JP2007138975A - 遊星歯車装置の潤滑機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】構造が単純であり、しかも車両の牽引時においても適宜、潤滑油が供給されることで焼付きが阻止される遊星歯車装置の潤滑機構を提供する。
【解決手段】ワッシャ62、64の内周面には、周方向の環状の油溜溝74が設けられることにより、車両の牽引時においては、車両の駆動輪側から変速機10の遊星歯車装置16が回転させられ、回転に伴い潤滑油が必要となるが、環状の油溜溝74から潤滑油が適宜、遊星歯車装置16内に供給されるため、遊星歯車装置16の焼付きが阻止される。
【選択図】図2
【解決手段】ワッシャ62、64の内周面には、周方向の環状の油溜溝74が設けられることにより、車両の牽引時においては、車両の駆動輪側から変速機10の遊星歯車装置16が回転させられ、回転に伴い潤滑油が必要となるが、環状の油溜溝74から潤滑油が適宜、遊星歯車装置16内に供給されるため、遊星歯車装置16の焼付きが阻止される。
【選択図】図2
Description
本発明は、車両用駆動装置に備えられている遊星歯車装置の潤滑機構に関するものである。
従来、車両用自動変速機内には複数個の遊星歯車装置が設けられており、遊星歯車装置を構成するサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの連結関係によって複数の変速段が成立させられる。この遊星歯車装置には、キャリヤによって保持されたピニオンシャフトにベアリングを介して回転可能に支持されているピニオンギヤが備えられており、車両の駆動中は、特にこのピニオンギヤが高速で回転させられる。このため、この高速回転によって摩擦熱が発生するが、この摩擦熱によるベアリング等の焼付きを防止するため、遊星歯車装置内に冷却液として機能する潤滑油を効率よく供給する様々な潤滑機構が提案されてきた。
たとえば、従来の遊星歯車装置の潤滑機構では、ピニオンシャフトの軸心内に穴開け加工を施し、さらに、その穴からピストンシャフトの外周面に連通する潤滑油穴をもうけ、車両の駆動時は潤滑油が、ピニオンシャフトの軸穴を通ってピニオンシャフトの外周面に設けられた潤滑油穴の開口部から放出され、ベアリング等を潤滑する形式のものがあった。
このような遊星歯車装置の潤滑機構では、車両の駆動時においては、効果的に潤滑油が供給されるが、たとえば、車両が牽引されるような場合は、エンジンが作動しないためオイルポンプも同様に作動せず、潤滑油の供給が停止する。さらに車両の牽引時は、車両の駆動輪側から遊星歯車装置が回転させられるが、潤滑油が供給されないため、最悪の場合、遊星歯車装置が焼付く恐れがあった。
この問題に対し、特許文献1では、遊星歯車装置のキャリヤ内部に潤滑油の貯留空間を設け、車両の牽引時はその貯留空間に溜められた潤滑油が一定時間、遊星歯車装置内に供給される技術が開示されている。しかし、特許文献1を含む前述のような構成の潤滑機構は、ピニオンシャフトに穴開け加工を施し、しかもピニオンシャフトの組付けには、潤滑油穴の開口部が径方向外側を向くように規制しなければならないなど、遊星歯車装置の構造が複雑化し、生産コストが上昇するという問題があった。
一方、特許文献2には、ワッシャにの内周面から外周面にかけて伸びる切欠が設けられ、その切欠を介して潤滑油が供給されることで、前述の潤滑機構に比べて構造が単純で生産性が向上した遊星歯車装置の潤滑機構が開示されている。しかし、車両の牽引時においては潤滑油が供給されないため、遊星歯車装置が焼付く恐れがあり、車両の牽引時には適さない問題があった。また、特許文献3においては、ワッシャとピニオンシャフトとの間に油溜め用空間が設けられているものの、たとえば長時間車両を放置した後に牽引するような場合でも安定して油が貯留されているような油溜め空間ではなく、特許文献2と同様に、車両の牽引時には適さないという問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、構造が単純であり、しかも車両の牽引時においても適宜、潤滑油が供給されることで焼付きが阻止される遊星歯車装置の潤滑機構を提供する。