JP2004019502A - 機関弁の電磁駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】機関弁の開閉時の急激な作動を抑制して、打音や摩耗音の発生を防止すると共に、機関への搭載性を向上する。
【解決手段】ケーシングの内部に、アーマチュアと、開閉弁用電磁石及び開弁側スプリングが収納され、閉弁側スプリングは、保持孔底面との間に弾装されている。前記アーマチュアの中央にガイドロッド28を介して固定されたほぼ正方形の矩形枠状のフォロア部材35の内部に、ブラケット36にカム軸37を介して支持された揺動カム38を回動自在に収容した。この揺動カムは、細長い雨滴状に形成されて、第1,第2フォロア面35a、35bに対して転接するトラベル量の長いランプ部42b、43bを有していると共に、前記カム軸の端部にブラケットの段差面36bに適宜当接して揺動カムの過回動を規制するストッパ部材39が固定されている。
【選択図】 図1
【解決手段】ケーシングの内部に、アーマチュアと、開閉弁用電磁石及び開弁側スプリングが収納され、閉弁側スプリングは、保持孔底面との間に弾装されている。前記アーマチュアの中央にガイドロッド28を介して固定されたほぼ正方形の矩形枠状のフォロア部材35の内部に、ブラケット36にカム軸37を介して支持された揺動カム38を回動自在に収容した。この揺動カムは、細長い雨滴状に形成されて、第1,第2フォロア面35a、35bに対して転接するトラベル量の長いランプ部42b、43bを有していると共に、前記カム軸の端部にブラケットの段差面36bに適宜当接して揺動カムの過回動を規制するストッパ部材39が固定されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用内燃機関の機関弁を主として電磁力で開閉駆動する電磁駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の電磁駆動装置としては、例えば特開平8−21220号公報等に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、機関のシリンダヘッドに摺動自在に設けられた吸気弁と、吸気弁を開閉駆動する電磁駆動機構とを備えている。
【0004】
前記吸気弁は、吸気ポートの開口端を開閉する傘部と、該傘部の上端部に一体に設けられたバルブステムとを有している。
【0005】
前記電磁駆動機構は、シリンダヘッド上に固定されたケーシング内に挿通されたバルブステムの上端部に円板状のアーマチュアが固定されていると共に、ケーシングの内部上下位置に前記アーマチュアを吸引して吸気弁を開閉作動させる閉弁用電磁石及び開弁用電磁石が配置されている。
【0006】
また、ケーシングの上壁とアーマチュアの上面との間には、吸気弁を開方向へ付勢する開弁側スプリングが弾持され、一方、シリンダヘッド上面のシート溝底面とアーマチュアの下面との間には、吸気弁を閉方向へ付勢する閉弁側スプリングが弾持され、これら2つのスプリングによってアーマチュアを上下方向の中立位置に保持するようになっている。さらに、前記各開閉弁用電磁石は、夫々のコイルに増幅器を介して電子制御ユニットからの制御電流が出力されるようになっている。
【0007】
この電子制御ユニットは、機関回転数センサや閉弁用電磁石の温度検出センサからの検出信号に基づいて開閉用電磁石の通電量を制御するようになっている。
【0008】
そして、前記2つのスプリングのばね力と2つの電磁石7,8による吸引力とによって、各スプリング9,10に蓄力して位置エネルギーとして保持し、電磁力の開放,吸引を交互に繰り返すことによって吸気弁2を開閉駆動させるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の電磁駆動装置にあっては、吸気弁の開閉時に各開閉用電磁石の電磁吸引力が、該吸引力に対抗する各スプリングのばね力よりも増大してしまうため、閉弁時には傘部がバルブシートに激しく衝突し、また開弁時にはアーマチュアが開弁用電磁石に衝突してしまうおそれがある。
【0010】
すなわち、まず、閉弁時に閉弁用電磁石の吸引力にアーマチュアが上方に吸引される。よって、吸気弁が上方へ摺動すると、閉弁側スプリングが伸長される一方、開弁側スプリングが圧縮されてばね力が増大し、ばね力が蓄えられる。
【0011】
次に、開弁時には、閉弁用電磁石にOFF信号(非通電信号)が出力される一方、開弁用電磁石にON信号(通電信号)が出力されて、アーマチュアが下方へ吸引される。これによって、吸気弁が下方へ摺動すると、開弁側スプリングが伸長される一方、閉弁側スプリングが圧縮されてばね力が増大しばね力が蓄えられる。
【0012】
したがって、閉弁時及び開弁時には、開弁側,閉弁側の各コイルスプリングの増大したばね力で吸気弁の摺動速度が減速させられるが、かかる開,閉切換時には圧縮及び伸長したばね反力に加えて吸引側の各電磁石の吸引力が急激に増加する。つまり、各電磁石の電磁吸引力は、アーマチュアと各電磁石の各固定コアとの間の距離のほぼ2乗に反比例して増大する。したがって、かかる増大した吸引力が各スプリングの圧縮,伸長側の合成ばね力に打ち勝ってアーマチュアを十分に減速させることなく、上方あるいは下方向へ急激に移動させる。
【0013】
したがって、吸気弁は、最大開時と閉時に急激なリフト,ダウンし、この結果、閉時には傘部がバルブシートに衝突し、開時にはアーマチュアが開弁用電磁石に衝突して、夫々大きな打音を発生させると共に、アーマチュアやバルブシート等の摩耗を惹起するおそれがある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来装置の課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、揺動カムのカム面に、前記アーマチュアの上下動に伴い前記フォロア面に転接して緩衝領域を創生するランプ部を比較的長く形成すると共に、該ランプ部を前記アーマチュアの最上昇位置あるいは最下降位置から反対方向へ作動初期の時点から前記各フォロア面に当接するように形成すると共に、カム軸に、該カム軸から揺動カムの先端部までの長さよりも短いストッパ部材を前記揺動カムと連動して設け、機関弁の開閉作動の終端域において前記揺動カムが回動してカム面のベースサークル部が前記各フォロア面に転接した際に、ストッパ部材によって前記揺動カムのそれ以上の回動を規制するようにしたことを特徴としている。
【0015】
したがって、本発明によれば、機関始動時にアーマチュアが開弁用電磁石によって吸引されて閉弁側ばね部材のばね力に抗して下降し、フォロア部材が揺動カムの一方のカム面を下方へ押圧すると、この揺動カムのカム面のランプ部が一方のフォロア面に転接し、やがてベースサークル部に達してフォロア部材の下降を停止させ、同時にフォロア部材が機関弁を押圧して最大開弁位置まで下降させる。
【0016】
一方、機関弁の閉時には、開弁用電磁石が非通電される一方、閉弁用電磁石に通電され、これによってアーマチュアは開弁用のばね部材のばね力に抗して閉弁用電磁石に吸引されることにより機関弁も閉弁方向へ上昇する。
【0017】
そして、かかる機関弁の開閉作動時には、フォロア部材の上下動に伴って揺動カムのそれぞれのカム面が、対向する各フォロア面上を転接するわけであるが、かかる機関弁の開閉作動の作動初期、つまりアーマチュアの最上昇位置あるいは最下降位置から反対方向へ作動した作動初期の時点で、いずれか一方のフォロア面にランプ部が転接し、その後のアーマチュアの上昇、下降に伴ってそのまま前記ランプ面がフォロア面に転接する状態となる。すなわち、アーマチュアのストロークエンドから反対方向へ作動した作動初期の時点で、いずれか一方のフォロア面にランプ部が転接し、その後のアーマチュアの上昇、下降に伴ってそのまま前記ランプ部がフォロア面に揺動カムの軸心からのトラベル長さが長い状態で転接することになることから、揺動カムの角加速度が小さくなるので、機関弁の開閉作動初期から終端域付近までの制動トルクが小さくなる。したがって、機関弁の開閉作動を妨げずに機関弁の開閉作動時間が短くなる。
【0018】
