JP2004296707A - 発光素子の製造方法、複合透光性基板及び発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】透光性導電半導体基板を有しつつも、該基板を発光層部に貼り合せる工程が不要であり、ひいては発光層部に損傷等が発生しにくい発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第一の化合物半導体よりなる発光層部24が、該発光層部24からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板70上に形成された構造を有する発光素子を製造するために、まず、第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層8の第一主表面MP1側に、貼り合せ又はエピタキシャル法による厚膜成長により、透光性導電半導体基板70を形成して複合透光性基板50を作製する。次に、該複合透光性基板50の発光層成長準備層8の第二主表面MP2に発光層部24をエピタキシャル成長する。透光性導電半導体基板70には、発光層成長準備層8を格子緩和させるための該発光層成長準備層8よりも高密度に転位を含む高転位密度層70aが形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】第一の化合物半導体よりなる発光層部24が、該発光層部24からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板70上に形成された構造を有する発光素子を製造するために、まず、第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層8の第一主表面MP1側に、貼り合せ又はエピタキシャル法による厚膜成長により、透光性導電半導体基板70を形成して複合透光性基板50を作製する。次に、該複合透光性基板50の発光層成長準備層8の第二主表面MP2に発光層部24をエピタキシャル成長する。透光性導電半導体基板70には、発光層成長準備層8を格子緩和させるための該発光層成長準備層8よりも高密度に転位を含む高転位密度層70aが形成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、発光素子の製造方法、複合透光性基板及び発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2001−68731号公報
【0003】
(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1;以下、AlGaInPとも記載する)系混晶化合物により発光層部が形成された発光素子は、薄いAlGaInP活性層を、それよりもバンドギャップの大きいn型AlGaInPクラッド層とp型AlGaInPクラッド層とによりサンドイッチ状に挟んだダブルへテロ構造を採用することにより、高輝度の素子を実現できる。また、近年では、InxGayAl1−x−yN(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1;以下、InGaAlNとも記載する)系混晶化合物を用いて同様のダブルへテロ構造を形成した青色発光素子も実用化されている。
【0004】
例えば、AlGaInP系発光素子を例に取れば、n型GaAs基板上にヘテロ形成させる形にて、n型GaAsバッファ層、n型AlGaInPクラッド層、AlGaInP活性層、p型AlGaInPクラッド層をこの順序にて積層し、ダブルへテロ構造をなす発光層部を形成する。発光層部への通電は、素子表面に形成された金属電極を介して行なわれる。ここで、金属電極は遮光体として作用するため、例えば発光層部主表面の中央部のみを覆う形で形成され、その周囲の電極非形成領域から光を取り出すようにする。
【0005】
この場合、金属電極の面積をなるべく小さくしたほうが、電極の周囲に形成される光漏出領域の面積を大きくできるので、光取出し効率を向上させる観点において有利である。従来、電極形状の工夫により、素子内に効果的に電流を拡げて光取出量を増加させる試みがなされているが、この場合も電極面積の増大はいずれにしろ避けがたく、光漏出面積の減少により却って光取出量が制限されるジレンマに陥っている。
【0006】
そこで、光取出し効率を向上させるために、発光層部の両面あるいは基板側面から光を取り出すことができるような素子構造が種々提案されている。AlGaInP系発光素子の場合、発光層部の成長用基板としてAlGaInPと格子整合しやすいGaAs基板が使用されるが、GaAsはAlGaInP系発光層部の発光波長域において光吸収が大きい。これを解決するために、特許文献1には、発光層部の両面から光を取り出すために、一旦GaAs基板を剥離し、発光波長域において透明なGaP等の透光性導電半導体基板を新たに貼り合わせる方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
発光素子においては、発光効率を高めるために発光層部をなす化合物半導体結晶は、転位等の結晶欠陥をなるべく含まない、高品質のものが要求される。しかし、特許文献1のように、予め成長した発光層部に透光性導電半導体基板を貼り合せる工程を採用した場合、貼り合せのためのハンドリングが必要となり、貼り合わせの密着加圧を行なう際に、発光層部に結晶欠陥が導入されたり、あるいはハンドリングに際して発光層部に損傷が加わったりするなどの不具合を生じやすい問題がある。また、貼り合わせを高温で実施すると、その熱影響により発光層部が劣化する懸念もある。さらに、ハンドリングを容易にするために、発光層部上に50μm程度の厚膜の化合物半導体層を成長することもあるが、該厚膜の化合物半導体層を成長する際にも、既に形成されている発光層部にその熱履歴が加わり、劣化が促進されることがある。
【0008】
本発明の課題は、透光性導電半導体基板を有しつつも、該基板を発光層部に貼り合せる工程が不要となり、ひいては発光層部に損傷もしくは劣化等が発生しにくい発光素子の製造方法と、それに用いる複合透光性基板、及びそれを用いた発光素子とを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明の発光素子の製造方法は、
第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有する発光素子の製造方法であって、
第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層を用意し、該発光層成長準備層の第一主表面側に直接又は中間化合物半導体層を介して透光性導電半導体基板を形成することにより複合透光性基板を作製する複合透光性基板製造工程と、
複合透光性基板の発光層成長準備層の第二主表面側に発光層部をエピタキシャル成長する発光層部成長工程とを含み、
複合透光性基板製造工程及び発光層部成長工程の少なくともいずれかにおいて、透光性導電半導体基板又は中間化合物半導体層に、発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を形成することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の発光素子は、第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有し、
第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層が、透光性導電半導体基板上に形成されることにより複合透光性基板が形成され、
発光層成長準備層の透光性導電半導体基板側を第一主表面とするとき、該発光層成長準備層の第二主表面側に、発光層部がエピタキシャル成長されてなり、
かつ、透光性導電半導体基板又は該透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間に介在する中間化合物半導体層に、該発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を有してなることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の発光素子の製造方法及び発光素子によると、予め成長した発光層部を透光性導電半導体基板に貼り合せる方法は採用しない。具体的には、発光層部(第一の化合物半導体)に対して透光性導電半導体基板(第二の化合物半導体)よりも格子整合しやすい化合物半導体により発光層成長準備層を作り、その発光層成長準備層の第一主表面側に透光性導電半導体基板を形成して複合透光性基板を、まず作製する。そして、その複合透光性基板を基板として用い、該発光層成長準備層の第二主表面側を成長面とする形で、ここに発光層部をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長後は、透光性導電半導体基板を発光素子の光取出用基板部分として流用する。透光性導電半導体基板上に格子定数差の大きい発光層部を直接エピタキシャル成長することは困難であるが、上記のごとき複合透光性基板を用いれば、発光層部に対して格子整合しやすい化合物半導体からなる発光層成長準備層の第二主表面側に、発光層部を容易にエピタキシャル成長することができる。そして、このエピタキシャル成長により、発光層部が、発光層成長準備層を介して初めから透光性導電半導体基板と結合された構造にて得られるから、従来のごとく、発光層部を透光性導電半導体基板に貼り合せる工程は全く必要でなくなる。その結果、貼り合わせのハンドリング等により発光層部に不要な圧力が加わったり損傷が発生する心配がなくなる。また、予め成長した発光層部に対して透光性導電半導体基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部の劣化も生ずる心配がなくなる。このようにして、上記複合透光性基板を用いて得られる本発明の発光素子は、発光層部の品質が高められ、ひいては高輝度で長寿命の発光素子が実現する。
【0012】
次に、本発明の発光素子の製造方法及び発光素子において、透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間には、それら透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との結合を媒介する中間化合物半導体層を介挿することもできる。中間化合物半導体層は、例えば透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との不整合歪の緩和を目的として、それらの中間の格子定数を有する化合物半導体層として形成することができる。
【0013】
そして、本発明の発光素子の製造方法においては、複合透光性基板製造工程及び発光層部成長工程の少なくともいずれかにおいて、透光性導電半導体基板又は/及び中間化合物半導体層に、発光層成長準備層を格子緩和させるための高転位密度領域が形成される。発光層成長準備層を格子緩和させることにより、透光性導電半導体基板と発光層部との格子定数不一致の影響を、該発光層成長準備層上にエピタキシャル成長される発光層部に及びにくくすることができる。さらに、複合透光性基板を発光層部の成長温度まで昇温し、該発光層部を成長後に冷却する際には、成長した発光層部(及び発光層成長準備層)と透光性導電半導体基板との熱膨張係数差に基づく熱応力が発生するが、予め高転位密度領域を形成しておけば、該熱応力による影響(例えば新たに発生する転位など)を高転位密度領域側にしわ寄せすることができ、発光層部を該熱応力による不具合から保護することができる。以上により、上記発光素子の製造方法を用いて得られる本発明の発光素子は、発光層部の品質が高められ、ひいては高輝度で長寿命の発光素子が実現する。
【0014】
透光性導電半導体基板又は/及び中間化合物半導体層への高転位密度領域の形成は、発光層部の成長段階(成長後の冷却工程を含む)で形成してもよいが、本発明の複合透光性基板のごとく、複合透光性基板の作製段階、つまり発光層部のエピタキシャル成長前の段階で、既に形成しておくことがより望ましい。すなわち、本発明の複合透光性基板は、第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有する発光素子の、発光層部のエピタキシャル成長用に使用されるものであり、
