以下に、本発明に係る当該アンテナ構造体及び当該アンテナ構造体を使用した電波修正時計の一具体例の構成を図面を参照しながら詳細に説明する。
即ち、図1は、本発明に係るアンテナ構造体2の一具体例を示す模式平面図であって、図中、少なくとも側部4及び裏蓋部3のいずれかが金属で構成されている時計内部に配置される電波を受信出来るアンテナ構造体2であって、当該アンテナ構造体2のL値が、1600mH以下であるアンテナ構造体2が示されている。
即ち、上記した従来例では、アンテナを金属製の側或いは蓋等の金属製外装部内に挿入配置させた場合、当該アンテナが電波を受信し、共振することにより発振する磁束が周囲に配置された金属外装との相互作用、具体的には渦損によりエネルギー損失が増大し、当該アンテナにより発生する共振現象(磁力→電力→磁力→・・・・)が金属外装によって阻害されてしまう為、つまり具体的には、当該共振現象によって発生する磁力が金属部に吸い寄せられ、渦流現象を起こし、磁力の殆どが消費されてしまうという結果(鉄損の影響による)、当該アンテナの利得及びQ値が大幅に減少してしまい、金属外装内にアンテナを配置させた電波修正時計の実用化には問題が有った。
アンテナの利得は送信信号の磁束による利得とアンテナの共振現象によって増大した磁束による出力の2つからなり、一般的にアンテナの出力の主成分はアンテナの共振現象によって増大した磁束による利得で成り立っている。
当該アンテナを金属外装内に挿入すると、アンテナの共振現象が妨げられQ値が大幅に減少するため、利得も大幅に減少している。
換言すれば、通常、金属物体が近傍に存在しない場合には、当該アンテナの利得の殆どは上記した共振現象によって得られる利得が殆どであり、アンテナの巻き線抵抗(銅損)が増大すると共振現象の妨げになり、利得(Q値)の低下の原因となるため、極端に巻き数を増やしたり、巻き線を細めたりする事が出来なかった。
一方、当該アンテナを金属外装内に入れた場合、鉄損(金属外装)による影響が大きいため、Q値は大幅に減少し、利得も大幅に減少する。
その為、本願発明者は、従来の考え方を変換し、アンテナ構造体を金属製の外装内で使用する際には、当該Q値の低下は避け得ないものとの前提に立って、当該アンテナ構造体の利得を向上させる方法を鋭意検討したものである。
つまり、本発明に於いては、当該アンテナ構造体を金属外装部内に挿入配置するに際して、従来の様にQ値(共振現象)による増幅率で利得を得るのではなく、送信信号の磁束によって得られる利得を如何に最大限に利用しえるかを追及した結果、知得した技術思想に基づくものである。
上記した技術思想を確認するため、本願発明者らは、先ず、図2に示す様な所定のアンテナ構造体の持つL値(mH)と当該アンテナ構造体の利得(dB)との関係を測定する実験を行った。
使用したアンテナは、図18に示すようなアンテナを用い、アンテナコアの素材はアモルファス磁性材を使用した。
即ち、図18は、本発明に於いて、磁路6が閉鎖状磁路を形成しない構造を有する場合の一具体例の構造を示した図であり、基本的な構成は図9の構造を用いるものであるが、図9に於ける非コイル巻付部のアンテナコア部9’が省略されている構造となっている。
又、本発明におけるアンテナの利得とQ値の測定方法の一具体例は以下の通りである。
此処で、本発明における当該アンテナの利得とQ値の測定方法の一具体例を説明する。
即ち、ヒューレッドパッカード社(HP)製のネットワークアナライザー(4195A)と同ヒューレッドパッカード社(HP)製の高周波プローブ(85024A)及びナショナル(松下電器)の送信アンテナ(テストループ 75Q,VQ−085F)とを、図16に示す様に接続してアンテナ評価回路を構成し、当該送信アンテナ(テストループ 75Q,VQ−085F)の近傍に被測定アンテナを接続する当該高周波プローブ(85024A)とサンプル支持部を配置し、当該サンプル支持部に所定の被測定アンテナをセットした後、当該送信アンテナ(テストループ 75Q,VQ−085F)より所定の電波を発信し、当該被測定アンテナの出力を当該高周波プローブ(85024A)で検出して当該ネットワークアナライザー(4195A)で所定のアンテナ評価をする様に構成したものである。
上記の評価装置においては、当該被測定アンテナ構造体2と当該送信アンテナ(テストループ 75Q,VQ−085F)との距離を図17に示す様に送信ループアンテナの下端から11cm離れた位置に評価用の受信アンテナを設置して測定すると同時に、当該被測定アンテナ構造体2と金属外装3とを接触させて測定した。
更に、上記具体例に於いて、当該送信アンテナ(テストループ 75Q,VQ−085F)から発信される電波の周波数は、77.5KHz用の共振アンテナを測定する場合、77.5±20KHzの範囲で変化させて測定した。
又、上記の測定装置により当該77.5KHz用の共振アンテナの利得とQ値を測定する方法を図7を参照しながら説明する。
即ち、当該ネットワークアナライザー(4195A)から当該送信アンテナ(テストループ 75Q,VQ−085F)に一定の出力で周波数を77.5±20KHzの範囲でスイープさせ、被測定アンテナ2の出力を高周波プローブ(85024A)を介してモニターし図7に示す様な出力結果を得る。
ここで、アンテナの利得は、送信アンテナへの入力電圧振幅と被測定アンテナの出力電圧振幅の比で表し、図7中、最もアンテナ出力の高い周波数が共振周波数(f0)となり、当該アンテナ出力が最も高い時点での上記比の値をアンテナ利得とした。
又、Q値=共振周波数f0÷(f2−f1)の式を使用して、測定結果よりf1,f2を求めQ値を算出した。
図2に於いては、所定のアンテナ構造体を金属外装部に挿入しない状態で、77.5KHzの電波を受けた際のL値と利得(dB)との関係をグラフAに示し、同一構造のアンテナ構造体を金属外装部に挿入した状態で、77.5KHzの電波を受けた際のL値と利得(dB)との関係をグラフBに示した。
尚本実験では、通常の直線状コア部に通常の方法で巻き線を巻き付けたものであり、L値の変化は、巻き線数の変更等で調整した。
図2から判るように、金属外装に挿入されていないアンテナ構造体に於いては、当該L値が増加するに連れて利得は増加するが、当該L値が約10mHを越えると徐々に飽和するが、金属外装に挿入されているアンテナ構造体に関しては、上記した様な飽和現象はなく、利得はL値の増加に比例してリニアに増加する事が判る。
本発明者等は、更に検討を加えた結果、図2の結果から、金属外装部の中で使用されるアンテナ構造体2では、L値が増加すると直線的に利得が向上することから、巻き線の巻数を多くしてL値を大きくする事が望ましいと判断される。
然しながら、アンテナの巻数を増やすと、アンテナ自体の容量が増加するので、アンテナの共振点に関して制約が発生するので上限は、必然的に決る事になる。
アンテナの線間容量は巻き線数と巻き線の種類によって決るが、現実的な事を想定すると時計の厚さを10mm、直径30mmの時計内に治めるスペース的にアンテナコアの巻き幅を12mm、アンテナの厚さは外装厚、ムーブメントの地板の厚さを想定すると5.5mmとなり、安価なフェライトコアの十分な強度が得られる巻き芯厚は3mmとした場合に電波時計として十分な性能が得られる巻き線数1400Tを巻き付けるには導体径100μm、導線径110μmが最も抵抗値を最小に出来る。
