JP2004252340A - 分岐ダクト消音装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】騒音源Sと減音対象位置Gとの間に配置される主配管20と、その両端が主配管20に接続された第1〜第3の分岐管30,40,50とを備え、第1の分岐管30は、位置21から位置22までの主配管20の長さと第1の分岐管30の長さとの差δ1が、騒音源Sの消音対象音の半波長と同じ第1の長さとなるように設定され、位置23から位置24までの主配管20の長さと第2の分岐管40の長さとの差δ2が、δ1の(1/2)倍、位置25から位置26までの主配管20の長さと第3の分岐管50の長さとの差δ3が、δ1の(1/4)倍である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、騒音源から発生し、換気用或いは配風用のダクトを伝播して外部に放出される騒音を効果的に低減するための分岐ダクト消音装置に関し、特にファン、ブロア、コンプレッサ、変圧器等の倍長波成分が顕著な騒音源に適するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工場、発動機、発電システム等の換気あるいは配風ダクトの消音には、吸音材を内張りした自然減音ダクト、膨張型消音器あるいはアクティブノイズコントロール等が用いられていた。
【0003】
この他、ダクトの途中に分岐路を設け、低減対象音に対し半周期の位相差を有する干渉波を加えることで、低減対象音を低減可能であることは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−93441号公報(図3及び図6の(2))
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した消音方法であると次のような問題があった。すなわち、自然ダクト減音や膨張型消音器では、騒音が大きい場合、低減効果が十分でないことがあった。特に、膨張型消音器では圧力損失を考慮した設計を考慮する必要が有り、設計の労力を要する。一方、アクティブノイズコントロールでは、メンテナンス及び電力供給の負荷がかかるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、既存のダクトに分岐管を追加するのみで、流体設計の見直しをする手間を省き、かつ、十分な消音効果が得られる分岐ダクト消音装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の分岐ダクト消音装置及び分岐ダクト消音方法は次のように構成されている。
【0008】
(1)騒音源と減音対象位置との間に配置される主配管と、その両端が上記主配管に接続されるとともに、主配管の所定の分岐位置で分岐し、かつ、分岐位置よりも外部側に位置する合流位置で合流する複数の分岐管とを備え、上記複数の分岐管のうち、少なくとも1つの分岐管は、上記分岐位置から上記合流位置までの上記主配管の長さと上記分岐管の長さとの差が、上記騒音源の消音対象音の半波長と同じ第1の長さとなるように設定され、上記複数の分岐管のうち、他の少なくとも1つの分岐管は、上記分岐位置から上記合流位置までの上記主配管の長さと上記分岐管の長さとの差が、上記第1の長さに対して(1/2)の整数乗倍であることを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)に記載された分岐ダクト消音装置であって、上記複数の分岐管のうち少なくとも1つの分岐管は、上記主配管の延設方向に対して平行な複数の平面を通過するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
(3)上記複数の分岐管はそれぞれ異なる平面内に配置されていることを特徴とする。
【0011】
(4)上記(1)に記載された分岐ダクト消音装置であって、雰囲気温度の変動に応じて上記複数の分岐管のうち少なくとも1つの分岐管の長さを調整する調整手段をさらに具備することを特徴とする。
【0012】
(5)上記(1)に記載された分岐ダクト消音装置であって、上記複数の分岐管のうち、長い分岐管が短い分岐管の上記騒音源に設けられていることを特徴とする。
【0013】
(6)騒音源と減音対象位置との間に配置される主配管と、その両端が上記主配管に接続されるとともに、主配管の所定の分岐位置で分岐し、かつ、分岐位置よりも外部側に位置する合流位置で合流する複数の分岐管とを備え、上記複数の分岐管のうち、少なくとも1つの分岐管を介してその合流位置において減音対象音と半周期だけ位相をずらせた音波を加える工程と、上記複数の分岐管のうち、他の少なくとも1つの分岐管を介してその合流位置において上記減音対象音に対し(1/2)の2以上の整数乗倍の周期だけ位相をずらせた音波を加える工程とを備えていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る分岐ダクト消音装置10の構成を示す模式図である。分岐ダクト消音装置10は、一端が騒音源S側に配置され他端が外部である減音対象位置G側に配置された主配管20と、その両端がそれぞれ主配管20に接続された第1分岐管30、第2分岐管40、第3分岐管50とを備えている。
