JP2006175976A - 車両用衝撃吸収シート構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 シートクッションサイドフレームの塑性変形によって後突時等の衝撃吸収を行うという目的を、シートクッションサイドフレームの機能性、安全性等の低下を伴うことなく実現可能とした。
【解決手段】 シートクッションサイドフレーム12の、その上下にフランジ加工部の位置する箇所での縦断面形状の重心主軸28を、所定角度αだけシート内方にその上方を傾斜させたものとして設定することにより、このシートクッションサイドフレームを、衝撃荷重による塑性変形対象フレームとして規定するとともに、その塑性変形方向をシート外方側として限定する。そして、当該箇所での下部フランジ加工部12b−lの断面係数を、その上部フランジ加工部12b−uの断面係数より小さく規定することにより、その塑性変形箇所をシートクッションサイドフレーム12の下部として規定、限定する。
【選択図】 図1
【解決手段】 シートクッションサイドフレーム12の、その上下にフランジ加工部の位置する箇所での縦断面形状の重心主軸28を、所定角度αだけシート内方にその上方を傾斜させたものとして設定することにより、このシートクッションサイドフレームを、衝撃荷重による塑性変形対象フレームとして規定するとともに、その塑性変形方向をシート外方側として限定する。そして、当該箇所での下部フランジ加工部12b−lの断面係数を、その上部フランジ加工部12b−uの断面係数より小さく規定することにより、その塑性変形箇所をシートクッションサイドフレーム12の下部として規定、限定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、シートフレームの部分的な塑性変形のもとで後突時等における衝撃荷重を吸収可能とする車両用衝撃吸収シート構造に関するものである。
被追突、あるいはバック走行時の衝突等の自動車後部での衝突、いわゆる後突時、その際の過大な衝撃荷重は着座者の上体によりその前方からシートバックに作用されるが、シートフレームの全体的な剛性が高いと、その衝撃荷重はリクライニング装置等の機構部に集中しやすいため、通常は、塑性変形のしやすい部位を、シートフレームの一部に特定して設け、この部位での塑性変形による衝撃荷重の吸収により、リクライニング装置等の機構部への応力集中を防止することが行われている。
ところで、このような構成の一例として、シートバックサイドフレームの一部を塑性変形させることによって衝撃荷重を吸収可能とする、たとえば特開平7−132767号公報に開示の構成が知られている。
しかし、このようなシートバックサイドフレームでの塑性変形を促す構成では、その変形量の調整が容易でなく、また、それによるシートバックの後傾を規制する手段も通常は持たないことから、場合によっては、シートバックの過剰後傾を伴うことが否定できない。
そこで、シートバックサイドフレームではなく、シートクッションサイドフレームでの塑性変形により衝撃荷重を吸収可能とする構成が、たとえば特開2002−12072号公報に開示されている。
このような、シートクッションサイドフレームでの塑性変形を得る構成であれば、このシートクッションサイドフレームに、シートスライド装置等との連結点における変形規制が掛かるため、シートクッションサイドフレームの過剰変形、ひいてはシートバックの過剰後傾が十分に防止可能となる。
ところで、この前出の特開2002−12072号公報に開示の構成では、シートクッションサイドフレームの上端部に設けた略扇型の蛇腹状部が、その塑性変形の促される部位として規定されている。しかしながら、この公知の構成においては、シートクッションサイドフレームの上端部に掛かるものとして、この蛇腹状部が形成されるため、シートクッションサイドフレームの補強を目的としたその周縁のフランジ加工が、少なくともこの上端部においては得られなくなる。
そこで、通常は、このシートクッションサイドフレームに使用する板材の板厚を増大すること等により、その剛性を高めるものとしているが、このようなシートクッションサイドフレームの板厚化は、シートクッションフレーム全体の重量の増加、およびその全体的なコストの増加等を伴うため、好ましいものとはいえない。
また、シートクッションサイドフレーム周縁のフランジ加工は、その端末から周辺部材、特にシートパッドやトリムカバー等を保護することをもその目的としているが、シートクッションサイドフレームの上端部に掛かるこの蛇腹状部の形成下においては、その保護を目的とした上端部のフランジ加工が得られなくなることから、この公知の構成においては、その周辺部材に対する保護性能の低下も伴われる。
特開平7−132767号公報
特開2002−12072号公報
解決しようとする問題点は、従来の構成であると、その周縁にフランジ加工の施されたシートクッションサイドフレームへの適応性に劣るという点である。
