JP2007217855A - 消臭性および抗菌性を有するエチレン−ビニルアルコール系繊維およびその製造方法 - Google Patents

消臭性および抗菌性を有するエチレン−ビニルアルコール系繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】洗濯耐久性がよく、取り分け60℃の繰り返し洗濯における消臭性、抗菌性等が消失しないことを解決するものであり、さらには生産安定性に優れた消臭性、抗菌性を有する変性されたエチレン−ビニルアルコール繊維を提供する。
【解決手段】エチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して、繊維化した後、チタンイオン、銅イオンの単独あるいは、チタンイオンと銅イオンが混在した水溶液中に、該繊維を含侵させることにより、繊維の内部まで、チタンや銅のナノ微粒子存在した繊維を形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、チタン微粒子または銅微粒子がエチレン−ビニルアルコール中に分散されていて、実用上、耐久性のある消臭、抗菌性等の性能を有する、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるあるいは該エチレン−ビニルアルコール系共重合体を一成分とする複合繊維、ならびにこれらの繊維の製造方法に関する。
熱溶融性繊維としては、ポリエステルやポリアミドやポリオレフィンなどからなる繊維が汎用されている。しかしながら、これらポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維などの溶融紡糸により得られる大半の汎用合成繊維の場合には、消臭剤、抗菌剤等を繊維表面に付着させることにより抗菌性や消臭性を付与することは可能ではあるが、付着させた抗菌剤や消臭剤は物理的に単に表面に存在するのみであり、布帛に対する揉みや洗濯、特に60℃程度の高温度下での繰り返し洗濯によってこれら抗菌剤や消臭剤が容易に脱落し、抗菌性や消臭性に耐久性を持たせることは非常に困難である。
また機能性ポリマーとして、水酸基を有することによる優れた吸湿性を持つエチレン−ビニルアルコール系繊維が開示(特開平5−51813号公報)されているが、これらの機能性に加え、消臭、抗菌性を付加した複合機能化を目的にしてエチレン−ビニルアルコール系の繊維を製造するためには、紡糸段階において、該機能物質をポリマー中に練り込みたいところであるが、該物質がポリマーの分解を誘発することおよび紡糸時の耐熱性の制約等により現実には練り込みが不可能である。たとえ、熱分解の抑制・安定剤等を併用して紡糸が可能になっても、製糸時に糸切れが激しく、実用性に乏しい。従って、複合化された該機能性を有する商品を完成させることが非常に困難であるのが実状である。このことは、上記したポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維などの溶融紡糸により得られる大半の汎用合成繊維でも同様である。
本発明は、上述の欠点を解決するものであり、詳細には、本発明の目的は、洗濯耐久性が良好で、とりわけ60℃程度の繰り返し洗濯を行っても、付与した該消臭剤、抗菌剤が殆ど脱落しないことを目指すものであり、さらには生産安定性に優れた消臭性、抗菌性を有するエチレン−ビニルアルコール系繊維を提供するものである。
本発明者等は、上記したエチレン−ビニルアルコール系繊維を得るべく鋭意検討を重ねた結果、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下EVOHと略す)に対して特別に高価な設備を必要とせず、該EVOHを溶融紡糸後に、通常の後加工による製造工程中において、チタンイオン、銅イオンのそれぞれの単独化合物あるいは該化合物の混合物を含有する水溶液に含侵処理することより、繊維内部にまで水酸基にチタンイオン、銅イオン、あるいは両イオンが混在して結合し、その結果、チタン、銅のナノ微粒子を形成させることが可能であることを見出し、そしてこのようにして得られた繊維は、高度な耐久性と消臭性、さらに抗菌性を兼備したEVOH繊維であることを見出した。
そして、さらに上記したEVOH繊維を架橋させて耐熱水性を向上させる際の処理工程で、チタンや銅のナノ微粒子の形成を耐熱水性付与と同時に行うことも可能であることを見出した。
すなわち本発明は、平均粒子径200nm以下の微粒子を含有し、かつ融点が160℃以上であるEVOHからなり、以下(1)〜(3)のいずれかを満足するEVOH繊維である。
(1)該微粒子がチタンからなり、その含有量がEVOHに対して0.1重量%以上であること、
(2)該微粒子が銅からなり、その含有量がEVOHに対して0.1重量%以上であること、
(3)該微粒子が銅からなるものとチタンからなるものが繊維内に混在しており、それら微粒子の合計含有量がEVOHに対して0.1重量%以上であること、
また本発明は、平均粒子径200nm以下の微粒子を含有し、かつ融点が160℃以上であるEVOHと他の熱可塑性重合体からなり、該EVOHが繊維表面の大半を占めており、さらに以下(1)〜(3)のいずれかを満足するEVOH系複合繊維である。
(1)該微粒子がチタンからなり、その含有量がEVOHに対して0.1重量%以上であること、
(2)微粒子が銅からなり、その含有量がEVOHに対して0.1重量%以上であること、
(3)微粒子が銅からなるものとチタンからなるものが繊維内に混在しており、それら微粒子の合計含有量がEVOHに対して0.1重量%以上であること、
また本発明は、上記EVOH繊維またはEVOH複合繊維を含有する糸または繊維製品である。
さらに本発明は、EVOHからなる繊維またはEVOHと他の熱可塑性重合体からなる複合繊維を、下記(A)または(B)の水溶液で処理することを特徴とするEVOH繊維またはEVOH複合繊維の製造方法である。
(A)EVOHの水酸基にチタン元素または銅元素が配位結合し得る性質を有する化合物を含む水溶液であって、かつ該EVOHが無架橋の場合には50℃〜105℃に加熱された水溶液、
(B)EVOHの水酸基にチタン元素または銅元素が配位結合し得る性質を有する化合物を含む水溶液であって、かつ該EVOHが架橋されている場合には106℃〜140℃に加熱された水溶液、
