JP2004122671A - 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドに関し、例えばサーマル方式によるインクジェットプリンタに適用して、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができるようにする。
【解決手段】本発明は、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドに関し、例えばサーマル方式によるインクジェットプリンタに適用することができる。本発明は、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜することにより、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、ノズルからインク液滴を飛翔させる方法の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
このようなサーマル方式によるプリンタヘッドは、インクを加熱する発熱素子が発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路と共に一体に半導体基板上に形成される。これによりこの種のプリンタヘッドにおいては、発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。
【0006】
すなわちこのサーマル方式のプリンタにおいて、高画質の印刷結果を得るためには、発熱素子を高密度で配置する必要がある。具体的に、例えば600〔DPI〕相当の印刷結果を得るためには、発熱素子を42.333〔μm〕間隔で配置することが必要になるが、このように高密度で配置した発熱素子に個別の駆動素子を配置することは極めて困難である。これによりプリンタヘッドでは、半導体基板上にスイッチングトランジスタ等を作成して集積回路技術により対応する発熱素子と接続し、さらには同様に半導体基板上に作成した駆動回路により各スイッチングトランジスタを駆動することにより、簡易かつ確実に各発熱素子を駆動できるようになされている。
【0007】
またサーマル方式によるプリンタにおいては、発熱素子による加熱によりインクに気泡が発生し、ノズルからインクが飛び出すと、この気泡が消滅する。これにより発砲、消砲を繰り返す毎にキャビテーションによる機械的な衝撃を受ける。さらにプリンタは、発熱素子の発熱による温度上昇と温度下降とが、短時間〔数μ秒〕で繰り返され、これにより温度による大きなストレスを受ける。
【0008】
このためプリンタヘッドは、タンタル、窒化タンタル、タンタルアルミ等により発熱素子が形成され、この発熱素子上に窒化シリコン、炭化シリコン等による絶縁被覆層が形成され、この絶縁被覆層により絶縁性が確保され、また発熱素子とインクとの直接の接触を防止するようになされている。さらにこの絶縁被覆層の上層に、タンタル等により耐キャビテーション層が形成され、この耐キャビテーション層によりキャビテーションによる機械的な衝撃を緩和するようになされている。
【0009】
すなわち図12は、この種のプリンタヘッドにおける発熱素子近傍の構成を示す断面図である。プリンタヘッド1は、半導体素子が作成されてなる半導体基板2上に絶縁層(SiO2 )等が積層された後、タンタル、窒化タンタル、タンタルアルミ等により発熱素子3が形成される。さらに窒化シリコン、炭化シリコン等による1層目の絶縁被覆層4が積層された後、アルミニューム等により配線パターン(AI配線)5が形成される。プリンタヘッド1は、この配線パターン5により半導体基板2上に形成されてなる半導体等に発熱素子3が接続され、さらに窒化シリコン、炭化シリコン等による2層目の絶縁被覆層6が積層され、この上層に、タンタルによる耐キャビテーション層7が形成される。プリンタヘッド1は、続いて所定部材を配置することにより、インク液室、インク流路及びノズルが作成される。
【0010】
プリンタヘッド1は、このようにして作成されたインク流路によりインク液室にインクが導かれた後、半導体素子の駆動により発熱素子3が発熱し、インク液室のインクを局所的に加熱する。プリンタヘッド1は、この加熱により、このインク液室に気泡を発生してインク液室の圧力を増大させ、ノズルよりインクを押し出して印刷対象に飛翔させるようになされている。
【0011】
このように構成されるプリンタヘッドにおいては、電源の立ち上げ時等において、発熱素子への過大な電力の印加を避け得ない。プリンタヘッドにおいては、発熱素子と絶縁被覆層とで材料の熱膨張係数が大きく異なることにより、発熱素子と絶縁被覆層の密着性が不十分であると、このように過大な電力の印加により、発熱素子から絶縁被覆層が浮き上がり、発熱素子と絶縁被覆層との間に空隙が発生する場合がある。プリンタヘッドにおいては、このような空隙が発生すると、発熱素子からインクへの熱伝導率が劣化し、インクを吐出することが困難になる(Proceedings of the SID,Vol287/4,p.477−p.482)。
【0012】
このため例えば特開平6−8441号公報に開示の構成においては、プラズマCVD法により絶縁被覆層を堆積する際に、前処理として、200度、2〜10分間の熱処理を実施することにより、又はフロンガス(CF4 )プラズマを発熱素子表面に照射することにより、発熱素子の表面から−OH基、−O基を除去し、発熱素子と絶縁被覆層との密着性を向上するようになされている。
【0013】
【非特許文献1】
L.S.Chang、他,「(Proceedings of the SID)」,1987年,P.477−482
【特許文献1】
特開平6−8441号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで図12に示すプリンタヘッド1においては、積層した配線パターン材料をパターニングして配線パターン5が作成され、この配線パターン5により半導体基板2上の半導体等に発熱素子3が接続される。このとき発熱素子3は、1層目の絶縁被覆層4により、このパターニングに供するBCl3 /Cl2 ガスから保護される。これによりプリンタヘッド1は、この1層目の絶縁被覆層4の表面がBCl3 /Cl2 ガスに曝露され、この絶縁被覆層4の表面が塩素により汚染される。プリンタヘッド1は、その後、パターニングに供したレジストが除去され、これにより1層目の絶縁被覆層4の表面が、レジストの残渣である炭化物によりさらに汚染される。プリンタヘッド1は、さらに次工程等への搬送中に大気に曝露され、これにより1層目の絶縁被覆層4の表面に酸化物が形成される。プリンタヘッド1は、このように炭化物、酸化物等により表面が汚染された絶縁被覆層4の上層に、さらに2層目の絶縁被覆層6が積層された後、耐キャビテーション層7が形成される。これによりプリンタヘッド1は、絶縁被覆層4と絶縁被覆層6との間に炭化物、酸化物等により界面が形成される。
【0015】
このように絶縁被覆層4、6間に炭化物等により界面が形成されると、プリンタヘッド1では、過大な電力の印加により、発熱素子3上で1層目の絶縁被覆層4から2層目の絶縁被覆層6が浮き上がる場合があり、この場合、図12において矢印Aにより拡大して示すように、絶縁被覆層4、6の間に空隙8が発生する。このように空隙8が発生すると、プリンタヘッド1では、発熱素子3からインクへの熱伝導率が劣化し、インクを吐出することが困難になる。
【0016】
またプリンタヘッドは、抵抗体材料を堆積した後、パターニングして発熱素子を作成しており、これにより発熱素子表面においても、レジストの残渣である炭化物により汚染され、さらに次工程等への搬送中に大気に曝露され、これにより発熱素子表面においても、酸化物が形成される。
【0017】
この発熱素子表面の汚染については、特開平6−8441号公報に開示の手法を適用して密着力を向上することが考えられるが、熱処理による前処理においては、処理に要する時間が長くなる欠点がある。またフロンガス(CF4 )プラズマの照射による前処理においては、発熱素子をタンタル窒化膜により作成した場合、却って発熱素子表面が炭素により汚染され、また揮発しにくい絶縁性のタンタルフッ化物も形成され、これにより却って密着力が低下することが判った。
【0018】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドを提案しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、発熱素子を液体より保護する絶縁被覆層を成膜するようにする。
【0020】
また請求項6の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面が清浄された後、発熱素子を液体より保護する絶縁被覆層が成膜されてなるようにする。
【0021】
請求項1の構成によれば、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、例えばこの液滴がインク液滴、各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等である液体吐出ヘッド、この液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、この液滴がエッチングより部材を保護する薬剤であるパターン描画装置等に適用する液体吐出ヘッドの製造方法に適用することができる。請求項1の構成によれば、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、発熱素子を液体より保護する絶縁被覆層を成膜することにより、炭化物、酸化物等に対して強い還元作用を有する水素活性種を含むプラズマ流により表面に形成された炭化物、酸化物等を還元して除去し、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。また不活性ガスによるプラズマ流により表面の炭化物、酸化物等より炭素原子、酸素原子等を弾き出して除去し、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。これにより例えば過大な電力の印加により発熱素子が過剰に発熱した場合でも、下層からの絶縁被覆層の浮き上がりを防止することができ、これにより発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる液体吐出ヘッドを作成することができる。
【0022】
これにより請求項6の構成によれば、発熱素子上における空隙の形成を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0023】
(1)第1の実施の形態
(1−1)実施の形態の構成
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す断面図である。プリンタヘッド11は、発熱素子12の上層にシリコン窒化膜による1層目の絶縁被覆層13が形成され、この絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等が除去された後、シリコン窒化膜による2層目の絶縁被覆層14が形成される。
【0024】
すなわち図3(A)に示すように、プリンタヘッド11は、ウエハによるシリコン基板15が洗浄された後、シリコン窒化膜(Si3 N4 )が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、リソグラフィー工程、リアクティブエッチング工程によりシリコン基板15が処理され、これによりトランジスタを形成する所定領域以外の領域よりシリコン窒化膜が取り除かれる。これらによりプリンタヘッド11には、シリコン基板15上のトランジスタを形成する領域にシリコン窒化膜が形成される。
