JP6031606B2 - オーステナイト系ステンレス冷延鋼板を製造するための高速酸洗プロセス - Google Patents

オーステナイト系ステンレス冷延鋼板を製造するための高速酸洗プロセス Download PDF

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Description

本発明は、表面品質を要するオーステナイト系ステンレス冷延鋼板を製造するにあたり鋼板の表面を高速で酸洗する方法に関し、より具体的には、酸洗過程中に硝酸を用いない酸洗方法に関する。
オーステナイト系ステンレス冷延鋼板は冷間圧延後に所定の機械的特性を得るために1000〜1150℃の熱処理過程を経るが、この熱処理過程中に炉の内部で鋼板の表面が高温の酸素と反応して鋼板の表面に酸化スケール(SiO、(Cr,Mn))が生成される。鋼板の表面に生成された上記酸化スケールは、製品の外観を悪くして鋼板の品質を悪化させ、また、鋼板の腐食をもたらす原因となって鋼板の耐食性を低下させる。
よって、通常、美麗な表面品質を得、且つ耐食性を向上させるために、ブラシ、ショットボールブラスト等による物理的デスケーリング、硫酸ナトリウム、硫酸、硝酸電解質を用いた電解デスケーリング、塩浴、混酸等を用いた化学的デスケーリング等の多様な方法を組み合わせて鋼板の表面の酸化スケールを除去することによりステンレス冷延鋼板を製造している。
このような鋼板の表面のスケールを除去する過程を酸洗工程という。上記ステンレス酸洗工程では、美麗な表面品質を得、且つ不動態皮膜を均一に形成して耐食性を確保するために、硝酸溶液に鋼板を通過させながら電流を加えてデスケーリングする硝酸電解方法と、硝酸(80〜180g/l)とフッ酸(2〜40g/l)との混酸を用いた化学的デスケーリング方法により酸洗を行う。この際、電解浴中の上記硝酸は、酸洗槽内のpHを低くしてフッ酸の活動度を高くし、鋼板の表面で溶解された2価鉄イオンを3価に酸化させて酸洗浴に適正な酸化還元電位を維持させる。
しかしながら、酸洗液として硝酸が用いられることにより、大気排出規制物質であるNOxが発生し、また、廃酸及び洗浄水に硝酸性窒素(NO‐N)が含まれてしまう。よって、国内外の環境規制強化による排出放流水の総窒素制限、大気排出施設のNOx濃度制限等の環境規制条件を満たすために酸洗工程に環境汚染防止設備をさらに設置する必要があり、その運用費が発生することから生産単価が顕著に増加するという問題が生じる。
このような問題を解決するために硝酸を用いない酸洗方法が開発されており、その技術として、酸洗過程で硝酸を塩酸又は硫酸等に取り替え、不十分な酸化力は過酸化水素、過マンガン酸カリウム、3価鉄イオン及び空気注入によって補完する、硝酸を用いない酸洗方法がある。
具体的には、ドイツ特許3937438号に、酸洗液として硫酸、フッ酸、硫酸鉄を用い、過酸化水素を添加して酸洗溶液の酸化還元電位を300mV以上に維持する技術が開示されており、上記技術をはじめとして90年代以降には、米国特許5154774号及びヨーロッパ特許236354号に開示されているように主にフッ酸と鉄イオン、空気、過酸化水素又は溶液の酸化還元電位(Oxidation‐Reduction Potential、ORP)の適正範囲を特定する技術が開発されてきた。しかしながら、これらの方法はほとんどが製品の品質要件が厳しくない線材、棒鋼、厚板等の製品に制限的に適用されるという限界を有している。
一方、米国特許5908511号には、酸洗溶液に硫酸、フッ酸、鉄塩を含有させ、過酸化水素を定期的に投入し、湿潤剤、光沢剤、腐食抑制剤等の組成を調節して酸洗し、酸洗溶液の管理において Fe(III)及びそれに伴う酸化還元電位(ORP)を自動で制御する方式を用いる技術が開示されている。そして、上記技術を通じて酸洗溶液であるCLEANOX352製品が商用化され、世界中で最も広く使用されている。しかしながら、この方法は線材及び熱延製品には実用化されて使用されてはいるが、製品の生産単価が従来と比べて20%以上高く、複雑な溶液組成及び管理方法を用いるという問題がある。
また、上記米国特許5908511号を改良したヨーロッパ特開1040211号及び米国特開2000‐560982号には、銅及び塩素イオンを酸洗組成物に加えて酸洗速度を高める方法が開示されているが、フェライト系ステンレス鋼板の表面に形成される表面電位(Open Circuit Potential、OCP)が銅イオンの酸化還元電位である0.1Vより低い場合は酸洗過程で鋼板の表面に銅粒子が析出されて鋼板を変色させる恐れがある。また、酸洗溶液に塩素イオンが一定の濃度以上含有される場合は孔食(pitting corrosion)が発生する恐れがある。
また、過酸化水素を用いるにあたり特定温度以上で酸洗する場合は、過酸化水素の自己分解によって残留過酸化水素の量が急激に減り、これにより、酸洗のために追加投入される過酸化水素の量が格段に増えてしまうため、過量の過酸化水素の使用による経済的損失が大きい。
このように酸洗組成物に関する多様な技術が知られているが、高クロムオーステナイト系冷延鋼板を高速で生産するのに適した酸洗技術は知られていない。
本発明の目的は、硝酸を用いないながらも酸洗性を確保してオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の高速生産に適した電解酸洗方法及びシリコン酸化物を高速で除去するのに適した混酸酸洗方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、低温で優れた酸洗性を確保することができるオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の高速生産に適した混酸溶液を提供することである。
また、本発明のさらに他の目的は、上記酸洗方法に適した、硝酸が含まれていない混酸溶液を提供することである。
また、本発明のさらに他の目的は、上記のような酸洗方法により得られた、圧延方向に対して60°の反射角で測定された光沢度が150以上のオーステナイト系ステンレス冷延鋼板を提供することである。
本発明によれば、16重量%以上のクロムを含有する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板からシリコン酸化物を除去する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法であって、硝酸を含まず、初期組成が硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸15〜30g/l及び過酸化水素濃度4.5g/l以上を含み、鉄イオンは実質的に含まない混酸溶液中に冷延鋼板を浸漬することにより上記冷延鋼板からシリコン酸化物を除去する、高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法が提供される。
上記混酸溶液の過酸化水素濃度は混酸溶液中の鉄イオンとの関係で下記式(1)を満たし、酸化還元電位(ORP)は混酸溶液中の鉄イオン濃度との関係で下記式(2)又は(3)を満たすことが好ましい。
過酸化水素濃度0.00736+10×e−[metal]/13.2 …(1)
