JP2001193621A - 内燃機関用点火装置 - Google Patents

内燃機関用点火装置

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JP2001193621A JP2000043154A JP2000043154A JP2001193621A JP 2001193621 A JP2001193621 A JP 2001193621A JP 2000043154 A JP2000043154 A JP 2000043154A JP 2000043154 A JP2000043154 A JP 2000043154A JP 2001193621 A JP2001193621 A JP 2001193621A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 火花エネルギを制御することで、点火プラグ
の無駄な電極消耗を抑え、かつ、半導体素子への負担を
少なくする内燃機関用点火装置を提供する。 【解決手段】 図8に示す内燃機関用点火装置では、E
CU19がトランジスタ17の動作を制御して、点火コ
イル15の一次巻線L1の通電・遮断を行い、点火プラ
グ13に火花放電を発生させた後、内燃機関の運転状態
に基づき設定した火花放電継続時間Ttが経過した時点
で、火花放電遮断回路51の動作を制御して一次巻線L
1に再度電流を流し、点火用高電圧の発生を抑えて火花
放電を遮断する。これにより、多重放電の発生を抑える
ことが出来る。また、一次巻線L1への通電をトランジ
スタ17とトランジスタ85を用いて行うため、トラン
ジスタ1個当りに流れる電流量を抑制でき、半導体素子
(トランジスタ)の発熱を抑えることが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、点火プラグに点火
用高電圧を印加して、点火プラグを火花放電させる内燃
機関用点火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関において、混合気の正常な燃焼
を得るために必要な火花エネルギの大きさは、内燃機関
の運転状態によって異なることが知られている。ここ
で、火花エネルギは、火花放電で流れる放電電流(二次
電流)の大きさおよび火花放電の継続時間にて表すこと
ができる。
【0003】例えば、アイドリング運転等の低回転低負
荷時では、燃焼室への混合気の充填量は少なく、混合気
の乱流(スワール流やタンブル流)の流速も遅いため、
混合気の燃焼は非常に緩慢に進む。したがって、低回転
低負荷時に安定した燃焼を得るためには、火花エネルギ
を大きくして、火炎核の成長を助け、混合気の燃焼を助
ける必要がある。一方、高回転高負荷時では、燃焼室へ
の混合気の充填量は多く、かつ混合気密度が高いことか
ら、燃焼は早く進むため、比較的小さい火花エネルギで
充分である。
【0004】このため、従来の内燃機関用点火装置で
は、火花エネルギが不足することのないよう、内燃機関
の様々な運転状態の中で必要とされる最大の火花放電継
続時間を設定して、最大の火花エネルギを供給できるよ
うにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の内燃機
関用点火装置では、必要最大の火花エネルギより少ない
火花エネルギで運転可能な状態では、火花エネルギの供
給が過剰になる。このことは、混合気への着火性に良好
な影響をもたらすことがなく、点火プラグの電極消耗を
早めてしまう。
【0006】また別の問題として、内燃機関では高回転
高負荷となる運転条件下ほど、混合気の乱流の流速が強
く(速く)なるがゆえ、火花エネルギが低下する火花放
電の後半時において、火花が流速下流に流されて、やが
て火花放電が吹き消え、再度発生するといった繰り返し
現象(所謂、多重放電)を引き起こすことがある。ここ
で、この多重放電について、図21を用いて詳細に説明
する。図21(a)には、絶縁体13cの軸孔(図示し
ない)に挿設されると共に、その絶縁体13cの前端面
から突出してなる中心電極13aと、その中心電極13
aと対向するように備えられた接地電極13bとにより
なる点火プラグ13が示され、この中心電極13aと接
地電極13bとの間に形成されるプラグギャップGにお
いて火花放電が発生する。
【0007】ところで、通常、点火プラグにおける火花
放電の発生直後にあっては、100[A]程度の非常に
大きな二次電流(所謂、容量成分)が電極間に極短時間
流れる。そして、その容量成分の後であって、火花放電
期間中の前半時には、40〜100[mA]程度の二次
電流(所謂、誘導成分)が流れる。この誘導成分は火花
放電の経過と共に徐々に低下していき、点火コイルの二
次巻線に残留する電磁エネルギが火花放電を継続できな
い程度に低下した時に、火花放電が自然に終了して0
[A]となる。
【0008】従って、火花放電の発生直後から火花放電
の前半時にかけては、点火プラグの電極間に流れる二次
電流が比較的大きい(火花エネルギが大きい)が、火花
放電の後半時には、二次電流が徐々に小さくなってくる
のである。そのために、混合気の乱流の流速が強いと、
火花放電の後半時には、図21(a)に模式的に示すよ
うに火花放電が流され、火花放電が途切れてしまうので
ある。そして、この火花放電が途切れた時点において、
点火コイルの二次巻線に残留する電磁エネルギによりプ
ラグギャップGの二次電圧が再度上昇し、当該二次電圧
が放電電圧に達すると火花放電が再度発生するのであ
る。なお、図21(b)に多重放電時の点火プラグの電
極間における二次電流の波形を示しており、縦軸を二次
電流値、横軸を時間として波形を表している。この図2
1(b)によれば、二次電流の乱れが火花放電の後半時
にみられ、多重放電が発生していることがわかる。
【0009】このような現象下では、火花が流速下流に
集中し、かつ、容量放電の繰り返し(多重放電)で電極
温度が急激に上昇することにより、電極材の溶融やスパ
ッタリングが促進され、特に流速下流側の電極ばかりが
消耗する、所謂偏消耗が発生し、点火プラグの寿命を無
駄に縮めてしまうことにつながってしまう。
【0010】一方、近年、内燃機関用点火装置では、点
火プラグに点火用高電圧を印加するために点火コイルの
一次巻線への通電・非通電(遮断)を切り換える手段と
して、パワートランジスタ等の半導体素子からなるスイ
ッチング素子を使用する、所謂フルトランジスタ型の点
火装置が一般的になっている。そして、こうしたフルト
ランジスタ型の点火装置によれば、点火コイルにエネル
ギを蓄積するための火花放電前における点火コイルの一
次巻線への通電時間を、スイッチング素子の駆動時間
(オン時間)を調整することにより、容易に制御でき
る。このため、この種の内燃機関用点火装置では、内燃
機関の運転状態に応じて、点火コイルの一次巻線への通
電時間を制御することにより、火花エネルギを混合気の
燃焼に必要な量に制御できることになる。
【0011】しかし、火花放電前の点火コイルの一次巻
線への通電時間を制御するようにした場合、通電時間を
短くすると、通電により点火コイルに蓄積されるエネル
ギが小さくなるので、通電遮断によって二次巻線に発生
する点火用高電圧も低くなってしまう。この結果、例え
ば、内燃機関の高回転高負荷時に火花エネルギを小さく
すべく、一次巻線への通電時間を短く制御すると、点火
コイルの一次巻線への通電・遮断により二次巻線に発生
する点火用高電圧が低くなってしまい、点火プラグへの
点火に必要な要求電圧が高くなる高回転高負荷時といっ
た運転条件下に見合った点火用高電圧が得られずに、失
火を招く虞がある。
【0012】本発明は、こうした問題に鑑みなされたも
のであり、内燃機関用点火装置において、火花放電前の
点火コイルの一次巻線への通電時間を制御することな
く、火花エネルギを必要最小限に抑え、さらに高回転高
負荷時といった運転条件下で発生し易い多重放電を抑え
ることにより、点火プラグの寿命を長くすることを目的
とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めになされた請求項1記載の発明は、二次巻線が、内燃
機関に装着された点火プラグと共に閉ループを形成する
点火コイルと、電源装置から点火コイルの一次巻線に流
れる一次電流を通電・遮断することにより、二次巻線に
点火用高電圧を発生させ点火プラグを火花放電させるた
めの火花放電発生手段と、内燃機関の運転状態に基づ
き、点火プラグの火花放電によって混合気を燃焼させる
のに要する火花放電継続時間を算出するにあたり、少な
くとも同機関の高回転高負荷時に該火花放電継続時間が
短くなるよう算出する火花放電継続時間算出手段と、を
備え、前記火花放電継続時間算出手段にて算出された火
花放電継続時間に応じて、前記点火プラグの火花放電を
強制的に遮断することを特徴とする。
【0014】このように構成された本発明の内燃機関用
点火装置では、火花放電の継続時間を算出する火花放電
継続時間算出手段が、内燃機関の運転状態に基づき、点
火プラグの火花放電によって混合気を燃焼させるのに要
する火花放電継続時間を算出しており、とりわけ、少な
くとも同機関が高回転高負荷時にその火花放電継続時間
を短くするように算出する点が注目すべき点である。さ
らには、上記火花放電継続時間算出手段にて算出された
火花放電継続時間に応じて、点火プラグの火花放電を自
然終了する前に強制的に遮断する点が注目すべき点であ
る。
【0015】つまり、本発明によれば、内燃機関の運転
状態に基づいて一次巻線への通電時間を制御するのでは
なく、火花を強制的に遮断するようにして火花放電継続
時間を制御するものであることから、一次巻線への通電
時間を充分長くすることができる。それより、二次巻線
に発生する点火用高電圧を内燃機関のあらゆる運転条件
下で確実に点火させることができる大きさにした状態で
印加することができるので、失火の発生を抑えることが
できる。その上、火花放電継続時間の制御にあっては、
内燃機関の高回転高負荷時に火花放電継続時間が短くな
るように算出した上で火花を強制的に遮断するようにし
ていることから、火花エネルギが少なくてもよい運転条
件下に、火花エネルギの過剰な供給を抑えることができ
る。なお、逆に、内燃機関の低負荷低回転時のように混
合気が着火しにくい運転条件下では、火花放電継続時間
を長く制御して、混合気を確実に燃焼させることが可能
である。
【0016】さらに、本発明によれば、上述したように
高回転高負荷時に火花放電継続時間が短くなるように算
出することから、高回転高負荷時といった混合気の乱流
の流速が強い運転条件下において、多重放電の発生を有
効に抑えることができる。つまり、高回転高負荷時の運
転条件下では火花エネルギは小さくても混合気への着火
性は良好であるから、火花放電継続時間を短く算出し、
火花放電の後半時に発生し易い多重放電の発生前に火花
放電を遮断して、多重放電の発生を抑えるである。
【0017】なお、火花放電継続時間として過度に短い
時間を設定(算出)した場合には、混合気への着火が行
われず失火に至り、内燃機関の運転を正常に行うことが
できない虞がある。このため、内燃機関を正常に運転す
るには、後述する図16に示す火花放電継続時間に対す
る失火率について測定した測定結果から、火花放電継続
時間を通常0.05〔mSec〕以上に設定するとよ
い。
【0018】そして、本発明(請求項1)は、例えば、
リーンバーンエンジン等で行われる、空燃比20以上の
希薄空燃比で燃焼する内燃機関に適用する場合に有効と
なる。一般に、希薄空燃比で燃焼する内燃機関にあって
は、希薄な燃料を火花放電時前までに均一に拡散させた
混合気としなければ着火性が安定して得られないため、
混合気の乱流の流速を強くしている。そのために、火花
エネルギが低下する火花放電の後半時において、多重放
電が発生し易く、点火プラグの電極消耗(偏消耗)が促
進され易い。その一方で、この希薄空燃比で燃焼する内
燃機関にあっても、高回転高負荷時の運転条件下では火
花エネルギは小さくても混合気への着火性は良好とな
る。そのことから、本発明(請求項1)の内燃機関用点
火装置を適用して、高回転高負荷時に火花放電継続時間
を短く算出し、火花放電の後半時に発生し易い多重放電
の発生前に火花放電を遮断することで、良好な着火性の
確保と多重放電の発生を抑制することが期待できる。
【0019】ところで、火花放電を強制的に遮断する手
段としては、例えば、点火プラグに対して並列にスイッ
チング素子と電流制限用の抵抗素子を設け、点火プラグ
の火花放電時に、このスイッチング素子をオンして、二
次巻線に流れる電流の迂回経路を形成し、点火プラグの
電極間に加わる電圧を、点火プラグが火花放電しない程
度の電圧に抑制するようにしてもよい。しかし、このよ
うにするには、スイッチング素子及び抵抗素子に耐電圧
の高い(例えば40kV)ものを使用しなければなら
ず、現実問題としては不可能に近い。
【0020】こうした問題を生じることなく火花放電を
強制遮断するためには、請求項2に記載のように、火花
放電継続時間が経過したタイミングに応じて、点火コイ
ルの一次巻線への通電を再開することにより、点火プラ
グの火花放電を強制的に遮断するよう構成するとよい。
【0021】つまり、火花放電は、点火コイルの一次巻
線に通電することで磁束を誘起させ、一次電流を遮断す
ることにより急激に磁束の変化を起こし、二次巻線に高
電圧を誘導する原理を利用しており、火花放電中に再度
一次巻線を通電すると、二次巻線で発生した起電力の消
費に伴い低下する磁束が再び増えようとする。それによ
り点火コイルは、磁束が低下する状態を維持する方向に
起電力を、即ち火花放電時とは逆の電圧を発生する。従
って、点火プラグの火花放電を強制的に遮断することが
できるようになるのである。
【0022】なお、請求項2に記載のように一次巻線へ
の通電を再開するには、例えば、一般的なフルトランジ
スタ型の点火装置において点火コイルの一次巻線への通
電・非通電を切り換えるために設けられているパワート
ランジスタやFET等の半導体素子からなるスイッチン
グ素子を駆動(オン)するようにすれば実現できる。ま
た、フルトランジスタ型の点火装置に限らず、点火装置
には、点火コイルの一次巻線への通電・非通電を切り換
えるために電気式或いは機械式のスイッチング手段が設
けられることから、こうしたスイッチング手段を導通さ
せるようにしてもよく、または当該スイッチング手段に
並列にスイッチング手段を設け、これを導通させるよう
にしても良い。
【0023】一方、点火コイルの一次巻線への再通電に
よって、点火プラグの火花放電を強制的に遮断するよう
にした場合、火花放電遮断のための一次巻線への通電を
瞬時に停止するようにすると、その通電停止によって、
点火コイルの二次巻線に再び高電圧が発生して、点火プ
ラグを火花放電させてしまうことが考えられる。
【0024】そこで、このような問題を防止するには、
請求項3記載のように、点火コイルの一次巻線への通電
を再開した後、点火プラグにて火花放電が発生しないよ
うに一次巻線に流れる一次電流を減少させる電流調整手
段を備えるとよい。つまり、点火プラグの火花放電を強
制的に遮断するために点火コイルの一次巻線への通電を
再開した際、点火プラグでの火花放電が発生しないよう
に再通電時の電流を緩やかに減少させ、通電停止時に点
