JP2002348700A - Cr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方法 - Google Patents

Cr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方法

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JP2002348700A
JP2002348700A JP2001325484A JP2001325484A JP2002348700A JP 2002348700 A JP2002348700 A JP 2002348700A JP 2001325484 A JP2001325484 A JP 2001325484A JP 2001325484 A JP2001325484 A JP 2001325484A JP 2002348700 A JP2002348700 A JP 2002348700A
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Toru Matsuhashi
透 松橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】Cr系ステンレス冷延鋼板の焼鈍時に発生する
スケールを、高能率で除去することができ、除去後の鋼
板表面の光沢性及び均一性が良好となる脱スケール方法
を提供する。 【解決手段】Cr系ステンレス冷延焼鈍鋼板を、硫酸ナ
トリウム濃度を50〜300g/l、硝酸イオン濃度を
20〜250g/l、pHを3以下とした水溶液中で電
解処理する。必要に応じて、中性塩、硝酸水溶液での電
解処理や、硝ふっ酸混合水溶液での浸漬処理を組み合わ
せる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Cr系ステンレス
冷延鋼板の焼鈍時に発生するスケールを高能率で除去す
ることができ、除去後の鋼板表面の光沢性及び均一性が
良好となるCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール
方法に関する。ここで、「冷延焼鈍鋼板」とは冷間圧延
後、焼鈍された鋼板を指す。
【0002】
【従来の技術】ステンレス冷延鋼板の製造工程は、熱間
圧延されたステンレス鋼板を冷間圧延する工程、冷間圧
延の際に生じた加工ひずみを除去し、成形性・加工性を
改善する焼鈍工程、この焼鈍工程で生成する酸化スケー
ルを除去する脱スケール工程からなっている。
【0003】焼鈍工程においては、フェライト系ステン
レス鋼あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼で代表さ
れるCr系ステンレス鋼は、約800から1000℃を
超える温度で焼鈍されるが、その焼鈍中にFe、Cr等
を主成分とした酸化スケールが生成する。この酸化スケ
ールを除去するために焼鈍後に脱スケール工程が必要と
なる。この酸化スケールの脱スケール方法としては、
「中性塩電解法」が広く用いられている。中性塩電解法
では、硫酸ナトリウム等の中性塩の水溶液中で、焼鈍さ
れたステンレス鋼板を、陽極電解、陰極電解を交互に繰
り返す交番電解により脱スケールを行う。陽極電解の際
に、Crを主体とした酸化スケールを(1)式に示す化学
反応により、Cr 2−の可溶性のイオンとして溶
解させる方法である。
【0004】 Cr+4HO→Cr 2−+8H+6e (1) 他の方法として、「アルカリソルト浸漬法」がある。こ
れは、NaOH、NaNO等からなる混合塩を450
〜550℃に加熱溶融させ、焼鈍されたステンレス鋼板
を浸漬して脱スケールする方法である。このアルカリソ
ルト浸漬法でも、酸化スケールは(1)式に示す反応によ
り脱スケールされ、続く水洗工程で溶解除去される。
【0005】上記の中性塩電解法またはアルカリソルト
浸漬法のいずれの方法においても、それぞれ単独では完
全に脱スケールされないため、引き続き「硝酸電解処
理」が実施される。硝酸電解処理は、脱スケール後の不
働態化処理、即ち、耐食性向上の目的も兼ねている。こ
れらの処理を組み合わせることにより、金属光沢のある
Cr系ステンレス鋼板が得られる。
