JP2004168599A - 合成石英ガラス部材及びそれを用いた紫外線露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】短波長の紫外線やエキシマレーザを照射した際、照射初期の段階で急激に透過率が低下しにくく、優れた透過率及び紫外線耐久性を備えた合成石英ガラス部材を提供する。
【解決手段】レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)を0.02以下にした。
【選択図】 図1
【解決手段】レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)を0.02以下にした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、400nm以下、特に300nm以下の波長帯域の紫外線を照射するレンズやミラー等の光学系に好適に使用される合成石英ガラス部材及びこのような合成石英ガラス部材を用いた紫外線露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からシリコン等のウエハ上に集積回路の微細パターンを露光、転写する紫外線露光装置技術においては、ステッパと呼ばれる露光装置が用いられている。このステッパの光学系は、光源の光を集積回路パターンが描かれたレチクル上に均一に照射する照明光学系と、レチクルの集積回路パターンを例えば五分の一に縮小してウエハ上に投影して転写する投影光学系とで構成されている。このような紫外線を用いて集積回路パターンをウエハ上に転写する装置を総称して紫外線露光装置と呼ぶ。
【0003】
紫外線露光装置の光源は、近年のLSIの高集積化に伴ってg線(436nm)からi線(365nm)、更にはKrF(248.3nm)やArF(193.4nm)エキシマレーザへと短波長化が進められている。VLSIの中でDRAMを例に挙げれば、LSIからVLSIへと展開されて、容量が増大してゆくにつれ、より微細な最小加工線幅が露光可能な紫外線露光装置が要求されるようになってきた。この場合には光源としてエキシマレーザなどの250nm以下の紫外線を用いることになる。
【0004】
一般にi線より長波長の光源を用いたステッパの照明光学系或いは投影光学系のレンズ部材として用いられる光学ガラスは、i線よりも短い波長領域では光透過率が急激に低下し、特に250nm以下の波長領域ではほとんどの光学ガラスでは透過しなくなってしまう。そのため、エキシマレーザを光源としたステッパの光学系に使用可能な材料は石英ガラスや一部の結晶材料に限られる。
【0005】
石英ガラスを紫外線露光装置の光学系で用いる場合、集積回路パターンを大きな面積で高解像度で露光するために、非常に高品質が要求される。例えば、部材の屈折率分布が、直径300mm程度の非常に大きな口径内で、10−6オーダー以下であることが要求される。また、複屈折量を減少させること、即ち、光学部材の内部歪みを減少させることが、屈折率分布の均質性を向上させることと同様に、光学系の解像度に対して重要である。
【0006】
さらに、屈折率の均質性、歪みが高品質であると同時に、透過率が非常に優れている必要がある。例えば、紫外線露光装置の照明光学系、投影光学系には、収差補正のために非常に多くのレンズが必要になり、そのため光学系全体の総光路長が1000mm以上にも及ぶ場合がある。光学系のスループットを保つためには、使用中の光学部材の内部透過率は99.7%/cm以上であることが望ましい。さらに、そのような高透過率は使用面内全域にわたって保たれている必要がある。このため、単に石英ガラスといっても、エキシマレーザステッパのような精密な光学系に使用できるものは限られる。
【0007】
石英ガラスの中でも、火炎加水分解法(直接法)と呼ばれる製造方法により得られた合成石英ガラスは、金属不純物が少なく高純度で、そのため、波長250nm以下の紫外線領域で高透過性を有し、更に大口径で均質な石英ガラス光学部材を得ることが可能である。このため、エキシマレーザステッパなどの紫外線露光装置の光学系には合成石英ガラスが使用されている。
【0008】
ところで、合成石英ガラスに高出力の紫外線やエキシマレーザ光が作用すると、E’センタ(≡Si・の構造を持つ。但し、≡は3重結合ではなく、3つの酸素原子と結合していることを表し、・は不対電子を表す。)と呼ばれる構造欠陥に起因する215nmの吸収帯や、NBOHC(Non−Bridging Oxygen Hole Center、≡Si−O・の構造を持つ。)と呼ばれる構造欠陥に起因する260nm吸収帯が現れ、紫外領域の透過率が著しく低下することが知られている。
【0009】
そのため、従来より、紫外線照射により生じるE’センタやNBOHC等の常磁性欠陥を合成石英ガラスに水素分子を含有させて、その修復作用により誘起吸収を抑えることが行われている。
【0010】
また、フッ素を用いて常磁性欠陥の生成を抑えた状態で、レーザラマンスペクトルにおける800cm−1の散乱ピーク強度I800に対する2250cm−1の散乱ピーク強度I2250の比(I2250/I800)を所定値以下にすることにより、E’センタの生成を抑えるようにした合成石英ガラスも提案されている(例えば、特許文献1参照)
ここでは、800cm−1の散乱ピークが≡Si−O−Si≡の結合(ケイ素と酸素との間の基本振動)を示すピークであり、2250cm−1の散乱ピークが≡Si−Hの結合を示すピークであるため、(I2250/I800)の値が≡Si−H欠陥のの濃度の指標として用いられている。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−19450号公報。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水素分子によるE’センタの修復作用を利用して、レーザ耐久性を向上させていても、合成石英ガラス部材にE’センタによる吸収帯である215nmの波長の低エネルギーの紫外線を照射した際、照射初期に透過率の低下が激しく生じるものと、あまり生じないものとがある。