【0025】
続いてプリンタヘッド11は、熱酸化工程によりシリコン窒化膜が除去されている領域に熱シリコン酸化膜が形成され、この熱シリコン酸化膜によりトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS: Local Oxidation Of Silicon )16が膜厚500〔nm〕により形成される。なおこの素子分離領域16は、その後の処理により最終的に膜厚260〔nm〕に形成される。さらに続いてプリンタヘッド11は、シリコン基板15が洗浄された後、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートが作成される。さらにソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、酸化工程によりシリコン基板15が処理され、MOS(Metal−Oxide−Semiconductor )型によるトランジスタ17、18等が作成される。なおここでスイッチングトランジスタ17は、25〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してスイッチングトランジスタ18は、このドライバートランジスタを制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層が形成され、その部分で加速される電子の電解を緩和することで耐圧を確保してドライバートランジスタ17が形成されるようになされている。
【0026】
このようにしてシリコン基板15上に、半導体素子であるトランジスタ17、18が作成されると、プリンタヘッド11は、続いてCVD(Chemical Vapor Deposition )法によりリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG(Phosphorus Silicate Glass )膜、ボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass )膜19が順次膜厚100〔nm〕、500〔nm〕により作成され、これにより全体として膜厚が600〔nm〕による1層目の層間絶縁膜が作成される。
【0027】
続いてフォトリソグラフィー工程の後、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によりシリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール20が作成される。
【0028】
さらにプリンタヘッド11は、希フッ酸により洗浄された後、スパッタリング法により、膜厚30〔nm〕によるチタン、膜厚70〔nm〕による窒化酸化チタンバリアメタル、膜厚30〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚500〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、反射防止膜である窒化酸化チタン(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積され、これらにより配線パターン材料が成膜される。さらに続いてプリンタヘッド11は、フォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により、成膜された配線パターン材料が選択的に除去され、1層目の配線パターン21が作成される。プリンタヘッド11は、このようにして作成された1層目の配線パターン21により、駆動回路を構成するMOS型トランジスタ18を接続してロジック集積回路が形成される。
【0029】
続いてプリンタヘッド11は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4 )を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜19が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、SOG(Spin On Glass )を含む塗布型シリコン酸化膜の塗布とエッチバックとにより、シリコン酸化膜19が平坦化され、これらの工程が2回繰り返されて1層目の配線パターン21と続く2層目の配線パターンとを絶縁する膜厚440〔nm〕のシリコン酸化膜による2層目の層間絶縁膜22が形成される。
【0030】
続いて図3(B)に示すように、プリンタヘッド11は、スパッタリング法によりタンタル膜が堆積され、これによりシリコン基板15上に抵抗体膜が形成される。さらに続いてフォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、余剰なタンタル膜が除去され、発熱素子12が作成される。なおこの実施の形態においては、膜厚83〔nm〕によるタンタル膜が堆積され、また折り返し形状により発熱素子12が形成され、これにより発熱素子12の抵抗値が100〔Ω〕となるようになされている。
【0031】
続いて図4(C)に示すように、プリンタヘッド11は、CVD法により膜厚300〔nm〕によるシリコン窒化膜が堆積され、発熱素子12の絶縁被覆層13が形成される。続いて図4(D)に示すように、フォトリソグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、所定箇所のシリコン窒化膜が除去され、これにより発熱素子12を配線パターンに接続する部位が露出される。さらにCHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、層間絶縁膜22に開口を形成してビアホール23が作成される。
【0032】
さらに図5(E)に示すように、プリンタヘッド11は、スパッタリング法により、膜厚200〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚600〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、膜厚25〔nm〕による窒化酸化チタンが堆積され、これにより反射防止膜が形成される。これらによりプリンタヘッド11は、配線パターン材料24が成膜される。
【0033】
続いて図5(F)に示すように、フォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、成膜した配線パターン材料24が選択的に除去され、2層目の配線パターン25が作成される。プリンタヘッド11は、この2層目の配線パターン25により、電源用の配線パターン、アース用の配線パターンが作成され、またドライバートランジスタ17を発熱素子12に接続する配線パターンが作成される。ここで発熱素子12の上層に取り残された絶縁被覆層13にあっては、この配線パターン作成の際のエッチング工程において、発熱素子12の保護層として機能するようになされている。
【0034】
続いて図6(G)に示すように、プリンタヘッド11は、プラズマCVD法により膜厚400〔nm〕によるシリコン窒化膜が堆積される。この実施の形態では、この処理において、初めに水素原子、水素ラジカル(H2 ラジカル)等の水素活性種を含むプラズマ流を生成し、このプラズマ流を照射することにより絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等を除去する。続いて窒化シリコンの成膜種を含むプラズマ流を生成し、炭化物、酸化物等を除去した絶縁被覆層13の上層にこのプラズマ流を照射することによりシリコン窒化膜を気相成長させる。
【0035】
具体的にプリンタヘッド11は、平行平板型のプラズマCVD装置に搭載されて炭化物、酸化物等が除去された後、続いてシリコン窒化膜が成膜される。ここで図1は、平行平板型のプラズマCVD装置を示す断面図である。このプラズマCVD装置31において、反応室32は、上部側に平板形状のシャワープレート33が設けられ、このシャワープレート33に設けられた導入管よりシランガス(SiH4 )、アンモニアガス(NH3 )、窒素ガス(N2 )、アルゴンガス(Ar)が導入されるようになされている。また反応室32は、シャワープレート33と平行となる下部側に加熱試料台34が設けられ、この加熱試料台34にウエハによるシリコン基板15が配置されるようになされている。なお反応室32は、図示しない駆動手段により加熱試料台34に内蔵されたヒーターが発熱するようになされ、これにより加熱試料台34においては、加熱試料台34上のシリコン基板15を加熱するようになされている。
【0036】
プラズマCVD装置31では、この反応室32内のシャワープレート33、加熱試料台34が高周波電源35と接続され、この高周波電源35によりシャワープレート33、加熱試料台34間に高周波(RF13.56〔MHz〕)を印加するようになされ、これによりシャワープレート33を介して反応室32内に導入された各種ガスを励起してプラズマ流を形成するようになされている。
【0037】
ここで図8は、このプラズマCVD装置31における各種ガスの導入手順を高周波電源35の印加と共に示すタイムチャートである。このプラズマCVD装置31における工程は、初めに水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を含むプラズマ流を30〜60〔秒〕の間、シリコン基板15に照射し、絶縁被覆層13の表面から炭化物、酸化物等を除去する(図8において除去処理により示す)。
【0038】
すなわち反応室32は、初めに図示しない排気系により排気しながらアンモニアガスが導入され、これにより室内がアンモニアガスにより十分満たされる(図8においてガス導入である)。続いて窒素ガスが導入されると共に、高周波電源35より高周波が印加されてアンモニアガスが励起される。これにより反応室32では、アンモニアガス、窒素ガスがプラズマ中の電子と衝突して解離され、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種が生成される。すなわちアンモニアガスにおいては、プラズマ中の電子との衝突によりNH3 →NH2 +H、NH3 →NH+H2 等で表されるように水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を生成する。なおこのときプラズマ中の電子が窒素と衝突することにより、アンモニアガスの解離が促進され、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種の生成が促進される。
【0039】