火コイルの二次巻線に高電圧が発生するのを防止するの
である。このようにすれば、点火コイルの一次巻線への
通電を再開させるために使用するスイッチング素子に流
れる電流量を低減して、その発熱量を抑制できることか
ら、こうしたスイッチング素子の耐久性を向上すること
もできる。
【0025】なお、火花放電遮断後の一次電流を減少さ
せる際に火花放電が発生しないようにするためには、一
次電流を減少させるにあたり二次巻線に発生する二次電
圧を抑える必要がある。そして、後述する図17に示す
火花放電遮断後に発生する最大二次電圧に対する火花放
電の再発生率について測定した結果から、最大二次電圧
が5〔kV〕以下となるように一次電流を減少させると
よい。
【0026】ところで、点火コイルの一次巻線への通電
・非通電を、例えば、半導体素子からなる1つのスイッ
チング素子にて実行するよう構成した場合、火花放電の
発生前に加えて火花放電遮断時にも同じスイッチング素
子を用いて再通電する必要がある。しかしながら、前述
したように、火花放電を強制遮断するために再通電した
一次電流を瞬時に停止する(すなわち、スイッチング素
子を瞬時にオフ状態とする)ようにすると、その通電停
止によって、点火コイルの二次巻線に再び高電圧が発生
して、点火プラグを再び火花放電させてしまうことが考
えられる。そのため、1つのスイッチング素子を用いた
内燃機関用点火装置の場合にあっては、スイッチング素
子をゆっくりとオフ状態にしなければならず、当該スイ
ッチング素子として一般的に使用されるパワートランジ
スタやFET等の半導体素子の場合、このゆっくりとオ
フ状態とするということは、ベース電流もしくはゲート
−ソース間電圧をゆっくり低下させることを意味し、こ
の過渡状態にて素子自体に極端に大きな負荷がかかり、
素子の消費電力が増大して過度の発熱が発生してしま
う。
【0027】そこで、請求項4に記載のように、火花放
電発生手段は、点火コイルの一次巻線に接続され、一次
巻線に流れる一次電流を通電・遮断する第1スイッチン
グ手段を備えており、点火プラグの火花放電を強制的に
遮断するために点火コイルの一次巻線への通電を再開す
るための第2スイッチング手段と、第2スイッチング手
段に直列接続される電流調整手段とを少なくとも含む再
通電用回路が、第1スイッチングに並列接続されている
とよい。
【0028】かかる構成を図ることにより、一次巻線へ
の通電・非通電および火花放電を強制遮断するための再
通電を1つのスイッチング手段を用いて行う必要がなく
なる。さらには、電流調整手段が例えば容量素子で構成
されている場合、第2スイッチング手段をオン状態とす
ることで火花放電を強制遮断すべく一次巻線に再通電さ
れる一次電流が、第2スイッチング手段に直列接続され
た電流調整手段(容量素子)の静電容量Cと一次巻線の
巻線抵抗Rで決まる時定数により点火プラグにて火花放
電が発生しないよう緩やかに減少されることになる。こ
れにより、スイッチング手段には負荷をかけずに、その
発熱量を小さく抑えながら、火花放電を強制遮断するこ
とができ、より信頼性の高い内燃機関用点火装置を提供
することができる。
【0029】さらに、請求項4に記載の内燃機関用点火
装置においては、請求項5に記載のように、再通電用回
路が、電流調整手段に直列接続された抵抗素子と、この
抵抗素子と並列接続され、一次電流を流すことを許容す
る第1整流素子と、第2スイッチング手段に並列接続さ
れ、一次電流を流すことを許容しない第2整流素子と、
を備えるとよい。
【0030】電流調整手段が例えば容量素子で構成され
た場合、容量素子は蓄積(充電)されている電荷に応じ
て通電可能な電流の大きさが変化するため、第2スイッ
チング手段による一次巻線への再通電時に、電流調整手
段(容量素子)に電荷が蓄積されていくに従い、一次電
流を緩やかに減少させるよう動作する。そして、蓄積さ
れた電荷量が容量素子に蓄積可能な所定量に達すると、
容量素子は、それ以上電流を流すことが出来なくなり、
一次巻線への通電が停止(遮断)される。よって、容量
素子により火花放電の遮断時の一次電流を緩やかに減少
させることができ、火花放電遮断のための通電停止に際
して、再び火花放電が発生することがない。
【0031】ここで、第1スイッチング手段と第2スイ
ッチング手段は並列接続されており、一次巻線に一次電
流が流れるための通電経路が、それぞれ異なる通電経路
により形成された形態となっている。さらに、抵抗素子
および第2整流素子は、第2スイッチング手段により形
成される通電経路に並列に設けられ、電流調整手段(容
量素子)に一次巻線の通電時とは反対方向の電流が流れ
ることを許容する形態となっている。このため、抵抗素
子,容量素子および第2整流素子からなる通電経路は、
第1スイッチング手段に並列接続された状態となり、第
1スイッチング手段がオン状態となると、抵抗素子、容
量素子、第2整流素子および第1スイッチング手段によ
って閉ループが形成される。
【0032】そして、第1スイッチング手段がオン状態
になり、抵抗素子、容量素子、第2整流素子および第1
スイッチング手段からなる閉ループが形成されると、容
量素子に蓄積された電荷が放出されて、容量素子に火花
放電の遮断時とは反対方向の電流が流れる。なお、第1
整流素子は容量素子から電荷が放出される方向の電流を
流すことが出来ないため、容量素子の放電時の電流は、
第1整流素子ではなく抵抗素子を介して流れることにな
る。このため、抵抗素子が、閉ループに流れる電流の大
きさを制限することになり、第1スイッチング手段に流
れる電流量を抑制することができる。
【0033】なお、第1整流素子を設けることなく、火
花放電の遮断時に容量素子に流れ込む電流を、抵抗素子
を通じて流すことも出来るが、その場合、一次巻線に流
れる電流(一次電流)の大きさが抵抗素子によって制限
されてしまうため、火花放電の遮断に必要な一次電流を
確保できず、火花放電の遮断が出来なくなる虞がある。
しかし、本発明(請求項5)の内燃機関用点火装置で
は、火花放電の遮断時の電流は第1整流素子を介して流
れるため、一次巻線に流れる電流の大きさが制限される
ことがなく、火花放電を遮断するために必要な一次電流
を確保することができる。
【0034】ところで、電流調整手段が例えば容量素子
で構成された場合、前述の抵抗素子の抵抗値を大きく設
定することで、容量素子に蓄積された電荷を放電する際
の電流値を小さく抑えることができ、抵抗素子での消費
電力(W=RI2 (R:抵抗値。I:電流値))が低減
される。例えば、抵抗値が2倍となると電流値は1/2
となるため、抵抗素子での消費電力は1/2となる。ま
た、同様に、第1スイッチング素子での消費電力を抑え
ることができ、第1スイッチング手段の発熱量を抑える
ことができる。
【0035】しかし、抵抗素子の抵抗値を過度に大きく
設定すると、容量素子の静電容量Cと抵抗素子の抵抗値
Rで決まる時定数τ(=RC)が大きくなり、容量素子
に蓄積された電荷を放電するために要する時間が長くな
る。このため、場合によっては、火花放電前の一次電流
通電中(3〜5msくらい)に容量素子に蓄積された電
荷を放電することができなくなり、火花放電遮断の機能
が低下してしまう。
【0036】そこで、電流調整手段が容量素子で構成さ
れた場合、前述の抵抗素子としては、請求項6に記載の
ように、抵抗素子の抵抗値が、1[Ω]〜100[Ω]
の範囲内となるように設定するとよい。このように抵抗
素子の抵抗値を設定することで、火花放電前の一次電流
通電中に容量素子に蓄積された電荷を放電することがで
き、火花放電遮断の機能を低下させることがなくなる。
【0037】また、一次巻線への通電を再開することで
火花放電を強制的に遮断し、その後再度火花放電が発生
しないように再通電による電流を減少させる内燃機関用
点火装置の他の構成としては、請求項7に記載のよう
に、電源装置と一次巻線との間に挿入される電源遮断用
手段と、電源遮断用手段と一次コイルとの間に接続点を
有する前記電流調整手段と、を備え、火花放電発生手段
は、点火コイルの一次巻線に接続され、該一次巻線に流
れる一次電流を通電・遮断する第1スイッチング手段を
備えたものを挙げることができる。
【0038】かかる構成では、第1スイッチング手段に
より一次巻線への通電・遮断を行うことで火花放電を発
生させた後、再度第1スイッチング手段をオン状態にし
て一次巻線への再通電を行うことで火花放電を強制的に
遮断する。このとき、一次巻線に通電(再通電を含む)
を行うために、電源装置と一次巻線との間に挿入される
電源遮断用手段は、電源装置と一次巻線とを接続するよ
うに、オン状態とされている必要がある。また、このと
き電源遮断用手段がオン状態であることから、電源遮断
用手段と一次巻線との間に接続点を有する電流調整手段
が充電されるようになっている。
【0039】そして、点火プラグの火花放電中に第1ス
イッチング手段をオン状態にして一次巻線への通電を再
開し、火花放電を遮断した直後の所定時間経過後に電源
遮断用手段をオフ状態とすると、これに伴い充電されて
いる電流調整手段から一次巻線への電流供給(放電)が
開始される。この電源遮断用手段のオフ状態が継続され
ると、この電流調整手段による一次巻線への電流供給が
火花放電を再度発生させないように減少していき、最終
的に一次巻線への再通電が終了することになる。このよ
うにして内燃機関用点火装置を構成する場合によって
も、点火プラグの火花放電の強制的な遮断を実現するこ
とができるのである。
【0040】ところで、請求項3から請求項7のいずれ
かに記載の電流調整手段が例えば容量素子で構成された
場合には、火花放電遮断を行うための再通電時の一次電
流の傾き(減衰時定数)は、点火コイルの一次巻線の巻
線抵抗と容量素子の静電容量によって決定されることに
なる。そして、火花放電遮断後に発生する二次電圧は、
火花放電遮断後の一次電流の傾きに依存し、傾きが大き
いほど(容量素子の静電容量が小さいほど)二次電圧は
大きくなる。
【0041】このため、容量素子の静電容量が小さく設
定すると、火花放電遮断後の二次電圧が過度に大きくな
り、一次電流の再通電後に再度火花放電が発生してしま
うことがあり、火花放電を遮断するという本発明の機能
が損なわれてしまうことになる。
【0042】これに対して、容量素子の静電容量を大き
く設定すると、火花放電遮断後の二次電圧が小さくなり
再度火花放電が発生することはないが、前述の抵抗値を
大きくした場合と同様に、時定数τ(=RC)が大きく
なり、容量素子に蓄積された電荷を放電するのに要する
時間が長くなる。このため、火花放電前の一次電流通電
中に電荷を放電することができなくなり、火花放電遮断
の機能が低下してしまう。
【0043】そこで、電流調整手段が容量素子で構成さ
れる場合には、請求項8に記載のように、容量素子の容
量が、1[μF]〜1000[μF]の範囲内となるよ
うに設定するとよい。このように容量素子の静電容量を
設定することで、火花放電遮断のための再通電後に再度
火花放電が発生することを防ぐことができる。また、火
花放電前の一次巻線通電中に容量素子に蓄積された電荷
を放電することができるため、火花放電遮断の機能が低
下することを防ぐことができる。なお、容量素子の静電
容量は、点火コイルの一次巻線の巻線抵抗によっても最
適値が異なるが、上記範囲内の静電容量値が、通常の点
火コイルの一次巻線との組み合わせで有効となる。
【0044】ところで、内燃機関の始動(特に寒冷地で
の冷間始動)直後のアイドリング運転(暖気運転)時に
は、混合気が不均質な状態であるとともに温度が低く、
最も着火性が劣る運転条件であるため、混合気への着火
を確実に行うには、火花エネルギを十分に点火プラグに
供給して火花放電を継続させる必要がある。
【0045】そこで、請求項9に記載のように、内燃機
関始動直後であって内燃機関が十分に暖気されるまでの
運転状態の間は、火花放電継続時間算出手段は火花放電
継続時間を最も長くなるよう算出する、あるいは火花放
電の強制的な遮断を行わないようにするとよい。
【0046】つまり、内燃機関始動直後であって内燃機
関が十分に暖気されるまでの運転状態の間は火花放電継
続時間を最も長く設定した上で火花放電遮断を行う、あ
るいは火花放電遮断を行わないことにより、火花エネル
ギを十分に確保し、混合気を確実に燃焼させることで失
火の発生を最小限に抑えるのである。なお、内燃機関が
十分に暖気された運転状態にあるか否かの判断は、冷却
水温度が規定値を超えたか否か、または/及び潤滑油温
度が規定値を超えたか否か等を判断することににより行
うことができる。具体的な一手法としては、冷却水温度
が50℃以上であるか否かを判断することが挙げられ
る。
【0047】次に、上述の請求項1から請求項9のいず
れかに記載の内燃機関用点火装置は、請求項10のよう
に、燃料として気体燃料を用いるガスエンジンで使用す
ることで、より効果を発揮する。気体燃料は、液体燃料
であるガソリン等に比べて絶縁性が高いため、相対的に
火花放電電圧が高くなる。従って、気体燃料を用いるガ
スエンジン向けの点火コイルとしての最大二次電圧発生
能力は、ガソリンエンジン向けのそれよりも高く設定し
ておく必要がある(例えば、ガソリンエンジン向けの点
火コイルとしての最大二次電圧が30〔kV〕以上とす
れば、ガスエンジン向けのそれは〔40kV〕以上に設
定)。そこで、点火コイルの設計としては、一次巻線と
二次巻線との一次/二次の巻き数比および巻き数を増や
すこと、或いは遮断するための一次電流値を上げること
が必要になる。
【0048】しかしながら、前述のように点火コイルを
設計することで、最大二次電圧発生能力は上昇するが、
同時に火花エネルギも増加してしまう問題がある。この
ことは、火花放電継続時間と最大二次電流の相反する関
係が関わっており、火花放電継続時間を短くするように
設計する(点火コイルの設計としては、一次/二次の巻
き数比を少なくする)と、二次電流のピーク値が大きく
なってしまい、エネルギ密度が上昇することにより点火
プラグの電極の消耗が促進されてしまう。また、二次電
流値を少なくするように設計する(点火コイルの設計と
しては、一次/二次の巻き数を多くする)と、二次電流
のピーク値は下がる代わりに火花放電継続時間が長くな
ってしまい、これまた点火プラグの電極の消耗に影響を
及ぼしてしまう。即ち、ガスエンジンではガソリンエン
ジンに比べ、点火プラグへの不要な火花エネルギの供給
量が多くなることが考えられ、点火プラグの寿命をより
短くしてしまう虞がある。
【0049】そこで上述した気体燃料を用いるガスエン
ジンに対して、本発明(請求項1から請求項9いずれ
か)の内燃機関用点火装置を適用すれば、火花エネルギ
の過剰な供給を防ぐとともに、最大二次電圧発生能力を
上昇させることができ、点火プラグの寿命を延ばすとい
った効果がより発揮されることになる。
【0050】さらに、本発明の内燃機関用点火装置は、
ガスエンジンの中でも定置型ガスエンジンに適用する場
合に有効となる。定置型ガスエンジンでは、燃費が性能
上重要なファクターであることから、低燃費化のためリ
ーン化が促進されている。このため、定置型ガスエンジ
ンでは、希薄空燃比での燃焼を効率良く行うべく、混合
気の乱流の流速を強くしなければならず、点火プラグの
電極間にて上述した多重放電が発生し易い。そこで、本
発明の内燃機関用点火装置を定置型ガスエンジンに適用
することで、多重放電の発生を抑制して点火プラグの電