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)遊星歯車装置のキャリヤと、該キャリヤに保持されたピニオンシャフトと、該ピニオンシャフトにベアリングを介して回転可能に支持されているピニオンギヤと、該ピニオンギヤと前記キャリヤとの間に介在する状態で前記ピニオンシャフトに嵌め付けられたワッシャと、を備えた車両用駆動装置の遊星歯車装置であって、(b)前記ワッシャの内周面には、周方向の環状の油溜溝が設けられていることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1に記載の遊星歯車装置の潤滑機構において、前記環状溝は、2枚のワッシャで構成され、それぞれ該ワッシャの内周面の一端側には環状の切欠が設けられ、前記2枚のワッシャの該切欠が設けられた側の面が互いに重なり合って、前記環状の油溜溝が形成されることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2に記載の遊星歯車装置の潤滑機構において、前記2枚のワッシャはそれぞれ異なる材質の金属で構成されていることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3の何れかに記載の遊星歯車装置の潤滑機構において、(a)前記キャリヤの前記ピニオンシャフトを保持している穴の内周面の前記キャリヤを回転中心とした外周側には、潤滑油をベアリングに供給するために厚み方向に貫通する第1の潤滑油穴が設けられ、(b)前記ワッシャの内周面には、前記キャリヤの第1の潤滑油穴から供給された潤滑油を前記ベアリングに供給するために厚み方向に貫通する第2の潤滑油穴が設けられ、(c) 前記キャリヤの前記ピニオンギヤ側とは反対側の面には、前記第1の潤滑油穴を通して前記環状の油溜溝に連通し、且つ内周側に開口する環状の油受溝を形成する環状の油受板が設けられていることを特徴とする。
請求項1の遊星歯車装置の潤滑機構によれば、車両の牽引時においては、車両の駆動輪側から変速機の遊星歯車装置が回転させられ、回転に伴い潤滑油が必要となるが、前記環状の油溜溝から潤滑油が適宜、遊星歯車装置内に供給されるため、遊星歯車装置の焼付きが阻止される。
また、請求項2の遊星歯車装置の潤滑機構によれば、前述の効果に加え、前記油溜溝は、2枚のワッシャで構成されることで、油溜溝の加工が容易となり、生産性が向上する。さらに、ピニオンギヤと一方のワッシャ、一方のワッシャと他方のワッシャ、他方のワッシャとキャリヤとは互いに接触し合うと共に、相対回転しあうが、ワッシャを一枚だけ設けた場合と比較して、各部材間の相対回転数が減少するため、各部材間の摩耗や発熱が抑制され、遊星歯車装置の耐久性が向上する。
また、請求項3の遊星歯車装置の潤滑機構によれば、2枚のワッシャはそれぞれ異なる材質の金属材料で構成されることにより、前述の効果に加え、ピニオンギヤに接する側のワッシャはたとえば鋼材などの比較的摩耗に強い金属材料を適用することができ、遊星歯車装置の耐久性がさらに向上する。
また、請求項4の遊星歯車装置の潤滑機構によれば、遠心力によって飛ばされた潤滑油は、前記油受板によって前記第1の潤滑油穴および第2の潤滑油穴を経由して遊星歯車装置内に供給されるため、効率よく潤滑されると共に、第2の潤滑油穴に連通する油溜溝にも効率よく潤滑油が貯留される。また、前記キャリヤの前記ピニオンシャフトを保持している穴の内周面において、キャリヤを回転中心とした外周側に、第1の潤滑油穴が設けられているため、車両が停止した際、遊星歯車装置が地面を基準としてキャリヤの回転軸よりも下部に位置した時は、第1の潤滑油穴が地面を基準としてピニオンシャフトよりも下方に位置するため、重力によって落下する潤滑油が油受板から第1の潤滑油穴を通って効率よく油溜溝に貯留される。