JP4470379B2 - 液体吐出装置及び液体の吐出方法 - Google Patents

液体吐出装置及び液体の吐出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体内で気泡発生手段により発生した気泡が液体を押圧することで被記録物と対向する吐出孔より液体を吐出させる液体吐出装置及び液体の吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を吐出する装置として、対象物となる記録紙に対してヘッドチップよりインクを吐出させて、画像や文字を記録するプリンタ装置がある。プリンタ装置には、インクジェット方式があり、このインクジェット方式を用いたプリンタ装置は、低ランニングコスト、装置の小型化、印刷画像のカラー化が容易という利点がある。
【0003】
インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等のように複数の色のインクがそれぞれ充填されたインクカートリッジからヘッドチップのインク液室等に供給される。そして、このプリンタ装置では、インク液室等に供給されたインクを、インク液室内に配置された発熱抵抗体等で加熱し、発熱抵抗体上のインクに気泡を発生させ、この気泡が割れて消えるときのエネルギによりインクがヘッドチップに設けられた微小なインク吐出孔から吐出されて対象物となる記録紙等に対して画像や文字を印刷される。
【0004】
インクジェット方式のプリンタ装置の中には、インクカートリッジがインクヘッド部に装着され、インクカートリッジが装着されたインクヘッド部が記録紙の幅方向、すなわち記録紙の走行方向と略直交する方向に移動することによって所定の色のインクを記録紙に着弾させるシリアル型のプリンタ装置がある。また、記録紙の用紙幅とほぼ同じ範囲をインクの吐出範囲とした、すなわちライン状にインクを吐出するインク吐出孔が設けられたライン型のプリンタ装置がある。
【0005】
シリアル型のプリンタ装置は、インクヘッド部が記録紙の走行方向と略直交する方向に移動するときに記録紙の走行を停止させ、停止している記録紙にインクヘッド部が移動しながらインクを吐出、着弾させ、これを繰り返すことで印刷する。一方、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部が固定、若しくは印刷村を避けるための僅かな微動できる程度に固定されており、連続的に走行している記録紙にインクヘッド部がライン状にインクを吐出、着弾させることで印刷する。
【0006】
このため、このライン型のプリンタ装置は、シリアル型と異なりインクヘッド部を移動させないものであるから、シリアル型のプリンタ装置に比べて高速印刷を行うことが可能となる。また、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部を移動させる必要がないことから、各インクカートリッジを大型化することができ、インクカートリッジのインク容量を増やすことができる。このようなライン型のプリンタ装置では、インクヘッド部が移動するものではないため構成の簡素化を図ることができ、各インクカートリッジにインクヘッド部を一体的に設けるようにしている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−301199号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したライン型のプリンタ装置では、走行している記録紙にインクが着弾するタイミングの精度により画像や文字等の印刷精度が左右されてしまう。具体的に、例えば記録紙の走行速度が速いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に伸びて印刷されてしまい、記録紙の走行速度が遅いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に縮んで印刷されるといった問題が起こる。
【0009】
このような問題を解決するために、ライン型のプリンタ装置では、例えば記録紙を走行させるためのモータ等の制御にサーボモータ等を使用し、記録紙の走行速度にムラが出ないように走行速度を一定にすることで、記録紙にインクが着弾するタイミングを制御している。
【0010】
しかしながら、以上のようなサーボモータ等を用いた場合でも、図27に示すように、画像等の伸びや縮みは解消されるものの、記録紙にインクが着弾するタイミングに僅か数ミクロンの誤差があると、図27中矢印Xで示す記録紙の走行方向に色の濃度にムラが生じることがある。具体的には、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン遅れると、この部分の色の濃度が濃くなってしまう。一方、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン速まると、この部分の色の濃度が薄くなり、さらに記録紙の走行速度の制御が数十ミクロン、数百ミクロンのレベルで速まると、記録紙の走行方向と略直交方向に亘ってインクが着弾してない部分、いわゆる白スジが生じてしまう。そして、このような記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラや白スジは、例えば色調の階調が変化しないような印刷を行うときに顕著に現れてしまう。なお、図27中200はインクの着弾点を示している。
【0011】
また、ライン型のプリント装置においては、図28に示すように、例えば印刷の濃度を濃くするために記録紙の所定の位置にインクを複数回着弾させるときに、記録紙の走行速度が速まるような誤差があったり、インクヘッド部におけるインク吐出孔の形成精度が悪かったりすると、インクの着弾位置がずれてしまい、記録紙へのインクの染み込みが記録紙の走行方向に細長い楕円状になることがある。この場合、図28中矢印Xで示す記録紙の走行方向と略直交する方向に隣り合うインクの着弾位置の間に隙間が生じてしまい、記録紙の走行方向に沿った白スジが生じて画質が劣化してしまう虞がある。なお、図28中201はインクの着弾点を示している。
【0012】
特に、シリアル型のプリンタ装置では、記録紙の走行を停止させて印刷する際に、前回の印刷箇所と今回の印刷箇所との境界を所定の範囲で重なるような、いわゆるオーバーラップ部を設けた印刷を行うことで記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラを防止している。
【0013】
しかしながら、シリアル型のプリンタ装置では、オーバーラップ部を設けていることにより、印刷に係る時間が長くなったり、印刷に使用するインクの量が多くなったりするといった問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、印刷に係る時間を短時間にし、且つ高画質な印刷が得られる優れた液体吐出装置及び液体の吐出方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る液体吐出装置は、液体を収容する液室と、上記液室に一対配置され、電力が供給されることで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させる気泡発生手段と、上記気泡発生手段による上記気泡の発生に伴って上記液体を吐出させるための吐出孔とを有し、上記吐出孔が被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている吐出手段と、上記吐出孔と対向する位置に配置された被記録物を所定の方向に走行させる走行手段と、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させて上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる吐出方向制御手段とを備え、上記一対の気泡発生手段は、上記被記録物の走行する方向と同方向に並設され、上記吐出方向制御手段は、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に対して、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出する。
【0016】
以上のような液体吐出装置では、被記録物の走行する方向に対して略同方向に並設された2つ以上の気泡発生手段に、異なるエネルギを供給若しくはタイミングをずらしてエネルギを供給し、供給されるエネルギを周期的に変化させることで、吐出孔より吐出される液体の吐出方向を被記録物の走行する方向と略同方向にし、且つ吐出方向を周期的に変化させるようにしている。
【0017】
これにより、上述した液体吐出装置では、吐出方向が被記録物の走行する方向と略同方向で周期的に変化されて液体が吐出孔より吐出されることから、吐出孔より吐出されて被記録物に着弾した液体における被記録物の走行方向で隣接するもの同士が、これらの境界を補い合い、着弾した液体同士の境界を拡散させて目立たなくできる。
【0018】
本発明に係る液体吐出装置は、液体を収容する液室と、上記液室に一対配置され、電力が供給されることで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させる気泡発生手段と、上記気泡発生手段による上記気泡の発生に伴って上記液体を吐出させるための吐出孔とを有し、上記吐出孔が被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている吐出手段と、上記吐出孔と対向する位置に配置された被記録物を所定の方向に走行させる走行手段と、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を制御する吐出方向制御手段とを備え、上記一対の気泡発生手段は、上記被記録物の走行する方向と同方向に並設され、上記吐出方向制御手段は、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、上記液体を、走行している上記被記録物に、該被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出し、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように上記吐出方向を制御する。
【0019】
以上のような液体吐出装置では、被記録物の走行する方向に対して略同方向に並設された2つ以上の気泡発生手段に、異なるエネルギを供給若しくはタイミングをずらしてエネルギを供給することで、走行している被記録物に吐出孔より吐出された液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように吐出方向を制御させる。
【0020】
これにより、上述した液体吐出装置では、走行している被記録物に吐出孔より吐出させた液体を一回以上重ねて着弾させることにより、重なるように着弾した液体が着弾位置より略均一に拡散して隣接する着弾位置の境界を目立たなくできる。
【0021】
本発明に係る液体吐出装置は、被記録物を所定の方向に走行させる走行手段と、液体を収容する液室と、上記液室に上記被記録物の走行する方向と同方向一対並設され、エネルギが供給されることで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させる気泡発生手段と、上記被記録物と対向し、上記気泡発生手段による上記気泡の発生に伴って上記液体を吐出させるための吐出孔とを有し、上記吐出孔が上記被記録物の走行する方向に対して直交方向に、上記被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられ、上記被記録物に対して入力データに応じて上記液体を吐出する吐出手段と、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させることで、走行している上記被記録物に対する上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる第1の吐出方向制御手段と、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第3の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第3のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第4のスイッチング素子を介して、グランド又は第4の電源を選択的に接続し、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第4の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出し、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置を少なくとも一回以上重なるようにさせる第2の吐出方向制御手段と、上記入力データに応じて上記第1の吐出方向制御手段と、上記第2の吐出方向制御手段とを切り換える切換手段とを備え、上記切換手段は、上記入力データに基づいて、該入力データにおける各画素の彩度が所定の閾値より高いか低いかを判定し、低いと判定した場合、上記第1の吐出方向制御手段に切り換え、高いと判定した場合、上記第2の吐出方向制御手段に切り換える。
【0022】
以上のような液体吐出装置では、吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる第1の吐出方向制御手段と、走行している被記録物に吐出孔より吐出された液体が着弾するときの着弾位置を少なくとも一回以上重なるようにさせる第2の吐出方向制御手段とを入力データに応じて切換手段が切り換えることで、第1の吐出方向制御手段が印刷時の濃度ムラを防止し、入力データに色の濃い部分があるときにその部分の濃度ムラを第2の吐出方向制御手段が防止する。
【0023】