極消耗(偏消耗)を抑えることができる。
【0051】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施例を図面と
共に説明する。まず、図1は、第1実施例の内燃機関用
点火装置の構成を表す電気回路図である。なお、本実施
例では、単気筒の内燃機関について説明を行なうが、本
発明は複数の気筒を備える内燃機関についても適用で
き、各気筒毎の点火装置の基本構成は同様である。ま
た、本実施例の内燃機関は、気体燃料を燃料として運転
される定置型ガスエンジンである。
【0052】図1に示すように、本実施例の内燃機関用
点火装置1は、放電用の電気エネルギ(例えば電圧12
V)を供給する電源装置(バッテリ)11と、内燃機関
の気筒に設けられた点火プラグ13と、一次巻線L1と
二次巻線L2とからなる点火コイル15と、一次巻線L
1と直列接続されたnpn型のトランジスタ17と、点
火プラグ13に火花放電を発生させるようトランジスタ
17を駆動する火花放電発生回路31と、火花放電を強
制的に遮断する火花放電遮断回路51と、点火制御のた
めに、火花放電発生回路31及び火花放電遮断回路51
に対して、第1指令信号Sa及び第2指令信号Sbを各
々出力する電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ)19
と、を備えている。
【0053】これらのうち、トランジスタ17は、点火
コイル15の一次巻線L1への通電・非通電を切り換え
る前述の半導体素子からなるスイッチング素子であり、
本実施例の内燃機関用点火装置1はフルトランジスタ型
の点火装置である。ここで、一次巻線L1の一端は、電
源装置11の正極に接続され、他端は、トランジスタ1
7のコレクタに接続されている。また、二次巻線L2の
一端は、電源装置11の正極に接続されている一次巻線
L1の一端に接続され、他端は、点火プラグ13の中心
電極13aに接続されている。そして、点火プラグ13
の外側電極13bは、電源装置11の負極と同電位のグ
ランドに接地され、トランジスタ17のベースは火花放
電発生回路31及び火花放電遮断回路51と接続され、
トランジスタ17のエミッタは、グランドに接地されて
いる。
【0054】また、火花放電発生回路31は、エミッタ
が、図示しない定電圧電源からの出力(電源電圧)Vc
が供給された電源ラインLVに接続され、エミッタ−ベ
ース間が、抵抗35にて互いに接続され、ベースが、抵
抗37を介してECU19の第1指令信号Saを出力す
る端子に接続され、コレクタが、抵抗39を介してトラ
ンジスタ17のベースに接続されたpnp型のトランジ
スタ33から構成されている。
【0055】この結果、ECU19から出力される第1
指令信号Saがローレベル(一般にグランド電位)であ
る場合には、火花放電発生回路31内のトランジスタ3
3がオン状態となって、電源ラインLVから抵抗39を
通ってトランジスタ17のベースに至る電流経路を形成
し、トランジスタ17にベース電流ibを流す。する
と、トランジスタ17は、オン状態となって、電源装置
11の正極側から点火コイル15の一次巻線L1を通っ
て電源装置11の負極側に至る、一次巻線L1の通電経
路を形成し、一次巻線L1に電流(一次電流)i1を流
す。
【0056】また、一次巻線L1に一次電流i1が流れ
ている状態で、第1指令信号Saがハイレベル(一般に
電源電圧Vc)になると、火花放電発生回路31内のト
ランジスタ33がターンオフし、トランジスタ17のベ
ースに至る電流経路を遮断する。この結果、トランジス
タ17もオフ状態となって、一次巻線L1への一次電流
i1の通電を停止させる。すると、点火コイル15の二
次巻線L2に点火用高電圧が発生し、これが点火プラグ
13に印加されることで、点火プラグ13の電極13a
−13b間に火花放電が発生する。
【0057】尚、点火コイル15は、一次巻線L1への
通電遮断により、点火プラグ13の中心電極13a側に
グランド電位よりも低い負の点火用高電圧を発生させる
ように構成されており、火花放電に伴い二次巻線L2に
流れる電流(二次電流)i2は、点火プラグ13の中心
電極13aから二次巻線L2を通って、一次巻線L1側
に流れる。また、二次巻線L2と一次巻線L1との接続
部分には、二次巻線L2から一次巻線L1側に電流が流
れるのを許容し、逆方向への電流の流れを阻止するため
に、ダイオード等からなる整流素子Dが設けられてお
り、この整流素子Dの動作によって、トランジスタ17
のターンオン時(一次巻線L1への通電開始時)に二次
巻線L2に電流が流れるのが阻止される。
【0058】図2は、第1指令信号Sa、第2指令信号
Sb、トランジスタ17のベース電流ib、点火プラグ
13の中心電極13aの電位Vp、及び、二次巻線L2
に流れる二次電流i2の各状態を表すタイムチャートで
あるが、時刻t1にて、第1指令信号Saをハイからロ
ーレベルに切り換え、点火コイル15の一次巻線L1に
電流(一次電流)i1を流し、その後、予め設定された
通電時間が経過した時刻t2にて、第1指令信号Saを
ローからハイレベルに切り換え、点火コイル15の一次
巻線L1への一次電流i1の通電を遮断すると、点火プ
ラグ13の中心電極13aに負の点火用高電圧が印加さ
れて、その電位Vpが急峻に低下し、点火プラグ13の
電極13a−13b間に火花放電が発生して、点火コイ
ル15の二次巻線L2に二次電流i2が流れることが判
る。また、時刻t1では、中心電極13aの電位Vpの
変化は見られるが、整流素子Dにより二次電流i2の流
れが阻止されることから、二次電流i2は流れていな
い。
【0059】次に、火花放電遮断回路51は、npn型
のトランジスタ53と、npn型のトランジスタ55
と、pnp型のトランジスタ57とを備える。そして、
トランジスタ53のベースは、ECU19の第2指令信
号Sbを出力する端子に接続され、エミッタは、グラン
ドに接地され、コレクタは、抵抗59を介して電源ライ
ンLVに接続されると共に、コンデンサ61及び抵抗6
3の直列回路を介して、トランジスタ55のベースに接
続されている。
【0060】また、トランジスタ55のエミッタは、グ
ランドに直接接地され、エミッタ−ベース間は、抵抗6
5にて互いに接続され、コレクタは、抵抗67及び抵抗
69の直列回路を介して、トランジスタ57のベースに
接続されている。そして、トランジスタ55のコレクタ
とトランジスタ57のベースとを接続する抵抗67及び
抵抗69の接続点には、一端がグランドに接地されたコ
ンデンサ71の他端が接続されている。
【0061】また、トランジスタ57のエミッタは、図
示しない定電圧電源からの出力(電源電圧)Vcが供給
された電源ラインLVに接続され、エミッタ−ベース間
は、抵抗73にて互いに接続されている。そして、トラ
ンジスタ57のコレクタは、コンデンサ77を介してグ
ランドに接地されると共に、ダイオード75及び前述の
抵抗39からなる直列回路を介して、トランジスタ17
のベースに接続されている。尚、ダイオード75は、ト
ランジスタ57のコレクタ側をアノード、抵抗39側を
カソードとして、トランジスタ57のコレクタと抵抗3
9との間に接続されている。
【0062】このように構成された火花放電遮断回路5
1においては、ECU19から出力される第2指令信号
Sbがハイレベルであれば、トランジスタ53がオン状
態となり、コンデンサ61のトランジスタ53側を接地
する。そして、この状態では、コンデンサ61を介して
トランジスタ55のベース側に信号が入力されないこと
から、トランジスタ55のベース電位は、抵抗65を介
してグランド電位に保持され、トランジスタ55はオフ
状態となる。この結果、トランジスタ55のコレクタ側
に設けられたコンデンサ71には、電源ラインLVから
抵抗73及び抵抗69を介して電源電圧Vcが印加さ
れ、コンデンサ71に、その容量と電源電圧Vcとで決
まる所定量の電荷が蓄積され、電流は流れないため、ト
ランジスタ57はオフ状態に保持される。
【0063】次に、第2指令信号Sbがハイからローレ
ベルに変化すると、トランジスタ53がオフ状態とな
り、コンデンサ61のトランジスタ53側には、抵抗5
9を介して電源電圧Vcが印加されることになるため、
コンデンサ61には、抵抗59,コンデンサ61,抵抗
63,抵抗65の経路で電流が流れ、トランジスタ55
のベース電位が上昇して、トランジスタ55がオン状態
となる。尚、コンデンサ61は、抵抗59,抵抗63,
抵抗65と共にハイパスフィルタ(微分回路)を構成す
るものであり、トランジスタ53がターンオフした直後
に一時的に電流を流し、トランジスタ55をオンさせる
が、コンデンサ61に所定の電荷が蓄積されると、電流
が流れなくなるため、トランジスタ55は再びオフ状態
となる。
【0064】そして、このようにトランジスタ55が一
時的にオン状態となると、トランジスタ55を介して、
コンデンサ71に蓄積された電荷が放電されると共に、
電源ラインLVから抵抗73,抵抗69,抵抗67及び
トランジスタ55の経路で電流が流れ、トランジスタ5
7のベース電位が低下して、トランジスタ57がオン状
態になる。
【0065】またこのようにトランジスタ57がオン状
態になると、電源ラインLVから、トランジスタ57,
ダイオード75及び抵抗39を介して、トランジスタ1
7のベースに至る経路で、トランジスタ17にベース電
流ibが流れ、トランジスタ17がオンする。従って、
火花放電遮断回路51は、第2指令信号Sbがハイから
ローレベルに変化した際、点火コイル15の一次巻線L
1に電流(一次電流)i1を流すことになる。また、こ
のとき、トランジスタ57を介して、そのコレクタ側に
設けられたコンデンサ77に電源電圧Vcが印加される
ことから、コンデンサ77に一定量の電荷が蓄積され
る。
【0066】しかし、火花放電遮断回路51において、
第2指令信号Sbがハイからローレベルに変化した際
に、トランジスタ55がオン状態になるのは、一時的で
あり、その後、トランジスタ55がオフ状態となり、コ
ンデンサ71に、コンデンサ71の容量と抵抗73及び
抵抗69の抵抗値とで決まる一定の時定数にて、所定量
の電荷が蓄積されると、トランジスタ57がオフ状態と
なる。そのため、第2指令信号Sbがハイからローレベ
ルに変化した際には、一定時間だけ、トランジスタ57
がオン状態となって、一定時間経過後、トランジスタ5
7がオフ状態となると、コンデンサ77に蓄積された電
荷によって、トランジスタ17にベース電流ibが供給
されることになる。
【0067】従って、第2指令信号Sbがハイからロー
レベルに変化したときには、その後、一定時間だけ、ト
ランジスタ57がオン状態となり、トランジスタ57が
オフした後は、コンデンサ77に蓄積された電荷によっ
て、トランジスタ17にベース電流ibが供給されるこ
とになる。
【0068】この結果、図2に示すように、時刻t2に
て、第1指令信号Saをローからハイレベルに反転させ
て、点火プラグ13の電極13a−13b間に火花放電
を発生させると同時に、第2指令信号Sbをローからハ
イレベルに反転させ、その後、所定時間経過した時刻t
3にて、第2指令信号Sbをハイからローレベルに変化
させると、最初は、火花放電遮断回路51内のトランジ
スタ57を介して、トランジスタ17にベース電流ib
が供給され、その後、ベース電流ibの供給源がコンデ
ンサ77に切り変わり、コンデンサ77に蓄積された電
荷が放電されるに従い、ベース電流ibが緩やかに減少
し、最終的には、ベース電流ibが零になる(時刻t
4)。
【0069】また、点火コイル15の一次巻線L1に流
れる一次電流i1は、トランジスタ17のベース電流i
bに比例する(詳しくはベース電流ibをhFE倍した電
流値となる(hFE:電流増幅率))ことから、火花放電
遮断回路51を用いることにより、点火コイル15の一
次巻線L1を通電し、しかも、その通電電流量を、一旦
上昇させた後、緩やかに減少させることができるように
なる。尚、このように一次電流i1を緩やかに減少させ
ることができるのは、火花放電遮断回路51にコンデン
サ77を設けているためであり、本実施例では、このコ
ンデンサ77が特許請求の範囲に記載の電流調整手段
(容量素子)として機能する。
【0070】そして、火花放電遮断回路51を用いた点
火コイル15の一次巻線L1への通電を、図2に示すよ
うに、点火プラグ13の中心電極13aの電位Vpが充
分低く、電極13a−13b間で火花放電が生じている
ときに行うようにすれば、点火プラグ13の中心電極1
3aの電位Vpを上昇させて、火花放電を強制的に遮断
させることができる。このことから、本実施例では、E
CU19が、第1指令信号Saの切換タイミングを制御
することにより、点火プラグ13の火花放電タイミング
(換言すれば点火時期)を制御するだけでなく、第2指
令信号Sbの切換タイミングを制御することによって、
点火プラグ13による火花放電の終了時期を制御するこ
とで、混合気を燃焼させるために点火プラグ13に供給
する火花エネルギを必要最小限に抑え、点火プラグ13
の耐久性を向上するようにしている。
【0071】以下、このようにECU19において実行
される点火のための制御処理、及び火花放電を遮断する
ための火花放電遮断処理を説明する。なお、ECU19
は、内燃機関の火花放電発生時期、燃料噴射量、アイド
ル回転数等を総合的に制御するためのものであり、以下
に説明する点火制御や火花放電遮断処理のために、別
途、内燃機関の吸入空気量(吸気管圧力),回転速度
(エンジン回転数)、スロットル開度、冷却水温、吸気
温等、機関各部の運転状態を検出する運転状態検出処理
を行っている。
【0072】また、図3に示す制御処理は、例えば、内
燃機関の回転角度(クランク角)を検出するクランク角
センサからの信号に基づき、内燃機関が、吸気,圧縮,
燃焼,排気を行う1燃焼サイクルに1回の割合で実行さ
れる。そして、内燃機関が始動されて制御処理が開始さ
れると、まずS110(Sはステップを表す)にて、別
途実行される運転状態検出処理にて検出された内燃機関
機関の運転状態を読込み、S120にて、その読み込ん
だ運転状態に基づき、火花放電発生時期(所謂点火時
期)tsおよび火花放電継続時間Ttを算出する。
【0073】なお、このS110では、別途内燃機関が
十分に暖気された運転状態であるか否かを判断してい
る。具体的には、内燃機関の冷却水温度が50℃を超え
たか否かを判断している。そして、冷却水温度が50℃
以下である場合には、後述する火花放電遮断のための処
理を行わないようにして、火花放電を点火コイルに蓄積
されたエネルギの減少に伴い自然に終了させるようにす
る。このようにすることで、冷間始動後の暖気運転時の
ように冷却水温度が低く、着火性の劣る運転状態であっ
ても失火させることなく確実に混合気を燃焼させるので
ある。
【0074】S120にあっては、火花放電発生時期t
sが、例えば、内燃機関の吸入空気量と回転速度をパラ
メータとするマップ若しくは計算式を用いて制御基準値
を求め、これを冷却水温,吸気温等に基づき補正する、
といった従来から知られている手順で算出される。
【0075】また、火花放電継続時間Ttは、内燃機関
のエンジン回転数、又は/およびスロットル開度や吸気
管負圧、吸入空気量等を用いて算出されるエンジン負荷
を含む運転状態に基づいて、混合気を燃焼させるのに要