この条件に沿ってφ3mm、長さ50mmのフェライトコアを用いて巻き幅を12mm、導体径100μm、導線径110μmの線材を巻き付けてアンテナを作成し、アンテナの線間容量を求める実験を行ったところ、周波数・L値の特性は図20のようになり、周波数の変化に対するL値の変化をグラフPに示し、周波数の変化に対するQ値の変化をグラフQに示した。
図20から理解される様に、アンテナのL値が安定している35KHz程度に同調するために264.9pFのコンデンサーをアンテナに並列接続させ、同調を行った結果、共振周波数は34.4KHzとなり、この共振周波数におけるL値を図20より求めると78.27205mHとなり、以上の数値からアンテナの線間容量を求めると8.852pFとなり、最低でも約10pF程度は必然的に線間容量が発生すると考えられる。
又、使用される周波数帯は、最も低いもので40KHzであることから、この容量と上記周波数を基に当該アンテナ構造体2のL値を式f=1/2π√LCから求めると約1584〜1600mH程度であり、したがって,L値が1600mH以下で使用する事が望ましい。
又、実際には、当該アンテナの巻き線容量以外にも実装基板、受信ICの寄生容量を含めると、当該寄生は約20pFと考えられるので係る状況では、当該L値は、792から800mHとなると判断されるので、当該L値が800mH以下であるアンテナ構造体1を使用する事が望ましい。
更に、現実的に考えると、使用する周波数帯で、現存する最も高い周波数帯は、77.5KHz(ドイツ)であり、この周波数帯を使用する事を前提に判断すると、その状況下に於ける当該アンテナ構造体2の当該L値を上記容量と周波数を基に求めると約211から220mHとなり、当該L値が220mH以下であるアンテナ構造体1を使用する事が望ましい。
尚、本発明に於ける当該アンテナ構造体2に於ける当該L値の下限値は、約20mHであることが望ましい。
標準電波を送信している日本、ドイツなどの電界強度におけるフィールド調査の結果、発信国の全ての地域で電波時計が十分に受信できるようにするには最低でも50dBμV/mの電界強度で受信できることが必要である。
アンテナに求められる最低利得は受信ICの能力によって異なるが、現状の受信ICの能力から考えるとアンテナ利得は最低でも−51dB以上は必要で、アンテナ性能のばらつきを考慮すると−50dB以上、更にL値、C値のばらつきによる共振周波数ばらつきを考慮すると−49dB以上、より好ましくは受信ICの性能ばらつきを加味した−47dB以上は必要となる。
よって、図2より、L値の下限値もアンテナ利得の−51dBに相当する20mH以上、好ましくは、アンテナ利得の−50dBに相当する25mH以上、より好ましくは、アンテナ利得の−49dBに相当する33mH以上、最も好ましくは、アンテナ利得の−47dBに相当する40mH以上が望ましいと考えられる。
上記した本発明で好ましいと判断されたL値の値は、従来に於ける電波修正時計に於けるアンテナ構造体のL値が、せいぜい2乃至13mHである事を勘案すると極めて特異な値である事が理解される。
次に、本発明者等は、当該アンテナ構造体に於ける巻き線の巻線数(T)と利得(dB)との関係を検討し、その結果を図3に示す。
使用したアンテナは、図18に示すようなアンテナを用い、アンテナコアの素材はアモルファス磁性材を使用した。
又、本発明におけるアンテナの利得とQ値の測定方法は前述したとおりである。
即ち、図3に於いては、図2の実験と同様に、所定のアンテナ構造体を金属外装部に挿入しない状態で、77.5KHzの電波を受けた際の当該アンテナ構造体2の巻き線数(T)と利得(dB)との関係をグラフCに示し、同一構造のアンテナ構造体を金属外装部に挿入した状態で、77.5KHzの電波を受けた際の巻き線数(T)と利得(dB)との関係をグラフDに示した。
図3から判るように、金属外装に挿入されていないアンテナ構造体に於いては、当該巻き線数(T)が増加するに連れて利得は増加するが、当該巻き線数(T)が1000を越えると徐々に飽和するが、金属外装に挿入されているアンテナ構造体に関しては、上記した様な飽和現象はなく、利得は巻き線数(T)の増加に比例してリニアに増加する事が判る。
従って、本発明に於いては、外装部の側部若しくは蓋部の少なくとも一方が金属である電波修正時計或いは外装部の側部及び蓋部が金属である電波修正時計に於いて、当該アンテナ構造体2の巻き線数(T)が、1000T以上とすることが望ましいと判断される。
尚、上記第1の実施例の主磁路と副磁路とで構成されたアンテナ構造体にて採用する場合には、400Tが望ましい。
又、アンテナ利得は最低でも−51dB以上は必要であり、図3では、1400Tが−51dBに相当することから、外装部の側部若しくは蓋部の少なくとも一方が金属である電波修正時計に於いては、当該アンテナ構造体2の巻き線数(T)は1400以上であることが効果的であると判断される。
更に、図3から理解される様に、当該アンテナ構造体2を金属製の外装部にいれずに単体で使用した場合には、当該巻き線数(T)が1500以上で利得の増加率が飽和しているが金属外装内に当該アンテナ構造体2を配置した場合には、当該巻き線数(T)が1500以上でもリニアに利得が増加することを示していることから、外装部の側部若しくは蓋部の少なくとも一方が金属である電波修正時計に於いては、当該アンテナ構造体2の巻き線数(T)は1500以上であることがより効果的であると判断される。
一方、当該アンテナの巻き線数(T)を増大していくとアンテナの巻き線抵抗値が増加してくるので、当該巻き線数(T)もその上限には限界がある。
そこで、本願発明者等は、図4に示す通り、当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)と利得及び当該巻き線抵抗(Ω)と当該アンテナ構造体を金属外装部に近接させた場合とさせない場合とに於ける利得差との関係を検討するための実験を行った。
即ち、図4に於いては、図2の実験と同様に、所定のアンテナ構造体を金属外装部に挿入しない状態で、77.5KHzの電波を受けた際の当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)と利得(dB)との関係をグラフEに示し、同一構造のアンテナ構造体を金属外装部に挿入した状態で、77.5KHzの電波を受けた際の巻き線抵抗(Ω)と利得(dB)との関係をグラフFに示した。
又、当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)と利得及び当該巻き線抵抗(Ω)と当該アンテナ構造体を金属外装部に近接させた場合とさせない場合とに於ける利得差との関係をグラフGに示した。
図4に於ける実験に於いては、当該巻き線抵抗(Ω)値の調整は、図4(B)に示す様に、抵抗値を適宜組み替えて実施した。