第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層が、透光性導電半導体基板上に形成され、かつ、透光性導電半導体基板又は該透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間に介在する中間化合物半導体層に、発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を有してなり、発光層成長準備層の透光性導電半導体基板側を第一主表面とするとき、該発光層成長準備層の第二主表面側が発光層部のエピタキシャル成長に使用されることを特徴とする。発光層部のエピタキシャル成長に先立って発光層成長準備層を予め格子緩和させておくことで、透光性導電半導体基板と発光層部との格子定数不一致の影響を、該発光層成長準備層上にエピタキシャル成長される発光層部に及びにくくする効果を一層高めることができる。
【0015】
本発明の発光素子の製造方法において、中間化合物半導体層は、発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成することが、中間化合物半導体層への転位の積極導入ひいては発光層成長準備層の格子緩和を促進できるので望ましい。また、本発明の複合透光性基板は、中間化合物半導体層を発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成したものとすることができる。なお、化合物半導体結晶が比較対照となる結晶よりも転位導入のためのパイエルス・ポテンシャル(特に、ミスフィット転位導入のためのパイエルス・ポテンシャル)が低い場合、該化合物半導体結晶は、比較対照となる結晶よりも転位導入されやすくなる傾向となる。
※「格子が柔らかい」、というのは、結晶物理の分野では弾性定数の大小で判断しますが、「転位が導入されやすい」という観点では、パイエルスポテンシャルと、等価な容易滑り方向の多寡で決まり、一般にはパイエルスポテンシャルで議論することが多いです。しかし、パイエルスポテンシャルの物性値は研究例が少なく、実測にはかなり手間がかかります。最後の4行は定義記載としては十分と思っていますが、侵害特定には問題ありですので、敢えて「〜のことをいう」といった定義はしないことにしました。
【0016】
例えば、本発明の発光素子の製造方法において中間化合物半導体層を設けない場合は、透光性導電半導体基板を発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成し、高転位密度領域を該透光性導電半導体基板に形成することができる。この場合、本発明の複合透光性基板は、透光性導電半導体基板を発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成し、高転位密度領域を該透光性導電半導体基板に形成したものとなる。透光性導電半導体基板は、発光層部からの発光光束を透過させる媒体として機能するだけであり、それ自身は発光層部として機能しないので、高転位密度領域が形成されても大きな不具合は生じない。また、高転位密度領域を中間化合物半導体層と透光性導電半導体基板の両方に形成することも可能である。例えば、発光層成長準備層の第一主表面に、該発光層成長準備層との格子定数差が、発光層部と発光層成長準備層との格子定数差よりも大きい中間化合物半導体層を予め形成し、その中間化合物半導体層に予め高転位密度領域を形成した後に、該中間化合物半導体層上に透光性導電半導体基板を形成し該透光性導電半導体基板にも高転位密度領域を形成すると、発光層成長準備層の格子緩和をより確実に行なうことができる。この場合、中間化合物半導体層が透光性導電半導体基板と同一の化合物半導体にて形成されることを妨げない。
【0017】
なお、発光層成長準備層上には、発光層部を直接成長させてもよいし、発光層成長準備層と格子整合する別の化合物半導体層(例えばバッファ層)を成長させてから、その上に発光層部を成長することもできる。例えば、貼り合せハンドリング時の影響により発光層成長準備層に若干の結晶欠陥等が形成される可能性はありえるが、該発光層成長準備層は単に発光層部成長の基礎を与える役割を担うだけであるから、発光特性が欠陥密度により敏感に左右される発光層部と比較すれば、その影響は小さい。そして、仮にその結晶欠陥の影響が懸念される場合でも、例えば発光層成長準備層上に結晶欠陥吸収用のバッファ層を形成した後、発光層部を成長すれば、該結晶欠陥の影響を軽減することが可能である。
【0018】
複合透光性基板製造工程においては、透光性導電半導体基板を発光層成長準備層の第一主表面側に貼り合せる方法を採用することができる。これにより得られる複合透光性基板は、透光性導電半導体基板を、発光層成長準備層の第一主表面側に貼り合せたものとなる。上記の方法は、貼り合せ工程を透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間で行い、発光層部のエピタキシャル成長工程を、その貼り合せ工程の後で実施する。つまり、貼り合せ時の機械的ハンドリングの影響を発光層成長準備層にいわば肩代わりさせることにより、発光層部への影響を軽減することができる。
【0019】
また、複合透光性基板製造工程においては、発光層成長準備層の第一主表面側に、第二の化合物半導体をエピタキシャル成長し、その第二の化合物半導体層を透光性導電半導体基板とする方法を採用することもできる。これにより得られる複合透光性基板は、透光性導電半導体基板が、第二の化合物半導体を発光層成長準備層の第一主表面上にエピタキシャル成長されたものとなる。透光性導電半導体基板は、発光層部よりも厚膜であることが望ましい。この方法によると、発光層成長準備層の第一主表面側に、透光性導電半導体基板をエピタキシャル成長により形成するから、透光性導電半導体基板の貼り合せ工程自体が不要となり、発光層成長準備層へのハンドリング等の影響が本質的に生じない。また、予め成長した発光層部に対して透光性導電半導体基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部の劣化も生ずる心配がなくなる。さらに、貼り合せ界面に金属や酸化物などの異物や水蒸気などを噛みこむ心配がないので、該噛みこみによる有害不純物の発光層部への拡散等も心配する必要がない。
【0020】
上記第二の化合物半導体のエピタキシャル成長は、ハイドライド気相成長法(Hydride Vapor Phase Epitaxial Growth Method:以下、HVPE法という)または液相成長法(Liquid Phase Epitaxial Growth Method):以下、LPE法という)により行なうことができる。また、これにより得られる透光性導電半導体基板は、ハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されたものとなる。HVPE法またはLPE法によると層成長速度を、他の方法、例えば有機金属気相成長法(MetalOrganic Vapor Phase Epitaxy:以下、MOVPE法ともいう)よりもはるかに大きくでき、透光性導電半導体基板としてある程度の強度を要する厚さであっても高能率にて形成できる。また、最終的に得られる透光性導電半導体基板の表面に、結晶に起因したファセットや面荒れがほとんど生じず、ひいては平滑性の良好な基板を得られる利点もある。さらに、HVPE法では、III族元素源として高価な有機金属を使用せず、III族元素源に対するV族元素源(AsH3、PH3など)の配合比率もはるかに少なくて済む(例えば1/100程度)ので、コスト的に有利である。
【0021】
本発明の発光素子の製造方法において、高転位密度領域を含む透光性導電半導体基板の全体を、発光層成長準備層の直上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により成長することができる。また、本発明の複合透光性基板は、高転位密度領域を含む透光性導電半導体基板の全体を、発光層成長準備層上にハイドライド気相成長法または液相成長法により成長したものとして構成できる。この方法によると、高転位密度領域を含む透光性導電半導体基板の全体が、成長速度の大きいハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されるので能率的である。
【0022】
なお、ハイドライド気相成長法により成長厚さが過度に大きくなってから格子緩和が生ずると、厚さの大きい基板側の剛性が発光層成長準備層よりも高くなり、発光層成長準備層に転位導入されて格子緩和を生じてしまう可能性がある。従って、透光性導電半導体基板に高転位密度領域を確実に形成するには、高転位密度領域に当る部分の成長速度を基板の他の部分よりも小さくしたり、あるいは高転位密度領域に当る部分の成長を行なった後、一旦冷却して熱応力により該部分への転位導入を促進し、その後再び昇温して基板の他の部分を成長する工程を採用することが望ましい。
【0023】
一方、本発明の発光素子の製造方法においては、発光層成長準備層の第一主表面側に中間化合物半導体層を有機金属気相成長(MetalOrganic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)法により成長し、かつ、該中間化合物半導体層内に高転位密度領域を形成し、透光性導電半導体基板を、該高転位密度領域を有する中間化合物半導体層上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により形成する方法を採用してもよい。この場合、本発明の複合透光性基板は、発光層成長準備層の第一主表面側に中間化合物半導体層を有機金属気相成長法により成長し、かつ、該中間化合物半導体層内に高転位密度領域を形成し、透光性導電半導体基板を、該高転位密度領域を有する中間化合物半導体層上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により形成したものとなる。中間化合物半導体層を、HVPE法あるいはLPE法と比較して成長速度の小さいMOVPE法にて成長することで、該中間化合物半導体層に発光層成長準備層を格子緩和させるための転位をより導入しやすくなり、高転位密度領域を確実に形成できる。また、透光性導電半導体基板の部分はHVPE法又はLPE法にて成長するので、発光層成長準備層上の中間化合物半導体層には、MOVPE法の成長装置からHVPE法あるいはLPE法の成長装置に基板を移し変える際の冷却の熱履歴が必然的に加わる。これも、中間化合物半導体層への高転位密度領域形成の確実性を向上させる要因となる。
【0024】
HVPE法あるいはLPE法を用いると、高転位密度領域の形成により、該高転位密度領域の最表面にファセット等の面荒れが生じても、その後の層成長に伴い面が平滑化しやすく、最終的に得られる透光性導電半導体基板の裏面を平坦に仕上げることが容易であることも有利な効果のひとつである。従って、透光性導電半導体基板裏面側に反射層を兼ねた裏面電極を形成する場合、反射面も平滑化するので反射率を向上できる利点がある。
【0025】
また、本発明の発光素子の製造方法において、複合透光性基板製造工程は、
第二の化合物半導体よりも、第一の化合物半導体との格子定数差が小さい成長用基板上に、発光層成長準備層を該発光層成長準備層の第二主表面側からエピタキシャル成長する発光層成長準備層成長工程と、
発光層成長準備層の第一主表面側に透光性導電半導体基板を形成する透光性導電半導体基板形成工程と、
発光層成長準備層の第二主表面から成長用基板を除去する成長用基板除去工程と、を有するものとして実施することができる。上記のような成長用基板を用いることで、発光層成長準備層を高品質にて形成することができる。
【0026】
この場合、透光性導電半導体基板形成工程の実施後に成長用基板除去工程を実施することができる。このようにすると、透光性導電半導体基板の形成により発光層成長準備層の機械的強度を高めてから成長用基板を除去するので、ハンドリングがより容易である。なお、発光層成長準備層を、ハンドリングに耐える程度にまで厚くできる場合には、発光層成長準備層から成長用基板を除去した後に、透光性導電半導体基板を該発光層成長準備層の第一主表面上に形成する方法を採用することも可能である。
【0027】
本発明の複合透光性基板及び発光素子の製造方法において、発光層成長準備層は、発光層部からの発光光束のピーク波長に対応するエネルギーよりもバンドギャップの大きい化合物半導体にて形成することが望ましい。このようにすることにより、発光層部からの光が発光層成長準備層に吸収されにくくなり、発光層成長準備層を経由して透光性導電半導体基板に発光光束が出入りする際に、吸収による損失を低く留めることができ、ひいては光取出し効率の向上に寄与する。
【0028】
