今日の情報化社会の中で、情報記録メディアである光ディスク装置や、情報をやり取りする光伝送システムの重要性はますます高まっており、その需要は大きくなる一方である。半導体レーザ素子は、これら光ディスク装置や光伝送システムの基幹デバイスであり、その果す役割は非常に大きい。
この半導体レーザ素子では、より大容量の情報をより速く光ディスクに書き込んだり伝送したりするためには、レーザ発振出力を大きくしなければならない。しかし、半導体レーザ素子を高出力発振させると、一般に劣化が早く進むようになるので、素子の信頼性を確保しつつ高出力化を実現することが重要である。さらに、光ディスク装置や光伝送システムの携帯機器への搭載や、装置使用時や製造時の環境に与える負荷をできるだけ低減することなどを考えると、消費電力はより小さく、またできるだけ安いコストで製造できることも要求される。
高い信頼性と低い消費電力(低閾値電流)を両立した従来の第1の半導体レーザ素子として、図19に示すリッジ埋め込み構造のものがある(例えば、特開平5−160503号公報(特許文献1)参照)。この従来の第1の半導体レーザ素子は、n-GaAs基板601上に、n-GaAsバッファ層602、n-Al0.5Ga0.5As下部クラッド層603、Al0.15Ga0.85As活性層604が順に積層され、さらにリッジ部以外の領域にp-Al0.5Ga0.5As上部クラッド層605を一部残しつつ、p-Al0.5Ga0.5As上部クラッド層605とp-GaAsキャップ層606がリッジ部608を形成している。リッジ部608の両脇は、n-AlGaAs電流ブロック層609、n-GaAs保護層610が埋め込み形成され、p-GaAsキャップ層606、n-AlGaAs電流ブロック層609、およびn-GaAs保護層610上にp-GaAsコンタクト層611が設けられている。
この半導体レーザ素子は、次のようにして作製される。
(a) まず、n-GaAs基板601上に第1回目の半導体層の結晶成長としてn-GaAsバッファ層602(層厚0.5μm)、n-Al0.5Ga0.5As下部クラッド層603(層厚1.0μm)、Al0.15Ga0.85As活性層604(層厚0.07μm)、p-Al0.5Ga0.5As上部クラッド層605(層厚1.0μm)、p-GaAsキャップ層606(層厚0.2μm)を順次、MOCVD(有機金属化学気相成長)法またはMBE(分子線エピタキシー)法にて成長させる(図20A参照)。
(b) 次に、p-GaAsキャップ層606上にストライプ状に窒化シリコンまたは酸化シリコンなどの誘電体膜607を形成し、この誘電体膜607をマスクとしてp-GaAsキャップ層606およびp-AlGaAs上部クラッド層605の一部を除去し、リッジ部608を形成する(図20B参照)。
(c) 第2回目の半導体層の結晶成長として、誘電体膜607をマスクとしてMOCVD成長技術により、p-GaAsキャップ層606の側面およびp-AlGaAs上部クラッド層605上にのみ選択的にn-AlGaAs電流ブロック層609、n-GaAs保護層610を順次形成する(図20C参照)。
(d) 次に、誘電体膜607を除去し、第3回目の半導体層の結晶成長として、表面に現れているp-GaAsキャップ層606、n-AlGaAs電流ブロック層609、およびn-GaAs保護層610の全てを覆うように、p-GaAsコンタクト層611を形成する(図20D参照)。
最後に、n-GaAs基板601およびp-GaAsコンタクト層611のそれぞれに電極を形成することで半導体レーザ素子が完成する。この半導体レーザ素子は、光と電流をAlGaAs活性層604のリッジ部608直下の領域に閉じ込めることでレーザ発振を行う。
前記従来の第1の半導体レーザ素子は、p-AlGaAs上部クラッド層605にリッジ形状の領域を持たせた構造いわゆるリッジ埋め込み構造を用いている。この構造では、製造工程中のリッジ部形成後の工程(b)の段階において、酸化しやすいAlを含んだp-AlGaAs上部クラッド層605が一旦大気にさらされる。一般に、AlGaAs層において一旦大気にさらされた部分は、深い準位を形成して光吸収を起こし、レーザ素子の信頼性を低下させる。しかし、このリッジ埋め込み構造は、大気にさらされた部分がレーザ発振時の活性領域から離れているために、この部分での光吸収は低く抑えられ信頼性を確保できる。
また、前記従来の第1の半導体レーザ素子は、p-AlGaAs上部クラッド層605のリッジ形状部分の外側にp-AlGaAs上部クラッド層605よりも屈折率の小さいn-AlGaAs電流ブロック層609を設けることで、電流狭窄と実屈折率のみによる水平方向の光の閉じ込めを行っている。このいわゆる実屈折率ガイド型のレーザは水平方向の光閉じ込めに光吸収を用いていないため、レーザ発振時の導波路損失が小さく、消費電力を低く抑えることができる。
このように、一般にリッジ埋め込み構造の半導体レーザ素子は、高信頼性と低消費電力を両立できる構造として広く多用されている。しかしながらこの構造の作製においては、活性層等があらかじめ積層された半導体基板に対し、さらに2回の結晶(再)成長を行うことが必要となる。
2度の結晶再成長を行うことは、半導体レーザ素子を作成する上で非常に大きなコストアップ要因となる。そのため、従来の第2の半導体レーザ素子として、クラッド層とショットキー接合しコンタクト層とオーミック接合する電極を積層することにより製造工程を簡略化したものが提案されている(例えば、特開平4−111375号公報(特許文献2)参照)。
前記従来の第2の半導体レーザ素子について、以下に説明する。図21は、従来の第2の半導体レーザ素子の断面模式図である。この従来の第2の半導体レーザ素子は次のようにして製造される。
まず、MOCVD法により、n-GaAs基板701上にn-InGaPクラッド層702、InGaAs/GaAs歪量子井戸活性層703、p-InGaPクラッド層704、p-InGaAsコンタクト層705を順次積層し、フォトリソグラフィなどの手法により、p-InGaPクラッド層704の途中までエッチングを行い、メサを形成した後、p側電極706としてTi/Pt/Auを、n側電極707としてAu-Ge-Ni/Auを順次蒸着する。このようにして製作された素子に電流を流すと、p-InGaPクラッド層704とp側電極706の間にはショットキー接合部708が形成され、p側電極とp-InGaAsコンタクト層705の間にのみ電流が流れ、電流狭窄が行われる。
従来の第2の半導体レーザ素子のような構造とすることで、従来の第1の半導体レーザ素子のような埋め込みヘテロ構造における合計3度の結晶成長工程を1度にすることができ、その結果、大幅に製造工程を削減することができる。
この種のショットキー接合を用いて電流狭窄を行う従来の第3の半導体レーザ素子としては、他に図22に示すものがある(例えば、特開昭62−281384号公報(特許文献3)参照)。図22において、801はn-GaAs基板、802はn-AlGaAs第1クラッド層、803は高補償SiドープGaAs活性層、804はp-AlGaAs第2クラッド層、805はp-GaAs層、806はp-AlGaAs第3クラッド層、807はp-GaAs層、808,809は電極である。
図22に示すように、GaAs基板801上において、AlGaAsとGaAsの選択エッチングを利用してp-AlGaAs第2クラッド層804を露出させ、それにショットキー接合し、p-GaAsコンタクト層807にオーミック接合するような構造が開示されている。この従来の第3の半導体レーザ素子では、選択エッチングを用いることにより製造工程を容易かつ制御性の良いものにでき、かつ高出力動作を期待できるとしている。
上述したように、従来のリッジ埋め込み型の第1の半導体レーザ素子では、高信頼性と低消費電力を両立できるものの、その製造コストが高いという課題があった。また、従来のショットキー接合を用いて電流狭窄を行う第2,第3の半導体レーザ素子では、現在リッジ埋め込み構造の半導体レーザ素子で実現されているような低閾値電流(例えば30mA以下)、高出力(例えば150mWを超える出力)動作を行うことができなかった。また、さまざまな用途に合わせて要求される光学特性仕様に合わせた素子設計をすることが困難であった。さらに、ショットキー接合部の信頼性に乏しく、長期信頼性を実現できていない。
低閾値電流、高出力動作を実現できていなかった原因としては、ショットキー接合部分の電流狭窄性が不十分であり、特に微細ストライプ構造としたときの漏れ電流を十分に低減できなかったことにある。
また、低素子抵抗と電流狭窄性を両立できる構成が開示されておらず、結果として素子抵抗が上昇し、このことも高出力動作を妨げる一因である。
また、電流狭窄性を確保するためには、価電子帯のエネルギー差ΔEvの大きい(GaAsに格子整合するような)InGaPや高混晶のAlGaAsの材料系をクラッド層に使用せざるを得ず、クラッド層の屈折率を変更する余地が小さかった。そのため光学特性を設計する際の自由度が制限されていた。さらに、ブレークダウンに強いショットキー接合の構成が開示されておらず、長期信頼性に欠けたものしかなかった。
その他にも、例えば上述の従来の第2における半導体レーザ素子およびその製造方法では、途中までエッチングで除去したp-InGaPクラッド層の層厚が変動することにより、レーザ素子の光学特性に大きく影響を与え、水平方向のファーフィールド・パターン(FFP)がばらついたり、横モードの安定性が悪くなったりするという課題があった。さらに、InGaP層厚が変動することにより、その上に作成したショットキー接合特性も変動し、電流狭窄が十分に行えない場合がある。また、GaAsに対して格子整合条件のInGaP層の屈折率は一意に決定されるので、光学設計の際、InGaP膜厚を変更することでしか調整ができず、その自由度が小さい。さらに、InGaPをpクラッド側に用いることによりΔEvが大きくなり、活性層へのホールの注入効率が制限される等の課題がある。
また、従来の第3の半導体レーザ素子では、AlGaAsとGaAsの選択エッチングを用いることにより製造工程の制御性が上がるが、AlGaAsに対して高出力動作に耐えうる十分な電流狭窄性を有したショットキー接合を得ることが困難であり、長期信頼性の面でも課題があった。
特開平5−160503号公報
特開平4−111375号公報
特開昭62−281384号公報
