JP2006312668A - アクリル変性ウレタン樹脂およびその組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 CPR値が10以下の高沸点アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの存在下で、有機ポリイソシアネートおよびポリオールを反応させることにより得られるアクリル変性ウレタン樹脂。および該アクリル変性ウレタン樹脂、特定のアクリルオリゴマーおよび光重合開始剤を配合することによる光硬化型アクリル変性ウレタン樹脂の組成物。
【選択図】 なし
Description
近年の有機溶剤規制の高まりから、アクリル変性ウレタン樹脂の製造方法において、希釈溶剤として有機溶剤を使用せず、アクリルモノマーを希釈剤として有機イソシアネートとポリオールを反応させる試みがなされている。
さらに、係るアクリル変性ウレタン樹脂をアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルに溶解して得た組成物は、耐候性、柔軟性、耐薬品性、密着性等の数々の特徴を活かして、インキ、塗料、接着剤、コーティング材、シーリング材等への応用が期待されている。
係るアクリルモノマーは蒸留工程で精製が可能であり、ウレタン化反応の希釈剤として使用しても、発熱が大きく反応が暴走したり、分子量が異常に増大することはなかった。
しかし、上記アクリルモノマーを含むアクリル変性ウレタン樹脂を光硬化型組成物に使用した場合には光露光時にランプの発熱によりアクリルモノマーが飛散し、硬化物の物性が変化する恐れがあった。そのため、光硬化型組成物の場合は高沸点のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(以下、アクリルオリゴマーと呼ぶ)を使用する必要があるが、係るアクリルオリゴマーを希釈剤として使用してウレタン化反応をおこなうと、発熱が大きく反応が暴走したり、得られたアクリル変性ウレタン樹脂の分子量が異常に増加するという問題があった。
このため、安全で生産性および製品品質にも優れたアクリル変性ウレタン樹脂が求められていた。
すなわち、本発明は、ウレタン化反応の際に、希釈剤としてCPR値が10を越えるアクリルオリゴマーを使用すると、イソシアネート基の副反応が促進され反応が暴走する危険性があり、さらに目標品質のアクリル変性ウレタン樹脂を製造することが困難であること、またアクリル変性ウレタン樹脂の光硬化型組成物の品質および物性が不十分であることを発見し、解決させたものである。
具体的には、有機ポリイソシアネートおよびポリオールを希釈剤の存在下で反応させる場合であって、希釈剤がCPR値で10以下のアクリルオリゴマーであることを特徴とするアクリル変性ウレタン樹脂、ならびに該アクリル変性ウレタン樹脂、CPR値が10以下のアクリルオリゴマーおよび光重合開始剤を必須成分とする光硬化型アクリル変性ウレタン樹脂組成物に関するものである。
本発明に使用するアクリルオリゴマーはCPR値が10以下、好ましくは5以下のものでなければならない。ここでCPR値はChain Polymerization Rateのことであり、ウレタン製造業界では周知である。ここで、CPR値が10とは、1/100Nの塩酸で測定した時に0.033meq/gとなる値であり、CPR値が5とは、該塩酸で測定した時に0,0167meq/gとなる値をいう。
本発明の対象となるアクリルオリゴマーは、蒸留による精製が困難なものであり、例えば、アルキレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(ポリ)アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エチル、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性p−クミルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性2−エチルヘキシルの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFの(メタ)アクリル酸エステル、トリシクロデカンジメチロールの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性(ジ)グリセリンの(メタ)アクリル酸エステル、(ジ)ペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステル、(ジ)トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性(ジ)トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなどがあげられる。なお、本報で(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸のことをいう。
本発明の目的には沸点が10torrで200℃以上のアクリルオリゴマーを使用することが好ましい。
工程1:有機溶剤の存在下で(メタ)アクリル酸とアルコールをエステル化触媒の存在下でエステル化反応をおこなう。
工程2:過剰の(メタ)アクリル酸およびエステル化触媒を除くため、反応液をアルカリ水溶液で洗浄する。
工程3:アルカリ洗浄後の反応液を純水、無機塩を溶解した水、弱酸水および強酸水から選択された洗浄水で洗浄する。
工程4:有機溶剤を蒸留で除去して目的物を得る。
なお、工程3の変わりに、アルカリ洗浄後の反応液を遠心分離して、反応液中に分散しているアルカリ水溶液を除去することも可能である。
また、アルカリを除去するため、活性白土、酸型イオン交換樹脂、モリブデン酸化合物、タングステン酸化合物、ヘテロポリ酸化合物、燐酸化合物等で処理を行なっても良い。
この中では、前記の工程3記載の方法が、簡易な操作でCPR値を容易に10以下にできる点で好ましい。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリルモノマーを一部使用してウレタン樹脂に(メタ)アクリル基を導入することも可能である。
ウレタン反応は、前記アクリルオリゴマーの存在下、有機イソシアネートとポリオールを同時に添加しても良いし、有機イソシアネートとポリオールのどちらかを先に仕込み、もう一方を滴下しても良いし、全量を一括で仕込んでから反応させても良い。
また、先に有機イソシアネートとポリオールを反応させてから、該アクリルオリゴマーで希釈しても良い。