ORP600mV、但し、鉄イオン濃度≦10g/l …(2)
ORP310+431×e−[metal]/25.24、但し、鉄イオン濃度>10g/l …(3)
(上記式(1)及び(3)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
また、酸洗後の結晶粒界の幅(W)を1μm以上に形成するように浸漬することが好ましい。この際、上記浸漬は上記混酸溶液の温度(T)、フッ酸濃度(C)及び処理時間(t)が下記式(4)を満たすように制御されることが好ましい。
酸洗後の結晶粒界の幅(W)=−0.184+0.0131・t+0.016・C+0.01・T …(4)
また、本発明の他の実施態様によれば、16重量%以上のクロムを含有する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板からシリコン酸化物を除去する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法であって、20〜32℃の温度に維持され、硝酸を含まず、初期組成が硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸25〜40g/l及び過酸化水素濃度5.5g/l以上を含み、鉄イオンは実質的に含まない混酸溶液中に冷延鋼板を浸漬することにより上記冷延鋼板からシリコン酸化物を除去する、高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法が提供される。
この際、上記過酸化水素は鉄イオンの濃度との関係で下記式(5)を満たすことが好ましい。
過酸化水素濃度0.805+9.2×e−[metal/15.56] …(5)
(上記式(5)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
本発明において、上記混酸溶液中に浸漬された上記冷延鋼板の表面電位は−0.2〜0.1Vに維持されることが好ましい。
また、上記混酸溶液に上記冷延鋼板を10〜100秒間浸漬することが好ましい。
上記冷延鋼板からのシリコン酸化物の除去は、中性塩電解処理段階及び硫酸電解処理段階、又は硫酸電解処理段階の後に行われ、上記中性塩電解処理段階は硫酸ナトリウム電解質を含む電解溶液を用いて鋼板の表面からCr‐リッチスケールを電解除去し、上記硫酸電解処理段階は硫酸を電解質として含む電解溶液を用いてCr及びFeの残留スケールを電解除去することができる。
上記中性塩電解段階は、オーステナイト系ステンレス鋼板を50〜90℃の温度の中性塩電解溶液内に浸漬し、鋼板の表面電位が+、−、+の順に形成されるように10〜30A/dmの電流密度を30秒〜120秒間印加することにより行うことができる。また、上記中性塩電解溶液内に硫酸ナトリウム電解質を100〜250g/l含むことができる。
上記硫酸電解段階は、中性塩電解段階を経たオーステナイト系ステンレス鋼板を30〜60℃の温度の硫酸電解溶液に浸漬し、鋼板の表面電位が+、−、+の順に形成されるように10〜30A/dmの電流密度を5〜50秒間印加することにより行うことができる。また、上記硫酸電解溶液は、硫酸を50〜150g/l含むことができる。
また、本発明によれば、上記方法により得られた16重量%以上のクロムを含有する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板であって、上記鋼板の圧延方向に対して60°の角度で測定された光沢度が150以上である高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板が提供される。
上記高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板は表面の結晶粒界の幅が1μm以上であることが好ましい。
さらに、本発明によれば、16重量%以上のクロムを含有する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板からシリコン酸化物を除去するための混酸溶液であって、硝酸を含まず、硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸15〜25g/l及び過酸化水素を含み、上記過酸化水素濃度は上記混酸溶液中の鉄イオンとの関係で下記式(1)を満たし、酸化還元電位(ORP)は混酸溶液中の鉄イオン濃度との関係で下記式(2)又は(3)を満たす混酸溶液が提供される。
過酸化水素濃度0.00736+10×e−[metal]/13.2 …(1)
ORP600mV、但し、鉄イオン濃度≦10g/l …(2)
ORP310+431×e−[metal]/25.24、但し、鉄イオン濃度>10g/l …(3)
(上記式(1)及び(3)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
さらに、本発明の他の実施態様によれば、硝酸を含まず、硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸25〜40g/l及び過酸化水素を含み、上記過酸化水素は混酸溶液中の鉄イオン濃度との関係で下記式(5)を満たす混酸溶液が提供される。
過酸化水素濃度0.805+9.2×e−[metal/15.56] …(5)
(上記式(5)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
この際、上記混酸溶液は温度が20〜32℃であることが好ましい。
本発明によれば、オーステナイト系ステンレス冷延鋼板を酸洗するにあたり酸洗溶液中の混酸溶液に硝酸を含まないため、NOx及び硝酸性窒素を排出しない。したがって、NOx除去設備と脱窒設備の設置の負担を減らすことができる。
また、過酸化水素濃度、溶液の酸化還元電位(ORP)及びフッ酸濃度によって酸洗を調節することができるため、コントロールが容易であり、高速生産に適する。
さらに、酸洗後の品質も既存の酸洗法に比べて向上するため、優れた品質のオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の生産が可能である。
また、電解酸洗過程でシリコン酸化物以外のFe、Cr酸化物を完全に除去することにより、混酸溶液によるシリコン酸化物の除去を容易に行い、混酸溶液によるシリコン酸化物の除去及び平坦化を10〜100秒の短時間で行うことができる。
また、溶液組成及び管理方法が簡単であり、鋼板の表面との酸洗反応以外の他の反応が発生しないようにして冷延鋼板の表面品質を確保することができる上、高速生産による生産性の向上を図ることができる。
また、本発明の一実施態様によれば、低温で酸洗工程を行うことにより過酸化水素の自己分解を最小化することができるため、高速生産による生産性及び経済性の向上を図ることができる。
