されている。これらは、例えば、薄板状または網目状の構造を有している。
外装部材30は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。この外装部材30は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体20に対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁同士が融着あるいは接着剤によって互いに密着された構造を有している。
外装部材30と正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。この密着フィルム31は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成されている。この種の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
なお、外装部材30は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムにより構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムや金属フィルムにより構成されていてもよい。
巻回電極体20は、正極21および負極22がセパレータ23および電解質24を介して積層されたのちに巻回されたものである。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの片面あるいは両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムあるいはこれらを含む固溶体(Li(Nip Coq Mnr )O2))(p,qおよびrの値はそれぞれ0<p<1,0<q<1,0<r<1,p+q+r=1である。)、またはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn2 O4 )あるいはその固溶体(Li(Mn2-z Niz )O4 :zの値はz<2である。)などのリチウム複合酸化物や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。また、他のリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、硫黄や、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの片面あるいは両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素あるいは難黒鉛化炭素などの炭素材料が挙げられる。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、例えば、その他の負極材料と共に用いることにより、高エネルギー密度を得ることができると共に優れたサイクル特性を得ることができる上、さらに導電剤としても機能するので好ましい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料が挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。この負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またはこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などが挙げられる。このうち、特に好ましいのは、スズおよびケイ素のうちの少なくとも1種である。リチウムを吸蔵および放出する能力が特に大きく、高いエネルギー密度が得られるからである。
スズおよびケイ素のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、具体的には、スズの単体、合金、あるいは化合物、またはケイ素の単体、合金、あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
中でも、この負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、そのスズに加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
中でも、負極材料としては、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えばケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量あるいはサイクル特性がさらに向上するからである。
なお、CoSnC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、CoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下は、スズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素あるいは半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合している。
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
また、その他にリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられ、高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
この二次電池では、正極活物質と負極活物質との間で量を調整することにより、正極活物質による充電容量よりも負極活物質の充電容量の方が大きくなっている。これにより、完全充電時においても負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものであり、正極21と負極22とにより挟まれている。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。
電解質24は、上記した構成を有する本発明の電解質であり、正極21とセパレータ23との間および負極22とセパレータ23との間に設けられている。この電解質24は、溶媒および電解質塩を含む液状の電解質(いわゆる電解液)であってもよいし、溶媒および電解質塩と共にそれらを保持する高分子化合物を含むゲル状の電解質であってもよい。
ゲル状の電解質24を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の製造方法によって製造することができる。