図4(A)から理解される様に、金属外装なしの当該アンテナ構造体2単体での使用時でも、又当該アンテナ構造体2を金属外装内に配置した場合の何れに於いても、当該巻き線抵抗(Ω)の増大に伴って、利得が低下することが示されている。
そして、上記グラフEとFとの間に於ける利得差を示すグラフGを見ると、当該巻き線抵抗(Ω)の値が1KΩ以上となると、当該アンテナ構造体2を金属外装を使用しない場合と金属外装内部で使用した場合に於ける利得の差の変化がなくなり、利得差が約3乃至4dB近辺で一定となる事が理解できる。
これは、従来に於ける、電波を受信するためのアンテナの近傍或いは、当該アンテナに接触して導電性を持つ金属物体が配置されている場合には、当該電波が当該金属物体に吸収されてしまい、当該アンテナまで電波が到達しないので、当該アンテナの共振出力が低下するため、例えば、Q値が低下すると考えられていたのに対し、本願発明者等の鋭意検討の結果、上記した従来に於ける当該問題点の把握が実際には、誤りであって、アンテナの近傍或いは、当該に接触して導電性を持つ金属物体が存在している場合で有っても、当該アンテナは、当該電波が実質的に到達しており、非共振の場合には、外部から当該時計内部に入ろうとする外部電波による磁束の流れは、多少は減衰されるが(例えば3dB程度)実質的には、障害なく当該アンテナに到達すると言う事実が確認できたが、この事実と符合する。
又、図19に於いては図4の実験と同様に、所定のアンテナ構造体を金属外装に挿入しない状態で、77.5KHzの電波を受けた際の当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)とQ値との関係をグラフLに示し、同一構造のアンテナ構造体を金属外装部に挿入した状態で77.5KHzの電波を受けた際の当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)とQ値との関係をグラフNに示した。
図19に於ける実験においては、当該アンテナの巻き線抵抗(Ω)値の調整は図4と同様に適宜組替えて実施した。
図19で理解される様に、当該アンテナの巻き線抵抗(Ω)の増大に伴って、金属外装無しの当該アンテナ構造体2単体での使用は大幅にQ値が低下しているが、当該アンテナ構造体2を金属外装内に配置した場合にはアンテナの巻き線抵抗100ΩまでQ値が5前後で安定していることから、金属外装中にアンテナがある場合、巻き線を細くし、巻き線数を増やし、L値を上げ、アンテナ利得の向上を図る事が出来ると考えられる。
この結果から、アンテナの巻き線抵抗(Ω)の値が1KΩ以下であれば、金属外装内で使用するアンテナ構造体2の利得への効果の寄与が当該アンテナ構造体2を金属外装を使用しない場合の利得への効果の寄与よりも大きいと考えられるので、本発明に於ける当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)は、1KΩ以下であることが望ましい。
又、一般に、時計の厚さは10mm程度と考えられ、アンテナの巻き線の幅を20mm、巻き芯厚1mm、巻き線の太さを導体径60μm、導線径65μm、アンテナの巻き線抵抗を1KΩと考えた場合、巻き線の巻ける回数は25000Tが限界である。
現実的なことを想定すると時計の厚さを10mm、直径30mmの時計内に治めるスペース的にアンテナコアの巻き幅を12mm、アンテナの厚さは外装厚、ムーブメントの地板の厚さを想定すると5.5mmとなり、巻き芯厚は1mm、このスペースでアンテナの巻き線抵抗を1KΩ程度にするには導体径45μm、導線径50μmで最も巻くことが可能な巻き線数は12000Tとなる。
より好ましくは、安価なフェライトコアのアンテナの強度から考えて、巻き芯厚は2mmが理想的であり、このスペースでアンテナの巻き線抵抗を1KΩ程度にするには導体径45μm、導線径50μmで最も最も巻くことが可能な巻き線数は9000Tとなる。
更に好ましくは、安価なフェライトコアのアンテナの時計としての十分な強度から考えて、巻き芯厚は3mmが理想的であり、このスペースで巻き線抵抗を1KΩ程度にするには導体径45μm、導線径50μmで最も最も巻くことが可能な巻き線数は7000Tとなる。
より詳細には、図2のデータの巻き線数をそのサンプルの巻き線抵抗値に置き換え、図4のデータと合わせた図5に示す様に、当該所定のアンテナ構造体2を金属外装部に挿入しない状態で、77.5KHzの電波を受けた際の当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)と利得(dB)との関係をグラフHに示し、同一構造のアンテナ構造体を金属外装部に挿入した状態で、77.5KHzの電波を受けた際の巻き線抵抗(Ω)と利得(dB)との関係をグラフIに示した。
かかるグラフH,Iは、実質的に図4のグラフEとグラフF実質的に同じである。
一方、図5に於けるグラフJは、上記と同一構造のアンテナ構造体であって巻数(T)を1000〜2000Tに変化させた場合で且つそれを金属外装部に挿入した状態で、77.5KHzの電波を受けた際の巻き線抵抗(Ω)と利得(dB)との関係を示したものであり、巻き線抵抗(巻き線数)が上昇すると利得が向上する事を示している。
又、グラフKは、上記グラフJの近似曲線である。
一方、グラフMは、上記したグラフIにより示される、巻き線抵抗(Ω)が増える事によって減少する利得の割合と、巻き線数(T)の増加により巻き線抵抗Jが増加する事によって増加する利得とのバランスを示すグラフである。
図5の当該グラフMから明らかな様に、当該利得の増加と減少とのバランスが、巻き線抵抗(Ω)が396Ω近辺より高くなるに連れて飽和している事が理解出来、従って、巻き線抵抗(Ω)が400Ω以上となる様な巻き線を実行しても効果は得られない事が判る。
従って、本発明に於ける当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)は、400Ω以下であることが望ましい。
更に、本発明に於いては、金属外装を使用した場合2に於いて、当該アンテナ構造体2の利得が高く且つ変化の少ない領域で使用する事が最も効率の良い方法である事を考えると、図4のグラフFから理解される様に、当該アンテナ構造体2の巻き線抵抗(Ω)が100Ω以下の状態で使用する事が望ましいと考えられる。
尚、本発明に於ける当該アンテナ構造体2に於ける当該巻き線抵抗(Ω)の下限値は、約18Ωであることが望ましい。
つまり、アンテナに求められる最低利得を−51dBとすると、図3より巻き線数は1400Tであり、現実的に想定すると時計の厚さを10mm、直径30mmの時計内に治めるスペース的にアンテナコアの巻き幅を12mm、アンテナの厚さは外装厚、ムーブメントの地板の厚さを想定すると5.5mmとなり、巻き芯厚は1mm、このスペースで巻き線数1400Tを確保するには導体径130μm、導線径140μmが最も抵抗値を最小に出来、その値は18Ωとなる。
好ましくは、安価なフェライトコアのアンテナの強度から考えて、巻き芯厚は2mm、このスペースで巻き線数1400Tを確保するには、導体径110μm、導線径120μmが最も抵抗値を最小に出来、その値は27.6Ωとなる。