【0006】アルカリソルト浸漬法と中性塩電解法とを
比較すると、アルカリソルト浸漬法の方が、スケール中
のCrを溶解する能力、すなわち脱スケール性は優れ、
特にスケール/母材界面に濃化するSi酸化物等を溶解
する能力に優れている。しかし、アルカリソルト浸漬法
は、溶融塩の粘性が高いため、鋼板に付着して、浸漬槽
から外に持ち出される量が多く、ランニングコストが増
加し、更に、ソルト中で浸漬ロールと鋼板との間でソル
トやスケールを噛み混み、鋼板に疵を生じさせやすい。
したがって、アルカリソルト浸漬法は生産能率及び表面
品質で問題となることが多い。
【0007】一方、中性塩電解法の方は、ランニングコ
ストおよび酸洗後の鋼板の表面品質が優れている。
【0008】したがって、現在では、表面品質を重視す
る脱スケール法として、中性塩電解法が一般的に用いら
れているが、脱スケール性がアルカリソルト浸漬法より
も劣るために、設備が長大となり、かつ複数の処理槽が
必要になるという問題がある。
【0009】フェライト系およびマルテンサイト系ステ
ンレス鋼板の中性塩電解処理後の酸洗方法としては、先
に述べたように一般に硝酸電解法が用いられている。硝
酸中で陰極電解する脱スケール方法は、特開昭49−1
23936号公報に開示されている。
【0010】Cr系ステンレス鋼の代表的鋼種であるS
US430鋼では、中性塩電解法と硝酸電解法とを組合
せれば、比較的容易に脱スケールできる。しかし、スケ
ール内層に生成したSi酸化物が残留する場合があり、
光沢の低下を引きおこしやすい。またSi酸化物がロー
ルに付着し、不均一な模様となって鋼板に転写されるこ
とで、鋼板表面の光沢性や均一性を損なう場合もある。
Si濃度が高い場合、さらに焼鈍温度が高温化した場合
には特に顕著になる。
【0011】また、自動車排気系用途には、オーステナ
イト系ステンレス鋼より熱膨張率の低いフェライト系ス
テンレス鋼が用いられるが、耐熱性を改善するためにS
i、Nb、Mo等を含む場合が多い。これらの耐熱用フ
ェライト系ステンレス鋼は、1000℃前後の高温焼鈍
が必要とされる。そのために従来の中性塩電解法と硝酸
電解法との組み合わせでは完全に脱スケールできず、表
面にSiやNbが残留するために、表面が黄色に変色
し、表面光沢を損ねる場合がある。このような問題を避
けるために、アルカリソルト浸漬法を用いるが、先に述
べたとおり、ランニングコスト、生産性及び表面品質に
問題が多い。
【0012】Cr系ステンレス鋼の上記問題を解決する
方法として、特開昭61−276999号公報、特許第
2965423号公報等には、硫酸に硝酸塩、硫酸塩お
よびフルオロ珪酸塩またはフルオロ硼酸塩を混合させた
水溶液中で電解処理する高能率脱スケール法が提案され
ている。この方法はフルオロ珪酸塩またはフルオロ硼酸
塩から硫酸電解中に生成するペルオキソ硫酸がスケール
の溶解を促進させるとしている。しかし腐食性が強いた
め、電極や電解槽の溶損、劣化が大きく、設備コストが
高くなる。
【0013】また、Nb、Ti、Mo等を含むCr系ス
テンレス鋼については、特開平5−247700号公報
に、硫酸ナトリウム水溶液のpHを0〜3に調整して電
解処理を行った後、硝酸電解処理する方法が、また特開
平5−331699号公報に、pHを0〜3に調整して
電解処理を行った後、硝ふっ酸に浸漬処理する方法が開
示されている。さらに、特開平11−61500号公報
には、pHを6〜8の範囲で中性塩電解処理した後に、
硫酸と硝酸とを混合した水溶液中で電解し、さらに必要
があればその後に硝酸電解処理または硝ふっ酸浸漬処理
を行う方法が開示されている。しかし、何れの方法も、
スケール除去を目的とするもので、脱スケールの高能率
化や脱スケール後の鋼板表面の光沢性については十分な
方法とは言えない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Cr
系ステンレス冷延鋼板の焼鈍時に発生するスケールを、
アルカリソルト浸漬法を用いないで、高能率で除去する
ことができ、除去後の鋼板表面の光沢性及び均一性が良
好となるCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方
法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】Cr系ステンレス冷延鋼
