JP2005022156A - 液体吐出装置及び液体吐出方法 - Google Patents

液体吐出装置及び液体吐出方法 Download PDF

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Manabu Tomita
学 冨田
Soichi Kuwabara
宗市 桑原
Iwao Ushinohama
五輪男 牛ノ濱
Masato Nakamura
正人 中村
Tetsuo Ogawa
哲夫 小川
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】濃度ムラや白スジによる画質の劣化を防止する。
【解決手段】吐出制御部がヘッドチップ28における発熱抵抗体52a,52b,52cに供給される電流の大きさを制御することで、ノズル54aを中心に360°全方向に吐出角度を変えてインク液滴iを吐出可能なことから、記録紙の走行方向に沿った白スジや、色の濃度ムラを防止できる。
【選択図】 図27

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体内で圧力発生素子により発生した圧力で液体を押圧して液室に設けられた吐出口より液体を吐出させる液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を吐出する装置として、対象物となる記録紙に対してヘッドチップよりインクを吐出させて、画像や文字を記録するインクジェット方式のプリンタ装置がある。このインクジェット方式を用いたプリンタ装置は、低ランニングコスト、装置の小型化、印刷画像のカラー化が容易という利点がある。インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等のように複数の色のインクがそれぞれ充填されたインクカートリッジからヘッドチップのインク液室等に供給される。そして、このプリンタ装置は、インク液室等に供給されたインクを、インク液室内に配置された発熱抵抗体等で加熱し、発熱抵抗体上のインクに気泡を発生させ、この気泡が割れて消えるときのエネルギによりインクをヘッドチップに設けられた微小なインク吐出口から吐出させ、吐出させたインクを対象物となる記録紙等に着弾させ、記録紙等に画像や文字を印刷する。
【0003】
インクジェット方式のプリンタ装置の中には、インクカートリッジがインクヘッド部に装着され、インクカートリッジが装着されたインクヘッド部が記録紙の幅方向、すなわち記録紙の走行方向と略直交する方向に移動することによって所定の色のインクを記録紙に着弾させるシリアル型のプリンタ装置がある。また、記録紙の幅とほぼ同じ範囲をインクの吐出範囲とした、すなわち記録紙の幅方向に並んだヘッドチップのインク吐出口よりライン状にインクを吐出するライン型のプリンタ装置がある。
【0004】
シリアル型のプリンタ装置は、インクヘッド部が記録紙の走行方向と略直交する方向に移動するときに記録紙の走行を停止させ、停止している記録紙にインクヘッド部が移動しながらインクを吐出、着弾させ、これを繰り返すことで印刷する。一方、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部が固定、若しくは印刷ムラを避けるための僅かな微動できる程度に固定されており、連続的に走行している記録紙にインクヘッド部がライン状にインクを吐出、着弾させることで印刷する。
【0005】
このため、このライン型のプリンタ装置は、シリアル型と異なりインクヘッド部を移動させないものであるから、シリアル型のプリンタ装置に比べて高速印刷を行うことが可能となる。また、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部を移動させる必要がないことから、各インクカートリッジを大型化することができ、インクカートリッジのインク容量を増やすことができる。このようなライン型のプリンタ装置では、インクヘッド部が移動するものではないため構成の簡素化を図ることができ、各インクカートリッジにインクヘッド部を一体的に設けるようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−185403号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したライン型のプリンタ装置では、走行している記録紙にインクが着弾するタイミングの精度により画像や文字等の印刷精度が左右されてしまう。具体的に、例えば記録紙の走行速度が速いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に伸びて印刷されてしまい、記録紙の走行速度が遅いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に縮んで印刷されうといった問題が起こる。
【0008】
このような問題を解決するために、ライン型のプリンタ装置では、例えば記録紙を走行させるためのモータ等の制御にサーボモータ等を使用し、記録紙の走行速度にムラが出ないように走行速度を一定にすることで、記録紙にインクが着弾するタイミングを制御している。
【0009】
しかしながら、以上のようなサーボモータ等を用いた場合でも、図34に示すように、画像等の伸びや縮みは解消されるものの、記録紙にインクが着弾するタイミングに僅か数ミクロンの誤差があると、記録紙の走行方向、すなわち図34中矢印X方向に色の濃度にムラが生じることがある。具体的には、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン遅れると、この部分の色の濃度が濃くなってしまう。一方、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン速まると、この部分の色の濃度が薄くなり、さらに記録紙の走行速度の制御が数十ミクロン、数百ミクロンのレベルで速まると、記録紙の走行方向と略直交方向に亘ってインクが着弾してない部分、いわゆる白スジが生じてしまう。そして、このような記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラや白スジは、例えば色調の階調が変化しないような印刷を行うときに顕著に現れてしまう。なお、図34中300はインクの着弾点を示している。
【0010】
また、ライン型のプリンタ装置においては、図35に示すように、例えばインク吐出孔がゴミ等で目詰まりしたとき、目詰まりしたインク吐出孔からインクを吐出することが困難になり、目詰まりしたインク吐出孔よりインクが吐出、着弾されるはずの着弾位置が欠落して記録紙の走行方向、すなわち図35中矢印X方向に沿った白スジが生じて画質が劣化してしまう虞がある。さらに、例えばゴミ等がインク吐出孔を目詰まりさせないまでもインク吐出孔の近傍に付着すると、インク吐出孔からのインクの吐出方向が変わってしまうことがある。この場合も、インクの着弾位置がずれてインクが着弾しない部分が発生して白スジが生じる虞がある。
【0011】
なお、図35中301は記録紙の走行方向と略直交方向、すなわち記録紙の幅方向に並んだn番目のインク吐出口より吐出されたインクの着弾点を示し、図35中302はn+1番目、図35中303はn+2番目、図35中304はn+4番目、図35中305はn+5番目のインク吐出口より吐出されたインクの着弾点をそれぞれ示している。そして、図35においては、n+2番目のインク吐出口より吐出されたインクの着弾点303が着弾点302側に寄っていることから、n+2番目のインク吐出口より吐出されるインクの吐出方向がn+1番目のインク吐出口側に曲がっていることを示している。また、n+3番目の吐出口が目詰まりをしてインクが吐出されず、着弾点303と着弾点304との間にインクが着弾されないことから、インクの着弾されない部分に白スジが発生していることを示している。
【0012】
一方、シリアル型のプリンタ装置では、記録紙の走行を停止させて印刷する際に、前回の印刷箇所と今回の印刷箇所との境界を所定の範囲で重なるような、いわゆるオーバーラップ部を設けた印刷を行うことで記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラや白スジを防止している。このシリアル型のプリンタ装置では、濃度ムラや白スジ等は抑えることができるが、オーバーラップ部を設けていることにより、印刷に係る時間が長くなったり、印刷に使用するインクの量が多くなったりするといった問題がある。
【0013】
以上のような問題と解決するために、特許文献1には、図36及び図37に示すように、インクを吐出するヘッドチップ401の吐出口402と対向する位置に発熱抵抗体403a〜403dを吐出口402の中心線を含む面で互いに面対称となるように複数設け、それぞれの発熱抵抗体402の発熱量を異ならせることによって、インクの吐出方向を制御することが提案されている。具体的に、ヘッドチップ401は、流路構成部材として感光性樹脂などを用いて、周知の露光技術等を用いて三方が側壁404に囲まれた液室405が形成され、側壁がない部分が液室405にインクを供給する供給口406となり、インクはシリコン基板に異方性エッチングにより基板の裏側から開けられた貫通穴を通じて供給口406へと導かれ、液室405の吐出口402と対向する面に側壁404と略平行に設けられた発熱抵抗体403a〜403c及び供給口406と略平行に設けられた発熱抵抗体403dの発熱量を異ならせることによって、インクの吐出方向を制御するものである。
【0014】
しかしながら、特許文献1では、発熱抵抗体の配置が異なる複数の実施例が挙げてあるが、全ての実施例において、複数の発熱抵抗体の具体的な距離が明示されておらず、記載された図面から想定できる発熱抵抗体の間隔距離は離れすぎており、発熱抵抗体を発熱させてから発熱抵抗体の間の部分の温度上昇に至る時間がかかり、かつ熱エネルギーの損失が大きいことが容易に分かる。したがって、吐出したインクの吐出速度が遅くなる等してインクの吐出方向を適切に制御することが困難である。これは、図36に示すヘッドチップ401のように、特許文献1の全ての実施例において吐出口の略中心と対向する位置に発熱抵抗体が配置されているものがなく、吐出口の中心線を含む面で互いに面対称となる位置に設けられた発熱抵抗体同士の距離が遠くなって、それぞれの発熱抵抗体がインクを加熱する時間が長くなったり、発熱により生成されるインクを吐出するための気泡が小さくなったりするからである。
【0015】
また、上述した特許文献1においては、吐出方向を制御するために複数設けられた発熱抵抗体の発熱状態を制御させる制御回路や、如何にして複数の発熱抵抗体の発熱状態を制御して吐出方向を決定するかについては何ら記載されていない。したがって、この提案では、実際に複数の発熱抵抗体を用いてインクの吐出方向を制御することは困難であり、インクの吐出口と対向する位置に発熱抵抗体を複数設けるといった特徴を生かし切れていないのが現状である。
【0016】
具体的に、特許文献1に記載されているヘッドチップ401のように液室405の三方が側壁404に囲まれている場合、図37に示すように、インク内に発生した気泡が割れたときに液室405内に生じるインクを吐出口402より吐出させるための圧力が、側壁のある側に比べて側壁のない供給口406側で低くなり、供給口406よりインクが供給される方向、すなわち図37中矢印Y方向とは略反対方向に吐出されてしまう。このようなヘッドチップ401を実施例とする特許文献1では、供給口406からインクが供給される方向とは略反対方向にされるインクの吐出方向を、如何にして複数の発熱抵抗体の発熱させて制御するかについて記載されてなく、濃度ムラや白スジを適切に防止することが困難である。
【0017】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、印刷に係る時間を短時間にし、且つ複数の圧力発生素子を適切に制御することで高画質な印刷が得られる優れた液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る液体吐出装置は、液体を収容する液室と、液室の側壁に設けられ、液室に液体を供給するための供給口と、液室に複数配置され、エネルギが供給されることで液室に収容された液体を押圧する圧力を発生させる圧力発生素子と、圧力発生素子による圧力に押圧された液室内の液体を吐出させるための吐出口とを有する吐出手段と、複数の圧力発生素子に、略同じ若しくは異なるエネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらしてエネルギを供給し、吐出口より吐出される液体の吐出方向を制御する吐出方向制御手段とを有し、少なくとも複数の圧力発生素子のうちの一つが、液室に設けられた供給口と対向して略平行に配置され、吐出方向制御手段が、供給口と対向して略平行に配置された圧力発生素子に、他の圧力発生素子に供給されるエネルギと略同じ若しくは異なるエネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらしてエネルギを供給することで、供給口から液体が供給される方向と略平行方向に吐出される液体の吐出方向を制御することを特徴としている。
【0019】
この液体吐出装置では、液室に設けられた供給口と対向して略平行に配置された圧力発生素子に略同じ若しくは異なるエネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらしてエネルギを供給することで、供給口から液体が供給される方向と略平行方向に吐出する液体の吐出方向を制御できる。したがって、この液体吐出装置では、従来のような液室内に発生した液体を吐出させるための圧力が供給口側で低くなって供給口より液体が供給される方向と略反対方向に吐出される液体の吐出方向を制御できる。
【0020】
本発明に係る液体吐出方法は、液室に複数配置された圧力発生素子にエネルギを供給することで、液室の側壁に設けられた供給口より液室に供給された液体を押圧する圧力を発生させ、この圧力に押圧された液室内の液体を、液室に設けられた液体を吐出させるための吐出口より吐出させる液体吐出方法であって、複数の圧力発生素子のうちの供給口と対向して略平行に配置させた圧力発生素子に、他の圧力発生素子に供給されるエネルギと略同じ若しくは異なるエネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらしてエネルギを供給することで、供給口から液体が供給される方向と略平行方向に吐出される液体の吐出方向を制御することを特徴としている。
【0021】
この液体吐出方法では、液室に設けられた供給口と対向して略平行に配置させた圧力発生素子に略同じ若しくは異なるエネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらしてエネルギを供給することで、供給口から液体が供給される方向と略平行方向に吐出する液体の吐出方向を制御する。したがって、この液体吐出方法では、従来のような液室内に発生した液体を吐出させるための圧力が供給口側で低くなって供給口より液体が供給される方向と略反対方向に吐出される液体の吐出方向を制御できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置と記す。)1は、対象物となる記録紙Pに対してインク等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせてインク吐出口(ノズル)を設けた、いわゆるライン型のプリンタ装置である。
【0023】
このプリンタ装置1は、インク4を吐出するインクジェットプリントヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジと記す。)2と、このヘッドカートリッジ2を装着するプリンタ本体3とを備える。プリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ2がプリンタ本体3に対して着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインク供給源となるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが着脱可能となっている。このプリンタ装置1では、イエローのインクカートリッジ11y、マゼンタのインクカートリッジ11m、シアンのインクカートリッジ11c、ブラックのインクカートリッジ11kが使用可能となっており、また、プリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、ヘッドカートリッジ2に対して着脱可能なインクカートリッジ11y,11m,11c,11kとを消耗品として交換可能になっている。
【0024】
このようなプリンタ装置1は、記録紙Pを積層して収納するトレイ65aをプリンタ本体3の前面底面側に設けられたトレイ装着口に装着することにより、トレイ65aに収納されている記録紙Pをプリンタ本体3内に給紙できる。トレイ65aは、プリンタ本体3の前面のトレイ装着口に装着されると、給排紙機構64により記録紙Pが給紙口65からプリンタ本体3の背面側に給紙される。プリンタ本体3の背面側に送られた記録紙Pは、反転ローラ163により走行方向が反転され、往路の上側をプリンタ本体3の背面側から前面側に送られる。プリンタ本体3の背面側から前面側に送られる記録紙Pは、プリンタ本体3の前面に設けられた排紙口66より排紙されるまでに、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データに応じた印刷データが文字や画像として印刷される。
【0025】
記録紙Pに印刷を行うヘッドカートリッジ2は、プリンタ本体3の上面側から、すなわち図1中矢印A方向から装着され、給排紙機構85により走行する記録紙Pに対してインク4を吐出して印刷を行う。そこで、先ず、上述したプリンタ装置1を構成するプリンタ本体2に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、このヘッドカートリッジ2に着脱されるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kについて図面を参照して説明する。
【0026】
このヘッドカートリッジ2は、導電性の液体であるインク4を、例えば電気熱変換素子又は電気機械変換素子等で微細に粒子化して吐出し、記録紙P等の被記録物上にインク4を液滴状態にして吹き付ける。具体的に、ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インク4が充填された容器であるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着される。なお、以下、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを単にインクカートリッジ11ともいう。
【0027】
ヘッドカートリッジ2に着脱可能なインクカートリッジ11は、図3に示すように、強度や耐インク性を有するポリプロピレン等の樹脂材料等を射出成形することにより成形されるカートリッジ容器11aを有し、このカートリッジ容器11aは、長手方向を使用する記録紙Pの幅方向の寸法と略同じ寸法となす略矩形状に形成され、内部に貯留するインク容量を最大限に増やす構成となっている。
【0028】