第1の製造方法では、まず、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを形成することにより、正極21を作製する。この正極活物質層21Bを形成する際には、正極活物質の粉末と、導電剤と、結着剤とを混合した正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることによりペースト状の正極合剤スラリーとし、その正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成型する。また、例えば、正極21と同様の手順にしたがって負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成することにより、負極22を作製する。
続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製し、正極21および負極22に塗布したのちに溶剤を揮発させることにより、ゲル状の電解質24を形成する。続いて、正極集電体21Aおよび負極集電体22Aにそれぞれ正極リード11および負極リード12を取り付ける。続いて、電解質24が設けられた正極21および負極22をセパレータ23を介して積層させたのちに長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ25を接着させることにより、巻回電極体20を形成する。続いて、例えば、2枚のフィルム状の外装部材30の間に巻回電極体20を挟み込んだのち、その外装部材30の外縁部同士を熱融着などで接着させることにより巻回電極体20を封入する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材30との間に、密着フィルム31を挿入する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
第2の製造方法では、まず、正極21および負極22にそれぞれ正極リード11および負極リード12を取り付けたのち、正極21および負極22をセパレータ23を介して積層して巻回させると共に最外周部に保護テープ25を接着させることにより、巻回電極体20の前駆体である巻回体を形成する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材30の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させることにより袋状の外装部材30の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製し、袋状の外装部材30の内部に注入したのち、外装部材30の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質24を形成する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
第3の製造方法では、まず、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ23を用いることを除き、上記した第1の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材30の内部に収納する。このセパレータ23に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体あるいは多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体(PVDF−HFP)、あるいはフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体(PVDF−HFP−CTFE)などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材30の内部に注入したのち、その外装部材30の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材30に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ23を正極21および負極22に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質24が形成されるため、図1および図2に示した二次電池が完成する。この第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、膨れ特性が改善される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーや溶媒などが電解質24中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御されるため、正極21、負極22およびセパレータ23と電解質24との間において十分な密着性が得られる。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質24を経由して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、負極22からリチウムイオンが放出され、電解質24を経由して正極21に吸蔵される。
この二次電池によれば、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表される場合に、電解質24として本発明の電解質を備えているので、サイクル特性を確保しつつ、膨れ特性を改善することができる。
次に、第2および第3の電池の形態を説明するが、第1の電池と共通の構成要素については、同一符号を付して、その説明は省略する。
(第2の電池)
第2の電池は、負極22の構成が異なる点を除き、第1の電池と同様の構成、作用および効果を有していると共に同様の手順により製造される。
負極22は、第1の電池と同様に、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。負極活物質層22Bは、例えば、ケイ素あるいはスズを構成元素として含む負極活物質を含有している。ケイ素およびスズはリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができる。特に、ケイ素は理論容量がより大きいので好ましい。具体的には、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物、またはスズの単体、合金あるいは化合物を含有しており、それらの2種以上を含有していてもよい。