本発明に係る液体の吐出方法は、液室に配置された気泡発生手段に吐出方向制御手段により電力を供給することで上記液室に収容された液体内に気泡を発生させ、この気泡の発生に伴って上記液体を、被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている上記液体を吐出させるための吐出孔より、上記吐出孔と対向し且つ所定の方向に走行する被記録物に向かって吐出させる液体の吐出方法において、上記吐出方向制御手段は、上記被記録物が走行する方向に対して同方向に並設された一対の上記気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に対して、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させ、更に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させることで、上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる。
【0024】
以上のような液体の吐出方法では、被記録物の走行する方向に対して略同方向に並設された2つ以上の気泡発生手段に、異なるエネルギを供給若しくはタイミングをずらしてエネルギを供給し、供給されるエネルギを周期的に変化させることで、液体の吐出方向を被記録物の走行する方向に対して略同方向にさせ、且つ吐出方向を周期的に変化させるようにして液体を吐出孔より吐出させる。
【0025】
これにより、上述した液体の吐出方法では、吐出方向が被記録物の走行する方向に対して略同方向で周期的に変化されて液体が吐出孔より吐出されることから、吐出孔より吐出されて被記録物に着弾した液体における被記録物の走行方向で隣接するもの同士が、これらの境界を補い合い、被記録物に着弾した液体同士の境界が拡散して目立たなくなるように、液体を吐出孔より吐出できる。
【0026】
本発明に係る液体の吐出方法は、液室に配置された気泡発生手段に吐出方向制御手段により電力を供給することで上記液室に収容された液体内に気泡を発生させ、この気泡の発生に伴って上記液体を、被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている上記液体を吐出させるための吐出孔より、上記吐出孔と対向し且つ所定の方向に走行する被記録物に向かって吐出させる液体の吐出方法において、上記吐出方向制御手段は、上記被記録物が走行する方向に対して同方向に並設された一対の上記気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させる。
【0027】
以上のような液体の吐出方法では、被記録物の走行する方向に対して略同方向に並設された2つ以上の気泡発生手段に、異なるエネルギを供給若しくはタイミングをずらしてエネルギを供給することで、走行している被記録物に吐出孔より吐出された液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように吐出方向を制御させた状態で液体を吐出孔より吐出させる。
【0028】
これにより、上述した液体の吐出方法では、走行している被記録物に吐出孔より吐出させた液体を一回以上重ねて着弾させることで、重なるように着弾した液体が着弾位置より略均一に拡散して隣接する着弾位置の境界を目立たなくなるように、液体を吐出できる。
【0029】
本発明に係る液体の吐出方法は、液室に配置された気泡発生手段に第1及び第2の吐出方向制御手段により電力を供給することで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させ、この気泡の発生に伴って上記液体を、被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている上記液体を吐出させるための吐出孔より、上記吐出孔と対向し且つ所定の方向に走行する上記被記録物に向かって入力されたデータに応じて吐出させる液体の吐出方法において、上記第1の吐出方向制御手段は、上記被記録物が走行する方向に対して同方向に並設された一対の上記気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給し、上記第2の吐出方向制御手段は、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第3の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第3のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第4のスイッチング素子を介して、グランド又は第4の電源を選択的に接続し、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第4の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給し、上記第1の吐出方向制御手段により、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に対して、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させ、更に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させることで、走行している上記被記録物に対する上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる第の工程と、上記第2の吐出方向制御手段により、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させる第の工程とを有し、上記入力データに基づいて、該入力データにおける各画素の彩度が所定の閾値より高いか低いかを判定し、低いと判定した場合、上記第1の工程に切り換え、高いと判定した場合、上記第の工程に切り換える。
【0030】
以上のような液体の吐出方法では、吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる第2の工程と、走行している被記録物に吐出孔より吐出された液体が着弾するときの着弾位置を少なくとも一回以上重なるようにさせる第3の工程とを入力データに応じて第4の工程で切り換えることで、印刷時の濃度ムラを第2の工程で防止し、入力データに色の濃い部分があるときにその部分の濃度ムラを第3の工程で防止する印刷を被記録物に行うことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示すように、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置と記す。)1は、対象物となる記録紙に対してインク等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせてインク吐出孔を設けた、いわゆるライン型のプリンタ装置である。
【0033】
このプリンタ装置1は、インク4を吐出するインクジェットプリントヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジと記す。)2と、このヘッドカートリッジ2を装着するプリンタ本体3とを備える。プリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ2がプリンタ本体3に対して着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインク供給源となるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが着脱可能である。このプリンタ装置1では、イエローのインクカートリッジ11y、マゼンタのインクカートリッジ11m、シアンのインクカートリッジ11c、ブラックのインクカートリッジ11kが使用可能となっており、また、プリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、ヘッドカートリッジに対して着脱可能なインクカートリッジ11y,11m,11c,11kとを消耗品として交換可能になっている。
【0034】
このようなプリンタ装置1は、記録紙Pを積層して収納するトレイ85aをプリンタ本体3の前面底面側に設けられたトレイ装着口に装着することにより、トレイ85aに収納されている記録紙Pをプリンタ本体3内に給紙できる。トレイ85aは、プリンタ本体3の前面のトレイ装着口に装着されると、給排紙機構84により記録紙Pが給紙口85からプリンタ本体3の背面側に給紙される。プリンタ本体3の背面側に送られた記録紙Pは、反転ローラにより走行方向が反転され、往路の上側をプリンタ本体3の背面側から前面側に送られる。プリンタ本体3の背面側から前面側に送られる記録紙Pは、プリンタ本体3の前面に設けられた排紙口86より排紙されるまでに、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データに応じた文字や画像が印刷される。
【0035】
記録紙Pに印刷を行うヘッドカートリッジ2は、図1中矢印Aに示すように、プリンタ本体3の上面側から装着され、給排紙機構85により走行する記録紙Pに対してインク4を吐出して印刷を行う。そこで、先ず、上述したプリンタ装置1を構成するプリンタ本体2に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、このヘッドカートリッジ2に着脱されるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kについて図面を参照して説明する。
【0036】
このヘッドカートリッジ2は、導電性の液体であるインク4を、例えば電気熱変換式又は電気機械変換式などで微細に粒子化して吐出し、記録紙P等の被記録物上にインク4を液滴状態にして吹き付ける。具体的に、ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体31を有し、このカートリッジ本体31には、インク4が充填された容器であるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着される。なお、以下、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを単にインクカートリッジ11ともいう。
【0037】
ヘッドカートリッジ2に着脱可能なインクカートリッジ11は、図3に示すように、強度や耐インク性を有するポリプロピレン等の樹脂材料等を射出成形することにより成形されるカートリッジ本体11aを有し、このカートリッジ本体11aは、長手方向を使用する記録紙Pの幅方向の寸法と略同じ寸法となす略矩形状に形成され、内部に貯留するインク容量を最大限に増やす構成となっている。
【0038】
具体的に、インクカートリッジ11を構成するカートリッジ本体11aには、インク4を収容するインク収容部12と、インク収容部12からヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体31にインク4を供給するインク供給部13と、外部よりインク収容部12内に空気を取り込む外部連通孔14と、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する空気導入路15と、外部連通孔14と空気導入路15との間でインク4を一時的に貯留する貯留部16と、外部連通孔14から外部へのインク漏れを防ぐシール17と、インクカートリッジ11をカートリッジ本体31に係止するための係止突部18及び係合段部19と、インク収容部12内のインク4の残量を検出するための残量検出部20と、インクカートリッジ11を識別するための複数の突起部23を有する係合突部21とが設けられている。
【0039】
インク収容部12は、気密性の高い材料によりインク4を収容するための空間を形成している。インク収容部12は、略矩形に形成され、長手方向の寸法が使用する記録紙Pの幅方向、すなわち記録紙Pの走行方向に対して略直交する方向の寸法と略同じ寸法となるように形成されている。
【0040】
インク供給部13は、インク収容部12の下側略中央部に設けられている。このインク供給部13は、インク収容部12と連通した略突形状のノズルであり、このノズルの先端が後述するヘッドカートリッジ2の接続部37に嵌合されることにより、インクカートリッジ2のカートリッジ本体11aとヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体31を接続する。
【0041】
インク供給部13は、図4及び図5に示すように、インクカートリッジ11の底面13aにインク4を供給する供給口13bが設けられ、この底面13aに、供給口13bを開閉する弁13cと、弁13cを供給口13bの閉塞する方向に付勢するコイルバネ13dと、弁13cを開閉する開閉ピン13eとを備えている。ヘッドカートリッジ2の接続部37に接続されるインク4を供給する供給口13dは、図4に示すように、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体31に装着される前の段階において、付勢部材であるコイルバネ13dの付勢力により弁13cが供給口13dを閉じる方向に付勢され閉塞されている。そして、インクカートリッジ11がカートリッジ本体31に装着されると、図5に示すように、開閉ピン13eがヘッドカートリッジ2を構成するカートリッジ本体31の接続部37の上部により図5中矢印Bで示すコイルばね13dの付勢方向とは反対の方向に押し上げられる。これにより、押し上げられた開閉ピン13eは、コイルバネ13dの付勢力に抗して弁13cを押し上げて供給口13bを開放する。このようにして、インクカートリッジ11のインク供給部13は、ヘッドカートリッジ2の接続部37に接続され、インク収容部12とインク溜め部51とを連通し、インク溜め部51へのインク4の供給が可能な状態となる。
【0042】
また、インクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2側の接続部37から引き抜くとき、すなわちインクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2の装着部32より取り外すとき、弁13cの開閉ピン13eによる押し上げ状態が解除され、弁13cは、コイルバネ13dの付勢方向に移動し、供給口13bを閉塞する。これにより、インクカートリッジ11をカートリッジ本体31に装着する直前にインク供給部13の先端部が下方を向いている状態であってもインク収容部12内のインク4が漏れることを防止することができる。また、インクカートリッジ11をカートリッジ本体31から引き抜いたときには、直ちに弁13cが供給口13bを閉塞するので、インク供給部13の先端からインク4が漏れることを防止することができる。
【0043】
