JP2003227031A - ポリトリメチレンテレフタレート前配向糸の製造方法 - Google Patents

ポリトリメチレンテレフタレート前配向糸の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 PTTを高速で巻き取って得られるPTT前
配向糸であって、長期間にわたって高温に暴露されても
仮撚加工が可能で、しかも加工糸の染着性が安定な、P
TT前配向糸を製造するに際し、加熱ロールでの糸切れ
を解消し、安定した紡糸を可能とする製造方法を提供す
る。 【解決手段】 95モル%以上のトリメチレンテレフタ
レート繰り返し単位と5モル%以下のその他のエステル
繰り返し単位を有し、極限粘度が0.7〜1.3dl/
gのポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸して延
伸することなく巻き取るに際し、特定の紡糸速度、加熱
ロール温度、加熱ロール形状を採択することを特徴とす
る、ポリトリメチレンテレフタレート前配向糸の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリトリメチレン
テレフタレート前配向糸の製造方法に関する。更に詳し
くは、長期間にわたって高温に暴露されても仮撚加工が
可能であり、しかも加工糸の染着性が安定な、衣料用に
適したポリトリメチレンテレフタレート前配向糸を製造
するに際し、加熱ロールでの糸切れを解消し、安定した
紡糸を可能とするポリトリメチレンテレフタレート前配
向糸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリトリメチレンテレフタレート(以下
「PTT」という)繊維は、ヤング率が低く、編織物等
の衣料用途に用いた場合にソフトな風合いを有すること
から、近年その需要が大きく拡大しつつある。なかで
も、PTT繊維を仮撚加工すると、ソフトな風合いと高
いストレッチバック性が得られることから、スポーツ衣
料分野への利用が見込まれている。仮撚加工としては、
PTTを高速で紡糸して得られる前配向糸を延伸仮撚す
るのが一般的である。
【0003】前配向PTT繊維の先行技術として、
(A)特表平9−509225号公報、(B)特開昭5
8−104216号公報、(C)「Chemical
Fibers International」47巻、
1997年2月発行、p.72〜74、(D)特開20
00−239921号公報、(E)特開2001−20
136号公報、(F)特開2001−64824号公報
等が挙げられる。先行技術(A)には、紡糸速度200
0〜5000m/分で巻き取られた糸が、(B)には、
紡糸速度2000m/分以上で得られる、複屈折率が
0.035以上の延伸のための前配向糸が示されてい
る。先行技術(C)には、ゴデットロールを用いず、ま
たは冷たいゴデットロールを介した後、3000〜60
00m/分で巻取った仮撚加工のための部分配向糸が開
示されている。
【0004】PTTの前配向糸は、従来のポリエチレン
テレフタレートの前配向糸と大きく異なり、巻取り過程
や巻取り後に繊維の収縮が生じるという特性がある。こ
のために、巻取り過程の問題として、例えば、数kgの
前配向糸を巻いたパッケージが巻取機から抜けなくなる
というトラブルが生じる。更に、パッケージを長期間保
管すると、巻形状の変形やパッケージ端部に起因する糸
質の変化が生じる。先行技術(D)には、巻取り時のパ
ッケージ抜き取りトラブルを解消する目的で、前配向糸
の放縮率を0.2〜1.5%となるように、巻取り過程
で前配向糸を加熱処理する方法が提案されている。先行
技術(E)及び(F)には、パッケージの経時的な変形
を解消する目的で、前配向糸の沸水収縮率を3〜15%
となるように前配向糸を巻き取る過程で熱処理を施すこ
とが提案されている。
【0005】更に、パッケージの端面に起因する染着率
の周期的斑の解消に関しては、本発明者らが既に、特願
2000−139456号において提案を行っている。
しかしながら、これらの課題とは別に、PTT前配向糸
パッケージは、予測されない程の高温下に晒されたり、