【0013】
この215nmという波長はArF波長に近く、この吸収帯が生じることによりステッパの使用波長での透過率が大きく低下する。特に、投影レンズのような低エネルギー密度で長時間照射される部材では、必要とされる性能が全く発揮できなくなるなどの問題点があった。
【0014】
そこで、この発明は、短波長の紫外線やエキシマレーザを照射した際、照射初期の段階で急激に透過率が低下しにくくて優れた紫外線耐久性を有し、優れた透過率を維持し易い合成石英ガラス部材及びそれを用いた紫外線露光装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低エネルギー密度での照射初期の段階で生じる吸収の原因を明確にするために、合成石英ガラス部材の諸物性と生じる吸収の大きさとの関連を調査した。
【0016】
その結果、紫外線耐久性を向上するために水素分子をドープする際、必要以上に強い還元雰囲気下で合成又は加熱処理されると、合成石英ガラス部材中に還元性の構造欠陥である≡Si−Hが大量に生じることが分かった。この結合は低エネルギー密度の紫外線照射により容易に切断されてE’センタとなりやすい。このE’センタは合成石英ガラス中に存在する水素分子により修復されるが、水素分子によりE’センタが修復される量に比べて紫外線照射によりE’センタが生成される量が大幅に多い場合には、E’センタが紫外線の照射初期から増加するため、透過率が照射初期に急激に低下し易いことを見出し、この発明に至った。
【0017】
即ち、上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材である。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、2mJ/cm2・Pのエネルギー密度のArFエキシマレーザを1×105Pulse照射したときに発生する誘起吸収係数の最大値が0.005cm−1以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材である。
【0019】
さらに、請求項3に記載の合成石英ガラス部材は、請求項1又は2に記載の構成に加え、含有される水素分子濃度が1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材である。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1乃至3の何れか1つの合成石英ガラス部材を有する光学系を備えたことを特徴とする紫外線露光装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0022】
この発明の合成石英ガラス部材は、400nm以下の波長帯域、好ましくは300nm以下の波長帯域、特に250nmの波長帯域の紫外線、例えばKrFエキシマレーザ(248.3nm)やArFエキシマレーザ(193.4nm)などを照射する光学系に用いられ、例えば紫外線露光装置の照明光学系や投影光学系のレンズ、ミラー、レチクルなどに好適に使用されるものである。
【0023】
このような合成石英ガラス部材は、照射される紫外線を十分に透過可能な透過率を有する必要があり、例えば使用開始前の波長193.4nmの紫外線の内部透過率が99.5%/cm以上のものが好ましく、特に99.7%/cm以上のものが好適である。
【0024】
また、この発明の合成石英ガラスは、紫外線を照射することにより生じる透過率の低下、特に、紫外線の照射初期の段階の透過率の低下を抑制可能な優れた紫外線耐久性を有する必要がある。
【0025】
合成石英ガラス中に紫外線が照射されると、≡Si−O−Si≡の基本構造や各種の構造欠陥が徐々に切断されて常磁性欠陥が生成され、その誘起吸収により合成石英ガラス部材の透過性が低下する。特に、≡Si−H結合からはE’センタが生成されるが、その生成速度は、≡Si−O−Si≡の基本構造などから常磁性欠陥が生成される速度に比べて大幅に速い。そのため、合成石英ガラス中に≡Si−Hの存在量が多い場合、紫外線照射初期の段階で急激に透過率が低下し易いものと考えられる。
【0026】
そこで、この発明では、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下となるように水素分子を合成石英ガラス中に含有させることにより、紫外線の照射初期の段階から長期にわたり透過率の低下を抑制している。
【0027】
ここで、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、4135cm−1のピーク強度は、合成石英ガラス部材中の水素分子濃度と相関があり、≡Si−O−Si≡の基本構造によるラマン散乱光強度である800cm− 1のピーク強度との比を用いることにより、公知の方法(V. S. Khotimchenko等、「DETERMINING THE CONTENT OF HYDROGEN DISSOLVED IN QUARTZ GLASS USING THE METHODS OF RAMAN SCATTERING AND MASS SPECTROMETRY」、Plenum Publishing Corporation、1987、p.632−635)で水素分子濃度を算出できる値である。
【0028】