する火花エネルギが大きい運転条件下(低回転低負荷時
等)には長く、火花エネルギが小さくてよい運転条件下
(高回転高負荷時等)には短くなるように、予め設定さ
れたマップ若しくは計算式を用いて算出される。本実施
例では、エンジン回転数とエンジン負荷をパラメータと
する第1マップを用いて、最適な火花放電継続時間Tt
を算出する。
【0076】ここで、火花放電継続時間Ttの算出に用
いる第1マップの一例を、図18に示す。図18に示す
第1マップは、エンジン回転数とエンジン負荷をパラメ
ータとして火花放電継続時間Ttを算出するためのマッ
プである。そして、図18に示すように、内燃機関の高
回転高負荷時に火花放電継続時間Ttが短くなるよう火
花放電継続時間Ttが第1マップにて設定されている。
なお、低回転低負荷時には、火花放電継続時間Ttは図
18に示すように火花放電継続時間Ttが最も長くなる
よう(例えば、火花放電が自然に終了するよう)算出
(設定)される。
【0077】次に、S130では、S120にて算出し
た火花放電発生時期tsに基づき、火花放電発生時期t
sに対して、予め設定された一次巻線L1の通電時間だ
け早い一次巻線L1の通電開始時期を求め、通電開始時
期に達した時点(図2に示す時刻t1)で、第1指令信
号Saをハイからローレベルに変化させる。
【0078】尚、S130の処理により、第1指令信号
Saをハイからローレベルに切り換えると、火花放電発
生回路31が、トランジスタ17をオンさせるため、点
火コイル15の一次巻線L1に一次電流i1が流れる。
また、火花放電発生時期tsまでの一次巻線L1の通電
時間は、一次巻線L1への通電によって、内燃機関のあ
らゆる運転条件下で混合気を燃焼させるのに要する最大
の火花エネルギを点火コイル15に蓄積させるのに要す
る時間であり、予め設定されている。
【0079】そして、続くS140では、クランク角セ
ンサからの検出信号に基づき、S120で算出した火花
放電発生時期tsに達したか否かを判断し、否定判定さ
れた場合には、同ステップを繰り返し実行することで、
火花放電発生時期tsになるまで待機する。S140に
て、火花放電発生時期tsに達したと判断されると(図
2に示す時刻t2)、S150に移行する。
【0080】S150では、図2に示したように、第1
指令信号Saをローからハイレベルに反転させると同時
に、第2指令信号をローからハイレベルに反転させる。
この結果、火花放電発生回路31の動作によって、トラ
ンジスタ17がターンオフして、一次電流i1が遮断さ
れ、点火コイル15の二次巻線L2に点火用高電圧が発
生して、点火プラグ13に火花放電が発生する。また、
火花放電遮断回路51側では、トランジスタ53がオン
状態となり、一次電流i1を再通電可能な待機状態とな
る。
【0081】また次に、S160では、S140にて火
花放電発生時期tsとなった後、S120で求めた火花
放電継続時間Ttが経過したか否かを判断し、否定判定
された場合には、同ステップを繰り返し実行すること
で、火花放電継続時間Ttが経過するのを待つ。そし
て、S160にて、火花放電継続時間Ttが経過したと
判断されると(図2に示した時刻t3)、S170に移
行して、第2指令信号Sbをハイからローレベルに反転
した後、本処理を一旦終了する。
【0082】この結果、火花放電遮断回路51の動作に
よって、トランジスタ17がオンして、点火コイル15
の一次巻線L1は再通電されることになる。そして、図
2に示したように、再通電時には一次電流i1が一旦上
昇するものの、火花放電遮断回路51の回路定数で決ま
る一定時間が経過すると、コンデンサ77に蓄積された
電荷の放電によって、一次電流i1が緩やかに減少し、
時刻t4で一次電流i1が遮断されることになる。そし
て、本処理は、次の燃料サイクルにおいても再び起動さ
れて、上述した処理を実行する。
【0083】本実施例においては、内燃機関の運転状態
に基づき火花放電継続時間Ttを算出するS120の処
理が、特許請求の範囲に記載の火花放電継続時間算出手
段に相当する。また、火花放電発生回路31およびトラ
ンジスタ17が、特許請求の範囲における火花放電発生
手段に相当に相当する。
【0084】以上説明したように、本実施例の内燃機関
用点火装置1においては、火花放電発生回路31を介し
てトランジスタ17をオン・オフさせることにより、点
火コイル15の二次巻線L2から点火プラグ13に点火
用高電圧を印加させて、点火プラグ13の電極13a−
13b間に火花放電を発生させた後、内燃機関の運転状
態に基づき求めた火花放電継続時間Ttとなるように、
火花放電遮断回路51、トランジスタ17を介して、点
火コイル15の一次巻線L1に再度一次電流i1を流
し、火花放電を強制的に遮断する。
【0085】このため、本実施例によれば、火花放電前
の点火コイル15の一次巻線L1への通電時間を充分長
くすることにより、二次巻線L2に発生させる点火用高
電圧を、内燃機関のあらゆる運転条件下で確実に点火す
ることができる大きさの電圧にした状態にすることがで
きる。さらには、火花を強制的に遮断して火花放電継続
時間を制御することにより、点火プラグ13に供給され
る火花エネルギを必要最低限に抑えることができる。そ
して、このように火花放電継続時間を最適に制御するこ
とにより、多重放電の発生も抑制できることから、点火
プラグ13の中心電極13aおよび外側電極13bの消
耗を抑え、点火プラグ13の寿命を延ばすことができ
る。
【0086】また、本実施例では、火花放電を強制遮断
するために、火花放電発生後に火花放電遮断回路51を
動作させて、点火コイル15の一次巻線L1への通電を
再開し、しかもその通電再開後には、一次電流i1を緩
やかに減少させている。つまり、火花放電遮断回路51
を用いて、点火用のスイッチング素子(トランジスタ1
7)のオン・オフ状態を切り換えるだけで、極めて簡単
に火花放電を強制遮断することができると共に、火花放
電強制遮断後に、点火コイル15の二次巻線L2に高電
圧が発生するのも防止できる。また、火花放電遮断する
ためにトランジスタ17をオンする時間は、火花放電遮
断回路51の回路定数によって制限され、そのときトラ
ンジスタ17に流れる一次電流i1は、緩やかに減少す
ることから、火花放電遮断するためにトランジスタ17
に加わる負担を軽減し、トランジスタ17の耐久性が著
しく低下してしまうことはない。
【0087】次に、本実施例による効果を確認するた
め、実際に内燃機関を用いて、火花放電継続時間Ttを
変化させ、点火コイル15の二次巻線L2に流れる二次
電流i2がどのように変化するかを測定した。測定に
は、燃焼としてメタンガスを主成分とする都市ガス13
Aを用いるガスエンジンを使用し、回転数を2000
[rpm]として運転した場合の、二次電流i2の変化
を、(a)火花放電を強制遮断しない場合、(b)火花
放電継続時間Ttが1.0[mS]の場合、(c)火花
放電継続時間Ttが0.5[mS]の場合、の3条件下
で測定を行った。また、本実施例において、電流調整手
段として機能するコンデンサ77の容量は、6.8[μ
F]とした。図4に、その測定結果のグラフを示す。
【0088】(a)火花放電を強制遮断しない場合 この場合には、火花放電発生後、二次電流i2が流れは
じめ、時間経過と共に徐々に小さくなり、火花放電発生
からおよそ1.5[mS]経過した後に0[mA]とな
り、火花放電は自然に遮断されている。
【0089】このとき、火花放電発生から0.5[m
S]経過するまでの間は、二次電流i2は安定した変化
をしているが、火花放電発生から0.5[mS]経過し
た後は、二次電流i2は乱れた状態となり、特に、火花
放電が自然遮断される直前では、二次電流i2は大きく
乱れており、多重放電が発生していることが判る。
【0090】(b)火花放電継続時間Ttが1.0[m
S]の場合 この場合、二次電流i2は、火花放電発生から1.0
[mS]経過するまでは、条件(a)とほぼ同等の変化
をしており、火花放電が強制遮断された後(火花放電発
生から1.0[mS]経過した後)は、二次電流i2は
0[mA]となっている。これにより、条件(a)で二
次電流i2が大きく乱れていた時間帯(火花放電発生か
ら1.0[mS]経過した時点より後の時間帯)につい
て、条件(b)では、二次電流i2が流れておらず、多
重放電が発生していないことが判る。
【0091】(c)火花放電継続時間Ttが0.5[m
S]の場合 この場合、二次電流i2は、火花放電発生から0.5
[mS]経過するまでは、条件(a)とほぼ同等の変化
をしており、火花放電が強制遮断された後の時間帯(火
花放電発生から0.5[mS]経過した時点より後の時
間帯)について、条件(c)では、二次電流i2は0
[mA]となっている。これにより、条件(a)および
条件(b)で二次電流i2が乱れていた時間帯(火花放
電発生から0.5[mS]経過した時点よりも後の時間
帯)について、条件(c)では、二次電流i2が流れて
おらず、多重放電が発生していないことが判る。
【0092】これらのことから、本測定に使用したガス
エンジンは、回転数が2000[rpm]という運転条
件では、条件(c)のように、火花放電継続時間Ttを
0.5[mS]に設定することで、多重放電の発生を抑
えることが可能になる。また、本ガスエンジンは、回転
数が2000[rpm]で運転されている状態では、火
花放電継続時間Ttを0.2[mS]まで短くした場合
においても、運転が可能であることが確認できている。
このような、実験結果を基に、前述したS120での火
花放電発生時期tsおよび火花放電継続時間Ttを設定
するために使用するマップ(例えば、図18参照)を作
成することができる。
【0093】ところで、上述したS120では、火花放
電継続時間Ttの算出にあたり、多重放電の発生をさら
に確実に抑えるべく火花放電継続時間Ttを補正するよ
うにしてもよい。具体的には、火花放電が発生してから
多重放電が発生するまでの正常放電が行われる時間(正
常放電時間)よりも、第1マップから算出した火花放電
継続時間Ttが長い場合には、火花放電継続時間Ttに
正常放電時間以下の短い時間を設定するのである。
【0094】なお、正常放電時間は運転条件によって変
化することから、例えば、実際の内燃機関において摩耗
限界に達した点火プラグにおける多重放電発生時期(多
重放電が発生する二次電流値)を運転条件別に予め調査
しておき、その調査結果に基づいて、運転条件を表す数
値をパラメータとして正常放電時間を算出する第2マッ
プを用意し、この第2マップから正常放電時間を算出す
る。このとき運転条件を表す数値パラメータとしては、
例えば、混合気の乱流の流速に比例するエンジン回転数
またはエンジン負荷、さらには点火プラグのプラグギャ
ップ長に比例する内燃機関の運転時間積算値を用いると
よい。なお、多重放電の発生はプラグギャップ長が拡大
するほど発生し易いことから、内燃機関の運転時間積算
値をパラメータとして用いることができるのである。
【0095】そして、上記予め用意された調査結果に基
づいて第2マップを設定し、この第2マップに基づき算
出された正常放電時間を用いて、多重放電が発生しない
ように第1マップにて算出された火花放電継続時間Tt
を補正する。ただし、多重放電が発生しないように設定
した火花放電継続時間Ttが、混合気の着火に必要とな
る最短の火花放電継続時間よりも短くなる場合には、多
重放電の抑制よりも着火性を優先して、混合気の着火に
必要となる最短の火花放電継続時間を火花放電継続時間
Ttに設定するようにする。
【0096】以上、本発明の第1実施例について説明し
たが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、
種々の態様を採ることができる。そこで、本発明の第2
実施例として、火花放電を強制遮断するために一次電流
i1を再通電するのに使用するスイッチング素子を、点
火用のスイッチング素子(トランジスタ17)とは別に
設けたものについて説明する。図5は、第2実施例の内
燃機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。な
お、以下の説明において、第1実施例と同じ構成要素に
ついては、同一番号(符号)を付与して説明する。
【0097】図5に示すように、第2実施例の内燃機関
用点火装置1は、放電用の電気エネルギ(例えば電圧1
2V)を供給する電源装置(バッテリ)11と、内燃機
関の気筒に設けられた点火プラグ13と、一次巻線L1
と二次巻線L2とからなる点火コイル15と、一次巻線
L1と直列接続されたnpn型のトランジスタ17と、
火花放電を強制的に遮断する火花放電遮断回路51と、
トランジスタ17及び火花放電遮断回路51に対して、
第1指令信号Sa及び第2指令信号Sbを各々出力する
電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ)19と、を備えて
いる。
【0098】これらのうち、トランジスタ17は、点火
コイル15の一次巻線L1への通電・非通電を切り換え
る前述の半導体素子からなるスイッチング素子であり、
本第2実施例の内燃機関用点火装置1は、第1実施例と
同じフルトランジスタ型の点火装置である。
【0099】ここで、一次巻線L1の一端は、電源装置
11の正極に接続され、他端はトランジスタ17のコレ
クタおよび火花放電遮断回路51に接続されている。ま
た、二次巻線L2の一端は、電源装置11の正極に接続
されている一次巻線L1の一端に接続され、他端は点火
プラグ13の中心電極13aに接続されている。そし
て、点火プラグ13の外側電極13bは、電源装置11
の負極と同電位のグランドに接地され、トランジスタ1
7のベースはECU19の第1指令信号Saを出力する
端子と接続され、トランジスタ17のエミッタは、グラ
ンドに接地されている。
【0100】このため、ECU19から出力される第1
指令信号Saがローレベルである場合には、トランジス
タ17はオフ状態となり、トランジスタ17を通じて一
次巻線L1に電流が流れることはない。また、第1指令
信号Saがハイレベルである場合には、トランジスタ1
7はオン状態となり、電源装置11の正極側から点火コ
イル15の一次巻線L1を通って電源装置11の負極側
に至る、一次巻線L1の通電経路を形成し、一次巻線L
1に一次電流i1を流す。
【0101】したがって、第1指令信号Saがハイレベ
ルであるために、一次巻線L1に一次電流i1が流れて
いる状態で、第1指令信号Saがローレベルになると、
トランジスタ17がターンオフし、一次巻線L1への一
次電流i1の通電を停止させる。すると、点火コイル1
5の二次巻線L2に点火用高電圧が発生し、これが点火
プラグ13に印加されることで、点火プラグ13の電極
13a−13b間に火花放電が発生する。
【0102】尚、点火コイル15は、一次巻線L1への
通電遮断により、点火プラグ13の中心電極13a側に
グランド電位よりも低い負の点火用高電圧を発生させる
ように構成されており、火花放電に伴い二次巻線L2に
流れる二次電流i2は、点火プラグ13の中心電極13
aから二次巻線L2を通って、一次巻線L1側に流れ
る。また、二次巻線L2と一次巻線L1との接続部分に
は、二次巻線L2から一次巻線L1側に電流が流れるの
を許容し、逆方向への電流の流れを阻止するために、ダ
イオード等からなる整流素子Dが設けられており、この