更に好ましくは、アンテナに求められる最低利得を−50dBと考えると巻き線数は1500Tとなり、導体径110μm、導線径120μmが最も抵抗値を最小に出来、その値は30Ωとなる。
より好ましくはアンテナに求められる最低利得を−49dBと考えると巻き線数は1650Tとなり、導体径100μm、導線径110μmが最も抵抗値を最小に出来、その値は38Ωとなる。
最も好ましくはアンテナに求められる最低利得を−47dBと考えると巻き線数は1900Tとなり、導体径95μm、導線径105μmが最も抵抗値を最小に出来、その値は53Ωとなる。
最も好ましくは、安価なフェライトコアの時計としての強度から考えてアンテナの強度から考えて、巻き芯厚は3mm、このスペースで最低限のアンテナ利得を得る巻き線数1400Tを確保するには、導体径100μm、導線径110μmが最も抵抗値を最小に出来、その値は41.6Ωとなる。
ちなみに、従来に於ける電波修正時計に於けるアンテナ構造体のアンテナの巻き線抵抗(Ω)はせいぜい3〜20Ω程度であり、本発明に於けるアンテナの巻き線抵抗(Ω)は、従来のレベルよりも著しく高いアンテナの巻き線抵抗(Ω)を使用するものである。
以上の実験結果から、本発明に於いては、金属外装部内にアンテナ構造体2が配置されている場合には、当該アンテナ構造体のアンテナの巻き線抵抗(銅損)が増大してもQ値の低下は微小であり、換言すれば、線径が細くても巻数が同じであれば当該Q値及び利得Gの変化は少ない事になる。
一方、当該アンテナ構造体2のアンテナの利得は、巻き数が増える事によって向上する。
その結果、当該アンテナ構造体を金属外装内に配置させた場合、巻き線を細くし、且つ巻数を増やす様に設計することによって利得を改善させる事が可能となる。
又、従来に於ける当該アンテナ構造体2を金属外装部内に挿入しない態様に於いては、巻き線の径が太い場合、例えば、巻き線径が0.1mmφで低い抵抗値を示す巻き線を使用する方が、細い巻き線径を有する場合、例えば、巻き線径が0.06mmφで高い抵抗値を示す巻き線を使用する方より良好な利得特性を示すが、本発明に於ける様に、当該アンテナ構造体2を金属外装部内に配置する場合には、その利得特性における相違は見られない。
従って、本発明に於いては、細い巻き線を使用してアンテナ構造体2を構成することが望ましく、それによって、より小さい寸法のアンテナ構造体2を形成することが可能となる。
従って、本発明に於ける当該アンテナ構造体の他の態様としては、当該巻き線は、0.1mmφ以下、好ましくは0.06mmφ、最も好ましくは0.045mmφの線径を有している事が好ましい。
上記した本発明にかかるアンテナ構造体2は、通常の直線形状のアンテナコア部に当該巻き線を所定の巻き線数(T)巻き付けた形状を基本とするものであるが、当該アンテナ構造体2の構成は、これに限定されるものではなく、如何なる形態を持ったアンテナ構造体でも適用可能であり、特には、本願出願人が先に出願している特願2002−297095において開示されているアンテナ構造体の構成に適用することが望ましい。
即ち、図6は、特願2002−297095において開示されている構成電波を受信するアンテナ構造体2の一具体的の構成を示す図であって、当該アンテナ構造体2は、外部電波による磁束を受信出来るが、共振に発生する磁束が外部に漏れにくい磁路の構造を有しており、当該磁路6は、導体が巻き付けられコイルが形成されているコイル巻付部21と、導体が巻き付けられていない非コイル巻付部22とから構成されているアンテナ構造体2が示されている。
本発明に於ける他の態様としては、上記した図6に示されるようなアンテナ構造体2に於ける当該アンテナ特性を上記した特性を持つ様に設計するものである。
尚、此処で本発明に於いて使用されるQ値について概略を図7を参照しながら説明しておく。
図7は、周波数とアンテナの出力との関係を示すグラフであり、図7中、最もアンテナ出力の高い周波数が共振周波数f0となる。
又、図7中、Aで示されるレベルは、当該最もアンテナ出力の高い点から約3dB(1/√2)低いレベルで、その出力レベルを与える周波数をf1、f2とすると、Q値は、以下の様に計算されるものである。
Q値=共振周波数f0÷(f2−f1)
上記Q値の別の解釈として、前記した様に、Q値は、共振状態でのアンテナのエネルギー損失の程度を示し、エネルギー損失が小さいと当該Q値の値は高くなる。
又、この結果、アンテナ出力は概略アンテナ入力のQ値倍となる。
即ち、当該アンテナ構造体2の出力特性値をQ値で定義すると、当該Q値は、当該アンテナ構造体2への入力に対する出力の比率を示すもので、Q値=100は、入力1に対して出力が概略100となる出力特性を有している事を示すものであり、当該Q値の値が高い程、アンテナ構造体として優れていると判断される。
つまり、当該Q値は、その値が高い程、アンテナ構造体としての性能は良いと判断される事になり、換言すれば、エネルギー損失の程度の大小を示す指標でもある。
尚、本発明に於いては、当該Q値の値を高くすることは、入力された外部電波から不用なノイズを除去する事が可能となり、それによって、所定の周波数に対する感度を向上させることが可能となるので、フィルター機能を発揮する事が出来、この点からもQ値が高い事が望まれる。
その為、上記した図6に示す当該アンテナ構造体2に於いては、当該アンテナ構造体2を金属材料からなる外装部と接触して配置するかその近傍に配置した場合に、十分なアンテナ出力を確保する為に、当該Q値の値の低下を如何に防止して、実用上、問題の無い程度のアンテナ出力の低下で抑えられるかを検討した結果、設計されたアンテナ構造体であって、基本的には、電波を受信するアンテナ構造体2であって、当該アンテナ構造体2は、外部電波による磁束4を受信出来るが、共振時には、共振により発生する磁束7が外部に漏れにくい磁路6の構造を有しており、当該磁路6は導体11が巻き付けられコイルが形成されているコイル巻付部21と、導体11が巻き付けられていない非コイル巻付部22とから構成されているアンテナ構造体とする事によって、実用的に問題の無い小型で、薄型、且つ製造コストの低い、電波利用の電子機器に適したアンテナ構造体を容易に製造可能とするものである。
即ち、本発明に使用される当該アンテナ構造体2の構造をより具体的に説明するならば、図6に於いて、当該アンテナ構造体2は、外部より所定の電波が到達した場合に、外部電波による磁束4を受信するが、共振により発生する磁束7が、閉ループ状の磁路6を流れ、その結果、当該磁束7が当該アンテナ構造体2の外部に漏れにくい構造を有しているアンテナ構造体2としたものである。
更に、具体的には、本発明の当該アンテナ構造体2は、当該磁路6に於ける当該コイル巻付部21と、当該非コイル巻付部22の少なくとも一部は、互いに異なる材質で構成されている事が望ましい。
本発明に於ける当該コイル巻付部21は、上記した磁路6の一部を構成するものであって、適宜のコア部9に適宜の導体11が所定の回数巻きつけられてコイル部8が形成されている部分を規定するものであり、又、本発明に使用される当該アンテナ構造体2に於ける当該非コイル巻付部22は、上記した磁路6の一部を構成するものであって、適宜のコア部9’で構成され当該コア部9’には、導体11によるコイルが巻き付けられていない部分を規定するものである。