具体的に、インクカートリッジ11を構成するカートリッジ容器11aには、インク4を収容するインク収容部12と、インク収容部12からヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21にインク4を供給するインク供給部13と、外部よりインク収容部12内に空気を取り込む外部連通孔14と、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する空気導入路15と、外部連通孔14と空気導入路15との間でインク4を一時的に貯留する貯留部16と、外部連通孔14から外部へのインク漏れを防ぐシール17と、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に係止するための係止突部18及び係合段部19とが設けられている。
【0029】
インク収容部12は、気密性の高い材料によりインク4を収容するための空間を形成している。インク収容部12は、略矩形に形成され、長手方向の寸法が使用する記録紙Pの幅方向、すなわち記録紙Pの走行方向に対して略直交する方向の寸法と略同じ寸法となるように形成されている。
【0030】
インク供給部13は、インク収容部12の下側略中央部に設けられている。このインク供給部13は、インク収容部12と連通した略突形状のノズルであり、このノズルの先端が後述するヘッドカートリッジ2の接続部26に嵌合されることにより、インクカートリッジ2のカートリッジ容器11aとヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21を接続する。
【0031】
インク供給部13は、図4及び図5に示すように、インクカートリッジ11の底面13aにインク4を供給する供給口13bが設けられ、この底面13aに、供給口13bを開閉する弁13cと、弁13cを供給口13bの閉塞する方向に付勢するコイルバネ13dと、弁13cを開閉する開閉ピン13eとを備えている。ヘッドカートリッジ2の接続部26に接続されるインク4を供給する供給口13dは、図4に示すように、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21に装着される前の段階において、付勢部材であるコイルバネ13dの付勢力により弁13cが供給口13dを閉じる方向に付勢され閉塞されている。そして、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されると、図5に示すように、開閉ピン13eがヘッドカートリッジ2を構成するカートリッジ本体21の接続部26の上部によりコイルばね13dの付勢方向とは反対の方向、すなわち図5中矢印B方向に押し上げられる。これにより、押し上げられた開閉ピン13eは、コイルバネ13dの付勢力に抗して弁13cを押し上げて供給口13bを開放する。このようにして、インクカートリッジ11のインク供給部13は、ヘッドカートリッジ2の接続部26に接続され、インク収容部12とインク溜め部31とを連通し、インク溜め部31へのインク4の供給が可能な状態となる。
【0032】
また、インクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2側の接続部26から引き抜くとき、すなわちインクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2の装着部22より取り外すとき、弁13cの開閉ピン13eによる押し上げ状態が解除され、弁13cは、コイルバネ13dの付勢方向に移動し、供給口13bを閉塞する。これにより、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に装着する直前にインク供給部13の先端部が下方を向いている状態であってもインク収容部12内のインク4が漏れることを防止することができる。また、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21から引き抜いたときには、直ちに弁13cが供給口13bを閉塞するので、インク供給部13の先端からインク4が漏れることを防止することができる。
【0033】
外部連通孔14は、図3に示すように、インクカートリッジ11外部からインク収容部12に空気を取り込む通気口であり、ヘッドカートリッジ2の装着部22に装着されたときも、外部に臨み外気を取り込むことができるように、装着部22への装着時に外部に臨む位置であるカートリッジ容器11aの上面、ここでは上面略中央に設けられている。外部連通孔14は、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されてインク収容部12からカートリッジ本体21側にインク4が流下した際に、インク収容部12内のインク4が減少した分に相当する分の空気を外部よりインクカートリッジ11内に取り込む。
【0034】
空気導入路15は、インク収容部12と外部連通孔14とを連通し、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する。これにより、このインクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着された際に、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21にインク4が供給されてインク収容部12内のインク4が減少し内部が減圧状態となっても、インク収容部12には、空気導入路15によりインク収容部12に空気が導入されることから、内部の圧力が平衡状態に保たれてインク4をカートリッジ本体21に適切に供給することができる。
【0035】
貯留部16は、外部連通孔14と空気導入路15との間に設けられ、インク収容部12に連通する空気導入路15よりインク4が漏れ出た際に、いきなり外部に流出することがないようにインク4を一時的に貯留する。
【0036】
この貯留部16は、長い方の対角線をインク収容部12の長手方向とした略菱形に形成され、インク収容部12の最も下側に位置する頂部に、すなわち短い方の対角線上の下側に空気導入路15を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4を再度インク収容部12に戻すことができるようにしている。また、貯留部16は、短い方の対角線上の最も下側の頂部に外部連通孔14を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4が外部連通孔14より外部に漏れにくくする。
【0037】
シール17は、外部連通孔14を閉塞する部材であり、外部連通孔14までインク4が逆流してしまったインク4がインクカートリッジ11の外部に漏れてしまうことを防止する。このため、シール17は、少なくともインク4を透過しないような撥水性を有する材料で形成されている。そして、このシール17は、使用時において、剥離され、インク使用量に応じて、外気連通孔14からは、インク収容部12内に外気を随時補充できるようにする。
【0038】
係止突部18は、インクカートリッジ11の短辺の一方の側面に設けられた突部であり、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21のラッチレバー24に形成された係合孔24aと係合する。この係止突部18は、上面がインク収容部12の側面に対して略直交するような平面で形成されると共に、下面は側面から上面に向かって傾斜するように形成されている。係合段部19は、インクカートリッジ11の係止突部18が設けられた側面の反対側の側面の上部に設けられている。係合段部19は、カートリッジ容器11aの上面と一端を接する傾斜面19aと、この傾斜面19aの他端と他方の側面と連続し、上面と略平行な平面19bとからなる。インクカートリッジ11は、係合段部19が設けられていることで、平面19bが設けられた側面の高さがカートリッジ容器11aの上面より1段低くなるように形成され、この段部でカートリッジ本体21の係合片23と係合する。係合段部19は、ヘッドカートリッジ2の装着部22に挿入されるとき、挿入端側の側面に設けられ、ヘッドカートリッジ2の装着部22側の係合片23に係合することで、インクカートリッジ11を装着部22に装着する際の回動支点部となる。
【0039】
以上のような構成のインクカートリッジ11は、上述した構成の他に、例えばインク収容部12内のインク4の残量を検出するための残量検出手段や、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを識別するための識別手段等を備えている。
【0040】
次に、以上のように構成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク4を収納したインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着されるヘッドカートリッジ2について説明する。
【0041】
ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が装着される装着部22y,22m,22c,22k(以下、全体を示すときには単に装着部22ともいう。)と、インクカートリッジ11を固定する係合片23及びラッチレバー24と、インクカートリッジ11を取り出し方向に付勢する付勢部材25と、インク供給部13と接続されてインク4が供給される接続部26と、カートリッジ本体21をプリンタ本体3から取り外すための取手部27と、インク4を吐出するヘッドチップ28と、ヘッドチップ28を保護するヘッドキャップ29とを有している。
【0042】
インクカートリッジ11が装着される装着部22は、インクカートリッジ11が装着されるように上面をインクカートリッジ11の挿脱口として略凹形状に形成され、ここでは4本のインクカートリッジ11が記録紙Pの幅方向と略直交方向、すなわち記録紙Pの走行方向に並んで収納される。装着部22は、インクカートリッジ11が収納されることから、インクカートリッジ11と同様に印刷幅の方向に長く設けられている。カートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が収納装着される。
【0043】
装着部22は、図2に示すように、インクカートリッジ11が装着される部分であり、イエロー用のインクカートリッジ11yが装着される部分を装着部22yとし、マゼンタ用のインクカートリッジ11mが装着される部分を装着部22mとし、シアン用のインクカートリッジ11cが装着される部分を装着部22cとし、ブラック用のインクカートリッジ11kが装着される部分を装着部22kとし、各装着部22y,22m,22c,22kは、隔壁22aによりそれぞれ隣接するように区画されている。
【0044】
なお、上述したようにブラックのインクカートリッジ11kは、インク4の内容量が大きくなるように厚く形成されているため、幅が他のインクカートリッジ11y,11m,11cよりも広く設けられており、これに合わせて装着部22kの幅も他の装着部22y,22m,22cよりも広く設けられている。
【0045】
以上のようにインクカートリッジ11が装着される装着部22の開口端には、図3に示すように、係合片23が設けられている。この係合片23は、装着部22の長手方向の一端縁に設けられており、インクカートリッジ11の係合段部19と係合する。インクカートリッジ11は、インクカートリッジ11の係合段部19側を挿入端として斜めに装着部22内に挿入し、係合段部19と係合片23との係合位置を回動支点として、インクカートリッジ11の係合段部19が設けられていない側を装着部22側に回動させるようにして装着部22に装着することができる。これによって、インクカートリッジ11は、装着部22に容易に装着することができる。
【0046】
ラッチレバー24は、板バネを折曲して形成されるものであり、装着部22の係合片23に対して反対側の側面、すなわち長手方向の他端の側面に設けられている。ラッチレバー24は、基端部が装着部22を構成する長手方向の他端の側面の底面側に一体的に設けられ、先端側がこの側面に対して近接離間する方向に弾性変位するように形成され、先端側に係合孔24aが形成されている。ラッチレバー24は、インクカートリッジ11が装着部22に装着されると同時に、弾性変位し、係合孔24aがインクカートリッジ11の係止突部18と係合し、装着部22に装着されたインクカートリッジ11が装着部22より脱落しないようにする。
【0047】
付勢部材25は、インクカートリッジ11の係合段部19に対応する側面側の底面上にインクカートリッジ11を取り外す方向に付勢する板バネを折曲して設けられる。付勢部材25は、折曲することにより形成された頂部を有し、底面に対して近接離間する方向に弾性変位し、頂部でインクカートリッジ11の底面を押圧し、装着部22に装着されているインクカートリッジ11を装着部22より取り外す方向に付勢するイジェクト部材である。付勢部材25は、ラッチレバー24の係合孔24aと係止突部18との係合状態が解除されたとき、装着部23よりインクカートリッジ11を排出する。
【0048】
各装着部22y,22m,22c,22kの長手方向略中央には、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着部22y,22m,22c,22kに装着されたとき、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kのインク供給部13が接続される接続部26が設けられている。この接続部26は、装着部22に装着されたインクカートリッジ11のインク供給部13からカートリッジ本体21の底面に設けられたインク4を吐出するヘッドチップ28にインク4を供給するインク供給路となる。
【0049】
具体的に、接続部26は、図6に示すように、インクカートリッジ11から供給されるインク4を溜めるインク溜め部31と、接続部26に連結されるインク供給部13をシールするシール部材32と、インク4内の不純物を除去するフィルタ33と、ヘッドチップ28側への供給路を開閉する弁機構34とを有している。
【0050】
インク溜め部31は、インク供給部13と接続されインクカートリッジ11から供給されるインク4を溜める空間部である。シール部材32は、インク溜め部31の上端に設けられた部材であり、インクカートリッジ11のインク供給部13が接続部26のインク溜め部31に接続されるとき、インク4が外部に漏れないようインク溜め部31とインク供給部13との間を密閉する。フィルタ33は、インクカートリッジ11の着脱時等にインク4に混入してしまった塵や埃等のごみを取り除くものであり、インク溜め部31よりも下流に設けられている。
【0051】
弁機構34は、図7及び図8に示すように、インク溜め部31からインク4が供給されるインク流入路41と、インク流入路41からインク4が流入するインク室42と、インク室42からインク4を流出するインク流出路43と、インク室42をインク流入路41側とインク流出路43側との間に設けられた開口部44と、開口部44を開閉する弁45と、弁45を開口部44の閉塞する方向に付勢する付勢部材46と、付勢部材46の強さを調節する負圧調整ネジ47と、弁45と接続される弁シャフト48と、弁シャフト48と接続されるダイアフラム49とを有する。
【0052】
インク流入路41は、インク溜め部31を介してインクカートリッジ11のインク収容部12内のインク4をヘッドチップ28に供給可能にインク収容部12と連結する供給路である。インク流入路41は、インク溜め部31の底面側からインク室42まで設けられている。インク室42は、インク流入路41、インク流出路43及び開口部44と一体となって形成された略直方体をなす空間部であり、インク流入路41からインク4が流入し、開口部44を介してインク流出路43からインク4を流出する。インク流出路43は、インク室42から開口部44を介してインク4が供給されて、更にヘッドチップ28と連結された供給路である。インク流出路43は、インク室42の底面側からヘッドチップ28まで延在されている。
【0053】
弁45は、開口部44を閉塞してインク流入路41側とインク流出路43側とを分割する弁であり、インク室42内に配設される。弁45は、付勢部材46の付勢力と、弁シャフト48を介して接続されたダイアフラム49の復元力と、インク流出路43側のインク4の負圧によって上下に移動する。弁45は、下端に位置するとき、インク室42をインク流入路41側とインク流出路43側とを分離するように開口部44を閉塞し、インク流出路43へのインク4の供給を遮断する。弁45は、付勢部材46の付勢力に抗して上端に位置するとき、インク室42をインク流入路41側とインク流出路43側とを遮断せずに、ヘッドチップ28へインク4の供給を可能とする。なお、弁45を構成する材質は、その種類を問わないが、高い閉塞性を確保するため例えばゴム弾性体、いわゆるエラストマーにより形成される。
【0054】
付勢部材46は、例えば圧縮コイルバネ等であり、弁45の上面とインク室42の上面との間で負圧調整ネジ47と弁45とを接続し、付勢力により弁45を開口部44の閉塞する方向に付勢する。負圧調整ネジ47は、付勢部材46の付勢力を調整するネジであり、負圧調整ネジ47を調整することで付勢部材46の付勢力を調整することができるようにしている。これにより、負圧調整ネジ47は、詳細は後述するが開口部44を開閉する弁45を動作させるインク4の負圧を調整することができる。
【0055】
弁シャフト48は、一端に接続された弁45と、他端に接続されたダイアフラム49とを連結して運動するように設けられたシャフトである。ダイアフラム49は、弁シャフト48の他端に接続された薄い弾性板である。このダイアフラム49は、インク室42のインク流出路43側の一主面と、外気と接する他主面とからなり、大気圧とインク4の負圧により外気側とインク流出路43側とに弾性変位する。
【0056】
以上のような弁機構34では、図7に示すように、弁45が付勢部材46の付勢力とダイアフラム49の付勢力とによってインク室42の開口部44を閉塞するように押圧されている。そして、ヘッドチップ28からインク4が吐出された際に、開口部44分割されたインク流出路43側のインク室42のインク4の負圧が高まると、図8に示すように、インク4の負圧によりダイアフラム49が大気圧により押し上げられて、弁シャフト48と共に弁45を付勢部材46の付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室42のインク流入路41側とインク流出路43側と間の開口部44が開放され、インク4がインク流入路41側からインク流出路43側に供給される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム49が復元力により元の形状に戻り、付勢部材46の付勢力により弁シャフト48と共に弁45をインク室42が閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク4を吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0057】
また、この接続部26では、インク収容部12内のインク4がインク室42に供給されると、インク収容部12内のインク4が減少するが、このとき、空気導入路15から外気がインクカートリッジ11内に入り込む。インクカートリッジ11内に入り込んだ空気は、インクカートリッジ11の上方に送られる。これにより、インク液滴iが後述するノズル54aから吐出される前の状態に戻り、平衡状態となる。このとき、空気導入路15内にインク4がほとんどない状態で平衡状態となる。
【0058】
取手部27は、図2に示すように、カートリッジ本体21が消耗する等して交換の必要がある場合や、インクジェットプリンタ装置1を修理する際等に、カートリッジ本体21の取り外しを容易にする。
【0059】
ヘッドチップ28は、図6に示すように、カートリッジ本体21の底面に沿って配設されており、接続部26から供給されるインク液滴iを吐出するインク吐出口である後述するノズル54aが各色毎に略ライン状をなすように設けられている。
【0060】