一方、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1のピーク強度は合成石英ガラス部材中の≡Si−H結合に起因する値である。合成石英ガラス部材中の≡Si−H結合の量は、絶対量を算出することが困難であるため、この発明では2260cm−1のピーク強度を≡Si−H結合の量を示す指標として用いる。
【0029】
そして、このピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下となるように水素分子を合成石英ガラス中に含有させれば、水素分子濃度に対して≡Si−H結合の量が少なく、紫外線の照射初期の段階で≡Si−H結合からE’センタが生成される速度に対して水素分子の十分な修復作用を得ることが可能となる。更に、長期的な紫外線の照射においても誘起吸収の発生を抑えることができる。
【0030】
ここでは、ピーク強度比(I2260/I4135)が、0.02より高いと、E’センタの増加速度が速くなり紫外線照射初期の段階から透過率の低下が大きくなりやすいため好ましくない。
【0031】
一方、このピーク強度比(I2260/I4135)は小さい程好ましいが、一般に、水素分子を合成石英ガラスに含有させると微量の≡Si−H結合が形成されるため、水素分子を含有させる限りピーク強度比(I2260/I4135)は0より大きい値となっている。
【0032】
このようなピーク強度比(I2260/I4135)に調整したこの発明の合成石英ガラス部材では、更に、2mJ/cm2・Pのエネルギー密度のArFエキシマレーザを1×105Pulse照射したときに発生する誘起吸収係数の最大値を0.005cm−1以下とするのが好ましく、これにより、照射初期の段階で高い透過率を維持することができる。
【0033】
更に、この発明の合成石英ガラス部材は、含有される水素分子の濃度を1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下とするのが、特に好ましい。
【0034】
合成石英ガラス中に含有させた水素分子濃度が1×1016個/cm3より低いと、波長260nm付近の吸収のもとになるNBOCH(Non−Bridging Oxygen Hole Center)が大量に生成し、紫外線の照射期間全体にわたり透過率の低下が大きくなってしまうからである。
【0035】
また、水素分子濃度が5×1018個/cm3より大きいと、水素分子による常磁性欠陥の修復作用が強すぎ、紫外線の照射及び停止を繰り返す際、紫外線を停止した直後に透過率が急激に上昇しやすい。しかも、このように急激に上昇した透過率は、再度、紫外線を照射すると元の透過率まで戻りやすい。そのため、紫外線の照射及び停止による透過率の変動が激しくなる。ところが、この透過率の変化は透過面において不均一に生じるため、被照射体に照射される紫外線が不均一になり、露光等にむらが生じやすくなるからである。
【0036】
なお、以上のような合成石英ガラス部材は、例えば火炎加水分解法を利用して製造することができ、合成炉内にバーナから酸素含有ガス及び水素含有ガスと、四塩化ケイ素等のケイ素化合物を含有する原料ガスとを噴出させることにより火炎を形成してSiO2粉からなるスートを形成し、このスートを合成炉内のターゲットに堆積させ、その頂部を火炎により加熱して溶融、ガラス化してインゴットを形成し、このインゴットから所望の形状の光学部材を切り出し、熱処理、研磨、洗浄等の後処理を施すことにより製造することができる。ここでは、酸素含有ガス、水素含有ガス、原料ガス等の材料や装置などは、一般の火炎加水分解法により使用されるものであれば、好適に使用可能である。
【0037】
この製造の際には、合成石英ガラス部材のピーク強度比(I2260/I4135)を0.02以下とする必要があり、例えば、合成炉内に噴出させる酸素含有ガス及び水素含有ガスの比率を調整して合成したり、インゴット形成後に水素処理を施すことにより行うことができる。
【0038】
過剰な還元性雰囲気下で合成石英ガラスを合成すると、≡Si−H結合からなる構造欠陥の濃度が高くなる。そのため、合成炉に噴出させる酸素含有ガス中の酸素流量と水素含有ガス中の水素流量との比率を例えば3:7〜1:2のように、理論混合比より僅かに水素過剰の雰囲気とし、穏やかな還元性雰囲気下で合成することにより、合成石英ガラス中に≡Si−H結合を抑えて水素分子を含有させることが可能である。
【0039】
また、インゴット形成後に水素分子濃度と≡Si−H結合との比を変化させるには、500℃以下で水素処理、又は、500℃以上の脱水素処理及び500℃以下の水素処理を行うことにより可能である。
【0040】
そして、このような各工程における条件を適宜調整することにより、ピーク強度比(I2260/I4135)の合成石英ガラス部材を製造することができる。
【0041】
以上のようにして得られる合成石英ガラス部材は、多数枚を積層配列することにより、例えばウエハー上に微細回路を露光、転写する紫外線露光装置の照明光学系や投影光学系に用いることができ、特に、低エネルギ密度で長時間照射される投影光学系にも好適に用いることができる。
【0042】
そして、このような紫外線露光装置によれば、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザを照射する際、優れた透過率を有するとともに紫外線耐久性に優れ、照射初期に透過率が急激に低下することがないため、露光、転写が容易である。
【0043】
【実施例】
[実施例1〜7及び比較例1、2]