本発明は、上述した課題を克服し、低閾値電流でかつ高出力動作が可能で、長期信頼性が得られると共に、製造工程の簡略化によりコストを低減できる半導体レーザ素子を提供することを目的とし、さらに光学特性設計の自由度に富み、かつ安定した光学特性が得られる半導体レーザ素子を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、前記半導体レーザ素子とその製造方法およびその半導体レーザ素子を用いた光ディスク装置および光伝送システムを提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明の半導体レーザ素子は、第1導電型の基板と、前記第1導電型の基板上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型の半導体層群とを有する半導体レーザ素子において、前記第2導電型の半導体層群は、少なくともドーピング濃度が1×1017cm-3以下の低濃度半導体層とドーピング濃度が1×1018cm-3以上の高濃度半導体層とを含み、前記第2導電型の半導体層群上に電極が形成され、前記電極と前記低濃度半導体層の界面に、前記電極の材料と前記低濃度半導体層の材料からなる低濃度側の化合物層が形成され、前記電極と前記高濃度半導体層の界面に、前記電極の材料と前記高濃度半導体層の材料からなる高濃度側の化合物層が形成されていることを特徴とする。
前記構成の半導体レーザ素子によれば、ドーピング濃度が1×1018cm-3以上の高濃度半導体層と電極とのオーミック接合では、前記高濃度側の化合物層によってより低コンタクト抵抗が得られると共に、ドーピング濃度が1×1017cm-3以下の低濃度半導体層と電極とのショットキー接合では、前記低濃度側の化合物層によって十分な電流狭窄が得られる。このようにオーミック接合性とショットキー接合性がともにより強化されるので、電流狭窄を行うための埋め込み層(電流ブロック層)の結晶再成長工程と、低コンタクト抵抗を得るためのコンタクト層の結晶再成長工程を別途行うことなく、十分な電流狭窄性と低コンタクト抵抗を実現でき、熱的,電気的信頼性が向上する。したがって、低閾値電流でかつ高出力動作が可能で、長期信頼性が得られると共に、製造工程の簡略化によりコストを低減でき、従来構造を有する半導体レーザ素子と同等以上の信頼性と高出力特性を低消費電力にて実現できる半導体レーザ素子を提供することができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度半導体層と前記活性層の間に、少なくとも1×1017cm-3以上のドーピング濃度を有する第2導電型の半導体層が形成されていることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記低濃度半導体層と前記活性層の間に、少なくともドーピング濃度が1×1017cm-3以上の第2導電型の半導体層をさらに形成することによって、ショットキー接合特性を考慮した制限を受けることなく、要求される光学特性仕様に応じて自在に第2導電型の半導体層の層厚・組成等を変更することができるために光学設計の自由度が増すと共に、素子抵抗の上昇を抑えることができ、一層の低消費電力化を図ることができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記高濃度半導体層がリッジ構造の最上部に設けられ、前記低濃度半導体層が少なくとも前記リッジ構造の最上部以外の領域に設けられていることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、最上部に高濃度半導体層が設けられ、その最上部以外の領域に低濃度半導体層が設けられたリッジ構造において、第2導電型の半導体層群の高濃度半導体層上と低濃度半導体層上に形成された同一の電極によって、電流狭窄を行うショットキー接合部分と電流注入を行うオーミック接合部分を同時に形成できるため、製造コストを大幅に低減できる半導体レーザ素子を提供することができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記高濃度半導体層がGaAsまたはInGaAsであることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、GaAsまたはInGaAsである前記高濃度半導体層と前記電極とのオーミック接合により、電極コンタクト層を結晶再成長により形成する工程を行うことなく、素子抵抗を低減できるため、半導体レーザ素子を製造するコストを大幅に低減できる効果がある。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度半導体層がAlGaAsであることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、AlGaAsである前記低濃度半導体層と前記電極とのショットキー接合により、電流ブロック層を結晶再成長した構造にすることなく、十分に電流狭窄性に優れた半導体レーザ素子を提供することができるので、製造コストを大幅に低減することができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度半導体層が少なくともInとPを含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、少なくともInとPを含む前記低濃度半導体層と前記電極とのショットキー接合により、電流ブロック層を結晶再成長した構造にすることなく、十分に電流狭窄性に優れた半導体レーザ素子を提供することができるので、製造コストを大幅に低減することができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度半導体層が、InGaP,InGaAsP,InGaAlPまたはInAlAsPのうちのいずれか1つであることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記低濃度半導体層が、InGaP、InGaAsP、InGaAlP、InAlAsPのうちのいずれか1つであることによって、リッジ形成プロセスに選択エッチングを利用することができ、それによって製造工程を簡略化して歩留りを向上できる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記第2導電型の半導体層群のドーパントとしてCまたはMgまたはBeが用いられていることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記第2導電型の半導体層群のドーパントにCまたはMgまたはBeを用いることによって、結晶成長時や素子通電動作時のショットキー接合を形成する低濃度半導体層への上下の層からのドーパントの拡散が抑制されるので、ドーパント拡散による電流狭窄性の低下を防ぐことができる。したがって、良好な電流狭窄性を有する半導体レーザ素子を制御性よく製造でき、さらに量産時のばらつきの低減や通電時の信頼性を向上できる効果がある。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度側の化合物層の厚みが0.2μm未満であることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記低濃度側の化合物層の厚みを0.2μm未満にすることによって、前記低濃度半導体層の厚みの増加による必要以上の素子の高抵抗化を防止でき、消費電力を下げる効果がある。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記電極が多層金属薄膜であって、その多層金属薄膜の最下層が白金族元素または白金族元素化合物からなることが好ましい。ここで、白金族元素とは、ルテニウムRu,ロジウムRh,パラジウムPd,オスミウムOs,イリジウムIrおよび白金Ptの総称であり、白金族元素化合物とは、Ru,Rh,Pd,Os,IrおよびPtのうちの少なくとも1つを含む化合物のことである。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、多層金属薄膜である前記電極の最下層が白金族元素または白金族元素化合物からなることにより、白金族元素と低濃度半導体層との間に合金化反応を起こさせて、低濃度半導体層に対して安定なショットキー接合が得られるので、十分な電流狭窄性と熱的,電気的信頼性を両立した半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度側の化合物層が白金族元素を含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記化合物層が白金族元素を含むことにより、低濃度半導体層に対して安定なショットキー接合が得られるので、十分な電流狭窄性と熱的,電気的な信頼性を両立した半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記電極が多層金属薄膜であって、その多層金属薄膜の最下層がTiからなることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記電極の最下層がTiからなることにより、Tiと低濃度半導体層との間に合金化反応を起こさせて、低濃度半導体層に対して安定なショットキー接合が得られるので、十分な電流狭窄性と熱的,電気的信頼性を両立した半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度側の化合物層が少なくともTiを含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記化合物層がTiを含むことにより、低濃度半導体層に対して安定なショットキー接合が得られるので、十分な電流狭窄性と熱的,電気的信頼性を両立した半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記リッジ構造の両脇に、前記リッジ構造の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体を有することが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記リッジ構造の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体が前記リッジ構造の両脇に形成され、そのストライプ状構造体が前記リッジ構造に対する保護構造体として作用するため、リッジ構造の破損を防止でき、歩留りを向上させることができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記リッジ構造の両脇にリッジ構造の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体を有する半導体レーザ素子において、前記ストライプ状構造体の最上部側が実装面であることが好ましい。ここで、実装面とは、半導体レーザ素子を実装するステムや放熱体に対して、半導体レーザチップが接触する面のことを指す。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記リッジ構造の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体の最上部(頂部)側が実装面となっているために、前記半導体レーザ素子のリッジ構造側に設けられた電極をステムや放熱体にダイボンドするいわゆるジャンクションダウン型の実装を行う際にも、リッジ構造が破損したりすることを防止する効果がある。