その後、機関弁の開閉作動の終端域、つまりアーマチュアの最上昇付近あるいは最下降付近(ストロークエンド)では、揺動カムはフォロア面に対してランプ部からベースサークル部へ転移する。このため、かかる機関弁の開閉作動の終端域では、開閉弁用ばね部材のばね力などがフォロア部材を介して揺動カムに伝達されることによって生じる該揺動カムの回転中心まわりのモーメントは零に近づく。また、トラベル長さが短くなるに連れて揺動カムの角加速度が大きくなり、フォロア部材に対する制動力が大きくなる。したがってフォロア部材は、揺動カムがベースサークル部に転移した段階で十分大きな制動力によって速度が小さくなって停止する。これに伴ってアーマチュアは、そのストロークエンドでその速度が可及的に小さくなると共に、機関弁は、同じくそのストロークエンドで大きな衝突音の発生を防止できる。
【0019】
この結果、アーマチュアの電磁石に対する急激な衝突や、機関弁のバルブシートに対する急激な衝突を回避することができると共に、大きな打音や摩耗などの発生も防止できる。
【0020】
しかも、この発明によれば、フォロア部材の最大上下動付近で、各フォロア面に揺動カムのカム面のベースサークル部が転接した際に、揺動カムは慣性力で回転し続けようとするが、ストッパ部材によって前記揺動カムのそれ以上の過回動が規制されることから、該揺動カムのカムノーズ部の先端部とこれに対向するフォロア面との衝突が防止されて、打音の発生が確実に防止される。
【0021】
また、ストッパ部材は、その長さが揺動カムの長さよりも短く設定されていることから、その周速が揺動カムよりも遅くなるので、該ストッパ部材が所定のブラケットに当接してストッパ作用が働いたときの衝突打音は極めて小さくなる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記ストッパ部材により揺動カムの回動が規制された位置において、前記各フォロア面と揺動カムのカムノーズ部の先端縁との間に隙間を形成したことを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、フォロア部材の最上昇位置付近あるいは最下降位置付近で揺動カムがストッパ部材によって過回動を規制された位置では、隙間の存在によって揺動カムのカムノーズ部の先端部とフォロア面との衝突が確実に防止されることから、打音の発生が確実に防止することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図4は本発明の機関弁の電磁駆動装置を吸気側に適用した第1の実施形態を示し、シリンダヘッド11内に形成された吸気ポート12の開口端を開閉する吸気弁13と、該吸気弁13を開閉作動させる電磁駆動機構14と、吸気弁13と電磁駆動機構14との間に介装された制動機構15とを備えている。
【0025】
前記吸気弁13は、燃焼室に臨む吸気ポート12開口端の環状バルブシート12aに離着座して該開口端を開閉する傘部13aと、該傘部13aの上面中央に一体に設けられてバルブガイド16を介してシリンダヘッド11内を摺動する弁軸であるバルブステム13bとを備えている。また、この吸気弁13は、バルブステム13bのステムエンドにコッタを介して固定されたリテーナ13cと、シリンダヘッド11内に形成された保持孔17底面との間に弾装された閉弁用ばね部材である閉弁側スプリング18のばね力で閉方向に付勢されている。
【0026】
前記電磁駆動機構14は、シリンダヘッド11上に設けられたケーシング19と、該ケーシング19内に上下動自在に収納された円板状のアーマチュア20と、ケーシング19内のアーマチュア20を挟んだ上下位置に固定された上側の閉弁用電磁石21及び下側の開弁用電磁石22と、アーマチュア20などを介して吸気弁13を開方向に付勢するばね部材である開弁側スプリング23とを備えている。
【0027】
前記ケーシング19は、図4に示すように、シリンダヘッド11上に4本のボルト24で固定された金属製の本体19aと、該ケーシング本体19aの上端部にビス25で固定された非磁性材のカバー19bとからなり、該カバー19b側の内周面に非磁性材の筒状ホルダー26が配置されている。また、この筒状ホルダー26は、開口上端に閉弁用電磁石21を保持した段差径状の非磁性材の蓋部27が固定されていると共に、下端部に開弁用電磁石22を保持した底壁26aを一体に有している。尚、前記蓋部27の中央には、エア抜き孔27aが貫通形成されている。
【0028】
前記アーマチュア20は、上下面が両電磁石21,22に対向配置され、中央には下方へ延出した支軸であるガイドロッド28の上端部がナット固定されていると共に、このガイドロッド28の下端部に制動機構15の後述するフォロア部材35が一体に設けられている。前記ガイドロッド28は、底壁26aの中央に有する筒壁内に嵌挿固定された筒状ガイド部29を介して上下摺動自在に支持されていると共に、その軸心Xが吸気弁13のバルブステム23bの軸心Yと同軸心上に配置されている。
【0029】
前記開閉弁用の電磁石21,22は、固定コアが横断面略U字形に形成され、互いにアーマチュア20を介して所定の隙間をもって対向配置され、固定コアの内部に電磁コイル21a,22aが巻装されている。この電磁コイル21b,22bには、後述する図外の電子制御ユニットからの通電−非通電信号が出力されて、アーマチュア20を上方あるいは下方へ吸引あるいは吸引を解除するようになっている。
【0030】
前記開弁側スプリング23は、アーマチュア20の上面中央と蓋部27の下面との間に弾装されて、そのばね力が各電磁石21,22の消磁時には、前記閉弁側スプリング18のばね力とバランスしてアーマチュア20を両電磁石21,32のほぼ平衝中立位置に保持するようになっており、その状態で吸気弁13は閉弁位置及び開弁位置のほぼ中間位置に保持される。
【0031】
前記電子制御ユニットは、機関のクランク角センサ,機関回転数センサ,閉弁用電磁石21の温度を検出する温度センサ及び機関負荷を検出するエアフローメータからの夫々の検出値に基づいて、閉弁用,開弁用電磁石21,22に通電−非通電を相対的に繰り返し出力している。ここで、前記クランク角センサからの回転角検出値は、吸気弁13の開閉タイミングをクランクシャフトの回転と同期制御するためのものであり、機関回転数検出センサからの検出値つまりクランクシャフトの回転数の検出値は、該回転数によって変化する各電磁石21,22の吸引許容時間に対処するために利用され、さらに、温度センサの検出値は、温度上昇による閉弁用電磁石21の電磁コイル21aの通電抵抗増大に対処するためのものである。また、エアフローメータによる機関負荷検出値は、機関回転数検出値とともに吸気弁13の開閉タイミングを最適に制御するために利用するものである。
【0032】
そして、前記制動機構15は、図1〜図3に示すように前記ガイドロッド28の下端部に一体に設けられたフォロア部材35と、前記ケーシング本体19にブラケット36に支持されたカム軸37を介してフォロア部材35の内部に回動自在に保持された揺動カム38と、前記カム軸37の端部に固定されたストッパ部材39とから主として構成されている。
【0033】
前記フォロア部材35は、ほぼ正方形の矩形枠状に形成され、対向する上端壁の下面と下端壁の平坦な上面が夫々第1フォロア面35aと第2フォロア面35bとして構成されており、上端壁の上面中央に前記ガイドロッド28の下端部が一体に連結されていると共に、下端壁の下面中央に有する突起部35cの先端がバルブステム13bのステムエンドに当接している。
【0034】
前記ブラケット36は、図2、図3に示すようにほぼ異形ブロック状に形成され、一端部が前記ケーシング本体19の下面に図外のボルトなどによって固定されていると共に、自由端側の他端部のほぼ中央に前記カム軸37が回転自在に挿通支持される支軸孔36aが貫通形成されている。また、ブラケット36のほぼ中央に前記ストッパ部材39の後述する2つのストッパ面39b、39cが適宜当接する凹状の段差面36bが上下方向に沿って形成されている。
【0035】
前記カム軸37は、前記ブラケット36の支軸孔36aを貫通して揺動カム38とストッパ部材39を結合する長さに設定され、一端側に前記揺動カム38を挿通結合する平面部37aが形成されていると共に、該一端側の端部にストッパ部材39と一緒に該カム軸37の軸方向の移動を規制するCリング40が嵌着される円環状の嵌着溝37bが形成されている。
【0036】
前記揺動カム38は、図1〜図3に示すように、カムノーズ部38aが比較的細く延びた正面ほぼ雨滴状に形成されて、円弧状の基部側に前記カム軸37が挿通する挿通孔38bが貫通形成されていると共に、該挿通孔38bの内周面のほぼ中央位置に貫通形成された雌ねじ孔38cに螺入する芋ねじ41によってカム軸37に結合固定されるようになっている。
【0037】
