JP2006056927A - 塗布剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 アンカー層を介在させることなく、基材に対する密着性が高く、しかも高いガスバリア性及び耐水性を有する塗膜を形成できる塗布剤を提供する。
【解決手段】 塗布剤は、カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体100重量部と、複数のヒドラジノ基を有する架橋剤(多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物)1〜20重量部と、無機層状化合物(モンモリロナイトなど)5〜50重量部と、必要により溶媒(特に水性溶媒)とで構成されている。この塗布剤は、アンカーコート層を介することなく、基材フィルム(石油樹脂含プロピレン系樹脂フィルムなど)の少なくとも一方の面にバリア層を形成し、積層フィルムを製造するのに有用である。
【選択図】 なし
【解決手段】 塗布剤は、カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体100重量部と、複数のヒドラジノ基を有する架橋剤(多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物)1〜20重量部と、無機層状化合物(モンモリロナイトなど)5〜50重量部と、必要により溶媒(特に水性溶媒)とで構成されている。この塗布剤は、アンカーコート層を介することなく、基材フィルム(石油樹脂含プロピレン系樹脂フィルムなど)の少なくとも一方の面にバリア層を形成し、積層フィルムを製造するのに有用である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、アンカーコート層を利用することなく、高湿度下でも高い密着性及び高いバリア性を有する塗膜(又はバリア層)を形成するのに有利な塗布剤及びこの塗布剤を用いる方法に関する。
非ハロゲン系バリア性フィルムとして、基材フィルムに、ビニルアルコール系重合体を含むバリア層を形成した積層フィルムが提案されている。例えば、特開平6−93133号公報(特許文献1)には、粒径5μm以下、アスペクト比50〜5000の無機層状化合物(マイカ、モンモリロナイトなどの膨潤性粘土鉱物など)と、樹脂(ポリビニルアルコールなどの高水素結合性樹脂)とを含む樹脂組成物又はこの組成物を用いたフィルムが開示されている。特開平7−33909号公報(特許文献2)には、粒径5μm以下、アスペクト比50〜5000の無機層状化合物(マイカ、モンモリロナイトなどの膨潤性粘土鉱物など)と、高水素結合性樹脂(ポリビニルアルコール、多糖類など)と、この樹脂を架橋させるための架橋剤(ジルコニア化合物など)とを含む樹脂組成物およびフィルムが開示されている。特開平9−150484号公報(特許文献3)には、熱可塑性樹脂基材の少なくとも片面に、水溶性高分子(ポリビニルアルコール系重合体又はその誘導体など)及び無機系層状粒子(モンモリロナイトなど)で構成された被膜を形成したフィルムであって、前記被膜面の表面粗さパラメータRt/Raが20以下であるガスバリア性フィルムが開示されている。この文献には、表面粗さパラメータRtが1.4μm以下であること、被膜に架橋剤(アミノ系シランカップリング剤など)を0.01〜10%含有させることも記載されている。
しかし、非極性基材フィルム、例えば、ポリプロピレン系樹脂フィルムに前記組成物を適用すると、密着性の低い被覆層しか形成できない。さらに、架橋剤を含む組成物を塗布したとしても、基材フィルムによっては被覆層の密着性を向上できない場合がある。特に、高湿度下では、基材フィルムに対する被覆層の密着性が低下する。
特開2000−177066号公報(特許文献4)には、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、ジアセトンアクリルアミド単位を0.05〜15モル%含有する脂肪酸ビニルエステル共重合体のケン化物100重量部に対して、架橋剤(ヒドラジン化合物など)0.1〜20重量部を反応させることにより得られる架橋皮膜を有する積層フィルムが開示されている。また、上記脂肪酸ビニルエステル共重合体がα−オレフィン重合体単位を0.05〜10モル%共重合した共重合体であることも記載されている。また、特開平8−15142号公報(特許文献5)には、ジアセトン基0.05〜50モル%を含有するポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、ヒドラジン類0.1〜20重量部を反応させ、ポリビニルアルコール系樹脂を耐水化する方法が開示されている。これらの文献に記載の組成物を用いると、ガスバリア性をある程度向上できる。しかし、これらの組成物を基材フィルムに塗布しても、ガスバリア性、特に高湿度下でのガスバリア性を大きく向上させることが困難である。なお、密着性を向上させるためには、基材フィルムと被覆層との間にアンカー層を形成すればよい。しかし、アンカー層を形成すると、積層フィルムの製造工程が増加し、生産性が低下するだけでなく、通常、アンカー層の塗布液が有機溶剤を含むため、塗布液を水性化することが困難である。
特開平11−309818号公報(特許文献6)には、基材フィルム上に、イソシアネート化合物と活性水素化合物とから調製されたアンカー層と、無機層状化合物を有するガスバリア層とが順次積層され、前記ガスバリア層が界面活性剤を含むフィルム積層体が開示されている。この文献には、水素結合性樹脂(ビニルアルコール系樹脂など)、無機層状化合物(モンモリロナイトなど)、及び架橋剤(シランカップリング剤、ジルコニウム化合物など)を含む塗工液を塗布し、バリア層を形成してもよいことも記載されている。しかし、この積層体では、アンカー層を必要とするだけでなく、アンカー層用塗工液が有機溶剤を含む塗工液であるため、塗布液を水性化することができず、環境汚染をもたらす可能性がある。
さらに、これらの文献に記載のバリア層上に水性コーティング剤(水性印刷インキ、水性エマルジョン組成物など)を適用すると、バリア層の耐水性が低いためか、バリア層が浸食される。
特開平6−93133号公報(特許請求の範囲)
特開平7−33909号公報(特許請求の範囲)
特開平9−150484号公報(特許請求の範囲)
特開2000−177066号公報(特許請求の範囲)
特開平8−15142号公報(特許請求の範囲)
