JP6105167B2 - 高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法に係り、より詳しくは、焼鈍温度及び鋼種成分系によって電解酸洗時、印加電流量を調節し、混酸浸漬時、混酸溶液内の遊離フッ酸の含量と酸化還元電位を調節して酸洗することにより、冷延鋼板に存在する焼鈍スケールを効果的に除去する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法に関する。
一般に、フェライト系ステンレス鋼は、クロム含量によって低クロムフェライト系ステンレス鋼と高クロムフェライト系ステンレス鋼に区別される。通常、クロム含量が11〜14重量%のものを低クロムフェライト系ステンレス鋼、クロム含量が17〜26重量%のものを高クロムフェライト系ステンレス鋼という。
クロム含量によって焼鈍熱処理時に形成されるスケールの特性が変化するため、クロム含量によって酸洗方法を異ならせる必要がある。一般に、低クロムフェライト鋼は、焼鈍熱処理時にスケールが厚く形成され、高クロムフェライト鋼は、焼鈍熱処理時にスケールの厚さが低クロムフェライト鋼に比べて相対的に薄く形成される。
また、鋼種別特性によって焼鈍時の熱処理温度に差があり、焼鈍温度が高いほど、スケールが厚く形成され、スケール内のクロム成分の含量も高くなる。
一方、このようなスケールは製品の外観品質を低下させるのみならず、酸化スケールから腐食が始まって耐食性を低下させる要因として作用する可能性があるため、酸洗過程を通じて表面に形成されたスケールを除去する必要がある。
通常、ステンレス冷延鋼板を製造するにあたり、鋼板上に形成された酸化スケールを除去して美麗な表面品質を得て、且つ鋼板の耐食性を向上させるために、ブラシ処理やショットボールブラスティングのような物理的デスケーリング、硫酸ナトリウム、硫酸又は硝酸電解質などを用いる電解デスケーリング、塩浴又は混酸などによる化学的デスケーリングなどの多様な方法が行われており、このような過程を包括的に「酸洗工程」という。
このような酸洗工程で電解デスケーリングのような1段階電解酸洗と化学的デスケーリングのような2段階混酸浸漬過程が区別される。
このようにステンレス冷延鋼板を酸洗する工程は、従来から一般に80〜180g/Lの硝酸及び2〜40g/Lのフッ酸を含む混酸溶液を用いて行われてきた。しかしながら、混酸溶液内に含まれた硝酸は、酸洗槽内のpHを低くしてフッ酸の活動度を高くし、鋼板の表面で溶解された2価鉄イオンを3価に酸化させて酸洗に適正な酸化還元電位を維持させる役割を行うが、大気排出規制物質であるNOを発生させ、廃酸及び洗浄水に硝酸性窒素(NO−N)が多量に含まれることから問題となっている。
よって、国内外の環境規制強化により排出放流水の総窒素の量を制限し、大気排出施設のNOの濃度を制限するなどにより、酸洗工程で環境汚染防止施設をさらに設置及び運用することが求められたが、上記のような施設を運用するにあたり費用が多く発生して生産単価が顕著に増加するという問題も発生した。
したがって、このような問題を解決するために、従来の酸洗工程で用いられていた混酸溶液に含まれる硝酸を塩酸又は硫酸などに代替する方法が提案されたが、その場合には、混酸溶液の酸化性が弱いことからスケールに対する溶解速度が低く、溶解過程で金属の表面に黒変現象が発生する可能性がある。
したがって、酸洗性に最も優れたストリップの表面電位に到達することができるように、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、3価鉄イオン及び空気注入によって不足した酸化力を補充する方法が開発されてきており、その中でも特に、分解時にも環境に負担を与えない過酸化水素が酸化剤として通常用いられている。
しかしながら、この場合は、添加される酸化剤の適正投入量を探すことが容易ではないため、場合によっては、未酸洗又は過酸洗の結果をもたらす可能性があり、鋼板の表面に黒変現象が発生するなどの問題に効果的且つ定量的に対応することができないという問題がある。
一方、特許文献1では、硫酸、フッ酸、鉄塩を含有し、過酸化水素を定期的に投入し、湿潤剤、光沢剤、腐食抑制剤などの組成を調節して酸洗し、Fe(III)及びこれによる酸化還元電位(oxidation−reduction potential、ORP)を自動制御する方式により酸洗溶液を管理する技術が提案された。
また、特許文献1の酸洗溶液は製品CLEANOX(登録商標)352として商用化されて世界中に最も広く用いられており、上記特許の酸洗方法は線材及び熱延製品に実用化されて用いられている。
しかしながら、上記の特許文献1の酸洗方法による場合、製品の生産単価が既存に比べて20%以上高く、複雑な溶液組成と管理方法を採択していることから問題となっており、何よりも、酸洗速度が1.5〜3g/m・min程度と比較的遅いため、10〜100秒内に混酸酸洗が完了しなければならない高速酸洗ラインには適さないという問題が提起されている。
よって、特許文献1に対する改良特許として、特許文献2及び特許文献3では、銅及び塩素イオンを酸洗組成物に追加して酸洗速度を高くする方法が提案されたが、上記方法による場合、フェライト系ステンレス鋼板の表面に形成される表面電位(Open circuit potential、OCP)が銅イオンの酸化還元電位である0.1Vより低くなると、酸洗過程で鋼板の表面に銅粒子が析出して鋼板を変色させる恐れがあり、酸洗溶液に塩素イオンを一定の濃度以上で含有すると、孔食(pitting corrosion)が発生する恐れがある。