ヘッドキャップ29は、図2に示すように、ヘッドチップ28を保護するために設けられたカバーであり、インク4を吐出する際には、プリンタ本体3の後述するカバー開閉機構により開閉される。ヘッドキャップ29は、開閉方向に設けられた溝部29aと、長手方向に設けられヘッドチップ28の吐出面28aに付着した余分なインク4を吸い取る清掃ローラ29bとを有している。ヘッドキャップ29は、開閉動作時にこの溝部29aに沿ってインクカートリッジ11の短手方向、すなわち図2中矢印C方向に開閉するようにされており、このとき清掃ローラ29bがヘッドチップ28の吐出面28aに当接しながら回転することで、余分なインク4を吸い取り、ヘッドチップ28の吐出面28aを清掃する。この清掃ローラ29bは、例えば吸水性の高い部材が用いられる。また、ヘッドキャップ29は、ヘッドチップ28内のインク4が乾燥しないようにする。
【0061】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2は、上述した構成の他に、例えばインクカートリッジ11内におけるインク残量を検出する手段や、接続部37にインク供給部13が接続されたときにインク4の有無を検出する手段等を備えている。
【0062】
次に、インク4を吐出するヘッドチップ28について説明する。このヘッドチップ28は、図9及び図10に示すように、ベースとなる回路基板51と、インク4を加熱する3つの発熱抵抗体52a,52b,52cと、インク4の漏れを防ぐフィルム53と、インク4が液滴の状態で吐出されるノズル54aが多数設けられたノズルシート54と、これらに囲まれてインク4が供給される空間であるインク液室55と、インク4をヘッドチップ28に流入させるインク流路56とを有する。
【0063】
回路基板51は、シリコン等の半導体基板であり、その一主面51aに、発熱抵抗体52a,52b,52cが形成されており、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cと回路基板51上の図示しない制御回路とが接続されている。この制御回路は、ロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等で構成されている。
【0064】
3つの発熱抵抗体52a,52b,52cは、制御回路から供給される電流により発熱し、インク液室55内のインク4を加熱して内圧を高める。これにより加熱されたインク4は、後述するノズルシート54に設けられたノズル54aからインク液滴iの状態で吐出する。
【0065】
フィルム53は、回路基板51の一主面51aに積層されている。フィルム53は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなるものであり、回路基板51の一主面51aの略全体に積層された後、フォトリソグラフプロセスによって不要部分が除去され、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを一括して略凹状に囲むように形成されている。そして、フィルム53は、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを囲む部分がインク液室55における側壁53aとなる。
【0066】
ノズルシート54は、インク液滴iを吐出させるためのノズル54aが形成されたシート状部材であり、フィルム53の回路基板51と反対側に積層されている。ノズル54aは、ノズルシート54に円形状に開口された微小孔であり、発熱抵抗体52a,52b,52cと対向するように配置されている。なお、ノズルシート54はインク液室55の一部を構成する。
【0067】
インク液室55は、回路基板51、フィルム53の側壁53a及びノズルシート54に囲まれた空間部であり、側壁53aが無い部分がインク4を室内に供給させる供給口55aとなる。そして、インク液室55には、インク流路56から流入したインク4が供給口55aを介して供給される。インク液室55のインク4は、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cにより加熱され、この加熱により室内の圧力が上昇してノズル54aより吐出される。
【0068】
インク流路56は、接続部26のインク流出路43と接続されており、接続部26に接続されたインクカートリッジ11からインク4が供給され、このインク流路56に連通する各インク液室55にインク供給口55aを介してインク4を送り込む流路を形成する。すなわち、インク流路56と接続部34とが連通されている。これにより、インクカートリッジ11から供給されるインク4は、インク流路56よりインク供給口55aを介してインク液室55に流れ込み、室内に充填される。
【0069】
上述した1個のヘッドチップ28は、インク液室55毎に3つの発熱抵抗体52a,52b,52cが設けられ、このような発熱抵抗体52a,52b,52cが設けられたインク液室55を100個程度備えている。そして、ヘッドチップ28においては、プリンタ装置1の制御部からの指令によって3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを発熱させ、発熱した3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを備えるインク液室55内のインク4を、インク液室55に対応するノズル54aから液滴の状態で吐出させる。
【0070】
すなわち、ヘッドチップ28において、ヘッドチップ28と結合されたインク流路56から流入したインク4が、インク供給口55aより供給されてインク液室55に満たされる。そして、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cに短時間、例えば、1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cがそれぞれ急速に加熱され、その結果、インク4の発熱抵抗体52a,52b,52cと接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張した体積分のインク4が押圧される(インク4が沸騰する)。これによって、ノズル54aに接する部分でインク気泡に押圧されたインク4と同等の体積のインク4がインク液滴iとしてノズル54aから吐出され、記録紙P上に着弾される。
【0071】
ヘッドチップ28では、図11に示すように、1つのインク液室55内に、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cのうち、発熱抵抗体52a,52bが記録紙Pの幅方向、すなわち図11中矢印W向に略同面積で並設され、発熱抵抗体52a,52bより大きい面積の発熱抵抗体52cがこれら発熱抵抗体52a,52bとインク供給口55aとの間に配設されている。すなわち、1つのインク液室55内に、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを備えるものである。なお、図11では、ノズル54aの位置を破線で示している。
【0072】
そして、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cは、1つの発熱抵抗体を3つに分割したような形状になっており、任意の長さ、幅、厚みにして形成することでそれぞれ所望の抵抗値を以て形成させることが可能である。例えば発熱抵抗体52a,52b,52cを同じ抵抗値で形成し、それぞれに同じ電流を供給した場合、面積の最も大きい発熱抵抗体52c上に形成されるインク気泡が最も大きくなる。このように、面積が異なる発熱抵抗体52a,52b,52cを同じ抵抗値にさせる場合、例えば発熱抵抗体52a,52b,52cをそれぞれ異なる厚みで形成することで、それぞれの抵抗値を略同じにすることができる。
【0073】
ここで、インク液室55内のインク4を沸騰させるためには、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cに一定の電流を加えて3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを加熱する必要がある。これは、この沸騰時のエネルギーでインク液滴iを吐出させるためである。そして、抵抗値が小さいと、流す電流を大きくする必要があるが、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cの抵抗値はこれらを一体化させたときより高くなっていることから、少ない電流でインク液室55内のインク4を沸騰させることができる。これにより、ヘッドチップ28においては、電流を流すためのトランジスタ等を小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0074】
また、ヘッドチップ28においては、略平行に隣り合う発熱抵抗体52a,52b,52c同士の間の距離が0.5μm〜3μm程度の範囲の寸法になっている。隣り合う発熱抵抗体52a,52b,52c同士の間の距離が0.5μmより近い場合、隣り合う抵抗体同士が短絡してしまう虞がある。一方、隣り合う発熱抵抗体52a,52b,52c同士の間の距離が3μmより遠い場合、隣り合う抵抗体同士が離れすぎてしまい、インク4を加熱させるのに係る時間が長くなったり、インク液室55内でインク4を押圧するインク気泡が小さくなってノズル54aから吐出されたインク液滴iの吐出速度が遅くなったりしてインク液滴iを適切に吐出することが困難になる。
【0075】
これを図12を用いて説明する。図12は、2つの発熱抵抗体の間の距離と、ノズルより吐出されたインクの吐出速度との関係を示している。なお、ここでは、ノズル径が17μm、ノズルが形成されたノズルシートの厚みが13μm、発熱抵抗体からノズルまでの距離が約11μmにされたヘッドチップを用い、2つの発熱抵抗体に0.8Wの電力が供給されるようにした。図12では、横軸に2つの発熱抵抗体の間の距離を示し、縦軸にノズルより吐出されたインクの吐出速度を示している。
【0076】
図12に示す評価結果より、2つの発熱抵抗体の間の距離が遠のくほどズルより吐出されたインクの吐出速度が遅くなっていることがわかる。このことから、隣り合う発熱抵抗体同士の間の距離を離しすぎるとノズルから吐出されたインクの吐出速度が遅くなり、ノズルよりインクを適切に吐出することが困難になる。
【0077】
したがって、ヘッドチップ28においては、略平行に隣り合う発熱抵抗体52a,52b,52c同士の間の距離を0.5μm〜3μm程度の範囲の寸法にさせることで、ノズル54aから吐出されたインク液滴iの吐出速度が遅くなることがなく、インク液滴iを適切に吐出することができる。
【0078】
ところで、インク液室55内のインクをノズル54aより吐出させるときにおいて、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cによってインク液室55内のインクが沸騰するまでの時間、すなわち気泡発生時間が同じになるように発熱抵抗体52a,52b,52cを駆動制御すると、インク液滴iは、ノズル54aより略真下に吐出されるはずである。
【0079】
しかしながら、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cの三方が側壁53aに囲まれているヘッドチップ28では、例えば3つの発熱抵抗体52a,52b,52cの気泡発生時間が略同じになるようにしても、インク気泡によりインク液室55内に発生したインク4を押圧する圧力が、側壁53aの無いインク供給口55aから逃げてしまうことから、インク液室55内でインク4を押圧する圧力がインク供給口55aと対向する側壁53a側に比べてインク供給口55a側で低くなり、インク供給口55aよりインクが供給される方向とは略反対方向、すなわち図11中矢印E方向とは略反対方向にインク液滴iが吐出されてしまう。
【0080】
このことを図13及び図14を用いて説明する。図13は、略同一な抵抗値を有する発熱抵抗体52a,52bそれぞれに供給される電流値の差と、ノズル54aより吐出したインク液滴iが記録紙Pの幅方向(発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向)にずれて着弾した着弾位置との関係を示している。なお、図13においては、横軸に電流値の差を示し、縦軸にインク液滴iの着弾位置のずれを示している。そして、縦軸においては、発熱抵抗体52a,52bに供給される電流値に差が無く、両者の気泡発生時間が略同じとなるときにインク液滴iがノズル54aより略真下に吐出されて着弾した着弾位置を0としている。
【0081】
図14は、発熱抵抗体52a,52bの気泡発生時間が略同じとしたときに、発熱抵抗体52cに供給される電流値と、ノズル54aより吐出したインク液滴iが記録紙Pの走行方向(インク供給口55aよりインク4が供給される方向と略平行方向)にずれて着弾した着弾位置との関係を示している。なお、図14においては、横軸に発熱抵抗体52cに供給される電流値を示し、縦軸にインク液滴iの着弾位置のずれを示している。そして、縦軸においては、ノズル54aを中心にインク供給口55a側をマイナスで示し、インク供給口55aに対向する側壁53a側をプラスで示している。
【0082】
図13に示す評価結果から、略同一な抵抗値を有する発熱抵抗体52a,52bに供給される電流値の差が生じると、気泡発生時間にも差が生じてインク液滴iがノズル54aより略真下に吐出されなくなるので、インク液滴iの着弾位置が記録紙Pの幅方向にずれることがわかる。また、図14に示す評価結果から、発熱抵抗体52cに電流が供給されないとインク液滴iの着弾位置はインク供給口55a側に最も大きくずれ、発熱抵抗体52cに流れる電流が大きくなるにつれてインク供給口55aと対向する側壁53a側にずれていくことがわかる。
【0083】
このように、ヘッドチップ28では、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cの気泡発生時間が略同じになるようにしても、インク液滴iがインク供給口55aよりインクが供給される方向とは略反対方向に吐出されてしまう。
【0084】
そこで、チップヘッド28では、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cに供給される電流値を制御することで、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cの気泡発生時間をそれぞれ制御し、インク液滴iがノズル54aから吐出する吐出角度、すなわち吐出方向を制御させるようにする。
【0085】
具体的に、ヘッドチップ28では、3つのうちの発熱抵抗体52a,52bに対し、略同時に同一量の電流を供給することで、記録紙Pの幅方向に並設された発熱抵抗体52a,52bの気泡発生時間を理論上、同じにさせる。また、ヘッドチップ28では、インク供給口55aと対向して略平行に配設された発熱抵抗体52cに発熱抵抗体52a,52bに供給される電流と略同じか異なる値の電流を供給することで、発熱抵抗体52c上にインク気泡を発生させてインク供給口55aからインク4が供給される方向とは反対方向にインク4を押圧する圧力を生じさせる。これにより、インク液室55内でインク4を押圧する圧力が側壁53a側に比べてインク供給口55a側で低くなることを抑制でき、インク液滴iの吐出角度がインク液滴iの着弾面に対して略垂直になるようにノズル54aからインク液滴iを吐出させることができる。
【0086】
また、ヘッドチップ28では、3つのうち、記録紙Pの幅方向に並設された発熱抵抗体52a,52bの気泡発生時間が異なるように発熱抵抗体52a,52bに供給される電流を制御する。これにより、記録紙Pの幅方向、すなわち発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向のインク液滴iがノズル54aから吐出する吐出角度を変化させることができる。具体的に、ヘッドチップ28では、併設された発熱抵抗体52a,52bのうちの気泡発生時間が早くされた発熱抵抗体上のインク4を押圧する圧力が高くなることから、気泡発生時間が早い方から気泡発生時間が遅い方に向かってのインク液滴iが吐出される。
【0087】
さらに、ヘッドチップ28では、発熱抵抗体52cに供給される電流の値を制御して発熱抵抗体52c上に発生するインク気泡の大きさを制御することで、インク液滴iの吐出方向、いわゆる吐出角度をインク供給口55aよりインク4が供給される方向若しくはこの方向とは反対方向に制御してノズル54aよりインク液滴iを吐出できる。具体的に、ヘッドチップ28では、インク供給口55aと対向して略平行に配設された発熱抵抗体52cに供給される電流がインク液滴iをノズル54aより略真下に吐出したときの電流より小さいとき、インク供給口55aよりインク4が供給される方向とは略反対方向にインク液滴iを吐出させる。発熱抵抗体52cに供給される電流がインク液滴iをノズル54aより略真下に吐出したときの電流より大きいときは、インク供給口55aよりインク4が供給される方向とは略同方向にインク液滴iを吐出させる。
【0088】
このように、ヘッドチップ28では、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cに供給される電流を制御することで、記録紙Pの幅方向及び記録紙Pの走行方向にインク液滴iが吐出される吐出方向を変化させることができることから、ノズル54aを中心にして360°全方向に吐出角度を変化させてインク液滴iを吐出できる。
【0089】
以上のように、ヘッドチップ28では、インク液滴iの着弾位置を分散させることができる。これにより、例えば発熱抵抗体52a,52b,52cの製造誤差に伴い抵抗値がばらつき、このばらつきによって気泡発生時間に時間差が発生して、インクの吐出方向が斜めになったり、ノズル54aが目詰まりしてインク液滴iが吐出できない状態になったりして、インク4の塗布ムラが発生し、記録紙Pに白スジが発生することを防止できる。
【0090】
なお、ここでは、各抵抗体に異なる値の電流を供給することで発熱抵抗体52a,52b,52cにおける気泡発生時間をずらすようにしたが、このことに限定されることはなく、例えば各抵抗体に電流が供給されるタイミングをずらすことで発熱抵抗体52a,52b,52cにおける気泡発生時間をずらすことも可能である。
【0091】
次に、以上のように構成されたヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ装置1を構成するプリンタ本体3について図面を参照して説明する。
【0092】
プリンタ本体3は、上記図1及び図15に示すように、ヘッドカートリッジ2が装着されるヘッドカートリッジ装着部61と、ヘッドカートリッジ2をヘッドカートリッジ装着部61に保持、固定するためのヘッドカートリッジ保持機構62と、ヘッドキャップを開閉するヘッドキャップ開閉機構63と、記録紙Pを給排紙する給排紙機構64と、給排紙機構64に記録紙Pを供給する給紙口65と、給排紙機構64から記録紙Pが出力される排紙口66とを有する。
【0093】
ヘッドカートリッジ装着部61は、ヘッドカートリッジ2が装着される凹部であり、走行する記録紙にデータ通り印刷を行うため、ヘッドチップ28の吐出面28aと走行する記録紙Pの紙面とが略平行となるようにヘッドカートリッジ2が装着される。ヘッドカートリッジ2は、ヘッドチップ28内のインク詰まり等で交換する必要が生じる場合等があり、インクカートリッジ11程の頻度はないが消耗品であるため、ヘッドカートリッジ装着部61に対して着脱可能にヘッドカートリッジ保持機構62によって保持される。ヘッドカートリッジ保持機構62は、ヘッドカートリッジ装着部61にヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するための機構であり、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ62aをプリンタ本体3の係止孔62b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することによってプリンタ本体3に設けられた基準面3aに圧着するようにしてヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにしている。
