JP2005166129A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 磁性層及びバック層の改良により、エラーレートが更に改良された磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体上に実質的に非磁性である下層と強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体において、磁性層表面における5nm以上の突起が300個/20000μm以下であり、バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800〜1500個/6400μm、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【選択図】 なし

Description

本発明は磁気記録媒体に関するものであり、特にエラーレートが改善された磁気記録媒体に関するものである。
最近のVTRやコンピュータードライブでは、高容量化と合わせて、磁気ヘッドに対する磁気記録媒体の相対速度を高速化させて、いわゆる高転送レート化が進展している。高容量化のためには、記録密度の向上が必要で、電磁変換特性の優れた磁気記録媒体が要請されている。また高容量化、高転送レート化のために、テープ送り速度アップや、回転シリンダーを使用したドライブでは回転数やヘッド数を増やして対応しているため、磁気記録媒体の耐久性アップも合わせて進める必要がある。
記録密度の向上のため、微粒子、高抗磁力タイプの強磁性金属微粉末や六方晶系フェライト微粉末が用いられてきている。
さらに、これらの微粒子、高抗磁力タイプの強磁性粉末を用いた磁気テープでは、高記録密度化のため、磁性層を薄層化して磁性層の厚み損失による再生出力の低下を改良することが行われている。例えば、特許文献1には支持体上に無機質粉末を含み、結合剤に分散してなる下層非磁性層と該非磁性層が湿潤状態にある内に強磁性粉末を結合剤に分散してなる1.0μm以下の厚みの上層磁性層を設けた磁気記録媒体が開示されている。これらの発明をもとにDLTIV、DDS3やその後登場したDDS4、LTO、SDLT、DTF2等のコンピューター用テープとして、DVCproのような放送用テープとして、上層薄層磁性層、下層非磁性層の構成の磁気テープが使用されている。
前記高容量化、高密度化するためには、更なる磁性層の平滑化や磁気特性の最適化、微粒子磁性体の実用化等が必要であり、あわせて優れた耐久性を付与させることが重要である。
発明者らは特願2003−167897において出力向上に対し磁性層表面の突起を規定する提案をしているが、出力向上によりエラーレートの改善寄与はあるものの、一層の高密度化を目指すと、更なる改良が必要なことが分かってきた。
特開平5ー182178号公報
本発明は磁性層及びバック層の改良により、エラーレートが更に改良された磁気記録媒体を提供することを解決すべき課題とした。
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
1)支持体上に強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体において、磁性層表面における5nm以上の突起が300個/20000μm以下であり、バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800〜1500個/6400μm、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
2)該強磁性粉末は平均長軸長30nm〜150nmで長軸長変動係数が25%以下である強磁性金属粉末であることを特徴とする上記1)に記載の磁気記録媒体。
3)該強磁性金属粉末はFeを主成分とし、Feに対してCoが、10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれ、抗磁力が160〜280kA/m(2000〜3500Oe)で、飽和磁化σsが80〜150A・m/kgであることを特徴とする上記1)または2)に記載の磁気記録媒体。
4)該強磁性粉末は平均板径が5nm〜40nmで板径変動係数が25%以下であるの強磁性六方晶系フェライト粉末であることを特徴とする上記1)に記載の磁気記録媒体。
5)該強磁性六方晶系フェライト粉末の抗磁力は160〜240kA/m(2000〜3000Oe)で、飽和磁化σsが40〜80A・m/kgである六方晶バリウムフェライトであることを特徴とする上記1)または4)に記載の磁気記録媒体。
6)前記磁性層の厚味が40nm〜150nmであることを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
7)支持体と磁性層の間に実質的に非磁性である下層を設けたことを特徴とする上記1)〜6)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
8)該磁気記録媒体がMR再生ヘッド搭載の記録再生システムに適用されるデジタル信号記録用磁気テ−プであることを特徴とする上記1)〜7)のいずれかに記載の磁気記録
本発明は支持体上に実質的に非磁性である下層と強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体において、磁性層表面における5nm以上の突起が300個/20000μm以下であり、バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800〜1500個/6400μm、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下とすることにより、SNRが優れ、エラーレートが良好で、摩擦係数の低い磁気記録媒体を得ることができる。
本発明の磁気記録媒体では、磁性層の中心面平均表面粗さ(Ra)は3.0nm以下が好ましい。しかしこの表面粗さの領域では中心面平均表面粗さの指標で表面粗さをコントロールしても必ずしも出力に反映しておらず、5nm以上の表面突起を300個/20000μm以下にコントロールすることによりSNRの向上が図れ、エラーレートを向上できることが分かった。
これに加えてバック層の突起密度をコントロールすることにより、更にエラーレートを向上できることが分かった。バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800〜1500個/6400μm、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下の範囲にコントロールすることによりエラーレートを向上させることができる。
本発明では、磁性層表面の5nm以上の表面突起数が300個/20000μm以下であることが好ましく、更に好ましくは270〜50個/20000μmが好ましい。5nm以上の表面突起数をこの範囲に制御すると摩擦係数を低く抑えられ、走行耐久性を確保することができる。
磁性層表面の突起数はZYGO社製New View 5010(三次元表面構造解析顕微鏡)を用いて、対物レンズ20倍、ズーム倍率2.0倍、High Filter830nm、Low Filter3000nmの条件にて、30μm以下の波長成分からなる表面プロファイルにおいて、突起の体積とくぼみの体積が等しくなる面を基準面(=0)とし、基準面から5nm離れた基準面と平行な面でスライスし、突起個数をカウントすることにより測定することができる。
バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数は800〜1500個/6400μmが好ましく、更に好ましくは900〜1450個/6400μmであり、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下が好ましく、更に好ましくは550個/6400μm以下である。
バック層表面における上記2種の突起の個数を上記範囲とすることにより、バック面の摩擦係数が低く抑えられ走行性が安定すると共に巻かれた状態での磁性層表面への粗さの転写の度合いを抑制し、SNRやエラーレートを改善することができる。
バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800個以下になると、突起数が少なくバック面の摩擦係数が高くなり、磁気テープの走行性が不安定になる。一方1500個以上になると、巻かれた状態での磁性層表面への粗さの転写の度合いが大きくなり、SNRやエラーレートが劣化する。75nm以上の突起が600個以上ある場合も、同様に巻かれた状態での磁性層表面への転写によりエラーレートが劣化する。基本的にはこの突起は少ないほど良い。
バック層表面の突起数は、AFM(米DI社製NanoscopeIII)にて、バック層表面における80μm角の領域を512×512ピクセルで測定し、得られた粗さプロファイルにおいて、突起の体積とくぼみの体積が等しくなる面を基準面(=0)とし、50nmおよび75nmの高さの基準面と平行な面でスライスし、50nm以上75nm未満および、75nm以上の突起個数をカウントすることにより求めることができる。
本発明の磁性層表面突起は、支持体起因の突起と塗布層に関連する突起とによって分類される。通常支持体表面には、微粒子の無機ないし有機フィラーを含有させて微小な突起を形成している。この微小な突起が非磁性下層や磁性層によりマスキングされつつも磁性層表面に反映して微小な表面突起が形成される。フィラーの粒子サイズを変えることにより、磁性層表面の突起数を変化させることができる。また支持体表面の突起の影響は、塗布層の厚味を厚くすることによって、ベース表面突起の影響が小さくなり磁性層表面の突起を減少させることができる。
塗布層の突起は、上層に含有される磁性体、研磨剤、カーボンブラック、下層に含有される非磁性粉体、研磨剤、カーボンブラック等の無機粉体の粒子サイズ、それらを分散するバインダーや潤滑剤の種類、上層液、下層液を調製するときの混練条件、分散条件、塗布層厚味、塗布乾燥条件、カレンダー条件、磁性層表面の表面処理条件等によってコントロールすることができる。
上記無機粉体の粒子サイズが小さくなると、分散しにくくなり突起を形成しやすい。バインダーとの組み合わせでも分散状態が変化し、突起数が変化する。また混練条件は添加する溶剤量を少なくして強練りすると、混練物の分散が難しく突起数が増える方向であり、溶剤量を増して弱練りにすると突起数が減る方向である。
分散条件としては、分散時間、サンドミル分散に用いる分散メディアの硬度、比重等がある。分散時間が短いと、突起数が増加する。一般には分散時間を長くすることにより突起数を減少させることができるが、場合によっては、分散機や分散メディアの摩耗によるコンタミで粒子の凝集が起こり突起数が増加することもある。
カレンダー条件は、一般には強くする(カレンダ圧力、温度、ロール硬度を高める、スピードを下げる)と突起を少なくすることができる。
磁性層表面処理の方法としては、研磨テープやダイヤモンドホイールを磁性層表面に押しつけて研磨する方法で、研磨テープやダイヤモンドホイールの番手や押しつけ圧をコントロールすることにより、本発明の表面突起をコントロールすることができる。
以上のように磁性層表面の突起をコントロールには、さまざまな方法があり、磁気記録媒体が必要とする性能を得るためには、これらの手法を組み合わせて最適化する必要がある。
本発明のバック層の突起を形成する手段としては、カーボンブラック、研磨剤等無機粉体の粒子サイズ、それらを分散するバインダーや潤滑剤の種類、バック層液を調製するときの混練条件、分散条件、塗布層厚味、塗布乾燥条件、カレンダー条件、バック層表面の表面処理条件等によってコントロールすることができる。
バック層に含有されるカーボンブラックは、平均粒子径が17〜50nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子径が75〜300nmの粗粒子状カーボンブラックであることが好ましい。微粒子カーボン単独でも構わない。特に微粒子状のカーボンブラックは、バック層の表面電気抵抗を低減に効果があり、バック層表面の微小な突起の形成に寄与する。粗粒子状カーボンブラックは、バック層表面の比較的大きい微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。しかし粗粒子状カーボンブラックは、過多に添加すると本発明の75nm以上の突起数増加につながり、また粗粒子状カーボンブラックは、テープを走行させる条件によっては、バック層からの脱落が生じ易くなり、エラーレート劣化につながる欠点を有している。
本発明のバック層表面突起は、磁性層表面の突起と同様、支持体起因の突起と塗布層に関連する突起とによって分類される。通常支持体には微粒子の無機ないし有機フィラーを含有させて、その表面に微小な突起を形成している。この微小な突起がバック層により緩和されつつもバック層表面に反映して微小な表面突起が形成される。支持体に含有させるフィラーの粒子サイズや添加量を変えることにより、バック層表面の突起数を変化させることができる。また支持体表面の突起の影響は、バック層の厚味を厚くすることによって、ベース表面突起の影響が小さくなりバック層表面の突起は減少させることができる。
本発明のバック層に含有させる無機粉体の粒子径、添加量によってもバック層の表面突起を形成することができる。バインダーの種類、量によっても分散状態が変化し、突起数が変化する。また混練条件は添加する溶剤量を少なくして強練りすると、混練物の分散が難しく突起数が増える方向であり、溶剤量を増して弱練りにしたり、混練しないで直接分散すると突起数が減る方向である。
分散条件としては、分散時間、サンドミル分散に用いる分散メディアの硬度、比重等がある。分散時間が短いと、突起数が増加する。一般には分散時間が長くすることにより突起数を減少させることができる。
カレンダー条件は、一般には強くする(カレンダ圧力、温度、ロール硬度を高める、スピードを下げる)と突起を少なくすることができる。
バック層表面処理の方法としては、研磨テープやダイヤモンドホイールをバック層表面に押しつけて研磨する方法で、研磨テープやダイヤモンドホイールの番手や押しつけ圧をコントロールすることによっても、表面突起をコントロールすることができる。
以上のようにバック層表面の突起をコントロールには、さまざまな方法があり、磁気記録媒体が必要とする性能を得るためには、これらの手法を組み合わせて最適化する必要がある。
[磁性層]
本発明に使用される強磁性金属粉末としては、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば、特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co,Al,Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれるのが好ましい。