外部連通孔14は、図3に示すように、インクカートリッジ11外部からインク収容部12に空気を取り込む通気口であり、ヘッドカートリッジ2の装着部32に装着されたときも、外部に臨み外気を取り込むことができるように、装着部32への装着時に外部に臨む位置であるカートリッジ本体11aの上面、ここでは上面略中央に設けられている。外部連通孔14は、インクカートリッジ11がカートリッジ本体31に装着されてインク収容部12からカートリッジ本体31側にインク4が流下した際に、インク収容部12内のインク4が減少した分に相当する分の空気を外部よりインクカートリッジ11内に取り込む。
【0044】
空気導入路15は、インク収容部12と外部連通孔14とを連通し、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する。これにより、このインクカートリッジ11がカートリッジ本体31に装着された際に、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体31にインク4が供給されてインク収容部12内のインク4が減少し内部が減圧状態となっても、インク収容部12には、空気導入路15によりインク収容部12に空気が導入されることから、内部の圧力が平衡状態に保たれてインク4をカートリッジ本体31に適切に供給することができる。
【0045】
貯留部16は、外部連通孔14と空気導入路15との間に設けられ、インク収容部12に連通する空気導入路15よりインク4が漏れ出た際に、いきなり外部に流出することがないようにインク4を一時的に貯留する。
【0046】
この貯留部16は、長い方の対角線をインク収容部12の長手方向とした略菱形に形成され、インク収容部12の最も下側に位置する頂部に、すなわち短い方の対角線上の下側に空気導入路15を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4を再度インク収容部12に戻すことができるようにしている。また、貯留部16は、短い方の対角線上の最も下側の頂部に外部連通孔14を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4が外部連通孔14より外部に漏れにくくする。
【0047】
シール17は、外部連通孔14を閉塞する部材であり、外部連通孔14までインク4が逆流してしまったインク4がインクカートリッジ11の外部に漏れてしまうことを防止する。このため、シール17は、少なくともインク4を透過しないような撥水性を有する材料で形成されている。そして、このシール17は、使用時において、剥離され、インク使用量に応じて、外気連通孔14からは、インク収容部12内に外気を随時補充できるようにする。
【0048】
係止突部18は、インクカートリッジ11の短辺の一方の側面に設けられた突部であり、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体31のラッチレバー34に形成された係合孔34aと係合する。この係止突部18は、上面がインク収容部12の側面に対して略直交するような平面で形成されると共に、下面は側面から上面に向かって傾斜するように形成されている。係合段部19は、インクカートリッジ11の係止突部18が設けられた側面の反対側の側面の上部に設けられている。係合段部19は、カートリッジ本体11aの上面と一端を接する傾斜面19aと、この傾斜面19aの他端と他方の側面と連続し、上面と略平行な平面19bとからなる。インクカートリッジ11は、係合段部19が設けられていることで、平面19bが設けられた側面の高さがカートリッジ本体11aの上面より1段低くなるように形成され、この段部でカートリッジ本体31の係合片33と係合する。係合段部19は、ヘッドカートリッジ2の装着部32に挿入されるとき、挿入端側の側面に設けられ、ヘッドカートリッジ2の装着部32側の係合片33に係合することで、インクカートリッジ11を装着部32に装着する際の回動支点部となる。
【0049】
残量検出部20は、インクカートリッジ11の係合段部19が設けられた側面に設けられている。残量検出部20は、インク収容部12内に臨まされる一対の検出ピンと、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ2の装着部32に装着されたとき、ヘッドカートリッジ2のインク残量検出部36と電気的に接続される接点とを備える接点部材を有し、この接点部材は、カートリッジ本体11aの側面の高さ方向に複数、ここでは3段並設されている。インク4は、導電性を有するものであるから、インク収容部12内に臨まされている一対の検出ピンがインク4に浸漬しているとき電気抵抗値が小さくなり、インク4に浸漬していないとき、電気抵抗が高くなる。すなわち、インク収容部12内にインク4が満杯のとき、全ての検出ピンは、インク4に浸漬されており、全て電気抵抗値が低い状態となる。そして、インク4が使用されるに連れて、検出ピンの電気抵抗値は上の段から順に高くなる。これによって、残量検出部20は、インク収容部12内のインク残量を検出することができる。なお、インク収容部20の高さ方向に設ける端子板の数は、3段に限定されるものではなく、2段でもよく、また、より正確な残量検出を行う場合には、この段数を更に増やすようにすればよい。
【0050】
ところで、インクカートリッジ11を構成するカートリッジ本体11aは、インク供給部13が設けられた底面側がヘッドカートリッジ2に設けられた装着部32に係合する係合領域22となる。そして、係合領域22の一部、すなわちカートリッジ本体11aの係合領域22には、インクカートリッジ11の種類を識別するための複数の突起部を有する係合突部21が設けられている。この係合突部21は、複数の突起部の配置パターンによってインクカートリッジ11の種類を識別できるようになっており、インクカートリッジ11y,11m,11cがヘッドカートリッジ2の正規の装着部32y,32m,32cに装着されたときに限って、その装着部32y,32m,32cに設けられた係合凹部24に係合するように設けられている。
【0051】
次に、以上のように構成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク4を収納したインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着されるヘッドカートリッジ2について説明する。
【0052】
ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体31を有し、このカートリッジ本体31には、インクカートリッジ11が装着される装着部32y,32m,32c,32k(以下、全体を示すときには単に装着部32ともいう。)と、インクカートリッジ11を固定する係合片33及びラッチレバー34と、インクカートリッジ11を取り出し方向に付勢する付勢部材35と、インクカートリッジ11内におけるインク残量を検出するインク残量検出部36と、インク供給部13と接続されてインク4が供給される接続部37と、接続部37内におけるインク4の有無を検出するインク検出部38,39と、カートリッジ本体31をプリンタ本体3から取り外すための取手部40と、インク4を吐出するヘッドチップ41と、ヘッドチップ41を保護するヘッドキャップ42とを有している。
【0053】
インクカートリッジ11が装着される装着部32は、インクカートリッジ11が装着されるように上面をインクカートリッジ11の挿脱口として略凹形状に形成され、ここでは4本のインクカートリッジ11が記録紙Pの走行方向に並んで収納される。装着部32は、インクカートリッジ11が収納されることから、インクカートリッジ11と同様に印刷幅の方向に長く設けられている。カートリッジ本体31には、インクカートリッジ11が収納装着される。
【0054】
装着部32は、図6に示すように、インクカートリッジ11が装着される部分であり、イエロー用のインクカートリッジ11yが装着される部分を装着部32yとし、マゼンタ用のインクカートリッジ11mが装着される部分を装着部32mとし、シアン用のインクカートリッジ11cが装着される部分を装着部32cとし、ブラック用のインクカートリッジ11kが装着される部分を装着部32kとし、各装着部32y,32m,32c,32kは、隔壁32aによりそれぞれ隣接するように区画されている。
【0055】
なお、上述したようにブラックのインクカートリッジ11kは、インク4の内容量が大きくなるように厚く形成されているため、幅が他のインクカートリッジ11y,11m,11cよりも広く設けられており、これに合わせて装着部32kの幅も他の装着部32y,32m,32cよりも広く設けられている。
【0056】
以上のようにインクカートリッジ11が装着される装着部32の開口端には、図3に示すように、係合片33が設けられている。この係合片33は、装着部32の長手方向の一端縁に設けられており、インクカートリッジ11の係合段部19と係合する。インクカートリッジ11は、インクカートリッジ11の係合段部19側を挿入端として斜めに装着部32内に挿入し、係合段部19と係合片33との係合位置を回動支点として、インクカートリッジ11の係合段部19が設けられていない側を装着部32側に回動させるようにして装着部32に装着することができる。これによって、インクカートリッジ11は、装着部32に容易に装着することができ、また、挿入端となる側面に設けられている残量検出部20がカートリッジ本体31の側面とこすれることをなくし、残量検出部20の保護を図っている。
【0057】
ラッチレバー34は、図3に示すように、板バネを折曲して形成されるものであり、装着部32の係合片33に対して反対側の側面、すなわち長手方向の他端の側面に設けられている。ラッチレバー34は、基端部が装着部32を構成する長手方向の他端の側面の底面側に一体的に設けられ、先端側がこの側面に対して近接離間する方向に弾性変位するように形成され、先端側に係合孔34aが形成されている。ラッチレバー34は、インクカートリッジ11が装着部32に装着されると同時に、弾性変位し、係合孔34aがインクカートリッジ11の係止突部18と係合し、装着部32に装着されたインクカートリッジ11が装着部32より脱落しないようにする。
【0058】
付勢部材35は、インクカートリッジ11の係合段部19に対応する側面側の底面上にインクカートリッジ11を取り外す方向に付勢する板バネを折曲して設けられる。付勢部材35は、折曲することにより形成された頂部を有し、底面に対して近接離間する方向に弾性変位し、頂部でインクカートリッジ11の底面を押圧し、装着部32に装着されているインクカートリッジ11を装着部32より取り外す方向に付勢するイジェクト部材である。付勢部材35は、ラッチレバー34の係合孔34aと係止突部18との係合状態が解除されたとき、装着部23よりインクカートリッジ11を排出する。
【0059】
インク残量検出部36は、図6に示すように、インクカートリッジ11内のインク4の残量を段階的に検出するものであり、各色のインクカートリッジ11y,11m,11c,11kの装着部32y,32m,32c,32kに設けられている。インク残量検出部36は、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ2に装着されたとき、インクカートリッジ11内の側面の高さ方向に並設された残量検出部20に接触し電気的に接続される。インク残量検出部36は、インクカートリッジ11側へ付勢する図示しない付勢部材により押圧されており、インクカートリッジ11が装着されたとき、インクカートリッジ11の残量検出部20に密着され確実に残量検出部20と電気的に接続される。
【0060】
各装着部32y,32m,32c,32kの長手方向略中央には、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着部32y,32m,32c,32kに装着されたとき、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kのインク供給部13が接続される接続部37が設けられている。この接続部37は、装着部32に装着されたインクカートリッジ11のインク供給部13からカートリッジ本体31の底面に設けられたインク4を吐出するヘッドチップ41にインク4を供給するインク供給路となる。
【0061】
具体的に、接続部37は、図7に示すように、インクカートリッジ11から供給されるインク4を溜めるインク溜め部51と、接続部37に連結されるインク供給部13をシールするシール部材52と、インク4内の不純物を除去するフィルタ53と、ヘッドチップ41側への供給路を開閉する弁機構54とを有している。
【0062】
インク溜め部51は、インク供給部13と接続されインクカートリッジ11から供給されるインク4を溜める空間部である。シール部材52は、インク溜め部51の上端に設けられた部材であり、インクカートリッジ11のインク供給部13が接続部37のインク溜め部51に接続されるとき、インク4が外部に漏れないようインク溜め部51とインク供給部13との間を密閉する。フィルタ53は、インクカートリッジ11の着脱時等にインク4に混入してしまった塵や埃等のごみを取り除くものであり、インク検出部38,39よりも下部に設けられている。
【0063】
弁機構54は、図8及び図9に示すように、インク溜め部51からインク4が供給されるインク流入路61と、インク流入路61からインク4が流入するインク室62と、インク室62からインク4を流出するインク流出路63と、インク室62をインク流入路61側とインク流出路63側との間に設けられた開口部64と、開口部64を開閉する弁65と、弁65を開口部64の閉塞する方向に付勢する付勢部材66と、付勢部材66の強さを調節する負圧調整ネジ67と、弁65と接続される弁シャフト68と、弁シャフト68と接続されるダイアフラム69とを有する。
【0064】
インク流入路61は、インク溜め部51を介してインクカートリッジ11のインク収容部12内のインク4をヘッドチップ41に供給可能にインク収容部12と連結する供給路である。インク流入路61は、インク溜め部51の底面側からインク室62まで設けられている。インク室62は、インク流入路61、インク流出路63及び開口部64と一体となって形成された略直方体をなす空間部であり、インク流入路61からインク4が流入し、開口部64を介してインク流出路63からインク4を流出する。インク流出路63は、インク室62から開口部64を介してインク4が供給されて、更にヘッドチップ41と連結された供給路である。インク流出路63は、インク室62の底面側からヘッドチップ41まで延在されている。
【0065】