整流素子Dの動作によって、トランジスタ17のターン
オン時(一次巻線L1への通電開始時)に二次巻線L2
に電流が流れるのが阻止される。
【0103】図6は、図5に示す回路図における、第1
指令信号Sa、第2指令信号Sb、点火プラグ13の中
心電極13aの電位Vp、点火コイル15の一次巻線L
1に流れる一次電流i1、の各状態を表すタイムチャー
トである。ここで、時刻t11にて、第1指令信号Sa
をローからハイレベルに切り換え、点火コイル15の一
次巻線L1に一次電流i1を流し、その後、予め設定さ
れた通電時間が経過した時刻t12にて、第1指令信号
Saをハイからローレベルに切り換え、点火コイル15
の一次巻線L1への一次電流i1の通電を遮断すると、
点火プラグ13の中心電極13aに負の点火用高電圧が
印加されて、その電位Vpが急峻に低下し、点火プラグ
13の電極13a−13b間に火花放電が発生している
ことが判る。
【0104】次に、火花放電遮断回路51は、エミッタ
が接地され、ベースがECU19の第2指令信号Sbを
出力する端子と接続され、コレクタがコンデンサ87を
介して一次巻線L1と接続されるとともに、ダイオード
83を介して接地されたnpn型のトランジスタ85に
て構成される。そして、ダイオード83は、アノードが
接地され、カソードがトランジスタ85のコレクタに接
続されている。
【0105】そのため、ECU19から出力される第2
指令信号Sbがローレベルである場合には、火花放電遮
断回路51内のトランジスタ85がオフ状態となり、火
花放電遮断回路51が、一次巻線L1に一次電流i1を
流すことはない。また、第2指令信号Sbがハイレベル
である場合、火花放電遮断回路51内のトランジスタ8
5がオン状態となり、電源装置11の正極側から点火コ
イル15の一次巻線L1を通って電源装置11の負極側
に至る、一次巻線L1の通電経路を形成し、一次巻線L
1に一次電流i1を流す。そして、通電経路に存在する
コンデンサ87に電荷が蓄積されるに従い、一次電流i
1は緩やかに減少し、コンデンサ87に、一次巻線L1
のインダクタンスとコンデンサ87の容量とで決まる一
定の時定数にて、所定量の電荷が蓄積されると、コンデ
ンサ87に電流が流れなくなるため、一次電流i1を遮
断する。
【0106】ただし、コンデンサ87が一次巻線L1側
に接続された電極を正極性として完全に充電されている
場合、第2指令信号Sbがハイレベルであっても、一次
電流i1は流れないため、予めコンデンサ87に蓄積さ
れた電荷を放電させておく必要があり、ここでは、次の
点火用高電圧を発生させるべく再度第1指令信号Saを
ハイレベルにする、すなわち、トランジスタ17をオン
状態とすることで、コンデンサ87に蓄積された電荷を
放電させることができる。
【0107】したがって、火花放電遮断回路51のコン
デンサ87が放電された状態で、第2指令信号Sbをロ
ーレベルからハイレベルに変化したときには、トランジ
スタ85がターンオンして、一次巻線L1に一次電流i
1を流し、時間経過によって、コンデンサ87に電荷が
蓄積されると共に、一次電流i1を緩やかに減少させて
いき、最終的には一次電流i1を遮断するように動作す
る。なお、このように一次電流i1を緩やかに減少させ
ることができるのは、火花放電遮断回路51にコンデン
サ87を設けているためであり、本第2実施例では、こ
のコンデンサ87が特許請求の範囲に記載の電流調整手
段(容量素子)として機能する。
【0108】ここで、図6において、時刻t13にて、
第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbをそれぞれロ
ーからハイレベルに切り換えると、トランジスタ17が
ターンオンして、電源装置11の正極側から点火コイル
15の一次巻線L1、トランジスタ17を通って電源装
置11の負極側に至る、一次巻線L1の通電経路を形成
し、一次巻線L1に一次電流i1が通電されるととも
に、コンデンサ87が放電される。そして、時刻t14
にて、第1指令信号Saをハイからローレベルに切り換
えると、トランジスタ17がターンオフするため、一次
巻線L1の通電経路は、コンデンサ87、トランジスタ
85を通って形成され、コンデンサ87に電荷が蓄積さ
れるに従い、一次電流i1が緩やかに減少し、コンデン
サ87に所定量の電荷が充電されると、一次電流i1を
遮断する。
【0109】このことから、ECU19、トランジスタ
17及び火花放電遮断回路51を用いた点火コイル15
の一次巻線L1への通電を、図6に示すように、点火プ
ラグ13の中心電極13aの電位Vpが充分低いため
に、電極13a−13b間で火花放電が生じている場合
に行うようにすれば、点火プラグ13の中心電極13a
の電位Vpを上昇させて、火花放電を強制的に遮断させ
ることが出来る。
【0110】したがって、本第2実施例では、ECU1
9が、第1指令信号Saの切換タイミングを制御するこ
とにより、点火プラグ13の火花放電タイミング(換言
すれば点火時期)を制御するだけでなく、第1指令信号
Sa及び第2指令信号Sbの切換タイミングを制御する
ことにより、点火プラグ13による火花放電の終了時期
を制御することで、第1実施例と同様に、混合気を燃焼
させるために点火プラグ13に供給する火花エネルギを
必要最小限に抑えることが可能となる。
【0111】以下、このようにECU19において実行
される点火のための制御処理、及び火花放電を遮断する
ための火花放電遮断処理を説明する。なお、ECU19
は、第1実施例と同様に、内燃機関を総合的に制御する
ためのものであり、別途、内燃機関の吸入空気量(吸気
管圧力),回転速度(エンジン回転数)、スロットル開
度、冷却水温、吸気温等、機関各部の運転状態を検出す
る運転状態検出処理を行っている。
【0112】また、図7に示す点火制御のための制御処
理(点火制御処理)は、例えば、内燃機関の回転角度
(クランク角)を検出するクランク角センサからの信号
に基づき、内燃機関が、吸気、圧縮、燃焼、排気を行う
1サイクルに1回の割合で実行される。
【0113】そして、この処理が開始されると、まず、
S310(Sはステップを表す)にて、別途実行される
運転状態検出処理にて検出された機関の運転状態を読込
み、S320にて、その読み込んだ運転状態に基づき、
火花放電発生時期(いわゆる点火時期)tsおよび火花
放電継続時間Ttを算出する。なお、火花放電発生時期
tsおよび火花放電継続時間Ttは、第1実施例と同様
に、内燃機関の状態を表す数値をパラメータとして、マ
ップ若しくは計算式を用いて算出される(火花放電継続
時間Ttの算出にあたって用いられるマップの一例とし
ては、図18参照)。
【0114】次に、S330では、S320にて算出し
た火花放電発生時期tsに基づき、火花放電発生時期t
sに対して、予め設定された一次巻線L1の通電時間だ
け早い一次巻線L1の通電開始時期を求め、通電開始時
期に達した時点(図6に示す時刻t11)で、第1指令
信号Saをローからハイレベルに変化させる。
【0115】S330の処理により、第1指令信号Sa
をローからハイレベルに切り換えると、トランジスタ1
7をオン状態にするため、点火コイル15の一次巻線L
1に一次電流i1が流れる。また、火花放電発生時期t
sまでの一次巻線L1の通電時間は、一次巻線L1への
通電によって、内燃機関のあらゆる運転条件下で混合気
を燃焼させるのに要する最大の火花エネルギを点火コイ
ル15に蓄積させるのに要する時間であり、予め設定さ
れている。
【0116】そして、S340では、クランク角センサ
からの検出信号に基づき、S320で算出した火花放電
発生時期tsに達したか否かを判断し、否定判定された
場合には、同ステップを繰り返し実行することで、火花
放電発生時期tsになるまで待機する。S340にて、
火花放電発生時期tsに達したと判断されると(図6に
示す時刻t12)、S350に移行する。
【0117】S350では、図6に示したように、第1
指令信号Saをハイからローレベルに反転させる。この
結果、トランジスタ17がターンオフして、一次電流i
1が遮断され、点火コイル15の二次巻線L2に点火用
高電圧が誘導され、点火プラグ13に火花放電が発生す
る。
【0118】続いて、S360では、S340にて火花
放電発生時期tsに達したと判断された後、S320で
求めた火花放電継続時間Ttが経過したか否かを判断
し、否定判定された場合には、同ステップを繰り返し実
行することで火花放電継続時間Ttが経過するまで待機
する。そして、S360にて、火花放電継続時間Ttが
経過したと判断されると(図6に示した時刻t13)、
S370に移行し、第1指令信号Saおよび第2指令信
号Sbをそれぞれローからハイレベルに切り換える。
【0119】この結果、第1指令信号Saがハイレベル
になると、トランジスタ17がオン状態となり、一次巻
線L1は再び通電されるので、二次巻線L2の誘導電圧
の発生を抑え、点火プラグ13での火花放電が強制的に
遮断されることになる。また、第2指令信号Sbがハイ
レベルになると、トランジスタ85がオン状態となる。
【0120】続いて、S380では、S360にて火花
放電継続時間Ttが経過したと判断された後、予めEC
U19に設定してある第1指令信号Saのハイレベル継
続時間を経過したか否かを判断し、否定判定された場合
には、同ステップを繰り返し実行することで待機する。
そして、S380にて、第1指令信号Saのハイレベル
継続時間が経過したと判断されると(図6に示した時刻
t14)、S390に移行する。本第2実施例では、第
1指令信号Saのハイレベル継続時間は、機関の運転状
態に関わらず、予め設定された固定値としているが、運
転状態に合わせて適切な値に設定するようにしてもよ
い。
【0121】そして、S390の処理により、第1指令
信号Saをハイからローレベルに切り換えると、トラン
ジスタ17がオフ状態となり、一次巻線L1からトラン
ジスタ17のコレクタに流れ込んでいた電流が遮断され
る。しかし、トランジスタ85がオン状態であるため、
一次巻線L1から、コンデンサ87を介し、トランジス
タ85に電流が流れるため、一次電流i1は継続して流
れる。このあと、時間経過と共に、コンデンサ87に電
荷が蓄積されるに従い、一次電流i1は緩やかに減少し
ていき、コンデンサ87に所定量の電荷が充電される
と、一次電流i1は遮断される。
【0122】ただし、コンデンサ87が、一次巻線L1
側に接続された電極を正極性として完全に充電されてい
る場合、トランジスタ85がオン状態にあっても(第2
指令信号Sbがハイレベルであっても)、一次電流i1
は流れないため、予めコンデンサ87に蓄積された電荷
を放電させておく必要がある。そこで、本第2実施例で
は、点火用高電圧を発生させるための第1指令信号Sa
をハイレベルにする、すなわち、トランジスタ17をオ
ン状態とすることで(S330の処理時に)、コンデン
サ87に電荷が充電されている場合のその電荷を放電さ
せることができる。
【0123】そして、S400では、S360にて火花
放電継続時間Ttが経過したと判断された後、予めEC
U19に設定してある第2指令信号Sbのハイレベル継
続時間を経過したか否かを判断し、否定判定された場合
には、同ステップを繰り返し実行することで待機する。
そして、S400にて、第2指令信号Sbのハイレベル
継続時間が経過したと判断されると(図6に示した時刻
t15)、S410に移行する。本第2実施例では、第
2指令信号Sbのハイレベル継続時間は、内燃機関の運
転状態に関わらず、予め設定された固定値としている
が、運転状態に合わせて適切な値に設定するようにして
もよい。
【0124】そして、S410の処理により、第2指令
信号Sbをハイからローレベルに切り換えると、トラン
ジスタ85がオフ状態となり、本処理が終了する。ここ
で、第2指令信号Sbのハイレベル継続時間は、コンデ
ンサ87が充電されるまでの時間と同程度に設定されて
おり、一次電流i1は十分小さくなっているか、あるい
は遮断されており、S410の処理によって、一次電流
i1が変化して、火花放電を発生させることはない。
【0125】尚、本実施例においては、内燃機関の運転
状態に基づき火花放電継続時間Ttを算出するS320
の処理が、特許請求の範囲に記載の火花放電継続時間算
出手段に相当し、トランジスタ17が第1スイッチング
手段に相当する。また、トランジスタ85が第2スイッ
チング手段に相当し、そしてこの第2スイッチング手段
に直列に接続されるコンデンサ87と当該第2スイッチ
ング手段とを少なくとも含む火花放電遮断回路51が再
通電用回路に相当する。
【0126】以上説明したように、第2実施例の内燃機
関用点火装置1においては、ECU19の指令によって
トランジスタ17をオン・オフさせることにより、点火
コイル15の二次巻線L2から点火プラグ13に点火用
高電圧を印加させて、点火プラグ13の電極13a−1
3b間に火花放電を発生させた後、内燃機関の運転状態
に基づき求めた火花放電継続時間Ttとなるように、ト
ランジスタ17および火花放電遮断回路51(加えてト
ランジスタ85)によって、点火コイル15の一次巻線
L1に再度一次電流i1を流すことにより、火花放電を
強制的に遮断している。
【0127】したがって、第2実施例の内燃機関用点火
装置によれば、火花放電継続時間を制御することが可能
となり、第1実施例の内燃機関用点火装置と同様の効果
を発揮することが出来る。また、第2実施例は、第1実
施例に比べ、回路構成要素が少なく単純であるため、用
途に合わせて回路の特性を変更する際に、各回路構成要
素の値の決定が容易になるという利点がある。
【0128】さらに、第2実施例では、一次巻線L1に
流れる一次電流i1を、2つのトランジスタに分けて流
す構成であるため、1つのトランジスタに流す構成であ
る第1実施例に比べ、トランジスタ1個当りの通電時間
が短くなり、トランジスタへの負担をさらに軽減するこ
とが可能となる。
【0129】さらに、本発明の第3実施例の内燃機関用
点火装置について説明する。図8は、第3実施例の内燃
機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。なお、
以下の説明において、第2実施例と同じ構成要素につい
ては、同一番号(符号)を付与して説明する。
【0130】図8に示すように、第3実施例の内燃機関
用点火装置1は、放電用の電気エネルギ(例えば電圧1
2V)を供給する電源装置(バッテリ)11と、内燃機
関の気筒に設けられた点火プラグ13と、一次巻線L1
と二次巻線L2とからなる点火コイル15と、一次巻線
L1と直列接続されたnpn型のトランジスタ17と、
火花放電を強制的に遮断する火花放電遮断回路51と、
トランジスタ17及び火花放電遮断回路51に対して、
第1指令信号Sa及び第2指令信号Sbを各々出力する
電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ)19と、を備えて
いる。
【0131】ここで、第3実施例の内燃機関用点火装置
1は、火花放電遮断回路51以外の構成要素が第2実施
例と同様であることから、同様の構成要素についての説
明は省略し、第2実施例と異なる構成要素である火花放
電遮断回路51について説明する。
【0132】図8に示すように、第3実施例の火花放電
遮断回路51は、エミッタが接地され、ベースがECU