反応室32は、この水素原子、水素ラジカル等の水素活性種がプラズマ流によりシリコン基板15に照射される。これにより反応室32では、1層目の絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等が水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により還元され、絶縁被覆層13の表面から炭化物、酸化物等が除去される。すなわち絶縁被覆層13においては、Cl+H→HClで表されるように水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面から塩素が還元されて除去される。また絶縁被覆層13においては、C+H→CHで表されるように、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面に形成された炭化物から炭素が還元されて除去される。また絶縁被覆層13においては、O+H→OH、O+H2 →H2 O等で表されるように、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面に形成された酸化物から酸素が還元されて除去される。これによりこの工程においては、2層目の絶縁被覆層14の成膜前に、水素活性種を含むプラズマ流を照射して1層目の絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等を取り除くようになされている。
【0040】
このようにして1層目の絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等を除去すると、この工程は、表面を清浄した絶縁被覆層13を大気に曝露することなく、続いて窒化シリコン成膜種を含むプラズマ流をシリコン基板15に照射し、シリコン窒化膜を生成する(図8においてSi3 N4 成膜処理である)。すなわち反応室32は、さらにシランガスが導入され、このシランガスと窒素ガスとにより窒化シリコン成膜種が生成され、この窒化シリコン成膜種がプラズマ流によりシリコン基板15に照射され、これによりシリコン窒化膜が生成されるようになされている。
【0041】
このようにしてシリコン窒化膜を生成すると、続いてこの工程は、高周波電源35より電力の供給を停止し、プラズマの形成を停止する。さらに窒素ガスのみを導入してパージし、これにより反応室32内に残存する水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により還元された塩素系ガスによる混合ガスを図示しない排気系より排気する。
【0042】
なおこの実施の形態では、加熱試料台34によりシリコン基板15を350〜400〔℃〕に加熱して保持し、高周波電源35より0.3〜1.0〔kW〕により高周波電力を印加した。また炭化物、酸化物等の除去工程において、アンモニアガス流量、窒素ガス流量は、それぞれ300〜1900〔sccm〕、500〜1000〔sccm〕に設定した。これに対して成膜工程において、アンモニアガス流量、窒素ガス流量は、それぞれ1700〜1900〔sccm〕、500〜1000〔sccm〕に、またシランガス流量は、200〜300〔sccm〕に設定した。
【0043】
このようにして発熱素子12上に絶縁被覆層13、14を順次形成すると、プリンタヘッド11は、続いて熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド11は、トランジスタ17、18の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン21と2層目の配線パターン25との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。
【0044】
プリンタヘッド11は、続いてスパッタリング法によりタンタルによる耐キャビテーション層41の材料膜が膜厚200〔nm〕により堆積される。
【0045】
続いて図6(H)に示すように、プリンタヘッド11は、フォトレジスト工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、耐キャビテーション層41の材料膜が所定形状によりエッチング処理され、これにより耐キャビテーション層41が形成される。
【0046】
プリンタヘッド11は、続いて各チップにスクライビングされた後、図2に示すように、ドライフィルム42、オリフィスプレート43が順次積層される。ここで例えばドライフィルム42は、有機系樹脂により構成され、圧着により配置された後、インク液室、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後硬化される。これに対してオリフィスプレート43は、発熱素子12の上に微小なインク吐出口であるノズル44を形成するように所定形状に加工された板状部材であり、接着によりドライフィルム42上に保持される。これによりプリンタヘッド11は、ノズル44、インク液室45、このインク液室45にインクを導くインク流路等が形成されて作成される。
【0047】
プリンタヘッド11は、このようなインク液室45が紙面の奥行き方向に連続するように形成され、これによりラインヘッドを構成するようになされている。
【0048】
(1−2)実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド11は、半導体基板であるシリコン基板15に素子分離領域16が作成されて半導体素子であるトランジスタ17、18が作成され、絶縁層19により絶縁されて1層目の配線パターン21が作成される。また続いて絶縁層22、発熱素子12が作成された後、1層目の絶縁被覆層13、2層目の配線パターン25が作成される。さらに2層目の絶縁被覆層14が作成された後、熱処理により配線パターン間、配線パターンと発熱素子等との間の接続が安定化され、耐キャビテーション層41、インク液室45、ノズル44が順次形成されて作成される(図2〜図7)。
【0049】
このプリンタは、このようにして作成されたプリンタヘッド11のインク液室45にインクが導かれ、トランジスタ17、18による発熱素子12の駆動により、インク液室45に保持したインクが加熱されて気泡が発生し、この気泡によりインク液室45内の圧力が急激に増大する。プリンタでは、この圧力の増大によりインク液室45のインクがノズル44からインク液滴として飛び出し、このインク液滴が対象物である用紙等に付着する。
【0050】
プリンタでは、このような発熱素子の駆動が間欠的に繰り返され、これにより所望の画像等が対象物に印刷される。またプリンタヘッド11においては、この発熱素子12の間欠的な駆動により、インク液室45内において、気泡の発生、気泡の消滅が繰り返され、これにより機械的な衝撃であるキャビテーションが発生する。プリンタヘッド11では、このキャビテーションによる機械的な衝撃が耐キャビテーション層41により緩和され、これにより耐キャビテーション層41により発熱素子12が保護される。また絶縁被覆層13、14により発熱素子12へのインクの直接の接触が防止され、これによっても発熱素子12が保護される。
【0051】
しかして発熱素子12においては、このように間欠的な駆動により発熱して、この発熱による熱が絶縁被覆層13、14、耐キャビテーション層41を介してインク液室45のインクに伝搬し、インクの温度上昇によりインク液室45内に気泡が発生する。この実施の形態に係るプリンタヘッド11においては、このような発熱素子12の熱の熱伝導経路である2層目の絶縁被覆層14が、表面を清浄した1層目の絶縁被覆層13の上層に積層される。
【0052】
すなわちプリンタヘッド11では、プラズマCVD法により2層目の絶縁被覆層14を構成するシリコン窒化膜が成膜され(図1、図8)、この成膜の際に、初めに、高周波電源35によるアンモニアガスの励起により水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を含むプラズマ流が生成され、このプラズマ流が1層目の絶縁被覆層13の表面に照射される。ここで水素原子、水素ラジカル等の水素活性種においては、塩化物、炭化物、酸化物に対して強い還元作用を有することにより、このプラズマ流の照射によりプリンタヘッド11では、絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等が還元されて除去され、これにより表面が清浄な状態とされる。その後シランガス、窒素ガスにより窒化シリコンの成膜種を含むプラズマ流が生成され、このプラズマ流により表面を清浄した絶縁被覆層13の上層にシリコン窒化膜が気相成長される。これによりプリンタヘッド11においては、絶縁被覆層13、14の間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止し、これにより過大な電力の印加により発熱素子12が過剰に発熱した場合でも、1層目の絶縁被覆層13から2層目の絶縁被覆層14の浮き上がりを防止することができる。従ってプリンタヘッド11においては、発熱素子12上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【0053】
またこのようなプラズマCVD法による清浄、成膜においては、使用するアンモニアガス、シランガス、窒素ガスが半導体製造プロセスで十分に実用実績のある材料であり、かつ既存の製造プロセスを利用するものであり、これにより製造プロセスにおいて、十分な信頼性を確保することができる。
【0054】
またこのようなプラズマCVD法による清浄においては、成膜と同一工程でかつ短時間で炭化物、酸化物等を除去することができ、これにより工程数の増大を防止することができ、また熱処理による前処理に比して半導体製造プロセスを短縮することができる。
【0055】
またこのようにして表面の清浄に供されるガスが絶縁被覆層の生成に供するアンモニアガスであることにより、表面の清浄が完了すると、絶縁被覆層の生成に供する他のガスを導入して、速やかに、絶縁被覆層を成膜することができ、これにより従来の絶縁被覆層の成膜装置を使用して、プリンタヘッドの信頼性を向上することができる。
【0056】
(1−3)実施の形態の効果
以上の構成によれば、水素活性種を含むプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜することにより、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。これにより例えば過大な電力の印加により発熱素子が過剰に発熱した場合でも、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【0057】
すなわちアンモニアガスと窒素ガスとを用いたプラズマCVD法により、水素活性種を含むプラズマ流を生成して下層の表面を清浄した後、アンモニアガス、窒素ガス及びシランガスを用いたプラズマCVD法により、絶縁被覆層を成膜することにより、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。
【0058】
またこの下層が、発熱素子上に形成された窒化シリコンによる1層目の絶縁被覆層であることにより、表面を清浄した1層目の絶縁被覆層の上層に2層目の絶縁被覆層を成膜することができ、これにより絶縁被覆層間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。
【0059】
(2)第2の実施の形態
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドについて、発熱素子を周辺構成と共に示す断面図である。このプリンタヘッド51においては、ウエットエッチングにより2層目の配線パターン54が作成されて発熱素子53とシリコン基板52上の半導体等とが接続された後、水素活性種を含むプラズマ流の照射により発熱素子53の表面が清浄され、この上層にさらにシリコン窒化膜による絶縁被覆層55が形成される。なおこの実施の形態においては、このような2層目の配線パターン54に関連する工程が異なる点を除いて、第1の実施の形態に係るプリンタヘッド11と同一に構成されることにより、第1の実施の形態と同一の構成においては、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0060】