弁65は、開口部64を閉塞してインク流入路61側とインク流出路63側とを分割する弁であり、インク室62内に配設される。弁65は、付勢部材66の付勢力と、弁シャフト68を介して接続されたダイアフラム69の復元力と、インク流出路63側のインク4の負圧によって上下に移動する。弁65は、下端に位置するとき、インク室62をインク流入路61側とインク流出路63側とを分離するように開口部64を閉塞し、インク流出路63へのインク4の供給を遮断する。弁65は、付勢部材66の付勢力に抗して上端に位置するとき、インク室62をインク流入路61側とインク流出路63側とを遮断せずに、ヘッドチップ41へインク4の供給を可能とする。なお、弁65を構成する材質は、その種類を問わないが、高い閉塞性を確保するため例えばゴム弾性体、いわゆるエラストマーにより形成される。
【0066】
付勢部材66は、例えば圧縮コイルバネ等であり、弁65の上面とインク室62の上面との間で負圧調整ネジ67と弁65とを接続し、付勢力により弁65を開口部64の閉塞する方向に付勢する。負圧調整ネジ67は、付勢部材66の付勢力を調整するネジであり、負圧調整ネジ67を調整することで付勢部材66の付勢力を調整することができるようにしている。これにより、負圧調整ネジ67は、詳細は後述するが開口部64を開閉する弁65を動作させるインク4の負圧を調整することができる。
【0067】
弁シャフト68は、一端に接続された弁65と、他端に接続されたダイアフラム69とを連結して運動するように設けられたシャフトである。ダイアフラム69は、弁シャフト68の他端に接続された薄い弾性板である。このダイアフラム69は、インク室62のインク流出路63側の一主面と、外気と接する他主面とからなり、大気圧とインク4の負圧により外気側とインク流出路63側に弾性変位する。
【0068】
以上のような弁機構54では、図8に示すように、弁65が付勢部材66の付勢力とダイアフラム69の付勢力とによってインク室62の開口部64を閉塞するように押圧されている。そして、ヘッドチップ41からインク4が吐出された際に、開口部64分割されたインク流出路63側のインク室62のインク4の負圧が高まると、図9に示すように、インク4の負圧によりダイアフラム69が大気圧により押し上げられて、弁シャフト68と共に弁65を付勢部材66の付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室62のインク流入路61側とインク流出路63側と間の開口部64が開放され、インク4がインク流入路61側からインク流出路63側に供給される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム69が復元力により元の形状に戻り、付勢部材66の付勢力により弁シャフト68と共に弁65をインク室62が閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構54では、インク4を吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0069】
また、この接続部37では、インク収容部12内のインク4がインク室62に供給されると、インク収容部12内のインク4が減少するが、このとき、空気導入路15から外気がインクカートリッジ11内に入り込む。インクカートリッジ11内に入り込んだ空気は、インクカートリッジ11の上方に送られる。これにより、インク液滴iが後述するノズル104aから吐出される前の状態に戻り、平衡状態となる。このとき、空気導入路15内にインク4がほとんどない状態で平衡状態となる。
【0070】
インク検出部38,39は、図7に示すように、それぞれインクカートリッジ11のインク供給部13に接続される接続部37内のインク4の有無を検出する一対の導電性を有する線状部材からなり、先端部が接続部37内に臨ませるように配設されている。インク検出部38,39は、接続部37のインク溜め部51の側面に接続部37の内部から外部に貫通するように設けられ、それぞれヘッドチップ41に接続されている。
【0071】
インク検出部38,39の先端部は、接続部37内におけるフィルタ53よりも上部に設けられている。これは、インク4がフィルタ53以下となる場合に、ヘッドチップ41側におけるインク4の負圧が高まり、装置の故障の原因となることを防止するためである。インク検出部38,39は、インク4をフィルタ53よりもインクカートリッジ11側で検出することで、インク4がフィルタ53からヘッドチップ41側においてなくなってしまうことを防止することができる。
【0072】
取手部40は、カートリッジ本体31が消耗する等して交換の必要がある場合や、インクジェットプリンタ装置1を修理する際等に、カートリッジ本体31の取り外しを容易にする。
【0073】
ヘッドチップ41は、カートリッジ本体31の底面に沿って配設されており、接続部37から供給されるインク液滴iを吐出するインク吐出孔である後述するノズル104aが各色毎に略ライン状をなすように設けられている。
【0074】
ヘッドキャップ42は、図2に示すように、ヘッドチップ41を保護するために設けられたカバーであり、インク4を吐出する際には、プリンタ本体3の後述するカバー開閉機構により開閉される。ヘッドキャップ42は、開閉方向に設けられた溝部71と、長手方向に設けられヘッドチップ41の吐出面41aに付着した余分なインク4を吸い取る清掃ローラ72とを有している。ヘッドキャップ42は、開閉動作時にこの溝部71に沿って図2中矢印Cで示すインクカートリッジ11の短手方向に開閉するようにされており、このとき清掃ローラ72がヘッドチップ41の吐出面41aに当接しながら回転することで、余分なインク4を吸い取り、ヘッドチップ41の吐出面41aを清掃する。この清掃ローラ72は、例えば吸水性の高い部材が用いられる。また、ヘッドキャップ42は、ヘッドチップ41内のインク4が乾燥しないようにする。
【0075】
上述したヘッドチップ41は、各色のインク4に対応して、図10及び図11に示すように、ベースとなる回路基板101と、インク4を加熱する一対の発熱抵抗体102a,102bと、インク4の漏れを防ぐフィルム103と、インク4が液滴の状態で吐出されるノズル104aが多数設けられたノズルシート104と、これらに囲まれてインク4が供給される空間であるインク液室105と、インク液室105にインク4を供給するインク流路106とを有する。
【0076】
回路基板101は、シリコン等の半導体基板であり、その一主面101aに、発熱抵抗体102a,102bが形成されており、一対の発熱抵抗体102a,102bと回路基板101上の図示しない制御回路とが接続されている。この制御回路は、ロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等で構成されている。
【0077】
一対の発熱抵抗体102a,102bは、制御回路から供給される電力により発熱し、インク液室105内のインク4を加熱して内圧を高める。これにより加熱されたインク4は、後述するノズルシート104に設けられたノズル104aから液滴の状態で吐出する。
【0078】
フィルム103は、回路基板101の一主面101aに積層されている。フィルム103は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなるものであり、回路基板101の一主面101aの略全体に積層された後、フォトリソグラフプロセスによって不要部分が除去され、一対の発熱抵抗体102a,102bを一括して略凹状に囲むように形成されている。フィルム103により一対の発熱抵抗体102a,102bを囲む部分がインク液室105の一部を形成する。
【0079】
ノズルシート104は、インク液滴iを吐出させるためのノズル104aが形成されたシート状部材であり、フィルム103の回路基板101と反対側に積層されている。ノズル104aは、ノズルシート104に円形状に開口された微小孔であり、一対の発熱抵抗体102a,102bと対向するように配置されている。なお、ノズルシート104はインク液室105の一部を構成する。
【0080】
インク液室105は、回路基板101、一対の発熱抵抗体102a,102b、フィルム103及びノズルシート104に囲まれた空間部であり、インク流路106からのインク4が供給される。インク液室105のインク4は、発熱抵抗体102a,102bにより加熱され、内圧が上昇される。インク流路106は、接続部37のインク流出路63と接続されており、接続部37に接続されたインクカートリッジ11からインク4が供給され、このインク流路106に連通する各インク液室105にインク4を送り込む流路を形成する。すなわち、インク流路106と接続部34とが連通されている。これにより、インクカートリッジ11から供給されるインク4がインク流路106に流れ込み、インク液室105内に充填される。
【0081】
上述した1個のヘッドチップ41には、一対の発熱抵抗体102a,102bを一単位として通常100個単位で一対の発熱抵抗体102a,102bを備えたインク液室105を備えている。そして、ヘッドチップ41においては、プリンタ装置1の制御部からの指令によってこれら一対の発熱抵抗体102a,102bのそれぞれを適宜選択して一対の発熱抵抗体102a,102bに対応するインク液室105内のインク4を、インク液室105に対応するノズル104aから液滴の状態で吐出させることができる。
【0082】
すなわち、ヘッドチップ41において、ヘッドチップ41と結合されたインク流路106から、インク液室105にインク4が満たされる。そして、一対の発熱抵抗体102a,102bに短時間、例えば、1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、一対の発熱抵抗体102a,102bがそれぞれ急速に加熱され、その結果、一対の発熱抵抗体102a,102bと接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張によってある体積のインク4が押圧される(インク4が沸騰する)。これによって、ノズル104aに接する部分でインク気泡に押圧されたインク4と同等の体積のインク4がインク液滴iとしてノズル104aから吐出され、記録紙P上に着弾される。
【0083】
ヘッドチップ41では、図12に示すように、1つのインク液室105内に、一対の発熱抵抗体102a,102bが並設されている。すなわち、1つのインク液室105内に、一対の発熱抵抗体102a,102bを備えるものである。具体的に、一対の発熱抵抗体102a,102bは、詳細は後述するが図12中矢印Dで示す記録紙Pの走行方向と略同方向に並設されている。なお、図12では、ノズル104aの位置を1点鎖線で示している。
【0084】
このように、一対の発熱抵抗体102a,102bでは、1つの発熱抵抗体を2つに分割したような形状となり長さが同じで幅が半分になることから、抵抗値がほぼ倍の値になる。この一対の発熱抵抗体102a,102bを直列に接続した場合、それぞれ2倍程度の抵抗値を有する一対の発熱抵抗体102a,102bが直列に接続されることとなり、抵抗値は分割する前の4倍程度になる。
【0085】
ここで、インク液室105内のインク4を沸騰させるためには、一対の発熱抵抗体102a,102bに一定の電力を加えて一対の発熱抵抗体102a,102bを加熱する必要がある。この沸騰時のエネルギにより、インク液滴iを吐出させるためである。そして、抵抗値が小さいと、流す電流を大きくする必要があるが、一対の発熱抵抗体102a,102bの抵抗値を高くすることにより、少ない電流で沸騰させることができるようになる。
【0086】
これにより、ヘッドチップ41においては、電流を流すためのトランジスタ等を小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。なお、一対の発熱抵抗体102a,102bの厚みを薄く形成すれば抵抗値を高くすることができるが、一対の発熱抵抗体102a,102bとして選定される材料や強度(耐久性)等の観点から、一対の発熱抵抗体102a,102bの厚みを薄くするには一定の限界がある。このため、厚みを薄くすることなく、分割することで、一対の発熱抵抗体102a,102bの抵抗値を高くしている。
【0087】
ところで、インク液室105内のインクをノズル104aより吐出させるときにおいて、一対の発熱抵抗体102a,102bによってインク液室105内のインクが沸騰するまでの時間、すなわち気泡発生時間が同じになるように発熱抵抗体102a,102bを駆動制御すると、インク液滴iは、ノズル104aより真下に吐出される。また、一対の発熱抵抗体102a,102bの気泡発生時間に時間差が発生した場合には、一対の発熱抵抗体102a,102b上で略同時にインク4が沸騰し気泡が発生しなくなり、発熱抵抗体102a,102bの並設方向の何れか一方にずれてインク液滴iが吐出される。
【0088】
これを図13を用いて説明する。図13(A)及び図13(B)は、一対の発熱抵抗体102a,102bにおけるインク気泡発生時間の差と、インク液滴iの吐出角度との関係を示している。なお、図13(A)は、記録紙Pの走行方向(一対の発熱抵抗体102a,102bが並設されている方向)の吐出角度θxを示し、図13(B)は、記録紙Pの走行方向と略直交方向(ノズル104aが並んでいる方向)の吐出角度θyを示している。図13(A)及び図13(B)は、横軸に気泡発生時間の差をとっており、一対の発熱抵抗体102a,102bにおける抵抗差は、時間差0.04μsecで3%、時間差0.08μsecで6%程度のばらつきに相当する。なお、図13(A)及び図13(B)はコンピュータによるシミュレーション結果である。
【0089】
図13(A)及び図13(B)に示すように、気泡発生時間に差が生じると、インク液滴iの吐出角度が略垂直でなくなるので、インク液滴iの着弾位置が本来の位置からずれる。そこで、チップヘッド41は、この特性を利用し、一対の発熱抵抗体102a,102bの気泡発生時間をそれぞれ制御し、インク液滴iのノズル104aからの吐出角度、すなわち吐出方向を制御する。
【0090】
以上のようなヘッドチップ41では、各インク液室105内の一対の発熱抵抗体102a,102bのそれぞれに例えば電力等のエネルギを供給することで、ノズル104aからインク液滴iを吐出させる。そして、このヘッドチップ41では、一対の発熱抵抗体102a,102bに対し、略同時に同一量のエネルギを供給することで、一対の発熱抵抗体102a,102bの気泡発生時間を理論上、同じにすることができる。したがって、一対の発熱抵抗体102a,102bは、インク4を同時に沸騰させることができ、インク液滴iの吐出角度がインク液滴iの着弾面に対して略垂直になるようにノズル104aからインク液滴iを吐出させることができる。