【0094】
ヘッドキャップ開閉機構63は、ヘッドカートリッジ2のヘッドキャップ29を開閉する駆動部を有しており、印刷を行うときにヘッドキャップ29を開放してヘッドチップ28が記録紙Pに対して露出するようにし、印刷が終了したときにヘッドキャップ29を閉塞してヘッドチップ28を保護する。給排紙機構64は、記録紙Pを搬送する駆動部を有しており、供給口85から供給される記録紙Pをヘッドカートリッジ2のヘッドチップ28まで搬送し、インク4が吐出された記録紙Pを排紙口66に搬送して装置外部へ出力する。給紙口65は、給排紙機構64に記録紙Pを供給する開口部であり、トレイ65a等に複数枚の記録紙Pを積層してストックすることができる。排紙口66は、インク液滴iが吐出された記録紙Pが給排紙機構64により搬送されて排出される。
【0095】
ここで、以上のように構成されたプリンタ装置1による印刷を制御する制御回路71について図面を参照して説明する。
【0096】
制御回路71は、図16に示すように、プリンタ本体3の各駆動部を駆動するプリンタ駆動部72と、各色のインク4に対応するヘッドチップ28に供給される電流等を制御する吐出制御部73と、外部装置と信号の入出力を行う入出力端子74と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)75と、読み出された制御プログラム等が読み出されるRAM(Random Access Memory)76と、各部の制御を行う制御部77とを有している。
【0097】
プリンタ駆動部72は、制御部77からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ開閉機構63を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ29を開閉する。また、プリンタ駆動部72は、制御部77からの制御信号に基づき、給排紙機構64を構成する駆動モータを駆動させてプリンタ本体3の給紙口65から記録紙Pを給紙し、記録後に排紙口66から排紙する。
【0098】
吐出制御部73は、図17に示すように、3つの発熱抵抗体52a,52b,52cに電流を供給するための電源81a,81bと、電源81aと3つの発熱抵抗体52a,52b,52cとの電気的な接続をオン/オフさせる電源スイッチ82と、発熱抵抗体52a,52bに接続される記録紙Pの幅方向におけるインク液滴iの着弾位置を制御する第1の着弾位置制御部83と、発熱抵抗体52cに供給される電流を制御してインク液滴iの着弾位置を制御する第2の着弾位置制御部84と、第1の着弾位置制御部83に接続されノズル54aを中心にして吐出方向を切り換える第1の吐出方向切換部85と、第2の着弾位置制御部84に接続されノズル54aを中心にして吐出方向を切り換える第2の吐出方向切換部86と、第1の吐出方向切換部85と電源81bとの間に位置する第1の着弾位置調節部87と、第2の吐出方向切換部86と電源81bとの間に位置する第2の着弾位置調節部88とを備える電気回路である。
【0099】
電源81aは、発熱抵抗体52a,52cに接続され、電源81bは着弾位置調節部87,88に接続され、それぞれが電気回路に電流を供給する。なお、電気回路に供給される電流は、電源81a,81bを電力源としてもよいが、例えば制御部77等から直接供給されるようにすることも可能である。
【0100】
電源スイッチ82は、発熱抵抗体52b,52cとグランドとの間に配置され、吐出制御部73全体のオン/オフを制御する。
【0101】
第1の着弾位置制御部83は、直列に接続された発熱抵抗体52a,52bの間の中点に接続され、これら発熱抵抗体52a,52bに供給される電流を制御するための抵抗83a,83b,83cと、これら抵抗83a,83b,83cと発熱抵抗体52a,52bとの間に配置される切換スイッチ83dとを備えている。この第1の着弾位置制御部83は、抵抗83a,83b,83cが異なる抵抗値を有し、切換スイッチ83dの切り換えにより発熱抵抗体52bに供給される電流値を制御する。具体的に、抵抗83cが最も抵抗値が大きく、次いで抵抗83bが大きく、抵抗83aの抵抗値が最も小さくなっており、発熱抵抗体52bに供給される電流値は、切換スイッチ83dが抵抗83a,83b,83cの何れに接続されるかによって決まる。
【0102】
この第1の着弾位置制御部83を示す等価回路図を図18に示す。この第1の着弾位置制御部83は、直列状態に接続された抵抗83a,83b,83cと、オン/オフの切換により抵抗83a,83b,83cに供給される電流を制御するスイッチングトランジスタ91,92,93と、入力された二値(「0」又は「1」)の制御入力信号を論理計算して制御信号をスイッチングトランジスタ91,92,93に発信する論理回路94と、論理回路94に入力される制御入力信号が入力される入力端子95a,95bとを備えている。また、この第1の着弾位置制御部83は、図17及び図18に示すように、接続端子Fを介して発熱抵抗体52a,52bに接続され、接続端子Gを介して第1の吐出方向切換部85に接続される。
【0103】
スイッチングトランジスタ91,92,93は、第1の着弾位置制御部83における切換スイッチ83dであり、ゲート91a,92a,93a、ソース91b,92b,93b、ドレイン91c,92c,93cをそれぞれ備えている。そして、スイッチングトランジスタ91は、ゲート91aが論理回路94に接続され二値信号の入力部となり、ソース91bが抵抗83a,83bの間に接続され、ドレイン91cが第1の吐出方向切換部85を介して電流が供給される接続端子Gに接続される。スイッチングトランジスタ92は、ゲート92aが論理回路94に接続され、ソース92bが抵抗83b,83cの間に接続され、ドレイン92cが接続端子Gに接続される。スイッチングトランジスタ93は、ゲート93aが論理回路94に接続され、ソース93bが抵抗83cの抵抗83bに接続される一端と反対側の他端に接続され、ドレイン93cが接続端子Gに接続される。
【0104】
論理回路94は、論理積を出力する二入力一出力のAND回路101,102,103を備えている。AND回路101は、出力部がスイッチングトランジスタ91のゲート91aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子95aに、他方が入力端子95bに接続されている。AND回路102は、出力部がスイッチングトランジスタ92のゲート92aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子95aにインバータ102aを介して接続され、他方が入力端子95bに接続されている。AND回路103は、出力部がスイッチングトランジスタ93のゲート93aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子95aに接続され、他方が入力端子95bにインバータ103aを介して接続されている。インバータ102a,103aは、入力端子95a,95bより入力された制御入力信号を反転させてAND回路102,103に入力する。
【0105】
このような構成の第1の着弾位置制御部83は、入力端子95a及び95bにともに「0」の制御入力信号が入力されると、論理回路94におけるAND回路101,102,103における各出力値は「0」となり、スイッチングトランジスタ91,92,93が全てオフの状態になって接続端子F,Gの間は絶縁状態になる。すなわち、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dがオフ状態になる。
【0106】
第1の着弾位置制御部83は、入力端子95aに「1」、入力端子95bに「0」の制御入力信号が入力されると、論理回路94におけるAND回路103の出力値だけが「1」となり、スイッチングトランジスタ93だけがオンの状態になり接続端子F,Gの間は抵抗83a,83b,83cが直列で接続された状態になって最も大きな電気抵抗を示すことになる。すなわち、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが最も大きな抵抗値の抵抗83cに接続された状態になる。
【0107】
第1の着弾位置制御部83は、入力端子95aに「0」、入力端子95bに「1」の制御入力信号が入力されると、論理回路94におけるAND回路102の出力値だけが「1」となり、スイッチングトランジスタ92だけがオンの状態になり接続端子F,Gの間は抵抗83a,83bが直列で接続された状態になって二番目に大きな電気抵抗を示すことになる。すなわち、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが二番目に大きな抵抗値の抵抗83bに接続された状態になる。
【0108】
第1の着弾位置制御部83は、入力端子95a,95bにともに「1」の制御入力信号が入力されると、論理回路94におけるAND回路101の出力値だけが「1」となり、スイッチングトランジスタ91だけがオンの状態になり接続端子F,Gの間は抵抗83aだけが接続された状態になって最も小さな電気抵抗を示すことになる。すなわち、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが最も小さな抵抗83aに接続された状態になる。
【0109】
このように、第1の着弾位置制御部83は、スイッチングトランジスタ91,92,93を切り換えることで接続端子F,Gの間の電気抵抗を変化させて、発熱抵抗体52bに供給される電流を制御する。
【0110】
図17に示す第2の着弾位置制御部84は、発熱抵抗体52cに供給される電流を制御するための抵抗84a,84b,84cと、これら抵抗84a,84b,84cと発熱抵抗体52cとの間に配置される切換スイッチ84dとを備えている。この第2の着弾位置制御部84は、抵抗84a,84b,84cが異なる抵抗値を有し、切換スイッチ84dの切り換えにより発熱抵抗体52cに供給される電流値を制御する。具体的に、抵抗84cが最も抵抗値が大きく、次いで抵抗84bが大きく、抵抗84aの抵抗値が最も小さくなっており、発熱抵抗体52cに供給される電流値は、切換スイッチ84dが抵抗84a,84b,84cの何れに接続されるかによって決まる。また、この第2の着弾位置制御部84は、接続端子Hを介して発熱抵抗体52cに接続され、接続端子Iを介して第2の吐出方向切換部86に接続される。この第2の着弾位置制御部84は、上述した第1の着弾位置制御部83と同様の回路構成であり、同様の動作、処理が行われることから詳細な説明を省略する。
【0111】
第1の吐出方向切換部85は、切換スイッチ85aを備え、この切換スイッチ85aを切り換えることで、第1の着弾位置制御部83を第1の着弾位置調節部87を介して電源81bに接続させるか若しくはグランドに接続させる。そして、第1の吐出方向切換部85は、切換スイッチ85aを切り換えて第1の着弾位置制御部83を電源81b若しくはグランドに接続することで、ノズル54aよりインク液滴iを略真下に吐出、着弾させた位置を境にして発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向で吐出方向を切り換えるように発熱抵抗体52bに供給される電流を制御する。
【0112】
この第1の吐出方向切換部85を示す等価回路図を図19に示す。この第1の吐出方向切換部85は、オン/オフの切換により第1の着弾位置制御部83を電源81bに接続させるかグランドに接続させるかを制御するスイッチングトランジスタ111,112と、入力された二値(「0」又は「1」)の制御入力信号を論理計算して制御信号をスイッチングトランジスタ111,112に発信する論理回路113と、論理回路113に入力される制御入力信号が入力される入力端子114とを備えている。また、この第1の吐出方向切換部85は、図17及び図19に示すように、接続端子Gを介して第1の着弾位置制御部83に接続され、接続端子Jを介して第1の着弾位置調節部87に、接続端子Kを介してグランドに接続される。
【0113】
スイッチングトランジスタ111,112は、第1の吐出方向切換部85における切換スイッチ85aであり、ゲート111a,112a、ソース111b,112b、ドレイン111c,112cをそれぞれ備えている。そして、スイッチングトランジスタ111は、ゲート111aが論理回路113に接続され二値信号の入力部となり、ソース111bが接続端子Jを介して第1の着弾位置調節部87に接続され、ドレイン111cがスイッチングトランジスタ112のソース112bに接続される。スイッチングトランジスタ112は、ゲート112aが論理回路113に接続され、ソース112bがスイッチングトランジスタ111のドレイン111cに接続され、ドレイン112cが接続端子Kを介してグランドに接続される。そしてスイッチングトランジスタ111のドレイン111cとスイッチングトランジスタ112のソース112bとの間の中点に接続端子Gを介して第1の着弾位置制御部83が接続されることになる。
【0114】
論理回路113は、論理和を出力する二入力一出力のOR回路121及び論理和を反転させて出力する二入力一出力のNOR回路122を備えている。OR回路121は、出力部がスイッチングトランジスタ111のゲート111aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子114に、他方がグランドに接続されている。NOR回路122は、出力部がスイッチングトランジスタ112のゲート112aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子104に接続され、他方がグランドに接続されている。
【0115】
以上のような構成の第1の吐出方向切換部85は、入力端子114より論理回路113に「0」の制御入力信号が入力されると、論理回路113におけるOR回路121における出力値は「0」となり、スイッチングトランジスタ111をオフの状態にし、論理回路113におけるNOR回路122における出力値は「1」となり、スイッチングトランジスタ112をオンの状態にする。一方、入力端子114より論理回路113に「1」の制御入力信号が入力されると、論理回路113におけるOR回路121における出力値は「1」となり、スイッチングトランジスタ111をオンの状態にし、論理回路113におけるNOR回路122における出力値は「0」となり、スイッチングトランジスタ112をオフの状態にする。
【0116】
このように、第1の吐出方向切換部85は、スイッチングトランジスタ111,112が同時にオン状態やオフ状態になることが無く、スイッチングトランジスタ111,112は一方がオン状態のとき、他方は必ずオフ状態になる。そして、第1の吐出方向切換部85は、スイッチングトランジスタ111がオン状態のときは第1の着弾位置制御部83が第1の着弾位置調節部87を介して電源81bに接続されるようにし、スイッチングトランジスタ112がオン状態のときは第1の着弾位置制御部83がグランドに接続されるようにする。
【0117】
図17に示す第2の吐出方向切換部86は、切換スイッチ86aを備え、この切換スイッチ86aを切り換えることで、第2の着弾位置制御部84を第2の着弾位置調節部88を介して電源81bに接続させるか若しくはグランドに接続させる。そして、第2の吐出方向切換部86は、切換スイッチ86aを切り換えて第2の着弾位置制御部84を電源81b若しくはグランドに接続することで、ノズル54aよりインク液滴iを略真下に吐出、着弾させた位置を境にしてインク供給口55aよりインク4が供給される方向で吐出方向を切り換えるように発熱抵抗体52cに供給される電流を制御する。
【0118】
また、この第2の吐出方向切換部86は、接続端子Iを介して第2の着弾位置制御部84に接続され、接続端子Lを介して第2の着弾位置調節部88に、接続端子Kを介してグランドに接続される。なお、第2の吐出方向切換部86は、上述した第1の吐出方向切換部85と同様の回路構成であり、同様の動作、処理が行われることから詳細な説明を省略する。
【0119】
第1の着弾位置調節部87は、上述した第1の着弾位置制御部83と組み合わされることで発熱抵抗体52bに供給される電流値をさらに調節し、発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向におけるインク液滴iの着弾位置をさらに細かく調節する。
【0120】
この第1の着弾位置調節部87を示す等価回路図を図20に示す。この第1の着弾位置調節部87は、直列状態に接続された抵抗131,132と、オン/オフの切換により抵抗131,132に供給される電流を制御するスイッチングトランジスタ133,134,135と、入力された二値(「0」又は「1」)の制御入力信号を論理計算して制御信号をスイッチングトランジスタ133,134,135に発信する論理回路136と、論理回路136に入力される制御入力信号が入力される入力端子137a,137bとを備えている。また、この第1の着弾位置調節部87は、図17及び図20に示すように、接続端子Jを介して第1の吐出方向切換部85に接続され、接続端子Mを介して電源81bに接続される。
【0121】
スイッチングトランジスタ133,134,135は、第1の着弾位置調節部83に流れる電流の変化させるための切換スイッチであり、ゲート133a,134a,135a、ソース133b,134b,135b、ドレイン133c,134c,135cをそれぞれ備えている。そして、スイッチングトランジスタ133は、ゲート133aが論理回路136に接続され二値信号の入力部となり、ソース133bが接続端子Jを介して第1の吐出方向切換部85に接続され、ドレイン133cが接続端子Mを介して電源81bに接続される。スイッチングトランジスタ134は、ゲート134aが論理回路136に接続され、ソース134bが抵抗131,132の間に接続され、ドレイン134cが接続端子Mに接続される。スイッチングトランジスタ135は、ゲート135aが論理回路136に接続され、ソース135bが抵抗132の抵抗131に接続される一端と反対側の他端に接続され、ドレイン135cが接続端子Mに接続される。
【0122】
論理回路136は、論理積を出力する二入力一出力のAND回路141,142,143を備えている。AND回路141は、出力部がスイッチングトランジスタ133のゲート133aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子137aに、他方が入力端子137bに接続されている。AND回路142は、出力部がスイッチングトランジスタ134のゲート134aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子137aにインバータ142aを介して接続され、他方が入力端子137bに接続されている。AND回路143は、出力部がスイッチングトランジスタ135のゲート135aに接続され、2つの入力部のうち、一方が入力端子137aに接続され、他方が入力端子137bにインバータ143aを介して接続されている。インバータ142a,143aは、入力端子137a,137bより入力された制御入力信号を反転させてAND回路142,143に入力する。
【0123】
