JP2001254143A - 軟窒化非調質クランク軸とその製造方法 - Google Patents
軟窒化非調質クランク軸とその製造方法Info
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Abstract
0.6%、Cu:3.0%以下、Ni:3.0%以下
で、かつ、下記式を満足する範囲内にあり、更に、S
i:0.05〜1.50%、P:0.07%以下、M
n:0.20〜1.20%、S:0.10%以下、A
l:0.05%以下、Ti:0.020%以下、Ca:
0.0030%以下、N:0.030%以下、Pb:
0.30%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純
物からなる鋼から製造され、軟窒化処理されていること
を特徴とする軟窒化非調質クランク軸。 fn1 =44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231 、
260 ≦fn1 ≦380 fn2 =42.51×Cu〔%〕十228 .6 ×C 〔%〕+110 、
180 ≦fn2 ≦300 fn3 =Ni〔%〕/Cu〔%〕、fn3 ≧0 .4 0 【効果】 熱間鍛造後、調質処理を行わずに軟窒化処理
を施しても、従来の調質処理を行った軟窒化クランク軸
と同等以上の優れた疲労限度及び曲げ矯正性を確保でき
る。
Description
焼戻し」や「焼ならし」などの調質処理を行わずに軟窒
化処理を施しても、高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を
有する鋼を素材とする軟窒化非調質クランク軸、及び、
そのクランク軸を製造する方法に関するものである。
クランク軸では、鍛造および機械加工の後に高周波焼入
れや軟窒化処理などの表面処理を行うことが多い。軟窒
化処理は、曲げ疲労強度向上の点では高周波焼入れより
若干劣るものの、表面に硬質の化合物層を生成させるの
で、耐焼付き性や耐かじり性を向上させるという点で、
また、捩り疲労強度の面では高周波焼入れより有利であ
る点で著しく優れる。従って、軟窒化処理を施したクラ
ンク軸(以下「軟窒化クランク軸」という)も広く採用
されている。
明のクランク軸の素材となる鋼(以下、これを便宜的に
「本発明鋼」という)を使用する軟窒化クランク軸の製
造方法を比較した工程の略図である。ここで、(a)は
従来の調質鋼を、また(b)は本発明鋼を素材とした場
合の製品までの工程を示す。
小のために、図1(b)に示すように、調質処理を省略
して鍛造のままで製品化する、いわゆる「非調質化」が
多くの自動車部品に対して検討されているが、この「非
調質化」は軟窒化クランク軸でも同様である。しかしな
がら、調質処理を省略することによって、以下のように
劣化する性能があるので、非調質化ができない部品があ
る。
質処理を行わずに軟窒化処理した部品(以下、「非調質
軟窒化鋼部品」という)の疲労限度は、同一組成の鋼を
鍛造後に調質処理してから軟窒化処理を施した部品(以
下、「調質軟窒化鋼部品」)のそれよりも低い。
る。非調質軟窒化鋼部品では、軟窒化後の曲げ矯正時に
大きなき裂を生じる。軟窒化処理によって生じた変形
は、逆方向の曲げ変形を加えることによって矯正する
が、その曲げにより非調質軟窒化鋼部品にき裂が発生す
る限界のひずみ量(以下、「曲げ矯正可能ひずみ量」と
いう)は、調質軟窒化鋼のそれよりも小さい。一般に、
曲げ矯正可能ひずみ量が小さいほど、その部分が自動車
に組み込まれて使用されたとき、部品の疲労強度が低下
する。
化鋼部品は、曲げ矯正可能ひずみ量が調質軟窒化鋼部品
に比べて小さいので、軟窒化処理によるひずみが大きい
場合に曲げ矯正を行うクランク軸には使用できない。
後、1000℃以上で鍛造を終了し、放冷したままであ