一方、遊星歯車装置が地面を基準としてキャリヤの回転軸よりも上部に位置したときでも、第1の潤滑油穴は地面を基準としてピニオンシャフトよりも上部に位置するため、貯留された潤滑油が第1の潤滑油穴から流出せず、潤滑油が確実に油溜溝内に貯留される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用自動変速機10(以後は変速機10と記載する)の構成を詳細に説明する断面図である。変速機10は、図示しないエンジンと駆動輪との間に配置され、エンジンから伝達される回転を変速させて駆動輪に伝達する。なお、図1の変速機10は軸心Cに対して対称に構成されているため、その下側が省略されている。
変速機10は、車両に取り付けられる非回転部材であるハウジングケース12(以後はケース12と記載する)内に、図示しないエンジンの出力がトルクコンバータを介して伝達される入力軸14と、その入力軸14の軸心Cと同心状に配置された遊星歯車装置16とを備えている。なお、遊星歯車装置16はダブルピニオン型の遊星歯車装置となっており、図示しないもう一方のピニオンギヤによって遊星歯車装置16のリングギヤ42と噛み合っている。
入力軸14は、たとえば軸受18など複数の軸受によって回転可能に支持されており、径方向外側に伸びる鍔部14aを備えている。なお、この鍔部14aの軸心方向の両側は、スラスト軸受20および22が当接しており、鍔部14aからのスラスト力を受けている。この鍔部14aの外周縁には、遊星歯車装置16のキャリヤ24の一端側が溶接によって接続されており、入力軸14からの回転が変速されることなくキャリヤ24に伝達される。
遊星歯車装置16のサンギヤ26の内周面は、ケース12に接続されることにより非回転部材として機能する円筒部材28の外周面とスプライン嵌合されることで、サンギヤ26も同様に非回転部材として機能する。
遊星歯車装置16のキャリヤ24は前述のように、入力軸14と一体的に回転駆動させられる。さらにキャリヤ24の軸心方向の一端側が入力軸14の鍔部14aに接続されていると共に、キャリヤ24の他端側には、キャリヤ24の外周縁から径方向外側に伸びると共にその外周縁から軸心と平行な円筒部を備えたハブ部24aが設けられている。
ハブ部24aの外周面には、複数枚の摩擦プレート30が軸心方向の移動可能にスプライン嵌合されている。また、その摩擦プレート30の間に介在させられたもう一方の複数枚の摩擦プレート32が、小ドラム34に軸心方向の移動可能にスプライン嵌合されている。これら複数枚の摩擦プレート30および32によって摩擦係合要素36が構成されている。
前記小ドラム34は、二重円筒状の一端が開口し他端が底壁を有する部材であり、この二重円筒によって形成された円周溝内には、摩擦係合要素36を押圧するためのピストン38が配置されている。このピストン38が油圧によって移動させられ、摩擦係合要素36を押圧すると、遊星歯車装置16のキャリヤ24と小ドラム34とが係合させられ、小ドラム34に回転が伝達される。さらに、小ドラム34を覆うように大ドラム40が配置されており、小ドラム34と大ドラム40とは互いにスプライン嵌合されているため、大ドラム40にも同様に回転が伝達される。なお、この大ドラム40も二重円筒状の一端が開口し他端が底壁を有する部材である。
遊星歯車装置16のリングギヤ42は、サンギヤ26にピニオンギヤ44を介して噛み合わされている。リングギヤ42の外周面には、複数枚の摩擦プレート30が軸心方向の移動可能にスプライン嵌合されている。また、その摩擦プレート30の間に介在させられたもう一方の摩擦プレート32が、大ドラム40の内周面に軸心方向の移動可能にスプライン嵌合されている。これら摩擦プレート30および32によって摩擦係合要素46が構成されている。大ドラム40の二重円筒によって形成された円周溝には、摩擦係合要素46を押圧するためのピストン48が収容されている。ピストン48により摩擦係合要素46が係合されると、リングギヤ42の回転が大ドラム40に伝達される。また、リングギヤ42は、回転伝達部材50にも連結されており、回転伝達部材50および大ドラム40の回転は、変速機10の図示しない他の回転要素に伝達される。