本発明の請求項1に係る車両用衝撃吸収シート構造は、シートクッションサイドフレームを、衝撃荷重による塑性変形対象フレームとして規定し、このシートクッションサイドフレームの、その上下にフランジ加工部の位置する箇所での縦断面形状の重心主軸を、所定角度だけシート内方にその上方を傾斜させたものとして設定するとともに、当該箇所での下部フランジ加工部の断面係数を、その上部フランジ加工部の断面係数より小さく規定したことを、その最も主要な特徴としている。
また、この発明の請求項2は、シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部を略線対称形状とし、そのプレート平坦部の鉛直設定を保ちつつ、この上部フランジ加工部の内方折曲端を下部フランジ加工部の内方折曲端よりシート内方側に適当長延ばすことにより、シート内方への重心主軸上方の傾斜、および下部フランジ加工部に対する上部フランジ加工部の断面係数の増大を確保したことを、その最も主要な特徴としている。
さらに、この発明の請求項3は、シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部間の間隔を、シートクッションサイドフレームの前後方向での所定範囲において部分的に抑えることにより、その塑性変形箇所を当該所定範囲内に特定化したことを、その最も主要な特徴としている。
本発明の請求項1に示す車両用衝撃吸収シート構造においては、シートクッションサイドフレームの縦断面形状での重心主軸を、所定角度だけシート内方にその上方を傾斜させることで、このシートクッションサイドフレームを、衝撃荷重による塑性変形対象フレームとして規定している。そして、このシートクッションサイドフレームの縦断面形状での重心主軸をシート内方にその上方を傾斜させることにより、このシートクッションサイドフレームでの塑性変形方向をシート外方側に限定するとともに、その下部フランジ加工部の断面係数を上部フランジ加工部の断面係数より小さく規定することにより、その塑性変形箇所をシートクッションサイドフレームの下部位置として特定化しているため、衝撃荷重の入力に伴った塑性変形がシートクッションサイドフレームにおいて適切に得られるばかりでなく、このシートクッションサイドフレームの塑性変形から着座者を適切に保護できるという利点が、この請求項1においては得られる。
また、シートクッションサイドフレーム周縁のフランジ加工は従来と同様に得られることから、このシートクッションサイドフレームの補剛はこのフランジ加工によって十分に得られ、また、このフランジ加工によってその周辺部材の保護も容易に確保可能となることから、シートクッションフレーム全体の重量の増加、およびその全体的なコストの増加、ならびに周辺部材に対する保護性能の低下等を伴うことのない衝撃吸収シートの確保が、この請求項1によれば容易に可能になるという利点がある。
また、この発明の請求項2は、上部フランジ加工部の内方折曲端を下部フランジ加工部の内方折曲端よりシート内方側に適当長延ばしているにすぎないため、その形状、構成の複雑化を伴うことなく適切なシートクッションフレームの形成ができるという利点がある。
さらに、この発明の請求項3は、シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部間の間隔を、シートクッションサイドフレームの前後方向での所定範囲において部分的に抑えることにより、その塑性変形箇所を当該所定範囲内に特定化しているため、シートクッションサイドフレームの塑性変形から着座者をより一層適切に保護できるという利点がある。
シートクッションサイドフレームの塑性変形によって後突時等の衝撃吸収を行うという目的を、シートクッションサイドフレームの機能性、安全性等の低下を伴うことなく実現可能とした。
図1、図2は、本発明の車両用衝撃吸収シート構造10を示す、シートクッションサイドフレーム12の概略の縦断面図、およびこのシートクッションサイドフレームを有するシートクッションフレーム14の概略斜視図であり、図示のように、この発明においては、プレート平坦部12aの周縁にフランジ加工を施してなるものとして、このシートクッションサイドフレーム12が形成されている。
図2に示すように、このシートクッションフレーム14は、左右一対のシートクッションサイドフレーム12と、このシートクッションサイドフレーム間を一体的に連結するフロントフレーム16、リヤフレーム18の組み合わせとしてなり、前後間に架設、張設されたSばね等の弾性支持部材20上にシートパッド(図示しない)を載置するとともに、これら全体を対応形状のトリムカバー(図示しない)によって被覆することにより、車両用シートのシートクッションが形成される。
なお、このシートクッションフレーム14は、たとえばリンク等を介して、左右一対のシートスライド装置22にそれぞれ連結、支持される。
また、このシートクッションフレーム14の後端、つまりシートクッションサイドフレーム12の後端には、たとえばリクライニング装置24を介して、シートバックフレーム26がその前後傾動を可能に連結、支持される。