これらの強磁性金属粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。
本発明は、強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。 このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれかを施したものでも用いることができる。
強磁性金属粉末の結晶子サイズは、80〜180Åが好ましく、100〜180Åが更に好ましく、特に120〜160Åが好ましい。結晶子サイズは、X線回折装置(理学電機製RINT2000シリーズ)を使用し、線源CuKα1、管電圧50kV、管電流300mAの条件で回折ピークの半値幅からScherrer法により求めた平均値を用いた。
強磁性金属粉末の平均長軸長は、好ましくは30〜150nmであり、更に好ましくは40〜100nmであり、平均長軸長を上記範囲とすると、熱揺らぎが抑制されると共に磁化が安定し、しかも低ノイズであり高密度磁気記録に好適である。また長軸長の変動係数は25%以下、好ましくは23%以下であり、このように変動係数を制御することにより、Hc分布が小さくなり高記録密度特性が改善する。
平均長軸長は、高分解能透過型電子顕微鏡で粒子写真を撮影し、撮影した粒子を無作為で500個抽出し、それぞれの輪郭を画像解析装置でなぞり長軸長を測定し、平均値を算出することで求められる。また変動係数は長軸長の標準偏差を平均値で除し100倍することで求められる。
本発明で用いる強磁性金属粉末をBET法による比表面積で表せば40〜80m/gが好ましく、45〜70m/gが更に好ましい。これにより、良好な表面性と低いノイズの両立が可能となる。本発明の磁性層の強磁性金属粉末の結晶子サイズは80〜180Å(オングストローム)が好ましく、更には100〜180Å、特に好ましくは120〜160Åである。
また、形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば、針状、粒状、米粒状あるいは板状いずれでもかまわないが、特に針状の強磁性金属粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、平均針状比は5〜15が好ましく、さらには6〜12以下が好ましい。
強磁性金属粉末のσsは80〜150A・m/kg、好ましくは90〜120A・m/Kgである。強磁性金属粉末の抗磁力は160〜280kA/m(2000〜3500Oe)が好ましく、更に好ましくは184〜240kA/m(2300Oe〜3000Oe)である。
強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、4〜12であるが、好ましくは7〜10である。強磁性金属粉末は、必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は、強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり、表面処理を施すと、脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m以下になり、好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与える事は少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は、空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。
また本発明では強磁性六方晶系フェライト粉末を用いることもできる。特にトラック密度を上げるため磁気抵抗ヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、本発明に使用される強磁性六方晶系フェライト粉末の平均板径は、5〜40nmとすることが好ましく、平均板径が5nm未満では熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。平均板径の更に好ましい範囲は、10nm〜35nmであり、平均板径のより好ましい範囲は、15nm〜30nmである。
平均板状比は、1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。平均板状比を上記範囲とすると、磁性層中の充填性が確保されると共に十分な配向性が得られ、かつ粒子間のスタッキングによるノイズが抑えられる。この粉体サイズ範囲のSBETは30〜200m/gを示す。SBETは概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は狭いほど好ましい。分布は正規分布ではない場合が多いが、板径の変動係数は25%以下が好ましく、更に好ましくは10〜25%である。粉体サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
強磁性六方晶系フェライト粉末で測定される抗磁力Hcは、500〜5000Oe(40kA/m〜400kA/m)程度まで作成できる。Hcは、高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明でHcは、好ましくは2000〜3000Oe(160〜240kA/m)程度であるが、より好ましくは2200〜2800Oe(176〜224kA/m)である。ヘッドの飽和磁化が1.4Tを越える場合は、2000Oe(160kA/m)以上にすることが好ましい。Hcは、粉体サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは、40A・m/kg〜80A・m/kgとすることが好ましい。σsは、高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択こと等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
強磁性六方晶系フェライト粉末を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は、無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の化合物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
強磁性六方晶系フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後、溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱した後、洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る水熱反応法。バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、乾燥し、1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る共沈法、等があり、本発明では強磁性六方晶バリウムフェライト粉末が特に好ましい。