19の第2指令信号Sbを出力する端子と接続され、コ
レクタがコンデンサ87の一端(電極)に接続されると
ともに、ダイオード83を介して接地されたnpn型の
トランジスタ85を備えている。そして、ダイオード8
3は、アノードが接地され、カソードがトランジスタ8
5のコレクタに接続されている。また、コンデンサ87
は、トランジスタ85との接続端(電極)とは反対側の
接続端(電極)が、抵抗91を介して一次巻線L1に接
続されている。さらに、ダイオード89が抵抗91に並
列接続されており、ダイオード89は、アノードが抵抗
91と一次巻線L1との接続端に接続され、カソードが
抵抗91とコンデンサ87との接続端に接続されてい
る。
【0133】そして、ECU19から出力される第2指
令信号Sbがローレベルである場合には、火花放電遮断
回路51内のトランジスタ85がオフ状態となり、火花
放電遮断回路51が、電源装置11の正極から一次巻線
L1に向かう方向に一次電流i1を流すことはない。
【0134】また、第2指令信号Sbがハイレベルであ
る場合、第2実施例と同様に、火花放電遮断回路51内
のトランジスタ85がオン状態となり、火花放電遮断回
路51が、電源装置11の正極側から点火コイル15の
一次巻線L1を通って電源装置11の負極側に至る、一
次巻線L1の通電経路を形成し、一次巻線L1に一次電
流i1を流す。このとき、一次巻線L1からコンデンサ
87に流れ込む電流は、ダイオード89を通じて流れ
る。
【0135】そして、通電経路に流れる電流によってコ
ンデンサ87に電荷が蓄積されるに従い、一次電流i1
は緩やかに減少し、コンデンサ87に、一次巻線L1の
インダクタンスとコンデンサ87の容量とで決まる一定
の時定数にて、所定量の電荷が蓄積されると、コンデン
サ87に電流が流れなくなり、一次電流i1を遮断す
る。
【0136】ただし、コンデンサ87が、一次巻線L1
側に接続された電極を正極性として完全に充電されてい
る場合、第2指令信号Sbがハイレベルであっても、一
次電流i1は流れないため、予めコンデンサ87に蓄積
された電荷を放電させておく必要がある。そこで、第3
実施例では、第2実施例と同様に、点火用高電圧を発生
させるための第1指令信号Saをハイレベルにする、す
なわち、トランジスタ17をオン状態とすることで(S
530の処理時に)、コンデンサ87が充電されている
場合のその電荷を放電させることができる。
【0137】つまり、トランジスタ17をオン状態とす
ると、トランジスタ17、抵抗91、コンデンサ87、
ダイオード83による閉ループが形成され、コンデンサ
87に蓄積された電荷によって、この閉ループに電流が
流れることにより、コンデンサ87は放電される。この
とき、コンデンサ87から放電される電流は、ダイオー
ド89ではなく抵抗91を通じて流れるため、通電経路
の抵抗値が大きくなる。このため、通電経路に流れる電
流値が小さくなり、トランジスタ17に流れる電流量が
抑制されることになる。これにより、コンデンサ87に
蓄積された電荷を放電させた時に伴うトランジスタ17
の発熱を小さく抑えることが可能となる。
【0138】したがって、火花放電遮断回路51は、コ
ンデンサ87が放電された状態で、第2指令信号Sbが
ローレベルからハイレベルに変化されると、一次巻線L
1に一次電流i1の通電を開始し、時間経過に従い一次
電流i1を緩やかに減少させていき、最終的に一次電流
i1を遮断する。そして、次の点火用高電圧を発生させ
るべく再度第1指令信号Saがハイレベルになること
で、コンデンサ87に蓄積された電荷が放電される。
【0139】なお、本第3実施例では、コンデンサ87
が特許請求の範囲に記載の電流調整手段(容量素子)と
して、ダイオード89が第1整流素子として、抵抗91
が抵抗素子として、ダイオード83が第2整流素子とし
て、それぞれ備えられている。
【0140】次に、図8に示す回路図における、第1指
令信号Sa、第2指令信号Sb、点火プラグ13の中心
電極13aの電位Vp、点火コイル15の一次巻線L1
に流れる一次電流i1、トランジスタ17に流れる電流
i4、コンデンサ87に流れる電流i3、の各状態を表
すタイムチャートを図9に示す。
【0141】図9によれば、時刻t21にて、第1指令
信号Saをローからハイレベルに切り換え、点火コイル
15の一次巻線L1に一次電流i1を流し、その後、予
め設定された通電時間が経過した時刻t22にて、第1
指令信号Saをハイからローレベルに切り換え、点火コ
イル15の一次巻線L1への一次電流i1の通電を遮断
すると、点火プラグ13の中心電極13aに負の点火用
高電圧が印加されて、その電位Vpが急峻に低下し、点
火プラグ13の電極13a−13b間に火花放電が発生
していることが判る。
【0142】また、時刻t21では、前の燃焼サイクル
での火花放電の強制遮断によってコンデンサ87に蓄積
された電荷が放電されるため、コンデンサ87から抵抗
91に向かう方向に電流が流れる。図9では、コンデン
サ87に流れる電流i3を、抵抗91からコンデンサ8
7に向かう方向を正方向としており、この時流れる電流
i3は負の電流として表される。
【0143】そして、電流i3の大きさは、抵抗91の
抵抗値によって変化し、例えば、抵抗値1[Ω]の抵抗
91を用いた場合には、実線で示す電流波形(i3a)
のように変化し、抵抗値100[Ω]の抵抗91を用い
た場合には、点線で示す電流波形(i3b)のように変
化する。つまり、抵抗91の抵抗値が大きくなるほど、
トランジスタ17がオン状態となる時(時刻t21)に
おける電流i3の大きさを抑制することが出来る。しか
し、抵抗91の抵抗値が大きくなるほど、電流i3が流
れなくなるまでの時間、すなわち、コンデンサ87に蓄
積された電荷が完全に放電するまでの時間が長くなる。
このため、抵抗91の抵抗値は、コンデンサ87を完全
に放電できるように設定するとよい。
【0144】また、このとき、トランジスタ17のコレ
クタには、電流i3と一次巻線L1に流れる一次電流i
1とが流れ込むため、トランジスタ17に流れる電流i
4は、一次電流i1と電流i3とを重ね合わせた電流波
形となる。そして、電流i4は、抵抗値1[Ω]の抵抗
91を用いた場合には、実線で示す電流波形(i4a)
のように変化し、抵抗値100[Ω]の抵抗91を用い
た場合には、点線で示す電流波形(i4b)のように変
化する。なお、電流i3において負の値となる方向の電
流がトランジスタ17に流れ込むときには、電流i4と
しては正の値となる方向の電流が流れることになる。
【0145】ここで、トランジスタ17の発熱を抑える
ためには、電流i4の大きさを小さく抑えることが望ま
しく、電流i3の大きさを抑えるとよい。よって、電流
i3が小さくなるように、抵抗91の抵抗値を決定する
とよい。ただし、第1指令信号Saがハイレベルである
時間(時刻t21からt22までの時間)内に、コンデ
ンサ87が完全に放電できる抵抗値に設定することが望
ましい。
【0146】そして、図9における時刻t23にて、第
2指令信号Sbをローからハイレベルに切り換えると、
トランジスタ85がターンオンして、電源装置11の正
極側から点火コイル15の一次巻線L1、火花放電遮断
回路51を通って電源装置11の負極側に至る通電経路
を形成し、一次巻線L1に一次電流i1が通電される。
このとき、火花放電遮断回路51の内部での通電経路
は、ダイオード89、コンデンサ87、トランジスタ8
5によって形成され、コンデンサ87に電荷が蓄積され
るに従い、一次電流i1が緩やかに減少し、コンデンサ
87に所定量の電荷が蓄積されて完全に充電されると、
一次電流i1を遮断する。
【0147】なお、時刻t22までに、コンデンサ87
に蓄積された電荷は放電されているため、時刻t23で
のコンデンサ87は、火花放電を遮断するのに必要な大
きさの一次電流i1を流すことが出来る。これらのこと
から、図9に示すように、点火プラグ13の中心電極1
3aの電位Vpが充分低いために、電極13a−13b
間で火花放電が生じている場合に、ECU19及び火花
放電遮断回路51を用いて一次巻線L1への通電を行う
ようにすれば、点火プラグ13の中心電極13aの電位
Vpを上昇させて、火花放電を強制的に遮断させること
が出来る。
【0148】したがって、本第3実施例では、ECU1
9が、第1指令信号Saの切換タイミングを制御するこ
とにより、点火プラグ13の火花放電タイミング(換言
すれば点火時期)を制御するだけでなく、第2指令信号
Sbの切換タイミングを制御することにより、点火プラ
グ13による火花放電の終了時期を制御することができ
る。つまり、第1実施例および第2実施例と同様に、混
合気を燃焼させるために点火プラグ13に供給する火花
エネルギを必要最小限に抑えることが可能となる。
【0149】次に、このようにECU19において実行
される点火のための制御処理を、図10に示すフローチ
ャートに沿って説明する。なお、ECU19は、第1実
施例および第2実施例と同様に、内燃機関を総合的に制
御するためのものであり、以下に説明する点火制御のた
めに、別途、機関各部の運転状態を検出する運転状態検
出処理を行っている。
【0150】図10に示す点火制御のための制御処理
(点火制御処理)は、例えば、内燃機関の回転角度(ク
ランク角)を検出するクランク角センサからの信号に基
づき、内燃機関が、吸気、圧縮、燃焼、排気を行う1サ
イクルに1回の割合で実行される。
【0151】そして、この処理が開始されると、まず、
S510(Sはステップを表す)にて、別途実行される
運転状態検出処理にて検出された機関の運転状態を読込
み、S520にて、その読み込んだ運転状態に基づき、
火花放電発生時期(いわゆる点火時期)tsおよび火花
放電継続時間Ttを算出する。なお、火花放電発生時期
tsおよび火花放電継続時間Ttは、第1実施例と同様
に、内燃機関の運転状態を表す数値をパラメータとし
て、マップ若しくは計算式を用いて算出される(火花放
電継続時間Ttの算出にあたって用いられるマップの一
例としては、図18参照)。
【0152】次に、S530では、S520にて算出し
た火花放電発生時期tsに基づき、火花放電発生時期t
sに対して、予め設定された一次巻線L1の通電時間だ
け早い一次巻線L1の通電開始時期を求め、通電開始時
期に達した時点(図9に示す時刻t21)で、第1指令
信号Saをローからハイレベルに変化させる。
【0153】S530の処理により、第1指令信号Sa
をローからハイレベルに切り換えると、トランジスタ1
7をオン状態にするため、点火コイル15の一次巻線L
1に一次電流i1が流れる。また、火花放電発生時期t
sまでの一次巻線L1の通電時間は、一次巻線L1への
通電によって、内燃機関のあらゆる運転条件下で混合気
を燃焼させるのに要する最大の火花エネルギを点火コイ
ル15に蓄積させるのに要する時間であり、予め設定さ
れている。このとき、コンデンサ87が一次巻線L1側
に接続された電極を正極性として充電されていると、ト
ランジスタ17を通じて、コンデンサ87に蓄積された
電荷が放電されることになる。
【0154】そして、S540では、クランク角センサ
からの検出信号に基づき、S520で算出した火花放電
発生時期tsに達したか否かを判断し、否定判定された
場合には、同ステップを繰り返し実行することで、火花
放電発生時期tsになるまで待機する。S540にて、
火花放電発生時期tsに達したと判断されると(図9に
示す時刻t22)、S550に移行する。
【0155】S550では、図9に示したように、第1
指令信号Saをハイからローレベルに反転させる。この
結果、トランジスタ17がターンオフして、一次電流i
1が遮断され、点火コイル15の二次巻線L2に点火用
高電圧が誘導され、点火プラグ13に火花放電が発生す
る。
【0156】続いて、S560では、S540にて火花
放電発生時期tsに達したと判断された後、S520で
求めた火花放電継続時間Ttが経過したか否かを判断
し、否定判定された場合には、同ステップを繰り返し実
行することで火花放電継続時間Ttが経過するまで待機
する。そして、S560にて、火花放電継続時間Ttが
経過したと判断されると(図9に示した時刻t23)、
S570に移行し、第2指令信号Sbをローからハイレ
ベルに切り換える。
【0157】この結果、第2指令信号Sbがハイレベル
になると、トランジスタ85がオン状態となり、一次巻
線L1に一次電流i1が再び通電されることで、二次巻
線L2の誘導電圧の発生を抑え、点火プラグ13での火
花放電を強制的に遮断する。このあと、時間経過と共
に、コンデンサ87に電荷が蓄積されるに従い、一次電
流i1は緩やかに減少していき、コンデンサ87に所定
量の電荷が充電されると、一次電流i1は遮断される。
【0158】そして、S580では、S560にて火花
放電継続時間Ttが経過したと判断された後、予めEC
U19に設定してある第2指令信号Sbのハイレベル継
続時間を経過したか否かを判断し、否定判定された場合
には、同ステップを繰り返し実行することで待機する。
そして、S580にて、第2指令信号Sbのハイレベル
継続時間が経過したと判断されると(図9に示した時刻
t24)、S590に移行する。本第3実施例では、第
2指令信号Sbのハイレベル継続時間は、内燃機関の運
転状態に関わらず、予め設定された固定値としている
が、運転状態に合わせて適切な値に設定するようにして
もよい。
【0159】そして、S590の処理により、第2指令
信号Sbをハイからローレベルに切り換えると、トラン
ジスタ85がオフ状態となり、本処理が終了する。ここ
で、第2指令信号Sbのハイレベル継続時間は、コンデ
ンサ87が充電されるまでの時間と同程度に設定されて
おり、一次電流i1は十分小さくなっているか、あるい
は遮断されており、S590の処理によって、一次電流
i1が変化して、火花放電を発生させることはない。
【0160】尚、本実施例においては、内燃機関の運転
状態に基づき火花放電継続時間Ttを算出するS520
の処理が、特許請求の範囲に記載の火花放電継続時間算
出手段に相当し、トランジスタ17が第1スイッチング
手段に相当する。また、トランジスタ85が第2スイッ
チング手段に相当し、そしてこの第2スイッチング手段
に直列に接続されるコンデンサ87と当該第2スイッチ
ング手段とを少なくとも含む火花放電遮断回路51が再
通電用回路に相当する。
【0161】以上説明したように、第3実施例の内燃機
関用点火装置1は、ECU19の指令によってトランジ
スタ17をオン・オフさせることにより、点火コイル1
5の二次巻線L2から点火プラグ13に点火用高電圧を
印加させて、点火プラグ13の電極13a−13b間に
火花放電を発生させた後、内燃機関の運転状態に基づき
求めた火花放電継続時間Ttとなるように、火花放電遮
断回路51によって、点火コイル15の一次巻線L1に
再度一次電流i1を流すことにより、火花放電を強制的
に遮断している。
【0162】したがって、第3実施例は、第2実施例と
同様に、一次巻線L1に流れる一次電流i1を、2つの
トランジスタに分けて流す構成であるため、1つのトラ
ンジスタに流す構成である第1実施例に比べ、トランジ
スタ1個当りの通電時間が短くなり、通電される電流量
が少なくなる。これにより、トランジスタの発熱量を抑
制することができ、トランジスタへの負担をさらに軽減
することが可能となる。