特開平11−309818号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、基材に対する密着性が高く、しかも高いガスバリア性を有する塗膜を形成できる塗布剤及びこの塗布剤を用いる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、アンカー層を介在させることなく、高湿度下であっても基材フィルムに対して確実かつ強固に密着し、かつ高いガスバリア性を有する塗膜を形成できる塗布剤及びこの塗布剤を用いる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐水性が高く、水性コーティング剤を適用しても塗膜の浸食を有効に防止できるとともに、高いガスバリア性を維持できる塗布剤及びこの塗布剤を用いる方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カルボニル基(活性カルボニル基)を有するビニルアルコール系重合体と、前記カルボニル基に対して反応性のヒドラジノ基を有する架橋剤と、無機層状化合物とを組み合わせると、高いガスバリア性が発現するだけでなく、水性組成物であっても、アンカー層を利用することなく、基材フィルムに対して高い密着力で被覆層を形成できること、被覆層の耐水性が大きく向上し、被覆層上に水性コーティング剤を塗布しても被覆層が浸食又は溶解されることがないことを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の塗布剤(特に水性塗布剤)は、カルボニル基(例えば、活性メチレン基に隣接するカルボニル基)を有するビニルアルコール系重合体と、複数のヒドラジノ基を有する架橋剤と、無機層状化合物とで構成されている。前記塗布剤は、通常、水性媒体を含む水性塗布剤である。前記カルボニル基(例えば、活性メチレン基に隣接するカルボニル基)を有するビニルアルコール系重合体は、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体のうち少なくとも一方の重合体であってもよい。また、ビニルアルコール系重合体は、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体から選択された重合体と、カルボニル基を有するビニルアルコール系共重合体とを前者/後者(重量比)=0/100〜90/10程度の割合で含んでいてもよい。ビニルアルコール系重合体は、カルボニル基を有する種々の単量体と脂肪酸ビニルエステルとの共重合体のケン化物で構成でき、ジアセトンアクリルアミド単位を含む共重合体であってもよい。カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体において、カルボニル基濃度は0.05〜25モル%(例えば、0.1〜10モル%)程度であってもよい。
架橋剤は、複数のヒドラジノ基を有すればよく、例えば、多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物(例えば、ジカルボン酸ジヒドラジドなど)であってもよい。また、無機層状化合物(又は無機層状粒子)としては、層状にヘキ開可能な無機化合物、例えば、膨潤性粘土鉱物などが使用できる。
各成分の割合は、基材(基材フィルムなど)に対する密着性、バリア性および耐水性を損なわない範囲から選択でき、例えば、前記ビニルアルコール系重合体100重量部に対して、架橋剤1〜20重量部、無機層状化合物5〜50重量部程度であってもよい。無機層状化合物100重量部に対する架橋剤の割合は、1〜80重量部程度であってもよい。
前記塗布剤(特に水性塗布剤)は、基材表面にバリア層を形成するために有用である。特に、塗布剤は耐水性の高い塗膜を形成できるので、水性コーティング剤が適用されるバリア層を基材表面に形成するのに有用である。さらに、塗布剤は、基材に対して高いガスバリア性を付与できる。そのため、基材(基材フィルムなど)の少なくとも一方の面に塗布剤を塗布してバリア層を形成し、積層フィルムを製造するためにも有用である。特に、塗布剤は基材との密着性に優れる塗膜を形成できるので、アンカーコート層を介することなく、前記塗布剤を基材に適用できる。また、前記塗布剤は基材に適用し、塗膜の耐水性を改善するために有用である。
本発明では、特定のビニルアルコール系重合体と特定の架橋剤と無機層状化合物とを組み合わせているため、基材に対する密着性が高く、しかも高いガスバリア性を有する塗膜(又はバリア層)を形成できる。また、アンカー層を介在させることなく、高湿度下であっても基材(基材フィルムなど)に対して確実かつ強固に密着し、かつ高いガスバリア性を有する塗膜(又はバリア層)を形成できる。さらに、耐水性の高い塗膜を形成できるので、水性コーティング剤を適用しても塗膜(又はバリア層)の浸食又は溶解を有効に防止でき、高いガスバリア性を維持できる。
本発明の塗布剤は、カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体と、複数のヒドラジノ基を有する架橋剤と、無機層状化合物とで構成されており、通常、溶媒(特に水性溶媒)を含んでいる。
前記ビニルアルコール系重合体は、脂肪酸ビニルエステルとカルボニル基を有する単量体との共重合体のケン化物、脂肪酸ビニルエステルと共重合性単量体とカルボニル基を有する単量体との共重合体のケン化物が例示できる。脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが例示でき、通常、酢酸ビニルが使用される。共重合性単量体としては、C2-4オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテンなど)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドンなどが例示できる。共重合性単量体としては、少なくともエチレンを含む単量体、特にエチレンが使用される。
ビニルアルコール系重合体はカルボニル基(特に、活性カルボニル基)を有する。このカルボニル基は、種々のカルボニル基、例えば、ビニルケトン類などのカルボニル基、アセチルアセトナト基などのジケト基、ジアセトンアクリルアミド基などのジアセトン基などに由来してもよい。ビニルアルコール系重合体はカルボニル基に隣接して活性メチレン基を有していてもよい。すなわち、カルボニル基は、活性メチレン基に隣接するカルボニル基であってもよい。なお、カルボニル基は、カルボニル基を有する重合性単量体の共重合により導入してもよく、ビニルアルコール系重合体を変性(アセトアセチル化などによるカルボニル化)して導入してもよい。ビニルアルコール系重合体は、工業的には、ジアセトンアクリルアミド単位を含む場合が多い。
ビニルアルコール系重合体において、カルボニル基の濃度は、例えば、0.01〜25モル%(例えば、0.05〜25モル%)、好ましくは0.05〜20モル%(例えば、0.1〜20モル%)、さらに好ましくは0.05〜10モル%(例えば、0.1〜10モル%)程度であってもよく、通常、1〜10モル%程度である。なお、上記カルボニル基の濃度は、単量体換算での割合を意味し、例えば、2つのカルボニル基で構成されたジアセトン基であっても、2つのカルボニル基とはみなさず、ジアセトンアクリルアミド換算の使用割合を示す。
ビニルアルコール系重合体は、例えば、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体のうち少なくとも一方の重合体で構成できる(すなわち、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる)。これらの重合体のうち、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコールやエチレン含量の少ないエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含有量は1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%、さらに好ましくは2〜5重量%程度である。ビニルアルコール系重合体のケン化度は、通常、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