赤道を越えた輸送等を行うと、糸質の変化が生じる問題
があることが明らかになった。すなわち、PTT前配向
糸パッケージを高温に曝露すると、前配向糸を仮撚加工
する際に仮撚ヒーター上を走行する糸の張力(以下、仮
撚張力という)が、曝露されていない前配向糸の仮撚張
力よりも低くなり、仮撚加工に際し糸切れが増加するこ
とが明らかになった。しかも、得られた仮撚加工糸を布
帛にして染色すると、曝露条件の相違によって染着率に
差が生じることが明らかになった。
【0006】前配向糸が、曝露条件の相違によって染着
率に差が生じると、製造日が異なる前配向糸を混合して
仮撚加工に供することができなくなり、製造ロットごと
に区分して加工および布帛への投入行うことが必要とな
り、煩雑な作業を要し、工業的には極めて重要な問題が
生じる。先行技術(D)、(E)および(F)に開示さ
れるた方法で熱処理することによっても、予測されない
程の高温暴露による染着率差を解決することは不可能で
あった。前配向糸の高温暴露による染着率差を解決する
ために、先行技術に開示されている熱処理を更に強化し
て解決しようとすると、前配向糸の繊維構造変化、およ
びそれに伴う前配向糸の伸張が起こる。前配向糸の伸張
は加熱ロール上での前配向糸の張力の低下をもたらし、
その結果、加熱ロール上での前配向糸の走行が不安定と
なり糸切れを起こすために、前配向糸の連続した巻取り
が困難になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、PT
T前配向糸の加熱ロールでの糸切れを解消する製造方法
を提供することである。本発明の目的は、PTTを高速
で巻き取って得られるPTT前配向糸であって、長期間
にわたって高温に暴露されても仮撚加工が可能で、しか
も加工糸の染着性が安定な、衣料用に適したPTT前配
向糸の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意検討した結果、PTTを紡糸し、延伸
することなく巻取るに際し、前配向糸の巻取条件とパッ
ケージの熱処理を特定の条件で行うことにより、上記課
題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0009】すなわち、本発明は以下の通りである。 1)95モル%以上のトリメチレンテレフタレート繰り
返し単位と5モル%以下のその他のエステル繰り返し単
位を有し、極限粘度が0.7〜1.3dl/gのポリト
リメチレンテレフタレートを溶融紡糸して延伸すること
なく巻き取るに際し、紡糸速度が2500〜3500m
/分、かつ、第1加熱ロール及び/又は第2加熱ロール
として、ロールの直径が糸導入部の直径よりも糸出口部
の直径が2〜7%漸次大きくなるテーパーロールを用
い、かつ、加熱ロール温度が70〜180℃であること
を特徴とする、ポリトリメチレンテレフタレート前配向
糸の製造方法。
【0010】2)第1加熱ロール及び/又は第2加熱ロ
ールとして、ロールの直径が糸導入部の直径よりも糸出
口部の直径が2〜5%漸次大きくなるテーパーロールを
用いることを特徴とする、請求項1記載のポリトリメチ
レンテレフタレート前配向糸の製造方法。 3)第1加熱ロール及び/または第2加熱ロール温度が
80〜120℃であることを特徴とする、請求項1記載
のポリトリメチレンテレフタレート前配向糸の製造方
法。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、PTT前配向糸の製造方法である。以下、図1を用
いて説明する。図1において、ポリマーチップ乾燥機1
で30ppm以下の水分率までに乾燥されたPTTペレ
ットを255〜265℃の温度に設定された押出機2に
供給し溶融する。溶融PTTは、その後、ベンド3を経
て250〜265℃に設定されたスピンヘッド4に送液
され、ギヤポンプで計量される。その後、スピンパック
5に装着された複数の孔を有する紡糸口金6を経て、マ
ルチフィラメント7として紡糸チャンバー内に押し出さ
れる。押出機及びスピンヘッドの温度は、PTTペレッ
トの極限粘度や形状によって上記範囲から最適なものを