また、本発明の複合透光性基板及び発光素子の製造方法において、発光層部を構成する第一の化合物半導体を、AlGaInP系混晶化合物とする場合、透光性導電半導体基板をなす第二の化合物半導体は、例えばGaPまたはGaAsP系混晶化合物にて形成することができる。AlGaInP系混晶化合物((AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1))は、混晶比x及びyを調整することにより、GaAs単結晶基板と整合する格子定数を維持したまま、例えば520nm以上670nm以下の範囲で、高発光強度を維持しつつ発光波長を容易に調整することができる。この場合、GaPあるいはGaAsP系混晶化合物はバンドギャップが比較的大きいため、該AlGaInP系発光層部からの発光光束に対して良好な光透過性を有し、光取出し効率を高めることができる。
【0029】
次に、本発明の複合透光性基板及び発光素子の製造方法において、発光層成長準備層は、発光層部の品質向上の観点において発光層部との格子不整合がなるべく小さいこと、具体的には、発光層成長準備層の第二主表面の格子定数をa1、発光層部の発光層成長準備層側の格子定数をa2として、|a1−a2|/a1≦0.01となっていることが望ましい。|a1−a2|/a1>0.01になると、発光層成長準備層の第二主表面上に発光層部をエピタキシャル成長する際に、発光層成長準備層との格子不整合により発光層部にミスフィット転位などの結晶欠陥が導入されやすくなり、発光効率の低下につながる場合がある。
【0030】
具体的には、発光層部と発光層成長準備層とを、III族構成元素とV族構成元素との種別が一致したIII−V族混晶化合物半導体にて構成することが、発光層成長準備層と発光層部との格子不整合率を縮小する上で望ましい。発光層部と発光層成長準備層とを、いずれもAlGaInP系混晶化合物で構成すれば、発光層成長準備層上への発光層部のエピタキシャル成長を容易に行なうことができる。より具体的には、発光層部は、AlGaInP系混晶化合物により、ノンドープの活性層をn型クラッド層とp型クラッド層とで挟んだダブルへテロ構造にて構成することにより、活性層へのキャリア閉じ込め効果を高め、ひいては発光再結合を促進して内部量子効率を向上することができる。この場合、キャリアの閉じ込め効果を高めるには、n型クラッド層とp型クラッド層とは、ノンドープの活性層よりもワイドギャップに構成しておくことが有利である。そして、発光層成長準備層の第二主表面は、該発光層成長準備層側に位置するn型又はp型のクラッド層と同じ混晶比を有するか、あるいは、該クラッド層の格子定数をa2として、|a1−a2|/a1≦0.01となり、かつ活性層よりもバンドギャップが広くなるように混晶比が調整されたAlGaInP系混晶化合物で構成することで、発光層成長準備層上への発光層部のエピタキシャル成長を容易に行なうことができるばかりでなく、発光光束のピーク波長を規定する活性層よりもワイドギャップとなることにより、光吸収による損失も小さくできる。
【0031】
一方、過度に光吸収を生じないものであれば、発光層部と発光層成長準備層とを、III族構成元素とV族構成元素との種別が一致しないIII−V族混晶化合物半導体にて構成することもできる。例えば、発光層部がAlGaInP系混晶化合物である場合、発光層成長準備層をAlGaAs系混晶化合物で構成することもできる。AlGaAs系混晶化合物は、混晶比の調整により、AlGaInP系混晶化合物と格子整合した化合物が容易に得られるほか、前述の液相成長法による高速成長も可能であり、また、周知のMOVPE法により形成する場合でも、層成長速度を比較的大きく設定しやすく、製造能率が高い利点がある。いずれの方法を採用する場合でも、発光層成長準備層の厚膜化を容易に図ることができるので、例えば、前述の成長用基板を発光層成長準備層から除去してから、該発光層成長準備層の第一主表面に透光性導電半導体基板を形成する工程も容易に実施できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態である発光素子1を示す概念図である。発光素子1は、第一の化合物半導体であるAlGaInP系混晶化合物よりなる発光層部24を有する。発光層部24は、各々AlGaInP系混晶化合物とされるとともに、第一導電型クラッド層4、第二導電型クラッド層6、及び第一導電型クラッド層4と第二導電型クラッド層6との間に位置する活性層5からなるダブルへテロ構造とされている。具体的には、ノンドープ(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦0.55,0.45≦y≦0.55)混晶からなる活性層5を、p型(AlxGa1−x)yIn1−yPクラッド層6とn型(AlxGa1−x)yIn1−yPクラッド層4とにより挟んだ構造となっている。なお、当業者には自明のことであるが、ここでいう「ノンドープ」とは、「ドーパントの積極添加を行なわない」との意味であり、通常の製造工程上、不可避的に混入するドーパント成分の含有(例えば1013〜1016/cm3程度を上限とする)をも排除するものではない。
【0033】
上記の発光層部24は複合透光性基板50上に形成されてなる。複合透光性基板50は、AlGaInP系混晶化合物(第一の化合物半導体)との格子定数差が、GaP(第二の化合物半導体)との格子定数差よりも小さい化合物半導体、具体的には、n型クラッド層4と同じ混晶比及びドーパント濃度のAlGaInP系混晶化合物よりなる発光層成長準備層8の第一主表面MP1側に、透光性導電半導体基板であるn型のGaP単結晶基板70を貼り合せたものである。
【0034】
GaP単結晶基板70の、発光層成長準備層8の第一主表面MP1との境界部分には、発光層成長準備層8よりも転位密度の高い高転位密度領域70aが形成されている。発光層成長準備層8を、GaAsと格子整合するAlGaInP系混晶化合物にて形成する場合、GaP単結晶基板70との間には約4%の格子不整合率が生ずる。しかし、上記のように高転位密度領域70aが形成されていることで発光層成長準備層8は格子緩和し、発光層成長準備層8内に大きな格子不整合歪は生じていない。
【0035】
発光層部24のp型クラッド層6側は光取出面とされ、これを覆うように、該p型クラッド層6よりもp型ドーパント濃度が高いp型AlGaAsよりなる電流拡散層20が形成されている。また、透光性を有するGaP単結晶基板70の側面も光取出面として機能する。電流拡散層20のほぼ中央部には、Au等にて構成されたボンディングパッド9が配置され、ここにAu等で構成された図示しない電極ワイヤが接合される。他方、GaP単結晶基板70の他方の主表面側には、Au系金属よりなる裏面電極層15が全面に形成されている。この裏面電極層15は、発光層部24から発光層成長準備層8を経てGaP単結晶基板70内に入射する発光光束を、光取出面側あるいはGaP単結晶基板70の側面側に反射して、光取出し効率を高める働きをなす。
【0036】
以下、図1の発光素子100の製造方法について説明する。
まず、図2の工程1に示すように、成長用基板をなすGaAs単結晶基板1の主表面に、GaAsバッファ層2を例えば0.5μm、AlAsからなる剥離層3を例えば0.5μm、この順序にてエピタキシャル成長させる。そして、工程2に示すように、剥離層3上に、さらにn型AlGaInPよりなる発光層成長準備層8(成長開始面は第二主表面MP2側である)を例えば0.5μm以上2μm以下の厚さにエピタキシャル成長させる。これら各層のエピタキシャル成長は、後述の発光層部24及び電流拡散層20と同様に、公知のMOVPE法により行なうことができる。Al、Ga、In、P及びAsの各成分源となる原料ガスとしては以下のようなものを使用できる;
・Al源ガス;トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)など;
・Ga源ガス;トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)など;
・In源ガス;トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルインジウム(TEIn)など。
・P源ガス;ターシャルブチルホスフィン(TBP)、ホスフィン(PH3)など。
・As源ガス;ターシャルブチルアルシン(TBA)、アルシン(AsH3)など。
【0037】
また、ドーパントガスとしては、以下のようなものを使用できる;
(p型ドーパント)
・Mg源:ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)など。
・Zn源:ジメチル亜鉛(DMZn)、ジエチル亜鉛(DEZn)など。
(n型ドーパント)
・Si源:モノシランなどのシリコン水素化物など。
【0038】
次に、発光層成長準備層8までMOVPE成長した積層体を、一旦、成長装置の外に取り出し、次いで工程3に示すように、別途用意したGaP単結晶基板70(例えば、液体封止型チョクラルスキー法にて引き上げ成長した単結晶インゴットをスライスして製造したもの)を、発光層成長準備層8の第一主表面MP1上に重ね合わせ、例えば加圧しながら適当な温度(例えば300℃以上800℃以下)にて熱処理することにより貼り合せる。
【0039】
この貼り合わせの熱処理の冷却時には、GaP単結晶基板70とAlGaInPよりなる発光層成長準備層8との熱膨張係数差(この場合、収縮量の差となって現われる)に基づく熱応力が発生する。GaPはAlGaInPよりも転位導入されやすいので、GaP単結晶基板70側に高転位密度領域70aが形成される。これに伴い、発光層成長準備層8は格子緩和する。貼り合わせの熱処理は、例えば600℃以上800℃以下の比較的高温、特に発光層成長準備層8の成長温度よりも高温で行なうことが望ましい。
【0040】
次に、工程4に進み、上記GaP単結晶基板70を貼り合せた積層体を、例えば10%フッ酸水溶液からなるエッチング液に浸漬し、バッファ層2と発光層成長準備層8との間に形成したAlAs剥離層3を選択エッチングすることにより、GaAs単結晶基板1(発光層部24からの光に対して不透明である)を、発光層成長準備層8とこれに接合されたGaP単結晶基板70との積層体、すなわち複合透光性基板50から除去する。なお、AlAs剥離層3に代えてAlInPよりなるエッチストップ層を形成しておき、GaAsに対して選択エッチング性を有する第一エッチング液(例えばアンモニア/過酸化水素混合液)を用いてGaAs単結晶基板1をGaAsバッファ層2とともにエッチング除去し、次いでAlInPに対して選択エッチング性を有する第二エッチング液(例えば塩酸:Al酸化層除去用にフッ酸を添加してもよい)を用いてエッチストップ層をエッチング除去する工程を採用することもできる。
【0041】
なお、GaP単結晶基板70と発光層成長準備層8との貼り合わせを上記よりも低温で行い、成長用基板1を除去した後に、複合透光性基板50を貼り合わせ熱処理温度よりも高温にて再度熱処理し、その冷却時にGaP単結晶基板70に高転位密度領域70aを形成してもよい。
【0042】
次に、工程5に進み、GaAs単結晶基板1を除去した複合透光性基板50を、再びMOCVD成長装置内に配置し、発光層成長準備層8の第二主表面MP2上に発光層部24及び電流拡散層20を順次エピタキシャル成長する。そして、工程6に示すように、電流拡散層20の主表面の一部を覆うように、ワイヤボンディング用の電極9(ボンディングパッド:図1)を形成する一方、GaP単結晶基板70の裏面側には、反射用の裏面電極層15を形成する。以下、通常の方法によりダイシングして半導体チップとし、これを支持体に固着してリード線のワイヤボンディング等を行なった後、樹脂封止をすることにより最終的な発光素子100が得られる。
【0043】
本発明においては、発光層部24に透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70を直接貼り合せる工程を採用せず、まず、発光層部24に対してGaP単結晶基板70よりも格子整合しやすいAlGaInP混晶化合物により発光層成長準備層8を作り、その発光層成長準備層8の第一主表面MP1側にGaP単結晶基板70を貼り合せて複合透光性基板50を作製する。そして、その複合透光性基板50を発光層部24の成長時に基板として用い、発光層成長準備層8の第二主表面MP2側を成長面とする形で、ここに発光層部24をエピタキシャル成長させる。GaP単結晶基板70上に格子定数差の大きいAlGaInPよりなる発光層部24を直接エピタキシャル成長することは困難であるが、上記のごとき複合透光性基板50を用いれば、同じAlGaInPよりなる発光層成長準備層8の第二主表面MP2を用いて、発光層部24を容易にエピタキシャル成長することができる。該工程により、発光層部24は、初めからGaP単結晶基板70と結合された構造にて得られるから、発光層部24をGaP単結晶基板70に貼り合せる工程は全く必要でなくなる。その結果、貼り合わせのハンドリング等により発光層部24に不要な圧力が加わったり損傷が発生する心配がなくなる。また、予め成長した発光層部に対してGaP単結晶基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部24の劣化も生ずる心配がなくなる。