米国特許第5908511号公報 欧州公開特許第1040211号公報 米国特許公開第2000−560982号公報
本発明の目的は、残留する酸化スケールがなく、表面光沢度に優れたステンレス鋼板を提供することである。
また、本発明の目的は、鋼板を混酸溶液に浸漬するとき、酸化還元電位によって混酸溶液に投入する過酸化水素の適正量を確認することができるようにすることにより、鋼板の表面が未酸洗又は過酸洗されたり黒変現象が発生することを防止することができるようにすることである。
さらに、本発明の目的は、鋼板の酸洗工程時に用いられる混酸溶液として硝酸を用いないため、廃水及び排気ガスに対する処理の負担を減らすことができるようにすることである。
本発明の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法の一実施例によれば、1030℃以上1050℃以下の焼鈍温度で焼鈍された17〜26重量%のクロムを含有する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板を中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗する電解酸洗段階と、電解酸洗を行った冷延鋼板を硫酸及びフッ酸を含む混酸溶液に浸漬する混酸浸漬段階と、を含み、電解酸洗段階時、中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和は12A/dm以上20A/dm以下に調節されることを特徴とする。
本発明の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法の他の実施例によれば、930℃以上1030℃未満の焼鈍温度で焼鈍された17〜26重量%のクロムを含有する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板を中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗する電解酸洗段階と、電解酸洗を行った冷延鋼板を硫酸及びフッ酸を含む混酸溶液に浸漬する混酸浸漬段階と、を含み、電解酸洗段階時、中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和は30A/dm2以上50A/dm以下に調節されることが好ましい。
中性塩電解酸洗の印加電流量は8A/dm2以上であるか、又は電流の印加なしに浸漬によって行われることが好ましい。
冷延鋼板の総重量に対してケイ素(Si)含量が0.3重量%以下であるか又はモリブデン(Mo)含量が0.5重量%以下の場合、混酸浸漬段階時に用いられる混酸溶液は80〜150g/Lの硫酸及び5〜12g/Lの遊離フッ酸を含み、酸化還元電位(ORP)が550mV以上であることが好ましい。
混酸溶液の酸化還元電位が550mV以上に維持されるように混酸溶液に過酸化水素を追加することができる。
冷延鋼板の総重量に対してケイ素(Si)含量が0.3重量%を超えるか又はモリブデン(Mo)含量が0.5重量%を超える場合、混酸浸漬段階時に用いられる混酸溶液は80〜150g/Lの硫酸及び20〜30g/Lの遊離フッ酸を含み、酸化還元電位(ORP)が320mV以上であることが好ましい。
混酸溶液の酸化還元電位が320mV以上に維持されるように過酸化水素を追加することができる。
中性塩電解酸洗は、濃度100〜250g/Lの硫酸ナトリウムを含む電解液を用いて行われることが好ましい。
中性塩電解酸洗時に用いられる電解液の温度は50〜90℃であればよい。
中性塩電解酸洗は24〜100秒間行われることができる。
硫酸電解酸洗は、50〜150g/Lの硫酸又は50〜150g/Lの硫酸に鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン及びチタンからなる群から選択された一つ以上の金属が溶解されて形成された金属硫酸塩を含む電解液を用いて行われることが好ましい。
硫酸電解酸洗時に用いられる電解液の温度は30〜60℃であることが好ましい。
硫酸電解酸洗は10〜50秒間行われることがよい。
混酸浸漬段階は25〜90秒間行われることがよい。
混酸浸漬段階時、冷延鋼板の表面電位は−0.2〜0Vの範囲に維持されることが好ましい。
本発明によると、本発明は、残留する酸化スケールがなく、表面光沢度に優れた高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板を提供することができる。
また、本発明は、鋼板を混酸溶液に浸漬するとき、酸化還元電位によって混酸溶液に投入する過酸化水素の適正量を確認することにより、鋼板の表面が未酸洗又は過酸洗されて黒変現象が発生する問題を防止することができる。
また、本発明は、鋼板の酸洗工程時に用いられる混酸溶液として硝酸を用いないため、廃水及び排気ガスに対する処理の負担を減らすことができる。