すなわちこのプリンタヘッド51は、シリコン基板52上に発熱素子53を駆動するトランジスタ17、18が作成され、層間絶縁層19により絶縁されて1層目の配線パターン21が作成される。プリンタヘッド51は、続いて層間絶縁層22が作成された後、タンタル膜が堆積され、ドライエッチング法により余剰なタンタル膜が除去され、これにより折り返し形状による発熱素子53が作成される。
【0061】
プリンタヘッド51は、続いてフォトリソグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、層間絶縁膜22に開口を形成してビアホール23が作成される。
【0062】
続いて図10(A)に示すように、プリンタヘッド51は、スパッタリング法により膜厚300〜500〔nm〕によるアルミニュームが堆積され、続いて図10(B)に示すように、フォトリソグラフィー工程、ウエットエッチング工程によりアルミニュームが選択的に除去され、これにより2層目の配線パターン54が作成される。このときプリンタヘッド51においては、このフォトリソグラフィー工程、ウエットエッチング工程により発熱素子53上のアルミニュームが除去され、これにより発熱素子53が露出される。
【0063】
プリンタヘッド51は、続いて第1の実施の形態で上述したと同様に、平行平板型のプラズマCVD装置31による清浄、成膜処理により発熱素子の表面が清浄された後、絶縁被覆層55であるシリコン窒化膜が堆積される。すなわちプリンタヘッド51においては、図10(C)に示すように、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種の照射により発熱素子53の表面に形成された炭化物から炭素が還元されて除去される。またプリンタヘッド51においては、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種の照射により発熱素子53の表面に形成された酸化物から酸素が還元されて除去される。これによりプリンタヘッド51は、発熱素子53の表面に形成された炭化物、酸化物等が取り除かれ、表面が清浄な状態とされる。
【0064】
このように発熱素子53の表面が清浄な状態とされると、プリンタヘッド51は、続いてこのプラズマCVD装置31において、シランガス、窒素ガスの導入により発熱素子53の表面を大気に曝露することなく、窒化シリコン成膜種を含むプラズマ流が照射され、これにより図10(D)に示すように、発熱素子53の上層に絶縁被覆層55であるシリコン窒化膜が気相成長される。なおこの実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の条件で炭化物、酸化物等を除去し、また第1の実施の形態と同様の条件で成膜した。
【0065】
このようにして絶縁被覆層55が作成されると、プリンタヘッド51は、続いて熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド51は、トランジスタ17、18の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン21と2層目の配線パターン54との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。プリンタヘッド51は、続いてスパッタリング装置のスパッタ成膜チェンバーに搭載された後、スパッタリング法によりタンタルによる耐キャビテーション層41の材料膜が膜厚200〔nm〕により堆積される。
【0066】
続いて図9に示すように、プリンタヘッド11は、フォトレジスト工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、耐キャビテーション層41の材料膜が所定形状により加工され、これにより耐キャビテーション層41が形成される。プリンタヘッド51は、続いて各チップにスクライビングされた後、ドライフィルム42、オリフィスプレート43が順次積層され、これによりインク液室45、ノズル44が形成されて作成される。
【0067】
この実施の形態においては、発熱素子の上層に絶縁被覆層を形成する場合に、事前に水素活性種を含むプラズマ流の照射により発熱素子の表面を清浄することにより、発熱素子と絶縁被覆層との間について、空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【0068】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、アンモニアガスとシランガスとを用いたプラズマCVD法により水素活性種を含むプラズマ流を照射して下層の表面を清浄する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これに代えて、シランガスを用いたプラズマCVD法により水素活性種を含むプラズマ流を照射して下層の表面を清浄するようにしてもよい。このような場合においては、図8との対比により図11に示すように、シランガスの導入により、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面に形成された炭化物、酸化物等を還元して除去する。
【0069】
すなわちシランガスにおいては、プラズマ中の電子との衝突によりSiH4 →SiH3 ++H、SiH4 →SiH2 ++H2、SiH4 →Si+ +H2 等で表
されるように水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を生成する。
【0070】
さらにアンモニアガス、窒素ガスを導入し、プラズマCVD法によりシリコン窒化膜を堆積する。これによりシランガスを用いたプラズマCVD法により、水素活性種のプラズマ流を生成し、アンモニアガス、窒素ガス及びシランガスを用いたプラズマCVD法により、絶縁被覆層を成膜するようにしても、発熱素子上に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。因みにこのような清浄、成膜においては、基板温度350〜400〔℃〕、高周波電力0.3〜1.0〔kW〕、シランガス流量300〜1900〔sccm〕に設定して炭化物、酸化物等を除去処理した場合であり、また基板温度350〜400〔℃〕、高周波電力0.3〜1.0〔kW〕、シランガス流量200〜300〔sccm〕、アンモニアガス流量1700〜1900〔sccm〕及び窒素ガス流量500〜1000〔sccm〕に設定し、これらの条件で成膜処理した場合である。
【0071】
また上述の第1の実施の形態においては、2層目の絶縁被覆層のみをプラズマCVD法により清浄、成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これに加えて、1層目の絶縁被覆層もプラズマCVD法により清浄、成膜するようにしてもよい。
【0072】
また上述の実施の形態においては、平行平板型のプラズマCVD装置により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、平行平板型のプラズマCVD装置に代えて、ICP(Inductive coupled Plasma:誘導結合)型プラズマCVD装置等を広く適用することができる。
【0073】
さらに上述の実施の形態においては、水素活性種を含むプラズマ流の照射により下層の表面を清浄する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、スパッタリング装置を用いて励起した不活性ガスの照射により下層の表面を清浄することも可能である。なおこの場合、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス等の励起した不活性ガスによりプラズマ中の陽イオンが下層の表面に衝突して表面の炭化物、酸化物等より炭素原子、酸素原子等を弾き出すことにより、表面の炭化物、酸化物等を除去することになる。
【0074】
また上述の実施の形態においては、折り返し形状により発熱素子を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、正方形形状により発熱素子を形成する場合等、種々の形状により発熱素子を形成する場合に広く適用することができる。
【0075】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等であるプリンタヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0076】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜することにより、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程に適用されるプラズマCVD装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す断面図である。
【図3】図2のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図である。
【図8】図1のプラズマCVD装置におけるガスの導入手順を電源の印加と共に示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドにおける発熱素子をその周辺構成と共に示す断面図である。
【図10】図9のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図11】他の実施の形態におけるガスの導入手順を図8との対比により示すタイムチャートである。
【図12】従来のプリンタヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
1、11、51……プリンタヘッド、2、15、52……シリコン基板、3、12、53……発熱素子、4、6、13、14、55……絶縁被覆層、7、41……耐キャビテーション層、17、18……トランジスタ、21、25、54……配線パターン、31……プラズマCVD装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドに関し、例えばサーマル方式によるインクジェットプリンタに適用することができる。本発明は、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜することにより、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、ノズルからインク液滴を飛翔させる方法の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
このようなサーマル方式によるプリンタヘッドは、インクを加熱する発熱素子が発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路と共に一体に半導体基板上に形成される。これによりこの種のプリンタヘッドにおいては、発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。
【0006】