【0015】
第1分岐管30は、主配管20の位置21に接続された第1管部31と、この第1管部31に連設された第2管部32と、この第2管部32及び主配管20の位置22に接続された第3管部33とを備え、略コの字状に形成されている。
【0016】
第2分岐管40は、主配管20の位置23に接続された第1管部41と、この第1管部41に連設された第2管部42と、この第2管部42及び主配管20の位置24に接続された第3管部43とを備え、略コの字状に形成されている。
【0017】
第3分岐管50は、主配管20の位置21に接続された第1管部51と、この第1管部51に連設された第2管部52と、この第2管部52及び主配管20の位置26に接続された第3管部53とを備え、略コの字状に形成されている。
【0018】
ここで、位置21と位置22との間の距離をa1、位置23と位置24との間の距離をa2、位置25と位置26との間の距離をa3とする。また、第1分岐管30の長さをb1、第2分岐管40の長さをb2、第3分岐管50の長さをb3とする。
【0019】
また、位置21と位置22との間は、主配管20と第1分岐管30とが介在することになり、その距離の差をδ1とする。δ1は、低減対象音の波長の(1/2)となるように設定されている。位置23と位置24との間は、主配管20と第2分岐管40とが介在することになり、その距離の差をδ2とする。δ2は、δ1の(1/2)あるいは第1分岐管30で対象とする音の波長の(1/4)となるように設定されている。位置25と位置26との間は、主配管20と第3分岐管50とが介在することになり、その距離の差をδ3とする。δ3は、δ1の(1/4)あるいは第1分岐管30で対象とする音の波長の(1/8)となるように設定されている。
【0020】
このように構成された分岐ダクト消音装置10によれば、騒音源Sからの音波は、主配管20内を伝播するものと、第1分岐管30内を伝播するものにわかれる。
【0021】
主配管20内を伝播する音波と第1分岐管30内を伝播する音波との間には、その経路の長さの差δ1によって位相が半周期ずれる。このため、位置22内において両方の音波が干渉し、低減対象音の音圧レベルが低減される。ここで、位置22内において音圧レベルが低減されるのは、低減対象音の基本周波数(f1)に対し、{2(n−1)+1}倍の周波数を持つ音となる。
【0022】
次に位置23に到達した音波は、主配管20内を伝播するものと、第2分岐管40内を伝播するものにわかれる。主配管20内を伝播する音波と第2分岐管40内を伝播する音波との間には、その経路の長さの差δ2によって位相が(1/2)周期ずれる。このため、位置24内において両方の音波が干渉し、低減対象音の倍音、すなわち2倍の周波数を持つ基本波の奇数倍周波数(すなわち、2,6,10,14,…)の音圧レベルが低減される。ここで、位置24内において音圧レベルが低減されるのは、低減対象音の基本周波数(f1)に対し、{4(n−1)+2}倍の周波数を持つ音となる。
【0023】
さらに、位置25に到達した音波は、主配管20内を伝播するものと、第3分岐管50内を伝播するものにわかれる。主配管20内を伝播する音波と第3分岐管50内を伝播する音波との間には、その経路の長さの差δ3によって位相が(1/2)周期ずれる。このため、位置26内において両方の音波が干渉し、低減対象音の4倍音、すなわち4倍の周波数を持つ基本波の奇数倍周波数(すなわち、4,12,20,28,…)の音圧レベルが低減される。ここで、位置26内において音圧レベルが低減されるのは、低減対象音の周波数に対し、{8(n−1)+4}倍の周波数を持つ音となる。
【0024】
次に、第1分岐管30、第2分岐管40、第3分岐管50の配置順について説明する。すなわち、第1分岐管30がより騒音源Sに近い側、次に第2分岐管40が、最後に第3分岐管50が騒音源Sに遠い側に配置されている。本配管20に対する第1分岐管30、第2分岐管40、第3分岐管50経路の長さの差は、それぞれδ1、δ2、δ3であり、相互に以下のような関係となっている。
【0025】
δ1=δ2×2=δ3×4 …(1)
したがって、
δ1>δ2>δ3 …(2)
一方、周波数が高いと透過損失が高いのでダクトを透過し辛く、周波数が低いとダクトを透過し易いという性質がある。
【0026】
面密度をm(=t×ρp)、板厚をt、板材の質量密度をρp、音速をc、媒質の質量密度をρ、角周波数をωとすると、透過損失Tは、次のように示される。すなわち、
【数1】
【0027】