439鋼及び441鋼の焼鈍スケールの深さによるCr/Fe含量比をグラフで示すものである。 焼鈍温度によって電解酸洗可能な中性塩電解槽及び硫酸電解槽の印加電流領域を示すものである。 冷延鋼板に含まれたケイ素及びモリブデンの含量によって混酸浸漬段階で用いる混酸溶液内に含まれた遊離フッ酸の濃度及び混酸溶液の酸化還元電位領域を示すものである。 (a)〜(d)は、それぞれ比較例1、実施例1、比較例8及び比較例9における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものである。 (a)〜(c)は、それぞれ比較例16、実施例6及び比較例28における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものである。 (a)及び(b)は比較例29及び比較例31における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものである。 (a)及び(b)は比較例32及び実施例16における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものである。 (a)及び(b)は比較例33及び実施例19における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものである。
以下、添付の図面に基づき本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施の形態に限定されない。
本発明は、冷延鋼板の総重量に対して17〜26重量%のクロムを含有する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の表面に存在する酸化スケールを除去するために酸洗する方法に関する。
より具体的には、本願発明が提供する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法は、高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板を中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗する電解酸洗段階と、電解酸洗を行った冷延鋼板を硫酸及びフッ酸を含む混酸溶液に浸漬する混酸浸漬段階と、を含み、且つ電解酸洗段階時、焼鈍温度によって印加電流量を調節し、混酸浸漬段階時、鋼種成分によって混酸溶液に含まれた遊離フッ酸(Free HF)の含量及び酸化還元電位(ORP)を調節することを特徴とする。
本発明の酸洗方法において、高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板には、電解酸洗過程として中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗を順次行うことができる。
このとき、中性塩電解酸洗は、濃度100〜250g/Lの硫酸ナトリウムを電解質として含む電解液を用いて行われ、具体的には、温度が50〜90℃の電解液に冷延鋼板を浸漬した後、鋼板の表面の電位が+、−、+の順に少なくとも1回以上帯電されるように密度8〜30A/dmの電流を24〜100秒間加えて行われる。
また、硫酸電解酸洗は、50〜150g/Lの硫酸、又は上記濃度の硫酸に鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン及びチタンからなる群から選択された一つ以上の金属が電気化学的に溶解されて形成された金属硫酸塩を電解質として含む電解液を用いて行われ、具体的には、温度が30〜60℃の電解液に冷延鋼板を浸漬した後、鋼板の表面の電位が+、−、+の順に少なくとも1回以上帯電されるように密度0〜30A/dmの電流を10〜50秒間加えて行われる。
一方、高クロムフェライト系ステンレス鋼の場合、焼鈍時に生成されるスケールに含まれたクロムの含量が高く、特に、焼鈍温度が高いほど、そのクロム含量がより高くなる。このとき、焼鈍スケールに含まれたクロム含量が高いほど、中性塩電解酸洗時に酸化物の溶解が容易であり、例えば、焼鈍温度が1030℃以上の場合は、クロム含量の濃縮が酷くなるため、中性塩及び硫酸電解酸洗時、高い印加電流条件では表面溶解による過酸洗が発生する恐れがある。
よって、本発明の一実施例によれば、1030℃以上1050℃以下の相対的に高い温度で焼鈍された冷延鋼板を電解酸洗する場合において、中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和が12A/dm未満の場合は未酸洗が発生する可能性があり、20A/dmを超える場合は過酸洗による表面侵食が発生する可能性があるため、効果的な酸洗のためには中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和が12A/dm以上20A/dm以下となるように調節することが好ましい。
また、本発明の他の実施例によれば、930℃以上1030℃未満の相対的に低い温度で焼鈍された冷延鋼板を電解酸洗する場合において、中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和が30A/dm未満の場合は未酸洗が発生する可能性があり、50A/dmを超える場合は過酸洗による表面侵食が発生する可能性があるため、効果的な電解酸洗のためには中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和が30A/dm以上50A/dm以下となるように調節することが好ましい。