また本発明は、EVOHからなる繊維またはEVOHと他の熱可塑性重合体からなる複合繊維を、該EVOHの水酸基にチタン元素が配位結合し得る性質を有するチタン化合物または該EVOHの水酸基に銅元素が配位結合し得る性質を有する銅化合物と、該EVOH中の水酸基に架橋アセタール結合を形成し得る化合物を含有する水溶液であって、そのPHが2.0〜4.5で、かつ80℃〜140℃に加熱されている水溶液にて処理して、EVOHを架橋処理することを特徴とする消臭・抗菌性を有するEVOH繊維の製造方法である。
なお、本発明で言うチタン微粒子、銅微粒子とは、チタン金属や銅金属からなるものの外に、チタン化合物や銅化合物で水に対して不要であるものからなるもの、或いは金属とそれら金属の化合物が混合させた状態で実質的に水に不要の状態の物質からなるものを含んでいる。
すなわち、本発明は、チタン原子または銅原子を含有する水溶液にEVOH繊維を含侵させ、不溶化させることにより繊維内部にも該原子から形成されたナノ微粒子を形成させるものであり、これにより高度な消臭性と抗菌性を兼備したEVOH繊維が得られることを見出した。これは、EVOH繊維が多数の水酸基を有しており、かつ繊維内に温水が容易に浸透し易いという特殊な性質を有していることを利用している。
特に、上記の架橋アセタール化とチタン原子又は銅原子による配位結合化を同一の処理で行うと、製造工程の簡略化ができる。
本発明に用いられるEVOHは、エチレンからなる繰り返し単位の割合が25〜70モル%であるものが好ましく、残余がビニルアルコール単位単独またはビニルアルコールとその他のビニル系モノマーの繰り返し単位からなるものが好ましい。
EVOHにおけるエチレン単位の割合が25モル%よりも少ない、すなわちビニルアルコールの割合が75モル%よりも多いと、繊維化する際の曳糸性が不良となって紡糸時の単糸切れ、断糸切れが多くなり、しかも柔軟性の欠けたものとなる。
上記のEVOHと他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維において、他の熱可塑性重合体としてポリエチレンテレフタレートのような高融点の重合体を使用した場合には、通常250℃以上の紡糸温度を使用するが、その場合にエチレン単位の割合が25モル%よりも少ないとEVOHの耐熱性が不充分になり、良好な複合繊維が得られなくなるので不都合である。
一方、エチレン単位の割合が70モル%を超えると、ビニルアルコール単位、すなわち水酸基の割合が必然的に少なくなり、上記のチタン、銅を含有する化合物、あるいは架橋アセタール化剤等によるEVOHに含まれる水酸基への結合量が減少して目的とする消臭性、抗菌性を有する耐熱性の良好な繊維が得られない。好ましくはEVOHにおけるビニルアルコール単位の割合は、30モル%以上、70モル%以下で、より好ましくは40モル%以上、60モル%以下の範囲である。
ここで、基本骨格をなすEVOHは架橋されていない鎖状のものであっても、または適当な方法によって架橋されているものであってもよい。架橋されていない場合には、チタン原子または銅原子を架橋剤と共に存在させて、架橋と配位結合を同一の処理で行うことも可能である。ここで云う架橋剤とは、モノアルデヒド、ジアルデヒド等のアルデヒド化合物を挙げることができるが、分子鎖間を架橋反応させる点からジアルデヒド化合物が好ましい。なかでも、1,9−ノナンジアールとアルコール成分であるエチレングリコールとのアセタール化物のビスエチレンジオキシノナンが最も好ましい。
架橋剤を導入する時期は、チタン含有化合物、銅含有化合物、チタン含有化合物と銅含有化合物との混合物等による処理を行う前か、あるいはこれら該化合物のそれぞれと共に架橋剤を使用するのが製造工程の簡略化の点でより好ましい。なお、通常アルデヒド物質は空気中にて容易に酸化されやすいので、貯蔵中の安定性を高めるためにも、アルデヒド化合物のアルデヒド基をアルコール性水酸基により封鎖を行い、アセタール化したものを使用するのが好ましい。
そして架橋アセタール化促進剤として、スルホン酸基塩を含む化合物を処理浴に添加すると良い。該化合物の好適な例として、パラトルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。架橋の程度としては20モル%程度が耐熱水性を向上させる点で好ましい。
EVOHは、エチレン/酢酸ビニル系共重合体の酢酸ビニル部分をケン化することにより得ることができ、ケン化度としては約95モル%以上であるのがよい。ケン化度が低くなると共重合体の結晶性が低下して強度等の物性が低下するだけでなく、共重合体が軟化し易くなり、繊維化工程でトラブルが発生し、しかも得られる繊維の風合いが劣ったものになり好ましくない。より好ましくはケン化度99モル%以上100モル%以下である。
EVOHとして、通常、数平均分子量が5000〜25000、特に8000〜20000のものを使用するのが好ましい。ここで言うEVOHの数平均分子量とは、GPC法により測定した値である。EVOHは、例えば(株)クラレよりエバールの商品名で、また日本合成化学工業(株)よりソアノールの商品名で市販されており、容易に入手可能である。しかしながら、市販されているエチレンと酢酸ビニルからラジカル重合等によってエチレン/酢酸ビニル共重合体を製造し、それをケン化して使用してもよい。
EVOH系繊維を構成するEVOHの融点としては、160℃以上であることが本発明において必要である。160℃未満の場合には、100℃の熱水中にて軟化、膠着するという問題点が生じる。好ましくは165℃〜180℃の範囲である。なお、本発明でいうEVOHの融点とは、チタン化合物、銅化合物、或いはチタン化合物と銅化合物との混合物で処理したもの、またはEVOHに架橋結合が導入され、かつ該ナノ粒子物を含有したものの融点を意味する。EVOHにおいて、融点を高めるためには、酢酸ビニルの共重合割合を高め、かつケン化度を高めればよい。