酸水素火炎加水分解法による合成石英ガラス製造装置を用い、石英ガラス製の合成用バーナから酸素ガス及び水素ガスをそれぞれ2:3の流量で流すとともに、該合成用バーナの中心部から原料である四塩化ケイ素とキャリヤガスである酸素ガスを所定流量で流して石英ガラス微粒子からなるスートを形成し、一定周期で回転及び揺動させた不透明ガラス板からなるターゲットに堆積させてインゴットを形成した。その際、インゴット上部の合成面の位置を一定に保つようにターゲットを降下させ、合成面をバーナで加熱して溶融ガラス化した。
【0044】
このとき、合成用バーナから流す水素ガスと酸素ガスとの割合を変化させ、更に、原料流量や合成面温度を調整する他は、全て同一にして9種類のインゴットを製造した。
【0045】
得られたインゴットから30mm角で長さ100mmの形状を持つサンプルを切り出し、両面に精密研磨を施して、実施例1〜7及び比較例1、2の測定用のサンプルを得た。
【0046】
各サンプルについて、ラマン分光光度計を用いて基本構造に関する800cm−1、2260cm−1及び4135cm−1の散乱ピークの強度を測定し、水素分子濃度及びピーク強度比(I2260/I4135)を求めた。
【0047】
次に、各測定用サンプルにArFエキシマレーザをエネルギー密度2mJ/cm2・Pで、1×105パルス照射し、193.4nmの波長の透過率を測定し、この照射期間中の透過率の変化から、誘起吸収係数の最大値を求めた。なお、この実施例1〜7及び比較例1、2の照射期間においては、誘起吸収係数の最大値は、後述の図1と同様に、紫外線照射初期の段階で生じていた。
【0048】
以上の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1〜7では、何れもピーク強度比(I2260/I4135)が0.005以上0.020以下であるとともに、水素分子濃度は5.00×1016〜5.00×1018であった。そして、誘起吸収係数が0.0002以上0.0050以下であり、照射初期の透過率の低下は穏やかで、紫外線の照射期間中に優れた透過率を維持することができた。
【0050】
これに対し、比較例1では、水素分子濃度が3×1018(個/cm3)で、実施例6、7と同等であるが、ピーク強度比(I2260/I4135)が0.041と大きく、また、比較例2では、水素分子濃度が6×1017(個/cm3)と実施例3、4と同等であるが、ピーク強度比(I2260/I4135)の値が0.0051と大きかった。そのため、何れも誘起吸収係数は、0.0065、0.0060と実施例1〜7の0.0002〜0.0050に比べて大きく、照射初期の透過率の低下は激しかった。なお、比較例2ではI2260とI800の比の値(I2260/I800)を計算したところ、2.50×10−5となっていた。
【0051】
[実施例8及び比較例3、4]
実施例1〜7及び比較例1、2と同様にして、ピーク強度比(I2260/I4135)が0.02(実施例8)、0.042(比較例3)、及び0.025(比較例4)ような3種類の測定用サンプルを作成した。
【0052】
このサンプルを用い、ArFエキシマレーザを、エネルギー密度2mJ/cm2・P且つ繰り返し周波数200Hzで、1×105パルス照射し、照射期間中、経時的に増加する照射パルス数に対する誘起吸収係数の変動を測定した。この誘起吸収係数は大きい程、透過率が小さくなっている。
【0053】
得られた結果を、図1のグラフに示す。
【0054】
図1では、曲線Aはピーク強度比(I2260/I4135)が適切な実施例8の結果を示し、曲線Bは水素分子濃度が実施例8と同等であるものの、ピーク強度比(I2260/I4135)が大きい比較例3の結果を示し、曲線Cは水素分子濃度及びピーク強度比(I2260/I4135)が何れも実施例8より大きい比較例4の結果を示している。また、図中、a、b、cは誘起吸収係数の最大値を示している。
【0055】
図1から明らかな通り、実施例8では、紫外線の照射期間全体にわたり誘起吸収係数が小さく、その変動も小さいため、透過面全体で均一に優れた透過率が維持できた。
【0056】
これに対し、比較例3では、誘起吸収係数の最大値bが大きく、照射初期の段階の透過率の低下が激しくなっている。また、比較例4では照射初期の段階から全体に誘起吸収係数が大きく、透過率の低下が激しい。しかも、水素分子濃度が高いため、紫外線の照射及び停止の繰り返しによる誘起吸収係数の変動が大きく、透過面全体の透過率も不均一で、露光にムラが生じやすい。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述の通り、請求項1及び2に記載の合成石英ガラス部材によれば、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下であるので、紫外線、特に250nm以下の波長領域の紫外線を照射した際、照射初期に透過率が急激に低下することを防止できて、優れた紫外線耐久性を有し、優れた透過率を維持し易くて、所定の紫外線を被照射物に照射し易い合成石英ガラス部材が得られる。
【0058】
また、請求項3に記載の合成石英ガラス部材によれば、含有される水素分子濃度が1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下であるので、水素分子により得られる常磁性欠陥の修復作用が適度になるため、より透過率の激しい変動を抑制し易い。
【0059】
さらに、請求項4に記載の紫外線露光装置によれば、紫外線照射初期の急激な透過率の低下を防止することができる合成石英ガラス部材を光学系に使用したので、所定の紫外線を被露光部材に照射し易い紫外線露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ArFエキシマレーザを合成石英ガラス部材に照射したときの経時的な誘起吸収量の変化を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