但し、本発明において、電解酸洗時、焼鈍温度とは関係なく、中性塩電解酸洗の印加電流量は8A/dm以上であり、硫酸電解酸洗の印加電流量は0又は8A/dm以上であることが好ましい。
具体的には、中性塩電解酸洗時、印加電流量が8A/dm未満の場合は、焼鈍スケールを溶解させることができる表面電位が形成されず、中性塩電解酸洗の効果が不足する可能性があるため、十分なスケールの溶解のためには印加電流量が8A/dm以上であることが好ましい。
また、硫酸電解酸洗時、印加電流量が0超8A/dm未満の場合は、酸洗後の表面が不均一で粗くなる問題が発生する可能性があるため、鋼板の表面に対する均一な酸洗のためには硫酸電解酸洗の印加電流量が0A/dmであるか又は8A/dm以上であることが好ましい。
但し、硫酸電解酸洗の印加電流量が0A/dmであるというのは、硫酸電解酸洗の前段階である中性塩電解酸洗において焼鈍スケールの溶解が大きい場合は母材の損傷を防止するために電流の印加なしに浸漬によって行われるということを意味する。
また、本発明において中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗の印加電流量の上限について、その値は二つの電解酸洗の印加電流量の和によって決まり、特に限定されないが、運転コストなどの経済的な点を考慮すると、例えば、印加電流量の上限は30A/dm以下であることが好ましい。
図2は、本発明において焼鈍温度によって電解酸洗可能な中性塩電解槽及び硫酸電解槽の印加電流領域を示すものであり、図2の領域Iは、17〜26重量%のクロム含有フェライト系ステンレス鋼の焼鈍温度が1030〜1050℃の領域で酸洗可能な中性塩電解槽と硫酸電解槽の印加電流範囲を示すものであり、領域IIは、焼鈍温度が930℃以上1030℃未満で酸洗可能な中性塩電解槽と硫酸電解槽の印加電流範囲を示すものである。
本発明において電解酸洗を行っている間に高クロムフェライト系冷延鋼板の表面に存在するクロム及び鉄の酸化物層は除去されるが、ケイ素酸化物層は残る可能性がある。よって、本発明の酸洗方法は、上記の電解酸洗段階に引き続き電解酸洗を行った冷延鋼板を硫酸及びフッ酸を含む混酸溶液に浸漬する混酸浸漬段階を行うことにより、鋼板上に残留するケイ素酸化物の層を除去することができる。
上記の混酸浸漬段階時に用いられる混酸溶液に含まれたフッ酸(HF)は、下記式(1)のように溶液内で解離し、下記式(2)のように硫酸が解離して生じた水素イオン(H)の濃度、即ち、酸度(acidity)によって平衡状態が変わる。
しかしながら、フッ酸は、解離していない遊離フッ酸(Free HF)状態で酸洗力を有し、このような遊離フッ酸は、ケイ素酸化物及び母材の界面に浸透してケイ素酸化物及び鉄(Fe)を溶解させた後、溶解されたケイ素イオン及び鉄イオンとFeF (3−x)、HSiFなどの形で結合してこれらを鋼板の表面から除去するようになる。
したがって、本発明は、混酸浸漬段階時、遊離フッ酸が5〜30g/Lの濃度を有する混酸溶液を用いることが好ましい。遊離フッ酸の濃度が5g/L未満の場合は、遊離フッ酸として存在する濃度が少なく、ケイ素酸化物層に対する溶解力が不足して鋼板の表面に未酸洗の問題が発生する可能性があり、濃度が30g/Lを超える場合は、母材の侵食速度が速くなって酸洗後に鋼板の表面が粗くなる可能性がある。
上記のように、混酸溶液に含まれたフッ酸は鋼板の表面のケイ素酸化物層を除去することができる酸洗力を提供するが、混酸溶液内では一定の酸度以上に有効遊離フッ酸濃度を維持する必要がある。したがって、本発明は、混酸溶液に含まれたフッ酸が解離しないようにするために、混酸溶液にフッ酸と共に一定濃度以上の硫酸を含むことが好ましい。
このとき、適した硫酸の濃度は80〜150g/Lであることが好ましい。硫酸の濃度が80g/L未満の場合は、有効遊離フッ酸濃度が維持されないことからフッ酸の解離が発生して酸洗力が低下するため、未酸洗の問題が生じる可能性があり、濃度が150g/Lを超える場合は、硫酸希釈操業中に発熱が発生して操業が困難となるなどの問題が発生する恐れがある。
一方、フェライト系ステンレス鋼の酸化スケールのうち、ケイ素酸化物は、フェライト系結晶のグレインの表面及びグレインとグレインの間の結晶粒界に全て存在し、結晶粒界のケイ素酸化物は、母材の内部の奥にまで存在する。オーステナイト系ステンレス鋼は、結晶の耐食性が高いことから結晶粒界から優先的に侵食されるのに対し、フェライト系ステンレス鋼は、結晶の耐食性が低いことから結晶の内部と結晶粒の間の侵食速度に差がないため、グレインの表面と結晶粒界が選択性なく完全に溶解される。したがって、ケイ素酸化物を全て除去するためには相当部分の母材が溶解される必要がある。
このとき、母材からFe2+が溶出され、溶出されたFe2+は過酸化水素のような酸化剤と反応してFe3+に酸化し、その後、遊離フッ酸と結合してFeF (3−x)の形の錯化合物が生成されて鋼板の表面から除去される。反応は下記式(3)〜(6)のように表され、このような過程が円滑に行われる場合に酸洗速度を高くすることができる。