いずれの場合も、EVOH中に、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンやカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオンが存在すると、EVOH中に主鎖切断、側鎖脱離、過度の架橋等が生じてEVOHの熱安定性の低下、EVOHのゲル化による紡糸時の断糸、紡糸フィルターの目詰まり、それに伴う紡糸パックの圧力の急上昇、ノズル寿命の短期化を招くので、それらのイオンの含有量を極力少なくする(通常、100ppm以下、好ましくは50ppm以下)のが好ましい。
そして、本発明の繊維や繊維製品等を得るためには、EVOHの水酸基と、チタン原子、銅原子のいずれかで配位結合し得る性質を有する化合物を用いる必要がある。具体的には、本発明において、チタン化合物、銅化合物、チタン原子と銅原子の両者を有する化合物、あるいはチタン化合物と銅化合物の両混合物を用いてもよい。更にチタン化合物や銅化合物として、それぞれ2種以上の化合物を併用してもよい。
本発明で用いられる、チタン原子、銅原子のそれぞれが配位結合し得る性質を有する化合物とは、チタン原子を含む化合物の場合には、水に対して溶解性を有する物質であり、上記のEVOH中に含まれる水酸基にチタン原子が配位結合し得る性質を有する化合物を意味しており、好適な具体例として、チタニウムサルフェート、チタンラクテート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)が挙げられる。特に本発明で用いられる加温条件下で、水溶液中で処理する際の条件に耐え得る加水分解性の非常に小さいものが好ましく、この点からチタンラクテートが最も好ましく、このチタンラクテートとしては、例えば松本製薬工業(株)よりオルガチックスTC−310の商品名で市販されているものが挙げられる。
銅元素を含む化合物の場合には、同様に、水に対する溶解性の大きい物質が好ましく、具体的化合物として、硫酸銅、硝酸銅等が挙げられ、なかでも、特に非常に溶解度が大きい硝酸銅を用いることがより好ましい。
その処理温度としては、EVOHが無架橋状態の場合には、50℃〜105℃の範囲内の温度が用いられる。105℃を超えると収縮、軟化および膠着等の問題が発生する。一方、50℃未満の場合には、満足できるチタン粒子、銅粒子、チタンと銅との混合粒子等の導入が得られない。特に好ましくは、EVOH中の水酸基へのこれら原子の配位結合の形成容易性の点より、80℃以上であり、且つEVOHからなる繊維の収縮抑制、軟化および膠着抑制等の点より、100℃以下である。そして、更に好ましくは、上記の配位結合させるべき該処理温度に到達するまでの昇温速度に好適範囲があり、即ち均一に結合させるために、先ず低温より開始するのが好ましく、より好ましくは30℃〜70℃の範囲から開始する場合であり、特に再現性よく本発明の目的である消臭性、抗菌性を付与するためには、40℃以上、50℃以下から開始するのがとりわけ好ましい。また昇温速度については、上記のEVOHからなる繊維の軟化および膠着抑制等の点より1℃/分以下が好ましい。所定の温度に達した後の処理時間として30〜90分の範囲が好適である。
一方、EVOH系繊維に上記の架橋処理(アセタール化処理)が予めなされている場合には、上記の処理温度としては、106℃〜140℃が用いられる。140℃を超えると繊維に収縮が多発し、一方、106℃未満の場合には、チタンと銅のいずれもがEVOH内に導入することが難しい。効率よく配位結合、そして再現性よく消臭性、抗菌性を付与するためには、110℃以上、130℃以下が好ましい。この場合にも、均一に結合させるために、先ず低温より開始するのが好ましく、より好ましくは50℃〜80℃の範囲から開始する場合であり、特に再現性よく本発明の目的である消臭性、抗菌性を付与するためには、60℃以上、75℃以下から開始するのがとりわけ好ましい。また昇温速度については、上記のEVOHからなる繊維の軟化および膠着抑制等の点より2℃/分以下が好ましい。所定の温度に達した後の処理時間としては、30〜90分の範囲が好適である。
そしてEVOH系繊維に架橋処理(アセタール化処理)と同時に上記のチタンや銅を該EVOHへ導入する場合には、処理浴のPHの範囲として1.8〜4.5が用いられる。4.5を超えると架橋アセタール結合量が少なくなり、得られる繊維の耐熱水性が不足する。また該PHが1.8より小さいと該元素の水酸基への配位結合が困難で、EVOH内に導入することが難しい。
処理温度としては、80〜140℃が一般に用いられる。140℃を超えると繊維に収縮が多発し、一方80℃未満の場合にはチタンや銅をEVOH内に導入することが難しい。効率よく配位結合を形成し、そして再現性よく消臭性、抗菌性を付与し、且つ耐熱水性の良好な繊維にするためには、90℃以上、120℃以下が好ましい。この場合にも、均一に結合させるために先ず低温より開始するのが好ましく、より好ましくは50℃〜80℃の範囲から開始する場合であり、特に再現性よく本発明の目的である消臭性、抗菌性を付与し、且つ良好な耐熱水性を有するEVOH系繊維を得るためには、60℃以上、75℃以下から開始するのがとりわけ好ましい。昇温速度については、上記のEVOH系繊維中の水酸基に対して、緩慢に架橋結合させ、該繊維の軟化および膠着抑制等の点より2℃/分以下が好ましく、より好ましくは1℃/分である。所定の温度に達した後の処理時間としては、30〜90分の範囲が好適である。
上記の処理水溶液の濃度としては、チタン、銅のいずれか一方を含有させる場合には、EVOHに対してチタン・銅の金属換算で0.1質量%以上、5質量%以下の水溶液中が好ましく、該処理濃度が0.1質量%より少ないと満足な消臭性、抗菌性を有するEVOH繊維が得られない。そして5質量%を超えると該チタンあるいは該銅を含有する化合物のみによる物理吸着が繊維表面に発生し、該繊維処理物が硬くなり風合い悪化を来たし好ましくない。特に消臭性、抗菌性等の性能への効果の再現性より、0.3質量%以上、3質量%以下の範囲が好ましい。
そしてチタンと銅の混合したものを含有させる場合には、EVOHに対して両元素の合計量でチタン・銅の金属換算で0.1質量%以上、6質量%以下とであり、該両者の含有量の組み合わせは任意に用いてもよい。
処理の形態としては、繊維の状態で、あるいは仮撚加工糸や織編物、不織布等にした後に行っても良い。特に糸状で処理を行う場合、嵩高加工が施された仮撚糸のパッケージ形態でチーズ染色機を用いて行う方法が、処理液がチーズパッケージ内部に浸透しやすく均一に行うことが可能であるので好適である。