板の焼鈍後の脱スケール方法について、アルカリソルト
浸漬法を用いない電解法による脱スケール方法を検討し
た。
【0016】先ず、Cr系ステンレス冷延鋼板の焼鈍時
の酸化スケールの構造と、中性塩電解工程及び硝酸電解
工程における脱スケール挙動について得られた知見を以
下の(1)〜(3)に示す。
【0017】(1)焼鈍により生じるスケールは、外層が
Fe主体、内層がCr主体のスケール構造で、スケール
/母材界面にSi主体のスケールが生成する。Si、N
b等を含む鋼種や、900℃を超える高温の焼鈍が必要
な鋼種は、界面にSi、Nbを含むスケールが厚く形成
される。
【0018】(2)中性塩電解工程では、主にCr主体の
スケールが溶解されるが、Si、Nbを含むスケールは
全く溶解されない。
【0019】(3)中性塩電解工程に続く硝酸電解工程で
は、Si酸化物は除去される場合もあるが、厚く生成し
た場合には、完全に除去することは困難である。
【0020】さらに短時間で脱スケールが可能で、脱ス
ケール後に、鋼板表面の光沢の低下や肌荒れを発生させ
ずに脱スケールが可能なCr系ステンレス鋼板の脱スケ
ール方法を検討するにあたり、上記(2)に記載の中性塩
電解工程に着目して種々検討した。その結果、新たに下
記の(a)および(b)の知見を得た。
【0021】(a)硫酸ナトリウムの水溶液中に硝酸イ
オンを添加すると、表面光沢の低下や肌荒れを生じさせ
ずに、スケール溶解速度が増加する。
【0022】(b)その場合、pHの低下に伴い脱スケ
ールが進行し、光沢が上昇する。更に詳述すると、
(a)については、図1に、SUS430鋼の冷間圧延
材を830℃で焼鈍した後、硫酸ナトリウムと硝酸を混
合させた水溶液中で電解した場合の、硝酸イオン添加量
と電解後の残留Siの深さ方向の厚さを示した。電流密
度は8A/dmとし、電解条件は陽極電解2秒間、陰
極電解1秒間を交互に繰り返し、合計18秒間の電解処
理を行った。
【0023】図1から、硫酸ナトリウム水溶液中に硝酸
イオンを添加しない場合には、表面にSiが残留する
が、硫酸ナトリウム中に硝酸イオンを添加した場合に
は、硝酸イオン濃度が20g/l以上で、Siが完全に
除去されることがわかる。
【0024】また、(b)については、図2に、図1の
結果を得た試験材を用いて同一電解条件で電解酸洗をお
こなった場合の、酸洗液中のpHと脱スケール後の表面
光沢度との関係を示した。光沢度の測定は、入射角、反
射角とも45°とした場合の光沢度(Gs45)でおこ
なった。
【0025】図2の破線で示す硫酸ナトリウム電解法で
は、脱スケールが不十分で、特に、pHが2以下では母
材までが溶解し、肌荒れにより光沢が大幅に低下する。
一方、図中実線で示す200g/lの硫酸ナトリウムに
50g/lの硝酸イオンを添加した場合には、pHの低
下に伴い脱スケールが進行し、光沢は上昇する。特に、
pH3以下では、硝酸電解を追加した場合の光沢レベル
(良好値)と同等の光沢が得られることがわかる。
【0026】したがって、本方法は1槽の電解槽で脱ス
ケールが可能であり、高能率で表面光沢に優れた脱スケ
ール法であることがわかる。
【0027】この作用機構については、次の反応が両極
でおきるために、これらの相乗効果により優れた脱スケ
ール性が得られるものと推定される。
【0028】1)陽極電解反応 硫酸ナトリウムは前述の(1)式で示されるCrスケール
の酸化溶解反応に寄与し、硝酸はCr、Feスケールの
酸化溶解に寄与する。
【0029】2)陰極電解反応 硫酸ナトリウムと硝酸は母材の均一溶解に寄与し、硝酸
はFeスケールの還元溶解にも寄与する。
【0030】しかし、SiやNb濃度が高いCr系ステ
ンレス鋼や焼鈍温度が900℃を超えるCr系ステンレ
ス鋼では、上記の硫酸ナトリウム+硝酸イオン電解法で
は脱スケールが困難な場合がある。その場合は更に硝酸
電解を追加することで、スケール/母材界面のSi及び
Nbの酸化物の生成量が増加しても、脱スケールが完了
でき、表面光沢および均一性に優れた鋼板が得られる。
【0031】さらに脱スケールが困難な鋼種について
は、硝酸電解工程後に、硝ふっ酸浸漬工程を追加するこ
とで、完全な脱スケールが可能で、かつ表面均一性に優
れた鋼板が得られる。
【0032】本発明は、このような知見に基づきなされ