るので、その組織は、粗大な旧オーステナイト粒界に沿
った薄いネット状フェライトとその残りの部分のパーラ
イトから構成される。
ステナイトから変態した、(a)微細なフェライトとパ
ーライトの混合組織、または、(b)きわめて微細なラ
スと炭化物からなるマルテンサイト又はベイナイト(焼
入れ・焼戻しの場合)、のいずれかである。
準した鋼のそれと比較して小さい。これは、非調質鋼の
オーステナイト粒径が大きい分だけ焼入れ性が大きく、
それだけフェライト変態が抑制されることを反映するも
のである。
度、及び、曲げ矯正性を同時に改善する試みはなされて
いたが、十分に目的を達成できた例はない。例えば、特
開平7−102340号や特開平4−193931号に
は、析出硬化元素を高濃度に添加することによって、鍛
造のままで、調質処理も軟窒化処理も施さずに高い疲労
限度を得るという発明が開示されている。また、特開平
8−144018号には、窒化後の硬さのみを考慮した
発明が開示されている。
硬化元素であるバナジウム(V)を高濃度に含有するの
で、高価である。また、耐焼付き性などが問題になる場
合は、これらの高V鋼に軟窒化処理を施さなければなら
ないが、高V鋼の軟窒化処理後の曲げ矯正性はきわめて
劣っている。
題点に鑑みてなされたものであり、調質処理を行わない
で軟窒化処理を施した場合であっても、繰返し曲げ時や
曲げ矯正時に、応力・ひずみが集中するフィレットR部
の疲労強度が高く、かつ、曲げ矯正時に発生するき裂が
実際上問題とならない程度にまで小さいか、あるいは、
き裂が発生する限界のひずみ量が大きい軟窒化非調質ク
ランク軸とその製造方法を提供することを目的としてい
る。
ために、本発明の軟窒化非調質クランク軸は、所定の含
有量に規定した各成分元素からなる鋼をクランク軸に鍛
造した後、自然放冷又は強制空冷し、その後は熱処理を
することなく、必要に応じて機械加工した後軟窒化処理
を施すことで製造することとしている。そして、このよ
うにすることで、調質処理を行わないで軟窒化処理を施
した場合であっても、繰返し曲げ時や曲げ矯正時に、応
力・ひずみが集中するフィレットR部の疲労強度が高く
なると共に、曲げ矯正時に発生するき裂が実際上問題と
ならない程度にまで小さくなったり、あるいは、き裂が
発生する限界のひずみ量が大きくなったりする。
質クランク軸を得るため、主としてクランク軸素材の成
分調整について、試作、評価を繰り返した結果、上記の
課題を解決できる本発明に至った。
層は、最表面の化合物層とその下の拡散層とからなる。
非調質軟窒化鋼部品で疲労破壊が発生する起点は、拡散
層内あるいは拡散層と母材との境界部であり、また、曲
げ矯正で問題となるき裂は、拡散層でのき裂である。す
なわち、疲労破壊及び曲げ矯正時の割れを支配するのは
拡散層の性質である。従って、以下の説明で「表面」と
いうときは、化合物層を除いた拡散層の表面側を意味す
るものとする。
いて述べる。従来の非調質軟窒化鋼部品の疲労限度が低
い原因は、非調質軟窒化鋼部品では、拡散層と母材部と
の境界付近には引張り応力が残留することによるものと
考えられる。従って、非調質軟窒化鋼部品において、疲
労限度を改善するためには、この引張り残留応力を減少
させるか、さらに望ましくは圧縮残留応力とすることが
必要である。
出硬化元素を含まない鋼であっても、硬さは表面で著し
く高くなり、内部に向かって急勾配で低下する。このた
めに、表面には高い圧縮残留応力が発生するものの、境
界付近ではそれと均衡する引張り残留応力が生じるもの
と推測される。
ち引張り残留応力を低減させる方法としては、以下の方
法が考えられる。 (a)母材の硬さを上げることにより表面から内部に向
かう硬さの勾配をなだらかにすること。 (b)内部にまで窒素原子を拡散させることによって、
硬さ勾配をなだらかにすること。
大きさについて述べる。鋼の表面硬さが高いほど、曲げ