以上のように、EVOHの水酸基に配位させたチタンまたは銅を還元等の処理により不溶化させ、微粒子化させることができる。その具体的方法としては、特に限定されないが、例えば銅イオンの場合には硫化還元処理することで硫化銅のナノ微粒子を形成させることができる。すなわち、前述した銅イオン含浸処理に引き続き、硫化還元能力を有する硫化物イオンを含む化合物が溶解された浴を通すことで、EVOHと銅イオンの配位を外すことにより、硫化銅ナノ微粒子を繊維内部にまで形成させることができる。
また、単にチタンイオンや銅イオンを含有する温水中にEVOH繊維を浸漬するだけで、EVOHの水酸基にチタンイオンや銅イオンが配位し、その配位したチタンや銅の周りにチタンや銅が析出するため、上記したような還元処理等を行わなくても微粒子状で存在する。したがって本発明では、還元等の処理を行っても良いし、また還元等の処理を行わなくても良い。
このように処理して得られた上記EVOH繊維には、チタンのナノ微粒子、銅のナノ微粒子、またはチタンのナノ微粒子と銅のナノ微粒子の両者共存のいずれかを含有する。すなわち、平均粒子径が200nm以下のチタンのナノ微粒子、平均粒子径が200nm以下の銅のナノ微粒子、或いは両ナノ微粒子が繊維の内部まで微細に分散されている。
また、本発明において、チタン微粒子または銅微粒子の含有量は、いずれも、0.1質量%以上/EVOHであることが必要であり、チタン微粒子と銅微粒子がEVOH中に混在して存在している場合には、該微粒子の合計含有量で0.1質量%以上/EVOHであることが必須である。該微粒子の含有量が0.1質量%未満の場合には、消臭性、抗菌性等の性能が満足に得られないという問題点を生じる。好ましくは0.12〜1.5質量%の範囲である。そしてチタン微粒子と銅微粒子が混在している場合には、いずれの微粒子の含有量も0.05質量%未満である場合には、高度の消臭性、抗菌性等の性能が満足に得られないという問題点を生じる。好ましくは、いずれの場合も0.12〜3質量%の範囲である。
また、平均粒子径が200nmを超える場合には、該微粒子の凝集による分散の不均一という問題点が生じ、消臭・抗菌等の性能に再現性がなくなり、該性能にバラツキが起きる。好ましくは5〜100nmの範囲である。
繊維表面にのみチタン粒子あるいは銅粒子、またその混合粒子が付着している繊維の場合や、繊維内部であっても、目視や実体顕微鏡レベルで確認できる1μm以上の大きな粒子が数多く存在し、本発明で規定するような平均粒子径のものが殆ど観察されない場合には、目的である消臭性能、抗菌性能などが発揮されない。本発明の繊維は、透過型電子顕微鏡(TEM)により初めて微粒子の存在形態を確認することができる。なお、本発明でいう平均粒子径とはTEMの高倍率の写真により測定した値である。具体的な方法については後述する。
本発明において、チタン含有化合物、銅含有化合物、これらの混合物等によるEVOH繊維の変性は、EVOHから溶融紡糸によって繊維を製造し、必要に応じてそれらの繊維から更に仮撚加工糸、または布帛等を形成した後、それらを該チタン含有化合物、銅含有化合物、チタン含有化合物と銅含有化合物との混合された物の水溶液状態で処理するか、あるいはEVOHへの架橋剤を共存させて本発明の規定のPH範囲での水溶液の状態で処理するのが好ましく、さらには該処理液に少量のアルコール、例えばイソプロピルアルコールを極微量添加した方が変性しやすいことから好ましい。
本発明の繊維が複合繊維である場合には、EVOH:他の熱可塑性重合体の複合割合を、重合比率で、10:90〜90:10にするのが望ましい。この範囲外であると、複合比率がアンバランスになり紡糸性が不良になり易い。複合繊維に使用する他の熱可塑性重合体としては、耐熱性、寸法安定性の点から、融点が150℃以上の結晶性の熱可塑性重合体を用いるのが好ましく、その代表例として繊維形成性のポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。特に好ましくは、EVOH:他の熱可塑性重合体の複合割合を、重量比率で30:70〜70:30の範囲にし、他の熱可塑性重合体としてポリエステルを用いる場合である。
ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはこれらのエステル類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール化合物とから合成される繊維形成性のポリエステルを使用することができ、なかでも構成単位の80モル%以上、特に90モル%以上がエチレンテレフタレート単位および/またはブチレンテレフタレート単位からなるポリエステルが好ましい。
またポリアミドとしては、ナイロン4、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、ナイロン−610等を使用することができる。
更にポリオレフィンとしてはポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体を使用することができる。
複合繊維における複合形態としては、芯鞘型、特に芯成分が多数の突起部(例えば10個以上の突起部)を有した芯鞘型構造、海島型、貼り合わせ型、それらの混在型等の任意の形態が挙げられる。芯鞘型の場合は、芯成分の突起形状をも含めて2層芯鞘型および3層以上の多層芯鞘型のいずれでもよい。また海島型の場合は、島の形状、数、分散状態を任意に選ぶことができ、島の一部が繊維表面に露出していてもよい。更に貼り合わせ型の場合は、繊維の長さ方向に直角な繊維断面において、貼り合わせ面が直線状、円弧状またはその他、任意のランダムな曲線状のいずれの状態になっていてもよく、更に複数の貼り合わせ部分が平行になっていても、放射状になっていても、その他、任意の形状であってもよい。いずれの複合形状においても、EVOH成分が繊維表面に露出していることが、チタン原子や銅原子の含浸のために必要であり、繊維表面の50%以上をEVOHが覆っている場合が好ましく、より好ましくは、繊維表面の全面をEVOHが覆っている場合である。そして、最も好ましくは、EVOHが鞘成分、他の熱可塑性樹脂が芯成分となっている芯鞘型複合繊維の場合である。