たもので、その要旨は以下の(1)〜(8)に示すCr
系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方法である。
【0033】(1)硫酸ナトリウム濃度を50〜300
g/l、硝酸イオン濃度を20〜250g/l、pHを
3以下とした水溶液中で電解処理する。
【0034】(2)上記(1)の電解処理に引き続き、
硝酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処
理する。
【0035】(3)上記(1)の電解処理に引き続き、
硝酸濃度を30〜200g/l、ふっ酸濃度を5〜30
g/lとした水溶液中で浸漬処理する。(4)上記
(1)の電解処理に引き続き、硝酸濃度を30〜200
g/lとした水溶液中で電解処理を行った後、硝酸濃度
を30〜200g/l、ふっ酸濃度を5〜30g/lと
した水溶液中で浸漬処理する。
【0036】(5)中性塩で電解処理を行った後に、硫
酸ナトリウム濃度を50〜300g/l、硝酸イオン濃
度を20〜250g/l、pHを3以下とした水溶液中
で電解処理する。
【0037】(6)上記(5)の電解処理に引き続き、
硝酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処
理する。
【0038】(7)上記(5)の電解処理に引き続き、
硝酸濃度を30〜200g/l、ふっ酸濃度を5〜30
g/lとした水溶液中で浸漬処理する。
【0039】(8)上記(5)の電解処理に引き続き、
硝酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処
理を行った後に、硝酸濃度を30〜200g/l、ふっ
酸濃度を5〜30g/lとした水溶液中で浸漬処理す
る。
【0040】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の各項目について
説明する。
【0041】Cr系ステンレス鋼板の製造工程において
冷延後に実施される焼鈍温度は、一般に約800℃から
1000℃を超える温度範囲であるが、化学組成、組織
および要求される成形性・加工性等により詳細は決定さ
れる。
【0042】焼鈍後の脱スケール工程は、硝酸イオンを
含む硫酸ナトリウム水溶液中で電解処理する。硫酸ナト
リウム濃度は50〜300g/l、硝酸イオン濃度は2
0〜250g/lとする。
【0043】硫酸ナトリウム濃度は、50g/l未満で
は、脱スケールが完了するのに長時間を要する。300
g/lを超えるとその効果は飽和し、ランニングコスト
が増加する。したがって、硫酸ナトリウム濃度は50〜
300g/lとした。なお望ましくは80〜250g/
lである。
【0044】硝酸イオン濃度は、20g/l未満では脱
スケール効果が得られない。一方、250g/lを超え
ると、ランニングコストが増加する。したがって、硝酸
イオン濃度は、20〜250g/lとした。なお望まし
くは50〜150g/lである。硝酸イオン源として
は、硝酸、あるいは硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の
硝酸塩の何れでもその効果は得られる。
【0045】pHは、3以下に保つ必要がある。3を超
えると脱スケールが十分進行せず光沢度が低下する。p
Hを3以下に保つためには、硝酸を用いるのが望まし
い。それ以外の硝酸塩を用いる場合、pHを3以下に保
つためには硫酸、塩酸等の酸を添加することが望まし
い。
【0046】電解処理液の液温は、高温ほど脱スケール
効果が大きくなるが、NOxの発生や酸液の蒸発が問題
となるため、40〜90℃が望ましい。
【0047】電解電流密度は、高いほど溶解速度が大き
くなり脱スケール効果も増加するが、高すぎると母材が
溶解して肌荒れが生じる場合があり、また電極材料の溶
損が発生する場合もあるため、0.5〜10A/dm
が望ましい。
【0048】前記の硝酸イオンを含む硫酸ナトリウム水
溶液中での電解処理のみでは脱スケールが困難な材料、
たとえばSi、NbまたはMoを一種以上含有した鋼種
の鋼板については、引き続いて硝酸電解処理を実施す
る。硝酸電解処理条件としては、硝酸濃度はおよそ30
〜200g/l、液温は40〜70℃、電流密度は0.