【0044】
さらに、本発明において、複合透光性基板50における発光層部24の成長面は、高転位密度領域70aの形成により格子緩和した発光層成長準備層8上に形成されている。その結果、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70と、AlGaInPよりなる発光層部24との格子定数不一致の影響を発光層部24に及びにくくすることができる。すなわち、発光層成長準備層8が格子緩和していない場合は、GaP単結晶基板70との格子不整合歪により、発光層成長準備層8に大きな応力が負荷された状態で発光層部24の成長が進み、その成長厚さの増加に伴い作用する応力レベルも増加する。そして、その成長途中で格子緩和が生ずると、その格子緩和のためのミスフィット転位がGaP単結晶基板70側だけに留まる保障は全くなく、発光層成長準備層8から発光層部24に転位が貫通して、発光層部24に致命的なダメージが及ぶ可能性も高い。しかし、上記のように高転位密度領域70aを予めGaP単結晶基板70側に形成しておけば、発光層成長準備層8は始めから格子緩和しているので、成長途中で発光層部24に貫通転位が発生したりする心配がほとんどなくなる。
【0045】
さらに、複合透光性基板50を、MOVPEによる発光層部24の成長温度まで昇温し、該発光層部24を成長後に冷却する際には、成長したAlGaInPよりなる発光層部24及び発光層成長準備層)と、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70との熱膨張係数差に基づく熱応力が発生するが、予め高転位密度領域70aを形成しておけば、該熱応力による新たな転位の発生などを高転位密度領域70a側にしわ寄せすることができ、発光層部24を該熱応力による不具合から保護することができる。
【0046】
以上の結果、得られる発光素子1は、その発光層部24を結晶欠陥の少ない高品質のものとして形成することができ、高輝度で長寿命のものが得られる。なお、発光層成長準備層8上には、発光層部を直接成長させてもよいし、発光層成長準備層8と格子整合する別の化合物半導体層を成長させてから、その上に発光層部24を成長することもできる。例えば、より高品質の発光層部24を得るために、発光層成長準備層8上にAlGaInPよりなるバッファ層を形成した後、発光層部24を成長することができる。
【0047】
以下、本発明の種々の変形例について説明する。
図1の発光素子の製造工程は、図3に示すように変更することができる。以下、その変更点について説明する(工程変更されない部分については図1と同様であるので詳細な説明は省略する)。図3においては工程2において、MOVPE法によりAlGaInPよりなる発光層成長準備層8を成長した後、引き続きMOVPE法によりGaP層よりなる中間化合物半導体層70aを形成し、一旦室温まで冷却する。すると、中間化合物半導体層70aはAlGaInPよりも剛性の低いGaPにて形成されているので、AlGaInPとの格子定数差及び熱収縮率差に基づく応力により多数の転位が導入され、全体が高転位密度領域となる。すなわち、該方法によると高転位密度領域をより確実に形成でき、ひいては発光層成長準備層8をより確実に格子緩和させることができる。全体が高転位密度領域となった中間化合物半導体層70aには、工程3に示すように、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70を貼り合わせることができる。なお、高転位密度領域化するに伴い、中間化合物半導体層70aの表面が面荒れした場合は、中間化合物半導体層70aの表面を研磨により平坦化してGaP単結晶基板70(透光性導電半導体基板)を貼り合せることが望ましい。
【0048】
次に、図4の発光素子200は、複合透光性基板50において、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板7が、発光層成長準備層8の第一主表面MP1上にHVPE法あるいはLPE法によりエピタキシャル成長され、発光層部24よりも厚く形成されている。他の構成は、図1の発光素子100と同じである。GaP単結晶基板7をエピタキシャル成長により形成するから、図2のような貼り合せ工程が不要となり、発光層成長準備層8へのハンドリング等の影響が本質的に生じないほか、貼り合せ界面に金属や酸化物などの異物や水蒸気などを噛みこむ心配がない。また、予め成長した発光層部に対してGaP単結晶基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部24の劣化も生ずる心配がなくなる。
【0049】
図5及び図6は、発光素子200の製造工程の一例を示すものである。図5の工程1及び工程2は、図1の工程1及び工程2と同じである。工程3及び工程4においては、発光層成長準備層8の第一主表面MP1上に、GaP単結晶基板70を貼り合せる代わりに、GaP単結晶基板7を、厚膜成長層としてHVPE法によりエピタキシャル成長させる点においてのみ相違する。HVPE法は、具体的には、容器内にてIII族元素であるGaを所定の温度に加熱保持しながら、そのGa上に塩化水素を導入することにより、下記(1)式の反応によりGaClを生成させ、キャリアガスであるH2ガスとともに基板上に供給する。
Ga(液体)+HCl(気体) → GaCl(気体)+1/2H2‥‥(1)
GaPの場合、成長温度は例えば800〜860℃程度に設定する。また、V族元素であるPは、PH3をキャリアガスであるH2とともに基板上に供給する。なお、n型ドーパントであるSiは、SiH4の形で供給する。GaClはPH3との反応性に優れ、下記(2)式の反応により、Gaとの間で効率よく、GaP単結晶基板7を成長させることができる:
GaCl(気体)+PH3(気体)
→GaP(固体)+HCl(気体)+H2(気体)‥‥(2)
なお、GaP単結晶基板7に代えてGaAsP単結晶基板をHVPEにより成長させることもできる。
【0050】
このとき、工程3に示すように、GaP単結晶基板7の、発光層成長準備層8と接する最初の部分を、以降の部分よりも低速で成長させると、該部分に転位が多数導入され、高転位密度領域7aが形成される。該領域を形成後、一旦室温まで冷却して転位導入を促進するようにしてもよい。このとき、高転位密度領域7aの表面が仮に面荒れしても、HVPE法は荒れた面の凹凸に対する充填性が良好であるため、GaP単結晶基板7と高転位密度領域7aとを強固に結合することができ、最終的に得られるGaP単結晶基板7の表面にもファセットや面荒れがほとんど生じず、ひいては平滑性の良好な基板が得られる。なお、工程3において、高転位密度領域7aを図3と同様にMOVPE法により形成し、その後、GaP単結晶基板を貼り合せるのではなく、厚膜のGaP単結晶層をHVPE法により成長する方法を採用してもよい。
【0051】
以下、図6の工程5、工程6及び工程7は、図2あるいは図3の工程4、工程5及び工程6とそれぞれ同じである。
【0052】
次に、図7の製造工程においては、工程2において、AlGaAsよりなる発光層成長準備層80を、MOVPE法(あるいはLPE法でもよい)により、単独ハンドリングの可能な20μm以上100μm以下の層厚に成長している。そして、工程3において、先にGaAs基板1(成長用基板)を除去している。そして、その後、工程4において、GaP単結晶基板70を貼り付けている。これにより、工程6において最終的に得られる発光素子300は、図1の発光素子100のAlGaInPよりなる発光層成長準備層8を、それより厚膜のAlGaAsよりなる発光層成長準備層80にて置き換えたものとなる。
【0053】
なお、工程4において、高転位密度領域70aは、図1の工程3と同様にして、発光層成長準備層8の貼り合わせ後の冷却工程時に形成することができる。また、図5と同様に、HVPE法ないしMOVPE法により高転位密度領域7a形成し、その後、厚膜のGaP単結晶層をHVPE法により成長するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光素子に係る第一実施形態を示す断面模式図。
【図2】本発明の発光素子の製造方法に係る第一実施形態を示す工程説明図。
【図3】本発明の発光素子の製造方法に係る第二実施形態を示す工程説明図。
【図4】本発明の発光素子に係る第二実施形態を示す断面模式図。
【図5】本発明の発光素子の製造方法に係る第三実施形態を示す工程説明図。
【図6】図5に続く工程説明図。
【図7】本発明の発光素子の製造方法に係る第四実施形態を示す工程説明図。
【符号の説明】
1 成長用基板
7,70 GaP単結晶基板(透光性導電半導体基板)
7a,70a 高転位密度領域
8,80 発光層成長準備層
24 発光層部
50 複合透光性基板
100,200,300 発光素子
【発明の属する技術分野】
この発明は、発光素子の製造方法、複合透光性基板及び発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2001−68731号公報
【0003】
(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1;以下、AlGaInPとも記載する)系混晶化合物により発光層部が形成された発光素子は、薄いAlGaInP活性層を、それよりもバンドギャップの大きいn型AlGaInPクラッド層とp型AlGaInPクラッド層とによりサンドイッチ状に挟んだダブルへテロ構造を採用することにより、高輝度の素子を実現できる。また、近年では、InxGayAl1−x−yN(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1;以下、InGaAlNとも記載する)系混晶化合物を用いて同様のダブルへテロ構造を形成した青色発光素子も実用化されている。
【0004】
例えば、AlGaInP系発光素子を例に取れば、n型GaAs基板上にヘテロ形成させる形にて、n型GaAsバッファ層、n型AlGaInPクラッド層、AlGaInP活性層、p型AlGaInPクラッド層をこの順序にて積層し、ダブルへテロ構造をなす発光層部を形成する。発光層部への通電は、素子表面に形成された金属電極を介して行なわれる。ここで、金属電極は遮光体として作用するため、例えば発光層部主表面の中央部のみを覆う形で形成され、その周囲の電極非形成領域から光を取り出すようにする。
【0005】
この場合、金属電極の面積をなるべく小さくしたほうが、電極の周囲に形成される光漏出領域の面積を大きくできるので、光取出し効率を向上させる観点において有利である。従来、電極形状の工夫により、素子内に効果的に電流を拡げて光取出量を増加させる試みがなされているが、この場合も電極面積の増大はいずれにしろ避けがたく、光漏出面積の減少により却って光取出量が制限されるジレンマに陥っている。
【0006】
そこで、光取出し効率を向上させるために、発光層部の両面あるいは基板側面から光を取り出すことができるような素子構造が種々提案されている。AlGaInP系発光素子の場合、発光層部の成長用基板としてAlGaInPと格子整合しやすいGaAs基板が使用されるが、GaAsはAlGaInP系発光層部の発光波長域において光吸収が大きい。これを解決するために、特許文献1には、発光層部の両面から光を取り出すために、一旦GaAs基板を剥離し、発光波長域において透明なGaP等の透光性導電半導体基板を新たに貼り合わせる方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
発光素子においては、発光効率を高めるために発光層部をなす化合物半導体結晶は、転位等の結晶欠陥をなるべく含まない、高品質のものが要求される。しかし、特許文献1のように、予め成長した発光層部に透光性導電半導体基板を貼り合せる工程を採用した場合、貼り合せのためのハンドリングが必要となり、貼り合わせの密着加圧を行なう際に、発光層部に結晶欠陥が導入されたり、あるいはハンドリングに際して発光層部に損傷が加わったりするなどの不具合を生じやすい問題がある。また、貼り合わせを高温で実施すると、その熱影響により発光層部が劣化する懸念もある。さらに、ハンドリングを容易にするために、発光層部上に50μm程度の厚膜の化合物半導体層を成長することもあるが、該厚膜の化合物半導体層を成長する際にも、既に形成されている発光層部にその熱履歴が加わり、劣化が促進されることがある。
【0008】
本発明の課題は、透光性導電半導体基板を有しつつも、該基板を発光層部に貼り合せる工程が不要となり、ひいては発光層部に損傷もしくは劣化等が発生しにくい発光素子の製造方法と、それに用いる複合透光性基板、及びそれを用いた発光素子とを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明の発光素子の製造方法は、