矯正の際にはき裂を生じやすくなって、き裂長さは大き
くなる。また、き裂はパーライト粒を一単位として進展
するため、表面硬さが同じであれば、パーライト粒が小
さいほど小さくなる傾向がある。
しては、以下の方法が考えられる。 (c)表面の硬さを耐焼付き性を損なわない程度に下げ
ること。 (d)パーライト粒を小さくすること。
窒化鋼部品の疲労特性と曲げ矯正性を向上させる具体的
な方法を確認するために、以下に述べる実験を行った。
0.2〜0.4%のCを含有する中炭素鋼を基本組成と
して、CuとNiの含有量を変化させた14鋼種を素材
として、クランク軸を模擬した図2に示す形状、寸法の
試験体1を作製し、軟窒化処理後の疲労試験及び曲げ試
験を行った。下記表1に14種類の試験素材の化学成分
を示す。表1の最上欄の試験素材X1が基本組成(ベー
ス材)である。それに対応して、X2 以下の試験素材
は、C、Cu、Niの影響を評価するため、これらの含
有量を変化させた鋼である。
り、母材の硬さを高めるのに有効である。ただし、表面
の硬さも同時に上げる効果があること、Cuの融点が低
いため液体脆化と呼ばれる、鍛造時のCu相を起点とし
た割れを引起こす可能性があることから、適正含有量を
見極める必要がある。Niも固溶強化元素であり、Cu
と同様な効果を有するが、さらに、Cu相の融点を上
げ、液体脆化を防ぐ効果もある。
ほか、Si、P、Mn、S、Al、Ti、Ca等が添加
されているが、この内、微量のTiは加熱時のオーステ
ナイト粒の成長を抑制するため、パーライト粒を小さく
する効果がある。
た素材棒鋼を1200℃に加熱して熱間鍛造した後、自
然空冷し、調質処理を行うことなく、図2に示した形
状、寸法の試験体1に加工し、ガス軟窒化処理(RXガ
ス:NH3 =1:1の雰囲気中で585℃に1.5時間
保持した後に油冷)を施した。なお、比較のために、ク
ランク軸用として一般に用いられるS48C鋼(X1
5)を鍛造した後、焼準処理(860℃に再加熱し、1
5分間保持後に空冷)を行い、同じガス軟窒化処理を施
した後に、同じ試験を行った。ただし、表1中のX13
の素材のみ、鍛造時に割れが生じたため、その後の試験
体1の製作は行わなかった。これは、Cuの含有量に対
し、Niの含有量が少ないため、液体脆化が生じたこと
が原因と考えられる。
ーナル部2の端部およびピン部3の中央部を支持した3
点曲げにより、荷重制御両振りにて繰返し周波数5Hz
で実施し、破断繰返し数が107 回となる応力振幅を疲
労限度と定義した。ここで、応力は、疲労き裂が発生す
るピン部3におけるフィレットR部4での応力(長さ1
mmのひずみゲージにより長さ測定、算出)である。
た静的曲げ試験により評価した。疲労試験時にひずみゲ
ージを貼付した場所と同一の場所にひずみゲージを貼付
し、室温大気中にて曲げを負荷し、ひずみゲージの断線
をき裂の発生と見なし、その時のひずみ量を曲げ矯正可
能ひずみ量とした。曲げ矯正可能ひずみ量はばらつきが
大きいため、1鋼種につき4個の試験体1による試験を
行い、その平均値で評価した。
また、図4に疲労限度とNi/Cu含有量との関係を示
す。図3に示したように、C含有量が同じであれば、C
u含有量が多いほど疲労限度が向上すること、また、N
i/Cu含有量は上記したように、0.35では鍛造時
に割れが生じるため評価できないものの、図4に示した
ように、0.40より大きいレベルでは疲労限度はほぼ
一定であることが判明した。
から深さが2mmの位置のビッカース硬さを用いた)と
疲労限度との関係を示すが、これより、母材硬さHv ma
t.が大きいほど疲労限度が向上していることが判る。ま
た、図6に母材硬さHv mat.とCu含有量との関係を示
すが、これより、C含有量及びCu含有量が多いほど母
材硬さHv mat.が大きいことが判る。この関係を重回帰