さらに、この揺動カム38は、図1及び図3に示すように、上半分の上面全体が前記第1フォロア面35aに転接する弁開き側の第1カム面42として構成され、下半分の下面全体が第2フォロア面35bに転接する弁閉じ側の第2カム面43として構成されている。
【0038】
そして、この第1,第2カム面42,43は、それぞれ所定のプロフィールに形成され、曲率半径の小さな半円状の基円部であるベースサークル部42a、43aと、該ベースサークル部42a、43aからカムノーズ部38a側の外面に第1,第2ランプ部42b,43bがなだらかな凸面に形成されている。すなわち、この第1,第2ランプ部42b、43bは、ベースサークル部42a、43aからカムノーズ部38aの先端縁までなだらかな円弧面で連続的に形成されて、各フォロア面35a、35bに対するいわゆるトラベル長さが十分に長くなるように設定されている。
【0039】
前記ストッパ部材39は、図1及び図3に示すように正面ほぼ扇形状に形成されて、揺動カム38のカムノーズ部38aと同方向へ平行状態に配置されていると共に、ほぼ中央位置に前記カム軸37の他端部が挿通固定される軸穴39aが穿設されている。また、円周方向の両端部には、該ストッパ部材39の回転位置に応じて前記ブラケット36の段差面36bに適宜当接する第1、第2ストッパ面39b、39cが形成されている。
【0040】
また、このストッパ部材39は、軸穴39aの中心Pから外周面までの長さL1が前記揺動カム38の挿通孔38aの中心Pからカムノーズ部38aの先端までの長さL2よりも十分に小さく設定されている。
【0041】
さらに、前記揺動カム38は、図1に示すように、前記ストッパ部材39のいずれかのストッパ面39b、39cが段差面36bに当接した時点ではカムノーズ部38aの先端と第1あるいは第2フォロア面35a、35bとの間に僅かな隙間44a、44bが形成されるようになっている。
【0042】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず機関停止時には、両電磁石21,22の各電磁コイル21a,22aに電子制御ユニットから通電信号が出力せず、非通電状態となっている。このため、アーマチュア20は、図1に示すように、両スプリング18,23の相対的なばね力によって隙間S内のほぼ平衝中立位置に保持され、したがって、吸気弁13もバルブシート12aから若干離れた中立位置になっている。
【0043】
この時点での揺動カム38は、フォロア部材35の内部で何ら拘束されることなくカム軸37を介してブラケット36に自由な状態で支持されている。
【0044】
機関が始動されて、電子制御ユニット30から開弁用電磁石22の電磁コイル22bに通電信号が出力されると、図5に示すようにアーマチュア20が該電磁石22に吸引され、かつ開弁側スプリング23のばね力によって下降する。このため、フォロア部材35もガイドロッド28を介して下降して下端部でステムエンドを下方へ押圧する。これによって、吸気弁13は、閉弁側スプリング18のばね力に抗して下降ストローク、つまり開弁方向へストロークする。
【0045】
一方、吸気弁13の閉時には、開弁用電磁石22への通電が遮断され、閉弁用電磁石21の電磁コイル21aに通電されるため、アーマチュア20は、図6及び図7Aに示すように電磁石21の吸引力と閉弁側スプリング18とのばね力によって開弁側スプリング23のばね力に抗してフォロア部材35を上昇させる。これによって吸気弁13は、閉弁側スプリング18のばね力によって上昇して傘部13aがバルブシート12aに着座して閉弁する。
【0046】
そして、この吸気弁13の開閉時における揺動カム38は、前記フォロア部材35の上昇あるいは下降に伴って各カム面42,43が各フォロア面35a、35bに転接しつつカム軸37を中心に時計方向あるいは反時計方向へ自由に回転する。これによって、図8に示すように吸気弁13の開閉作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0047】
すなわち、前述のように、吸気弁13が、図7A〜Cに示すように、例えば閉弁位置にあるときから開弁方向へ作動するときには、電磁吸引力と開弁側スプリング23のばね力とによってアーマチュア20及びフォロア部材35が下降すると、かかる作動初期における第1フォロア面35aに対する揺動カム38の第1カム面42との当接点が、図7B、Cに示すように、まず、揺動カム38の第1ランプ部42bの先端側となり、ここから揺動カム38が押し下げられるにしたがって第1ランプ部42bの長いトラベル面が第1フォロア面35a上を転接する。
【0048】
かかる吸気弁13の閉弁状態から開弁方向へ移行した作動初期時点では、第1フォロア面35aに第1ランプ部42bの先端部が転接し、その後のアーマチュア20の下降に伴ってそのまま第1ランプ部42bが第1フォロア面35aに比較的長く転接する状態となる(トラベル量が大きい)ことから、揺動カム38の角加速度(α)が小さくなって吸気弁13の開作動の作動初期から終端縁付近までの制動トルクTが小さくなる。
【0049】
かかる原理を具体的に説明すれば、まず、前記アーマチュア20に対する制動トルクTは、揺動カム38の角加速度(α)×揺動カム38の慣性力(イナーシャIP=一定)(1)によって求められるが、この制動トルクTが上下運動するフォロア部材35に作用する制動力Fは、F=T/COSθ・L(2)で表せる。ここで、Lは、図7B、Cに示すようにカム軸37の軸心から揺動カム38のカムノーズ部38aの先端までの長さ及びカム軸37の軸心から揺動カム38の第1、第2ベースサークル部42a、43aの外周面までの長さであって、これがいわゆるトラベル量である。
【0050】
そして、かかる作動初期から終端縁付近まではLが大きいことから、分母のCOSθ×Lが大きくなり、分子のTが小さいため、フォロア部材35に対する制動力Fは小さくなる。したがって、この領域での吸気弁13の開閉作動が速やかに行われ、吸気弁13の作動時間の短縮化が図れる。
【0051】
そして、第1ベースサークル部42aに達すると、つまり吸気弁13の開作動の終端域では、開弁用スプリング23のばね力などがフォロア部材35を介して揺動カム38に伝達されることによって生じる該揺動カム38の回転中心まわりのモーメントは零に近づく。つまり、揺動カム38の角加速度αが大きくなり、前記式(1)から揺動カム38の制動トルクTが大きくなる。これと共にトラベル量Lは零に近くなっていき、COSθ×Lが小さくなっていくため、フォロア部材35に作用する制動力Fが前記(2)の式からして大きくなる。
【0052】
したがって、フォロア部材35は、ベースサークル部に転移した段階で十分大きな制動力Fによって速度が小さくなって停止する。
【0053】
したがって、前記ベースサークル部42aに転移した段階で十分な制動力が得られ、図8に示すように吸気弁13の開作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0054】
この結果、これに伴ってアーマチュア20は、そのストロークエンドでその速度が可及的に小さくなり、したがって、アーマチュア20の開弁用電磁石22に対する急激な衝突や、大きな打音や摩耗などの発生も防止できる。
なお、図7A、Cに示すようにアーマチュア20と開弁用電磁石22、閉弁用電磁石21との間にはクリアランスCが形成されていることから、これによって、より積極的に衝突を防止している。
【0055】
また、ここで、前記揺動カム38の回転に伴ってストッパ部材39もカム軸37を介して同方向へ回動するが、第1フォロア面35aに対して第1カム面42が第1ランプ部42bからベースサークル部42aへ転接した際には、図1、図7Cに示すように、ストッパ部材39の一方のストッパ面39cがブラケット36の段差面36bに当接して、揺動カム38のそれ以上の回転を規制する。したがって、該揺動カム38の過回転が防止されて、カムノーズ部38aの先端部と第2フォロア面35bとの衝突が防止されて、打音の発生が確実に防止される。
【0056】
しかも、ストッパ部材39は、その長さL1が揺動カム38の長さL2よりも短く設定されていることから、その周速が揺動カム38よりも遅くなるので、該ストッパ部材39が段差面36bに当接した際の衝突打音は極めて小さくなる。
【0057】
また、前述のように、ストッパ部材39により揺動カム38の回転が規制された位置では、前記第2フォロア面35bと揺動カム38のカムノーズ部38aの先端縁との間に隙間44aが形成されていることから、この間における衝突が防止され、打音の発生を確実に防止することができる。
【0058】