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記低濃度半導体層が前記ストライプ状構造体の最上部に設けられていることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記ストライプ状構造体の頂部に形成された第2導電型のドーピング濃度が1×1017cm-3以下の低濃度半導体層のために、別途絶縁体膜等を設けることなく、一貫した結晶成長工程によって、前記電極と前記ストライプ状構造体との界面で電流を遮断できる構造を作成可能となる。したがって、低コストで製造でき、しかもリッジ構造の破損が防止される半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記ストライプ状構造体の最上部に設けられた前記低濃度半導体層がInGaPまたはInGaAsPからなることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記ストライプ状構造体上に設ける低濃度半導体層としてInGaPまたはInGaAsPを用いることにより、別途絶縁体膜等を設ける必要なく十分な電流狭窄を行うことが可能になる。さらに、InGaPまたはInGaAsPを用いることにより、リッジ構造の最上部に形成される高濃度半導体層との間で良好な選択エッチングを実現でき、製造工程が簡略化されるため、歩留りが向上した半導体レーザ素子を提供することができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記ストライプ状構造体が導電体からなってもよい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記ストライプ状構造体が導電体からなることにより、前記ジャンクションダウン型実装を行った場合、ストライプ状構造体を介してリッジ構造上に設けられた電極への通電が実現できるとともに、逆に活性層で発生した熱をストライプ状構造体を介して効率よく外部に放出できる効果がある。この放熱効果は、当然ながら半導体層よりも熱伝導率の良い導電体を用いてストライプ状構造体を形成したほうが大きくなる。さらに、電流遮断を行うための絶縁体膜やドーピング濃度が1×1017cm-3以下の低濃度半導体層をストライプ状構造体上に形成する必要がなくなるため、製造工程がより簡略化でき、歩留りがよく製造コストの安い半導体レーザ装置を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記導電体が金または金を含む合金からなることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記導電体が金または金を含む合金であることにより、低い電極抵抗と良好な放熱特性を両立し、かつ上述したジャンクションダウン型実装が容易なストライプ状構造体の構成を提供することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子は、前記ストライプ状構造体を覆うように絶縁体膜が形成され、前記絶縁体膜上に前記電極の一部が形成されていてもよい。
前記実施形態の半導体レーザ素子によれば、前記ストライプ状構造体と前記電極との間に絶縁体膜が挿入されているために、前記ストライプ状構造体を介して前記電極から活性層へ電流が流れることがない。したがって、余分なリーク電流を生じさせることがなく、低い閾値電流値を有する半導体レーザ素子を提供することができるようになる。
また、本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、第1導電型の基板上に前記活性層を形成する工程と、前記活性層上に、少なくともドーピング濃度が1×1017cm-3以下の低濃度半導体層とドーピング濃度が1×1018cm-3以上の高濃度半導体層とを含む第2導電型の半導体層群を形成する工程と、前記第2導電型の半導体層群上に電極を形成する工程と、前記電極形成後に熱処理を行うことによって、前記電極と前記第2導電型の半導体層群の界面に化合物層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、ドーピング濃度が1×1017cm-3以下の低濃度半導体層と電極とのショットキー接合において前記化合物層によって十分な電流狭窄が得られると共に、ドーピング濃度が1×1018cm-3以上の高濃度半導体層と電極とのオーミック接合において前記化合物層によってより低コンタクト抵抗が得られる。このようにショットキー接合性とオーミック接合性がより強化されるので、電流ブロック層の埋め込み再成長工程や電極コンタクト層の結晶再成長工程を行うことなしに、低閾値電流でかつ高出力動作が可能で、長期信頼性が得られると共に、製造工程の簡略化によりコストを低減できる。したがって、十分な電流狭窄性と優れた素子信頼性が得られ、かつ、低消費電力で高出力動作が可能な半導体レーザ素子を製造することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記第2導電型の半導体層群を形成する工程において、前記低濃度半導体層と前記活性層の間に、少なくとも1×1017cm-3以上のドーピング濃度を有する第2導電型の半導体層を形成することが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記低濃度半導体層と前記活性層の間に、少なくともドーピング濃度が1×1017cm-3以上の第2導電型の半導体層をさらに形成することによって、ショットキー接合特性を考慮した制限を受けることなく、要求される光学特性仕様に応じて自在に第2導電型の半導体層の層厚・組成等を変更することができるため、光学設計の自由度が増すと共に、素子抵抗の上昇を抑えることができ、一層の低消費電力化を図ることができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記電極を形成する工程が、前記第2導電型の半導体層群上に前記電極の最下層となる白金族元素または白金族元素化合物からなる層を形成する工程を含むと共に、前記化合物層が、前記電極の最下層の白金族元素または白金族元素化合物の材料と前記第2導電型の半導体層群の材料からなることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記電極の最下層が白金族元素または白金族元素化合物からなることにより、白金族元素と低濃度半導体層との間に合金化反応を起こさせて、低濃度半導体層に対して安定なショットキー接合が得られるので、十分な電流狭窄性と熱的,電気的な信頼性を両立した半導体レーザ素子を製造することができる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記電極の最下層が白金族元素または白金族元素化合物からなる場合に、前記化合物層を形成する工程における熱処理が350℃乃至450℃で行われることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記化合物層を形成する工程において、350℃乃至450℃で熱処理を行うことによって、信頼性に優れたショットキー接合と、十分に低抵抗なオーミック接合を得ることができる。したがって、十分な電流狭窄性を有し、素子信頼性に優れ、かつ低消費電力で高出力動作が可能な半導体レーザ素子を製造することができる。なお、350℃以下の熱処理では十分な合金化反応が起こらず、450℃以上ではオーミック接合のコンタクト抵抗が増大し、ショットキー接合性も悪化する。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記電極を形成する工程は、前記第2導電型の半導体層群上に前記電極の最下層となるTiからなる層を形成する工程を含むと共に、前記化合物層が少なくとも前記電極の最下層の構成元素のTiを含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記電極の最下層がTiからなることにより、Tiと低濃度半導体層との間に合金化反応を起こさせて、低濃度半導体層に対して安定なショットキー接合が得られるので、十分な電流狭窄性と熱的,電気的信頼性を両立した半導体レーザ素子を提供することが可能となる。したがって、電流ブロック層の埋め込み再成長工程や電極コンタクト層の結晶再成長工程を行うことなしに、十分な電流狭窄性を有し、素子信頼性に優れ、かつ低消費電力で高出力動作が可能な半導体レーザ素子を製造することが可能となる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記電極の最下層がTiからなる場合に、前記化合物層を形成する工程における熱処理が350℃乃至430℃で行われることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、信頼性に優れたショットキー接合と、低抵抗なオーミック接合を同時に得ることができる。したがって、十分な電流狭窄性を有し、素子信頼性に優れ、かつ低消費電力で高出力動作が可能な半導体レーザ素子を製造することが可能となる。なお、350℃以下では、合金化による化合物層の生成の反応が十分に進まず、430℃を超えるとオーミック接合において、徐々にコンタクト抵抗が悪化してくる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記第2導電型の半導体層群を形成する工程の後、前記第2導電型の半導体層群を加工して前記高濃度半導体層を最上部に有するリッジ構造を形成する工程と、前記リッジ構造の両脇に、前記リッジ構造の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体を形成する工程とを含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記リッジ構造の両脇にリッジ構造の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体を形成するために、その後の工程におけるリッジ構造部分の破損を防止できるようになる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記電極と前記第2導電型の半導体層群の界面に化合物層を形成する工程の後、前記電極のうちの前記ストライプ状構造体上の領域を支持体に接合させる工程を含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、リッジ構造を形成した側の電極をステムや放熱体などの支持体に接合させるいわゆるジャンクションダウン型の実装工程を行う際にこのリッジ構造部分の破損を防止できる効果が大きい。