ビニルアルコール系重合体の重合度(平均重合度)は、例えば、200以上(例えば、200〜5000)、好ましくは250〜5000、さらに好ましくは300〜3000程度である。
なお、ビニルアルコール系重合体は、カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体(又は共重合体)単独で構成してもよく、カルボニル基を含まないビニルアルコール系重合体と併用してもよい。カルボニル基を含まないビニルアルコール系重合体を併用しても、基材(基材フィルムなど)に対する高い密着性、高い耐水性及びガスバリア性を得ることができる。特に、カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体と、カルボニル基を含まないビニルアルコール系重合体とを組み合わせると、基材に対する密着性が低下する傾向を示すものの、本発明では、特定の成分と組み合わせるためか、基材に対する密着性を損なうことなく、他の特性(バリア性、耐水性など)を高いレベルで維持できる。
カルボニル基を含まないビニルアルコール系重合体としては、脂肪酸ビニルエステルの単独又は共重合体のケン化物(ポリビニルアルコール)、脂肪酸ビニルエステルと共重合性単量体との共重合体のケン化物(エチレン−ビニルアルコール共重合体など)が例示できる。特に、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体から選択された少なくとも一種の重合体が使用される。好ましい重合体はエチレン−ビニルアルコール共重合体である。これらのビニルアルコール系重合体のケン化度や重合度、エチレン含有量も前記と同様である。
カルボニル基を含まないビニルアルコール系重合体と、カルボニル基(例えば、活性メチレン基に隣接するカルボニル基)を有するビニルアルコール系共重合体との割合は、前者/後者(重量比)=0/100〜90/10、好ましくは0/100〜75/25、さらに好ましくは0/100〜60/40程度であってもよい。
なお、必要であれば、カルボニル基を含むか否かに拘わらず、ビニルアルコール系重合体を変性(アセタール化、リン酸エステル化、アセチル化など)してもよい。
[架橋剤]
本発明では、架橋剤として複数のヒドラジノ基を有する架橋剤(ヒドラジン系架橋剤)を用いる。このような架橋剤としては、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、カルボヒドラジド、多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドラジド、これらのヒドラジン化合物にケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)を反応させた誘導体が例示できる。多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物としては、二塩基酸ジヒドラジド(シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジドなどのC2-20アルカンジカルボン酸ジヒドラジド;シクロヘキサンジカルボン酸ジヒドラジドなどのC4-10シクロアルカンジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ナフトエ酸ジヒドラジドなどのC8-16アレーンジカルボン酸ジヒドラジド;ピリジンジカルボン酸ジヒドラジドなどの複素環式ジカルボン酸ジヒドラジド;リンゴ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジドなどの二塩基オキシ酸ジヒドラジド;イミノジ酢酸ジヒドラジドなど)、多価カルボン酸ポリヒドラジド(シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、クエン酸などの多塩基オキシ酸ヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジドなど)などが例示できる。これらの架橋剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明では、架橋剤として複数のヒドラジノ基を有する架橋剤(ヒドラジン系架橋剤)を用いる。このような架橋剤としては、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、カルボヒドラジド、多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドラジド、これらのヒドラジン化合物にケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)を反応させた誘導体が例示できる。多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物としては、二塩基酸ジヒドラジド(シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジドなどのC2-20アルカンジカルボン酸ジヒドラジド;シクロヘキサンジカルボン酸ジヒドラジドなどのC4-10シクロアルカンジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ナフトエ酸ジヒドラジドなどのC8-16アレーンジカルボン酸ジヒドラジド;ピリジンジカルボン酸ジヒドラジドなどの複素環式ジカルボン酸ジヒドラジド;リンゴ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジドなどの二塩基オキシ酸ジヒドラジド;イミノジ酢酸ジヒドラジドなど)、多価カルボン酸ポリヒドラジド(シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、クエン酸などの多塩基オキシ酸ヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジドなど)などが例示できる。これらの架橋剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの架橋剤(ヒドラジン系架橋剤)のうち水溶性又は水分散性化合物、例えば、C2-7アルカンジカルボン酸ジヒドラジド、特にC4-7アルカンジカルボン酸ジヒドラジド(アジピン酸ジヒドラジドなど)を用いる場合が多い。
[無機層状化合物]
無機層状化合物は、単位結晶層が積層した構造を有し、層間に溶媒(特に水)を配位又は吸収することにより膨潤又はヘキ開する性質を示す。このような無機層状化合物としては、膨潤性の含水ケイ酸塩、例えば、スメクタイト群粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト群粘土鉱物(バーミキュライトなど)、カオリン型鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイトなど)、フィロケイ酸塩(タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、白雲母、金雲母、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、ジャモン石群鉱物(アンチゴライトなど)、緑泥石群鉱物(クロライト、クックアイト、ナンタイトなど)などが例示できる。これらの無機層状化合物は、天然物であってもよく合成物であってもよい。これらの無機層状化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機層状化合物のうち、スメクタイト群粘土鉱物、特にモンモリロナイトが好ましい。