すなわちこのサーマル方式のプリンタにおいて、高画質の印刷結果を得るためには、発熱素子を高密度で配置する必要がある。具体的に、例えば600〔DPI〕相当の印刷結果を得るためには、発熱素子を42.333〔μm〕間隔で配置することが必要になるが、このように高密度で配置した発熱素子に個別の駆動素子を配置することは極めて困難である。これによりプリンタヘッドでは、半導体基板上にスイッチングトランジスタ等を作成して集積回路技術により対応する発熱素子と接続し、さらには同様に半導体基板上に作成した駆動回路により各スイッチングトランジスタを駆動することにより、簡易かつ確実に各発熱素子を駆動できるようになされている。
【0007】
またサーマル方式によるプリンタにおいては、発熱素子による加熱によりインクに気泡が発生し、ノズルからインクが飛び出すと、この気泡が消滅する。これにより発砲、消砲を繰り返す毎にキャビテーションによる機械的な衝撃を受ける。さらにプリンタは、発熱素子の発熱による温度上昇と温度下降とが、短時間〔数μ秒〕で繰り返され、これにより温度による大きなストレスを受ける。
【0008】
このためプリンタヘッドは、タンタル、窒化タンタル、タンタルアルミ等により発熱素子が形成され、この発熱素子上に窒化シリコン、炭化シリコン等による絶縁被覆層が形成され、この絶縁被覆層により絶縁性が確保され、また発熱素子とインクとの直接の接触を防止するようになされている。さらにこの絶縁被覆層の上層に、タンタル等により耐キャビテーション層が形成され、この耐キャビテーション層によりキャビテーションによる機械的な衝撃を緩和するようになされている。
【0009】
すなわち図12は、この種のプリンタヘッドにおける発熱素子近傍の構成を示す断面図である。プリンタヘッド1は、半導体素子が作成されてなる半導体基板2上に絶縁層(SiO2 )等が積層された後、タンタル、窒化タンタル、タンタルアルミ等により発熱素子3が形成される。さらに窒化シリコン、炭化シリコン等による1層目の絶縁被覆層4が積層された後、アルミニューム等により配線パターン(AI配線)5が形成される。プリンタヘッド1は、この配線パターン5により半導体基板2上に形成されてなる半導体等に発熱素子3が接続され、さらに窒化シリコン、炭化シリコン等による2層目の絶縁被覆層6が積層され、この上層に、タンタルによる耐キャビテーション層7が形成される。プリンタヘッド1は、続いて所定部材を配置することにより、インク液室、インク流路及びノズルが作成される。
【0010】
プリンタヘッド1は、このようにして作成されたインク流路によりインク液室にインクが導かれた後、半導体素子の駆動により発熱素子3が発熱し、インク液室のインクを局所的に加熱する。プリンタヘッド1は、この加熱により、このインク液室に気泡を発生してインク液室の圧力を増大させ、ノズルよりインクを押し出して印刷対象に飛翔させるようになされている。
【0011】
このように構成されるプリンタヘッドにおいては、電源の立ち上げ時等において、発熱素子への過大な電力の印加を避け得ない。プリンタヘッドにおいては、発熱素子と絶縁被覆層とで材料の熱膨張係数が大きく異なることにより、発熱素子と絶縁被覆層の密着性が不十分であると、このように過大な電力の印加により、発熱素子から絶縁被覆層が浮き上がり、発熱素子と絶縁被覆層との間に空隙が発生する場合がある。プリンタヘッドにおいては、このような空隙が発生すると、発熱素子からインクへの熱伝導率が劣化し、インクを吐出することが困難になる(Proceedings of the SID,Vol287/4,p.477−p.482)。
【0012】
このため例えば特開平6−8441号公報に開示の構成においては、プラズマCVD法により絶縁被覆層を堆積する際に、前処理として、200度、2〜10分間の熱処理を実施することにより、又はフロンガス(CF4 )プラズマを発熱素子表面に照射することにより、発熱素子の表面から−OH基、−O基を除去し、発熱素子と絶縁被覆層との密着性を向上するようになされている。
【0013】
【非特許文献1】
L.S.Chang、他,「(Proceedings of the SID)」,1987年,P.477−482
【特許文献1】
特開平6−8441号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで図12に示すプリンタヘッド1においては、積層した配線パターン材料をパターニングして配線パターン5が作成され、この配線パターン5により半導体基板2上の半導体等に発熱素子3が接続される。このとき発熱素子3は、1層目の絶縁被覆層4により、このパターニングに供するBCl3 /Cl2 ガスから保護される。これによりプリンタヘッド1は、この1層目の絶縁被覆層4の表面がBCl3 /Cl2 ガスに曝露され、この絶縁被覆層4の表面が塩素により汚染される。プリンタヘッド1は、その後、パターニングに供したレジストが除去され、これにより1層目の絶縁被覆層4の表面が、レジストの残渣である炭化物によりさらに汚染される。プリンタヘッド1は、さらに次工程等への搬送中に大気に曝露され、これにより1層目の絶縁被覆層4の表面に酸化物が形成される。プリンタヘッド1は、このように炭化物、酸化物等により表面が汚染された絶縁被覆層4の上層に、さらに2層目の絶縁被覆層6が積層された後、耐キャビテーション層7が形成される。これによりプリンタヘッド1は、絶縁被覆層4と絶縁被覆層6との間に炭化物、酸化物等により界面が形成される。
【0015】
このように絶縁被覆層4、6間に炭化物等により界面が形成されると、プリンタヘッド1では、過大な電力の印加により、発熱素子3上で1層目の絶縁被覆層4から2層目の絶縁被覆層6が浮き上がる場合があり、この場合、図12において矢印Aにより拡大して示すように、絶縁被覆層4、6の間に空隙8が発生する。このように空隙8が発生すると、プリンタヘッド1では、発熱素子3からインクへの熱伝導率が劣化し、インクを吐出することが困難になる。
【0016】
またプリンタヘッドは、抵抗体材料を堆積した後、パターニングして発熱素子を作成しており、これにより発熱素子表面においても、レジストの残渣である炭化物により汚染され、さらに次工程等への搬送中に大気に曝露され、これにより発熱素子表面においても、酸化物が形成される。
【0017】
この発熱素子表面の汚染については、特開平6−8441号公報に開示の手法を適用して密着力を向上することが考えられるが、熱処理による前処理においては、処理に要する時間が長くなる欠点がある。またフロンガス(CF4 )プラズマの照射による前処理においては、発熱素子をタンタル窒化膜により作成した場合、却って発熱素子表面が炭素により汚染され、また揮発しにくい絶縁性のタンタルフッ化物も形成され、これにより却って密着力が低下することが判った。
【0018】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドを提案しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、発熱素子を液体より保護する絶縁被覆層を成膜するようにする。
【0020】
また請求項6の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面が清浄された後、発熱素子を液体より保護する絶縁被覆層が成膜されてなるようにする。
【0021】
請求項1の構成によれば、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、例えばこの液滴がインク液滴、各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等である液体吐出ヘッド、この液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、この液滴がエッチングより部材を保護する薬剤であるパターン描画装置等に適用する液体吐出ヘッドの製造方法に適用することができる。請求項1の構成によれば、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、発熱素子を液体より保護する絶縁被覆層を成膜することにより、炭化物、酸化物等に対して強い還元作用を有する水素活性種を含むプラズマ流により表面に形成された炭化物、酸化物等を還元して除去し、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。また不活性ガスによるプラズマ流により表面の炭化物、酸化物等より炭素原子、酸素原子等を弾き出して除去し、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。これにより例えば過大な電力の印加により発熱素子が過剰に発熱した場合でも、下層からの絶縁被覆層の浮き上がりを防止することができ、これにより発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる液体吐出ヘッドを作成することができる。
【0022】
これにより請求項6の構成によれば、発熱素子上における空隙の形成を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0023】
(1)第1の実施の形態
(1−1)実施の形態の構成
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す断面図である。プリンタヘッド11は、発熱素子12の上層にシリコン窒化膜による1層目の絶縁被覆層13が形成され、この絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等が除去された後、シリコン窒化膜による2層目の絶縁被覆層14が形成される。
【0024】
すなわち図3(A)に示すように、プリンタヘッド11は、ウエハによるシリコン基板15が洗浄された後、シリコン窒化膜(Si3 N4 )が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、リソグラフィー工程、リアクティブエッチング工程によりシリコン基板15が処理され、これによりトランジスタを形成する所定領域以外の領域よりシリコン窒化膜が取り除かれる。これらによりプリンタヘッド11には、シリコン基板15上のトランジスタを形成する領域にシリコン窒化膜が形成される。
【0025】
続いてプリンタヘッド11は、熱酸化工程によりシリコン窒化膜が除去されている領域に熱シリコン酸化膜が形成され、この熱シリコン酸化膜によりトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS: Local Oxidation Of Silicon )16が膜厚500〔nm〕により形成される。なおこの素子分離領域16は、その後の処理により最終的に膜厚260〔nm〕に形成される。さらに続いてプリンタヘッド11は、シリコン基板15が洗浄された後、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートが作成される。さらにソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、酸化工程によりシリコン基板15が処理され、MOS(Metal−Oxide−Semiconductor )型によるトランジスタ17、18等が作成される。なおここでスイッチングトランジスタ17は、25〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してスイッチングトランジスタ18は、このドライバートランジスタを制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層が形成され、その部分で加速される電子の電解を緩和することで耐圧を確保してドライバートランジスタ17が形成されるようになされている。
【0026】