この負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成されたものであり、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散し、あるいは負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition )法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
(第3の電池)
第3の電池は、負極22の容量がリチウムの析出および溶解に基づく容量成分により表されるものであり、いわゆるリチウム金属二次電池である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により構成されている点を除き、第1の電池と同様の構成を有していると共に同様の手順により製造される。
この二次電池は、負極活物質としてリチウム金属を用いており、これにより高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に有するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用することにより、負極集電体22Aを省略するようにしてもよい。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、正極21に吸蔵される。
この二次電池によれば、負極の容量がリチウムの析出および溶解に基づく容量成分により表される場合に、電解質24として本発明の電解質を備えているので、サイクル特性を確保しつつ、膨れ特性を改善することができる。
本発明の実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1)
上記した第1の電池について説明した第3の製造方法により、図1および図2に示したラミネートフィルム型の二次電池を作製した。この際、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
まず、正極21を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物94質量部と、導電剤としてグラファイト3質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、アルミニウム箔(20μm厚)からなる正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層21Bを形成した。この際、片面当たりの正極活物質層21Bの密度が40mg/cm2となるようにした。最後に、幅50mm×長さ300nmとなるように帯状に切断した。こののち、正極集電体21Aの一端に、アルミニウム製の正極リード11を溶接して取り付けた。
続いて、負極22を作製した。すなわち、負極活物質として黒鉛粉末97質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、負極活物質層22Bを形成した。この際、片面当たりの負極活物質層22Bの密度が20mg/cm2となるようにした。最後に、幅50mm×長さ300mmとなるように帯状に切断した。こののち、負極集電体22Aの一端に、ニッケル製の負極リード12を溶接して取り付けた。
続いて、正極21と、高分子化合物としてポリフッ化ビニリデンが両面に塗布された微多孔性のポリエチレンフィルム(7μm厚)からなるセパレータ23と、負極22とをこの順に積層して長手方向に渦巻状に多数回巻回させたのち、粘着テープからなる保護テープ25で巻き終わり部分を固定することにより、巻回電極体20の前駆体である巻回体を形成した。この際、セパレータ23の片面側における高分子化合物の厚さが2μmとなるようにした。続いて、外側から、ナイロン(30μm厚)と、アルミニウム(40μm厚)と、無延伸ポリプロピレン(30μm)とが積層された3層構成(総厚100μm)のラミネートフィルムからなる外装部材30の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺を除く外縁部同士を熱融着することにより、袋状の外装部材30の内部に巻回体を収納した。続いて、外装部材30の開口部を通じて内部に液状の電解質(電解液)を注入したのち、真空雰囲気中において外装部材30の開口部を熱融着して封止した。
電解液としては、溶媒として、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジエチル(DEC)と、不飽和結合を有する環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)と、化5あるいは化6に示したスルホン化合物である2−スルホ安息香酸無水物(SBAH)とを混合した混合溶媒を用い、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を用いた。この際、混合溶媒の組成比を重量比でEC:DEC:VC:SBAH=69:30:0.5:0.5とした。また、電解液の組成を重量比で混合溶媒:電解質塩=86:14とした。
最後に、外装部材30を鉄板で挟んで加重をかけながら70℃で3分間に渡って加熱し、セパレータ23に塗布された高分子化合物をゲル化して電解質24を形成することにより、ラミネートフィルム型の二次電池が完成した。この二次電池の容量は、700mAhである。
(実施例1−2〜1−4)
溶媒の組成比(EC:DEC:VC:SBAH)を重量比で39:60:0.5:0.5(実施例1−2)、29:70:0.5:0.5(実施例1−3)、19:80:0.5:0.5(実施例1−4)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(実施例1−5)
溶媒にVCを含有させず、その溶媒の組成比(EC:DEC:VC:SBAH)を重量比で39.5:60:0:0.5としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−1,1−2)
溶媒の組成比(EC:DEC:VC:SBAH)を重量比で74:25:0.5:0.5(比較例1−1)、14:85:0.5:0.5(比較例1−2)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
これらの実施例1−1〜1−5および比較例1−1,1−2の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