このような構成の第1の着弾位置調節部87は、入力端子137a,137bにともに「0」の制御入力信号が入力されると、論理回路136におけるAND回路141,142,143における各出力値は「0」となり、スイッチングトランジスタ133,134,135が全てオフの状態になり接続端子F,Gの間は絶縁状態になる。このため、第1の着弾位置調節部87では、スイッチングトランジスタ133,134,135が全てオフになると、接続端子J,Mの間が絶縁状態になることから、入力端子137a,137aに制御入力信号として「0」が同時に入力されることがないように入力端子137a,137aに入力される制御入力信号を制御する。これにより、第1の着弾位置調節部87では、スイッチングトランジスタ133,134,135が全てオフ状態になることが無く、スイッチングトランジスタ133,134,135のうちの何れかがオン状態のとき、他に2つは必ずオフ状態になる。
【0124】
第1の着弾位置調節部87は、入力端子137aに「1」、入力端子137bに「0」の制御入力信号が入力されると、論理回路136におけるAND回路135の出力値だけが「1」となり、スイッチングトランジスタ135だけがオンの状態になり接続端子J,Mの間は抵抗131,132が直列で接続された状態になって最も大きな電気抵抗を示すことになる。
【0125】
第1の着弾位置調節部87は、入力端子137aに「0」、入力端子137bに「1」の制御入力信号が入力されると、論理回路136におけるAND回路134の出力値だけが「1」となり、スイッチングトランジスタ134だけがオンの状態になり接続端子J,Mの間は抵抗131だけが接続された状態になって二番目に大きな電気抵抗を示すことになる。
【0126】
第1の着弾位置調節部87は、入力端子137a,137bにともに「1」の制御入力信号が入力されると、論理回路136におけるAND回路133の出力値だけが「1」となり、スイッチングトランジスタ133だけがオンの状態になって接続端子J,Mの間に抵抗体が介在されることなく最も小さな電気抵抗を示すことになる。
【0127】
このように、第1の着弾位置調節部87は、スイッチングトランジスタ133,134,135を切り換えることで接続端子J,Mの間の電気抵抗を変化させ、第1の着弾位置制御部83に供給される電流を制御する。
【0128】
図17に示す第2の着弾位置調節部87は、上述した第2の着弾位置制御部84と組み合わされることで発熱抵抗体52cに供給される電流値をさらに調節し、インク供給口55aよりインク4が供給される方向におけるインク液滴iの着弾位置をさらに細かく調節する。また、この第2の着弾位置調節部88は、接続端子Iを介して第2の吐出方向切換部86に接続され、接続端子Mを介して電源81bに接続される。なお、第2の着弾位置調節部88は、上述した第1の着弾位置調節部87と同様の回路構成であり、同様の動作、処理が行われることから詳細な説明を省略する。
【0129】
以上のような構成の吐出制御部73では、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83d及び第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dをオフにして第1の着弾位置制御部83が発熱抵抗体52a,52bと絶縁状態、第2の着弾位置制御部84が発熱抵抗体52cと絶縁状態のとき、電源スイッチ82をオンにすると、電源81aから電流が直列に接続された発熱抵抗体52a,52b及び発熱抵抗体52cに供給される(着弾位置制御部83,84には電流が流れない)。このとき、抵抗値が略同一な発熱抵抗体52a,52bは、電流が供給されると発生する熱量が略同一になる。また、発熱抵抗体52a,52bより面積が大きくされた発熱抵抗体52cは、電流が供給されると発生する熱量が発熱抵抗体52a,52bで発生された熱量より大きくなる。
【0130】
この場合、ヘッドチップ28では、発熱抵抗体52a,52bで発生する熱量が略同一、発熱抵抗体52cで発生する熱量が発熱抵抗体52a,52bより大きいことから、インク液室55内でインク気泡を側壁53a側よりインク供給口55a側で早く成長する。これにより、ヘッドチップ28では、インク液室55内でインク4を押圧する圧力が側壁53a側とインク供給口55a側とで略同一となることから、インク4の吐出角度がインク4の着弾面に対して略垂直になるようにインク液滴iをノズル54aから吐出し、吐出されたインク液滴iが図17中151aで示す着弾点に着弾する。
【0131】
また、図17に示す吐出制御部73では、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dをオフにした状態で、電源スイッチ82をオンにし、第1の着弾位置制御部83における抵抗83a,83b,83cのうちの何れかとの接続をオンにし、第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85aをグランドに接続したときに、インク液滴iの吐出方向が発熱抵抗体52a,52bの並設方向、すなわち図21に示すように、図中矢印W方向における発熱量が小さい抵抗体側になり、図21中矢印W方向において、着弾点151aを中心に発熱量の小さい抵抗体側でインク液滴iの吐出方向を可変することができる。
【0132】
すなわち、第1の吐出方向切換部85によりグランドに接続された第1の着弾位置制御部83の抵抗83a,83b,83cの何れかに接続されることで、発熱抵抗体52bへ供給される電流量が少なくなり、直列状態の発熱抵抗体52a,52bにおける供給される電流に差異が生じ、両者に発生する熱量にも差異が生じることになる。
【0133】
この場合、第1の着弾位置制御部83では、抵抗83a,83b,83cそれぞれが異なる抵抗値となることから、切換スイッチ83dの切り換えで発熱抵抗体52bに供給される電流量を3段階に異ならせることができる。これにより、ヘッドチップ28は、発熱抵抗体52a,52bで発生する熱量に差異が生じさせ、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dの切り換えで発熱抵抗体52a,52bの気泡発生時間に3段階の時間差を持たせることができ、インク液滴iの吐出角度を発熱抵抗体52a,52bが並設された図21中矢印W方向において、着弾点151aから発熱抵抗体52b側に三段階に変化させることができる。
【0134】
具体的に、吐出制御部73は、図21に示すように、ノズル54aから略垂直にインク液滴iが吐出されて着弾した着弾点151aから発熱抵抗体52b側に三段階に分かれた着弾点151b,151c,151dの何れかにインク液滴iを着弾させるようにヘッドチップ28を制御する。
【0135】
更に詳しくは、第1の吐出方向切換部85がグランドに接続された状態で第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが抵抗値の最も大きい抵抗83cに接続されると、発熱抵抗体52bに供給される電流が最も大きくなり、発熱抵抗体52a,52bに供給される電流の差異が最も小さくなることから、インク液滴iは着弾点151aから最も近い位置の着弾点151bに着弾される。
【0136】
一方、第1の吐出方向切換部85がグランドに接続された状態で第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが抵抗値の最も小さい抵抗83aに接続されると、発熱抵抗体52bに供給される電流が最も小さくなり、発熱抵抗体52a,52bに供給される電流の差異が最も大きくなることから、インク液滴iは着弾点151aから最も遠い位置の着弾点151dに着弾される。
【0137】
また、吐出制御部73では、図17に示すように、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dをオフにした状態で、第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85aを切り換えて第1の着弾位置制御部83を電源81bと接続すると、インク液滴iの吐出方向を図21に示す着弾点151aを境にして第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85aをグランドに接続したときとは逆の方向にすることができる。この場合、発熱抵抗体52bには、電源81aから供給される電流の他に、電源81bからの電流も供給されることになる。
【0138】
すなわち、発熱抵抗体52a,52bの発熱状態が、第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85aをグランドに接続したときとは逆になる。これにより、インク液滴iは、ノズル54aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点151aを境に、第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85aをグランドに接続したときとは反対側の着弾位置に吐出方向を3段階に変化させて吐出されることになる。
【0139】
具体的に、第1の吐出方向切換部85が電源81bに接続された状態で第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが抵抗値の最も大きい抵抗83cに接続されると、電源81aからの電流と電源81bからの電流とが加算されて発熱抵抗体52bに供給される電流が最も小さくなり、発熱抵抗体52a,52bに供給される電流の差異が最も小さくなることから、インク液滴iは着弾点151aから最も近い位置の図21に示す着弾点151eに着弾される。
【0140】
一方、第1の吐出方向切換部85が電源81bに接続された状態で第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dが抵抗値の最も小さい抵抗83aに接続されると、電源81aからの電流と電源81bからの電流とが加算されて発熱抵抗体52bに供給される電流が最も大きくなり、発熱抵抗体52a,52bに供給される電流の差異が最も大きくなることから、インク液滴iは着弾点151aから最も遠い位置の図21に示す着弾点151gに着弾される。
【0141】
なお、吐出制御部73では、第1の着弾位置調節部87で発熱抵抗体52aに供給される電流値を更に調節することが可能であり、発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向におけるインク液滴iの着弾位置をさらに細かく調節することができる。具体的には、例えば着弾点151a,151b,151c,151d,151e,151f,151gそれぞれの間等に着弾するようにインク液滴iの吐出角度を調節することができる。
【0142】
このように、吐出制御部73では、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dをオフにしたときに、電源スイッチ81、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83d、第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85aを切り換えることで、インク液滴iのノズル54aからの吐出方向を発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向に7段階に変化させることができ、さらに第1の着弾位置制御部83と第1の着弾位置調節部87とを組み合わせることでインク液滴iの吐出方向を7段階以上に変化させることができる。具体的には、ノズル54aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点151aを中心に、発熱抵抗体52a,52bが並設されている方向に前後に50μm程度の範囲内にインク液滴iを着弾することができる。
【0143】
さらに、図17に示す吐出制御部73では、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dをオフにした状態で、電源スイッチ82をオンにし、第2の着弾位置制御部84における抵抗84a,84b,84cのうちの何れかとの接続をオンにし、第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86aをグランドに接続したときに、インク液滴iの吐出方向がインク供給口55aよりインク液室55にインク4が供給される方向とは反対の方向、すなわち図21中矢印E方向とは反対の方向になり、着弾点151aを中心にして図21中矢印E方向とは反対方向におけるインク液滴iの吐出角度を可変することができる。
【0144】
すなわち、第2の吐出方向切換部86によりグランドに接続された第2の着弾位置制御部84の抵抗84a,84b,84cの何れかに接続されることで、発熱抵抗体52cへ供給される電流量が少なくなり、発熱抵抗体52cは発生する熱量が第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dをオフにしたときより小さくなることから、インク液室55内のインク気泡が側壁53a側で早く成長する。これにより、ヘッドチップ28では、インク液室55内でインク4を押圧する圧力が側壁53a側で高くなることから、着弾点151aを中心にして図21中矢印E方向とは反対方向に吐出角度を変化させてインク液滴iを吐出できる。
【0145】
このとき、第2の着弾位置制御部84では、抵抗84a,84b,84cそれぞれが異なる抵抗値となっており、切換スイッチ84dの切り換えで発熱抵抗体52cに供給される電流量を3段階に異ならせることができることから、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dの切り換えで発熱抵抗体52cの気泡発生時間に3段階の時間差を持たせることができ、インク液滴iの吐出角度を図21中矢印E方向とは反対方向でインク液滴iの着弾位置を3段階に変化させることができる。
【0146】
具体的に、吐出制御部73は、図21に示すように、ノズル54aから略垂直にインク液滴iが吐出されて着弾した着弾点151aから、図21中矢印E方向とは反対方向に3段階に分かれた着弾点151h,151i,151jの何れかにインク液滴iを着弾させるようにヘッドチップ28を制御する。
【0147】
更に詳しくは、第2の吐出方向切換部86がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dが抵抗値の最も大きい抵抗84cに接続されると、発熱抵抗体52cに供給される電流が大きくなって発熱抵抗体52c上のインク気泡の成長が切換スイッチ84dをオフにしたときより遅くなることから、インク液室55内でインク4を押圧する側壁53a側の圧力に対してインク供給口55a側の圧力が切換スイッチ84をオフにしたときより小さくなり、インク液滴iは着弾点151aから図21中矢印E方向とは反対方向で最も近い位置の着弾点151hに着弾される。
【0148】
一方、第2の吐出方向切換部86がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dが抵抗値の最も小さい抵抗84aに接続されると、発熱抵抗体52cに供給される電流が最も小さくなって発熱抵抗体52c上のインク気泡の成長が切換スイッチ84dを抵抗84cに接続したときよりもさらに遅くなることから、インク液室55内でインク4を押圧する側壁53a側の圧力に対してインク供給口55a側の圧力が最も小さくなり、インク液滴iは着弾点151aから図21中矢印E方向とは反対方向で最も遠い位置の着弾点151jに着弾される。
【0149】
また、吐出制御部73では、図17に示すように、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dをオフにした状態で、第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86aを切り換えて第2の着弾位置制御部84を電源81bに接続させると、インク液滴iの吐出方向を図21に示す着弾点151aを境にして第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86aをグランドに接続したときとは逆の方向にすることができる。
【0150】
この場合、発熱抵抗体52cには、電源81aから供給される電流の他に、電源81bからの電流も供給されることになる。すなわち、発熱抵抗体52cは、第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86aをグランドに接続したときより高い温度で発熱する。これにより、インク液滴iは、ノズル54aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点151aを境に、第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86aをグランドに接続したときとは反対側の着弾位置に吐出方向を3段階に変化させて吐出されることになる。
【0151】
具体的に、第2の吐出方向切換部86がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dが抵抗値の最も大きい抵抗84cに接続されると、電源81aからの電流と電源81bからの電流とが加算されて発熱抵抗体52cに供給される電流が小さくなって発熱抵抗体52c上のインク気泡の成長が切換スイッチ84dをオフにしたときより早まることから、インク液室55内でインク4を押圧する側壁53a側の圧力に対してインク供給口55a側の圧力が切換スイッチ84dをオフにしたとより大きくなり、インク液滴iは着弾点151aから最も近い位置の図21に示す着弾点151kに着弾される。
【0152】
一方、第2の吐出方向切換部86がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dが抵抗値の最も小さい抵抗84aに接続されると、電源81aからの電流と電源81bからの電流とが加算されて発熱抵抗体52cに供給される電流が最も大きくなって発熱抵抗体52c上のインク気泡の成長が切換スイッチ84dを抵抗84cに接続したときよりもさらに早まることから、インク液室55内でインク4を押圧する側壁53a側の圧力に対してインク供給口55a側の圧力が最も大きくなり、インク液滴iは着弾点151aから最も遠い位置の図21に示す着弾点151mに着弾される。
なお、吐出制御部73では、第2の着弾位置調節部88で発熱抵抗体52cに供給される電流値を更に調節することで、インク供給口55aよりインク4が供給される方向におけるインク液滴iの着弾位置をさらに細かく調節することができる。具体的には、例えば着弾点151a,151h,151i,151j,151k,151l,151mそれぞれの間等に着弾するようにインク液滴iの吐出角度を調節することができる。
【0153】
このように、吐出制御部73では、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dをオフにしたときに、電源スイッチ81、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84d、第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86aを切り換えることで、インク液滴iのノズル54aからの吐出方向をインク供給口55aよりインク4が供給される方向に7段階に変化させることができ、さらに第2の着弾位置制御部84と第2の着弾位置調節部88とを組み合わせることでインク液滴iの吐出方向を7段階以上に変化させることができる。具体的には、ノズル54aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点151aを中心に、インク供給口55aよりインク4が供給される方向に前後に50μm程度の範囲内にインク液滴iを着弾することができる。