無機層状化合物は、単位結晶層が積層した構造を有し、層間に溶媒(特に水)を配位又は吸収することにより膨潤又はヘキ開する性質を示す。このような無機層状化合物としては、膨潤性の含水ケイ酸塩、例えば、スメクタイト群粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト群粘土鉱物(バーミキュライトなど)、カオリン型鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイトなど)、フィロケイ酸塩(タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、白雲母、金雲母、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、ジャモン石群鉱物(アンチゴライトなど)、緑泥石群鉱物(クロライト、クックアイト、ナンタイトなど)などが例示できる。これらの無機層状化合物は、天然物であってもよく合成物であってもよい。これらの無機層状化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機層状化合物のうち、スメクタイト群粘土鉱物、特にモンモリロナイトが好ましい。
無機層状化合物は粒子(微粒子)の形態で使用される。粒子状無機層状化合物(無機層状粒子)は、通常、板状又は扁平状であり、平面形状は特に制限されず、無定形状などであってもよい。無機層状化合物の粒子の平均粒子径(平面形状の平均粒子径)は、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.2〜2μm(例えば、0.5〜2μm)程度である。なお、粒子状無機層状化合物(無機層状粒子)は、水性媒体中、無機層状化合物を高圧で分散処理することにより調製できる。
[溶媒]
塗布剤は、溶媒を含むことなく、溶融(又は押出)コーティング又は押出ラミネート(共押出ラミネートを含む)可能であってもよい。塗布剤は、通常、溶媒を含む液状塗布剤である場合が多い。塗布剤の溶媒は、有機溶媒であってもよいが、少なくとも水性媒体で構成するのが好ましい。水性媒体は、水及び/又は水溶性有機溶媒(低級アルコール類など)であればよい。すなわち、水性媒体は、水単独であってもよく、水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類(又は低級アルコール類)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール類、アセトンなどのケトン類、エーテル類など)であってもよく、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水溶性有機溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。水と水溶性有機溶媒との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜80/20程度である。
塗布剤は、溶媒を含むことなく、溶融(又は押出)コーティング又は押出ラミネート(共押出ラミネートを含む)可能であってもよい。塗布剤は、通常、溶媒を含む液状塗布剤である場合が多い。塗布剤の溶媒は、有機溶媒であってもよいが、少なくとも水性媒体で構成するのが好ましい。水性媒体は、水及び/又は水溶性有機溶媒(低級アルコール類など)であればよい。すなわち、水性媒体は、水単独であってもよく、水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類(又は低級アルコール類)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール類、アセトンなどのケトン類、エーテル類など)であってもよく、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水溶性有機溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。水と水溶性有機溶媒との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜80/20程度である。
溶媒の使用量は、塗布剤の塗布性や塗布方法などに応じて選択でき、通常、温度20℃での塗布剤の粘度が2×10-3〜10Pa・s(2〜10000cps)、好ましくは5×10-3〜7Pa・s(5〜7000cps)、さらに好ましくは1×10-2〜5Pa・s(10〜5000cps)程度となる量であってもよい。
[各成分の割合]
架橋剤の使用量は、塗膜(バリア層など)の耐水性、基材(基材フィルムなど)に対する密着性を高めるため、前記ビニルアルコール系重合体100重量部に対して、例えば、1〜20重量部、好ましくは2〜17重量部、さらに好ましくは3〜15重量部程度である。
架橋剤の使用量は、塗膜(バリア層など)の耐水性、基材(基材フィルムなど)に対する密着性を高めるため、前記ビニルアルコール系重合体100重量部に対して、例えば、1〜20重量部、好ましくは2〜17重量部、さらに好ましくは3〜15重量部程度である。
無機層状化合物の使用量は、高湿度下でのバリア性及び耐水性を損なわない範囲から選択でき、前記ビニルアルコール系重合体100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは10〜35重量部(例えば、12〜35重量部)程度である。
さらに、高湿度下でのバリア性、基材(基材フィルムなど)に対する密着性とともに、耐水性をさらに向上させるため、無機層状化合物(又は無機層状粒子)100重量部に対する架橋剤の割合は、1〜80重量部、好ましくは3〜70重量部、さらに好ましくは5〜60重量部(例えば、5〜55重量部)程度であってもよい。
なお、塗布剤には、必要であれば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、可塑剤、着色剤、充填剤、分散剤、帯電防止剤、抗菌剤又は防腐剤、粘度調整剤、消泡剤などを添加してもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの添加剤のうち、特に、帯電防止剤は、塗膜(又は後述する積層フィルム)の帯電を効率よく防止でき、塗膜の成形効率や種々の静電気障害(剥離帯電など)を防止できる。帯電防止剤としては、慣用の帯電防止剤(界面活性剤)を使用でき、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性帯電防止剤(界面活性剤)のいずれであってもよい。本発明では、カチオン性帯電防止剤を好適に使用できる。