第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有する発光素子の製造方法であって、
第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層を用意し、該発光層成長準備層の第一主表面側に直接又は中間化合物半導体層を介して透光性導電半導体基板を形成することにより複合透光性基板を作製する複合透光性基板製造工程と、
複合透光性基板の発光層成長準備層の第二主表面側に発光層部をエピタキシャル成長する発光層部成長工程とを含み、
複合透光性基板製造工程及び発光層部成長工程の少なくともいずれかにおいて、透光性導電半導体基板又は中間化合物半導体層に、発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を形成することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の発光素子は、第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有し、
第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層が、透光性導電半導体基板上に形成されることにより複合透光性基板が形成され、
発光層成長準備層の透光性導電半導体基板側を第一主表面とするとき、該発光層成長準備層の第二主表面側に、発光層部がエピタキシャル成長されてなり、
かつ、透光性導電半導体基板又は該透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間に介在する中間化合物半導体層に、該発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を有してなることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の発光素子の製造方法及び発光素子によると、予め成長した発光層部を透光性導電半導体基板に貼り合せる方法は採用しない。具体的には、発光層部(第一の化合物半導体)に対して透光性導電半導体基板(第二の化合物半導体)よりも格子整合しやすい化合物半導体により発光層成長準備層を作り、その発光層成長準備層の第一主表面側に透光性導電半導体基板を形成して複合透光性基板を、まず作製する。そして、その複合透光性基板を基板として用い、該発光層成長準備層の第二主表面側を成長面とする形で、ここに発光層部をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長後は、透光性導電半導体基板を発光素子の光取出用基板部分として流用する。透光性導電半導体基板上に格子定数差の大きい発光層部を直接エピタキシャル成長することは困難であるが、上記のごとき複合透光性基板を用いれば、発光層部に対して格子整合しやすい化合物半導体からなる発光層成長準備層の第二主表面側に、発光層部を容易にエピタキシャル成長することができる。そして、このエピタキシャル成長により、発光層部が、発光層成長準備層を介して初めから透光性導電半導体基板と結合された構造にて得られるから、従来のごとく、発光層部を透光性導電半導体基板に貼り合せる工程は全く必要でなくなる。その結果、貼り合わせのハンドリング等により発光層部に不要な圧力が加わったり損傷が発生する心配がなくなる。また、予め成長した発光層部に対して透光性導電半導体基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部の劣化も生ずる心配がなくなる。このようにして、上記複合透光性基板を用いて得られる本発明の発光素子は、発光層部の品質が高められ、ひいては高輝度で長寿命の発光素子が実現する。
【0012】
次に、本発明の発光素子の製造方法及び発光素子において、透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間には、それら透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との結合を媒介する中間化合物半導体層を介挿することもできる。中間化合物半導体層は、例えば透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との不整合歪の緩和を目的として、それらの中間の格子定数を有する化合物半導体層として形成することができる。
【0013】
そして、本発明の発光素子の製造方法においては、複合透光性基板製造工程及び発光層部成長工程の少なくともいずれかにおいて、透光性導電半導体基板又は/及び中間化合物半導体層に、発光層成長準備層を格子緩和させるための高転位密度領域が形成される。発光層成長準備層を格子緩和させることにより、透光性導電半導体基板と発光層部との格子定数不一致の影響を、該発光層成長準備層上にエピタキシャル成長される発光層部に及びにくくすることができる。さらに、複合透光性基板を発光層部の成長温度まで昇温し、該発光層部を成長後に冷却する際には、成長した発光層部(及び発光層成長準備層)と透光性導電半導体基板との熱膨張係数差に基づく熱応力が発生するが、予め高転位密度領域を形成しておけば、該熱応力による影響(例えば新たに発生する転位など)を高転位密度領域側にしわ寄せすることができ、発光層部を該熱応力による不具合から保護することができる。以上により、上記発光素子の製造方法を用いて得られる本発明の発光素子は、発光層部の品質が高められ、ひいては高輝度で長寿命の発光素子が実現する。
【0014】
透光性導電半導体基板又は/及び中間化合物半導体層への高転位密度領域の形成は、発光層部の成長段階(成長後の冷却工程を含む)で形成してもよいが、本発明の複合透光性基板のごとく、複合透光性基板の作製段階、つまり発光層部のエピタキシャル成長前の段階で、既に形成しておくことがより望ましい。すなわち、本発明の複合透光性基板は、第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有する発光素子の、発光層部のエピタキシャル成長用に使用されるものであり、
第一の化合物半導体との格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層が、透光性導電半導体基板上に形成され、かつ、透光性導電半導体基板又は該透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間に介在する中間化合物半導体層に、発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を有してなり、発光層成長準備層の透光性導電半導体基板側を第一主表面とするとき、該発光層成長準備層の第二主表面側が発光層部のエピタキシャル成長に使用されることを特徴とする。発光層部のエピタキシャル成長に先立って発光層成長準備層を予め格子緩和させておくことで、透光性導電半導体基板と発光層部との格子定数不一致の影響を、該発光層成長準備層上にエピタキシャル成長される発光層部に及びにくくする効果を一層高めることができる。
【0015】
本発明の発光素子の製造方法において、中間化合物半導体層は、発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成することが、中間化合物半導体層への転位の積極導入ひいては発光層成長準備層の格子緩和を促進できるので望ましい。また、本発明の複合透光性基板は、中間化合物半導体層を発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成したものとすることができる。なお、化合物半導体結晶が比較対照となる結晶よりも転位導入のためのパイエルス・ポテンシャル(特に、ミスフィット転位導入のためのパイエルス・ポテンシャル)が低い場合、該化合物半導体結晶は、比較対照となる結晶よりも転位導入されやすくなる傾向となる。
※「格子が柔らかい」、というのは、結晶物理の分野では弾性定数の大小で判断しますが、「転位が導入されやすい」という観点では、パイエルスポテンシャルと、等価な容易滑り方向の多寡で決まり、一般にはパイエルスポテンシャルで議論することが多いです。しかし、パイエルスポテンシャルの物性値は研究例が少なく、実測にはかなり手間がかかります。最後の4行は定義記載としては十分と思っていますが、侵害特定には問題ありですので、敢えて「〜のことをいう」といった定義はしないことにしました。
【0016】
例えば、本発明の発光素子の製造方法において中間化合物半導体層を設けない場合は、透光性導電半導体基板を発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成し、高転位密度領域を該透光性導電半導体基板に形成することができる。この場合、本発明の複合透光性基板は、透光性導電半導体基板を発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成し、高転位密度領域を該透光性導電半導体基板に形成したものとなる。透光性導電半導体基板は、発光層部からの発光光束を透過させる媒体として機能するだけであり、それ自身は発光層部として機能しないので、高転位密度領域が形成されても大きな不具合は生じない。また、高転位密度領域を中間化合物半導体層と透光性導電半導体基板の両方に形成することも可能である。例えば、発光層成長準備層の第一主表面に、該発光層成長準備層との格子定数差が、発光層部と発光層成長準備層との格子定数差よりも大きい中間化合物半導体層を予め形成し、その中間化合物半導体層に予め高転位密度領域を形成した後に、該中間化合物半導体層上に透光性導電半導体基板を形成し該透光性導電半導体基板にも高転位密度領域を形成すると、発光層成長準備層の格子緩和をより確実に行なうことができる。この場合、中間化合物半導体層が透光性導電半導体基板と同一の化合物半導体にて形成されることを妨げない。
【0017】
なお、発光層成長準備層上には、発光層部を直接成長させてもよいし、発光層成長準備層と格子整合する別の化合物半導体層(例えばバッファ層)を成長させてから、その上に発光層部を成長することもできる。例えば、貼り合せハンドリング時の影響により発光層成長準備層に若干の結晶欠陥等が形成される可能性はありえるが、該発光層成長準備層は単に発光層部成長の基礎を与える役割を担うだけであるから、発光特性が欠陥密度により敏感に左右される発光層部と比較すれば、その影響は小さい。そして、仮にその結晶欠陥の影響が懸念される場合でも、例えば発光層成長準備層上に結晶欠陥吸収用のバッファ層を形成した後、発光層部を成長すれば、該結晶欠陥の影響を軽減することが可能である。
【0018】
複合透光性基板製造工程においては、透光性導電半導体基板を発光層成長準備層の第一主表面側に貼り合せる方法を採用することができる。これにより得られる複合透光性基板は、透光性導電半導体基板を、発光層成長準備層の第一主表面側に貼り合せたものとなる。上記の方法は、貼り合せ工程を透光性導電半導体基板と発光層成長準備層との間で行い、発光層部のエピタキシャル成長工程を、その貼り合せ工程の後で実施する。つまり、貼り合せ時の機械的ハンドリングの影響を発光層成長準備層にいわば肩代わりさせることにより、発光層部への影響を軽減することができる。
【0019】
また、複合透光性基板製造工程においては、発光層成長準備層の第一主表面側に、第二の化合物半導体をエピタキシャル成長し、その第二の化合物半導体層を透光性導電半導体基板とする方法を採用することもできる。これにより得られる複合透光性基板は、透光性導電半導体基板が、第二の化合物半導体を発光層成長準備層の第一主表面上にエピタキシャル成長されたものとなる。透光性導電半導体基板は、発光層部よりも厚膜であることが望ましい。この方法によると、発光層成長準備層の第一主表面側に、透光性導電半導体基板をエピタキシャル成長により形成するから、透光性導電半導体基板の貼り合せ工程自体が不要となり、発光層成長準備層へのハンドリング等の影響が本質的に生じない。また、予め成長した発光層部に対して透光性導電半導体基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部の劣化も生ずる心配がなくなる。さらに、貼り合せ界面に金属や酸化物などの異物や水蒸気などを噛みこむ心配がないので、該噛みこみによる有害不純物の発光層部への拡散等も心配する必要がない。
【0020】