【0154】
そして、吐出制御部73では、上述した着弾位置制御部83,84、吐出方向切換部85,86、着弾位置調節部87,88を同時に制御することが可能であり、ノズル54aを中心にして360°全方向に吐出角度を変化させることができる。
【0155】
具体的には、例えば電源スイッチ82をオンにし、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dを抵抗83a,83b,83cの何れかと接続させ、第1の吐出方向切換部85をグランドに接続させ、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dを抵抗84a,84b,84cの何れかと接続させ、第2の吐出方向切換部86をグランドに接続させたとき、ノズル54aより吐出されたインク液滴iが図21に示す着弾点151b,151c,151dと着弾点151h,151i,151jとの間に着弾されるように吐出方向を制御する。また、例えば電源スイッチ82をオンにし、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dを抵抗83a,83b,83cの何れかと接続させ、第1の吐出方向切換部85を電源81bに接続させ、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dを抵抗84a,84b,84cの何れかと接続させ、第2の吐出方向切換部86をグランドに接続させたとき、ノズル54aより吐出されたインク液滴iが図21に示す着弾点151e,151f,151gと着弾点151h,151i,151jとの間に着弾されるように吐出方向を制御する。さらに、例えば電源スイッチ82をオンにし、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dを抵抗83a,83b,83cの何れかと接続させ、第1の吐出方向切換部85をグランドに接続させ、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dを抵抗84a,84b,84cの何れかと接続させ、第2の吐出方向切換部86を電源81bに接続させたとき、ノズル54aより吐出されたインク液滴iが図21に示す着弾点151b,151c,151dと着弾点151k,151l,151mとの間に着弾されるように吐出方向を制御する。さらにまた、例えば電源スイッチ82をオンにし、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83dを抵抗83a,83b,83cの何れかと接続させ、第1の吐出方向切換部85を電源81bに接続させ、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84dを抵抗84a,84b,84cの何れかと接続させ、第2の吐出方向切換部86を電源81bに接続させたとき、ノズル54aより吐出されたインク液滴iが図21に示す着弾点151e,151f,151gと着弾点151k,151l,151mとの間に着弾されるように吐出方向を制御する。
【0156】
なお、以上では、発熱抵抗体52a,52b,52cに略同じ値の電流が供給されたときにインク液滴iをノズル54aより略真下に吐出するような抵抗値にされた発熱抵抗体52a,52b,52cを備えるヘッドチップ28を吐出制御部73が制御する場合について説明したが、このことに限定されることはなく、例えば複数の発熱抵抗体に異なる値の電流が供給されたときにインク液滴iをノズル54aより略真下に吐出するような抵抗値にされた複数の発熱抵抗体を備えるヘッドチップにも適用可能である。また、以上では、発熱抵抗体52bに供給される電流値を制御したが、このことに限定されることはなく、例えば発熱抵抗体52aに供給される電流値を制御して記録紙Pの幅方向における吐出方向を変化させることも可能である。さらに、吐出制御部73では、発熱抵抗体52a,52b,52cに対する電流の供給をスイッチングトランジスタ等がオン/オフされることでインク液滴iの吐出方向を制御しているが、このことに限定されることはなく、例えばデジタル回路等を使用してインク液滴iが離散的に記録紙Pに着弾するように制御することも可能である。
【0157】
図16に示す入出力端子74は、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報をインタフェースを介して外部の情報処理装置78等に送信する。また、入出力端子74は、外部の情報処理装置78等から、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を出力する制御信号や、印刷データ等が入力される。ここで、上述した情報処理装置78は、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
【0158】
情報処理装置78等と接続される入出力端子74は、インタフェースとして、例えばシリアルインタフェースやパラレルインタフェース等を用いることができ、具体的にUSB(Universal Serial Bus)、RS(Recommended Standard)222c、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等の規格に準拠したものである。また、入出力端子74は、情報処理装置78との間で有線通信又は無線通信の何れ形式でデータ通信を行うようにしてもよい。なお、この無線通信規格としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11g等がある。
【0159】
ROM75は、例えばEP−ROM(Erasable Programmable Read−Only Memory)等のメモリであり、制御部77が行う各処理のプログラムが格納されている。この格納されているプログラムは、制御部77によりRAM76にロードされる。RAM76は、制御部77によりROM75から読み出されたプログラムや、プリンタ装置1の各種状態を記憶する。
【0160】
入出力端子74と情報処理装置78との間には、例えばインターネット等のネットワークが介在していてもよく、この場合、入出力端子74は、例えばLAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、xDSL(Digital Subscriber Line)、FTHP(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)、BS(Broadcasting Satellite)等のネットワーク網に接続され、データ通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種プロトコルにより行われる。
【0161】
制御部77は、入出力端子74から入力された印刷データ及び制御信号や、インク残量検出手部36による電気抵抗値の変化等に基づき、各部を制御する。制御部77、このような処理プログラムとしてROM75から読み出してRAM76に記憶し、このプログラムに基づき各処理を行う。
【0162】
この制御部77は、吐出制御を行う処理プログラムをROM75から読み出してRAM76に記憶し、このプログラムに基づき、吐出制御部73の電源スイッチ82、第1の着弾位置制御部83の切換スイッチ83d、第2の着弾位置制御部84の切換スイッチ84d、第1の吐出方向切換部85の切換スイッチ85a、第2の吐出方向切換部86の切換スイッチ86a等のオン/オフを切り換えてインク液滴iの吐出方向を制御する。
【0163】
そして、制御部77は、以上のような制御に限定されることはなく、記録紙Pに印刷された状態を測定し、この測定結果に基づいた濃度分布を以てインク液滴iが記録紙Pに着弾するように、インク液滴iの吐出方向を吐出制御部73によって制御させることもできる。
【0164】
なお、以上のように構成された制御回路71においてROM75にプログラムを格納するようにしたが、プログラムを格納する媒体としては、ROMに限定されるものでなく、例えばプログラムが記録された光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、ICカード等の各種記録媒体を用いることができる。この場合に制御回路71は、各種記録媒体を駆動するドライブと直接又は情報処理装置78を介して接続されてこれら記録媒体からプログラムを読み出すように構成する。また、制御回路71は、上述した構成の他に、例えば印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段等も備えている。
【0165】
次に、以上のように構成されるプリンタ装置1の全体の動作について図22に示すフローチャートを参照にして説明する。なお、本動作はROM75等の記憶手段に格納された処理プログラムに基づいて制御部77内の図示しないCPU(Central Processing Unit)の処理に基づいて実行されるものである。
【0166】
先ず、ユーザが情報処理装置78で印刷する文字データ、印刷データ等を選択し、印刷実行操作をすると、情報処理装置78は、選択されたデータより印刷データを生成し、プリンタ装置1の入出力端子74に生成した印刷データを出力する。
【0167】
次に、制御部77は、ステップS1において、各装着部22y,22m,22c,22kに所定のインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着されているかどうかを判断する。そして、制御部77は、全ての装着部22にインクカートリッジ11が適切に装着されているときはステップS2に進み、少なくとも1の装着部22においてインクカートリッジ11が適切に装着されていないときはステップS4に進み、印刷動作を禁止する。
【0168】
制御部77は、ステップS2において、接続部26内のインク4が所定量以下、すなわちインク無し状態であるか否かを判断し、インク無し状態であると判断されたときはステップS3において、表示手段等にその旨を表示、すなわち警告表示を行い、ステップS4において、印刷動作を禁止する。
【0169】
また、制御部77は、接続部26内のインク4が所定量以下でないとき、すなわちインク4が満たされているとき、ステップS5において、印刷動作を許可する。
【0170】
印刷動作を行う場合、制御部77は、図23に示すように、ヘッドキャップ開閉機構63を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ29をヘッドカートリッジ2に対してトレイ65a側に移動させ、ヘッドチップ28のノズル54aを露出させる。
【0171】
そして、制御部77は、給排紙機構64を構成する駆動モータを駆動させて記録紙Pを走行させる。具体的に、制御部77は、トレイ65aから給紙ローラ161によって記録紙Pを引き出し、互いに反対方向に回転する一対の分離ローラ162a,162bによって引き出された記録紙Pの一枚を反転ローラ163に搬送して搬送方向を反転させた後に搬送ベルト164に記録紙Pを搬送し、搬送ベルト164に搬送された記録紙Pを押さえ手段165が所定の位置に停止させることでインク4が着弾される位置が位置決めされるように給排紙機構64を制御する。
【0172】
これと共に、制御部77は、吐出制御部73がヘッドチップ28よりインク液滴iを記録紙Pに吐出する制御を行うようにする。具体的には、図24及び図25に示すように、インク液室55内のインク4の発熱抵抗体52a,52b,52cに接する部分には、インク気泡N,O,Pが発生し、図26及び図27に示すように、そのインク気泡N,O,Pの膨張によってインク気泡N,O,Pの膨張分の体積と等しい体積のインク4が押しのけられる。これによって、ノズル54aに接する部分の押しのけられたインク4と同等の体積のインク液滴iがノズル54aから吐出され、記録紙P等の被記録物に着弾し、記録紙Pには、印刷データに応じた文字、画像等が印刷される。
【0173】
このとき、ヘッドチップ28は、インク気泡N,O,Pそれぞれの膨張の具合によりインク液滴iのノズル54aから吐出方向を決定する。すなわち、ヘッドチップ28では、インク気泡N,O,Pのうちの膨張する速度が早い方がインク4をより押圧することからノズル54aを中心に気泡の膨張が遅い側に押し出すようにインク液滴iを吐出させる。また、発熱抵抗体52c上に発生したインク気泡Pがインク液滴iをノズルより略真下に吐出したときの大きさよりも小さい場合、側壁53aにより高くされたインク液室55内でインク4を押圧する側壁53a側の圧力を、発熱抵抗体52c上に発生したインク気泡のインク4を押圧する圧力で相殺することが困難となり、インク供給口55aよりインクが供給される方向とは略反対方向、すなわち図27中矢印E方向とは略反対方向にインク液滴iが吐出される。さらに、発熱抵抗体52c上に発生したインク気泡Pがインク液滴iをノズルより略真下に吐出したときの大きさよりも大きい場合、側壁53aにより高くされたインク液室55内でインク4を押圧する側壁53a側の圧力を、発熱抵抗体52c上に発生したインク気泡のインク4を押圧する圧力で相殺でき、インク供給口55aよりインクが供給される方向、すなわち図27中矢印E方向にインク液滴iが吐出される。
【0174】
これにより、ヘッドチップ28では、図28に示すように、例えばノズル54aがゴミ等で目詰まりして目詰まりしたノズル54aよりインク液滴iを吐出することが困難になっても、ノズル54aより吐出方向を変化させてインク液滴iを吐出、着弾点171,172,173,174,175に着弾可能なことから、目詰まりしたノズル54aより吐出されたインク液滴iの着弾位置が欠落して記録紙Pの走行方向、すなわち図28中矢印Q方向に沿った白スジ等を防止できる。
【0175】
さらには、例えばゴミ等がインク吐出孔を目詰まりさせないまでもノズル54aの近傍に付着してノズル54aより吐出されるインク液滴iの吐出方向が変わっても、インク液滴iの吐出方向を制御できることから、インク液滴iの着弾位置ずれにより白スジや色の濃度ムラが生じることを防止できる。
【0176】
なお、図28中171は記録紙Pの幅方向、すなわち図28中矢印R方向に並んだn番目のノズル54aより吐出されたインク液滴iの着弾点を示し、図28中172はn+1番目、図28中173はn+2番目、図28中174はn+4番目、図28中175はn+5番目のノズル54aより吐出されたインク液滴iの着弾点をそれぞれ示している。すなわち、図28は、n+3番目のノズル54aが目詰まりしてインク液滴iが吐出されなくても白スジが発生することがなく、むら無く適切にインク液滴iが記録紙Pに着弾していることを示している。
【0177】
以上ように、インク液滴iが吐出されると、インク液滴iを吐出したインク液室55内に吐出された量と同量のインク4がインク流路56から直ちに補充され、図8に示すように、元の状態に戻る。ヘッドチップ28からインク液滴iが吐出されると、付勢部材46の付勢力とダイアフラム49の付勢力とによってインク室42の開口部44を閉塞している弁45は、図7に示すように、ヘッドチップ28からインク液滴iが吐出された際に、開口部44分割されたインク流出路43側のインク室42のインク4の負圧が高まると、インク4の負圧によりダイアフラム49が大気圧により押し上げられて、弁シャフト48と共に弁45を付勢部材46の付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室42のインク流入路41側とインク流出路43側と間の開口部44が開放され、インク4がインク流入路41側からインク流出路43側に供給され、インク流路56にインクが補充される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム49が復元力により元の形状に戻り、付勢部材46の付勢力により弁シャフト48と共に弁45をインク室42が閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク液滴iを吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0178】
このようにして、給排紙機構64によって走行している記録紙Pには、順に印刷データに応じた文字や画像が印刷されることになる。そして、印刷が終了して記録紙Pは、排紙口66より排出される。
【0179】
このように構成されたプリンタ装置1では、インク液室55に設けられたインク供給口55aと対向して略平行に配置された発熱抵抗体52cに、発熱抵抗体52a,52bに供給される電流と略同じ若しくは異なる値の電流を供給することで、インク供給口55aからインク4が供給される方向と略平行方向に吐出するインク液滴iの吐出方向を制御できる。
【0180】
これにより、このプリンタ装置1では、インク液室55内に発生したインク4をノズル54aより吐出させるための圧力がインク供給口55a側で低くなってインク供給口55aよりインク4が供給される方向と略反対方向に吐出されるインク液滴iの吐出方向を制御できる。すなわち、このプリンタ装置1では、上述した吐出制御部74がヘッドチップ28におけるインク液滴iの吐出方向を制御することで、ノズル54aを中心にして360°全方向に吐出角度を変化させてインク液滴iを吐出できる。
【0181】
したがって、このプリンタ装置1では、例えばノズル54aがゴミ等で目詰まりして目詰まりしたノズル54aよりインク液滴iが吐出されずに記録紙Pにインク液滴iが着弾されない箇所が生じても、目詰まりしたノズル54a以外のノズル54aよりインク液滴iが着弾されない箇所にインク液滴iを着弾させて補填可能なことから、記録紙Pの走行方向に沿った白スジや色の濃度ムラ等を防止でき、高品質な画像を印刷できる。
【0182】
また、このプリンタ装置1では、従来のような印刷時にオーバーラップ部を設けることなく色の濃度ムラや白スジ等を防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して高品質な画像を印刷できる。
【0183】
以上のように、このプリンタ装置1では、例えば給排紙機構64の誤動作で記録紙Pの走行速度にムラが生じたり、ノズル54aの形成精度が悪くインク液滴iの着弾位置がずれたりしても、インク液滴iの吐出方向を制御した状態でインク4をノズル54aから吐出できることから、色の濃度ムラや白スジにより画質が劣化してしまうことを防止できる。
【0184】
以上では、プリント装置1に3つの発熱抵抗体52a,52b,52cを有するヘッドチップ28を用いた場合を例に挙げて説明したが、このことに限定されることはなく、例えば図29及び図30に示すヘッドチップ181のように、4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを有するものを用いた場合も上述した作用効果を得ることができる。
【0185】
このヘッドチップ181は、図29及び図30に示すように、インク4を加熱する4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dと、ベースとなる回路基板183と、インク液室186の側壁184aとなってインク4の漏れを防ぐフィルム184と、インク4が液滴の状態で吐出されるノズル185aが設けられたノズルシート185と、インク供給口186aを備えてインク4が供給される空間であるインク液室186と、インク4をヘッドチップ181に流入させるインク流路187とを有する。
【0186】