熱処理された高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の表面を撮影した電子顕微鏡写真であって、A)は電解処理を行った後の鋼板の断面を撮影した電子顕微鏡写真であり、B)は電解処理を行わなかった鋼板の断面を撮影した電子顕微鏡写真である。 実施例2により酸洗された高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の表面を電子顕微鏡で撮影した写真であって、A)は発明例4により得られた鋼板の表面であり、B)は比較例4により得られた鋼板の表面である。 高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板を混酸に浸漬した場合に表面電位−0.2〜0.1Vを維持するための、メタル含量に対する最小の過酸化水素濃度及びこの際の溶液の酸化還元電位の相関関係を示すグラフである。 実施例8の酸洗後の塩水噴霧実験による耐食性評価のためのものであって、A)は粒界の幅が1マイクロ以上の発明例1により得られた鋼板の耐食性評価後の写真であり、B)は比較例1による酸洗方法で酸洗された鋼板の耐食性評価後の表面写真である。 実施例9において混酸溶液の温度による過酸化水素の自己分解による残留過酸化水素の含量を時間によって示したグラフである。 実施例10により高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板を混酸に浸漬した場合に表面電位−0.2〜0.1Vを維持するための、メタル含量に対する最小の過酸化水素濃度の相関関係を示すグラフである。
本発明の一実施態様によれば、オーステナイト系ステンレス冷延鋼板を、硫酸ナトリウムを電解質として用いる中性塩電解槽、硫酸及びメタル硫酸塩を電解質として用いる硫酸電解槽、並びに硫酸、過酸化水素及びフッ酸を含む酸洗組成物の混酸槽に通過させることにより鋼板の表面の酸化スケールを除去する方法が提供される。また、本発明の他の実施態様によれば、上記本発明の方法により得られた高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板が提供される。さらに、本発明のさらに他の実施態様によれば、上記酸化スケールの除去に用いられる混酸溶液が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
通常、オーステナイト系ステンレス冷延鋼板には熱処理後に200〜500nmの厚さの酸化スケールが生成され、上記酸化スケールはFeよりCrの酸化物含量が相対的に高いCr‐リッチスケール層、酸化スケールと母材の界面に存在するSi‐酸化物層の多層構造を有している。
上記スケールのうちCr‐リッチスケール層は中性塩電解槽で除去されることができる。上記中性塩電解槽は、硫酸ナトリウム電解質を含む中性塩電解液を含み、電流を鋼板の表面に通電するための電極を含む。この際、上記電極は、鋼板の表面電位が+、−、+の順に少なくとも1回以上帯電されるように構成される。
上記中性塩電解液はpH3〜6の範囲であることが好ましく、上記pH範囲を有する中性塩電解液に電流が加わる場合はCr‐リッチスケール層のCrがCr6+の状態に優先的に溶解されることにより鋼板の表面のCr‐リッチスケールのCrを除去することができる。この際、上記中性塩電解液中の電解質としては硫酸ナトリウムを用いることが好ましい。上記硫酸ナトリウム電解質は、電解液内の電気伝導度を高めて鋼板の表面への通電率を高めることによりCr‐リッチスケールのCrを溶解させる。
この際、上記中性塩電解液には硫酸ナトリウム電解質が100〜250g/lの含量で含まれることが好ましい。上記硫酸ナトリウム電解質が100g/l以上の場合は、クロムの溶解のための適正伝導度が得られる。これに対し、250g/lを超える場合は、硫酸ナトリウムが電解液内に析出されて設備配管を塞ぎ、操業を悪化させる恐れがある。したがって、硫酸ナトリウム電解質は250g/l以下で含まれることが好ましい。
上記中性塩電解槽内の電解質の電気伝導度は、電解液の温度と密接な関連がある。電解液の温度が50℃以上の場合にCr‐リッチスケール層のクロムの溶解のための適正伝導度が得られ、電解液の温度が高くなるほど伝導度も高くなる。しかしながら、電解液の温度が90℃を超える場合は、操業における温度管理が困難である。したがって、中性塩電解槽内の電解液の温度は50〜90℃の範囲であることが好ましい。
一方、電極を介して加わる電流は10A/dm以上であることが好ましい。電極を介して加わる電流が10A/dm以上の場合は、Cr‐リッチスケールのCrを十分に溶出させることができる。しかしながら、30A/dmを超える場合は、電流を発生するための整流器(rectifier)設備が大きくなりすぎるため、初期設備費が大きくなってしまう。したがって、電流は10〜30A/dmの範囲であることが好ましい。
上記中性塩電解処理の処理時間は30秒以上120秒以下であることが好ましい。上記範囲の時間の間に中性塩電解槽で処理することによりクロムのスケール除去効果が十分に得られる。しかしながら、中性塩電解処理時間が120秒を超える場合は、それ以上のスケール除去効果はなく、電解酸洗時に溶出されたメタルイオンが再度電着される可能性があるため好ましくない。
一方、中性塩電解槽で完全に除去されなかったCr及びFe等の残留スケールは、硫酸電解槽によって除去される。上記硫酸電解槽は、硫酸及び鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン、チタニウムのうち少なくとも一つ以上を含むメタル硫酸塩から構成される硫酸電解液、並びに電流を鋼板の表面に通電するための電極を含み、上記電極は、鋼板の表面電位が+、−、+の順に少なくとも1回以上帯電されるように構成される。
上記硫酸電解液はpH0〜1の範囲であることが好ましく、上記硫酸電解液に電流が加わる場合はFeがFe2+のイオン状態に溶解される。この際、硫酸のHとSO 2−は、溶液内の電気伝導度を高めて電極から鋼板の表面への通電率を高め、より低くなったpHによって残留スケールの鉄を化学的に溶解させる。
この際、上記硫酸電解液は硫酸を50〜150g/lの範囲で含むことが好ましい。硫酸が50g/l以上の場合に適正伝導度以上に維持されることができるため、鋼板の表面への通電率を維持することができる。しかしながら、硫酸が150g/lを超える場合は、化学的溶解が大きく発生するため、ステンレス冷延鋼板の表面が荒れる問題が発生する。
また、上記硫酸電解液は、鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン、チタニウムのうち少なくとも一つ以上を含むメタル硫酸塩を含むことができる。上記メタル硫酸塩は、平衡反応によりメタル濃度が低く電気伝導度が低い場合は、硫酸塩からメタルが溶出されて電気伝導度を高くし、メタル濃度が高く電気伝導度が高い場合は、再度硫酸塩として析出されて電気伝導度を低くし、硫酸電解液の電気伝導度を一定に維持できるようにする。
上記中性塩電解槽の電解液と同様に、硫酸電解液は最小限の伝導度を得るために溶液温度が30℃以上であることが好ましい。しかしながら、硫酸電解液の溶液温度が60℃を超える場合は、化学的溶解が過度に行われてステンレス冷延鋼板の表面が荒れ、また、鋼板の表面が黒く変わる黒変(black smut)現象が発生する可能性がある。したがって、硫酸電解槽の電解液は30〜60℃の範囲の温度を有することが好ましい。