本発明の上層に使用されるカ−ボンブラックの例はゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμ〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10質量%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製、#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900、#1000#30、#40、#10B、コロンビアンカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15などがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカ−ボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。
カ−ボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30質量%で用いることが好ましい。
カ−ボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカ−ボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカ−ボンブラックは磁性層、下層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。本発明の磁性層で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編を参考にすることができる。
[非磁性層]
次に下層に関する詳細な内容について説明する。本発明の下層に用いられる無機粉末は、非磁性粉末であり、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性粉末の平均粉体サイズは0.005〜0.5μmが好ましいが、必要に応じて粉体サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の平均粉体サイズは0.01μm〜0.2μmである。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下が好ましく、針状金属酸化物である場合は、平均長軸長は0.2μm以下、好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下のもの適当である。非磁性粉末の針状比は2〜20、好ましくは3〜10である。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性粉末のpHは2〜11であるが、pHは5.5〜10の間が特に好ましい。これらは官能基に対する吸着性が高いので、分散がよく、また塗膜の機械的な強度も高い。
非磁性粉末の比表面積は1〜100m/g、好ましくは5〜80m/g、更に好ましくは10〜70m/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。モース硬度は4以上、10以下のものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m、好ましくは2〜15μmol/m、さらに好ましくは3〜8μmol/mである。pHは3〜6の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面は表面処理されてAl、SiO、TiO、ZrO、SnO、Sb、ZnO、Yが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl、SiO、TiO、ZrOであるが、更に好ましいのはAl、SiO、ZrOである。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
下層にカーボンブラックを混合させることによって、表面電気抵抗Rsを下げ、しかも所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。カーボンブラックの平均粒径は5nm〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。具体的には、上述の上層磁性層に用いることができるカーボンブラックと同じものを用いることができる。
[バック層]
本発明で用いることができる微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。かっこ内は、平均粒子径を示す。RAVEN2000(18nm)、RAVEN1500(17nm)、RAVEN1000(24nm)、RAVEN860ULTRA(39nm)(以上、コロンビアンカーボン社製)、BP800(17nm)、REGAL330(25nm)、REGAL250(34nm)、REGAL99(38nm)(以上、キャボット社製)、#950(16nm)、#40(24nm)、#95(40nm)(以上、三菱化学(株)製)。
また粗粒子カーボンブラックの具体的な商品の例としては、旭#50(80nm)、旭#51(85nm)(以上、旭カーボン社製)、シーストSPSRF−LS(95nm)、シーストTA FT級(122nm)(以上、東海カーボン社製)、RAVEN450(75nm)、RAVEN410(101nm)(以上、コロンビアンカーボン社製)、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製)、を挙げることができる。75〜300nmのカーボンブラックは,ゴム用カーボンブラックや,カラー用カーボンブラックより選択することができる。
バック層において、平均粒子径が17〜50nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子径が75〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、97:3〜85:15の範囲である。
バック層中のカーボンブラックの含有量は、微粒子状カーボンブラックと粗粒子状カーボンブラックの合計量が、固形分総量の通常30〜70質量%の範囲であり、好ましくは40〜60質量%の範囲である。
バック層に添加することができる無機質粉末としては、平均粉体サイズが80〜250nmでモース硬度が5〜9の無機質粉末が挙げられる。無機質粉末としては、後述する下層に使用される非磁性粉末や研磨剤などと同様のものが使用されるが、中でもα−酸化鉄、α−アルミナ等が好ましい。
無機質粉末のバック層への添加量は、後述する結合剤100質量部に対して、好ましくは3〜40質量部の範囲であり、更に好ましくは5〜30の範囲である。本発明に係るバック層は、上記各成分が後述する結合剤中に分散されてなるものであるが、他の任意の成分として、分散剤、潤滑剤を添加することが好ましい。
分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数8〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数7〜17個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸のアミド、オレイン酸銅、硫酸バリウム及び銅フタロシアニン、塩基性有機色素化合物等を使用することができる。
これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。上記の中では、オレイン酸銅、銅フタロシアニン、硫酸バリウム、及び塩基性有機色素化合物が好ましい。分散剤は、結合剤樹脂100質量部に対して通常、0.5〜20質量部の範囲で添加される。