【0091】
さらに、ヘッドチップ41は、各インク液室105内の一対の発熱抵抗体102a,102bを気泡発生時間を異ならせるように発熱抵抗体102a,102bを制御する。この場合、ヘッドチップ41は、一対の発熱抵抗体102a,102bのうちの一方と他方とにエネルギを供給するときのエネルギの与え方に差異を与えることで一対の発熱抵抗対102a,102bそれぞれの気泡発生時間に差が生じるようになり、ノズル104aから吐出されるインク液滴iを、着弾面に対し定略垂直にインク液滴iが吐出されたときのインク液滴iの着弾位置と異なる位置に着弾される。すなわち、ヘッドチップ41は、インク液滴iの吐出角度がインク4の着弾面に対して斜めになるようにノズル104aからインク液滴iを吐出させる。
【0092】
以上のように、ヘッドチップ41は、インクの着弾位置を分散させることができる。これにより、例えば発熱抵抗体102a,102bの製造誤差に伴い抵抗値がばらつき、このばらつきによって気泡発生時間に時間差が発生して、インクの吐出方向が斜めになり、インクの塗布むらが発生し、記録紙に白すじが現れてしまうことを防止することができる。
【0093】
なお、ここでは、各抵抗体に異なる大きさの電力を供給することで一対の発熱抵抗体102a,102bにおける気泡発生時間をずらすようにしたが、このことに限定されることはなく、例えば各抵抗体に電力が供給されるタイミングをずらすことで一対の発熱抵抗体102a,102bにおける気泡発生時間をずらすことも可能である。
【0094】
次に、以上のように構成されたヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ装置1を構成するプリンタ本体3について図面を参照して説明する。
【0095】
プリンタ本体3は、上記図1及び図14に示すように、ヘッドカートリッジ2が装着されるヘッドカートリッジ装着部81と、ヘッドカートリッジ2をヘッドカートリッジ装着部81に保持、固定するためのヘッドカートリッジ保持機構82と、ヘッドキャップを開閉するヘッドキャップ開閉機構83と、記録紙Pを給排紙する給排紙機構84と、給排紙機構84に記録紙Pを供給する給紙口85と、給排紙機構84から記録紙Pが出力される排紙口86とを有する。
【0096】
ヘッドカートリッジ装着部81は、ヘッドカートリッジ2が装着される凹部であり、走行する記録紙にデータ通り印刷を行うため、ヘッドチップ41の吐出面41aと走行する記録紙Pの紙面とが略平行となるようにヘッドカートリッジ2が装着される。ヘッドカートリッジ2は、ヘッドチップ41内のインク詰まり等で交換する必要が生じる場合等があり、インクカートリッジ11程の頻度はないが消耗品であるため、ヘッドカートリッジ装着部81に対して着脱可能にヘッドカートリッジ保持機構82によって保持される。ヘッドカートリッジ保持機構82は、ヘッドカートリッジ装着部81にヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するための機構であり、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ82aをプリンタ本体3の係止孔82b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することによってプリンタ本体3に設けられた基準面3aに圧着するようにしてヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにしている。
【0097】
ヘッドキャップ開閉機構83は、ヘッドカートリッジ2のヘッドキャップ42を開閉する駆動部を有しており、印刷を行うときにヘッドキャップ42を開放してチップヘッド41が記録紙Pに対して露出するようにし、印刷が終了したときにヘッドキャップ42を閉塞してチップヘッド41を保護する。給排紙機構84は、記録紙Pを搬送する駆動部を有しており、供給口85から供給される記録紙Pをヘッドカートリッジ2のチップヘッド41まで搬送し、インク4が吐出された記録紙Pを排紙部85に搬送して装置外部へ出力する。給紙口85は、給排紙機構84に記録紙Pを供給する開口部であり、トレイ85a等に複数枚の記録紙Pを積層してストックすることができる。排紙口86は、インク液滴iが吐出された記録紙Pが給排紙機構84により搬送されて排出される。
【0098】
ここで、以上のように構成されたプリンタ装置1による印刷を制御する制御回路について図面を参照して説明する。
【0099】
制御回路110は、図15に示すように、プリンタ本体3の各駆動部を駆動するプリンタ駆動部111と、各色のインク4に対応するヘッドチップ41に供給される電流等を制御する吐出制御部112と、各色のインク4の残量を警告する警告部113と、外部装置と信号の入出力を行う入出力端子114と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)115と、読み出された制御プログラム等が読み出されるRAM(Random Access Memory)116と、各部の制御を行う制御部117とを有している。
【0100】
プリンタ駆動部111は、制御部117からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ開閉機構83を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ42を開閉する。また、プリンタ駆動部111は、制御部117からの制御信号に基づき、給排紙機構84を構成する駆動モータを駆動させてプリンタ本体3の給紙口85から記録紙Pを給紙し、記録後に排紙口86から排紙する。
【0101】
吐出制御部112は、図16に示すように、それぞれが抵抗体である一対の発熱抵抗体102a,102bに電流を流すための電源120a,120bと、一対の発熱抵抗体102a,102bと電源120a,120bとの電気的な接続をオン/オフさせるスイッチング素子121a,121b,121cと、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電流を制御するための抵抗122a,122b,122c、及び可変抵抗123とを備える電気回路である。
【0102】
電源120aは、発熱抵抗体102bに接続され、電源120bはスイッチング素子123c、可変抵抗122を介して抵抗121a,121b,121cに選択的に接続され、それぞれ電気回路に電力を供給する。なお、電気回路に供給される電力は、電源120a,120bを電力源としてもよいが、例えば制御部117等から直接供給されるようにすることも可能である。
【0103】
スイッチング素子121aは、発熱抵抗体102aとグランドとの間に配置され、吐出制御部112全体のオン/オフを制御する。スイッチング素子121bは、一対の発熱抵抗体102a,102bと抵抗122a,122b,122cとの間に配置され、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給する電力を制御する。スイッチング素子121cは、可変抵抗123と電源120bとの間に配置され、インク液滴iの吐出方向を制御する。そして、これらスイッチング素子121a,121b,121cは、それぞれオン/オフが切り換えられることで電気回路に供給される電力を制御する。
【0104】
抵抗122a,122b,122cは、それぞれ異なる抵抗値を有し、スイッチング素子121bが切り換えられることにより一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力を制御する。具体的に、抵抗122aが最も抵抗値が大きく、次いで抵抗122bが大きく、抵抗122cの抵抗値が最も小さくなっており、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力は抵抗122a,122b,122cの何れに接続されるかによって決まる。
【0105】
可変抵抗123は、抵抗122a,122b,122cと組み合わされることで一対の発熱抵抗体102a,102bそれぞれに供給される電力を更に調節することができる。
【0106】
吐出制御部112では、スイッチング素子121bをオフにして抵抗122a,122b,122cと一対の発熱抵抗体102a,102bとが接続されていないとき、スイッチング素子121aをオンにすると、電源120aから電力が直列に接続された一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される(抵抗122a,122b,122cには電流が流れない)。このとき、一対の発熱抵抗体102a,102bの抵抗値が略同一である場合には、電力が供給されたときは一対の発熱抵抗体102a,102bが発生する熱量が略同一になる。
【0107】
この場合、ヘッドチップ41は、図17に示すように、一対の発熱抵抗体102a,102bで発生する熱量が略同一となることから、気泡発生時間が略同一になりインク4の吐出角度がインク4の着弾面に対して略垂直になるようにインク液滴iをノズル104aから吐出する。これにより、吐出されたインク液滴iは、図17中130で示す着弾点に着弾する。
【0108】
また、図16に示す吐出制御部112では、スイッチング素子121bと抵抗122a,122b,122cのうちの何れかとの接続をオンにし、スイッチング素子121aをオンにし、スイッチング素子121cをグランドと接続したときに、インク液滴iの吐出方向が図17中矢印Dで示す記録紙Pの走行方向にインク液滴iの吐出方向を可変できる。すなわち、スイッチング素子121bが抵抗122a,122b,122cの何れかに接続されることで、発熱抵抗体102aに供給される電力が少なくなり、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力に差異が生じることから、両者に発生する熱量にも差異が生じる。
【0109】
この場合、抵抗122a,122b,122cはそれぞれ異なる抵抗値を有することから、スイッチング素子121bの切り換えで一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力を三段階に異ならせることができる。
【0110】
これにより、ヘッドチップ41は、一対の発熱抵抗体102a,102bで発生する熱量に差異が生じ、スイッチング素子121bの切り換えで一対の発熱抵抗体102a,102bそれぞれの気泡発生時間に三段階の時間差を持たせることができ、インク液滴iの吐出角度を一対の発熱抵抗体102a,102bが並設された方向に三段階に変化させることができる。
【0111】
具体的に、吐出制御部112は、図17に示すように、ノズル104aから略垂直にインク液滴iが吐出されて着弾した着弾点130から、図17中矢印Dで示す一対の発熱抵抗体102a,102bが並設された方向、すなわち記録紙Pの走行方向に三段階に分かれた着弾点131,132,133の何れかにインク液滴iを着弾させるようにヘッドチップ41を制御する。更に詳しくは、例えばスイッチング素子121bが抵抗値の最も小さい抵抗122cに接続されると、発熱抵抗体102aに供給される電力が最も小さくなり、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力の差異が最も大きくなることから、インク液滴iは着弾点130から最も遠い位置の着弾点133に着弾される。一方、例えばスイッチング素子121bが抵抗値の最も大きい抵抗122aに接続されると、発熱抵抗体102aに供給される電力が最も大きくなり、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力の差異が最も小さくなることから、インク液滴iは着弾点130から最も近い位置の着弾点131に着弾される。
【0112】
また、吐出制御部112では、図16に示すように、スイッチング素子121cを切り換えて電源120bと接続すると、インク液滴iの吐出方向を図17に示す着弾点130を境にしてスイッチング素子121cをグランドに接続したときとは逆の方向にすることができる。この場合、発熱抵抗体102aには、電源120aから供給される電力の他に、電源120bからの電力も供給されることになる。すなわち、一対の発熱抵抗体102,102bの発熱状態がスイッチング素子121cをグランドに接続したときとは逆になる。これにより、インク液滴iは、ノズル104aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点130を境に、スイッチング素子121cをグランドに接続したときとは反対側の着弾位置に吐出方向を三段階に変化させて吐出されることになる。
【0113】
具体的に、例えばスイッチング素子121cが抵抗値の最も小さい抵抗122cに接続されると、電源120aからの電力と電源120bからの電力とが加算されて発熱抵抗体102aに供給される電力が最も大きくなり、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力の差異が、スイッチング素子121cを電源120bに接続した場合に最も大きくなることから、インク液滴iは着弾点130から最も遠い位置の着弾点136に着弾される。一方、例えばスイッチング素子121cが抵抗値の最も大きい抵抗122aに接続されると、電源120aからの電力と電源120bからの電力とが加算されて発熱抵抗体102aに供給される電力が最も小さくなり、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力の差異が、スイッチング素子121cを電源120bに接続した場合に最も小さくなることから、インク液滴iは着弾点130から最も近い位置の着弾点134に着弾される。
【0114】
なお、吐出制御部112では、可変抵抗123で、抵抗値を更に調節することで、一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力を微調節することができ、着弾点130,131,132,133,134,135,136それぞれの間に着弾するようにインク液滴iの吐出角度を調節することができる。
【0115】
このように、吐出制御部112では、スイッチング素子121a,121b,121cを切り換えることで、インク液滴iのノズル104aからの吐出方向を記録紙Pの走行方向に7段階に変化させることができ、さらに抵抗122a,122b,122cと可変抵抗123とを組み合わせることでインク液滴iの吐出方向を7段階以上に変化させることができる。具体的には、ノズル104aから略垂直に吐出されて着弾した着弾点130を中心に、記録紙Pの走行方向に前後に50μm程度の範囲内にインク液滴iを着弾することができる。