5〜10A/dmが望ましい。
【0049】さらに上記の組み合わせ法によっても脱ス
ケールが困難な材料、例えばSi、NbまたはMoを一
種以上含有し、さらに1000℃を超える温度で焼鈍さ
れた鋼板については、硫酸ナトリウム+硝酸イオンの混
合液電解処理後、またはさらに硝酸電解に引き続き、硝
酸とふっ酸の混合水溶液中で浸漬処理される。硝酸濃度
は30〜200g/l、ふっ酸濃度は5〜30g/lが
望ましい。液温は30〜60℃が望ましい。
【0050】また、硝酸イオンを含む硫酸ナトリウム水
溶液中での脱スケール効果をさらに向上させる目的で、
この電解処理の前に中性塩で電解処理を行ってもよい。
この時用いる溶液は限定しないが、一般に用いられてい
る100〜300g/lの硫酸ナトリウムまたは硝酸ナ
トリウム水溶液で十分である。
【0051】
【実施例1】供試材としてSUS430、SUS430
LX、SUS444の3種類のステンレス鋼を用いた。
化学組成を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】この供試材は冷間圧延されたままの状態
で、板厚は何れも0.8mmである。この供試材から1
00×150mmの試片を切り出して焼鈍した。焼鈍は
電気炉を用い、焼鈍雰囲気は酸化性雰囲気の炭化水素燃
焼ガス雰囲気とした。焼鈍温度はSUS430は820
℃、SUS430LXは980℃、SUS444は10
20℃とし、均熱時間は何れも30秒とした。焼鈍後、
硫酸ナトリウムおよび硝酸イオンの濃度を変化させた電
解液中で脱スケールを実施した。電流密度はいずれも6
A/dmとし、電解条件は、陽極電解2秒間、陰極電
解1秒間を交互に繰り返し、総電解時間は36秒とし
た。また、一部の鋼板については、上記電解処理の後、
硝酸電解処理を追加した。硝酸電解の条件は、液温50
℃、濃度80g/lとした。電流密度は、2A/dm
で、上記と同様に陽極陰極電解を繰り返し、総電解時間
は30秒とした。
【0054】何れの鋼種についても、脱スケール後の評
価は、以下に示す方法で評価し、何れも、「○」を良好
(合格)とした。
【0055】1)「脱スケール性」は、100倍の光学
顕微鏡で観察し、完全に脱スケールされた場合を○、面
積率で90%以上を△、90%未満を×で表した。
【0056】2)「表面の均一性」は、目視で良好なも
のを○、ややむらが認められるものを△、むらのあるも
のを×とした。
【0057】3)「SiやNb酸化物の残留有無」は、
電子顕微鏡で観察し、これらの酸化物が完全に除去され
ている場合を○、一部粒界近傍に残留している場合を
△、全面に残留している場合を×で表した。
【0058】4)「光沢」は、目視判定により、冷延板
とほぼ同等の光沢を示す良好なものを○、やや光沢が落
ちるものを△、ピット等の発生により光沢がないものを
×とした。
【0059】SUS430、SUS430LXおよびS
US444の試験結果を表2〜表4に示した。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】(1)SUS430 表2に示すように、従来法である硫酸ナトリウムによる
中性塩電解のみでは、pHを低下させても脱スケール性
は劣り、Si酸化物も残留し、光沢性も劣っていた(N
o.1)。また同じ中性塩の硝酸ナトリウムのみでの電解
でも、硫酸ナトリウム電解と同様、脱スケール能力が劣
る(No.2)。いずれの場合も、その後、硝酸電解を付
加させても、Si酸化物は一部残存した(No.3,
4)。
【0064】一方、硫酸ナトリウム中に硝酸イオンを、
硝酸と硝酸ナトリウムの合計量として本発明で規定する
20〜250g/l添加した場合は、電解処理のみで脱
スケールが完了した。Si酸化物も完全に除去されてお
り、従来引き続いて実施されていた硝酸電解が不要とな
ることがわかった(No.6〜8、10,11)。これに
より本鋼種では脱スケールに要する時間が大幅に短縮可
能となる。さらに、硝酸電解を追加しても良好であった
(No.12)。しかし硝酸イオン濃度が本発明の規定
量より低い場合にはその効果は得られなかった(No.