潤滑剤としては、従来から磁気テープに通常使用されている潤滑剤から適宜選択して使用できるが、本発明では特に炭素数18以上の脂肪酸、あるいは脂肪酸エステルが走行性の向上の点から好ましい。潤滑剤は、結合剤樹脂100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。
本発明のバック層で使用できる結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリルニトリル共重合体、ポリビニルブチラール、繊維素系樹脂(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロースなど)、ポリカーボネート等を挙げることができる。
また熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート等を挙げることができる。バック層は、通常の方法に従って支持体の磁性層が設けられている側とは反対側に設けられる。即ち、前記の各成分を適当な有機溶媒に溶解、分散させた塗布液を調製し、これを常法の塗布方法に従い、塗布、乾燥することにより、支持体上にバック層を設けることができる。
[結合剤]
本発明の磁性層、非磁性層に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものである。
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビニルアセタ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネ−トプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリオ−ルとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコ−ル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネ−トを組み合わせたものがあげられる。
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエ−テルポリウレタン、ポリエ−テルポリエステルポリウレタン、ポリカ−ボネ−トポリウレタン、ポリエステルポリカ−ボネ−トポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM,−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属)、−OH、−NR、−N(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
本発明の非磁性層、磁性層に用いられる結合剤は、前者にあっては非磁性粉末に対し、後者にあっては強磁性粉末に対し、各々5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネ−トは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/mm(0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10Kg/mm(0.49〜98MPa)が好ましい。
本発明の磁気記録媒体は二層以上からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネ−ト、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることができる。
本発明に用いるポリイソシアネ−トとしては、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、o−トルイジンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等のイソシアネ−ト類、また、これらのイソシアネ−ト類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネ−ト等を使用することができる。
[研磨剤]
本発明に用いられる研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90重量%以上であれば効果にかわりはない。タップ密度は0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5重量%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m/g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。本発明に用いられる研磨剤は磁性層(上下層)、非磁性層で種類、量および組合せを変え、目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。
[添加剤]
本発明において添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつものが使用できる。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコ−ンオイル、極性基をもつシリコ−ン、脂肪酸変性シリコ−ン、フッ素含有シリコ−ン、フッ素含有アルコ−ル、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコ−ル、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエ−テル、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数8〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコ−ル、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコ−ル、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコ−ルのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエ−テルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
これらの具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、オレイルアルコ−ル、ラウリルアルコ−ル、があげられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシド−ル系、アルキルフェノ−ルエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコ−ルの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は下層、磁性上層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、下層、磁性上層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
〔支持体〕