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記第2導電型の半導体層群を形成する工程の後、前記第2導電型の半導体層群上にドーピング濃度が1×1017cm-3以下の第2の低濃度半導体層を形成する工程と、前記第2の低濃度半導体層を部分的に除去して、前記高濃度半導体層を露出させる工程と、前記高濃度半導体層が露出した領域の一部を前記低濃度半導体層が露出するまで除去してリッジ構造を形成する工程と、前記リッジ構造を形成する工程の後、前記第2の低濃度半導体層を含む第2導電型の半導体層群上に電極を形成する工程とを含むことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、一連の結晶成長工程として、前記ドーピング濃度が1×1017cm-3以下の第2の低濃度半導体層を前記第2導電型の半導体層群上に形成することができるため、リッジ構造の形成後に、結晶再成長工程を行ったり、絶縁膜形成工程を行ったりする必要がなく、簡単な製造工程で電流狭窄が実現されたストライプ状構造体を製造することができるようになるという効果がある。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記第2の低濃度半導体層が、InGaPまたはInGaAsPからなると共に、前記第2の低濃度半導体層を部分的に除去して前記高濃度半導体層を露出させる工程において、塩酸または塩酸を含む混合溶液を用いたウエットエッチングを行うことが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記第2の低濃度半導体層としてInGaPまたはInGaAsPからなる半導体層を用いることによって、良好な電流狭窄を実現することができるようになる。さらに、前記第2の低濃度半導体層を除去する工程において、塩酸または塩酸を含む混合溶液を用いたウエットエッチングを行うことによって、前記リッジ構造の最上部となる高濃度半導体層に対して前記第2の低濃度半導体層を選択的に容易に除去することができ、製造工程の簡略化と製造ばらつきの低減を果たすことができる。そのため、製造コストが低減された半導体レーザ素子を製造することが可能となる。
このとき、塩酸を含む混合溶液としては、塩酸にリン酸(H3PO4)を混合させたものなどが好適に使用できる。
また、一実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、前記ストライプ状構造体を形成する工程において、前記電極のうちの少なくとも前記低濃度半導体層上の領域に、前記電極を給電メタルとして使用する電解メッキにより金または金を含む合金からなる前記ストライプ状構造体が形成されることが好ましい。
前記実施形態の半導体レーザ素子の製造方法によれば、前記リッジ構造側に設けられた電極を、電解メッキを行う際の給電メタルとして使用するために、別途給電メタルの形成・除去の必要がなく、製造工程が簡略になり、低コストで製造することができる。このとき、前記ストライプ状構造体が金または金を含む合金であることにより、低い電極抵抗と良好な放熱特性を両立した半導体レーザ素子を製造でき、かつ上述したジャンクションダウン型実装の歩留りを向上させることが可能となる。
また、本発明の光ディスク装置は、前記いずれか1つの半導体レーザ素子を用いていることを特徴とする。
前記光ディスク装置によれば、従来の光ディスク装置に比べて、より安価で高速書き込みが可能な信頼性に優れた光ディスク装置を提供することができる。
また、本発明の光伝送システムは、前記いずれか1つの半導体レーザ素子を用いていることを特徴とする。
前記光伝送システムによれば、従来よりも圧倒的に安価でかつ信頼性を兼ね備えた光伝送モジュールを提供することができ、光伝送システムの低価格化を図ることができる。
以上より明らかなように、本発明の半導体レーザ素子によれば、電流狭窄のための埋め込み層の結晶再成長工程や低コンタクト抵抗を得るためのコンタクト層の結晶再成長工程を別途行うことなく、従来の半導体レーザ素子と同等以上の信頼性と高出力特性を低消費電力にて実現できる半導体レーザ素子を提供することができる。
本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、電流ブロック層の埋め込み再成長工程や電極コンタクト層の結晶再成長工程を行うことなしに、十分な電流狭窄性を有し、素子信頼性に優れ、かつ低消費電力で高出力動作が可能な半導体レーザ素子を製造することが可能となる。
本発明の光ディスク装置によれば、本発明の半導体レーザ素子を用いることで、従来の光ディスク装置に比べて、より安価で高速書き込みが可能、かつ信頼性に優れた光ディスク装置を提供することができる。
また、本発明の光伝送システムによれば、本発明の半導体レーザ素子をその光伝送モジュールに用いることで、従来よりも圧倒的に安価でかつ信頼性を兼ね備えた光伝送モジュールを提供することができ、光伝送システムの低価格化を図ることができる。
以下、本発明の半導体レーザ素子およびその製造方法および光ディスク装置および光伝送システムを図示の実施の形態により詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態における半導体レーザ素子の構造を示したものである。なお、この第1実施形態では、第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である。
この半導体レーザ素子は、図1に示すように、n-GaAs基板101上に、n-GaAsバッファ層102、n-Al0.453Ga0.547As第1下クラッド層103、n-Al0.5Ga0.5As第2下クラッド層104、Al0.4278Ga0.5722As下ガイド層105、多重歪量子井戸活性層106、Al0.4278Ga0.5722As上ガイド層107、p-Al0.4885Ga0.5115As第1上クラッド層108、および低濃度半導体層の一例としてのp-Al0.4885Ga0.5115As第2上クラッド層109を順次積層している。この第2上クラッド層109上に、p-GaAsエッチングストップ層110、p-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層111、p-GaAsコンタクト層112および高濃度半導体層の一例としてのp+-GaAsコンタクト層113を設けている。前記p-GaAsエッチングストップ層110とp-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層111とp-GaAsコンタクト層112およびp+-GaAsコンタクト層113で順メサストライプ状のリッジ構造(メサストライプ部)130を形成している。そのリッジ構造130の頂部と側面部および第2上クラッド層109上部に、Pt/Ti/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜からなるp側電極114を有する。さらに、p側電極114と接する各々の半導体層の界面には、それぞれPtと各々の半導体層材料とが合金化した化合物層115が形成されている。また、基板101の裏面には、n側電極116として、AuGe/Ni/Auの多層金属薄膜が形成されている。
前記p-AlGaAs第1上クラッド層108,p-AlGaAs第2上クラッド層109,p-GaAsエッチングストップ層110,p-AlGaAs第3上クラッド層111,p-GaAsコンタクト層112およびp+-GaAsコンタクト層113で第2導電型の半導体層群を構成している。
次に図2〜図4を参照しながら、前記半導体レーザ素子の製造方法を説明する。
まず、図2に示すように、(100)面を有するn-GaAs基板101上に、n-GaAsバッファ層102(層厚:0.5μm、Siドープ:8×1017cm-3)、n-Al0.453Ga0.547As第1下クラッド層103(層厚:3.0μm、Siドープ:5×1017cm-3)、n-Al0.5Ga0.5As第2下クラッド層104(層厚:0.24μm、Siドープ:5×1017cm-3)、Al0.4278Ga0.5722As下ガイド層105(層厚0.1μm)、多重歪量子井戸活性層106、Al0.4278Ga0.5722As上ガイド層107(層厚:0.1μm)、p-Al0.4885Ga0.5115As第1上クラッド層108(層厚:0.2μm、Cドーピング:1×1018cm-3)、p-Al0.4885Ga0.5115As第2上クラッド層109(層厚:0.1μm、Cドーピング:1×1017cm-3)、p-GaAsエッチングストップ層110(層厚30Å、Cドーピング:2×1018cm-3)、p-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層111(層厚1.28μm、Cドーピング:2.7×1018cm-3)、p-GaAsコンタクト層112(層厚:0.2μm、Cドープ:3.3×1018cm-3)、p+-GaAsコンタクト層113(層厚:0.3μm、Cドープ:1×1021cm-3)を順次、MOCVD法にて結晶成長させる。前記多重歪量子井戸活性層106は、In0.2655Ga0.7345As0.5914P0.4086圧縮歪量子井戸層(歪0.47%、層厚50Å、2層)とIn0.126Ga0.874As0.4071P0.5929障壁層(歪−1.2%、基板側から層厚90Å・50Å・90Åの3層であり、基板に最も近いものがn側障壁層、最も遠いものがp側障壁層となる)を交互に配置している。
次に、図2において、リッジ構造(メサストライプ部)を形成すべきリッジ構造形成領域118aに、レジストマスク117(マスク幅3.5μm)を、ストライプ方向が<0-11>方向になるようにフォトリソグラフィ工程により作製する。
次に、前記レジストマスク117以外の部分をエッチング除去し、リッジ構造130を形成する。エッチングは硫酸と過酸化水素水の混合水溶液およびフッ酸を用いて二段階で行い、エッチングストップ層110直上まで行う。GaAsはフッ酸によるエッチングレートが非常に遅いということを利用し、エッチング面の平坦化およびメサストライプの幅制御を可能にしている。最後に、アンモニアと過酸化水素水の混合水溶液でp-GaAsエッチングストップ層110を除去しつつ、GaAsコンタクト層112および113のオーバーハング部分をとる。このときのエッチングの深さは1.78μmであり、順メサストライプの最下部の幅は約3.2μmである(図3)。エッチング後、前記レジストマスク117を除去する。
続いて電子ビーム蒸着法を用いて、Pt(250Å)/Ti(500Å)/Pt(500Å)/Au(4000Å)の順に金属薄膜を積層してp側電極114を形成する(図4)。