膨れ特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を高温保存することにより、膨れを求めた。まず、23℃の雰囲気中において二次電池の厚さを測定した。続いて、充電電流700mAで上限電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で充電開始からの時間が3時間となるまで充電した。続いて、充電状態のままで90℃の恒温槽内に4時間保存したのち、再び二次電池の厚さを測定した。最後に、保存後の厚さから保存前の厚さを差し引くことにより、厚さの変化量として膨れ(mm)を算出した。なお、膨れ特性を評価する際には、評価基準を0.6mm以下、好ましくは0.5mm以下とした。
サイクル特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を繰り返し充放電させることにより、放電容量維持率を求めた。まず、23℃の雰囲気中において充放電させることにより、1サイクル目の放電容量を測定した。続いて、充放電の合計回数が300回となるまで充放電を繰り返すことにより、300サイクル目の放電容量を測定した。最後に、放電容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100を算出した。1サイクルの充電条件は、膨れ特性を調べた場合と同様とし、1サイクルの放電条件としては、放電電流700mAで終止電圧3.0Vまで放電した。なお、サイクル特性を評価する際には、評価基準を50%以上、好ましくは60%以上とした。
上記した膨れ特性およびサイクル特性を調べる際の手順、条件および評価基準等は、以降の一連の実施例および比較例に関する同特性の評価についても同様である。
表1に示したように、実施例1−1〜1−4および比較例1−2,1−2の結果を見ると、溶媒中におけるDECの含有量が増加するにしたがって、膨れは次第に減少し、放電容量維持率は増加したのちに減少した。この場合には、DECの含有量が25重量%である比較例1−1および85重量%である比較例1−2では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たしたが、放電容量維持率が大幅に減少して評価基準(50%以上)を満たさなかった。これに対して、DECの含有量が30重量%、60重量%、70重量%および80重量%である実施例1−1〜1−4では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たし、放電容量維持率も評価基準(50%以上)を満たした。このことから、電解質が溶媒としてEC、DECおよびVCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池では、溶媒中におけるDECの含有量を30重量%以上80重量%以下の範囲内とすることにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、溶媒がVCを含む実施例1−2では、VCを含まない実施例1−5と比較して、膨れがほぼ維持されたまま、放電容量維持率が増加した。このことから、電解質が溶媒として不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含むことにより、サイクル特性が向上することが確認された。
(実施例2−1,2−2)
溶媒中におけるSBAHの含有量を0.1重量%(実施例2−1)、1重量%(実施例2−2)とし、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例1−3と同様の手順を経た。
(比較例2−1〜2−4)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例1−1〜1−4と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1,2−2および比較例2−1〜2−4の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表2に示した結果が得られた。なお、表2には、実施例1−1〜1−4の諸特性も併せて示した。
表2に示したように、溶媒がSBAHを含む実施例1−1〜1−4では、SBAHを含まない比較例2−1〜2−4と比較して、膨れが大幅に減少した。しかも、実施例1−1〜1−4では、比較例2−1〜2−4と比較して、放電容量維持率が僅かに減少しただけであり、その放電容量維持率はほぼ同等であった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DECおよびVCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、SBAHの含有量が0.1重量%である実施例2−1、0.5重量%である実施例1−3および1重量%である実施例2−2では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たし、特に0.5mm以下に達したと共に、放電容量維持率も評価基準(50%以上)を満たした。この場合には、SBAHの含有量が増加するにしたがって、膨れが減少すると共に放電容量維持率も減少する傾向が見られた。このことから、電解質が溶媒としてEC、DECおよびVCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池において、サイクル特性を確保しつつ膨れ特性を改善するためには、スルホン化合物の含有量を0.1重量%以上1重量%以下の範囲内にすればよいことが確認された。
(実施例3−1〜3−8)
溶媒に炭酸ジメチル(DMC)を加え、溶媒の組成比(EC:DEC:DMC:VC:SBAH)を重量比で39:55:5:0.5:0.5(実施例3−1)、29:65:5:0.5:0.5(実施例3−2)、19:75:5:0.5:0.5(実施例3−3)、39:30:30:0.5:0.5(実施例3−4)、29:40:30:0.5:0.5(実施例3−5)、19:50:30:0.5:0.5(実施例3−6)、29:35:35:0.5:0.5(実施例3−7)、19:45:35:0.5:0.5(実施例3−8)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例3−1〜3−6)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例3−1〜3−6と同様の手順を経た。
(実施例3−7)