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、支持体では好ましくは3.0〜15μm、更に好ましくは、3.0〜8.0μmである。
本発明に用いられる支持体としては、非磁性可撓性支持体が好ましく、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリカ−ボネ−ト、ポリアミド(アラミド等の全芳香族ポリアミドを含む。)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォンなどの公知のフィルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。
本発明の目的を達成するには、支持体として表面の粗さ形状が必要に応じて支持体に添加されるフィラ−の大きさと量により自由にコントロ−ルされるものである。これらのフィラ−としては一例としてはCa,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体の最大高さSRmaxは1μm以下、十点平均粗さSRzは0.5μm以下、中心面山高さはSRpは0.5μm以下、中心面谷深さSRvは0.5μm以下、中心面面積率SSrは10%以上、90%以下、平均波長Sλaは5μm以上、300μm以下が好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体表面に微小な突起を形成させる必要があり、通常平均粒子径0.01〜0.2μmのフィラーを0〜20000個/mmの範囲で支持体を形成する樹脂に添加し分散させるでコントロ−ルすることができる。この場合粒径分布中の粗大粒子や、凝集した粒子が通常存在するために、それによって形成される粗大突起が存在する。本発明では磁性層表面において、高さが0.273μm以上の突起が100個/100cm以下、さらには80個/100cm以下が好ましく、50個/100cm以下が一層好ましい。
本発明に用いられる支持体のMD方向(長手方向)のヤング率、TD方向(幅方向)のヤング率は共に5GPa以上、好ましくはくは6GPa以上、であり、TD方向のヤング率がMD方向のヤング率より大きいことが好ましい。また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度破断強度は5〜100kg/mm(49〜980MPa)、弾性率は100〜2000kg/mm(980〜19600MPa)、が好ましい。温度膨張係数は10−4〜10−8/℃であり、好ましくは10−5〜10−6/℃である。湿度膨張係数は10−4/RH%以下であり、好ましくは10−5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は支持体が3〜15μm、好ましくは3.0〜8.0μmであり、更に好ましくは、3.0〜5.5μmの範囲の厚さのものが使用される。
支持体と非磁性層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。本下塗層厚みは0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。バック層の厚みは0.2〜1.5m、好ましくは0.3〜0.8μmである。磁性層の厚味は40nm〜150nmが好ましい。これらの各層の厚みは、適用する記録再生システムに応じて最適な範囲を設定することができる。一般に磁性層厚みは40nm未満になると出力が低下してしまい十分な出力やC/Nが得られない。一方、150nmを超えるとと、ノイズ成分が高くなりC/Nが劣化してしまう。
本発明での磁性層の厚味は、以下のようにして求めることできる。透過型電子顕微鏡用試料作成法として公知である超薄切片法にて磁気記録媒体の厚味方向の超薄切片(約80nm厚)試料を作成し、透過型電子顕微鏡にて超薄切片写真(50000倍)を撮影する。前記写真の上層表面および上下層界面をフィルムベース上にトレースし、上層表面と上下層界面間を0.025μm間隔の厚み方向に平行な直線500本を引き、その長さの平均を磁性層の厚みとして求めた。
下層の厚みは0.2〜5.0μm、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは1.0μm〜2.5μmである。
〔磁気記録媒体の製造方法〕
本発明の磁気記録媒体は、各層を形成するための塗料を塗布・乾燥等することで製造することができる。塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性粉末、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後に粘度調整をするための混合工程で分割して投入してもよい。
本発明の磁気記録媒体の製造方法で用いられる有機溶媒は、任意の比率でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等のケトン類、ブタノ−ル、イソブチルアルコ−ル、メチルシクロヘキサノール、などのアルコ−ル類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒を用い塗布の安定性をあげる、具体的には上層溶剤組成における表面張力の算術平均値が下層溶剤組成における表面張力の算術平均値を下回らないことが肝要である。両層の分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、両層の溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、両層に用いられる有機溶媒の溶解パラメ−タは8〜11であることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体を製造するためには、従来の公知の製造技術のを一部の工程としてを用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニ−ダや加圧ニ−ダなど強い混練力をもつものを使用することにより、高い残留磁束密度(Br)を有する磁気記録媒体を得ることもできる。連続ニ−ダまたは加圧ニ−ダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開昭64−79274号公報に記載されている。また、下層非磁性層液を調製する場合には高比重の分散メディアを用いることが望ましく、ジルコニアビーズが好適である。
支持体上に下層及び上層を設けるには、支持体上に非磁性粉末と結合剤を含有する非磁性層形成用塗布液及び強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層形成用塗布液を、非磁性層の上に磁性層が形成されるように同時または逐次に塗布し、塗布層が湿潤状態にあるうちに磁場配向を行うか、該塗布層が湿潤状態にあるうちにスムージング処理と磁場配向とを行う方法を用いることができる。
上記のような重層構成の磁気記録媒体を塗布する装置、方法としては、例えば、以下のような方法及び装置を挙げることができる。
1,磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する。
2,特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
3,特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する。