また、本発明の複合繊維では、EVOHと複合させる他の熱可塑性重合体は、1種類であっても、または2種以上であってもよい。
そして、本発明の繊維および複合繊維の断面外形はどのようなものであってもよく、円形または異形の形状とすることができる。異形断面の場合は、例えば扁平形、楕円形、三角形〜八角形等の角形、T字形、V字形、3〜8葉形等の多葉形、中空形等の任意の形状とすることができる。
更に、本発明の繊維および複合繊維は、繊維形成性重合体において通常に使用されている蛍光増白剤、安定剤、難燃剤、着色剤、消臭性、抗菌性を高めるための他の物質等の任意の添加剤を必要に応じて含有することができる。本発明の単繊維の太さとして0.1〜5デシテックスの範囲が製糸性の点で好ましい。
また、本発明の繊維および糸は、モノフィラメント等の長繊維、ステープル等の短繊維、マルチフィラメント糸、紡績糸、本発明の繊維と天然繊維、半合成繊維、他の合成繊維との混繊糸や混紡糸、合撚糸等のいずれでもよい。また、本発明の繊維は、仮撚捲縮加工、交絡処理等の任意の処理を施してあってもよい。更に本発明の繊維製品は、それらの繊維や糸からなる編織物、不織布、最終的な衣類、タオル等の繊維製品のいずれでもよい。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[EVOH系繊維中のチタン、銅含有量の測定]
蛍光X線スペクトルおよび原子吸光などによる分析で求めた。
[EVOH系繊維中のチタン、銅の平均粒子径の測定]
日立社製H−800NA透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行った。繊維断面の写真から任意に100個のチタン微粒子、銅微粒子を選び、その大きさを夫々、実測し、平均値を平均粒子径とした。
[EVOHの融点]
示差走査熱量計(DSC)により以下の条件で測定して吸熱ピーク温度で読み取った。
測定条件:30℃で3分間、放置し、ついで220℃まで速度10℃/分で昇温した。試料が複合繊維の場合には、低温側のピークをEVOHの融点とした。
[消臭性の測定]
消臭成分(ガス):アンモニア40ppm,酢酸100ppm,ホルマリン40ppm
吸着性:5Lのテトラバッグに被測定試料3.0gを入れ、所定濃度に調整した測定対象ガスを3L注入し、2時間後のガス濃度を検知管により測定し残留率として求め、その数値の大小で消臭性を評価した。
[抗菌性の評価]
JIS−L−1902に準拠し供試菌、黄色ブドウ球菌にて菌液吸収法によって静菌活性値2.2以上を抗菌性があると判断した。
[消臭性および抗菌性の洗濯耐久性]
JIS−L−1072に準拠し、60℃、30回の繰り返し洗濯後、上記の消臭性および抗菌性を評価した(後記する表には30HL後と記載)。
実施例1〜3および比較例1〜5
重合溶媒としてメタノールを用い、重合開始剤としてアゾビス−4−メチロキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルを使用して、60℃、加圧下でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合させて、エチレン含量が44モル%のエチレン/酢酸ビニルランダム共重合体(数平均重合度、約350)を製造し、次にこのエチレン/酢酸ビニルランダム共重合体(以後「Et/VAc共重合体」という)を苛性ソーダ含有メタノール液中でケン化処理して、共重合体中の酢酸ビニル単位の99モル%以上がケン化した湿潤状態のEVOHを製造した。このEVOHを、酢酸を少量添加した純水の大過剰量を使用して洗浄を繰り返した後、さらに大過剰の純水で洗浄を繰り返して、共重合体中のアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの含有量を夫々、約10ppm以下にし、その後、脱水機により共重合体から水を分離した後、100℃以下の温度で真空乾燥により充分に乾燥してEVOH(85%含水フェノール溶剤中、30℃で測定したときの固有粘度1.05dl/g)を得た。
このポリマーを芯/鞘型の複合繊維の鞘成分にした。一方、極限粘度=0.60のポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、2軸押し出し機により、鞘/芯型構造(鞘成分と芯成分の複合比率=50/50(体積比)、芯成分の断面形状は30個の突起を有しており、繊維表面は鞘成分により100%被覆されている。)で円形紡糸ノズルより溶融吐出し、紡糸口金の下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口径8mm、内径30mmφのチューブヒーター(内壁温度200℃)に導入し、チューブヒーターから出て来た糸条にカラス口オイリング(ギアポンプ給油法式)で油剤を付与し、2個の引き取りローラーを介して3700m/分の引き取り速度で巻き取り、85dtex/24fのマルチフィラメントを得た。紡糸性に問題なく、得られたマルチフィラメントを使って、28ゲージの天竺の丸編地とした。
この丸編地について脱オイリング剤であるアクチノールR−100(松本油脂製(株))の濃度1g/lの処理浴中にて80℃、20分間の精練を行い、プレセット150℃、1分間の乾熱処理を行った。得られた編地を構成するEVOH繊維は架橋されていない。この編地について表1に示すそれぞれの条件にて、チタン含有化合物であるチタンラクテート[商品名オルガチックスTC−310(松本製薬工業株式会社製)]を含む水溶液中で加温処理を行った。処理温度での処理時間は40分である。チタンラクテート化合物の水溶液中には40%(容量%)のイソプロピルアルコールを含む。得られた丸編地の性能を表1に示す。
Figure 2007217855
本発明の規定の範囲外の処理温度(比較例4.5)の場合には、初期の消臭性、洗濯耐久性(比較例3)(消臭性、アンモニア55%、酢酸52%)等の劣るものとなった。それに対し実施例1〜3の場合には30回繰り返し洗濯後の消臭性は、アンモニア成分に1.0%、酢酸成分に3.5%等と優れていた。なお繊維中のチタンの平均粒子径は、実施例の場合、200nm以下(実施例1:10nm,実施例2:100nm,実施例3:150nm)であった。一方、比較例2〜5の場合には、いずれも300nmであった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