【0163】また、第3実施例では、コンデンサ87に
蓄積された電荷を放電する際に流れる電流の大きさを、
抵抗91によって制限しているため、トランジスタ17
に流れる電流の大きさを制限することができ、トランジ
スタ17の発熱を抑えることができる。よって、トラン
ジスタへの負担をさらに軽減することが可能になる。な
お、抵抗91としては、トランジスタに流れる電流の抑
制、および、コンデンサ87の放電時間を考慮すると、
抵抗値が1〜100[Ω]の抵抗を用いることが望まし
い。
【0164】さらに、火花放電の遮断時には、ダイオー
ド89によって一次巻線L1に流れる一次電流i1を大
きく確保することができ、火花放電の遮断を確実に実行
することが可能になる。また、第3実施例では、火花放
電の遮断の際に、第2指令信号Sbのみを制御してお
り、第1指令信号Saの制御を行っておらず、第2実施
例に比べて、点火制御のための制御処理(点火制御処
理)にて実行されるステップ数が少ない。このため、第
2実施例に比べて制御処理が実行されるECU19にお
ける処理負荷を低減することができ、また、ECU19
への負担を軽減することが出来る。
【0165】なお、第2実施例に示す回路構成の内燃機
関用点火装置においても、第3実施例における点火制御
処理と同様に、火花放電遮断時には第2指令信号Sbの
みを制御し、第1指令信号Saの制御を行わないような
制御処理を実行することで、火花放電継続時間を制御す
ることも可能である。
【0166】次に、本第3実施例の内燃機関用点火装置
の効果を確認するため、実際に内燃機関を用いて、火花
放電継続時間Ttを変化させたときの、点火コイル15
の二次巻線L2に流れる二次電流i2の変化を測定した
測定結果を図11に示す。そして、測定は、燃料として
メタンガスを主成分とする都市ガス13Aを用いるガス
エンジンを使用し、回転数を2000rpmとして運転
した場合の、二次電流i2の変化を、(a)火花放電を
強制遮断しない場合、(b)火花放電継続時間Ttが
1.0[mS]の場合,(c)火花放電継続時間Ttが
0.5[mS]の場合,の3条件下で、測定を行った。
また、本第3実施例において、電流調整手段として機能
するコンデンサ87の容量は100[μF]とし、抵抗
91の抵抗値は5[Ω]とした。そして、図11に、縦
軸を二次電流、横軸を時間として測定結果を示す。
【0167】まず、図11(a)は、火花放電を強制的
に遮断しない場合の測定結果であり、点火時期(図にお
ける縦軸が記載されている時刻)で火花放電が発生して
二次電流が流れ始めた後、緩やかに電流値が減少してい
き、点火時期から約0.7[mS]経過したあたりから
電流値が大きく乱れて変動しており、多重放電が発生し
ていることがわかる。その後、多重放電が継続して発生
し、点火時期から約1.3[mS]経過した時点で電流
値が0[mA]となり火花放電が自然に終了している。
【0168】次に、図11(b)は、火花放電継続時間
Ttが1.0[mS]の場合の測定結果であり、図11
(a)と同様に、点火時期(図における縦軸が記載され
ている時刻)で火花放電が発生して二次電流が流れ始め
た後、緩やかに電流値が減少していき、点火時期から約
0.7[mS]経過したあたりから電流値が大きく乱れ
て変動しており、多重放電が発生していることがわか
る。その後、多重放電が継続して発生しているものの、
点火時期から1.0[mS]経過した時点で火花放電が
強制的に遮断されて、電流値が0[mA]となってい
る。これにより、点火時期から1.0[mS]経過した
後の多重放電の発生を防ぐことができ、点火プラグの電
極消耗を抑えることができる。
【0169】さらに、図11(c)は、火花放電継続時
間Ttが0.5[mS]の場合の測定結果であり、図1
1(a)および(b)と同様に、点火時期(図における
縦軸が記載されている時刻)で火花放電が発生して二次
電流が流れ始めた後、緩やかに電流値が減少していき、
点火時期から約0.5[mS]経過した時点で火花放電
が強制的に遮断されて、電流値が0[mA]となってい
る。これにより、多重放電の発生を防ぐことができ、さ
らに点火プラグの電極消耗を抑えることができる。
【0170】さらに、本発明の第4実施例の内燃機関用
点火装置について説明する。図13は、第3実施例の内
燃機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。な
お、以下の説明において、第1実施例と同じ構成要素に
ついては、同一番号(符号)を付与して説明する。
【0171】図13に示すように、第4実施例の内燃機
関用点火装置1は、放電用の電気エネルギ(例えば電圧
12V)を供給する電源装置(バッテリ)11と、内燃
機関の気筒に設けられた点火プラグ13と、一次巻線L
1と二次巻線L2とからなる点火コイル15と、一次巻
線L1と直列接続されたnpn型のトランジスタ17
と、電源装置11と一次巻線L1との接続経路をオン・
オフする電源遮断用スイッチ93と、コンデンサ87
と、トランジスタ17及び電源遮断用スイッチ93に対
して、第1指令信号Sa及び第2指令信号Sbを各々出
力する電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ)19と、を
備えている。
【0172】ここで、一次巻線L1の一端は電源遮断用
スイッチ93を介して電源装置11の正極に接続され、
他端はトランジスタ17のコレクタに接続されている。
また、電源遮断用スイッチ93は、ECU19からの第
2指令信号Sbを受信するための入力端子が、ECU1
9の出力端子と接続されている。これにより、電源遮断
用スイッチ93は、第2指令信号Sbがローレベルの場
合にはオフ状態となり、第2指令信号Sbがハイレベル
の場合にはオン状態となる。
【0173】さらに、コンデンサ87は、一端が一次巻
線L1と電源遮断用スイッチ93との接続点に接続され
ており、他端が電源装置11の負極と同電位のグランド
に接地されている。また、ECU19からの第1指令信
号Saに基づき、一次巻線L1への通電・非通電を行う
トランジスタ17が、一次巻線L1のうちで電源遮断用
スイッチ93と接続されている一端と反対側の他端に接
続されている。
【0174】なお、本第4実施例では、コンデンサ87
が特許請求の範囲に記載の電流調整手段(容量素子)と
して、電源遮断用スイッチ93が電源遮断用手段とし
て、トランジスタ17が第1スイッチング手段として、
それぞれ備えられているものである。
【0175】次に、図13に示す回路図における、第1
指令信号Sa、第2指令信号Sb、点火プラグ13の中
心電極13aの電位Vp、点火コイル15の一次巻線L
1に流れる一次電流i1、の各状態を表すタイムチャー
トを図14に示す。図14によれば、時刻t31にて、
第1指令信号Saをローからハイレベルに切り換えると
共に、第2指令信号Sbをローからハイレベルに切り換
えることにより、点火コイル15の一次巻線L1に一次
電流i1が流れる。このとき、コンデンサ87が充電さ
れることになる。その後、予め設定された通電時間が経
過した時刻t32にて、第1指令信号Saをハイからロ
ーレベルに切り換え、点火コイル15の一次巻線L1へ
の一次電流i1の通電を遮断すると、点火プラグ13の
中心電極13aに負の点火用高電圧が印加されて、その
電位Vpが急峻に低下し、点火プラグ13の電極13a
−13b間に火花放電が発生していることが判る。
【0176】そして、点火プラグ13の電極間に火花放
電が発生している際に、第1指令信号Saが再びハイレ
ベルとなりトランジスタ17がオン状態となると、一次
巻線L1に再び一次電流i1が流れることになり、二次
巻線L2において発生する点火用高電圧が逆極性となっ
て火花放電が強制的に遮断される。なお、このとき第2
指令信号Sbはハイレベルの状態であり、電源遮断用ス
イッチ93はオン状態にある。
【0177】この後、所定時間が経過した時刻t34に
て、第2指令信号Sbがローレベルになると、電源遮断
用スイッチ93はオフ状態となり、電源装置11から一
次巻線L1への電流供給が停止される。しかし、これと
同時にコンデンサ87が電荷の放電を開始するのであ
る。このため、コンデンサ87から一次巻線L1へ電流
供給が行われることになり、一次電流i1は継続して流
れることになる。コンデンサ87が供給する電流は、コ
ンデンサ87の放電に伴い緩やかに減少していくため、
一次電流i1は緩やかに減少されることになり、コンデ
ンサ87が完全に放電されると一次巻線L1への電流供
給が停止して、最終的に一次電流i1は流れなくなる
(時刻t35)。なお、コンデンサ87については、電
源遮断用スイッチ93がオン状態となり、電源装置11
から電流が供給されることで充電されており、具体的に
は時刻t31から時刻t34の間に充電されることにな
る。
【0178】以上説明したように、第4実施例の内燃機
関用点火装置1においては、ECU19の指令(具体的
には第1指令信号Sa)によってトランジスタ17をオ
ン・オフさせることにより、点火コイル15の二次巻線
L2から点火プラグ13に点火用高電圧を印加させて、
点火プラグ13の電極間に火花放電を発生させた後、内
燃機関の運転状態に基づき求めた火花放電継続時間に応
じて、火花放電を強制的に遮断するのである。さらに、
ECU19の指令(具体的には第2指令信号Sb)によ
って電源遮断用スイッチ93をオン・オフさせることに
より、一次巻線L1への電流供給、および火花放電遮断
するための再通電時に一次巻線L1に流れる電流を、コ
ンデンサ87を用いて緩やかに減少させることが可能と
なる。それより、上述の各実施例と同様に、点火プラグ
13の電極消耗を抑えることができる。
【0179】次に、第4実施例の内燃機関用点火装置に
おける電源遮断用スイッチの代わりに、pnp型トラン
ジスタを用いた内燃機関用点火装置を、第5実施例とし
て以下に説明する。そして、第5実施例の内燃機関用点
火装置の構成を表す電気回路図を図15に示す。なお、
第5実施例の内燃機関用点火装置は、第4実施例と比べ
て電源遮断用スイッチ93に対応する部分が異なってい
ることから、異なっている箇所について説明する。
【0180】図15に示すように、トランジスタ95
は、ベースがECU19の第2指令信号Sbを出力する
端子と接続され、エミッタが電源装置11の正極に接続
され、コレクタが一次巻線L1の一端に接続されてい
る。また、トランジスタ95は、エミッタとコレクタが
ダイオード97を介して接続されており、ダイオード9
7は、アノードがトランジスタ95のコレクタに接続さ
れ、カソードがトランジスタ95のエミッタに接続され
ている。つまり、一次巻線L1から電源装置11に向か
う方向の電流がダイオード97を介して流れるように構
成されている。
【0181】ここで、トランジスタ95は、第2指令信
号Sbがローレベルの場合にはオン状態となり電源装置
11と一次巻線L1との通電経路を形成し、第2指令信
号Sbがハイレベルの場合にはオフ状態となり電源装置
11と一次巻線L1との通電経路を開放する。つまり、
第5実施例の内燃機関用点火装置では、電源装置11か
ら一次巻線L1への通電を行うためには、第2指令信号
Sbをローレベルに設定することになる。
【0182】このように第2指令信号Sbの設定は、第
4実施例の内燃機関用点火装置とは反対であり、第5実
施例のECU19では、点火のための制御処理を実施す
るにあたり、電源装置11から一次巻線L1への電流供
給を行う際には第2指令信号Sbをローレベルに設定
し、電源装置11から一次巻線L1への電流経路を開放
する際には第2指令信号Sbをハイレベルに設定する。
【0183】そして、第5実施例のECU19は、第2
指令信号Sbの設定以外の処理内容については、第4実
施例のECU19と同様の処理を行う。よって、第5実
施例の内燃機関用点火装置においても、第4実施例と同
様に、火花放電継続時間を制御することが可能となり、
火花放電継続時間を最適に制御することにより、多重放
電の発生も抑制できることから、点火プラグ13の電極
消耗を抑え、点火プラグ13の寿命を延ばすことができ
る。また、火花放電を強制遮断した後コンデンサ87に
より一次巻線L1への電流供給を行い、しかもその後、
一次電流i1を緩やかに減少させることで、火花放電強
制遮断後に点火コイル15の二次巻線L2に点火用高電
圧が発生するのも防止できる。
【0184】したがって、第5実施例の内燃機関用点火
装置は、第4実施例の内燃機関用点火装置と同様の効果
を発揮することができる。次に、本発明による効果を確
認すべく、火花放電の強制遮断の有無による、点火プラ
グの電極の状態について測定した耐久試験の結果を図1
2に示す。なお、内燃機関用点火装置としては、実施例
3のものを使用した。
【0185】測定は、0.8MPaの圧力が印加された
条件下で、点火プラグの電極間に対して一定方向に風を
送り、4.71億回の火花放電を発生させて行った。こ
れは、内燃機関を2000rpmで約8000時間運転
したときの、点火プラグの電極消耗に相当する。そし
て、火花放電の遮断を行わない場合(図12(a))
と、火花放電継続時間が0.2[mS]となるよう火花
放電遮断した場合(図12(b))の2パターンについ
て測定を行った。
【0186】図12は、奥側に接地電極が、手前側に中
心電極が位置するように点火プラグの電極部分を側方か
ら見た図であり、上方に接地電極の端部が、下方に中心
電極が位置するように電極を示している。また、測定時
には、図12の右から左に向かう方向に風(流速)を発
生させて、混合気の乱流が発生しているのと同様の環境
としている。
【0187】そして、図12(a)は、火花放電遮断を
行わない場合の点火プラグの電極を示しており、図12
(a)に示す点火プラグでは、接地電極および中心電極
ともに図の左側部分が大きく消耗していることが分か
る。これは、火花放電が風(流速)によって流されて風
下(下流)となる電極の左側部分で多重放電による火花
放電が発生し、電極の偏消耗が進んだためと考えられ
る。
【0188】一方、図12(b)は、火花放電遮断を行
った点火プラグの電極を示しており、図12(b)に示
す点火プラグでは、中心電極に対向する接地電極の中央
部分が消耗しているものの、図12(a)に示す点火プ
ラグの電極に比べて消耗部分が少ないことが分かる。こ
のように、電極の消耗が少ないのは、火花放電を強制的
に遮断したことにより、多重放電の発生を抑えたことの
効果である。
【0189】したがって、この測定結果から、本発明を
適用した実施例の内燃機関用点火装置を用いることによ
り、設定された火花放電継続時間にて火花放電を遮断す
ることで、火花放電の過剰供給を抑えて点火プラグの寿
命を延ばすことができると分かる。
【0190】また、本発明の内燃機関用点火装置におけ
る着火性に関する信頼性を確認するため、実際に内燃機
関を用いて、火花放電継続時間Ttを変化させたときの
失火率を測定した測定結果を図19に示す。なお、内燃
機関用点火装置としては、実施例3のものを使用した。
【0191】この測定は、メタンガスを主成分とする都
市ガス13Aを燃料とするガスエンジンを使用し、エン
ジン負荷を25%とした時の4段階(800,100
0,1500,2000[rpm])のエンジン回転数
それぞれにおける失火の発生割合(失火率)を、火花放
電の強制遮断無しの場合、火花放電継続時間Ttが1.