この発明は、400nm以下、特に300nm以下の波長帯域の紫外線を照射するレンズやミラー等の光学系に好適に使用される合成石英ガラス部材及びこのような合成石英ガラス部材を用いた紫外線露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からシリコン等のウエハ上に集積回路の微細パターンを露光、転写する紫外線露光装置技術においては、ステッパと呼ばれる露光装置が用いられている。このステッパの光学系は、光源の光を集積回路パターンが描かれたレチクル上に均一に照射する照明光学系と、レチクルの集積回路パターンを例えば五分の一に縮小してウエハ上に投影して転写する投影光学系とで構成されている。このような紫外線を用いて集積回路パターンをウエハ上に転写する装置を総称して紫外線露光装置と呼ぶ。
【0003】
紫外線露光装置の光源は、近年のLSIの高集積化に伴ってg線(436nm)からi線(365nm)、更にはKrF(248.3nm)やArF(193.4nm)エキシマレーザへと短波長化が進められている。VLSIの中でDRAMを例に挙げれば、LSIからVLSIへと展開されて、容量が増大してゆくにつれ、より微細な最小加工線幅が露光可能な紫外線露光装置が要求されるようになってきた。この場合には光源としてエキシマレーザなどの250nm以下の紫外線を用いることになる。
【0004】
一般にi線より長波長の光源を用いたステッパの照明光学系或いは投影光学系のレンズ部材として用いられる光学ガラスは、i線よりも短い波長領域では光透過率が急激に低下し、特に250nm以下の波長領域ではほとんどの光学ガラスでは透過しなくなってしまう。そのため、エキシマレーザを光源としたステッパの光学系に使用可能な材料は石英ガラスや一部の結晶材料に限られる。
【0005】
石英ガラスを紫外線露光装置の光学系で用いる場合、集積回路パターンを大きな面積で高解像度で露光するために、非常に高品質が要求される。例えば、部材の屈折率分布が、直径300mm程度の非常に大きな口径内で、10−6オーダー以下であることが要求される。また、複屈折量を減少させること、即ち、光学部材の内部歪みを減少させることが、屈折率分布の均質性を向上させることと同様に、光学系の解像度に対して重要である。
【0006】
さらに、屈折率の均質性、歪みが高品質であると同時に、透過率が非常に優れている必要がある。例えば、紫外線露光装置の照明光学系、投影光学系には、収差補正のために非常に多くのレンズが必要になり、そのため光学系全体の総光路長が1000mm以上にも及ぶ場合がある。光学系のスループットを保つためには、使用中の光学部材の内部透過率は99.7%/cm以上であることが望ましい。さらに、そのような高透過率は使用面内全域にわたって保たれている必要がある。このため、単に石英ガラスといっても、エキシマレーザステッパのような精密な光学系に使用できるものは限られる。
【0007】
石英ガラスの中でも、火炎加水分解法(直接法)と呼ばれる製造方法により得られた合成石英ガラスは、金属不純物が少なく高純度で、そのため、波長250nm以下の紫外線領域で高透過性を有し、更に大口径で均質な石英ガラス光学部材を得ることが可能である。このため、エキシマレーザステッパなどの紫外線露光装置の光学系には合成石英ガラスが使用されている。
【0008】
ところで、合成石英ガラスに高出力の紫外線やエキシマレーザ光が作用すると、E’センタ(≡Si・の構造を持つ。但し、≡は3重結合ではなく、3つの酸素原子と結合していることを表し、・は不対電子を表す。)と呼ばれる構造欠陥に起因する215nmの吸収帯や、NBOHC(Non−Bridging Oxygen Hole Center、≡Si−O・の構造を持つ。)と呼ばれる構造欠陥に起因する260nm吸収帯が現れ、紫外領域の透過率が著しく低下することが知られている。
【0009】
そのため、従来より、紫外線照射により生じるE’センタやNBOHC等の常磁性欠陥を合成石英ガラスに水素分子を含有させて、その修復作用により誘起吸収を抑えることが行われている。
【0010】
また、フッ素を用いて常磁性欠陥の生成を抑えた状態で、レーザラマンスペクトルにおける800cm−1の散乱ピーク強度I800に対する2250cm−1の散乱ピーク強度I2250の比(I2250/I800)を所定値以下にすることにより、E’センタの生成を抑えるようにした合成石英ガラスも提案されている(例えば、特許文献1参照)
ここでは、800cm−1の散乱ピークが≡Si−O−Si≡の結合(ケイ素と酸素との間の基本振動)を示すピークであり、2250cm−1の散乱ピークが≡Si−Hの結合を示すピークであるため、(I2250/I800)の値が≡Si−H欠陥のの濃度の指標として用いられている。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−19450号公報。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水素分子によるE’センタの修復作用を利用して、レーザ耐久性を向上させていても、合成石英ガラス部材にE’センタによる吸収帯である215nmの波長の低エネルギーの紫外線を照射した際、照射初期に透過率の低下が激しく生じるものと、あまり生じないものとがある。
【0013】
この215nmという波長はArF波長に近く、この吸収帯が生じることによりステッパの使用波長での透過率が大きく低下する。特に、投影レンズのような低エネルギー密度で長時間照射される部材では、必要とされる性能が全く発揮できなくなるなどの問題点があった。
【0014】