このとき、混酸酸洗液内の過酸化水素の濃度が不足する場合は、式(4)の反応がなされないため、鋼板の表面のFe2+の濃度が局部的に増加し、式(3)の左の方向の反応が優勢になる。この場合、式(6)のようにFe及びステンレス鋼に添加物又は不純物として存在するCuなどが鋼板の表面に再析出し、鋼板の表面が黒く変わる黒変現象が発生する。したがって、過酸化水素の含量を常に一定の水準に維持して式(4)の反応が十分になされるようにすることが好ましい。
一方、上記のように冷延鋼板を混酸溶液に浸漬して酸洗を行う場合、母材を一部溶解し残留するケイ素酸化物層まで除去することができるが、鋼種内のモリブデン(Mo)の含量が高いほど、耐食性が高く、酸洗時の溶解速度を遅くする可能性があり、ケイ素(Si)の含量が高いほど、ケイ素酸化物の層が厚く形成され、混酸溶液が母材を溶解することが困難となる可能性がある。
したがって、本発明の酸洗方法は、上記の混酸浸漬段階時、冷延鋼板に含まれたケイ素(Si)及びモリブデン(Mo)の含量によって混酸溶液に含まれた遊離フッ酸(Free HF)の含量及び酸化還元電位(ORP)を調節して行うことにより酸洗を効果的に行うことができる。
即ち、高クロムフェライト系ステンレス鋼において、ケイ素(Si)含量が0.3重量%以下であるか又はモリブデン(Mo)含量が0.5重量%以下の場合は、焼鈍スケールの大部分が電解酸洗段階で除去され、微量で残留するケイ素酸化物のみを除去すればよいため、遊離フッ酸の濃度を低くして母材の侵食を最小化することが好ましい。
したがって、本発明では、ケイ素含量が0.3重量%以下であるか又はモリブデン含量が0.5重量%以下の場合、混酸溶液は濃度80〜150g/Lの硫酸及び濃度5〜12g/Lの遊離フッ酸を含むことが好ましく、黒変現象を防止するために混酸溶液の酸化還元電位(ORP)が550mV以上に維持されるように過酸化水素を追加することが好ましい。
これに対し、高クロムフェライト系ステンレス鋼において、ケイ素(Si)含量が0.3重量%を超える場合は、電解酸洗後、混酸溶液に浸漬する段階の前に、鋼板の表面にケイ素酸化物が多量に存在する可能性があるため、これを効果的に除去するためには高濃度の遊離フッ酸を用いることが好ましい。
また、高クロムフェライト系ステンレス鋼において、モリブデン(Mo)の含量が0.5重量%を超える場合は、鋼板に含まれたモリブデンの高い含量に起因して耐食性が高くなるに従って混酸溶液による母材の溶解速度が顕著に低下する可能性があるため、混酸溶液として遊離フッ酸を高濃度で含むものを用いることが好ましい。
したがって、本発明では、ケイ素含量が0.3重量%を超えるか又はモリブデン含量が0.5重量%を超える場合、混酸溶液は濃度80〜150g/Lの硫酸及び濃度20〜30g/Lの遊離フッ酸を含むことが好ましく、黒変現象を防止するために混酸溶液の酸化還元電位(ORP)が320mV以上に維持されるように過酸化水素を追加することが好ましい。
但し、本発明の酸洗方法において、上記の混酸溶液の酸化還元電位範囲は、ステンレス鋼に含まれたケイ素及びモリブデン含量にかかわらずその上限が特に限定される必要がないが、一般に高フッ酸操業時に溶液内のメタルの含量が非常に高くなり、このような状況で酸化還元電位を高く維持するためには過酸化水素投入量が過多になって経済的な点で問題となる可能性があるため、例えば、その上限は600mV以下に維持されることが好ましい。
図3は、本発明において冷延鋼板に含まれたケイ素及びモリブデンの含量によって混酸浸漬段階で用いる混酸溶液内に含まれた遊離フッ酸の濃度及び混酸溶液の酸化還元電位領域を示すものである。
具体的には、図3の領域IIIは、高クロムフェライト系ステンレス鋼においてSi含量が0.3重量%以下であるか又はMo含量が0.5重量%以下であるステンレス鋼成分系で電解酸洗した後に混酸溶液に浸漬したとき、酸洗可能な遊離フッ酸の濃度が5〜12g/L、溶液の酸化還元電位範囲が550mV以上を示すものである。
また、図3の領域IVは、高クロムフェライト系ステンレス鋼においてSi含量が0.3重量%を超えるか又はMo含量が0.5重量%を超えるステンレス鋼成分系で電解酸洗した後に混酸溶液に浸漬したとき、酸洗可能な遊離フッ酸の濃度が20〜30g/L、溶液の酸化還元電位範囲が320mV以上を示すものである。
また、本発明において、混酸浸漬段階時、冷延鋼板の表面電位は−0.2〜0Vの範囲に維持することが好ましい。ステンレス鋼は、表面電位によって、溶解される速度及びパターンが決まる。したがって、表面電位が−0.2V未満の低い値の場合は、母材が主にFe2+として溶解されSO 2−と反応して表面にFeSO化合物を形成するため、表面に黒変現象が発生する可能性があり、この場合、表面で母材が溶解されるときにグレインの特定方位が溶解されすぎて表面が非常に粗くなり、また、表面電位が高い場合にのみ除去されることができるFe3+が除去されないため、過酸洗及び未酸洗が混在する可能性がある。
これに対し、表面電位が0Vを超える場合は、表面が溶解される前に電位が高くなりすぎ、溶解させて除去しなければならない一部の良くない部分がそのまま残るため、酸洗速度も非常に遅くなり、硫酸−フッ酸−過酸化水素システムで鋼板の表面電位を高く維持するためには過酸化水素消耗量が非常に大きくなるため、経済的にも問題となる可能性がある。
