JP2006118661A - 伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】伝動ベルトの注水時のスリップによる伝動能力の低下と異音の発生とを有効に防止する。
【解決手段】伝動ベルトであるVリブドベルトBの圧縮ゴム層6におけるリブ部8のリブゴム内に、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維10,10,…を埋設する。ベルトBの注水時に、リブ部8表面の短繊維10が吸水によりゲル化して、ベルトBとプーリとの界面に水層が形成されずに、その界面を水がない状態に保ち、水層に起因するベルトBの伝動能力の低下とスリップによる異音発生とを抑制する。
【選択図】図1
【解決手段】伝動ベルトであるVリブドベルトBの圧縮ゴム層6におけるリブ部8のリブゴム内に、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維10,10,…を埋設する。ベルトBの注水時に、リブ部8表面の短繊維10が吸水によりゲル化して、ベルトBとプーリとの界面に水層が形成されずに、その界面を水がない状態に保ち、水層に起因するベルトBの伝動能力の低下とスリップによる異音発生とを抑制する。
【選択図】図1
Description
本発明は、VリブドベルトやVベルト等の伝動ベルトに関し、特に、注水時の伝動能力を確保しかつ異音の発生を防止するための技術に関するものである。
従来より、例えば自動車に搭載されるエンジンの補機駆動システムに用いられるVリブドベルトとして、その圧縮ゴム層においてプーリと接触するリブ部のリブゴム中に長さ数mmにカットした短繊維を充填して埋め込んだものは知られている。この短繊維の充填によってリブゴムのプーリに対する摩擦係数を下げ、ベルト走行中の異音の発生等を防止するとともに、リブゴムの摩耗を抑制するようにしている。
しかし、ベルトのドライ時には問題がないものの、ベルトに注水されたときには、ベルトとプーリとの界面に発生した水層が原因となるスリップが生じ、このスリップによりベルトの伝動能力が低下するとともに、異音が発生するという問題があった。
このため、例えば特許文献1に示されるように、Vリブドベルトに限らず、他のタイプを含む伝動ベルトにおいて、その圧縮ゴム層に水溶性短繊維を圧縮ゴム層のゴム100質量部に対し1〜20質量部充填し、その圧縮ゴム層表面にある水溶性短繊維が水の存在により溶解除去されてその跡に凹部が形成されるようにすることにより、注水時には水を凹部に収容して水層を破壊し、ベルトのスリップによる異音の発生を抑制することが提案されている。
特開2003−314624号公報
ところが、上記特許文献1のものでは、圧縮ゴム層表面の凹部に水を収容するので、吸水量に限度があり、注水時に多量の水が入ったときに吸水できなくなってしまい、ベルトとプーリとの界面に発生した水層に起因するスリップによる伝動能力の低下と異音の発生とを有効に防止するには不十分であった。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、伝動ベルトの圧縮ゴム層に充填される短繊維を特定することで、注水時のスリップによるベルトの伝動能力の低下と異音の発生とを有効に防止できるようにすることにある。
上記の目的を達成すべく、この発明では、短繊維をRFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなるものとした。
具体的には、請求項1の発明では、心線のベルト底面側に圧縮ゴム層が配設された伝動ベルトにおいて、上記圧縮ゴム層に、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維が圧縮ゴム層表面に露出するように埋設されていることを特徴とする。
上記の構成によると、圧縮ゴム層に埋設されている短繊維が、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維であるので、ベルトに注水されたときに、その圧縮ゴム層表面の上記短繊維が吸水してゲル化する。そして、多量の水が入っても、ゲル化した繊維が水の膜を突き破るようになる。これらの作用により、圧縮ゴム層表面に水溶性短繊維の溶解除去による凹部を形成して水を収容する場合に比べ、ベルトとプーリとの界面に水層を形成させない効果が極めて大きく、その界面は水がない状態に保たれる。このことで注水時のベルトの伝動能力を大に確保するとともに、スリップによる異音の発生を低減することができる。
請求項2の発明では、上記短繊維は、圧縮ゴム層のゴム100質量部に対し1〜30質量部含まれている構成とする。このことで、上記作用効果を有効に奏することができる短繊維の配合組成比が容易に得られる。
請求項3の発明では、伝動ベルトは、圧縮ゴム層に、ベルト長さ方向に互いに平行に延びる複数のリブ部が形成されているVリブドベルトとする。また、請求項4の発明では、伝動ベルトは、圧縮ゴム層が断面略V字状に形成されているVベルトとする。さらに、請求項5の発明では、伝動ベルトは、ベルト背面に伸縮性布からなる背面布層が形成されている一方、圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されていて、該溝部により断面V字状の複数のVベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合Vベルトとする。請求項6の発明では、伝動ベルトは平ベルトとする。これらの発明によれば、注水時のベルトの伝動能力の確保と異音の発生の低減とを達成するのに望ましい伝動ベルトが得られる。