なお、この種のシートクッションフレーム14およびシートバックフレーム26の基本的な構成自体は公知であり、その構成自体はこの発明の趣旨でないため、これらに対するここでの詳細な説明はここでは省略する。
ここで、図1を見るとわかるように、この発明においては、シートクッションサイドフレーム12の、その上下にフランジ加工部の位置する箇所での縦断面形状の重心主軸28を、仮想鉛直基準線29から所定角度αだけ、シート内方にその上方を傾斜させたものとして設定している。
なお、この所定角度αとしては、たとえば1.6°程度が例示できる。
シートクッションサイドフレーム12の縦断面形状での重心主軸28の傾斜は、たとえば、略線対称形状としてなる、その上下のフランジ加工部12b−u,12b−lの形状バランスにより設定でき、この実施例では、上下のフランジ加工部の、シート外方側突出部を仮想レベル線30に合わせたほぼ同一のものとするのに対し、上部フランジ加工部12b−uのシート内方側延出端12cのみを仮想レベル線32よりシート内方側に延出させることで、シート内方への、その重心主軸28の傾斜を得るものとしている。
このように、シートクッションサイドフレーム12の縦断面形状での重心主軸28をシート内方、外方のいずれかに傾けることで、後突時等の緊急時にシートバックフレーム26に入力される過大な衝撃荷重に抗する、このシートクッションサイドフレームでの抗力は低下されるため、シートクッションサイドフレームの形状をこのように規定することで、このシートクッションサイドフレームを、衝撃荷重による塑性変形対象フレームとして規定することが可能となる。
そして、後突時等の緊急時における過大な衝撃荷重がシートバックフレーム26、リクライニング装置24を経てシートバッククッションフレーム12に伝達、入力されると、このシートクッションサイドフレームはその衝撃荷重のもとで塑性変形されるため、シートバックフレームを支持するリクライニング装置の機構部にその応力が集中されることなく、その衝撃荷重は、このシートクッションサイドフレームの塑性変形のもとで吸収されることになる。
ここで、この発明においては、このシートクッションサイドフレーム12の縦断面形状での重心主軸28の傾斜を、シート内方にその上方を傾斜させたものとして具体化している。このような、シート内方にその上方を傾斜させた重心主軸28を有するシートクッションサイドフレーム12であれば、その塑性変形形状は、シートクッションサイドフレームをシート外方に膨らませるような形状として特定化できるため、シート内方側、つまり着座者側へのシートクッションサイドフレームの塑性変形を確実に防止することが可能となる。
さらに、この発明においては、この、縦断面形状での重心主軸28の傾斜に加えて、当該箇所での下部フランジ加工部12b−lの断面係数を、その上部フランジ加工部12b−uの断面係数より小さく規定するものとしている。
なお、この実施例においては、上下のフランジ加工部12b−u,12b−lの、シート外方側突出部を仮想レベル線30に合わせたほぼ同一のものとするのに対し、上部フランジ加工部12b−uのシート内方側延出端のみを仮想レベル線32よりシート内方側に延出させる、シート内方へのその重心主軸28の傾斜を得る構成のもとで、下部フランジ加工部12b−lより大きい断面係数を持つ上部フランジ加工部12b−uを形成している。
このような構成によれば、シートクッションサイドフレーム12の下部での変形を促すことが容易に可能となるため、着座者に対する加害性のない塑性変形を得ることが十分に可能となる。
なお、上述のように、シートクッションフレームのシートクッションサイドフレーム12は、シートスライド装置22に対して連結、支持されている。つまり、このシートクッションサイドフレーム12の塑性変形量は、シートスライド装置22との連結点において限定されるため、その過剰な変形は確実に防止されるものとなる。
上記のように、この発明の車両用衝撃吸収シート構造10においては、シートクッションサイドフレーム12の縦断面形状での重心主軸28がシート内方に傾斜して設定されているにすぎないため、シートクッションサイドフレーム周縁のフランジ加工を従来と同様に維持することが可能となる。つまり、シートクッションサイドフレーム12に対する板厚の増加等の補剛対策が不要となり、また、その端末の保護機能も十分に確保されるため、その構成の複雑化およびコストの増大化等を伴わない衝撃吸収シート構造10を容易に得ることができる。
そして、シートクッションサイドフレーム12の縦断面形状での重心主軸28を、シート内方にその上方の傾斜したものとするとともに、下部フランジ加工部12b−lの断面係数を、その上部フランジ加工部12b−uの断面係数より小さく規定するものとしているため、このシートクッションサイドフレームの塑性変形方向をシート外方に限定し、かつその塑性変形箇所をシートクッションサイドフレームの下部として限定することが可能となる。