選ぶ。
【0012】紡糸チャンバー内に押し出されたPTTマ
ルチフィラメントは、冷却風8によって室温まで冷却固
化され、仕上げ剤付与装置9で仕上げ剤を付与された
後、所定の速度で回転する引取ゴデットロール兼加熱ゴ
デットロール(以下、加熱ロール、という)10、11
によって引き取られると共に熱処理されて、所定の繊度
の前配向糸パッケージ12として巻き取られる。この
時、前配向糸は、加熱ロールに2〜10回周回して加熱
され、熱処理を行われるので、加熱ロールの表面温度が
前配向糸の熱処理温度とほぼ等しくなる。
【0013】前配向糸12は、第1加熱ロール10に接
する前に、仕上げ剤付与装置9によって仕上げ剤が付与
される。前配向糸に付与する仕上げ剤は、通常、水系エ
マルジョンタイプが使用される。仕上げ剤の水系エマル
ジョンの濃度は、通常、5質量%以上、好ましくは10
〜30質量%である。仕上げ剤の付与率は、平滑性、収
束性、制電性等を付与する目的で、前配向糸に対して
0.2〜2質量%付与することが好ましい。前配向糸に
は、解舒性や仮撚加工時の集束性を向上させる目的で、
仕上げ剤付与装置9と第1加熱ロール10との間及び/
又は第2加熱ロール11と巻取の間で交絡付与装置によ
り、50ヶ/m以下の単糸交絡を付与してもよい。上記
方法により製造された前配向糸は、長期間にわたって高
温に暴露されても、一定の仮撚条件下で加工が可能であ
り、この前配向糸から染着性が安定した仮撚加工糸を製
造することができる。
【0014】本発明において、PTT前配向糸は、以下
の条件を満足することが必要である。 1)ポリマー組成 PTT前配向糸を構成するPTTは、95〜100モル
%がトリメチレンテレフタレート繰り返し単位からな
り、5〜0モル%がその他のエステル繰り返し単位から
なる。すなわち、本発明におけるPTT前配向糸は、P
TTのホモポリマー、及び5モル%以下のその他のエス
テル繰り返し単位を含む共重合ポリトリメチレンテレフ
タレートを含む。
【0015】共重合成分の代表例として、以下のものが
あげられる。酸性分としては、イソフタール酸や5−ナ
トリウムスルホイソフタル酸に代表される芳香族ジカル
ボン酸、アジピン酸やイタコン酸に代表される脂肪族ジ
カルボン酸等である。グリコール成分としては、エチレ
ングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリ
コール等である。ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカ
ルボン酸もその例である。これらの複数が共重合されて
いてもよい。本発明において、PTT前配向糸を構成す
るPTTには、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化チ
タン等の艶消し剤、熱安定剤、酸化防止剤、制電剤、紫
外線吸収剤、抗菌剤、種々の顔料等々の添加剤を含有又
は共重合として含んでいてもよい。
【0016】2)極限粘度 PTT前配向糸の極限粘度は、0.7〜1.3dl/g
であることが必要であり、好ましくは0.8〜1.1d
l/gである。極限粘度が0.7dl/g未満では、前
配向糸を仮撚加工して得られる仮撚加工糸の強度が低
く、この仮撚加工糸を用いた布帛の機械的強度が低下
し、強度を要求されるスポーツ用途等への使用が制約さ
れる。極限粘度が1.3dl/gを越えると、前配向糸
を仮撚加工に使用した際に、仮撚張力が高くなりすぎる
ことによる糸切れが多発し、仮撚加工糸を安定して製造
することが困難となる。本発明において、PTTポリマ
ーの製造方法は、公知の方法でよく、その代表例は、一
定の極限粘度までは溶融重合で重合度を上げ、続いて固
相重合で所定の極限粘度に相当する重合度まで上げる2
段階法である。
【0017】本発明のPTT前配向糸の製造方法におい
ては、紡糸速度、加熱ロール温度、加熱ロールの形状が
重要である。 3)紡糸速度 本発明のPTT前配向糸の製造方法においては、紡糸速
度を2500〜3500m/分とすることが必要であ
り、好ましくは2500〜3200m/分、より好まし