その後、基板101を裏面側から所望の厚み(ここでは、約100μm)にまで、ラッピング法により研削し、裏面側から抵抗加熱蒸着法を用いて、AuGe合金(Au:88%、Ge:12%)を1000Å、続いてNi(150Å)、Au(3000Å)を積層して、n側電極116を形成する。
その後、N2雰囲気中で、400℃1分間加熱し、p側電極114およびn側電極116の材料両方の合金化処理を行う。その結果、p側電極114と、p側電極114と接する各々の半導体層の界面には、Ptと各々の半導体層材料とが合金化した化合物層115が形成される。
図5は前記化合物層115が形成される領域を説明する拡大模式図である。化合物層115の厚みはp側電極と半導体層との界面の法線方向に深さ約500Åである。よって、p-Al0.4885Ga0.5115As第2上クラッド層109は、順メサストライプ状のリッジ構造130がその上に形成されていない領域は、リッジ構造130直下の領域に比べて約500Åその厚みが小さい。
次に、所望の共振器長(ここでは、800μm)のバーに基板101を分割してから端面コーティングを行い、さらにチップ(800μm×250μm)に分割することで、本発明の第1実施形態の半導体レーザ素子が完成する(図1)。
この第1実施形態の半導体レーザ素子は、p型のドーピング濃度が異なる複数の半導体層上にp側電極114が形成されている。Pt/Ti/Pt/Auからなるp側電極114は、350〜450℃の熱処理を行うことで、GaAs系半導体材料と合金化した化合物層115を形成する。この化合物層115は、p型半導体層のドーピング濃度に応じて、p型半導体層に対して良好なオーミック接合を形成したり、安定なショットキー接合を形成したりする。このことを利用し、この第1実施形態の半導体レーザ素子では、リッジ構造(メサストライプ部)130において、1×1018cm-3以上のドーピング濃度を有する高濃度半導体層の一例としてのp+-GaAsコンタクト層113とp側電極114との界面に、良好なオーミック接合を実現するPtとGaAsの高濃度側の化合物層を形成させ、かつ、メサストライプ外領域118bにおいて、1×1017cm-3以下のドーピング濃度を有する低濃度半導体層の一例としてのp-Al0.4885Ga0.5115As第2上クラッド層109とp側電極114との界面に、通電時にも安定なショットキー接合性を示すPtとAlGaAsの低濃度側の化合物層を形成させる。350℃以下の熱処理では、十分な合金化反応が起こらず、450℃以上ではオーミック接合のコンタクト抵抗が増大し、ショットキー接合性も悪化してしまう。この第1実施形態では、n側電極であるAuGe/Ni/Auの合金化処理の最適条件に合わせて400℃で1分間の熱処理工程を加えている。
上述のように、高濃度半導体層として1×1018cm-3以上のドーピング濃度を有する半導体層と電極との間に高濃度側の化合物層を形成することによって、実用上十分なコンタクト抵抗を得ることができる。この時、前記第1実施形態の半導体レーザ素子のように、高濃度半導体層のドーピング濃度をより高く設定して形成することによって、さらに低いコンタクト抵抗を有するオーミック接合が実現可能となる。
また、後述するように、低濃度半導体層はそのドーピング濃度を1×1017cm-3以下とし、半導体層と電極との界面に低濃度側の化合物層を形成することで、信頼性に優れた電流狭窄を実現できる。低濃度半導体層のドーピング濃度は、より低いほどその電流狭窄性を向上できるが、通常のMOCVD法やMBE(分子線エピタキシャル)法を用いた結晶成長を行う場合、バックグラウンド不純物の影響を受けてその下限は1×1016cm-3程度に制限される。また、ドーピング濃度を下げすぎると素子抵抗が上昇してしまうため、その点からも低濃度半導体層のドーピング濃度は下げすぎない方がよく、1×1016cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲が適当である。
さらに、第2上クラッド層109と多重歪量子井戸活性層106の間に、第2上クラッド層109よりもドーピング濃度の高い第1上クラッド層108を設けていることと、第1上クラッド層108と第2上クラッド層109の層厚を最適化することによって、必要以上の素子抵抗の上昇を抑えることに成功している。第2上クラッド層109の層厚は、化合物層115の厚みよりも大きくなるように設定する。本発明では、第2上クラッド層109の層厚0.1μmに対し、化合物層115の厚みは500Å(0.05μm)である。十分な電流狭窄を行うために、化合物層115の直下には、1×1017cm-3以下のドーピング濃度を有する半導体層が必要となるため、化合物層115はあまり厚くない方がよい。発明者らの検討によると化合物層115の厚みは最大でも0.2μmあればよい。それ以上になると1×1017cm-3以下のドーピング濃度を有する半導体層が厚くなったことによる素子抵抗増大の影響が大きくなってしまう。
これらの結果、この第1実施形態の半導体レーザ素子は、電極コンタクト層の結晶再成長工程を行うことなしに、良好な素子抵抗を実現し、かつ電流ブロック層の埋め込み再成長工程を追加することなしに、十分な電流狭窄を行うことを可能にした。
図6はこの第1実施形態の半導体レーザ素子の電流−光出力特性図を示している。この第1実施形態では光ディスク用途として、CD−R等に使用される780nm帯の半導体レーザ素子の例を挙げた。図6の例では、レーザ発振閾値電流Ith=27.3mA、スロープ効率SEが0.93W/Aであり、光出力Poが80mW時の動作電流Ifは112mAであった(周囲温度25℃のとき)。これらの値は、従来のショットキー接合による電流狭窄を利用した半導体レーザ素子では実現し得なかったものであり、従来の再成長を要するリッジ埋め込み型半導体レーザ素子の特性と遜色の無いものである。この第1実施形態の半導体レーザ素子を信頼性試験にかけたところ、70℃、260mWのパルスエージングに対して3000時間以上の安定した動作を確認できている。
また、光学特性は、縦方向放射角17.5度、横方向放射角9度で、出力300mW以上までキンクフリーを実現できた。この光学設計の自由度の大きさは、上クラッド層を複数に分割し、主にショットキー接合による電流狭窄を受け持つ第2上クラッド層109と、主に光学特性の調整に充てる第1上クラッド層108に分離したことによる。主にショットキー接合による電流狭窄を受け持つ第2上クラッド層109のドーピング濃度は1×1017cm-3以下とし、かつ厚みは化合物層115より厚い範囲でできるだけ薄い層厚とすることで、1×1017cm-3以下の層を追加したことによる素子抵抗の増大を必要最小限にとどめている。
このような構成とすることにより第1上クラッド層108は、ショットキー接合性を考慮した何らかの制限を受けることなく、要求される光学特性仕様に応じて自在に層厚・組成等を変更することができるようになった。
高出力特性が要求される光ディスク用途では、動作時の電流・電圧が大きくなり、信頼性については他用途より厳しい条件となるが、PtとAlGaAs層が合金化した化合物層115を界面に有するp側電極114と第2上クラッド層109とのショットキー接合は、熱的,電気的に非常に安定であり、長期信頼性を実現するために非常に有効であった。
この第1実施形態の半導体レーザ素子では、p型ドーパントとしてMOCVD法で一番ポピュラーなZnではなくCを用いている。Cを用いることによりショットキー接合を形成する第2上クラッド層109へのその上下の層からのドーパントの拡散を極めて低レベルに低減できるため、ドーパント拡散による電流狭窄性の低下がなく、量産時のばらつきの低減や、通電時の信頼性の向上に対して大きなメリットとなる。MOCVD法において同様に拡散レベルを低くできる材料としてMgがある。もちろん従来同様Znを用いても良い。なお、この第1実施形態では、MOCVD法を用いて結晶成長したため、ドーパントとしてCを適用したが、前述のようにMgや、MBE法を使用する場合、Beを用いることで全く同種の効果が得られる。
この第1実施形態の半導体レーザ素子では、その波長を780nmとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、DVD用に用いられる波長650nm帯のInGaAlP/GaAs系半導体レーザ素子や、波長405nm帯のInGaN/GaN系半導体レーザ素子にも適用しうる。また、材料系の異なる半導体層間の界面に、この第1実施形態中で明示していないような界面保護層の類の半導体層を設けていても良い。また、この第1実施形態では、リッジ構造形成に際しウエットエッチング法を用いたが、もちろん、ドライエッチング法を用いても良い。さらに、ドライエッチングとウエットエッチングを組み合わせてリッジ構造を形成しても良い。
図23は低濃度半導体層のドーピング濃度の違いによる電流狭窄性の差を示している。このときの半導体層はp型AlGaAs層であり、p側電極はTi/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜である。p側電極形成後の熱処理によって、Tiとp型AlGaAs層の界面には、化合物層が形成されている。図23において、ドーピング濃度が1×1017cm-3の半導体層のリーク電流が電圧−3V〜+3Vの範囲で通電回数によらずほぼゼロであるのに対して、ドーピング濃度が1×1018cm-3の半導体層のリーク電流は、通電回数が多くなるほど大きくなっている。このことから、p側電極と接合する半導体層のドーピング濃度が1×1017cm-3であれば、リーク電流のない良好なショットキー接合が得られる。
また、図24は、図23の半導体層のドーピング濃度が1×1017cm-3の条件において、半導体層上にInGaAsP保護層を設けたときと半導体層が剥き出しのときを比較した場合、いずれもリーク電流は十分に小さいが、保護層を設けたときの方がよりリーク電流を小さくできることがわかる。
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態の半導体レーザ素子の構造を示したものであり、前記第1実施形態の半導体レーザ素子の好適な改変例を示す断面模式図である。この第2実施形態においては、リッジ構造130の両脇にストライプ状構造体140が形成されている点が第1実施形態の半導体レーザ素子とは異なっており、リッジ構造130側に設けられたp側電極114のうちのストライプ状構造体140上の領域を実装面としてダイボンドするジャンクションダウン型の実装を行っているという特徴がある。
以下、特にこのリッジ構造130の両脇に形成されたストライプ状構造体140の構成および製造方法について説明し、第1実施形態と共通の構成要素については説明を省略する。