【0116】
そして、以下では、上述したような走行方向にインク液滴iの着弾位置をずらしてインク液滴iを吐出させるようにヘッドチップ41の吐出角度を制御することを第1のインク吐出モードと記す。
【0117】
なお、吐出制御部112では、電力の供給をスイッチング素子121a,121b,121c等で制御しているが、このことに限定されることはなく、例えばデジタル回路等を使用してインク液滴iが離散的に記録紙Pに着弾するように制御することも可能である。
【0118】
以上では、ノズル104aからインク液滴iが略垂直に吐出されて着弾した着弾点130を中心に、記録紙Pの走行方向と同方向にずらしてインク液滴iを記録紙Pに着弾させているが、このことに限定されることはなく、例えば吐出制御部112を制御することで着弾したインク液滴iが乾く前に着弾位置を重ねるようにしてインク液滴iを吐出、着弾させることも可能である。
【0119】
具体的には、図18(A)〜図18(C)に示すように、例えば所定の範囲で色を濃くしたいとき等、図18中矢印Dで示す方向に走行している記録紙Pの1つの着弾点140にインク液滴iを連続して複数回着弾させるように制御部117が吐出制御部112を制御する。
【0120】
吐出制御部112は、図18(A)で示すようにノズル104aに対して記録紙Pの走行方向から近づいてくる着弾点140に向かってヘッドチップ41がインク液滴iをノズル104aから吐出するとき、図16に示すスイッチング素子121bと抵抗122a,122b,122cのうちの何れかとの接続をオンにし、スイッチング素子121aをオンにし、スイッチング素子121cをグランドと接続することで、電源120aから一対の発熱抵抗体102a,102bに、異なる大きさの電力が供給されることから、インク液滴iの吐出角度が着弾面に対して斜めになるようにヘッドチップ41を制御する。
【0121】
このとき、吐出制御部112では、ノズル104aと近づく着弾点140との距離に応じて抵抗値の異なる抵抗122a,122b,122c及び可変抵抗123により一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力の差異を微調整することでインク液滴iが適切に近づく着弾点140に着弾されるようにヘッドチップ41を制御させる。これにより、ヘッドチップ41では、図18(A)で示すようなノズル104aに対して記録紙Pの走行方向から近づいてくる着弾点140に適切に着弾するように記録紙Pの走行方向と略同方向にインク液滴iを吐出することができる。
【0122】
また、吐出制御部112は、図18(B)で示すようにノズル104aに対して略垂直方向に位置する着弾点140に向かってヘッドチップ41がインク液滴iをノズル104aから吐出するとき、図16に示すスイッチング素子121bをオフにし、スイッチング素子121aをオンにすることで、電源120aから一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力に差異が殆ど無く、一対の発熱抵抗体102a,102bが発生する熱量が略同一になることから、インク液滴iの吐出角度がインク液滴iの着弾面に対して略垂直になるようにヘッドチップ41を制御する。
【0123】
これにより、ヘッドチップ41では、図18(B)で示すようなノズル104aに対して略垂直方向に位置する着弾点140に適切に着弾するように着弾面に対して略垂直にインク液滴iを吐出することができる。
【0124】
吐出制御部112は、図18(C)で示すようにノズル104aに対して記録紙Pの走行方向に遠離る着弾点140に向かってヘッドチップ41がインク液滴iをノズル104aから吐出するとき、図16に示すスイッチング素子121bと抵抗122a,122b,122cのうちの何れかとの接続をオンにし、スイッチング素子121aをオンにし、スイッチング素子121cを電源120bと接続することで、一対の発熱抵抗体102a,102bの発熱状態がスイッチング素子121cをグランドに接続していたときとは逆の状態になることから、インク液滴iの吐出角度がスイッチング素子121cをグランドに接続していたときとは逆の方向で着弾面に対して斜めになるようにヘッドチップ41を制御する。
【0125】
このとき、吐出制御部112では、ノズル104aと遠離る着弾点140との距離に応じて抵抗値の異なる抵抗122a,122b,122c及び可変抵抗123により一対の発熱抵抗体102a,102bに供給される電力の差異を微調整することでインク液滴iが適切に遠離る着弾点140に着弾されるようにヘッドチップ41を制御させる。これにより、ヘッドチップ41では、図18(A)で示すようなノズル104aに対して記録紙Pの走行方向に遠離る着弾点140に適切に着弾するように記録紙Pの走行方向と略同方向にインク液滴iを吐出することができる。
【0126】
このように、吐出制御部112では、記録紙Pの着弾点140に着弾したインク液滴iが乾く前に、次のインク液滴iを着弾点140に連続して着弾させるようにヘッドチップ41を制御することができる。
【0127】
なお、ここでは、着弾点140にインク液滴iが3回連続で着弾された場合を例に挙げて図18(A)〜図18(C)に示しているが、このことに限定されることはなく、例えば所望の濃度に応じてインク液滴iを着弾点140に2回連続、若しくは4回以上連続して着弾させるように吐出制御部112がヘッドチップ41を制御させてもよい。
【0128】
そして、以下では、上述したような走行する記録紙Pにおける1つの着弾点に連続してインク液滴iを着弾させるようにヘッドチップ41の吐出角度を制御することを第2のインク吐出モードと記す。
【0129】
なお、吐出制御部112では、一対の発熱抵抗体102a,102bに対する電力の供給をスイッチング素子121a,121b,121cをオン/オフすることでインク液滴iの吐出方向を制御しているが、このことに限定されることはなく、例えばデジタル回路等を使用してインク液滴iが離散的に記録紙Pに着弾するように制御することも可能である。
【0130】
図15に示す警告部113は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段であり、印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を表示する。また、警告部113は、例えばスピーカ等の音声出力手段であってもよく、この場合は、印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を音声で出力する。なお、警告部113は、表示手段及び音声出力手段をともに有するように構成してもよい。また、この警告は、情報処理装置118のモニタやスピーカ等で行うようにしてもよい。
【0131】
入出力端子114は、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報をインタフェースを介して外部の情報処理装置118等に送信する。また、入出力端子114は、外部の情報処理装置118等から、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を出力する制御信号や、印刷データ等が入力される。ここで、上述した情報処理装置118は、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
【0132】
情報処理装置118等と接続される入出力端子114は、インタフェースとして、例えばシリアルインタフェースやパラレルインタフェース等を用いることができ、具体的にUSB(Universal Serial Bus)、RS(Recommended Standard)232C、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等の規格に準拠したものである。また、入出力端子114は、情報処理装置118との間で有線通信又は無線通信の何れ形式でデータ通信を行うようにしてもよい。なお、この無線通信規格としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11g等がある。
【0133】
ROM115は、例えばEP−ROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)等のメモリであり、制御部117が行う各処理のプログラムが格納されている。この格納されているプログラムは、制御部117によりRAM116にロードされる。RAM116は、制御部117によりROM115から読み出されたプログラムや、プリンタ装置1の各種状態を記憶する。
【0134】
入出力端子114と情報処理装置118との間には、例えばインターネット等のネットワークが介在していてもよく、この場合、入出力端子114は、例えばLAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、xDSL(Digital Subscriber Line)、FTHP(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)、BS(Broadcasting Satellite)等のネットワーク網に接続され、データ通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種プロトコルにより行われる。
【0135】
制御部117は、入出力端子114から入力された印刷データ及び制御信号や、インク検出部38,39による電気抵抗値の変化や、インク残量検出手部36による電気抵抗値の変化等に基づき、各部を制御する。制御部117、このような処理プログラムとしてROM115から読み出してRAM116に記憶し、このプログラムに基づき各処理を行う。
【0136】
この制御部117は、吐出制御を行う処理プログラムをROM115から読み出してRAM116に記憶し、このプログラムに基づき、吐出制御部112のスイッチング素子121a,121b,121cのオン/オフを切り換えてインク液滴iの吐出方向を周期的に変化するように制御する。制御部117は、例えば停止している記録紙Pに対してインク液滴iを着弾させたときに、図19に示すような標準偏差の分布に近似した濃度分布を以てインク液滴iが記録紙Pに着弾されるように、インク液滴iの吐出方向を周期的に変化させる制御を吐出制御部112にさせるようにする。具体的に、制御部117は、記録紙Pにおけるヘッドチップ41のノズル104aから略垂直方向の位置Eの色の濃度が一番高く、すなわち色が一番濃く、記録紙Pのノズル104aから略垂直方向の位置Eを中心に図19中矢印Dで示す記録紙Pの走行方向に前後10μm程度の範囲で色が濃くなるように、吐出制御部112のスイッチング素子121a,121b,121cを制御してインク液滴iの吐出方向を周期的に変化させる。
【0137】
そして、制御部117は、以上のような制御に限定されることはなく、記録紙Pに印刷された状態を測定し、この測定結果に基づいた濃度分布を以てインク液滴iが記録紙Pに着弾するように、インク液滴iの吐出方向の周期的な変化を吐出制御部112によって制御させることもできる。
【0138】
また、制御部117は、入出力端子114から入力された印刷データ等に応じて吐出制御部112が制御する上述した第1のインク吐出モードと第2のインク吐出モードとを切り換える。具体的に、制御部117は、例えば印刷データにおいて入力された印刷データにおける各画素のRGBの値に基づいて色の鮮やかさを示す彩度を所定の閾値より高くして塗りつぶすような部分、すなわち色を濃くして塗りつぶす部分があったときは、その部分に対応する記録紙Pの位置に第2のインク吐出モードでインク液滴iを吐出するように吐出制御部112を制御し、印刷データにおいて色を濃くして塗りつぶす部分以外に対応する記録紙Pの位置に第1のインク吐出モードでインク液滴iを吐出するように吐出制御部112を制御する。
【0139】
なお、以上のように構成された制御回路110においてROM115にプログラムを格納するようにしたが、プログラムを格納する媒体としては、ROMに限定されるものでなく、例えばプログラムが記録された光ディスクや、磁気ディスク、光磁気ディスク、ICカード等の各種記録媒体を用いることができる。この場合に制御回路110は、各種記録媒体を駆動するドライブと直接又は情報処理装置118を介して接続されてこれら記録媒体からプログラムを読み出すように構成する。
【0140】
次に、以上のように構成されるプリンタ装置1の全体の動作について図20及び図21に示すフローチャートを参照にして説明する。なお、本動作はROM115等の記憶手段に格納された処理プログラムに基づいて制御部117内の図示しないCPU(Central Processing Unit)の処理に基づいて実行されるものである。
【0141】
先ず、ユーザが情報処理装置118で印刷する文字データ、印刷データ等を選択し、印刷実行操作をすると、情報処理装置118は、選択されたデータより印刷データを生成し、プリンタ装置1の入出力端子114に生成した印刷データを出力する。
【0142】
次に、制御部117は、ステップS1において、各装着部32y,32m,32c,32kに所定のインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着されているかどうかを、係合突部21の突起部23と係合凹部24との係合の具合により判断する。そして、制御部117は、全ての装着部32にインクカートリッジ11が適切に装着されているときはステップS2に進み、少なくとも1の装着部32においてインクカートリッジ11が適切に装着されていないときはステップS3に進む。ステップS3においては、装着されていない色のインクカートリッジ11をユーザに知らせる警告表示を警告部113が行う。
【0143】