くは2700〜3200m/分である。紡糸速度とは、
第1加熱ロール10の周速度である。紡糸速度が250
0m/分未満では、前配向糸の配向度が低いために、加
熱ロール10または11による熱処理中に糸切れが生じ
易くなり、本発明の前配向糸を工業的に安定して製造す
ることは困難である。紡糸速度が3500m/分を越え
ると、前配向糸の配向度が高いために、仮撚加工速度が
700m/分以上の高速仮撚に対応できない為に、仮撚
工程でのコスト上、不利である。
【0018】4)加熱ロール温度と形状 本発明のPTT前配向糸の製造方法においては、第1加
熱ロール及び/又は第2加熱ロールとして、ロールの直
径が糸導入部の直径よりも糸出口部の直径が2〜7%漸
次大きくなるテーパーロールを用い、かつ、加熱ロール
温度が70〜180℃であることが必要である。PTT
前配向糸を加熱ロールで熱処理する場合、前配向糸の繊
維構造変化、およびそれに伴う前配向糸の伸張が起こ
る。前配向糸の伸張は加熱ロール上での前配向糸の張力
の低下をもたらし、その結果、加熱ロール上での前配向
糸の走行が不安定となり、いわゆる“糸揺れ”現象を生
ずるために、前配向糸の連続した巻取りが困難になる。
【0019】糸揺れを抑制するために、ロールの直径が
糸導入部の直径よりも糸出口部の直径が漸次大きくな
る、すなわち、周速度が漸次速くなることによりロール
上の張力を維持する、テーパーロールが必要である。加
熱ロールの糸出口部の直径と糸導入部の直径の比率(以
降、テーパー率、という)が2%未満であると、糸導入
部から糸出口部にかけての周速度勾配が小さいために、
テーパーロールを使用する最大の目的であるロール上で
のPTT前配向糸の糸揺れを抑制する効果が不足する。
加熱ロールのテーパー率が7%を越えると、加熱ロール
上での前配向糸の延伸が顕著となり、その結果、糸長方
向での繊度変動が顕著となったり、加熱ロール上での延
伸による糸切れが増加する。その上、テーパー率が7%
を越えることは、糸導入部から糸出口部にかけての周速
度勾配が大きいことを意味し、1つのロールに複数本同
時に前配向糸を熱処理する場合には、それぞれの前配向
糸の糸走違いによる物性差が顕著となる。テーパー率の
より好ましい範囲は、2〜5%である。
【0020】テーパーロールが加熱ロール上での糸揺れ
を抑制する効果は、加熱ロール温度が高いほど、またロ
ール表面の粗度が小さいほど大きい傾向がある。そのた
め、第1及び/又は第2加熱ロールそれぞれの温度およ
びロール粗度に応じて、テーパーロールを用いる加熱ロ
ール位置を選択することができる。加熱ロール温度が7
0℃未満では、熱処理温度としては不十分であり、長期
間にわたって高温に暴露された際に、加工糸の染着性が
不安定となる。好ましい使用法として例えば、第1加熱
ロール温度が70℃〜180℃であればテーパー率2〜
7%の鏡面ロールを用い、一方、第2加熱ロール温度が
70℃〜180℃であればテーパー率2〜7%の鏡面ロ
ールを用いることが挙げられる。加熱ロール温度が18
0℃を越えると、第2加熱ロール温度が高すぎるため
に、前配向糸の単糸同士が局部的に融着することによる
糸切れが生じるため、本発明の目的である、PTT前配
向糸を工業的に安定して製造することはできない。加熱
ロール温度のより好ましい範囲は、80℃〜120℃で
ある。
【0021】本発明において製造されるPTT前配向糸
は、繊度や単糸繊度は限定されない。通常、繊度は20
〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexの
ものを使用するが、この範囲に限定されるものではな
い。本発明において製造されるPTT前配向糸は、95
モル%以上のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位
と5モル%以下のその他のエステル繰り返し単位を有
し、極限粘度が0.7〜1.3dl/gのポリトリメチ
レンテレフタレートを溶融紡糸した前配向糸であればよ
く、その他のエステル繰り返し単位として、例えば、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエス
テルを別個に合成した後、ブレンドしたり、複合紡糸
(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい。
【0022】本発明において製造されるPTT前配向糸
の断面形状は特に限定されるものではなく、丸型、三
角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボ
ーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なもので
もよい。本発明において製造されるPTT前配向糸は、
原糸を延伸することなくそのまま編織物に用いてもよい
し、撚糸や仮撚加工およびタスラン加工を施して使用し
てもよい。編織物には、全て本発明の前配向糸パッケー
ジからの糸を使用してもよく、他の繊維と混合して使用
してもよい。混繊複合する他の繊維としては、ポリエス
テル系繊維、セルロース系繊維、ナイロン6繊維、ナイ
ロン66繊維、アセテート繊維、アクリル系繊維、ポリ
ウレタン弾性繊維、ウール、絹等の、長繊維及び短繊維
等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】本発明において製造されるPTT前配向糸
と他の繊維との混繊複合糸は、他の繊維をインターレー
ス混繊、インターレース混繊後延伸仮撚、どちらか一方
のみ仮撚し、その後インターレース混繊、両方別々に仮
撚後インターレース混繊、どちらか一方をタスラン加工
後インターレース混繊、インターレース混繊後タスラン
加工、タスラン混繊、等の種々の混繊方法によって製造
することができる。かかる方法によって得た混繊複合糸
には、交絡が10個/m以上付与することが好ましい。
【0024】本発明において製造されるPTT前配向糸
の仮撚加工としては、一般に用いられているピンタイ
プ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー
仮撚タイプ等の加工方法が採用される。仮撚ヒーター
は、1ヒーター仮撚、2ヒーター仮撚のいずれであって
もよいが、高いストレッチ性を得るためには1ヒーター
仮撚の方が好ましい。仮撚加工は、延伸仮撚および非延
伸仮撚のいずれであってもよい。仮撚ヒーター温度は、
第1ヒーターの出口直後の糸温度が、好ましくは130
〜200℃、より好ましくは150〜180℃、最も好
ましくは160〜180℃になるようにヒーター温度を
設定する。仮撚加工における延伸比は、加工糸の伸度が
35%〜55%となるように、1.1〜1.5に設定す
ることが好ましい。
【0025】1ヒーター仮撚によって得られる仮撚加工
糸の伸縮伸長率は100〜300%、伸縮弾性率は80
%以上であることが好ましい。必要に応じて第2ヒータ
ーで熱セットして、2ヒーター仮撚加工糸としてもよ
い。第2ヒーターの温度は、100〜210℃、好まし
くは第1ヒーター出口直後の糸温度に対して−30℃〜
+50℃の範囲とするのが好ましい。第2ヒーター内の
オーバーフィード率(第2オーバーフィード率)は+3
%〜+30%とするのが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、実施例などにより本発明を
更に具体的に説明するが、本発明は実施例により限定さ
れるものではない。本発明で用いられる物性の測定方法
及び測定条件は以下の通りである。 (1)極限粘度 極限粘度[η]は、次式の定義に基づいて求められる値
である。 定義式中のηr は、純度98%以上のo−クロロフェノ
ールで溶解したPTTの稀釈溶液の35℃での粘度を、
同一温度で測定した上記溶液の粘度で除した値であり、
相対粘度と定義されているものである。Cはg/100
mlで表わされるポリマー濃度である。
【0027】(2)破断伸度、沸水収縮率 JIS−L−1013に基づいて測定する。 (3)紡糸安定性 1錘当たり8エンドの紡口を装着した溶融紡糸−連続延
伸機を用いて、7日間の溶融紡糸を行う。この期間中の
糸切れの発生回数と、得られた延伸糸パッケージに存在
する毛羽の発生頻度(毛羽発生パッケージの数の比率)