即ち、本発明に於いて使用される当該アンテナ構造体2に於ける当該コイル巻付部21は、当該アンテナが外部電波を受信した際に、当該外部電波により発生した磁束4が主として当該コイル巻付部21に流れる様な機能を有しているものであり、又、当該非コイル巻付部22は、当該コイル巻付部21が共振している間に発生した磁束7が、主として当該非コイル巻付部22に流れる様な機能を有しているものである。
従って、例えば、当該非コイル巻付部22に相当する部分に、仮に適宜の導体からなるコイルが巻き付けられていたとしても、上記機能を発揮するものである限り、当該部分は、非コイル巻付部と判断するものである。
例えば、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22の双方にコイルが巻き付けられていたとした場合に、双方のコイルを共振させるとすると、双方のコイルの共振位相がずれるため、出力が低下するばかりか、双方のコイルの共振周波数の調整が難しいし、又体積や部品点数の増加も問題となる。
一方、上記例に於いて、出力側であるコイル巻付部21のアンテナが非共振の場合、当該コイル巻付部のコイル抵抗が加算され、共振状態の銅損が増加して出力が低下する他体積や部品点数の増加も問題となる。
尚、本発明に於ける当該コイル巻付部22には、一つのコイルに限らず、複数個のコイルが配置されている場合であっても良い。
更に、本発明に於いて、当該アンテナ構造体2に関し、外部電波の受信を妨げない様にするには、例えば、当該コイル巻付部21の実効透磁率よりも、当該非コイル巻付部22の実効透磁率を小さく、且つ、当該非コイル巻付部22が存在しない場合に於ける当該コイル巻付部21が共振した際に発生する磁束が通る空気中の磁路よりも当該実効透磁率が大きくなる様に構成する事が必要である。
その為に、当該コイル巻付部21と、当該非コイル巻付部22を構成する少なくとも一部の材質は相互に異ならせる事が望ましい。
一方、本発明に於いては、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22に入った外部電波の磁束は、実効透磁率の大きなコイル巻付部21側を主に流れる事によって、当該コイル部8に起電力を発生し、その起電力により、共振が起こり、当該共振により発生した磁束は、当該コイル巻付部21から空気中に流れるよりも、空気中の実効透磁率よりも大きな実効透磁率を持つ当該非コイル巻付部22に主に流れる事になるので、結果として、アンテナ構造体外部に漏れる磁束が減少するのである。
図6は、本発明に於ける当該アンテナ構造体2の当該非コイル巻付部22に相当する磁路6の一部にギャップ部10を設け、磁気的なギャップを形成する事により、当該非コイル巻付部22の実効透磁率を小さくしたものである。
上記した様に、本発明に於いて使用される当該アンテナ構造体2は、金属材料3と接触しているかその近傍に金属材料3が存在している場合であっても、そのQ値の低下率が大幅に抑制され、然も、上記した様に、アンテナ構造体2そのもののアンテナ特性が大幅に改良されている事も併合されて、実用的には、当該金属材料の存在有無に関係なく、良好な受信性能を発揮出来るアンテナ構造体2を容易に且つ低コストで得られるのである。
上記した説明から明らかな通り、本発明に於いては、当該閉鎖状ループを構成している当該アンテナ構造体2の当該磁路6の一部に、その透磁率が他の部分の透磁率と異なる部分が含まれている事が好ましい具体例である。
又、本発明に使用される当該アンテナ構造体2に於いては、当該閉鎖状ループを構成している当該アンテナ構造体2の当該磁路6の一部に、その磁気抵抗が他の部分の磁気抵抗と異なる部分が含まれている事も望ましい具体例である。
一方、本発明に於いて使用される当該アンテナ構造体2に於いては、当該非コイル巻付部21の実効透磁率が当該コイル巻付部22の実効透磁率よりも小さくなる様に構成されている事も望ましい。
更に、本発明に於いては、図8(A)乃至(E)に示す様な構成を有するアンテナ構造体2を使用することも可能であり、且つ当該非コイル巻付部22内にギャップ10が設けられている事も好ましい。
そして、本発明に於いては、使用される当該アンテナ構造体2に於いては、更に、図8(A)或いは(B)に示す様に、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22との少なくとも一方の接合部15にギャップ10が形成されている事が望ましい。
本発明に於いては、当該ギャップは、図8(A)或いは(B)に示す様に、当該コイル巻付部21近傍以外の磁路6の部分に設けられている事が望ましい。
一方、図8(D)に示す様に当該ギャッププ10の少なくとも一部が、当該アンテナ構造体2に於ける外部電波が到達する面に存在している事は好ましくないので、図8(A)〜(C)に示す様に当該ギャップ10は、当該コイル巻付部21の外部電波が到達する面とは反対側の側面に形成されていることが望ましい。
具体的には、図8(B)に示す様に当該コイル巻付部21のアンテナコア部9が、コイル部より外方部に延展している部分の中心軸線28から当該アンテナコアの半径の長さ分だけ離れた位置で、且つ当該中心軸に対して外部電波が到達する面とは反対側の面の一部に当該非コイル巻付部22の端面が接合するような構成でギャップ10が形成されていることが望ましい。
一方、本発明に於いては、当該非コイル巻付部22は、当該コイル巻付部21を構成している磁性材料よりも透磁率の低い磁性材料で形成されている事も望ましく、更には、図8(E)に示す様に、当該非コイル巻付部22又は、当該コイル巻付部21の少なくとも一部の表面に磁気的変質層、非磁性層又は、透磁率の低い層からなる膜層80を形成する事も好ましい。
この場合には、当該ギャップ10は、空気層の介在なしに当該膜層のみで構成される場合がある。
更に、本発明に於いては、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22の断面積が互いに異なる様に構成されていても良く、又、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22とは、それぞれ互いに独立した構成体を形成しており、当該コイル巻付部21に導体11を巻き付けコイル8が形成された後に当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22とを一体化した構成を採用する事も可能である。
上記した様に、本発明に於ける当該アンテナ構造体2が金属材料と接触しているかその近傍に金属材料が存在している場合であっても、そのQ値の低下率が大幅に抑制され、実用的には、当該金属材料の存在有無に関係なく、良好な受信性能を発揮出来るアンテナ構造体2を容易に且つ低コストで得られるのである。