そこで、この発明は、短波長の紫外線やエキシマレーザを照射した際、照射初期の段階で急激に透過率が低下しにくくて優れた紫外線耐久性を有し、優れた透過率を維持し易い合成石英ガラス部材及びそれを用いた紫外線露光装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低エネルギー密度での照射初期の段階で生じる吸収の原因を明確にするために、合成石英ガラス部材の諸物性と生じる吸収の大きさとの関連を調査した。
【0016】
その結果、紫外線耐久性を向上するために水素分子をドープする際、必要以上に強い還元雰囲気下で合成又は加熱処理されると、合成石英ガラス部材中に還元性の構造欠陥である≡Si−Hが大量に生じることが分かった。この結合は低エネルギー密度の紫外線照射により容易に切断されてE’センタとなりやすい。このE’センタは合成石英ガラス中に存在する水素分子により修復されるが、水素分子によりE’センタが修復される量に比べて紫外線照射によりE’センタが生成される量が大幅に多い場合には、E’センタが紫外線の照射初期から増加するため、透過率が照射初期に急激に低下し易いことを見出し、この発明に至った。
【0017】
即ち、上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材である。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、2mJ/cm2・Pのエネルギー密度のArFエキシマレーザを1×105Pulse照射したときに発生する誘起吸収係数の最大値が0.005cm−1以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材である。
【0019】
さらに、請求項3に記載の合成石英ガラス部材は、請求項1又は2に記載の構成に加え、含有される水素分子濃度が1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材である。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1乃至3の何れか1つの合成石英ガラス部材を有する光学系を備えたことを特徴とする紫外線露光装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0022】
この発明の合成石英ガラス部材は、400nm以下の波長帯域、好ましくは300nm以下の波長帯域、特に250nmの波長帯域の紫外線、例えばKrFエキシマレーザ(248.3nm)やArFエキシマレーザ(193.4nm)などを照射する光学系に用いられ、例えば紫外線露光装置の照明光学系や投影光学系のレンズ、ミラー、レチクルなどに好適に使用されるものである。
【0023】
このような合成石英ガラス部材は、照射される紫外線を十分に透過可能な透過率を有する必要があり、例えば使用開始前の波長193.4nmの紫外線の内部透過率が99.5%/cm以上のものが好ましく、特に99.7%/cm以上のものが好適である。
【0024】
また、この発明の合成石英ガラスは、紫外線を照射することにより生じる透過率の低下、特に、紫外線の照射初期の段階の透過率の低下を抑制可能な優れた紫外線耐久性を有する必要がある。
【0025】
合成石英ガラス中に紫外線が照射されると、≡Si−O−Si≡の基本構造や各種の構造欠陥が徐々に切断されて常磁性欠陥が生成され、その誘起吸収により合成石英ガラス部材の透過性が低下する。特に、≡Si−H結合からはE’センタが生成されるが、その生成速度は、≡Si−O−Si≡の基本構造などから常磁性欠陥が生成される速度に比べて大幅に速い。そのため、合成石英ガラス中に≡Si−Hの存在量が多い場合、紫外線照射初期の段階で急激に透過率が低下し易いものと考えられる。
【0026】
そこで、この発明では、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下となるように水素分子を合成石英ガラス中に含有させることにより、紫外線の照射初期の段階から長期にわたり透過率の低下を抑制している。
【0027】
ここで、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、4135cm−1のピーク強度は、合成石英ガラス部材中の水素分子濃度と相関があり、≡Si−O−Si≡の基本構造によるラマン散乱光強度である800cm− 1のピーク強度との比を用いることにより、公知の方法(V. S. Khotimchenko等、「DETERMINING THE CONTENT OF HYDROGEN DISSOLVED IN QUARTZ GLASS USING THE METHODS OF RAMAN SCATTERING AND MASS SPECTROMETRY」、Plenum Publishing Corporation、1987、p.632−635)で水素分子濃度を算出できる値である。
【0028】
一方、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1のピーク強度は合成石英ガラス部材中の≡Si−H結合に起因する値である。合成石英ガラス部材中の≡Si−H結合の量は、絶対量を算出することが困難であるため、この発明では2260cm−1のピーク強度を≡Si−H結合の量を示す指標として用いる。
【0029】
そして、このピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下となるように水素分子を合成石英ガラス中に含有させれば、水素分子濃度に対して≡Si−H結合の量が少なく、紫外線の照射初期の段階で≡Si−H結合からE’センタが生成される速度に対して水素分子の十分な修復作用を得ることが可能となる。更に、長期的な紫外線の照射においても誘起吸収の発生を抑えることができる。
【0030】