なお、ビニルアルコール系重合体と無機層状化合物とを組み合わせて塗膜(又はバリア層)を形成すると、バリア性が向上するものの、耐水性及び基材に対する密着性を向上することが困難である。また、ビニルアルコール系重合体とヒドラジン系架橋剤とを組み合わせて塗膜又は被膜を形成すると、ガスバリア性が向上するものの、未だ十分なガスバリア性が得られない。これに対して、本発明では、高湿度下でも高いガスバリア性を実現できるだけでなく、耐水性及び基材(基材フィルムなど)に対する塗膜の密着性を大きく改善できる。そのため、本発明の塗布剤は、基材に適用し、基材表面に塗膜又はバリア層(又はガスバリア層)を形成するのに有用である。さらに、前記基材(又は基材フィルム)と塗膜(又はバリア層)との間にアンカーコート層を介在させることなく、基材に対して高い密着力で塗膜(又はバリア層)を直接形成できる。さらに、塗膜(バリア層など)が高い耐水性を有するため、塗膜上に水性コーティング剤(水性塗料、水性インキ、水性処理剤など)を適用しても、塗膜が浸食(又は欠落)されたり溶解することがなく、高いバリア性を維持できる。そのため、本発明の塗布剤は、水性コーティング剤が適用されるバリア層を基材表面に形成するために有用である。また、有機溶剤を用いることなく積層フィルムを製造できるとともに、有機溶剤を用いることなく、塗膜(バリア層など)上に種々の被膜を形成できる。
前記基材は、有機基材(木材などの天然基材、プラスチックなどの合成基材)、無機基材(金属、ガラス、セラミックスなど)であってもよい。基材は、多孔質(例えば、紙、繊維(繊維集合体)など)であってもよく、非多孔質(樹脂フィルムなど)であってもよい。
[積層フィルムの製造方法]
前記のように、塗布剤は、基材に高いバリア性を付与できるため、ガスバリア性積層フィルムを製造するために有用である。そのため、本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面に前記塗布剤によりバリア層を形成する積層フィルムの製造方法も包含する。バリア層は、押出ラミネート、共押出ラミネートなどにより形成してもよいが、通常、基材フィルムの少なくとも一方の面に、前記塗布剤(特に、水性塗布剤)を塗布して形成する場合が多い。また、バリア層は、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成すればよく、基材フィルムの両面に形成してもよい。
前記のように、塗布剤は、基材に高いバリア性を付与できるため、ガスバリア性積層フィルムを製造するために有用である。そのため、本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面に前記塗布剤によりバリア層を形成する積層フィルムの製造方法も包含する。バリア層は、押出ラミネート、共押出ラミネートなどにより形成してもよいが、通常、基材フィルムの少なくとも一方の面に、前記塗布剤(特に、水性塗布剤)を塗布して形成する場合が多い。また、バリア層は、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成すればよく、基材フィルムの両面に形成してもよい。
基材フィルムの種類は特に制限されず、例えば、紙類、布類(織布、不織布など)、金属箔、プラスチックフィルム類が例示できる。フィルム類を構成するプラスチックとしては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのホモ又はコポリアルキレンアリレート、液晶性ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロースエステル系樹脂などが例示できる。基材フィルムは単一の基材フィルムであってもよく、複数の層で構成された複合基材フィルム(例えば、紙とプラスチックとのラミネート紙、プラスチックフィルムとアルミニウム箔との積層体、プラスチック同士の積層体など)であってもよい。これらの基材フィルムのうち、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリC2-4アルキレンアリレート又はコポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂)、ポリアミド系樹脂、特にオレフィン系樹脂で構成された基材フィルム(又は非極性フィルム)が好ましい。基材フィルムは、通常、熱可塑性樹脂で構成される。
オレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独又は共重合体が挙げられる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−C2-16オレフィンなどが挙げられる。これらのオレフィンは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのオレフィンのうち、α−C2-8オレフィン、好ましくはα−C2-4オレフィン(エチレン、プロピレンなど)、さらに好ましくは少なくともプロピレンを含むのが好ましい。
オレフィン系樹脂は、オレフィンと共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル];ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニルなど);環状オレフィン類(ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンタジエンなど);ジエン類などが例示できる。共重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。共重合性モノマーの使用量は、オレフィン100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜25重量部程度の範囲から選択できる。
オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系樹脂[例えば、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体など]、プロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体などのプロピレン含有80重量%以上のプロピレン系樹脂など)、ポリ(メチルペンテン−1)樹脂などが挙げられる。共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンなどが例示できる。前記共重合体(オレフィン同士の共重合体及びオレフィンと共重合性モノマーとの共重合体)には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体が含まれる。
これらのオレフィン系樹脂のうち、耐熱性、耐油性、強度や剛性などの点から、プロピレン系樹脂が好ましい。プロピレン系樹脂は、プロピレンホモポリマー又はプロピレン−α−オレフィン共重合体を含み、共重合体においてプロピレンとα−オレフィンとの割合(重量比)は、プロピレン/α−オレフィン=60/40〜100/0、好ましくは70/30〜100/0、さらに好ましくは80/20〜100/0(特に90/10〜100/0)程度である。