一方、硫酸電解槽に加わる電流は10〜30A/dmの範囲であることが好ましい。電流が10A/dm以上加わる場合は、電気化学反応によるスケール溶出量が十分になるため、十分な電解酸洗効果が得られる。しかしながら、30A/dmを超える電流が加わる場合は、電流を発生するための整流器(rectifier)設備が大きくなるため、初期設備費が大きくなってしまう。したがって、電流は10〜30A/dmの範囲であることが好ましい。
上記硫酸電解処理は5秒〜50秒間行われることが好ましい。硫酸電解処理を5秒以上行う場合にスケールを十分に除去することができる。しかしながら、硫酸電解処理時間が50秒を超える場合は、過酸洗の問題をもたらす。したがって、上記範囲で硫酸電解処理を行うことが好ましい。
上記のように中性塩電解‐硫酸電解を経た鋼板の表面にはSi酸化物層と母材中のクロム枯渇層が残り、上記Si酸化物層とクロム枯渇層は窒素を含まない混酸溶液によって除去されることができる。上記混酸溶液は硫酸、遊離フッ酸及び過酸化水素を含み、上記混酸溶液を含む混酸槽にSi酸化物層とクロム枯渇層を含む鋼板を浸漬することにより中性塩電解‐硫酸電解を経た鋼板からSi酸化物層とクロム枯渇層を除去することができる。
上記混酸溶液内での遊離フッ酸及び硫酸は、混酸溶液内で下記反応式(1)及び(2)のように解離される。
HF⇔H+F …(1)
SO⇔HSO +H⇔SO 2−+2H …(2)
即ち、混酸溶液内で遊離フッ酸は式(1)のように溶解されながら解離され、硫酸は式(2)のように解離される。この際、上記遊離フッ酸及び硫酸の解離によって提供されるH濃度、即ち、酸度(acidity)によって混酸溶液の平衡状態が変化する。
遊離フッ酸の場合、解離されていない遊離フッ酸(Free HF)状態で酸洗力を有し、鋼板の表面のSi酸化物を溶解させ、また、Si酸化物層と母材の界面に浸透してFeを溶解させる。このように溶解されたFe及びSiイオンはFeF (3−x)、HSiF等の形で鋼板の表面から除去される。
上記遊離フッ酸は混酸溶液内に10〜30g/lの範囲の濃度で存在することが好ましい。遊離フッ酸濃度が10g/l未満の場合は、遊離フッ酸として存在する濃度が少なく、Si及びクロム枯渇層に対する溶解力が不足するため、鋼板の表面に対する未酸洗問題が発生し、30g/lを超える場合は、母材の浸食速度が速くなるため、混酸酸洗工程後の鋼板の表面が荒れる可能性がある。より好ましくは、15〜30g/lの濃度の遊離フッ酸を含むのがよい。
上記混酸工程を行うにあたり、混酸槽の溶液温度を適切に設定して行うことができるが、特に限定されない。例えば、20〜95℃、20〜80℃、20〜65℃、32〜80℃又は32〜65℃の範囲に設定して混酸酸洗工程を行うことができる。
上述したように、遊離フッ酸が鋼板の表面のSi酸化物層を除去する酸洗力を提供するため、上記混酸溶液内では一定の酸度以上で有効遊離フッ酸濃度が維持されることが好ましい。したがって、混酸溶液には、遊離フッ酸が解離されないようにするために、また、母材のクロム枯渇層を溶解させて粒界に生成されたSi酸化物を除去するために、一定濃度以上の硫酸が必要である。これに適した硫酸濃度は110〜150g/lの範囲である。硫酸濃度が110g/l未満の場合は、オーステナイト鋼の母材のクロム枯渇層及び粒界を十分に溶解するのが困難であるため、酸洗後に耐食性低下の問題が発生する可能性があり、150g/lを超える場合は、硫酸希釈操業中に発熱が起こって操業が困難となる等の問題がある。したがって、上記範囲の濃度で硫酸を含むことが好ましい。
オーステナイト系ステンレス鋼の酸化スケールのうち、Si酸化物はオーステナイト系結晶の表面及び結晶粒界に全て存在し、結晶粒界のSi酸化物は母材の内部の奥にまで存在する。フェライト系ステンレス鋼の場合は、結晶の耐食性が低く、結晶の内部と結晶粒との浸食速度の差がないため、グレインの表面と結晶粒界が選択性なく完全に溶解されるのに対し、オーステナイト系ステンレス鋼の場合は、結晶の耐食性が高いため、結晶粒界から優先的に浸食される。したがって、Si酸化物を全て除去するためには、相当量の結晶粒界が溶解される必要がある。
この際、母材からFe2+が溶出され、溶出されたFe2+は過酸化水素と反応してFe3+に酸化された後、HFと結合してFeF (3−x)に錯化合物を生成することにより鋼板の表面から除去される。このような反応を下記反応式(3)〜(6)で表す。なお、上記過程が円滑に進行される場合に酸洗速度を高めることができる。
Fe⇔Fe2++2e …(3)
Fe2++H→Fe3++・H+OH …(4)
Fe3++3HF⇔FeF+3H …(5)
Cu2++2e→Cu …(6)
ステンレス鋼は鋼種ごとに固有の動電位曲線の電位‐電流間の相関関係を有しており、この際に発生する電流量を酸洗速度で表すことができる。よって、表面電位を制御することにより最大酸洗速度を具現することができる。このために、混酸槽内の冷延鋼板の表面電位を−0.2〜0.1Vの範囲に維持することが好ましい。冷延鋼板の表面電位が上記範囲を外れる場合は、酸洗されないか又は部分的に未酸洗の表面を有する酸洗不良をもたらす可能性があり、仮に酸洗されても冷延鋼板に対して良好な表面品質が得られない。
一方、従来は、酸洗液中のFe2+/Fe3+の比率を調節して酸洗液の酸化還元電位(ORP)を制御することにより酸洗を行った。しかしながら、本発明者らは、メタル濃度が適正水準に到達する前には溶液の酸化還元電位(ORP)と表面電位との関連性が確認できず、酸化還元電位(ORP)のみでは混酸酸洗を調節することができないことを見い出した。
上記混酸溶液内のメタル濃度が適正水準に到達する前に残留過酸化水素濃度が不足する場合は、混酸槽内での冷延鋼板の表面電位が−2.0V以上に維持されず、上記反応式(4)の反応がなされないため、鋼板の表面のFe2+濃度が局部的に増加し、反応式(3)の左方向の反応が大きくなる。この場合、Fe及びステンレス鋼に添加物又は不純物として存在するCu等が反応式(6)のように鋼板の表面に再析出されて鋼板の表面が黒く変わる黒変現象が発生する。したがって、残留過酸化水素濃度が常に一定濃度以上存在する必要がある。
しかしながら、混酸溶液内のメタル濃度が適正水準に到達した後には、−0.2V以上の表面電位を維持するための残留過酸化水素濃度は溶液内のメタル濃度と相関関係がある。即ち、溶液内のメタル濃度は酸洗が進行するにつれて増加し、過酸化水素によって溶出されたFe2+イオンはFe3+イオンに酸化される。これによるFe3+イオン含量の増加は同一の過酸化水素濃度で表面電位の増加を誘導し、これはFe3+イオンが酸化剤として作用するためである。Fe3+イオンが増加するほど、鋼板の表面電位を維持するための過酸化水素濃度は減少する傾向を示す。
したがって、メタル濃度が十分な状態ではFe3+/Fe2+及び酸化還元電位によって−0.2V以上の表面電位を十分に確保することができ、このときからは溶液の酸化還元電位から鋼板の表面電位を制御することができる。
このような関係は本発明者らの不断の実験により得られたものであり、下記実施例から確認できる。本発明者らは、上記のような実験により、鋼板の表面電位を−0.2V以上に維持するための溶液内の鉄イオン濃度による最小の過酸化水素濃度及び溶液の酸化還元電位について下記のような関係があることを確認し、これを図3にグラフで示した。