したがって、低音については分岐ダクト消音器10の騒音源Sに近い側で低減した方が、本配管20等を伝播して散逸を未然に防げるであることから、上述したような順序で第1分岐管30、第2分岐管40、第3分岐管50を配置すれば、騒音の低減効果が大きい。
【0028】
図2の(a),(b)は分岐ダクト消音装置10をポンプ装置の消音に適用した場合における効果を示すグラフであって、横軸は周波数、縦軸は人間の聴覚補正を行って補正した音圧レベル(SPL)を示している。
【0029】
図2の(a)は、通常のダクトを介して測定した場合であり、全周波数での合計は77.8dBAとなる。図2の(b)は、分岐ダクト消音装置10を適用して測定した場合であり、全周波数での合計は52.4dBAとなる。すなわち、単一の分岐管を設けた場合には、所定の周波数及びその周波数の{2(n−1)+1}倍のもののみが低減されていたが、複数の分岐管を設けた場合には、所定の周波数の倍音系についての音圧レベルも低減できることとなる。したがって、低減効果を増大させることが可能となる。
【0030】
特に、δm+1=(1/2)δmとなる関係で分岐管を設定することで、低減可能な周波数の間を補間させることができ、全体的に均一に低減効果を機能させることが可能となる。
【0031】
上述したように、主配管20中を伝播する音波を分岐管に引き込み、主配管と分岐管の合流分で相互の位相が半波長ずれた音波同士を干渉させることで、主配管中を伝播する音圧レベルを低減する。更に、この分岐管を複数設けることで倍長波成分全域に亘って低減効果が得られる。なお、本実施の形態では、位相を例えば半波長ずらして干渉させているが、これを3/2波長や5/3波長ずらして干渉させるようにしても同様の効果を得ることができる。同様に1/4波長の場合には5/4波長、1/8波長の場合には9/8波長ずらすようにしてもよい。
【0032】
図3は上述した分岐ダクト消音装置10の第1変形例を示す図である。装置全体のコンパクト化を図るため、分岐管30〜50を異なる平面内に配置されるようにした。
【0033】
図4は上述した分岐ダクト消音装置10の第2変形例を示す図である。装置全体のコンパクト化を図るため、分岐管30〜50を螺旋状に設け、それぞれが主配管20の延設方向に対して平行な複数の平面を通過するように配置されるようにした。
【0034】
図5は上述した分岐ダクト消音装置10の第3変形例を示す図である。装置全体のコンパクト化を図るため、分岐管30を本配管20の周囲を囲む螺旋状に設け、主配管20の延設方向に対して平行な複数の平面を通過するように配置されるようにした。
【0035】
図6は上述した分岐ダクト消音装置10の第4変形例を示す図である。本変形例においては、第1分岐管1本であったものを複数の分岐管30a〜30dとし、これらを一組の第1分岐管とし、第2分岐管1本であったものを複数の分岐管40a〜40dとし、これらを一組の第2分岐管とし、第3分岐管1本であったものを複数の分岐管50a〜50dとし、これらを一組の第3分岐管とした。これにより、分岐管を増やすことで、分岐管の径を周囲に分散させることができるとともに、装置全体の収納性を上げることでコンパクト化を図ることができる。
【0036】
図7は、上述した分岐ダクト消音装置10の第5変形例を示す図である。本変形例においては、本配管20の代わりに4つの本配管20a〜20dが設けられている。
【0037】
本配管20a,20dには、それぞれ第1分岐管30、第2分岐管40、第3分岐管50が設けられている。また、本配管20b,20cには、それぞれ第4分岐管60、第5分岐管70、第6分岐管80が設けられている。なお、第4分岐管60は第1分岐管30と、第5分岐管70は第2分岐管40と、第6分岐管80は第3分岐管50とそれぞれ同じ長さである。これにより、分岐管を増やすことでより効果的に騒音を低減させることができるとともに、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0038】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る分岐ダクト消音装置100の全体構成を示す模式図である。なお、この図において、図1と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
分岐ダクト消音装置100は、配管伸張装置110を備えている。配管伸張装置110は、分岐ダクト消音装置100が配置された場所の温度を計測する温度計111と、この温度計111により計測された温度に基づいて適正な配管長を記憶する制御量記憶部112と、この制御量記憶部112に記憶された制御量に基づいてそれぞれ適正量だけ動作するアクチュエータ113〜115とを備えている。
【0040】