プロピレン系樹脂は、アタクチック構造であってもよいが、アイソタクチック、シンジオタクチック、メタロセン触媒により生成するメタロセン構造などの立体規則性を有していてもよい。経済性などの点から、アイソタクチック構造を有するプロピレン系樹脂が好ましい。
基材フィルムのベース樹脂(特に、プロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂)は、防湿性又は水蒸気バリア性を高めるため、テルペン系樹脂及び石油樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂を含有していてもよい。
テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン類(ピネン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ピサポレン、ジンギペレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレンなど)の重合体又はこれらの水添物(例えば、80%以上の水添率で水素添加した樹脂)などが挙げられる。これらのテルペン系樹脂は極性基を含まないのが好ましい。
石油樹脂としては、例えば、C5-9留分(高級オレフィン系炭化水素)を主成分とする脂肪族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ビニルトルエンやインデンなどの芳香族炭化水素を主成分とする石油樹脂、これらの水添物(例えば、80%以上の水添率で水素添加した樹脂)などが挙げられる。これらの石油樹脂は極性基を含まないのが好ましい。このような石油樹脂としては、具体的に、例えば、荒川化学(株)製の商品名「アルコンP−125」、トーネックス社製の「エスコレッツ5320HC」などが挙げられる。
テルペン系樹脂及び/又は石油樹脂の含有量は、ベース樹脂100重量部に対して1〜15重量部(例えば、1〜10重量部)、好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。
なお、テルペン系樹脂及び/又は石油樹脂を含み、かつ防湿性(又は透湿性)の高い樹脂(プロピレン系樹脂など)をベース樹脂とする基材フィルムは、通常、被覆層との密着性が低い。しかし、本発明では、このような基材フィルムに対しても、高い密着力でバリア層を形成できる。そのため、有機溶媒を含むアンカーコート剤を用いることなく、基材フィルムにバリア層を直接形成でき、環境に対する負荷も軽減できる。
基材フィルムには、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、着色剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、通常、延伸(一軸又は二軸)されている。通常、二軸延伸フィルムを用いる場合が多い。また、基材フィルムの表面には、接着性を向上させるため、コロナ放電やグロー放電などの放電処理、酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。
さらに、基材フィルムとしては、金属(アルミニウムなど)又は金属酸化物(シリカ、アルミナなど)を蒸着した蒸着フィルムも使用できる。
基材フィルムの厚みは、例えば、5〜100μm、好ましくは8〜70μm、さらに好ましくは10〜50μm(例えば、12〜40μm)程度である。
塗布剤(特に水性塗布剤)は、慣用の方法、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、ドクターコーティング、バーコーティング、ディップコーティングなどを利用して塗布できる。
前記基材フィルムに塗布剤を塗布した後、適当な温度(例えば、80〜120℃程度)で乾燥することによりバリア層を形成できる。バリア層は、所定の温度(例えば、40〜60℃程度)で所定時間(例えば、1日以上)に亘りエージング処理してもよい。
塗膜(バリア層)の厚みは、0.1〜10μm(例えば、0.2〜5μm)程度の広い範囲から選択でき、例えば、0.2〜4μm、好ましくは0.3〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2μm程度である。
このような積層フィルム(ガスバリア性積層フィルム)は、高いガスバリア性を有するとともに、基材フィルムに対する密着性及び耐水性が高い。そのため、バリア層上に水性コーティング剤を適用するための積層フィルムとして適している。
なお、必要であれば、基材フィルムとバリア層との間には、接着剤層(又はアンカーコート層)を形成してもよい。接着剤層を構成する接着成分(例えば、接着性樹脂)としては、例えば、ウレタン系樹脂(イソシアネート基含有ポリマーなど)、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンなど)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂(エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの変性ポリオレフィンなど)、ゴム系接着剤、カップリング剤[チタンカップリング剤、シランカップリング剤]などが挙げられる。これらの接着成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。接着剤層の厚みは、0.01〜3μm、好ましくは0.01〜2μm、さらに好ましくは0.01〜1μm程度であってもよい。
積層フィルム全体の厚みは、例えば、5〜200μm、好ましくは8〜100μm、さらに好ましくは10〜80μm(例えば、12〜50μm)程度であってもよい。
積層フィルム(ガスバリア性積層フィルム)は、ガスバリア性に優れ、例えば、温度30℃、湿度70%RH雰囲気下での酸素透過度(単位ml/m2・day・MPa)が、100以下(例えば、10〜80)、好ましくは10〜70、さらに好ましくは10〜60程度である。なお、上記透過度(特に水蒸気透過度)は、構成によってはフィルムの厚みが影響する場合があり、通常、基材フィルムの厚みが、例えば、10〜30μm程度(例えば、15〜25μm程度)の積層フィルムにおける透過度であってもよい。
積層フィルムは、基材フィルムとバリア層との密着性が高い。特に、高湿度下で放置しても高い密着強度を示す。また、押出ラミネートなどによりバリア層にラミネート層を形成しても、バリア層を介してラミネート層と基材フィルムとを高い密着力で接合できる。例えば、温度30〜40℃、相対湿度60〜80%の高温多湿の環境下に放置しても、高いラミネート強度を示す。温度30℃、湿度70%RH雰囲気下でのラミネート層と基材フィルムとの剥離強度は、例えば、120g/15mm以上(例えば、130〜300g/15mm)、好ましくは130〜250g/15mm、さらに好ましくは140〜250g/15mm程度である。なお、上記ラミネート強度は、バリア層と基材フィルムとの剥離強度とみなすことができる。
なお、「温度30℃、湿度70%RH雰囲気下でのバリア層と基材フィルムとの剥離強度」とは、温度30℃、湿度70%RH(相対湿度70%)雰囲気下でフィルムを調製した後、温度23℃及び湿度60%RH(相対湿度60%)の雰囲気下、2時間以内に測定した値を意味する。