実施例4〜6および比較例6〜10
実施例1の場合と同じ紡糸原糸を用いて、通常の方法でSZの仮撚り加工糸とした。この場合の仮撚加工は、ベルト仮撚で村田機械のマッハを用いて延伸倍率1.06、ヒーター温度は1段目120℃、2段目110℃、糸速度は500m/分で行った。その繊度は87T/24fであった。このチーズについて下記に示す浴組成、処理温度、時間等にて架橋処理を行った。架橋後のEVOH繊維の架橋の程度は20モル%であった。
<架橋処理の浴組成>
架橋剤(ビスエチレンジオキシノナン)商品名:メイスターTM21 14%omf(明成化学(株)製)
アセタール化促進剤(主成分ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリュウム)メイスターSA−2 0.6g/l(明成化学(株)製)
触媒 マレイン酸 1g/l
浴比 1:10 処理昇温速度および時間:40℃より90℃まで1℃/分にて昇温。
キープ処理温度および時間:90℃×40分
上記の処理の後、100℃20分間の熱水洗浄を行い、浴中オイリング、乾燥した。この架橋糸を用いて実施例1の場合と同様に編地とした。
この編地について表2に示す条件にて、チタン含有化合物の水溶液で加温処理を行った。加温処理温度での処理時間は40分間である。チタンラクテート化合物の水溶液中にはイソ40%(容量%)のイソプロピルアルコールを含む。
なお繊維中のチタンの平均粒子径は、実施例の場合、200nm以下(実施例4:50nm,実施例5:100nm,実施例6:30nm)であった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
Figure 2007217855
実施例7〜9および比較例11〜15
実施例1の場合と同じ紡糸原糸を用いて、そして同様な丸編地、脱オイリング、乾熱処理等を行った。この場合のEVOH繊維は架橋処理されていない。この編地について表3に示すそれぞれの条件にて、銅含有化合物である硝酸銅・三水和物を用いての該水溶液中での加温処理を行った。
Figure 2007217855
本発明の範囲外の処理温度(比較例14.15)の場合には、初期の消臭性、洗濯耐久性(比較例13)(消臭性、アンモニア60%酢酸55%)等の劣るものとなった。それに対して実施例7〜9の場合には30回繰り返し洗濯後の消臭性は、アンモニア成分に4.5%、酢酸成分に6.0%等と優れていた。なお繊維中の銅の平均粒子径は、実施例の場合には200nm以下(実施例7:20nm、実施例8:150nm、実施例9:10nm).一方、比較例12〜15の場合には、いずれも300nmであった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
実施例10〜12および比較例16〜20
実施例4の場合と同じ架橋処理を行って、同じ架橋度であるEVOH繊維について同じ規格の編地を同じ精練、乾熱処理した。この編地について表4に示す条件にて、銅含有化合物である硝酸銅・三水和物を用いての該水溶液での加温処理を行った。処理温度での処理時間は40分である。実施例の場合には、繊維内に存在している銅微粒子の平均粒子径は、どの実施例においても、200nm以下であり(実施例10:50nm、実施例11:110nm、実施例12:10nm)、さらにこれら実施例では、繊維内に銅微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
Figure 2007217855
実施例13〜15および比較例21〜26
実施例1の場合と同じ紡糸原糸を用いて、そして同様な丸編地、脱オイリング、乾熱処理等を行った。この場合のEVOH繊維は架橋処理されていない。この編地について表5に示すそれぞれの条件にて、チタン含有化合物を含む水溶液・商品名オルガチックスTC−310(松本製薬工業株式会社製)と銅含有化合物である硝酸銅・三水和物とを混合した水溶液での加温処理を行った。
Figure 2007217855
本発明の範囲外の処理温度(比較例25、26)の場合、また範囲外のチタン、銅のそれぞれの含有量の場合には初期の消臭性、洗濯耐久性(比較例21,23,24)(消臭性、ホルマリン90%、アンモニア65%酢酸58%)等の劣るものとなった。それに対して実施例13〜15の場合には30回繰り返し洗濯後の消臭性は、ホルマリン成分に2.1%、アンモニア成分に2.7%、酢酸成分に1.5%)等と優れていて、そして抗菌性の静菌活性値は2.2以上と優れていた。
なお繊維中のチタン、銅の平均粒子径は、実施例の場合200nm以下(実施例13:チタン8nm、銅10nm,実施例14:チタン50nm,銅40nm、実施例15:チタン80、銅75nm)であった。一方比較例21〜26の場合には、チタン、銅のいずれも300nm以下であった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
実施例16〜18および比較例27〜32
実施例4の場合と同じ架橋処理処理を行って、同じ架橋度であるEVOH繊維について同じ規格の編地を同じ精練、乾熱処理した。この編地について表6に示すそれぞれの条件にて、チタン含有化合物を含む水溶液・商品名オルガチックスTC−310(松本製薬工業(株)製)と銅含有化合物である硝酸銅・三水和物を用いての該水溶液での加温処理を行った。それぞれの処理温度での処理時間は40分である。
Figure 2007217855
なお繊維中のチタン、銅の平均粒子径は、実施例の場合200nm以下であった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
実施19〜25および比較例33〜39