反応の際には、ウレタン化反応の触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテートなどの錫化合物や、トリエチルアミンなどのアミン類を使用しても良い。
ウレタン化反応は室温〜120℃でおこなうことが好ましい。CPR値が10以下のアクリルオリゴマーを使用すれば容易にこの温度範囲で一定に制御することができる。
本組成物のアクリルオリゴマーもまたCPR値が10以下であることが、組成物の耐水性、耐湿性および耐腐食性などの点より好ましい。
本発明の光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどがあげられる。
係る光重合開始剤は、アクリル変性ウレタン樹脂とアクリルオリゴマーの合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部添加することが好ましい。
本発明のアクリル変性ウレタン樹脂とアクリルオリゴマーの比率は、前者/後者が10/90〜90/10(重量比)が好ましい。
前記成分以外にも、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、無機フィラー、有機フィラー、光安定剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を配合することもできる。又、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤等を少量添加してもよい。
○CPR値の測定方法
サンプルWgを秤量しメタノール30ccに溶解した。次いで0.01mol/Lの塩酸で自動pH測定装置によるpH変曲点まで滴定した。この時の滴定量をDmlとした。また、同様にして求めたブランクの滴定量をBmlとした。
上記の滴定結果を用いて製品30gに換算した数値をCPR値として求めた(式1)。
CPR値=((D−B)×30×10×F)/W 式1
ここで、Fは0.01mol/L塩酸のファクターである。
なお、1/100N塩酸の滴定値は下記の式より求まる(式2)。
1/100N塩酸滴定値(meq/g)=((D−B)×F)/W 式2
〔製造例1〕
攪拌機、冷却管、温度計、仕込み口を持った四つ口フラスコにトリシクロデカンジメチロール(セラニーズ社製TCD−alcholDM)480部、アクリル酸410部、p−トルエンスルホン酸(PTS) 21部、メトキシハイドロキノン(MQ) 2.8部、フェノチアジン 0.2部、トルエン500部を仕込み、反応圧力400Torr、内温85〜105℃にてアルコール基準で転化率が95%以上となるまで、精製する水を逐次除きながらエステル化反応をおこなった。次いで、当該反応液をトルエン300部で希釈し、該希釈反応液量に対して1/10量の蒸留水で洗浄を行った。この希釈反応液の酸分に対して、当量の苛性ソーダを含有する20%水溶液で2回中和をおこなった。
この希釈反応液について、5%硫安水(弱酸性水)/希釈反応液の比が1/6量になるように5%硫安水で洗浄を行った。
次いで、トルエンを減圧蒸留によって除去し、沸点が10torrで200℃以上のアクリル酸トリシクロデカンジメチロールエステルを得た。この製品のCPR値は6.5(1/100N塩酸滴定値換算では0.022meq/g)であった。
5%硫安水に変えて同量の蒸留水で5回洗浄処理をおこなう以外、製造例1と同様の方法でアクリルオリゴマーを作製した。この際のCPR値は4.2(1/100N塩酸滴定値は0.014meq/g)であった。
5%硫安水に変えて蒸留水で洗浄を1回おこなう以外、製造例1と同様の方法でアクリルオリゴマーを作製した。この際のCPR値は35.1(1/100N塩酸滴定値は0.117meq/gであった。
〔実施例1〕
オイルバスに浸漬した攪拌機、温度計、窒素吹き込み管のついた反応器に、製造例1のアクリルオリゴマーを70部、数平均分子量2000の2官能ポリプロピレンオキサイド(Mw/Mn=1.1)を150部、トリレンジイソシアネート(2,4−体と2,6−体の混合物)55部、ジブチル錫ジラウレート0.2部、フェノチアジン0.1部を仕込み、窒素気流下で70℃にて反応した。反応開始後8時間の間で、反応器の内温は±10℃以内にコントロール可能であり、得られたアクリル変性ポリウレタン樹脂の分子量は3800(Mw/Mn=1.6)であった。
製造例2のアクリルオリゴマーを使用する以外、実施例1と同様の試験をおこなった。反応温度は±5℃以内で一定であり、得られたアクリル変性ポリウレタン樹脂の分子量も3000(Mw/Mn=1.3)であった。
比較製造例1のアクリルオリゴマーを使用する以外、実施例1と同様の試験をおこなった。反応開始後30分より発熱が見られ、一時間後には内温が130℃まで上昇したため、反応器をオイルバスより引き上げ冷却した。得られたアクリル変性ポリウレタン樹脂の分子量も51000(Mw/Mn=5.2)であった。
〔実施例3〕
実施例1で製造したアクリル変性ポリウレタン樹脂を100部、製造例1のアクリルオリゴマー50部、チバ・スペシャリティ・ケミカル製イルガキュア184を5部配合して、光硬化型アクリル変性ウレタン樹脂組成物を調整した。該樹脂組成物を膜厚1mmになるようにPETシート上に塗り、コンベア式高圧水銀ランプ照射機にて、365nm付近の照射量で500mj/cm2となるような条件で硬化させた。得られた硬化物のフィルムを一週間室温に置いた後、50℃の温水に一晩浸漬した。その結果、シートには白化や膨れなどは観察されなかった。
比較例1で製造したアクリル変性ポリウレタン樹脂および比較製造例1で作製したアクリルオリゴマーを使用する以外、実施例3と同様の組成物を調整し、同様の試験をおこなった。その結果、シートは白化・膨潤が観察された。
Claims (3)
- 有機ポリイソシアネートおよびポリオールを反応させる際に、CPR値が10以下のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの存在下でおこなうことを特徴とするアクリル変性ウレタン樹脂。
- アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの沸点が10torrで200℃以上であることを特徴とする請求項1記載のアクリル変性ウレタン樹脂。
- 請求項1〜2のアクリル変性ウレタン樹脂、CPR値が10以下であって沸点が10torrで200℃以上のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、および光重合開始剤を必須成分とする光硬化型アクリル変性ウレタン樹脂組成物。
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