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足することが適当である。
さらに、スムージング処理は、例えば、ステンレス板をウエブ上の塗布層表面に当てて行うことができるが、これ以外に、特公昭60−57387号公報に記載されているような固体スムーザーによる方法、静止しているか、又はウェブ走行方向と逆方向に回転しているロッドで塗布液を掻き落とし計量する方法、塗布液膜の表面にフレキシブルなシートを面接触させて平滑化する方法等を採用することもできる。
また、磁場配向には、1000G(100mT)以上のソレノイドと2000G(200mT)以上のコバルト磁石を同極対向で併用することが好ましい。また、ディスク媒体として本発明を適用する場合はむしろ配向をランダマイズするような配向法が必要である。
さらに、カレンダ処理ロ−ルとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロ−ルを使用することができる。また、金属ロ−ル同志で処理することも出来る。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であることが適当である。線圧力は、好ましくは200kg/cm(196kN/m)、さらに好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上であることが適当である。
本発明の磁気記録媒体の磁性層面およびその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は好ましくは0.5以下、さらに0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは磁性面10〜1012オーム/sq、帯電位は−500Vから+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は面内各方向で好ましくは100〜2000Kg/mm(980〜19600N/mm)、破断強度は好ましくは10〜70Kg/mm(98〜686N/mm)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは100〜1500Kg/mm(980〜14700N/mm)、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下である。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下が好ましく、下層のそれは0℃〜100℃が好ましい。損失弾性率は1×10〜8×10N/cmの範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m以下、さらに好ましくは10mg/m以下であることが適当である。磁性層が有する空隙率は下層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下であることが適当である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるデータ記録用磁気記録媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。本発明の磁気記録媒体の磁気特性は磁場5kOe(400kA/m)で測定した場合、テ−プ走行方向の角型比は0.70以上であり、好ましくは0.80以上さらに好ましくは0.90以上であることが適当である。
テ−プ走行方向に直角な二つの方向の角型比は走行方向の角型比の80%以下となることが好ましい。磁性層のSFD(Swiching Field Distribution)は0.6以下であることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体は下層と上層磁性層を有するが、目的に応じ下層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に下層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。磁性層を2層以上から構成した場合、各磁性層にそれぞれどのような物理特性をもたらすかは、公知の磁性層重層に関する技術を参考にすることができる。例えば上層磁性層のHcを下層のHcより高くすることは特公昭37−2218号公報、特開昭58−56228号公報等を初め多くの発明があるが、本発明のように磁性層を薄層にすることにより、より高いHcの磁性層でも記録が可能になる。なお、磁性層を2層以上から構成した場合の磁性層の厚みとは、各磁性層の総和を意味する。
本明細書において、強磁性金属粉末、六方晶系フェライト粉末やカーボンブラックのように種々の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、高分解能透過型電子顕微鏡写真及び画像解析装置より求められる。高分解能透過型電子顕微鏡写真の粉体の輪郭を画像解析装置でなぞり、粉体のサイズを求めることができる。即ち、粉体サイズは、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)六方晶系フェライト磁性粉のように粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径、即ち板径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、(長軸長/短軸長)の値の算術平均を平均針状比という。尚、短軸長とは長軸に直行する軸で最大のものをいう。同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(板径/板厚)の算術平均を平均板状比という。ここで、板厚とは厚さ乃至高さである。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均粒子径という。
粉体サイズ測定において、標準偏差/平均値をパーセント表示したものを変動係数と定義する。
また、本願明細書において、1kgfは9.8Nで、1エルステッド{(1/4π)kA/m}は、0.08kA/mで各々換算した。
以下に本発明の具体的実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。各実施例中、「部」は「質量部」を示すものである。
塗料A(上層用)
強磁性金属粉末 100部
(Co/Fe:23原子%、Al/Fe:11原子%、Hc:2330Oe(186kA/m)、平均長軸長:45nm、SBET:69m/g、結晶子サイズ:130Å、σs:114A・m/kg、)
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン製MR−110) 5部
ポリエステルポリウレタン樹脂 3部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0.9/2.6/1、−SONa基:1×10−4eq/g含有)
α−Al(平均粒子径:0.1μm) 5部
カーボンブラック(平均粒子径:100nm) 0.5部
ブチルステアレート 1.5部
ステアリン酸 0.5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
塗料B(下層用)
α−Fe 80部
(平均長軸長:0.1μm、SBET:48m/g、pH:8、表面にAlが粒子全体に対し1質量%存在)