本発明において混酸浸漬段階を行う時間は特に限定されず、操業条件によって変動可能であるが、本発明の酸洗方法による場合は25〜90秒の短時間内でも行うことができる。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、下記実施例は、本発明の理解のための例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明において、以下の実施例では441鋼と439鋼を用い、441鋼と439鋼という表現は焼鈍スケール内のCr/Fe成分の含量比を示すものであり、441鋼は1050℃、439鋼は970℃で熱処理したものであり、焼鈍スケール内のCr/Fe含量の成分比は441鋼が8.5、439鋼が4.3の水準である。
二つの鋼種ともクロム含量が総重量に対して17重量%程度の水準であるが、鋼種の特性上、焼鈍温度の差によって焼鈍スケール内のCr/Fe比に差が発生する。
一方、中性塩電解の場合は、Cr3+酸化物であるCrをCr6+(Cr 2−)イオンとして酸化溶解させるが、Fe系の酸化物は溶解することが困難であるという特性があるため、スケール内のクロムの含量が高いほどスケールの除去に有利となる。したがって、439鋼と441鋼は全て焼鈍スケール内のクロム含量が高いことから中性塩電解酸洗には有利な鋼種であるが、Cr/Fe比の高い441鋼がより有利であると言える。
また、図1は、439鋼及び441鋼の焼鈍スケールの深さによるCr/Fe比をグラフで示すものであり、439鋼と441鋼は全てスケールの外層から内層に向かってクロム含量が高くなってCr/Feが増加する傾向を示し、母材側に完全に入ると、母材のCr/Fe含量比で収斂することが確認できる。
[実施例1〜5及び比較例1〜15]
焼鈍温度が1050℃の441鋼を、硫酸ナトリウムを電解質として含む中性塩電解槽に下記表1のような電流密度を加え、硫酸を電解質として含む硫酸電解槽に下記表1のような電流密度を加えて電解酸洗し、その後、80g/Lの硫酸及び8g/Lの遊離フッ酸を含む40℃の混酸溶液に30秒間浸漬した。但し、上記溶液の酸化還元電位が550mV以上に維持されるように残留過酸化水素濃度を3g/Lで追加した。
酸洗後の結果を下記表1に共に示し、鋼板の表面にスケールが残留しない場合は○で表示し、スケールが残留する場合は未酸洗と評価して×で表示した。また、過酸洗による表面侵食が発生した場合も×で表示した。
また、比較例1、実施例1、比較例8及び比較例9における酸洗後のステンレス鋼の表面の写真を図4の(a)〜(d)に示した。
表1から分かるように、実施例1〜5のように中性塩電解槽の電流が8A/dm以上、硫酸電解槽の電流が0又は8A/dm以上、二つの電解槽の印加電流量の和が12A/dm以上20A/dm以下の場合は正常な酸洗面が確認できる。
しかしながら、比較例1〜5のように中性塩電解槽の電流が8A/dm未満の場合は中性塩電解槽におけるスケール溶解量が不足して未酸洗が発生し、比較例7、9及び12のように中性塩電解槽の電流が8A/dm以上であっても硫酸電解酸洗の電流値が0超8A/dm未満の場合は不均一酸洗が発生したことが確認できる。
また、比較例8、10、11、13、14及び15のように中性塩電解槽の電流と硫酸電解槽の電流の和が20A/dmを超える場合は過酸洗が発生したことが確認できる。
図4の(a)〜(d)は、それぞれ比較例1、実施例1、比較例8及び比較例9における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものであり、(a)からは印加電流量が不足して未酸洗によって残留スケールが存在することが確認でき、(b)からは実施例1による正常な酸洗面が確認できる。また、(c)からは過酸洗によって表面侵食が発生して表面が良くないことが確認でき、(d)からは不均一酸洗によって表面が良くないことが確認できる。
実施例から、スケール成分内のクロム成分比が高い場合は、電解酸洗時、中性塩電解槽と硫酸電解槽の二つの電解槽の印加電流量の和が12A/dm以上20A/dm以下の比較的低い電解槽電流量でも酸洗が可能であることが分かる。
[実施例6〜12及び比較例16〜28]
焼鈍温度が970℃の439鋼を、硫酸ナトリウムを電解質として含む中性塩電解槽に下記表2のような電流密度を加え、硫酸を電解質として含む硫酸電解槽に下記表1のような電流密度を加えて電解酸洗し、その後、80g/Lの硫酸及び8g/Lの遊離フッ酸を含む40℃の混酸溶液に30秒間浸漬した。但し、上記溶液の酸化還元電位が550mV以上に維持されるように残留過酸化水素濃度を3g/Lで追加した。
酸洗後の結果を下記表2に共に示し、鋼板の表面にスケールが残留しない場合は○で表示し、スケールが残留する場合は未酸洗と評価して×で表示した。また、過酸洗による表面侵食が発生した場合も×で表示した。
また、比較例16、実施例6及び比較例28における酸洗後のステンレス鋼の表面の写真を図5の(a)〜(c)に示した。
表2から分かるように、実施例6〜12のように中性塩電解槽の電流が8A/dm以上、中性塩電解槽と硫酸電解槽の二つの電解槽の印加電流量の和が30A/dm以上50A/dm以下の場合は正常な酸洗面が確認できる。