上記第二の化合物半導体のエピタキシャル成長は、ハイドライド気相成長法(Hydride Vapor Phase Epitaxial Growth Method:以下、HVPE法という)または液相成長法(Liquid Phase Epitaxial Growth Method):以下、LPE法という)により行なうことができる。また、これにより得られる透光性導電半導体基板は、ハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されたものとなる。HVPE法またはLPE法によると層成長速度を、他の方法、例えば有機金属気相成長法(MetalOrganic Vapor Phase Epitaxy:以下、MOVPE法ともいう)よりもはるかに大きくでき、透光性導電半導体基板としてある程度の強度を要する厚さであっても高能率にて形成できる。また、最終的に得られる透光性導電半導体基板の表面に、結晶に起因したファセットや面荒れがほとんど生じず、ひいては平滑性の良好な基板を得られる利点もある。さらに、HVPE法では、III族元素源として高価な有機金属を使用せず、III族元素源に対するV族元素源(AsH3、PH3など)の配合比率もはるかに少なくて済む(例えば1/100程度)ので、コスト的に有利である。
【0021】
本発明の発光素子の製造方法において、高転位密度領域を含む透光性導電半導体基板の全体を、発光層成長準備層の直上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により成長することができる。また、本発明の複合透光性基板は、高転位密度領域を含む透光性導電半導体基板の全体を、発光層成長準備層上にハイドライド気相成長法または液相成長法により成長したものとして構成できる。この方法によると、高転位密度領域を含む透光性導電半導体基板の全体が、成長速度の大きいハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されるので能率的である。
【0022】
なお、ハイドライド気相成長法により成長厚さが過度に大きくなってから格子緩和が生ずると、厚さの大きい基板側の剛性が発光層成長準備層よりも高くなり、発光層成長準備層に転位導入されて格子緩和を生じてしまう可能性がある。従って、透光性導電半導体基板に高転位密度領域を確実に形成するには、高転位密度領域に当る部分の成長速度を基板の他の部分よりも小さくしたり、あるいは高転位密度領域に当る部分の成長を行なった後、一旦冷却して熱応力により該部分への転位導入を促進し、その後再び昇温して基板の他の部分を成長する工程を採用することが望ましい。
【0023】
一方、本発明の発光素子の製造方法においては、発光層成長準備層の第一主表面側に中間化合物半導体層を有機金属気相成長(MetalOrganic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)法により成長し、かつ、該中間化合物半導体層内に高転位密度領域を形成し、透光性導電半導体基板を、該高転位密度領域を有する中間化合物半導体層上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により形成する方法を採用してもよい。この場合、本発明の複合透光性基板は、発光層成長準備層の第一主表面側に中間化合物半導体層を有機金属気相成長法により成長し、かつ、該中間化合物半導体層内に高転位密度領域を形成し、透光性導電半導体基板を、該高転位密度領域を有する中間化合物半導体層上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により形成したものとなる。中間化合物半導体層を、HVPE法あるいはLPE法と比較して成長速度の小さいMOVPE法にて成長することで、該中間化合物半導体層に発光層成長準備層を格子緩和させるための転位をより導入しやすくなり、高転位密度領域を確実に形成できる。また、透光性導電半導体基板の部分はHVPE法又はLPE法にて成長するので、発光層成長準備層上の中間化合物半導体層には、MOVPE法の成長装置からHVPE法あるいはLPE法の成長装置に基板を移し変える際の冷却の熱履歴が必然的に加わる。これも、中間化合物半導体層への高転位密度領域形成の確実性を向上させる要因となる。
【0024】
HVPE法あるいはLPE法を用いると、高転位密度領域の形成により、該高転位密度領域の最表面にファセット等の面荒れが生じても、その後の層成長に伴い面が平滑化しやすく、最終的に得られる透光性導電半導体基板の裏面を平坦に仕上げることが容易であることも有利な効果のひとつである。従って、透光性導電半導体基板裏面側に反射層を兼ねた裏面電極を形成する場合、反射面も平滑化するので反射率を向上できる利点がある。
【0025】
また、本発明の発光素子の製造方法において、複合透光性基板製造工程は、
第二の化合物半導体よりも、第一の化合物半導体との格子定数差が小さい成長用基板上に、発光層成長準備層を該発光層成長準備層の第二主表面側からエピタキシャル成長する発光層成長準備層成長工程と、
発光層成長準備層の第一主表面側に透光性導電半導体基板を形成する透光性導電半導体基板形成工程と、
発光層成長準備層の第二主表面から成長用基板を除去する成長用基板除去工程と、を有するものとして実施することができる。上記のような成長用基板を用いることで、発光層成長準備層を高品質にて形成することができる。
【0026】
この場合、透光性導電半導体基板形成工程の実施後に成長用基板除去工程を実施することができる。このようにすると、透光性導電半導体基板の形成により発光層成長準備層の機械的強度を高めてから成長用基板を除去するので、ハンドリングがより容易である。なお、発光層成長準備層を、ハンドリングに耐える程度にまで厚くできる場合には、発光層成長準備層から成長用基板を除去した後に、透光性導電半導体基板を該発光層成長準備層の第一主表面上に形成する方法を採用することも可能である。
【0027】
本発明の複合透光性基板及び発光素子の製造方法において、発光層成長準備層は、発光層部からの発光光束のピーク波長に対応するエネルギーよりもバンドギャップの大きい化合物半導体にて形成することが望ましい。このようにすることにより、発光層部からの光が発光層成長準備層に吸収されにくくなり、発光層成長準備層を経由して透光性導電半導体基板に発光光束が出入りする際に、吸収による損失を低く留めることができ、ひいては光取出し効率の向上に寄与する。
【0028】
また、本発明の複合透光性基板及び発光素子の製造方法において、発光層部を構成する第一の化合物半導体を、AlGaInP系混晶化合物とする場合、透光性導電半導体基板をなす第二の化合物半導体は、例えばGaPまたはGaAsP系混晶化合物にて形成することができる。AlGaInP系混晶化合物((AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦1,0≦y≦1))は、混晶比x及びyを調整することにより、GaAs単結晶基板と整合する格子定数を維持したまま、例えば520nm以上670nm以下の範囲で、高発光強度を維持しつつ発光波長を容易に調整することができる。この場合、GaPあるいはGaAsP系混晶化合物はバンドギャップが比較的大きいため、該AlGaInP系発光層部からの発光光束に対して良好な光透過性を有し、光取出し効率を高めることができる。
【0029】
次に、本発明の複合透光性基板及び発光素子の製造方法において、発光層成長準備層は、発光層部の品質向上の観点において発光層部との格子不整合がなるべく小さいこと、具体的には、発光層成長準備層の第二主表面の格子定数をa1、発光層部の発光層成長準備層側の格子定数をa2として、|a1−a2|/a1≦0.01となっていることが望ましい。|a1−a2|/a1>0.01になると、発光層成長準備層の第二主表面上に発光層部をエピタキシャル成長する際に、発光層成長準備層との格子不整合により発光層部にミスフィット転位などの結晶欠陥が導入されやすくなり、発光効率の低下につながる場合がある。
【0030】
具体的には、発光層部と発光層成長準備層とを、III族構成元素とV族構成元素との種別が一致したIII−V族混晶化合物半導体にて構成することが、発光層成長準備層と発光層部との格子不整合率を縮小する上で望ましい。発光層部と発光層成長準備層とを、いずれもAlGaInP系混晶化合物で構成すれば、発光層成長準備層上への発光層部のエピタキシャル成長を容易に行なうことができる。より具体的には、発光層部は、AlGaInP系混晶化合物により、ノンドープの活性層をn型クラッド層とp型クラッド層とで挟んだダブルへテロ構造にて構成することにより、活性層へのキャリア閉じ込め効果を高め、ひいては発光再結合を促進して内部量子効率を向上することができる。この場合、キャリアの閉じ込め効果を高めるには、n型クラッド層とp型クラッド層とは、ノンドープの活性層よりもワイドギャップに構成しておくことが有利である。そして、発光層成長準備層の第二主表面は、該発光層成長準備層側に位置するn型又はp型のクラッド層と同じ混晶比を有するか、あるいは、該クラッド層の格子定数をa2として、|a1−a2|/a1≦0.01となり、かつ活性層よりもバンドギャップが広くなるように混晶比が調整されたAlGaInP系混晶化合物で構成することで、発光層成長準備層上への発光層部のエピタキシャル成長を容易に行なうことができるばかりでなく、発光光束のピーク波長を規定する活性層よりもワイドギャップとなることにより、光吸収による損失も小さくできる。
【0031】
一方、過度に光吸収を生じないものであれば、発光層部と発光層成長準備層とを、III族構成元素とV族構成元素との種別が一致しないIII−V族混晶化合物半導体にて構成することもできる。例えば、発光層部がAlGaInP系混晶化合物である場合、発光層成長準備層をAlGaAs系混晶化合物で構成することもできる。AlGaAs系混晶化合物は、混晶比の調整により、AlGaInP系混晶化合物と格子整合した化合物が容易に得られるほか、前述の液相成長法による高速成長も可能であり、また、周知のMOVPE法により形成する場合でも、層成長速度を比較的大きく設定しやすく、製造能率が高い利点がある。いずれの方法を採用する場合でも、発光層成長準備層の厚膜化を容易に図ることができるので、例えば、前述の成長用基板を発光層成長準備層から除去してから、該発光層成長準備層の第一主表面に透光性導電半導体基板を形成する工程も容易に実施できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態である発光素子1を示す概念図である。発光素子1は、第一の化合物半導体であるAlGaInP系混晶化合物よりなる発光層部24を有する。発光層部24は、各々AlGaInP系混晶化合物とされるとともに、第一導電型クラッド層4、第二導電型クラッド層6、及び第一導電型クラッド層4と第二導電型クラッド層6との間に位置する活性層5からなるダブルへテロ構造とされている。具体的には、ノンドープ(AlxGa1−x)yIn1−yP(ただし、0≦x≦0.55,0.45≦y≦0.55)混晶からなる活性層5を、p型(AlxGa1−x)yIn1−yPクラッド層6とn型(AlxGa1−x)yIn1−yPクラッド層4とにより挟んだ構造となっている。なお、当業者には自明のことであるが、ここでいう「ノンドープ」とは、「ドーパントの積極添加を行なわない」との意味であり、通常の製造工程上、不可避的に混入するドーパント成分の含有(例えば1013〜1016/cm3程度を上限とする)をも排除するものではない。
【0033】
上記の発光層部24は複合透光性基板50上に形成されてなる。複合透光性基板50は、AlGaInP系混晶化合物(第一の化合物半導体)との格子定数差が、GaP(第二の化合物半導体)との格子定数差よりも小さい化合物半導体、具体的には、n型クラッド層4と同じ混晶比及びドーパント濃度のAlGaInP系混晶化合物よりなる発光層成長準備層8の第一主表面MP1側に、透光性導電半導体基板であるn型のGaP単結晶基板70を貼り合せたものである。
【0034】
GaP単結晶基板70の、発光層成長準備層8の第一主表面MP1との境界部分には、発光層成長準備層8よりも転位密度の高い高転位密度領域70aが形成されている。発光層成長準備層8を、GaAsと格子整合するAlGaInP系混晶化合物にて形成する場合、GaP単結晶基板70との間には約4%の格子不整合率が生ずる。しかし、上記のように高転位密度領域70aが形成されていることで発光層成長準備層8は格子緩和し、発光層成長準備層8内に大きな格子不整合歪は生じていない。
【0035】
発光層部24のp型クラッド層6側は光取出面とされ、これを覆うように、該p型クラッド層6よりもp型ドーパント濃度が高いp型AlGaAsよりなる電流拡散層20が形成されている。また、透光性を有するGaP単結晶基板70の側面も光取出面として機能する。電流拡散層20のほぼ中央部には、Au等にて構成されたボンディングパッド9が配置され、ここにAu等で構成された図示しない電極ワイヤが接合される。他方、GaP単結晶基板70の他方の主表面側には、Au系金属よりなる裏面電極層15が全面に形成されている。この裏面電極層15は、発光層部24から発光層成長準備層8を経てGaP単結晶基板70内に入射する発光光束を、光取出面側あるいはGaP単結晶基板70の側面側に反射して、光取出し効率を高める働きをなす。