このようにしてシリコン基板15上に、半導体素子であるトランジスタ17、18が作成されると、プリンタヘッド11は、続いてCVD(Chemical Vapor Deposition )法によりリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG(Phosphorus Silicate Glass )膜、ボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass )膜19が順次膜厚100〔nm〕、500〔nm〕により作成され、これにより全体として膜厚が600〔nm〕による1層目の層間絶縁膜が作成される。
【0027】
続いてフォトリソグラフィー工程の後、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によりシリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール20が作成される。
【0028】
さらにプリンタヘッド11は、希フッ酸により洗浄された後、スパッタリング法により、膜厚30〔nm〕によるチタン、膜厚70〔nm〕による窒化酸化チタンバリアメタル、膜厚30〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚500〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、反射防止膜である窒化酸化チタン(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積され、これらにより配線パターン材料が成膜される。さらに続いてプリンタヘッド11は、フォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により、成膜された配線パターン材料が選択的に除去され、1層目の配線パターン21が作成される。プリンタヘッド11は、このようにして作成された1層目の配線パターン21により、駆動回路を構成するMOS型トランジスタ18を接続してロジック集積回路が形成される。
【0029】
続いてプリンタヘッド11は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4 )を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜19が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、SOG(Spin On Glass )を含む塗布型シリコン酸化膜の塗布とエッチバックとにより、シリコン酸化膜19が平坦化され、これらの工程が2回繰り返されて1層目の配線パターン21と続く2層目の配線パターンとを絶縁する膜厚440〔nm〕のシリコン酸化膜による2層目の層間絶縁膜22が形成される。
【0030】
続いて図3(B)に示すように、プリンタヘッド11は、スパッタリング法によりタンタル膜が堆積され、これによりシリコン基板15上に抵抗体膜が形成される。さらに続いてフォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、余剰なタンタル膜が除去され、発熱素子12が作成される。なおこの実施の形態においては、膜厚83〔nm〕によるタンタル膜が堆積され、また折り返し形状により発熱素子12が形成され、これにより発熱素子12の抵抗値が100〔Ω〕となるようになされている。
【0031】
続いて図4(C)に示すように、プリンタヘッド11は、CVD法により膜厚300〔nm〕によるシリコン窒化膜が堆積され、発熱素子12の絶縁被覆層13が形成される。続いて図4(D)に示すように、フォトリソグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、所定箇所のシリコン窒化膜が除去され、これにより発熱素子12を配線パターンに接続する部位が露出される。さらにCHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、層間絶縁膜22に開口を形成してビアホール23が作成される。
【0032】
さらに図5(E)に示すように、プリンタヘッド11は、スパッタリング法により、膜厚200〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚600〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、膜厚25〔nm〕による窒化酸化チタンが堆積され、これにより反射防止膜が形成される。これらによりプリンタヘッド11は、配線パターン材料24が成膜される。
【0033】
続いて図5(F)に示すように、フォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、成膜した配線パターン材料24が選択的に除去され、2層目の配線パターン25が作成される。プリンタヘッド11は、この2層目の配線パターン25により、電源用の配線パターン、アース用の配線パターンが作成され、またドライバートランジスタ17を発熱素子12に接続する配線パターンが作成される。ここで発熱素子12の上層に取り残された絶縁被覆層13にあっては、この配線パターン作成の際のエッチング工程において、発熱素子12の保護層として機能するようになされている。
【0034】
続いて図6(G)に示すように、プリンタヘッド11は、プラズマCVD法により膜厚400〔nm〕によるシリコン窒化膜が堆積される。この実施の形態では、この処理において、初めに水素原子、水素ラジカル(H2 ラジカル)等の水素活性種を含むプラズマ流を生成し、このプラズマ流を照射することにより絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等を除去する。続いて窒化シリコンの成膜種を含むプラズマ流を生成し、炭化物、酸化物等を除去した絶縁被覆層13の上層にこのプラズマ流を照射することによりシリコン窒化膜を気相成長させる。
【0035】
具体的にプリンタヘッド11は、平行平板型のプラズマCVD装置に搭載されて炭化物、酸化物等が除去された後、続いてシリコン窒化膜が成膜される。ここで図1は、平行平板型のプラズマCVD装置を示す断面図である。このプラズマCVD装置31において、反応室32は、上部側に平板形状のシャワープレート33が設けられ、このシャワープレート33に設けられた導入管よりシランガス(SiH4 )、アンモニアガス(NH3 )、窒素ガス(N2 )、アルゴンガス(Ar)が導入されるようになされている。また反応室32は、シャワープレート33と平行となる下部側に加熱試料台34が設けられ、この加熱試料台34にウエハによるシリコン基板15が配置されるようになされている。なお反応室32は、図示しない駆動手段により加熱試料台34に内蔵されたヒーターが発熱するようになされ、これにより加熱試料台34においては、加熱試料台34上のシリコン基板15を加熱するようになされている。
【0036】
プラズマCVD装置31では、この反応室32内のシャワープレート33、加熱試料台34が高周波電源35と接続され、この高周波電源35によりシャワープレート33、加熱試料台34間に高周波(RF13.56〔MHz〕)を印加するようになされ、これによりシャワープレート33を介して反応室32内に導入された各種ガスを励起してプラズマ流を形成するようになされている。
【0037】
ここで図8は、このプラズマCVD装置31における各種ガスの導入手順を高周波電源35の印加と共に示すタイムチャートである。このプラズマCVD装置31における工程は、初めに水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を含むプラズマ流を30〜60〔秒〕の間、シリコン基板15に照射し、絶縁被覆層13の表面から炭化物、酸化物等を除去する(図8において除去処理により示す)。
【0038】
すなわち反応室32は、初めに図示しない排気系により排気しながらアンモニアガスが導入され、これにより室内がアンモニアガスにより十分満たされる(図8においてガス導入である)。続いて窒素ガスが導入されると共に、高周波電源35より高周波が印加されてアンモニアガスが励起される。これにより反応室32では、アンモニアガス、窒素ガスがプラズマ中の電子と衝突して解離され、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種が生成される。すなわちアンモニアガスにおいては、プラズマ中の電子との衝突によりNH3 →NH2 +H、NH3 →NH+H2 等で表されるように水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を生成する。なおこのときプラズマ中の電子が窒素と衝突することにより、アンモニアガスの解離が促進され、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種の生成が促進される。
【0039】
反応室32は、この水素原子、水素ラジカル等の水素活性種がプラズマ流によりシリコン基板15に照射される。これにより反応室32では、1層目の絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等が水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により還元され、絶縁被覆層13の表面から炭化物、酸化物等が除去される。すなわち絶縁被覆層13においては、Cl+H→HClで表されるように水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面から塩素が還元されて除去される。また絶縁被覆層13においては、C+H→CHで表されるように、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面に形成された炭化物から炭素が還元されて除去される。また絶縁被覆層13においては、O+H→OH、O+H2 →H2 O等で表されるように、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面に形成された酸化物から酸素が還元されて除去される。これによりこの工程においては、2層目の絶縁被覆層14の成膜前に、水素活性種を含むプラズマ流を照射して1層目の絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等を取り除くようになされている。
【0040】
このようにして1層目の絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等を除去すると、この工程は、表面を清浄した絶縁被覆層13を大気に曝露することなく、続いて窒化シリコン成膜種を含むプラズマ流をシリコン基板15に照射し、シリコン窒化膜を生成する(図8においてSi3 N4 成膜処理である)。すなわち反応室32は、さらにシランガスが導入され、このシランガスと窒素ガスとにより窒化シリコン成膜種が生成され、この窒化シリコン成膜種がプラズマ流によりシリコン基板15に照射され、これによりシリコン窒化膜が生成されるようになされている。
【0041】
このようにしてシリコン窒化膜を生成すると、続いてこの工程は、高周波電源35より電力の供給を停止し、プラズマの形成を停止する。さらに窒素ガスのみを導入してパージし、これにより反応室32内に残存する水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により還元された塩素系ガスによる混合ガスを図示しない排気系より排気する。