5,9)。
【0065】(2)SUS430LX 表3に示すように、硫酸ナトリウム電解のみでは、pH
を3にしても脱スケールは不良で(No.13)、また、
硫酸ナトリウム電解後に硝酸電解を追加しても、脱スケ
ールは不良、あるいはSi酸化物が残留した(No.14
〜16)。一方、硫酸ナトリウム中に本発明の規定値内
の硝酸イオンを添加した場合(No.17,18)、さら
に、引き続き硝酸電解を実施した場合には完全に脱スケ
ールが完了し、表面にSiおよびNbの酸化物の残留は
認められず、表面光沢性も良好であった(No.20〜2
2)。ただし、硫酸ナトリウム中の硝酸イオン濃度が本
発明の規定値より少ない場合には、SiおよびNbの残
留が認められた(No.19)。
【0066】(3)SUS444 表4に示すように、硫酸ナトリウム電解のみ、あるいは
硫酸ナトリウム中の硝酸イオン濃度が本発明の既定値よ
り少ない場合は、脱スケールが不良であった(No.23
〜25)。一方、硫酸ナトリウム中に本発明の規定値内
の硝酸イオンを添加して電解後、硝酸電解を実施した場
合は、脱スケールは完了し、その他の評価項目も全て良
好であった(No.26〜28)。更に、SUS430L
X、SUS444については、硝酸電解を追加し、引き
続き、硝ふっ酸浸漬を実施した。電解条件は上記の条件
と同様とし、硝ふっ酸浸漬条件は、硝酸濃度80g/
l、ふっ酸濃度15g/l、液温40℃、浸漬時間は7
0秒とした。試験結果を表5、表6に示した。
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】(1)SUS430LX 表5に示すように、pHを6とした硫酸ナトリウム電解
後に硝ふっ酸浸漬を追加した場合、スケールおよびS
i、Nbの残留が認められた(No.29)。硫酸ナトリ
ウム電解後に硝酸電解し、その後硝ふっ酸浸漬をした場
合は、脱スケールは完了するが、鋼板表面の均一性が劣
った(No.30)。一方、本発明の硫酸ナトリウムに硝
酸イオンを規定量混合した溶液中で電解し、その後、硝
ふっ酸浸漬または硝酸電解を実施した場合は、表面の均
一性が良好な鋼板が得られた(No.31〜33)。
【0070】(2)SUS444 表6に示すように、SUS430LXと同様な結果であ
った。SUS444でも本発明の効果が確認出来た。
【0071】
【実施例2】硫酸ナトリウムと硝酸イオンを混合した水
溶液で電解を行う前に、硫酸ナトリウム等の中性塩で電
解を行う脱スケール方法の効果を確認するために、実施
例1と同じ条件で実験を行った。中性塩として、200
g/lの硫酸ナトリウム、50℃水溶液を用いた。使用
した鋼種は、表1に示した、A〜Cの3鋼種で、その他
の実験条件および評価方法は、実施例1と同じ条件で行
った。試験結果を表7、8に示した。
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】硫酸イオンを含有していないかまたは含有
量が本発明の下限を下回る場合、脱スケール性等の特性
が低下しているのが分かる(No39、40、48、5
2)。一方、硝酸イオンが本発明の範囲内である場合
は、硝酸電解や硝ふっ酸浸漬を組み合わせた条件でも、
いずれも脱スケール性、均一性、Si、Nb除去、光沢
性いずれも良好であることが分かる。
【0075】以上の結果から、本発明の硫酸ナトリウム
と硝酸イオンを混合した水溶液で電解した場合、脱スケ
ール時間が大幅に短縮され、表面が均一で光沢の良い鋼
板が得られることが判明した。さらに、SUS430L
XのようなSi、Nbを多く含有するフェライト系ステ
ンレスでは、硝酸電解を追加することで、表面が均一で
光沢の良い表面が得られることがわかった。SUS44
4のようなNb、Moを多量に含有するために焼鈍温度
が1020℃と高い鋼種においては、中性塩電解や硝ふ
っ酸浸漬処理を追加することで、脱スケール効率に優
れ、表面が均一な鋼板が得られることが裏付けられた。
【0076】
【発明の効果】本発明により、Cr系ステンレス冷延鋼
板の焼鈍後の脱スケール速度が大幅に向上でき、また脱
スケールが難しいとされるSi、Nb、Moを含有した
鋼種についても、硫酸ナトリウム中の硝酸イオン濃度及
びpHの適正化により、脱スケール能力が向上し、さら