4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dは、制御回路から供給される電流により発熱し、インク液室186内のインク4を加熱して内圧を高める。これにより加熱されたインク4は、後述するノズルシート185に設けられたノズル185aからインク液滴iを吐出する。このヘッドチップ181において、回路基板183、フィルム184、ノズルシート185、インク液室186、インク流路187は、上述したヘッドチップ28と同様の構成であり、同様の動作、処理が行われることから詳細な説明を省略する。
【0187】
ヘッドチップ181は、インク液室186毎に4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dが設けられ、4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dが設けられたインク液室186を100個程度備えている。そして、ヘッドチップ181においては、プリンタ装置1の制御部77からの指令によって4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを発熱させ、発熱した4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを備えるインク液室186内のインク4を、インク液室186に対応するノズル185aから液滴の状態で吐出させる。すなわち、ヘッドチップ181において、結合されたインク流路187から流入したインク4が、インク供給口186aより供給されてインク液室186に満たされる。そして、4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dに短時間、例えば、1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dがそれぞれ急速に加熱され、その結果、インク4の発熱抵抗体182a,182b,182c,182dと接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張した体積分のインク4が押圧される(インク4が沸騰する)。これによって、ノズル185aに接する部分でインク気泡に押圧されたインク4と同等の体積のインク4がインク液滴iとしてノズル185aから吐出され、記録紙P上に着弾される。
【0188】
ヘッドチップ181においては、図31に示すように、1つのインク液室186内に、4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dのうち、発熱抵抗体182a,182bが記録紙Pの幅方向、すなわち図31中矢印W方向に略同面積で並設されている。そして、ヘッドチップ181においては、発熱抵抗体182a,182bより大きい面積の発熱抵抗体182cがこれら発熱抵抗体182a,182bとインク供給口186aとの間に配設され、発熱抵抗体182a,182bに対して略同じ又は小さい面積の発熱抵抗体182dがこれら発熱抵抗体182a,182bとインク供給口186aに対向する側壁174aとの間に配設されている。すなわち、1つのインク液室186内に、4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを備えるものである。なお、図31では、ノズル185aの位置を破線で示している。
【0189】
そして、発熱抵抗体182a,182b,182c,182dは、1つの発熱抵抗体を4つに分割したような形状になっており、任意の長さ、幅、厚みにして形成することでそれぞれ所望の抵抗値を以て形成させることが可能である。例えば発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを同じ抵抗値で形成し、それぞれに同じ電流を供給した場合、面積の最も大きい発熱抵抗体182c上に形成されるインク気泡が最も大きくなる。このように、面積が異なる発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを同じ抵抗値にさせる場合、例えば発熱抵抗体182a,182b,182c,182dをそれぞれ異なる厚みで形成することでそれぞれの抵抗値を略同じにすることができる。
【0190】
ここで、インク液室186内のインク4を沸騰させるためには、発熱抵抗体182a,182b,182c,182dに一定の電流を供給して発熱抵抗体182a,182b,182c,182dをそれぞれ加熱する必要がある。これは、この沸騰時のエネルギーでインク液滴iを吐出させるためである。そして、抵抗値が小さいと、流す電流を大きくする必要があるが、発熱抵抗体182a,182b,182c,182dの抵抗値はこれらを一体化させたときより高くなっていることから、少ない電流でインク液室186内のインク4を沸騰させることができる。これにより、ヘッドチップ181においては、電流を流すためのトランジスタ等を小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0191】
このヘッドチップ181においても、略平行に隣り合う発熱抵抗体182a,182b,182c,182d同士の間の距離が0.5μm〜3μm程度の範囲の寸法になっている。これにより、ヘッドチップ181では、ノズル185aから吐出されたインク液滴iの吐出速度が遅くなることがなく、インク液滴iを適切に吐出することができる。
【0192】
ところで、このヘッドチップ181では、上述したヘッドチップ28と同様、例えば4つの発熱抵抗体182a,182b,182c,182dの気泡発生時間が略同じになるようにしても、インク気泡によりインク液室186内に発生したインク4を押圧する圧力が、側壁174aの無いインク供給口186aから逃げてしまうことから、インク液室186内でインク4を押圧する圧力がインク供給口186aと対向する側壁174a側に比べてインク供給口186a側で低くなり、インク供給口186aよりインクが供給される方向とは略反対方向、すなわち図31中矢印E方向とは略反対方向にインク液滴iが吐出されてしまう。
【0193】
そこで、チップヘッド181でも、上述したヘッドチップ28と同様に、図32に示す吐出制御部191により発熱抵抗体182a,182b,182c,182dに供給される電流値を制御することで、発熱抵抗体182a,182b,182c,182dの気泡発生時間をそれぞれ制御し、インク液滴iがノズル185aから吐出する吐出角度、すなわち吐出方向を制御させるようにする。
【0194】
ここで、ヘッドチップ181におけるインク液滴iの吐出方向を制御する吐出制御部191について説明する。この吐出制御部191は、図32に示すように、発熱抵抗体182a,182b,182c,182dに電流を供給するための電源192a,192bと、電源192aと発熱抵抗体182a,182b,182c,182dとの電気的な接続をオン/オフさせる電源スイッチ193と、発熱抵抗体182a,182bに接続されて記録紙Pの幅方向におけるインク液滴iの着弾位置を制御する第1の着弾位置制御部194と、発熱抵抗体182c,182dに接続されて記録紙Pの走行方向におけるインク液滴iの着弾位置を制御する第2の着弾位置制御部195と、第1の着弾位置制御部194に接続されノズル185aを中心にして吐出方向を切り換える第1の吐出方向切換部196と、第2の着弾位置制御部195に接続されノズル185aを中心にして吐出方向を切り換える第2の吐出方向切換部197と、第1の吐出方向切換部196と電源192bとの間に位置する第1の着弾位置調節部198と、第2の吐出方向切換部197と電源192bとの間に位置する第2の着弾位置調節部199とを備える電気回路である。
【0195】
電源192aは、発熱抵抗体182a,182dに接続され、電源81bは着弾位置調節部198,199に接続され、それぞれが電気回路に電流を供給する。
【0196】
電源スイッチ193は、発熱抵抗体182b,182cとグランドとの間に配置され、吐出制御部191全体のオン/オフを制御する。
【0197】
第1の着弾位置制御部194は、直列に接続された発熱抵抗体182a,182bの間の中点に接続され、発熱抵抗体182bに供給される電流を制御するための抵抗194a,194b,194cと、これら抵抗194a,194b,194cと発熱抵抗体182a,182bとの間に配置される切換スイッチ194dとを備えている。この第1の着弾位置制御部194は、抵抗194a,194b,194cが異なる抵抗値を有し、切換スイッチ194dの切り換えにより発熱抵抗体182bに供給される電流値を制御する。具体的に、抵抗194cが最も抵抗値が大きく、次いで抵抗194bが大きく、抵抗194aの抵抗値が最も小さくなっており、発熱抵抗体182bに供給される電流値は、切換スイッチ194dが抵抗194a,194b,194cの何れに接続されるかによって決まる。
【0198】
第2の着弾位置制御部195は、直列に接続された発熱抵抗体182c,182dの間の中点に接続され、発熱抵抗体182cに供給される電流を制御するための抵抗195a,195b,195cと、これら抵抗195a,195b,195cと発熱抵抗体182c,182dとの間に配置される切換スイッチ195dとを備えている。この第1の着弾位置制御部195も、異なる抵抗値の抵抗195a,195b,195の何れに切換スイッチ195dが接続されるかによって発熱抵抗体182cに供給される電流値を決定する。
【0199】
第1の吐出方向切換部196は、切換スイッチ196aを備え、この切換スイッチ196aを切り換えることで、第1の着弾位置制御部194を第1の着弾位置調節部198を介して電源192bに接続させるか若しくはグランドに接続させる。
【0200】
第2の吐出方向切換部197は、切換スイッチ197aを備え、この切換スイッチ197aを切り換えることで、第2の着弾位置制御部195を第2の着弾位置調節部199を介して電源192bに接続させるか若しくはグランドに接続させる。
【0201】
第1の着弾位置調節部198は、第1の着弾位置制御部194と組み合わされることで発熱抵抗体182bに供給される電流値をさらに調節する。
【0202】
第2の着弾位置調節部199は、第2の着弾位置制御部195と組み合わされることで発熱抵抗体182cに供給される電流値をさらに調節する。
【0203】
なお、吐出制御部191において、第1の着弾位置制御部194、第2の着弾位置制御部195、第1の吐出方向切換部196、第2の吐出方向切換部197、第1の着弾位置調節部198、第2の着弾位置調節部199は、上述した吐出制御部73に備わる各手段と同様の回路構成であり、同様の動作、処理が行われることから詳細な説明を省略する。
以上のような構成の吐出制御部191では、第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194d及び第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dをオフにして第1の着弾位置制御部194が発熱抵抗体182a,182bと絶縁状態、第2の着弾位置制御部195が発熱抵抗体182c,182dと絶縁状態のとき、電源スイッチ193をオンにすると、電源192aから電流が直列に接続された発熱抵抗体182a,182b及び発熱抵抗体182c,192dに供給される(着弾位置制御部194,195には電流が流れない)。このとき、抵抗値が略同一な発熱抵抗体182a,182bは、電流が供給されると発生する熱量が略同一になる。また、発熱抵抗体182a,182b,182dより面積が大きくされた発熱抵抗体182cは、電流が供給されると発生する熱量が発熱抵抗体182a,182b,182dで発生された熱量より大きくなる。
【0204】
この場合、ヘッドチップ181では、発熱抵抗体182a,182b,182dで発生する熱量が略同一、発熱抵抗体182cで発生する熱量が発熱抵抗体182a,182b,182dより大きいことから、インク液室186内でインク気泡を側壁184a側よりインク供給口186a側で早く成長する。これにより、ヘッドチップ181では、図33に示すように、インク液室186内でインク4を押圧する圧力が側壁184a側とインク供給口186a側とで略同一となることから、インク4の吐出角度がインク4の着弾面に対して略垂直になるようにインク液滴iをノズル185aから吐出し、吐出されたインク液滴iが図33中201aで示す着弾点に着弾する。
【0205】
また、図32に示す吐出制御部191では、第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dをオフにした状態で、電源スイッチ193をオンにし、第1の着弾位置制御部194における抵抗194a,194b,194cのうちの何れかとの接続をオンにし、第1の吐出方向切換部196の切換スイッチ196aをグランドに接続したときに、インク液滴iの吐出方向が発熱抵抗体182a,182bの並設方向、すなわち図33中矢印W方向における発熱量が小さい抵抗体側になり、図33中矢印W方向において、着弾点201aを中心に発熱量の小さい抵抗体側でインク液滴iの吐出方向を可変することができる。
【0206】
すなわち、第1の吐出方向切換部196によりグランドに接続された第1の着弾位置制御部194の抵抗194a,194b,194cの何れかに接続されることで、発熱抵抗体182bへ供給される電流量が少なくなり、直列状態の発熱抵抗体182a,182bに供給される電流に差異が生じ、両者に発生する熱量にも差異が生じることになる。この場合、第1の着弾位置制御部194では、抵抗194a,194b,194cそれぞれが異なる抵抗値となることから、切換スイッチ194dの切り換えで発熱抵抗体182bに供給される電流量を3段階に異ならせることができる。
【0207】
これにより、ヘッドチップ181は、発熱抵抗体182a,182bで発生する熱量に差異を生じさせ、第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dの切り換えで発熱抵抗体182a,182bの気泡発生時間に3段階の時間差を持たせることができ、インク液滴iの吐出角度を発熱抵抗体182a,182bが並設された図33中矢印W方向において、着弾点201aから発熱抵抗体182b側に3段階に変化させることができる。
【0208】
具体的に、吐出制御部191は、図33に示すように、ノズル185aから略垂直にインク液滴iが吐出されて着弾した着弾点201aから発熱抵抗体182b側に3段階に分かれた着弾点201b,201c,201dの何れかにインク液滴iを着弾させるようにヘッドチップ181を制御する。
【0209】
更に詳しくは、第1の吐出方向切換部196がグランドに接続された状態で第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dが抵抗値の最も大きい抵抗194cに接続されると、発熱抵抗体182bに供給される電流が最も大きくなり、発熱抵抗体182a,182bに供給される電流の差異が最も小さくなることから、インク液滴iは着弾点201aから最も近い位置の着弾点201bに着弾される。
【0210】
一方、第1の吐出方向切換部196がグランドに接続された状態で第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dが抵抗値の最も小さい抵抗194aに接続されると、発熱抵抗体182bに供給される電流が最も小さくなり、発熱抵抗体182a,182bに供給される電流の差異が最も大きくなることから、インク液滴iは着弾点201aから最も遠い位置の着弾点201dに着弾される。
【0211】
また、吐出制御部191では、図32に示すように、第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dをオフにした状態で、第1の吐出方向切換部196の切換スイッチ196aを切り換えて第1の着弾位置制御部194を電源81bと接続すると、インク液滴iの吐出方向を図33に示す着弾点201aを境にして第1の吐出方向切換部196の切換スイッチ196aをグランドに接続したときとは逆の方向にすることができる。
【0212】
この場合、発熱抵抗体182bには、電源192aから供給される電流の他に、電源192bからの電流も供給されることになる。すなわち、発熱抵抗体182a,182bの発熱状態が、第1の吐出方向切換部196の切換スイッチ196aをグランドに接続したときとは逆になる。これにより、インク液滴iは、ノズル185aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点201aを境に、第1の吐出方向切換部196の切換スイッチ196aをグランドに接続したときとは反対側の着弾位置に吐出方向を3段階に変化させて吐出されることになる。
【0213】
具体的に、例えば第1の吐出方向切換部196が電源192bに接続された状態で第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dが抵抗値の最も大きい抵抗194cに接続されると、電源192aからの電流と電源192bからの電流とが加算されて発熱抵抗体182bに供給される電流が最も小さくなり、発熱抵抗体182a,182bに供給される電流の差異が最も小さくなることから、インク液滴iは着弾点201aから最も近い位置の図21に示す着弾点201eに着弾される。
【0214】
一方、第1の吐出方向切換部196が電源192bに接続された状態で第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dが抵抗値の最も小さい抵抗194aに接続されると、電源192aからの電流と電源192bからの電流とが加算されて発熱抵抗体182bに供給される電流が最も大きくなり、発熱抵抗体182a,182bに供給される電流の差異が最も大きくなることから、インク液滴iは着弾点201aから最も遠い位置の図21に示す着弾点201gに着弾される。
【0215】
なお、吐出制御部191では、第1の着弾位置調節部198で発熱抵抗体182aに供給される電流値を更に調節することが可能であり、発熱抵抗体182a,182bが並設されている方向におけるインク液滴iの着弾位置をさらに細かく調節することができる。具体的には、例えば着弾点201a,201b,201c,201d,201b,201f,201gそれぞれの間等に着弾するようにインク液滴iの吐出角度を調節することができる。
【0216】
このように、吐出制御部191では、第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dをオフにしたときに、電源スイッチ81、第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194d、第1の吐出方向切換部196の切換スイッチ196aを切り換えることで、インク液滴iのノズル185aからの吐出方向を発熱抵抗体182a,182bが並設されている方向に7段階に変化させることができ、さらに第1の着弾位置制御部194と第1の着弾位置調節部198とを組み合わせることでインク液滴iの吐出方向を7段階以上に変化させることができる。具体的には、ノズル185aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点201aを中心に、発熱抵抗体182a,182bが並設されている方向に前後に50μm程度の範囲内にインク液滴iを着弾することができる。
【0217】
さらに、図32に示す吐出制御部191では、第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dをオフにした状態で、電源スイッチ193をオンにし、第2の着弾位置制御部195における抵抗195a,195b,195cのうちの何れかとの接続をオンにし、第2の吐出方向切換部197の切換スイッチ197aをグランドに接続したときに、インク液滴iの吐出方向がインク供給口186aよりインク液室186にインク4が供給される方向とは反対の方向、すなわち図33中矢印E方向とは反対の方向になり、着弾点201aを中心にして図33中矢印E方向とは反対方向にインク液滴iの吐出方向を可変することができる。