0g/L≦[metal]<10g/L、[Hmin=4.5g/L、ORP 600mV
10g/L≦[metal]<20g/L、[Hmin=2.5g/L、ORP 500mV
20g/L≦[metal]<40g/L、[Hmin=0.5g/L、ORP 400mV
40g/L≦[metal]<60g/L、[Hmin=0〜0.2g/L、ORP 350mV
図3から分かるように、鉄イオン濃度が0の場合は、少なくとも4.5g/l以上の有効過酸化水素濃度を含まなければならないが、鉄イオン濃度が40g/l以上の場合は、過酸化水素濃度0〜0.2g/lでも溶液内の鉄イオンによって溶液の酸化還元電位(ORP)が酸洗可能な表面電位である−0.2V以上を維持するため、更なる過酸化水素の添加を最小化することができる。即ち、メタル含量の増加につれて、鋼板の表面電位は過酸化水素の含量よりは溶液の酸化還元電位に依存するため、溶液内のメタル含量が相対的に高くなっても低コストで操業が可能となる。したがって、この領域では、溶液の酸化還元電位(ORP)を350mV以上に維持するための最小の過酸化水素のみを必要とする。
即ち、上記過酸化水素濃度は混酸溶液中の鉄イオンとの関係で下記式(1)を満たし、上記酸化還元電位(ORP)は混酸溶液中の鉄イオン濃度との関係で下記式(2)又は(3)を満たすことが好ましい。
過酸化水素濃度0.00736+10×e−[metal]/13.2 …(1)
ORP600mV、但し、鉄イオン濃度≦10g/l …(2)
ORP310+431×e−[metal]/25.24、但し、鉄イオン濃度>10g/l …(3)
(上記式(1)及び(3)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
混酸酸洗工程において、混酸槽内の混酸溶液の過酸化水素濃度と酸化還元電位が溶液内の鉄イオン濃度との関係で上記のような関係を満たす場合は、優れた酸洗効果が得られる。
上述した内容から、混酸槽での混酸酸洗工程では、酸洗溶液中の硫酸及びフッ酸濃度と残留過酸化水素濃度が酸洗効果増大及び高速酸洗の最も重要な因子であることが確認できる。したがって、これらの成分の濃度を制御する必要があり、このような各成分の濃度制御においては、通常用いられる酸分析器を用いて硫酸及びフッ酸濃度を調整することができ、近赤外線分析方法又は自動滴定法により残留過酸化水素濃度を分析及び調節することができる。
一方、本発明により混酸酸洗処理された鋼板は結晶粒界の幅が1μm以上であることが好ましい。混酸酸洗処理後の鋼板の表面の結晶粒界の幅が1μm以上の場合に結晶粒界からCr枯渇層が完全に除去されて優れた耐食性を有する鋼板が得られる。即ち、結晶粒界にCr枯渇層が存在する場合はCr枯渇層によって鋼板の表面に発錆を誘発するのに対し、Cr枯渇層が存在しない場合は優れた耐食性を示す傾向がある。酸洗後の結晶粒界の幅が狭いほど、結晶粒界にCr枯渇層が存在して耐食性が十分でないのに対し、結晶粒界の幅が広いほど、結晶粒界にCr枯渇層が少なく存在する。したがって、結晶粒界の幅の程度によって結晶粒界のCr枯渇層の存在が確認でき、これにより鋼板の耐食性の程度が予測できる。
鋼板の結晶粒界の幅が1μm以上の場合に上記Cr枯渇層が酸洗工程によって完全に除去されて優れた耐食性を有する鋼板が得られる。しかしながら、結晶粒界の幅が1μm未満の場合は、結晶粒界にCr枯渇層が存在し、発錆の核として作用するため、鋼板の耐食性が悪くなる傾向を示す。好ましくは、上記結晶粒界の幅が1.5μm以下であるのがよい。上記範囲を外れても酸洗により得られた冷延鋼板の耐食性を確保することができるが、鋼板の表面光沢度が低下する可能性があるため、結晶粒界の幅が1.5μm以下であることが好ましい。また、得られた冷延鋼板において圧延方向に対して60°の角度で測定された光沢度を150以上にする結晶粒界の幅を有することが高品質の鋼板を得るのにより好ましい。
このような鋼板の結晶粒界の幅は、混酸酸洗工程の工程条件と関連がある。即ち、混酸酸洗後の結晶粒界の幅は本発明の混酸溶液を用いる場合に混酸溶液の温度、遊離フッ酸濃度及び酸洗時間との関係から下記式(4)のような関係を有し、酸洗後の結晶粒界の幅(W)は1μm以上を満たすことが好ましい。
W=−0.184+0.0131×t+0.016×C+0.01×T≧1 …(4)
(上記式(4)においてtは酸洗時間(秒)、CはHF濃度(g/l)、Tは酸洗温度(℃)を示す。)
上記関係式を用いることにより、鋼板の表面状態を観察しなくても工程条件から酸洗後の結晶粒界の幅が予測でき、優れた耐食性を有する鋼板を得るための工程条件を制御することができる。
上述した内容から、混酸槽プロセスでは酸洗溶液中の硫酸及びフッ酸濃度と残留過酸化水素濃度が酸洗効果増大及び高速酸洗の最も重要な因子であることが確認できる。したがって、これらの成分の濃度を制御する必要があり、このような各成分の濃度制御においては、通常用いられる酸分析器を用いて硫酸及びフッ酸濃度を調整することができ、近赤外線分析方法又は自動滴定法により残留過酸化水素濃度を分析及び調節することができる。
混酸酸洗工程において、混酸槽内の混酸溶液の過酸化水素濃度と酸化還元電位が溶液内の鉄イオン濃度との関係で上記のような関係を満たす場合は優れた酸洗効果が得られることは前述した通りである。但し、相対的に低温の混酸溶液で酸洗工程を行う場合は必要とされる遊離フッ酸の濃度を変化させることがより好ましい。
本発明の混酸溶液の温度は、最小の有効過酸化水素含量を維持するための過酸化水素投入量と直接的な相関性のあるもので、特に限定する必要がある。即ち、温度によって自己分解される過酸化水素の特性上、安定剤を投入しても、温度増加による過酸化水素の分解の程度は格段に増加する。例えば、図5に示したように、混酸溶液の温度が30℃から50℃に20℃増加するとき、残留過酸化水素の半減期は6倍以上減少する。したがって、混酸溶液内の残留過酸化水素の分解を抑制するためには混酸溶液の温度を低く設定する必要があり、好ましくは32℃以下、より好ましくは20℃〜32℃の範囲に設定する必要がある。
上記のように低温で混酸酸洗工程を行う場合は上記遊離フッ酸を混酸溶液中で25〜40g/lの範囲の濃度に維持するのがよい。25g/l未満の場合は、低温での酸洗能力が低下し、Si及びクロム枯渇層に対する溶解力が不足するため、鋼板の表面に対する未酸洗問題が発生し、40g/lを超える場合は、母材の浸食速度が速くなるため、酸洗工程後の鋼板の表面が荒れる可能性がある。好ましくは、30〜35g/lに維持するのがよい。
図6から分かるように、鋼板の表面電位を−0.2V以上に維持するための低温混酸溶液内の鉄イオン濃度による最小の過酸化水素濃度は下記の通りである。
0g/L[metal]<10g/L、[Hmin=10〜5.5g/L
10g/L[metal]<20g/L、[Hmin=3.5g/L
20g/L[metal]<40g/L、[Hmin=1.5g/L
40g/L[metal]<60g/L、[Hmin=1g/L