そして、かかる作用は吸気弁13の閉弁時にも生じ、図7C及びAに示すように開弁状態から閉弁方向の作動初期には、第2ランプ部43bの先端部から第2フォロア面35bに当接すると共に、アーマチュア20の上昇ストロークに伴い第2ランプ部43bが第2フォロア面35bに長いトラベル状態で転接する。したがって、開弁時と同じように作動初期から終端付近までの揺動カム38の角加速度αが小さくなることから制動トルクTが小さくなり、作動速度が早くなる。
【0059】
また、ベースサークル部43aに達すると、前述のように、揺動カム38の回転中心まわりのモーメントは零に近づくことから、図8に示すように吸気弁13の閉作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0060】
さらに、ベースサークル部43の領域においは、図7Aに示すようにストッパ部材39の他方のストッパ面39bが段差面36bに当接して揺動カム38の過回転が防止されて、カムノーズ部38aの先端部と第1フォロア面35aとの衝突が防止されると共に、段差面36bとストッパ面39cとの当接時の打音も十分小さい。また、この時点では隙間44bによってより確実な衝突の発生を防止できる。
【0061】
前述のように、吸気弁13は、図8(丸破線)に示すように閉作動時に安定した緩衝作用が得られ、この結果、傘部13aとバルブシート12a及びアーマチュア20と閉弁電磁石18との激しい衝突が回避され、打音や摩耗あるいは破損等の発生が防止される。
【0062】
また、この実施形態では、単に揺動カム38をカム軸37に固定してフリーな状態で回転を許容するようになっているため、部品点数を少なくでき全体の構造が簡素化される。この結果、製造、組立作業が容易になり、コストの高騰を抑制できる。また、制動機構15の小型化が図れることから、装置への搭載性が良好になる。
【0063】
図9〜図14は本発明の第2の実施形態を示し、制動機構15の揺動カム38をカム軸50を介してブラケット36方向へ押し付け付勢する付勢機構51を設けると共に、ストッパ部材を廃止したものである。
【0064】
すなわち、前記揺動カム38は、図12A、Bに示すようにプロフィールは第1の実施形態と同じく細長い雨滴状に形成されて、それぞれベースサークル部42a、43aとランプ部42b、43bとからなる第1、第2カム面42,43を備えており、そのブラケット36側の一側面の上下位置に、該ブラケット36の対向側面に当接する突起部52a、52bが設けられている。
【0065】
前記カム軸50は、図11に示すように、第1の実施形態のものより長尺に形成され、ブラケット36の挿通孔36aに挿通した一端部側にフランジ状の頭部50aが一体に固定されていると共に、他端部に後述するスナップリング52が嵌着する円環状の嵌着溝50bが形成されている。
【0066】
前記付勢機構51は、図10、図11、図13、図14にそれぞれ示すように、カム軸50の他端部側に設けられ、該カム軸50に挿通配置されるばね部材であるコイルスプリング53と、該コイルスプリング53の両側に配置された円盤状のスプリングリテーナ54,55とから主として構成されている。
【0067】
前記各スプリングリテーナ54、55は、コイルスプリング53の両端部が弾持するフランジ部54a、55aと、該各フランジ部54a、55aの対向内端面の中央に一体に設けられた円筒状のスプリング支持部54b、55bとを備えている。前記スプリング支持部54b、55bは、コイルスプリング53の両端部内に配置されて該両端部を支持するようになっていると共に、内部にカム軸50がそれぞれ挿通する軸孔54c、55cが形成されている。
【0068】
また、前記揺動カム38と一方のスプリングリテーナ55との間には、摺動用のワッシャ56が介装されている。
【0069】
前記スナップリング52は、他方のスプリングリテーナ54のフランジ部54aの外面に当接して付勢機構51のカム軸50からの抜け出しを防止するようになっている。
【0070】
この実施形態によれば、図10に示すように、揺動カム38が、付勢機構51のコイルスプリング53のばね力によってブラケット36の一側面に常時圧接するようになっていることから、吸気弁13の開閉作動時に、アーマチュア20の上下動に伴いフォロア部材35が上下動すると、前記揺動カム38は、ブラケット36方向へ所定のフリクションを受けながら各フォロア面35a、35b上を転接する。
【0071】
したがって、この第2の実施形態も前記第1の実施形態と同様に、トラベルの長いランプ部42b、43bとベースサークル部42a、43aにより吸気弁13の開閉動の終端域で十分な制動効果が得られ、打音や摩耗の発生が効果的に防止できると共に、揺動カム38にフリクションを付与することによってフリーな場合に比較して急激な回転がさらに抑制できる。これによって、揺動カム38とフォロア部材35との衝突打音の発生がさらに効果的に防止できる。
【0072】
また、揺動カム38は、ブラケット36の一側面に対して上下2個所の突起部52,52bによって当接することから、その間のフリクションの大きさを調整することが可能になると共に、ワッシャ56によってスプリングリテーナ55との最適な圧接調整も可能になる。
【0073】
さらに、前記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に記載する。
【0074】
前記揺動カムを細長い正面雨滴状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の機関弁の電磁駆動装置。
【0075】
前記制動機構の揺動カムをカム軸を介してブラケット方向へ押し付け付勢する付勢機構を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機関弁の電磁駆動装置。
【0076】
したがって、この発明によれば、揺動カムに付勢機構によりフリクションを付与することによってフリーな場合に比較して急激な回転がさらに抑制できる。これによって、揺動カムとフォロア部材との衝突打音の発生がさらに効果的に防止できる。
【0077】
本発明は、吸気弁側に限らず、排気弁側のみに適用することも可能であり、排気弁側に適用した場合は、排気弁の開時の急激な動きを規制できることによって燃焼ガスの急激な排出が抑制され、この結果、排気音を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に供される制動機構の要部拡大図。
【図2】同制動機構の要部側断面図。
【図3】同制動機構の分解斜視図。
【図4】本実施形態の電磁駆動装置の縦断面図。
【図5】開弁時の作用を示す縦断面図。
【図6】閉弁時の作用を示す縦断面図。
【図7】Aはアーマチュアの最上昇時ある状態を示す要部概略図、Bは上下の中間位置にある状態を示す要部概略図、Cは最下降時にある状態を示すよう要部概略図。
【図8】本実施形態の制動機構による制動特性図。
【図9】第2の実施形態における制動機構の要部拡大図。
【図10】同実施形態における制動機構の要部側断面図。
【図11】同実施形態における制動機構の分解斜視図。
【図12】Aは揺動カムの側面図、Bは揺動カムの正面図。
【図13】本実施形態を正面から見た縦断面図。
【図14】本実施形態を側面から見た縦断面図。
【符号の説明】
11…シリンダヘッド
12a…バルブシート
13…吸気弁
14…電磁駆動機構
15…制動機構
18…閉弁側スプリング
20…アーマチュア
21…閉弁用電磁石
22…開弁用電磁石
23…開弁側スプリング
35…フォロア部材
35a、35b…第1,第2フォロア面
36…ブラケット
37…カム軸
38…揺動カム
42…第1カム面
43…第2カム面
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用内燃機関の機関弁を主として電磁力で開閉駆動する電磁駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の電磁駆動装置としては、例えば特開平8−21220号公報等に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、機関のシリンダヘッドに摺動自在に設けられた吸気弁と、吸気弁を開閉駆動する電磁駆動機構とを備えている。
【0004】
前記吸気弁は、吸気ポートの開口端を開閉する傘部と、該傘部の上端部に一体に設けられたバルブステムとを有している。
【0005】