従って、この発明によれば、シートクッションサイドフレーム12の塑性変形による衝撃吸収にも拘らず、着座者への加害性が確実に防止可能となる。
ここで、この実施例においては、上下に位置するフランジ加工部12b−u,12b−lの形状バランスにより、シートクッションサイドフレーム12の縦断面形状での重心主軸28の傾斜を設定しているが、その重心主軸の上方がシート内方に傾斜されれば足りるため、これに限定されず、たとえば、シートクッションサイドフレームのプレート平坦部12aの上方をシート内方に傾斜させた形状として、このシートクッションサイドフレームを形成してもよい。
しかしながら、この実施例のように、シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部12b−u,12b−lを略線対称形状とし、そのプレート平坦部12aの鉛直設定を保ちつつ、この上部フランジ加工部の内方折曲端を下部フランジ加工部の内方折曲端よりシート内方側に適当長延ばすことによりその重心主軸28の内方傾斜を得れば、シートクッションサイドフレーム12のほぼ従来通りの外形形状を保ちつつ、その衝撃吸収シート構造10を得ることができるため、シートクッションの形成上に影響を与えることのないシートクッションサイドフレームが用意に確保可能となる。
そして、上部フランジ加工部12b−uの内方折曲端12cを下部フランジ加工部12b−lの内方折曲端よりシート内方側に適当長延ばしているにすぎないため、その形状、構成の複雑化を伴うことなく、適切な塑性変形の可能なシートクッションフレーム12を形成できる。
ところで、シートクッションサイドフレーム12がその前後方向のほぼ全域において同様の形状であると、塑性変形がその前後位置のいずれにおいて発生されるかが不明瞭となることもある。そこで、図2に示すように、この実施例においては、シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部12b−u,12b−lの間隔を、シートクッションサイドフレームの前後方向での所定範囲、たとえば範囲L1において部分的に抑えることにより、その塑性変形箇所を当該所定範囲内に特定化するものとしている。
このような構成によれば、上部、下部のフランジ加工部12b−u,12b−lの間隔を抑えた範囲L1に、シートバックフレーム26からの応力が集中しやすくなるため、この範囲L1を、シートクッションサイドフレーム12での塑性変形箇所として特定化することが可能となる。そして、このようにシートクッションサイドフレーム12での塑性変形箇所を特定化することによって、この塑性変形箇所を着座者に対する影響の特に少ない箇所、あるいはシートスライド装置22による変形量規制の受けやすい箇所等に限定できるため、その安全性を一層高く保持することが、その構成、構造の複雑化等を伴うことなく十分に可能となる。
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
一般的には、乗用車のフロントシートがその対象となるが、リヤシートにも応用可能であるこというまでもなく、また、バス等の乗客用シートにおいても、この発明は十分に応用可能である。
10 車両用衝撃吸収シート構造
12 シートクッションサイドフレーム
12b−u 上部フランジ加工部
12b−l 下部フランジ加工部
28 重心主軸
12 シートクッションサイドフレーム
12b−u 上部フランジ加工部
12b−l 下部フランジ加工部
28 重心主軸
Claims (3)
- プレート平坦部の周縁にフランジ加工を施してなる、シートクッションサイドフレームにおける車両用衝撃吸収シート構造であり、
上記シートクッションサイドフレームの、その上下にフランジ加工部の位置する箇所での縦断面形状の重心主軸を、所定角度だけシート内方にその上方を傾斜させたものとして設定するとともに、当該箇所での下部フランジ加工部の断面係数を、その上部フランジ加工部の断面係数より小さく規定したことを特徴とする車両用衝撃吸収シート構造。 - 前記シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部が略線対称形状であり、
前記プレート平坦部の鉛直設定を保ちつつ、この上部フランジ加工部の内方折曲端を下部フランジ加工部の内方折曲端よりシート内方側に適当長延ばすことにより、シート内方への重心主軸上方の傾斜、および下部フランジ加工部に対する上部フランジ加工部の断面係数の増大を確保した請求項1記載の車両用衝撃吸収シート構造。 - 前記シートクッションサイドフレームの上部、下部のフランジ加工部間の間隔を、シートクッションサイドフレームの前後方向での所定範囲において部分的に抑えることにより、その塑性変形箇所を当該所定範囲内に特定化する請求項1または2記載の車両用衝撃吸収シート構造。
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