図2は、図1の遊星歯車装置16を拡大した断面図である。なお遊星歯車装置16が本発明の遊星歯車装置に対応している。遊星歯車装置16のピニオンシャフト52は、図1の軸心Cを回転中心とするキャリヤ24の両端に設けられた、一対の固定穴54に圧入されており、相対回転不能に固定されている。このピニオンシャフト54の外周面にはピニオンギヤ44がニードルベアリング56を介して回転可能に嵌め付けられている。なお、キャリヤ24は、図2においてピニオンギヤの両側に分離されているが、ピニオンギヤ44が配置されていないキャリヤ24の周方向の他の部位では、両側のキャリヤ24が一体的に連結されている。なお、ニードルベアリング56が、本発明のベアリングに対応する。
また、ハブ部24a側に連結されている側のキャリヤ24のピニオンシャフト44を保持している固定穴54のキャリヤ24の回転中心である軸心Cから見て外周側には、潤滑油をニードルベアリング56に供給するため、キャリヤ24の厚み方向に貫通する断面が半円状の第1貫通穴57がキャリヤ24およびピニオンシャフト52によって形成されている。なお、第1貫通穴57が本発明の第1の潤滑油穴に対応する。
ピニオンギヤ44の回転軸心方向の両側とキャリヤ24との間には、それぞれ2枚のワッシャが介在されている。ここで、入力軸14の鍔部14aが接続されている側のキャリヤ24とピニオンギヤ44の間には、ワッシャ58および60がピニオンシャフト52に嵌め付けられている。これらワッシャ58および60は、たとえばワッシャ58が銅合金で構成され、ワッシャ60が鋼材で構成されており、2枚のワッシャ58、60はそれぞれ異なる材質の金属材料で構成されている。
一方、ハブ部24aが接続されている側のキャリヤ24とピニオンギヤ44との間にはワッシャ62および64がピニオンシャフト52に嵌め付けられている。これらワッシャ62および64は、たとえばワッシャ62が銅合金で構成され、ワッシャ64が鋼材で構成されており、それぞれ異なる材質の金属材料で構成されている。
図3は、ワッシャ62および64の構造を説明する拡大図であり、図4は図3のワッシャ62を矢印Aの方向からみた矢視図である。図3より、ワッシャ62の内周面の一端側には環状の切欠68が設けられている。この切欠68によって、図4に示される軸心方向に凹んだ切欠面68aが形成される。また、図4より、ワッシャ62には、ピニオンシャフト52が嵌め付けられる軸穴69の円周上に断面が略半円状の貫通溝70が等角度間隔に4つ設けられている。なおこの軸穴69にピニオンシャフト52が嵌め付けられることによって、キャリヤ24の第1貫通穴57から供給された潤滑油をニードルベアリング56に供給するためにワッシャ62の厚み方向に貫通する図2に示される第2貫通穴72が形成される。なお、ワッシャ64は構成される材料がワッシャ62と異なるだけであり、形状は共に同形状であるため、ワッシャ64にも同様に切欠68、軸穴69、および貫通溝70が設けられている。なお、第2貫通穴72が本発明の第2の潤滑油穴に対応する。
また、組付の際には、図3のようにワッシャ62および64の切欠68が設けられた側の面が互いに重なり合うように組み付けられる。これにより、ワッシャ62および64の当接部には、環状の油溜溝74が形成される。
図2に戻り、ハブ部24aが設けられている側のキャリヤ24のピニオンギヤ44側とは反対側の面には、第1貫通穴57を通して環状の油溜溝74に連通し、且つ内周側に向けて開口する環状の油受溝76を形成する環状の油受板78が設けられている。この油受板78は、たとえば、スポット溶接によってキャリヤ24に一体的に固定されている。