ここでは、ピーク強度比(I2260/I4135)が、0.02より高いと、E’センタの増加速度が速くなり紫外線照射初期の段階から透過率の低下が大きくなりやすいため好ましくない。
【0031】
一方、このピーク強度比(I2260/I4135)は小さい程好ましいが、一般に、水素分子を合成石英ガラスに含有させると微量の≡Si−H結合が形成されるため、水素分子を含有させる限りピーク強度比(I2260/I4135)は0より大きい値となっている。
【0032】
このようなピーク強度比(I2260/I4135)に調整したこの発明の合成石英ガラス部材では、更に、2mJ/cm2・Pのエネルギー密度のArFエキシマレーザを1×105Pulse照射したときに発生する誘起吸収係数の最大値を0.005cm−1以下とするのが好ましく、これにより、照射初期の段階で高い透過率を維持することができる。
【0033】
更に、この発明の合成石英ガラス部材は、含有される水素分子の濃度を1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下とするのが、特に好ましい。
【0034】
合成石英ガラス中に含有させた水素分子濃度が1×1016個/cm3より低いと、波長260nm付近の吸収のもとになるNBOCH(Non−Bridging Oxygen Hole Center)が大量に生成し、紫外線の照射期間全体にわたり透過率の低下が大きくなってしまうからである。
【0035】
また、水素分子濃度が5×1018個/cm3より大きいと、水素分子による常磁性欠陥の修復作用が強すぎ、紫外線の照射及び停止を繰り返す際、紫外線を停止した直後に透過率が急激に上昇しやすい。しかも、このように急激に上昇した透過率は、再度、紫外線を照射すると元の透過率まで戻りやすい。そのため、紫外線の照射及び停止による透過率の変動が激しくなる。ところが、この透過率の変化は透過面において不均一に生じるため、被照射体に照射される紫外線が不均一になり、露光等にむらが生じやすくなるからである。
【0036】
なお、以上のような合成石英ガラス部材は、例えば火炎加水分解法を利用して製造することができ、合成炉内にバーナから酸素含有ガス及び水素含有ガスと、四塩化ケイ素等のケイ素化合物を含有する原料ガスとを噴出させることにより火炎を形成してSiO2粉からなるスートを形成し、このスートを合成炉内のターゲットに堆積させ、その頂部を火炎により加熱して溶融、ガラス化してインゴットを形成し、このインゴットから所望の形状の光学部材を切り出し、熱処理、研磨、洗浄等の後処理を施すことにより製造することができる。ここでは、酸素含有ガス、水素含有ガス、原料ガス等の材料や装置などは、一般の火炎加水分解法により使用されるものであれば、好適に使用可能である。
【0037】
この製造の際には、合成石英ガラス部材のピーク強度比(I2260/I4135)を0.02以下とする必要があり、例えば、合成炉内に噴出させる酸素含有ガス及び水素含有ガスの比率を調整して合成したり、インゴット形成後に水素処理を施すことにより行うことができる。
【0038】
過剰な還元性雰囲気下で合成石英ガラスを合成すると、≡Si−H結合からなる構造欠陥の濃度が高くなる。そのため、合成炉に噴出させる酸素含有ガス中の酸素流量と水素含有ガス中の水素流量との比率を例えば3:7〜1:2のように、理論混合比より僅かに水素過剰の雰囲気とし、穏やかな還元性雰囲気下で合成することにより、合成石英ガラス中に≡Si−H結合を抑えて水素分子を含有させることが可能である。
【0039】
また、インゴット形成後に水素分子濃度と≡Si−H結合との比を変化させるには、500℃以下で水素処理、又は、500℃以上の脱水素処理及び500℃以下の水素処理を行うことにより可能である。
【0040】
そして、このような各工程における条件を適宜調整することにより、ピーク強度比(I2260/I4135)の合成石英ガラス部材を製造することができる。
【0041】
以上のようにして得られる合成石英ガラス部材は、多数枚を積層配列することにより、例えばウエハー上に微細回路を露光、転写する紫外線露光装置の照明光学系や投影光学系に用いることができ、特に、低エネルギ密度で長時間照射される投影光学系にも好適に用いることができる。
【0042】
そして、このような紫外線露光装置によれば、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザを照射する際、優れた透過率を有するとともに紫外線耐久性に優れ、照射初期に透過率が急激に低下することがないため、露光、転写が容易である。
【0043】
【実施例】
[実施例1〜7及び比較例1、2]
酸水素火炎加水分解法による合成石英ガラス製造装置を用い、石英ガラス製の合成用バーナから酸素ガス及び水素ガスをそれぞれ2:3の流量で流すとともに、該合成用バーナの中心部から原料である四塩化ケイ素とキャリヤガスである酸素ガスを所定流量で流して石英ガラス微粒子からなるスートを形成し、一定周期で回転及び揺動させた不透明ガラス板からなるターゲットに堆積させてインゴットを形成した。その際、インゴット上部の合成面の位置を一定に保つようにターゲットを降下させ、合成面をバーナで加熱して溶融ガラス化した。
【0044】
このとき、合成用バーナから流す水素ガスと酸素ガスとの割合を変化させ、更に、原料流量や合成面温度を調整する他は、全て同一にして9種類のインゴットを製造した。
【0045】
得られたインゴットから30mm角で長さ100mmの形状を持つサンプルを切り出し、両面に精密研磨を施して、実施例1〜7及び比較例1、2の測定用のサンプルを得た。
【0046】
各サンプルについて、ラマン分光光度計を用いて基本構造に関する800cm−1、2260cm−1及び4135cm−1の散乱ピークの強度を測定し、水素分子濃度及びピーク強度比(I2260/I4135)を求めた。