【0042】
なおこの実施の形態では、加熱試料台34によりシリコン基板15を350〜400〔℃〕に加熱して保持し、高周波電源35より0.3〜1.0〔kW〕により高周波電力を印加した。また炭化物、酸化物等の除去工程において、アンモニアガス流量、窒素ガス流量は、それぞれ300〜1900〔sccm〕、500〜1000〔sccm〕に設定した。これに対して成膜工程において、アンモニアガス流量、窒素ガス流量は、それぞれ1700〜1900〔sccm〕、500〜1000〔sccm〕に、またシランガス流量は、200〜300〔sccm〕に設定した。
【0043】
このようにして発熱素子12上に絶縁被覆層13、14を順次形成すると、プリンタヘッド11は、続いて熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド11は、トランジスタ17、18の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン21と2層目の配線パターン25との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。
【0044】
プリンタヘッド11は、続いてスパッタリング法によりタンタルによる耐キャビテーション層41の材料膜が膜厚200〔nm〕により堆積される。
【0045】
続いて図6(H)に示すように、プリンタヘッド11は、フォトレジスト工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、耐キャビテーション層41の材料膜が所定形状によりエッチング処理され、これにより耐キャビテーション層41が形成される。
【0046】
プリンタヘッド11は、続いて各チップにスクライビングされた後、図2に示すように、ドライフィルム42、オリフィスプレート43が順次積層される。ここで例えばドライフィルム42は、有機系樹脂により構成され、圧着により配置された後、インク液室、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後硬化される。これに対してオリフィスプレート43は、発熱素子12の上に微小なインク吐出口であるノズル44を形成するように所定形状に加工された板状部材であり、接着によりドライフィルム42上に保持される。これによりプリンタヘッド11は、ノズル44、インク液室45、このインク液室45にインクを導くインク流路等が形成されて作成される。
【0047】
プリンタヘッド11は、このようなインク液室45が紙面の奥行き方向に連続するように形成され、これによりラインヘッドを構成するようになされている。
【0048】
(1−2)実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド11は、半導体基板であるシリコン基板15に素子分離領域16が作成されて半導体素子であるトランジスタ17、18が作成され、絶縁層19により絶縁されて1層目の配線パターン21が作成される。また続いて絶縁層22、発熱素子12が作成された後、1層目の絶縁被覆層13、2層目の配線パターン25が作成される。さらに2層目の絶縁被覆層14が作成された後、熱処理により配線パターン間、配線パターンと発熱素子等との間の接続が安定化され、耐キャビテーション層41、インク液室45、ノズル44が順次形成されて作成される(図2〜図7)。
【0049】
このプリンタは、このようにして作成されたプリンタヘッド11のインク液室45にインクが導かれ、トランジスタ17、18による発熱素子12の駆動により、インク液室45に保持したインクが加熱されて気泡が発生し、この気泡によりインク液室45内の圧力が急激に増大する。プリンタでは、この圧力の増大によりインク液室45のインクがノズル44からインク液滴として飛び出し、このインク液滴が対象物である用紙等に付着する。
【0050】
プリンタでは、このような発熱素子の駆動が間欠的に繰り返され、これにより所望の画像等が対象物に印刷される。またプリンタヘッド11においては、この発熱素子12の間欠的な駆動により、インク液室45内において、気泡の発生、気泡の消滅が繰り返され、これにより機械的な衝撃であるキャビテーションが発生する。プリンタヘッド11では、このキャビテーションによる機械的な衝撃が耐キャビテーション層41により緩和され、これにより耐キャビテーション層41により発熱素子12が保護される。また絶縁被覆層13、14により発熱素子12へのインクの直接の接触が防止され、これによっても発熱素子12が保護される。
【0051】
しかして発熱素子12においては、このように間欠的な駆動により発熱して、この発熱による熱が絶縁被覆層13、14、耐キャビテーション層41を介してインク液室45のインクに伝搬し、インクの温度上昇によりインク液室45内に気泡が発生する。この実施の形態に係るプリンタヘッド11においては、このような発熱素子12の熱の熱伝導経路である2層目の絶縁被覆層14が、表面を清浄した1層目の絶縁被覆層13の上層に積層される。
【0052】
すなわちプリンタヘッド11では、プラズマCVD法により2層目の絶縁被覆層14を構成するシリコン窒化膜が成膜され(図1、図8)、この成膜の際に、初めに、高周波電源35によるアンモニアガスの励起により水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を含むプラズマ流が生成され、このプラズマ流が1層目の絶縁被覆層13の表面に照射される。ここで水素原子、水素ラジカル等の水素活性種においては、塩化物、炭化物、酸化物に対して強い還元作用を有することにより、このプラズマ流の照射によりプリンタヘッド11では、絶縁被覆層13の表面に形成された炭化物、酸化物等が還元されて除去され、これにより表面が清浄な状態とされる。その後シランガス、窒素ガスにより窒化シリコンの成膜種を含むプラズマ流が生成され、このプラズマ流により表面を清浄した絶縁被覆層13の上層にシリコン窒化膜が気相成長される。これによりプリンタヘッド11においては、絶縁被覆層13、14の間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止し、これにより過大な電力の印加により発熱素子12が過剰に発熱した場合でも、1層目の絶縁被覆層13から2層目の絶縁被覆層14の浮き上がりを防止することができる。従ってプリンタヘッド11においては、発熱素子12上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【0053】
またこのようなプラズマCVD法による清浄、成膜においては、使用するアンモニアガス、シランガス、窒素ガスが半導体製造プロセスで十分に実用実績のある材料であり、かつ既存の製造プロセスを利用するものであり、これにより製造プロセスにおいて、十分な信頼性を確保することができる。
【0054】
またこのようなプラズマCVD法による清浄においては、成膜と同一工程でかつ短時間で炭化物、酸化物等を除去することができ、これにより工程数の増大を防止することができ、また熱処理による前処理に比して半導体製造プロセスを短縮することができる。
【0055】
またこのようにして表面の清浄に供されるガスが絶縁被覆層の生成に供するアンモニアガスであることにより、表面の清浄が完了すると、絶縁被覆層の生成に供する他のガスを導入して、速やかに、絶縁被覆層を成膜することができ、これにより従来の絶縁被覆層の成膜装置を使用して、プリンタヘッドの信頼性を向上することができる。
【0056】
(1−3)実施の形態の効果
以上の構成によれば、水素活性種を含むプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜することにより、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。これにより例えば過大な電力の印加により発熱素子が過剰に発熱した場合でも、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【0057】
すなわちアンモニアガスと窒素ガスとを用いたプラズマCVD法により、水素活性種を含むプラズマ流を生成して下層の表面を清浄した後、アンモニアガス、窒素ガス及びシランガスを用いたプラズマCVD法により、絶縁被覆層を成膜することにより、絶縁被覆層とその下層との間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。
【0058】
またこの下層が、発熱素子上に形成された窒化シリコンによる1層目の絶縁被覆層であることにより、表面を清浄した1層目の絶縁被覆層の上層に2層目の絶縁被覆層を成膜することができ、これにより絶縁被覆層間に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。
【0059】
(2)第2の実施の形態
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドについて、発熱素子を周辺構成と共に示す断面図である。このプリンタヘッド51においては、ウエットエッチングにより2層目の配線パターン54が作成されて発熱素子53とシリコン基板52上の半導体等とが接続された後、水素活性種を含むプラズマ流の照射により発熱素子53の表面が清浄され、この上層にさらにシリコン窒化膜による絶縁被覆層55が形成される。なおこの実施の形態においては、このような2層目の配線パターン54に関連する工程が異なる点を除いて、第1の実施の形態に係るプリンタヘッド11と同一に構成されることにより、第1の実施の形態と同一の構成においては、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0060】
すなわちこのプリンタヘッド51は、シリコン基板52上に発熱素子53を駆動するトランジスタ17、18が作成され、層間絶縁層19により絶縁されて1層目の配線パターン21が作成される。プリンタヘッド51は、続いて層間絶縁層22が作成された後、タンタル膜が堆積され、ドライエッチング法により余剰なタンタル膜が除去され、これにより折り返し形状による発熱素子53が作成される。
【0061】
プリンタヘッド51は、続いてフォトリソグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、層間絶縁膜22に開口を形成してビアホール23が作成される。
【0062】
続いて図10(A)に示すように、プリンタヘッド51は、スパッタリング法により膜厚300〜500〔nm〕によるアルミニュームが堆積され、続いて図10(B)に示すように、フォトリソグラフィー工程、ウエットエッチング工程によりアルミニュームが選択的に除去され、これにより2層目の配線パターン54が作成される。このときプリンタヘッド51においては、このフォトリソグラフィー工程、ウエットエッチング工程により発熱素子53上のアルミニュームが除去され、これにより発熱素子53が露出される。
【0063】
プリンタヘッド51は、続いて第1の実施の形態で上述したと同様に、平行平板型のプラズマCVD装置31による清浄、成膜処理により発熱素子の表面が清浄された後、絶縁被覆層55であるシリコン窒化膜が堆積される。すなわちプリンタヘッド51においては、図10(C)に示すように、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種の照射により発熱素子53の表面に形成された炭化物から炭素が還元されて除去される。またプリンタヘッド51においては、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種の照射により発熱素子53の表面に形成された酸化物から酸素が還元されて除去される。これによりプリンタヘッド51は、発熱素子53の表面に形成された炭化物、酸化物等が取り除かれ、表面が清浄な状態とされる。
【0064】
このように発熱素子53の表面が清浄な状態とされると、プリンタヘッド51は、続いてこのプラズマCVD装置31において、シランガス、窒素ガスの導入により発熱素子53の表面を大気に曝露することなく、窒化シリコン成膜種を含むプラズマ流が照射され、これにより図10(D)に示すように、発熱素子53の上層に絶縁被覆層55であるシリコン窒化膜が気相成長される。なおこの実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の条件で炭化物、酸化物等を除去し、また第1の実施の形態と同様の条件で成膜した。
【0065】
このようにして絶縁被覆層55が作成されると、プリンタヘッド51は、続いて熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド51は、トランジスタ17、18の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン21と2層目の配線パターン54との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。プリンタヘッド51は、続いてスパッタリング装置のスパッタ成膜チェンバーに搭載された後、スパッタリング法によりタンタルによる耐キャビテーション層41の材料膜が膜厚200〔nm〕により堆積される。
【0066】
続いて図9に示すように、プリンタヘッド11は、フォトレジスト工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、耐キャビテーション層41の材料膜が所定形状により加工され、これにより耐キャビテーション層41が形成される。プリンタヘッド51は、続いて各チップにスクライビングされた後、ドライフィルム42、オリフィスプレート43が順次積層され、これによりインク液室45、ノズル44が形成されて作成される。
【0067】
この実施の形態においては、発熱素子の上層に絶縁被覆層を形成する場合に、事前に水素活性種を含むプラズマ流の照射により発熱素子の表面を清浄することにより、発熱素子と絶縁被覆層との間について、空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【0068】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、アンモニアガスとシランガスとを用いたプラズマCVD法により水素活性種を含むプラズマ流を照射して下層の表面を清浄する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これに代えて、シランガスを用いたプラズマCVD法により水素活性種を含むプラズマ流を照射して下層の表面を清浄するようにしてもよい。このような場合においては、図8との対比により図11に示すように、シランガスの導入により、水素原子、水素ラジカル等の水素活性種により表面に形成された炭化物、酸化物等を還元して除去する。
【0069】
すなわちシランガスにおいては、プラズマ中の電子との衝突によりSiH4 →SiH3 ++H、SiH4 →SiH2 ++H2、SiH4 →Si+ +H2 等で表
されるように水素原子、水素ラジカル等の水素活性種を生成する。
【0070】
さらにアンモニアガス、窒素ガスを導入し、プラズマCVD法によりシリコン窒化膜を堆積する。これによりシランガスを用いたプラズマCVD法により、水素活性種のプラズマ流を生成し、アンモニアガス、窒素ガス及びシランガスを用いたプラズマCVD法により、絶縁被覆層を成膜するようにしても、発熱素子上に炭化物、酸化物等による界面の形成を防止することができる。因みにこのような清浄、成膜においては、基板温度350〜400〔℃〕、高周波電力0.3〜1.0〔kW〕、シランガス流量300〜1900〔sccm〕に設定して炭化物、酸化物等を除去処理した場合であり、また基板温度350〜400〔℃〕、高周波電力0.3〜1.0〔kW〕、シランガス流量200〜300〔sccm〕、アンモニアガス流量1700〜1900〔sccm〕及び窒素ガス流量500〜1000〔sccm〕に設定し、これらの条件で成膜処理した場合である。
【0071】
また上述の第1の実施の形態においては、2層目の絶縁被覆層のみをプラズマCVD法により清浄、成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これに加えて、1層目の絶縁被覆層もプラズマCVD法により清浄、成膜するようにしてもよい。
【0072】
また上述の実施の形態においては、平行平板型のプラズマCVD装置により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、平行平板型のプラズマCVD装置に代えて、ICP(Inductive coupled Plasma:誘導結合)型プラズマCVD装置等を広く適用することができる。
【0073】
さらに上述の実施の形態においては、水素活性種を含むプラズマ流の照射により下層の表面を清浄する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、スパッタリング装置を用いて励起した不活性ガスの照射により下層の表面を清浄することも可能である。なおこの場合、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス等の励起した不活性ガスによりプラズマ中の陽イオンが下層の表面に衝突して表面の炭化物、酸化物等より炭素原子、酸素原子等を弾き出すことにより、表面の炭化物、酸化物等を除去することになる。
【0074】
また上述の実施の形態においては、折り返し形状により発熱素子を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、正方形形状により発熱素子を形成する場合等、種々の形状により発熱素子を形成する場合に広く適用することができる。
【0075】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等であるプリンタヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0076】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、絶縁被覆層を成膜することにより、発熱素子上における空隙の発生を防止して、長期間使用しても確実に液滴を飛び出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程に適用されるプラズマCVD装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す断面図である。
【図3】図2のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図である。
【図8】図1のプラズマCVD装置におけるガスの導入手順を電源の印加と共に示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドにおける発熱素子をその周辺構成と共に示す断面図である。
【図10】図9のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図11】他の実施の形態におけるガスの導入手順を図8との対比により示すタイムチャートである。
【図12】従来のプリンタヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
1、11、51……プリンタヘッド、2、15、52……シリコン基板、3、12、53……発熱素子、4、6、13、14、55……絶縁被覆層、7、41……耐キャビテーション層、17、18……トランジスタ、21、25、54……配線パターン、31……プラズマCVD装置
Claims (8)
- 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法において、
水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面を清浄した後、
前記発熱素子を前記液体より保護する絶縁被覆層を成膜する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - アンモニアガスと窒素ガスとを用いたプラズマCVD法により、前記水素活性種を含むプラズマ流を生成し、
アンモニアガス、窒素ガス及びシランガスを用いたプラズマCVD法により、前記絶縁被覆層を成膜する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。 - シランガスを用いたプラズマCVD法により、前記水素活性種を含むプラズマ流を生成し、
アンモニアガス、窒素ガス及びシランガスを用いたプラズマCVD法により、前記絶縁被覆層を成膜する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記下層が、前記発熱素子上に形成された窒化シリコンによる絶縁層である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記下層が、前記発熱素子である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドにおいて、
水素活性種を含むプラズマ流又は不活性ガスによるプラズマ流の照射により下層の表面が清浄された後、前記発熱素子を前記液体より保護する絶縁被覆層が成膜された
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記下層が、前記発熱素子上に形成された窒化シリコンによる絶縁層である
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。 - 前記下層が、前記発熱素子である
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
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---|---|---|---|
JP2002292319A JP2004122671A (ja) | 2002-10-04 | 2002-10-04 | 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド |
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JP2009166493A (ja) * | 2007-12-21 | 2009-07-30 | Canon Inc | 液体吐出ヘッドの製造方法 |
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2002
- 2002-10-04 JP JP2002292319A patent/JP2004122671A/ja active Pending
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