この第2実施形態の半導体レーザ素子は、第1実施形態と同じくn-GaAs基板101上に、n-GaAsバッファ層102、n-Al0.453Ga0.547As第1下クラッド層103、n-Al0.5Ga0.5As第2下クラッド層104、Al0.4278Ga0.5722As下ガイド層105、多重歪量子井戸活性層106、Al0.4278Ga0.5722As上ガイド層107、p-Al0.4885Ga0.5115As第1上クラッド層108、および低濃度半導体層の一例としてのp-Al0.4885Ga0.5115As第2上クラッド層109を順次積層している。この第2上クラッド層109上に、順メサストライプ状のリッジ構造(メサストライプ部)130をなすように、p-GaAsエッチングストップ層110、p-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層111、p-GaAsコンタクト層112および高濃度半導体層の一例としてのp+-GaAsコンタクト層113を設けている。一方、ストライプ状構造体140として、p-GaAsエッチングストップ層110、p-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層111、p-GaAsコンタクト層112およびp+-GaAsコンタクト層113に加えて、第2の低濃度半導体層の一例としてのp-InGaP電流遮断層119が設けられている。さらに、リッジ構造(メサストライプ部)130の頂部、側面部、第2上クラッド層109上部およびストライプ状構造体140の表面上に、Pt/Ti/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜からなるp側電極114を有する。さらに、p側電極114と接する各々の半導体層の界面には、それぞれPtと各々の半導体層材料とが合金化した化合物層115が形成されており、また、第1実施形態の半導体レーザ素子同様、基板101の裏面には、n側電極116としてAuGe/Ni/Auの多層金属薄膜が形成されている。
この第2実施形態の半導体レーザ素子は、次のようにして作製される。
まず、(100)面を有するn-GaAs基板101上に、n-GaAsバッファ層102、n-Al0.453Ga0.547As第1下クラッド層103、n-Al0.5Ga0.5As第2下クラッド層104、Al0.4278Ga0.5722As下ガイド層105、多重歪量子井戸活性層106、Al0.4278Ga0.5722As上ガイド層107、p-Al0.4885Ga0.5115As第1上クラッド層108、p-Al0.4885Ga0.5115As第2上クラッド層109(層厚:0.1μm、Cドーピング:1×1017cm-3)、p-GaAsエッチングストップ層110(層厚30Å、Cドーピング:2×1018cm-3)、p-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層111(層厚1.28μm、Cドーピング:2.7×1018cm-3)、p-GaAsコンタクト層112(層厚:0.2μm、Cドープ:3.3×1018cm-3)、p+-GaAsコンタクト層113(層厚:0.3μm、Cドープ:1×1021cm-3)、p-InGaP電流遮断層119(層厚0.2μm、Cドープ:1×1017cm-3)を順次、MOCVD法にて結晶成長させる。
次に、図8Aに示すように、ストライプ状構造体140(図7に示す)を形成すべきストライプ状構造体形成領域118c上に、エッチング用のレジストマスク120を作成し、塩酸とリン酸の1:3混合水溶液を用いてそれ以外の領域のp-InGaP電流遮断層119をエッチングにより除去する。このとき、リン酸を加えず塩酸単独でも同様に選択エッチングが可能である。
一旦レジストマスク120を剥離した後、図8Bに示すように、リッジ構造130を形成すべきリッジ構造体形成領域118a上およびストライプ状構造体140を形成すべきストライプ状構造体形成領域118c上にレジストマスク121を形成し、硫酸と過酸化水素水の混合水溶液、フッ酸およびアンモニアと過酸化水素水の混合水溶液を用いて不要な半導体層をエッチングにより除去する。
その後、図8Cに示すように、リッジ構造130の頂部、側面部、第2上クラッド層109(118b)およびストライプ状構造体140の表面を連なって被覆する態様で、Pt/Ti/Pt/Auの順に電子ビーム蒸着法を用いて多層金属薄膜からなるp側電極114を積層形成する。
次に、基板101を所望の厚みにした後、第1実施形態と同様にしてn側電極を形成する。その後、バー分割、端面コーティング、チップ分割を実施した後、この第2実施形態の半導体レーザ素子においては、p側電極114のうち、ストライプ状構造体140の頂部の面を支持体の一例としてのステム(図示せず)に対して実装するジャンクションダウン型の実装を行う。
この第2実施形態の半導体レーザ素子においては、上述のようにレーザ発振が起こる活性層106に近いリッジ側の電極114をステムにダイボンドするジャンクションダウン型実装を行っているため、活性層106で発生した熱を放熱させやすく、そのことによって素子信頼性を向上させることができる。また。この第2実施形態においては、リッジ構造130よりも電流遮断層119の分だけその最上部が高いストライプ状構造体140をリッジ構造130の両脇に設けた構成としたために、ジャンクションダウン型実装を行った際にもリッジ構造130に余分な応力がかからず、リッジ構造130は破損することがない。
また、一連の結晶成長工程として、コンタクト層113に引き続いて電流遮断層119を形成する構成としたため、別途電流遮断用の絶縁体膜等を形成する工程を行う場合に比べて、製造工程を簡略化することができる。前記電流遮断層119としては、その不純物ドーピング濃度が1×1017cm-3以下となるように形成することによって、その上にp側電極114を直接設けても、界面に形成されるショットキーバリアのために十分な電流遮断を実現することができる。
前記第2実施形態においては、電流遮断層としてInGaPを用いた例を示したが、その他にInGaAsPやAlGaAsを好適に使用することができる。これらを用いた場合もそのドーピング濃度は1×1017cm-3以下とすることによって、十分な電流遮断を実現することが可能となる。InGaAsPを用いる場合、この第2実施形態の製造方法と同様にして、塩酸とリン酸の混合水溶液、または塩酸単独でも良好な選択エッチングを実現することができる。また、AlGaAsを電流遮断層として使用する際には、フッ酸が選択エッチャントとして好適である。
前記第2実施形態においては、リッジ構造130の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体140上に、p側電極114が形成されているために、上述のジャンクションダウン型実装の際、ステムや放熱体の導電体に対して、前記ストライプ状構造体140上のp側電極114との間で電気的な導通を取る構成となり、レーザ発振に必要な電流注入を容易に行うことができる。
このように、前記ストライプ状構造体140を用いることによって、放熱性が良く素子信頼性を向上させることのできるジャンクション型実装を、リッジ構造130を破損させることなく実現でき、かつ安価な製造コストで製造可能な半導体レーザ装置とその製造方法を提供することが可能となる。
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の第3実施形態の半導体レーザ素子の構造を示したものである。なお、この第3実施形態では、第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である。
この半導体レーザ素子は、図9に示すように、n-GaAs基板201上に、n-GaAsバッファ層202、n-Al0.5Ga0.5As第1下クラッド層203、n-Al0.422Ga0.578As第2下クラッド層204、Al0.25Ga0.75As下ガイド層205、多重歪量子井戸活性層206、Al0.25Ga0.75As第1上ガイド層207、p-Al0.4Ga0.6As第2上ガイド層208、p-Al0.456Ga0.544As第1上クラッド層209、p-Al0.456Ga0.544As第2上クラッド層210、低濃度半導体層の一例としてのp-In0.1568Ga0.8432As0.4P0.6半導体層211を順次積層している。この半導体層211上に、p-Al0.5Ga0.5As第3上クラッド層212、p-GaAsコンタクト層213、p+-InxGa1-xAsグレーディッド層214(x=0→0.5)および高濃度半導体層の一例としてのp+-In0.5Ga0.5Asコンタクト層215を設けている。前記p-Al0.5Ga0.5As第3上クラッド層212とp-GaAsコンタクト層213とp+-InxGa1-xAsグレーディッド層214およびp+-In0.5Ga0.5Asコンタクト層215で順メサストライプ状のリッジ構造(メサストライプ部)230を形成している。そのリッジ構造230の頂部と側面部および半導体層211上部にTi/Pt/Auの順に積層して形成された多層金属薄膜からなるp側電極216を有する。さらにp側電極216と接する各々の半導体層の界面には、それぞれTiと各々の半導体材料とが合金化した化合物層217が形成されている。詳しくは、リッジ構造(メサストライプ部)230において、1×1018cm-3以上のドーピング濃度を有する高濃度半導体層の一例としてのp+-In0.5Ga0.5Asコンタクト層215とp側電極216との界面に、良好なオーミック接合を実現するTiとInGaAsの高濃度側の化合物層を形成し、かつ、メサストライプ外領域220bにおいて、1×1017cm-3以下のドーピング濃度を有する低濃度半導体層の一例としてのp-In0.1568Ga0.8432As0.4P0.6半導体層211とp側電極216との界面に、通電時にも安定なショットキー接合性を示すTiとInGaAsPの低濃度側の化合物層を形成している。また、基板201の裏面には、n側電極218として、AuGe/Ni/Auの多層金属薄膜が形成されている。
前記p-AlGaAs第2上ガイド層208,p-AlGaAs第1上クラッド層209,p-AlGaAs第2上クラッド層210,p-InGaAsP半導体層211,p-AlGaAs第3上クラッド層212,p-GaAsコンタクト層213,p+-InGaAsグレーディッド層214およびp+-InGaAsコンタクト層215で第2導電型の半導体層群を構成している。
次に、図10〜図12を参照しながら、前記半導体レーザ素子の製造方法を説明する。