処で、本発明に於いては、当該アンテナ構造体2が受信出来る対象電波の周波数、は2000kHz以下の長波を含む電波であって、好ましくは、数10kHz〜数百kHzの長波である。
一方、本発明に於いて使用される当該金属外装3は、具体的には、ステンレススチール(SUS)、金、銀、プラチナ、チタン(Ti)、ニッケル、銅、クロム、アルミ、真鋳(BS)、あるいはそれらの合金等の導電性を有する金属外装材料が使用される。
尚、本発明に於ける好ましい金属外装材料としては、BS、SUS或いはTiである。
更に、本発明に於いて当該アンテナ構造体2の近傍に配置される当該金属外装3の具体例としては、例えば、裏蓋及び側を含んでいる時計の外装部、文字盤、モーター、ムーブメント、電池、太陽電池(SUS基板太陽電池)、腕バンド、ヒートシンク等を含むものである。
次に、上記した本発明に於けるアンテナ構造体2を実現するための具体的な構成の例を以下に説明する。
即ち、本発明に於いて使用される当該アンテナ構造体2は、例えば図6に示す様な構成を有している事が好ましく、具体的には、コイルである巻き線11が設けられた磁路6を構成する磁芯〈コア部〉9を双方の端部から延長して屈曲させ、その端部13,13’同士を近接対向させて、ループ状の磁路を形成したものである。
そして、本具体例に於いては、当該磁芯9の当該端部同士の対向部14には微小な間隙、つまりギャップ10が設けられている事が望ましい。
当該ギャップ10は、前記で説明した様に、空気が介在するもので有ってもよく、又、適宜の膜層が介在しているもので有ってもよく、更には、適宜のスペーサーが介在しているもので有っても良いので、当該ギャップ10部分は、磁気抵抗が当該磁路における磁気抵抗よりも大きくなり、従って、当該磁路(コア)6の閉ループの一部に磁気抵抗が異なる部分が形成される事になる。
本発明に於いては、当該ギャップの部分は例えば他の部分の磁気抵抗若しくは透磁率と異なる磁気抵抗若しくは透磁率となる様に構成されているもので有っても良く、或いは当該ギャップ内には、当該磁芯を構成する材料とは異なる材料が配置或いは充填されているものであっても良い。
かかる本発明に於いて使用されるアンテナ構造体2に於いては、上記した様なギャップが存在している略ループ状のアンテナ構造であることから、外部から入ってきた磁束は、アンテナの両端から入るが、ギャップ10(磁気抵抗は中)がある方向には磁束は流れず、磁気抵抗の小さい巻き線部11に流れる。(当該ギャップがない場合には、ギャップの方向に流れる。)
既に上記で説明した通り、磁気の影響を受けた巻き線部11は、磁束変化を電圧に変換し、アンテナのL値と同調コンデンサ容量によって共振現象を起こし、共振による磁束を発生する様になるが、この時、アンテナの共振現象によって発生した磁束は、空気中に漏れ出すのではなく磁気抵抗の小さいギャップ部分を流れる事になる。
この事によって、アンテナを金属外装内部に入れた場合に発生する損失を削減する事が可能となる。
換言すれば、当該アンテナ構造体2の磁路6が閉鎖状の磁路を形成しているので、当該アンテナ構造体2が共振している際に当該アンテナ構造体2から出力される共振により発生する磁束7の流れが、図6に示す様に、閉鎖状のループ型磁路6に沿って主に流れるので、当該アンテナ構造体2から当該金属材料で構成された例えば、外装部3に当該磁束が漏れることが回避され、従って、当該金属外装部3に漏れた磁束が渦電流を発生して当該磁束のエネルギーを低下させる事がない。
当該アンテナ構造体2に於ける当該磁路(コア)6が図6に示す様に、コイル巻付部21のアンテナコア部(主磁路)9と非コイル巻付部22のアンテナコア部(副磁路)9’の双方を兼ねてしまう場合には、アンテナを生産する場合に、巻き線11を当該ギャップ10の隙間を通して当該コイル巻付部21を構成するアンテナコア部(主磁路)9に巻きつけるか、当該コイル巻付部21と非コイル巻付部22との間に形成される閉鎖状の空間部を利用して当該コイル巻付部21を構成するアンテナコア部9に巻きつける必要があり、生産性が悪くなる。
従って、コイル巻付部21のアンテナコア部(主磁路)9と非コイル巻付部22のアンテナコア部(副磁路)9’をそれぞれ別体に設け、生産する場合には、当該コイル巻付部21のアンテナコア部9にコイル巻き線を行う段階では当該非コイル巻付部22のアンテナコア部9’を取り付けず、巻き線操作が完了した後に当該非コイル巻付部22のアンテナコア部9’を取り付けるようにする事によって、巻き線の生産効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
即ち、図9に示す様に、本発明に於いて使用されるアンテナ構造体2の他の具体例としては、当該コイル巻付部21のアンテナコア部(主磁路)9と当該非コイル巻付部22のアンテナコア部(副磁路)9’とを別体に構成し、巻き線操作が完了した後に両者を接合する様に構成するものである。
その際、本発明に於ける当該非コイル巻付部22の磁気抵抗が当該コイル巻付部21の磁気抵抗よりも大きくなる様に構成されている事の望ましい具体例の一つである。
一方、本発明に於いては、当該ギャップ10は、当該非コイル巻付部22内に形成されたものであっても良く、或いは、図9に示す様に、当該非コイル巻付部22と当該コイル巻付部21との間、つまり双方の接合部15の少なくとも一方にギャップ10が設けられているもので有っても良い。
更に、本発明に於ける別の具体例に於いては、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22の断面積が互いに異なっている事も好ましい具体例である。
つまり、図9に示す様に、当該コイル巻付部21の断面積は、対応する当該非コイル巻付部22の断面積よりも小さくなる様に構成されている。
これは、図示の通り、当該コイル巻付部21では、その周りに巻き線11を巻きつける必要があり、その為、当該コイル巻付部21の断面積が大きいと当該巻き線を巻きつけた後の断面積も大きくなり、例えば、時計の厚みを厚くしてしまい、薄型の時計を製造できなくなると言う問題を発生させることになる。
図9に示す様に、本発明に於ける当該アンテナ構造体2に於いては、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22とは、それぞれ互いに独立した構成体を形成しており、当該コイル巻付部21にコイル11が巻き付けられた後に当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22とを接合されて一体化されている構造を有するものである。
又、上記した様に、本発明に於ける当該アンテナ構造体2の当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22との少なくとも一方の接合部15にギャップ10が形成されているものであって、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22との間に形成される当該ギャップ10は、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22と端面同士の接合面15に適宜のスペーサー17を挿入する事によって所定の間隙を固定させることが可能となる。