溶媒中におけるDECの含有量を25重量%とし、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例3−7,3−8と同様の手順を経た。
これらの実施例3−1〜3−8および比較例3−1〜3−7の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
表3に示したように、溶媒がSBAHを含む実施例3−1〜3−6では、SBAHを含まない比較例3−1〜3−6と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、DMCおよびVCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、DMCの含有量が5重量%である実施例3−1〜3−3、30重量%である実施例3−4〜3−6および35重量%である実施例3−7,3−8では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たしたと共に、放電容量維持率も評価基準(50%以上)を満たし、特に60%以上に達した。この場合には、DMCの含有量が増加するにしたがって、膨れが増加すると共に放電容量維持率も増加する傾向が見られた。なお、溶媒がDMCおよびSBAHを含んでいるものの、DECの含有量が25重量%である比較例3−7では、放電容量維持率が評価基準を満たしたが、膨れは評価基準を満たさなかった。この比較例3−7における膨れの増加は、DMCの含有量が多すぎると共にDECの含有量が少なすぎるため、膨れが顕著化したことを表している。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、DMCおよびVCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池において、サイクル特性を確保しつつ膨れ特性を改善するためには、DMCの含有量を5重量%以上35重量%以下の範囲内にすればよいことが確認された。
特に、溶媒がDMCを含まない実施例1−2〜1−4と、その実施例1−2〜1−4におけるDECの一部をDMCに置き換えた実施例3−1〜3−3とを比較すると、膨れは前者よりも後者において僅かに増加しただけであり、その膨れはほぼ同等であったが、放電容量維持率は前者よりも後者において大幅に増加した。このことから、溶媒がDMCを含むことにより、膨れ特性がほぼ維持されたままサイクル特性が向上することが確認された。
(実施例4−1〜4−6)
溶媒に炭酸エチルメチル(EMC)を加え、溶媒の組成比(EC:DEC:EMC:VC:SBAH)を重量比で39:55:5:0.5:0.5(実施例4−1)、29:65:5:0.5:0.5(実施例4−2)、19:75:5:0.5:0.5(実施例4−3)、39:30:30:0.5:0.5(実施例4−4)、29:30:40:0.5:0.5(実施例4−5)、19:30:50:0.5:0.5(実施例4−6)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例4−1〜4−6)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例4−1〜4−6と同様の手順を経た。
(比較例4−7〜4−9)
溶媒中におけるDECの含有量を25重量%とし、それに伴ってEMCの含有量を調整したことを除き、実施例4−1〜4−3と同様の手順を経た。
これらの実施例4−1〜4−6および比較例4−1〜4−9の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
表4に示したように、溶媒がSBAHを含む実施例4−1〜4−6では、SBAHを含まない比較例4−1〜4−6と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、EMCおよびVCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、EMCの含有量が5重量%である実施例4−1〜4−3、30重量%である実施例4−4、40重量%である実施例4−5および50重量%である実施例4−6では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たし、特に0.5mm以下に達したと共に、放電容量維持率も評価基準(50%以上)を満たし、特に60%以上に達した。この場合には、EMCの含有量が増加するにしたがって、膨れが増加する一方で放電容量維持率が増加したのち減少する傾向が見られた。なお、溶媒がEMCおよびSBAHを含んでいるものの、DECの含有量が25重量%である比較例4−7〜4−9では、放電容量維持率が60%以上に達したが、膨れは0.5mm以下に達しなかった。この比較例4−7〜4−9における膨れの増加は、EMCの含有量が大きすぎると共にDECの含有量が少なすぎるため、膨れが顕著化したことを表している。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、EMCおよびVCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池において、サイクル特性を確保しつつ膨れ特性を改善するためには、そのEMCの含有量を5重量%以上50重量%以下の範囲内にすればよいことが確認された。
特に、溶媒がEMCを含まない実施例1−2〜1−4と、その実施例1−2〜1−4におけるDECの一部をEMCに置き換えた実施例4−1〜4−3とを比較すると、膨れは前者と後者との間においてほぼ同等であったが、放電容量維持率は前者よりも後者において著しく増加した。このことから、溶媒がEMCを含むことにより、膨れ特性がほぼ維持されたままサイクル特性が向上することが確認された。
また、溶媒がDMCを含む実施例3−1〜3−3と、そのDMCに代えてEMCを含む実施例4−1〜4−3とを比較すると、膨れは前者よりも後者において減少したが、放電容量維持率は後者よりも前者において増加した。このことから、DMCおよびEMCを比較すると、膨れ特性を改善する上ではEMCが有利であり、サイクル特性を向上させる上ではDMCが有利であることが確認された。
(実施例5−1〜5−5)
溶媒にDMCおよびEMCを加え、溶媒の組成比(EC:DEC:DMC:EMC:VC:SBAH)を重量比で39:50:5:5:0.5:0.5(実施例5−1)、29:60:5:5:0.5:0.5(実施例5−2)、19:70:5:5:0.5:0.5(実施例5−3)、29:30:20:20:0.5:0.5(実施例5−4)、19:30:25:25:0.5:0.5(実施例5−5)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例5−1〜5−5)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例5−1〜5−5と同様の手順を経た。