以上説明した如く、請求項1の発明によると、伝動ベルトの圧縮ゴム層に埋設される短繊維を、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維としたことにより、ベルトの注水時に圧縮ゴム層表面から露出している短繊維の吸水ゲル化より、ベルトとプーリとの界面を水がない状態に保って、ベルトの伝動能力の確保とスリップによる異音発生の低減とを有効に図ることができる。
また、請求項2の発明によると、短繊維の組成比を、圧縮ゴム層のゴム100質量部に対し1〜30質量部としたことにより、上記作用効果を奏する短繊維の配合組成比が容易に得られる。
さらに、請求項3の発明では、伝動ベルトはVリブドベルトとした。また、請求項4の発明では、伝動ベルトはVベルトとした。さらに、請求項5の発明では、伝動ベルトは、ベルト底面にベルト長さ方向に延びる複数のVベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合Vベルトとした。請求項6の発明では、伝動ベルトは平ベルトとした。従って、これらの発明によれば、注水時のベルトの伝動能力の確保と異音の発生の低減とを達成するのに適切な伝動ベルトが得られる。
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
図1は本発明の実施形態に係る伝動ベルトとしてのVリブドベルトBを示し、このベルトBは、例えば自動車用エンジンの補機駆動システム等に用いられる。VリブドベルトBは、心線1がベルト幅方向に所定のピッチで螺旋状に配置された状態で埋設された接着ゴム層2と、この接着ゴム層2のベルト背面側に配置された伸張ゴム層3と、この伸張ゴム層3のベルト背面側に配置された背面ゴム4と、接着ゴム層2のベルト底面側に配置された圧縮ゴム層6とを積層一体化してなる。尚、上記背面ゴム4に代えて帆布を設けてもよい。また、伸張ゴム層3は省略してもよい。
上記圧縮ゴム層6には、ベルト長さ方向に互いに平行に延びる複数(図示例では3つ)の断面略台形状のリブ部8,8,…がベルト幅方向に一定ピッチをあけて並んだ状態で形成されている。
上記接着ゴム層2には、例えばEPDM、カーボンブラック、シリカ、パラフィン系オイル、綿、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、酸化カルシウム、粘着付与剤、硫黄、加硫促進剤等が用いられる。背面ゴム4には、例えばEPDM、カーボンブラック、パラフィン系オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、ナイロン繊維等が用いられる。また、伸張ゴム層3には、例えばEPDM、カーボンブラック、シリカ、パラフィン系オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤等が用いられている。さらに、圧縮ゴム層6には、例えばEPDM、カーボンブラック、パラフィン系オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、ナイロン繊維等が用いられている。
上記心線1は、エチレン−2,6−ナフタレート繊維(PEN繊維)やポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリビニールアルコール繊維(PVA繊維)、アラミド繊維等が用いられている。
上記圧縮ゴム層6のうち、各リブ部8を構成するリブゴムには短繊維10,10,…が配合され、この短繊維10,10,…は、一部が各リブ部8の表面から露出するようにリブゴム内に例えばベルト幅方向に配向されて埋設されている(尚、短繊維10の配向方向はランダムであってもよく、圧縮ゴム層6の表面に露出するように埋設されていればよい)。短繊維10は、RFL処理(レゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液に繊維を浸漬して表面に接着層を形成する処理)したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなり、圧縮ゴム層6のゴム100質量部に対し1〜30質量部、つまり1質量部以上でかつ30質量部以下の範囲で含まれていることが望ましい。
すなわち、上記短繊維10,10,…の圧縮ゴム層6のゴム100質量部に対する組成は、1質量部未満であると、RFL処理したポリビニルアルコール繊維の吸水効果が十分に出なくなる一方、30質量部を越えると、ゴムが硬くなりベルトのクラック発生が早くなるので、1〜30質量部とされている。
したがって、この実施形態においては、VリブドベルトBの圧縮ゴム層6の一部を構成する各リブ部8のリブゴム内に短繊維10,10,…が埋設され、この短繊維10が、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維であるので、例えば自動車用エンジンの補機駆動システムに用いられているVリブドベルトBが、自動車の雨天走行や洗車等の原因により注水されると、その各リブ部8表面の短繊維10,10,…が吸水してゲル化する。そして、多量の水が入ったとしても、ゲル化した繊維が水の膜を突き破るようになり、これらにより、ベルトBとそれが巻き掛けられているVリブドプーリ(図示せず)との間の界面に水層が形成されることはなく、その界面は水がない状態に保たれる。その結果、注水時のベルトBの伝動能力を大に確保できるとともに、スリップによる異音の発生を低減することができる。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態は、本発明をVリブドベルトBに適用したものであるが、本発明はその他の周知の伝動ベルトに対しても適用することができる。例えば、圧縮ゴム層が断面略V字状に形成されているVベルトや、ベルト背面に接着された伸縮性布からなる背面布層が形成されている一方、圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されていて、該溝部により断面V字状の複数のVベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合Vベルト、さらには平ベルトであってもよく、各々の圧縮ゴム層に、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維を埋設すればよい。