当該スぺーサー17は、ビーズ等の異物を利用するものであってもよく、或いは、当該アンテナ構造体2を支持するボビン16に形成されている突起部17を利用するもので有っても良い。
つまり、本具体例では、コイル巻付部22のアンテナコア部9と非コイル巻付部のアンテナコア部9’との接合面15に形成されるギャップ10の間隙長さを当該ボビン16に予め形成されている突起部17或いは別途配置されているスぺーサー17を介在させて位置出しを行って当該間隙のギャップ精度を向上させるものである。
その為、当該コイル巻付部アンテナコア部9と当該非コイル巻付部22のアンテナコア部9’の間隙部内にボビンや、スペーサー17或いは適宜の膜層80等を介在させる事によって、当該ギャップ10間の距離精度の誤差は、当該ボビンの突起部或いはスペーサーなどの異物の寸法精度誤差となり、アンテナの利得を安定させることが可能となる。
又、本発明に於ける当該アンテナ構造体2に関しては、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22との間に形成される端面19同士の接合面15は、テーパー状に形成されている事が望ましい。
即ち、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22との間に形成される当該ギャップ10を構成する端面19同士の接合面15が、巻き線部11に対して斜めの状態に形成する事によって、当該ギャップ10の面積を増加させる事になる。
かかる構成を採用する事によって、当該ギャップ10の間隙距離の調整は、当該コイル巻付部のアンテナコア部9に対して、当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’を押し込むか引き出す方向に移動させる事により容易に調整が可能である。
更に、係る構成にあっては、上記した通り、アンテナの利得のばらつきは、当該コイル巻付部21のアンテナコア部9と当該非コイル巻付部22のアンテナコア部9’との間の磁気抵抗値の増減による影響であり、ギャップ部分の接触面が大きくなれば、ギャップ間距離に対するアンテナの利得の変化率が緩和されることから、ギャップ部分の接触面積は大きくしたほうが有利である。
つまり、本具体例の様に構成する事によって、ギャップ部分の接触面積を巻き線部11と平行にするよりも√2倍大きくすることができるので、アンテナの利得のばらつきを低減させることが可能となる。
尚、図9に於いて、18は巻き線11を当該コイル巻付部21のアンテナコア部9に巻きつける際の巻き枠を示し、20は、当該コイル巻付部21のアンテナコアが導電性である場合の、当該アンテナコア部9と巻き線11との間に介挿される絶縁材料を示している。
一方、本発明に於ける当該ギャップ10に関しては、当該コイル巻付部21と当該非コイル巻付部22の端面若しくは、当該非コイル巻付部22の端面同士以外の部分に於ける各磁路の表面同士が対向して形成されているものであっても良い。
即ち、図10(A)に示す様に、当該非コイル巻付部21のアンテナコア部9’の一部に当該ギャップ10が形成される場合に於いては、当該非コイル巻付部22のアンテナコア部9’の相互に対向する端部13同士を対向させずに互いに少なくとも端部13の一部同士を重複させ、当該非コイル巻付部22の端面13同士以外の部分に於ける各磁路の表面26、26’同士が対向して形成されているものであっても良く、又は、図10(B)に示す様に、当該コイル巻付部21のアンテナコ部9の端面19と当該非コイル巻付部22のアンテナコア部9’の端面19’の間に当該ギャップ10が形成される場合に於いては、端部19同士を対向させずに互いに少なくともその一部同士を重複させ、当該非コイル巻付部22の端面19’以外の部分27’と当該コイル巻付部21の端面19以外の部分27とが対向して形成されているものであっても良い。
又、図10(C)に示す様に、空芯コイル若しくはボビンに形成したコイル100とL字状に形成した2個のアンテナコア200、201を対向させて当該空芯コイル若しくはボビンに形成したコイル100の両端部から別々にその中心部に挿入して、双方の一部が対向して配置される様に形成した構造のものであっても良い。
一方、本発明に於ける当該アンテナ構造体2の構造の内、当該コイル巻付部のアンテナコア部9を構成する部分の両側部23は、図9に示す様に、テーパー状或いは適宜の曲線或いは折れ線により形成された曲面を形成するものであっても良い。
この場合には、当該両側部23を出来るだけ時計の外周形状に適合させ、当該アンテナ構造体2のコイル巻付部21を可能な範囲で当該時計の外周部に配置できる様に構成することが出来る。
更に、本発明に於いては、当該アンテナ構造体に於ける当該非コイル巻付部のアンテナコア9’の断面積若しくは厚みが当該コイル巻付部のアンテナコア9の断面積若しくは厚みよりも大きいか厚くなる様に構成することも好ましい具体例である。
既に上記した通り、当該コイル巻付部のアンテナコア部9と当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’間の磁気抵抗を低減させるためには、コイル巻付部のアンテナコア部9と非コイル巻付部のアンテナコア部9’の厚み或いは断面積が厚いか大きい方が望ましいが、当該コイル巻付部のアンテナコア部9には、巻き線部11が設けられるので、当該コイル巻付部のアンテナコア部9の断面積或いはその厚さが大きいか厚いと、その分当該アンテナ構造体2の厚みを増大してしまう。 然しながら、当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’には、巻き線部11はなく、従って、当該コイル巻付部のアンテナコア部9よりは巻き線部の厚さ分厚く或いはその断面積を大きくすることが可能となる。
かかる構成とする事によって、当該コイル巻付部のアンテナコア部9と当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’との間の磁気抵抗値を低減させ共振により発生する磁束をより多く当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’に導くことが出来、アンテナの利得のばらつきを抑える事が可能となる。
そして、好ましくは、当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’は、電波の進行方向に対して当該コイル巻付部のアンテナコア部9の内側に配置されており、当該コイル巻付部のアンテナコア部9が当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’を被覆するような形態で、電波が直接当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’に到達しない様に構成したものである。