前記電磁駆動機構は、シリンダヘッド上に固定されたケーシング内に挿通されたバルブステムの上端部に円板状のアーマチュアが固定されていると共に、ケーシングの内部上下位置に前記アーマチュアを吸引して吸気弁を開閉作動させる閉弁用電磁石及び開弁用電磁石が配置されている。
【0006】
また、ケーシングの上壁とアーマチュアの上面との間には、吸気弁を開方向へ付勢する開弁側スプリングが弾持され、一方、シリンダヘッド上面のシート溝底面とアーマチュアの下面との間には、吸気弁を閉方向へ付勢する閉弁側スプリングが弾持され、これら2つのスプリングによってアーマチュアを上下方向の中立位置に保持するようになっている。さらに、前記各開閉弁用電磁石は、夫々のコイルに増幅器を介して電子制御ユニットからの制御電流が出力されるようになっている。
【0007】
この電子制御ユニットは、機関回転数センサや閉弁用電磁石の温度検出センサからの検出信号に基づいて開閉用電磁石の通電量を制御するようになっている。
【0008】
そして、前記2つのスプリングのばね力と2つの電磁石7,8による吸引力とによって、各スプリング9,10に蓄力して位置エネルギーとして保持し、電磁力の開放,吸引を交互に繰り返すことによって吸気弁2を開閉駆動させるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の電磁駆動装置にあっては、吸気弁の開閉時に各開閉用電磁石の電磁吸引力が、該吸引力に対抗する各スプリングのばね力よりも増大してしまうため、閉弁時には傘部がバルブシートに激しく衝突し、また開弁時にはアーマチュアが開弁用電磁石に衝突してしまうおそれがある。
【0010】
すなわち、まず、閉弁時に閉弁用電磁石の吸引力にアーマチュアが上方に吸引される。よって、吸気弁が上方へ摺動すると、閉弁側スプリングが伸長される一方、開弁側スプリングが圧縮されてばね力が増大し、ばね力が蓄えられる。
【0011】
次に、開弁時には、閉弁用電磁石にOFF信号(非通電信号)が出力される一方、開弁用電磁石にON信号(通電信号)が出力されて、アーマチュアが下方へ吸引される。これによって、吸気弁が下方へ摺動すると、開弁側スプリングが伸長される一方、閉弁側スプリングが圧縮されてばね力が増大しばね力が蓄えられる。
【0012】
したがって、閉弁時及び開弁時には、開弁側,閉弁側の各コイルスプリングの増大したばね力で吸気弁の摺動速度が減速させられるが、かかる開,閉切換時には圧縮及び伸長したばね反力に加えて吸引側の各電磁石の吸引力が急激に増加する。つまり、各電磁石の電磁吸引力は、アーマチュアと各電磁石の各固定コアとの間の距離のほぼ2乗に反比例して増大する。したがって、かかる増大した吸引力が各スプリングの圧縮,伸長側の合成ばね力に打ち勝ってアーマチュアを十分に減速させることなく、上方あるいは下方向へ急激に移動させる。
【0013】
したがって、吸気弁は、最大開時と閉時に急激なリフト,ダウンし、この結果、閉時には傘部がバルブシートに衝突し、開時にはアーマチュアが開弁用電磁石に衝突して、夫々大きな打音を発生させると共に、アーマチュアやバルブシート等の摩耗を惹起するおそれがある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来装置の課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、揺動カムのカム面に、前記アーマチュアの上下動に伴い前記フォロア面に転接して緩衝領域を創生するランプ部を比較的長く形成すると共に、該ランプ部を前記アーマチュアの最上昇位置あるいは最下降位置から反対方向へ作動初期の時点から前記各フォロア面に当接するように形成すると共に、カム軸に、該カム軸から揺動カムの先端部までの長さよりも短いストッパ部材を前記揺動カムと連動して設け、機関弁の開閉作動の終端域において前記揺動カムが回動してカム面のベースサークル部が前記各フォロア面に転接した際に、ストッパ部材によって前記揺動カムのそれ以上の回動を規制するようにしたことを特徴としている。
【0015】
したがって、本発明によれば、機関始動時にアーマチュアが開弁用電磁石によって吸引されて閉弁側ばね部材のばね力に抗して下降し、フォロア部材が揺動カムの一方のカム面を下方へ押圧すると、この揺動カムのカム面のランプ部が一方のフォロア面に転接し、やがてベースサークル部に達してフォロア部材の下降を停止させ、同時にフォロア部材が機関弁を押圧して最大開弁位置まで下降させる。
【0016】
一方、機関弁の閉時には、開弁用電磁石が非通電される一方、閉弁用電磁石に通電され、これによってアーマチュアは開弁用のばね部材のばね力に抗して閉弁用電磁石に吸引されることにより機関弁も閉弁方向へ上昇する。
【0017】
そして、かかる機関弁の開閉作動時には、フォロア部材の上下動に伴って揺動カムのそれぞれのカム面が、対向する各フォロア面上を転接するわけであるが、かかる機関弁の開閉作動の作動初期、つまりアーマチュアの最上昇位置あるいは最下降位置から反対方向へ作動した作動初期の時点で、いずれか一方のフォロア面にランプ部が転接し、その後のアーマチュアの上昇、下降に伴ってそのまま前記ランプ面がフォロア面に転接する状態となる。すなわち、アーマチュアのストロークエンドから反対方向へ作動した作動初期の時点で、いずれか一方のフォロア面にランプ部が転接し、その後のアーマチュアの上昇、下降に伴ってそのまま前記ランプ部がフォロア面に揺動カムの軸心からのトラベル長さが長い状態で転接することになることから、揺動カムの角加速度が小さくなるので、機関弁の開閉作動初期から終端域付近までの制動トルクが小さくなる。したがって、機関弁の開閉作動を妨げずに機関弁の開閉作動時間が短くなる。
【0018】
その後、機関弁の開閉作動の終端域、つまりアーマチュアの最上昇付近あるいは最下降付近(ストロークエンド)では、揺動カムはフォロア面に対してランプ部からベースサークル部へ転移する。このため、かかる機関弁の開閉作動の終端域では、開閉弁用ばね部材のばね力などがフォロア部材を介して揺動カムに伝達されることによって生じる該揺動カムの回転中心まわりのモーメントは零に近づく。また、トラベル長さが短くなるに連れて揺動カムの角加速度が大きくなり、フォロア部材に対する制動力が大きくなる。したがってフォロア部材は、揺動カムがベースサークル部に転移した段階で十分大きな制動力によって速度が小さくなって停止する。これに伴ってアーマチュアは、そのストロークエンドでその速度が可及的に小さくなると共に、機関弁は、同じくそのストロークエンドで大きな衝突音の発生を防止できる。
【0019】
この結果、アーマチュアの電磁石に対する急激な衝突や、機関弁のバルブシートに対する急激な衝突を回避することができると共に、大きな打音や摩耗などの発生も防止できる。
【0020】
しかも、この発明によれば、フォロア部材の最大上下動付近で、各フォロア面に揺動カムのカム面のベースサークル部が転接した際に、揺動カムは慣性力で回転し続けようとするが、ストッパ部材によって前記揺動カムのそれ以上の過回動が規制されることから、該揺動カムのカムノーズ部の先端部とこれに対向するフォロア面との衝突が防止されて、打音の発生が確実に防止される。
【0021】
また、ストッパ部材は、その長さが揺動カムの長さよりも短く設定されていることから、その周速が揺動カムよりも遅くなるので、該ストッパ部材が所定のブラケットに当接してストッパ作用が働いたときの衝突打音は極めて小さくなる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記ストッパ部材により揺動カムの回動が規制された位置において、前記各フォロア面と揺動カムのカムノーズ部の先端縁との間に隙間を形成したことを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、フォロア部材の最上昇位置付近あるいは最下降位置付近で揺動カムがストッパ部材によって過回動を規制された位置では、隙間の存在によって揺動カムのカムノーズ部の先端部とフォロア面との衝突が確実に防止されることから、打音の発生が確実に防止することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図4は本発明の機関弁の電磁駆動装置を吸気側に適用した第1の実施形態を示し、シリンダヘッド11内に形成された吸気ポート12の開口端を開閉する吸気弁13と、該吸気弁13を開閉作動させる電磁駆動機構14と、吸気弁13と電磁駆動機構14との間に介装された制動機構15とを備えている。
【0025】