【0218】
すなわち、第2の吐出方向切換部197によりグランドに接続された第2の着弾位置制御部195の抵抗195a,195b,195cの何れかに接続されることで、発熱抵抗体182cへ供給される電流量が少なくなり、発熱抵抗体182cは発生する熱量が第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dをオフにしたときより小さくなることから、もともと差があった発熱抵抗体182c、182dの発熱量が近づいて発熱抵抗体182c上のインク気泡の成長が遅くなる。これにより、ヘッドチップ181では、インク液室186内でインク4を押圧する圧力が側壁184a側で高くなることから、着弾点201aを中心にして図33中矢印E方向とは反対方向に吐出角度を変化させてインク液滴iを吐出できる。
【0219】
このとき、第2の着弾位置制御部195では、抵抗195a,195b,195cそれぞれが異なる抵抗値となっており、切換スイッチ195dの切り換えで発熱抵抗体182cに供給される電流量を3段階に異ならせることができることから、第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dの切り換えで発熱抵抗体182c,182dの気泡発生時間に3段階の時間差を持たせることができ、インク液滴iの吐出角度を図33中矢印E方向とは反対方向でインク液滴iの着弾位置を3段階に変化させることができる。
【0220】
具体的に、吐出制御部191は、図33に示すように、ノズル185aから略垂直にインク液滴iが吐出されて着弾した着弾点201aから、図33中矢印E方向とは反対方向に3段階に分かれた着弾点201h,201i,201jの何れかにインク液滴iを着弾させるようにヘッドチップ181を制御する。
【0221】
更に詳しくは、第2の吐出方向切換部197がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dが抵抗値の最も大きい抵抗195cに接続されると、発熱抵抗体182cに供給される電流が最も大きくなって発熱抵抗体182c上のインク気泡の成長が切換スイッチ195dをオフにしたときより遅くなることから、インク液室186内でインク4を押圧する側壁195a側の圧力に対してインク供給口186a側の圧力が切換スイッチ195dをオフにしたときより小さくなり、インク液滴iは着弾点201aから図21中矢印E方向とは反対方向で最も近い位置の着弾点201hに着弾される。
【0222】
一方、第2の吐出方向切換部197がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dが抵抗値の最も小さい抵抗195aに接続されると、発熱抵抗体182cに供給される電流が最も小さくなって発熱抵抗体182c上のインク気泡の成長が切換スイッチ195dを抵抗195cに接続したときよりさらに遅くなることから、インク液室186内でインク4を押圧する側壁195a側の圧力に対してインク供給口186a側の圧力が最も小さくなり、インク液滴iは着弾点201aから図33中矢印E方向とは反対方向で最も遠い位置の着弾点201jに着弾される。
【0223】
また、吐出制御部191では、図32に示すように、第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dをオフにした状態で、第2の吐出方向切換部197の切換スイッチ197aを切り換えて第2の着弾位置制御部195を電源192bに接続させると、インク液滴iの吐出方向を図33に示す着弾点201aを境にして第2の吐出方向切換部197の切換スイッチ197aをグランドに接続したときとは逆の方向にすることができる。この場合、発熱抵抗体182cには、電源192aから供給される電流の他に、電源192bからの電流も供給されることになる。すなわち、発熱抵抗体182cは、第2の吐出方向切換部197の切換スイッチ197aをグランドに接続したときより高い温度で発熱する。これにより、インク液滴iは、ノズル185aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点201aを境に、第2の吐出方向切換部197の切換スイッチ197aをグランドに接続したときとは反対側の着弾位置に吐出方向を3段階に変化させて吐出されることになる。
【0224】
具体的に、第2の吐出方向切換部197がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dが抵抗値の最も大きい抵抗195cに接続されると、電源192aからの電流と電源192bからの電流とが加算されて発熱抵抗体182cに供給される電流が最も小さくなって発熱抵抗体182c上のインク気泡の成長が切換スイッチ195dをオフにしたときより早まることから、インク液室186内でインク4を押圧する側壁195a側の圧力に対してインク供給口186a側の圧力が切換スイッチ195dをオフにしたときより大きくなり、インク液滴iは着弾点201aから最も近い位置の図33に示す着弾点201kに着弾される。
【0225】
一方、第2の吐出方向切換部197がグランドに接続された状態で第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195dが抵抗値の最も小さい抵抗195aに接続されると、電源192aからの電流と電源192bからの電流とが加算されて発熱抵抗体182cに供給される電流が最も大きくなって発熱抵抗体182c上のインク気泡の成長が切換スイッチ195dを195cに接続したときよりさらに早まることから、インク液室186内でインク4を押圧する側壁195a側の圧力に対してインク供給口186a側の圧力が最も大きくなり、インク液滴iは着弾点201aから最も遠い位置の図33に示す着弾点201mに着弾される。
【0226】
なお、吐出制御部191では、第2の着弾位置調節部199で発熱抵抗体182cに供給される電流値を更に調節することで、インク供給口186aよりインク4が供給される方向におけるインク液滴iの着弾位置をさらに細かく調節することができる。具体的には、例えば着弾点201a,201h,201i,201j,201k,201l,201mそれぞれの間に着弾するようにインク液滴iの吐出角度を調節することができる。
【0227】
このように、吐出制御部191では、第1の着弾位置制御部194の切換スイッチ194dをオフにしたときに、電源スイッチ81、第2の着弾位置制御部195の切換スイッチ195d、第2の吐出方向切換部197の切換スイッチ197aを切り換えることで、インク液滴iのノズル185aからの吐出方向をインク供給口186aよりインク4が供給される方向に7段階に変化させることができ、さらに第2の着弾位置制御部195と第2の着弾位置調節部199とを組み合わせることでインク液滴iの吐出方向を7段階以上に変化させることができる。具体的には、ノズル185aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点201aを中心に、インク供給口186aよりインク4が供給される方向に前後に50μm程度の範囲内にインク液滴iを着弾することができる。
【0228】
そして、この吐出制御部191では、上述した吐出制御部73と同様、着弾位置制御部194,195、吐出方向切換部196,197、着弾位置調節部198,199を同時に制御することが可能であり、ノズル185aを中心にして360°全方向に吐出角度を変化させることができる。てインク液滴iを吐出可能なことから、図33に示す着弾点201aを中心に360°全方向にインク液滴iを着弾させることができる。
【0229】
なお、以上では、発熱抵抗体182a,182b,182c,182dに略同じ値の電流が供給されたときにインク液滴iをノズル185aより略真下に吐出するような抵抗値にされた発熱抵抗体182a,182b,182c,182dを備えるヘッドチップ181を吐出制御部191が制御する場合について説明したが、このことに限定されることはなく、例えば発熱抵抗体182a,182b,182c,182dに異なる値の電流が供給されたときにインク液滴iをノズル185aより略真下に吐出するような抵抗値にされた発熱抵抗体を備えるヘッドチップ181にも適用可能である。また、以上では、発熱抵抗体195b,195cに供給される電流値を制御したが、このことに限定されることはなく、例えば発熱抵抗体195a,195dに供給される電流値を制御して吐出方向を変化させることも可能である。
【0230】
以上のような構成のヘッドチップ181でも、例えば目詰まりしたノズル185aよりインク液滴iを吐出することが困難になっても、目詰まりしてないノズル185aより吐出方向を変化させてインク液滴iを吐出、着弾可能なことから、目詰まりしたノズル185aより吐出されたインク液滴iの着弾位置が欠落して記録紙Pの走行方向に沿った白スジや色の濃度ムラ等を防止できる。
【0231】
なお、以上の例では、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインクカートリッジ11が着脱可能なプリンタ装置1を例に取り説明したが、プリンタ本体3とヘッドカートリッジ2とが一体のプリンタ装置に適用することもできる。
【0232】
また、以上の例では、記録紙に文字や画像を印刷するプリンタ装置を例に取り説明したが、本発明は、微少量の液体を吐出する他の装置に広く適用することができる。例えば、本発明は、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−34560号公報)やプリント配線基板の微細な配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置に適用することもできる。
【0233】
さらに、以上の例では、3つ若しくは4つの発熱抵抗体がインク4を加熱しながらインク液滴iを吐出させる電気熱変換素子等を採用しているが、このような方式に限定されず、例えば圧電素子、ピエゾ素子等の電気機械変換素子等によってインク液滴iを電気機械的に吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0234】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被記録物の走行速度にムラがあったり、吐出口の形成精度が悪く液体の着弾位置がずれたりしても、液体の吐出口からの吐出方向を制御しながら液体を吐出できることから、色の濃度ムラや白スジによる画質の劣化を防止できる。
【0235】
また、本発明によれば、印刷時にオーバーラップ部を設けることなく色の濃度ムラや白スジを防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して優れた画質の印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタ装置を示す斜視図である。
【図2】同インクジェットプリンタ装置に備わるインクジェットプリントヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図3】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された状態を示す断面図である。
【図4】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が弁により閉塞された状態を示す模式図である。
【図5】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が開放された状態を示す模式図である。
【図6】同インクジェットプリントヘッドカートリッジとヘッドチップの関係を示す断面図である。
【図7】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が閉じた状態を示す断面図である。
【図8】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が開いた状態を示す断面図である。
【図9】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップを示す断面図である。
【図10】同ヘッドチップを示す分解斜視図である。
【図11】同ヘッドチップを示す平面図である。
【図12】発熱抵抗体間の距離とインクの吐出速度との関係を示す特性図である。
【図13】並設された発熱抵抗体に供給される電流値の差とインク液滴の着弾位置ずれとの関係を示す特性図である。
【図14】インク供給口と対向する発熱抵抗体に供給される電流値とインク液滴の着弾位置ずれとの関係を示す特性図である。
【図15】同インクジェットプリンタ装置の一部を透視して示す側面図である。
【図16】同インクジェットプリンタ装置の制御回路を説明するブロック図である。
【図17】同インクジェットプリンタ装置に備わる吐出制御部を説明するための模式図である。
【図18】同吐出制御部の着弾位置制御部を説明するための等価回路図である。
【図19】同吐出制御部の吐出方向切換部を説明するための等価回路図である。
【図20】同吐出制御部の着弾位置調節部を説明するための等価回路図である。
【図21】同ヘッドチップより吐出したインク液滴の着弾点を模式的に示す平面図である。
【図22】同インクジェットプリンタ装置の制御方法を説明するフローチャートである。
【図23】同インクジェットプリンタ装置において、ヘッドキャップ開閉機構が開いている状態を一部透視して示す側面図である。
【図24】同ヘッドチップにおいてインク気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図25】同ヘッドチップにおいてインク気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図26】同ヘッドチップにおいて発生したインク気泡によりインク液滴がノズルより吐出される状態を示す断面図である。
【図27】同ヘッドチップにおいて発生したインク気泡によりインク液滴がノズルより吐出される状態を示す断面図である。
【図28】同ヘッドチップより吐出したインク液滴が記録紙に着弾した状態を模式的に示す平面図である。
【図29】同ヘッドチップの他の例を示す断面図である。
【図30】同ヘッドチップの他の例を示す分解斜視図である。
【図31】同ヘッドチップの他の例を示す平面図である。
【図32】同吐出制御部の他の例を説明するための模式図である。
【図33】同ヘッドチップより吐出したインク液滴の着弾点を模式的に示す平面図である。
【図34】従来のプリンタ装置で印刷を行ったときの色の濃度ムラや記録紙の幅方向に生じた白スジを模式的に示す平面図である。
【図35】同プリンタ装置による記録紙の走行方向に生じた白スジを模式的に示す平面図である。
【図36】同プリント装置に備わるヘッドチップを示す平面図である。
【図37】同ヘッドチップを示す断面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ装置、2 インクジェットプリントヘッドカートリッジ、3 プリンタ本体、4 インク、11 インクカートリッジ、21 カートリッジ本体、28,181 ヘッドチップ、51,183 回路基板、52a,52b,52c,182a,182b,182c,182d 発熱抵抗体、53,184 フィルム、53a,184a 側壁、54,185 ノズルシート、54a,185a ノズル、55,186 インク液室、55a,186aインク供給口、56,187 インク供給路、73,191 吐出制御部、77 制御部、81a,81b,192a,192b 電源、82,193 電源スイッチ、83,84,194,195 着弾位置制御部、83a,83b,83c,84a,84b,84c,194a,194b,194c,195a,195b,195c 抵抗、83d,84d,85a,86a,194d,195d,196a,197a 切換スイッチ、85,86,196,197 吐出方向切換部、87,88,198,199 着弾位置調節部、151,171,172,173,174,175,201 着弾点

Claims (6)

  1. 液体を収容する液室と、上記液室の側壁に設けられ、上記液室に上記液体を供給するための供給口と、上記液室に複数配置され、エネルギが供給されることで上記液室に収容された上記液体を押圧する圧力を発生させる圧力発生素子と、上記圧力発生素子による圧力に押圧された上記液室内の上記液体を吐出させるための吐出口とを有する吐出手段と、
    上記複数の圧力発生素子に、略同じ若しくは異なる上記エネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらして上記エネルギを供給し、上記吐出口より吐出される上記液体の吐出方向を制御する吐出方向制御手段とを有し、
    少なくとも上記複数の圧力発生素子のうちの一つが、上記液室に設けられた上記供給口と対向して略平行に配置され、
    上記吐出方向制御手段が、上記供給口と対向して略平行に配置された上記圧力発生素子に、他の上記圧力発生素子に供給される上記エネルギと略同じ若しくは異なる上記エネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらして上記エネルギを供給することで、上記供給口から上記液体が供給される方向と略平行方向に吐出される上記液体の吐出方向を制御する液体吐出装置。
  2. 上記吐出手段は、上記液室に3つ若しくは4つの上記圧力発生素子が配置されている請求項1記載の液体吐出装置。
  3. 上記吐出方向制御手段は、上記供給口と対向して略平行に配置された上記圧力発生素子に、他の上記圧力発生素子に供給される上記エネルギに比べて大きな上記エネルギを供給若しくは早いタイミングで上記エネルギを供給することで、上記供給口から上記液体が供給される方向と略同方向若しくは上記吐出口が設けられている面に対して略垂直方向に上記液体が吐出されるように上記液体の吐出方向を制御する請求項2記載の液体吐出装置。
  4. 液室に複数配置された圧力発生素子にエネルギを供給することで、上記液室の側壁に設けられた上記供給口より上記液室に供給された液体を押圧する圧力を発生させ、この圧力に押圧された上記液室内の上記液体を、上記液室に設けられた上記液体を吐出させるための吐出口より吐出させる液体吐出方法において、
    上記複数の圧力発生素子のうちの上記供給口と対向して略平行に配置させた上記圧力発生素子に、他の上記圧力発生素子に供給される上記エネルギと略同じ若しくは異なる上記エネルギを供給、又はタイミングを略同じ若しくはずらして上記エネルギを供給することで、上記供給口から上記液体が供給される方向と略平行方向に吐出される上記液体の吐出方向を制御することを特徴とする液体吐出方法。
  5. 上記液室に、3つ若しくは4つの上記圧力発生素子を配置させることを特徴とする請求項4記載の液体吐出方法。
  6. 上記3つ以上の圧力発生素子のうちの上記供給口と対向して略平行に配置された上記圧力発生素子に、他の上記圧力発生素子に供給される上記エネルギに比べて大きな上記エネルギを供給若しくは早いタイミングで上記エネルギを供給することで、上記供給口から上記液体が供給される方向と略同方向若しくは上記吐出口が設けられている面に対して略垂直方向に上記液体を上記吐出口より吐出させることを特徴とする請求項5記載の液体吐出方法。
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