(比較例5−6〜5−9)
溶媒中におけるDECの含有量を25重量%とし、それに伴ってDMCおよびEMCの含有量を調整したことを除き、実施例5−1〜5−7と同様の手順を経た。この場合には、溶媒の組成比(EC:DEC:DMC:EMC:VC:SBAH)を重量比で39:25:30:5:0.5:0.5(比較例5−6)、39:25:5:30:0.5:0.5(比較例5−7)、29:25:5:40:0.5:0.5(比較例5−8)、19:25:5:50:0.5:0.5(比較例5−9)とした。
これらの実施例5−1〜5−5および比較例5−1〜5−9の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
表5に示したように、溶媒がSBAHを含む実施例5−1〜5−5では、SBAHを含まない比較例5−1〜5−5と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。この場合には、膨れが0.5mm以下に達したと共に、放電容量維持率が60%以上に達した。なお、溶媒がDMC、EMCおよびSBAHを含んでいるものの、DECの含有量が25重量%である比較例5−6〜5−9では、放電容量維持率が60%以上に達したが、膨れは0.5mm以下に達しなかった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、DMC、EMCおよびVCを含む電解質を用いた二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
(実施例6−1〜6−4)
溶媒に炭酸プロピレン(PC)を加え、溶媒の組成比(EC:DEC:VC:PC:SBAH)を重量比で59:30:0.5:10:0.5(実施例6−1)、29:60:0.5:10:0.5(実施例6−2)、19:70:0.5:10:0.5(実施例6−3)、9:80:0.5:10:0.5(実施例6−4)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(実施例6−5)
溶媒にPCを加える一方でVCを含有させず、その溶媒の組成比(EC:DEC:VC:PC:SBAH)を重量比で29.5:60:0:10:0.5としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例6−1,6−2)
溶媒の組成比(EC:DEC:VC:PC:SBAH)を重量比で64:25:0.5:10:0.5(比較例6−1)、4:85:0.5:10:0.5(比較例6−2)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
これらの実施例6−1〜6−5および比較例6−1,6−2の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
表6に示したように、実施例6−1〜6−4および比較例6−1,6−2の結果を見ると、比較例6−1,6−2では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たしたが、放電容量維持率が大幅に減少して評価基準(50%以上)を満たさなかった。これに対して、実施例6−1〜6−4では、膨れが評価基準を満たし、放電容量維持率も評価基準を満たした。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、VCおよびPCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池では、溶媒中におけるDECの含有量を30重量%以上80重量%以下の範囲内とすることにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、溶媒がVCを含む実施例6−2では、VCを含まない実施例6−5と比較して、膨れがほぼ維持されたまま、放電容量維持率が増加した。このことから、電解質が溶媒として不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含むことにより、サイクル特性が向上することが確認された。
(実施例7−1,7−2)
溶媒中におけるSBAHの含有量を0.1重量%(実施例7−1)、1重量%(実施例7−2)とし、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例6−3と同様の手順を経た。
(比較例7−1〜7−4)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例6−1〜6−4と同様の手順を経た。
これらの実施例7−1,7−2および比較例7−1〜7−4の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表7に示した結果が得られた。なお、表7には、実施例6−1〜6−4の諸特性も併せて示した。
表7に示したように、実施例6−1〜6−4では、比較例7−1〜7−4と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、VCおよびPCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、実施例7−1,6−3,7−2では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たし、特に0.5mmに達したと共に、放電容量維持率も評価基準(50%以上)を満たした。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、VCおよびPCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池において、サイクル特性を確保しつつ膨れ特性を改善するためには、スルホン化合物の含有量を0.1重量%以上1重量%以下の範囲内にすればよいことが確認された。
(実施例8−1〜8−8)
溶媒にDMCを加え、溶媒の組成比(EC:DEC:DMC:VC:PC:SBAH)を重量比で29:55:5:0.5:10:0.5(実施例8−1)、19:65:5:0.5:10:0.5(実施例8−2)、9:75:5:0.5:10:0.5(実施例8−3)、29:30:30:0.5:10:0.5(実施例8−4)、19:40:30:0.5:10:0.5(実施例8−5)、9:50:30:0.5:10:0.5(実施例8−6)、19:35:35:0.5:10:0.5(実施例8−7)、9:45:35:0.5:10:0.5(実施例8−8)としたことを除き、実施例6−1〜6−4と同様の手順を経た。