【0036】
以下、図1の発光素子100の製造方法について説明する。
まず、図2の工程1に示すように、成長用基板をなすGaAs単結晶基板1の主表面に、GaAsバッファ層2を例えば0.5μm、AlAsからなる剥離層3を例えば0.5μm、この順序にてエピタキシャル成長させる。そして、工程2に示すように、剥離層3上に、さらにn型AlGaInPよりなる発光層成長準備層8(成長開始面は第二主表面MP2側である)を例えば0.5μm以上2μm以下の厚さにエピタキシャル成長させる。これら各層のエピタキシャル成長は、後述の発光層部24及び電流拡散層20と同様に、公知のMOVPE法により行なうことができる。Al、Ga、In、P及びAsの各成分源となる原料ガスとしては以下のようなものを使用できる;
・Al源ガス;トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)など;
・Ga源ガス;トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)など;
・In源ガス;トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルインジウム(TEIn)など。
・P源ガス;ターシャルブチルホスフィン(TBP)、ホスフィン(PH3)など。
・As源ガス;ターシャルブチルアルシン(TBA)、アルシン(AsH3)など。
【0037】
また、ドーパントガスとしては、以下のようなものを使用できる;
(p型ドーパント)
・Mg源:ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)など。
・Zn源:ジメチル亜鉛(DMZn)、ジエチル亜鉛(DEZn)など。
(n型ドーパント)
・Si源:モノシランなどのシリコン水素化物など。
【0038】
次に、発光層成長準備層8までMOVPE成長した積層体を、一旦、成長装置の外に取り出し、次いで工程3に示すように、別途用意したGaP単結晶基板70(例えば、液体封止型チョクラルスキー法にて引き上げ成長した単結晶インゴットをスライスして製造したもの)を、発光層成長準備層8の第一主表面MP1上に重ね合わせ、例えば加圧しながら適当な温度(例えば300℃以上800℃以下)にて熱処理することにより貼り合せる。
【0039】
この貼り合わせの熱処理の冷却時には、GaP単結晶基板70とAlGaInPよりなる発光層成長準備層8との熱膨張係数差(この場合、収縮量の差となって現われる)に基づく熱応力が発生する。GaPはAlGaInPよりも転位導入されやすいので、GaP単結晶基板70側に高転位密度領域70aが形成される。これに伴い、発光層成長準備層8は格子緩和する。貼り合わせの熱処理は、例えば600℃以上800℃以下の比較的高温、特に発光層成長準備層8の成長温度よりも高温で行なうことが望ましい。
【0040】
次に、工程4に進み、上記GaP単結晶基板70を貼り合せた積層体を、例えば10%フッ酸水溶液からなるエッチング液に浸漬し、バッファ層2と発光層成長準備層8との間に形成したAlAs剥離層3を選択エッチングすることにより、GaAs単結晶基板1(発光層部24からの光に対して不透明である)を、発光層成長準備層8とこれに接合されたGaP単結晶基板70との積層体、すなわち複合透光性基板50から除去する。なお、AlAs剥離層3に代えてAlInPよりなるエッチストップ層を形成しておき、GaAsに対して選択エッチング性を有する第一エッチング液(例えばアンモニア/過酸化水素混合液)を用いてGaAs単結晶基板1をGaAsバッファ層2とともにエッチング除去し、次いでAlInPに対して選択エッチング性を有する第二エッチング液(例えば塩酸:Al酸化層除去用にフッ酸を添加してもよい)を用いてエッチストップ層をエッチング除去する工程を採用することもできる。
【0041】
なお、GaP単結晶基板70と発光層成長準備層8との貼り合わせを上記よりも低温で行い、成長用基板1を除去した後に、複合透光性基板50を貼り合わせ熱処理温度よりも高温にて再度熱処理し、その冷却時にGaP単結晶基板70に高転位密度領域70aを形成してもよい。
【0042】
次に、工程5に進み、GaAs単結晶基板1を除去した複合透光性基板50を、再びMOCVD成長装置内に配置し、発光層成長準備層8の第二主表面MP2上に発光層部24及び電流拡散層20を順次エピタキシャル成長する。そして、工程6に示すように、電流拡散層20の主表面の一部を覆うように、ワイヤボンディング用の電極9(ボンディングパッド:図1)を形成する一方、GaP単結晶基板70の裏面側には、反射用の裏面電極層15を形成する。以下、通常の方法によりダイシングして半導体チップとし、これを支持体に固着してリード線のワイヤボンディング等を行なった後、樹脂封止をすることにより最終的な発光素子100が得られる。
【0043】
本発明においては、発光層部24に透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70を直接貼り合せる工程を採用せず、まず、発光層部24に対してGaP単結晶基板70よりも格子整合しやすいAlGaInP混晶化合物により発光層成長準備層8を作り、その発光層成長準備層8の第一主表面MP1側にGaP単結晶基板70を貼り合せて複合透光性基板50を作製する。そして、その複合透光性基板50を発光層部24の成長時に基板として用い、発光層成長準備層8の第二主表面MP2側を成長面とする形で、ここに発光層部24をエピタキシャル成長させる。GaP単結晶基板70上に格子定数差の大きいAlGaInPよりなる発光層部24を直接エピタキシャル成長することは困難であるが、上記のごとき複合透光性基板50を用いれば、同じAlGaInPよりなる発光層成長準備層8の第二主表面MP2を用いて、発光層部24を容易にエピタキシャル成長することができる。該工程により、発光層部24は、初めからGaP単結晶基板70と結合された構造にて得られるから、発光層部24をGaP単結晶基板70に貼り合せる工程は全く必要でなくなる。その結果、貼り合わせのハンドリング等により発光層部24に不要な圧力が加わったり損傷が発生する心配がなくなる。また、予め成長した発光層部に対してGaP単結晶基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部24の劣化も生ずる心配がなくなる。
【0044】
さらに、本発明において、複合透光性基板50における発光層部24の成長面は、高転位密度領域70aの形成により格子緩和した発光層成長準備層8上に形成されている。その結果、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70と、AlGaInPよりなる発光層部24との格子定数不一致の影響を発光層部24に及びにくくすることができる。すなわち、発光層成長準備層8が格子緩和していない場合は、GaP単結晶基板70との格子不整合歪により、発光層成長準備層8に大きな応力が負荷された状態で発光層部24の成長が進み、その成長厚さの増加に伴い作用する応力レベルも増加する。そして、その成長途中で格子緩和が生ずると、その格子緩和のためのミスフィット転位がGaP単結晶基板70側だけに留まる保障は全くなく、発光層成長準備層8から発光層部24に転位が貫通して、発光層部24に致命的なダメージが及ぶ可能性も高い。しかし、上記のように高転位密度領域70aを予めGaP単結晶基板70側に形成しておけば、発光層成長準備層8は始めから格子緩和しているので、成長途中で発光層部24に貫通転位が発生したりする心配がほとんどなくなる。
【0045】
さらに、複合透光性基板50を、MOVPEによる発光層部24の成長温度まで昇温し、該発光層部24を成長後に冷却する際には、成長したAlGaInPよりなる発光層部24及び発光層成長準備層)と、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70との熱膨張係数差に基づく熱応力が発生するが、予め高転位密度領域70aを形成しておけば、該熱応力による新たな転位の発生などを高転位密度領域70a側にしわ寄せすることができ、発光層部24を該熱応力による不具合から保護することができる。
【0046】
以上の結果、得られる発光素子1は、その発光層部24を結晶欠陥の少ない高品質のものとして形成することができ、高輝度で長寿命のものが得られる。なお、発光層成長準備層8上には、発光層部を直接成長させてもよいし、発光層成長準備層8と格子整合する別の化合物半導体層を成長させてから、その上に発光層部24を成長することもできる。例えば、より高品質の発光層部24を得るために、発光層成長準備層8上にAlGaInPよりなるバッファ層を形成した後、発光層部24を成長することができる。
【0047】
以下、本発明の種々の変形例について説明する。
図1の発光素子の製造工程は、図3に示すように変更することができる。以下、その変更点について説明する(工程変更されない部分については図1と同様であるので詳細な説明は省略する)。図3においては工程2において、MOVPE法によりAlGaInPよりなる発光層成長準備層8を成長した後、引き続きMOVPE法によりGaP層よりなる中間化合物半導体層70aを形成し、一旦室温まで冷却する。すると、中間化合物半導体層70aはAlGaInPよりも剛性の低いGaPにて形成されているので、AlGaInPとの格子定数差及び熱収縮率差に基づく応力により多数の転位が導入され、全体が高転位密度領域となる。すなわち、該方法によると高転位密度領域をより確実に形成でき、ひいては発光層成長準備層8をより確実に格子緩和させることができる。全体が高転位密度領域となった中間化合物半導体層70aには、工程3に示すように、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板70を貼り合わせることができる。なお、高転位密度領域化するに伴い、中間化合物半導体層70aの表面が面荒れした場合は、中間化合物半導体層70aの表面を研磨により平坦化してGaP単結晶基板70(透光性導電半導体基板)を貼り合せることが望ましい。
【0048】
次に、図4の発光素子200は、複合透光性基板50において、透光性導電半導体基板であるGaP単結晶基板7が、発光層成長準備層8の第一主表面MP1上にHVPE法あるいはLPE法によりエピタキシャル成長され、発光層部24よりも厚く形成されている。他の構成は、図1の発光素子100と同じである。GaP単結晶基板7をエピタキシャル成長により形成するから、図2のような貼り合せ工程が不要となり、発光層成長準備層8へのハンドリング等の影響が本質的に生じないほか、貼り合せ界面に金属や酸化物などの異物や水蒸気などを噛みこむ心配がない。また、予め成長した発光層部に対してGaP単結晶基板の貼り合わせをしたり、ハンドリング用の厚膜化合物半導体層の成長を行なったりすることがないので、それらの熱履歴による発光層部24の劣化も生ずる心配がなくなる。
【0049】
図5及び図6は、発光素子200の製造工程の一例を示すものである。図5の工程1及び工程2は、図1の工程1及び工程2と同じである。工程3及び工程4においては、発光層成長準備層8の第一主表面MP1上に、GaP単結晶基板70を貼り合せる代わりに、GaP単結晶基板7を、厚膜成長層としてHVPE法によりエピタキシャル成長させる点においてのみ相違する。HVPE法は、具体的には、容器内にてIII族元素であるGaを所定の温度に加熱保持しながら、そのGa上に塩化水素を導入することにより、下記(1)式の反応によりGaClを生成させ、キャリアガスであるH2ガスとともに基板上に供給する。
Ga(液体)+HCl(気体) → GaCl(気体)+1/2H2‥‥(1)
GaPの場合、成長温度は例えば800〜860℃程度に設定する。また、V族元素であるPは、PH3をキャリアガスであるH2とともに基板上に供給する。なお、n型ドーパントであるSiは、SiH4の形で供給する。GaClはPH3との反応性に優れ、下記(2)式の反応により、Gaとの間で効率よく、GaP単結晶基板7を成長させることができる:
GaCl(気体)+PH3(気体)
→GaP(固体)+HCl(気体)+H2(気体)‥‥(2)
なお、GaP単結晶基板7に代えてGaAsP単結晶基板をHVPEにより成長させることもできる。
【0050】