前記積層フィルムは、透明性にも優れ、例えば、ヘイズが10%以下(例えば、1〜10%)、好ましくは9%以下(例えば、1〜9%)、さらに好ましくは8%以下(例えば、1〜8%)程度である。
前記バリア層には、必要によりコーティング被膜を形成してもよい。このコーティング被膜は、有機溶剤を含むコーティング剤で形成してもよいが、前記バリア層の耐水性が高いため、水性コーティング剤で形成しても、バリア層を損なうことなく均一なコーティング被膜を形成できる。水性コーティング剤としては、水性塗料、水性インキ、水性接着剤、水性処理剤(例えば、帯電防止用コーティング剤、滑性用コーティング剤、ブロッキング防止用コーティング剤など)、ヒートシール剤、粘着剤、ラミネート用接着剤などが例示できる。水性コーティング剤は、溶液型であってもよく分散型(又はエマルジョン型)であってもよい。具体的には、例えば、水性フレキソインキや水性グラビアインキなどを印刷すると、バリア層上に鮮明な印刷物を得ることができる。
前記バリア層、特にコーティング処理を施したバリア層上には、必要によりラミネート用接着剤を介してヒートシール層を形成してもよい。ヒートシール層を形成するためのシーラントは、オレフィン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はアイオノマー、非晶性ポリプロピレン系樹脂など)、酢酸ビニル系樹脂(酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体など)などであってもよい。ラミネート層の厚みは、特に限定されないが、5〜100μm、好ましくは10〜70μm程度であってもよい。
ラミネート用接着剤としては、例えば、ウレタン系樹脂、イミノ基含有ポリマー、ブタジエン系ポリマー、カップリング剤、特にウレタン系樹脂、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンなど)、ブタジエン系ポリマー(エポキシ化ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリブタジエンなど)などが例示できる。ウレタン系樹脂は、例えば、イソシアネート基を有するプレポリマー[ポリエステルジオール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのジオール成分と、ジイソシアネート成分との反応により生成するイソシアネート基含有プレポリマーなど]と、ポリオール成分(前記ジオール成分など)とで構成された二液硬化型ウレタン系樹脂であってもよい。ラミネート用接着剤の塗布量は、乾燥重量で、例えば、0.1〜5g/m2、好ましくは0.3〜4g/m2、さらに好ましくは0.5〜3g/m2程度である。シーラントのラミネートは、ラミネートフィルムを貼り合わせるドライラミネート法であってもよく、ラミネート層を溶融押出しして貼り合わせる押出ラミネート法であってもよい。
本発明の塗布剤は、前記のように積層フィルムを製造するのに有用であり、このような積層フィルムは、種々の包装用フィルム、特に水蒸気や酸素による品質劣化が生じやすい食品などの包装材料として有用である。例えば、菓子などの食品、食品用カップやトレイ、薬剤などの化学品、半導体などの電子部品又は精密部品の包装材料などとして利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られたフィルムの物性の評価方法は以下の通りである。
[酸素透過率]
ASTMD−3985に従って、酸素透過率測定装置(モコン(MOCON)社製、OX−TRA N2/20)を用いて酸素透過率を測定した。測定条件は、20℃、相対湿度80%RHである。
ASTMD−3985に従って、酸素透過率測定装置(モコン(MOCON)社製、OX−TRA N2/20)を用いて酸素透過率を測定した。測定条件は、20℃、相対湿度80%RHである。
[ラミネート層との密着性]
二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(東洋モートン(株)製、「TM329」及び「CAT−8B」)をバリア層に塗布量3g/m2で塗布し、80℃で30秒間熱風乾燥した後、ヒートシール材として無延伸ポリピロピレンフィルム(東洋紡(株)製、CPP P1128、30μm)を圧着し、ローラーでラミネート処理した。このラミネートフィルムを40℃で24時間エージングし、ラミネートサンプルを調製した。また、ラミネートサンプルを、30℃、70%RHの条件で1週間に亘り環境試験室内に放置した後、環境試験室から取り出した後、1時間以内に、幅15mmの短冊状にカットするとともに剥離強度を測定した。剥離強度は、剥離強度測定器(テンシロン、オリエンテック社製、RTM−100)を用い、引っ張り速度300mm/分、チャート速度300mm/分の条件で、基材フィルムとヒートシール材とを180°剥離し剥離強度を測定した。
二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(東洋モートン(株)製、「TM329」及び「CAT−8B」)をバリア層に塗布量3g/m2で塗布し、80℃で30秒間熱風乾燥した後、ヒートシール材として無延伸ポリピロピレンフィルム(東洋紡(株)製、CPP P1128、30μm)を圧着し、ローラーでラミネート処理した。このラミネートフィルムを40℃で24時間エージングし、ラミネートサンプルを調製した。また、ラミネートサンプルを、30℃、70%RHの条件で1週間に亘り環境試験室内に放置した後、環境試験室から取り出した後、1時間以内に、幅15mmの短冊状にカットするとともに剥離強度を測定した。剥離強度は、剥離強度測定器(テンシロン、オリエンテック社製、RTM−100)を用い、引っ張り速度300mm/分、チャート速度300mm/分の条件で、基材フィルムとヒートシール材とを180°剥離し剥離強度を測定した。
[耐水性]
アクリル系樹脂エマルジョン(ダイセル化学工業(株)製、「アクアブリッド46777」、固形分濃度30重量%)を積層フィルムのバリア層上に塗布量1.5g/m2で塗布し、100℃で60秒間熱風乾燥し、積層フィルムの透明性を目視で確認した。なお、バリア層の耐水性が劣ると、バリア層が再溶解して透明性が低下し、白化する。一方、バリア層の耐水性が高いと、水性コーティング剤を塗布してもバリア層が再溶解することなく、透明性が縊死される。そのため、以下の基準で耐水性を評価した。
アクリル系樹脂エマルジョン(ダイセル化学工業(株)製、「アクアブリッド46777」、固形分濃度30重量%)を積層フィルムのバリア層上に塗布量1.5g/m2で塗布し、100℃で60秒間熱風乾燥し、積層フィルムの透明性を目視で確認した。なお、バリア層の耐水性が劣ると、バリア層が再溶解して透明性が低下し、白化する。一方、バリア層の耐水性が高いと、水性コーティング剤を塗布してもバリア層が再溶解することなく、透明性が縊死される。そのため、以下の基準で耐水性を評価した。
A:透明
B:僅かに白化
C:部分的に白化
D:全体が白化。
B:僅かに白化
C:部分的に白化
D:全体が白化。
[溶出性]
温度60℃の温水中にフィルムを60分間浸漬し、初期の重量に対する浸漬後のバリア層(コート層)の重量%(残存重量%)を測定した。