(比較例8−1〜8−6)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例8−1〜8−6と同様の手順を経た。
(比較例8−7)
溶媒中におけるDECの含有量を25重量%とし、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例8−7,8−8と同様の手順を経た。
これらの実施例8−1〜8−8および比較例8−1〜8−7の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表8に示した結果が得られた。
表8に示したように、実施例8−1〜8−6では、比較例8−1〜8−6と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、DMC、VCおよびPCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、実施例8−1〜8−8では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たしたと共に、放電容量維持率も評価基準(50%以上)を満たし、特に60%以上に達した。なお、溶媒がDMCおよびSBAHを含んでいるものの、DECの含有量が25重量%である比較例8−7では、放電容量維持率が評価基準を満たしたが、膨れは評価基準を満たさなかった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、DMC、VCおよびPCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池において、サイクル特性を確保しつつ膨れ特性を改善するためには、DMCの含有量を5重量%以上35重量%以下の範囲内にすればよいことが確認された。
特に、溶媒がDMCを含まない実施例6−2〜6−4と、DMCを含む実施例8−1〜8−3とを比較すると、膨れは前者と後者との間においてほぼ同等であったが、放電容量維持率は前者よりも後者において著しく増加した。このことから、溶媒がDMCを含むことにより、膨れ特性がほぼ維持されたままサイクル特性が向上することが確認された。
(実施例9−1〜9−6)
溶媒にEMCを加え、溶媒の組成比(EC:DEC:EMC:VC:PC:SBAH)を重量比で29:55:5:0.5:10:0.5(実施例9−1)、19:65:5:0.5:10:0.5(実施例9−2)、9:75:5:0.5:10:0.5(実施例9−3)、29:30:30:0.5:10:0.5(実施例9−4)、19:30:40:0.5:10:0.5(実施例9−5)、9:30:50:0.5:10:0.5(実施例9−6)としたことを除き、実施例6−1〜6−4と同様の手順を経た。
(比較例9−1〜9−6)
溶媒にSBAHを含有差せず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例9−1〜9−6と同様の手順を経た。
(比較例9−7〜9−9)
溶媒中におけるDECの含有量を25重量%とし、それに伴ってEMCの含有量を調整したことを除き、実施例9−4〜9−6と同様の手順を経た。
これらの実施例9−1〜9−6および比較例9−1〜9−9の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表9に示した結果が得られた。
表9に示したように、実施例9−1〜9−6では、比較例9−1〜9−6と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、EMC、VCおよびPCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
また、実施例9−1〜9−6では、膨れが評価基準(0.6mm以下)を満たし、特に0.5mm以下に達したと共に、放電容量維持率が評価基準(50%以上)を満たし、特に60%以上に達した。なお、溶媒がEMCおよびSBAHを含んでいるものの、DECの含有量が25重量%である比較例9−7〜9−9では、放電容量維持率が60%以上に達したが、膨れは0.5mm以下に達しなかった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、EMC、VCおよびPCと共に化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含む二次電池において、サイクル特性を確保しつつ膨れ特性を改善するためには、そのEMCの含有量を5重量%以上50重量%以下の範囲内にすればよいことが確認された。
特に、溶媒がEMCを含まない実施例6−2〜6−4と、EMCを含む実施例9−1〜9−3とを比較すると、膨れは前者と後者との間においてほぼ同等であったが、放電容量維持率は前者よりも後者においてほぼ同等以上に増加した。このことから、溶媒にEMCを含有させることにより、膨れ特性がほぼ維持されたままサイクル特性が向上することが確認された。
また、溶媒がDMCを含む実施例8−1〜8−3と、EMCを含む実施例9−1〜9−3とを比較すると、膨れは前者よりも後者において減少したが、放電容量維持率は後者よりも前者において増加した。このことから、膨れ特性を改善する上ではEMCが有利であり、サイクル特性を向上させる上ではDMCが有利であることが確認された。
(実施例10−1〜10−5)
溶媒にDMCおよびEMCを加え、溶媒の組成比(EC:DEC:DMC:EMC:VC:PC:SBAH)を重量比で29:50:5:5:0.5:10:0.5(実施例10−1)、19:60:5:5:0.5:10:0.5(実施例10−2)、9:70:5:5:0.5:10:0.5(実施例10−3)、19:30:20:20:0.5:10:0.5(実施例10−4)、9:30:25:25:0.5:10:0.5(実施例10−5)としたことを除き、実施例6−1〜6−4と同様の手順を経た。
(比較例10−1〜10−5)
溶媒にSBAHを含有させず、それに伴ってECの含有量を調整したことを除き、実施例10−1〜10−5と同様の手順を経た。
(比較例10−6〜10−9)