0[mS]、0.5[mS]、0.2[mS]の場合の
4条件下にてそれぞれ行った。なお、図19では、縦軸
を失火率、横軸を火花放電継続時間、奥行き方向の軸を
エンジン回転数として測定結果を示す。
【0192】図19に示す測定結果より、エンジン回転
数が高回転となるほど、火花放電継続時間Ttを短く設
定しても、失火が発生せずに内燃機関の運転が良好にな
されていることが判る。逆に、エンジン回転数が低回転
になるほど火花放電を強制遮断しない、あるいは、火花
放電継続時間Ttを比較的長く設定することで、失火が
発生することなく内燃機関の運転が良好になされている
ことが判る。これにより、本発明の内燃機関用点火装置
においては、内燃機関にてエンジン回転数が上昇するほ
ど、火花放電継続時間Ttを短くなるよう算出した場合
にも、着火性が悪化することなく、内燃機関の運転状態
を良好に維持されることが理解できる。
【0193】次に、エンジン負荷を100%とし、エン
ジン負荷以外の条件については図19に示した測定と同
様の条件下にて、火花放電継続時間Ttを変化させたと
きの失火率の測定結果を20に示す。なお、図20にお
いても、図19と同様に、縦軸を失火率、横軸を火花放
電継続時間、奥行き方向の軸をエンジン回転数として測
定結果を示す。
【0194】図20に示す測定結果を、図19に示す測
定結果と比較すると明らかなように、本発明の内燃機関
用点火装置においては、エンジン負荷が高負荷となるほ
ど、火花放電継続時間Ttを短くするよう算出した場合
にも、着火性が悪化することなく、内燃機関の運転状態
を良好に維持されることが理解できる。つまり、内燃機
関にて少なくともエンジン回転数およびエンジン負荷に
応じて、最適な火花放電継続時間Ttを算出することに
よって、混合気を確実に燃焼させることができ、失火の
発生を抑制することができるのである。
【0195】さらに、火花放電継続時間に対する内燃機
関の失火率を測定した測定結果を図16に示す。測定
は、燃料としてガソリンを用いるガソリンエンジンを使
用し、エンジン回転数を6000〔rpm〕、スロット
ル開度を100%(全開)、二次電流最大値を70〔m
A〕として、各火花放電継続時間において、1000回
の燃焼サイクル中における失火の発生率を測定すること
で行った。なお、二次電流最大値とは、火花放電が発生
した後に、二次巻線に流れる最大電流値である。
【0196】図16に示すように、本測定結果によれ
ば、火花放電継続時間が0.1〔mSec〕以上となる
範囲であれば失火は発生しておらず、また、火花放電継
続時間が0.05〔mSec〕以上となる範囲であって
も失火率は1%以下となることが判る。また、火花放電
継続時間が0.04〔mSec〕の場合は失火率が12
%であり、火花放電継続時間が0.03〔mSec〕の
場合が失火率20%となる。
【0197】ここで、内燃機関の運転を良好に行うため
には、例えば、カルフォルニア州大気資源局(CAR
B:California Air Resources Board)によるOBD2
規制を考慮して、その規制値の1.5倍を超える排ガス
が出る失火率は2%前後と言われている。それを考慮す
ると、火花放電継続時間を0.05〔mSec〕以上に
設定することで、内燃機関の高回転高負荷時の運転を良
好に行えることが判る。
【0198】また、火花放電遮断後に一次巻線に流れる
再通電による電流を減少させる際に発生する最大二次電
圧に対し、火花放電の再発生率について測定した測定結
果を図17に示す。測定は、燃料としてメタンガスを主
成分とする都市ガス13Aを用いるガスエンジンを使用
し、エンジン回転数を1000〔rpm〕、エンジン負
荷を無負荷状態として運転した場合において、火花放電
を遮断するために一次電流を再通電した後、二次巻線に
発生する最大二次電圧〔kV〕の各値毎に、火花放電の
再発生率を測定することで行った。当試験条件は、点火
プラグでの火花放電に必要な電圧が最も低い部類の条件
であることから選定した。
【0199】図17に示すように、本測定結果によれ
ば、一次巻線への再通電後の最大二次電圧が5〔kV〕
以下の場合には火花放電の再発生率は0%であり、最大
二次電圧5.5〔kV〕となると火花放電の再発生率は
1%となり、これより先最大二次電圧が大きくなると火
花放電の再発生率は高くなる。これより、一次巻線への
再通電時に火花放電の再発生を防ぐためには、再通電時
に二次巻線に生じる二次電圧を5〔kV〕以下とするこ
とが良いことが判る。
【0200】以上、本発明の実施例について説明した
が、本発明の内燃機関用点火装置は、希薄空燃比で燃焼
する内燃機関に、さらには定置型ガスエンジンに適用す
ることでより効果を発揮する。また、各実施例において
は、二次巻線L2と一次巻線L1との接続部分に、二次
巻線L2から一次巻線L1側に電流が流れるのを許容
し、逆方向への電流の流れを阻止するために、ダイオー
ド等からなる整流素子Dが設けられているが、この整流
素子Dの設置位置を二次巻線L2と点火プラグ13との
接続部分にしてもよい。さらに、各実施例においては、
火花放電継続時間Ttの算出をマップを用いて行ってい
るが、マップに限定することはなく、計算式によって算
出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の内燃機関用点火装置の構成を表
す電気回路図である。
【図2】 第1実施例の内燃機関用点火装置の各部の状
態を表すタイムチャートである。
【図3】 第1実施例の電子制御装置(ECU)が実行
する処理を表すフローチャートである。
【図4】 点火コイルの二次電流を測定した結果を表す
グラフである。
【図5】 第2実施例の内燃機関用点火装置の構成を表
す電気回路図である。
【図6】 第2実施例の内燃機関用点火装置の各部の状
態を表すタイムチャートである。
【図7】 第2実施例の電子制御装置(ECU)が実行
する処理を表すフローチャートである。
【図8】 第3実施例の内燃機関用点火装置の構成を表
す電気回路図である。
【図9】 第3実施例の内燃機関用点火装置の各部の状
態を表すタイムチャートである。
【図10】 第3実施例の電子制御装置(ECU)が実
行する処理を表すフローチャートである。
【図11】 点火コイルの二次電流を測定した結果を表
すグラフである。
【図12】 耐久試験を行った点火プラグの電極を表す
説明図である。
【図13】 第4実施例の内燃機関用点火装置の構成を
表す電気回路図である。
【図14】 第4実施例の内燃機関用点火装置の各部の
状態を表すタイムチャートである。
【図15】 第5実施例の内燃機関用点火装置の構成を
表す電気回路図である。
【図16】 火花放電継続時間に対する内燃機関の失火
率を測定した測定結果である。
【図17】 火花放電遮断後に発生する最大二次電圧に
対する火花放電の再発生率について測定した測定結果で
ある。
【図18】 火花放電遮断処理における火花放電継続時
間の算出に用いる第1マップである。
【図19】 エンジン負荷を25%として火花放電継続
時間を変化させたときの失火率を測定した測定結果を示
すグラフである。
【図20】 エンジン負荷を100%として火花放電継
続時間を変化させたときの失火率を測定した測定結果を
示すグラフである。
【図21】 点火プラグの電極間に発生する火花放電の
状態を表す説明図と、火花放電時の二次電流の波形を示
すグラフである。
【符号の説明】
1…内燃機関用点火装置、11…電源装置、13…点火
プラグ、13a…中心電極、13b…外側電極(接地電
極)、15…点火コイル、17…トランジスタ、19…
電子制御装置(ECU)、31…火花放電発生回路、3
9…抵抗、51…火花放電遮断回路、77…コンデン
サ、83…ダイオード、85…トランジスタ、87…コ
ンデンサ、89…ダイオード、91…抵抗、93…電源
遮断用スイッチ、95…トランジスタ、L1…一次巻
線、L2…二次巻線。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二次巻線が、内燃機関に装着された点火
    プラグと共に閉ループを形成する点火コイルと、 電源装置から前記点火コイルの一次巻線に流れる一次電
    流を通電・遮断することにより、前記二次巻線に点火用
    高電圧を発生させ前記点火プラグを火花放電させるため
    の火花放電発生手段と、 内燃機関の運転状態に基づき、前記点火プラグの火花放
    電によって混合気を燃焼させるのに要する火花放電継続
    時間を算出するにあたり、少なくとも同機関の高回転高
    負荷時に該火花放電継続時間が短くなるよう算出する火
    花放電継続時間算出手段と、を備え、 前記火花放電継続時間算出手段にて算出された火花放電
    継続時間に応じて、前記点火プラグの火花放電を強制的
    に遮断することを特徴とする内燃機関用点火装置。
  2. 【請求項2】 前記火花放電継続時間が経過したタイミ
    ングに応じて、該一次巻線への通電を再開することによ
    り、前記点火プラグの火花放電を強制的に遮断すること
    を特徴とする請求項1記載の内燃機関用点火装置。
  3. 【請求項3】 前記点火コイルの一次巻線への通電を再
    開した後、前記点火プラグにて火花放電が発生しないよ
    うに該一次巻線に流れる一次電流を減少させる電流調整
    手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機
    関用点火装置。
  4. 【請求項4】 前記火花放電発生手段は、前記点火コイ
    ルの一次巻線に接続され、該一次巻線に流れる一次電流
    を通電・遮断する第1スイッチング手段を備えており、 前記点火コイルの一次巻線への通電を再開するための第
    2スイッチング手段と、該第2スイッチング手段に直列
    接続される前記電流調整手段とを少なくとも含む再通電
    用回路が、前記第1スイッチング手段に並列接続されて
    いること、を特徴とする請求項3に記載の内燃機関用点
    火装置。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の内燃機関用点火装置で
    あって、 前記再通電用回路は、前記電流調整手段に直列接続され
    た抵抗素子と、 該抵抗素子と並列接続され、前記一次電流を流すことを
    許容する第1整流素子と、 前記第2スイッチング手段に並列接続され、前記一次電
    流を流すことを許容しない第2整流素子と、 を備えたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
  6. 【請求項6】 前記電流調整手段が容量素子で構成さ
    れ、前記抵抗素子の抵抗値が、1[Ω]〜100[Ω]
    の範囲内にあること、を特徴とする請求項5に記載の内
    燃機関用点火装置。
  7. 【請求項7】 前記電源装置と前記一次巻線との間に挿
    入される電源遮断用手段と、該電源遮断用手段と該一次
    コイルとの間に接続点を有する前記電流調整手段と、を
    備え、 前記火花放電発生手段は、前記点火コイルの一次巻線に
    接続され、該一次巻線に流れる一次電流を通電・遮断す
    る第1スイッチング手段を備えたこと、 を特徴とする請求項3に記載の内燃機関用点火装置。
  8. 【請求項8】 前記電流調整手段が容量素子で構成さ
    れ、該容量素子の容量が、1[μF]〜1000[μ
    F]の範囲内にあること、を特徴とする請求項3から請
    求項7のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
  9. 【請求項9】 内燃機関始動直後であって内燃機関が十
    分に暖気されるまでの運転状態の間は、前記火花放電継
    続時間算出手段は前記火花放電継続時間を最も長くなる
    よう算出する、あるいは前記火花放電の強制的な遮断を
    行わないことを特徴とする請求項1から請求項8のいず
    れかに記載の内燃機関用点火装置。
  10. 【請求項10】 前記内燃機関は、燃料として気体燃料
    を用いるガスエンジンであることを特徴とする請求項1
    から請求項9のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
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