具体的には、鉄イオン濃度が0g/lの場合は、少なくとも5.5g/l以上の有効過酸化水素濃度を含まなければならないが、鉄イオン濃度が40g/l以上の場合は、1g/lの有効過酸化水素濃度だけでもメタルイオンによって溶液の酸化還元電位(ORP)が表面電位を−0.2V以上に維持させるため、更なる過酸化水素の添加を最小化することができる。即ち、メタル含量の増加につれて、ストリップの表面電位は過酸化水素含量よりは溶液の酸化還元電位に依存するため、溶液内のメタル含量が相対的に高くなっても低コストで操業が可能となる。
このような関係を式で表すと、下記式(5)の通りである。
過酸化水素濃度0.805+9.2×e−[metal/15.56] …(5)
(上記式(5)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
上述した内容から、混酸槽での混酸酸洗工程では酸洗溶液中の硫酸及びフッ酸濃度と残留過酸化水素濃度が酸洗効果増大及び高速酸洗の最も重要な因子であることが確認できる。したがって、これらの成分の濃度を制御する必要があり、このような各成分の濃度制御においては、上述したように通常用いられる酸分析器を用いて硫酸及びフッ酸濃度を調整することができ、近赤外線分析方法又は自動滴定法により残留過酸化水素濃度を分析及び調節することができる。
上記のような本発明の方法によれば、高速で酸洗工程を行うことができるため、総酸洗時間が15〜240秒程度で、酸洗にかかる時間を大幅に短縮することができ、優れた品質を有するオーステナイト系ステンレス鋼板が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明する。しかしながら、下記実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
[実施例1]
中性塩電解及び硫酸電解の実施の有無によるオーステナイト系冷延鋼板の酸化スケールの酸洗性を確認するために、16%以上のクロム組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼板を中性塩電解処理及び硫酸電解処理してそれぞれCr、Mn、Feからなるスケール層を除去した。
この際、用いられた中性塩電解溶液は電解質として硫酸ナトリウム電解質150g/lを含み、溶液の温度は60℃であり、鋼板の表面電位が+、−、+の順に形成されるようにして20A/dmの電流密度を40秒間印加した。
また、硫酸電解溶液は硫酸85g/lを含むpH 1の溶液であり、溶液温度は50℃であり、鋼板の表面電位が+、−、+の順に形成されるように20A/dmの電流を15秒間印加した。
中性塩電解及び硫酸電解を行った鋼板の表面と未処理の鋼板の断面を電子顕微鏡(SEM)で撮影して図1に示した。比較のために、電解処理した鋼板の断面をA)に示し、電解処理していない鋼板の断面をB)に示した。
図1から分かるように、中性塩電解及び硫酸電解を行わなかった鋼板の断面には(Cr,Mn)及びシリコン酸化物が共に残留しているのに対し、本発明の電解液を用いて中性塩電解及び硫酸電解を行った鋼板の断面にはシリコン酸化物のみが残留している。
[実施例2]
混酸槽内での表面電位による冷延鋼板の表面状態を観察するために、上記実施例1により得られた、中性塩電解処理及び硫酸電解処理によって1次スケールが除去された鋼板を用いて、表面電位によるシリコン酸化膜の酸洗の有無を評価した。
上記試験片を、硫酸120g/l及び遊離フッ酸20g/lを含む45℃の混酸溶液に浸漬した後、表1に記載されたように電位を−0.4〜0.6Vの範囲で変化させながら30秒間印加して混酸プロセスを行った。
酸洗後の冷延鋼板の表面状態を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した後、酸洗の有無及び粒界の溶解程度を評価した。
鋼板の表面にスケールが残留する場合は未酸洗と評価し、粒界の溶解程度において粒界が連続的に溶解された場合を良好と判断して○で表示し、不連続的な場合を不良と判断して×で表示した。一方、未酸洗の場合は粒界の溶解程度について評価しなかった。
評価の結果を下記表1に示す。また、印加電位が0.0V及び−0.25Vである発明例4及び比較例4の鋼板の表面状態を電子顕微鏡(SEM)で撮影して図2に示した。
Figure 0006031606
上記表1から分かるように、表面電位が−0.25〜0.1V印加された場合は、混酸溶液での酸洗が可能であった(発明例1〜5及び比較例4)。しかしながら、図2から分かるように、比較例4は、粒界の酸洗程度が不良であった。即ち、発明例4により得られた鋼板の表面を示すA)の場合は、鋼板の表面の粒界が正常的に溶解されて粒界が明確に示されるのに対し、比較例4により得られた鋼板の表面を示すB)の場合は、残留スケールはないが、粒界が不連続的に溶解されて均一に溶解されず、また、粒界の幅も小さいことが確認できる。
これに対し、比較例1、2、3、5及び6は、未酸洗の結果を示した。
このような結果から、混酸槽での表面電位が−0.2〜0.1Vの範囲で印加された方がSi酸化物層の溶解及び粒界の溶解のために適することが分かる。
[実施例3]
本実施例は、オーステナイト系冷延鋼板の混酸酸洗において−0.2Vの表面電位を得るための過酸化水素濃度と鉄イオン濃度との関係を確認するためのものであり、上記実施例1により得られた、中性塩電解処理及び硫酸電解処理によって1次スケールが除去された鋼板を用いて、表面電位によるシリコン酸化膜の酸洗の有無を評価した。
上記試験片を、硫酸120g/l及び遊離フッ酸20g/lを含む45℃の混酸溶液に浸漬した後、上記混酸溶液にメタルイオン(Fe3+)と過酸化水素を添加しながら鋼板の表面電位を測定し、鉄イオン濃度の変化によって、鋼板の表面電位を−0.2V以上に維持するための最小の過酸化水素濃度及び溶液の酸化還元電位(ORP)を測定し、その結果を図3に示した。
図3は、鋼板の表面電位を−0.2V以上に維持するための、鉄イオン濃度の変化による最小の過酸化水素濃度の変化及び溶液の酸化還元電位(ORP)を図式化したグラフである。
図3から分かるように、鉄イオン濃度の増加につれて、鋼板の表面電位を維持するための最小の過酸化水素濃度は次第に減少する。このようなメタル濃度の増加につれて溶液の酸化還元電位(ORP)は減少し、メタル濃度が40g/l以上の場合は溶液の酸化還元電位(ORP)を400mVに維持するだけでもストリップの表面電位が−0.2Vに形成されるため更なる過酸化水素水の投入を必要としないことが分かる。
しかしながら、溶液の酸化還元電位(ORP)が400mV未満の領域では表面電位が変動するため、溶液の酸化還元電位(ORP)を400mVに維持するための最小の過酸化水素を投入する必要がある。
[実施例4]
本実施例は中性塩電解を行う場合の適正操業条件を確認するためのものであり、中性塩電解槽の溶液温度、印加電流及び硫酸ナトリウム濃度を下記表2に記載されたように調節して行ったことを除いて上記実施例1と同じ方法で中性塩電解を行った。
中性塩電解を行った後の鋼板の表面状態を観察し、その結果を下記表2に示した。
中性塩電解を行った後の鋼板の表面にマンガン・クロム酸化物スケールが存在する等、表面状態が不良な場合を×で表示し、鋼板の表面状態が良好な場合を○で表示した。
Figure 0006031606