制御部117は、ステップS2において、インク残量検出部36の電気抵抗値の変化を検出し、電気抵抗値が変化したことが検出された場合、この電気抵抗値が変化に応じてインク残量の表示変更を行う。すなわち、ここでは、インク残量検出部36がインクカートリッジ11の高さ方向に3段設けられていることから、警告部113に3段階で残量表示を行うことができる。制御部117は、インクカートリッジ11のインクが満杯のとき、全ての段のインク残量検出部36の電気抵抗値が閾値より小さくなっており、これに基づいて、警告部113にインク4が満杯である旨を表示する。そして、インク4が使用され、最上段のインク残量検出部36の電気抵抗値が変化し、閾値以下になると、警告部113に、インクが1レベル減ったことを表示する。更にインク4が使用され、中段のインク残量検出部36の電気抵抗値が変化し、閾値以下になると、警告部113に、インク4が更に1レベル減ったことを表示する。更にインク4が使用され、最下段のインク残量検出部36の電気抵抗値が変化し、閾値以下になると、警告部113に、インク残量が残り僅かであることを表示する。
【0144】
制御部117は、ステップS4において、接続部37内のインク4が所定量以下、すなわちインク無し状態であるか否かを判断し、インク無し状態であると判断されたときはステップS5において、警告部113にその旨を表示、すなわち警告表示を行い、ステップS6において、印刷動作を禁止する。
【0145】
また、制御部117は、接続部37内のインク4が所定量以下でないとき、すなわちインク4が満たされているとき、ステップS7において、印刷動作を許可する。
【0146】
そして、制御部117は、図21に示すステップS11において、入出力端子114より入力された印刷データに応じて第1のインク吐出モードと第2のインク吐出モードとのどちらで印刷するかを判定する。具体的には、入力された印刷データにおける各画素のRGBの値に基づいて彩度を所定の閾値より高くして塗りつぶすような部分、すなわち色を濃くして塗りつぶす部分は第2のインク吐出モードで印刷すると制御部117が判定してステップS12に進み、入力された印刷データにおける色を濃くして塗りつぶす部分以外は第1のインク吐出モードで印刷すると制御部117が判定してステップS13に進む。
【0147】
印刷動作を行う場合、制御部117は、図22に示すように、ヘッドキャップ開閉機構83を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ42をヘッドカートリッジ2に対してトレイ85a側に移動させ、ヘッドチップ41のノズル104aを露出させる。
【0148】
そして、制御部117は、給排紙機構84を構成する駆動モータを駆動させて記録紙Pを走行させる。具体的に、制御部117は、トレイ85aから給紙ローラ150によって記録紙Pを引き出し、互いに反対方向に回転する一対の分離ローラ151a,151bによって引き出された記録紙Pの一枚を反転ローラ152に搬送して搬送方向を反転させた後に搬送ベルト153に記録紙Pを搬送し、搬送ベルト153に搬送された記録紙Pを押さえ手段154が所定の位置に停止させることでインク4が着弾される位置が位置決めされるように給排紙機構84を制御する。
【0149】
これと共に、制御部117は、吐出制御部112がヘッドチップ41よりインク液滴iを記録紙Pに吐出する制御を行うようにする。具体的には、図23に示すように、インク流路106内の一対の発熱抵抗体102a,102bに接する部分には、インク気泡F,Gが発生し、図24に示すように、そのインク気泡F,Gの膨張によってインク気泡F,Gの膨張分の体積と等しい体積のインク4が押しのけられる。これによって、ノズル104aに接する部分の押しのけられたインク4と同等の体積のインク液滴iがノズル104aから吐出され、記録紙P等の被記録物に着弾し、記録紙Pには、印刷データに応じた文字、画像等が印刷される。
【0150】
このとき、ヘッドチップ41は、インク気泡F,Gそれぞれの膨張の具合によりインク液滴iのノズル104aから吐出方向を決定する。すなわち、ヘッドチップ41では、インク気泡F,Gのうちの膨張する速度が早い方がインク4をより押圧することからノズル104aを中心に気泡の膨張が遅い側に押し出すようにインク液滴iを吐出させる。なお、インク気泡F,Gは、より多くの電力が供給される等して一対の発熱抵抗体102a,102bのうち発熱する速度が早い方に接している方の膨張が早くなる。
【0151】
そして、ヘッドチップ41では、第1の吐出モードでインク液滴iを吐出する場合、制御部117がスイッチング素子121a,121b,121cのオン/オフを制御することでインク4のノズル104aからの吐出方向を記録紙Pの走行方向に周期的に変化させながらインク液滴iを吐出し、図25に示すように、インク液滴iの着弾点160における図25中矢印Dで示す記録紙Pの走行方向で隣接するもの同士が、これらの境界を補い合うようにインク液滴iを着弾させる。
【0152】
これにより、ヘッドチップ41では、インク液滴iの着弾点160の境界を拡散させて目立たなくなるようにインク液滴iが記録紙Pに着弾されることから、例えば従来のような給排紙機構の誤動作等により記録紙の走行速度が速まったときに、記録紙の走行方向で隣り合うインクの着弾点の間に隙間ができて生じる記録紙の走行方向と略直行方向の白スジ等を防止するようにインク液滴iを吐出する。また、例えば従来のような給排紙機構の誤動作等により記録紙の走行速度が遅くなったときに、記録紙の走行方向で隣り合うインクの着弾点が所定の範囲に過剰に重なって生じる濃度ムラ等を防止できる。
【0153】
一方、ヘッドチップ41では、第2の吐出モードでインク液滴iを吐出する場合、図26に示すように、インク液滴iを着弾点に連続して複数回着弾させることにより、インク4が乾く前に着弾点170にインク液滴iが順次着弾していくことから、インク4が着弾点170を中心に略均一に拡散していき隣接する着弾点との境界を目立たなくするようにインク液滴iを着弾させる。これにより、ヘッドチップ41では、色を濃くして塗りつぶす部分を濃度ムラ無く塗りつぶすことができる。
【0154】
以上ように、インク液滴iが吐出されると、インク液滴iを吐出したインク液室105内に吐出された量と同量のインク4がインク流路106から直ちに補充され、図10に示すように、元の状態に戻る。ヘッドチップ41からインク液滴iが吐出されると、付勢部材66の付勢力とダイアフラム69の付勢力とによってインク室62の開口部64を閉塞している弁65は、図9に示すように、ヘッドチップ41からインク液滴iが吐出された際に、開口部64分割されたインク流出路63側のインク室62のインク4の負圧が高まると、インク4の負圧によりダイアフラム69が大気圧により押し上げられて、弁シャフト68と共に弁65を付勢部材66の付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室62のインク流入路61側とインク流出路63側と間の開口部64が開放され、インク4がインク流入路61側からインク流出路63側に供給され、インク流路106にインクが補充される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム69が復元力により元の形状に戻り、付勢部材66の付勢力により弁シャフト68と共に弁65をインク室62が閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構54では、インク液滴iを吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0155】
このようにして、給排紙機構84によって走行している記録紙Pには、順に印刷データに応じた文字や画像が印刷されることになる。そして、印刷が終了して記録紙Pは、排紙口86より排出される。
【0156】
以上のように構成されたプリンタ装置1では、記録紙Pの走行する方向と略同方向に並設された一対の発熱抵抗体102a,102bに、異なる大きさの電力を供給若しくはタイミングをずらして電力を供給し、供給される電力を周期的に変化させることで、インク液滴iの吐出方向を記録紙Pの走行方向と略同方向にさせ、且つ吐出方向を周期的に変化させることができる。
【0157】
これにより、このプリンタ装置1では、図25に示すように、インク液滴iの吐出方向が記録紙Pの走行方と略同方向で周期的に変化された状態でインク液滴iをノズル104aより吐出できることから、記録紙Pにインク液滴iが着弾したときの着弾点160における記録紙Pの走行方向で隣接するもの同士が、これらの境界を補い合うことになる。
【0158】
したがって、このプリンタ装置1では、記録紙Pに着弾したインク液滴iの着弾点160の境界が拡散して目立たなくなることから、従来のような記録紙の走行速度のムラにより生じていた記録紙の走行方向と略直交方向の白スジや、色の濃度ムラ等を防止することができる。
【0159】
また、このプリンタ装置1では、図26に示すように、色を濃くして塗りつぶす部分を印刷するときに、インク液滴iを着弾点170に連続して複数回着弾させることにより、インク4が乾く前に、次のインク液滴iが着弾点170に着弾することから、インク4が着弾点170を中心に略均一に拡散していき隣接する着弾点との境界を目立たなくし、色を濃くして塗りつぶす部分を濃度ムラ無く塗りつぶすことができる。
【0160】
したがって、このプリンタ装置1では、従来のようなインクヘッドのノズルの形成精度が悪かったりしてインクの着弾点がずれることで生じていた上記図28に示すような記録紙Pの走行方向に沿った白スジ等を防止できる。
【0161】
さらに、このプリンタ装置1では、従来のような印刷時にオーバーラップ部を設けることなく色の濃度ムラや白スジ等を防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して高品質な画像を印刷できる。
【0162】
以上のように、このプリンタ装置1では、例えば給排紙機構84の誤動作で記録紙Pの走行速度にムラが生じたり、ノズル104aの形成精度が悪くインク液滴iの着弾位置がずれたりしても、インク液滴iの吐出方向を制御した状態でインク4をノズル104aから吐出できることから、色の濃度ムラや白スジにより画質が劣化してしまうことを防止できる。
【0163】
なお、以上の例では、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインクカートリッジ11が着脱可能なプリンタ装置1を例に取り説明したが、第1のインク吐出モード及び第2のインク吐出モードで印刷することが可能なヘッドチップ41については、プリンタ本体3とヘッドカートリッジ2とが一体のプリンタ装置に適用することもできる。
【0164】
また、以上の例では、記録紙に文字や画像を印刷するプリンタ装置を例に取り説明したが、本発明は、微少量の液体を吐出する他の装置に広く適用することができる。例えば、本発明は、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−34560号公報)やプリント配線基板の微細な配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置に適用することもできる。
【0165】
さらに、以上の例では、一対の発熱抵抗体102a,102bによってインク4を加熱しながらノズル104aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えば圧電素子等の電気機械変換素子等によってインク液滴iを電気機械的にノズル104aより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0166】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被記録物の走行速度にムラがあったり、吐出孔の形成精度が悪く液体の着弾位置がずれたりしても、液体の吐出孔からの吐出方向を被記録物の走行方向と略同方向で制御した状態で液体を吐出できることから、色の濃度ムラや白スジによる画質の劣化を防止できる。
【0167】
また、本発明によれば、印刷時にオーバーラップ部を設けることなく色の濃度ムラや白スジを防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して優れた画質の印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタ装置を示す斜視図である。
【図2】同インクジェットプリンタ装置に備わるインクジェットプリントヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図3】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された状態を示す断面図である。
【図4】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が弁により閉塞された状態を示す模式図である。
【図5】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が開放された状態を示す模式図である。
【図6】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの装着部を示す平面図である。
【図7】同インクジェットプリントヘッドカートリッジとヘッドチップの関係を示す断面図である。
【図8】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が閉じた状態を示す断面図である。
【図9】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が開いた状態を示す断面図である。
【図10】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップを示す断面図である。
【図11】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップを示す分解斜視図である。
【図12】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップを示す平面図である。
【図13】気泡発生時間の差と吐出角度との関係を示す特性図であり、同図(A)は記録紙の走行方向におけるインク液滴の吐出角度を示し、同図(B)はノズルの並んでいる方向におけるインク液滴の吐出角度を示している。
【図14】同インクジェットプリンタ装置の一部を透視して示す側面図である。
【図15】同インクジェットプリンタ装置の制御回路を説明するブロック図である。
【図16】同インクジェットプリンタ装置に備わる吐出制御部を説明する模式図である。
【図17】同ヘッドチップより吐出したインク液滴の着弾点を模式的に示す平面図である。