このとき、工程3に示すように、GaP単結晶基板7の、発光層成長準備層8と接する最初の部分を、以降の部分よりも低速で成長させると、該部分に転位が多数導入され、高転位密度領域7aが形成される。該領域を形成後、一旦室温まで冷却して転位導入を促進するようにしてもよい。このとき、高転位密度領域7aの表面が仮に面荒れしても、HVPE法は荒れた面の凹凸に対する充填性が良好であるため、GaP単結晶基板7と高転位密度領域7aとを強固に結合することができ、最終的に得られるGaP単結晶基板7の表面にもファセットや面荒れがほとんど生じず、ひいては平滑性の良好な基板が得られる。なお、工程3において、高転位密度領域7aを図3と同様にMOVPE法により形成し、その後、GaP単結晶基板を貼り合せるのではなく、厚膜のGaP単結晶層をHVPE法により成長する方法を採用してもよい。
【0051】
以下、図6の工程5、工程6及び工程7は、図2あるいは図3の工程4、工程5及び工程6とそれぞれ同じである。
【0052】
次に、図7の製造工程においては、工程2において、AlGaAsよりなる発光層成長準備層80を、MOVPE法(あるいはLPE法でもよい)により、単独ハンドリングの可能な20μm以上100μm以下の層厚に成長している。そして、工程3において、先にGaAs基板1(成長用基板)を除去している。そして、その後、工程4において、GaP単結晶基板70を貼り付けている。これにより、工程6において最終的に得られる発光素子300は、図1の発光素子100のAlGaInPよりなる発光層成長準備層8を、それより厚膜のAlGaAsよりなる発光層成長準備層80にて置き換えたものとなる。
【0053】
なお、工程4において、高転位密度領域70aは、図1の工程3と同様にして、発光層成長準備層8の貼り合わせ後の冷却工程時に形成することができる。また、図5と同様に、HVPE法ないしMOVPE法により高転位密度領域7a形成し、その後、厚膜のGaP単結晶層をHVPE法により成長するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光素子に係る第一実施形態を示す断面模式図。
【図2】本発明の発光素子の製造方法に係る第一実施形態を示す工程説明図。
【図3】本発明の発光素子の製造方法に係る第二実施形態を示す工程説明図。
【図4】本発明の発光素子に係る第二実施形態を示す断面模式図。
【図5】本発明の発光素子の製造方法に係る第三実施形態を示す工程説明図。
【図6】図5に続く工程説明図。
【図7】本発明の発光素子の製造方法に係る第四実施形態を示す工程説明図。
【符号の説明】
1 成長用基板
7,70 GaP単結晶基板(透光性導電半導体基板)
7a,70a 高転位密度領域
8,80 発光層成長準備層
24 発光層部
50 複合透光性基板
100,200,300 発光素子
Claims (29)
- 第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有する発光素子の製造方法であって、
前記第一の化合物半導体との格子定数差が前記第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層を用意し、該発光層成長準備層の第一主表面側に直接又は中間化合物半導体層を介して前記透光性導電半導体基板を形成することにより複合透光性基板を作製する複合透光性基板製造工程と、
前記複合透光性基板の前記発光層成長準備層の第二主表面側に前記発光層部をエピタキシャル成長する発光層部成長工程とを含み、
前記複合透光性基板製造工程及び前記発光層部成長工程の少なくともいずれかにおいて、前記透光性導電半導体基板又は前記中間化合物半導体層に、前記発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を形成することを特徴とする発光素子の製造方法。 - 前記中間化合物半導体層を前記発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成することを特徴とする請求項1記載の発光素子の製造方法。
- 前記透光性導電半導体基板を前記発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成し、前記高転位密度領域を該透光性導電半導体基板に形成することを特徴とする請求項1又は2記載の発光素子の製造方法。
- 前記複合透光性基板製造工程において、前記透光性導電半導体基板を前記発光層成長準備層の前記第一主表面側に貼り合せることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
- 前記複合透光性基板製造工程において、前記発光層成長準備層の前記第一主表面側に、前記第二の化合物半導体をエピタキシャル成長し、該第二の化合物半導体層を前記透光性導電半導体基板とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
- 前記第二の化合物半導体のエピタキシャル成長を、ハイドライド気相成長法又は液相成長法により行なうことを特徴とする請求項5記載の発光素子の製造方法。
- 前記高転位密度領域を含む前記透光性導電半導体基板の全体を、前記発光層成長準備層の直上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により成長することを特徴とする請求項5記載の発光素子の製造方法。
- 前記発光層成長準備層の前記第一主表面側に前記中間化合物半導体層を有機金属気相成長法により成長し、かつ、該中間化合物半導体層内に前記高転位密度領域を形成し、前記透光性導電半導体基板を、該高転位密度領域を有する中間化合物半導体層上にハイドライド気相成長法又は液相成長法により形成することを特徴とする請求項5記載の発光素子の製造方法。
- 前記複合透光性基板製造工程は、
前記第二の化合物半導体よりも、前記第一の化合物半導体との格子定数差が小さい成長用基板上に、前記発光層成長準備層を該発光層成長準備層の第二主表面側からエピタキシャル成長する発光層成長準備層成長工程と、
前記発光層成長準備層の前記第一主表面側に前記透光性導電半導体基板を形成する透光性導電半導体基板形成工程と、
前記発光層成長準備層の前記第二主表面から前記成長用基板を除去する成長用基板除去工程と、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。 - 前記発光層成長準備層を、前記発光層部からの発光光束のピーク波長に対応するエネルギーよりもバンドギャップの大きい化合物半導体にて形成することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
- 前記第一の化合物半導体がAlGaInP系混晶化合物であり、前記第二の化合物半導体がGaPまたはGaAsP系混晶化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
- 前記発光層成長準備層の第二主表面の格子定数をa1、前記発光層部の発光層成長準備層側の格子定数をa2として、|a1−a2|/a1≦0.01となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
- 前記発光層部と前記発光層成長準備層とが、いずれもAlGaInP系混晶化合物であることを特徴とする請求項11記載の発光素子の製造方法。
- 前記発光層部がAlGaInP系混晶化合物であり、前記発光層成長準備層がAlGaAs系混晶化合物であることを特徴とする請求項11記載の発光素子の製造方法。
- 第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有する発光素子の、前記発光層部のエピタキシャル成長用に使用されるものであり、
前記第一の化合物半導体との格子定数差が前記第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層が、前記透光性導電半導体基板上に形成され、かつ、前記透光性導電半導体基板又は該透光性導電半導体基板と前記発光層成長準備層との間に介在する中間化合物半導体層に、前記発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を有してなり、前記発光層成長準備層の前記透光性導電半導体基板側を第一主表面とするとき、該発光層成長準備層の第二主表面側が前記発光層部のエピタキシャル成長に使用されることを特徴とする複合透光性基板。 - 前記中間化合物半導体層を、前記発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成したことを特徴とする請求項15記載の複合透光性基板。
- 前記透光性導電半導体基板を前記発光層成長準備層よりも転位導入されやすい化合物半導体結晶にて形成し、前記高転位密度領域を該透光性導電半導体基板に形成することを特徴とする請求項15又は請求項16記載の複合透光性基板。
- 前記透光性導電半導体基板が、前記発光層成長準備層の前記第一主表面側に貼り合せられてなることを特徴とする請求項15ないし請求項17のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 前記透光性導電半導体基板が、前記第二の化合物半導体を前記発光層成長準備層の前記第一主表面上にエピタキシャル成長されてなることを特徴とする請求項15ないし請求項17のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 前記透光性導電半導体基板が、ハイドライド気相成長法又は液相成長法により形成されたものであることを特徴とする請求項19記載の複合透光性基板。
- 前記高転位密度領域を含む前記透光性導電半導体基板の全体が、ハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されてなることを特徴とする請求項19記載の複合透光性基板。
- 前記発光層成長準備層の前記第一主表面側に前記中間化合物半導体層を有機金属気相成長法により成長し、かつ、該中間化合物半導体層内に前記高転位密度領域を形成し、前記透光性導電半導体基板を、該高転位密度領域を有する中間化合物半導体層上にハイドライド気相成長法または液相成長法により形成したことを特徴とする請求項19記載の複合透光性基板。
- 前記発光層成長準備層が、前記発光層部からの発光光束のピーク波長に対応するエネルギーよりもバンドギャップの大きい化合物半導体にて形成されてなることを特徴とする請求項15ないし請求項22のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 前記発光層部をなす前記第一の化合物半導体がAlGaInP系混晶化合物であり、前記透光性導電半導体基板をなす前記第二の化合物半導体がGaPまたはGaAsP系混晶化合物であることを特徴とする請求項15ないし請求項23のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 前記発光層成長準備層の第二主表面の格子定数をa1、前記発光層部の発光層成長準備層側の格子定数をa2として、|a1−a2|/a1≦0.01となっていることを特徴とする請求項15ないし請求項24のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 前記発光層部と前記発光層成長準備層とが、いずれもIII族構成元素とV族構成元素との種別が一致したIII−V族混晶化合物半導体よりなることを特徴とする請求項15ないし請求項25のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 前記発光層部と前記発光層成長準備層とが、いずれもAlGaInP系混晶化合物であることを特徴とする請求項26記載の複合透光性基板。
- 前記発光層部がAlGaInP系混晶化合物であり、前記発光層成長準備層がAlGaAs系混晶化合物であることを特徴とする請求項15ないし請求項25のいずれか1項に記載の複合透光性基板。
- 第一の化合物半導体よりなる発光層部が、該発光層部からの発光光束に対して透光性を有する第二の化合物半導体からなる透光性導電半導体基板上に形成された構造を有し、
前記第一の化合物半導体との前記格子定数差が第二の化合物半導体との格子定数差よりも小さい化合物半導体よりなる発光層成長準備層が、前記透光性導電半導体基板上に形成されることにより複合透光性基板が形成され、
前記発光層成長準備層の前記透光性導電半導体基板側を第一主表面とするとき、該発光層成長準備層の第二主表面側に、前記発光層部がエピタキシャル成長されてなり、
かつ、前記透光性導電半導体基板又は該透光性導電半導体基板と前記発光層成長準備層との間に介在する中間化合物半導体層に、該発光層成長準備層よりも高密度に転位を含む高転位密度領域を有してなることを特徴とする発光素子。
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