から、以下のように判定する。 ◎; 糸切れ3回以内、 毛羽発生パッケージ比率;2%以下 ○; 糸切れ3回〜6回、 毛羽発生パッケージ比率;5%未満 ×; 糸切れ7回以上、 毛羽発生パッケージ比率;5%以上
【0028】(4)仮撚加工性 下記条件で、前配向糸を12パッケージ、各実施例毎、
及び保管日数毎に1日間、仮撚加工を行なう。 仮撚加工機 村田機械製作所(株)製 33H仮撚機 仮撚条件 糸速度 700 m/分 仮撚数 3230 T/m 延伸比 加工糸の伸度が約40%となるように 設定する。 第1フィード率 −1% 第1ヒーター温度 170℃ この期間中の糸切れの発生回数から、以下のように判定
する。 ◎; 糸切れ0回 ○; 糸切れ2回以内 ×; 糸切れ3回以上
【0029】(5)加工糸染着差 紡糸及び熱処理終了直後の前配向糸から得られる加工糸
と、紡糸及び熱処理終了後35℃で30日間保管した前
配向糸から得られる加工糸との染着差で評価する。仮撚
加工糸を一口編みした後、精練・染色して品位を判定す
る。加工糸の染着率差の判定は、熟練したモニターが行
う。 ◎; 染着差なし ○; 染着差微少、許容範囲内 ×; 染着差有り
【0030】
【実施例1〜3、比較例1〜2】本実施例では、前配向
糸の紡糸速度が前配向糸パッケージの物性、紡糸性及び
加工性に及ぼす影響について説明する。酸化チタンを
0.4質量%含む、極限粘度0.91dl/gのPTT
ペレットを図1に示すような紡糸機及び巻取機を用い
て、98dtex/36フィラメントPTT前配向糸パ
ッケージを製造した。
【0031】本実施例、比較例における紡糸条件は、以
下の通りである。 (紡糸条件) ペレット乾燥温度及び到達水分率 110℃、25ppm 押出機温度 250℃ スピンヘッド温度 265℃ 紡糸口金孔径 0.45mm ポリマー吐出量 前配向糸が98デシテックスと なるように各紡糸速度ごとに設定 冷却風条件 温度22℃、相対湿度90% 速度0.5m/sec 仕上げ剤 ポリエーテルエステルを主成分と する水系エマルジョン (濃度;10質量%) 紡糸口金から仕上げ剤付与ノズルまでの距離 75cm 紡糸張力 0.11cN/dtex
【0032】 (巻取条件) 巻取機 帝人製機(株)製AW−909 ボビン軸とコンタクトロールの両軸 が自己駆動 巻取にあたり、図1に示す2対の引取ゴデットロール兼
加熱ゴデットロールを使用して、第1加熱ロールの周速
度を調整して設定した。第1加熱ロールには鏡面ロール
を、第2加熱ロールには梨地ロール(粗度3S)を用い
た。その他の紡糸条件は、表1に記載の通りに設定し
た。
【0033】 (前配向糸パッケージ) 繊度 98デシテックス 水分含有率 0.6質量% 巻径 31 cm 巻幅 10 cm 巻質量 6.0kg/1ボビン (仮撚加工糸物性) 繊度 84.5デシテックス 破断強度 3.3cN/dtex 破断伸度 42% 伸縮伸長率 192% 伸縮弾性率 88% 得られたPTT前配向糸パッケージからの加工糸を織物
の緯糸として使用して、織物の品位を評価した。その結
果を表1に示す。表1から明らかなように、紡糸速度が
本発明の範囲であれば、紡糸性も良好で、かつ、仮撚に
使用しても工業的に問題のない前配向糸を得ることがで
きた。
【0034】
【実施例7,8、比較例5〜6】本実施例では、加熱ロ
ールにテーパーロールを使用する効果について説明す
る。紡糸条件を、実施例2と同様にして前配向糸パッケ
ージを巻取する際、第1加熱ロールのテーパー率を0〜
10%と変更した際の紡糸性を確認した(実施例7、比
較例5,6)。また、第1加熱ロールに梨地ロール(3
S)を、第2加熱ロールには鏡面ロールを用いた例を、
実施例8に示す。その結果を表1に示す。表1から明ら
かなように、加熱ロール温度範囲及びテーパー率が本発
明の範囲であれば良好な紡糸性が得られた。
【0035】
【実施例9】酸化チタンを0.4質量%含む、極限粘度
0.91dl/gのPTTペレットと1.15dl/g
のPTTペレットを図2のような紡糸機及び巻取機を用
いて、98dtex/36フィラメントPTT前配向糸
パッケージを製造した。本実施例における紡糸条件は、