上記表2から分かるように、電解槽内の溶液温度が50〜90℃であり、電解溶液内に電解質として硫酸ナトリウム100〜250g/lを含み、10〜30A/dmの電流密度を有する条件下で中性塩電解を行った場合に鋼板の表面品質に優れる。
[実施例5]
本実施例は硫酸電解を行う場合の適正操業条件を確認するためのものであり、硫酸電解槽の溶液温度、印加電流及び硫酸濃度を下記表3に記載されたように調節して行ったことを除いて上記実施例1と同じ方法で中性塩電解を行った。
硫酸電解を行った後の鋼板の表面状態を観察し、その結果を下記表3に示した。
鉄又はマンガン・クロムの酸化スケールが残存する等、表面状態が不良な場合を×で表示し、鉄又はマンガン・クロムの酸化スケールが全て除去されてSi酸化スケールのみが残留する等、表面状態が良好な場合を○で表示した。
Figure 0006031606
上記表3から分かるように、硫酸電解槽内の溶液温度が30〜60℃、電解溶液内の硫酸濃度が50〜150g/lであり、10〜30A/dmの電流密度を有する条件下で硫酸電解を行った場合に鋼板の表面品質に優れる。
[実施例6]
本実施例は中性塩電解及び硫酸電解の適正処理時間を確認するためのものであり、中性塩電解処理時間及び硫酸電解処理時間を表4に示したように調節したことを除いて実施例1と同様に中性塩電解処理及び硫酸電解処理を行った。
中性塩電解及び硫酸電解を行った後の鋼板の表面状態を観察し、その結果を下記表4に示した。
シリコン酸化物以外にマンガン・クロムや鉄のスケールが残存しない場合を○で表示し、シリコン酸化物以外にマンガン・クロムや鉄のスケールが残存する場合を未酸洗、母材の浸食のある場合を過酸洗と判断し、未酸洗及び過酸洗が示される場合を×で表示した。
Figure 0006031606
上記表4から分かるように、中性塩電解を30〜120秒の範囲で行い、硫酸電解を5〜50秒の範囲で行う場合は、図1のA)に示したようにステンレス冷延鋼板の表面にはSi酸化物のみが存在するが、上記範囲を外れる比較例1〜4の場合は、図1のB)のような表面状態を有するため、(Cr・Mn)のスケールが存在したり表面が損傷したりする。
[実施例7]
本実施例は混酸槽での適正処理条件を確認するためのものであり、上記実施例1により得られた、中性塩電解処理及び硫酸電解処理によって1次スケールが除去された鋼板に対し、表5のような組成の混酸溶液及び処理条件で混酸酸洗を行った。この際、混酸溶液の処理温度は40〜45℃であり、過酸化水素濃度については、実施例3及び図3に基づいて、溶液中の鉄濃度によって鋼板の表面電位を−0.1Vに維持するための濃度で過酸化水素を調節した。
上記混酸処理により得られた鋼板の表面のシリコン酸化膜の酸洗の有無を観察し、その結果を下記表5に示した。
シリコン酸化物が残存しない場合を○で表示し、シリコン酸化物が残存する場合を未酸洗として×で表示し、酸洗されても圧延方向に対して60°の反射角で測定された光沢度が150未満の場合は過酸洗と判断して×で表示した。
Figure 0006031606
上記表5から分かるように、硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸15〜30g/l、及び鉄イオン濃度による最小の過酸化水素が実施例3のように組成されている酸洗組成物に10〜100秒間沈積して混酸酸洗することが好ましい。
[実施例8]
本実施例は耐食性向上のための混酸槽での適正処理条件を確認するためのものであり、実施例1により得られた、中性塩電解処理及び硫酸電解処理によって1次スケールが除去された鋼板に対し、下記表5のような条件で混酸溶液で処理した。この際、過酸化水素濃度については、実施例3及び図3に基づいて、溶液中の鉄濃度によって鋼板の表面電位を−0.1Vに維持するための濃度で過酸化水素を調節した。一方、硫酸濃度は120g/lに調節した。
表面耐食性評価においては、複合噴霧実験により5%の塩水を噴霧‐湿潤‐乾燥を繰り返して発錆の有無を観察して評価し、その結果を表6に示した。
表面耐食性評価の結果、発錆のない場合を○で表示し、発錆のある場合を×で表示し、また、発錆がなくても光沢度150未満の場合は光沢不良と判断して×で表示した。
酸洗後の塩水噴霧実験による耐食性評価の結果として発明例1及び比較例1により得られた鋼板の表面写真を図4に示した。図4のA)は粒界の幅が1マイクロ以上の発明例1により得られた鋼板の耐食性評価後の写真であり、B)は比較例1による酸洗方法で酸洗された鋼板の耐食性評価後の表面写真である。
Figure 0006031606
上記表6から分かるように、耐食性向上のための酸洗後の結晶粒界の幅(W)を、酸洗時間(t)、HF濃度(C)及び混酸溶液温度(T)を用いて式で表すと、下記式(4)の通りである。
W=−0.184+0.0131×t+0.016×C+0.01×T …(4)
上記式(4)から酸洗後の結晶粒界の幅を計算した結果、その値が1以上である発明例1〜4は耐食性に優れるが、その値が1未満である比較例1〜9は耐食性に劣っていた。
以上のことから、酸洗後の粒界の幅は1以上であることが好ましく、上記関係式から計算した結果の値も1以上の場合に耐食性に優れることが確認できる。
[実施例9]
混酸溶液の温度による過酸化水素の自己分解の程度を観察するために、フッ酸35g/l、硫酸120g/l及び過酸化水素10g/lを含み、上記過酸化水素の安定剤としてp‐トルエンスルホン酸(PTSA)を過酸化水素含量の1.5重量%で含む混酸溶液において、溶液の温度変化による残留過酸化水素含量を測定し、その結果を図5に示した。
図5から分かるように、過酸化水素の半減期は下記式により格段に減少する。
t=10.289×10・e−0.14・T
(上記式においてtは残留過酸化水素濃度の半減期(min)、Tは温度(℃)を示す。)
本実施例のように混酸溶液の温度が32℃から50℃に上昇する場合は過酸化水素の半減期が13倍減少するため、混酸溶液の温度を32℃以下に設定することが好ましい。
[実施例10]
本実施例はオーステナイト系冷延鋼板の低温混酸酸洗において−0.2Vの表面電位を得るための過酸化水素濃度と鉄イオン濃度との関係を確認するためのものであり、上記実施例1により得られた、中性塩電解処理及び硫酸電解処理によって1次スケールが除去された鋼板を用いて、表面電位によるシリコン酸化膜の酸洗の有無を評価した。
上記試験片を、硫酸120g/l及び遊離フッ酸35g/lを含む32℃の混酸溶液に浸漬した後、上記混酸溶液にメタルイオン(Fe3+)と過酸化水素を添加しながら鋼板の表面電位を測定し、鉄イオン濃度の変化によって、鋼板の表面電位を−0.2V以上に維持するための最小の過酸化水素濃度を測定し、その結果を図6に示した。
図6は、鋼板の表面電位を−0.2V以上に維持するための、鉄イオン濃度の変化による最小の過酸化水素濃度の変化を図式化したグラフである。
図6から分かるように、鉄イオン濃度の増加につれて、鋼板の表面電位を維持するための最小の過酸化水素濃度は次第に減少するため、メタル濃度が40g/l以上の場合に鋼板の表面電位を−0.2Vに形成するためには1g/lの過酸化水素水のみが必要である。
[実施例11]
本実施例は混酸槽での適正処理条件を確認するためのものであり、上記実施例1により得られた、中性塩電解処理及び硫酸電解処理によって1次スケールが除去された鋼板に対し、表7のような組成の混酸溶液及び処理条件で混酸酸洗を行った。この際、混酸溶液の処理温度は15〜32℃であり、過酸化水素濃度については、実施例10及び図6に基づいて、溶液中の鉄濃度によって鋼板の表面電位を−0.1Vに維持するための濃度で過酸化水素を調節した。
上記混酸処理により得られた鋼板の表面のシリコン酸化膜の酸洗の有無を観察し、その結果を下記表7に示した。
シリコン酸化物が残存しない場合を○で表示し、シリコン酸化物が残存する場合を未酸洗として×で表示し、酸洗されても圧延方向に対して60°の反射角で測定された光沢度が150未満の場合は過酸洗と判断して×で表示した。
Figure 0006031606
上記表7から分かるように、温度20〜32℃、硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸25〜40g/l、及び鉄イオン濃度による最小の過酸化水素が実施例10のように組成されている酸洗組成物に10〜100秒間沈積して酸洗することが好ましい。

Claims (11)

  1. 16重量%以上のクロムを含有する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板からシリコン酸化物を除去する、高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法であって、
    前記酸洗方法は、硫酸電解処理段階及び混酸溶液浸漬段階を含み、
    前記硫酸電解処理段階は硫酸を電解質として含む硫酸電解溶液を用いてCr及びFeの残留スケールを電解除去し、
    前記混酸溶液浸漬段階は硝酸を含まず、初期組成が硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸15〜30g/l及び過酸化水素濃度4.5g/l以上を含み、鉄イオンは実質的に含まない混酸溶液中に、冷延鋼板を浸漬することにより、前記冷延鋼板からシリコン酸化物を除去し、
    前記混酸溶液中の前記過酸化水素の濃度は混酸溶液中の鉄イオン濃度との関係で下記式(1)を満たし、前記混酸溶液の酸化還元電位(ORP)は混酸溶液中の鉄イオン濃度との関係で下記式(2)又は(3)を満たす、高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
    過酸化水素濃度≧0.00736+10×e−[metal]/13.2 …(1)
    ORP≧600mV、但し、鉄イオン濃度≦10g/l …(2)
    ORP≧310+431×e−[metal]/25.24、但し、鉄イオン濃度>10g/l …(3)
    (前記式(1)〜(3)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
  2. 酸洗後の結晶粒界の幅(W)を1μm以上に形成する、請求項1に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  3. 前記浸漬は、前記混酸溶液の温度(T)、フッ酸濃度(C)及び処理時間(t)が下記式(4)を満たすように制御される、請求項2に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
    酸洗後の結晶粒界の幅(W)=−0.184+0.0131・t+0.016・C+0.01・T …(4)
  4. 16重量%以上のクロムを含有する高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板からシリコン酸化物を除去する、高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法であって、
    前記酸洗方法は、硫酸電解処理段階及び混酸溶液浸漬段階を含み、
    前記硫酸電解処理段階は硫酸を電解質として含む硫酸電解溶液を用いてCr及びFeの残留スケールを電解除去し、
    前記混酸溶液浸漬段階は20〜32℃の温度に維持され、硝酸を含まず、初期組成が硫酸110〜150g/l、遊離フッ酸25〜40g/l及び過酸化水素濃度5.5g/l以上を含み、鉄イオンは実質的に含まない混酸溶液中に、冷延鋼板を浸漬することにより、前記冷延鋼板からシリコン酸化物を除去し、
    前記過酸化水素は、鉄イオンの濃度との関係で下記式(5)を満たす、高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
    過酸化水素濃度≧0.805+9.2×e−[metal/15.56] …(5)
    (前記式(5)において[metal]は混酸溶液中の鉄イオン濃度を示す。)
  5. 前記混酸溶液中に浸漬された前記冷延鋼板の表面電位は−0.2〜0.1Vに維持される、請求項1から4のいずれか一項に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  6. 前記混酸溶液に前記冷延鋼板を10〜100秒間浸漬する、請求項1から5のいずれか一項に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  7. 前記冷延鋼板からのシリコン酸化物の除去は、前記硫酸電解処理段階の前に中性塩電解処理段階をさらに含み、
    前記中性塩電解処理段階は硫酸ナトリウム電解質を含む中性塩電解溶液を用いて鋼板の表面からCr‐リッチスケールを電解除去する、請求項1から6のいずれか一項に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  8. 前記中性塩電解処理段階は、オーステナイト系ステンレス鋼板を50〜90℃の温度の中性塩電解溶液内に浸漬し、鋼板の表面電位が+、−、+の順に形成されるように10〜30A/dmの電流密度を30秒〜120秒間印加することにより行われる、請求項7に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  9. 前記中性塩電解溶液内に硫酸ナトリウム電解質を100〜250g/l含む、請求項7又は8に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  10. 前記硫酸電解処理段階は、中性塩電解処理段階を経たオーステナイト系ステンレス鋼板を30〜60℃の温度の硫酸電解溶液に浸漬し、鋼板の表面電位が+、−、+の順に形成されるように10〜30A/dmの電流密度を5〜50秒間印加することにより行われる、請求項7から9のいずれか一項に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
  11. 前記硫酸電解溶液は硫酸を50〜150g/l含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の高クロムオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の酸洗方法。
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