前記吸気弁13は、燃焼室に臨む吸気ポート12開口端の環状バルブシート12aに離着座して該開口端を開閉する傘部13aと、該傘部13aの上面中央に一体に設けられてバルブガイド16を介してシリンダヘッド11内を摺動する弁軸であるバルブステム13bとを備えている。また、この吸気弁13は、バルブステム13bのステムエンドにコッタを介して固定されたリテーナ13cと、シリンダヘッド11内に形成された保持孔17底面との間に弾装された閉弁用ばね部材である閉弁側スプリング18のばね力で閉方向に付勢されている。
【0026】
前記電磁駆動機構14は、シリンダヘッド11上に設けられたケーシング19と、該ケーシング19内に上下動自在に収納された円板状のアーマチュア20と、ケーシング19内のアーマチュア20を挟んだ上下位置に固定された上側の閉弁用電磁石21及び下側の開弁用電磁石22と、アーマチュア20などを介して吸気弁13を開方向に付勢するばね部材である開弁側スプリング23とを備えている。
【0027】
前記ケーシング19は、図4に示すように、シリンダヘッド11上に4本のボルト24で固定された金属製の本体19aと、該ケーシング本体19aの上端部にビス25で固定された非磁性材のカバー19bとからなり、該カバー19b側の内周面に非磁性材の筒状ホルダー26が配置されている。また、この筒状ホルダー26は、開口上端に閉弁用電磁石21を保持した段差径状の非磁性材の蓋部27が固定されていると共に、下端部に開弁用電磁石22を保持した底壁26aを一体に有している。尚、前記蓋部27の中央には、エア抜き孔27aが貫通形成されている。
【0028】
前記アーマチュア20は、上下面が両電磁石21,22に対向配置され、中央には下方へ延出した支軸であるガイドロッド28の上端部がナット固定されていると共に、このガイドロッド28の下端部に制動機構15の後述するフォロア部材35が一体に設けられている。前記ガイドロッド28は、底壁26aの中央に有する筒壁内に嵌挿固定された筒状ガイド部29を介して上下摺動自在に支持されていると共に、その軸心Xが吸気弁13のバルブステム23bの軸心Yと同軸心上に配置されている。
【0029】
前記開閉弁用の電磁石21,22は、固定コアが横断面略U字形に形成され、互いにアーマチュア20を介して所定の隙間をもって対向配置され、固定コアの内部に電磁コイル21a,22aが巻装されている。この電磁コイル21b,22bには、後述する図外の電子制御ユニットからの通電−非通電信号が出力されて、アーマチュア20を上方あるいは下方へ吸引あるいは吸引を解除するようになっている。
【0030】
前記開弁側スプリング23は、アーマチュア20の上面中央と蓋部27の下面との間に弾装されて、そのばね力が各電磁石21,22の消磁時には、前記閉弁側スプリング18のばね力とバランスしてアーマチュア20を両電磁石21,32のほぼ平衝中立位置に保持するようになっており、その状態で吸気弁13は閉弁位置及び開弁位置のほぼ中間位置に保持される。
【0031】
前記電子制御ユニットは、機関のクランク角センサ,機関回転数センサ,閉弁用電磁石21の温度を検出する温度センサ及び機関負荷を検出するエアフローメータからの夫々の検出値に基づいて、閉弁用,開弁用電磁石21,22に通電−非通電を相対的に繰り返し出力している。ここで、前記クランク角センサからの回転角検出値は、吸気弁13の開閉タイミングをクランクシャフトの回転と同期制御するためのものであり、機関回転数検出センサからの検出値つまりクランクシャフトの回転数の検出値は、該回転数によって変化する各電磁石21,22の吸引許容時間に対処するために利用され、さらに、温度センサの検出値は、温度上昇による閉弁用電磁石21の電磁コイル21aの通電抵抗増大に対処するためのものである。また、エアフローメータによる機関負荷検出値は、機関回転数検出値とともに吸気弁13の開閉タイミングを最適に制御するために利用するものである。
【0032】
そして、前記制動機構15は、図1〜図3に示すように前記ガイドロッド28の下端部に一体に設けられたフォロア部材35と、前記ケーシング本体19にブラケット36に支持されたカム軸37を介してフォロア部材35の内部に回動自在に保持された揺動カム38と、前記カム軸37の端部に固定されたストッパ部材39とから主として構成されている。
【0033】
前記フォロア部材35は、ほぼ正方形の矩形枠状に形成され、対向する上端壁の下面と下端壁の平坦な上面が夫々第1フォロア面35aと第2フォロア面35bとして構成されており、上端壁の上面中央に前記ガイドロッド28の下端部が一体に連結されていると共に、下端壁の下面中央に有する突起部35cの先端がバルブステム13bのステムエンドに当接している。
【0034】
前記ブラケット36は、図2、図3に示すようにほぼ異形ブロック状に形成され、一端部が前記ケーシング本体19の下面に図外のボルトなどによって固定されていると共に、自由端側の他端部のほぼ中央に前記カム軸37が回転自在に挿通支持される支軸孔36aが貫通形成されている。また、ブラケット36のほぼ中央に前記ストッパ部材39の後述する2つのストッパ面39b、39cが適宜当接する凹状の段差面36bが上下方向に沿って形成されている。
【0035】
前記カム軸37は、前記ブラケット36の支軸孔36aを貫通して揺動カム38とストッパ部材39を結合する長さに設定され、一端側に前記揺動カム38を挿通結合する平面部37aが形成されていると共に、該一端側の端部にストッパ部材39と一緒に該カム軸37の軸方向の移動を規制するCリング40が嵌着される円環状の嵌着溝37bが形成されている。
【0036】
前記揺動カム38は、図1〜図3に示すように、カムノーズ部38aが比較的細く延びた正面ほぼ雨滴状に形成されて、円弧状の基部側に前記カム軸37が挿通する挿通孔38bが貫通形成されていると共に、該挿通孔38bの内周面のほぼ中央位置に貫通形成された雌ねじ孔38cに螺入する芋ねじ41によってカム軸37に結合固定されるようになっている。
【0037】
さらに、この揺動カム38は、図1及び図3に示すように、上半分の上面全体が前記第1フォロア面35aに転接する弁開き側の第1カム面42として構成され、下半分の下面全体が第2フォロア面35bに転接する弁閉じ側の第2カム面43として構成されている。
【0038】
そして、この第1,第2カム面42,43は、それぞれ所定のプロフィールに形成され、曲率半径の小さな半円状の基円部であるベースサークル部42a、43aと、該ベースサークル部42a、43aからカムノーズ部38a側の外面に第1,第2ランプ部42b,43bがなだらかな凸面に形成されている。すなわち、この第1,第2ランプ部42b、43bは、ベースサークル部42a、43aからカムノーズ部38aの先端縁までなだらかな円弧面で連続的に形成されて、各フォロア面35a、35bに対するいわゆるトラベル長さが十分に長くなるように設定されている。
【0039】
前記ストッパ部材39は、図1及び図3に示すように正面ほぼ扇形状に形成されて、揺動カム38のカムノーズ部38aと同方向へ平行状態に配置されていると共に、ほぼ中央位置に前記カム軸37の他端部が挿通固定される軸穴39aが穿設されている。また、円周方向の両端部には、該ストッパ部材39の回転位置に応じて前記ブラケット36の段差面36bに適宜当接する第1、第2ストッパ面39b、39cが形成されている。
【0040】
また、このストッパ部材39は、軸穴39aの中心Pから外周面までの長さL1が前記揺動カム38の挿通孔38aの中心Pからカムノーズ部38aの先端までの長さL2よりも十分に小さく設定されている。
【0041】
さらに、前記揺動カム38は、図1に示すように、前記ストッパ部材39のいずれかのストッパ面39b、39cが段差面36bに当接した時点ではカムノーズ部38aの先端と第1あるいは第2フォロア面35a、35bとの間に僅かな隙間44a、44bが形成されるようになっている。
【0042】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず機関停止時には、両電磁石21,22の各電磁コイル21a,22aに電子制御ユニットから通電信号が出力せず、非通電状態となっている。このため、アーマチュア20は、図1に示すように、両スプリング18,23の相対的なばね力によって隙間S内のほぼ平衝中立位置に保持され、したがって、吸気弁13もバルブシート12aから若干離れた中立位置になっている。
【0043】
この時点での揺動カム38は、フォロア部材35の内部で何ら拘束されることなくカム軸37を介してブラケット36に自由な状態で支持されている。
【0044】