このように構成される変速機10において、入力軸14が図示しないエンジンによって回転駆動させられると、遊星歯車装置16内にはピニオンギヤ44の高速回転によって摩擦熱が発生させられる。この摩擦熱に対して、図1に示される入力軸14の軸心内に形成されている潤滑油供給穴80から径方向に形成されている潤滑油供給孔82通って潤滑油が変速機10内に供給される。この潤滑油は遠心力によって径方向外側に放出され、軸受18およびスラスト軸受20を潤滑し、遊星歯車装置16のサンギヤ26およびピニオンギヤ44の噛合部84の間隙を経由して、油受板78によって効率よく遊星歯車装置16内に供給される。この油受板78によって供給された潤滑油は、図2に示す第1貫通穴57および第2貫通穴72を経由してニードルベアリング56を効果的に潤滑し、摩擦熱が冷却され、一部の潤滑油は、図2においては軸心Cに接近する側の油溜溝74に貯留される。
また、車両が停止すると、たとえば遊星歯車装置16が図2に示されるような地面を基準として軸心Cよりも上方に位置する場合は、第1貫通穴57が地面を基準としてピニオンシャフト52の軸心Dよりも常に上方に位置するため、第1貫通穴57からの潤滑油の流出が阻止され、長時間の潤滑油の貯留を可能にしている。
一方、たとえば、車両が停止し、図5に示されるように遊星歯車装置16が地面を基準として軸心Cよりも下方に位置する場合は、重力によって落下する潤滑油を油受板78が受ける形状となるため、多量の潤滑油が第1貫通穴57を通って油溜溝74に貯留されると共に、長時間の潤滑油の貯留を可能にしている。このように、車両が停止した際に、遊星歯車装置16がどの位置にあっても、確実に潤滑油を油溜溝74に貯留することができ、しかも、長時間貯留できる構造となっている。なお、この油溜溝74に貯留された潤滑油が、車両の牽引時に遊星歯車装置16が車両の駆動輪からの入力によって回転させられた際に、遊星歯車装置16内に供給される。
上述のように、本実施例によれば、ワッシャ62、64の内周面には、周方向の環状の油溜溝74が設けられることにより、車両の牽引時においては、車両の駆動輪側から変速機10の遊星歯車装置16が回転させられ、回転に伴い潤滑油が必要となるが、環状の油溜溝74から潤滑油が適宜、遊星歯車装置16内に供給されるため、遊星歯車装置16の焼付きが阻止される。
また、本実施例によれば、油溜溝74は、2枚のワッシャ62、64で構成されることで、油溜溝74の加工が容易となり、生産性が向上する。さらに、ピニオンギヤ44と一方のワッシャ62、一方のワッシャ62と他方のワッシャ64、他方のワッシャ64とキャリヤ24とは互いに接触し合うと共に、相対回転しあうが、ワッシャを一枚だけ設けた場合と比較して、各部材間の相対回転数が減少するため、各部材間の摩耗や発熱が抑制され、遊星歯車装置16の耐久性が向上する。
また、本実施例によれば、2枚のワッシャ(58、60および62、64)はそれぞれ異なる材質の金属材料で構成されることにより、ピニオンギヤ44に接する側のワッシャ60、64はたとえば鋼材などの比較的摩耗に強い金属材料を適用することができ、遊星歯車装置16の耐久性がさらに向上する。
また、本実施例によれば、遠心力によって飛ばされた潤滑油は、油受板78によって第1貫通穴57および第2貫通穴72を経由して遊星歯車装置16内に供給されるため、効率よく潤滑油が供給されると共に、第2貫通穴72に連通する油溜溝74にも効率よく潤滑油が貯留される。また、キャリヤ24のピニオンシャフト44を保持している固定穴54の内周面において、キャリヤ24を回転中心とした外周側に、第1貫通穴57が設けられているため、車両が停止した際、遊星歯車装置16が地面を基準としてキャリヤ24の回転軸心Cよりも下部に位置した時は、第1貫通穴57が地面を基準としてピニオンシャフト52の軸心Dよりも下方に位置するため、重力によって落下する潤滑油が油受板78から第1貫通穴57を通って効率よく油溜溝74に貯留される。