に光沢および均一性にも優れた表面を得ることが可能と
なった。これによりアルカリソルト浸漬工程の省略によ
るコストダウン及び品質向上、並びに脱スケール時間の
短縮による生産性の向上も期待できる。
【0077】Si、NbあるいはMoを含有し、さらに
焼鈍温度が1000℃を超えるような脱スケールが難し
い鋼種についても、硫酸ナトリウム電解液中の硝酸イオ
ン濃度及びpHの調整に加えて中性塩電解、硝酸電解処
理や硝ふっ酸浸漬処理を追加することで、脱スケール効
率に優れ表面が均一な鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解後のSUS430鋼の表面残留Si深さと
硝酸イオン添加量との関係を示した図である。
【図2】SUS430鋼の硫酸ナトリウム電解時のpH
と電解後の光沢度との関係を示した図である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Cr系ステンレス冷延焼鈍鋼板を、硫酸ナ
    トリウム濃度を50〜300g/l、硝酸イオン濃度を
    20〜250g/l、pHを3以下とした水溶液中で電
    解処理することを特徴とするCr系ステンレス冷延焼鈍
    鋼板の脱スケール方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の電解処理に引き続き、硝
    酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処理
    することを特徴とするCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の
    脱スケール方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の電解処理に引き続き、硝
    酸濃度を30〜200g/l、ふっ酸濃度を5〜30g
    /lとした水溶液中で浸漬処理することを特徴とするC
    r系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の電解処理に引き続き、硝
    酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処理
    を行った後に、硝酸濃度を30〜200g/l、ふっ酸
    濃度を5〜30g/lとした水溶液中で浸漬処理するこ
    とを特徴とするCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケ
    ール方法。
  5. 【請求項5】Cr系ステンレス冷延焼鈍鋼板を、中性塩
    で電解処理を行った後に、硫酸ナトリウム濃度を50〜
    300g/l、硝酸イオン濃度を20〜250g/l、
    pHを3以下とした水溶液中で電解処理を行うことを特
    徴とするCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方
    法。
  6. 【請求項6】請求項5に記載の電解処理に引き続き、硝
    酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処理
    することを特徴とするCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の
    脱スケール方法。
  7. 【請求項7】請求項5に記載の電解処理に引き続き、硝
    酸濃度を30〜200g/l、ふっ酸濃度を5〜30g
    /lとした水溶液中で浸漬処理することを特徴とするC
    r系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケール方法。
  8. 【請求項8】請求項5に記載の電解処理に引き続き、硝
    酸濃度を30〜200g/lとした水溶液中で電解処理
    を行った後に、硝酸濃度を30〜200g/l、ふっ酸
    濃度を5〜30g/lとした水溶液中で浸漬処理するこ
    とを特徴とするCr系ステンレス冷延焼鈍鋼板の脱スケ
    ール方法。
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