機関が始動されて、電子制御ユニット30から開弁用電磁石22の電磁コイル22bに通電信号が出力されると、図5に示すようにアーマチュア20が該電磁石22に吸引され、かつ開弁側スプリング23のばね力によって下降する。このため、フォロア部材35もガイドロッド28を介して下降して下端部でステムエンドを下方へ押圧する。これによって、吸気弁13は、閉弁側スプリング18のばね力に抗して下降ストローク、つまり開弁方向へストロークする。
【0045】
一方、吸気弁13の閉時には、開弁用電磁石22への通電が遮断され、閉弁用電磁石21の電磁コイル21aに通電されるため、アーマチュア20は、図6及び図7Aに示すように電磁石21の吸引力と閉弁側スプリング18とのばね力によって開弁側スプリング23のばね力に抗してフォロア部材35を上昇させる。これによって吸気弁13は、閉弁側スプリング18のばね力によって上昇して傘部13aがバルブシート12aに着座して閉弁する。
【0046】
そして、この吸気弁13の開閉時における揺動カム38は、前記フォロア部材35の上昇あるいは下降に伴って各カム面42,43が各フォロア面35a、35bに転接しつつカム軸37を中心に時計方向あるいは反時計方向へ自由に回転する。これによって、図8に示すように吸気弁13の開閉作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0047】
すなわち、前述のように、吸気弁13が、図7A〜Cに示すように、例えば閉弁位置にあるときから開弁方向へ作動するときには、電磁吸引力と開弁側スプリング23のばね力とによってアーマチュア20及びフォロア部材35が下降すると、かかる作動初期における第1フォロア面35aに対する揺動カム38の第1カム面42との当接点が、図7B、Cに示すように、まず、揺動カム38の第1ランプ部42bの先端側となり、ここから揺動カム38が押し下げられるにしたがって第1ランプ部42bの長いトラベル面が第1フォロア面35a上を転接する。
【0048】
かかる吸気弁13の閉弁状態から開弁方向へ移行した作動初期時点では、第1フォロア面35aに第1ランプ部42bの先端部が転接し、その後のアーマチュア20の下降に伴ってそのまま第1ランプ部42bが第1フォロア面35aに比較的長く転接する状態となる(トラベル量が大きい)ことから、揺動カム38の角加速度(α)が小さくなって吸気弁13の開作動の作動初期から終端縁付近までの制動トルクTが小さくなる。
【0049】
かかる原理を具体的に説明すれば、まず、前記アーマチュア20に対する制動トルクTは、揺動カム38の角加速度(α)×揺動カム38の慣性力(イナーシャIP=一定)(1)によって求められるが、この制動トルクTが上下運動するフォロア部材35に作用する制動力Fは、F=T/COSθ・L(2)で表せる。ここで、Lは、図7B、Cに示すようにカム軸37の軸心から揺動カム38のカムノーズ部38aの先端までの長さ及びカム軸37の軸心から揺動カム38の第1、第2ベースサークル部42a、43aの外周面までの長さであって、これがいわゆるトラベル量である。
【0050】
そして、かかる作動初期から終端縁付近まではLが大きいことから、分母のCOSθ×Lが大きくなり、分子のTが小さいため、フォロア部材35に対する制動力Fは小さくなる。したがって、この領域での吸気弁13の開閉作動が速やかに行われ、吸気弁13の作動時間の短縮化が図れる。
【0051】
そして、第1ベースサークル部42aに達すると、つまり吸気弁13の開作動の終端域では、開弁用スプリング23のばね力などがフォロア部材35を介して揺動カム38に伝達されることによって生じる該揺動カム38の回転中心まわりのモーメントは零に近づく。つまり、揺動カム38の角加速度αが大きくなり、前記式(1)から揺動カム38の制動トルクTが大きくなる。これと共にトラベル量Lは零に近くなっていき、COSθ×Lが小さくなっていくため、フォロア部材35に作用する制動力Fが前記(2)の式からして大きくなる。
【0052】
したがって、フォロア部材35は、ベースサークル部に転移した段階で十分大きな制動力Fによって速度が小さくなって停止する。
【0053】
したがって、前記ベースサークル部42aに転移した段階で十分な制動力が得られ、図8に示すように吸気弁13の開作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0054】
この結果、これに伴ってアーマチュア20は、そのストロークエンドでその速度が可及的に小さくなり、したがって、アーマチュア20の開弁用電磁石22に対する急激な衝突や、大きな打音や摩耗などの発生も防止できる。
なお、図7A、Cに示すようにアーマチュア20と開弁用電磁石22、閉弁用電磁石21との間にはクリアランスCが形成されていることから、これによって、より積極的に衝突を防止している。
【0055】
また、ここで、前記揺動カム38の回転に伴ってストッパ部材39もカム軸37を介して同方向へ回動するが、第1フォロア面35aに対して第1カム面42が第1ランプ部42bからベースサークル部42aへ転接した際には、図1、図7Cに示すように、ストッパ部材39の一方のストッパ面39cがブラケット36の段差面36bに当接して、揺動カム38のそれ以上の回転を規制する。したがって、該揺動カム38の過回転が防止されて、カムノーズ部38aの先端部と第2フォロア面35bとの衝突が防止されて、打音の発生が確実に防止される。
【0056】
しかも、ストッパ部材39は、その長さL1が揺動カム38の長さL2よりも短く設定されていることから、その周速が揺動カム38よりも遅くなるので、該ストッパ部材39が段差面36bに当接した際の衝突打音は極めて小さくなる。
【0057】
また、前述のように、ストッパ部材39により揺動カム38の回転が規制された位置では、前記第2フォロア面35bと揺動カム38のカムノーズ部38aの先端縁との間に隙間44aが形成されていることから、この間における衝突が防止され、打音の発生を確実に防止することができる。
【0058】
そして、かかる作用は吸気弁13の閉弁時にも生じ、図7C及びAに示すように開弁状態から閉弁方向の作動初期には、第2ランプ部43bの先端部から第2フォロア面35bに当接すると共に、アーマチュア20の上昇ストロークに伴い第2ランプ部43bが第2フォロア面35bに長いトラベル状態で転接する。したがって、開弁時と同じように作動初期から終端付近までの揺動カム38の角加速度αが小さくなることから制動トルクTが小さくなり、作動速度が早くなる。
【0059】
また、ベースサークル部43aに達すると、前述のように、揺動カム38の回転中心まわりのモーメントは零に近づくことから、図8に示すように吸気弁13の閉作動の終端域(破線丸域)で効果的な緩衝制動作用が得られる。
【0060】
さらに、ベースサークル部43の領域においは、図7Aに示すようにストッパ部材39の他方のストッパ面39bが段差面36bに当接して揺動カム38の過回転が防止されて、カムノーズ部38aの先端部と第1フォロア面35aとの衝突が防止されると共に、段差面36bとストッパ面39cとの当接時の打音も十分小さい。また、この時点では隙間44bによってより確実な衝突の発生を防止できる。
【0061】
前述のように、吸気弁13は、図8(丸破線)に示すように閉作動時に安定した緩衝作用が得られ、この結果、傘部13aとバルブシート12a及びアーマチュア20と閉弁電磁石18との激しい衝突が回避され、打音や摩耗あるいは破損等の発生が防止される。
【0062】
また、この実施形態では、単に揺動カム38をカム軸37に固定してフリーな状態で回転を許容するようになっているため、部品点数を少なくでき全体の構造が簡素化される。この結果、製造、組立作業が容易になり、コストの高騰を抑制できる。また、制動機構15の小型化が図れることから、装置への搭載性が良好になる。
【0063】
図9〜図14は本発明の第2の実施形態を示し、制動機構15の揺動カム38をカム軸50を介してブラケット36方向へ押し付け付勢する付勢機構51を設けると共に、ストッパ部材を廃止したものである。
【0064】
すなわち、前記揺動カム38は、図12A、Bに示すようにプロフィールは第1の実施形態と同じく細長い雨滴状に形成されて、それぞれベースサークル部42a、43aとランプ部42b、43bとからなる第1、第2カム面42,43を備えており、そのブラケット36側の一側面の上下位置に、該ブラケット36の対向側面に当接する突起部52a、52bが設けられている。
【0065】