【図18】同ヘッドチップが1つの着弾点に向かってインク液滴を連続して複数回吐出する状態を模式的に示す側面図であり、同図(A)はノズルに対して記録紙の走行方向から近づいてくる着弾点に向かってインク液滴を吐出している状態を示し、同図(B)はノズルに対して略垂直方向に位置する着弾点に向かってインク液滴を吐出している状態を示し、同図(C)はノズルに対して記録紙の走行方向に遠離る着弾点に向かってインク液滴を吐出している状態を示している。
【図19】同ヘッドチップより吐出したインク液滴による濃度分布を示す特性図である。
【図20】同インクジェットプリンタ装置の制御方法を説明するフローチャートである。
【図21】同インクジェットプリンタ装置のインク吐出モードを説明するフローチャートである。
【図22】同インクジェットプリンタ装置において、ヘッドキャップ開閉機構が開いている状態を一部透視して示す側面図である。
【図23】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップにおいて、インク気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図24】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップにおいて、発生したインク気泡によりインク液滴がノズルより吐出される状態を示す断面図である。
【図25】同ヘッドチップより吐出したインク液滴が記録紙に着弾していく状態を模式的に示す平面図である。
【図26】同ヘッドチップより吐出したインク液滴が記録紙に着弾して着弾点を中心に略均一に拡散していく状態を模式的に示す平面図である。
【図27】従来のプリンタ装置で印刷を行ったときの色の濃度ムラや記録紙の幅方向に生じた白スジを模式的に示す平面図である。
【図28】同プリンタ装置による記録紙の走行方向に生じた白スジを模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ装置、2 インクジェットプリントヘッドカートリッジ、3 プリンタ本体、4 インク、11 インクカートリッジ、12 インク収容部、13 インク供給部、31 カートリッジ本体、32 装着部、41 ヘッドチップ、42 ヘッドキャップ、81 ヘッドカートリッジ装着部、82 ヘッドカートリッジ保持機構、83 ヘッドキャップ開閉機構、84 給排紙機構、85 給紙口、86 排紙口、101 回路基板、102a,102b 発熱抵抗体、103 フィルム、104 ノズルシート、104a ノズル、105 インク液室、106 インク供給路、112 吐出制御部、117 制御部、120a,120b 電源、121a,121b,121c スイッチング素子、122a,122b,122c 抵抗、123 可変抵抗、130,131,132,133,134,135,136,137,140,160,170 着弾点

Claims (6)

  1. 液体を収容する液室と、上記液室に一対配置され、電力が供給されることで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させる気泡発生手段と、上記気泡発生手段による上記気泡の発生に伴って上記液体を吐出させるための吐出孔とを有し、上記吐出孔が被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている吐出手段と、
    上記吐出孔と対向する位置に配置された被記録物を所定の方向に走行させる走行手段と、
    上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させて上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる吐出方向制御手段とを備え、
    上記一対の気泡発生手段は、上記被記録物の走行する方向と同方向に並設され、
    上記吐出方向制御手段は、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、
    上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に対して、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出する液体吐出装置。
  2. 液体を収容する液室と、上記液室に一対配置され、電力が供給されることで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させる気泡発生手段と、上記気泡発生手段による上記気泡の発生に伴って上記液体を吐出させるための吐出孔とを有し、上記吐出孔が被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている吐出手段と、
    上記吐出孔と対向する位置に配置された被記録物を所定の方向に走行させる走行手段と、
    上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を制御する吐出方向制御手段とを備え、
    上記一対の気泡発生手段は、上記被記録物の走行する方向と同方向に並設され、
    上記吐出方向制御手段は、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、
    上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、上記液体を、走行している上記被記録物に、該被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出し、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように上記吐出方向を制御する液体吐出装置。
  3. 被記録物を所定の方向に走行させる走行手段と、
    液体を収容する液室と、上記液室に上記被記録物の走行する方向と同方向一対並設され、エネルギが供給されることで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させる気泡発生手段と、上記被記録物と対向し、上記気泡発生手段による上記気泡の発生に伴って上記液体を吐出させるための吐出孔とを有し、上記吐出孔が上記被記録物の走行する方向に対して直交方向に、上記被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられ、上記被記録物に対して入力データに応じて上記液体を吐出する吐出手段と、
    上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させることで、走行している上記被記録物に対する上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる第1の吐出方向制御手段と、
    上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第3の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第3のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第4のスイッチング素子を介して、グランド又は第4の電源を選択的に接続し、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第4の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出し、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置を少なくとも一回以上重なるようにさせる第2の吐出方向制御手段と、
    上記入力データに応じて上記第1の吐出方向制御手段と、上記第2の吐出方向制御手段とを切り換える切換手段とを備え、
    上記切換手段は、上記入力データに基づいて、該入力データにおける各画素の彩度が所定の閾値より高いか低いかを判定し、低いと判定した場合、上記第1の吐出方向制御手段に切り換え、高いと判定した場合、上記第2の吐出方向制御手段に切り換える液体吐出装置。
  4. 液室に配置された気泡発生手段に吐出方向制御手段により電力を供給することで上記液室に収容された液体内に気泡を発生させ、この気泡の発生に伴って上記液体を、被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている上記液体を吐出させるための吐出孔より、上記吐出孔と対向し且つ所定の方向に走行する被記録物に向かって吐出させる液体の吐出方法において、
    上記吐出方向制御手段は、上記被記録物が走行する方向に対して同方向に並設された一対の上記気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、
    上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に対して、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させ、更に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させることで、上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる液体の吐出方法。
  5. 液室に配置された気泡発生手段に吐出方向制御手段により電力を供給することで上記液室に収容された液体内に気泡を発生させ、この気泡の発生に伴って上記液体を、被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている上記液体を吐出させるための吐出孔より、上記吐出孔と対向し且つ所定の方向に走行する被記録物に向かって吐出させる液体の吐出方法において、
    上記吐出方向制御手段は、上記被記録物が走行する方向に対して同方向に並設された一対の上記気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、
    上記吐出方向制御手段は、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させる液体の吐出方法。
  6. 液室に配置された気泡発生手段に第1及び第2の吐出方向制御手段により電力を供給することで上記液室に収容された上記液体内に気泡を発生させ、この気泡の発生に伴って上記液体を、被記録物の走行する方向に対して直交方向に、この被記録物の最大印刷幅に合わせて、複数直線状に並んで設けられている上記液体を吐出させるための吐出孔より、上記吐出孔と対向し且つ所定の方向に走行する上記被記録物に向かって入力されたデータに応じて吐出させる液体の吐出方法において、
    上記第1の吐出方向制御手段は、上記被記録物が走行する方向に対して同方向に並設された一対の上記気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第1の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第1のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第2のスイッチング素子を介して、グランド又は第2の電源を選択的に接続し、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第2の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第2のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第1のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給し、
    上記第2の吐出方向制御手段は、上記一対の気泡発生手段を直列に接続し、上記直列に接続された気泡発生手段列のうちの一方の気泡発生手段の端部に第3の電源を接続するとともに、上記気泡発生手段列のうちの他方の気泡発生手段の端部をグランドに接続し、上記気泡発生手段列の中点に、第3のスイッチング素子を介して、抵抗値がそれぞれ異なる複数の抵抗体のうちの一の抵抗体の一方の端部を選択的に接続し、該複数の抵抗体の他方の端部に、第4のスイッチング素子を介して、グランド又は第4の電源を選択的に接続し、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段と第4の電源とを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、上記第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて大きくし、上記第4のスイッチング素子で上記他方の気泡発生手段とグランドとを接続したときに、上記他方の気泡発生手段の電力を、上記一方の気泡発生手段の電力よりも、第3のスイッチング素子で接続された一の抵抗体の抵抗値の大きさに応じて小さくし、上記一対の気泡発生手段に供給される電力に差異を生じさせ、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給し、
    上記第1の吐出方向制御手段により、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に対して、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させ、更に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力を周期的に変化させることで、走行している上記被記録物に対する上記吐出孔より吐出される上記液体の吐出方向を周期的に変化させる第の工程と、
    上記第2の吐出方向制御手段により、上記一対の気泡発生手段に、異なる電力を供給することで、走行している上記被記録物に上記吐出孔より吐出された上記液体が着弾するときの着弾位置が少なくとも一回以上重なるように、上記液体を上記被記録物の走行する方向又は上記被記録物の走行する方向と逆方向に、上記一対の気泡発生手段に供給される電力の差異量に対応した吐出角度で、上記被記録物に斜めに着弾するように、上記吐出孔より吐出させる第の工程とを有し、
    上記入力データに基づいて、該入力データにおける各画素の彩度が所定の閾値より高いか低いかを判定し、低いと判定した場合、上記第1の工程に切り換え、高いと判定した場合、上記第の工程に切り換える液体の吐出方法。
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