しかしながら、比較例16〜19のように中性塩電解槽の電流が8A/dm未満の場合は中性塩電解槽におけるスケール溶解量が不足して未酸洗が発生し、比較例20〜27のように中性塩電解槽の電流が8A/dm以上であっても中性塩電解槽の電流と硫酸電解槽の電流の和が30A/dm未満の場合は未酸洗が発生したことが確認できる。また、比較例28のように中性塩電解槽と硫酸電解槽の二つの電解槽の印加電流量の和が50A/dmを超える場合は過酸洗が発生することが確認できる。
図5の(a)〜(c)は、それぞれ比較例16、実施例6及び比較例28における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものであり、(a)からは比較例16における印加電流量が不足して未酸洗によって残留スケールが存在することが確認でき、(b)からは実施例6による正常な酸洗面が確認でき、(c)からは比較例28における過酸洗によって表面侵食が発生して表面が良くないことが確認できる。
本実施例には示していないが、中性塩電解槽と硫酸電解槽の印加電流の和が正常な酸洗の範囲にあるとしても硫酸電解槽の印加電流が8A/dm未満の場合は図4の(d)のように不均一酸洗面を示すため好ましくない。
実施例から、スケール成分内のクロム成分比が相対的に低い場合は、電解酸洗時、中性塩電解槽と硫酸電解槽の二つの電解槽の印加電流量の和が30A/dm以上50A/dm以下の非常に高い印加電流量が必要であることが確認できる。
[実施例13〜21及び比較例29〜33]
下記表3に記載された鋼種を、焼鈍温度によって図3における領域IIIと領域IVを適用して電解酸洗した後、濃度80g/Lの硫酸及び下記表3に記載された濃度の遊離フッ酸を含む40℃の混酸溶液に30秒間浸漬した。但し、混酸溶液に過酸化水素を添加して酸化還元電位(ORP)が下記表3に記載された値以上を維持するようにした。
酸洗後の結果を下記表3に共に示し、鋼板の表面にスケールが残留しない場合は○で表示し、スケールが残留する場合は未酸洗と評価して×で表示した。また、過酸洗による表面侵食が発生した場合も×で表示した。
また、比較例29及び比較例31における酸洗後のステンレス鋼の表面の写真を図6の(a)及び(b)に示し、比較例32及び実施例16における酸洗後のステンレス鋼の表面の写真を図7の(a)及び(b)に示し、比較例33及び実施例19における酸洗後のステンレス鋼の表面の写真を図8の(a)及び(b)に示した。
表3から分かるように、17重量%のクロムを含む439鋼を酸洗する場合(比較例29〜31及び実施例13〜15)は酸化還元電位が550mV以上、遊離フッ酸(HF)の濃度が5〜12g/Lの範囲で正常に酸洗されることが分かる。しかしながら、比較例29のように酸化還元電位が550mV未満の場合は未酸洗が発生し、比較例31のように遊離フッ酸の濃度が12g/Lを超える場合は過酸洗が発生することが分かる。酸化還元電位が550mV以上とは、酸洗時に残留する過酸化水素の濃度を一定以上に維持しなければならないという意味であり、溶液内に過酸化水素が残留する場合の酸化還元電位は通常550〜600mVで測定される。
一方、クロムを17重量%で含有する鋼であっても、鋼種成分系においてSi含量が重量比で0.3%を超えるか又はMo含量が重量比で0.5%を超える場合である430J1L、436L鋼は、遊離フッ酸(HF)の濃度が20〜30g/Lの範囲で酸洗が可能であるが、比較例32及び33のように低濃度のフッ酸を含む混酸溶液を用いる場合は未酸洗が発生することが確認できる。このとき、酸化還元電位が320mV以上であれば酸洗が可能であり、これは、残留過酸化水素がなくても、溶液内の金属イオンのうちFe3+イオンとFe2+イオンの比(Fe3+/Fe2+)が1以上であれば可能であるが、一般に酸化還元電位を320mV以上に維持し続けるためには過酸化水素を一定量注入し続けなければならない。
図6の(a)及び(b)は、比較例29及び比較例31における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものであり、(a)からは比較例29における遊離フッ酸の濃度及び混酸溶液の酸化還元電位が全て低いことから表面に未酸洗が発生したことが確認でき、(b)からは比較例31における遊離フッ酸の濃度が本発明の範囲を超える場合は過酸洗が発生して表面侵食が発生したことが確認できる。
また、図7の(a)及び(b)は比較例32及び実施例16における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものであり、(a)からは比較例32における遊離フッ酸の濃度が低いことから表面に未酸洗が発生したことが確認でき、(b)からは実施例16による正常な酸洗面の形状が確認できる。
また、図8の(a)及び(b)は、比較例33及び実施例19における酸洗後のステンレス鋼の表面を写真で示すものであり、(a)からは比較例33における遊離フッ酸の濃度が低いことから表面に未酸洗が発生したことが確認でき、(b)からは実施例19による正常な酸洗面の形状が確認できる。
上記のような実施例から、鋼種に含まれた元素によって酸洗性に差が生じ、これにより、酸洗可能な遊離フッ酸の濃度及び溶液の酸化還元電位にも影響を及ぼすことが分かる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。

Claims (15)