分析すると以下の式で表される。
C 〔%〕+110 ここで、母材硬さHv mat.は、非調質で焼準材以上の疲
労限度を確保するためには、180〜300の範囲内で
あることが必要である。さらに、機械加工時の被削性も
確保するには、180〜260の範囲内とすることが望
ましい。また、Ni含有量の母材硬さHv mat.への影響
は、Cuほど顕著ではないが、鍛造割れの問題があるた
め、Ni/Cuは0 .4 0以上とすることが望ましい。
との関係を、また、図8に曲げ矯正可能ひずみ量とNi
/Cu含有量との関係を示す。図7に示したように、C
量が同じ場合には、Cu含有量があるレベル以上で曲げ
矯正可能ひずみ量が急激に低下すること、また、Ni/
Cu含有量は上記したように、0.35では鍛造時に割
れが生じるため評価できないものの、図8に示したよう
に、0.40より大きいレベルでは曲げ矯正可能ひずみ
量はほぼ一定であることが判明した。
カース硬さ)と曲げ矯正可能ひずみ量との関係を示す
が、これより、表面硬さがビッカース硬さで380を超
えると曲げ矯正可能ひずみ量が急激に低下することが判
る。また、図10に表面硬さHvsur.とCu含有量との
関係を示すが、これより、C含有量及びCu含有量が多
いほど表面硬さHvsur.が大きいことが判る。この関係
を重回帰分析すると以下の式で表される。
C 〔%〕+231 ここで、表面硬さHvsur.は焼準材の70%以上の曲げ
矯正可能ひずみ量を確保すると共に、耐焼付き性をも確
保するためには、260〜380の範囲であることが望
ましい。また、Ni含有量の表面硬さHvsur.への影響
はCuほど顕著ではないものの、鍛造割れの問題がある
ため、0 .4 0以上とすることが望ましい。
成分および不純物の作用ならびに軟窒化処理の条件に関
する詳細な検討を総合してなされたものであり、本発明
の軟窒化非調質クランク軸は、C、Cu、Niを含有
し、その質量百分率が、C:0.1〜0.6%、Cu:
3.0%以下、Ni:3.0%以下で、かつ、下記の式
を満足する範囲内にあり、さらに、Si:0.05〜
1.50%、P:0.07%以下、Mn:0.20〜
1.20%、S:0.10%以下、Al:0.05%以
下、Ti:0.020%以下、Ca:0.0030%以
下、N:0.030%以下、Pb:0.30%以下を含
有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼から製
造され、軟窒化処理されているものである。
製造方法は、本発明の軟窒化非調質クランク軸を製造す
る鋼をクランク軸に鍛造した後、自然放冷又は強制空冷
し、その後は熱処理をすることなく、必要に応じて機械
加工した後軟窒化処理を施すものである。
なる鋼(本発明鋼)の各構成元素の作用及び各元素の含
有量を限定した理由について説明する(成分含有量の%
は全て質量百分率である)。
下、Ni:3.0%以下で、かつ、以下の式を満足する
範囲内にあること。 fn1 =44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231 fn2 =42.51×Cu〔%〕十228 .6 ×C 〔%〕+110 fn3 =Ni〔%〕/Cu〔%〕 但し、260 ≦fn1 ≦380 180 ≦fn2 ≦300 fn3 ≧0 .4 0
NiとCuの含有量の比に相当するパラメータであり、
その範囲は先に説明したように、疲労限度、曲げ矯正
性、鍛造割れの生じない限界に基づき設定した。
耐摩耗性にも効果がある。そして、これらの効果を得る
には、少なくとも0.05%以上含有させることが必要
である。ただし、過剰になると鍛造時の脱炭を促すの
で、本発明では、含有量の上限を1.50%とした。
これに伴ない曲げ矯正性も低下するので、本発明では、
0.07%を許容上限値とした。
疲労限度を向上させる効果がある。しかし、過剰な添加
はパーライト体積率を増加させるため、同じ表面硬さで
も曲げ矯正性が低下するおそれがある。このため、本発
明では、下限を0.20%、上限を1.20%とした。
量は不可避的不純物の範囲でもよい。しかし、Sには被
削性を向上させる効果があるので、積極的に添加しても
良い。その効果を得るためには、含有量を0.04%以
上とすることが望ましい。但し、Sが0.10%を超え
ると連続鋳造スラブに欠陥を生じるので、本発明では、
上限を0.10%とした。
度及び被削性がともに低下する。このため、本発明で
は、含有量の上限を0.05%以下とした。
成長を抑制することにより、フェライト・パーライト組
織を微細化する。このため、同じ表面硬さであっても曲
げ矯正性を向上させる効果がある。しかし、Tiが過剰
に含有されると、鋼中Nと反応して表面から内部への硬
さ勾配が急になり、疲労強度に悪影響を及ぼす。このた
め、本発明では、含有量の上限を0.020%とした。
量は不可避的不純物の範囲でもよい。しかし、Caは被
削性向上を狙う場合に積極的に添加することができる成
分である。被削性の向上に効果があるCaの含有量は
0.0003%以上であるから、添加する場合は、これ
以上の含有量を確保することが望ましい。一方、Caが
0.0030%を超えると鋼中への大型介在物の混入が
避けられない。従って、Caを添加する場合でも、その
含有量は0.0030%までにとどめるべきである。
窒化時のNの拡散速度が上昇し、表面から内部にかけて
硬さの勾配をゆるやかにする効果があり、疲労限度には
良い影響を及ぼす。ただし、あまり添加しすぎると、そ
の効果は飽和し、曲げ矯正性が低下するため、本発明で
は、上限を0.030%以下とした。
には、被削性をより向上させるという効果がある。その
向上効果は含有量が0.05%以上の時に顕著になる。
しかし、Pbが過剰になると鋼中の介在物が多くなって
疲労限度が著しく低下する。このため、本発明では、含
有量の上限を0.30%とした。
は次に述べる方法で製造することができる。すなわち、
先ず、前記組成の素材(本発明鋼)を加熱し、鍛造加工
を行って、目的の形状とする。この時の加熱温度は、低
ければ低いほど好ましいが、低温鍛造には大きなプレス
能力が必要となるため、一般的な条件として1200℃
を標準とし、プレスの能力に応じて1150〜1250
℃の範囲で決定する。鍛造後は、製造コストの点から自
然放冷(空冷)を行う。ただし、製造時間短縮のために
送風等による強制空冷を行ってもなんら問題はない。
た後は、一般に行われる焼準又は焼入れ・焼戻しなどの
調質処理を行うことなく、必要に応じて機械加工した後
軟窒化処理を施す。軟窒化処理は、例えばRXガス:N
H3 =0 .8 〜1 .2 の雰囲気で、温度570〜600
℃、時間60〜120分とし、その後は直接油冷するこ
とにより行う。このような条件により軟窒化処理を行え
ば、耐焼付き性の改善のための適正な化合物層と十分な
深さの拡散層を得ることができる。
実験結果について説明する。下記表2は、試験に供した
本発明鋼6種類(Z1〜Z6)、比較鋼12種類(Z7
〜Z18)、及び、S48C相当鋼2種類(Z19,Z
20)の化学組成を示す一覧表である。なお。比較鋼の
内、C、Cu、Niの含有量から求まるfn1、fn2 、fn3
のいずれかが本発明の範囲外となるものを比較例1
(Z7〜Z11)、本発明例のZ2をベースにして、
P、Mn、Al、Ti、Ca、Pbのいずれかの含有量
が本発明の範囲外となるものを比較例2(Z12〜Z1
8)と呼ぶ。
で溶解した後に1200℃まで加熱し、図2に示した形
状及び寸法のクランク形の試験体1に熱間鍛造し、放冷
した。その後、若干の機械加工を行い、軟窒化処理を施
した。ただし、fn3 が本発明の範囲外であるZ11の
み、鍛造時に割れが発生したため、その後の評価は行っ
ていない。
=1:1とし、その雰囲気中で試験体を585℃に加熱
し、90分間保持した後、150℃の油中で油冷した。
そして、窒化した各試験体をそのまま各試験に供した。
107 回となる応力振幅を疲労限度と定義した。一方、
曲げ矯正性も前述した方法と同様の方法で評価した。被
削性についても全ての鋼に対して工具寿命の試験を行っ
た。被削性の評価は、S48CにPbを0.05%添加
した鋼(表2のZ20)に調質処理を施したものを基準
とする相対比較によって行った。
験の結果を示す。表3から明らかなように、本発明の軟
窒化非調質クランク軸(本発明例:Z1〜Z6)は、疲
労限度及び曲げ矯正可能ひずみ量の両方において、目標
値(Z19のS48C鋼を素材とする軟窒化非調質クラ
ンク軸に対し、疲労限度が同等(588MPa)、曲げ
矯正可能ひずみ量が対S48C比70%(ひずみ2.4
5%))を達成している。
目標値の疲労限度と曲げ矯正可能ひずみ量を同時に達成
するものは存在しない。また、比較例2(Z12〜Z1
8)には、疲労限度及び曲げ矯正可能ひずみ量の両方共
目標値を達してはいるものの、ベース材であるZ2と比
較すると低下していることが判る。
したZ20と同等以上の工具寿命となったものを良好と
して◎印を、Pbを添加していないS48CであるZ1
9と同等以上の工具寿命となったものに○印を、さらに
これより工具寿命の短いものに×印を付してある。本発
明例のうちPbを添加したもの(Z6)は、疲労限度と
曲げ矯正性を同時に満たした上で被削性も極めて良好で
あること、また、Pbを添加していなくても本発明品は
Pbを添加していないS48Cと同等以上の被削性を有
することが判る。
調質クランク軸は、熱間鍛造後、調質処理を行わずに軟
窒化処理を施しても、素材鋼の表面硬さと母材硬さを適
正範囲内とすることにより、従来の調質処理を行った軟
窒化クランク軸と同等以上の優れた疲労限度および曲げ
矯正性を確保することができる。また、このクランク軸
を製造する本発明法では、調質処理の工程が不要である
ことから、製造時間が大幅に短縮し、コスト削減にも大
きな効果を有する。
製造工程を、(b)は本発明の軟窒化クランク軸(非調
質材)の製造工程をそれぞれ示す図である。
擬した試験体の形状を示す図で、(a)は正面図、
(b)は側面図である。
る。
図である。
図である。
る。
示した図である。
関係を示した図である。
関係を示した図である。
ある。
Claims (2)
- 【請求項1】 C、Cu、Niを含有し、その質量百分
率が、C:0.1〜0.6%、Cu:3.0%以下、N
i:3.0%以下で、かつ、下記の式を満足する範囲内
にあり、さらに、Si:0.05〜1.50%、P:
0.07%以下、Mn:0.20〜1.20%、S:
0.10%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.0
20%以下、Ca:0.0030%以下、N:0.03
0%以下、Pb:0.30%以下を含有し、残部がFe
及び不可避的不純物からなる鋼から製造され、軟窒化処
理されていることを特徴とする軟窒化非調質クランク
軸。 fn1 =44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231 fn2 =42.51×Cu〔%〕十228 .6 ×C 〔%〕+110 fn3 =Ni〔%〕/Cu〔%〕 但し、260 ≦fn1 ≦380 180 ≦fn2 ≦300 fn3 ≧0 .4 0 - 【請求項2】 請求項1記載の組成の鋼をクランク軸に
鍛造した後、自然放冷又は強制空冷し、その後は熱処理
をすることなく、必要に応じて機械加工をした後軟窒化
処理を施すことを特徴とする軟窒化非調質クランク軸の
製造方法。
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