まず、図10に示すように、(100)面をもつn-GaAs基板201上に、n-GaAsバッファ層202(膜厚:0.5μm、Siドープ:7.2×1017cm-3)、n-Al0.5Ga0.5As第1下クラッド層203(膜厚:2μm、Siドープ:5.4×1017cm-3)、n-Al0.422Ga0.578As第2下クラッド層204(膜厚:0.1μm、Siドープ:5.4×1017cm-3)、Al0.25Ga0.75As下ガイド層205(膜厚:30Å)、多重歪量子井戸活性層206、Al0.25Ga0.75As第1上ガイド層207(膜厚:30Å)、p-Al0.4Ga0.6As第2上ガイド層208(膜厚:0.1μm、Mgドープ:1.35×1018cm-3)、p-Al0.456Ga0.544As第1上クラッド層209(膜厚:0.4μm、Mgドープ:1.35×1018cm-3)、p-Al0.456Ga0.544As第2上クラッド層210(層厚:0.1μm、Mgドープ:1×1017cm-3)、p-In0.1568Ga0.8432As0.4P0.6半導体層211(層厚:150Å、Mgドープ:1×1017cm-3)、p-Al0.4885Ga0.5115As第3上クラッド層212(層厚1.28μm、Mgドープ:2.4×1018cm-3)、p-GaAsコンタクト層213(層厚:0.2μm、Mgドープ:3×1018cm-3)、p+-InxGa1-xAsグレーディッド層214(層厚:500Å、x=0→0.5、Mgドープ:1×1020cm-3)およびp+-In0.5Ga0.5Asコンタクト層215(層厚:0.1μm、Mgドープ:1×1020cm-3)を順次、MOCVD法にて結晶成長させる。前記多重歪量子井戸活性層206は、In0.1001Ga0.8999As圧縮歪量子井戸層(歪0.7%、層厚:46Å、2層)とIn0.238Ga0.762As0.5463P0.4537障壁層(歪0.1%、Eg≒1.60Ev、基板側から層厚:215Å、79Å、215Åの3層であり、基板201に最も近いものがn側障壁層、最も遠いものがp側障壁層となる)を交互に配置している。
次に、図10において、リッジ構造(メサストライプ部)230を形成すべきリッジ構造形成領域220aに、レジストマスク219(マスク幅4.5μm)を、ストライプ方向が<0-11>方向になるようにフォトリソグラフィ工程により作製する。
次に、図11に示すように、前記レジストマスク219以外の部分をエッチング除去し、リッジ構造(メサストライプ部)230を形成する。エッチングは硫酸と過酸化水素水の混合水溶液でp-InGaAsP半導体層211が露出するまで行い、フッ酸およびアンモニアと過酸化水素水の混合水溶液でGaAsコンタクト層213、InGaAsグレーディッド層214および215がp-AlGaAs第3上クラッド層212に対してオーバーハング形状にならないような順メサの形状に整える。エッチングの深さは1.63μm、順メサストライプ状のリッジ構造230の最下部の幅は約3.5μmである。エッチング後、前記レジストマスク219を除去する。
続いて、図12に示すように、電子ビーム蒸着法を用いて、Ti(1000Å)/Pt(500Å)/Au(4000Å)の順に金属薄膜を積層してp側電極216を形成する。
その後、基板201を裏面側から所望の厚み(ここでは、約100μm)にまで、ラッピング法により研削し、裏面側から抵抗加熱蒸着法を用いて、n側電極218(図9に示す)としてAuGe合金(Au:88%、Ge:12%)を1000Å、続いてNi(150Å)、Au(3000Å)を積層形成する。その後、N2雰囲気中で、390℃1分間加熱し、TiおよびAuGe/Ni材料の合金化処理を行う。
続いて、所望の共振器長(ここでは、500μm)のバーに基板201を分割した後、端面コーティングを行い、さらにチップ(500μm×200μm)に分割することで、本発明の第3実施形態の図9に示す半導体レーザ素子が完成する。
この第3実施形態は、波長890nmの赤外線通信用半導体レーザ素子である。第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、相違点について以下に述べる。
この第3実施形態では、p側電極216としてTi/Pt/Auの多層金属薄膜を用いており、電極形成後に熱処理を加えることで、Tiと半導体層との間に合金化反応を起こさせている。Tiを半導体層に蒸着形成した後400℃程度に加熱すると、製造プロセス中に半導体層の表面に形成された酸化物層が除去され、1×1017cm-3以下の低ドーピング半導体層に対しては、安定なショットキー接合を得ることができる。この第3実施形態のようなInGaAsP層やあるいは第1実施形態のAlGaAs層に対してTiを形成し適切に加熱した場合、特に熱的,電気的に安定なショットキー接合を得ることができる。これは電極と半導体層との間の界面にごく薄いTi合金化物層が形成されているためと考えられ、熱処理を実施しないとこのような安定なショットキー接合を得る効果は見られない。
また、1×1018cm-3以上にドーピングしたGaAsやInGaAs層に対しては、前述の酸化物層除去効果に加え、TiAs層が形成されることで低コンタクト抵抗を実現させることができる。
これら反応に適当な熱処理温度は350℃以上430℃以下である。350℃以下の場合、合金化による化合物層の生成の反応が十分に進まず、430℃を超えるとオーミック接合において、徐々にコンタクト抵抗が悪化してくる。430℃以上での抵抗悪化は、Ti1Ga1-x層の生成およびTiより上層の金属材料のミキシングによるものと考えられる。この第3実施形態でも裏面側のAuGe/Ni/Au電極材料の最適熱処理条件を鑑み390℃で1分の熱処理を加えた。
この第3実施形態のように、AlGaAs第2上クラッド層210上に、少なくともInとPを含む半導体層211を有し、その半導体層211をリッジ形成時のエッチング停止層とすることで、素子製造時の製造ばらつきが低減され、安定した素子特性を有する半導体レーザ素子を容易に得ることができるようになる。
特に、AlGaAs第2上クラッド層210を露出させず、表面をAlが含まれないInGaAsP層にすることで、大気にさらされたAlGaAsにみられる深い準位の形成が無く、また表面再結合も抑制されるため、素子動作時の信頼性が大幅に向上するという効果がある。この効果は、同じくAlを含まないInGaPでも得られるが、InGaPを用いた場合、GaAsに格子整合するIn混晶比が一意に決定されるため組成変更の余地が無く、またホール側のバリアとなるΔEvが大きいため、活性層へのホール注入効率が低下するというデメリットがある。InGaAsPを用いた場合、組成選択の自由度が大きく、かつInGaPよりもホール注入効率を向上させることができる。
この第3実施形態の半導体レーザ素子は、発振閾値電流Ith=10.0mA、スロープ効率SE=0.85W/A、光出力150mW時の動作電流は186.5mAである(周囲温度25℃のとき)。また、COD(端面破壊)レベルは、200mW以上であり、リッジ埋め込み構造半導体レーザと遜色の無い低閾値でかつ高出力の半導体レーザ素子が実現できる。さらに、この第3実施形態の半導体レーザ素子を用いた85℃、120mWの信頼性試験において、1000時間以上の安定動作を確認でき、赤外線通信用途として十分な信頼性を有することが分かった。
〔第4実施形態〕
図13は、本発明の第4実施形態の半導体レーザ素子の構造を示したものであり、前記第3実施形態の半導体レーザ素子の好適な改変例(その1)を示したものである。
図13に示す第4実施形態の半導体レーザ素子においては、上述した第3実施形態の半導体レーザ素子の構造に加えて、リッジ構造230の両脇のストライプ状構造体形成領域220cに、金メッキ法によって形成された導電体からなるストライプ状構造体240を備えていることを特徴とする。
この第4実施形態の半導体レーザ素子の製造方法は、第3実施形態の半導体レーザ素子のp側電極216を形成する工程までは同一である。その後、図14に示すように基板エッチング工程に先立ってストライプ状構造体形成領域220c以外をフォトレジスト222によりマスクし、前記p側電極216を給電メタルとして使用した金の電解メッキ法により、リッジ構造130の最上部よりも最上部が高いストライプ状構造体240を形成する。このとき、ストライプ状構造体240の最上部の高さを2.5μmとし、前記リッジ構造130の最上部の高さ(1.63μm)よりも高くなるようにしている。メッキが終了した後、前記フォトレジスト222は除去する。
その後、基板エッチング、n側電極蒸着・アロイを行い、所望のチップサイズに分割する。
この第4実施形態の以下の製造工程においては、通常のチップ状態の半導体レーザ素子に対するワイヤボンディングは行わず、代わってストライプ状構造体240の最上部(頂部)を支持体の一例としてのステムに対する実装面としたジャンクションダウン型の実装を行う。
この第4実施形態の半導体レーザ素子においても、上述のようにレーザ発振が起こる活性層206側に形成された導電体からなるストライプ状構造体240をステムにダイボンドするジャンクションダウン型実装を行っているため、活性層206で発生した熱を放熱させやすく、以って素子信頼性を向上させることができる。この時、前記ストライプ状構造体240は、リッジ構造230の最上部よりもその最上部が高くなるよう形成したために、ジャンクションダウン型実装を行った際にもリッジ構造230に余分な応力がかからず、リッジ構造230は破損することがない。
さらに、この第4実施形態の半導体レーザ素子においては、活性層206からステムあるいは放熱体の間の放熱経路に形成されるストライプ状構造体240が熱伝導に優れた導電体からなるため、特に放熱性がよく、信頼性を向上させる効果が大きい。
また、この第4実施形態の構成によれば、前述した第2実施形態における電流遮断層やあるいはそれに代わる絶縁体膜を形成する工程が不要となるという効果もある。
前記この第4実施形態の半導体レーザ素子においては、ストライプ状構造体240を金メッキを用いて形成する構成としたが、もちろんそれに限られるものではない。ステムや放熱体への電気的導通および放熱の観点からは導電体であればよい。
しかし、酸化しにくく、他の金属との接触抵抗を低くできるという点から、金または金を含んだ合金であることが好ましい。金または金を含んだ合金をストライプ状構造体の材料として用いる場合、その柔らかいという材料特性から実装時、変形により高さが減じやすく、リッジ構造に対する高さの差は0.5μm程度以上とった方がよい。
なお、前記第3実施形態の半導体レーザ素子は、ワイヤボンディングを行いやすいようリッジ構造をチップ中央からオフセットさせるようにチップ分割しているが、この第4実施形態においては、リッジ構造230の両脇にワイヤボンディングを行わないため、リッジ構造をオフセットさせて形成する必要はなく、逆にリッジ構造の両脇の2つのストライプ状構造体それぞれに対して実装時均等に力が加わるよう、チップの中央にリッジ構造が形成されているほうが好ましい。
〔第5実施形態〕
図15は、本発明の第5実施形態の半導体レーザ素子の構造を示したものであり、前記第3実施形態の半導体レーザ素子をジャンクションダウン型実装する場合に好適な改変例(その2)を示したものである。