一方、遊星歯車装置16が地面を基準としてキャリヤ24の回転中心よりも上部に位置したときでも、第1貫通穴57は地面を基準としてピニオンシャフト52の軸心Dよりも上部に位置するため、貯留された潤滑油が第1貫通穴57から流出することなく、潤滑油が確実に油溜溝74内に貯留される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、本実施例の遊星歯車装置16では、ピニオンギヤ44の一方側のワッシャ62、64に油溜溝74が設けられているが、油溜溝74を他方側のワッシャ58、60に設けることでも実施可能であり、ピニオンギヤ44の両側に油溜溝74を設けて実施することもできる。
本実施例の遊星歯車装置16は、潤滑油は、油受板78から供給されるが、従来の遊星歯車装置のように、ピニオンシャフト52内からピニオンギヤ44の内周面に向かって潤滑油が供給され、ワッシャ62、64に油溜溝74が設けられていても本発明は実施することができる。すなわち、潤滑油の供給方法はどのような形式でも、潤滑油が油溜溝74に貯留されるため、車両牽引時の潤滑油の供給が可能となる。
また、本実施例の油溜溝74は、2枚のワッシャ62、64を重ね合わせることで形成されるが、必ずしも2枚のワッシャで構成する必要はなく、1枚のワッシャで構成することもでき、3枚以上のワッシャで油溜溝74を形成することもできる。
また、本実施例のワッシャは、隣り合うワッシャ同士が異なる金属材料で構成されているが、同種の金属材料で構成して実施することもできる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用自動変速機 16:遊星歯車装置 24:キャリヤ 44:ピニオンギヤ 52:ピニオンシャフト 56:ニードルベアリング(ベアリング) 57:第1貫通穴(第1の潤滑油穴) 58、60、62、64:ワッシャ 68:切欠 72:第2貫通穴(第2の潤滑油穴) 74:油溜溝 76:油受溝 78:油受板
Claims (4)
- 遊星歯車装置のキャリヤと、該キャリヤに保持されたピニオンシャフトと、該ピニオンシャフトにベアリングを介して回転可能に支持されているピニオンギヤと、該ピニオンギヤと前記キャリヤとの間に介在する状態で前記ピニオンシャフトに嵌め付けられたワッシャと、を備えた車両用駆動装置の遊星歯車装置であって、
前記ワッシャの内周面には、周方向の環状の油溜溝が設けられていることを特徴とする遊星歯車装置の潤滑機構。 - 前記環状溝は、2枚のワッシャで構成され、それぞれ該ワッシャの内周面の一端側には環状の切欠が設けられ、
前記2枚のワッシャの該切欠が設けられた側の面が互いに重なり合って、前記環状の油溜溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置の潤滑機構。 - 前記2枚のワッシャはそれぞれ異なる材質の金属で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の遊星歯車装置の潤滑機構。
- 前記キャリヤの前記ピニオンシャフトを保持している穴の内周面の前記キャリヤを回転中心とした外周側には、潤滑油をベアリングに供給するために厚み方向に貫通する第1の潤滑油穴が設けられ、
前記ワッシャの内周面には、前記キャリヤの第1の潤滑油穴から供給された潤滑油を前記ベアリングに供給するために厚み方向に貫通する第2の潤滑油穴が設けられ、
前記キャリヤの前記ピニオンギヤ側とは反対側の面には、前記第1の潤滑油穴を通して前記環状の油溜溝に連通し、且つ内周側に開口する環状の油受溝を形成する環状の油受板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の遊星歯車装置の潤滑機構。
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