温度60℃の温水中にフィルムを60分間浸漬し、初期の重量に対する浸漬後のバリア層(コート層)の重量%(残存重量%)を測定した。
(実施例1〜14及び比較例1〜7)
ビニルアルコール系重合体(酢酸ビニル−ダイアセトンアクリルアミド共重合体のケン化物、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体)と、アジピン酸ジヒドラジドと、モンモリロナイトとを表1及び表2に示す割合で混合し、水性塗布剤を調製した。この水性塗布剤を、コロナ放電処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ダイセル化学工業(株)製、「グレード G1」、厚み20μm、表面張力40dyn/cm)に、表に示す塗布厚み(乾燥後の厚み)で塗布し、100℃で1分間乾燥した後、45℃で25時間エージング処理し、積層フィルムを得た。
ビニルアルコール系重合体(酢酸ビニル−ダイアセトンアクリルアミド共重合体のケン化物、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体)と、アジピン酸ジヒドラジドと、モンモリロナイトとを表1及び表2に示す割合で混合し、水性塗布剤を調製した。この水性塗布剤を、コロナ放電処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ダイセル化学工業(株)製、「グレード G1」、厚み20μm、表面張力40dyn/cm)に、表に示す塗布厚み(乾燥後の厚み)で塗布し、100℃で1分間乾燥した後、45℃で25時間エージング処理し、積層フィルムを得た。
なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとしては、石油樹脂を含有しないフィルムと、石油樹脂(エクソンモービル社製、「エスコレッツ5320HC」)の含有量の異なるフィルムとを用いた。
また、水性塗布剤は、次のようにして調製した。すなわち、モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、「クニピア−G」)を圧力500〜550kgf/cm2で蒸留水中で高圧分散し、濃度3.5重量%の水分散液を調製した。この水分散液に、所定量のポリビニルアルコール((株)クラレ製、「PVA105」、ケン化度98.5%、重合度500)又はエチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、「エクセバールAQ−4104」、エチレン含量2〜5重量%、ケン化度98.5%、重合度400)を添加して加温し、95℃で1時間に亘り撹拌し、混合分散液(A液)を調製した。
一方、所定量の酢酸ビニル−ダイアセトンアクリルアミド共重合体のケン化物(日本酢ビ・ポバール(株)製、「Dポリマー DF−05」)を蒸留水に添加し、90℃で1時間撹拌して溶解し、水溶液(B液)を調製した。
そして、A液とB液とアジピン酸ジヒドラジドとをイオン交換水に添加し、濃度7重量%の水性塗布剤を調製した。
(実施例15および比較例8)
実施例1〜14及び比較例1〜7において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「E5100(#12)」)を使用する以外は、実施例1〜14及び比較例1〜7と同様に、積層フィルムを得た。
実施例1〜14及び比較例1〜7において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「E5100(#12)」)を使用する以外は、実施例1〜14及び比較例1〜7と同様に、積層フィルムを得た。
(実施例16,17および比較例9,10)
実施例1〜14及び比較例1〜7において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに、二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「N1100(#15)」)を使用する以外は、実施例1〜14及び比較例1〜7と同様に、積層フィルムを得た。
実施例1〜14及び比較例1〜7において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに、二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「N1100(#15)」)を使用する以外は、実施例1〜14及び比較例1〜7と同様に、積層フィルムを得た。
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの特性を表1および表2に示す。なお、表中、ポリプロピレン系樹脂フィルム中の石油樹脂の含有量(重量%)を「石油樹脂量」で表し、酢酸ビニル−ダイアセトンアクリルアミド共重合体のケン化物を「DAPVA」、ポリビニルアルコールを「PVA」、エチレン−ビニルアルコール共重合体を「EVOH」と、アジピン酸ジヒドラジド「ADH」と、モンモリロナイトを「層状粒子」と略記する。
さらに、塗布量の単位は「g/m2」であり、酸素透過率の単位は、「ml/m2・day・MPa」である。さらに、ラミネート層との密着性を単に「密着性」と略記し、単位は「g/15mm」である。
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例では、ガスバリア性、基材フィルムとの密着性及び耐水性の高い積層フィルムが得られた。
Claims (9)
- カルボニル基を有するビニルアルコール系重合体と、複数のヒドラジノ基を有する架橋剤と、無機層状化合物とで構成されている塗布剤。
- ビニルアルコール系重合体が、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体のうち少なくとも一方の重合体であり、かつカルボニル基を0.05〜25モル%の濃度で含む請求項1記載の塗布剤。
- ビニルアルコール系重合体が、ジアセトンアクリルアミド単位を含む請求項1記載の塗布剤。
- カルボニル基を0.1〜10モル%の濃度で含むビニルアルコール系重合体と、多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物と、無機層状化合物と、水性媒体とで構成されている請求項1記載の塗布剤。
- 無機層状化合物100重量部に対する架橋剤の割合が、1〜80重量部である請求項1記載の塗布剤。
- ビニルアルコール系重合体が、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体から選択された重合体とカルボニル基を有するビニルアルコール系共重合体とで構成され、前記ビニルアルコール系重合体100重量部に対して、架橋剤1〜20重量部、無機層状化合物5〜50重量部を含む請求項1記載の塗布剤。
- 水性コーティング剤が適用されるバリア層を基材表面に形成するための請求項1記載の塗布剤。
- 基材フィルムの少なくとも一方の面に請求項1記載の塗布剤を塗布してバリア層を形成する積層フィルムの製造方法。
- 請求項1記載の塗布剤を基材に適用し、塗膜の耐水性を改善する方法。
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