【0047】
次に、各測定用サンプルにArFエキシマレーザをエネルギー密度2mJ/cm2・Pで、1×105パルス照射し、193.4nmの波長の透過率を測定し、この照射期間中の透過率の変化から、誘起吸収係数の最大値を求めた。なお、この実施例1〜7及び比較例1、2の照射期間においては、誘起吸収係数の最大値は、後述の図1と同様に、紫外線照射初期の段階で生じていた。
【0048】
以上の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1〜7では、何れもピーク強度比(I2260/I4135)が0.005以上0.020以下であるとともに、水素分子濃度は5.00×1016〜5.00×1018であった。そして、誘起吸収係数が0.0002以上0.0050以下であり、照射初期の透過率の低下は穏やかで、紫外線の照射期間中に優れた透過率を維持することができた。
【0050】
これに対し、比較例1では、水素分子濃度が3×1018(個/cm3)で、実施例6、7と同等であるが、ピーク強度比(I2260/I4135)が0.041と大きく、また、比較例2では、水素分子濃度が6×1017(個/cm3)と実施例3、4と同等であるが、ピーク強度比(I2260/I4135)の値が0.0051と大きかった。そのため、何れも誘起吸収係数は、0.0065、0.0060と実施例1〜7の0.0002〜0.0050に比べて大きく、照射初期の透過率の低下は激しかった。なお、比較例2ではI2260とI800の比の値(I2260/I800)を計算したところ、2.50×10−5となっていた。
【0051】
[実施例8及び比較例3、4]
実施例1〜7及び比較例1、2と同様にして、ピーク強度比(I2260/I4135)が0.02(実施例8)、0.042(比較例3)、及び0.025(比較例4)ような3種類の測定用サンプルを作成した。
【0052】
このサンプルを用い、ArFエキシマレーザを、エネルギー密度2mJ/cm2・P且つ繰り返し周波数200Hzで、1×105パルス照射し、照射期間中、経時的に増加する照射パルス数に対する誘起吸収係数の変動を測定した。この誘起吸収係数は大きい程、透過率が小さくなっている。
【0053】
得られた結果を、図1のグラフに示す。
【0054】
図1では、曲線Aはピーク強度比(I2260/I4135)が適切な実施例8の結果を示し、曲線Bは水素分子濃度が実施例8と同等であるものの、ピーク強度比(I2260/I4135)が大きい比較例3の結果を示し、曲線Cは水素分子濃度及びピーク強度比(I2260/I4135)が何れも実施例8より大きい比較例4の結果を示している。また、図中、a、b、cは誘起吸収係数の最大値を示している。
【0055】
図1から明らかな通り、実施例8では、紫外線の照射期間全体にわたり誘起吸収係数が小さく、その変動も小さいため、透過面全体で均一に優れた透過率が維持できた。
【0056】
これに対し、比較例3では、誘起吸収係数の最大値bが大きく、照射初期の段階の透過率の低下が激しくなっている。また、比較例4では照射初期の段階から全体に誘起吸収係数が大きく、透過率の低下が激しい。しかも、水素分子濃度が高いため、紫外線の照射及び停止の繰り返しによる誘起吸収係数の変動が大きく、透過面全体の透過率も不均一で、露光にムラが生じやすい。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述の通り、請求項1及び2に記載の合成石英ガラス部材によれば、レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下であるので、紫外線、特に250nm以下の波長領域の紫外線を照射した際、照射初期に透過率が急激に低下することを防止できて、優れた紫外線耐久性を有し、優れた透過率を維持し易くて、所定の紫外線を被照射物に照射し易い合成石英ガラス部材が得られる。
【0058】
また、請求項3に記載の合成石英ガラス部材によれば、含有される水素分子濃度が1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下であるので、水素分子により得られる常磁性欠陥の修復作用が適度になるため、より透過率の激しい変動を抑制し易い。
【0059】
さらに、請求項4に記載の紫外線露光装置によれば、紫外線照射初期の急激な透過率の低下を防止することができる合成石英ガラス部材を光学系に使用したので、所定の紫外線を被露光部材に照射し易い紫外線露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ArFエキシマレーザを合成石英ガラス部材に照射したときの経時的な誘起吸収量の変化を示すグラフである。
Claims (4)
- レーザラマン分光光度計で測定されるラマン散乱光強度のうち、2260cm−1と4135cm−1のピーク強度比(I2260/I4135)が0.02以下であることを特徴とする合成石英ガラス部材。
- 2mJ/cm2・Pのエネルギー密度のArFエキシマレーザを1×105Pulse照射したときに発生する誘起吸収係数の最大値が0.005cm−1以下であることを特徴とする請求項1に記載の合成石英ガラス部材。
- 含有される水素分子濃度が1×1016個/cm3以上5×1018個/cm3以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成石英ガラス部材。
- 前記請求項1乃至3の何れか1つの合成石英ガラス部材を有する光学系を備えたことを特徴とする紫外線露光装置。
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