この第5実施形態の半導体レーザ素子は、リッジ構造230と同一の半導体層(p-Al0.5Ga0.5As第3上クラッド層212、p-GaAsコンタクト層213、p+-InxGa1-xAsグレーディッド層214(x=0→0.5)およびp+-In0.5Ga0.5Asコンタクト層215)を有する。また、その半導体層の表面に窒化シリコン(SiNx)からなる絶縁体膜223を2000Åの厚みで形成し、さらにその絶縁体膜223上にp側電極216を設けている。これにより、ストライプ状構造体240をリッジ構造230の両脇のストライプ状構造体形成領域220cに形成した構成となっている。このストライプ状構造体240は、リッジ構造230と比較して絶縁体膜223が形成されている分、その最上部がリッジ構造230の最上部よりも高い。
ジャンクションダウン型実装の際には、前記ストライプ状構造体240の最上部(頂部)側を実装面とし、ワイヤボンディングを行う代わりに支持体の一例としてのサブマウントと呼ばれる放熱体にダイボンドする形態とした。このサブマウント上にジャンクションダウン型実装されたチップをステムにさらにマウントすることで第5実施形態の半導体レーザ素子が完成する。リッジ構造230の最上部よりその最上部が高いストライプ状構造体240をリッジ構造230の両脇に設けていることによって、リッジ構造230の破損を防止することができる。
前記第5実施形態では、ストライプ状構造体240を構成する半導体層とp側電極216との界面に絶縁体膜223が挿入されているために、p側電極216からストライプ状構造体240を介して活性層206側へ電流が流れることがない。したがって、余分なリーク電流を生じさせることがなく、よって低い閾値電流値を有し、リッジ構造230が破損することなくジャンクションダウン型実装を行うことのできる半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
また、前記第5実施形態では、絶縁体膜223として窒化シリコン膜を使用したが、これに代わるものとして酸化シリコン膜も好適に使用できる。有機系の絶縁体膜材料に対して、これらの絶縁体膜は比較的簡単に形成でき、膜形成後の加工も容易で、かつ信頼性に優れるという利点がある。
また、ストライプ状構造体240上に形成する絶縁体膜223の厚みは、リッジ構造230との高さの差と、十分な絶縁性とを確保するため、少なくとも1000Å以上形成することが好ましい。しかし、膜形成時間や厚膜化したときの応力発生の兼ね合いもあり、その上限は2500Å以下とした方がよい。この第5実施形態では、厚さは2000Åとしたが、電流リークに対する絶縁性やジャンクションダウン型実装時のリッジ保護性は十分であった。
なお、前記第3実施形態の半導体レーザ素子は、ワイヤボンディングを行いやすいようリッジ構造をチップ中央からオフセットさせるようにチップ分割しているが、この第5実施形態においては、リッジ構造230の両脇にワイヤボンディングを行わないため、リッジ構造をオフセットさせて形成する必要はなく、逆にリッジ構造の両脇の2つのストライプ状構造体それぞれに対して実装時均等に力が加わるよう、チップの中央にリッジ構造が形成されているほうが好ましい。
また、これまで上述してきたそれぞれの実施形態の構成要素は相互に入れ替えられることは当然である。
〔第6実施形態〕
図16は、本発明にかかる第6実施形態の光ディスク装置300の構造の一例を示したものである。これは光ディスク301にデータを書き込んだり、書き込まれたデータを再生したりするためのものであり、そのときに用いられる発光素子として、先に説明した本発明の第1または第2実施形態の半導体レーザ素子302を備えている。
この光ディスク装置についてさらに詳しく説明する。書き込みの際は、半導体レーザ素子302から出射された信号光がコリメートレンズ303により平行光とされ、ビームスプリッタ304を透過し、λ/4偏光板305で偏光状態が調節された後、対物レンズ306で集光されて光ディスク301に照射される。
読み出し時には、データ信号がのっていないレーザ光が書き込み時と同じ経路をたどって光ディスク301に照射される。このレーザ光がデータの記録された光ディスク301の表面で反射され、レーザ光照射用対物レンズ306、λ/4偏光板305を経た後、ビームスプリッタ304で反射されて90°角度を変えた後、受光素子用対物レンズ307で集光され、信号検出用受光素子308に入射する。信号検出用受光素子内で入射したレーザ光の強弱によって記録されたデータ信号が電気信号に変換され、信号光再生回路309において元の信号に再生される。
この第6実施形態の光ディスク装置は、従来よりも低いコストで作成可能でかつ高い光出力で動作する半導体レーザ素子を用いているため、ディスクの回転数を従来よりさらに高速化してもデータの読み書きが可能となった。従って特に書き込み時に問題となっていたディスクへのアクセス時間が従来の半導体レーザ素子を用いた装置よりも格段に短くなり、より快適に操作できる光ディスク装置を安価に提供することができる。
なお、ここでは本発明の半導体レーザ素子を記録再生型の光ディスク装置に適用した例について説明したが、同じ波長780nm帯を用いる光ディスク記録装置、光ディスク再生装置や、他の波長帯(例えば650nm帯)の光ディスク装置にも適用可能であることはいうまでもない。
〔第7実施形態〕
図17は、本発明の第7実施形態における光伝送システムの光伝送モジュール400を示す断面図である。また、図18は光源の部分を示す斜視図である。この第7実施形態では、光源として第3実施形態で説明した発振波長890nmのInGaAs系半導体レーザ素子(レーザチップ401)を用い、また受光素子402としてシリコン(Si)のpinフォトダイオードを用いている。この光伝送システムでは、信号を送受信する相手側も、前記と同じ光伝送モジュールを備えていることを前提としている。
図17において、回路基板406上には、半導体レーザ駆動用の正負両電極のパターンが形成され、図示のとおり、レーザチップを搭載する部分には深さ300μmの凹部406aが設けられている。この凹部406aに、レーザチップ401を搭載したレーザマウント(マウント材)410をはんだで固定する。レーザマウント410の正電極412の平坦部413は、回路基板406上のレーザ駆動用正電極部(図示せず)とワイヤー407aによって電気的に接続される。凹部406aはレーザ光の放射を妨げない程度の深さとなっており、また、面の粗さが放射角に影響を与えないようにされている。
受光素子402は、やはり回路基板406に実装され、ワイヤー407bにより電気信号が取り出される。この他に、回路基板406上にレーザ駆動用/受信信号処理用のIC(集積回路)408が実装されている。
次いで、はんだで凹部406aに固定されたレーザマウント410を搭載した部分に液状のシリコン樹脂409を適量滴下する。シリコン樹脂409中には、光を拡散させるフィラーが混入されている。シリコン樹脂409は表面張力のために凹部内に留まり、レーザマウント410を覆い凹部406aに固定する。この第7実施形態では、回路基板406上に凹部を設け、レーザマウント410を実装したが、上述のように、シリコン樹脂409は表面張力のためにレーザチップ表面およびその近傍に留まるので、凹部は必ずしも設ける必要はない。
この後、80℃で約5分間加熱して、ゼリー状になるまで硬化させる。次いで、透明なエポキシ樹脂モールド403により被覆する。レーザチップの上面には、放射角制御のためのレンズ部404が、また、受光素子の上面には信号光を集光するためのレンズ部405がそれぞれ一体的にモールドレンズとして形成される。
次に、レーザマウント410について、図18を用いて説明する。図18に示すように、L字型のヒートシンク411にレーザチップ401がIn糊剤を用いてダイボンドされている。レーザチップ401は、第3実施形態で説明したInGaAs系の半導体レーザ素子であり、そのレーザチップ下面401bには高反射膜がコーティングされており、一方、レーザチップ上面401aには低反射膜がコーティングされている。これらの反射膜は、レーザチップ端面の保護も兼ねている。
ヒートシンク411の基部411bには正電極412が、ヒートシンク411と導通しないように絶縁物により固着されている。この正電極412とレーザチップ401の表面のショットキー接合部上に設けられた電極領域401cとは、金ワイヤー407cによって接続されている。上述のように、このレーザマウント410を、図17の回路基板406の負電極(図示せず)にはんだ固定して、正電極412の上部の平坦部413と回路基板406の正電極部(図示せず)とをワイヤー407cで接続する。このような配線の形成により、レーザビーム414を発振により得ることができる光伝送モジュール400が完成する。
なお、光伝送モジュール400の光源(レーザチップ)としては、上述した第3実施形態の半導体レーザ素子だけでなく、第4または第5実施形態の半導体レーザ素子を使用することもできる。その場合、レーザチップ401はヒートシンク411に対してジャンクションダウン型実装されるので、回路基板406上の正負両電極のパターンを変更し、上記実施形態の場合とは正電極と負電極が逆につながるような構成とすればよい。
第4または第5実施形態の半導体レーザ素子を使用することで、レーザ発振時の発熱がより効果的に放熱できるようになるため、さらに信頼性に優れた光伝送モジュールを実現することができる。
上述したように、この光伝送システムでは、相手側が同じ光伝送モジュールをもう1台保持して、光信号の送受信を行うことを前提としている。光源から情報を持って発した光信号は、相手の光伝送モジュールの受光素子によって受信され、また、相手から発信された光信号は前記受光素子によって受信する。
この光伝送モジュール400を用いた光伝送システムの例を図25に示す。この光伝送システムは、前述の光伝送モジュール400をパーソナルコンピュータ415と部屋の天井に設置した基地局416の両方に備え、それぞれ端末とサーバーとして使用し、光(赤外線)によるデータ通信を実現するものである。
この第7実施形態の光伝送モジュール400は、前述の低コストで製造できる1回成長タイプの半導体レーザ素子を使用しているため、そのモジュール単価を従来に比べて大幅に低く抑えることができる。
なお、本発明の半導体レーザ素子、光ディスク装置および光伝送システムは、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、たとえば井戸層・障壁層の層厚や層数など、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第1または第2実施形態ではp側電極としてPt/Ti/Pt/Au、第3〜第5実施形態ではTi/Pt/Auをそれぞれ用いているが、これらは入れ替わっていても構わない。
前記第1〜第5実施形態では、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよい。