JP2004025664A - 酸素バリヤー性多層構造体 - Google Patents

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Hiroaki Goto
後藤 弘明
Ikuo Komatsu
小松 威久男
Eki Murakami
村上 恵喜
Takayuki Ishihara
石原 隆幸
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Abstract

【課題】酸化性有機成分の酸化反応に伴う臭気成分を内容品に移行させることなく、優れた加工性や機械的強度を維持しながら、湿熱時においても優れたガスバリヤー性を維持することができると共に、フレーバー性に優れた多層構造体を提供するにある。
【解決手段】多層構造体において、ガスバリヤー性樹脂に、酸化性有機成分と遷移金属触媒を配合した酸素吸収性バリヤー層と、該酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に位置する少なくとも1層の臭気バリヤー層とを有し、臭気バリヤー層の樹脂の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下であり、且つ該臭気バリヤー層の酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積が40000以下であることを特徴とする酸素バリヤー性多層構造体。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐酸素透過性に優れたガスバリヤー材を備えた酸素バリヤー性多層構造体に関し、より詳細には、臭気バリヤー層の存在により臭気物質の内容品への移行が有効に抑制された、フレーバー性に優れた酸素バリヤー性多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装容器としては、金属缶、ガラスビン、各種プラスチック容器等が使用されているが、プラスチック容器は、軽量であり、耐衝撃性にもある程度優れているという利点を有しているが、容器壁を透過する酸素による内容物の変質やフレーバー低下が問題となっている。
【0003】
特に、金属缶やガラスビンでは容器壁を通しての酸素透過がゼロであり、容器内に残留する酸素のみが問題であるのに対して、プラスチック容器の場合には器壁を通しての酸素透過が無視し得ないオーダーで生じ、内容品の保存性の点で問題となっている。
【0004】
これを防止するために、プラスチック容器では容器壁を多層構造とし、その内の少なくとも一層として、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のガス遮断性を有する樹脂を用いることが行われている。
また特表平2−500846号公報には、ポリマーから成り酸素捕集特性を有する組成物又は該組成物の層を含有する包装用障壁において、組成物が酸化可能有機成分の金属触媒酸化により酸素を捕集することを特徴とする包装用障壁が記載されており、酸化可能有機成分として、ポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドが使用されていることが記載されている。
【0005】
上記ガスバリヤー性に優れた樹脂、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、低湿度条件下ではきわめて優れた酸素遮断性を示すものの、高湿度条件下では酸素に対する透過性が極めて大きくなるという問題を有している。その一方、内容物の保存性を向上させるために、上記ガスバリヤー性樹脂は湯殺菌、ボイル殺菌、レトルト殺菌等の加熱殺菌包装技法と組み合わせて用いる場合が多く、この加熱殺菌時にEVOHは高湿度条件下に置かれるため、酸素透過性の大きい状態になるばかりでなく、EVOHが有する保水性のために、殺菌終了後も酸素透過性の大きい状態が続き、所定のガスバリヤー性が得られないのである。
【0006】
このような問題を解決するため、本発明者等は、遷移金属触媒と酸化性有機成分とを、特定のガスバリヤー性樹脂に配合してガスバリヤー層の厚さ方向断面における酸化性有機成分の分散構造及び分布構造を特定の範囲に制御すると、優れた加工性や機械的強度を維持しながら、この多層構造物の湿熱時における酸素透過係数を顕著に改善し得ることを見出した(特願2001−392301号)。
この多層構造体では、酸化性有機成分が遷移金属触媒の作用により専ら酸化されることにより酸素を吸収し、基材となるガスバリヤー性樹脂が実質上酸化されることがないため、優れた加工性や機械的強度を保持しながら、湿熱条件下に置かれた場合にも、酸素透過係数を低い値に抑制することができるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記多層構造体においては、酸素吸収作用である酸化性有機成分の酸化に伴って臭気物質が発生し、この臭気物質は酸素吸収性バリヤー層や、最内面に設けられた耐湿性樹脂層等を透過し、構造体内面側にまで達し、その結果、臭気物質が内容品に移行し、フレーバー性に劣るという問題が生じる。
従って本発明の目的は、酸化性有機成分の酸化反応に伴う臭気成分を内容品に移行させることなく、優れた加工性や機械的強度を維持しながら、湿熱時においても優れたガスバリヤー性を維持することができると共に、フレーバー性に優れた多層構造体を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、多層構造体において、ガスバリヤー性樹脂に、酸化性有機成分と遷移金属触媒を配合した酸素吸収性バリヤー層と、該酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に位置する少なくとも1層の臭気バリヤー層とを有し、臭気バリヤー層の樹脂の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下であり、且つ該臭気バリヤー層の酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積が40000以下であることを特徴とする酸素バリヤー性多層構造体が提供される。
【0009】
本発明の酸素バリヤー性多層構造体においては、
1.臭気バリヤー層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂の何れかから成ること、
2.臭気バリヤー層が更に脱臭剤或いは吸着剤を含有すること、
3.酸化性有機成分が酸素吸収性バリヤー層の厚み方向断面において1μm以下の面積法平均分散粒径を有し、且つその分散粒子により占める面積率が2%以上であること、
が好ましい。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明の多層構造体においては、ガスバリヤー性樹脂に、酸化性有機成分と遷移金属触媒を配合した酸素吸収性バリヤー層と、該酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に位置する少なくとも1層の臭気バリヤー層とを有し、臭気バリヤー層の樹脂の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下であり、且つ該臭気バリヤー層の酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積が40000以下であることが重要な特徴である。
【0011】
前述した通り、本発明の多層構造体における酸素吸収性バリヤー層は、ガスバリヤー性樹脂に酸化性有機成分と遷移触媒を配合してなるものである。この酸化性有機成分は、後述する遷移金属触媒の作用により専ら酸化されることにより酸素を吸収する作用を示すものである。
酸化性有機成分では、樹脂中の活性な炭素原子の位置で水素原子の引き抜きが容易に行われ、これによりラジカルが発生すると考えられる。遷移金属触媒と上記酸化性有機成分とを含有する組成物での酸素吸収は、当然のことながら、この有機成分の酸化を経由して行われるものであり、この酸化は、▲1▼遷移金属触媒による炭素原子からの水素原子の引き抜きによるラジカルの発生、▲2▼このラジカルへの酸素分子の付加によるパーオキシラジカルの発生、▲3▼パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜きの各素反応を通して生じると信じられる。
【0012】
従って、本発明の多層構造体における酸素吸収性バリヤー層では、以上説明したとおり、ガスバリヤー性樹脂が実質上酸化されることなく、ガス遮断性に役立ち、一方酸化性有機成分が酸化による酸素の吸収に役立ち、ガス遮断性と酸素吸収性とが、分離した機能分担で行われるのである。
【0013】
その一方、上記酸化性有機成分の酸化反応においては、上記▲1▼〜▲3▼の各素反応が進行することにより、臭気物質が副生され、この酸化反応により生じた臭気物質が内容品に移行して、フレーバー性を低下させることになる。この臭気物質の副生は上記酸化反応に固有なものであり、発生そのものを抑制することは困難である。
このため本発明においては、酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に少なくとも1層の臭気バリヤー層を存在させることにより、酸素吸収性バリヤー層から発生する臭気物質の構造体内側への移行を防止しているのである。
【0014】
本発明の多層構造体が有する臭気バリヤー層は、まずそれ自体ガスバリヤー性に優れたものであることが必要であることから、臭気バリヤー層を構成する樹脂の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下であることが重要である。
また臭気バリヤー層は特定の物質、すなわち酸素吸収性バリヤー層から発生する臭気物質を透過させないことが重要である。酸素吸収性バリヤー層から発生する臭気物質は、極性物質と非極性物質に分類でき、これらの両方の物質の透過を抑制することがフレーバー性の低下を防止するために必要である。
極性物質は水に可溶であることから、この臭気物質の透過量を示すパラメーターとしては、水分の透過性、すなわち透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)で表すことができ、一方、非極性物質の透過量のパラメーターとしては酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)で表すことができると考えられる。
【0015】
このような観点から、本発明の多層構造体中の臭気バリヤー層においては、該臭気バリヤー層の酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積で臭気物質に対するバリヤー性能を表し、この積が40000以下、特に20000以下、より好ましくは10000以下であることにより、酸素吸収性バリヤー層から発生する臭気物質を有効に遮断して、臭気物質の内容品への移行を防止することが可能となり、フレーバー性に優れた多層構造体となるのである。
【0016】
すなわち後述する実施例から明らかなように、上述した本願発明の特徴をすべて満たす多層構造体は、酸素吸収性バリヤー層を有していても容器内に特有の異臭がせず、臭気成分の移行が有効に防止されているのに対して(実施例1〜8)、臭気バリヤー層そのものを設けない場合には、酸素吸収性バリヤー層から発生する臭気成分が移行して、容器内に特有の異臭があり(比較例1)、また臭気バリヤー層として酸素透過係数(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)が1.2×10−10と4.5×10−11よりも大きい高密度ポリエチレンを用いた場合には、酸素透過量と透湿度の積が40000以下でも容器内に特有の異臭がしている(比較例4)。更に、臭気バリヤー層の酸素透過量と透湿度の積が42000と、40000よりも大きい場合には、臭気バリヤー層の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)であっても、容器内に特有の異臭がしていることからも(比較例3)、酸素透過係数、酸素透過量と透湿度の積のすべてが上記範囲にあることが臭気バリヤー性の点で重要であることが理解される。
【0017】
(酸素吸収性バリヤー層)
本発明の多層構造体中の酸素吸収性バリヤー層では、以上説明したとおり、ガスバリヤー性樹脂が実質上酸化されることなく、ガス遮断性に役立ち、一方酸化性有機成分が酸化による酸素の吸収に役立ち、ガス遮断性と酸素吸収性とが、分離した機能分担で行われる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体等のガスバリヤー性樹脂は、一旦湿熱履歴を経ると、ガスバリヤー性が大きく損なわれるという問題がある。これに対して、遷移金属触媒と酸化性有機成分とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体に配合し、微細な分散構造と多層分布構造を形成させたガスバリヤー層では、湿熱経時後の酸素透過係数を優れたレベルに維持できるという予想外の効果がある。
【0018】
特に、ガスバリヤー性樹脂が連続相(マトリックス)として存在し、且つ酸化性有機成分が分散相として存在する分散構造では、分散相である酸化性有機成分の表面積が増大しているので、酸素の吸収が能率的に行われると共に、分散層の酸化が進行した後にも、ガスバリヤー性熱可塑性樹脂が連続相として残るので、優れたガス遮断性や機械的強度が維持されるという利点がある。また、酸化性有機成分がガスバリヤー性熱可塑性樹脂の連続相で覆われているので、衛生的特性にも優れているという利点もある。
【0019】
また本発明では、酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向の断面における、酸化性有機成分の面積法平均分散粒径を1μm以下とするし、且つその分散粒子により占める面積率が2%以上であることにより、高湿度条件下における酸素透過量を低い値に抑制できる。
そして、前記酸化性有機成分の面積法平均分散粒径d及び酸化性有機成分分散粒子が占める面積率αは、以下の方法により求めることができる。
多層構造体より切り出した酸素吸収性バリヤー層を包埋樹脂に埋め込み、前記酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面が出るように包埋試料を研磨する。このまま、試料を走査型顕微鏡により観察し、酸化性有機成分分散粒子を観察することもできるが、例えば酸化性有機成分が実施例のようにポリエン系重合体の場合は、前記ポリエン系重合体の炭素−炭素二重結合部分をオスミウム酸等により染色することで、より鮮明な顕微鏡画像を得ることができる。
この顕微鏡画像をスキャナーにより取り込み、酸化性有機成分分散粒子部分とそれ以外の部分を識別し、酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面における所定面積S中に存在する酸化性有機成分分散粒子が占める面積Sと前記分散粒子の数nを求め、更に複数の視野より得たSとnよりΣSとΣnを算出して、下記式(1)により、前記面積法平均粒径dが求められる。
d=(ΣS/Σn)1/2      ・・(1)
また、複数の視野より得た前記SとSから、下記式(2)により、分散粒子の占める面積率αが求められる。
α=100×ΣS/ΣS     ・・(2)
【0020】
上記の分散及び分布構造の酸素吸収性バリヤー層を備えた多層構造体は、成形性が良好で、しかも形成される構造物の組織及び外観が一様で、厚みが均一であり、平滑性に優れているという利点を有している。
上記分散構造の制御方法は、それ自体公知の方法が利用でき、例えば酸化性有機成分を相溶化剤により微分散させる方法や、酸化性有機材料自体に後述するように特定の官能基を持たせることで、酸化性有機成分の微分散化を達成しても良い。要は、酸化性有機成分を上記分散構造に制御することにより、優れたガスバリヤー性が発現できるのである。
【0021】
[ガスバリヤー性樹脂]
本発明では、酸素吸収性バリヤー層のベース樹脂としては、20℃及び0%RHにおける酸素透過係数が10−12cc・cm/cm/sec/cmHg以下の熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、特に好適なものとして、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド乃至その共重合体、バリヤー性ポリエステル或いはそれらの組合せを挙げることができる。
【0022】
本発明では、酸素や香気成分に対するバリヤー性に特に優れた樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いるのが望ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、それ自体公知の任意のものを用いることができるが、例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
このエチレン−ビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して 0.01dL/g以上、特に0.05dL/g以上の粘度を有することが望ましい。
【0023】
ポリアミド樹脂としては、(a)ジカルボン酸成分とジアミン成分とから誘導された脂肪族、脂環族或いは半芳香族ポリアミド、(b) アミノカルボン酸或いはそのラクタムから誘導されたポリアミド、或いはこれらのコポリアミド或いはこれらのブレンド物が挙げられる。
【0024】
ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数4乃至15の脂肪族ジカルボン酸やテレフタール酸やイソフタール酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、ジアミン成分としては、 1,6− ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10− ジアミノデカン、1,12− ジアミノドデカン等の炭素数4〜25とくに6〜18の直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミンや、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4, 4′− ジアミノ−3,3′− ジメチルジシクロヘキシルメタン、特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0025】
アミノカルボン酸成分として、脂肪族アミノカルボン酸、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸や、例えばパラ−アミノメチル安息香酸、パラ−アミノフェニル酢酸等の芳香脂肪族アミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0026】
これらのポリアミドの内でもキシリレン基含有ポリアミドが好ましく、具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等の共重合体、或いはこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミンの如き脂肪族ジアミン、ピペラジンの如き脂環式ジアミン、パラ−ビス(2アミノエチル)ベンゼンの如き芳香族ジアミン、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムの如きラクタム、7−アミノヘプタン酸の如きω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸の如き芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられるが、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが特に好適に用いることができる。
これらのキシリレン基含有ポリアミドは、他のポリアミド樹脂に比して酸素バリヤー性に優れており、本発明の目的に好ましいものである。
【0027】
本発明では、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が40eq/10g以上、一層好適には末端アミノ基濃度が50eq/10gを超えるポリアミド樹脂であることが、ポリアミド樹脂の酸化劣化を抑制する点で好ましい。
ポリアミド樹脂の酸化劣化、つまり酸素吸収と、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とは密接な関係がある。即ち、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上述した比較的高い範囲にある場合には、酸素吸収速度は殆どゼロかゼロに近い値に抑制されるのに対して、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上記範囲を下回るようになると、ポリアミド樹脂の酸素吸収速度が増大する傾向がある。
【0028】
これらのポリアミドもフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、濃硫酸中1.0g/dl の濃度で且つ30℃の温度で測定した相対粘度(ηrel)が1.1 以上、 特に1.5 以上であることが望ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂として、テレフタル酸やイソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコールのようなジオール類とから誘導された熱可塑性ポリエステルを用いることができる。
ガスバリヤー性に優れたものとして、いわゆるガスバリヤー性ポリエステルを用いることもできる。このガスバリヤー性ポリエステルは、重合体鎖中に、テレフタル酸成分(T)とイソフタル酸成分(I)とを、
T:I=95: 5乃至 5:95
特に  75:25乃至25:75
のモル比で含有し且つエチレングリコール成分(E)とビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン成分(BHEB)とを、
E:BHEB=99.999:0.001 乃至2.0 :98.0
特に    99.95 :0.05 乃至40 :60
のモル比で含有する。BHEBとしては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが好ましい。
このポリエステルは、少なくともフィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般にフェノールとテトラクロルエタンとの60:40の重量比の混合溶媒中、30℃の温度で測定して、0.3 乃至2.8 dl/g、特に0.4 乃至1.8dl/g の固有粘度[η]を有することが望ましい。
ポリグリコール酸を主体とするポリエステル樹脂、或いはこのポリエステル樹脂と上記芳香族ジカルボン酸とジオール類とから誘導されたポリエステル樹脂をブレンドしたポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0030】
[酸化性有機成分]
本発明の多層構造体においては、酸素吸収性バリヤー層として、上記ガスバリヤー性樹脂に、遷移金属触媒と酸化性有機成分とを配合する。
かかる酸化性有機成分としては、水素の引き抜きが容易に行えるような活性な炭素原子を有するものが好ましく、このような活性炭素原子としては、これに必ずしも限定されないが、炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子、炭素側鎖の結合した第三級炭素原子、活性メチレン基が挙げられる。
酸化性有機成分としては、ポリエン系重合体を用いることが好ましい。かかるポリエン系重合体に用いるポリエンとしては、炭素原子数4〜20のポリエン、鎖状乃至環状の共役乃至非共役ポリエンから誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーが好適に使用される。
これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン、クロロプレンなどが挙げられる。
これらのポリエンは、単独で或いは2種以上の組み合わせで、或いは他の単量体との組み合わせで、単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体などの形に組み込まれる。
ポリエンとの組み合わせで用いられる単量体としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどの単量体も使用可能である。
ポリエン系重合体としては、具体的には、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0031】
重合体中における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよく、要は酸化可能なものであればよいが、ビニル基の形のものが酸化速度が速い点で好ましい。
【0032】
本発明に用いる酸化性有機成分は官能基を有することが好ましい。官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、カルボニル基などが挙げられるが、カルボン酸基、カルボン酸無水物基が、相溶性等の点で特に好ましい。これらの官能基は樹脂の側鎖に存在していても、末端に存在していても良い。
酸化性有機成分がポリエン系重合体である場合、これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、上記の官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。
【0033】
ポリエン系重合体にカルボン酸基乃至カルボン酸無水物基を導入するために用いる単量体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体を用いるのが望ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0034】
ポリエン系重合体の酸変性は、ポリエン系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸またはその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述したポリエン系重合体と不飽和カルボン酸またはその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。
【0035】
本発明の目的に特に好適なカルボン酸乃至カルボン酸無水物基を有する酸化性有機成分は、不飽和カルボン酸乃至その誘導体を、酸価が30mg/g以上となる量で含有していることが好ましい。
不飽和カルボン酸乃至その誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸化性有機成分のエチレン−ビニルアルコール共重合体への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。
【0036】
本発明に用いる酸化性有機成分は、ポリエン系重合体のカルボン酸乃至カルボン酸無水物変性体であって、酸乃至酸無水物で変性された状態で液状樹脂であることがガスバリヤー性樹脂に対する分散性の点で好ましい。
本発明に用いる酸化性有機成分は、遷移金属触媒の存在下において、酸化性有機成分1g当たり常温で2×10−3mol以上、特に4×10−3mol以上の酸素を吸収する能力を有することが好ましい。すなわち、酸素吸収能力が上記値より小さい場合、良好な酸素バリヤー性を発現させるためには、多量の酸化性有機成分をガスバリヤー性樹脂に配合する必要が生じ、この結果、配合した樹脂組成物の加工性や成形性の低下を招く傾向がある。
【0037】
[遷移金属触媒]
本発明に用いる遷移金属触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、本発明の目的に特に適したものである。
【0038】
遷移金属触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩或いは有機酸塩或いは錯塩の形で一般に使用される。
無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
一方有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
【0039】
酸素吸収性バリヤー層を構成する樹脂組成物は、酸化性有機成分の配合量を樹脂組成物中30重量%以下、特に20重量%以下とすることが樹脂組成物の加工性、成形性の点から好ましい。
また、この樹脂組成物においては、遷移金属触媒が上記合計量(A+B)に対して、遷移金属量として100乃至1000ppm、特に200乃至500ppmの量で含有されていることが好ましい。
遷移金属触媒の量が上記範囲を下回ると、上記範囲内にある場合に比して、ガスバリヤー性が低下する傾向があり、一方この量が上記範囲を上回ると、樹脂組成物の混練成形時における劣化傾向が増大するので、やはり好ましくない。
更に、酸化性有機成分を、酸素吸収性バリヤー層の厚み方向断面における面積法平均分散粒径が1μm以下、その分散粒子により占める面積率が2%以上となるように、分散状態を制御することも重要である。分散粒径が上記範囲より大きいと成形性の低下や高湿度下でのバリヤー性の低下を招く傾向があり、また、面積率が上記範囲より小さいとバリヤー性の低下を招く傾向がある。
【0040】
遷移金属触媒及び酸化性有機成分をエチレン−ビニルアルコール共重合体等に配合するには、種々の手段を用いることができる。この配合には、格別の順序はなく、任意の順序でブレンドを行ってよい。
しかしながら、上記各成分のブレンドを均一に行い、しかも使用前における無駄な酸化を可及的に防止するためには、遷移金属触媒はエチレン−ビニルアルコール共重合体等のベース樹脂に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、一般に遷移金属触媒を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末或いは粒状のエチレン−ビニルアルコール共重合体等のベース樹脂とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
【0041】
一方、酸化性有機成分は、上記遷移金属触媒を担持させたエチレンビニルアルコール共重合体等のベース樹脂にメルトブレンドにより配合するのがよく、このようにすることにより、遷移金属触媒と酸化性有機成分との副反応や前反応を防止することができる。
【0042】
遷移金属触媒を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができ、一般に遷移金属触媒の濃度が5乃至90重量%となるような濃度で用いるのがよい。
【0043】
エチレン−ビニルアルコール共重合体等のベース樹脂、酸化性有機成分及び遷移金属触媒の混合、及びその後の保存は、組成物の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下或いは窒素気流中での混合或いは乾燥が好ましい。
この混合及び/または乾燥は、ベント式或いは乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。
【0044】
本発明の最も好適な態様では、サイドフィードを備えた二軸押出機を用い、遷移金属触媒をまぶしたエチレン−ビニルアルコール共重合体等のベース樹脂を予め溶融混練し、この溶融混練物中に酸化性有機成分を供給し、両者の一様な混練を達成する。
上記2軸押出機を用いる混練方式では、混練を低い温度及び圧力で行うことが可能であり、ゲル等の発生を防止しながら、均一な混練物を得ることができる。
【0045】
本発明で用いる酸素吸収性バリヤー層には、一般に必要ではないが、所望によりそれ自体公知の活性化剤を配合することができる。活性化剤の適当な例は、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン・メタクリル酸共重合体、各種アイオノマー等の水酸基及び/またはカルボキシル基含有重合体である。
これらの水酸基及び/またはカルボキシル基含有重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部当たり30重量部以下、特に0.01乃至10重量部の量で配合することができる。
【0046】
本発明に用いる酸素吸収ガスバリヤー層には、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム、等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、およびそれらの混合系が一般に用いられる。滑剤の添加量は、熱可塑性基準で50乃至1000ppmの範囲が適当である。
【0047】
(臭気バリヤー層)
本発明の多層構造体における臭気バリヤー層を構成する樹脂は、上述した通り、酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下、且つ酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積が40000以下である限り、従来公知のガスバリヤー性樹脂を用いることができ、特に酸素吸収性バリヤー層で述べたと同様のガスバリヤー性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂を用いることができる。
また臭気バリヤー層においては、上記以外にも環状オレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂、特にエチレンと環状オレフィンとの共重合体を用いることができる。
上記臭気バリヤー層を構成する樹脂は、ガラス転移点(Tg)が50℃以上であることが好ましい。
【0048】
臭気バリヤー層には、脱臭剤或いは吸着剤を含有することが好ましい。これにより、臭気成分を吸着して、臭気成分の多層構造体の内側への移行を更に有効に防止できる。
脱臭剤或いは吸着剤としては、それ自体公知のもの、例えば天然ゼオライト、合成ゼオライト、シリカゲル、活性炭、添着活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、クレー、ケイソウ土、カオリン、タルク、ベントナイト、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロタルサイト、アミン担持多孔質シリカ等を、単独或いは2種以上の組合せで使用することができるが、アルデヒドとの反応性の点で、アミン担持多孔質シリカ等のアミノ基を含む物質が、特に好ましい。
これら脱臭剤或いは吸着剤は、臭気バリヤー層に均一に分散させるため、通常分散平均粒径が10μm以下であることが好ましい。
これら脱臭剤或いは吸着剤は臭気バリヤー層中に0.1乃至5重量%の量で用いることが好ましく、添加方法は、そのまま添加してもよいがマスターバッチの形で添加させることが分散性の点から好ましい。
【0049】
(多層構造体)
本発明では、上記酸素吸収性バリヤー層と、この酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に少なくとも1層の上記臭気バリヤー層を設け、必要により他の樹脂層の少なくとも1層と組み合わせて、カップ、トレイ、ボトル、チューブ容器、パウチ等の形のプラスチック多層構造体とする。
一般に、酸素吸収性バリヤー層は、容器などの外表面に露出しないように容器などの外表面よりも内側に設けるのが好ましく、また内容物との直接的な接触を避ける目的で、容器などの内表面より外側に設けるのが好ましい。かくして、多層の樹脂容器の少なくとも1個の中間層として、酸素吸収性バリヤー層を設けるのが望ましい。
また臭気バリヤー層も好適には、酸素吸収性バリヤー層よりも内側に、やはり中間層として設けることが好ましい。また臭気バリヤー性をより優れたものにするには、異なる種類の樹脂から成る臭気バリヤー層を2層以上設けてもよい。
【0050】
また上記酸素吸収性バリヤー層及び臭気バリヤー層以外の他の樹脂層を組み合わせることも勿論可能であり、例えば、オレフィン系樹脂や熱可塑性ポリエステル樹脂などの耐湿性樹脂等が挙げられる。
オレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリグリコール酸を主体とするポリエステル樹脂、或いはこれらの共重合ポリエステル、更にはこれらのブレンド物等が挙げられる。
【0051】
容器積層構造の適当な例は、酸素吸収性バリヤー層をOBR、臭気バリヤー層をSBRとして表して、次の通りである。尚、左側を外面側、右側を内面側として表す。
四層構造:PET/OBR/SBR/PET、PE/OBR/SBR/PE、PP/OBR/SBR/PP、PE/OBR/SBR/PET、
五層構造:PE/OBR/SBR1/SBR2/PE、PET/OBR/SBR1/SBR2/PET、PE/PET/OBR/SBR/PET
などである。
【0052】
上記積層体の製造に当たって、各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。
このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1乃至700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10乃至500(meq)/100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着剤樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合熱可塑性等の1種又は2種以上の組合せである。これらの樹脂は、同時押出或いはサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。
また、予じめ形成された酸素吸収性バリヤー性樹脂フィルム、臭気バリヤー性樹脂フィルム、及び耐湿性樹脂フィルムとの接着積層には、イソシアネート系或いはエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用される。
【0053】
本発明の多層構造体において、酸素吸収性バリヤー層の厚みは、特に制限はないが、一般に3乃至100μm、特に5乃至50μmの範囲にあるのが好ましい。すなわち、酸素吸収性バリヤー層の厚みがある範囲よりも薄くなるとガスバリヤー性能が劣り、またある範囲よりも厚くなってもガスバリヤー性の点では格別の利点がなく、樹脂量が増大するなど経済性の点、材料の可撓性や柔軟性が低下するなどの容器特性の点では不利となるからである。
また臭気バリヤー層の厚みは、特に制限はないが、一般に5乃至50μm、特に10乃至40μmの範囲にあるのが好ましい。すなわち臭気バリヤー層の厚みはあまり薄くなると、臭気バリヤー層樹脂の酸素透過係数が本発明で規定する範囲内に設定することが困難になり、厚すぎても上記酸素吸収性バリヤー層同様に、樹脂量が増大するなど経済性の点、材料の可撓性や柔軟性が低下するなどの容器特性の点では不利となるからである。
【0054】
本発明の多層構造体において全体の厚みは、用途によっても相違するが、一般に30乃至7000μm、特に50乃至5000μmのあるのがよい。
酸素吸収性バリヤー性中間層の厚みは、全体の厚みの0.5乃至95%、特に1乃至50%の厚みとするのが適当である。
また、臭気バリヤー層の厚みは、全体の厚みの0.5乃至20%、特に1乃至10%の厚みとするのが適当である。
【0055】
本発明の多層構造体は、前述した酸素吸収性バリヤー層及びその内面側に臭気バリヤー層を用いる点を除けば、それ自体公知の方法で製造が可能である。
すなわち、多層押出成形体の製造には、それ自体公知の共押出成形法を用いることができ、例えば樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて通常の押出成形を行えばよい。
また、多層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により多層射出成形体を製造することができる。
更に、多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
【0056】
フィルム等の包装材料は、種々の形態の包装袋として用いることができ、その製袋は、それ自体公知の製袋法で行うことができ、三方或いは四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋などが挙げられるが、この例に限定されない。
【0057】
本発明の多層容器は、酸素による内容物の香味低下を防止しうる容器として有用である。
充填できる内容物としては、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク、ウーロン茶、緑茶等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品などが挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0058】
【実施例】
本発明を次の例で更に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0059】
[酸素吸収性バリヤー材の作製]
32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット(EP−F101B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICNATE5000:大日本インキ化学工業(株))をタンブラーで混合し、コバルト量で350ppmのネオデカン酸コバルトをエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット表面に均一に付着させた。
【0060】
次いで、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、スクリュー回転数100rpmで低真空ベントを引きながら、液体フィーダーにより、無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(M−2000−20、日本石油化学(株))を、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂970重量部に対して30重量部となるように滴下し、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収性バリヤー材ペレットを作製した。
【0061】
[酸素バリヤー性能の測定]
窒素ガスで置換されたバキュームグローブボックス内で、試験に供する多層容器中に1ccの蒸留水を入れて、容器を密封した後、この容器を23℃−85%RHの恒温槽中で経時し、1週間経時後の容器内の酸素濃度をガスクロマトグラフィー(GC−3BT:島津製作所(株)、検出器:TCD(60℃)、カラム:モレキュラーシーブ5A(100℃)、キャリアーガス:アルゴン)により測定した。
【0062】
[臭気評価]
酸素バリヤー性の評価に使用した容器について、容器内の気体の臭気を5名のパネラーによる官能試験で評価した。
[酸素透過係数、酸素透過量及び透湿量の測定]
臭気バリヤー層に使用した樹脂を用いて、多層容器胴部の臭気バリヤー層の厚みと同一厚みのフィルムを作製した。このフィルムについて、酸素透過係数測定装置(OX−TRAN 2/20:モダンコントロール社)を用いて23℃−0%RHの酸素透過係数及び23℃−88%RHの酸素透過量を測定し、更に、透湿度測定装置(PERMATRAN W3/30:モダンコントロール社)を用いて40℃−90%RHの透湿度を測定した。この値より、多層容器胴部の臭気バリヤー層の酸素透過量と透湿度の積を算出した。以下の記載中、酸素透過係数の単位は、cc・cm/cm/sec/cmHg、また、酸素透過量の単位は、cc/m/day/atm、透湿度の単位は、g/m/dayである。また、酸素透過係数及び酸素透過量×透湿度の値は有効数字2桁で表した。
【0063】
[実施例1]
多層ダイヘッドを備えたダイレクトブロー成形機を用いて、胴部の構成が、外側よりLDPE層(100μm)/接着層(20μm)/酸素吸収性バリヤー材層(20μm)/臭気バリヤー層(20μm)/接着層(20μm)/LDPE層(400μm)の口径44mm、内容積125ccの多層ボトルを作製した。臭気バリヤー層には、酸素透過係数が4.5×10−15のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EP−F101B:(株)クラレ)を用いた。このボトルの胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は3800であった。この容器の酸素吸収性バリヤー材層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また、容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0064】
[実施例2]
多層ダイヘッドを備えたダイレクトブロー成形機を用いて、胴部の構成が、外側よりLDPE層(100μm)/接着層(20μm)/酸素吸収性バリヤー材層(20μm)接着層(20μm)/臭気バリヤー材層(20μm)/接着層(20μm)/LDPE層(400μm)の口径44mm、内容積125ccの多層ボトルを作製した。臭気バリヤー層に、酸素透過係数が4.0×10−13の芳香族ポリアミド樹脂(MXナイロン6007、三菱瓦斯化学(株))を用いる以外は、実施例2と同様にして多層ボトルを作製した。この容器の胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は3700であった。この容器の酸素吸収性バリヤー材層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0065】
[実施例3]
臭気バリヤー層に、酸素透過係数が2.5×10−11のポリエステル樹脂(Easter PETG6763、イーストマンケミカル社)を用い、臭気バリヤー層の厚みを23μmとする以外は、実施例2と同様にして多層ボトルを作製した。この容器の胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は40000であった。この容器の酸素吸収性バリヤー材層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0066】
[実施例4]
臭気バリヤー層に、酸素透過係数が4.5×10−11の環状オレフィン樹脂(アペル8008T、三井化学(株))を用いる以外は、実施例2と同様にして多層ボトルを作製した。胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は3000であった。この容器の酸素吸収性バリヤー材層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0067】
[実施例5]
多層ダイヘッドを備えたダイレクトブロー成形機を用いて、胴部の構成が、外側よりLDPE層(100μm)/接着層(20μm)/臭気バリヤー層1(20μm)/酸素吸収性バリヤー材層(20μm)/臭気バリヤー層2(20μm)/接着層(20μm)/LDPE層(400μm)の口径44mm、内容積125ccの多層ボトルを作製した。臭気バリヤー層1、2には、酸素透過係数が4.5×10−15のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EP−F101B:(株)クラレ)を用いた。この容器の酸素吸収性バリヤー層より内層側に位置する胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は3800であった。この容器の酸素吸収性バリヤー材層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また、容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。この多層容器の場合、容器外面側にも臭気の漏れがなく、口部をシールした多層容器を内容積2000ccのレトルトパウチ用のアルミ積層体から成る袋内に10個封入し、室温で1週間保管した後、前記袋内の空気の臭気を嗅いでも、問題となる異臭はなかった。
【0068】
[実施例6]
多層ダイヘッドを備えたダイレクトブロー成形機を用いて、胴部の構成が、外側よりLDPE層(100μm)/接着層(20μm)/酸素吸収性バリヤー材層(20μm)/臭気バリヤー層(30μm)/接着層(20μm)/LDPE層(200μm)の内容積200ccの多層チューブを作製した。臭気バリヤー層には、酸素透過係数が4.5×10−15のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EP−F101B:(株)クラレ)を用いた。胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は1600であった。この容器の酸素吸収性バリヤー材層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また、容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0069】
[実施例7]
多層ダイヘッドを備えたシート成形機により、容器外面となる側より、ランダムPP層(300μm)/接着層(20μm)/酸素吸収性バリヤー材層(60μm)/臭気バリヤー層(90μm)/接着層(20μm)/ランダムPP層(580μm)の多層シートを作製した。この多層シートを用いて固相成形法により、H/D比(高さ/口径比)が0.8、内容積125ccの丸形カップを成形した。胴部の臭気バリヤー層の厚みは25μmであった。臭気バリヤー層には、酸素透過係数が4.5×10−15のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EP−F101B:(株)クラレ)を用いた。この容器の胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は2200であった。この容器の酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また、容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0070】
[実施例8]
アミン担持多孔質シリカ系脱臭剤(ケスモン NS−103:東亞合成(株))を1wt%ブレンドした酸素透過係数が4.5×10−15のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EP−F101B:(株)クラレ)を臭気バリヤー層に用いる以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを作製した。この容器の胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は3800であった。この容器の酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。また、容器内に籠もった気体の臭気も問題なかった。
【0071】
[比較例1]
臭気バリヤー層を設けないこと以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを作製した。この容器の酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。しかし、容器内に籠もった気体には、特有の異臭があった。
【0072】
[比較例2]
酸素吸収バリヤー材層の代わりに32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EP−F101B:(株)クラレ)を用い、臭気バリヤー層を設けないこと以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを作製した。この容器の場合、容器内酸素濃度の増加が認められるが、酸素吸収性バリヤー材を使用していないため、臭気バリヤー層がなくとも容器内に籠もった気体には異臭はなかった。
【0073】
[比較例3]
胴部臭気バリヤー層の厚みを6μmとする以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを作製した。胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量は42000であった。この容器の酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。しかし、胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿量の値が本発明の範囲を逸脱しているので、容器内に籠もった気体には、特有の異臭が感じられた。
【0074】
[比較例4]
臭気バリヤー層に、厚さ100μmの酸素透過係数1.2×10−10の高密度ポリエチレン(KZ145N:日本ポリオレフィン(株))を使用する以外は、実施例2と同様にして多層ボトルを作製した。この容器の胴部臭気バリヤー層の酸素透過量×透湿度は2100であった。この容器の酸素吸収性バリヤー層の厚さ方向断面中に分散する酸化性有機成分の面積法平均粒径は1μm以下、また酸化性有機成分の占める面積率は2%以上であった。容器内酸素濃度は0.01%以下で実質的にゼロ透過と認められた。この容器の場合、胴部臭気バリヤー層の酸素透過量と透湿度の積は本発明の範囲にあったが、酸素透過係数が本発明範囲を逸脱しているため、容器内に籠もった気体には、特有の異臭が感じられた。
【0075】
【表1】
Figure 2004025664
【0076】
【発明の効果】
本発明の多層構造体によれば、ガスバリヤー性樹脂に、酸化性有機成分と遷移金属触媒を配合した酸素吸収性バリヤー層と、該酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に位置する少なくとも1層の臭気バリヤー層とを有し、臭気バリヤー層の樹脂の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下であり、且つ該臭気バリヤー層の酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積が40000以下であることにより、酸化性有機成分の酸化反応に伴う臭気成分を内容品に移行させることなく、優れた加工性や機械的強度を維持しながら、湿熱時においても優れたガスバリヤー性を維持することができると共に、フレーバー性にも優れた多層構造体とすることができた。

Claims (7)

  1. 多層構造体において、ガスバリヤー性樹脂に、酸化性有機成分と遷移金属触媒を配合した酸素吸収性バリヤー層と、該酸素吸収性バリヤー層の少なくとも内側に位置する少なくとも1層の臭気バリヤー層とを有し、臭気バリヤー層の樹脂の酸素透過係数が4.5×10−11(cc・cm/cm/sec/cmHg:23℃−0%RH)以下であり、且つ該臭気バリヤー層の酸素透過量(cc・m/day/atm:23℃−88%RH)と透湿度(g/m/day:40℃−90%RH)の積が40000以下であることを特徴とする酸素バリヤー性多層構造体。
  2. 臭気バリヤー層がエチレン−ビニルアルコール共重合体から成ることを特徴とする請求項1に記載の酸素バリヤー性多層構造体。
  3. 臭気バリヤー層がポリアミド樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の酸素バリヤー性多層構造体。
  4. 臭気バリヤー層がポリエステル樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の酸素バリヤー性多層構造体。
  5. 臭気バリヤー層がオレフィン系樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の酸素バリヤー性多層構造体。
  6. 臭気バリヤー層が更に脱臭剤或いは吸着剤を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の酸素バリヤー性多層構造体。
  7. 酸化性有機成分が酸素吸収性バリヤー層の厚み方向断面において1μm以下の面積法平均分散粒径を有し、且つその分散粒子により占める面積率が2%以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の酸素バリヤー性多層構造体。
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