尚、上記実施形態は、本発明をVリブドベルトBに適用したものであるが、本発明はその他の周知の伝動ベルトに対しても適用することができる。例えば、圧縮ゴム層が断面略V字状に形成されているVベルトや、ベルト背面に接着された伸縮性布からなる背面布層が形成されている一方、圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されていて、該溝部により断面V字状の複数のVベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合Vベルト、さらには平ベルトであってもよく、各々の圧縮ゴム層に、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維を埋設すればよい。
(実施例1〜5)
次に、具体的に実施した実施例について説明する。上記実施形態と同様の構成を持つVリブドベルトを作製し、その圧縮ゴム層に充填するRFL処理したポリビニルアルコール繊維(商品名「クラロンK-II」)からなる短繊維の組成比を変えて実施例1〜5とした。
次に、具体的に実施した実施例について説明する。上記実施形態と同様の構成を持つVリブドベルトを作製し、その圧縮ゴム層に充填するRFL処理したポリビニルアルコール繊維(商品名「クラロンK-II」)からなる短繊維の組成比を変えて実施例1〜5とした。
(比較例1〜3)
上記実施例のポリビニルアルコール繊維に代えてナイロン繊維からなる短繊維を用い、その圧縮ゴム層に充填する組成比を変えて比較例1〜3とした。
上記実施例のポリビニルアルコール繊維に代えてナイロン繊維からなる短繊維を用い、その圧縮ゴム層に充填する組成比を変えて比較例1〜3とした。
以上の実施例1〜5及び比較例1〜3の各々において、接着ゴム層、背面ゴム及び伸張ゴム層のゴム組成物を表1に、また圧縮ゴム層のゴム組成物を表2にそれぞれ示す。また、心線は、ポリエチレンテレフタレート繊維をイソシアネートで前処理し、RFL液に浸漬した後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成させたものである。
こうして得られた実施例及び比較例の各々に対し、ベルトの伝達性能及び発音性能の評価を行った。ベルト伝達性能評価では、ドライ時の走行と注水時の走行での2%スリップ状態での負荷を求めた。
一方、発音性能の評価では、注水状態での発音限界張力を試験した。この試験では、図2に示すように、水平方向に離れた直径120mmのVリブドプーリからなる駆動及び従動プーリ14,15間に、実施例及び比較例の各Vリブドベルト16を掛け渡し、従動プーリ15を駆動プーリ14との軸間距離が離れる方向に588Nの荷重で付勢してベルト張力を付与した状態で、駆動プーリ14を3500rpmで回転させ、その駆動プーリ14側に120ml/minの流量で注水しながら、従動プーリ15の負荷を変えたときの発音限界を測定した。雰囲気温度は23℃であった。これらの結果を表3に示す。
この表3の結果を見ると、実施例1〜5のドライ時の負荷は、比較例1〜3よりも低いが、互いに略同じである。また、比較例の注水時の負荷はドライ時に対し大きく低下しているのに対し、実施例1〜5の注水時の負荷は、ドライ時からの低下の度合いが比較例1〜3ほど大きくない。また、この実施例1〜5の注水時の負荷は比較例1〜3よりも大きい。よって、実施例1〜5は、注水時にベルトのスリップが生じずに高い伝動能力を確保できていることが判る。
また、実施例1〜5の発音限界張力は、比較例1〜3よりも概ね大きいので、注水時の異音の発生が生じ難いことが判る。すなわち、これらの結果から本発明は実用上有効であることが明らかである。
本発明は、伝動ベルトの注水時の伝動能力の確保と異音の発生の抑制を実現できる実効性が高いので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
B Vリブドベルト(伝動ベルト)
1 心線
6 圧縮ゴム層
8 リブ部
10 短繊維
1 心線
6 圧縮ゴム層
8 リブ部
10 短繊維
Claims (6)
- 心線のベルト底面側に圧縮ゴム層が配設された伝動ベルトにおいて、
上記圧縮ゴム層に、RFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維が圧縮ゴム層表面に露出するように埋設されていることを特徴とする伝動ベルト。 - 請求項1の伝動ベルトにおいて、
短繊維は、圧縮ゴム層のゴム100質量部に対し1〜30質量部含まれていることを特徴とする伝動ベルト。 - 圧縮ゴム層に、ベルト長さ方向に互いに平行に延びる複数のリブ部が形成されているVリブドベルトであることを特徴とする請求項1又は2の伝動ベルト。
- 圧縮ゴム層が断面略V字状に形成されているVベルトであることを特徴とする請求項1又は2の伝動ベルト。
- ベルト背面に伸縮性布からなる背面布層が形成されている一方、
圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されていて、該溝部により断面V字状の複数のVベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合Vベルトであることを特徴とする請求項1又は2の伝動ベルト。 - 平ベルトであることを特徴とする請求項1又は2の伝動ベルト。
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