カーボンブラック(平均粒子径:16nm) 20部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン製MR−110) 10部
ポリエステルポリウレタン樹脂(分子量3.5万) 5部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0.9/2.6/1、−SONa基:1×10−4eq/g含有)
ステアリン酸 1部
ステアリン酸secブチル(工業用) 1部
シクロヘキサノン 50部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 50部
実施例1〜5、比較例1〜3
上記上層用、下層用塗料組成それぞれについて、顔料、ポリ塩化ビニルと処方量の50%の各溶剤をニーダーで混練した後、ポリウレタン樹脂と残りの成分を加えてサンドミルで5時間(ただし、比較例1は2時間)分散した。得られた分散液にポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL)を上層用塗布液には1部、下層用塗布液には3部を加え、さらにそれぞれにメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、上層形成用塗料Aおよび下層形成用塗料Bの塗布液をそれぞれ調製した。
得られた上層用塗布液A、下層用塗布液Bを用い、厚さ7.0μmのPENフィルム上に乾燥後の下層厚さが所定の厚味(表1)になるように、さらにその上に乾燥後の厚さが0.12μmとなるように、同時重層塗布を行い、塗布層がまだ湿潤状態にあるうちに6000エルステッド(480kA/m)の磁力を持つコバルト磁石と6000エルステッド(480kA/m)の磁力を持つソレノイドにより配向処理を行った。
上下層塗布層を乾燥させた後、上下層塗布層と反対側の支持体面に、乾燥後のバック層厚が0.5μmになるよう、以下に示すバック層用塗料Cを塗布した。乾燥後、7段のカレンダーで温度80℃、スピード200m/minで処理を行い、平滑化処理を施した。
塗料C(バック層用)
微粒子状カーボンブラック(平均粒子径:表1参照) 100部
粗粒子状カーボンブラック (平均粒子径:表1参照) 4部
α−Fe 20部
(平均粒子径:0.11μm、戸田工業製TF100)
α−Al 5部
(平均粒子径:0.20μm)
ニトロセルロース樹脂 55部
ポリウレタン樹脂 40部
オレイン酸銅 0.1部
銅フタロシアニン 0.2部
このようにしてできた磁気テープ原反を、70℃で48時間加熱することにより、ポリイソシアネート化合物を硬化させた。
次いでの原反ロールから、原反両サイドの耳部を除去しながら1/2インチ幅にスリットした。
得られた試料を以下により評価した。得られた結果を表1に示す。
(1)磁性層表面の5nm以上の突起数
表面突起数はZYGO社製New View 5010(三次元表面構造解析顕微鏡)を用いて、対物レンズ20倍、ズーム倍率2.0倍、High Filter830nm、Low Filter3000nmの条件にて、30μm以下の波長成分からなる表面プロファイルにおいて、突起の体積とくぼみの体積が等しくなる面を基準面(=0)とし、基準面から5nm離れた基準面と平行な面でスライスし、突起個数をカウントした。
(2)バック層表面突起数
AFM(米DI社製NanoscopeIII)にて、バック層表面における80μm角の領域を512×512ピクセルで測定し、得られた粗さプロファイルにおいて、突起の体積とくぼみの体積が等しくなる面を基準面(=0)とし、50nmおよび75nmの高さの基準面と平行な面でスライスし、50nm以上75nm未満および、75nm以上の突起個数をカウントする。3視野測定し平均値を求めた。
(3)SNRsk、エラーレート
LTO2ドライブを用い、ECMA規格に準じてSNRsk、エラーレートを測定した。再生ヘッドは巾3μmのMR素子を用いた。SNRskは比較例1を0dBとし相対値で示した。
(4)バック面摩擦係数
SUS420Jポール(Ra=10nm、4mmφ)に測定するテープを180度ラップさせ、一端に100gの荷重(T1)をかけ、速度24mm/secで摺動させたときのテープ張力(T2)を測定し、下記オイラーの式にて動摩擦係数(μ)を求めた。
μ=(1/π)×ln(T2/T1)
Figure 2005166129
上表から、磁性層表面における5nm以上の突起が300個/20000μm以下であり、バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800〜1500個/6400μm、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下である実施例は、SNRskが高く、エラーレートが小さい上に、摩擦係数の低い、走行耐久性に優れた磁気記録媒体であることが理解される。一方、本発明の要件を満足しない比較例は、SNRsk、エラーレート、摩擦係数の少なくともいずれかが劣ることが理解される。

Claims (8)

  1. 支持体上に強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体において、磁性層表面における5nm以上の突起が300個/20000μm以下であり、バック層表面における高さが50nm以上75nm未満である突起の個数が800〜1500個/6400μm、75nm以上の突起の個数が600個/6400μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 該強磁性粉末は平均長軸長30nm〜150nmで長軸長変動係数が25%以下である強磁性金属粉末であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 該強磁性金属粉末はFeを主成分とし、Feに対してCoが、10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれ、抗磁力が160〜280kA/m(2000〜3500Oe)で、飽和磁化σsが80〜150A・m/kgであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 該強磁性粉末は平均板径が5nm〜40nmで板径変動係数が25%以下である強磁性六方晶系フェライト粉末であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  5. 該強磁性六方晶系フェライト粉末の抗磁力は160〜240kA/m(2000〜3000Oe)で、飽和磁化σsが40〜80A・m/kgである六方晶バリウムフェライトであることを特徴とする請求項1または4に記載の磁気記録媒体。
  6. 前記磁性層の厚味が40nm〜150nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  7. 支持体と磁性層の間に実質的に非磁性である下層を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  8. 該磁気記録媒体がMR再生ヘッド搭載の記録再生システムに適用されるデジタル信号記録用磁気テ−プであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の磁気記録媒体。
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