  1. 1030℃以上1050℃以下の焼鈍温度で焼鈍された17〜26重量%のクロムを含有する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板を中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗する電解酸洗段階と、
    前記電解酸洗を行った冷延鋼板を硫酸及びフッ酸を含む混酸溶液に浸漬する混酸浸漬段階と、を含み、
    前記電解酸洗段階時、中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和は12A/dm以上20A/dm以下に調節されることを特徴とする高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  2. 930℃以上1030℃未満の焼鈍温度で焼鈍された17〜26重量%のクロムを含有する高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板を中性塩電解酸洗及び硫酸電解酸洗する電解酸洗段階と、
    前記電解酸洗を行った冷延鋼板を硫酸及びフッ酸を含む混酸溶液に浸漬する混酸浸漬段階と、を含み、
    前記電解酸洗段階時、中性塩電解酸洗の印加電流量と硫酸電解酸洗の印加電流量の和は30A/dm以上50A/dm以下に調節されることを特徴とする高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  3. 前記中性塩電解酸洗の印加電流量は8A/dm以上であり、硫酸電解酸洗の印加電流量は8A/dm以上であるか、又は電流の印加なしに浸漬によって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  4. 前記混酸溶液は、冷延鋼板の総重量に対してケイ素(Si)含量が0.3重量%以下であるか又はモリブデン(Mo)含量が0.5重量%以下の場合、80〜150g/Lの硫酸及び5〜12g/Lの遊離フッ酸を含み、酸化還元電位(ORP)が550mV以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  5. 前記混酸溶液の酸化還元電位が550mV以上に維持されるように混酸溶液に過酸化水素を追加することを特徴とする請求項4に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  6. 前記混酸浸漬段階は、冷延鋼板の総重量に対してケイ素(Si)含量が0.3重量%を超えるか又はモリブデン(Mo)含量が0.5重量%を超える場合、混酸溶液は80〜150g/Lの硫酸及び20〜30g/Lの遊離フッ酸を含み、混酸溶液の酸化還元電位(ORP)が320mV以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  7. 前記混酸溶液の酸化還元電位が320mV以上に維持されるように過酸化水素を追加することを特徴とする請求項6に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  8. 前記中性塩電解酸洗は、濃度100〜250g/Lの硫酸ナトリウムを含む電解液を用いて行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  9. 前記中性塩電解酸洗時に用いられる電解液の温度は50〜90℃であることを特徴とする請求項8に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  10. 前記中性塩電解酸洗は24〜100秒間行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  11. 前記硫酸電解酸洗は、50〜150g/Lの硫酸又は50〜150g/Lの硫酸に鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン及びチタンからなる群から選択された一つ以上の金属が溶解されて形成された金属硫酸塩を含む電解液を用いて行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  12. 前記硫酸電解酸洗時に用いられる電解液の温度は30〜60℃であることを特徴とする請求項11に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  13. 前記硫酸電解酸洗は10〜50秒間行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  14. 前記混酸浸漬段階は25〜90秒間行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  15. 前記混酸浸漬段階時、冷延鋼板の表面電位は−0.2〜0Vの範囲に維持されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高クロムフェライト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
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