実施例1の場合と同じEVOHポリマーを用いて芯/鞘型の複合繊維の鞘成分にした。一方、極限粘度=0.62のポリエチレンテレフタレートのポリマーを芯成分とし、2軸押し出し機により、鞘/芯型構造(鞘成分と芯成分の複合比率=50/50、芯成分の断面形状は突起を有していない丸型)で円形紡糸ノズルより溶融吐出し、紡糸口金の下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口径8mm、内径30mmφのチューブヒーター(内壁温度200℃)に導入しチューブヒーターから出てきた糸条にカラス口オイリング(ギアポンプ給油方式)で付与し、2個の引き取りローラーを介して3700m/分の引き取り速度で巻き取り、85dtex/24fのマルチフィラメントを得た。紡糸性に問題はなかった。
上記の紡糸原糸を用いて、通常の方法でSZの仮撚り加工糸とした。この場合の仮撚加工は、ベルト仮撚で村田機械のマッハを用いて延伸倍率1.06、ヒーター温度は1段目120℃、2段目110℃、糸速度は500m/分で行った。その繊度は87dtex/24fであった。この糸をチーズ染色機用に巻き返し、この巻き返したチーズについて下記に示す浴組成にて表7に示す、それぞれの処理温度にてチタン含有化合を含む水溶液・商品名オルガチックスTC−310を溶解した液と下記の浴組成に示す架橋剤を含む組成液と共に、表7に示す、それぞれの処理浴のPH下にて処理を行った。処理時間は40分間である。
<チタン含有化合物を除いた浴組成>
架橋剤(ビスエチレンジオキシノナン)商品名:メイスターTM21 14%omf(明成化学(株)製)
アセタール化促進剤(主成分ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリュウム)メイスターSA−2 0.6g/l
触媒 (酸類)硫酸、マレイン酸、酢酸等により、表7に示すそれぞれのPH値に調整。
浴比1:10
処理昇温速度および時間:40℃より表7に示す、それぞれの処理温度まで1℃/分にて昇温。キープ時間:40分
上記の処理の後、100℃20分間の熱水洗浄を行い、浴中オイリング、乾燥した。
これらの処理糸を実施例1の場合と同じ編地とし、実施例4の場合と同じ、精練、プレセットを行った。
Figure 2007217855
本発明の規定の範囲外の処理浴のPH2.0より小さいと(比較例37)の場合には、初期の消臭性(消臭性、アンモニア成分70%、酢酸成分65%)、が劣り、そしてPHが4.5より大きいと(比較例38)、EVOHの融点が160℃より小さく、その繊維が120℃熱水中で軟化膠着が起こり、耐熱水性が不良で、洗濯耐久性(消臭性アンモニア成分58%、酢酸成分60%)の劣るものとなった。そして規定の範囲外の処理温度では(比較例36、39)初期の消臭性(消臭性、アンモニア成分65%、酢酸成分73%)が劣るものとなった。それに対して実施例19〜21、23、24の場合には、30回繰り返し洗濯後の消臭性は、アンモニア成分に3.2%、酢酸成分に4.5%等と優れていた。なお繊維中のチタンの平均粒子径は、実施例の場合200nm以下であった。(実施例19:8.5nm,実施例20:75nm,実施例21:145nm)であった。一方、比較例34〜39の場合には、いずれも300nmであった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
実施例26〜32および比較例40〜45
実施例19の場合と同じ紡糸原糸を用いて実施例4の場合と同じ仮撚加工を行い、その巻き返しチーズ(チーズ染色用)を用いて下記に示す浴組成にて表8に示す、それぞれの処理温度にて銅含有化合物である硝酸銅・三水和物を溶解した水溶液と下記の浴組成に示す架橋剤を含む液と共に、表8に示すそれぞれの処理浴のPH下にて処理を行った。処理時間は40分間である。
<銅含有化合を除いた浴組成>
架橋剤(ビスエチレンジオキシノナン)商品名:メイスターTM21 14%omf(明成化学(株)製)
アセタール化促進剤(主成分ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリュウム) メイスターSA−2 0.6g/l
触媒(酸類) 硫酸、マレイン酸、酢酸等により、それぞれのPH値に調整
浴比1:10
処理昇温速度および時間:40℃より表8に示す、それぞれの処理温度まで1℃/分にて昇温。 キープ時間:40分
上記の処理の後、100℃20分間の熱水洗浄を行い、浴中オイリング、乾燥した。
これらの処理糸を実施例1の場合と同じ編地とし、実施例4の場合と同じ、精練、、プレセットを行った。
Figure 2007217855
得られた編地について、消臭性、抗菌性、風合い等の評価を行った。結果を表8に示す。これら実施例の編地について、30回洗濯後の消臭性および抗菌性をテストした結果、ホルマリン残留率、アンモニア残留率、酢酸残留率とも、僅かの上昇が見られた程度で、性能の低下は殆どないと言える状態であった。なお繊維中のチタンの平均粒子径は、実施例の場合、いずれも200nm以下であった。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。
実施例33〜39および比較例46〜51
実施例19の場合と同じ紡糸原糸を用いて実施例4の場合と同じ仮撚加工を行い、その巻き返しチーズ(チーズ染色機用)を用いて下記に示す浴組成にて表9に示す、それぞれの処理温度にてチタン含有化合物を含む水溶液・商品名オルガチックスTC―310(松本製薬工業(株)製)と銅含有化合物である硝酸銅・三水和物とを混合した水溶液に、さらに下記の架橋剤を含む組成液を加えた表9に示すそれぞれの処理浴のPH下とそれぞれの処理温度にて加温処理を行った。処理時間は40分間である。
<チタン含有化合物と銅含有化合物との混合を除いた浴組成>
架橋剤(ビスエチレンジオキシノナン)商品名:メイスターTM21 14%omf(明成化学(株)製)
アセタール化促進剤(主成分ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリュウム) メイスターSA−2 0.6g/l
触媒(酸類) 硫酸、マレイン酸、酢酸等により、表9に示すそれぞれのPH値に調整。
浴比1:10
処理昇温速度および時間:40℃より表10に示すそれぞれの処理温度まで1℃/分にて昇温。 キープ時間:40分間
上記の処理の後、100℃20分間の熱水洗浄を行い、浴中オイリング、乾燥した。
これらの処理糸を実施例1の場合と同じ編地とし、実施例4の場合と同じ、精練、プレセットを行った。
Figure 2007217855