前記カム軸50は、図11に示すように、第1の実施形態のものより長尺に形成され、ブラケット36の挿通孔36aに挿通した一端部側にフランジ状の頭部50aが一体に固定されていると共に、他端部に後述するスナップリング52が嵌着する円環状の嵌着溝50bが形成されている。
【0066】
前記付勢機構51は、図10、図11、図13、図14にそれぞれ示すように、カム軸50の他端部側に設けられ、該カム軸50に挿通配置されるばね部材であるコイルスプリング53と、該コイルスプリング53の両側に配置された円盤状のスプリングリテーナ54,55とから主として構成されている。
【0067】
前記各スプリングリテーナ54、55は、コイルスプリング53の両端部が弾持するフランジ部54a、55aと、該各フランジ部54a、55aの対向内端面の中央に一体に設けられた円筒状のスプリング支持部54b、55bとを備えている。前記スプリング支持部54b、55bは、コイルスプリング53の両端部内に配置されて該両端部を支持するようになっていると共に、内部にカム軸50がそれぞれ挿通する軸孔54c、55cが形成されている。
【0068】
また、前記揺動カム38と一方のスプリングリテーナ55との間には、摺動用のワッシャ56が介装されている。
【0069】
前記スナップリング52は、他方のスプリングリテーナ54のフランジ部54aの外面に当接して付勢機構51のカム軸50からの抜け出しを防止するようになっている。
【0070】
この実施形態によれば、図10に示すように、揺動カム38が、付勢機構51のコイルスプリング53のばね力によってブラケット36の一側面に常時圧接するようになっていることから、吸気弁13の開閉作動時に、アーマチュア20の上下動に伴いフォロア部材35が上下動すると、前記揺動カム38は、ブラケット36方向へ所定のフリクションを受けながら各フォロア面35a、35b上を転接する。
【0071】
したがって、この第2の実施形態も前記第1の実施形態と同様に、トラベルの長いランプ部42b、43bとベースサークル部42a、43aにより吸気弁13の開閉動の終端域で十分な制動効果が得られ、打音や摩耗の発生が効果的に防止できると共に、揺動カム38にフリクションを付与することによってフリーな場合に比較して急激な回転がさらに抑制できる。これによって、揺動カム38とフォロア部材35との衝突打音の発生がさらに効果的に防止できる。
【0072】
また、揺動カム38は、ブラケット36の一側面に対して上下2個所の突起部52,52bによって当接することから、その間のフリクションの大きさを調整することが可能になると共に、ワッシャ56によってスプリングリテーナ55との最適な圧接調整も可能になる。
【0073】
さらに、前記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に記載する。
【0074】
前記揺動カムを細長い正面雨滴状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の機関弁の電磁駆動装置。
【0075】
前記制動機構の揺動カムをカム軸を介してブラケット方向へ押し付け付勢する付勢機構を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機関弁の電磁駆動装置。
【0076】
したがって、この発明によれば、揺動カムに付勢機構によりフリクションを付与することによってフリーな場合に比較して急激な回転がさらに抑制できる。これによって、揺動カムとフォロア部材との衝突打音の発生がさらに効果的に防止できる。
【0077】
本発明は、吸気弁側に限らず、排気弁側のみに適用することも可能であり、排気弁側に適用した場合は、排気弁の開時の急激な動きを規制できることによって燃焼ガスの急激な排出が抑制され、この結果、排気音を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に供される制動機構の要部拡大図。
【図2】同制動機構の要部側断面図。
【図3】同制動機構の分解斜視図。
【図4】本実施形態の電磁駆動装置の縦断面図。
【図5】開弁時の作用を示す縦断面図。
【図6】閉弁時の作用を示す縦断面図。
【図7】Aはアーマチュアの最上昇時ある状態を示す要部概略図、Bは上下の中間位置にある状態を示す要部概略図、Cは最下降時にある状態を示すよう要部概略図。
【図8】本実施形態の制動機構による制動特性図。
【図9】第2の実施形態における制動機構の要部拡大図。
【図10】同実施形態における制動機構の要部側断面図。
【図11】同実施形態における制動機構の分解斜視図。
【図12】Aは揺動カムの側面図、Bは揺動カムの正面図。
【図13】本実施形態を正面から見た縦断面図。
【図14】本実施形態を側面から見た縦断面図。
【符号の説明】
11…シリンダヘッド
12a…バルブシート
13…吸気弁
14…電磁駆動機構
15…制動機構
18…閉弁側スプリング
20…アーマチュア
21…閉弁用電磁石
22…開弁用電磁石
23…開弁側スプリング
35…フォロア部材
35a、35b…第1,第2フォロア面
36…ブラケット
37…カム軸
38…揺動カム
42…第1カム面
43…第2カム面
Claims (2)
- 機関弁に連係するアーマチュアと、該アーマチュアを吸引して前記機関弁を開作動及び閉作動させる開弁用,閉弁用の電磁石と、前記機関弁を閉方向及び開方向へ付勢して中立位置に保持する開弁用及び閉弁用のばね部材と、前記機関弁の開閉作動の終端域における開閉速度を制動する制動機構とを備え、
前記制動機構は、前記アーマチュアの往復動に連動しかつ一対のフォロア面を有するフォロア部材と、シリンダヘッド側にカム軸を介して軸支され、アーマチュアの上下動に伴いフォロア部材の各フォロア面に転接する一対のカム面を有する揺動カムとを備えた機関弁の電磁駆動装置において、
該揺動カムのカム面に、前記アーマチュアの上下動に伴い前記フォロア面に転接して緩衝領域を創生するランプ部を形成すると共に、該ランプ部を前記アーマチュアの最上昇位置あるいは最下降位置から反対方向へ作動初期の時点から前記各フォロア面に当接するように形成すると共に、前記カム軸に、該カム軸から揺動カムの先端部までの長さよりも短いストッパ部材を前記揺動カムと連動して設け、機関弁の開閉作動の終端域において前記揺動カムが回動してカム面のベースサークル部が前記各フォロア面に転接した際に、前記ストッパ部材によって前記揺動カムのそれ以上の回動を規制するようにしたことを特徴とする機関弁の電磁駆動装置。 - 前記ストッパ部材の長さを、前記カム軸から揺動カムの先端部までの長さよりも短く形成すると共に、前記ストッパ部材により揺動カムの回動が規制された位置において、前記各フォロア面と揺動カムのカムノーズ部の先端縁との間に隙間を形成したことを特徴とする請求項1に記載の機関弁の電磁駆動装置。
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JP2002173549A JP2004019502A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 機関弁の電磁駆動装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009517995A (ja) * | 2005-12-02 | 2009-04-30 | ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール | 相異なる磁力を持つ永久磁石を有する2つの電磁石を備えた電磁アクチュエータ、および、それを用いて内燃エンジンのバルブを制御する方法 |
JP2010096174A (ja) * | 2008-10-14 | 2010-04-30 | Rollin A Armer | 可変給気弁タイミングを有する可変圧縮エンジン |
-
2002
- 2002-06-14 JP JP2002173549A patent/JP2004019502A/ja active Pending
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KR101291416B1 (ko) * | 2005-12-02 | 2013-08-07 | 발레오 시스템므 드 꽁트롤르 모뙤르 | 상이한 자기력을 갖는 자석을 포함하는 두 개의 전자석을구비한 전자기 액츄에이터 및 이를 이용한 내연기관 밸브의제어방법 |
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