以下の通りである。 (紡糸条件) ペレット乾燥温度及び到達水分率 110℃、25ppm 押出機温度 250℃ スピンヘッド温度 265℃ 紡糸口金孔径 0.45mm ポリマー吐出量 前配向糸が98デシテックスと なるように設定 冷却風条件 温度22℃、相対湿度90% 速度0.5m/sec 仕上げ剤 ポリエーテルエステルを主成分と する水系エマルジョン (濃度;10質量%) 紡糸口金から仕上げ剤付与ノズルまでの距離 75cm 紡糸張力 0.11cN/dtex
【0036】 (巻取条件) 巻取機 帝人製機(株)製AW−909 ボビン軸とコンタクトロールの両軸 が自己駆動 巻取にあたり、図2に示す2対の引取ゴデットロール兼
加熱ゴデットロールを使用して、第1加熱ロールの周速
度を調整して設定した。第1加熱ロールには鏡面ロール
を、第2加熱ロールには梨地ロール(粗度3S)を用い
た。その他の紡糸条件は、表1に記載の通りに設定し
た。得られたPTT前配向糸パッケージからの加工糸を
織物の緯糸として使用して、織物の品位を評価した。そ
の結果を表1に示す。表1から明らかなように、紡糸速
度が本発明の範囲であれば、サイドバイサイド糸であっ
ても、紡糸性も良好で、かつ、仮撚に使用しても工業的
に問題のない前配向糸を得ることができた。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】本発明のPTT前配向糸の製造方法によ
り、長期間にわたって高温で暴露されても仮撚加工が可
能で、しかも加工糸の染着性が安定な衣料用に適したP
TT前配向糸を安定して生産することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の前配向糸製造プロセスの概略図であ
る。
【図2】本発明のサイドバイサイド型前配向糸製造プロ
セスの概略図である。
【符号の説明】
1、13、15:ポリマーチップ乾燥機 2、14、16:押出機 3、17、18:ベンド 4、19:スピンヘッド 5、20:スピンパック 6、21:紡糸口金 7、22:マルチフィラメント 8、24:冷却風 9、25:仕上げ剤付与装置 10、26:第1加熱ロール 11、27:第2加熱ロール 12:前配向糸パッケージ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB35 CC13 EE08 EE20 FF08 JJ05 4L036 AA01 MA05 PA18 UA21

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 95モル%以上のトリメチレンテレフタ
    レート繰り返し単位と5モル%以下のその他のエステル
    繰り返し単位を有し、極限粘度が0.7〜1.3dl/
    gのポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸して延
    伸することなく巻き取るに際し、紡糸速度が2500〜
    3500m/分、かつ、第1加熱ロール及び/又は第2
    加熱ロールとして、ロールの直径が糸導入部の直径より
    も糸出口部の直径が2〜7%漸次大きくなるテーパーロ
    ールを用い、かつ、加熱ロール温度が70〜180℃で
    あることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート
    前配向糸の製造方法。
  2. 【請求項2】 第1加熱ロール及び/又は第2加熱ロー
    ルとして、ロールの直径が糸導入部の直径よりも糸出口
    部の直径が2〜5%漸次大きくなるテーパーロールを用
    いることを特徴とする請求項1記載のポリトリメチレン
    テレフタレート前配向糸の製造方法。
  3. 【請求項3】 第1加熱ロール及び/又は第2加熱ロー
    ル温度が80〜120℃であることを特徴とする請求項
    1記載のポリトリメチレンテレフタレート前配向糸の製
    造方法。
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