溶媒中におけるDECの含有量を25重量%とし、それに伴ってDMCおよびEMCの含有量を調整したことを除き、実施例10−1〜10−7と同様の手順を経た。この場合には、溶媒の組成比(EC:DEC:DMC:EMC:VC:PC:SBAH)を重量比で29:25:30:5:0.5:10:0.5(比較例10−6)、29:25:5:30:0.5:10:0.5(比較例10−7)、19:25:5:40:0.5:10:0.5(比較例10−8)、9:25:5:50:0.5:10:0.5(比較例10−9)とした。
これらの実施例10−1〜10−7および比較例10−1〜10−9の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表10に示した結果が得られた。
表10に示したように、実施例10−1〜10−5では、比較例10−1〜10−5と比較して、膨れが大幅に減少したと共に、放電容量維持率がほぼ同等であった。この場合には、膨れが0.5mm以下に達したと共に、放電容量維持率が60%以上に達した。なお、溶媒がDMC、EMCおよびSBAHを含んでいるものの、DECの含有量が25重量%である比較例10−6〜10−9では、放電容量維持率が60%以上に達したが、膨れは0.5mm以下に達しなかった。このことから、電解質が溶媒としてEC、DEC、DMC、EMC、VCおよびPCを含む二次電池では、その溶媒が化5あるいは化6に示したスルホン化合物を含むことにより、サイクル特性が確保されると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
ここで、溶媒がPCを含まない場合(表1〜表5参照)と、PCを含む場合(表6〜表10参照)とを比較すると、放電容量維持率は前者よりも後者において僅かに減少するものの、膨れは前者よりも後者において減少した。このことから、溶媒がPCを含むことにより、膨れ特性が改善することが確認された。
(実施例11,12)
上記した第1の電池について説明した第1の製造方法により電解質24を形成したことを除き、実施例1−2,6−2と同様の手順を経た。この電解質24を形成する際には、電解液と、高分子化合物としてポリフッ化ビニリデンと、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンとを含む前駆溶液を調製して正極21および負極22に塗布したのち、その溶剤を揮発させた。
実施例1−2,11の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表11に示した結果が得られた。また、実施例6−2,12の二次電池について膨れ特性およびサイクル特性を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
表11および表12に示したように、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ23を用いた実施例1−2,6−2(セパレータに塗布された高分子化合物の有無;有)では、それぞれ高分子化合物が両面に塗布されていないセパレータ23を用いた実施例11,12(セパレータに塗布された高分子化合物の有無;無)と比較して、放電容量維持率がほぼ維持されたまま、膨れが大幅に減少した。このことから、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ23を用いて電解質24を形成することにより、膨れ特性が改善されることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の電解質の適用用途は、必ずしも電池に限らず、電池以外の他の電気化学デバイスであってもよい。この他の電気化学デバイスとしては、例えば、キャパシタなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電解質として、液状の電解質あるいはゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、他の種類の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したものや、他の無機化合物と電解液とを混合したものや、これらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電池として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池、あるいは負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量がリチウムの析出および溶解に基づく容量成分により表されるリチウム金属二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の二次電池は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分とリチウムの析出および溶解に基づく容量成分とを含み、かつそれらの容量成分の和により表される二次電池についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1A族元素や、マグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの2A族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。この場合においても、負極活物質として、上記実施の形態で説明した負極材料を用いることが可能である。
また、上記した実施の形態または実施例では、本発明の電池の電池構造としてラミネートフィルム型を例に挙げ、電池素子の構造として巻回構造を例に挙げて説明したが、本発明の電池は、円筒型、コイン型、ボタン型あるいは角型などの他の電池構造を有する電池や、電池素子が積層構造を有する電池についても同様に適用可能である。また、本発明の電池は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電解質における溶媒(炭酸ジエチル,炭酸ジメチル,炭酸エチルメチル,スルホン化合物)の組成比について、実施例の結果から導き出された数値範囲を適正範囲として説明しているが、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、含有量が上記した範囲から多少外れてもよい。
本発明の一実施の形態に係る電池の構成を表す分解斜視図である。
図1に示した巻回電極体のII−II線に沿った構成を表す断面図である。
符号の説明
11…正極リード、12…負極リード、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…電解質、25…保護テープ、30…外装部材、31…密着フィルム。