本発明の規定の範囲外の処理浴のPH2.0より小さいと(比較例46)の場合には、初期の消臭性(消臭性、アンモニア成分68%、酢酸成分78%、ホルマリン成分78%)が劣り、そしてPHが4.5より大きいと(比較例47)、EVOHの融点が160℃より小さく、その繊維が100℃熱水中で軟化膠着が起こり、耐熱水性が不良で、洗濯耐久性(消臭性アンモニア成分76%、酢酸成分85%、ホルマリン成分81%)の劣るものとなった。また範囲外の処理浴の温度の場合に、80℃より低いと(比較例48)チタン含有量が0.05質量%以下と少なくなり、初期の消臭性(アンモニア成分76%、酢酸成分81%、ホルマリン成分85%)が劣る。また140℃より高くなると(比較例49)、チタンと銅の平均粒子径が200nmを大きく超えることになり(比較例49:350nm)初期の消臭性(アンモニア成分74%、酢酸成分83%、ホルマリン成分83%)が劣る。それに対して実施例33〜39の場合には、30回繰り返し洗濯後の消臭性は、アンモニア成分に1.5%〜3.0%、酢酸成分に1.5%〜3.7%、ホルマリン成分に0.8%〜3.2%)等と優れていて、そして抗菌性の静菌活性値は2.2以上と優れていた。なお繊維中のチタンおよび銅等の平均粒子径はこれら実施例の場合、いずれも200nm以下であった(例えば実施例33:チタン17nm、銅23nm,実施例37:チタン8nm,銅19nm,実施例38:チタン113nm,銅105nm)。そして、実施例の場合、繊維内にこれら微粒子が存在していることを電子顕微鏡で確認した。

Claims (5)

  1. 平均粒子径200nm以下の微粒子を含有し、かつ融点が160℃以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなり、以下(1)〜(3)のいずれかを満足するエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維。
    (1)該微粒子がチタンからなり、その含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.1重量%以上であること、
    (2)該微粒子が銅からなり、その含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.1重量%以上であること、
    (3)該微粒子が銅からなるものとチタンからなるものが繊維内に混在しており、それら微粒子の合計含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.1重量%以上であること、
  2. 平均粒子径200nm以下の微粒子を含有し、かつ融点が160℃以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体からなり、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体が繊維表面の大半を占めており、さらに以下(1)〜(3)のいずれかを満足するエチレン−ビニルアルコール系共重合体系複合繊維。
    (1)該微粒子がチタンからなり、その含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.1重量%以上であること、
    (2)該微粒子が銅からなり、その含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.1重量%以上であること、
    (3)該微粒子が銅からなるものとチタンからなるものが繊維内に混在しており、それら微粒子の合計含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.1重量%以上であること、
  3. 請求項1または2に記載の繊維を含有する糸または繊維製品。
  4. エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる繊維またはエチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体からなる複合繊維を、下記(1)または(2)の水溶液で処理することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合系繊維またはエチレン−ビニルアルコール系共重合系複合繊維の製造方法。
    (1)エチレン−ビニルアルコール系共重合体の水酸基にチタン元素または銅元素が配位結合し得る性質を有する化合物を含む水溶液であって、且つ該エチレン−ビニルアルコール系共重合体が無架橋の場合には50℃〜105℃に加熱された水溶液、
    (2)エチレン−ビニルアルコール系共重合体の水酸基にチタン元素または銅元素が配位結合し得る性質を有する化合物を含む水溶液であって、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体が架橋されている場合には106℃〜140℃に加熱された水溶液、
  5. エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる繊維またはエチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体からなる複合繊維を、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の水酸基にチタン元素が配位結合し得る性質を有するチタン化合物または該水酸基に銅元素が配位結合し得る性質を有する銅化合物と、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体中の水酸基に架橋アセタール結合を形成し得る化合物を含有する水溶液であって、そのPHが2.0〜4.5で、かつ80℃〜140℃に加熱されている水溶液にて処理してエチレン−ビニルアルコール系共重合体を架橋処理することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系繊維の製造方法。
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