アクチュエータ113は、第1分岐管30の第1管部31及び第3管部33の長さを伸縮する機能を有している。アクチュエータ114は、第2分岐管40の第1管部41及び第3管部43の長さを伸縮する機能を有している。アクチュエータ115は、第3分岐管50の第1管部51及び第3管部53の長さを伸縮する機能を有している。
【0041】
ここで、cを音速[m/s]、fを周波数[Hz]とすると、波長λ[m]は、次のように示される。すなわち、
λ=c/f …(4)
音速cは雰囲気温度t[℃]の関数であるから、
c=331.5×√(1+t/273) …(5)
したがって、
λ=(331.5/f)×√(1+t/273) …(6)
ここでλ1は倍波音の1次周波数の波長とすると、この波長λ1の変動に合せてδ1(=λ1/2)、δ2(=δ1/2)、δ3(=δ1/4)を変化させることにより、騒音の低減量を最大にすることが可能となる。
【0042】
低減量Lは以下のように示される。すなわち、
【数2】
ここでgは1,2,3である。
【0043】
このように構成された分岐ダクト消音装置100においては、上述した分岐ダクト消音装置10と同様の効果を有するとともに、温度変化に伴う波長の変動に応じて分岐管の長さを変化させることができる。このため、温度変化の著しい環境下であっても、位相が半波長だけずれた音波を干渉させることができ、温度変化に関わらず性能を維持できる。
【0044】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、既存のダクトに分岐管を追加するのみで、流体設計の見直しをする手間を省き、かつ、十分な消音効果が得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る分岐ダクト消音装置の構成を示す模式図。
【図2】同分岐ダクト消音装置による消音効果を比較するグラフ。
【図3】同分岐ダクト消音装置の第1変形例を示す模式図。
【図4】同分岐ダクト消音装置の第2変形例を示す模式図。
【図5】同分岐ダクト消音装置の第3変形例を示す模式図。
【図6】同分岐ダクト消音装置の第4変形例を示す模式図。
【図7】同分岐ダクト消音装置の第5変形例を示す模式図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る分岐ダクト消音装置の構成を示す模式図。
【符号の説明】
10,100…分岐ダクト消音装置、20…主配管、30…第1分岐管、40…第2分岐管、50…第3分岐管、100…分岐ダクト消音装置、110…配管伸張装置、111…温度計、112…制御量記憶部、113〜115…アクチュエータ
Claims (6)
- 騒音源と減音対象位置との間に配置される主配管と、
その両端が上記主配管に接続されるとともに、主配管の所定の分岐位置で分岐し、かつ、分岐位置よりも外部側に位置する合流位置で合流する複数の分岐管とを備え、
上記複数の分岐管のうち、少なくとも1つの分岐管は、上記分岐位置から上記合流位置までの上記主配管の長さと上記分岐管の長さとの差が、上記騒音源の消音対象音の半波長と同じ第1の長さとなるように設定され、
上記複数の分岐管のうち、他の少なくとも1つの分岐管は、上記分岐位置から上記合流位置までの上記主配管の長さと上記分岐管の長さとの差が、上記第1の長さに対して(1/2)の整数乗倍であることを特徴とする分岐ダクト消音装置。 - 上記複数の分岐管のうち少なくとも1つの分岐管は、上記主配管の延設方向に対して平行な複数の平面を通過するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐ダクト消音装置。
- 上記複数の分岐管はそれぞれ異なる平面内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐ダクト消音装置。
- 雰囲気温度の変動に応じて上記複数の分岐管のうち少なくとも1つの分岐管の長さを調整する調整手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の分岐ダクト消音装置。
- 上記複数の分岐管のうち、長い分岐管が短い分岐管の上記騒音源に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分岐ダクト消音装置。
- 騒音源と減音対象位置との間に配置される主配管と、
その両端が上記主配管に接続されるとともに、主配管の所定の分岐位置で分岐し、かつ、分岐位置よりも外部側に位置する合流位置で合流する複数の分岐管とを備え、
上記複数の分岐管のうち、少なくとも1つの分岐管を介してその合流位置において減音対象音と半周期だけ位相をずらせた音波を加える工程と、
上記複数の分岐管のうち、他の少なくとも1つの分岐管を介してその合流位置において上記減音対象音に対し(1/2)の2以上の整数乗倍の周期だけ位相をずらせた音波を加える工程とを備えていることを特徴とする分岐ダクト消音方法。
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