従って、当該アンテナ構造体2を構成する当該コイル巻付部のアンテナコア部9を腕時計等に搭載する場合には、平均的に当該時計が電波を直接受ける可能性の高い部位に配置し、当該電波が当たる当該コイル巻付部アンテナコア部9の面とは反対の面側に当該非コイル巻付部アンテナコア部9’を配置するのが望ましい。
即ち、当該コイル巻付部のアンテナコア部9に入った磁束は、当該ギャップ10がある非コイル巻付部のアンテナコア部9’の方向には流れず、磁気抵抗の小さい巻き線部11にながれるが、逆に、非コイル巻付部のアンテナコア部9’に入った磁束も当該ギャップ10がある非コイル巻付部アンテナコア部9’には流れない。
従って、アンテナの構造としては、当該コイル巻付部のアンテナコア部9に磁束が入るような構成にしたほうが望ましい事になる。
かかる構成によって、外部からアンテナ内に入った磁束の殆どは、当該コイル巻付部のアンテナコア部9に入るので利得が向上する。
上記した本発明にかかるアンテナ構造体2に於けるアンテナ構造体2の具体的な構成は、図6に示してある通りであり、当該コイル巻付部のアンテナコア部9が全体的に当該非コイル巻付部のアンテナコア部9’を被覆する様に設計されているものである。
本発明に於ける別の態様としては、図11に示す様に、基準信号を出力する基準信号発生手段31と、該基準信号に基づき計時情報を出力する計時手段32と、該計時情報をもとに時刻を表示する表示手段33と、基準時刻情報を持つ標準電波を受信する受信手段34と、該受信手段34からの受信信号に基づき前記計時手段の出力時刻情報を修正する出力時刻修正手段35とから構成される電波修正時計1に於いて、当該受信手段34は、上記した構成を有するいずれかのアンテナ構造体2で構成されている電波修正時計1である。
本発明にかかる当該電波修正時計1は、タイムコードをのせた標準電波を受信して、使用中の腕時計の時刻を当該標準時の時刻に自動的に合わせる電波修正時計或いは遠隔制御型腕時計等が含まれるものである。
本発明にかかる当該電波修正時計1の詳細な具体例を図12に示すならば、当該電波修正時計1は、図10に示す様な構成を有するアンテナ構造体2を時計の外縁部51に近接した部位で、然も、当該アンテナ構造体2のコイル巻付部アンテナコア部9を当該外縁部51の近傍に位置せしめ、当該非コイル巻付部アンテナコア部9’を当該コイル巻付部アンテナコア部9に対して、当該時計の外縁部51とは反対の側に配置させた構成が示されている。
尚、図12中、52は受信IC、53はフィルター用水晶振動子、54は、32KHzの水晶振動子、55は歯車の列である輪列、56は竜頭、57は、裏周り機構、58は、第1の変換機(モーター)、59は、電池及び40は、計時手段あるいは時刻修正手段等を含む演算処理部を構成するマイコンである。
又、図13は、図12の構成を一部変更した本発明に於ける当該電波修正時計1の別の具体例を示すものであって、図12との相違点は、図12に於ける第1の変換機(モーター)58に加えて、第2の変換機(モーター)41を別個に設けたものである。
次に、本発明に於ける当該電波修正時計1に於いては、金属性の外装部42を有するものであって、当該アンテナ構造体2も当該外装部42内に配置され場合によっては、当該アンテナ構造体2の少なくとも一部が当該外装部42に接触しているものであっても良い。
勿論、図12及び図13の当該電波修正時計1の配置構成例は、一例を示すものであって、上記した様に、本発明にかかる当該アンテナ構造体2のアンテナ構造体2は、金属材料による導電性物体の存在の影響が少ないので、その他の部品の配置構成との関係はフレキシブルであるので、多くの変形態様が考えられる。
又、本発明に於ける別の具体例に於いては、図14示す様に、当該アンテナ構造体2が、当該電波修正時計1の文字板46に対して、風防43が設けられている面とは反対側の面に設けられている事も望ましい態様である。
尚、図14中、44は金属材料からなる導電性の外装部であり、45は表示手段を構成する時分針である。
又、本発明に於ける別の態様としては、少なくとも側部及び裏蓋部のいずれかが金属で構成されている電波修正時計であって、当該電波修正時計の内部に内蔵されているアンテナは、上記した少なくとも一つのアンテナ特性値を有するアンテナ構造体で構成されている電波修正時計である。
更に、本発明に於ける他の態様としては、基準信号を出力する基準信号発生手段と、該基準信号に基づき計時情報を出力する計時手段と、該計時情報をもとに時刻を表示する表示手段と、基準時刻情報を持つ標準電波を受信する受信手段と、該受信手段からの受信信号に基づき前記計時手段の出力時刻情報を修正する電波修正時計に於いて、当該電波修正時計は、少なくとも側部及び裏蓋部のいずれかが金属で構成されており、且つ、上記した少なくとも一つのアンテナ特性値を有するアンテナ構造体を含んでいる電波修正時計である。
又、本発明に於ける更に他の態様としては、当該アンテナ構造体の当該コイル巻付部が当該電波修正時計の外周縁部に配置されており、当該非コイル巻付部は当該電波修正時計の外周縁部に対して当該コイル巻付部の内側に配置されている当該受信手段は、更に、上記した少なくとも一つのアンテナ特性値を有するアンテナ構造体を含んでいる電波修正時計である。
一方、本発明に於ける更に別の態様としては、当該アンテナ構造体は、上記した構成及びアンテナ特性の少なくとも一つを有しており、且つ当該電波修正時計の文字板に対して、風防が設けられている面とは反対側の面に設けられている電波修正時計である。
又、本発明に於ける更に他の態様としては、当該電波修正時計に設けられているアンテナ構造体であって、上記した構成及びアンテナ特性の少なくとも一つを有しており、且つ当該アンテナ構造体の当該非コイル巻付部が当該電波修正時計の当該側部と対向する部分の少なくとも一部は、当該コイル巻付部によって被覆されている電波修正時計である。
尚、図15は、本発明に於いて使用されるアンテナ構造体における共振周波数を調整する方法の一例を示す図であり、図15(A)は、従来に於ける共振周波数の調整方法を示すものであって、巻き線150の両端部に一つが80pFの容量をもつコンデンサ151〜153を複数個並列に取り付けて測定するものであって、当該アンテナ構造体2の共振周波数を変更する場合には、当該コンデンサの容量を適宜の値のものに変更するか、そのコンデンサの接続個数を変更することが必要であり、測定操作が複雑となる。
これに対し、本発明に於いては、図15(B)に示す様に、巻き線150の両端部に接続される複数個のコンデンサ151〜15n同数のスイッチ回路SW1〜SWnとをそれぞれ直列に接続した複数の調整手段を並列に接続する様に構成された同調IC回路160を取り付け、当該複数個のコンデンサ151〜15nの容量を例えば、1.25pFから順次にその容量を倍増させたコンデンサを配列しておき、当該スイッチ回路SW1〜SWnの制御端子を適宜の制御カウンタ手段161に接続しておき、当該制御カウンタ手段161の入力端子に入力される信号に応答して所望の1つ若しくは複数個のコンデンサを適宜選択する様に当該スイッチ回路SW1〜SWnの制御端子を制御駆動させることによって、所望のL値を容易に設定する事が可能となる。